説明

質量分析計

イオン検出器からの電圧信号が分析される質量分析方法が開示される。各電圧信号の二階微分を取得し、観測された電圧ピークの開始及び終了時間を決定する。次いで、各電圧ピークの強度及び平均時間を決定し、その強度及び時間値を記憶する。次いで、複数回の実験実行から観測された各電圧ピークに関係する強度及び時間値を組み合わせることにより、中間の合成マススペクトルを形成する。次いで、時間及び強度データの種々のペアを積分して平滑な連続マススペクトルを生成する。次いで、連続マススペクトルは、連続マススペクトルの二階微分を決定することによってさらに処理し得る。連続マススペクトルにおいて観測される質量ピークの開始及び終了時間を決定し得る。次いで、連続マススペクトルにおいて観測される各質量ピークの強度及び質量電荷比を決定し得る。次いで、イオン種ごとの強度値及び質量電荷比だけを含む最終の離散マススペクトルを表示又は出力し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計及び質量分析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
マススペクトルを得る方法として、高速アナログ−デジタル変換器(ADC)を使用して質量分析器のイオン検出器からの出力信号を時間の関数として記録する方法が知られている。走査型の磁場型質量分析器、走査型の四重極質量分析器又はイオントラップ質量分析器を用いたアナログ−デジタル変換器を使用することが知られている。
【0003】
質量分析器が比較的長期間にわたり(例えば、クロマトグラフィー分離実験を一回実行する期間にわたり)非常に高速にスキャンされる場合、アナログ−デジタル変換器を使用すると非常に多量のマススペクトルデータが得られることが明らかである。多量のマススペクトルデータを記憶及び処理するには大きなメモリが必要であるという欠点がある。さらに、多量のデータは、そのデータの後処理を遅くするような影響を及ぼす。これは、データ依存取得(Data Dependent Acquisition)(DDA)などのリアルタイムアプリケーションにとっては特に問題となり得る。
【0004】
飛行時間質量分析器を用いたアナログ−デジタル変換器を使用することには問題があるので、その代わりに、飛行時間質量分析器を用いた時間−デジタル変換器(TDC)検出器システムを使用するのが一般的である。時間−デジタル変換器とアナログ−デジタル変換器との違いは、時間−デジタル変換器が、イオンがイオン検出器に到着した際に記録される時間だけを記録する点にある。その結果、時間−デジタル変換器が生成するマススペクトルデータは実質的に少なくなるので、そのデータの後処理は実質的により簡単になる。しかし、時間−デジタル変換器の1つの欠点は、イオン到着イベントに関連する強度値を出力しないことである。従って、時間−デジタル変換器は、実質的に同時にイオン検出器に到着した1つ又は複数のイオンを区別することができない。
【0005】
従来の飛行時間質量分析器は、複数の取得から時間−デジタル変換器システムによって決定されるようなイオン到着時間を合計する。イオンがイオン検出器に到着しない時間にはデータは記録されない。次いで、記録されたイオン到着イベントの時間の合成ヒストグラムが形成される。後の取得からより多くのイオンがヒストグラムに追加されるにつれ、ヒストグラムは、イオンカウント対飛行時間のマススペクトル(又は質量電荷比)を順次積み上げて形成する。
【0006】
従来の飛行時間質量分析器は、最終の合成マススペクトルを生成するために別々に取得した何百又は何千もの別々の飛行時間スペクトルを収集、合計又はヒストグラム化し得る。次いで、イオン到着イベントのマススペクトル又はヒストグラムは、コンピュータメモリに記憶され得る。
【0007】
従来の飛行時間質量分析器の1つの欠点は、最終のマススペクトルにヒストグラム化される個別スペクトルの多くが、記録されるイオン到着イベントがほんのわずかしかないか又は全くない取得に関係し得ることである。このことは、特に、非常に高い取得レートにおいて動作される直交加速式飛行時間質量分析器について当てはまる。
【0008】
公知の飛行時間質量分析器は、マイクロチャンネル・プレート(MCP)又は離散ダイノード電子増倍管などの二次電子増倍管を含むイオン検出器を備える。二次電子増倍管又は離散ダイノード電子増倍管は、イオン検出器に到着したイオンに応答して1パルスの電子を生成する。次いで、電子のパルス又は電流パルスは、電圧パルスに変換される。次いで、電圧パルスは、適切な増幅器を使用して増幅され得る。
【0009】
最先端のマイクロチャンネル・プレートイオン検出器は、1個のイオンの到着に応じて信号を生成し得る。ここで、信号は、その半値全幅が1〜3nsである。イオン信号は、時間−デジタル変換器(TDC)を使用して検出される。電子増倍管によって生成された信号は、所定の電圧閾値を超える場合、イオン到着イベントに関係するものとして記録され得る。イオン到着イベントは、関連の強度情報を有さないただの時間値として記録される。到着時間は、イオン信号の先端が電圧閾値を通過する時間に対応するように記録される。記録された到着時間は、時間−デジタル変換器の最も近いクロックステップの精度で正確であるにすぎない。最先端の10GHz時間−デジタル変換器は、±50psの精度でイオン到着時間を記録することができる。
