説明

質量分析計

製薬化合物の潜在的に未知の代謝産物を検索する方法が開示される。製薬化合物の正確な質量は一般に既知であり、整数質量若しくは質量電荷比成分及び小数質量若しくは質量電荷比成分の形態とすることができる。可能性のある代謝産物は、親製薬化合物の小数質量若しくは質量電荷比に実質的に極めて同様である小数質量若しくは質量電荷比成分を有することに基づいて検索できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計及び質量分析の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬物代謝研究において対象とする代謝産物は、通常予測できない。なぜなら、代謝産物の形成は、新規な酵素反応及びバイオアベイラビリィティなどの事前に予測することの困難な因子によって決定され得るからである。
【0003】
現在、代謝産物を検出及び同定するために液体クロマトグラフィ(LC又はHPLC)を使用して複雑な生物学的マトリクスに存在する多くの異なる成分を分離することは、公知である。次いで、液体クロマトグラフから溶出する成分の質量若しくは質量電荷比が質量分析(MS)を使用して測定される。
【0004】
通常、LC−MS(液体クロマトグラフから溶出する親イオンが質量分析される)及びLC−MS−MS(液体クロマトグラフから溶出する特定の親イオンがフラグメンテーションされ、そのフラグメント産物が質量分析される)を使用して、しばしば陽及び陰イオン化モードの両方で、多くの測定を行う必要がある。液体クロマトグラフから溶出する厳密で正確な質量若しくは質量電荷比は通常決定される。なぜなら、液体クロマトグラフによって、異なる生物学的基質(胆汁、血漿、糞便及び尿など)に存在する多数の内因性のピークのうちの多くを無視できるようになるからである。
【0005】
次いで、対象代謝産物に関係し得ることを示す質量電荷比を有すると判断されたイオンは衝突セルにおいてフラグメンテーションされる。次いで、得られたフラグメント産物は質量分析され、各可能性のある代謝産物の構造を予測できるようにする。
【0006】
しかし、従来のアプローチは、潜在的な対象代謝産物を探すために質量スペクトルデータのすべてを検索する必要があるので比較的時間がかかる。次いで、対象代謝産物に関係する可能性があると考えられるすべてのイオンを準備し、次いで潜在的な対象代謝産物の構造を決定できるように別々にフラグメンテーションする必要がある。
【0007】
複雑な混合物に関係する質量スペクトルを検索し、対象代謝産物に関係し得る潜在的なイオンを同定し、フラグメンテーションされるべき所定のイオンを選択し、対象のイオンをフラグメンテーションし、次いでフラグメント産物を質量分析する処理は、比較的時間がかかり得ることが理解される。
【0008】
製薬及びバイオテクノロジー産業においては、試料を短時間でかつ正確に分析できることが特に重要である。このことが、質量スペクトルに存在する主要なピークが分析のために自動的に選択されるという(特定の親イオンがフラグメンテーションのために選択される)MS/MSの自動化方法をもたらした。これにより、ユーザは、1回のHPLC注入から親イオン質量スペクトル及びいくつかのMS/MSスペクトルを得ることができる。後のMS/MSによる分析のために親イオン質量スペクトル中のほとんどの強いピーク(すなわち、イオン)を自動的に選択することは公知である。少ないフィルタを規定してこのプロセスを若干効率的にした従来のシステムもある。例えば、所定の質量若しくは質量電荷比を有するイオンを、考慮から自動的に外されるように、データシステムに入力できる。これらの質量若しくは質量電荷比は、例えば、存在することが既知である溶媒ピークの質量若しくは質量電荷比又はすでに分析された成分の質量若しくは質量電荷比に対応し得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の自動モードのデータ獲得の利点は、1回のHPLC注入からかなりの量のデータが得られ得ることである。しかし、従来のアプローチの欠点は、あらかじめ定義された強度閾値を超える強度を有するピークだけが、後のMS/MS分析(すなわち、フラグメンテーション分析)のために通常選択されることである。重要なのは、任意の特定時間に多くの強いピークが存在するか、又は観察される場合、これらのピークのいくつかはMS/MS分析のための選択から簡単に外れ得る。なぜなら、観察されるクロマトグラフィピークの比較的短い持続期間中に別々のMS/MSスペクトルをすべて記録する時間が十分にないからである。
【0010】
従来のアプローチについて特に問題となるその他の点は、潜在的な代謝産物の質量若しくは質量電荷比が一般に事前に分からないので、そのすべて又は多くが後から興味が少ないか、又はほとんどないと判明される多くのピークを分析して時間を無駄にし得ることである。このことはまた、質量分析計が他のイオンの分析に忙しいために、認識されていれば分析され得た潜在的な対象の実際のピークを全く分析し損なうことを意味し得る。
【0011】
したがって、質量分析の改善された方法を提供すること、特に、対象代謝産物を検索する現在のアプローチを改善することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様によると、質量分析の方法が提供される。この質量分析方法は、
第1の物質又はイオンの正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比を決定するステップであって、前記正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比が第1の整数(integer nominal)質量若しくは質量電荷比成分及び第1の小数(decimal)質量若しくは質量電荷比成分を含むステップと、
1つ以上の第2の物質又はイオンであって、その小数質量若しくは質量電荷比成分が前記第1の小数質量若しくは質量電荷比成分よりも0〜x1mDa若しくはミリ質量電荷比単位大きい、及び/又は、0〜x2mDa若しくはミリ質量電荷比単位小さい1つ以上の第2の物質又はイオンを検索するステップとを含む方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1つ以上の前記第2の物質又はイオンを検索する前記ステップは、好ましくは、1つ以上の前記第2の物質又はイオンの小数質量若しくは質量電荷比成分にのみ基づき、1つ以上の前記第2の物質又はイオンの整数質量若しくは質量電荷比成分には基づかず、検索することを含む。
【0014】
1つ以上の前記第2の物質又はイオンを検索する前記ステップは、好ましくは、前記第1の整数質量若しくは質量電荷比成分と異なる整数質量若しくは質量電荷比成分を有する一部又はすべての第2の物質又はイオンを検索することを含む。
【0015】
一実施形態によると、x1は、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜55、(xiii)55〜60、(xiv)60〜65、(xv)65〜70、(xvi)70〜75、(xvii)75〜80、(xviii)80〜85、(xix)85〜90、(xx)90〜95、(xxi)95〜100、及び(xxii)>100からなる群から選択される範囲に入る。同様に、x2は、好ましくは、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜55、(xiii)55〜60、(xiv)60〜65、(xv)65〜70、(xvi)70〜75、(xvii)75〜80、(xviii)80〜85、(xix)85〜90、(xx)90〜95、(xxi)95〜100、及び(xxii)>100からなる群から選択される範囲に入る。
【0016】
一実施形態によると、前記第1の物質又はイオンは、製薬化合物、薬物若しくは活性成分を含むか又はそれに関係する。好ましくは、1つ以上の前記第2の物質又はイオンは、前記第1の物質又はイオンの1つ以上の代謝産物若しくは誘導体を含むか又はそれに関係する。
【0017】
一実施形態によると、前記第1の物質又はイオンは、生体高分子、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、アミノ酸、炭水化物、糖、脂質、脂肪酸、ビタミン、ホルモン、DNAの部分又はフラグメント、cDNAの部分又はフラグメント、RNAの部分又はフラグメント、mRNAの部分又はフラグメント、tRNAの部分又はフラグメント、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、リボヌクレアーゼ、酵素、代謝産物、多糖類、リン酸化ペプチド、リン酸化タンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質、又はステロイドを含む。同様に、一実施形態によると、1つ以上の前記第2の物質又はイオンは、生体高分子、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、アミノ酸、炭水化物、糖、脂質、脂肪酸、ビタミン、ホルモン、DNAの部分又はフラグメント、cDNAの部分又はフラグメント、RNAの部分又はフラグメント、mRNAの部分又はフラグメント、tRNAの部分又はフラグメント、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、リボヌクレアーゼ、酵素、代謝産物、多糖類、リン酸化ペプチド、リン酸化タンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質、又はステロイドを含む。
【0018】
分析される試料は、好ましくは、異なるアイデンティティを示すか若しくは異なる種を含む少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500若しくは5000の成分、分子又は検体を含む。
【0019】
1つ以上の前記第2の物質又はイオンを検索する前記ステップは、好ましくは、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウを質量スペクトルデータ又は質量スペクトルに適用することをさらに含む。前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウは、好ましくは、前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウから外れる小数質量若しくは質量電荷比成分を有する第2の物質又はイオンの有意性をフィルタで取り除くか、除去するか、減衰させるか、又は少なくとも低減する。
【0020】
前記第1の物質又はイオンの正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比から第2の物質又はイオンの正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比を差し引いたものは、好ましくは、ΔMダルトン又は質量電荷比単位の値を有する。一実施形態によると、x1及び/又はx2は、ΔMの関数として対称に変化し得る。例えば、x1及び/又はx2は、(i)0、(ii)±0〜5、(iii)±5〜10、(iv)±10〜15、(v)±15〜20、(vi)±20〜25、(vii)±25〜30、(viii)±30〜35、(ix)±35〜40、(x)±40〜45、(xi)±45〜50、(xii)±50〜55、(xiii)±55〜60、(xiv)±60〜65、(xv)±65〜70、(xvi)±70〜75、(xvii)±75〜80、(xviii)±80〜85、(xix)±85〜90、(xx)±90〜95、(xxi)±95〜100、(xxii)>100、及び(xxiii)<−100からなる群から選択されるΔMの値について対称に、ΔMの関数として変化し得る。
