説明

質量分析計用イオン源

インターフェースされた液体分離技術またはガス分離技術からの液状流出物およびガス状流出物の両方をイオン化することができるイオン源を提供する。液状流出物はエレクトロスプレーイオン化法、光イオン化法、または大気圧化学イオン化法によってイオン化され、ガスクロマトグラフのような源からのガス状流出物は、コロナ放電またはタウンゼント放電または光イオン化によってイオン化される。この源は、液体源およびガス源の両方からの化合物をイオン化することができ、ガスクロマトグラフィーによって分離された揮発性化合物、液体クロマトグラフィーによって分離された低揮発性化合物、さらにエレクトロスプレーによって注入された、または液体クロマトグラフィーもしくはキャピラリー電気泳動によって分離された、高度に不揮発性の化合物のイオン化を容易にする。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本出願は、2005年6月3日に出願された米国仮特許出願第60/687,497号明細書の優先権を、米国特許法第119条に従って主張するものであり、また2004年11月9日に出願された米国仮特許出願第60/626,161号明細書の優先権を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、液体クロマトグラフまたはガスクロマトグラフのような異なる源からの液体またはガス流出物をイオン化し易くして、次いで質量分析計によってイオンを質量分離できる大気圧イオン化源に関する。また、本発明は、イオン化源を用いて、乾燥した清浄なパージガス流を導入することによってガスクロマトグラフの流出物中でイオン化することができる化合物種の数を増加し、それにより、イオン化領域において水および他の不純物を減少させることによって低エネルギーイオン化事象を極力抑える方法に関する。また、本発明は、イオン化源を用いて、対象の化合物だけがイオン化されるように反応ガスをイオン化源のイオン化領域へ導入することによって、選択された化合物種の分析を強化する方法に関する。
【0003】
本発明において用いられるように、ガスクロマトグラフ源が、市販の装置、または本イオン化源の部品を形成するプローブアセンブリに組み込まれるミニガスクロマトグラフのいずれかであってもよい。このミニガスクロマトグラフを組み込んだプローブアセンブリは、液体クロマトグラフィー/質量分析法(LC/MS)において用いられるインターフェースプローブアセンブリに置き換えることができる。本発明のイオン化源を用いて、任意のタイプの、単一の大気圧イオン化質量分析計が、液体のクロマトグラフまたはガスクロマトグラフのいずれかからの流出物をイオン化できるようにし、また、この流出物を分析できるようにする。
【背景技術】
【0004】
本明細書中で用いられるように、GC/MSという用語は、質量分析計(MS)にインターフェースされたガスクロマトグラフ(GC)をいう。LC/MSという用語は、質量分析計にインターフェースされた液体クロマトグラフ(LC)をいう。質量分析法における現行のやり方は、GC/MSおよびLC/MSの動作用に別々の装置を有するものである。少なくとも製造業者1社、バリアン社(Varian,Inc.)が、真空を破りイオン源を交換することにより大気圧LC/MSから真空イオン化GC/MSに変更することができる質量分析計を製造している。この手法は、時間がかかるという欠点があり、真空を破る必要があり、バリアン社の特定の装置上でのみ適用可能である。
【0005】
現在入手可能な大気圧イオン化質量分析計(APIMS)装置は柔軟性に欠ける。こうした装置は、上流のガスクロマトグラフまたは上流の液体クロマトグラフのいずれかからの流出物を受け取るような形状に構成されているが、他の流出物源を受容するようには容易に変更できない。典型的には、電界によるガス放電の開始によって、または特許文献1(フェン(Fenn))および特許文献2(バラスコビッチ(Valaskovic))に記載されるようなエレクトロスプレーイオン化法(ESI)によって、大気圧で一次イオンが生成される。次いで、この一次イオンは、電荷移動工程によって大気圧化学イオン化法(APCI)で発生するようなイオン分子反応によって、またはエレクトロスプレー工程で生成する帯電した溶媒の液滴中に検体分子を飛沫同伴させることによって、気相検体分子をイオン化する。この帯電した液滴中に飛沫同伴されている検体の場合には、そのイオン化工程は、エレクトロスプレーイオン化法(ESI)と同じである。これは、検体分子がまず液滴中に飛沫同伴され、次いでイオン化されるためである。
【0006】
エレクトロスプレーイオン化法(ESI)は、溶液中の化合物から気相イオンを発生させる有力な方法である。ESIでは、典型的に、小径管から大気圧で液体が押し出される。その管から出現する液体と近傍の電極との間に数千ボルトの電圧を印加すると、微細な液滴の噴霧が生じる。この液体表面上の電荷によって不安定になるため、出現する液体の表面から伸長している噴出口から液滴が壊れる。典型的には、逆流ガスを用いて液滴を蒸発させることによって、表面電荷は再び、不安定になるほど十分に高く(レイリーリミット近く)なり、さらにより小さな液滴が生成される状態になる。この工程は、上記の蒸発工程または電界放出のいずれかによって自由イオンを生じるまで進行する。電界放出とは、イオンの電界蒸発が発生するほど十分に小滴中の電界強度が高い場合に生じるものである。ESI工程にて用いられる溶媒よりも塩基性の分子が優先的にイオン化される。ESIは、液体から気相イオンを生じるため、液体クロマトグラフィー(LC)を質量分析法(MS)にインターフェースする理想的なイオン化法である。タンパク質ほど大きく多様な化合物の分析に対するESIの力によって、ジョン・フェン(John Fenn)が2003年のノーベル化学賞を受賞した。液体分離法を用いたMSをESIと組み合わせると、分析的に極めて有力であり、毎年LC/MS装置が多数販売されるようになっている。
【0007】
ESIは、塩基化合物および極性化合物に最も反応し、且つ、最も適当であるため、たいていのLC/MS装置には、大気圧化学イオン化法(APCI)と呼ばれる他の大気圧イオン化(API)技術が組み込まれている。APCIは、イオン化に63Niβ崩壊を用いて、当初ホーニング(Horning)らによって開発された。非特許文献1を参照。それ以降、イオン化源として、放電イオン源が63Niに取って替わった。典型的に、金属針に印加された電圧を、周囲のガスの電気的破壊(自由電子およびイオンの生成)が起きる(典型的に、数千ボルト)範囲にまで高めると、放電が生じる。このイオン化法の主な使用法は、液体クロマトグラフィーと質量分析法との間のイオン化インターフェースとしてであった。非特許文献2を参照。このイオン化法は、液体クロマトグラフから出る液体の蒸発と、それに続く、コロナ放電における気相イオン化によるものである。コロナ放電で生成される一次イオンは、最も豊富に存在する種類に由来するものであり、典型的には、大気または溶媒分子からの窒素および酸素由来のものである。コロナ放電で生成される最初のイオンの数に関係なく、イオン分子反応を拡散制御することによって、多数のプロトン化した溶媒イオンが定常状態となる。次いで、この反応が発熱を伴えば、プロトン移動によって、または、イオン分子生成物が安定していれば、イオン添加によって、および希に電荷移動反応によって、このようなイオンが検体分子をイオン化する。この技術は、低分子量で、極性の小さい化合物には、ESIよりも反応しやすい傾向があるにもかかわらず、高揮発性化合物およびLC溶媒より低塩基性のものには反応しない。したがって、大気圧化学イオン化法(APCI)もエレクトロスプレーイオン化法(ESI)も、多種の、揮発性で極性の小さい化合物にとっては良好なイオン化法ではない。このため、より効果的にこの種の化合物の一部に到達するために、LC/MSには光イオン化法のような他のイオン化法が適用されていた(例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、および特許文献6を参照)。大気圧での光イオン化法は、気相分子のイオン化に紫外線(UV)源を用いる。典型的には、イオン化を生じるには、100〜355ナノメートル(nm)の範囲内の紫外線を生成するプラズマ誘起放電ランプが用いられる。かかる源は、LC/MSを用いて使用するのに適しており、カリフォルニア州タスティンのシナジェン社(Synagen Corporation,Tustin,CA)から市販されている。
