説明

質量分析計

質量分析計は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ(4)と、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ(4)の下流側に配置されたイオンガイド(6)とを備えている。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ(4)から受け取ったイオンが、個別の軸方向電位井戸内に閉じ込められるよう、イオンガイド(6)内で、複数の軸方向電位井戸が作られる。電位井戸は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ(4)から受け取ったイオンの忠実性および/または構成を維持する。電位井戸は、イオンガイド(6)の長手方向に沿って移動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計および質量分析の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトゲノムを構成する遺伝子20〜30,000個の解読とともに、プロテオームを含む翻訳遺伝子産物の同定が重視されるようになってきた。質量分析法は、その類まれな速度、感度および特異性によってタンパク質同定の主要技術として確立している。その方法は、インタクトタンパク質の分析、または、より一般的にはペプチド骨格に沿って予測可能な残基で開裂する特定のプロテアーゼによるタンパク質の消化のいずれかを伴い得る。これにより質量分析による分析にさらに適した、短小なペプチド配列が得られる。
【0003】
タンデム質量分析計に接続したエレクトロスプレーイオン化(ESI)のイオン源を備えた質量分析計は、格段に高い特異度および感度を有する。複合消化混合物は、MSスペクトルおよびMS/MSスペクトルをデータ依存形式で収集することのできる自動取得モードを用いたオンライン質量スペクトル検出と共にマイクロキャピラリー液体クロマトグラフィにより分離できる。そして、このデータは、直接各種データベースにおいて照合シーケンスを検索するのに利用することができる。これは、特に、親タンパク質の内在性濃度が低い場合、親タンパク質の同定に応用できる。しかし、タンパク質同定の制約要因は、生成されたMS/MS質量スペクトルの品質よりも、むしろMSモードにおける多価ペプチドの親または前駆イオンの初期識別であることが多い。これは、イオン源から発生する比較的高いレベルの主として一価バックグラウンドイオンによることが多く、それは得られる質量スペクトルに現れる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、一価バックグラウンドイオンをかなりの高率で含むイオン混合物中に存在する、目的とする被分析試料多価イオンをより簡単に識別できることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第一の態様によると、質量分析計は、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータと、
前記イオンモビリティセパレータまたはスペクトロメーターの下流側に、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータからのイオンを捕集するように配置された、複数の電極を備える第一のイオンガイドと、
第一のオペレーションモードにおいて、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから捕集したイオンが、前記第一のイオンガイドの個別領域または個別部分において、保持および/または拘束および/または輸送および/または移動されるように、一種類もしくは複数の電圧、または一種類もしくは複数の電圧波形を複数の電極に印加するように配置および適合させた第一の電圧印加手段と、
前記第一のイオンガイドの下流側に配置された質量分析器とを備える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータは、気相電気泳動装置を装備することが好ましい。好適な実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータは(i)ドリフト管;(ii)多重極ロッドセット;(iii)イオントンネルもしくはイオン漏斗;または(iv)積層もしくは配列された平面状、板状、もしくは網状の電極を備えている。
【0007】
前記ドリフト管は、好ましくは、その軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って一つまたは複数の電極および軸方向直流電圧勾配または実質的に一定または線形の軸方向直流電圧勾配を維持する手段を備える。
【0008】
前記多重極ロッドセットは、好ましくは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、または8本を超えるロッドを備えたロッドセットを含む。
【0009】
前記イオントンネルまたはイオン漏斗は、好ましくは、使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含み、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、実質的に同一の寸法もしくは面積の開口部を備えているか、または寸法もしくは面積が漸進的に大きくおよび/もしくは小さくなる開口部を備えている。好適な一実施形態によると、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmから成る群から選択される内径または寸法を有する。
【0010】
前記積層または配列された平面状、板状、または網状の電極は、好ましくは、複数または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20個の平面状、板状、または網状の電極を含み、前記平面状、板状、または網状の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、使用時にイオンが移動する面に概ね配列されている。好適な一実施形態によると、平面状、板状、または網状の電極の少なくともいくつか、または少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%に、交流または高周波電圧が供給され、隣接した平面状、板状、または網状の電極に、前記交流または高周波電圧の逆相が供給される。
【0011】
好適な一実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータが、好ましくは、複数の軸方向セグメントまたは少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100個の軸方向セグメントを有する。
【0012】
一実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの軸方向長さの少なくとも一部または少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、好ましくは、質量分析計はイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの軸方向長さの少なくとも一部または少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%に沿って実質的に一定の直流電圧勾配を維持する直流電圧印加手段をさらに備えている。
【0013】
一実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、好ましくは、質量分析計は、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを形成する電極に印加するように配置および適合させた過渡直流電圧印加手段を備えている。
【0014】
一実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、好ましくは、質量分析計は、二つまたはそれ以上の移相交流または高周波電圧をイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを形成する電極に印加するように配置および適合させた交流または高周波電圧印加手段をさらに備えている。
【0015】
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータは、好ましくは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、(xi)200〜220mm、(xii)220〜240mm、(xiii)240〜260mm、(xiv)260〜280mm、(xv)280〜300mm、(xvi)>300mmからなる群から選択される軸方向長さを有する。
【0016】
好適な一実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内に放射状にイオンを閉じ込めるため、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータが、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの複数の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に交流または高周波電圧を印加するように配置および適合させた交流または高周波電圧印加手段をさらに備えている。前記交流または高周波電圧印加手段は、好ましくは、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)00〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、および(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークから成る群から選択される振幅を持つ交流または高周波電圧をイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの複数の電極に印加するように配置および適合させている。前記交流または高周波電圧印加手段は、好ましくは、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzから成る群から選択される周波数を持つ交流または高周波電圧をイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの複数の電極に印加するように配置および適合させている。
【0017】
好適な一実施形態によると、質量電荷比が1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900または900〜1000の範囲にある一価イオンが、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを通過するドリフト時間または通過時間が(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、および(xxxi)>30msの範囲にあるのが好ましい。
【0018】
前記質量分析計は、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの少なくとも一部を(i)>0.001mbar、(ii)>0.01mbar、(iii)>0.1mbar、(iv)>1mbar、(v)>10mbar、(vi)>100mbar、(vii)0.001〜100mbar、(viii)0.01〜10mbar、および(ix)0.1〜1mbarから成る群から選択される圧力に維持するように配置および適合させた手段をさらに具備する。
【0019】
前記質量分析計は、好ましくは、(i)窒素、(ii)アルゴン、(iii)ヘリウム、(iv)メタン、(v)ネオン、(vi)キセノン、および(vii)空気から成る群から選択される、または群から選択されるガスを少なくとも部分的に含む第一のガスをイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータに導入するための手段をさらに具備する。
【0020】
好適な一実施形態によると、前記質量分析計は、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータのハウジングをさらに具備する。前記ハウジングは、好ましくは、イオン流入開口部、イオン流出開口部および前記ハウジング内にガスを導入するためのポートを除き、実質的に気密の筐体を形成する。
【0021】
前記質量分析計は、好ましくは、イオンを0〜5ms、5〜10ms、10〜15ms、15〜20ms、20〜25ms、25〜30ms、30〜35ms、35〜40ms、40〜45ms、45〜50msまたは>50msの間隔でイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ脈動的に流入させる手段をさらに具備する。
【0022】
前記第一のイオンガイドは、好ましくは、(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント化された多重極ロッドセット、(ii)イオントンネルもしくはイオン漏斗、または(iii)積層もしくは配列された平面状、板状、もしくは網状の電極を具備する。
【0023】
本発明の一実施形態によると、第二のイオンガイドをイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの上流側に配置することもできる。前記第二のイオンガイドは、好ましくは、(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント化された多重極ロッドセット、(ii)イオントンネルもしくはイオン漏斗、または(iii)積層もしくは配列された平面状、板状、もしくは網状の電極を具備する。
【0024】
前記第一のおよび/または第二のイオンガイドは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセットまたは8本を超える数のロッドを含むロッドセットを備えた多重極ロッドセットを含んでいてもよい。
【0025】
前記第一のおよび/または第二のイオンガイドには、イオントンネルまたはイオントンネルを装備してもよく、使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を備え、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、実質的に同一の寸法もしくは面積の開口部を備えているか、または寸法もしくは面積が漸進的に大きくおよび/もしくは小さくなる開口部を備えている。好ましくは、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmから成る群から選択される内径または寸法を有する。
【0026】
前記第一のおよび/または第二のイオンガイドは、使用時にイオンが移動する面に概ね配列された複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の平面状、板状、または網状の電極を備えた、積層もしくは配列された平面状、板状、もしくは網状の電極を備え、平面状、板状、または網状の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、使用時にイオンが移動する面に概ね配列されている。好適な一実施形態によると、前記質量分析計は、好ましくは、複数の平面状、板状、または網状の電極に、交流または高周波電圧を供給するための交流または高周波電圧印加手段をさらに具備し、隣接した板状または網状の電極に、前記交流または高周波電圧の逆相が供給される。
【0027】
前記好適な実施形態によると、第一のおよび/または第二のイオンガイドが、複数の軸方向セグメントまたは少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100の軸方向セグメントを具備し得る。
【0028】
前記好適な実施形態によると、前記質量分析計が、第一のおよび/または第二のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を、第一のおよび/または第二のイオンガイドを形成する電極に印加するように配置および適合させた過渡直流電圧印加手段をさらに備えていてもよい。
【0029】
前記好適な一実施形態によると、前記質量分析計は、好ましくは、第一のおよび/または第二のイオンガイドの軸方向長さの少なくと5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、二つまたはそれ以上の移相交流または高周波電圧を第一のおよび/または第二のイオンガイドを形成する電極に印加するように配置および適合させた交流または高周波電圧供給手段をさらに備えていてもよい。
【0030】
前記第一のおよび/または第二のイオンガイドの軸方向の長さは、好ましくは(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、(xi)200〜220mm、(xii)220〜240mm、(xiii)240〜260mm、(xiv)260〜280mm、(xv)280〜300mm、および(xvi)>300mmから成る群から選択される。
【0031】
前記第一のおよび/または第二のイオンガイドは、好ましくは、イオンをその第一のおよび/または第二のイオンガイド内に放射状に閉じ込めるため、第一のおよび/または第二のイオンガイドの複数の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に、交流または高周波電圧を印加するように配置および適合させた交流または高周波電圧供給手段をさらに具備する。前記交流または高周波電圧供給手段は、好ましくは、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、および(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークから成る群から選択される振幅を有する交流または高周波電圧を第一のおよび/または第二のイオンガイドの複数の電極に印加するよう配置および適合させる。前記交流または高周波電圧供給手段は、好ましくは、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400 kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzから成る群から選択される周波数を有する交流または高周波電圧を第一のおよび/または第二のイオンガイドの複数の電極に印加するよう配置および適合させる。
【0032】
前記好適な一実施形態によると、1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900または900〜1000の範囲に質量電荷比を持つ一価イオンの第一のおよび/または第二のイオンガイドを通過するドリフト時間または通過時間が、好ましくは、(i)0〜10μs、(ii)10〜20μs、(iii)20〜30μs、(iv)30〜40μs、(v)40〜50μs、(vi)50〜60μs、(vii)60〜70μs、(viii)70〜80μs、(ix)80〜90μs、(x)90〜100μs、(xi)100〜110μs、(xii)110〜120μs、(xiii)120〜130μs、(xiv)130〜140μs、(xv)140〜150μs、(xvi)150〜160μs、(xvii)160〜170μs、(xviii)170〜180μs、(xix)180〜190μs、(xx)190〜200μs、(xxi)200〜210μs、(xxii)210〜220μs、(xxiii)220〜230μs、(xxiv)230〜240μs、(xxv)240〜250μs、(xxvi)250〜260μs、(xxvii)260〜270μs、(xxviii)270〜280μs、(xxix)280〜290μs、(xxx)290〜300μs、および(xxxi)>300μsの範囲にある。
【0033】
前記好適な一実施形態によると、前記質量分析計は、好ましくは、第一のおよび/または第二のイオンガイドの少なくとも一部を(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)0.0001〜0.1mbarおよび(viii)0.001〜0.01mbarから成る群から選択される圧力に維持するよう配置および適合させた手段をさらに具備する。
【0034】
前記質量分析計は、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンの第一のイオンガイドへの流れを加速するように配置および適合させた加速手段をさらに具備し、第二の操作モードにおいて、前記イオンの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、前記第一のイオンガイドに流入するとフラグメント化される。前記加速手段は、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンが第一のイオンガイドへ搬送されるにつれ、その運動エネルギーを漸進的に変化または増加させるよう配置および適合させる。前記加速手段は、好ましくは、電位差を維持する領域を備え、時間の経過とともに電位差が漸進的に変化または増加する。
【0035】
前記質量分析計は、好ましくは、イオンが、第一のイオンガイドに流入する前に通過する電位差を、イオンが第一のイオンガイドに流入すると実質的にフラグメント化される高フラグメンテーション操作モードと、第一のイオンガイドに流入すると実質的に少数のイオンがフラグメント化されるか、或いは、イオンが実質的に全くフラグメント化されない低フラグメンテーション操作モードとの間で切り換えるようまたは反復的に切り換えるよう配置および適合させた制御システムをさらに具備する。
【0036】
前記高フラグメンテーション操作モードにおいて、第一のイオンガイドに流入するイオンは、好ましくは(i)≧10V、(ii)≧20V、(iii)≧30V、(iv)≧40V、(v)≧50V、(vi)≧60V、(vii)≧70V、(viii)≧80V、(ix)≧90V、(x)≧100V、(xi)≧110V、(xii)≧120V、(xiii)≧130V、(xiv)≧140V、(xv)≧150V、(xvi)≧160V、(xvii)≧170V、(xviii)≧180V、(xix)≧190V、および(xx)≧200Vから成る群から選択される電位差によって加速される。
【0037】
前記低フラグメンテーション操作モードにおいて、第一のイオンガイドに流入するイオンは、好ましくは(i)≦20V、(ii)≦15V、(iii)≦10V、(iv)≦5V、および(v)≦1Vから成る群から選択される電位差によって加速される。
【0038】
前記制御システムは、好ましくは、少なくとも1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、60ms、65ms、70ms、75ms、80ms、85ms、90ms、95ms、100ms、200ms、300ms、400ms、500ms、600ms、700ms、800ms、900ms、1s、2s、3s、4s、5s、6s、7s、8s、9sまたは10sごとに、第一のイオンガイドを、高フラグメンテーション操作モードと低フラグメンテーション操作モードとに切り換えるよう配置および適合させる。
【0039】
第一のイオンガイドは、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータからイオンビームを受け、前記イオンビームが少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の個別のイオン群またはパケットが、いかなる特定時間においても第一のイオンガイドに閉じ込めおよび/または隔離されるように前記イオンビームを変換または区分するように配置および適合させ第一のイオンガイド内に形成された個別の軸方向電位井戸内に各イオン群またはパケットが個別に閉じ込めおよび/または隔離される。前記第一のイオンガイド内に閉じ込めおよび/または隔離された前記イオン群またはパケットのそれぞれにおけるイオンの平均イオン移動度は、好ましくは、時間の経過とともに漸進的に減少、および/または第一のイオンガイドの出口領域から第一のイオンガイドの入口領域へ向かって漸進的に減少する。
【0040】
第一の電圧印加手段は、好ましくは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の個別の軸方向電位井戸を作るよう配置および適合させ、それらは好ましくは、第一のイオンガイドの長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って実質的に同時に移動される。
【0041】
第二の電圧印加手段は、好ましくは、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の個別の軸方向電位井戸を成すよう配置および適合させ、それらは好ましくは、第二のイオンガイドの長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って実質的に同時に移動される。
【0042】