【0021】
好ましい実施形態によると、x1及び/又はx2は、ΔMの関数として非対称に変化し得る。好ましくは、Mlower<ΔM及び/又はΔM<Mupperならば、x1及び/又はx2は実質的に一定値を有する。好ましくは、Mlower>ΔM及び/又はΔM>Mupperならば、x1及び/又はx2はΔMの関数として実質的に非一定値を有する。Mlower>ΔM及び/又はΔM>Mupperならば、x1及び/又はx2は、好ましくは、ΔMの関数として実質的に直線的に変化する。一実施形態によると、ΔM値の少なくともある範囲にわたり、x1及び/又はx2は、好ましくは、y%*ΔMの率で増加するか、又は減少し、ここでyは、(i)<0.01、(ii)0.01〜0.02、(iii)0.02〜0.03、(iv)0.03〜0.04、(v)0.04〜0.05、(vi)0.05〜0.06、(viii)0.06〜0.07、(ix)0.07〜0.08、(x)0.08〜0.09、(xi)0.09〜0.10、(xii)0.10〜0.11、(xiii)0.11〜0.12、(xiv)0.12〜0.13、(xv)0.13〜0.14、(xvi)0.14〜0.15、(xvii)0.15〜0.16、(xviii)0.16〜0.17、(xix)0.17〜0.18、(xx)0.18〜0.19、(xxi)0.19〜0.20、及び(xxii)>0.20からなる群から選択される。
【0022】
一実施形態によると、Mlower>ΔM及び/又はΔM>Mupperならば、x1及び/又はx2は、実質的に曲線的、段階的、又は非直線的にΔMの関数として変化する。
【0023】
好ましくは、Mupperは、ダルトン又は質量電荷比単位の値であり、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜55、(xiii)55〜60、(xiv)60〜65、(xv)65〜70、(xvi)70〜75、(xvii)75〜80、(xviii)80〜85、(xix)85〜90、(xx)90〜95、(xxi)95〜100、及び(xxii)>100からなる群から選択される範囲に入る。同様に、Mlowerは、好ましくは、ダルトン又は質量電荷比単位の値であり、(i)<−100、(ii)−100〜−95、(iii)−95〜−90、(iv)−90〜−85、(v)−85〜−80、(vi)−80〜−75、(vii)−75〜−70、(viii)−70〜−65、(ix)−65〜−60、(x)−60〜−55、(xi)−55〜−50、(xii)−50〜−45、(xiii)−45〜−40、(xiv)−40〜−35、(xv)−35〜−30、(xvi)−30〜−25、(xvii)−25〜−20、(xviii)−20〜−15、(xix)−15〜−10、(xx)−10〜−5、(xxi)−5〜−1、及び(xxii)>−1からなる群から選択される範囲に入る。
【0024】
一実施形態によると、前記方法は、さらなる分析のために、その小数質量若しくは質量電荷比成分が前記第1の小数質量若しくは質量電荷比成分よりも0〜x1mDa若しくはミリ質量電荷比単位大きい、及び/又は、0〜x2mDa若しくはミリ質量電荷比単位小さい1つ以上の第2の物質又はイオンを選択するステップは、1つ以上の前記第2の物質又はイオンをフラグメンテーションすることを含む。
【0025】
前記さらなる分析のために選択するステップは、好ましくは、その小数質量若しくは質量電荷比成分が前記第1の小数質量若しくは質量電荷比成分よりも0〜x1mDa若しくはミリ質量電荷比単位大きい、及び/又は、0〜x2mDa若しくはミリ質量電荷比単位小さい1つ以上の第2の物質又はイオンを衝突又はフラグメンテーションセルへ前方向にトランスミットすることを含む。一実施形態によると、前記方法は、1つ以上の前記第2の物質又はイオンをフラグメンテーションして得られたフラグメント産物又はイオンを質量分析するステップをさらに含む。
【0026】
一実施形態によると、前記方法は、分析される試料中の成分、検体又は分子を分離プロセスによって分離するステップをさらに含む。好ましくは、前記分離プロセスは液体クロマトグラフィを含む。一実施形態によると、前記分離プロセスは、(i)高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)、(ii)陰イオン変換、(iii)陰イオン変換クロマトグラフィ、(iv)陽イオン変換、(v)陽イオン変換クロマトグラフィ、(vi)イオン対逆相クロマトグラフィ、(vii)クロマトグラフィ、(viii)1次元電気泳動、(ix)多次元電気泳動、(x)サイズ排除、(xi)親和性、(xii)逆相クロマトグラフィ、(xiii)キャピラリ電気泳動クロマトグラフィ(「CEC」)、(xiv)電気泳動、(xv)イオン移動度分離、(xvi)フィールド非対称なイオン移動度分離又はスペクトロメトリ(「FAIMS」)、(xvii)キャピラリ電気泳動、(xviii)ガスクロマトグラフィ、及び(xix)超臨界流体クロマトグラフィを含み得る。
【0027】
一実施形態によると、前記方法は、分析される試料中の成分、検体又は分子をイオン化するステップをさらに含む。イオン源は、パルス化イオン源又は連続イオン源を備え得る。一実施形態によると、前記イオン源は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、及び(xvi)ニッケル−63放射性イオン源からなる群から選択され得る。
【0028】
一実施形態によると、前記方法は、質量分析部を使用して前記第1の物質若しくはイオン及び/又は1つ以上の前記第2の物質若しくはイオン及び/又はフラグメント産物若しくはイオンを質量分析するステップをさらに含む。前記質量分析部は、好ましくは、四重極質量分析部を含む。他の実施形態によると、前記質量分析部は、(i)フーリエ変換(「FT」)質量分析部、(ii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(iii)飛行時間(「TOF」)質量分析部、(iv)直交加速飛行時間(「oaTOF」)質量分析部、(v)軸方向加速飛行時間質量分析部、(vi)扇形磁場質量分析計、(vii)ポール又は3D四重極質量分析部、(viii)2D又は直線四重極質量分析部、(ix)ペニングトラップ質量分析部、(x)イオントラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換オービトラップ(orbitrap)、(xii)静電イオンサイクロトロン共鳴質量分析計、及び(xiii)静電フーリエ変換質量分析計からなる群から選択される質量分析部を含み得る。
【0029】
前記第1の物質若しくはイオン及び/又は1つ以上の前記第2の物質若しくはイオンの厳密な若しくは正確な質量若しくは質量電荷比は、好ましくは、20ppm、19ppm、18ppm、17ppm、16ppm、15ppm、14ppm、13ppm、12ppm、11ppm、10ppm、9ppm、8ppm、7ppm、6ppm、5ppm、4ppm、3ppm、2ppm、1ppm又は<1ppm以内に決定される。
【0030】
前記第1の物質若しくはイオン及び/又は1つ以上の前記第2の物質若しくはイオンの厳密な若しくは正確な質量若しくは質量電荷比は、好ましくは、0.01質量単位、0.009質量単位、0.008質量単位、0.007質量単位、0.006質量単位、0.005質量単位、0.004質量単位、0.003質量単位、0.002質量単位、0.001質量単位又は<0.001質量単位以内に決定される。
【0031】
好ましい実施形態によると、分析される試料は、好ましくは、疾患生体、非疾患生体、処置生体、非処置生体、変異生体又は野生型生体から取られる。
【0032】
一実施形態によると、前記方法は、好ましくは、前記第2の物質若しくはイオンの1つ以上の組成を同定又は決定するステップをさらに含む。
【0033】
一実施形態によると、前記方法は、前記第1の物質若しくはイオンの強度、濃度又は発現レベルを定量又は決定するステップをさらに含む。好ましくは、前記方法は、前記第2の物質若しくはイオンの1つ以上の強度、濃度又は発現レベルを定量又は決定するステップをさらに含む。
【0034】
前記方法は、好ましくは、前記第1の物質若しくはイオンの1つ以上の相対強度、濃度又は発現レベルを決定又は定量するステップをさらに含む。好ましくは、前記方法は、前記第2の物質若しくはイオンの1つ以上の相対強度、濃度又は発現レベルを決定又は定量するステップをさらに含む。
【0035】
本発明の一態様によると、質量分析の方法が提供される。前記質量分析の方法は、
親イオンの正確な質量電荷比を決定するステップであって、前記正確な質量電荷比が第1の整数値及び第1の小数値を含むステップと、
前記親イオンの1つ以上の代謝産物を検索するステップと、を含み、
前記検索するステップが、
(i)潜在的な対象のイオンの正確な質量電荷比の決定であって、前記潜在的な対象のイオンの各々の正確な質量電荷比が第2の整数値及び第2の小数値を含む決定をすること、及び、
(ii)前記潜在的な対象のイオンのうちのイオンの、前記イオンが正確な質量電荷比を有することに基づく、認識、選択、優先質量フィルタリング又はトランスミット、決定又はフラグメンテーションであって、前記第2の小数値が前記第1の小数値のx mDa若しくはミリ質量電荷比単位以内であるような認識、選択、優先質量フィルタリング又はトランスミット、決定又はフラグメンテーションをすること含む。
【0036】
好ましくは、xは、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜55、(xiii)55〜60、(xiv)60〜65、(xv)65〜70、(xvi)70〜75、(xvii)75〜80、(xviii)80〜85、(xix)85〜90、(xx)90〜95、(xxi)95〜100、及び(xxii)>100からなる群から選択される範囲に入る。
【0037】
本発明の一態様によると、質量分析計が提供される。前記質量分析計は、
親イオンの正確な質量電荷比を決定するように構成及び適合された手段であって、前記正確な質量電荷比が第1の整数値及び第1の小数値を含む手段と、
前記親イオンの1つ以上の代謝産物を検索するように構成及び適合された手段とを含み、前記手段は、
(i)潜在的な対象のイオンの正確な質量電荷比の決定であって、前記潜在的な対象のイオンの各々の正確な質量電荷比が第2の整数値及び第2の小数値を含む決定、及び、
(ii)前記潜在的な対象のイオンのうちのイオンの、前記イオンが正確な質量電荷比を有することに基づく、認識、選択、優先質量フィルタリング又はトランスミット、決定又はフラグメンテーションであって、前記第2の小数値が前記第1の小数値のx mDa若しくはミリ質量電荷比単位以内であるような認識、選択、優先質量フィルタリング又はトランスミット、決定又はフラグメンテーションをするように構成及び適合される手段である。
【0038】
