説明

質量分析計及び質量分析方法

【課題】 従来のMS/MS分析方法では、検出感度とスループットの両立ができないという課題を有していた。
【解決手段】 特定の質量範囲のイオンを排出するイオントラップと、イオントラップから排出されたイオンを解離させる衝突解離部と、衝突解離部から排出されたイオンの質量分析を行う質量分析部と、各イオンの測定条件を格納したリストを備えた制御部を有した質量分析装置によって、イオントラップに導入、蓄積されたイオンを質量選択的に共鳴排出する。スキャン動作は特定の前駆体イオンを衝突解離部方向に排出する動作と、排出しない動作の繰り返しからなり、リスト情報を参照して各部の出力電圧を制御することで、各イオンを最適な測定条件で測定することができ、高スループットかつ高感度なMS/MS測定が可能な質量分析装置が実現する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオントラップを用いた質量分析計及びその動作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
MS/MS分析はフラグメントイオンのパターンから前駆体イオンの構造情報が得られるため分子種の同定に有効である。また夾雑物などに起因するノイズの影響を避けることができるので定量分析にも広く用いられている。従来これらの分析がどのように行われてきたのか以下に説明する。
【0003】
イオントラップでMS/MS分析を行う方法について特許文献1などに記載されている。試料イオンをイオントラップに導入しトラップする。次にトラップしたイオンの内、特定の前駆体イオン以外の全てのイオンをトラップ外に排除する。続いてトラップ中に残った前駆体イオンを希ガスとの衝突解離などにより解離させる。最後に前駆体イオンの解離で生じたフラグメントイオンを質量選択的に排出する。
【0004】
二つの四重極質量フィルターの間に衝突解離部を挿入した構成の質量分析装置でMS/MS分析を行う方法について非特許文献1などに記載されている。一段目の四重極質量フィルターで質量分析装置に導入したイオンのうち特定の前駆体イオンのみ選択的に透過させ他のイオンを全て排除する。次に衝突解離部で前駆体イオンを希ガスとの衝突解離などにより解離させる。二段目の四重極質量フィルターで衝突解離部で生じたフラグメントイオンの質量分析を行う。
【0005】
四重極質量フィルターと飛行時間型質量分析器の間に衝突解離部を挿入した構成の質量分析装置でMS/MS分析を行う方法について非特許文献2に記載されている。四重極質量フィルターで質量分析装置に導入したイオンのうち特定の前駆体イオンのみ選択的に透過させ他のイオンを全て排除する。次に衝突解離部で前駆体イオンを希ガスとの衝突解離などにより解離させる。飛行時間型質量分析器で衝突解離部で生じたフラグメントイオンの質量分析を行う。この構成ではフラグメントイオンの質量分析を四重極質量フィルターで行う構成に比べて高分解能にフラグメントイオンの質量分析を行うことが出来るが、イオンの利用効率は低下する。
【0006】
二つの飛行時間型質量分析器の間に衝突解離部を挿入した構成の質量分析装置でMS/MS分析を行う方法について特許文献2に記載されている。一段目の飛行時間型質量分析器で質量分析装置に導入したイオンの質量分析を行い、特定の前駆体イオンのみを衝突解離部に導入し他のイオンを全て排除する。次に衝突解離部で前駆体イオンを希ガスとの衝突解離などにより解離させる。最後に二段目の飛行時間型質量分析器で衝突解離部で生じたフラグメントイオンの質量分析を行う。この構成では前駆体イオンの選択を四重極質量フィルターで行う構成に比べて前駆体イオンを高分解能で選択することができる。
【0007】
イオントラップと飛行時間型質量分析器またはイオントラップと四重極質量フィルターとの間に衝突解離部を挿入した構成の質量分析装置でMS/MS分析の一種であるプレカーサースキャンやニュートラルロススキャンを行う方法について特許文献3に記載されている。質量分析装置に導入したイオンを一旦イオントラップにトラップする。トラップしたイオンをイオントラップから順次排出して衝突解離部に導入する。次に衝突解離部で前駆体イオンを希ガスとの衝突解離などにより解離させる。続いて飛行時間型質量分析器または四重極質量フィルターで衝突解離部で生じたフラグメントイオンの質量分析を行う。この構成では飛行時間型質量分析器や四重極質量フィルターで前駆体イオンを選択する場合に比べてプレカーサーイオンスキャンやニュートラルロススキャンのイオン利用効率が高くなる。
【0008】
【特許文献1】米国特許7078685
【特許文献2】米国特許5464985
【特許文献3】米国特許6504148
【非特許文献1】Biomedical mass spectrometry 誌 第8巻 397ページ (1981年)
【非特許文献2】Rapid Communications in Mass Spectrometry誌 第10巻 889-896ページ(1996年)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は高感度かつ高スループットなMS/MS測定を可能にすることである。