前記第一のイオンガイドは、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンを保持および/または閉じ込めおよび/または分離するよう、且つ、第一のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って一つまたは複数のイオン群またはパケットのイオンを移動させるよう配置および適合させ、一方、一つまたは複数のイオン群またはパケットが第一のイオンガイドに沿って移動するにつれ、(i)イオンモビリティスペクトロメーターもしくはセパレータからイオンが流出する順序および/もしくは忠実度を実質的に維持、ならびに/または(ii)イオンの構成を実質的に維持する。
【0043】
前記の好適な一実施形態によると、前記質量分析計は、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの上流側にイオントラップをさらに具備する。前記イオントラップは、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへイオンを脈動的かつ反復的に流入させるよう配置および適合させる。
【0044】
前記の好適な一実施形態によると、第二のイオンガイドは、好ましくは、(i)イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータのサイクルタイムに実質的に一致するか、または(ii)イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータのサイクルタイムとは実質的に異なるいずれかのサイクルタイムを持つ。
【0045】
ある操作モードでは、第二のイオンガイドは、好ましくは、前記第二のイオンガイドの出口に向かってまたはその近傍或いは実質的に前記出口に位置するイオン捕捉領域においてイオンを捕捉、保存または蓄積するよう配置および適合させる。イオンは、第二のイオンガイドのイオン捕捉領域から周期的に放出されるのが好ましく、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ送られるのが好ましい。
【0046】
前記質量分析計は、好ましくは、(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)0.0001〜0.1mbarおよび(viii)0.001〜0.01mbarから成る群から選択される圧力で、前記第二のイオンガイドの少なくとも一部を維持するよう配置および適合させた手段を具備する。
【0047】
前記質量分析計は、好ましくは、少なくとも一部のイオンが第二のイオンガイドへ流入するとフラグメント化されるようにイオンの第二のイオンガイドへの流れを加速するよう配置および適合させた加速手段を具備する。前記質量分析計は、好ましくは、イオンが好ましくは実質的に最適の様態でフラグメント化されるように、第二のイオンガイドへの流入に先立ち、イオンのエネルギーを最適化するよう配置および適合させた手段をさらに具備する。
【0048】
前記の好適な一実施形態によると、イオンが前記第二のイオンガイドに流入する前に通過する電位差を、イオンが第二のイオンガイドに流入すると実質的にフラグメント化される第一の操作モードと、第二のイオンガイドに流入すると実質的に少数のイオンがフラグメント化されるか、或いは、イオンが実質的に全くフラグメント化されない第二の操作モードとの間で切り換えるようまたは反復的に切り換えるよう配置および適合させた制御システムを具備する。
【0049】
第一の操作モードでは、第二のイオンガイドへ流入するイオンが、好ましくは、(i)≧10V、(ii)≧20V、(iii)≧30V、(iv)≧40V、(v)≧50V、(vi)≧60V、(vii)≧70V、(viii)≧80V、(ix)≧90V、(x)≧100V、(xi)≧110V、(xii)≧120V、(xiii)≧130V、(xiv)≧140V、(xv)≧150V、(xvi)≧160V、(xvii)≧170V、(xviii)≧180V、(xix)≧190V、および(xx)≧200Vから成る群から選択される電位差により加速される。
【0050】
第二の操作モードでは、第二のイオンガイドへ流入するイオンが、好ましくは、(i)≦20V、(ii)≦15V、(iii)≦10V、(iv)≦5V、および(v)≦1Vから成る群から選択される電位差によって加速される。
【0051】
前記制御システムは、好ましくは、少なくとも1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、60ms、65ms、70ms、75ms、80ms、85ms、90ms、95ms、100ms、200ms、300ms、400ms、500ms、600ms、700ms、800ms、900ms、1s、2s、3s、4s、5s、6s、7s、8s、9sまたは10sごとに第一の操作モードと第二の操作モードとの間で第二のイオンガイドを切り換えるよう配置および適合させる。
【0052】
一実施形態によると、前記質量分析計は、好ましくはさらに、イオンがガスまたはその他の分子と衝突または衝撃を与える際に、衝突誘起解離(CID)によってイオンをフラグメント化させるためのフラグメンテーションセルまたは衝突セルを備える。
【0053】
別の一実施形態によると、前記質量分析計は、好ましくは、イオンをフラグメント化するフラグメンテーション装置をさらに具備し、前記フラグメンテーション装置は、(i)表面誘起解離(SID)フラグメンテーション装置、(ii)電子移動解離フラグメンテーション装置、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーション装置、(iv) 電子衝突または衝撃解離フラグメンテーション装置、(v)光誘起解離(PID)フラグメンテーション装置、(vi)レーザー誘起解離フラグメンテーション装置、(vii)赤外光誘起解離装置、(viii)紫外光誘起解離装置、(ix)イオン分子反応フラグメンテーション装置、(x)ノズル−スキマー・インターフェイスフラグメンテーション装置、(xi)イン−ソースフラグメンテーション装置、(xii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーション装置、(xiii)熱または温度源フラグメンテーション装置、(xiv)電界誘起フラグメンテーション装置、(xv)磁界誘起フラグメンテーション装置、および(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーション装置から成る群から選択される。
【0054】
好適な一実施形態によると、前記質量分析計は、好ましくは、第二のイオンガイドの上流側および/または下流側に配置されたマスフィルター、四重極ロッドセット・マスフィルター、飛行時間質量分析器、ウイーン(Wein)フィルター、または磁場型質量分析器をさらに含む。
【0055】
第二のイオンガイドの上流側および/または下流側に、さらに別のイオンガイドを設けてもよく、好ましくはマスフィルターの上流側およびイオン源の下流側に配置する。
【0056】
前記別のイオンガイドは、好ましくは、(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント化された多重極ロッドセット、(ii)イオントンネルもしくはイオン漏斗、または(iii)積層もしくは配列された平面状、板状、もしくは網状の電極を備えている。
【0057】
前記多重極ロッドセットは、好ましくは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、または8本を超えるロッドを備えたロッドセットを含む。
【0058】
前記イオントンネルまたはイオントンネルは、好ましくは、使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を備え、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、実質的に同一の寸法もしくは面積の開口部を備えているか、または寸法もしくは面積が漸進的に大きくおよび/もしくは小さくなる開口部を備えている。好ましくは、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmから成る群から選択される内径または寸法を有する。
【0059】
積層または配列された平面状、板状、または網状の電極は、好ましくは、使用時にイオンが移動する面に概ね配列された、複数または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面状、板状、または網状の電極を含み、平面状、板状、または網状の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、使用時にイオンが移動する面に概ね配列されている。前記質量分析計は、好ましくは、複数の平面状、板状、または網状の電極に交流または高周波電圧を供給するための交流または高周波電圧印加手段をさらに備え、隣接する板状または網状の電極には、前記交流または高周波の逆相が供給される。
【0060】
前記別のイオンガイドは、好ましくは、複数の軸方向セグメントまたは少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100の軸方向セグメントをさらに備える。
【0061】
前記別のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるために、前記別のイオンガイドを形成する電極に、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を印加するように、過渡直流電圧印加手段を配置および適合させてもよい。或いは、前記別のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、好ましくは、前記別のイオンガイドを形成する電極に二種類以上の移相交流または高周波電圧を印加するよう配置および適合させた交流または高周波電圧印加手段を設けてもよい。
【0062】
前記質量分析計は、好ましくは、第一のイオンガイドと質量分析器との間に配置された、移送装置、アインツェル(Einzel)レンズまたはイオン光学レンズ系をさらに具備する。
【0063】
前記質量分析計は、好ましくは、イオン源をさらに具備する。前記イオン源は、(i)エレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(APPI)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(APCI)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)イオン源、(v)レーザー脱離イオン化(LDI)イオン源、(vi)大気圧イオン化(API)イオン源、(vii)シリコン基板上脱離イオン化(DIOS)イオン源、(viii)電子衝撃(EI)イオン源、(ix)化学イオン化(CI)イオン源、(x)電界イオン化(FI)イオン源、(xi)電界脱離(FD)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(FAB)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(LSIMS)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリクス支援レーザー脱離イオン化イオン源、および(xviii)サーモスプレーイオン源から成る群から選択してもよい。前記イオン源は、パルスまたは連続イオン源を含んでいてもよい。
【0064】
前記質量分析器は、好ましくは、飛行時間質量分析器、或いは軸方向または直交加速飛行時間質量分析器を具備する。前記質量分析器は、好ましくは、プッシュ電極および/またはプル電極を備え、イオンは、初回は第一のイオンガイドから飛行時間質量分析器へと放出され、前記プッシュ電極および/またはプル電極の近傍領域に到達する。そして、プッシュ電極および/またはプル電極は、好ましくは、初回の後の遅延時間後に加圧される。前記質量分析器は、好ましくは、前記遅延時間が好ましくは漸進的に変化または増加するように配置および適合させる。前記遅延時間は、望ましい荷電状態にあるイオンは実質的に直角方向に加速される一方で、望ましくない荷電状態にあるイオンは実質的に直角方向に加速されないように設定してもよい。望ましい荷電状態および/または望ましくない荷電状態としては、(i)単一荷電状態にあるイオン、(ii)二価に荷電したイオン、(iii)三価に荷電したイオン、(iv)四価に荷電したイオン、(v)五価に荷電したイオン、(vi)六価以上に荷電したイオン、および(vii)多価イオンから成る群から選択してもよい。
【0065】
第一の複数イオンは、好ましくは、脈動的にイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ流入させ、第二の複数イオンを脈動的にイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ流入させる前に、プッシュ電極および/またはプル電極に少なくともx回加圧するのが好ましく、xは、(i)1、(ii)2〜10、(iii)10〜20、(iv)20〜30、(v)30〜40、(vi)40〜50、(viii)50〜60、(ix)60〜70、(x)70〜80、(xi)80〜90、(xii)90〜100、(xiii)100〜110、(xiv)110〜120、(xv)120〜130、(xvi)130〜140、(xvii)140〜150、(xviii)150〜160、(xix)160〜170、(xx)170〜180、(xxi)180〜190、(xxii)190〜200、(xxiii)200〜210、(xxiv)210〜220、(xxv)220〜230、(xxvi)230〜240、(xxvii)240〜250、および(xxviii)>250から成る群から選択される。
【0066】
前記プッシュ電極および/またはプル電極は、好ましくは、少なくとも0〜10μs、10〜20μs、20〜30μs、30〜40μs、40〜50μs、50〜60μs、60〜70μs、70〜80μs、80〜90μs、90〜100μs、100〜110μs、110〜120μs、120〜130μs、130〜140μs、140〜150μs、150〜160μs、160〜170μs、170〜180μs、180〜190μs、190〜200μs、200〜210μs、210〜220μs、220〜230μs、230〜240μs、240〜250μs、250〜260μs、260〜270μs、270〜280μs、280〜290μs、290〜300μsまたは>300μsごとに加圧される。
【0067】
前記プッシュ電極および/またはプル電極は、イオンが第一のイオンガイドから放射されるかまたは他の方法で放出されるように第一のイオンガイドの端部に移動される軸方向電位井戸1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または>20毎に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または>20回加圧するのが好ましい。
【0068】
前記の好適な実施形態によると、第一の複数イオンは、脈動的にイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ流入させ、第二の複数イオンを脈動的にイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ流入させる前に、少なくともy個の個別の軸方向電位井戸を、第一のイオンガイド内に作成または形成、および/または第一のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿って移動させ、前記yは、(i)1、(ii)2〜10、(iii)10〜20、(iv)20〜30、(v)30〜40、(vi)40〜50、(viii)50〜60、(ix)60〜70、(x)70〜80、(xi)80〜90、(xii)90〜100、(xiii)100〜110、(xiv)110〜120、(xv)120〜130、(xvi)130〜140、(xvii)140〜150、(xviii)150〜160、(xix)160〜170、(xx)170〜180、(xxi)180〜190、(xxii)190〜200、(xxiii)200〜210、(xxiv)210〜220、(xxv)220〜230、(xxvi)230〜240、(xxvii)240〜250、および(xxviii)>250から成る群から選択される。
【0069】
好適性の低い一実施形態によると、前記質量分析器は、(i)四重極質量分析器、(ii)二次元または線形四重極質量分析器、(iii)ポール(Paul)または三次元四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)磁場型質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(ICR)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ型質量分析器、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ型質量分析器、および(xi)フーリエ変換質量分析器から成る群から選択してもよい。
【0070】
一実施形態によると、前記質量分析計が、好ましくは、処理手段をさらに備え、前記処理手段は、(i)単一荷電状態にあるイオン、(ii)二価に荷電したイオン、(iii)三価に荷電したイオン、(iv)四価に荷電したイオン、(v)五価に荷電したイオン、(vi)六価以上に荷電したイオン、および(vii)多価イオンに関する質量スペクトルデータを有する質量スペクトルが作成されるように質量分析器により得られた質量スペクトルデータを選別するように配置および適合させる。
【0071】
本発明の他の一態様によると、質量分析方法は、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータでイオンを分離することと、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に配置された、複数の電極を備えた第一のイオンガイドにおいて、イオンモビリティセパレータまたはイオンモビリティスペクトロメーターからイオンを受け取ることと、
第一の操作モードにおいてイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから受け取ったイオンが、第一のイオンガイドの個別領域または個別部分に保持および/または閉じ込めおよび/または輸送および/または移動されるように、一種類もしくは複数の電圧、または一種類もしくは複数の電圧波形を前記第一のイオンガイドの電極に印加することと、
前記第一のイオンガイドの下流側に質量分析器を設けることとを含む。
【0072】
本発明の別の態様によると、質量分析計は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に配置したイオンガイドを備え、前記イオンガイド内に複数の軸方向電位井戸を作るため、使用時に、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を前記イオンガイドに印加する。
【0073】
本発明の別の態様によると、質量分析計は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に配置したイオンガイドを備え、前記イオンガイド内に複数の軸方向電位井戸を作るため、使用時に、二種類以上の移相交流または高周波電圧を前記イオンガイドに印加する。
【0074】
本発明の別の態様によると、質量分析計は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に配置したイオンガイドを備え、使用時に、複数の軸方向電位井戸は、前記イオンガイド内に作られ、および/または前記イオンガイドに沿って移動する。
【0075】
本発明の別の態様によると、質量分析方法は、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側にイオンガイドを設けることと、
複数の軸方向電位井戸を前記イオンガイド内に作るために、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を前記イオンガイドに印加することとを含む。
【0076】
本発明の別の態様によると、質量分析方法は、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側にイオンガイドを配置することと、
前記イオンガイド内に複数の軸方向電位井戸を作るために二種類以上の移相交流または高周波電圧を前記イオンガイドに印加することとを含む。
【0077】
本発明の別の態様によると、質量分析方法は、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはイオンモビリティセパレータの下流側にイオンガイドを配置することと、
複数の軸方向電位井戸を前記イオンガイド内に作ること、および/または複数の軸方向電位井戸を前記イオンガイドに沿って移動させることを含む。
【0078】
好適な実施形態は、質量分析計および質量分析の方法に関し、ある特定の荷電状態にあるイオン(例えば、多価イオン)を、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを用いて他の荷電状態にあるイオン(例えば、一価イオン)から分離することができる。そして、前記イオンは、好ましくは、複数の軸方向電位井戸が作られるイオンガイドへ移され、さらに、前記イオンガイドの長手方向に沿って移動するのが好ましい。前記イオンガイドは、好ましくは、イオン群またはパケットが、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから送出され前記イオンガイドに受け取られるとともに、その忠実度および構成を保存するよう配置および適合させる。前記イオンガイドはまた、好ましくは、イオンガイドの下流側に配置した飛行時間質量分析器のサンプリングデューティサイクルを最適化することができる。
【0079】
本発明の好適な一実施形態に係る質量分析方法は、イオンのパルスを1つ供給し、別のイオンパルスを供給する前に下記工程を実施することを含む。(a)イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータにおいて、前記イオンのイオン移動度によって前記イオンの少なくともいくつかを一時的に分離し、(b)イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから送出されるイオンの少なくともいくつかをイオンガイドに集め、前記イオンガイドで受け取ったイオンを、各イオン群を分離している一連の電位の山または電位障壁で、群またはパケットに区分し、前記イオンは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの出口における到着時刻によって区分し、(c)前記イオンをイオンガイド内で移動させ、前記イオンは、不均一な高周波電界によって放射状に閉じ込められ、前記イオンガイドの軸に沿って移動またはその他の方法によって移動する、一連の電位の山または電位障壁によりイオンガイドに沿って前方に推進または移動させ、および(d)一種類または複数の一連の電位の山または電位障壁により、イオンガイドの出口まで前方に推進または移動させる一種類または複数のイオン群またはパケット内のイオンの質量スペクトルを記録する。
【0080】
前記質量分析計は、イオンパケットの全部または一部の質量スペクトルを記録できることが好ましい。前記質量分析計は、例えば、飛行時間質量分析器を備えていてもよい。直交加速飛行時間質量分析器が特に好ましい。いくつかの別の実施形態によると、質量分析器は、線形四重極イオントラップ質量分析器、三次元四重極イオントラップ質量分析器、オービトラップ質量分析器、ペニングトラップ質量分析器、またはイオンサイクロトロントラップ質量分析器を備えていてもよい。前記質量分析器は、質量依存共鳴周波数のフーリエ変換を用いる、前記質量分析器の改良品を備えていてもよい。
【0081】
前記イオンガイドにより移送された各イオンパケット内のイオンの質量スペクトルの全部または一部を記録することにより、各種イオンの複合混合物における任意の所望の荷電状態が検出され、最終質量スペクトルの生成に際し優先的に選択または表示される。望ましくない荷電状態にあるイオンに関する質量スペクトルデータは、そのような質量スペクトルデータが、最終質量スペクトルに表示されないように、記録されないか、削除または他の方法で除去される。
【0082】
好適な一実施形態において、前記質量分析計は、直交加速飛行時間質量分析器を備える。従来の飛行時間質量分析器では、各イオンはほぼ同じエネルギーを持つように配列され、そして、プッシュ電極に隣接した直交加速領域に移される。前記直交加速領域には、前記プッシュ電極に加圧することにより、直交加速電界を周期的に印加する。前記直交加速領域の長さ、イオンのエネルギー、および直交加速電界の印加頻度によって、前記イオンのサンプリングデューティサイクルは決まる。エネルギーはほぼ同じだが質量電荷比の異なるイオンは、速度が異なり、よってサンプリングデューティサイクルも異なる。
【0083】