好ましい実施形態によると、xは、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜55、(xiii)55〜60、(xiv)60〜65、(xv)65〜70、(xvi)70〜75、(xvii)75〜80、(xviii)80〜85、(xix)85〜90、(xx)90〜95、(xxi)95〜100、及び(xxii)>100からなる群から選択される範囲に入る。
【0039】
本発明の一態様によると、質量分析計が提供される。前記質量分析計は、
第1の物質又はイオンの正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比を決定するように構成及び適合された手段であって、前記正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比が第1の整数質量若しくは質量電荷比成分及び第1の小数質量若しくは質量電荷比成分を含む手段と、
その小数質量若しくは質量電荷比成分が前記第1の小数質量若しくは質量電荷比成分よりも0〜x1mDa若しくはミリ質量電荷比単位大きい、及び/又は、0〜x2mDa若しくはミリ質量電荷比単位小さい1つ以上の第2の物質又はイオンを検索するように構成及び適合された手段とを備える。
【0040】
本発明の一態様によると、代謝産物が親薬物と実質的に同様な小数質量若しくは質量電荷比を有することに基づき、前記親薬物の潜在的な前記代謝産物を検索するステップを含む質量分析の方法が提供される。
【0041】
前記検索するステップは、好ましくは、複数のフラグメントイオンが生成されるように親薬物の潜在的な代謝産物に関係するイオンをフラグメンテーションするステップと、前記フラグメントイオンを質量分析するステップとをさらに含む。
【0042】
本発明の一態様によると、親薬物の潜在的な代謝産物を検索するように構成及び適合された手段であって、前記親薬物と実質的に同様な小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンを検索する手段を備える質量分析計が提供される。
【0043】
前記質量分析計は、好ましくは、複数のフラグメントイオンが生成されるように親薬物の潜在的な代謝産物に関係するイオンをフラグメンテーションするための手段と、前記フラグメントイオンを質量分析するための手段とをさらに備える。
【0044】
本発明の一態様によると、質量分析の方法が提供される。前記方法は、
小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウを質量スペクトルデータ又は質量スペクトルに適用するステップと、
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入る小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンを決定するステップと、
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入る小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンの少なくとも一部をフラグメンテーションして複数のフラグメントイオンを生成するステップと、
前記複数のフラグメントイオンの少なくとも一部を質量分析するステップとを含む。
【0045】
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウは、好ましくは、ΔMの関数として変化するプロファイルを有し、ΔMは第1の物質又はイオンと第2の物質又はイオンとの間の質量若しくは質量電荷比おける差である。
【0046】
前記第1の物質又はイオンは、好ましくは、製薬化合物を含み、前記第2の物質又はイオンは、前記第1の物質又はイオンの代謝産物を含む。
【0047】
本発明の一態様によると、質量分析計が提供される。前記質量分析計は、
小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウを質量スペクトルデータ又は質量スペクトルに適用するように構成及び適合された手段と、
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入る小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンを決定するように構成及び適合された手段と、
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入る小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンの少なくとも一部をフラグメンテーションして複数のフラグメントイオンを生成するように構成及び適合された手段と、
前記複数のフラグメントイオンの少なくとも一部を質量分析するように構成及び適合された手段とを備える。
【0048】
本発明の一態様によると、質量分析の方法が提供される。前記方法は、
製薬化合物の代謝産物のうちの1つを含む生物学的試料を準備するステップと、
前記試料を液体クロマトグラフィにかけるステップと、
液体クロマトグラフから出た溶出物をイオン化して複数のイオンを生成するステップと、
前記イオンを質量分析するステップと、
前記イオンの1つ以上が前記製薬化合物の小数質量若しくは質量電荷比のx mDa若しくはミリ質量電荷比単位以内の小数質量若しくは質量電荷比成分を有する質量若しくは質量電荷比を有するかどうかを決定するステップと、を含む。
【0049】
好ましくは、xは、(i)1、(ii)2、(iii)3、(iv)4、(v)5、(vi)6、(vii)7、(viii)8、(ix)9、(x)10、(xi)11、(xii)12、(xiii)13、(xiv)14、(xv)15、(xvi)16、(xvii)17、(xviii)18、(xix)19、(xx)20、(xxi)21、(xxii)22、(xxiii)23、(xxiv)24、(xxv)25、(xxvi)26、(xxvii)27、(xxviii)28、(xxix)29、(xxx)30、(xxxi)31、(xxxii)32、(xxxiii)33、(xxxiv)34、(xxxv)35、(xxxvi)36、(xxxvii)37、(xxxviii)38、(xxxix)39、(xl)40、及び(xli)>40からなる群から選択される。
【0050】
本発明の一態様によると、質量分析計が提供される。前記質量分析計は、
使用の際に、製薬化合物の代謝産物のうちの1つを含む生物学的試料を液体クロマトグラフィにかけるように構成された液体クロマトグラフと、
前記液体クロマトグラフから出た溶出物をイオン化して複数のイオンを生成するためのイオン源と、
前記イオンを質量分析するための質量分析部と、
前記イオンの1つ以上が前記製薬化合物の小数質量若しくは質量電荷比のx mDa若しくはミリ質量電荷比単位以内の小数質量若しくは質量電荷比成分を有する質量若しくは質量電荷比を有するかどうかを決定するように構成及び適合された手段と、を備える。
【0051】
好ましくは、xは、(i)1、(ii)2、(iii)3、(iv)4、(v)5、(vi)6、(vii)7、(viii)8、(ix)9、(x)10、(xi)11、(xii)12、(xiii)13、(xiv)14、(xv)15、(xvi)16、(xvii)17、(xviii)18、(xix)19、(xx)20、(xxi)21、(xxii)22、(xxiii)23、(xxiv)24、(xxv)25、(xxvi)26、(xxvii)27、(xxviii)28、(xxix)29、(xxx)30、(xxxi)31、(xxxii)32、(xxxiii)33、(xxxiv)34、(xxxv)35、(xxxvi)36、(xxxvii)37、(xxxviii)38、(xxxix)39、(xl)40、及び(xli)>40からなる群から選択される。
【0052】
好ましい実施形態の利点は、潜在的に薬物に関連する代謝産物ピークだけが後のMS/MSによる分析のために選択されること、及び、内因性のピークのすべて又は少なくとも多数がさらなる検討から効果的に無視されることである。したがって、好ましい実施形態は、対象代謝産物に関係するイオンを検索し、質量分析するプロセスを著しく改善する。また、好ましい実施形態は、対象代謝産物が、例えば、液体クロマトグラフィの本質的に短い時間スケール内でそれらをフラグメンテーションすることによりさらなる分析のために選択されることを可能にする。
【0053】
好ましい実施形態は、質量若しくは質量電荷比の小数部が予め定義されかつ好ましくは比較的狭い小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入るような質量若しくは質量電荷比を有するイオンだけを選択することにより、薬物代謝研究における次のMS/MSによる分析の可能性がある多くの前駆体イオンを、検討材料から実質的にフィルタを用いて取り除くか又は除去する。
【0054】
本発明の様々な実施形態を、実施例により、及び、さらに図を用いて、説明する。
【0055】
代謝研究において、親薬物の元素組成は通常一般によく知られているので、親薬物の理論的に厳密な質量若しくは質量電荷比を計算できる。好ましい実施形態によって認識され得る(したがってさらなる分析のために選択され得る)薬剤及び関連の代謝産物の例を図1に示す。図1は、モノアイソトピックプロトン化質量が326.0860Daであるミダゾラム(C18 H13 Cl F N3)と呼ばれる親薬物の元素組成を示す。この薬物の一般的な代謝経路は、酸素の付加である。したがって、酸素がミダゾラムに付加されると、その質量は+15.9949Daだけ増加され、新しい化合物(すなわち、ミダゾラムのヒドロキシル化代謝産物)のモノアイソトピック質量は342.0809Daとなる。
【0056】
ミダゾラムのヒドロキシル化代謝産物の構造も図1に示す。なお、親薬物ミダゾラム及びそのヒドロキシル化代謝産物の正確な質量の小数部における差は、ほんの0.0860−0.0809=0.0051Da(すなわち、ほんの5.1mDaの質量不足度)である。したがって、親薬物及びその対応の代謝産物の総質量又は絶対質量は16Da近く異なるが、親及び代謝産物の少数質量成分の差は非常に小さいことが明らかである。
【0057】
質量分析において、イオンには、整数質量若しくは質量電荷比(例えば、ミダゾラムの場合、326)、又は正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比(例えば、ミダゾラムの場合、326.0860)のいずれかが与えられ得る。正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比は、整数成分又は値及び少数成分又は値を含むと考えられ得る。このことは、すべての元素(炭素を除く)がおよそでは整数質量であるが厳密には整数質量でないことに大きくは起因する。原子質量のための国際スケールにおいて、炭素の最も大量にある同位体には、厳密な原子質量の12.0000ダルトン(Da)が与えられている。このスケールにおいて、生物学的系において最も大量にある元素の最も大量にある同位体の正確な原子質量は、水素(H)1.0078Da、窒素(N)14.0031Da、及び酸素(O)15.9949Daである。
【0058】