【0010】
前記従来例(特許文献1、2、非特許文献1、2)ではいずれも前駆体イオンを選択する工程で特定の前駆体イオン以外の全てのイオンを排除する。このためイオンの利用効率が低いという共通の課題を有していた。
【0011】
前記従来例(特許文献3)ではイオントラップにトラップされたイオンを一定のスキャン速度で排出するため測定対象となる前駆体イオンが存在しないm/z領域では有用な情報が得られない。一方、スキャン速度を上げるとイオントラップからのイオン排出効率と質量分解能が低下する。このため検出感度とスループットの両立ができないという課題を有していた。またイオンの種類により衝突解離部への最適入射エネルギーが異なるがこのエネルギーの制御に関する記述、示唆はない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の質量分析装置は、特定の質量範囲のイオンを排出するイオントラップと、イオントラップから排出されたイオンを解離させる衝突解離部と、衝突解離部から排出されたイオンの質量分析を行う質量分析部を有しており、イオントラップに導入し、蓄積されたイオンを質量選択的に共鳴排出するが、本方式のスキャン動作では特定の前駆体イオンを衝突解離部方向に排出する動作と、排出しない動作の繰り返しからなる。イオンの排出の制御は、イオントラップのイオン排出側に設けられた電極に印加する電圧の値を変化させることで行う。
【0013】
イオントラップのイオン排出側に設けられた電極として、例えば、ワイヤ電極や後部端電極を用いることができる。
【0014】
また、本発明の質量分析装置の制御部は、測定対象のフラグメントイオンおよびその前駆体イオンのm/z、衝突解離部への入射エネルギー、衝突解離部の羽根電極に印加するDC電圧などの情報で構成されるリストを備えており、リストに含まれる特定の前駆体イオンをm/zが小さいイオンから順に排出し、リスト情報を参照して各部の出力電圧を制御することで、各イオンを最適な測定条件で測定することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、高感度でかつ高スループットのMS/MS測定が可能となる。
【実施例1】
【0016】
図1は、本方式の質量分析装置の構成図である。なお、ポンプ等の排気装置およびバッファーガス等の導入機構は簡略化のために省いてある。また、実施例1−4ではDC電圧印加の一例として正イオンを測定する場合のDC電圧の値を示している。負イオンを測定する場合には全てのDC電圧の符号を反転させればよい。またイオントラップ部、衝突解離部にはDCのオフセット電圧(0-500 V)が印加されることもあるが、実施例1−4では全ての電圧について実際に印加する電圧からオフセット電圧を差し引いた値をしめしている。
【0017】
エレクトロスプレーイオン源、大気圧化学イオン源、大気圧光イオン源、大気圧マトリックス支援レーザー脱離イオン源、マトリックス支援レーザー脱離イオン源などのイオン源で生成されたイオンはイオントラップ部に導入される。
【0018】
イオントラップ部は、前部端電極2、後部端電極3、及び四重極ロッド電極4、および四重極ロッド電極の間隙に挿入された羽根電極5、前ワイヤ電極6、後ワイヤ電極7より構成される。四重極ロッド電極4にはRF電源で生成した交互に位相の反転したRF電圧が印加される。このRF電圧の典型的な電圧振幅は数100−5000V、周波数は500 kHz-2 MHz程度である。イオントラップ部にはバッファーガスが導入され10-4Torr〜10-2Torr(1.3×10-2Pa〜1.3Pa)程度に維持されている。尚、ここでは説明上、四重極ロッド電極を用いて説明しているが、四重極に限られず、多重極、つまり、6本、8本等のロッド電極を用いてもよい。
【0019】
測定は3つのシーケンスで行われる。トラップ時間には、トラップRF電圧の振幅値を100〜1000V程度に設定する。他の電極への印加電圧の一例として、前部端電極2を20V、羽根電極5を0V、トラップ電極6を20V、引出し電極7を20V、後部端電極3を20V程度に設定する。四重極電界の径方向にはトラップRF電圧により擬ポテンシャルが、四重極電界の中心軸方向にはDCポテンシャルが形成されるため、イオントラップ部に導入されたイオンは、前部側端電極2、四重極ロッド電極4、羽根電極5、トラップ電極6に挟まれた領域にトラップされる。トラップ時間の長さは1ms〜1000ms程度でイオントラップ部へのイオン導入量に大きく依存する。
【0020】
質量スキャン時間には、トラップRF電圧振幅を変化させることでイオンを質量選択的に共鳴排出する。質量スキャン時間の電圧印加の1例を示す。羽根電極5の間に補助交流電圧(振幅0.01V〜1V、周波数10kHz - 500kHz)が印加される。またトラップ電極6には3V〜10V程度の電圧が印加される。引き出し電極7に印加するDC電圧の値を変えることでイオンを軸方向に排出させる動作と、排出させない動作を切り替えることができる。質量スキャン時間の電圧の制御方法の詳細については後述する。
