説明

質量分析計の焦点面検出器アセンブリ

質量分析計の焦点面検出器アセンブリは、この質量分析計の焦点面を横切るイオンを検出するような形態の検出器、およびこの焦点面に平行な平面に、この質量分析計の磁石を出るイオンが、上記イオン検出器と接触する前に上記メッシュを通過するように位置決めされるように横たわる電気伝導性メッシュを含む。このメッシュは、回路接地に対して低電圧電位で維持され、これは、マイクロチャネルプレート電子増倍管のようなその他のデバイスからの高電圧電荷から上記磁石を通過するイオンを遮蔽する。このメッシュは、上記磁石に直接取り付けられ得るか、またはいくらか離れた距離に位置決めされる。上記検出器のアレイは、ファラデーカップ検出器アレイ、ストリップ電荷検出器アレイ、またはCCD検出器アレイを含む、任意の適切なデバイスを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本出願は、2004年3月31日に出願された米国仮特許出願第60/577,920号;2004年3月31日に出願された米国仮特許出願第60/557,969号;2004年3月5日に出願された米国仮特許出願第60/550,663号;および2004年3月5日に出願された米国仮特許出願第60/550,664号の利益を主張し、ここで、これら4つの仮出願は、それらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【背景技術】
【0002】
(発明の背景)
(発明の分野)
本発明は、一般に質量分析計の分野に、そして特にその焦点面検出器に関する。
【0003】
(関連する技術の説明)
質量分析計は、プロセスモニタリングから生命科学まで多くの適用で広く用いられている。過去60年間の経過に亘って種々の器具が開発されてきた。新たな開発の焦点は、2つの部分からなる:(1)高質量解像度とともになお高い質量範囲のための懸命の努力、および(2)小さな、デスクトップ質量分析計器具の開発に関する。
【0004】
質量分析計は、しばしば、複雑な混合物の分析のためにガスクロマトグラフと組み合わされる。これは、特に、揮発性有機化合物(VOC)および準揮発性有機化合物(semi−VOC)の分析のために有用である。組み合わされたガスクロマトグラフおよび質量分析計または分光器(GS/MS)器具は、代表的には、ガス入口システムを含み、これは、GC/MS器具のガスクロマトグラフ部分を含み得る。このGC/MS器具はまた、代表的には、イオン抽出器を備えた、電子衝撃(EI)を基礎にしたイオナイザー、イオンビームを焦点集めするためのイオン光学(optic)構成要素、イオン分離構成要素、およびイオン検出構成要素を含む。イオン化はまた、化学的イオン化を経由して実施され得る。
【0005】
イオン分離は、時間または空間ドメインで実施され得る。時間ドメインにおける質量分離の例は、飛行時間型質量分析計である。空間的分離は、一般に用いられる四重極質量分析計で観察される。ここで、「四重極フィルター」は、イオナイザーから検出器に伝達される唯一の質量/電荷比を可能にする。完全な質量スペクトルは、この「質量フィルター」を通る質量範囲を走査することにより記録される。その他の空間的分離は、イオンエネルギーまたは磁場強度いずれかが変動される磁場に基づき、ここで再び、上記質量フィルターは、伝達されるべき唯一の質量/電荷比を可能にし、そしてスペクトルは、この質量範囲を通じて走査することにより記録され得る。
【0006】
質量分析計の1つのタイプは質量分光器である。質量分光器においては、イオンは、磁場で空間的に分離され、そして位置感受性検出器で検出される。二重焦点合わせ質量分析計の概念は、最初、MattauchおよびHerzog(MH)によって1940年に導入された(非特許文献1)。
【0007】
二重焦点合わせは、拡散されたエネルギーおよび拡散された空間的ビームの両方を再焦点合わせする器具の能力をいう。磁石およびマイクロマシン技術における現代の発展は、これら器具のサイズにおける劇的な減少を可能にする。VOCおよび準VOC分析を行い得る質量分析計における焦点面の長さは、数センチメートルまで低減されている。
【0008】
小共焦点面レイアウトMattauch−Herzog器具の代表的な仕様は、以下のように要約される:
電子衝撃イオン化、レニウムフィラメント
DC−電圧および永久磁石
イオンエネルギー:0.5−2.5kV DC
質量範囲:2−200D
ファラデーカップ検出器アレイまたはストリップ電荷検出器
10∧11までのゲインを備えた積算操作性増幅器
衝撃係数(デューティサイクル):>99%
読み出し時間:0.03秒〜10秒
感度:ストリップ電荷検出器で約10ppm
さらに、イオン光学要素は、減圧チャンバーフロア内またはチャンバー壁上に取り付けられる。これらの光学要素はまた、減圧ハウジングの一体部分であり得る。小器具では、しかし、これらイオン光学要素は、「光学ベンチ」として作用するベースプレート上に構築され得る。このベンチは、これらイオン光学要素を支持する。このベースプレートは、減圧またはマスターフランジに対して取り付けられ、減圧下で質量分析計を作動するために必要な減圧シールを提供する。上記ベースプレートはまた、それ自体、減圧またはマスターフランジとして作用し得る。