【0008】
したがって、ESIおよびAPCIの大気圧イオン化法とインターフェースされた液体クロマトグラフが広く用いられており、こうしたイオン化法に関連する質量分析計には、MS(MS/MS、MS/MS/MS等)および/または高い質量分解能および正確な質量分析のような高度な分析能力があることが多い。しかし、LC/MS装置は、多種の、揮発性で極性の小さい、重要な化合物には効果的に対応していない。本明細書中には、LC/MS適用のために設計された質量分析計を用いた、高クロマトグラフ分解能および高感度でこの化合物種の大部分をイオン化することができるガスクロマトグラフ流出物の大気圧イオン化法が記載されている。
【0009】
一般に、ガスクロマトグラフィーは、質量分析計にインターフェースされる。ガスクロマトグラフは揮発性分子に限定されるが、液体クロマトグラフィーに基づく装置より高い分解能を有する。ガスクロマトグラフは大気圧で動作し、圧力低下装置を介して質量分析法にインターフェースされる。一般に、圧力低下装置はキャピラリー管またはいわゆる「噴出口セパレータ」であり、両方とも、質量分析計の真空領域に入るガスの体積を制限する。
【0010】
ガスクロマトグラフはAPI源にインターフェースされていた。ガスクロマトグラフからの流出物を、負イオン生成用の源として放射性の63Niを用いて、大気圧でイオン化することについて、一連の刊行物が発表されている。直近の刊行物としては、非特許文献3がある。これらの実験に用いるインターフェースは、エクストラニュークリアー・ラボラトリーズ社(Extranuclear Laboratories,Inc.)(現ABB社(ABB,Inc.))(非特許文献4参照)またはフィニガン・マット4000(Finnigan−Mat 4000)(現サーモ・フィニガン社(Thermo Finnigan))(非特許文献5参照)からのように特別製質量分析計の63Niイオン源にGCを連結する。しかし、これらの刊行物は、LC/MS適用のために設計された今日の大気圧装置に技術を移転できる重要なパラメータを開示していない。さらに、これらの刊行物では、負イオン化法、高度に負電荷の化合物に限った方法だけが論じられている。
【0011】
E.C.ホーニング(E.C.Horning)らによる総説論文にて、GC/APIMSおよびLC/APIMS両イオン源について論じられている(非特許文献6参照)。この記事は、各イオン源の図を示し、LC/APIMSおよびGC/APIMSについての詳細は前述した2つの刊行物を参照する(非特許文献7、および非特許文献2をそれぞれ参照)。
【0012】
しかし、LC/APIMS源およびGC/APIMS源が同一の質量分析計にインターフェースされていること、または、LC/APIMS源およびGC/APIMS源を組み合わせたもの、またはLC/APIMS導入用に設計されている質量分析計にガスクロマトグラフをインターフェースすることの報告はないものと考えられる。また、本発明で実施できるように、秒単位でLC/MSとGC/MSとの間の動作が切り替わる報告もない。特に、乾燥したパージガスを用いて、大気圧でイオン化できる化合物の種類を増やす報告もされていない。エレクトロスプレーイオン化法は、GC/APIMSに関する文献には論じられておらず、また、ガスクロマトグラフから大気イオン化領域へ化合物を効果的に移送するための必要条件も無かった。大気圧GC/MS生成イオンの正確な質量測定、またはGC/APIMS/MSの選択またはマルチイオンモニタリング、またはGC/APIMSの選択またはマルチイオンモニタリングでの研究は報告されておらず、すべて、ほとんどのGC/MS装置において容易に利用できない技術である。
【0013】
コロナ放電APCIを用いてガス状化合物を分析する、例えば次のような、市販の質量分析計が製造されている。(非特許文献8に記載のABB社(ABB,Inc.)製エクストレル四重極質量分析計(Extrel Quadrupole mass spectrometers)並びに非特許文献9および非特許文献10に記載のサイエックス(Sciex.)質量分析計。皮膚および衣類からエミュレートする息および香水のような源から大気中の微量の揮発性物質を分析するための水蒸気導入と組み合わせたベンチャーポンプの使用を開示する2つの特許(特許文献7および特許文献8)。この方法を改良したと言われる、L.チャールズ(L.Charles)らおよびG.ツェーヘントバウアー(G.Zehentbauer)らによる研究論文が発表された(非特許文献11、および非特許文献12をそれぞれ参照)。
【0014】
ガス状の熱分解生成物のイオン化での熱分解が報告されている(非特許文献13参照)。一方、W.E.シュタイナー(W.E.Steiner)らは、兵器用剤の擬剤のAPCIを報告している(非特許文献14を参照)。
【0015】
APIMSへ試料を導入するウェーハ熱脱離システムが、特許文献9に記載されている。いくつかの特許(例えば、特許文献10、特許文献11、特許文献12、特許文献13、特許文献14、特許文献15、特許文献16、特許文献17および特許文献18)では、水素、酸素、アルゴン、二酸化炭素、一酸化炭素、フロン、シラン、および周囲温度で気体である他の化合物のような微量のガスを分析および計量するために、主に、半導体産業のために、GCおよびAPIMSを使用することについて論じられている。
【0016】
【特許文献1】米国特許第6,297,499号明細書
【特許文献2】米国特許第5,788,166号明細書
【特許文献3】米国特許第5245192号明細書
【特許文献4】米国特許第6646256号明細書
【特許文献5】米国特許第6630664号明細書
【特許文献6】米国特許出願公開第20030111598号明細書
【特許文献7】欧州特許出願公開第0819937A2号明細書
【特許文献8】米国特許第5,869,344号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2002148974号明細書
【特許文献10】特開2002228636号公報
【特許文献11】国際公開第2002060565号パンフレット
【特許文献12】米国特許第6474136号明細書
【特許文献13】米国特許出願公開第2003092193号明細書
【特許文献14】米国特許出願公開第2003086826号明細書
【特許文献15】米国特許第6032513号明細書
【特許文献16】米国特許第6418781号明細書
【特許文献17】特開平9−015207号公報
【特許文献18】特開平6−034616号公報
【非特許文献1】ホーニング・E.C.(Horning,E.C.)、ホーニング・M.G.(Horning,M.G.)、キャロル・D.I.(Carroll,D.I.)、デュデッチ・I.(Dzidic,I.)、スティルウェル・R.N.(Stillwell,R.N.)著、「大気圧で外部イオン化源を用いた質量分析計に基づく新ピコグラム検出システム(New Picogram Detection System Based on a Mass Spectrometer with an External Ionization Source)」、アナリティカル・ケミストリー(Anal.Chem.)、1973年、第45巻、936〜943頁