正確な若しくは厳密な(すなわち、非整数)質量若しくは質量電荷比は、整数質量若しくは質量電荷比の値若しくは成分と対応する質量の充足(sufficiency)若しくは不足(deficiency)の値若しくは成分とを合わせたものとして表され得る。質量の充足又は不足度は、整数値からの偏差(deviation)を表すと考えられ、ミリダルトン(mDa)で表現され得る。例えば、水素(H)は、整数質量が1及び質量充足度が7.8mDaであると表現され得る。窒素(N)は、整数質量が14及び質量充足度が3.1mDaであると表現され得る。酸素(O)は、整数質量が16及び質量不足度が5.1mDaであると表現され得る。
【0059】
同様に、有機分子のイオンの質量若しくは質量電荷比にも、整数質量若しくは質量電荷比と対応するその整数値からの質量充足又は不足度とを合わせたものが与えられる。
【0060】
好ましい実施形態に係るイオン又は化合物の質量若しくは質量電荷比を考える場合、イオン化の方法も考慮することも好ましい。なぜなら、これにより、イオン元素組成が決定でき、したがってまた、イオン質量若しくは質量電荷比が計算できるからである。例えば、エレクトロスプレーイオン化によって溶液がイオン化される場合、検体分子はプロトン化されて正に荷電されたイオンを形成し得る。
【0061】
これらのイオンの理論的に正確な質量若しくは質量電荷比が分かると、好ましい実施形態によれば、可能性のある又は潜在的な対象代謝産物の正確な質量若しくは質量電荷比に関して所定の予測が可能である。このため、対象代謝産物である可能性のあるピークのより良い予測が可能となり、したがって、潜在的な代謝産物が検索され、認識され、そしてMS/MSによる構造分析などのさらなる分析のために通過させるか又は選択され得る。
【0062】
代謝産物は、親薬物に対する生体内変換の結果である。好ましい実施形態の一態様は、潜在的な対象代謝産物の質量充足度又は質量不足度が対応する親薬物の質量充足度又は質量不足度に実質的に同様であるという事実の認識及び活用である。
【0063】
好ましい実施形態の一態様は、親イオンと潜在的な代謝産物との質量充足度又は質量不足度における潜在的な類似度を使用して潜在的な対象代謝産物をより戦略的に検索できることの認識である。特に、好ましい実施形態は、親薬物の正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比の小数部が親薬物の代謝産物の正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比の小数部と実質的に同様であることに基づいて代謝産物を検索する。
【0064】
好ましい実施形態によると、親薬物の前駆体イオンの正確な質量若しくは質量電荷比の小数部が計算される。次いで、好ましくは、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウが親薬物の精密な小数質量若しくは質量電荷比について設定される。好ましい実施形態によると、小数質量ウィンドウに対する上限及び下限が設定され得る。しかし、他の実施形態によると、小数質量ウィンドウに対して上限だけ又は下限だけが設定され得る。一実施形態によると、上限及び下限は同じ大きさ又は幅を有し得か、あるいは、上限及び下限は大きさ又は幅が異なり得る。
【0065】
好ましい実施形態によると、好ましくは、1つ以上の対象代謝産物を含むと考えられる試料の前駆体又は親イオン質量スペクトルが得られる。次いで、好ましくは、親イオン質量スペクトルが自動的に検索され、イオンの正確な質量若しくは質量電荷比の小数部が既知の親化合物若しくはイオンの正確な質量若しくは質量電荷比の小数質量部に非常に近くなければならないという判断基準を満たすいくつかの又はすべての質量ピークが求められる。好ましい実施形態によると、潜在的な対象イオン(好ましくは、親化合物の1つ以上の代謝産物に関係する)は、イオンの小数質量若しくは質量電荷比が親化合物又はイオンの小数質量若しくは質量電荷比についての質量若しくは質量電荷比の比較的狭い帯域又は範囲に入ると決定される事実によって、認識されるか、同定されるか、又はそうでなければ、さらなる分析のために選択される。
【0066】
対象代謝産物を検索するプロセスにおいて好ましく使用される小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの特性をここで図2を参照してより詳細に説明する。
【0067】
図2は、好ましい実施形態によって使用又は適用され得る小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの幅を示す。小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ(単位はmDa)の幅は、親イオン又は化合物と、代謝産物イオン又は化合物を含み得る検索中のイオン又は化合物との間の絶対質量(単位はDa)又は質量電荷比における差の関数として示される。親イオン又は化合物と、対象の代謝産物イオン又は化合物を含み得る検索中のイオン又は化合物との間の絶対質量若しくは質量電荷比における差は、ΔMと称され得る。同様に、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限及び下限は、値δmを有するとして称され得る。
【0068】
例えば、親イオンと潜在的な対象イオンとの間の質量若しくは質量電荷比における絶対差が10Daならば、図2に示す実施形態によると、親イオンの精密な小数質量若しくは質量電荷比よりも大きな上限+20mDa及び親イオンの精密な小数質量若しくは質量電荷比より低い下限20mDaを有する小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウが設定され得る。
【0069】
好ましい実施形態によると、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限及び下限は、親イオンと可能性のある代謝産物イオンとの質量若しくは質量電荷比における絶対差ΔMの関数として変化する。したがって、また図2に示されるように、親イオンと潜在的な対象イオンとの間の質量若しくは質量電荷比における絶対差が例えば100Daならば、図2を参照して示しかつ説明される実施形態によると、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限及び下限は非対称である。図2に示す特定の実施形態によると、質量若しくは質量電荷比ウィンドウは、親イオンの精密な小数質量若しくは質量電荷比よりも大きな上限+92mDa、及び親イオンの精密な小数質量若しくは質量電荷比よりも低い下限、ほんの50mDaを有する。
【0070】
一般的に、また、図2に示すように、親イオン又は化合物と対象の代謝産物イオン又は化合物との間の質量若しくは質量電荷比における差ΔMが比較的小さい場合(例えば、±0〜30Da)、好ましい実施形態によると、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限及び下限の大きさも比較的小さくあり得る(例えば、20〜30mDaの範囲)。しかし、親イオン又は化合物と対象の可能性のある代謝産物イオン又は化合物との間の質量若しくは質量電荷比における絶対差ΔMは増加するにつれ、好ましくは小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限及び下限の大きさも増加する。
【0071】
図2に示す実施形態によると、質量若しくは質量電荷比の差ΔM(すなわち、親イオン又は化合物の質量若しくは質量電荷比−代謝産物イオン又は化合物の質量若しくは質量電荷比)が−40〜20Daの範囲内にある対象代謝産物を検索する場合、好ましくは小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限は一定値の20mDaに設定される。親イオン又は化合物と対象の代謝産物イオン又は化合物との間の質量若しくは質量電荷比の差が>20Daであれば、好ましくは小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限は+0.09%×(20Daより上のΔM)の率で増加する(すなわち、ΔMが+100の場合、小数質量ウィンドウ又は質量電荷比の上限は好ましくは20mDa+0.09%*(100Da−20Da)=20mDa+0.072Da=92mDaに設定される)。親イオン又は化合物と対象の代謝産物イオン又は化合物との間の質量若しくは質量電荷比の差が<−40Daならば、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限は、好ましくは0.05%×(−40Daより下のΔM)というより低い率で増加する(すなわち、ΔMが−100の場合、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限は20mDa+0.05%*(100Da−40Da)=20mDa+0.030Da=50mDaに設定される)。
【0072】
同様に、親イオン又は化合物と代謝産物イオン又は化合物との間の質量若しくは質量電荷比の差ΔMが−20〜40Daの範囲内にある対象代謝産物を検索する場合、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの下限は好ましくは一定値の−20mDaに設定される。親イオン又は化合物と対象の代謝産物イオン又は化合物との間の質量若しくは質量電荷比の差が>40Daであれば、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの下限は好ましくは−0.05%×(40Daより上のΔM)の率で負に増加する(すなわち、ΔMが+100の場合、小数質量ウィンドウ又は質量電荷比の下限は好ましくは−20mDa−0.05%*(100Da−40Da)=−20mDa−0.030Da=−50mDaに設定される)。親イオン又は化合物と対象の代謝産物イオン又は化合物との間の質量若しくは質量電荷比の差が<−20Daならば、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの下限は、好ましくは−0.09%×(−20Daより下のΔM)の率で負に増加する(すなわち、ΔMが−100の場合、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの下限は−20mDa−0.09%*(100Da−20Da)=−20mDa−0.072Da=−92mDaに設定される)。
【0073】
異なる親薬物は、それぞれ特定の既知の質量若しくは質量電荷比を有すると理解される。好ましい実施形態によるアプローチは、親薬物の代謝産物が親薬物の構造と同様の構造を有し、代謝産物の正確な質量若しくは質量電荷比の小数部はそれぞれ親薬物の正確な質量若しくは質量電荷比の小数部と同様であると推定する。
【0074】
次いで、好ましい実施形態において、その小数部が小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入る正確な質量若しくは質量電荷比を有すると決定されたイオンが、好ましくは、例えば、MS/MSによるさらなる分析のために選択される。例えば、四重極質量フィルタなどの質量フィルタが、衝突又はフラグメンテーションセルへ前方向に通過されるべき特定の質量電荷比を有する潜在的に対象代謝産物イオンであると考えられる特定のイオンを選択するために使用され得る。次いで、イオンは衝突又はフラグメンテーションセル内でフラグメンテーションされ、得られたフラグメント産物イオンが質量分析される。
【0075】