【0021】
最後に、排除時間ではすべての電圧を0にして、トラップ外へとすべてのイオンを排出する。排除時間の長さは0.1-1ms程度である。
【0022】
衝突解離部は4本の四重極ロッド電極20、前部端電極21、後部端電極22、羽根電極23により構成される。
【0023】
衝突解離部には窒素などのバッファーガスが導入され圧力は5-20mTorr程度に保たれる。衝突解離部では導入された前駆体イオンがバッファーガスとの衝突により解離してフラグメントイオンが生成する。イオントラップのオフセット電位と多重極ロッド電極20のオフセット電位との電位差を20V〜100V程度に設定することにより効率的に衝突解離を進行することができる。また羽根電極23に0.5-20VのDC電圧を印加することで衝突解離部の中心軸上に軸方向の加速電位が形成される。この加速電位によりイオンを効率良く後部端電極22近辺まで移送することが可能である。解離生成したフラグメントイオンは、四重極質量フィルターへと導入される。
【0024】
四重極質量フィルターは4本の四重極ロッド電極30により構成され、1mTorr以下の圧力に維持される。四重極ロッド電極30にはRF電源で生成した交互に位相の反転したRF電圧、DC電源で生成した交互に位相が反転したDC電圧が印加される。このRF電圧の典型的な電圧振幅は数100 V−数kV、周波数は500 kHz-2 MHz程度、DC電圧の電圧振幅は数10 V-数100 V程度である。四重極質量フィルター内で安定な軌道運動が可能なイオンのm/z範囲はRF電圧振幅とDC電圧振幅に依存している。そのためRF電圧振幅とDC電圧振幅に特定の値を選ぶことでm/z範囲のイオンのみが四重極質量フィルターを透過するように設定することができる。またRF電圧振幅とDC電圧振幅の比を一定に保ちつつDC、RF電圧振幅を掃引することで質量スペクトルを得ることもできる。四重極質量フィルターを透過したイオンは検出器40で検出される。
【0025】
コントローラー50は測定対象のフラグメントイオンおよびその前駆体イオンのm/z、衝突解離部への入射エネルギー、衝突解離部の羽根電極23に印加するDC電圧などの情報で構成されるリストを備えており、これに基づいてイオントラップ部、衝突解離部、四重極質量フィルターの出力電圧を制御する。リストは手動で入力するか、後述する方法により自動的に生成することもできる。
【0026】
本実施例ではリストの情報をもとに各部出力電圧を制御し、少なくとも2つ以上のスキャン速度を切り替えて測定を行うことで高感度かつ高スループットなMS/MS測定が可能となる。以下、各部の具体的な制御方法について説明する。
【0027】
まずイオントラップ部の電圧制御について説明する。本方式におけるトラップRF電圧振幅のスキャンの様子を図2(a)に、そのときの引き出し電極7の電圧を図2(b)に示す。本方式のスキャン動作ではリストに含まれる特定の前駆体イオンを衝突解離部方向に排出するイオン排出動作61と、衝突解離部方向にイオンを排出しない待機動作62の繰り返しからなる。一回のイオン排出動作61の時間は500-5000 μs、待機動作62の時間は200-2000 μs程度である。イオン排出動作61はリストに含まれている前駆体イオンをm/zが小さいイオンから順に排出してリストに含まれるイオンを全て排出するまで繰り返す。以下にイオン排出動作61時、待機動作62時の印加電圧について説明する。
【0028】
イオン排出動作61では引き出し電極の電圧を-10--20V程度に設定して静電排出場を形成する。またトラップRF電圧振幅は排出する前駆体イオンの共鳴励起条件に固定するか、0-1000 Th/s程度のスキャン速度で排出対象の前駆体イオンの共鳴励起条件の前後1 amu程度の領域をスキャンする。スキャンを行う場合には排出対象の前駆体イオン以外のイオンが排出されないようにスキャンする領域を設定する。イオン排出動作61でイオントラップ部から排出された前駆体イオンは衝突解離部に導入される。
【0029】
待機動作62では引き出し電極の電圧をトラップ電極と同電位に設定し、衝突解離部方向にイオンが排出されないようにする。またトラップRF電圧振幅は次のイオン排出動作61で排出する前駆体イオンの共鳴条件付近までスキャンする。このとき図2(a)のように100-107 Th程度の一定の速度でスキャンする代わりに、図3(a)のように二種類以上のスキャン速度を切り替えてスキャンを行う又は、図3(b)のようにトラップRF電圧振幅を一気に変化させてその後電圧が安定するまで一定の電圧振幅に維持することで、待機動作62の時間を短くすることができるので、測定のスループットをさらに高くすることができる。
【0030】
待機動作62中にイオンを衝突解離部に導入しないことで衝突解離部でのイオンの停留を防ぎ、直後のイオン排出動作でのクロストークを避けることができる。
【0031】