【0009】
Mattauch−Herzogイオン検出器は、位置感受性検出器である。多くの概念が、過去十年間に亘って開発されてきた。最近の開発は、従前に用いられた電子光学イオン検出(EOID)の代替として半導体ベースの直接イオン検出に焦点をあてている。
【0010】
この電子光学イオン検出(EOID)は、マルチチャネルプレート(MCP)中のイオンを、電子に変換し、(同じMCP中の)これら電子を増幅し、そしてこのMCPから発せられる電子で衝突されるリンのフィルムを照射する。リンのフィルム上に形成されたイメージは、光ファイバーカプラーを経由して発光ダイオードアレイで記録される。このタイプのEOIDは、特許文献1に詳細に記載されている。このEOIDは、質量分析計の焦点面に沿って空間的に分離されたイオンの同時測定のために意図されている。このEOIDは、イオンを電子に、そして次に光子に転換することによって作動される。これら光子は、イオン誘導信号のイメージを形成する。これらイオンは、マイクロチャネル電子電子増倍管アレイに衝突することにより電子を生成する。これら電子は、光子イメージを生成する、リン光体で被覆された光ファイバープレートに加速される。これらのイメージは、光検出器アレイを用いて検出される。
【0011】
異なる形態によれば、直接電荷測定は、マイクロマシン加工されたファラデーカップ検出器アレイに基づき得る。ここでは、個々にアドレス可能なファラデーカップのアレイがイオンビームをモニターする。アレイの個々の要素で収集された電荷は、マルチプレクサユニットを経由して増幅器に譲られる。このレイアウトは、必要な増幅器およびフィードスルーの数を低減する。この概念は、非特許文献2、非特許文献3、および「電荷粒子ビーム検出システム」と題する非仮特許出願第09/744,360号のような最近の刊行物に詳細に記載されている。
【0012】
分析計に関するその他の重要な参考文献は、非特許文献4、5および6である。
【0013】
あるいは、特に、低エネルギーイオンについて、接地され、そして絶縁されたバックグラウンド上の平坦金属ストリップ(ストリップ電荷検出器(SCD)と称される)が、MCPとともに用いられ得る。上記に記載したように、MCPは、イオンを電子に変換し、そして電子を増幅する。このSCDは、電子を検出し、そして電荷を生成する。ここで再び、この電荷は、マルチプレクサを経由して増幅器まで譲られる。
【0014】
イオン検出器アレイの別の実施形態は、特許文献2に開示され、そしてシフトレジスターを基礎にした直接イオン検出器と称される。
【0015】
このシフトレジスターを基礎にした直接イオン検出器は、GS/MSシステムで、電子および光子への変換なくして質量分析計におけるイオンの直接測定を可能にするための改変とともに(例えば、測定に先立つEOID)用いられ得る。この検出器は、金属酸化物半導体とともに電荷結合素子(CCD)を使用し得る。このGS/MSシステムは、この検出器を用いて電荷粒子の直接検出および収集を用い得る。検出された電荷粒子は、上記CCDの一部に関連するシフトレジスター中に直接蓄積するイメージ電荷の等価物を形成する。この信号電荷は、従来様式で、CCDを通じて単一の出力増幅器にクロックされ得る。CCDは、全検出器のために唯一の電荷−電圧変換増幅器のみを用いるので、検出器アレイ中の個々の要素の信号ゲインおよびオフセット変動は最小にされる。
【0016】
Mattauch−Herzog検出器アレイは、ファラデーカップ検出器アレイ、ストリップ電荷検出器、または別の型の前述の検出器から構成され得、磁石の出口端部に配置され得、これは、一般に、上記デバイスの焦点面と同一平面にあるように設計される。
【0017】
ファラデーカップ検出器アレイ(FCDA)は、深反応性イオンエッチング(DRIE)によって作製され得る。ストリップ電荷検出器(SCD)は、蒸着によって作製され得る。能動要素(FCDAまたはSCD)を備えたダイが、通常、レーザー切断または鋸で切るような従来の技法でウェハーから切り出される。
【0018】
このFCDAまたはSCDダイは、磁石の前に置かれ、そしてマルチプレクサおよび増幅器ユニットに電気的に接続され、これは、「ファラデーカップ検出器アレイ」−「入力/出力」−「プリント回路板」(FCDA−I/O−PCB)と呼ばれ、上記検出器要素で収集された電荷を読み出す。
【0019】
質量分析計およびガスクロマトグラフ/質量分析計の技術の主要な利点を示す特許は、特許文献3、4、5、6、7、8、9、および10である。また米国特許出願第10/811,576号号、および米国特許出願第10/860,776号がある。
【特許文献1】米国特許第5,801,380号明細書
【特許文献2】米国特許第6,576,899号明細書
【特許文献3】米国特許第5,317,151号明細書
【特許文献4】米国特許第5,801,380号明細書