従来の仕組みとは対照的に、前記好適な一実施形態によると、イオンは、好ましくは直交加速飛行時間質量分析器の上流側のイオンガイドから放出される。前記イオンは、好ましくは、前記イオンガイドから連続したパケットで放出され、好ましくは、イオンガイドから放出されたイオンパケットのすべてのイオンが、比較的狭い範囲の質量電荷比を有し、従って速度範囲も狭いことが好ましい。その結果、前記イオンガイドから放出されるイオンパケットの実質的にすべてのイオンが、直交加速電界を印加した時、一度に飛行時間質量分析器の直交加速領域に到達するように配置することができる。その結果、前記イオンガイドから排出または放出されるイオンの大部分または好ましくはすべてに対して、比較的高いサンプリングデューティサイクルを達成することができる。
【0084】
比較的高いサンプリングデューティサイクルを達成するため、イオンが直交加速領域の幅(実質的にプッシュ電極の幅に相当する)よりも大きく軸方向に分散しないように、十分短い時間で一イオンパケットに含まれるイオンが直交加速領域に到着するよう、各イオンパケットがイオンガイドから放出されることが望ましい。従って、イオンのエネルギーおよび各イオンパケットに含まれるイオンの質量電荷比の範囲を所与のものとした場合、前記イオンガイドからのイオンの放出点から飛行時間質量分析器の直交加速領域までの距離は、十分短いことが好ましい。イオンガイドに沿って移動される各イオンパケット内のイオンの質量電荷比の範囲は、好ましくは、比較的狭くまたは小さく設定する。直交加速電界は、好ましくは、前記直交加速領域へのイオンの到達に同期して印加する。前記好適な一実施形態によれば、前記イオンガイドから放出されるイオンパケット内の全イオンに対し実質的に100%のサンプリングデューティサイクルを達成することが可能である。さらに、前記イオンガイドから放出されるイオンパケットの一つ一つに対し最適条件が適用される場合、前記の好適な一実施形態によると、100%に近い総合サンプリングデューティサイクルの達成が可能である。
【0085】
前記の好適な一実施形態は、好ましくは、質量分析器、好ましくは、中間イオンガイドを介して直交加速飛行時間質量分析器に連結したイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを備えている。前記の好適な一実施形態では、好ましくは、イオンの荷電状態によってイオンの分離を可能にするとともに、好ましくは、広範囲の質量電荷比を持つイオンに対し比較的高いサンプリングデューティサイクルの実現を可能とする。
【0086】
本発明の特に好適な態様は、イオンガイドが、好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータと質量分析器との間に配置或いは設置されていることである。イオンは、好ましくは前記イオンガイド内で作られる連続した電位の山或いは電位障害によって、イオンガイド内およびイオンガイドに沿って輸送されるのが好ましい。その結果として、好ましくは複数の軸方向電位井戸がイオンガイド内に作られ、好ましくはイオンガイドの軸に沿って移動または他の方法によって移動される。前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータおよび前記イオンガイドは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの出口から流出するイオンが、好ましくは前記イオンガイド内に作られた連続した軸方向電位井戸で受け取られるよう十分に密接に連結するのが好ましい。前記好適な一実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの出口から流出するイオンは、イオンガイド内の異なるまたは別個の軸方向電位井戸に捕捉されるので、前記イオンの順序または構成を、維持または他の方法で保存するのが好ましい。直交加速飛行時間質量分析計は、前記イオンガイドからイオンが流出または放出されるとともに、イオンの質量分析を行うため、前記イオンガイドの下流側に配置するのが好ましい。前記イオンガイドおよび直交加速飛行時間質量分析計も同様に、前記イオンガイドの出口から放出される各イオンパケットまたは群が、好ましくは、前記好適な一実施形態に従って実質的に100%に近いサンプリングデューティサイクルで直交加速飛行時間質量分析計によりサンプリングされるように十分密接に連結するのが好ましい。
【0087】
前記の好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを通過するイオンには、好ましくは、バッファガスの存在下で電界を印加する。異なった種類のイオンは、好ましくは異なった速度を得て、前記の好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを通過する際に、それらイオンのイオン移動度に応じて分離されるのが好ましい。前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内でのイオンの移動度は、イオンのサイズ、形状および荷電状態によって決まるのが好ましい。使用可能なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの一形態は、ドリフト管または移動セルを備えたものであり、前記ドリフト管または移動セルの長手方向に沿って軸方向電界を印加し、比較的圧力の高いバッファガスを供給する。相対的にイオン移動度の高いイオンは、相対的にイオン移動度の低いイオンよりも速くイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを通過するのが好ましい。従ってイオンは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータにおいて、そのイオン移動度に応じて分離されるのが好ましい。一実施形態では、ドリフト管または移動セルは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを形成する電極に不均一な高周波電界を印加することによってイオンがドリフト管または移動セル内に放射状に閉じ込められる点で、イオンガイドとしても機能する。しかし、他の複数の実施形態によると、イオンはドリフト管または移動セル内で放射状に閉じ込められない場合もある。
【0088】
好適な一実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータは、好ましくは、複数の電極を備え、不均一な高周波電界を前記電極に印加することによって、イオンはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内に放射状に閉じ込められる。前記電極は、好ましくは、イオンが使用時に通過する開口部を備えた複数の電極を備える。イオンは、バッファガスの存在下で、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの軸に沿って移動するよう配置された一種類もしくは複数の電位の山、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位によって前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを通り前方に送出される。一種類もしくは複数の電位の山または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位の振幅及び速度、ならびに前記バッファガスの種類および圧力を適切に選択することにより、少なくとも一部のイオンが前方に送られる際に、一種類もしくは複数の電位の山または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位を確実に選択的に滑行または他の方法で通過することができる。従ってイオンは、好ましくは、そのイオン移動度に依存した一種類または複数の電位の山の移動によって特異的に影響を受けることとなる。その結果として、イオン移動度の異なるイオンは、好ましくは、異なった速度でイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内を輸送され、そのイオン移動度によってまたは応じて分離される。
【0089】
前記の好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータにおいてイオン群を、そのイオンのイオン移動度に応じて分離するサイクルタイムは、2〜50msの範囲、好ましくは5〜20msの範囲、更に好ましくは約10msであってもよい。飛行時間質量分析器を用いてイオンパケットを質量分析するサイクルタイムは、10〜250μsの範囲、好ましくは20〜125μsの範囲、更に好ましくは約50μsであってもよい。
【0090】
単なる説明を目的とした例として、イオンは、好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータにおいて、約10msの時間をかけてそのイオン移動度に応じて分離してもよい。そして、前記好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンは、イオンガイドにおいて好ましくは連続的に作られ、その後、好ましくはイオンガイドの長手方向に沿って移動する200の個別の軸方向電位井戸の一つに捕集してもよい。軸方向電位井戸が前記の好適なイオンガイドの出口に到達すると前記軸方向電位井戸から流出するイオンは、50μsの時間で質量分析される。軸方向電位井戸を作り、前記軸方向電位井戸をイオンガイドの長手方向に沿って移動させる各サイクルには、好ましくは、対応するサイクル、すなわちイオンの飛行時間質量分析器による質量分析や直交加速もある。前記の好適な一実施形態によると、イオンガイドからのイオンパケットの放出と、それに続く飛行時間質量分析器の直交加速領域に隣接して配置されたプッシュ電極への直交加速電圧の印加との間の遅延時間は、漸進的に増加するのが好ましい。特定の荷電状態を有するイオンについては、質量電荷比のより低いイオンが相対的に質量電荷比の高いイオンに先立ってイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの出口から流出する事を反映し、好ましくは連続した電位井戸がイオンガイドの出口に到達した際前記電位井戸から放出されるイオンの平均質量電荷比も増加するため、前記遅延時間は増加するのが好ましい。
【0091】
イオン源は、好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの上流側に配置するのが好ましく、例えば、レーザー脱離イオン化(LDI)イオン源、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)イオン源、またはシリコン基板上脱離イオン化(DIOS)イオン源などのパルスイオン源を含んでいてもよい。また、連続イオン源も使えるが、その場合、好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの上流側にイオントラップを設けてもよい。前記イオントラップは、好ましくは、イオン源から受け取ったイオンを貯蔵し、前記イオンを周期的にイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内にまたは向けて放出するように配置する。前記連続イオン源としては、エレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源、大気圧化学イオン化(APCI)イオン源、電子衝撃(EI)イオン源、大気圧光イオン化(APPI)イオン源、化学イオン化(CI)イオン源、高速原子衝撃(FAB)イオン源、液体二次イオン質量分析(LSIMS)イオン源、電界イオン化(FI)イオン源、または電界脱離(FD)イオン源などが挙げられる。その他のパルス、連続、または擬似連続イオン源も使用してもよい。大気圧イオン化イオン源が特に好ましい。
【0092】
前記質量分析計はさらに、好ましくはイオン源の下流側および好ましくは好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの上流側に配置したマスフィルターまたは質量分析器を備えていてもよい。前記マスフィルターまたは質量分析器は、例えば、特定の質量電荷比を持つか、特定の範囲内に質量電荷比を持つ特定の親イオンまたは前駆イオンを好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ移送するために使用してもよい。前記マスフィルターは、例えば、四重極ロッドセットマスフィルター、飛行時間質量分析器、ウイーン(Wein)フィルター、または磁場型質量分析器を含む。
【0093】
前記質量分析計は、好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの好ましくは上流側に配置された衝突セルまたはフラグメンテーションセルを備えていてもよい。一操作モードでは、衝突セルまたはフラグメンテーションセルに流入する少なくともいくつかの親イオンまたは前駆イオンが、フラグメント化される。その結果得られた娘イオン、フラグメントイオン、または生成イオンは、次に好ましくは好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ移送される。前記娘イオン、フラグメントイオン、または生成イオンは、次に、その移動度に応じて、前記好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内で分離されるのが好ましい。
【0094】
直交加速飛行時間質量分析器が特に好適ではあるが、好適性の低い他の実施形態によると、前記質量分析計は、四重極質量分析器、三次元イオントラップ質量分析器、線形イオントラップ質量分析器、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析器、フーリエ変換オービトラップ型質量分析器または磁場型質量分析器を備えていてもよい。
【0095】
本発明の各種実施形態ならびに説明のみを目的として示すその他の補助手段について、添付図面を参照しながら例を用いて以下説明する。
【0096】
図1は、従来の方法で得られる代表的な質量スペクトルを示し、目的とし得る被分析試料二価イオンが、いかに、一価イオンをバックグラウンドとして相対的に不明瞭になり得るかを示している。質量分析計が、多価ペプチド関連イオンをさらに容易にターゲットとすることができるよう、化学的ノイズに関連する一価イオンを効果的に除去できることが、タンパク質消化の研究にとっては特に有利であろう。化学的ノイズが検出の制約条件とはならない場合についてもなお、目的とする被分析試料イオンの搬送およびサンプリングの効率を高めることができることにより、質量分析計の感度を向上させることができることは有利であろう。以下説明するように、本発明の好適な実施形態は、都合のよいことに、最終的な質量スペクトルから化学的ノイズ(例えば、一価イオン)を減少または実質的に除去することを可能にしており、また前記好適な本実施形態はまた、好ましくは、目的とする被分析試料イオンの搬送およびサンプリングデューティサイクルを増加させることを可能にしている。従って前記の好適な実施形態は、タンパク質消化の研究において特に有利である。
【0097】
単に説明することのみを目的として、目的とする多価被分析試料イオンを不明瞭にし得る一価バックグラウンドイオンの影響を軽減するいくつかの従来の方法を以下説明する。一価イオンとの関連において多価イオンの検出に有利に働くようにイオン検出器を機能させることが知られている。直交加速飛行時間質量分析器のイオン検出器は、例えば、特定の識別閾値を持つ時間デジタル変換器(TDC)を用いて到達イオン数を計数することもできる。前記イオン検出器に到達する単一イオンが生成する電圧パルスは、前記電圧閾値を超過するに足る高圧でなければならず、それによって前記識別器が始動しイオンの到達を記録する。前記電圧パルスを生成するイオン検出器は、電子増倍管またはマイクロチャンネルプレート(MCP)検出器を備えていてもよい。これら検出器が生成した信号の大きさが、被検出イオンの荷電状態の増大とともに増加するよう、それら検出器は、電荷有感型である。従って、識別電圧レベルを上げるか、検出器のゲインを下げるか、またはその両方法の組み合わせにより、より高い荷電状態を優先する識別を実現させることができる。
【0098】
図2Aは、通常の検出器ゲインで得られた従来の質量スペクトルを示す。図2Bは、前記検出器ゲインを下げることにより得られた同等の質量スペクトルを示す。図2Aおよび図2Bから、検出器ゲインの低減(すなわち識別レベルの増加)により、多価イオンが優先的に識別する一方で、この方法は感度が逆に低下するというかなり不利な点を有することが分かる。図2Aおよび図2Bの座標軸から分かるように、より低い検出器ゲインを採用した場合、感度が約4倍低下する。また、検出器ゲインを低減する方法も、特定の荷電状態にあるイオンの選択を可能にするものではない。代わりに、達成可能な最善の方法は、より高い荷電状態に対して、より低い荷電状態の検出効率を低減させることである。
【0099】
特定の荷電状態にあるイオンの優先的選択を可能とする別の方法は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを飛行時間質量分析器に結合することによって可能となる。
【0100】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内のイオンは、バッファガスの存在下で電界に曝される。イオンの種類が異なればその速度が異なり、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを通過する際にそのイオン移動度に応じて一時的に分離される。そのようなイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内のイオンの移動度は、イオンのサイズ、形状、および荷電状態に依存する。比較的大型の一価のイオンの移動度は、通常、比較的小型の単一電荷を有するイオンと比べて、比較的低い。また、一価イオンの移動度も、通常、同一化合物に関する二価のイオンよりも低い。
【0101】
イオンモビリティセパレータまたはイオンモビリティスペクトロメーターの一形態は、ドリフト管または移動セルを備え、軸方向の電界はそれに沿って維持される。前記ドリフト管または移動セル内では比較的高圧のバッファガスが保持される。軸方向電界と比較的高圧のバックグラウンドガスとの組み合せにより、移動度の相対的に低いイオンに比べ、移動度の相対的に高いイオンをより迅速にドリフト管または移動セルを通過させる。従って、イオンはその移動度に応じて分離される。
【0102】
イオンモビリティセパレータまたはイオンモビリティスペクトロメーターは、大気圧または大気圧付近で稼動する。または、イオンモビリティセパレータまたはイオンモビリティスペクトロメーターは、約0.01mbarという低圧の不完全真空状態においても稼動し得る。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータは、使用時にイオンが搬送される開口部を備えた複数の電極を備え得る。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの少なくとも一部にわたって直流電圧勾配を維持し、前記電極の少なくともいくつかは交流または高周波電圧源に接続される。前記交流または高周波電圧の周波数は、一般に、0.1〜3.0MHzの範囲内である。この形態のイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータは、前記交流または高周波電圧を前記電極に印加することによって、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内で放射状にイオンを閉じ込める機能を果たす擬似電位井戸が作られる点で、特に有益である。イオンを放射状に閉じ込めることによって、イオンを放射状に閉じ込めないイオンモビリティセパレータまたはスペクトロメーターと比べ、より高いイオン搬送速度を実現する。
【0103】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの他の一形態では、不均一な高周波電界によってイオンを放射状に閉じ込める。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの軸に沿って移動する一連の相対的に低い振幅電位の山によって、イオンはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内を前方に移動する。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内では、相対的に高圧のバッファガスが維持される。複数の電位の山の振幅および速度の適切な選択とともにバッファガスの種類および圧力の適切な選択により、イオンをその移動度に応じた方法で相対的に低い振幅電位の山を選択的に滑行または通過させることができる。従って、移動度の異なるイオンは、異なった速度でイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内を輸送されることにより、その移動度に応じて一時的に分離される。
【0104】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に飛行時間質量分析器を設けイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンを受け取ることにより、ある一定の所望の荷電状態にあるイオンのみを検出および記録することが可能である。或いは、すべてのイオンに関する質量スペクトルデータを取得してもよいが、望ましくない荷電状態にあるイオンに関する質量スペクトルデータを除去すべく、前記質量スペクトルデータを後処理してもよい。従って、最終的な質量スペクトルは、ある一定の所望の荷電状態にあるイオンのみが表示されるように処理することができる。
【0105】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータと飛行時間質量分析器との組み合せは、例えば、ある大型のタンパク質のトリプシン消化物から、二価イオンにのみ関連する質量スペクトルを生成するために有利に使用することができる。移動度の異なるイオンは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータにおいて分離され、異なったドリフト時間をもつことになる。そして直交加速飛行時間質量分析器は、質量電荷比に従って効果的に更にイオンを分離する。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内でのドリフト時間に対する質量分析計内での飛行時間について結果として得られる二次元プロットを作成することができる。図3Aにそのような二次元プロットの例を示す。図3Aから、一価の[M+H]+イオンが、二価[M+2H]2+イオンの特性線とは異なるある特性線上にあることが分かる。従って、飛行時間質量分析器は、所望の質量電荷比を持つイオンのみの飛行時間を記録するためだけに使用することが可能である。或いは、前記飛行時間質量分析器は、あらゆる質量電荷比および荷電状態を有する全てのイオンの飛行時間を記録するために使用することもできる。そして、その結果得られる質量スペクトルデータを後処理し、或る特定の所望の荷電状態にあるイオンのみに関連する質量スペクトルを選択し提示することもできる。
【0106】
さらに実験的に求めた、イオンの質量電荷比と、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ通過に要するドリフト時間との関係を図3Bに示す。図3Aおよび図3Bから分かるように、一価イオンと同じ質量電荷比を持つ二価イオンは、一価イオンに比べて、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ通過に要するドリフト時間が短い。図3Aの縦座標軸は、飛行時間質量分析器の飛行領域を通過する飛行時間として示されているが、当然のことながら、これはイオンの質量電荷比に直接相関していると理解されるであろう。
【0107】
図4Aに、或る公知の質量分析計を示す。この構成によると、エレクトロスプレーイオン源から放出されたイオン1は、イオントラップ2に貯蔵される。そして、前記イオンは、イオントラップ2からゲート電極3を介して定期的に(時間T=0)放出される。前記イオンは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の移動セルへ流入する。図3Aおよび図3Bから明らかなように、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を通過するイオンの一般的なドリフトタイムは、数ミリ秒(ms)程度である。
【0108】
最初に前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へ脈動的に流入した全イオンが、そのイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の全長に渡って移動した後、新たなイオンパルスがイオントラップ2から排出され、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4に流入させる。そして、イオン移動度に応じ、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4においてイオンを分離するプロセスが繰り返される。