好ましい実施形態によると、従来のアプローチではMS/MSによる分析のために選択されていたような多くの内因性のイオンピークが自動的に検討から外されることが可能となる。これは特に利点であり、結果として、好ましい実施形態は、著しく改善された、潜在的な代謝産物を認識する方法に関係する。
【0076】
代謝産物の正確な質量若しくは質量電荷比の小数部が入るべき小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウは、LC−MS及び/又はLC−MS−MS実験を始める前に定義され得る。小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの値又は大きさは、1回の実験中に起こる可能性のある質量誤差を調整するように設定され得る。また、値又は大きさは、親薬物の元素組成にしたがって設定され得る。例えば、親薬物が炭素、水素、窒素、酸素及びフッ素以外の元素を含まないならば、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限及び/又は下限は、親薬物が元素のリン、硫黄及び塩素のいずれか又はすべてを含む場合よりも低い(小さい)値に設定され得る。なぜなら、リン、硫黄及び塩素はすべて炭素、水素、窒素、酸素及びフッ素よりも大きな質量不足度を有するからである。
【0077】
親薬物と代謝産物との間の質量若しくは質量電荷比の差が大きくなるほど、生体内変換に関与する可能性のある原子が多くなる。したがって、いくつかの原子が生体内変換に関与していると考えられるならば、正確な質量若しくは質量電荷比の小数部の変化の許容度は好ましくはより大きくされるべきである。言い換えると、親薬物と代謝産物との間の絶対質量若しくは質量電荷比における差が増加するにつれ、好ましくは小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの幅又は大きさ、又は小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限及び/又は下限も増加すべきである。なぜなら、代謝産物はより大きな質量不足又は充足度を有する可能性があるからである。
【0078】
好ましい実施形態によると、生体内変換において起こったかもしれない質量充足度における最大変化は、起こったかもしれない質量不足度における最大の変化とは異なり得るという事実が許容され得る。したがって、非対称な小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウは、例えば、図2に図示された実施形態に関連して示しかつ説明された非対称な小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウと同様に使用され得る。
【0079】
他の好ましさの低い実施形態によると、簡単で対称な小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウが使用され得る。例えば、±20Daまでの親薬物と対象イオンとの間の質量若しくは質量電荷比の差ΔMに対して、±20mDaの上限及び下限を有する小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウが使用され得る。親薬物と対象イオンとの間の質量若しくは質量電荷比の差が<−20Da又は>20Daであれば、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限及び下限は、<−20Da又は>20Daである質量若しくは質量電荷比の差に対して0.1%の率で増加し得る。
【0080】
一般に、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウは、親薬物と対象イオンとの間の質量若しくは質量電荷比の差ΔMに対して複数の小数質量若しくは質量電荷比の差δmの値を有する。δm及びΔMの値は、好ましくはδm及びΔMの各極性に依存せずに定義され得る。
【0081】
好ましい実施形態によると、質量分析計は、好ましくはフラグメンテーションするように誘導される、選択された前駆体又は親イオンからの親イオン質量スペクトル及びフラグメントイオン質量スペクトルを記録できる。質量分析計は、例えば、扇形磁場、飛行時間、直交飛行時間、四重極質量フィルタ、3D四重極イオントラップ、直線四重極イオントラップ又はFT−ICR質量分析部、又はそれらの組み合わせを備え得る。
【0082】
特に好ましい実施形態によると、質量分析計は、扇形磁場、飛行時間、直交飛行時間又はFT−ICR質量分析部のいずれかを備え得る。
【0083】
実施形態によると、質量分析計は、質量ピークを検出し、検出したイオンの正確な質量若しくは質量電荷比の小数部が好ましくは予め定義された小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウに入るまでは、全親イオン質量スペクトルを獲得するようにデフォルトで設定され得る。一旦そのような質量ピークが検出されると、質量分析計及び関連の制御ソフトウェアは、好ましくは、対象の特定の小数質量若しくは質量電荷比を有する親イオンが質量フィルタによって選択されてトランスミットされ、他方、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウから外れる小数質量若しくは質量電荷比を有する他のイオンが好ましくはシステムから実質的に減衰されるか又は失われるように、その機器を切り換える。次いで、選択された対象の親イオンは、イオンガイド及び好ましくは>10-3mbarの圧力に維持された衝突ガスを好ましく備えるフラグメンテーション又は衝突セルに好ましくは移される。イオンは、衝突又はフラグメンテーションセル中に存在す衝突ガスに衝突した際に、イオンが好ましくはフラグメント産物イオンにフラグメンテーションされるようなエネルギーで衝突又はフラグメンテーションセル中へ好ましくは加速される。次いで、フラグメント産物イオンは、好ましくは質量分析され、次いでフラグメント産物イオンの全質量スペクトルが好ましくは得られる。
【0084】
小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの大きさは好ましくは予め定義されるが、他の好ましさの低い実施形態によると小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの大きさは実験データに応じて又は他のパラメータに基づいて変更され得る。一実施形態によると、例えば、ΔMの関数として第1のプロファイル又は大きさを有する小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウが適用され得る1回目の実験が行われ、次いでその後の2回目の実験において、ΔMの関数として第2の異なるプロファイルを有する小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウが適用され得る。
【0085】
一実施形態によると、制御ソフトウェアは、選択された前駆体又は親イオンに対して適切な最適フラグメンテーション衝突エネルギーを含む他のパラメータを選択するか又は決定し得る。
【0086】
好ましい実施形態の重要な利点は、より有用なMS/MSスペクトルが1回のLC−MS実験の限られた時間スケール内で獲得できることである。これにより、必要なデータを得るためにかかる時間が低減する。好ましい実施形態の他の重要な利点は、従来のアプローチを採用した場合には多くの比較的強い内因性の質量ピークによって検出されない低レベルの代謝産物の検出が好ましい前記方法では容易になることである。
【0087】
ミダゾラムの例を参照し、図3はハイブリッド四重極飛行時間質量分析計を使用して記録されるような薬物ミダゾラムの親イオン質量スペクトルを示す。主同位体に対して測定された質量電荷比は、326.0872(参考:理論値は326.0860)であるとして決定された。図4は、同じハイブリッド四重極飛行時間質量分析計を使用して記録されるようなミダゾラムのヒドロキシル化代謝産物の親イオン質量スペクトルを示す。主同位体に対して測定された質量電荷比は、342.0822(参考:理論値は342.0809)であるとして決定された。実験データから、親薬物の正確に決定された質量電荷比の小数部とヒドロキシル化代謝産物の正確に決定された質量電荷比の小数部における差は、0.0872−0.0822=0.0050Da、すなわち、ほんの5mDaの質量不足度であった。
【0088】
図3及び4に示す実験データから、より一般には、ミダゾラムのヒドロキシル化代謝産物を含むミダゾラムの潜在的な代謝産物が検索され、位置づけられ、次いでさらなる検討及び分析(好ましくは、MS−MS)のための選択され得ることが理解される。これは、潜在的に全く異なる絶対質量電荷比を有し親薬物及び対象イオンの小数質量若しくは質量電荷比における差が、例えば、10mDa未満である質量ピークを親イオン質量スペクトルデータから検索することによって達成することができる。
【0089】
好ましい実施形態に係る方法は、内因性の成分に関係するイオンが分析されずに(又はされても少ない)、対象代謝産物である可能性のある(又は少なくとも含む)質量ピークを効率的に検出できる有効な方法を提供する。したがって、好ましい方法は、従来の手法では検討に含まれてしまう多くの内因性の質量ピークを検討から有利に効果的に除去する。
【0090】
好ましい実施形態によると、対象代謝産物ではないと判明される多くのイオンを分析する時間を無駄にせずに、典型的な液体クロマトグラフィ質量ピークが観察される間の時間スケール内において対象代謝産物に関係する可能性のあるイオンのフラグメントイオンスペクトルを記録するように質量分析計が切り換えることが有利に可能となる。
【0091】
一実施形態によると、インテリジェントな厳密質量不足アリゴリズムは、コンピュータによる(in silico)代謝産物予測とともに使用して、好ましくはハイブリッド四重極飛行時間質量分析計を使用する代謝研究のためのDDA実験を予め決定し得る。
【0092】
DDA(データ依存実験)を実行する際の主な問題の1つは、対象ではないと判明するイオンについてDDA実験を行うために非常に多くの時間がかかり得ることである。その結果、重要な推定代謝産物が簡単に取り損なわれ得る。
【0093】
一実施形態によると、特定の代謝産物はコンピュータによって事前に予測され、適切である厳密な小数質量若しくは質量電荷比データフィルタウィンドウが設定され得る。したがって、実施形態によると、ある新規な化学エンティティ又は標準の化合物からの代謝産物が予測され、次いで検索される。一旦代謝産物が予測されると、設定された小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ(例えば、10〜20mDaの上限及び/又は下限を有し得る)内の小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンが存在するとして観察される場合に、厳密な小数質量ウィンドウがDDA実験を行うように単に切り換えるように設定され得る。
【0094】