【特許文献5】米国特許第6,046,451号明細書
【特許文献6】米国特許第6,182,831号明細書
【特許文献7】米国特許第6,191,419号明細書
【特許文献8】米国特許第6,403,956号明細書
【特許文献9】米国特許第6,576,899号明細書
【特許文献10】米国特許第6,847,036号明細書
【非特許文献1】J.Mattauch、Ergebnisse der exakten Naturwissenschaften、19巻、170〜236頁、1940
【非特許文献2】A.A.Scheidemann、R.B.Darling、F.J.Schumacher、およびA.Isakarov、Tech.Digest of the 14th Int.Forum on Process Analytical Chem.(IFPAC−2000)、Lake Las Vegas、Nevada、1月23〜26日、2000、アブストラクト1−067
【非特許文献3】R.B.Darling、A.A.Scheidemann、K.N.Bhat、およびT.−C.Chen.、Proc.of the 14th IEEE Int.Conf.on Micro Electro Mechanical Systems(MEMS−2001)、Interlaken、Switzerland、1月21〜25日、2001、90〜93頁
【非特許文献4】Nier、D.J.Schlutter Rev.Sci.Instrum.56(2)、214〜219頁、1985
【非特許文献5】「Fundamentals of Focal Plane Detector cs」K.Birkinshaw Jrnl.of Mass Spectrometry、32巻、795〜806(1997)
【非特許文献6】T.W.Burgoyneら、J.Am.Soc.Mass Spectrum 8、307〜318頁、1997
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0020】
(発明の簡単な要旨)
1つの局面では、質量分析計の焦点面検出器アセンブリは、この分析計の焦点面を横切るイオンを検出するような形態のイオン検出器、およびこの焦点面に平行な平面に横たわり、そしてイオンが上記イオン検出器と接触する前にメッシュを通過してこの質量分析計の磁石を出るように位置決めされた電気伝導性のメッシュを備える。このメッシュは、回路接地に対して低電圧電位で維持される。上記メッシュは、上記磁石に直接取り付けられ得るか、またはある程度の距離だけ離れて位置決めされ得る。
【0021】

上記イオン検出器は、マイクロチャネルプレート電子増倍管、および第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管から発せられる電子を検出するように位置決めされ、かつそのような形態にある検出器アレイを含む。磁石を通過するイオンは、上記電子倍増管の第1の面上の負電位によって生成された高負電圧場から上記メッシュによって遮蔽される。
【0022】
本発明の別の局面によれば、上記電子倍増管の第1の面は、かなりより低いすなわち、回路接地にかなりより近い電圧レベルで維持され、それ故、負の場の形成を避け、そしてメッシュの必要性をなくする。
【0023】
上記検出器アレイは、ファラデーカップ検出器アレイ、ストリップ電荷検出器アレイ、またはCCD検出器アレイのような任意の適切なデバイスを含み得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
図面において、同一の参照番号は、類似の要素または作用を識別する。図面中の要素のサイズおよび相対的位置は、必ずしもスケール通りではない。例えば、種々の要素の形状および角度は、スケール通りには描写されず、そしてこれら要素のいくつかは、図面の見易さを改善するために任意に拡大され、そして位置決めされている。さらに、描写されるようなこれら要素の特定の形状は、特定の要素の実際の形状に関する任意の情報を伝えることは意図されず、そして図面における認識の容易さのためにのみ選択されている。
【0025】
(発明の詳細な説明)
以下の説明では、特定の詳細な説明は、本発明の種々の実施形態の完全な理解を提供するために提示される。しかし、当業者は、実施形態がこれらの詳細なくして実施され得ることを理解する。その他の例では、コンピューター、マイクロプロセッサー、メモリーなどのような、質量分析計にともなう周知の構造は、例示の実施形態の不必要なあいまいにする記載を避けるために詳細には示されないか、または記載されていない。
【0026】
文脈がそうでないことを要求しなければ、以下の明細書および請求項を通じて、用語「包含する(comprise)」、ならびに「含む(comprises)」および「備える(comprising)」のようなその類似語は、開かれた、包括的な意味、すなわち、「含むがそれに制限されない」として解釈されるべきである。
【0027】
図1は、従来の二重焦点質量分析計10を示す。質量分析計10は、イオナイザー14、シャントおよびアパーチャ16、静電エネルギー分析器18、磁石20、および焦点面セクション22を備える。