【0010】
時間−デジタル変換器を使用してイオン到着イベントを記録することの1つの利点は、信号又は電圧閾値を適用することによっていずれの電子ノイズも有効に除去され得ることである。その結果、最終のヒストグラム化マススペクトルにノイズが現れず、イオン束が比較的低ければ、非常に良好な信号対ノイズ比が得られ得る。
【0011】
時間−デジタル変換器を使用する別の利点は、1個のイオンによって生成される信号のアナログ幅が最終のヒストグラム化マススペクトルにおける特定の質量電荷比値に対するイオン到着包絡線の幅に加算されないことである。イオン到着時間だけが記録されるので、最終のヒストグラム化マススペクトルにおける質量ピークの幅は、各質量ピークに対するイオン到着時間における広がり、及び、信号閾値に対するイオン到着イベントによって生成される電圧パルス高さのばらつきだけによって決定される。
【0012】
しかし、時間−デジタル変換器システムを含むイオン検出器を備える従来の飛行時間質量分析器の重要な欠点は、時間−デジタル変換器が、1個のイオンがイオン検出器に到着することによって生じる信号と複数のイオンがイオン検出器に同時に到着することによって生じる信号との区別をつけることができないことである。このように1個のイオンのイオン到着イベントと複数のイオンのイオン到着イベントとの区別をつけることができないことは、最終のヒストグラム又はマススペクトルの強度に歪みを招くことになる。さらに、イオン到着イベントは、イオン検出器からの出力信号が所定の電圧閾値を超える場合に記録されるだけである。
【0013】
また、時間−デジタル変換器システムを内蔵する公知のイオン検出器は、イオン到着イベントが記録された後に、信号が所定の電圧信号閾値よりも下へ降下しなければならない回復時間を有するという問題がある。このデッド(無駄な)時間の間、さらなるイオン到着イベントは記録することができない。
【0014】
比較的高いイオン束において、1回の取得の間の、実質的に同じ時間にいくつかのイオンがイオン検出器に到着する確率は、比較的大きくなり得る。その結果、デッド時間効果は、最終のヒストグラム化マススペクトルにおける強度及び質量電荷比位置に歪みを招く。従って、時間−デジタル変換器検出器システムを使用する公知の質量分析器は、定量的及び定性的アプリケーションの両方に対してダイナミックレンジが比較的制限されるという問題がある。
【0015】
時間−デジタル変換器システムの制限とは異なり、複数のイオンのイオン到着イベントは、アナログ−デジタル変換器システムを使用して正確に記録され得る。アナログ−デジタル変換器システムは、各クロックサイクルにおいて信号強度を記録し得る。
【0016】
公知のアナログ−デジタル記録器は、例えば2GHzのレートで信号をデジタル化しながら、信号の強度を8ビットまでのデジタル値として記録し得る。これは、各時間デジタル化点において0〜255の強度値に対応する。また、10ビットまでにおいてデジタル強度値を記録し得るアナログ−デジタル変換器が知られているが、このようなアナログ−デジタル変換器は、スペクトル反復レートが制限される傾向にある。
【0017】
アナログ−デジタル変換器は、電子増倍管から出力される信号に対応する時間の関数として連続強度プロフィールを生成する。次いで、複数の取得の飛行時間スペクトルは、合計されて最終のマススペクトルを生成し得る。
【0018】
アナログ−デジタル変換器システムの利点は、アナログ−デジタル変換器システムが強度値を出力し、従って、増大した強度値を出力することによって複数の同時イオン到着イベントを記録し得ることである。これとは異なり、時間−デジタル変換器システムは、イオン検出器に実質的に同時に到着する1個又は複数個のイオンを区別することができない。
【0019】
アナログ−デジタル変換器は、検出閾値を使用する時間−デジタル変換器に付随するデッド時間の影響を受けない。しかし、アナログ−デジタル変換器には、個別のイオン到着からの信号のアナログ幅がイオン到着包絡線の幅に加算されるという問題がある。従って、最終の合計又はヒストグラム化マススペクトルの質量分解能は、時間−デジタル変換器に基づくシステムを使用して生成される比較可能なマススペクトルよりも低減され得る。
【0020】
また、アナログ−デジタル変換器には、電子ノイズもまたデジタル化され、各取得に対応する各飛行時間スペクトルに現れるという問題がある。そして、このノイズは、合計されて、最終の又はヒストグラム化マススペクトルに存在することになる。その結果、比較的弱いイオン信号は、マスクされ得、これにより、検出限界は、時間−デジタル変換器に基づいたシステムを使用して得られ得るものと比較して、相対的に低く(poor)なり得る。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
改善された質量分析計及び質量分析方法を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明によれば、
イオン検出器から出力される第1の信号をデジタル化して、第1のデジタル化信号を生成するステップと、