次に衝突解離部の動作について説明する。図2(c)に衝突解離部のRF電圧の変化を示す。イオントラップ部がイオン排出動作61をしている時間にはRF電圧をかけて径方向に四重極ポテンシャルを形成し、生成したフラグメントイオンを効率よく透過させる。このとき衝突解離部への入射エネルギーおよび軸上に形成される直流電界の強度はリストを参照して最適値に設定する。これにより高感度でフラグメントイオンを検出することが可能になる。一方、イオントラップ部の待機動作62の間に衝突解離部のRF電圧振幅を0Vに設定することで衝突解離部に残留しているイオンを全て排除する。衝突解離部のRF電圧振幅を0Vに設定する時間は0.5-5 ms程度でよく、待機動作62中の任意のタイミングでよい。衝突解離部に残留しているイオンを全て排除することで直前のイオン排出動作61で衝突解離部に導入した前駆体イオン及びそのフラグメントイオンと直後のイオン排出動作61で導入するイオンの間のクロストークを避けることができる。
【0032】
最後に四重極質量フィルターでは衝突解離部から導入されたフラグメントイオンの内、リストに含まれる測定対象のフラグメントイオンを選択的透過させるように四重極RF電圧振幅と四重極DC電圧を制御する。
【0033】
以上のような制御によって高感度かつ高スループットなMS/MS測定が可能となる。本方式の有効性を以下に説明する。m/z 300-m/z 1300の領域に10種の前駆体イオンが存在すると仮定する。まず本方式で測定を行った場合の所要時間を求める。本方式の測定時間は以下の式(数1)で与えられる。
(数1)

ここでvejはイオン排出動作時のスキャン速度、Sejはイオン排出動作時のスキャン範囲、nは測定する前駆体イオンの数、twは待機時間である。vejを 1000Th/s、Sejを1 Th、twを1 msの条件で測定した場合1回のスキャンにかかる時間は19 msである。一方、前記従来例(特許文献4)でスキャン速度1000 Th/sで測定を行った場合一回のスキャンにかかる時間は1000 msである。したがってこの測定条件での本方式のスループットは従来例(特許文献4)の約50倍である。また前駆体イオン周辺のスキャン速度はいずれの方式でも1000 Th/sであるので質量分解能、イオンの排出効率は同じである。このように本方式では高感度を維持したまま高スループットなMS/MS測定が可能となることが示された。
【0034】
また本方式では手動または自動で各イオンの最適な測定条件を列挙したリストを生成し、測定時にこの最適な測定条件に合わせることで高感度を得ることが出来る。以下に自動的にリストを生成する方法を述べる。まずイオントラップ部において質量スキャンを行いMSスペクトルを測定する。このとき衝突解離部とイオントラップ部のオフセット電圧は小さく(0-5V程度)しイオンが衝突解離を起こしにくい条件に設定する。四重極質量フィルターは四重極DC電圧を0Vに設定してイオンガイドとして動作させるか、イオントラップ部から排出されるm/zのイオンが透過する条件を維持するようにスキャンを行う。得られたMSスペクトルの中からあらかじめ設定した閾値以上の強度のイオン種のm/zを抽出するなどして自動的に前駆体イオンのm/zの情報をリストに追加する。次にそれぞれの前駆体イオンについてMS/MSスペクトルの測定を行い、強度の強いプロダクトイオンのm/zを抽出するなどしてプロダクトイオンのm/zの情報をリストに追加する。このときイオントラップ部は前ワイヤ電極6、後ワイヤ電極7を四重極ロッドのオフセット電位と同電位に設定して四重極質量フィルターとして動作させ標的の前駆体イオンのみを連続的に透過させる。次に各フラグメントイオンについて衝突解離部への入射エネルギー、衝突解離部の羽根電極23に印加するDC電圧などの変数をスキャンしてフラグメントイオンの強度が最大になる値をリストに追加する。
【0035】
本方式ではこのように測定条件を自動で最適化することで高感度を得ることができる。以下に本方式の有効性を示す例をあげる。図4はA, B二種類のイオン信号強度の衝突解離部への入射エネルギー依存性を模式的に示したものである。前記従来例(特許文献4)ではどちらもイオンも同じ条件で測定を行うためaの条件ではBのイオンの感度が低く、bの条件ではAのイオンの感度が低くなる。本方式ではイオンに合わせて最適な測定条件に設定するためAイオンはaの条件、Bのイオンはbの条件で測定することができいずれのイオンも高感度で検出できる。このように本方式では各イオンを最適な測定条件で測定するため従来例(特許文献4)より高感度が得られる。
【実施例2】
【0036】
イオントラップ部の構造を図5に示す。イオントラップ部は前部端電極101、四重極ロッド電極102、後部端電極103により構成される。イオントラップ部以外の装置構成は(実施例1)と同じなので省略する。四重極ロッド電極102にはRF電源で生成した交互に位相の反転したRF電圧が印加される。このRF電圧の典型的な電圧振幅は数100−5000V、周波数は500 kHz-2 MHz程度である。イオントラップ部にはバッファーガスが導入され10-4Torr〜10-2Torr(1.3×10-2Pa〜1.3Pa)程度に維持されている(図示せず)。
【0037】