一実施形態によると、潜在的に未知の代謝産物が発見され得る。ユーザは、例えば、厳密な小数質量若しくは質量電荷比に基づき、すでに予測された代謝産物を検出してMS/MS実験が実行されるように厳密な小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウを選択又は設定できる。これに加えて、親化合物の厳密な質量若しくは質量電荷比に基づいた厳密な質量不足度が決定され得る。この特定のデータフィルタは上記の実施形態に係るデータフィルタよりも特異的であると考えられ得る。なぜなら、すべての代謝産物が予測されるとは限らない場合があるからである。したがって、予測されない代謝産物は、厳密な質量若しくは質量電荷比データフィルタを用いたDDA実験において検出される。
【0095】
厳密な質量若しくは質量電荷比不足度フィルタは、以下のモードで動作し得る。分析下において親薬物の量又は質量電荷の小数部に基づく厳密な質量若しくは質量電荷比不足度フィルタが使用され得る。この実施形態によると、ユーザ定義判断基準に一致しないメタボリンクス(MetaboLynx)ブラウザにおける予期しない代謝産物エントリの除去が可能な後処理フィルタが使用され得る。このフィルタを使用することにより、潜在的な代謝産物と同じ整数質量を有し得る大多数の基質(マトリクス)関連エントリをフィルタで除去することによって予期しない代謝産物テーブルにおける偽エントリの数を自動的に減らすことができる。これにより、ユーザは、手動で偽陽性を除く面倒な作業を行うことなく、非常に低い代謝産物レベルを同定できるようにデータ処理中に低い閾値レベルを使用することが可能となる。フィルタは、好ましくは正確な及び特異的なフィルタである。なぜなら、各対象親薬物に特異的な厳密な質量及び質量不足度に基づくからである。
【0096】
各親薬物は特定の数の元素(C、H、N、Oなど)から構成される。上記の元素のそれぞれの数に応じて、薬物の小数質量若しくは質量電荷比は非常に特異的である。例えば、図5Aを参照すると、ベラパミルは以下の元素を含む: C27 H38 N2 O4。これは、モノアイソトピックプロトン化質量の455.2910Daに相当する。アルキル基が除かれて(N−脱アルキル化、一般代謝経路)グルクロニドが付加されるならば、質量は精密に+162.0164Daだけ移動する。したがって、代謝産物のモノアイソトピック質量は617.3074Daである。ベラパミルとそのN−脱アルキル化代謝産物との小数質量差は、厳密な質量不足度の0.3074−0.2910=0.0164Da(16.4mDa)に対応する。したがって、約20mDaの小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウが使用されるならば、そのN−脱アルキル化グルクロニド化代謝産物を検出できるであろう。以下の仮定の一部又は全部が与えられるならば、ベラパミルの代謝産物を前もって知らなくてもよい。(i)すべての代謝産物は、対応する親の小数質量若しくは質量電荷比の250mDa以内の小数質量若しくは質量電荷比を有する、(ii)対象代謝産物は、一般に、さらにより小さなフラグメントへの大きな開裂がなければ(例えば、最大フェーズII生体内変換であるグルタチオン抱合により、親薬物に比較して質量不足度差が68mDaとなる)、親の100mDa以内の小数質量若しくは質量電荷比を有する、及び(iii)ほとんどの代謝産物は、所定の開裂が構造に起きてより小さなフラグメントを生じると、親化合物の180mDa小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入る。
【0097】
図5A及び5Bは、ケトチフェン、ベラパミル及びインジナビルの代謝産物を示し、開裂を含む。最大小数質量若しくは質量電荷比不足度はインジナビル(図5B)の場合であり、ここで代謝産物は、親化合物の小数質量若しくは質量電荷比とは異なる167.7mDaの小数質量若しくは質量電荷比を有する。質量不足度の変位は各代謝産物及び親薬物に対して非常に特異的である。
【0098】
本発明の種々の実施形態は、好ましい実施形態に係るようなハイブリッド四重極直交飛行時間機器上だけに限らず、整数質量機器(三連四重極、直線及び3Dイオントラップなど)、及び厳密な質量機器(MALDI/四重極飛行時間及びFTMSなど)を使用しても実現され得る。
【0099】
本発明を好ましい実施形態を参照して説明したが、添付の特許請求の範囲に記載されるような発明の範囲から逸脱せずに種々の変更が形態及び詳細になされ得ることが当業者に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、ミダゾラムと呼ばれる親薬物の構造及び厳密な質量、及びミダゾラムのヒドロキシル化代謝産物の構造及び厳密な質量を示す。
【図2】図2は、親薬物の代謝産物を求めて質量スペクトルデータ又は質量スペクトルを検索する場合にイオンの小数質量若しくは質量電荷比値に適用される好ましい実施形態による小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウの上限及び下限を示す。
【図3】図3は、ミダゾラムの親イオン質量スペクトルを示す。
【図4】図4は、ミダゾラムのヒドロキシル化代謝産物の親イオン質量スペクトルを示す。
【図5A】図5Aは、ケトチフェン及びベラパミルの構造及び厳密な質量、及びケトチフェン及びベラパミルの代謝産物の構造及び厳密な質量を示す。
【図5B】図5Bは、インジナビルの構造及び厳密な質量、及びインジナビルの代謝産物の構造及び厳密な質量を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析の方法であって、
第1の物質又はイオンの正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比を決定するステップであって、前記正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比が第1の整数質量若しくは質量電荷比成分及び第1の小数質量若しくは質量電荷比成分を含むステップと、
1つ以上の第2の物質又はイオンであって、その小数質量若しくは質量電荷比成分が前記第1の小数質量若しくは質量電荷比成分よりも0〜x1mDa若しくはミリ質量電荷比単位大きい、及び/又は、0〜x2mDa若しくはミリ質量電荷比単位小さい1つ以上の第2の物質又はイオンを検索するステップとを含む方法。
【請求項2】
1つ以上の前記第2の物質又はイオンを検索する前記ステップが、1つ以上の前記第2の物質又はイオンの小数質量若しくは質量電荷比成分にのみ基づき、1つ以上の前記第2の物質又はイオンの整数質量若しくは質量電荷比成分には基づかずに検索することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
1つ以上の前記第2の物質又はイオンを検索する前記ステップが、前記第1の整数質量若しくは質量電荷比成分と異なる整数質量若しくは質量電荷比成分を有する一部又はすべての第2の物質又はイオンを検索することを含む請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記x1が、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜55、(xiii)55〜60、(xiv)60〜65、(xv)65〜70、(xvi)70〜75、(xvii)75〜80、(xviii)80〜85、(xix)85〜90、(xx)90〜95、(xxi)95〜100、及び、(xxii)>100からなる群から選択される範囲に入る請求項1、2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記x2が、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜55、(xiii)55〜60、(xiv)60〜65、(xv)65〜70、(xvi)70〜75、(xvii)75〜80、(xviii)80〜85、(xix)85〜90、(xx)90〜95、(xxi)95〜100、及び、(xxii)>100からなる群から選択される範囲に入る先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記第1の物質又はイオンが、製薬化合物、薬物若しくは活性成分を含むか又はそれに関係する先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
1つ以上の前記第2の物質又はイオンが、前記第1の物質又はイオンの1つ以上の代謝産物若しくは誘導体を含むか又はそれに関係する先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1の物質又はイオンが、生体高分子、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、アミノ酸、炭水化物、糖、脂質、脂肪酸、ビタミン、ホルモン、DNAの部分又はフラグメント、cDNAの部分又はフラグメント、RNAの部分又はフラグメント、mRNAの部分又はフラグメント、tRNAの部分又はフラグメント、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、リボヌクレアーゼ、酵素、代謝産物、多糖類、リン酸化ペプチド、リン酸化タンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質、又は、ステロイドを含む請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
1つ以上の前記第2の物質又はイオンが、生体高分子、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、アミノ酸、炭水化物、糖、脂質、脂肪酸、ビタミン、ホルモン、DNAの部分又はフラグメント、cDNAの部分又はフラグメント、RNAの部分又はフラグメント、mRNAの部分又はフラグメント、tRNAの部分又はフラグメント、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、リボヌクレアーゼ、酵素、代謝産物、多糖類、リン酸化ペプチド、リン酸化タンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質、又は、ステロイドを含む請求項1から5のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
分析される試料が、異なるアイデンティティを有するか若しくは異なる種を含む少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500若しくは5000個の成分、分子又は検体を含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
1つ以上の第2の物質又はイオンを検索する前記ステップが、小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウを質量スペクトルデータ又は質量スペクトルに適用することをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウが、前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウから外れる小数質量若しくは質量電荷比成分を有する第2の物質又はイオンの有意性をフィルタで取り除くか、除去するか、減衰させるか、又は少なくとも低減する請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の物質又はイオンの正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比から第2の物質又はイオンの正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比を差し引いたものが、ΔMダルトン又は質量電荷比単位の値を有する請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