【非特許文献2】デュデッチ・I.(Dzidic,I.)、キャロル・D.I.(Carroll,D.I.)、スティルウェル・R.N.(Stillwell,R.N.)、ホーニング・E.C.(Horning,E.C.)著、「大気圧イオン化質量分析法における窒素、アルゴン、イソブテン、アンモニア、および酸化窒素を試薬として用いたコロナ放電イオン源とニッケル−63とで生成される正イオンとの比較(Comparison of Positive Ions formed in Nickel−63 and Corona Discharge Ion Sources using Nitrogen, Argon, Isobutene, Ammonia and Nitric Oxide as Reagents in Atmospheric Pressure Ionization Mass Spectrometry)」、アナリティカル・ケミストリー(Anal.Chem.)、1976年、第48巻、1763〜1768頁
【非特許文献3】キノウチ・T(Kinouchi,T)、ミランダ・A.T.L.(Miranda,A.T.L.)、ラッシング・L.G.(Rushing,L.G.)、ベランド・F.A.(Beland,F.A.)、コーフマッヒャー・W.A.(Korfmacher,W.A.)著、ジャーナル・オブ・ハイ・レゾルーション・クロマトグラフィー・アンド・クロマトグラフィー・コミュニケーションズ(J.High Resolution Chromatogr. & Chromatogr. Commun.)、1990年、第13(1)巻、281〜284頁
【非特許文献4】シーガル・M.W.(Siegal,M.W.)、マッキューン・M.C.(McKeown,M.C.)著、ジャーナル・オブ・クロマトグラフィー(J.Chromatogr.)、1976年、第122巻、397頁
【非特許文献5】ミッチャム・R.K.(Mitchum,R.K.)、コーフマッヒャー・W.A.(Korfmacher,W.A.)、フリーマン・J.P.(Freeman,J.P.)著、「フィニガン−MAT 4000質量分析計用大気圧イオン化源(Atmospheric Pressure Ionization Source for a Finnigan−MAT 4000 Mass Spectrometer)」、アナリティカル・インスツルメンテーション(Anal. Instrumentation)、1986年、第15(1)巻、37〜50頁
【非特許文献6】ホーニング・E.C.(Horning,E.C.)、キャロル・D.I.(Carroll,D.I.)、デュデッチ・I.(Dzidic,I.)、ヘーゲル・K.D.(Haegele,K.D.)、リン・S.−N(Lin,S.−N.)、オーチル・C.U.(Oertil,C.U.)、スティルウェル・R.N.(Stillwell,R.N.)著、「質量分析法に基づいた分析システムの開発および使用(Development and Use of Analytical Systems Based on Mass Spectrometry)」、クリニカル・ケミストリー(Clin.Chem.)、1977年、第23(1)巻、13〜21頁
【非特許文献7】キャロル・D.I.(Carroll,D.I.)、デュデッチ・I.(Dzidic,I.)、スティルウェル・R.N.(Stillwell,R.N.)、ヘーゲル・K.D.(Haegele,K.D.)、ホーニング・E.C.(Horning,E.C.)著、「大気圧イオン化質量分析法:液体クロマトグラフィー・質量分析法コンピュータ解析システムに用いるコロナ放電イオン源(Atmospheric Pressure Ionization Mass Spectrometry: Corona discharge Ion Source for use in a Liquid Chromatography−Mass Spectrometry−Computer Analytical System)」、アナリティカル・ケミストリー(Anal.Chem.)、1975年、第47巻、2369〜2373頁
【非特許文献8】ケッカー・S.N.(Ketkar,S.N.)、ペン・S.M.(Penn,S.M.)、フィット・W.I.(Fite,W.I.)著、「大気圧イオン化タンデム四重極質量分析法を用いた、雰囲気中の化学兵器のPPT単位即時検出(Real−time Detection of Parts per Trillion of Chemical Warfare Agents in Ambient Air Using Atmospheric Pressure Ionization Tandem Quadrupole Mass Spectrometry)」、アナリティカル・ケミストリー(Anal.Chem.)、1991年、第63巻、457〜459頁
【非特許文献9】ラブ・D.A.(Lave,D.A.)、トンプソン・A.M.(Thompson,A.M.)、ラベット・A.M.(Lovett,A.M.)、レイド・N.M.(Reid,N.M.)著、アドバンシーズ・イン・マススペクトロメトリ(Adv. Mass Spectrom.)、1980年、第8B巻、1480頁
【非特許文献10】レイド・N.M.(Reid,N.M.)、バックリー・J.A.(Buckley,J.A.)、ポム・C.C.(Pom,C.C.)、フレンチ・J.B.(French,J.B.)著、アドバンシーズ・イン・マススペクトロメトリ(Adv. Mass Spectrom.)、1980年、第8B巻、1843頁
【非特許文献11】チャールズ・L.(Charles,L.)、ライター・L.S.(Riter,L.S.)、クックス・R.G.(Cooks,R.G.)著、「大気圧化学イオン化質量分析による大気中の半揮発性有機化合物の直接分析(Direct Analysis of Semivolatiel Organic Compounds in Air by Atmospheric Pressure Chemical ionization Mass Spectrometry)」、農業及び食品化学(J. Agric. Food Chem.)、2000年、第48巻、5389〜5395頁
【非特許文献12】ツェーヘントバウアー・G.(Zehentbauer,G.)、キルク・T.(Kirck,T.)、タイネキウス・G.A.(Teineccius,G.A.)著、農業及び食品化学(J. Agric. Food Chem.)、2000年、第48巻、5389〜5395頁
【非特許文献13】スナイダー・A.P.(Snyder,A.P.)、クレメール・J.H.(Kremer,J.H.)、ムーズラー・H.L.C.(Mouzelaar,H.L.C.)、ヴェンディグ・W.(Windig,W.)、ターヒザヘッド・K(Taghizahed,K.)著、「キュリーポイント熱分解大気圧化学イオン化質量分析法:3つの生体高分子に関する予備性能データ(Curie−point pyrolysis atmospheric pressure chemical ionization mass spectrometry: preliminary performance data for three biopolymers)」、アナリティカル・ケミストリー(Anal.Chem.)、1987年、第59巻、1945〜1951頁
【非特許文献14】シュタイナー・W.E.(Steiner,W.E.)、クラウワー・B.H.(Clowers,B.H.)、ヘアー・P.E.(Haigh,P.E)、ヒル・H.H(Hill,H.H.)著、「化学兵器・擬剤の二次的イオン化法:大気圧イオン移動度飛行時間型質量分析法(Secondary Ionization of Chemical Warfare Agent Simulants: Atmospheric Pressure Ion Mobility Time−of−Flight Mass Spectrometry)」、アナリティカル・ケミストリー(Anal.Chem.)、2003年、第75巻、6068〜6076頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