測定は3つのシーケンスで行われる。トラップ時間には、トラップRF電圧の振幅値を100〜1000V程度に設定する。他の電極への印加電圧の一例として、前部端電極101を20V、後部端電極103を20V程度に設定する。四重極電界の径方向にはトラップRF電圧により擬ポテンシャルが、四重極電界の中心軸方向にはDCポテンシャルが形成されるため、イオントラップ部に導入されたイオンは、前部端電極101、四重極ロッド電極102、後部端電極103に挟まれた領域にトラップされる。質量スキャン時間には、トラップRF電圧振幅を変化させることでイオンを質量選択的に励起する。質量スキャン時間の電圧印加の一例を示す。対向する一対の四重極102(a,b)の間に補助交流電圧(振幅0.01V〜1V、周波数10kHz - 500kHz)が印加される。後部端電極103に印加するDC電圧の値を変えることでイオンを軸方向に排出させる動作と、排出させない動作を切り替えることができる。質量スキャン時間の電圧制御については後述する。
【0038】
最後に、排除時間ではすべての電圧を0にして、トラップ外へとすべてのイオンを排出する。排除時間の長さは0.1-1ms程度である。
【0039】
本実施例ではリストの情報をもとに各部出力電圧を制御し、少なくとも2つ以上のスキャン速度を切り替えて測定を行うことで高感度かつ高スループットなMS/MS測定が可能となる。質量スキャン時間のイオントラップ部の電圧操作以外は実施例1と同じなので省略する。以下、質量スキャン時間のイオントラップ部電圧の具体的な制御方法について説明する。
【0040】
本実施例のスキャン動作時のトラップRF電圧振幅を図6(a)に後部端電極103の電圧を図6(b)に示す。一回のイオン排出時間61は500-5000 μs、待機時間62は200-2000 μs程度である。
【0041】
イオン排出動作61では後部端電極103電圧を0-10V程度に設定して、四重極ロッドのトラップRF電界と後部端電極103の間に形成されるfringing fieldでイオンを排出する。このときトラップRF振幅は排出する前駆体イオンの共鳴励起条件に固定するか、0-1000 Th/s程度のスキャン速度で排出対象の前駆体イオンの共鳴励起条件の前後1 amu程度の領域をスキャンする。スキャンを行う場合には排出対象の前駆体イオン以外のイオンが排出されないようにスキャンする領域を設定する。イオン排出動作61でイオントラップ部から排出されたイオンは衝突解離部に導入される。
【0042】
待機動作62では後部端電極103電圧を10-100V程度に設定して、衝突解離部方向にイオンが排出されないようにする。待機動作62の間にトラップRF電圧振幅を直後のイオン排出動作61で排出する前駆体イオンの共鳴条件付近までスキャンする。待機時間62のスキャン速度は100-107 Th程度で一定の速度でスキャンしてもよいし、二種類以上のスキャン速度を切り替えてスキャンを行ってもよい。またトラップRF電圧振幅を一気に変化させてその後電圧振幅が安定するまで一定の振幅に固定してもよい。
【0043】
実施例2では実施例1に比べて装置の構造が単純になるという利点があるが、イオンの排出効率が実施例1の方が高いため、検出感度は実施例1の方がより高い。
【実施例3】
【0044】
イオントラップ部の構造を図7に示す。羽根電極200、イオントラップ部は前部端電極201、四重極ロッド電極203、後部端電極202により構成される。
羽根電極200は、イオントラップの中心軸上のポテンシャルを最適化するような形状の電極を用いる。例えば羽根電極200は円弧様の窪みを有しており、円弧を持った辺が中心軸を向くように四重極ロッド電極203の間に挿入される。また羽根電極200は中心軸方向に2つに分割されている(200aと200e、200bと200f、200cと200g、200dと200hのことを指す)。イオントラップ部以外の装置構成は(実施例1)と同じなので省略する。四重極ロッド電極203にはRF電源で生成した交互に位相の反転したRF電圧が印加される。このRF電圧の典型的な電圧振幅は数100−5000V、周波数は500 kHz-2 MHz程度である。イオントラップ部にはバッファーガスが導入され0-4Torr〜10-2Torr(1.3×10-2Pa〜1.3Pa)程度に維持されている(図示せず)。尚、ここでは説明上、四重極ロッド電極を用いて説明しているが、四重極に限られず、多重極、つまり、6本、8本等のロッド電極を用いてもよい。
【0045】
測定は3つのシーケンスで行われる。トラップ時間には、トラップRF電圧の振幅値を100〜1000V程度、羽根電極200に印加するDC電圧を10-200 V設定する。他の電極への印加電圧の一例として、前部端電極201を10V、後部端電極202を50V程度に設定する。イオントラップ部の径方向にはトラップRF電圧により擬ポテンシャルが形成される。また中心軸方向には羽根電極200にトラップするイオンと同極性のDC電圧を印加することでイオンを閉じ込める調和DCポテンシャルが形成される。このためイオントラップに導入されたイオンは、四重極ロッド電極203、羽根電極200に挟まれた領域にトラップされる。