【0028】
操作において、ガス状または気化物質がイオナイザー14中に導入され、そこで、それは、電子によって衝突され、それ故、イオンを生成し、それは、シャントおよびアパーチャセクション16によって集束され、イオンビーム24を生成する。これらイオンの経路は、静電エネルギー分析器18により、それらの電気電荷に従って調節され、そして磁石20中の電荷/質量比に従って分離される。磁石20を出るイオンは、それらの電荷/質量比、静電エネルギー分析器18によって補償された電気的性質に従って空間的に分離および分配される。エネルギー分析器18および磁石20の物理学は、選択された範囲の比率内の任意の電荷質量比のイオンが、共通面P中で最大解像度の点に到達するように選択される。この平面Pは、質量分析計の焦点面と称される。
【0029】
本明細書の背景のセクションでより詳細に記載されるように、この焦点面セクション22は、この焦点面Pを横切るイオンの位置、およびその上の任意の所定の点で平面Pを横切るイオンの相対量を検出および記録するような形態の、センサー、増幅器、およびプロセッサーを含む。従って、この焦点面セクション22のセンサーは、焦点面Pを横切る個々のイオン、およびこの面Pの共通点で横切るイオンの大きな質量に感受性であることが所望される。さらに、解像度は、異なるが非常に類似している質量電荷比を有するイオン間の鑑別を可能にするために重要である。
【0030】
図2を参照して、1つの例示の実施形態による焦点面検出器アセンブリ100が示される。検出器アセンブリ100は、伝導性メッシュ102、マイクロチャネルプレート(MCP)104、ストリップ電荷検出器アレイ(SCD)106、絶縁体108、シリコン基板110、およびアセンブリマウント112を含む。この検出器アセンブリ100は、図1に描写されるもののように、メッシュ102が、質量分析計の焦点面Pと同一平面上にあるような形態で、かつ位置決めされる。
【0031】
SCD106および絶縁体108は、半導体基板110上に公知の半導体製造技法を用いて形成される。このSCD106は、論理回路、プロセッサー、メモリーなどに連結された複数の検出器電極を備える。
【0032】
マイクロチャネルプレート104は、第1の面118から第2の面120まで通過する複数のキャピラリー管116を含む。この第2の面120は、図2に示されるように、第1の面118と対向され得る。このMCP104の第1の面118および第2の面120は、各々、電気電荷を受容するような形態の伝導層を含む。
【0033】
用語「第1の面」は、本明細書では、イオンの入来するストリームに面するデバイスの面または側面を一般にいうために用いられ、そして「第2の面」は、この第1の面とは反対の面または側面をいうために用いられる。
【0034】
操作において、上記MCP104の第1の面は、第2の面120に対して負電圧電位で維持される。例えば、第1の面118は、−1400ボルトの電圧電位を有し得、その一方、第2の面120は、−500ボルトの電圧電位を有し、この第1の面118から第2の面120まで900ボルトの電圧差を生じる。イオンがこのMCP104の第1の面118を打つとき、それは、管116の1つに入り、そして管116の側壁を衝撃する。このイオンの衝撃は、多くの電子がこの側壁から発するようにする。
【0035】
第2の面120の第1の面118に対する正電荷のため、管116の側壁から発射された電子は、第2の面120に向かって引かれる。電子が管116の下に移動するとき、電子は、次いで、各々側壁を打ち、それからさらなる電子が発射されるようにする。このプロセスは、電子の雲が、MCP104の第2の面で管116を出るまで継続する。管116を出る電子は、MCP104とストリップ電荷検出器アレイ106との間の空間中に支出される。このストリップ電荷検出器アレイ106の電極114を打つ電子114は、個々の電極114中に電流を誘導し、これは、検出回路によって検出される。電子は、MCP104の第2の面120から外方にすべての方向で支出されるので、MCP104の第2の面とストリップ電荷検出器アレイ106との間の空間は、解像度を維持するために、可能な限りともに緊密に維持されることが所望される。
【0036】
1つの実施形態によれば、このMCP104は、第1の面118から第2の面120まで、500ボルトより大きい電圧差異を有する。
【0037】
再び図1を参照して、イオン24のストリームは、焦点面Pに対して鋭い角度で磁石20に入ることが観察される。イオナイザー14中でサンプルをイオン化するプロセスは、このサンプルの分子から1つ以上の電子を除去することを含む。従って、上記イオンビーム24中のイオンは、正に電荷される。イオンが磁石20に入るとき、磁力は、それらの個々の質量/重量比に従って、個々のイオンの経路を曲げる。しかし、MCP104の第1の面118における高負電圧は、磁石20中の正に電荷したイオンに誘引的である電場を生成する。従って、これらイオンの経路は、MCP104の表面上の負電荷によって所望されずに歪められ得る。