【0109】
イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を出、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に配置された飛行時間質量分析器13のプッシュ電極10に到達するまでにかかる時間は、前記イオンのイオン移動度の関数である。イオン移動度の相対的に高いイオンは、比較的短時間で、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を横断し前記飛行時間質量分析器のプッシュ電極10に隣接する直交加速領域に到達する。プッシュ電極10の加圧と、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の入口に位置するゲート電極3の加圧とを同期させることにより、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4と飛行時間質量分析器13との組み合せを、特定の荷電状態にあるイオンに関する質量スペクトルデータを識別または選択できるように使用することを可能にする。
【0110】
図4Bは、飛行時間質量分析器13のプッシュ電極10の一連のプッシュパルス(P1からP6)または加圧が、イオンをイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へ脈動的に流入させる1サイクル内または1サイクルの間にいかなる影響を受けるかを示している。図解の簡略化のみを目的とし、図4Bでは、6つのパルスを示している。しかし、実際には、新しいイオンパルスをイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4に流入させる前に、プッシュ電極10は、例えば、数百回加圧されることもあり得る。第一のプッシュパルスP1によって直角方向に加速さることによりイオン検出器12に到達するイオンのイオン移動度は、その後第二のプッシュパルスP2により直角に加速されるイオンのイオン移動度よりも若干高くなる。同様に、プッシュパルスPnにより直角に加速されるイオンのイオン移動度は、プッシュパルスPn+1により直角に加速されるイオンのイオン移動度よりも高くなる。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へ脈動的に流入させたイオンの単一サイクル中の全てのプッシュパルスによる全質量スペクトルデータを集計することにより、あらゆる荷電状態および移動度を有するイオンに対応する統合的質量スペクトルの生成が可能となる。単一のプッシュパルスイベントPnによって得られた個々の質量スペクトルは、特定のドリフト時間Tn(但し、Tnは、イオンをイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4に脈動的に流入させてから、プッシュパルスPnを印加するまでの時間と定義される)において、図3Bに示されたプロットの垂直断面または切開面に関係するものと考えられる。
【0111】
特定のプッシュパルスPnについての飛行時間の取得が、実験データが所定の飛行時間後に到達するイオンに関してのみ取得されるかまたは表示されるかのいずれかであるように構成され、また前記所定の飛行時間が、例えば、図3Bに示すように一価の荷電帯または領域と二価の荷電帯または領域の間にあるように設定すると、結果として得られる質量スペクトルは、多価イオンにのみに関連するものとなる。一価バックグラウンドイオンに関する質量スペクトルデータは、表示されるかまたは他の方法で生成される最終的な質量スペクトルから除外されるか、または記録されないかのいずれかとなる。
【0112】
飛行時間カットオフの好ましい値はプッシュパルスPnからプッシュパルスPn+1まで変化し得る(例えば増加する)。一実施形態によれば、イオンをイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へ脈動的に流入させる単一サイクルにおけるすべてのプッシュからの全質量スペクトルデータによって、例えば、結果として得られる、多価イオンのみに関する統合的質量スペクトルが得られる。一価イオンに関する質量スペクトルデータは、最終的な質量スペクトルから効果的に削除されるか、または他の方法によって消去される。
【0113】
低飛行時間カットオフおよび高飛行時間カットオフの両者の組合せを用いることにより、特定の荷電状態または荷電状態範囲にあるイオンを増強または減衰させることもできる。図5は、例えば、三価に荷電したイオンのイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを通過するドリフト時間が、質量電荷比の等しい二価イオンよりもなお一層短い様子を示している。三価イオンに関連する質量スペクトルのみが記録されるかまたは使用されて最終的な質量スペクトルを生成するように、飛行時間上限カットオフQ−Q’を飛行時間下限カットオフP−P’と併せて使用することができる。
【0114】
一実施形態によると、すべてのイオンに関する質量スペクトルデータが取得されるが、飛行時間が各プッシュパルスPnに対する飛行時間下限カットオフ未満の飛行時間を有するイオンは、廃棄されるかまたは除外されてもよい。そして、すべてのプッシュパルスから得た全質量スペクトルデータを集計することによって、多価イオンのみに関する統合的質量スペクトルを得ることができる。また、取得した質量スペクトルデータは、飛行時間下限カットオフと飛行時間上限カットオフとの間の各質量スペクトルデータを部分的に選択するために後処理を施してもよい。この方法により、例えば、唯一特定の荷電状態(例えば、二価イオン)または荷電状態の範囲(例えば、二価および三価イオン)にあるイオンに関する質量スペクトルを構成することが可能となる。事実、一実施形態によれば、各個別荷電状態について、個別の質量スペクトルを構成または他の方法で提示し得る。
【0115】
他の荷電状態にあるイオンの存在下で特定の荷電状態にあるイオンを優先的に選択する別の(図示されない)方法は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータにおいてイオン移動度に応じてイオンを分離するものである。そして、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンは、質量フィルターに渡される。前記質量フィルターは、例えば、同期したプッシュ電極と共に軸方向飛行時間ドリフト領域または四重極ロッドセット質量フィルターを備えていてもよい。そして、前記イオンには、前記質量フィルターにより、前記イオンの質量電荷比に応じて質量フィルター処理を施す。前記質量フィルターの質量フィルター特性(例えば、低質量電荷比カットオフ)は、第一の荷電状態にあるイオンを前方に搬送する一方、第二の異なった荷電状態にあるイオンを質量フィルターを用いて実質的に減衰させるように、漸進的に変化(例えば、増加)させるか、または、段階的に変化させる。これにより、一種類または複数の或る特定の荷電状態にあるイオンを、異なった荷電状態にあるイオンの混合体から物理的に選択することが可能となる一方、望ましくない荷電状態にあるイオンは質量フィルターによって物理的に減衰させる。多価イオンは、質量フィルターによって優先的に選択され前方へ搬送される一方で、一価イオンは、質量フィルターによって減少させるかまたは実質的に減衰させることができる。或いは、二価またはそれ以上の荷電状態にあるイオンを、例えば、質量フィルターによって前方へ搬送することもできる。
【0116】
前記質量フィルターは、実質的に最低質量電荷比よりも高い質量電荷比を有するイオンのみを搬送するように、ハイパス質量電荷比フィルターとして作用させることもできる。この操作モードにおいて、多価イオンは、一価イオンに対して優先的に搬送させることができる。すなわち、二価、三価、四価および五価またはそれ以上に荷電したイオンを、前記質量フィルターにより優先的に前方に搬送することができる一方、一価イオンは、前記質量フィルターにより実質的に減衰させることができる。
【0117】
また、前記質量フィルターは、最低質量電荷比よりも高く最高質量電荷比よりも低い質量電荷比を有するイオンのみを実質的に搬送するように、バンドパス質量電荷比フィルターとして作用させることもできる。この操作モードでは、単一荷電状態の多価イオン(例えば、三価)は、前記質量フィルターによって優先的に前方へ搬送される一方、その他の荷電状態にあるイオンは、前記質量フィルターにより実質的に減衰させることができる。或いは、二価またはそれ以上の隣接または連続的な荷電状態にあるイオン(例えば、二価および三価イオン)は、前記質量フィルターによって前方に搬送される一方、その他すべての荷電状態にあるイオンは、前記質量フィルターによって実質的に減衰させることもできる。
【0118】
質量フィルターは、例えば、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへイオンを脈動的に流入させ、そこから流出するまでのイオンの1サイクルの間に、最低質量電荷比カットオフまたは質量電荷比伝送窓が漸進的に増加するように走査してもよい。そして、搬送されたイオンは、例えば、直交加速飛行時間質量分析器などの質量分析器により記録してもよい。
【0119】
好適性の低い形態によれば、前記質量フィルターは、代わりに、比較的低い圧力に維持されるドリフト領域を備えていてもよい。ドリフト領域には、軸および、少なくとも一部のイオンを実質的に前記軸に対して直角方向に注入するための注入電極を備えていてもよい。前記注入電極は、直交加速飛行時間質量分析器のプッシュ電極および/またはプル電極を含んでいてもよい。
【0120】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側であってドリフト領域の上流側に第二のイオントラップを配置した別の構成が考えられる。前記第二のイオントラップは、イオンパケットを脈動的にドリフト領域に流入させるよう、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから受け取ったイオンを貯蔵し、周期的に放出するように構成されている。注入電極は、第二のイオントラップからイオンが最初に放出された後、所定の時間イオンを注入するように構成してもよい。前記所定の時間は、所望の質量電荷比を有するイオンまたは電荷質量比が所望の範囲内にあるイオンのみが、前記注入電極によって直交加速飛行時間質量分析器へ注入されるように設定すればよい。
【0121】
後者の設定は、感度を向上させる手段を供与する操作モードも提供する。感度を向上させられることは、一価バックグラウンドイオンが目的の被分析試料イオンの検出に制約を課すことがない場合でも大いに有利である。
【0122】
この操作モードでは、第一のイオンパケットは、第二のイオントラップから放出させてもよく、また直角方向注入パルスのタイミングは、所定の遅延時間に設定してもよい。次に第二のイオンパケットも第二のイオントラップから放出させてもよく、また所定の遅延時間を若干延長してもよい。遅延時間延長の過程は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへイオンを脈動的に流入させる1サイクルの間に多数回繰り返してもよい。遅延時間は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの出口に到達したイオンの質量電荷比の関数として延長してもよい。遅延時間関数の適切な選択によって、ドリフト領域へ放出される各パケット内のイオンの質量電荷比に応じて、直角方向注入のタイミングを最適化でき、それによって感度の最適化も可能となる。
【0123】
イオンの同期直角方向注入および軸方向飛行時間型質量フィルターの分解能または選択性は、ドリフト領域の長さおよび直交加速領域の幅に依存することになる。ドリフト領域の長さが長いほど、また直交加速領域の幅が短いほど、前記軸方向飛行時間型質量フィルターの分解能または選択性は高くなる。しかしながら、軸方向飛行時間型質量フィルターの分解能または選択性が高いほど、前記直交加速飛行時間質量分析器へ注入できるイオンの質量電荷比の範囲が狭くなる。この質量電荷比の範囲が第二のイオントラップに存在するその範囲より狭い場合、その質量電荷比の範囲外のものは廃棄されることとなる。従って、廃棄するイオンを可能な限り少なくしたいことと、軸方向飛行時間型質量フィルターの十分な分解能または選択性を実現することとの間に相克が生じる。質量フィルターの選択性が高いほど、より多くのイオンが放棄される傾向があり、それによって感度のゲインが低下する。
【0124】
図6は、本発明の第一の実施形態を示し、イオンガイド6がイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流に設けられ、それがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を直交加速飛行時間質量分析器13に効果的に連結している。エレクトロスプレーイオン源などの連続イオン源を設けてもよく、それがイオンビーム1を発生させる。次にイオンビーム1は、好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の上流に配置するのが好ましいイオントラップ2へ渡される。好ましくはイオントラップ2の出口に位置し配置されたイオンゲート3に抽出電圧を印加することによって、イオントラップ2からイオンを脈動的に流出させるのが好ましい。また、イオンゲート3も、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の上流側に配置するのが好ましい。イオンゲート3に抽出電圧を印加することにより、好ましくはイオントラップ2からイオンパルスが放出されイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へ注入される。
【0125】
イオントラップ2は、四重極ロッドセットまたはその他の多極ロッドセットを備えていてもよい。好適な一実施形態によると、イオントラップ2の長さは約75mmである。その他の実施形態によると、イオントラップ2は、イオントンネルを備え、使用時にイオンが通過し搬送される開口部を有する複数の電極を備えていてもよい。開口部は、すべて同一サイズであるのが好ましい。他の実施形態では、イオントラップ2の電極の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が、実質的に同一サイズの開口部を備えている。イオントラップ2は、一実施形態によると、イオンが通過し搬送される開口部を有する約50の電極を備えていてもよい。
【0126】
イオントラップ2の隣接した電極は、好ましくは、逆相の二相交流または高周波電圧源に接続する。二相交流または高周波電圧をイオントラップ2の電極に印加することにより、イオンは、使用時に、放射状の擬似電位井戸の生成によりイオントラップ2内に放射状に閉じ込められるのが好ましい。イオントラップ2の電極に印加する交流または高周波電圧は、0.1〜3.0MHz、好ましくは0.3〜2.0MHz、さらに好ましくは0.5〜1.5MHzの範囲に周波数を有する。
【0127】
好適な一実施形態では、イオントラップ2を含む電極は、好ましくは、ある一定の直流電圧Vrf1(図7B参照)に維持される。イオントラップ2内にイオンを捕捉するため、イオントラップ2の下流側に配置したイオンゲート3は、イオントラップ2の電極が維持されている直流電位Vrf1より高い直流電位Vtrapに維持するのが好ましい。従って、イオンは好ましくはイオントラップ2内で放射状に閉じ込められ、且つ、好ましくは実質的にイオントラップ2から流出しないようにする。そして、イオンゲート3に印加する電圧は、好ましくは、イオントラップ2の電極が通常維持されている電位Vrf1より低い電圧Vextractまで周期的に降下させるのが好ましい。前記電位は、相対的に短い時間、相対的に低い電位Vextractまでのみ降下させる。これにより、イオンパルスをイオントラップ2から放出させ、好ましくはイオントラップ2の下流側に配置されたイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へ導入または他の方法によって注入されるのが好ましい。
【0128】
別の一実施形態によると、連続イオン源の代りにパルスイオン源を使用してもよい。パルスイオン源は、例えば、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)イオン源またはレーザー脱離イオン化イオン源を含む。パルスイオン源を用いる場合、前記イオン源はイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4に直接結合してもよく、その場合、イオントラップ2およびイオンゲート3は不要となり省略してもよい。
【0129】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へ脈動的に流入させるイオンが、好ましくは、そのイオン移動度に基づいてまたは応じて、一時的に分離されるように配置するのが好ましい。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4は、多くの異なる形態であってもよい。
【0130】
一実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4が、内部に分散した多数のガードリングを有するドリフト管を備えていてもよい。前記ガードリングは、等価の抵抗器によって相互接続され、直流電圧源に接続されていてもよい。ドリフト管の長手方向に沿って線形または段階的直流電圧勾配を維持するのが好ましい。前記ガードリングは、好ましくは、本実施形態にかかる交流または高周波電圧源に接続しない。
【0131】
別の一実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4は、複数の輪状、環状、板状、またはその他の電極を備えていてもよい。各電極は、使用時にイオンが好ましくは通過する開口部を備えているのが好ましい。前記開口部は、好ましくは、すべて同一サイズであり、円形であるのが好ましい。他の実施形態では、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の電極の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が、実質的に同一サイズまたは面積の開口部を有する。
【0132】
前記の好適な実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の長さは、好ましくは、100mm〜200mmの範囲にある。
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4は、好ましくは、真空チャンバー内に配置した複数の電極を具備する。イオンモビリティセパレータまたはイオンモビリティスペクトロメーター4は、使用時に、0.1〜10mbarの範囲内の圧力に維持される真空チャンバー内に設けられるのが好ましい。好適性の低い実施形態によると、前記真空チャンバーは10mbarより高く、大気圧まで、または大気圧近辺の圧力に維持してもよい。好適性の低い他の実施形態によると、前記真空チャンバーは、0.1mbar未満の圧力に維持してもよい。
【0133】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の交互電極または隣接電極は、好ましくは逆相の二相交流または高周波電圧源に接続する。前記交流または高周波電圧源は、0.1〜3.0MHz、好ましくは0.3〜2.0MHz、さらに好ましくは0.5〜1.5MHzの範囲内に周波数を有するのが好ましい。好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の電極に印加する二相交流または高周波電圧は、好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4内にイオンを放射状に閉じ込める作用をする擬似電位井戸を生成させるのが好ましい。
【0134】
イオントラップ2を含む電極およびイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を含む電極は、一実施形態によると、400Vの電源を含む直流電圧源に抵抗器により相互接続されていてもよい。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の電極を相互接続する前記抵抗器は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の長手方向に沿って実質的に一定または線形の軸方向直流電圧勾配を維持し得るように、実質的に等価であってもよい。図7Bは、本実施形態にかかるイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4全体に渡ってまたはそれに沿って維持されている線形直流電圧勾配を示す。しかしながら、他の実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の長手方向に沿って維持される前記直流電圧勾配は、若干または実質的に勾配が段階的なものであるか、或いは別の勾配を示す場合もある。
【0135】
好ましくはイオンゲート3(設けられている場合)に印加する直流トラップ電位または電圧Vtrapおよび抽出電位または電圧Vextractは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4に好ましくは接続するかまたは印加する直流電圧源上を浮遊してもよい。好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の電極に印加する交流または高周波電圧源は、コンデンサーによって直流電圧電源から絶縁されるのが好ましい。
【0136】
別の一実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4が、使用時にイオンが通過する開口部を備えた複数の電極を備え、一種類もしくは複数の過渡直流電圧または一種類もしくは複数の過渡直流電圧波形を前記電極に印加する。好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の複数の電極に印加する一種類もしくは複数の直流電圧または一種類もしくは複数の直流電圧波形は、少なくとも一部のイオンが、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の長手方向に沿って移動する際、一種類または複数の電位の山を通過または滑り越せるように、好ましくは比較的低い振幅を持つ一種類または複数の電位の山を形成するのが好ましい。図7Cは、この実施形態を示し、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の電極に印加される比較的低い振幅を持つ複数の過渡直流電圧を示す。好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の電極に印加される一種類もしくは複数の過渡直流電圧または一種類もしくは複数の過渡直流電圧波形は、一種類または複数の電位の山がイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の軸または長手方向に沿って、好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の出口へ向かって移動するように、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を形成する一連の電極に漸進的に印加するのが好ましい。
【0137】
バッファガスは、好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4内に保持され、イオンの動きに粘性抵抗を課するのが好ましい。好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の長手方向に沿って移動する一種類または複数の電位の山の振幅および平均速度は、少なくとも一部のイオンが、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の長手方向に沿って通過する際、電位の山または電位障壁を滑り越えるかまたは通過するように設定またはその他の方法で決めるのが好ましい。相対的にイオン移動度の低いイオンは、相対的に移動度の高いイオンよりも電位の山を滑り越えやすい。その結果、イオン移動度の異なるイオンは、異なった速度で、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4に沿って通過し移動する。従って、イオンは、それぞれのイオン移動度に応じて実質的に分離される。
【0138】
好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を通過するイオンの典型的なドリフトまたは通過時間は、約数ミリ秒程度である。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4に最初に脈動的に流入させたイオンがすべて、好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の長手方向に通過した後に、別のイオンパルスが、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へ導入または注入されるのが好ましい。これにより、新たなサイクルの操作の開始が示される。1回の試験操作または分析の過程で多数のサイクルの操作が実施される。