現在入手可能な質量分析計は、主要な源を変更することなく、単一の装置内でLC/MSとGC/MSとを組み合わせるものではない。質量分析計の大半は、LC/MS動作用またはGC/MS動作用のいずれかに設計されており、両方用には設計されていない。多くの研究所でGC/MS装置およびLC/MS装置の両方を利用できるだろうが、LC/MS装置のみを有する研究所が増えている。したがって、一般に入手できるLC/MS質量分析計がガスクロマトグラフにインターフェースできるイオン化源を考案することが望ましい。そのような装置は、現在利用できるLC/MS装置によって分析可能な化合物の適用範囲を広げるであろう。また、そのようなインターフェースは、LC/MS装置では一般的であるが、GC/MS装置ではそうでない高度な能力(例えば、コーン電圧フラグメンテーション、MS、高い質量分解能、および正確な質量測定のような当該技術において実践したものに対する公知の技術)が、新規で高価な装置を購入することなくGC/MS分析に利用できるようになるというさらなる利点を有する。標準LC/MSプローブの入口へ挿入できるプローブに組み込まれたガスクロマトグラフによって、LC/APIMSイオン源をほとんど変更することなく、LCおよびGC/MS動作間を迅速に切り替えることができるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
大気圧質量分析計に有用なイオン化源であって、この源は、ガスクロマトグラフまたは液体クロマトグラフのような先行する分離装置からの液状流出物またはガス状流出物のいずれかをイオン化することができ、イオンの質量分析のために大気圧領域からのイオンを質量分析計の真空領域へ導入でき、また、放電を生じるイオン化装置であって、高電圧源に接続されているイオン化装置、または、光イオン化法によってイオンを生成するために紫外線(UV)ランプを用いた光イオン化装置と、このイオン化装置を囲むことによりイオン化領域を画定する囲い(enclosure)であって、液状流出物の源またはガス状流出物の源のいずれかからの流出物を導入するための少なくとも1つのポートと、質量分析計の真空領域へイオンを導入するための開口部とを有する囲いと、を含んでなる。
【0019】
この囲いは、パージガスまたは反応ガスを導入するポートと、囲いから過剰なパージガスを抜く通気孔と、をさらに含んでなる。このガスを加熱するためにヒーターが設けられている。流出物を導入する少なくとも1つのポートは、複数のポートとしての形状に構成されてもよく、各ポートは、それぞれ先行する分離装置からインターフェースプローブを受容するような形状に構成され、それぞれ液状流出物またはガス状流出物を供給する。
【0020】
放電を生ずるイオン化装置は、高電圧を印加してタウンゼント放電またはコロナ放電を生ずる、鋭端または尖端電極を含んでなる。放電を生ずるイオン化装置は、溶媒を満たしたキャピラリーまたはウィック(wick)構造を含んでなってもよく、それによって高電圧の印加によりエレクトロスプレーイオン化を生ずる。光イオン化装置は、プラズマ誘起放電(PID)ランプのような電離放射線を生成する適切なランプを含んでなっていてもよい。
【0021】
また、本発明は、乾燥した清浄なパージガス、好ましくは窒素、をイオン化領域へ導入することによって大気圧で分析可能な化合物の適用範囲を拡大させ、大気と水を遮断するのに役立つ方法を提供する。従来のAPCI条件下では、すべて一次イオン化して、プロトン化した水クラスター、プロトン化溶媒および/またはプロトン化汚染物質の形にさせるのに十分な水蒸気および他の有機蒸気がある。次いで、水、溶媒、および/または汚染物質から生成されたイオンは、発熱を伴うが吸熱性でないプロトン移動反応を経る。したがって、イオン化(水、溶媒または汚染物質)の源よりも塩基性の化合物だけがイオン化される。この反応系列は、微量の水を含んだ窒素ガスに対して示すことができる。
+e→N+2e
+2N→N+N
+HO→H+2N
+n(HO)+N→H(HO)+N
(HO)+A→AH+nHO(ここで、A=検体)
【0022】
乾燥した清浄なパージガスを添加すると、より高いエネルギーの一次イオン(例えば、N、N、H等)がGC流出物のイオン化に利用可能になるように、水および有機汚染物質(溶媒はGCでは存在しない)を十分にイオン化領域から遮断することができる。したがって、例えば、不活性ガスと試料との間に電荷移動反応が発生して、イオン化可能な化合物の適用範囲が拡大する。故に、ベンゼン、ナフタレン、クロロフェノール、および通常のAPCI条件下で容易にイオン化されない他の化合物といった化合物をイオン化することができる。その上、この方法を用いると、液体APCIまたはESIではイオン化が不十分な化合物が、気相APCIによって容易にイオン化され、それによって、分析の感度が向上する。汚染物質の遮断によって、バックグラウンド汚染物質からのイオン電流が減少するため、APCIおよび光イオン化の両方の感度が向上され得る。
【0023】
石英ガラス製のガスクロマトグラフのカラムは、典型的にポリイミド塗膜を有する。このポリイミド塗膜は、典型的な運転温度でGCとAPIMSとの間のインターフェースにおいて用いられるポリイミド塗膜の熱破壊から生じる汚染物質イオンの源であり得る。出口端部に隣接するGCカラムの一部分に沿ってポリイミド塗膜を除去するには、火炎による除去、液状の酸、塩基もしくは溶媒を用いた化学的除去、または十分な時間、カラムのその部分を高温前処理すること、のいずれかを実施してもよい。かかる除去または前処理によって、質量分析計内の汚染物質イオンをできるだけ目に付かないようにし、信号対雑音を向上させる。
【0024】
また、本発明は、GC/APIMSによってイオン化可能な化合物の種類を制限するために反応ガスを2種類のイオン源領域へ添加する方法を提供する。例えば、アンモニアガスを添加することによって、アンモニアより塩基性の化合物、またはNHを備えた安定した気相イオンクラスターを形成する化合物だけがイオン化され得る。これは、対象の化合物が、対象外のより低い塩基性の化合物のマトリックス中では高塩基性化合物である場合に有利であり得る。一例として、芳香族炭化水素および酸素含有化合物をイオン化することなく、例えば、燃料油中のアミン含有化合物をイオン化する。
【0025】
また、本発明は、キャピラリーカラムを、クールスポットなく、その先端まで加熱する方法を提供する。これは、より揮発性の低い化合物に対するクロマトグラフ分解能を維持するために、大気圧GC/MSで必要なものである。好ましい方法は、GCオーブンを通って加熱されたGC内へと伸びる管に、ガス、典型的には窒素、を通過させてMS移送ラインまで届けることによって、およびGCカラムと同軸で、GCカラムの出口先端部まで、またはその先端付近に延びる鞘管を通過させることによって、そのガスを加熱することを含む。GCカラムを通過する高温の気体は、キャピラリーのまさに先端に至るまで、いかなるクールスポットも無いようにし、さらに、MS入口開口部に向かって検体を誘導する収束気体流を提供してもよい。あるいは、抵抗加熱法を用いて、GCカラム上にぴったりと嵌る熱伝導性の外筒を加熱してもよい。この材料は、抵抗ヒーターからGCキャピラリーカラムへ熱を伝導するために、セラミックまたは金属のような任意の熱導電性材料でできていてもよい。さらに、金属または炭素のような導電性材料が塗布された石英ガラス製GCカラムを、導電性被膜を介して電流を流すことにより抵抗加熱することができる。
【0026】
本発明は、任意の市販のGC、GCと質量分析計とのインターフェース、および大気圧イオン化法を用いた液体クロマトグラフィー用に設計された任意の市販の質量分析計を用いることができる。このGCは、イオン領域に隣接した標準LCのESI/APCIプローブの入口に挿入することができる、携帯型のプローブに嵌装するのに十分に小さいミニGCでもよい。あるいは、別の入口が提供されてもよく、LCプローブおよびGCプローブの両方をイオン化領域内に同時に挿入することができる。
【0027】
本発明によって、GC/MS分析法が、選択またはマルチイオンモニタリング、正確な質量測定、コーン電圧フラグメンテーション、MS実験等のために、当業者に公知の質量分析計の可能性をすべて取り入れることができる。
【0028】