【0046】
質量スキャン時間には羽根電極200(a, b, c, d)と 200(e, f, g, h)の間に振幅1-30V、周波数1-100kHz程度の補助交流電圧を印加することでイオンを質量選択的に共鳴排出する。このとき補助交流電圧の位相は中心軸上で同じ位置にある羽根電極200の間(200(a, b, c, d)間と200(e, f, g, h)間)では同位相で中心軸方向に対向する電極(200a,と200e、200bと200f、200cと200g、200dと 200h)の間では逆位相になるようにする。この補助交流電圧の周波数と中心軸方向の共鳴周波数が一致するm/zのイオンのみが質量選択的に軸方向に励起される。このとき後部端電極202に印加するDC電圧の値を変えることで共鳴励起されたイオンを軸方向に排出させる動作と、排出させない動作を切り替えることができる。質量スキャン時間の電圧制御については後述する。
【0047】
最後に、排除時間ではすべての電圧を0にして、トラップ外へとすべてのイオンを排出する。排除時間の長さは0.1-1ms程度である。
【0048】
本実施例ではリストの情報をもとに各部電圧を制御し、少なくとも2つ以上のスキャン速度を切り替えて測定を行うことで高感度かつ高スループットなMS/MS測定が可能となる。質量スキャン時間のイオントラップ部の電圧操作以外は(実施例1)と同じなので省略する。以下、質量スキャン時間のイオントラップ部電圧の具体的な制御方法について説明する。
【0049】
本実施例のスキャン動作時の補充交流電圧周波数を図8(a)に後部端電極202の電圧を図8(b)に示す。一回のイオン排出時間61は500-5000 μs、待機時間62は200-2000 μs程度である。
【0050】
イオン排出動作61では後部端電極202電圧を0-15 V程度に設定してイオンが軸方向に排出できるようにする。また補助交流電圧の周波数は排出対象の前駆体イオンの共鳴励起条件に固定するか、0-1000 Th/s程度のスキャン速度で排出対象の前駆体イオンの共鳴条件の前後1 amu程度の領域をスキャンする。スキャンを行う場合には排出対象の前駆体イオン以外のイオンが排出されてないようにスキャンする領域を設定する必要がある。イオン排出時間61に排出されたイオンは衝突解離部に導入される。
【0051】
待機動作62では後部端電極202電圧を20-50Vに設定し、衝突解離部方向にイオンが排出されないようにする。待機動作62の間に直後のイオン排出動作61で排出するイオンの共鳴条件まで補助交流電圧の周波数を変化させる。
【0052】
実施例3ではイオンを共鳴排出する方向とイオンを共鳴励起する方向が一致しているためイオントラップ部の排出速度が高く、実施例1、実施例2に比べてより高スループットな測定が可能であるが、実施例1、実施例2の方がイオントラップ部の質量分解能が高く、夾雑物の影響を受けにくい。
【実施例4】
【0053】
図9は本方式質量分析器の構成図である。イオントラップ部、衝突解離部までの構造は実施例1と同じであり省略する。またイオントラップ部、衝突解離部の制御も実施例1と同様であり省略する。
【0054】
飛行時間型質量分析器はイオンレンズ300、押し出し電極301、引き出し電極302、反射レンズ303、検出器304からなる。飛行時間型分析部に導入されたイオンは、複数電極より構成されたイオンレンズ300によりイオン収束を行ったあと、押し出し電極301及び引き込み電極に302より構成される飛行時間型質量分析器の加速部へと導入される。加速部電源により押し出し電極301、引き出し電極302の間に数100V−数kVの電圧を印加することにより、イオンはイオン導入方向と直行方向に加速される。直行方向に加速されたイオンはそのまま検出器に到るか、リフレクトロンと呼ばれる反射レンズを経て偏向したあとMCPなどからなる検出器に到達する。加速部の加速開始時間とイオンの検出時間との関係からイオンの質量数が計測可能である。
リストには実施例1の情報に加えて飛行時間質量分析部の加速電圧印加のタイミングの情報を加えてもよい。
【0055】
実施例4ではイオントラップ部からの一回の前駆体イオンの排出でMS/MSスペクトル全体のフラグメントイオンの強度の情報を得ることができる。このため実施例1,2、3に比べて測定対象のフラグメントイオンの数が多い場合でも高いスループットを得ることが出来るが、実施例1,2,3の方がイオン利用効率が高い。
【0056】