前記第1のデジタル化信号の二階微分(a second differential)を決定又は取得するステップと、
前記第1のデジタル化信号の前記二階微分から1個以上のイオンの到着時間を決定するステップとを含む質量分析方法が提供される。
【0023】
好ましくは、前記第1の信号は、出力信号、電圧信号、イオン信号、イオン電流、電圧パルス又は電子電流パルスを含む。
【0024】
好ましくは、アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器(a transient recorder)を使用して、前記第1の信号をデジタル化する。好ましくは、前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、nビットアナログ−デジタル変換器又は過渡記録器(nは、8、10、12、14又は16)を含む。好ましくは、前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、(i)<1GHz、(ii)1〜2GHz、(iii)2〜3GHz、(iv)3〜4GHz、(v)4〜5GHz、(vi)5〜6GHz、(vii)6〜7GHz、(viii)7〜8GHz、(ix)8〜9GHz、(x)9〜10GHz及び(xi)>10GHzからなる群から選択されるサンプリングレート又は取得レートを有する。好ましくは、前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、実質的に均一なデジタル化レートを有する。あるいは、前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、実質的に不均一なデジタル化レートを有する。
【0025】
好適な方法は、前記第1のデジタル化信号から一定の数又は値を減算するステップを含む。前記第1のデジタル化信号から一定の数又は値を減算した後に前記第1のデジタル化信号の一部がゼロよりも下に降下する場合は、好ましくは、前記第1のデジタル化信号の前記一部をゼロにリセットするステップをさらに含む。1セットの実施の形態において、前記方法は、前記第1のデジタル化信号の一部が閾値よりも下に降下するかどうかを決定し、前記第1のデジタル化信号の前記一部が前記閾値よりも下に降下する場合は、前記第1のデジタル化信号の前記一部をゼロにリセットするステップを含む。
【0026】
好ましくは、前記方法は、前記第1のデジタル化信号を平滑化するステップを含む。移動平均、ボックスカー積分器、サビツキ・ゴレイ(Savitsky Golay)又はハイツ・ビーマン(Hites Biemann)アルゴリズムを使用して、前記第1のデジタル化信号を平滑化し得る。
【0027】
好ましくは、前記第1のデジタル化信号の前記二階微分から1個以上のイオンの到着時間を決定する前記ステップは、前記第1のデジタル化信号の前記二階微分の1個以上のゼロクロス点を決定するステップを含む。この方法は、イオン到着イベントの開始時間t1を、前記第1のデジタル化信号の前記二階微分がゼロ又は別の値よりも下に降下する時間の直前又は直後のデジタル化間隔に対応するように決定又は設定するステップをさらに含み得る。上記好適な方法は、イオン到着イベントの終了時間t2を、前記第1のデジタル化信号の前記二階微分がゼロ又は別の値よりも上に上昇する時間の直前又は直後のデジタル化間隔に対応するように決定又は設定するステップを含み得る。
【0028】
好ましくは、前記方法は、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークの強度を決定するステップをさらに含む。好ましくは、前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークの強度を決定する前記ステップは、前記開始時間t1及び/又は前記終了時間t2によって画定される前記第1のデジタル化信号に存在する前記1個以上のピークの面積を決定するステップを含む。
【0029】
好ましくは、前記方法は、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークのモーメントを決定するステップをさらに含む。1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークのモーメントを決定する前記ステップは、好ましくは、前記開始時間t1及び/又は前記終了時間t2によって画定されるピークのモーメントを決定するステップを含む。
【0030】
上記好適な方法は、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークの質量中心時間(centroid time)を決定するステップを含む。好ましくは、前記方法は、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークの平均又は代表的な時間を決定するステップを含む。
【0031】
好ましくは、前記方法は、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークの平均あるいは代表的な時間及び/又は強度のリストを記憶あるいは編集するステップをさらに含む。
【0032】
好適な一実施の形態によれば、前記方法は、