【0038】
上記検出器アレイ100が、焦点面Pで適正に位置決めされるとき、メッシュ102が、MCP104と磁石20の背面との間に位置決めされ、そして低電位電圧で提供される。例えば、メッシュ102は、回路接地に電気的に連結され得るか、または100ボルト未満の電圧で維持され得る。このメッシュ102は、MCP104の強力な負電場をブロックするために供され、その電場が、イオンが焦点面Pに接近するとき、イオンの経路に影響することを防ぐ。電場をブロックする際のメッシュ102の有効性は、メッシュ102中の開口部のサイズに反比例する。その一方、メッシュの材料に実際に接触するイオンはMCPと接触するようには通過しないので、メッシュ102がイオンに対して実質的に透明であることが所望される。これらの制約があるので、80%または90%を超える開口面積を有する非常に微細なメッシュ102が好ましい。このメッシュ102は、0.5ミリメートル未満の厚みを有し得る。
【0039】
ここで、図3を参照して、図1に示される磁石20と同様に磁石122がそれに取り付けられたメッシュ102とともに提供される。図3の実施形態では、メッシュ102および磁石122は、接地電位で維持される。その他の実施形態では、メッシュ102は、磁石122から分離され得、そして異なる電位で維持されるが、メッシュ102と磁石122との間の電圧差異は最小であることが好ましい。例えば、1つの実施形態によれば、このメッシュ102は、磁石122の電位に対して500ボルト未満で維持される。別の実施形態によれば、このメッシュ102は、100ボルト、絶対値未満で維持される。
【0040】
用語「絶対値」は、本明細書では、極性への参照なくして電圧電位をいうために用いられる。
【0041】
図4および5を参照して、焦点面検出器アセンブリ130が、別の例示の実施形態に従って示される。この検出器アセンブリ130は、第1の電極、第2の電極、第3の電極および第4の電極134〜137を備え、第1のMCP138および第2のMCP140、絶縁スペーサー142、144、検出器マウント146、およびアセンブリホルダー132を備える。
【0042】
このアセンブリ130は、図5に概略が示される。このアセンブリ130は、アセンブリホルダー132によって支持されるベースに取り付けられるような形態である。ファスナー(図示せず)が、アセンブリホルダー132に検出器マウント146を付勢し、それらのその他の構成要素を間に挟持する。先に図2のMCP104を参照して説明したように、MCPは、電子カスケードを増幅する。このアセンブリ130の場合には、第1のMCP138は、焦点面を通過するイオンを受容し、そして応答で電子のカスケードを生成するような形態である。第2のMCP140は、第1のMCP138から電子を受容し、そしてイオンのカスケードを増幅し、そしてストリップ電荷検出器アレイ106により強い信号を提供する。第1の電極、第2の電極、第3の電極および第4の電極134〜137は、各々、個々のMCPの第1の面および第2の面にエネルギーを与えるためにターミナル148を経由して電圧電荷が提供される。第1の絶縁スペーサー142および第2のスペーサー144は、アセンブリ130の構成要素を電気的に絶縁するために提供される。アセンブリホルダー132もまた、非伝導性であり得、検出器アセンブリ130を、メッシュ102およびそれが採用される質量分析計のその他の構成要素から絶縁するか、または別個の絶縁体を含み得る。
【0043】
1つの実施形態によれば、各MCP138、140の第1の面を第2の面に横切る電圧差異は、約500〜900ボルトの範囲であり、そして個々の電極134〜137で提供される。さらに、第2の電極135と第3の電極136との間の電圧差異はゼロに等しいがまたはゼロより大きい。
【0044】
このアセンブリの構成要素は、このアセンブリの解像度を最大にするために、電気接触なくして可能な限りともに緊密に間隔を置かれ得る。例えば、1つの実施形態によれば、メッシュ102は、焦点面Pに直接、またはその1ミリメートル内に配置される。第1のMCP138の第1の面139は、メッシュ102の2ミリメートル内に位置決めされ得、そして好ましくは0.5ミリメートル内である。本発明の実施形態によれば、第2のMCP140の第1の面145は、第1のMCP138の第2の面141の2ミリメートル内に位置決めされる。そして好ましくは0.5ミリートル以内である。
【0045】
1つの実施形態によれば、第1のMCP138の第1の面139は、電場が生成され、それによって、磁石122の作動を妨害するに十分な強度を有さないように、比較的低い電圧レベルで維持される。例えば、この第1のMCP138の第1の面139は、100ボルト絶対値未満の電位を有し得る。このアセンブリのその他の構成要素の電圧レベルは、上記で概説したような所望の電圧差異を維持するよう選択される。この実施形態によれば、メッシュ102は必要ではない。なぜなら、感知し得る電場がないからである。
【0046】