前記x1及び/又はx2が、ΔMの関数として対称に変化する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記x1及び/又はx2が、(i)0、(ii)±0〜5、(iii)±5〜10、(iv)±10〜15、(v)±15〜20、(vi)±20〜25、(vii)±25〜30、(viii)±30〜35、(ix)±35〜40、(x)±40〜45、(xi)±45〜50、(xii)±50〜55、(xiii)±55〜60、(xiv)±60〜65、(xv)±65〜70、(xvi)±70〜75、(xvii)±75〜80、(xviii)±80〜85、(xix)±85〜90、(xx)±90〜95、(xxi)±95〜100、(xxii)>100、及び、(xxiii)<−100からなる群から選択されたΔMの値について対称にΔMの関数として変化する請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記x1及び/又はx2が、ΔMの関数として非対称に変化する請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記x1及び/又はx2が、Mlower<ΔM及び/又はΔM<Mupperの場合に実質的に一定値を有する請求項13から16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
前記x1及び/又はx2が、Mlower>ΔM及び/又はΔM>Mupperの場合にΔMの関数として実質的に非一定値を有する請求項13から17のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
前記x1及び/又はx2が、Mlower>ΔM及び/又はΔM>Mupperの場合にΔMの関数として実質的に直線的に変化する請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記x1及び/又はx2がΔM値の少なくともある範囲にわたりy%*ΔMの率で増加するか又は減少し、前記yが(i)<0.01、(ii)0.01〜0.02、(iii)0.02〜0.03、(iv)0.03〜0.04、(v)0.04〜0.05、(vi)0.05〜0.06、(viii)0.06〜0.07、(ix)0.07〜0.08、(x)0.08〜0.09、(xi)0.09〜0.10、(xii)0.10〜0.11、(xiii)0.11〜0.12、(xiv)0.12〜0.13、(xv)0.13〜0.14、(xvi)0.14〜0.15、(xvii)0.15〜0.16、(xviii)0.16〜0.17、(xix)0.17〜0.18、(xx)0.18〜0.19、(xxi)0.19〜0.20、及び、(xxii)>0.20からなる群から選択される請求項13から19のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
前記x1及び/又はx2が、Mlower>ΔM及び/又はΔM>Mupperの場合に実質的に曲線的、段階的、又は非直線的にΔMの関数として変化する請求項17に記載の方法。
【請求項22】
前記Mupperが、ダルトン又は質量電荷比単位の値であり、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜55、(xiii)55〜60、(xiv)60〜65、(xv)65〜70、(xvi)70〜75、(xvii)75〜80、(xviii)80〜85、(xix)85〜90、(xx)90〜95、(xxi)95〜100、及び、(xxii)>100からなる群から選択される範囲に入る請求項17から21のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記Mlowerが、ダルトン又は質量電荷比単位の値であり、(i)<−100、(ii)−100〜−95、(iii)−95〜−90、(iv)−90〜−85、(v)−85〜−80、(vi)−80〜−75、(vii)−75〜−70、(viii)−70〜−65、(ix)−65〜−60、(x)−60〜−55、(xi)−55〜−50、(xii)−50〜−45、(xiii)−45〜−40、(xiv)−40〜−35、(xv)−35〜−30、(xvi)−30〜−25、(xvii)−25〜−20、(xviii)−20〜−15、(xix)−15〜−10、(xx)−10〜−5、(xxi)−5〜−1、及び、(xxii)>−1からなる群から選択される範囲に入る請求項17から22のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
さらなる分析のために、その小数質量若しくは質量電荷比成分が前記第1の小数質量若しくは質量電荷比成分よりも0〜x1mDa若しくはミリ質量電荷比単位大きい、及び/又は、0〜x2mDa若しくはミリ質量電荷比単位小さい1つ以上の第2の物質又はイオンを選択するステップをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
さらなる分析のために選択する前記ステップが、1つ以上の前記第2の物質又はイオンをフラグメンテーションすることを含む請求項24に記載の方法。
【請求項26】
さらなる分析のために選択する前記ステップが、その小数質量若しくは質量電荷比成分が前記第1の小数質量若しくは質量電荷比成分よりも0〜x1mDa若しくはミリ質量電荷比単位大きい、及び/又は、0〜x2mDa若しくはミリ質量電荷比単位小さい1つ以上の第2の物質又はイオンを衝突又はフラグメンテーションセルへ前方向にトランスミットすることを含む請求項24又は25に記載の方法。
【請求項27】
1つ以上の前記第2の物質又はイオンをフラグメンテーションして得られたフラグメント産物又はイオンを質量分析するステップをさらに含む請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
分析される試料中の成分、検体又は分子を分離プロセスによって分離するステップをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記分離プロセスが、液体クロマトグラフィを含む請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記分離プロセスが、(i)高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)、(ii)陰イオン変換、(iii)陰イオン変換クロマトグラフィ、(iv)陽イオン変換、(v)陽イオン変換クロマトグラフィ、(vi)イオン対逆相クロマトグラフィ、(vii)クロマトグラフィ、(viii)1次元電気泳動、(ix)多次元電気泳動、(x)サイズ排除、(xi)親和性、(xii)逆相クロマトグラフィ、(xiii)キャピラリ電気泳動クロマトグラフィ(「CEC」)、(xiv)電気泳動、(xv)イオン移動度分離、(xvi)フィールド非対称なイオン移動度分離又はスペクトロメトリ(「FAIMS」)、(xvii)キャピラリ電気泳動、(xviii)ガスクロマトグラフィ、及び(xix)超臨界流体クロマトグラフィを含む請求項28に記載の方法。
【請求項31】
分析される試料中の成分、検体又は分子をイオン化するステップをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
パルス化イオン源を使用して成分、検体又は分子をイオン化するステップをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項33】
連続イオン源を使用して成分、検体又は分子をイオン化するステップをさらに含む請求項31に記載の方法。
【請求項34】
成分、検体又は分子をイオン化する前記ステップが、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、及び(xvi)ニッケル−63放射性イオン源からなる群から選択されたイオン源を使用して前記成分、検体又は分子をイオン化することを含む請求項31、32又は33に記載の方法。
【請求項35】
質量分析部を使用して前記第1の物質若しくはイオン及び/又は1つ以上の前記第2の物質若しくはイオン及び/又はフラグメント産物若しくはイオンを質量分析するステップをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記質量分析するステップが、四重極質量分析部を使用して質量分析することを含む請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記質量分析するステップが、(i)フーリエ変換(「FT」)質量分析部、(ii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(iii)飛行時間(「TOF」)質量分析部、(iv)直交加速飛行時間(「oaTOF」)質量分析部、(v)軸方向加速飛行時間質量分析部、(vi)扇形磁場質量分析計、(vii)ポール又は3D四重極質量分析部、(viii)2D又は直線四重極質量分析部、(ix)ペニングトラップ質量分析部、(x)イオントラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換オービトラップ(orbitrap)、(xii)静電イオンサイクロトロン共鳴質量分析計、及び(xiii)静電フーリエ変換質量分析計からなる群から選択される質量分析部を使用して質量分析することを含む請求項35に記載の方法。
【請求項38】
前記第1の物質若しくはイオン及び/又は1つ以上の前記第2の物質若しくはイオンの厳密な若しくは正確な質量若しくは質量電荷比が、20ppm、19ppm、18ppm、17ppm、16ppm、15ppm、14ppm、13ppm、12ppm、11ppm、10ppm、9ppm、8ppm、7ppm、6ppm、5ppm、4ppm、3ppm、2ppm、1ppm又は<1ppm以内に決定される先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記第1の物質若しくはイオン及び/又は1つ以上の前記第2の物質若しくはイオンの厳密な若しくは正確な質量若しくは質量電荷比が、0.01質量単位、0.009質量単位、0.008質量単位、0.007質量単位、0.006質量単位、0.005質量単位、0.004質量単位、0.003質量単位、0.002質量単位、0.001質量単位又は<0.001質量単位以内に決定される先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
分析される試料が、疾患生体、非疾患生体、処置生体、非処置生体、変異生体又は野生型生体から取られる先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