前記イオン検出器から出力される1個以上のさらなる信号をデジタル化して、1個以上のさらなるデジタル化信号を生成するステップと、
前記1個以上のさらなるデジタル化信号の二階微分を決定又は取得するステップと、
前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記二階微分から1個以上のイオンの到着時間を決定するステップとをさらに含む。
【0033】
好ましくは、前記1個以上のさらなる信号は、1個以上の出力信号、電圧信号、イオン信号、イオン電流、電圧パルス又は電子電流パルスを含む。
【0034】
好ましくは、アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器を使用して、前記1個以上のさらなる信号をデジタル化するステップを含む。好ましくは、前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、nビットアナログ−デジタル変換器又は過渡記録器(nは、8、10、12、14又は16)を含む。好ましくは、前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、(i)<1GHz、(ii)1〜2GHz、(iii)2〜3GHz、(iv)3〜4GHz、(v)4〜5GHz、(vi)5〜6GHz、(vii)6〜7GHz、(viii)7〜8GHz、(ix)8〜9GHz、(x)9〜10GHz及び(xi)>10GHzからなる群から選択されるサンプリングレート又は取得レートを有する。好ましくは、前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、実質的に均一なデジタル化レートを有する。あるいは、前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、実質的に不均一なデジタル化レートを有する。
【0035】
好ましくは、前記1個以上のさらなる信号をデジタル化する前記ステップは、前記イオン検出器からの少なくとも5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、2000個、3000個、4000個、5000個、6000個、7000個、8000個、9000個又は10000個の信号をデジタル化するステップを含み、各信号は、別々の実験実行(experimental run)又は取得に対応する。
【0036】
上記好適な方法は、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の少なくともいくつか又は各々から一定の数又は値を減算するステップをさらに含む。前記1個以上のさらなるデジタル化信号から一定の数又は値を減算した後、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の少なくともいくつか又は各々の一部がゼロよりも下に降下する場合は、好ましくは、前記方法は、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記一部をゼロにリセットするステップをさらに含む。1セットの実施の形態において、前記方法は、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の一部が閾値よりも下に降下したかどうかを決定し、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記一部が前記閾値より下に降下した場合は、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記一部をゼロにリセットするステップを含む。
【0037】
上記好適な方法は、好ましくは、移動平均、ボックスカー積分器、サビツキ・ゴレイ(Savitsky Golay)又はハイツ・ビーマン(Hites Biemann)アルゴリズムを使用して、前記1個以上のさらなるデジタル化信号を平滑化するステップをさらに含む。好ましくは、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記二階微分から1個以上のイオンの到着時間を決定する前記ステップは、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記二階微分の1個以上のゼロクロス点を決定するステップを含む。好ましくは、前記方法は、イオン到着イベントの開始時間tn1を、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記二階微分がゼロ又は別の値よりも下に降下した時間の直前又は直後のデジタル化間隔に対応するように決定又は設定するステップをさらに含む。好ましくは、前記方法は、イオン到着イベントの終了時間tn2を、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記二階微分がゼロ又は別の値よりも上に上昇した時間の直前又は直後のデジタル化間隔に対応するように決定又は設定するステップを含む。
【0038】