ここで図6を参照して、別の実施形態が示される。この実施形態では、焦点面検出器アセンブリ150が提供される。図6のアセンブリ150と図4および5のアセンブリ130との間の主な差異は、アセンブリ150が単一のMCP138のみを有するとして示される点にある。その他の局面では、アセンブリ150と130とは極めて類似している。図6はまた、質量分析計160の種々の構成要素を受容する形態のベースプレート152を示す。磁石122は、ベースプレート152上に位置決めされて示され、そしてメッシュ102は、分析計160の焦点面Pに位置決めされて示される。ファスナー154は、検出器マウント146およびアセンブリホルダー132を、線Fに沿ってベースプレート152に固定する位置で示される。図4および5のアセンブリ130は、類似の様式でベースプレートに取り付けられる類似の形態であることが認識される。
【0047】
図6に示されるデバイスでは、焦点面Pは、磁石122の面と同一平面にある。その他の実施形態では、焦点面Pは、特定距離だけ磁石122から分離され得る。例えば、1つの実施形態によれば、分析計システムは、焦点面が磁石の背面から間隔を置かれ、メッシュ102が焦点面と磁石の背面との間にあり、そしてMCPの第1の面から小距離分離され、その一方、MCPの第1の面は、焦点面に正確に位置決めされるような形態である。
【0048】
メッシュ102は、磁石122の背面に取り付けられるとして説明されているが、別の実施形態によれば、メッシュ102は、アセンブリホルダー132に、このアセンブリホルダー132がメッシュと第1の電極134との間に絶縁体を形成するように取り付けられる。代替の実施形態によれば、メッシュ102は、アセンブリホルダー132と第1の電極134との間に位置決めされ、この場合、別の絶縁体が、メッシュ102と第1の電極134との間に提供される。
【0049】
本発明を、二重焦点質量分析計を、そしてストリップ電荷検出器アレイを参照して説明した。これらの実施形態は、例示のみのために説明され、そして本発明の範囲を制限しない。例えば、この検出器アレイは、ファラデーカップ検出器アレイまたはCCDタイプ検出器アレイを含み得る。本発明の実施形態によれば、上記検出器アセンブリは、直接電荷測定デバイスを含み得る。
【0050】
本明細書で言及され、そして/または出願データシートで列挙される、すべての上記米国特許、米国特許出願公報、米国特許出願、外国特許、外国特許出願および非特許刊行物は、制限されずに、米国仮特許出願第60/557,920号;米国仮特許出願第60//577,969号;米国仮特許出願第60/550,663号;および米国仮特許出願第60/550,664号;米国特許第5,801,380号;米国非仮特許出願第10/811,576号;米国非仮特許出願第10/860,776号;米国非仮特許出願第09/744,360号;米国特許第6,576,899号;米国特許第5,317,151号、米国特許第5,801,380号、米国特許第6,182,831号、米国特許第6,191,419号、米国特許第6,403,956号;および米国特許第6,046,451号を含み、それらの全体が参考として本明細書中に援用される。
【0051】
さらに、J.Mattauchにより公開された事項、Ergebnisse der exakten Naturwissenschaften、第9巻、170〜236頁、1940;「焦点面検出器csの基礎」K.Birkinshaw Jrnl.of Mass Spectrometry、32巻、795〜806(1997);A.A.Scheidemann、R.B.Darling、F.J.Schumacher、およびA.Isakarov、Tech.Digest of the 14th Int.Forum on Process Analytical Chem.(IFPAC−2000)Lake Las Vegas、Nevada、1月23〜26日、2000、要約1〜067;R.B.Darling、A.A.Scheidermann、K.N.Bhat、およびT.−C.Chen.、Proc.of the 14th IEEE Int.Conf.on Micro Electro Mechanical Systems(MEMS−2001)、Interlaken、Switzerland、1月21〜25日、2001、90〜93頁;Nier、D.J.Schlutter Rev.Sci.Instrum.56(2)、214〜219頁、1985;およびT.W.Burgoyneら、J.Am.Soc.Mass Spectrum 8、307〜318頁、1997はそれらの全体が参考として援用される。
【0052】
前述から、本発明の詳細な実施形態が例示の目的のために本明細書中に説明されているが、種々の改変が本発明の思想および範囲から逸脱することなくなされ得ることが認識される。従って、本発明は、添付の請求項によることを除いて制限されない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】図1は、公知の技術による二重焦点質量分析計の概略図である。