1つ以上の前記第2の物質又はイオンの組成を同定又は決定するステップをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記第1の物質若しくはイオンの強度、濃度又は発現レベルを定量又は決定するステップをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
1つ以上の前記第2の物質若しくはイオンの強度、濃度又は発現レベルを定量又は決定するステップをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記第1の物質若しくはイオンの相対強度、濃度又は発現レベルを決定又は定量するステップをさらに含む先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
1つ以上の前記第2の物質又はイオンの相対強度、濃度又は発現レベルを決定又は定量するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
質量分析の方法であって、
親イオンの正確な質量電荷比を決定するステップであって、前記正確な質量電荷比は第1の整数値及び第1の小数値を含むステップと、
前記親イオンの1つ以上の代謝産物を検索するステップと、を含み、
前記検索するステップが、
(i)潜在的な対象のイオンの正確な質量電荷比の決定であって、前記潜在的な対象のイオンの各々の正確な質量電荷比が第2の整数値及び第2の小数値を含む決定をすること、及び、
(ii)イオンが正確な質量電荷比を有することに基づく前記潜在的な対象のイオンのうちのイオンの認識、選択、優先質量フィルタリング又はトランスミット、決定又はフラグメンテーションであって、前記第2の小数値が前記第1の小数値のx mDa若しくはミリ質量電荷比単位以内である認識、選択、優先質量フィルタリング又はトランスミット、決定又はフラグメンテーションをすることを含む方法。
【請求項47】
前記xが、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜55、(xiii)55〜60、(xiv)60〜65、(xv)65〜70、(xvi)70〜75、(xvii)75〜80、(xviii)80〜85、(xix)85〜90、(xx)90〜95、(xxi)95〜100、及び(xxii)>100からなる群から選択される範囲に入る請求項46に記載の方法。
【請求項48】
第1の物質又はイオンの正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比を決定するように構成及び適合された手段であって、前記正確な若しくは厳密な質量若しくは質量電荷比が第1の整数質量若しくは質量電荷比成分及び第1の小数質量若しくは質量電荷比成分を含む手段と、
0から前記第1の小数質量若しくは質量電荷比成分よりも大きなx1mDa若しくはミリ質量電荷比単位の間、及び/又は、0から前記第1の小数質量若しくは質量電荷比成分よりも小さなx2mDa若しくはミリ質量電荷比単位の間の小数質量若しくは質量電荷比成分を有する1つ以上の第2の物質又はイオンを検索するように構成及び適合された手段と、を備える質量分析計。
【請求項49】
親イオンの正確な質量電荷比を決定するように構成及び適合された手段であって、前記正確な質量電荷比は第1の整数値及び第1の小数値を含む手段と、
前記親イオンの1つ以上の代謝産物を検索するように構成及び適合された手段と、を備え、
前記検索する手段が、
(i)潜在的な対象のイオンの正確な質量電荷比の決定であって、前記潜在的な対象のイオンの各々の正確な質量電荷比が第2の整数値及び第2の小数値を含む決定、及び、
(ii)前記潜在的な対象のイオンのうちのイオンの、前記イオンが正確な質量電荷比を有することに基づく、認識、選択、優先質量フィルタリング又はトランスミット、決定又はフラグメンテーションであって、前記第2の小数値が前記第1の小数値のx mDa若しくはミリ質量電荷比単位以内であるような認識、選択、優先質量フィルタリング又はトランスミット、決定又はフラグメンテーションをするように構成及び適合される手段である質量分析計。
【請求項50】
前記xが、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜55、(xiii)55〜60、(xiv)60〜65、(xv)65〜70、(xvi)70〜75、(xvii)75〜80、(xviii)80〜85、(xix)85〜90、(xx)90〜95、(xxi)95〜100、及び、(xxii)>100からなる群から選択される範囲に入る請求項49に記載の質量分析計。
【請求項51】
親薬物の潜在的な代謝産物を、前記代謝産物が前記親薬物の小数質量若しくは質量電荷比に実質的に同様な小数質量若しくは質量電荷比を有することに基づいて検索するステップを含む質量分析の方法。
【請求項52】
検索する前記ステップが、
複数のフラグメントイオンが生成されるように親薬物の潜在的な代謝産物に関係するイオンをフラグメンテーションすることと、
前記フラグメントイオンを質量分析することと、をさらに含む請求項51に記載の方法。
【請求項53】
親薬物の潜在的な代謝産物を検索するように構成及び適合された手段であって、前記親薬物の小数質量若しくは質量電荷比に実質的に同様な小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンを検索する手段を備える質量分析計。
【請求項54】
複数のフラグメントイオンが生成されるように親薬物の潜在的な代謝産物に関係するイオンをフラグメンテーションするための手段と、
前記フラグメントイオンを質量分析するための手段と、をさらに備える請求項53に記載の質量分析計。
【請求項55】
質量分析の方法であって、
小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウを質量スペクトルデータ又は質量スペクトルに適用するステップと、
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入る小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンを決定するステップと、
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入る小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンの少なくとも一部をフラグメンテーションして複数のフラグメントイオンを生成するステップと、
前記複数のフラグメントイオンの少なくとも一部を質量分析するステップと、を含む方法。
【請求項56】
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウがΔMの関数として変化するプロファイルを有し、前記ΔMが第1の物質又はイオンと第2の物質又はイオンとの間の質量若しくは質量電荷比おける差である請求項55に記載の方法。
【請求項57】
前記第1の物質又はイオンが製薬化合物を含み、前記第2の物質又はイオンが前記第1の物質又はイオンの代謝産物を含む請求項56に記載の方法。
【請求項58】
小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウを質量スペクトルデータ又は質量スペクトルに適用するように構成及び適合された手段と、
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入る小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンを決定するように構成及び適合された手段と、
前記小数質量若しくは質量電荷比ウィンドウ内に入る小数質量若しくは質量電荷比を有するイオンの少なくとも一部をフラグメンテーションして複数のフラグメントイオンを生成するように構成及び適合された手段と、
前記複数のフラグメントイオンの少なくとも一部を質量分析するように構成及び適合された手段と、を備える質量分析計。
【請求項59】
質量分析の方法であって、
製薬化合物の代謝産物のうちの1つを含む生物学的試料を準備するステップと、
前記試料を液体クロマトグラフィにかけるステップと、
液体クロマトグラフから出た溶出物をイオン化して複数のイオンを生成するステップと、
前記イオンを質量分析するステップと、
前記イオンの1つ以上が前記製薬化合物の小数質量若しくは質量電荷比のx mDa若しくはミリ質量電荷比単位以内の小数質量若しくは質量電荷比成分を有する質量若しくは質量電荷比を有するかどうかを決定するステップと、を含む方法。
【請求項60】
前記xが、(i)1、(ii)2、(iii)3、(iv)4、(v)5、(vi)6、(vii)7、(viii)8、(ix)9、(x)10、(xi)11、(xii)12、(xiii)13、(xiv)14、(xv)15、(xvi)16、(xvii)17、(xviii)18、(xix)19、(xx)20、(xxi)21、(xxii)22、(xxiii)23、(xxiv)24、(xxv)25、(xxvi)26、(xxvii)27、(xxviii)28、(xxix)29、(xxx)30、(xxxi)31、(xxxii)32、(xxxiii)33、(xxxiv)34、(xxxv)35、(xxxvi)36、(xxxvii)37、(xxxviii)38、(xxxix)39、(xl)40、及び(、xli)>40からなる群から選択される請求項59に記載の方法。
【請求項61】
使用の際に、製薬化合物の代謝産物のうちの1つを含む生物学的試料を液体クロマトグラフィにかけるように構成された液体クロマトグラフと、
前記液体クロマトグラフから出た溶出物をイオン化して複数のイオンを生成するためのイオン源と、
前記イオンを質量分析するための質量分析部と、
前記イオンの1つ以上が前記製薬化合物の小数質量若しくは質量電荷比のx mDa若しくはミリ質量電荷比単位以内の小数質量若しくは質量電荷比成分を有する質量若しくは質量電荷比を有するかどうかを決定するように構成及び適合された手段と、を備える質量分析計。
【請求項62】
前記xが、(i)1、(ii)2、(iii)3、(iv)4、(v)5、(vi)6、(vii)7、(viii)8、(ix)9、(x)10、(xi)11、(xii)12、(xiii)13、(xiv)14、(xv)15、(xvi)16、(xvii)17、(xviii)18、(xix)19、(xx)20、(xxi)21、(xxii)22、(xxiii)23、(xxiv)24、(xxv)25、(xxvi)26、(xxvii)27、(xxviii)28、(xxix)29、(xxx)30、(xxxi)31、(xxxii)32、(xxxiii)33、(xxxiv)34、(xxxv)35、(xxxvi)36、(xxxvii)37、(xxxviii)38、(xxxix)39、(xl)40、及び、(xli)>40からなる群から選択される請求項61に記載の質量分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【公表番号】特表2008−505339(P2008−505339A)
【公表日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−519869(P2007−519869)
【出願日】平成17年7月1日(2005.7.1)
【国際出願番号】PCT/GB2005/002610
【国際公開番号】WO2006/003429
【国際公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】