本発明は、質量分析法における現在の技術に対する利点をいくつか提供する。本明細書に記載した発明にしたがって、質量分析計に対する大気圧イオン源およびインターフェースを用いることによって、いかなるLC/MS装置もLC/APIMSおよびGC/APIMSの二重構成に変更することができる。本発明を用いて、GCまたはLCからの流出物を大気圧でイオン化し、それによって、この2つの分離法の間で迅速に切り替えることが容易となる。
【0029】
本明細書中に記載の2種類のイオン源は、LC/MSの独立型装置に比べて、ガスクロマトグラフィーを用いて分離する場合、多くの揮発性化合物に対してクロマトグラフ分解能がより高く、また感度がより良好である。本発明の方法を用いることによって、LC/APIMSでイオン化できない化合物の種類のうち、GC/APIMSによってイオン化できるものもあり、また、他の化合物の種類の多くは、より良好な感度でイオン化することができる。
【0030】
また、GC/APIMSは、GC/真空MSに優る利点がある。LC/MS装置は、正確な質量測定能力および選択イオンフラグメンテーション(すなわち、MS/MS)能力があるものが多いが、GC/MS装置にはかかる能力を有するものがほとんどない。また、そのような特徴を有するLC/MS装置を本明細書中に記載した本発明の2種類のイオン源に変更することで、こうした特徴をGC/APIMS動作に提供する。本発明は、より高いキャリヤーガス線速度およびより短いGCカラムを可能にし、ひいてはより高い沸点化合物を分析できるが、それは、GC/APIMSがGC/真空MSのように高いGCキャリヤーガス流量によって悪影響を及ぼされないからである。
【0031】
本発明は、そういった液体クロマトグラフィー(LC)またはキャピラリー電気泳動(CE)を液体分離法にインターフェースするように設計されている市販の大気圧イオン化質量分析計(APIMS)にガスクロマトグラフ(GC)をインターフェースすることを可能にする装置である。本発明は、同じ装置上にGC/APIMS動作およびLC/APIMS動作の両方を提供する質量分析装置を提供する。ガスクロマトグラフィーの流出物に対する一次イオン化プロセスは、タウンゼント放電もしくはコロナ放電を用いて、光イオン化法を用いて、または場合によりエレクトロスプレーイオン化法を用いて、大気圧で起こるものである。
【0032】
GC/APIMSの利点として、LC/APIMS動作とGC/APIMS動作との間の相互変換が簡単であること、乾燥したパージガスの使用によりAPIMSによって分析できる化合物の範囲が拡大すること、LC/MSで得られるよりもクロマトグラフ分解能が高いこと、ならびにより速い分離およびより揮発性の低い化合物の分離を可能にするGC流量に真空限界が無いこと、が挙げられる。さらに、LCインターフェースに用いられるプローブ位置内へ挿入するプローブまたはフランジに組み込まれたミニGCは、LC/MS動作とGC/APIMS動作との間を切り替える容易な方法であることを示す。
【0033】
また、本発明は、大気圧条件下でイオン化することができない飽和炭化水素化合物を遮断しながら、ガスクロマトグラフを通り抜けるために十分な揮発性を有する化合物、または当該技術において公知である誘導体化法を用いることによって十分に揮発性にすることができる化合物、の分析にも役立つ。例として、GC/APIMSは、環境汚染物、合成製品、ポリマーおよび他の固体または液体原料からのオフガス生成物、脂質類、脂肪酸類、アルコール類、アルデヒド類、アミン類、アミノ酸、汚染物質、医薬品、代謝物質、エステル類、エーテル類、ハロゲン化合物、任意の気体、グリコール類、イソシアナート類、ケトン類、ニトリル類、芳香族ニトロ化合物、殺虫剤、フェノール類、リン化合物、ポリマー添加剤、プロスタグランジン類、ステロイド類ならび硫黄化合物の分析に役立つ。
【0034】
本発明は、本出願の一部を形成する添付の図面に関連して以下の詳細な説明を参照することにより十分に理解されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下の詳細な説明全体を通じて、同じ参照符号は図面のすべての図において同じ要素を表す。
【0036】
大気圧液体クロマトグラフ/質量分析計(AP−LC/MS)装置にガスクロマトグラフ(GC)をインターフェースする本発明の別の実施形態は、図1、図2および図3に示す。図4は、より詳細には、図1、図2または図3のインターフェース管の断面図を示す。
【0037】
図1は、ガスクロマトグラフィープローブ30を収容し、また、関連するガスクロマトグラフオーブン40を関連する質量分析計50へインターフェースする、囲いまたはハウジング11を含んでなる大気圧イオン化源10を示す。囲い11は、質量分析計50の真空領域53内へイオンを導入するための出口開口部54を有する。出口開口部54は、質量分析計50の入口開口部(またスキマー開口部として公知でもある)と直接連通し、この中に併合する。図2は、LCプローブ20を収容するポート13’および、GCプローブ30を収容するポート13’’を有する囲い11’を示す。このような基本的部品を用いた他の実施形態を想定することができる。
【0038】
再び図1を参照して、イオン化源10は、GCプローブ30を収容する少なくとも1つのポート13を含んでなる。入口ポート14および1つもしくはそれ以上のガス通気孔15が、囲い11の壁を貫通している。囲い11上には、電気的に絶縁性のスリーブ17に支持された電極16が取り付けられている。この電極16は、囲いの壁を貫通し、高電圧HV(典型的に1000〜10000ボルト、好ましくは2000〜6000ボルト)の源に接続される。電極16と併用して、囲い11への接地を示す対向電極18が用いられる。電極16が高電圧源HVによって通電されると、電極16と対向電極18との間に放電が生ずる。電極16および対向電極18に隣接した囲い11内の体積は、イオン化領域19を画定する。
【0039】
GCプローブ30は、ガスクロマトグラフオーブン40を質量分析計50にインターフェースする、加熱管状インタフェースデバイス32(図1〜3)を含む。GCオーブン40は、ヒーター素子36、熱電対37、および注入器38を有する。流れ矢印35で示すヘリウムキャリヤーガスがGCカラム42に供給される。管状インターフェース32の長さは、マイクロGCの長さ約1センチメートルの短さから、従来のGCの長さ約1メートルの長さの間で変化してもよい。この管状インターフェース32は、市販のGC/MSインターフェースから組み立てることができ、この管状装置内の温度は、抵抗加熱によって高温に維持される。同軸で加熱管状インターフェース32に捲状キャピラリーGCカラム42の下流部分が貫通する。キャピラリーGCカラム42の囲い11内の出口端部には、出口先端部44がある。キャピラリーGCカラム42は、導電被膜(図示せず)を有していてもよい。
【0040】
ガスが、鞘管46を通過し、キャピラリーGCカラム42の下流部分を通り過ぎる前に、不活性ガス入口ポート43によって、熱源36で加熱した金属管または石英ガラス管を通って流れることができる。GCからのインターフェース管32は、質量分析計50の開口部54から1ミリメートルほどの近い位置、または25ミリメートルほど離れた位置まで調節することができる。電極16は、典型的に開口部54の5センチメートル以内に位置する。質量分析計内へのガス流に対するGC流出物の流れの方向は、図1に示すように90度と、図2に示すように、180度の間である。
【0041】
GCカラム42は、注入器38から、GCオーブン40を通って、出口先端部44までの全体を、その長さに沿って加熱される。この加熱によって、特に揮発性の低い化合物に対する分析の分解能を下げるキャピラリーGCカラム42に沿ってコールドスポットができないようにする。加熱は、管状インターフェース32(図4に示す)に沿って抵抗ヒーターを配置することにより、または導電性塗膜を施したGCカラム(図示せず)を抵抗加熱することにより、行われてもよい。あるいは、図4を参照して、加熱された、乾燥した清浄な不活性ガス(流れ矢印60で示す)を、同軸でGCカラム42を囲繞する鞘管46に通過させてもよい。この加熱された、乾燥した清浄な不活性ガスは、ガス源60Gから供給され、鞘管46を通って出口先端部44へと流れる。鞘管46は、導電性であってもよく、または非導電性であってもよい。不活性ガスは、鞘管46の上流の熱源62によって加熱されてもよい。ガス源64Gからの任意のパージガス(流れ矢印64)、好ましくは、清浄な乾燥窒素が、インターフェース32を通り抜け、端部39で流出することができる。このパージガスは、インターフェースヒーター34からの熱で温められる。インターフェースヒーター34は、伝熱管47に直接熱を加えることで、鞘管46およびそこに流れる不活性ガスを加熱する。