また実施例4ではMS/MS測定時の前駆体イオンの質量分解能として飛行時間型質量分析部の質量分解能を用いることが可能である。具体的な方法を以下に述べる。まずイオントラップ部を通常の四重極質量イオンガイドとして動作させm/zを選択せずにイオンを透過させる。また衝突解離部への入射エネルギーを低く設定して前駆体イオンの衝突解離が起こり難い条件にする。以上の条件下で衝突解離部から排出されたイオンを飛行時間質量分析部で分析することで前駆体イオンMSのスペクトルを測定することができる。この前駆体イオンのスペクトルの情報をリストに格納しておく。次にイオントラップ部をスキャンしてMS/MS測定を行う。このとき前駆体イオンの質量分解能はイオントラップ部の質量分解能によって決まる。観測されるプロダクトイオンの強度を前駆体イオンのm/zとプロダクトイオンのm/zについてプロットしたスペクトルを図10aに示す。この図10aの前駆体イオンの質量分解能を、リストに格納されている飛行時間質量分析部で測定した前駆体イオンのMSスペクトルの質量分解能と置き換えてスペクトルを再構築する。再構築したスペクトルを図10bに示す。飛行時間型質量分析計ではイオントラップや四重極質量フィルターなどよりも高い分解能が得られるため前駆体イオンの分解能として飛行時間型質量分析の分解能を用いることでスペクトルの解釈が容易となる。また特に触れなかったが実施例1−3でも同様に質量分析部で前駆体イオンのm/zを測定し質量分析部の分解能を前駆体イオンの質量分解能として用いることができる。
【0057】
本方式で用いるイオントラップ部はトラップしたイオンを質量選択的に排出可能なものであれば実施例1−4で説明した以外のイオントラップでもよい。また実施例1−4では衝突解離部に四重極子を用いたが8本、16本など他の多重極子を用いてもよい。また質量分析部は実施例で示したもの以外でもFT-ICRなど質量選別してイオンの強度を測定できる質量分析装置ならよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本方式の実施例1の構成図。
【図2】実施例1の質量スキャン時の電圧制御を説明する図。
【図3】実施例1の質量スキャン時の電圧制御を説明する図。
【図4】実施例1の効果を説明する図。
【図5】本方式の実施例2の構成図。
【図6】実施例2の質量スキャン時の電圧制御を説明する図。
【図7】本方式の実施例3の構成図。
【図8】実施例3の質量スキャン時の電圧制御を説明する図。
【図9】本方式の実施例4の構成図。
【図10】本方式の実施例4の効果の説明図。
【符号の説明】
【0059】
2…前部端電極、3…後部端電極、4…四重極ロッド電極、5…羽根電極、6…前ワイヤ電極、7…後ワイヤ電極、20…多重極ロッド電極、21…前部端電極、22…後部端電極、23…羽根電極、30…四重極ロッド電極、40…検出器、61…イオン排出動作、62…待機動作、101…前部端電極、103…後部端電極、102…四重極ロッド電極、200…羽根電極、201…前部端電極、202…後部端電極、203…四重極ロッド電極、300…イオンレンズ、301…押し出し電極、302…引き出し電極、303…リフレクター、304…検出器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
特定の質量範囲のイオンを排出するイオントラップと、
前記イオントラップから排出されたイオンを解離させる衝突解離部と、
前記衝突解離部から排出されたイオンの質量分析を行う質量分析部と、
前記イオントラップ、前記衝突解離部及び前記質量分析部の出力電圧を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記イオントラップから排出されるイオンの質量範囲を一回のスキャン動作中に2つ以上のスキャン速度で変化させることを特徴とする質量分析装置。
【請求項2】
請求項1に記載の質量分析装置において、
スキャン動作時間中に前記衝突解離部方向にイオンが排出される時間と、
前記衝突解離部方向にイオンが排出されない時間があることを特徴とする質量分析装置。
【請求項3】
請求項2に記載の質量分析装置において、
前記イオントラップは、前記イオントラップのイオン排出側に設けられた電極を有し、
前記制御部は、前記イオントラップのイオン排出側に設けられた電極に印加する電圧の値を変化させることでイオンの排出を制御することを特徴とする質量分析装置。
【請求項4】
請求項3に記載の質量分析装置において、
前記イオントラップのイオン排出側に設けられた電極は、前記イオントラップを構成する複数のロッド電極の向かい合うロッド間に設けられたワイヤ電極であることを特徴とする質量分析装置。
【請求項5】
請求項1に記載の質量分析装置において、
前記制御部は、各イオンの測定条件を格納したリストを備え、
前記リストを参照して、前記イオントラップ、前記衝突解離部および前記質量分析部の出力電圧を制御することを特徴とする質量分析装置。
【請求項6】
請求項5に記載の質量分析装置において、
前記制御部は、前記リストを参照して、前記イオントラップの出力電圧を制御することにより、
スキャン動作時間中に前記衝突解離部方向にイオンが排出される時間と、
前記衝突解離部方向にイオンが排出されない時間とを切り替えることを特徴とする質量分析装置。
【請求項7】
請求項6に記載の質量分析装置において、
前記制御部は、前記衝突解離部方向にイオンが排出される時間では、トラップRF電圧振幅を排出されるイオンの共鳴励起条件に固定するか、排出対象のイオン以外のイオンが排出されないようにスキャンする領域を設定しスキャンさせ、
前記衝突解離部方向にイオンが排出されない時間では、前記トラップRF電圧振幅を次の排出対象のイオンの共鳴条件付近までスキャンさせることを特徴とする質量分析装置。