【図2】図2は、1つの例示の実施形態による焦点面検出器の概略図である。
【図3】図3は、1つの例示の実施形態による、その上に位置決めされたメッシュを備えた質量分析計の磁石の等角図である。
【図4】図4は、別の例示の実施形態による焦点面検出器アレイの分解等角図である。
【図5】図5は、図4の焦点面検出器の概略図である。
【図6】図6は、さらなる例示の実施形態による焦点面検出器アレイの部分的に分解した等角図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計の焦点面検出器アセンブリであって:
該質量分析計の焦点面に平行な第1の平面にある第1の面を有するイオン検出器;および
該質量分析計の焦点面に平行な第2の平面にあり、そして第1の電圧電位を有する電気伝導性メッシュであって、該質量分析計の磁石を出るイオンが、該イオン検出器に接触する前に該メッシュを通過するよう配置されている、メッシュ、を備える、アセンブリ。
【請求項2】
前記第2の平面が、前記焦点面と同一平面にある、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項3】
前記第2の平面が、前記焦点面から1ミリメートル未満だけ分離されている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項4】
前記第1の平面および第2の平面が、2ミリメートル未満だけ分離されている、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項5】
前記メッシュが、イオンに対し80%を超える透明度を有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項6】
前記メッシュが前記磁石の面の上に取り付けられ、そしてそれと電気的に連続している、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項7】
前記第1の電圧電位が、約100ボルト絶対値以下である、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項8】
前記磁石の面が、第2の電圧電位を有する、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項9】
前記第1の電圧電位と第2の電圧電位との差異が、500ボルトより少ない、請求項8に記載のアセンブリ。
【請求項10】
前記イオン検出器が:
第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管であって、該第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管の第1の面が前記イオン検出器の第1の面を規定する第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管;および
該第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管の第2の面から発する電子を検出するように位置決めされ、かつ形態とされる検出器アレイ、を備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項11】
前記検出器アレイが、ファラデーカップ検出器アレイ、ストリップ電荷検出器アレイ、およびCCD検出器アレイの中から選択される、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項12】
前記第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管の第1の面が、前記第1の電圧電位に対して負の電圧電位を有する、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項13】
前記マイクロチャネルプレート電子増倍管の第1の面が、その第2の面に対して負の電圧電位を有する、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項14】
前記マイクロチャネルプレート電子増倍管の第1の面が、その第2の面に対して−500ボルトより大きい電圧電位を有する、請求項12に記載のアセンブリ。
【請求項15】
前記イオン検出器が:
前記第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管と前記検出器アレトとの間に位置決めされる少なくとも第2のマイクロチャネルプレート電子増倍管を備える、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項16】
前記第1および第2のマイクロチャネルプレート電子増倍管が、絶縁体によって分離される、請求項15に記載のアセンブリ。
【請求項17】
前記第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管の第2の面および前記第2のマイクロチャネルプレート電子増倍管の第1の面が、2ミリメートル未満だけ分離される、請求項15に記載のアセンブリ。