【0139】
前記の好適な実施形態によると、本発明の特に好適な態様は、イオンガイド6がイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に設られることである。イオンガイド6は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4が設けられる真空チャンバーとは別の真空チャンバー内に設けてもよい。或いは、前記イオンガイド6をイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4と同じ真空チャンバー内に設けてもよい。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4とは別の真空チャンバー内にイオンガイド6を設ける場合、前記2つの真空チャンバーは、図6に示すように、差動排気開口部5によって分離するのが好ましい。
【0140】
好適な実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に配置したイオンガイド6は、好ましくは使用時にイオンが通過する開口部を備えた複数の板状、輪状、環状、またはその他の電極を有するイオンガイドを備えていてもよい。イオンガイド6を形成する電極の開口部は、すべて同一サイズであるのが好ましい。好適性の低い実施形態では、イオンガイド6を形成する電極の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%が、実質的に同一サイズの開口部を有する。イオンガイド6の隣接電極は、好ましくは、逆相の二相交流または高周波電源に接続する。
【0141】
一種類もしくは複数の過渡直流電圧または一種類もしくは複数の過渡直流電圧波形を、イオンガイド6を形成する複数の電極に印加するのが好ましい。そのため、一つまたは複数の電位の山または電位障壁または軸方向電位井戸は、好ましくはイオンガイド6に形成され、イオンガイド6の長手方向に沿って移動させるのが好ましい。一種類もしくは複数の過渡直流電圧または一種類もしくは複数の過渡直流電圧波形は、好ましくはイオンガイド6の出口に向かってイオンガイド6の軸に沿って移動する一種類または複数の電位の山または電位障壁または軸方向電位井戸が作られるように、イオンガイド6の一連の電極に漸進的に印加するのが好ましい。
【0142】
好ましくはイオンガイド6の電極に印加される一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位または一種類もしくは複数の過渡直流電圧波形もしくは電位波形により、好ましくは複数の軸方向電位井戸が作られ、イオンガイド6の長手方向に沿って移動するのが好ましい。好ましくはイオンガイド6の電極に印加される一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形により、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出し、イオンガイド6に受け取られるかまたは流入するイオンが、複数の個別のまたは分離された軸方向電位井戸に区分されるかまたは分離されるのが好ましい。そして、各個別の電位井戸内のイオンは、イオンガイド6に沿って通過させるのが好ましい。軸方向電位井戸は、擬似電位井戸ではなく真の電位井戸であることが好ましい。
【0143】
イオンガイド6は、好ましくは真空チャンバー内に設けるか、または他の方法によって使用時に10-3〜10-2mbarの範囲の圧力に維持するのが好ましい。イオンガイド6は、好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を維持する圧力よりも少なくとも1桁低い圧力に維持する。好適性の低い実施形態によると、イオンガイド6を収容する真空チャンバーは、10-2mbarを超え1mbarまでまたは付近までの圧力に維持してもよい。好適性の低い実施形態によると、前記イオンガイド6を収容する真空チャンバーは、代りに10-3mbar未満の圧力に維持してもよい。イオンガイド6内の気体圧力は、好ましくはイオン運動の衝突減衰を付与するには十分であるが、イオンの運動に対して過大な粘性抵抗を付与するには不十分であるのが好ましい。
【0144】
好ましくはイオンガイド6内で作られる一種類または複数の電位の山または電位障壁または軸方向電位井戸の振幅および平均速度は、イオンが好ましくは電位の山または電位障壁を実質的に滑り越えることができないか、或いは、一つの軸方向電位井戸から別の軸方向電位井戸に移動または通過出来るように設定するのが好ましい。従って、イオンは、好ましくはイオンガイド6の長手方向に沿って移動させる軸方向電位井戸内に捕捉されるのが好ましい。イオンは、捕捉し、その質量、質量電荷比またはイオン移動度にかかわらず、イオンガイド6に沿って移動させるのが好ましい。従って好適なイオンガイド6は、好ましくは、イオンが、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の上流側からイオンガイド6に受け取られる順序を維持し、尚且つ、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から受け取ったイオンの組成を維持する有利な効果を有する。従ってイオンガイド6が、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から受け取ったイオンは、好ましくはイオンガイド6内で区分され、またイオンの区分によって、イオンをそのイオン移動度に応じて分離した状態を維持する。よって、イオンガイド6に捕捉されたイオンパケットまたは群と好適なイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の出口から流出するイオンとが直接対応するのが好ましい。
【0145】
イオンガイド6はまた、好ましくは相対的に高い圧力に維持したイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4と、好ましくは実質的に低い圧力に維持した、下流側にある質量分析器13などの質量分析計の他の構成要素とのインタフェイスとしても機能するのが好ましい。従って、イオンガイド6は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から受け取ったイオンの忠実度を維持する機能を備え、またこれらイオンを相対的に高圧の領域(例えば、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4)から相対的に低圧の領域(例えば、質量分析器13)に送る機能も備えていてもよい。
【0146】
一実施形態によると、イオンガイド6は、イオンを実質的にフラグメント化することなく搬送するのが好ましい。しかしながら、別の実施形態によると、イオンを娘イオン、断片イオンまたは生成イオンにフラグメント化するようイオンガイド6内に存在する気体の分子と衝突させるように、十分な運動エネルギーをもって、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4からイオンガイド6内へイオンを加速させてもよい。次の娘イオン、断片イオンまたは生成イオンの質量分析によって、親イオンまたは前駆イオンについての貴重な質量スペクトルデータを入手することができる。
【0147】
イオンガイド6に流入するイオンの運動エネルギーは、例えば、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出しイオンガイド6に流入する直前にイオンが曝される電位差または電界のレベルを設定または制御することにより制御できる。前記電位差または電界のレベルは、ほとんど瞬時に切り換えられるのが好ましい。一実施形態によると、電位差または電界のレベルは、電位差または電界が相対的に高い第一のレベルと、電位差または電界が相対的に低い第二のレベルとを反復的および/または規則的に切り換えることができる。従って、電位差または電界が第一のレベルにあり、電位差または電界が相対的に高い場合、イオンがイオンガイド6に流入するとともにそれらをフラグメント化させてもよい。逆に、電位差または電界が第二のレベルにあり電位差または電界が相対的に低い場合、イオンは実質的にフラグメント化されることはない。従って、イオンガイド6は、親イオンまたは前駆イオンが実質的にフラグメント化されることなくイオンガイド6によって搬送される操作モードと、親イオンまたは前駆イオンがイオンガイド6に流入するとフラグメント化される別の操作モードとの間で、効果的に、規則的かつ反復的に切換えられる。
【0148】
好ましくは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へさらにイオンパルスが導入またはその他の方法で注入される前に、イオンがイオンガイド6へ流入する前に曝される、電圧または電位差または電界も、イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の出口から漸進的に流出するとともに変化させてもよい(例えば、漸進的に増加させてもよい)。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出する一種類または複数種類のイオンの運動エネルギーが、好ましくはイオンがイオンガイド6へ流入するとともにフラグメント化されるために最適化されるように、前記電圧または電位差または電界を設定してもよい。或いは、イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の出口から流出し、そしてイオンガイド6へ流入する際、あらゆる種類のイオンに対して衝突エネルギーが略または実質的に最適化されるように、イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出する際に、電圧または電位差または電界を漸進的に変化させてもよい。
【0149】
好適な一実施形態によると、好ましくはイオンガイド6を収容している真空チャンバーの下流側のさらに別の真空チャンバー内に、伝送光学素子またはイオン光学レンズ配列8を任意に設けてもよい。伝送光学素子またはイオン光学レンズ配列8は、アインツェル(Einzel)静電レンズを備えていてもよい。差動排気開口部7は、イオンガイド6を収容している真空チャンバーと前記伝送光学素子またはイオン光学レンズ配列8を収容している真空チャンバーとの間に設けてもよい。伝送光学素子またはイオン光学レンズ配列8は、好ましくは、イオンをさらに別の差動排気開口部9を通過させ質量分析器13を収容している真空チャンバーに加速導入するために配置する。伝送光学素子またはイオン光学レンズ配列8を収容している真空チャンバーは、好ましくは、例えば相対的に中間の圧力に維持し得るイオンガイド6と、好ましくは相対的に低い圧力に維持される質量分析器13との間の中間領域またはインタフェイスとして機能する。
【0150】
特に好適な一実施形態によると、前記質量分析器は、イオンを直交ドリフト領域または飛行時間領域へ注入するためのプッシュおよび/またはプル電極10を備えた直交加速飛行時間質量分析器13を含んでいてもよい。レフレクトロン11は、イオンが直交ドリフト領域または飛行時間領域を通過して、好ましくは前記プッシュおよび/またはプル電極10の近傍に配置されるイオン検出器12へ向かって戻ってきたイオンを反射するために設置してもよい。
【0151】
当技術分野で周知のように、直交加速飛行時間質量分析器13へ脈動的に流入するイオンパケット内の少なくとも一部のイオンは、好ましくは直交ドリフト領域または飛行時間領域へ直角に加速される。イオンは、その質量電荷比に応じて、直交ドリフト領域または飛行時間領域を通過する際、一時的に分離される。相対的に質量電荷比の低いイオンは、質量電荷比が相対的に高いイオンよりも、前記ドリフト領域または飛行時間領域を速く移動する。従って、相対的に質量電荷比の低いイオンは、相対的に質量電荷比の高いイオンよりも先にイオン検出器12に到達する。イオンが前記ドリフト領域または飛行時間領域を移動しイオン検出器12に到達するのにかかる時間は、対象とするイオンの質量電荷比を正確に測定するために使用される。前記イオンの質量電荷比と、各イオン種について検出されたイオンの数とは、質量スペクトルの生成に使用されるのが好ましい。
【0152】
従来の質量分析計において、イオンを直交加速飛行時間質量分析器の上流側のイオントラップに貯蔵することが知られている。そして、すべてのイオンがイオントラップから質量分析器へ移動するように、イオンは非質量選択的にイオントラップから放出される。イオントラップから放出されたイオンパケット内のイオンは、その後、当該イオンがプッシュ電極に隣接する質量分析器の直交加速領域に到達するまで空間的に分散する。従って、相対的に質量電荷比の低いイオンは、相対的に質量電荷比の高いイオンよりも先に、プッシュ電極に隣接する直交加速領域に到達することとなる。前記プッシュ電極は、イオンが質量分析器の上流側にあるイオントラップから最初に放出された後、所定の時間で、一部のイオンを飛行時間質量分析器の直交加速領域またはドリフト領域へ直角方向に加速するよう加圧する。質量分析器のプッシュ電極に隣接する直交加速領域へのイオンの到達時刻は、イオンの質量電荷比に依存するため、イオントラップから放出されるイオンと直角方向に加速されるイオンとの間の遅延時間を適切に設定することにより、ある一定の質量電荷比を持つイオンがプッシュ電極によって、相対的に高いサンプリングデューティサイクルを有する直交加速飛行時間質量分析器へ確実に注入される。しかしながら、他のイオンは、前記プッシュ電極の加圧時に、プッシュ電極に隣接する直交加速領域をすでに通過してしまっているか、或いは、前記プッシュ電極の加圧時に、前記プッシュ電極に隣接する直交加速領域に未だ到達していないかのいずれかである。従って、これらのイオンは、直交加速ドリフト領域へ向けて直角方向に加速されず、よってこれらのイオンは、もはやそのシステムに属さなくなる。
【0153】
図8は、従来、一イオン群がイオントラップから非質量選択的に脈動放出され直交加速飛行時間質量分析器へ注入される際、プッシュ電極10の加圧のタイミングが、特定の質量電荷比を持つ一部のイオンを直角方向に加速することのみに関する効果をどの程度有するかについてさらに詳細に示す。初期時刻T=0において、質量電荷比が広範囲にわたるイオンが直交加速飛行時間質量分析器の上流側のイオントラップから非質量選択的に放出される。時間Tdの経過後、質量電荷比M2のイオンがプッシュ電極10に隣接する直交加速領域に到達している。この瞬間にプッシュ電極10に加圧すれば、質量電荷比M2のイオンはすべて注入されるか、或いは、飛行時間質量分析器の直交ドリフト領域または飛行時間領域へ直角方向に加速注入される。この結果、質量電荷比M2のイオンに関するサンプリングデューティサイクルは実質的に100%となる。しかしながら、実質的により高い質量電荷比M4(M4>M2)のイオンは、プッシュ電極10に加圧した時点で、まだプッシュ電極10に隣接する直交加速領域には到達していない。従って、質量電荷比M4のイオンは、飛行時間質量分析器の直交加速領域へ注入されないか、或いは、他の方法で直角方向に加速されない。同様に、実質的により小さい質量電荷比M0(M0<M2)のイオンは、プッシュ電極10に加圧した時点で、すでにプッシュ電極10に隣接する直交加速領域を通過している。従って、質量電荷比M0のイオンも、飛行時間質量分析器の直交加速領域へ注入されないか、或いは、他の方法で直角方向に加速されない。従って、質量電荷比M0およびM4のイオンに関するサンプリングデューティサイクルは0%となる。
【0154】
中間の質量電荷比M3およびM1(M2<M3<M4およびM0<M1<M2)のイオンは、飛行時間質量分析器の直交ドリフト領域に部分的にのみ注入されるか、或いは、他の方法で直角方向に加速される。従って、質量電荷比M1およびM3のイオンに関するデューティサイクルは、0%〜100%の範囲にあることとなる。
【0155】
イオンがイオントラップから放出され質量分析器へ流入する時点と、プッシュ電極10に加圧する時点との間の遅延時間Tdを調整することによって、或る一定の質量電荷比を持つ或る一定のイオンの搬送および直交加速を最適化することが可能である。
【0156】
図9の下側の曲線は、イオンの連続ビームを直交加速飛行時間質量分析器へ搬送した際の従来の質量分析計に関するサンプリングデューティサイクルを示す。前記質量分析器のプッシュ電極は、反復的にパルスを受けてイオンビームをサンプリングするが、サンプリングデューティサイクルは目的の質量電荷比の範囲全体にわたって比較的低い(0〜20%)。図9は、イオンを質量分析器に脈動的に流入させた後、前記イオンを質量分析器へ脈動的に流入させてから、プッシュ電極に加圧するまでの時間遅延を設定することにより、ある一定の質量電荷比M2を持つイオンに関するサンプリングデューティサイクルを、いかにして実質的に100%まで高められるかについても示している。しかしながら、質量電荷比M2のイオンに関するサンプリングデューティサイクルは高められるが、この方法は別の質量電荷比を持つ他のイオンに関するサンプリングデューティサイクルが急速に0%まで下がるという問題を抱えている。
【0157】
前記の好適な実施形態は、狭い範囲の質量電荷比を持つ狭い範囲のイオンに関するサンプリングデューティサイクルを向上させるだけではなく、実質的に目的とする質量電荷比の全範囲にわたるサンプリングデューティサイクルを高めることを可能にする。
【0158】
次に、本発明の好適な実施形態の操作方法について、図10を参照しながら、さらに詳細に説明する。図10は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側であって直交加速飛行時間質量分析器の上流側に位置するイオンガイド6を示す。一種類または複数の軸方向電位井戸がイオンガイド6内に作られるよう、好ましくは一種類もしくは複数の過渡直流電圧または一種類もしくは複数の過渡直流電圧波形をイオンガイド6の電極に印加する。そして、前記一種類または複数の軸方向電位井戸は、好ましくはイオンガイド6の入口領域からイオンガイド6の出口領域へ移動または他の方法によって移設される。イオンパケットはその後イオンガイド6の出口領域から連続的に放出される。
【0159】
前記の好適な実施形態によると、イオンガイド6の端部に到達した軸方向電位井戸から放出されたすべてのイオンが、その後好ましくは直角方向に加速され前記質量分析器の直交加速領域またはドリフト領域へ流入するよう、イオンガイド6の下流側に配置された飛行時間質量分析器のプッシュ電極10の加圧のタイミングを設定するのが好ましい。
【0160】
図10に、イオンガイド6の長手方向に沿って移動するイオンパケットまたは群を概略的に示す。イオンガイド6の出口に示した出口開口部または出口領域7は、プッシュ電極10を備える直交加速飛行時間質量分析器の上流側に位置する。プッシュ電極10の中心は、好ましくはイオンガイド6の出口開口部または出口領域7から軸方向に距離L1を置いて配置する。前記プッシュ電極10は、好ましくは幅Wbを有する。
【0161】
時刻T=0において、好ましくはイオンガイド6の出口領域に到達した第一の軸方向電位井戸内に含まれるイオンを有する第一のイオンパケットは、イオンガイド6から放出される。第一の軸方向電位井戸から放出されたイオンは、そのすべての質量電荷比が実質的にM2であるのが好ましく、プッシュ電極10へ向かって移動するのが好ましい。時間Tdの経過後、質量電荷比M2のイオンは、好ましくはプッシュ電極10の中心に隣接する直交加速領域に到達している。その後質量電荷比M2のイオンがすべて、好ましくは飛行時間質量分析器13の直交ドリフト領域へ注入されるかまたは他の方法によって直角方向に加速されるように、前記プッシュ電極10に加圧する。イオンガイド6の出口とプッシュ電極10の中心との間の距離L1は、好ましくは比較的短くなるように決める。また、質量電荷比M2のイオンが直交加速領域に到達した時、その空間的拡散が、好ましくは、プッシュ電極10の幅Wbよりも狭くなるように、適度に広い幅Wbを有するように、プッシュ電極10を配置するのが好ましい。従って、質量電荷比M2のイオンに関するサンプリングデューティサイクルは、好ましくは実質的に100%である。
【0162】
後に、第二のイオンパケットが、好ましくはイオンガイド6の出口領域にすでに到達している第二の軸方向電位井戸から放出されるのが好ましい。前記第二の軸方向電位井戸から放出されたイオンの質量電荷比は、好ましくはM2より少なくとも若干高い、実質的にM3であるのが好ましい。これは、各軸方向電位井戸に含まれるイオンが、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から受け取られた順序を反映するとともに、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出するイオンの質量電荷比が、好ましくは経時的に高くなるためである。質量電荷比M3を有するイオンは、その後好ましくはイオンガイド6から放出され、好ましくはプッシュ電極10へ向かって移動する。次にプッシュ電極10には、好ましくはTdより若干長い遅延時間の後に加圧するのが好ましい。これは、前記イオンが、質量電荷比M2を有する第一のイオンパケットのイオンよりも若干高い質量電荷比M3を有することにより、プッシュ電極10に隣接する直交加速領域に到達するのに若干長く時間がかかることを反映している。
【0163】
このプロセスは、第3の軸方向電位井戸が好ましくはイオンガイド6の出口領域に到達した時、前記第3軸方向電位井戸から好ましくは放出される質量電荷比が実質的にM5(但し、M5>M4>M3)であるイオンを含む第3のイオンパケット対し、同様に繰り返されるのが好ましい。
【0164】
下記実施形態が考えられる。すなわち、例えばイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へイオンを脈動的に注入する単一サイクルの間に、イオンガイド6の端部に連続的に到達する個別の軸方向電位井戸から、200またはそれ以上の個別のイオンパケットが連続的に放出され得る。説明のみを目的とするが、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4のサイクルタイムは、10msであってもよい。すなわちイオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4に脈動的に注入され、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出するまでに最高10msかかり得る。10msの間にイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出するイオンは、好ましくはイオンガイド6内に作られた200の連続した軸方向電位井戸の1つに収集または捕捉されるように配置してもよい。各軸方向電位井戸は、引き続き、イオンガイド6の入口領域からイオンガイド6の出口領域まで、イオンガイド6の長手方向に沿って移動するのが好ましい。従って、イオンガイド6内に形成された各軸方向電位井戸は、イオンガイド6の入口領域からイオンガイド6の出口領域まで移動またはその外の方法で移設するのに、約50μsかかる。
【0165】
イオンガイド6の入口領域から出口領域へ移動した軸方向電位井戸から放出された各イオンパケットについて、イオンガイド6からのイオン放出とプッシュ電極10の加圧との間の相応の最適遅延時間を決定し設定するのが好ましい。好ましくは、イオンガイド6内で作られた最初の軸方向電位井戸に捕捉されたイオンが、相対的に低い質量電荷比を有する一方で、後にイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4からその後受け取り、その後作られた軸方向電位井戸に捕捉されるイオンは、相対的に高い質量電荷比を有する事を反映するよう、イオンガイド6の出口からのイオンパケットの放出とプッシュ電極10への直交加速プッシュ電極電圧の印加との間の遅延時間は、漸進的に延長するのが好ましい。
【0166】
図11に、好適な実施形態により得られるサンプリングデューティサイクルの著しい向上を示すいくつかの試験結果を示す。サンプリングデューティサイクルの向上が、単に相対的に狭い質量電荷比範囲に渡ってではなく、むしろ目的の質量電荷比の全範囲にわたって有利に達成される点に注意されたい。図11に示すサンプリングデューティサイクルは、観察された被分析試料二価イオンのすべてに関する。また図11に、比較を目的として、連続イオンビームを質量分析器に入射させるとともにプッシュ電極に反復的にパルスを与えることによって同一サンプルを分析した際に測定されたサンプリングデューティサイクルを示す。
【0167】
図12に、本発明の第二の実施形態を示す。この第二の実施形態は、第一の実施形態におけるイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の上流側に設けられた任意のイオントラップ2が好ましくは第二のイオンガイド14と置き換えられている点において図6を参照しながら上記で説明した第一の実施形態と異なる。第二の実施形態は、それ以外は、好ましくは実質的に第一の実施形態と同様である。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4およびイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に設けられたイオンガイド6は、好ましくは、図6を参照しながら説明した本発明の第一の実施形態に関して上述した形態のうちの1つを採る。第一の実施形態に関して上述した各種様々なイオン源が、第二の実施形態に関しても使用可能である。第二のイオンガイド14は、第一の実施形態に関して説明したとおり、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に配置されたイオンガイド6と同じ形態を採ってもよい。