【0042】
GCカラム(図4)の出口先端部44は、出口開口部54(図1)近傍に位置する。タウンゼントまたはコロナの気体放電(図1および図2に見られる)を用いて、または光イオン化法(図3に見られる)によって、または図2に示すESIプローブ22によって、イオン化が引き起こされる。GCカラム42からの流出物は、流れ矢印64で示す清浄で乾燥したパージガス流によってイオン化領域19から押し流される。パージガスとして、典型的に液体窒素供給源64G(図2および図4)からの窒素蒸気を用いてもよい。質量分析計信号のクロマトグラフ分解能を維持するためにGCカラム42から出る化学成分をガス通気孔15を介してイオン化領域19を通って迅速に押し流すためには、このガス流が必要である。
【0043】
イオン化領域19は、乾燥した清浄なパージガス(図2、図3および図4に代替位置で示す流れ矢印64)、好ましくは窒素が、ガス入口14(図3)を通って、またはインターフェース32(図4)を通って、イオン化領域19へ継続的に添加されて、イオン化領域19内の水蒸気および汚染物質の存在を最小限にすることができるように密閉されるのが好ましい。こうした条件下では、いわゆる公開済みのAPCI源または窒素ガスの湿源のような先行技術の源、またはガス状汚染物質が最小限に抑えられていなかった先行技術の源に比べて、より化学的に多様な化合物がイオン化され得る。
【0044】
本発明は、これまで質量分析法に利用可能であったものより多くの一般的なイオン源を生成する。図1および図3に示すように、ESIプローブまたはAPCIプローブのいずれかをGC/MSインターフェースプローブ30に置き換えることによって、交換可能なESIプローブおよびAPCIプローブを有する典型的なLC/MSイオン源をGC/APIMS動作用に改良することができる。あるいは、GCオーブン40が図2に示すように質量分析計50に常にインターフェースされるように、GC/質量分析インターフェース用の独立した導入装置を源内に組み込むことができる。したがって、源は、先行する分離装置からの液状流出物またはガス状流出物のいずれかをイオン化することができ、且つ、イオンの質量分析用質量分析計の真空領域内へ大気圧領域からのイオンを導入することができることが分かるであろう。
【0045】
GCは、イオン源領域内に組み込まれる、または、プローブアセンブリ(図1および図3)の一部である、マイクロGCであり得る。「プローブ」という用語は、質量分析計イオン化領域内へ化合物を導入する装置をいい、質量分析法の実践で経験を積んだ人にとっては周知のものである。
【0046】
典型的に、イオン化は、放電によって引き起こされ、同様の高電圧電子機器、およびLCとのインターフェース用に設計された市販のAPCIイオン源と共に利用できる、通常金属針の形の、同様の放電電極16を用いることができる。あるいは、ESI源が入手可能であれば、エレクトロスプレーキャピラリー23(図2)の代わりに針または延伸された金属塗膜を施したキャピラリーのような導電性材料を配設することによって放電を引き起こすことができる。ESI源が使う電圧範囲内では、鋭い先端部を用いると、放電が生じる。典型的な放電イオン化源において、一次イオン化工程には、正イオン化では、豊富な気体種からの電子の剥ぎ取り工程、または負イオン化では、最も負性のガス状成分への電子共鳴もしくは解離性電子付着工程が含まれる。電子剥ぎ取り工程によって、衝突中にさらなる反応を経た結果、熱力学的に好ましい電荷移動をする正イオンを生成する。水蒸気については、ヒドロニウムイオンが生成され、さらに衝突して、プロトン化した水クラスター(すなわち、[(HO)]H)を生成する。こうした気相反応が拡散制御され、大気圧で極めて短時間規模で衝突が起こるため、そのイオン化段階によって、利用可能な電荷すべてが最も塩基性の分子上に存在させられる。水蒸気、または溶媒および汚染物質のようなさらにより塩基性の物質が豊富にあるため、APCIでは、例えばプロトン化した水クラスターよりも塩基性の化合物だけが、イオンになる。
【0047】
こうした段階的に起こる現象を、ガス源66G(図2を参照)から反応ガス(流れ矢印66)を添加することによって効果的に利用できる。NHイオンを付着できる化合物、または[(NH]Hより塩基性の化合物、のいずれかだけがイオン化されるには、反応ガスとしてアンモニアガスが有用である。あるいは、液体窒素(前述)の気化から得られた窒素ガスのような乾燥した清浄なパージガス(流れ矢印64)は、より高エネルギー種をイオン化に利用できるように、イオン化領域19において水量および他の塩基性汚染物質ガス量を減少させるために用いることができる。メチルシクロヘキサノン、ナフタレン、ジメチルフェノール、ジニトロベンゼン、およびクロロメチルフェノールのような化合物は、正イオンLC/API条件下ではイオン化しない、または不十分にイオン化するが、このような条件下では、不活性パージガスを用いたGC溶出下で容易にイオン化する。
【0048】
また、図3に示すように、約8〜12電子ボルト(eV)間の光エネルギー出力のUVランプを用いてイオン化してもよい。光イオン化では、イオン化電位がUVランプ源のeV出力未満の分子から電子を剥ぎ取ることによってイオン化が起こる。光イオン化光源として、多数の特許、例えば、米国特許第5,338,931号明細書、同第5,808,299号明細書、同第5,393,979号明細書、同第5,338,931号明細書、および同第5,206,594号明細書に記載されている。対象の分子が直接イオン化されても、イオン化領域の水および他の汚染物質に対する上述のようなイオン分子反応によって電荷を失う場合がある。
【0049】
図3では、囲い11上に光イオン化ランプ68が取り付けられており、ランプの電源を供給する電圧を印加するためのコネクターVを有する。また、0〜500ボルトの電圧範囲で動作して、質量分析計への開口部54にイオンを収束させるのに役立つ高電圧HVの源に接続された電極70が図示されている。
【0050】
あるいは、米国特許第6,297,499号明細書に記載されるようなESIキャピラリーまたはウィックからイオンを生成することができる。感度は、キャピラリーを介したより低流量の液体の使用、または小径のウィックの使用によって向上し得る。したがって、このイオン化の方法を用いて、米国特許第5,788,166号明細書(バラスコビッチ(Valaskovic)ら)に記載のナノスプレーが、最も優れた感度のものを生成するようである。わずか数マイクロリットルの溶媒で長時間動作できる市販のナノスプレー針が、一次イオン生成の簡易な解決法である。ナノエレクトロスプレー用に典型的にはナノスプレー針を用いることによって、メタノール、水、アセトニトリルまたはそれらの混合物のような純粋な溶媒を用いて、GCまたは他の源からの気相検体分子は、液滴中に飛沫同伴させられるようになり、上記のエレクトロスプレー工程によってイオン化される。このイオン化モードは、イオン化できる化合物の種類に関してより選択的であり、一般に、ほとんどまたは全くフラグメンテーションのない擬分子イオンだけを生成する。このイオン化工程の利点として、熱フラグメンテーションがなければ、一次イオン化を発生させるのに用いられる液体媒体からプロトンを受け取るのに十分に塩基性の極性化合物から、典型的に[M+H]イオンだけが、正イオンモードで生成される。イオン化は、ナノスプレー工程で用いられる溶媒、または気相内の溶媒、のいずれかに添加剤を添加することによって影響を受ける場合がある。例えば、イオン化領域内へNHガスを添加することによって、アンモニアガスより塩基性の分子だけがプロトン化によってイオン化されるが、種々様々な化合物でNHの添加によるカチオン化が生じる。これによって、イオン化工程は分析上の問題に適応させることができる。