【請求項18】
前記第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管の第2の面および前記第2のマイクロチャネルプレート電子増倍管の第1の面が、0.5ミリメートル未満だけ分離される、請求項15に記載のアセンブリ。
【請求項19】
前記イオン検出器が:前記第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管および前記検出器アレイが連結されるアセンブリホルダーを備える、請求項10に記載のアセンブリ。
【請求項20】
前記メッシュが、前記アセンブリホルダーに連結される、請求項19に記載のアセンブリ。
【請求項21】
前記イオン検出器が:直接電荷測定デバイスを備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項22】
前記直接電荷測定デバイスが、CCD型デバイスまたはファラデーカップ検出器アレイの1つを備える、請求項21に記載のアセンブリ。
【請求項23】
質量分析計の焦点面検出器アセンブリであって:
第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管であって、その第1の面が、該質量分析計の焦点面に平行な第1の平面にあり、そして該質量分析計の磁石に面し、該磁石に対して100ボルト未満の電圧差異を有する第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管;および
該第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管の第2の面から発する電子を検出するように位置決めされ、かつ形態にある検出器アレイ、を備える、アセンブリ。
【請求項24】
さらに:
少なくとも、第1のマイクロチャネルプレート電子増倍管および前記検出器アレイとの間に位置決めされる第2のマイクロチャネルプレート電子増倍管を備える、請求項1に記載のアセンブリ。
【請求項25】
質量分析計であって:
焦点合わせされたストリームでイオンを発するような形態であるイオン供給源;
該イオンのストリームのイオンの少なくとも一部分を受容するような形態である焦点面検出器;および
該焦点面検出器における電圧電位から、該イオンが該分析計の焦点面に到達するまで該ストリームのイオンを遮蔽するための遮蔽手段、を備える、質量分析計。
【請求項26】
前記遮蔽手段が、前記質量分析計の焦点面に平行な平面中にある電気伝導性メッシュを備える、請求項25に記載の質量分析計。
【請求項27】
前記メッシュが、前記質量分析計の回路接地に対し100ボルト未満の電圧電位を有する、請求項26に記載の質量分析計。
【請求項28】
前記焦点面検出器が:
少なくとも1つのマイクロチャネルプレート電子増倍管であって、その第1の面が、前記質量分析計の焦点面に平行な平面中にあるマイクロチャネルプレート電子増倍管;および
該マイクロチャネルプレート電子増倍管の第2の面から発する電子を検出するように位置決めされ、かつ形態である検出器アレイを備える、請求項25に記載の質量分析計。
【請求項29】
前記遮蔽手段が、前記マイクロチャネルプレート電子増倍管の第1の面を構成し、該第1の面が、前記質量分析計の回路接地に対して100ボルト未満の電圧電位を有する、請求項28に記載の質量分析計。
【請求項30】
イオンのビームを生成する工程;
個々のイオンの電荷/質量比に従って該ビームのイオンを曲げる工程;
該ビームのイオンに影響し得る電場を生成する工程;および
該電場から該ビームのイオンを遮蔽する工程、を包含する、方法。
【請求項31】
前記遮蔽する工程が、遮蔽されるイオンと前記電場の供給源との間に置かれたメッシュに低電圧電荷を与えることを含む、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記低電圧電荷が、回路接地に等しい、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
前記電場の供給源が、マイクロチャネルプレート電子増倍管である、請求項30に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−527601(P2007−527601A)
【公表日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−502023(P2007−502023)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【国際出願番号】PCT/US2005/007128
【国際公開番号】WO2005/088672
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(505469757)オイ コーポレイション (3)
【Fターム(参考)】