【0168】
第二のイオンガイド14は、好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の上流側に設けられ、好ましくは使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極を備えているのが好ましい。第二のイオンガイド14を形成する電極の開口部は、実質的にすべて同一サイズであるのが好ましい。他の実施形態では、第二のイオンガイド14の電極の少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は実質的に同一サイズの開口部を備えている。第二のイオンガイド14の隣接する電極は、好ましくは逆相の二相交流または高周波電源に接続する。
【0169】
第二の実施形態によると、一種類または複数の電位の山または電位障壁を形成するために、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を第二のイオンガイド14の電極に印加する。一種類または複数の電位の山または電位障壁が第二のイオンガイド14の出口領域に向かい第二のイオンガイド14の軸方向に沿って移動するように、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を、第二のイオンガイド14の一連の電極に漸進的に印加するのが好ましい。
【0170】
第二のイオンガイド14は、好ましくは真空チャンバー内に設けるか、または他の方法によって、使用時に、0.001〜0.01mbarの範囲の圧力に維持するのが好ましい。好適性の低い実施形態によると、第二のイオンガイド14は、0.01mbarを超え1mbarまでまたは1mbar付近までの圧力に維持することができる。また、好適性の低い実施形態によると、第二のイオンガイド14を0.001mbar未満の圧力に維持してもよい。
【0171】
第二のイオンガイド14を維持するのに好ましい気体圧力は、好ましくはイオン運動の衝突減衰を付与するには十分であるが、好ましくはイオンの運動に対して過大な粘性抵抗を付与するには不十分である。第二のイオンガイド14内に作られた一種類または複数の電位の山または電位障壁の振幅および平均速度は、好ましくは、イオンが電位の山または電位障壁の上を実質的に滑り越えない、或いはその他の方法で通り越さないように設定する。従ってイオンは、好ましくは第二のイオンガイド14の長手方向に沿って移動する一種類または複数の軸方向電位井戸に捕捉されるのが好ましい。イオンは、その質量、質量電荷比またはイオン移動度に関わらず捕捉され輸送される。
【0172】
第二のイオンガイド14内の圧力は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に配置されたイオンガイド6内の圧力と同じであってもよい。好適な一実施形態では、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の上流側に設けられた第二のイオンガイド14およびイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に設けられたイオンガイド6は、同一の真空チャンバー内に設置してもよい。中間のイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に設けられたイオンガイド6およびイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の上流側に設けられた第二のイオンガイド14を収容している前記真空チャンバー内に配置された別個のハウジング内に収容してもよい。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を相対的に高い圧力に維持するため、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を収容するハウジングに衝突ガス、好ましくは窒素またはアルゴンを供給してもよい。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を収容するハウジングは、例えば、0.1〜10mbarの範囲内の圧力に維持すればよい。イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4を収容している前記ハウジング内に存在する衝突ガスは、図7Aに概略的に示すように、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に配置された第二のイオンガイド14およびイオンガイド6を収容している真空チャンバー内へ、前記ハウジングの出入口開口部を介して漏出させてもよい。前記ハウジングを収容している真空チャンバーは、その内部の圧力を0.001〜0.01mbarの範囲内に維持するようにポンプで調整するのが好ましい。
【0173】
イオンは、第二のイオンガイド14の内部およびそれに沿って輸送されてもよく、また、好ましくは第二のイオンガイド14の下流側に配置されたイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へ向けてイオンパケットとして放出されるのが好ましい。第二のイオンガイド14のサイクルタイム(すなわち、軸方向電位井戸が第二のイオンガイド14の長手方向に沿って移動するのにかかる時間)は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4のサイクルタイムに等しいかまたは実質的に同様であるのが好ましい。或いは、イオンは、好ましくは第二のイオンガイド14の出口付近に設けられたイオン捕捉領域に蓄積保持させればよい。そして、イオンは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の各サイクル開始時に、第二のイオンガイド14からイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4内に、又は向かって放出されてもよい。この操作モードでは、軸方向電位井戸を第二のイオンガイド14の長手方向に沿って移動させるサイクルタイムについは、第二のイオンガイド14はイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4のサイクルに一致する必要はない。
【0174】
一操作モードでは、イオンが第二のイオンガイド14に流入して第二のイオンガイド14中に存在するガス分子と衝突し、娘イオン、断片イオン、或るいは生成イオンにフラグメント化するのに十分なエネルギーを持つように、イオンを配置してもよい。前記の娘イオン、断片イオン、または生成イオンは、次にイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4まで移送または前方搬送してもよい。続いて、娘イオン、断片イオン、または生成イオンは、イオンモビリティセパレータまたはスペクトロメーター4においてそのイオン移動度に応じて分離されてもよい。娘イオン、断片イオン、または生成イオンは、次に好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から放出またはその他の方法で流出させた後、好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に位置するイオンガイド6内で生成された複数の軸方向電位井戸内に受け取られ捕捉されてもよい。イオンパケットは次に好ましくはイオンガイド6から放出され、好ましくはその後直交加速飛行時間質量分析器13によって質量分析される。
【0175】
第二のイオンガイド14に流入するイオンのエネルギーは、例えば、イオンが第二のイオンガイド14に流入する前に曝される電圧または電位差または電界のレベルを設定することによって制御することが可能である。電圧または電位差または電界が殆ど瞬時に切換えられるため、第二のイオンガイド14は、相対的に高いフラグメンテーションの操作モードと相対的に低いフラグメンテーションの操作モードとを規則的かつ反復的に切り換えることができる。
【0176】
イオンが第二のイオンガイド14に流入する前に曝される電圧または電位差または電界は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へイオンを脈動的に注入する連続サイクルにおいて相対的に低いレベルと相対的に高いレベルとの間で交互に切り換えることも可能である。
【0177】
さらに別の操作モードでは、イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に配置されたイオンガイド6に流入する際、イオン自身がイオンガイド6内に存在するガス分子と衝突し、孫娘イオンまたは第二世代断片イオンにさらにフラグメント化するのに十分なエネルギーを持つように、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出する娘イオン、断片イオン、または生成イオンを配置してもよい。その後の孫娘イオンまたは第二の世代断片イオンの質量分析によって、関連する親イオンおよび/または娘イオンについての貴重なデータが得られる。
【0178】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側のイオンガイド6に流入するイオンのエネルギーは、例えば、イオンがイオンガイド6に流入する前に曝される電圧または電位差または電界のレベルを設定することにより制御することができる。電圧または電位差または電界は殆ど瞬時に切換えられるため、イオンガイド6は、親イオンまたは娘イオンがフラグメント化される第一のモードと親イオンまたは娘イオンが実質的にフラグメント化されない第二のモードとの間で規則的かつ反復的に切り換えることができる。
【0179】
イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に配置されたイオンガイド6に流入する前に曝される電圧または電位差または電界もまた、イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から漸進的に流出するにつれ変化し得る。電圧または電位差または電界は、イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出するにつれて、一種類または複数種の親イオンまたは娘イオンに対して衝突エネルギーが最適化されるように設定してもよい。或いは、電圧または電位差または電界は、イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出するにつれて、前記衝突エネルギーが全種類の親イオンまたは娘イオンに対してほぼ最適化されるように、イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4から流出するにつれて前進的に変化(例えば増加)させてもよい。
【0180】
親イオンまたは娘イオンがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流側に配置されたイオンガイド6に流入する前に曝される電圧または電位差または電界もまた、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4へイオンを脈動的に注入する連続サイクルにおいて相対的に低いレベルと相対的に高いレベルとの間で交互に切り換えることも可能である。
【0181】
図13Aおよび図13Bに、いくつかの試験結果を示す。図13Aは、従来の方法で質量分析したペプチド混合物の質量スペクトルを示す。特定の荷電状態にあるイオンのみに関する質量スペクトルを生成するため、サンプリングデューティサイクルは向上させず、また質量スペクトルデータも後処理を施さなかった。図13Bは、好適な実施形態に従ってサンプリングデューティサイクルを向上させた、比較用質量スペクトルを示す。図13Aと図13Bとの比較から分かるように、前記好適な実施形態によるサンプリングデューティサイクルを向上させる好適な方法により、目的とする質量電荷比の範囲全体にわたり感度が約6倍増加した。図13Bから分かるように、前記の好適な実施形態により、当技術分野における著しい改善を実現することができる。
【0182】
図14A〜図14Cは、図13Aおよび図13Bに示した質量スペクトルのごく一部を質量電荷比が658〜680の範囲にわたってより詳細に示している。図14Aは、従来の方法で得られた質量スペクトルの一部を示している。図14Bは、前記の好適な実施形態に従ってサンプリングデューティサイクルを向上させることにより得られた、対応質量スペクトルを示している。図14Cは、一価バックグラウンドイオンに関する質量スペクトルデータを除去するために、得られた質量スペクトルデータをさらに後処理することによって得られた信号雑音比の更なる向上または改善を示している。これは、イオンの質量電荷比と、イオンの荷電状態に依存するイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの通過に要するドリフト時間との関係を利用することによって達成された。
【0183】
図15A〜図15Cは、図13Aおよび図13Bに示した質量スペクトルの他のごく一部を、質量電荷比が780〜795の範囲にわたってより詳細に示している。図15Aは、従来の方法で得られた質量スペクトルの一部を示している。図15Bは、前記の好適な実施形態に従ってサンプリングデューティサイクルを増加させることにより得られた、対応質量スペクトルを示している。図15Cは、一価バックグラウンドイオンに関する質量スペクトルデータを除去するために、前記質量スペクトルデータをさらに後処理することによって得られた信号雑音比における更なる向上および改善を示している。これは、イオンの質量電荷比と、イオンの荷電状態に依存するイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの通過に要するドリフト時間との関係を利用することによって達成された。
【0184】
特に好適な一実施形態によると、大気圧イオン化イオン源を設けてもよい。前記イオン源からイオンを受け取るため、相対的に高い圧力(例えば、>10-3mbar)のイオンガイドを配置してもよい。前記イオンガイドは、好ましくは、使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極を備える。前記イオンガイドの電極には、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を印加するのが好ましい。前記イオンガイドの下流側には、好ましくは相対的に低い圧力(例えば、<10-3mbar)の四重極ロッドセットの質量フィルターを配置する。
【0185】
更なるイオンガイドが、好ましくは、前記質量フィルターの下流側に配置され、好ましくは、使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極を備える。一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を、前記の更なるイオンガイドの電極に印加するのが好ましい。前記の更なるイオンガイドは、好ましくは、相対的に高い圧力(例えば、<10-3mbar)に維持され、イオンは前記イオンガイド内でフラグメント化および/または捕捉される。
【0186】
前記更なるイオンガイドの下流側に、好ましくはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを配置し、前記の更なるイオンガイドからイオンを脈動的に発生させイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータに注入するのが好ましい。前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータは、好ましくは、使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極を備えている。イオンをそのイオン移動度に応じて分離するため、相対的に低い振幅を有する一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの電極に印加するのが好ましい。前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータは、好ましくは、>10-2mbarの圧力に維持する。
【0187】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンを受け取るため、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に更に別のイオンガイドを配置するのが好ましい。前記更に別のイオンガイドは、好ましくは、使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極を備えている。一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を、前記更に別のイオンガイドの電極に印加するのが好ましい。前記更に別のイオンガイドは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから好ましくは流出するイオンパケットの忠実性および/または構成を維持するのが好ましい。
【0188】
好ましくは、伝送光学素子が前記更に別のイオンガイドの下流側に配置され、アインツェル(Einzel)レンズまたはその他の静電レンズの配列を備えているのが好ましい。前記伝送光学素子は、好ましくは、相対的に低いかまたは中間の圧力(すなわち、<10-3mbar)に維持し、好ましくは差圧排出ステージとして機能する。前記伝送光学素子および/または更に別のイオンガイドの下流側には、好ましくは直交加速飛行時間質量分析器を配置する。
【0189】
前記の好適な実施形態によると、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側のイオンガイド6および任意の第二のイオンガイド14の電極に印加する交流または高周波電圧は、正弦波形を示すが、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4および/またはイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ4の下流のイオンガイド6および/または第二のイオンガイド14の電極に供給または印加する交流または高周波電圧が比正弦波である、他の好適性の低い実施形態が考えられる。例えば、前記交流または高周波電圧は、方形波の形を採り得る。
【0190】
本発明は、好適な実施形態を参照しながら説明したが、当業者には、添付の特許請求範囲に記載した本発明の適用範囲から逸脱することなく形態および詳細に多様な変更が加えられ得ることは自明のものと解される。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【図1】図1は、従来の方法で得られた質量スペクトルの一部を示し、目的とする被分析試料二価イオンが、一価イオンをバックグラウンドとして部分的に不明瞭になっている。
【図2】図2Aは、通常の検出器ゲインを用いて従来の方法により得られた質量スペクトルの一部を示す。図2Bは、前記検出器ゲインを下げることにより得られた同等の質量スペクトルを示す。
【図3A】図3Aは、多様な一価および二価イオンに関する、飛行時間質量分析器のドリフト領域におけるイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを通過するイオンのドリフト時間と、後続の前記イオンの飛行時間(前記イオンの質量電荷比に直接関係する)との既知の関係を示す。
【図3B】図3Bは、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを通過する一価および二価イオンの混合物のドリフト時間と、それらの質量電荷比との、実験的に求められた関係を示す。
【図4A】図4Aは、トランスファレンズを介して飛行時間質量分析器に結合されたイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを備えた従来の質量分析計を示す。
【図4B】図4Bは、第一のイオンパケットが、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ導入されるとともにイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンが、第二のイオンパケットがイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ導入される前に反復的に直交加速飛行時間質量分析器のドリフト領域へ脈動的に導入される様子を示す。
【図5】図5は、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを飛行時間質量分析器に結合することにより得られた質量スペクトルデータから、ある一定の荷電状態にあるイオンをいかにして認識または選択するかについての一般的な原理を示す。
【図6】図6は、本発明の第一の好適な実施形態を示しており、複数の軸方向電位井戸が作られるイオンガイドを使用して、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを直交加速飛行時間質量分析器に連結している。
【図7】図7Aは、本発明の一実施形態を示しており、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータにイオンを脈動的に流入させるために、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの上流側にイオントラップが配置されており、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側であって飛行時間質量分析器の上流側に、複数の軸方向電位井戸が作られるイオンガイドが設けられている。図7Bは、本発明の一実施形態に係るイオントラップ、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ、またはイオンガイドに関するポテンシャルプロファイルを示しており、直流トラップ電圧をイオントラップに印加し、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ全体に渡って一定の直流電圧勾配を維持し、複数の軸方向電位井戸がイオンガイドにおいて生成され、その後イオンガイドの出口に向かって移動する。図7Cは、本発明の一実施形態に係るイオントラップ、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータおよびイオンガイドに関するポテンシャルプロファイルを示しており、イオンをその移動度に応じて分離するため、複数の相対的に低い振幅過渡直流電位をイオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの電極に印加する。
【図8】図8は、従来の配置を示しており、比較的広い範囲の質量電荷比を有するイオンが直交加速飛行時間質量分析器の上流側にあるイオントラップから非質量選択的に放出され、前記イオンが直交加速領域に到達する時までに飛行時間質量分析器の直交加速領域の幅を超える空間的拡散を有する。
【図9】図9は、イオンを連続的に飛行時間質量分析器へ流入させ、前記イオンを定期的にサンプリングして得られる相対的に低いサンプリングデューティサイクルを示しており、またイオンを飛行時間質量分析器に脈動的に流入させ、直交加速パルスの適切な遅延時間を設定することにより、一部のイオンに関してのみサンプリングデューティサイクルを向上させることができる様子を示している。
【図10】図10は、イオンガイドから放出される各イオンパケットのイオンの質量電荷比が実質的に同程度であるため、本発明の好適な実施形態に係るイオンガイドの出口において軸方向電位井戸から放出されるイオンが、直交加速飛行時間質量分析器の直交加速領域に到達する時までに著しく空間的に分離されていない様子を示している。
【図11】図11は、いくつかの実験結果を示しており、また、従来の代表的かつ平均的なサンプリングデューティサイクルが約15%に過ぎないところ、本発明の一実施形態に係る広い範囲に質量電荷比を有するイオンに関するサンプリングデューティサイクルを80%を超えるほど、いかにして著しく向上させることができたかが実証されている。
【図12】図12は、本発明の第二の好適な実施形態を示し、イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの上流側に第二のイオンガイドを備け、複数の軸方向電位井戸が好ましくは前記第二のイオンガイド内で作られ、その長手方向に移動される状態を示している。
【図13】図13Aは、従来の方法で得られた質量スペクトルを示している。図13Bは、本発明の一実施形態に係る方法でサンプリングデューティサイクルを向上させることによって得られた同等の質量スペクトルを示している。