【0051】
このようなイオン化法を用いても、ほとんどフラグメンテーションが得られないものもある。しかし、フラグメンテーションが構造の解明に必要とされる場合、大気圧イオン源の入口開口部54(図1〜図3)の真空側にある領域53において、この中圧領域のイオンの衝突エネルギーを増大する電圧の印加によって、フラグメンテーションを生じることができる。あるいは、特定の質量のイオンを選択するためにいわゆるMS/MSまたはMS質量分析計を用いることができるが、ガスまたは表面衝突によるフラグメンテーションには1つの質量分析計を用い、次いで、フラグメントイオンの質量スペクトルを得るには別の質量分析計を用いる。GC/APIMSの高クロマトグラフ分解能を備えたMS/MSおよび選択またはマルチイオンモニタリングを併用することは、複雑な混合物における微量な揮発性成分の分析にとって有力で、選択性の高い手法である。LC/MS動作用に設計されている多くの質量分析計は、本発明の構成を用いて、イオンを高精度に質量測定できるため、現在、このような装置は、ガスクロマトグラフからのように、気相中に生成されたイオンの質量を正確に測定するために用いることができる。
【0052】
したがって、質量分析法による分析を用いて大気圧でガス状化合物から正または負のいずれかのイオンを生成するように記載した方法は、現行の装置より多くの利点を有する。例えば、ガスクロマトグラフは、市販のLC/MS装置にインターフェースすることができる。イオン化が大気圧であるため、真空イオン化法を用いるGC/MSでのように、GCカラムを通る気体流がイオン化源によって制限されない。薄い固定相、より短いカラム、およびそのカラムを通るより速い気体流を用いることによって、低沸点化合物をGCカラムに通過させることができる。したがって、GC/APIMSは、化合物の混合物から化合物を分離し、次いで、揮発性および半揮発性成分をイオン化する。このような方法でイオン化された化合物は、フラグメンテーションの発生に関して用いられ、正確な質量測定を行なう質量分析計の分析的な利点をすべて有するであろう。
【0053】
ポリイミド塗膜を施したGCカラムを加熱することによって発生した汚染物質は、外部の不活性ガス流に直接接触するカラムの部分を覆う塗膜を火炎除去することによって、または数時間インターフェースプローブ内で高温に調整することによって、減少させることができる。
【0054】
イオン化領域へのガスの添加によってイオン化を変えることができることを発見した。特に、窒素(以下、パージガスと呼ぶ)のような乾燥した清浄な不活性ガスでイオン化領域を浸すことで、この方法に適した化合物の種類が増加する。図5A、図5Bおよび図5Cは、X軸に沿って時間がプロットされ、Y軸に沿って質量分析計が示すイオン電流の合計がプロットされる、GCによって分離され、APCIによってイオン化した、市販の検定混合物のクロマトグラムである。図5Aは、パージガスなしの結果として得られたクロマトグラムを示す。図5Bは、パージガスとして窒素を用いた結果のクロマトグラムを示す。図5Cは、GCから溶出する検定混合物内の化合物のAPI質量スペクトルを示す。
【0055】
また、イオン化プロセスを変更するのに、正イオンモードではアンモニア、負イオンモードでは塩化メチレンのような反応ガスを用いることができることも知られている。アンモニアガスの添加によって、イオン化の特異性が拡大する。ガスクロマトグラフまたは液体クロマトグラフから溶出する化合物の分析には、正または負イオンのいずれかを用いることができる。負イオン化の場合、塩化メチレンが、特定の化合物の種類に対するイオン化プロセスを向上させるために用いることができる添加ガスである。この方法の感度は、ガスクロマトグラフィーまたは液体クロマトグラフィーで用いられる現在利用可能なイオン化法の感度に相当し、優れていることが多い。
【0056】
当業者は、上記のような本発明の教示の利益を有するが、本発明に対して変更を加えてもよい。かかる変更は、特許請求の範囲により定義されるように、本発明の趣旨の範囲内にあるものとして解釈される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】液体クロマトグラフ(LC)のインターフェースプローブの大気圧イオン化(API)源領域とインターフェースするガスクロマトグラフ(GC)オーブンおよび試料注入器を備えるプローブへの置き換えを示す大気圧イオン化源領域の実施形態の断面図である。
【図2】LCインターフェースプローブおよびGCインターフェースの両方を組み込んでいることを示す大気圧イオン(API)源領域の別の実施形態の断面図である。
【図3】イオン化の源としてUVランプを示す図1のAPIイオン源の変更実施形態である。
【図4】不活性ガス流を使用して出口先端部へのキャピラリーカラムを加熱することを示すGCインターフェースの出口先端部の断面図である。
【図5】X軸に沿って時間がプロットされ、Y軸に沿って質量分析計が示すイオン電流の合計がプロットされる、GCによって分離し、大気圧化学イオン化法(APCI)によってイオン化した、市販の検定混合物のクロマトグラムである。
【図5A】パージガスなしの結果を示す。
【図5B】パージガスとして窒素を用いた結果を示す。
【図5C】GCから溶出する検定混合物内の化合物からのAPI質量スペクトルを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧質量分析計に有用なイオン化源であって、
先行する分離装置からの液状流出物またはガス状流出物のいずれかをイオン化することができ、イオンの質量分析のために大気圧領域からのイオンを質量分析計の真空領域へ導入できる源を含んでなり、源が、
イオン化装置と、
イオン化装置を囲むことによりイオン化領域を画定する囲いであって、流出物を導入するための少なくとも1つのポートと、質量分析計の真空領域へイオンを導入するための開口部とを有する囲いと、を含むイオン化源。
【請求項2】
高電圧源に接続されているイオン化装置が、放電を生じることによってイオンを生成する請求項1に記載のイオン化源。
【請求項3】
イオン化装置が、紫外線源からの光子と気相分子との相互作用によってイオンを生成する請求項1に記載のイオン化源。
【請求項4】
囲いが、パージガスを導入するポートと、囲いから過剰なパージガスを抜く通気孔とをさらに含んでなる請求項1に記載のイオン化源。
【請求項5】
囲いが、反応ガスを導入するポートと、囲いから過剰な反応ガスを抜く通気孔とをさらに含んでなる請求項4に記載のイオン化源。
【請求項6】
囲いが、反応ガスを導入するポートと、囲いから過剰な反応ガスを抜く通気孔とをさらに含んでなる請求項1に記載のイオン化源。
【請求項7】
パージガスを導入するポートが、ガスを加熱するヒーターも含んでなる請求項4に記載のイオン化源。
【請求項8】
流出物を導入する少なくとも1つのポートが、液状流出物の源またはガス状流出物の源のいずれかからインターフェースプローブを受容するような形状に構成される請求項1に記載のイオン化源。
【請求項9】
流出物を導入する少なくとも1つのポートが、複数のポートとしての形状に構成され、各ポートが、それぞれ先行する分離装置からインターフェースプローブを受容するような形状に構成される請求項1に記載のイオン化源。
【請求項10】
先行する分離装置がそれぞれ液状流出物またはガス状流出物を供給する請求項9に記載のイオン化源。
【請求項11】
放電を生ずるイオン化装置が、高電圧を印加してタウンゼント放電またはコロナ放電を生ずる、鋭端または尖端電極を含んでなる請求項2に記載のイオン化源。
【請求項12】
電極が針である請求項11に記載のイオン化源。
【請求項13】
電極がキャピラリー管である請求項11に記載のイオン化源。
【請求項14】
高電圧が1000〜10000ボルトの間である請求項11に記載のイオン化源。
【請求項15】
放電を生ずるイオン化装置が、高電圧の印加によりエレクトロスプレーイオン化を生ずる、溶媒を満たしたキャピラリーまたはウィック構造を含んでなる請求項2のイオン化源。