上記好適な方法は、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する前記1個以上のピークの強度を決定するステップをさらに含む。好ましくは、前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する1個以上のピークの強度を決定する前記ステップは、前記開始時間tn1及び/又は前記終了時間tn2によって画定される前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する前記ピークの面積を決定するステップを含む。
【0039】
好ましくは、また、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する1個以上のピークのモーメントが決定される。好ましくは、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する前記1個以上のピークのモーメントを決定する前記ステップは、前記開始時間tn1及び/又は前記終了時間tn2によって画定される前記1個以上のさらなるデジタル化信号のモーメントを決定するステップを含む。
【0040】
好ましくは、また、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する前記1個以上のピークの質量中心時間が決定される。
【0041】
好ましくは、前記方法は、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する1個以上のピークの平均又は代表的な時間を決定するステップを含む。
【0042】
上記好適な方法は、1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号の平均あるいは代表的な時間及び/又は強度のリストを記憶あるいは編集するステップを含む。
【0043】
好ましくは、前記方法は、1つ以上のイオン到着イベントに関係する前記第1のデジタル化信号の前記平均あるいは代表的な時間及び/又は強度に関係するデータを、1つ以上のイオン到着イベントに関係する前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記平均あるいは代表的な時間及び/又は強度に関係するデータと合成又は積分するステップをさらに含む。好ましくは、移動平均積分器アルゴリズム、ボックスカー積分器アルゴリズム、サビツキ・ゴレイ(Savitsky Golay)アルゴリズム又はハイツ・ビーマン(Hites Biemann)アルゴリズムを使用して、1つ以上のイオン到着イベントに関係する前記第1のデジタル化信号の前記平均あるいは代表的な時間及び/又は強度に関係するデータを、1つ以上のイオン到着イベントに関係する前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記平均あるいは代表的な時間及び/又は強度に関係するデータと合成又は積分する。
【0044】
上記好適な実施の形態によれば、前記方法は、連続マススペクトルを準備又は形成するステップをさらに含む。好ましくは、前記連続マススペクトルの二階微分を決定又は取得する。好ましくは、前記方法は、前記連続マススペクトルの前記二階微分から1個以上のイオン又は質量ピークの質量又は質量電荷比を決定するステップをさらに含む。好ましくは、前記連続マススペクトルの前記二階微分から1個以上のイオン又は質量ピークの質量又は質量電荷比を決定する前記ステップは、前記連続マススペクトルの前記二階微分の1個以上のゼロクロス点を決定するステップを含む。好ましくは、前記方法は、質量ピークの開始点T1を、前記連続マススペクトルの前記二階微分がゼロ又は別の値よりも下に降下する時点の直前又は直後のステップ間隔に対応するように決定又は設定するステップをさらに含む。好ましくは、また、前記方法は、質量ピークの終了点T2を、前記連続マススペクトルの前記二階微分がゼロ又は別の値よりも上に上昇する時点の直前又は直後のステップ間隔に対応するように決定又は設定するステップをさらに含む。
【0045】
上記好適な方法は、前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークの強度を決定するステップをさらに含む。好ましくは、前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークの強度を決定する前記ステップは、前記開始点T1及び/又は前記終了点T2によって画定される質量ピークの面積を決定するステップを含む。
【0046】
上記好適な方法は、前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークのモーメントを決定するステップをさらに含む。好ましくは、前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークのモーメントを決定する前記ステップは、前記開始点T1及び/又は前記終了点T2によって画定される質量ピークのモーメントを決定するステップを含む。
【0047】
好ましくは、前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークの質量中心時間が決定される。また、前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークの平均又は代表的な時間が決定され得る。