【図14】図14Aは、図13Aに示す従来の方法によって得られた質量スペクトルの一部をより詳細に示している。図14Bは、本発明の一実施形態に係る方法においてサンプリングデューティサイクルを向上させることによって得られた質量スペクトルの対応部分をより詳細に示している。図14Cは、本発明の特に好適な実施形態に従って得られた質量スペクトルの対応部分を示し、前記サンプリングデューティサイクルは、本発明の一実施形態に係る方法で向上させ、前記質量スペクトルデータはまた、特定の荷電状態にあるイオンのみが最終的な質量スペクトルに表示されるように後処理を施したものである。
【図15】図15Aは、図13Aに示す従来の方法によって得られた質量スペクトルの一部をより詳細に示している。図15Bは、本発明の一実施形態に係る方法においてサンプリングデューティサイクルを向上させることによって得られた質量スペクトルの対応部分をより詳細に示している。図15Cは、本発明の特に好適な実施形態に従って得られた質量スペクトルの対応部分を示しており、前記サンプリングデューティサイクルは、本発明の一実施形態に係る方法で向上させ、前記質量スペクトルデータはまた、特定の荷電状態にあるイオンのみが最終的な質量スペクトルに表示されるように後処理を施したものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析計であって、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータと、
前記イオンモビリティセパレータまたはスペクトロメーターの下流側に、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータからのイオンを捕集するように配置された、複数の電極を備える第一のイオンガイドと、
第一のオペレーションモードにおいて、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから捕集したイオンが、前記第一のイオンガイドの個別領域または個別部分において、保持および/または拘束および/または輸送および/または移動されるように、一種類もしくは複数の電圧、または一種類もしくは複数の電圧波形を前記複数の電極に印加するように配置および適合させた第一の電圧印加手段と、
前記第一のイオンガイドの下流側に配置された質量分析器とを備える質量分析計。
【請求項2】
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータが、気相電気泳動装置を含む請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータが、
(i)ドリフト管、
(ii)多重極ロッドセットもしくはセグメント化された多重極ロッドセット、
(iii)イオントンネルもしくはイオン漏斗、または
(iv)積層もしくは配列された平面状、板状、もしくは網状の電極を備えている請求項1または2に記載の質量分析計。
【請求項4】
前記ドリフト管は、その軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って、一つまたは複数の電極と、軸方向直流電圧勾配または実質的に一定または線形の軸方向直流電圧勾配を維持する手段とを含む請求項3に記載の質量分析計。
【請求項5】
前記多重極ロッドセットが、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、または8本を超えるロッドを備えたロッドセットを含む請求項3に記載の質量分析計。
【請求項6】
前記イオントンネルもしくはイオン漏斗が、使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含み、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、実質的に同一の寸法もしくは面積の開口部を備えているか、または寸法もしくは面積が漸進的に大きくおよび/もしくは小さくなる開口部を備えている請求項3に記載の質量分析計。
【請求項7】
前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmから成る群から選択される内径または寸法を有する請求項6に記載の質量分析計。
【請求項8】
前記積層または配列された平面状、板状、または網状の電極が、複数または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20個の平面状、板状、または網状の電極を含み、前記平面状、板状、または網状の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、使用時にイオンが移動する面に概ね配列されている請求項3に記載の質量分析計。
【請求項9】
前記平面状、板状、または網状の電極の少なくともいくつか、または少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%に、交流または高周波電圧が供給され、隣接した平面状、板状、または網状の電極に、前記交流または高周波電圧の逆相が供給される請求項8に記載の質量分析計。
【請求項10】
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータが、複数の軸方向セグメントまたは少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100個の軸方向セグメントを有する前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項11】
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの軸方向長さの少なくとも一部または少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%に沿って、少なくとも一部のイオンを移動させるため、前記質量分析計が、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの軸方向長さの少なくとも一部または少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%もしくは100%に沿って実質的に一定の直流電圧勾配を維持する直流電圧印加手段をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項12】
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、前記質量分析計が、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを形成する電極に印加するように配置および適合させた過渡直流電圧印加手段をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項13】
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、前記質量分析計が、二つまたはそれ以上の移相交流または高周波電圧を前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを形成する電極に印加するように配置および適合させた交流または高周波電圧印加手段をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項14】
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、(xi)200〜220mm、(xii)220〜240mm、(xiii)240〜260mm、(xiv)260〜280mm、(xv)280〜300mm、(xvi)>300mmからなる群から選択される軸方向長さを有する前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項15】
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータ内に放射状にイオンを閉じ込めるため、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータが、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの複数の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に交流または高周波電圧を印加するように配置および適合させた交流または高周波電圧印加手段をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項16】
前記交流または高周波電圧印加手段を、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)00〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、および(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークから成る群から選択される振幅を持つ交流または高周波電圧を前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの複数の電極に印加するように配置および適合させている請求項15に記載の質量分析計。
【請求項17】
前記交流または高周波電圧印加手段を、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzから成る群から選択される周波数を持つ交流または高周波電圧を前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの複数の電極に印加するように配置および適合させている請求項15または16に記載の質量分析計。
【請求項18】
質量電荷比が1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900または900〜1000の範囲にある一価イオンが、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータを通過するドリフト時間または通過時間が(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、および(xxxi)>30msの範囲にある前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項19】
前記質量分析計が、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの少なくとも一部を(i)>0.001mbar、(ii)>0.01mbar、(iii)>0.1mbar、(iv)>1mbar、(v)>10mbar、(vi)>100mbar、(vii)0.001〜100mbar、(viii)0.01〜10mbar、および(ix)0.1〜1mbarから成る群から選択される圧力に維持するように配置および適合させた手段をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項20】
前記質量分析計が、(i)窒素、(ii)アルゴン、(iii)ヘリウム、(iv)メタン、(v)ネオン、(vi)キセノン、および(vii)空気から成る群から選択されるか、または群から選択されるガスを少なくとも部分的に含む第一のガスを、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータに導入するための手段をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項21】
前記質量分析計が、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータのハウジングをさらに具備し、前記ハウジングは、イオン流入開口部、イオン流出開口部および前記ハウジング内にガスを導入するためのポートを除き、実質的に気密の筐体を形成している、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項22】
前記質量分析計が、イオンを0〜5ms、5〜10ms、10〜15ms、15〜20ms、20〜25ms、25〜30ms、30〜35ms、35〜40ms、40〜45ms、45〜50msまたは>50msの間隔で前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ脈動的に流入させる手段をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項23】
前記第一のイオンガイドが、
(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント化された多重極ロッドセット、
(ii)イオントンネルもしくはイオン漏斗、または
(iii)積層もしくは配列された平面状、板状、もしくは網状の電極を備えている前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項24】
前記多重極ロッドセットが、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、または8本を超えるロッドを備えたロッドセットを含む請求項23に記載の質量分析計。
【請求項25】
前記イオントンネルまたはイオントンネルが、使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含み、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、実質的に同一の寸法もしくは面積の開口部を備えているか、または寸法もしくは面積が漸進的に大きくおよび/もしくは小さくなる開口部を備えている請求項23に記載の質量分析計。
【請求項26】
前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmから成る群から選択される内径または寸法を有する請求項25に記載の質量分析計。
【請求項27】
前記積層または配列された平面状、板状、または網状の電極が、使用時にイオンが移動する面に概ね配列された複数または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20個の平面状、板状、または網状の電極を含み、前記平面状、板状、または網状の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、使用時にイオンが移動する面に概ね配列されている請求項23に記載の質量分析計。
【請求項28】
前記質量分析計が、前記複数の平面状、板状、または網状の電極に、交流または高周波電圧を供給するための交流または高周波電圧印加手段をさらに備え、隣接した板状または網状の電極に、前記交流または高周波電圧の逆相が供給される請求項27に記載の質量分析計。
【請求項29】
第一のイオンガイドが、複数の軸方向セグメントまたは少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100の軸方向セグメントを含む前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項30】
前記質量分析計が、前記第一のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を、前記第一のイオンガイドを形成する電極に印加するように配置および適合させた過渡直流電圧印加手段をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項31】
前記質量分析計が、前記第一のイオンガイドの軸方向長さの少なくと5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、二つまたはそれ以上の移相交流または高周波電圧を前記第一のイオンガイドを形成する電極に印加するように配置および適合させた交流または高周波電圧供給手段をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項32】
前記第一のイオンガイドの軸方向の長さが、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、(xi)200〜220mm、(xii)220〜240mm、(xiii)240〜260mm、(xiv)260〜280mm、(xv)280〜300mm、および(xvi)>300mmから成る群から選択される前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項33】
前記第一のイオンガイドが、イオンを前記第一のイオンガイド内に放射状に閉じ込めるため、前記第一のイオンガイドの複数の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に、交流または高周波電圧を印加するように配置および適合させた交流または高周波電圧供給手段をさらに備えている前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項34】
前記交流または高周波電圧供給手段を、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、および(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークから成る群から選択される振幅を有する交流または高周波電圧を、前記第一のイオンガイドの複数の電極に印加するよう配置および適合させている請求項33に記載の質量分析計。
【請求項35】
前記交流または高周波電圧供給手段を、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400 kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzから成る群から選択される周波数を有する交流または高周波電圧を前記第一のイオンガイドの複数の電極に印加するように配置および適合させている請求項33または34に記載の質量分析計。
【請求項36】
1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900または900〜1000の範囲に質量電荷比を持つ一価イオンの前記第一のイオンガイドを通過するドリフト時間または通過時間が、(i)0〜10μs、(ii)10〜20μs、(iii)20〜30μs、(iv)30〜40μs、(v)40〜50μs、(vi)50〜60μs、(vii)60〜70μs、(viii)70〜80μs、(ix)80〜90μs、(x)90〜100μs、(xi)100〜110μs、(xii)110〜120μs、(xiii)120〜130μs、(xiv)130〜140μs、(xv)140〜150μs、(xvi)150〜160μs、(xvii)160〜170μs、(xviii)170〜180μs、(xix)180〜190μs、(xx)190〜200μs、(xxi)200〜210μs、(xxii)210〜220μs、(xxiii)220〜230μs、(xxiv)230〜240μs、(xxv)240〜250μs、(xxvi)250〜260μs、(xxvii)260〜270μs、(xxviii)270〜280μs、(xxix)280〜290μs、(xxx)290〜300μs、および(xxxi)>300μsの範囲にある前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項37】
前記質量分析計が、前記第一のイオンガイドの少なくとも一部を(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)0.0001〜0.1mbarおよび(viii)0.001〜0.01mbarから成る群から選択される圧力に維持するよう配置および適合させた手段をさらに具備する、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項38】
前記質量分析計が、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンの前記第一のイオンガイドへの流れを加速するように配置および適合させた加速手段をさらに備えており、第二の操作モードにおいて、前記イオンの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、前記第一のイオンガイドに流入するとフラグメント化される前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項39】
前記加速手段を、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンが前記第一のイオンガイドに搬送されるにつれ、前記イオンの運動エネルギーを漸進的に変化または増加させるよう配置および適合させる請求項38に記載の質量分析計。
【請求項40】
前記加速手段が、電位差を維持する領域を備え、時間の経過とともに前記電位差が漸進的に変化または増加する請求項38または39に記載の質量分析計。
【請求項41】
前記質量分析計が、イオンが、前記第一のイオンガイドに流入する前に通過する前記電位差を、イオンが前記第一のイオンガイドに流入すると実質的にフラグメント化される高フラグメンテーション操作モードと、前記第一のイオンガイドに流入すると実質的に少数のイオンがフラグメント化されるか、または、イオンが実質的に全くフラグメント化されない低フラグメンテーション操作モードとの間で切り換えるようまたは反復的に切り換えるよう配置および適合させた制御システムをさらに備えている、請求項38から40のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項42】
前記高フラグメンテーション操作モードにおいて、前記第一のイオンガイドに流入するイオンが、(i)≧10V、(ii)≧20V、(iii)≧30V、(iv)≧40V、(v)≧50V、(vi)≧60V、(vii)≧70V、(viii)≧80V、(ix)≧90V、(x)≧100V、(xi)≧110V、(xii)≧120V、(xiii)≧130V、(xiv)≧140V、(xv)≧150V、(xvi)≧160V、(xvii)≧170V、(xviii)≧180V、(xix)≧190V、および(xx)≧200Vから成る群から選択される電位差によって加速される請求項41に記載の質量分析計。
【請求項43】
前記低フラグメンテーション操作モードにおいて、前記第一のイオンガイドに流入するイオンが、(i)≦20V、(ii)≦15V、(iii)≦10V、(iv)≦5V、および(v)≦1Vから成る群から選択される電位差によって加速される請求項41または42に記載の質量分析計。
【請求項44】
前記制御システムを、少なくとも1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、60ms、65ms、70ms、75ms、80ms、85ms、90ms、95ms、100ms、200ms、300ms、400ms、500ms、600ms、700ms、800ms、900ms、1s、2s、3s、4s、5s、6s、7s、8s、9sまたは10sごとに、前記第一のイオンガイドを、前記高フラグメンテーション操作モードと前記低フラグメンテーション操作モードとに切り換えるよう配置および適合させている請求項41、42または43のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項45】
前記第一のイオンガイドを、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータからイオンビームを受け、前記イオンビームが少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の個別のイオン群またはパケットが、いかなる特定時間においても前記第一のイオンガイドに閉じ込めおよび/または隔離されるように前記イオンビームを変換または区分するように配置および適合させてあり、前記第一のイオンガイド内に形成された個別の軸方向電位井戸内に各イオン群またはパケットが個別に閉じ込めおよび/または隔離される前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項46】
前記第一のイオンガイド内に閉じ込めおよび/または隔離された前記イオン群またはパケットのそれぞれにおけるイオンの平均イオン移動度は、時間の経過とともに漸進的に減少、および/または前記第一のイオンガイドの出口領域から前記第一のイオンガイドの入口領域へ向かって漸進的に減少する請求項45に記載の質量分析計。
【請求項47】
前記第一の電圧印加手段を、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20の個別の軸方向電位井戸を作るように配置および適合させ、前記軸方向電位井戸は、前記第一のイオンガイドの長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って実質的に同時に移動させる前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項48】