【請求項8】
請求項7に記載の質量分析装置において、
前記制御部は、前記衝突解離部方向にイオンが排出されない時間では、前記トラップRF電圧振幅を次の排出対象のイオンの共鳴条件付近まで、一定の速度または二種類以上のスキャン速度を切り替えてスキャンが行われることを特徴とする質量分析装置。
【請求項9】
請求項5に記載の質量分析装置において、
前記制御部は、前記リストを参照して、イオンの種類によって前記衝突解離部への入射エネルギーおよび前記衝突解離部の中心軸上に形成される直流電界の強度を設定することを特徴とする質量分析装置。
【請求項10】
請求項5に記載の質量分析装置において、
信号強度をモニターしながら印加電圧をスキャンして信号強度が極大となる印加電圧の値を前記リストに追加することで、前記リストが生成されることを特徴とする質量分析装置。
【請求項11】
請求項1記載の質量分析装置において、
前記イオントラップは、前記イオントラップを構成する複数のロッド電極の隣り合うロッド間に設けられた羽根電極を有し、
前記羽根電極は、
前記制御部は、前記羽根電極へ補助交流電圧を印加することを特徴とする質量分析装置。
【請求項12】
請求項11に記載の質量分析装置において、
前記イオントラップを構成する複数のロッド電極の隣り合うロッド間に設けられた羽根電極は、円弧様の窪みを持っており、
円弧様の窪みを持った辺が前記衝突解離部の中心軸を向くように、
前記衝突解離部の中心軸方向に2つに分割されて、
複数のロッド電極の隣り合うロッド電極間に設けられていることを特徴とする質量分析装置。
【請求項13】
請求項5に記載の質量分析装置において、
前記制御部は、前記質量分析部で分析及び測定された前記前駆体イオンの情報を前記リストに格納することで、
イオントラップ部で測定された前記前駆体イオンの質量分解能を、前記リストに格納されている質量分析部で測定された前記前駆体イオンの質量分解能と置き換えることを特徴とする質量分析装置。
【請求項14】
特定の質量範囲のイオンを排出するイオントラップにおいて、
前記イオントラップの出力電圧を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記イオントラップから排出されるイオンの質量範囲を一回のスキャン動作中に2つ以上のスキャン速度で変化させることを特徴とするイオントラップ装置。
【請求項15】
請求項14に記載のイオントラップ装置において、
スキャン動作時間中に、イオンを排出する時間と、イオンを排出しない時間があることを特徴とするイオントラップ装置。
【請求項16】
請求項14に記載のイオントラップ装置において、
前記制御部は、各イオンの測定条件を格納したリストを備え、
前記リストを参照して、前記イオントラップの出力電圧を制御することを特徴とするイオントラップ装置。
【請求項17】
請求項16に記載のイオントラップ装置において、
前記制御部は、前記リストを参照して、前記イオントラップの出力電圧を制御することにより、スキャン動作中にイオンが排出される時間と、イオンが排出されない時間とを切り替えることを特徴とするイオントラップ装置。
【請求項18】
イオントラップと、衝突解離部と、質量分析部と、制御部とを有する質量分析装置における質量分析方法であって、
前記イオントラップは、特定の前駆体イオンを前記衝突解離部方向に排出するイオン排出動作と、前記衝突解離部方向にイオンを排出しない待機動作を切り替え、
前記衝突解離部は、前記イオントラップから導入された前駆体イオンをバッファーガスとの衝突により解離してフラグメントイオンを生成し、
前記質量分析部は、前記衝突解離部から導入された解離生成したフラグメントイオンの質量分析を行い、
前記制御部は、前記イオントラップから排出されるイオンの質量範囲を一回のスキャン動作中に2つ以上のスキャン速度で変化させることを特徴とする質量分析方法。
【請求項19】
請求項18に記載の質量分析方法であって、
前記制御部は、各イオンの測定条件を格納したリストを備え、前記リストを参照して、
特定の前駆体イオンを前記衝突解離部方向に排出するイオン排出動作と、前記衝突解離部方向にイオンを排出しない待機動作を切り替えることを特徴とする質量分析方法。
【請求項20】
請求項18に記載の質量分析方法であって、
前記制御部は、各イオンの測定条件を格納したリストを備え、前記リストを参照して、
前記イオントラップから導入されたイオンの種類によって、前記衝突解離部への入射エネルギーおよび前記衝突解離部の中心軸上に形成される直流電界の強度を設定することを特徴とする質量分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−37819(P2009−37819A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−200298(P2007−200298)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】