【0048】
上記好適な方法は、マススペクトルを表示又は出力するステップをさらに含む。好ましくは、前記マススペクトルは、複数のマススペクトルデータ点を含み、各データ点は、1種のイオンを表すと考えられ、各データ点は、強度値及び質量又は質量電荷比値を含む。
【0049】
好適な一実施の形態群によれば、前記イオン検出器は、マイクロチャンネル・プレート、光電子増倍管(photomultiplier)又は電子増倍管デバイスを含む。好ましくは、前記イオン検出器は、1個以上のイオンが前記イオン検出器に到着したことに応答して電圧パルスを生成する電流−電圧変換器又は増幅器をさらに備える。
【0050】
好ましくは、前記方法は、質量分析器を準備するステップをさらに含む。好ましくは、前記質量分析器は、(i)飛行時間(「TOF」)質量分析器、(ii)直交加速式飛行時間(「oaTOF」)質量分析器又は(iii)軸方向加速式飛行時間質量分析器を含む。あるいは、前記質量分析器は、(i)磁場型質量分析計、(ii)ポール又は三次元四重極質量分析器、(iii)二次元又は線形四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器及び(vi)四重極質量分析器からなる群から選択され得る。
【0051】
本発明によれば、また、
イオン検出器から出力される第1の信号をデジタル化して、第1のデジタル化信号を生成するように構成された手段と、
前記第1のデジタル化信号の二階微分を決定又は取得するように構成された手段と、
前記第1のデジタル化信号の前記二階微分から1個以上のイオンの到着時間を決定するように構成された手段と
を備えた装置が提供される。
【0052】
好ましくは、前記装置は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源及び(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択されるイオン源を備える。前記イオン源は、連続又はパルス化イオン源であり得る。
【0053】
好ましくは、前記装置は、質量分析器をさらに備える。前記質量分析器は、(i)飛行時間(「TOF」)質量分析器、(ii)直交加速式飛行時間(「oaTOF」)質量分析器又は(iii)軸方向加速式飛行時間質量分析器を含む。あるいは、前記質量分析器は、(i)磁場型質量分析計、(ii)ポール又は三次元四重極質量分析器、(iii)二次元又は線形四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器及び(vi)四重極質量分析器からなる群から選択される。
【0054】
好適な一実施の形態によれば、前記装置は、衝突、フラグメンテーション又は反応デバイスをさらに備える。前記衝突、フラグメンテーション又は反応デバイスは、衝突誘起解離(「CID」)によってイオンをフラグメンテーションするように構成される。あるいは、前記衝突、フラグメンテーション又は反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突又は衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)イオン源フラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱又は温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化又は酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−メタステーブル分子反応デバイス及び(xxvii)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される。
【0055】
好適な一実施の形態によれば、上記のような装置を備えた質量分析計が提供される。
【0056】
本発明の別の局面によれば、
複数のペアのデータを準備するステップであって、各ペアのデータは、時間、質量又は質量電荷比値及び対応する強度値を含む、ステップと、
前記ペアのデータのうちの少なくともいくつかを合成又は積分して、マススペクトル、連続マススペクトル又は離散マススペクトルを生成するステップとを含む質量分析方法が提供される。
【0057】
本発明の別の局面によれば、
複数のペアのデータを準備するように構成された手段であって、各ペアのデータは、時間、質量又は質量電荷比値及び対応する強度値を含む、手段と、
前記ペアのデータのうちの少なくともいくつかを合成又は積分して、マススペクトル、連続マススペクトル又は離散マススペクトルを生成するように構成された手段とを備えた装置が提供される。
【0058】
本発明の上記好適な実施の形態によれば、複数の飛行時間スペクトルがアナログ−デジタル変換器を内蔵するイオン検出器を備える飛行時間質量分析器によって取得される。検出されたイオン信号は、好ましくは、電圧信号に増幅又は変換される。次いで、電圧信号は、好ましくは、高速アナログ−デジタル変換器を使用してデジタル化される。次いで、デジタル化信号が、好ましくは、処理される。
【0059】