前記第一のイオンガイドを、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから流出するイオンを保持および/または閉じ込めおよび/または分離するよう、且つ、前記第一のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って一つまたは複数のイオン群またはパケットのイオンを移動させるよう配置および適合させ、一方、一つまたは複数のイオン群またはパケットが前記第一のイオンガイドに沿って移動するにつれ、(i)前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータからイオンが流出する順序および/もしくは忠実度を実質的に維持、ならびに/または(ii)イオンの構成を実質的に維持する前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項49】
前記質量分析計が、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの上流側にイオントラップをさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項50】
前記イオントラップを、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへイオンを脈動的かつ反復的に流入させるよう配置および適合させる請求項49に記載の質量分析計。
【請求項51】
前記質量分析計が、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの上流側に配置された第二のイオンガイドをさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項52】
前記第二のイオンガイドが、
(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント化された多重極ロッドセット、
(ii)イオントンネルもしくはイオン漏斗、または
(iii)積層もしくは配列された平面状、板状、もしくは網状の電極を備えている請求項51に記載の質量分析計。
【請求項53】
前記第二のイオンガイドが、(i)前記イオンモビリティスペクトロメーターもしくはセパレータのサイクルタイムに実質的に一致するか、または(ii)前記イオンモビリティスペクトロメーターもしくはセパレータのサイクルタイムとは実質的に異なるいずれかのサイクルタイムを有する請求項51または52に記載の質量分析計。
【請求項54】
ある操作モードでは、前記第二のイオンガイドを、前記第二のイオンガイドの出口に向かってまたはその近傍或いは実質的に前記出口に位置するイオン捕捉領域においてイオンを捕捉、保存または蓄積するよう配置および適合させている請求項51、52または53のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項55】
イオンが、前記第二のイオンガイドのイオン捕捉領域から周期的に放出され、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ送られる請求項54に記載の質量分析計。
【請求項56】
前記質量分析計が、(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)0.0001〜0.1mbarおよび(viii)0.001〜0.01mbarから成る群から選択される圧力で、前記第二のイオンガイドの少なくとも一部を維持するように配置および適合させた手段をさらに備えている、請求項51から55のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項57】
前記質量分析計が、少なくとも一部のイオンが前記第二のイオンガイドへ流入するとフラグメント化されるようイオンの前記第二のイオンガイドへの流れを加速するように配置および適合させた加速手段をさらに備えている、請求項51から56のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項58】
前記質量分析計が、イオンが実質的に最適の様態でフラグメント化されるように、前記第二のイオンガイドへの流入に先立ち、前記イオンのエネルギーを最適化するように配置および適合させた手段をさらに備えている、請求項57に記載の質量分析計。
【請求項59】
イオンが前記第二のイオンガイドに流入する前に通過する電位差を、イオンが前記第二のイオンガイドに流入すると実質的にフラグメント化される第一の操作モードと、前記第二のイオンガイドに流入すると実質的に少数のイオンがフラグメント化されるか、或いは、イオンが実質的に全くフラグメント化されない第二の操作モードとの間で切り換えるようまたは反復的に切り換えるよう配置および適合させた制御システムをさらに備えている、請求項57または58に記載の質量分析計。
【請求項60】
前記第一の操作モードでは、前記第二のイオンガイドへ流入するイオンが、(i)≧10V、(ii)≧20V、(iii)≧30V、(iv)≧40V、(v)≧50V、(vi)≧60V、(vii)≧70V、(viii)≧80V、(ix)≧90V、(x)≧100V、(xi)≧110V、(xii)≧120V、(xiii)≧130V、(xiv)≧140V、(xv)≧150V、(xvi)≧160V、(xvii)≧170V、(xviii)≧180V、(xix)≧190V、および(xx)≧200Vから成る群から選択される電位差により加速される請求項59に記載の質量分析計。
【請求項61】
前記第二の操作モードでは、前記第二のイオンガイドへ流入するイオンが、(i)≦20V、(ii)≦15V、(iii)≦10V、(iv)≦5V、および(v)≦1Vから成る群から選択される電位差によって加速される請求項59または60に記載の質量分析計。
【請求項62】
前記制御システムを、少なくとも1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、60ms、65ms、70ms、75ms、80ms、85ms、90ms、95ms、100ms、200ms、300ms、400ms、500ms、600ms、700ms、800ms、900ms、1s、2s、3s、4s、5s、6s、7s、8s、9sまたは10sごとに前記第一の操作モードと前記第二の操作モードとの間で前記第二のイオンガイドを切り換えるように配置および適合させる請求項59、60または61のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項63】
前記質量分析計が、イオンがガスまたはその他の分子と衝突または衝撃を与える際に、衝突誘起解離(CID)によってイオンをフラグメント化させるためのフラグメンテーションセルまたは衝突セルをさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項64】
前記質量分析計が、イオンをフラグメント化するフラグメンテーション装置をさらに備えており、前記フラグメンテーション装置は、(i)表面誘起解離(SID)フラグメンテーション装置、(ii)電子移動解離フラグメンテーション装置、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーション装置、(iv) 電子衝突または衝撃解離フラグメンテーション装置、(v)光誘起解離(PID)フラグメンテーション装置、(vi)レーザー誘起解離フラグメンテーション装置、(vii)赤外光誘起解離装置、(viii)紫外光誘起解離装置、(ix)イオン分子反応フラグメンテーション装置、(x)ノズル−スキマー・インターフェイスフラグメンテーション装置、(xi)イン−ソースフラグメンテーション装置、(xii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーション装置、(xiii)熱または温度源フラグメンテーション装置、(xiv)電界誘起フラグメンテーション装置、(xv)磁界誘起フラグメンテーション装置、および(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーション装置から成る群から選択される、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項65】
前記質量分析計が、前記第二のイオンガイドの上流側および/または下流側に配置されたマスフィルター、四重極ロッドセット・マスフィルター、飛行時間質量分析器、ウイーン(Wein)フィルター、または磁場型質量分析器をさらに含む、請求項51から64のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項66】
前記第二のイオンガイドの上流側および/または下流側に、別のイオンガイドをさらに含む、請求項51から65のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項67】
前記別のイオンガイドが、
(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント化された多重極ロッドセット、
(ii)イオントンネルもしくはイオン漏斗、または
(iii)積層もしくは配列された平面状、板状、もしくは網状の電極をさらに備えている請求項66に記載の質量分析計。
【請求項68】
前記多重極ロッドセットが、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、または8本を超えるロッドを備えたロッドセットを含む請求項67に記載の質量分析計。
【請求項69】
前記イオントンネルまたはイオントンネルが、使用時にイオンが通過する開口部を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を備え、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、実質的に同一の寸法もしくは面積の開口部を備えているか、または寸法もしくは面積が漸進的に大きくおよび/もしくは小さくなる開口部を備えている請求項67に記載の質量分析計。
【請求項70】
前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmから成る群から選択される内径または寸法を有する請求項69に記載の質量分析計。
【請求項71】
前記積層または配列された平面状、板状、または網状の電極が、使用時にイオンが移動する面に概ね配列された、複数または少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、もしくは20個の平面状、板状、または網状の電極を含み、前記平面状、板状、または網状の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%が、使用時にイオンが移動する面に概ね配列されている請求項67に記載の質量分析計。
【請求項72】
前記質量分析計が、前記複数の平面状、板状、または網状の電極に交流または高周波電圧を供給するための交流または高周波電圧印加手段をさらに備えており、隣接する板状または網状の電極に、前記交流または高周波の逆相が供給される、請求項71に記載の質量分析計。
【請求項73】
前記別のイオンガイドが、複数の軸方向セグメントまたは少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95もしくは100の軸方向セグメントをさらに備えている、請求項67から72のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項74】
前記別のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるために、前記別のイオンガイドを形成する電極に、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を印加するように配置および適合させた過渡直流電圧印加手段をさらに備えている、請求項67から73のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項75】
前記別のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って少なくとも一部のイオンを移動させるため、前記別のイオンガイドを形成する電極に二種類以上の移相交流または高周波電圧を印加するよう配置および適合させた交流または高周波電圧印加手段をさらに備えている、請求項67から74のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項76】
前記質量分析計が、前記第一のイオンガイドと前記質量分析器との間に配置された、移送装置、アインツェル(Einzel)レンズ、またはイオン光学レンズ系をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項77】
前記質量分析計が、イオン源をさらに備えている、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項78】
前記イオン源が、(i)エレクトロスプレーイオン化(ESI)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(APPI)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(APCI)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)イオン源、(v)レーザー脱離イオン化(LDI)イオン源、(vi)大気圧イオン化(API)イオン源、(vii)シリコン基板上脱離イオン化(DIOS)イオン源、(viii)電子衝撃(EI)イオン源、(ix)化学イオン化(CI)イオン源、(x)電界イオン化(FI)イオン源、(xi)電界脱離(FD)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(FAB)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(LSIMS)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリクス支援レーザー脱離イオン化イオン源、および(xviii)サーモスプレーイオン源から成る群から選択される請求項77に記載の質量分析計。
【請求項79】
前記イオン源が、パルスイオン源または連続イオン源を含む請求項77または78に記載の質量分析計。
【請求項80】
前記質量分析器が、飛行時間質量分析器、または軸方向もしくは直交加速飛行時間質量分析器を備えている前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項81】
前記質量分析器が、プッシュ電極および/またはプル電極を備えており、イオンは、初回は前記第一のイオンガイドから前記飛行時間質量分析器へと放出され、前記プッシュ電極および/またはプル電極の近傍領域に到達し、前記プッシュ電極および/またはプル電極は、前記初回の後の遅延時間後に加圧される請求項80に記載の質量分析計。
【請求項82】
前記質量分析器は、前記遅延時間が漸進的に変化または増加するように配置および適合させる請求項81に記載の質量分析計。
【請求項83】
前記遅延時間は、望ましい荷電状態にあるイオンが実質的に直角方向に加速される一方で、望ましくない荷電状態にあるイオンは実質的に直角方向に加速されないように設定され、前記望ましい荷電状態および/または前記望ましくない荷電状態が、(i)単一荷電状態にあるイオン、(ii)二価に荷電したイオン、(iii)三価に荷電したイオン、(iv)四価に荷電したイオン、(v)五価に荷電したイオン、(vi)六価以上に荷電したイオン、および(vii)多価イオンから成る群から選択される請求項81または82に記載の質量分析計。
【請求項84】
第一の複数イオンを、脈動的に前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ流入させ、第二の複数イオンを脈動的に前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ流入させる前に、前記プッシュ電極および/またはプル電極に少なくともx回加圧し、前記xが、(i)1、(ii)2〜10、(iii)10〜20、(iv)20〜30、(v)30〜40、(vi)40〜50、(viii)50〜60、(ix)60〜70、(x)70〜80、(xi)80〜90、(xii)90〜100、(xiii)100〜110、(xiv)110〜120、(xv)120〜130、(xvi)130〜140、(xvii)140〜150、(xviii)150〜160、(xix)160〜170、(xx)170〜180、(xxi)180〜190、(xxii)190〜200、(xxiii)200〜210、(xxiv)210〜220、(xxv)220〜230、(xxvi)230〜240、(xxvii)240〜250、および(xxviii)>250から成る群から選択される請求項81、82または83に記載の質量分析計。
【請求項85】
前記プッシュ電極および/またはプル電極に、少なくとも0〜10μs、10〜20μs、20〜30μs、30〜40μs、40〜50μs、50〜60μs、60〜70μs、70〜80μs、80〜90μs、90〜100μs、100〜110μs、110〜120μs、120〜130μs、130〜140μs、140〜150μs、150〜160μs、160〜170μs、170〜180μs、180〜190μs、190〜200μs、200〜210μs、210〜220μs、220〜230μs、230〜240μs、240〜250μs、250〜260μs、260〜270μs、270〜280μs、280〜290μs、290〜300μsまたは>300μsごとに加圧する請求項81から84のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項86】
前記プッシュ電極および/またはプル電極に、イオンが前記第一のイオンガイドから放射されるかまたは他の方法で放出されるように前記第一のイオンガイドの端部に移動される軸方向電位井戸1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または>20毎に、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20または>20回加圧する請求項81から85のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項87】
第一の複数イオンを、脈動的に前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ流入させ、第二の複数イオンを脈動的に前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータへ流入させる前に、少なくともy個の個別の軸方向電位井戸を、前記第一のイオンガイド内に作成もしくは形成、および/または前記第一のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部に沿って移動させ、前記yが、(i)1、(ii)2〜10、(iii)10〜20、(iv)20〜30、(v)30〜40、(vi)40〜50、(viii)50〜60、(ix)60〜70、(x)70〜80、(xi)80〜90、(xii)90〜100、(xiii)100〜110、(xiv)110〜120、(xv)120〜130、(xvi)130〜140、(xvii)140〜150、(xviii)150〜160、(xix)160〜170、(xx)170〜180、(xxi)180〜190、(xxii)190〜200、(xxiii)200〜210、(xxiv)210〜220、(xxv)220〜230、(xxvi)230〜240、(xxvii)240〜250、および(xxviii)>250から成る群から選択される前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項88】
前記質量分析器が、(i)四重極質量分析器、(ii)二次元または線形四重極質量分析器、(iii)ポール(Paul)または三次元四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)磁場型質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(ICR)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ型質量分析器、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ型質量分析器、および(xi)フーリエ変換質量分析器から成る群から選択される請求項1から79のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項89】
前記質量分析計が、さらに処理手段を備え、前記処理手段を、(i)単一荷電状態にあるイオン、(ii)二価に荷電したイオン、(iii)三価に荷電したイオン、(iv)四価に荷電したイオン、(v)五価に荷電したイオン、(vi)六価以上に荷電したイオン、および(vii)多価イオンに関する質量スペクトルデータを有する質量スペクトルが作成されるように前記質量分析器により得られた質量スペクトルデータを選別するように配置および適合させる、前記請求項のいずれか一項に記載の質量分析計。
【請求項90】
質量分析方法であって、前記質量分析方法が、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータでイオンを分離することと、
前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に配置された、複数の電極を備えた第一のイオンガイドにおいて、前記イオンモビリティセパレータまたはイオンモビリティスペクトロメーターからイオンを受け取ることと、
第一の操作モードにおいて、前記イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータから受け取ったイオンが、前記第一のイオンガイドの個別領域または個別部分に保持および/または閉じ込めおよび/または輸送および/または移動されるように、一種類もしくは複数の電圧、または一種類もしくは複数の電圧波形を前記第一のイオンガイドの電極に印加することと、
前記第一のイオンガイドの下流側に質量分析器を設けることを含む質量分析方法。
【請求項91】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に配置したイオンガイドを備えた質量分析計であって、前記イオンガイド内に複数の軸方向電位井戸を作るため、使用時に、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を前記イオンガイドに印加する質量分析計。
【請求項92】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に配置したイオンガイドを備えた質量分析計であって、前記イオンガイド内に複数の軸方向電位井戸を作るため、使用時に、二種類以上の移相交流または高周波電圧を前記イオンガイドに印加する質量分析計。
【請求項93】
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に配置したイオンガイドを備えた質量分析計であって、使用時に、複数の軸方向電位井戸が、前記イオンガイド内に作られ、および/または前記イオンガイドに沿って移動する質量分析計。
【請求項94】
質量分析方法であって、前記質量分析方法が、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側にイオンガイドを設けることと、
複数の軸方向電位井戸を前記イオンガイド内に作るために、一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位、または一種類もしくは複数の過渡直流電圧もしくは電位波形を前記イオンガイドに印加することとを含む質量分析方法。
【請求項95】
質量分析方法であって、前記質量分析方法が、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に位置するイオンガイドを設けることと、
複数の軸方向電位井戸を前記イオンガイド内に作るために、二種類以上の移相交流または高周波電圧を前記イオンガイドに印加することとを含む質量分析方法。
【請求項96】
質量分析方法であって、前記質量分析方法が、
イオンモビリティスペクトロメーターまたはセパレータの下流側に位置するイオンガイドを設けることと、
複数の軸方向電位井戸を前記イオンガイド内に作ること、および/または複数の軸方向電位井戸を前記イオンガイドに沿って移動させることとを含む質量分析方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2008−519410(P2008−519410A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539630(P2007−539630)
【出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004238
【国際公開番号】WO2006/048642
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】