【請求項16】
高電圧が2000〜6000ボルトの間である請求項15に記載のイオン化源。
【請求項17】
紫外線を生ずるイオン化装置が、UVランプを含んでなる請求項3に記載のイオン化源。
【請求項18】
加熱オーブンを有するガスクロマトグラフと大気圧質量分析計イオン源との間のインターフェースをさらに含んでなり、インターフェースは、ガスクロマトグラフから大気圧イオン化領域内へ化学成分を移送し易くするものであり、入口端部と質量分析計イオン入口開口部に隣接するイオン化領域の体積にガスクロマトグラフの加熱オーブンを連絡させる出口端部とを有する、高温に耐性のある材料で作られた管状部材を含んでなり、管状部材は、キャピラリーガスクロマトグラフのカラムを同軸で収容するような形状に構成され、管状部材の内部は、抵抗加熱されて管状部材の内部全体を均一な温度にすることにより、ガスクロマトグラフのカラムをその全長に渡って均一に加熱する、請求項1に記載のイオン化源。
【請求項19】
インターフェースの管状部材が導電性である請求項18に記載のイオン化源。
【請求項20】
インターフェースの管状部材が非導電性である請求項18に記載のイオン化源。
【請求項21】
インターフェースの管状部材の長さが1センチメートル〜2メートルの間である請求項18に記載のイオン化源。
【請求項22】
インターフェースの管状部材の出口端部が、質量分析計イオン入口開口部の5センチメートル以内に位置する請求項18に記載のイオン化源。
【請求項23】
インターフェースの管状部材の出口端部が、質量分析計イオン入口開口部の1センチメートル以内に位置する請求項18に記載のイオン化源。
【請求項24】
キャピラリーガスクロマトグラフのカラムを同軸に取り囲む鞘管をさらに含んでなり、鞘管が、キャピラリーの出口端部とほぼ面一な出口端部を有し、ガス源から不活性ガスを受け取るものであり、不活性ガスは、ガスクロマトグラフのオーブンによっておよびインターフェースの抵抗加熱された管状部材によって加熱された結果、キャピラリーカラムの温度はその出口端部に至るまでずっとほぼ均一であり、キャピラリーの出口端部から流れる流出物は、イオン化領域に入るにつれて、加熱された不活性ガスに取り囲まれる請求項18に記載のイオン化源。
【請求項25】
流出物の流れをイオン化領域内へ収束させるように形作られることによって、生成されたイオンに対する質量分析計の感度を向上させる、鞘管の出口端をさらに含んでなり、気体流がクロマトグラフ分解能を維持するためにイオン化領域から非イオン化流出物分子を除去する請求項24に記載のイオン化源。
【請求項26】
化学処理によってあらかじめ調整されて、キャピラリーの表面から有機物被覆を除去することにより、鞘管を介して流れるガスによるイオン化領域内への有機熱劣化汚染物質の導入を最小限に抑える、その出口端部に隣接するキャピラリーガスクロマトグラフのカラムの領域をさらに含んでなる請求項24に記載のイオン化源。
【請求項27】
鞘管を通り抜ける不活性ガスによって押し流された体積から揮発性の汚染物質を除去するのに十分な時間、領域をある温度に加熱することによってあらかじめ調整されている、その出口端部に隣接するキャピラリーガスクロマトグラフのカラムの領域をさらに含んでなる請求項24に記載のイオン化源。
【請求項28】
インターフェースが、注入器と、オーブンと、ガスクロマトグラフィーのキャピラリーカラムとを含んでなる小型化ガスクロマトグラフをさらに含んでなり、注入器、オーブン、およびクロマトグラフィーのキャピラリーカラムすべてが制御して加熱される請求項18に記載のイオン化源。
【請求項29】
インターフェースが、液体導入プローブと交換可能である請求項28に記載のイオン化源。
【請求項30】
(a)イオン化装置と、
イオン化装置を囲む囲いであって、イオン化領域を画定し、流出物を導入する少なくとも1つのポート、出口開口部、パージガスを導入するポート、および囲いから過剰なパージガスを抜く通気孔を有する囲いとを有する大気圧イオン化源を用いて、
先行する分離装置からの液状流出物またはガス状流出物のいずれかをイオン化して、イオンの質量分析のために質量分析計の真空領域内へ出口開口部を介してイオンを導入するステップと、
(b)イオン化領域を通して不活性パージガス流を維持して、クロマトグラフ分解能の時間規模内ではイオン化されない化合物を迅速に除去し、
それによって、ガス流出物からの質量分析計イオン信号のクロマトグラフ分解能を向上させるステップと、を含むクロマトグラフ法。
【請求項31】
(a)イオン化装置と、
イオン化装置を囲む囲いであって、イオン化領域を画定し、流出物を導入する少なくとも1つのポート、出口開口部、パージガスを導入するポート、および囲いから過剰なパージガスを抜く通気孔を有する囲いとを有する大気圧イオン化源を用いて、
先行する分離装置からの液状流出物またはガス状流出物のいずれかをイオン化して、イオンの質量分析のために質量分析計の真空領域内へ出口開口部を介してイオンを導入するステップと、
(b)イオン化領域を通して乾燥した清浄なパージガス流を維持して、クロマトグラフ分解能の時間規模内ではイオン化されない化合物を迅速に除去し、
それによって、イオン化領域の水および他の不純物を減少させることによって低エネルギーイオン化事象を極力抑えることによって流出物中でイオン化できる化合物種の数を増加させるステップと、を含むクロマトグラフ法。
【請求項32】
(a)イオン化装置と、
イオン化装置を囲む囲いであって、イオン化領域を画定し、流出物を導入する少なくとも1つのポート、出口開口部、パージガスを導入するポート、および囲いから過剰なパージガスを抜く通気孔を有する囲いとを有する大気圧イオン化源を用いて、
先行する分離装置からのガス状流出物をイオン化して、イオンの質量分析のために質量分析計の真空領域内へ出口開口部を介してイオンを導入するステップであって、
分離装置が、ガスクロマトグラフの注入器、オーブン、およびインターフェースがすべて制御して加熱されるのに十分に小さいガスクロマトグラフィーのキャピラリーカラムである、ステップと、
(b)イオン化領域を通して乾燥した清浄なパージガス流を維持して、クロマトグラフ分解能の時間規模内ではイオン化されない化合物を迅速に除去し、
それによって、イオン化領域の水および他の不純物を減少させることによって低エネルギーイオン化事象を極力抑えることによってガスクロマトグラフの流出物中でイオン化できる化合物種の数を増加させるステップと、を含むクロマトグラフ法。
【請求項33】
(a)イオン化装置と、
イオン化装置を囲む囲いであって、イオン化領域を画定し、流出物を導入する少なくとも1つのポート、出口開口部、パージガスを導入するポート、および囲いから過剰なパージガスを抜く通気孔を有する囲いとを有する大気圧イオン化源を用いて、
先行する分離装置からの液状流出物またはガス状流出物のいずれかにおける対象の化合物をイオン化して、イオンの質量分析のために質量分析計の真空領域内へ出口開口部を介してイオンを導入するステップと、
(b)イオン化領域を通して反応ガス流を維持して、クロマトグラフ分解能の時間規模内ではイオン化されない化合物を迅速に除去し、
それによって、選択された化合物種の分析を向上させるステップと、を含むクロマトグラフ法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図5C】
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【公表番号】特表2008−519985(P2008−519985A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−541296(P2007−541296)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【国際出願番号】PCT/US2005/040632
【国際公開番号】WO2006/060130
【国際公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】