イオン検出器に到着する1個以上のイオンに対応するデジタル化信号に存在する離散電圧ピークの開始時間が、好ましくは、決定される。同様に、各離散電圧ピークの終了時間がまた、好ましくは、決定される。各離散電圧ピークの強度及びモーメントが、好ましくは、決定される。決定された各電圧ピークの開始時間及び/又は終了時間、各電圧ピークの強度、並びに、各電圧ピークのモーメントが、好ましくは、さらなる処理のために使用又は記憶される。
【0060】
次いで、その後の取得からのデータが、好ましくは、同様に処理される。一旦複数の取得がなされると、複数の取得からのデータが、好ましくは、合成され、時間及びイオン到着イベントに関係する対応の強度値のリストが、好ましくは、形成、生成又は編集される。次いで、複数の取得からの時間及び対応の強度値が、好ましくは、積分されて、連続マススペクトル(a continuous or continuum mass spectrum)が形成される。
【0061】
連続マススペクトルが、好ましくは、さらに処理される。連続マススペクトルに存在する質量ピークの強度及び質量電荷比が、好ましくは、決定される。イオンの質量電荷比及び対応の強度値を含むマススペクトルが、好ましくは、生成される。
【0062】
上記好適な実施の形態によれば、好ましくは、イオン検出器から出力されるイオン又は電圧信号の二階微分が、好ましくは、決定される。イオン又は電圧信号に存在する電圧ピークの開始時間が、好ましくは、デジタル化信号の二階微分がゼロよりも下へ降下する時間であるとして決定される。同様に、電圧ピークの終了時間が、好ましくは、デジタル化信号の二階微分がゼロよりも上へ上昇する時間であるとして決定される。
【0063】
好ましさが劣る実施の形態によれば、電圧ピークの開始時間は、デジタル化信号が所定の閾値よりも上へ上昇する時間であるとして決定され得る。同様に、電圧ピークの終了時間は、その後にデジタル化信号が所定の閾値よりも下へ降下する時間であるとして決定され得る。
【0064】
電圧ピークの強度は、好ましくは、決定された電圧ピークの開始時間及び決定された電圧ピークの終了時間によって画定されるすべてのデジタル化測定値の合計から決定される。
【0065】
電圧ピークのモーメントは、好ましくは、電圧ピークの開始時間及び終了時間によって画定されるすべてのデジタル化測定値に対して、各デジタル化測定値、及び、そのデジタル化測定値と電圧ピークの開始時間又は電圧ピークの終了時間との間のデジタル化時間間隔の積の合計から決定される。
【0066】
あるいは、電圧ピークのモーメントは、電圧ピークの現在強度(the running intensity)の合計から決定され得る。ここで、ピーク強度は、電圧ピークの開始時間から電圧ピークの終了時間へ、各連続したデジタル化測定値を加算することにより、時間間隔ごとに順次計算される。
【0067】
各取得からの各電圧ピークの開始時間及び/又は終了時間、各電圧ピークの強度、並びに、各電圧ピークのモーメントが、好ましくは、記録され、及び、好ましくは、使用される。
【0068】
電圧ピークの開始時間及び/又は終了時間、電圧ピークの強度、並びに、電圧ピークのモーメントは、好ましくは、イオン検出器によって検出された1個以上のイオンに対する代表的な又は平均の飛行時間を計算するために使用される。次いで、代表的な又は平均の飛行時間は、好ましくは、さらなる処理のために記録又は記憶される。
【0069】
1個以上のイオンに対する代表的な又は平均の飛行時間は、電圧ピークの質量中心時間を決定するために、電圧ピークのモーメントを電圧ピークの強度によって除算することによって決定され得る。次いで、電圧ピークの質量中心時間は、適切に、電圧ピークの開始時間に加算され得るか、又は、電圧ピークの終了時間から減算され得る。代表的な又は平均の飛行時間は、デジタル化時間間隔よりも高い精度で計算されることが有利であり得る。
【0070】
各取得からの各電圧ピークに関連する代表的な又は平均の飛行時間及び対応の強度値は、好ましくは、記憶される。次いで、複数の取得からのデータは、好ましくは、時間及び対応の強度値を含む1つのデータセットに集められるか、又は合成される。
【0071】
次いで、好ましくは、複数の取得からの代表的な又は平均の飛行時間及び対応の強度値を含む1つのデータセットは、データが好ましくは積分されて1つの連続マススペクトルを形成するように処理される。一実施の形態によれば、時間及び強度ペアは、積分アルゴリズム(integrating algorithm)を使用して積分され得る。一実施の形態によれば、データは、ボックスカー積分器、移動平均アルゴリズム又は別の積分アルゴリズムを1回以上行うことによって積分され得る。
【0072】
得られた1つの連続マススペクトルは、好ましくは、均一又は不均一な時間、質量又は質量電荷比間隔ごとに強度の連続体(continuum)を含む。1つの連続マススペクトルが均一な時間間隔ごとに強度の連続体を含むならば、これらの時間間隔は、アナログ−デジタル変換器のデジタル化時間間隔の単分数又は整数倍に対応してもよいし、しなくてもよい。
【0073】
上記好適な実施の形態によれば、強度データ間隔の周波数は、好ましくは、質量ピークの端から端までの強度データ間隔の数が4よりも大きく、さらに好ましくは、8よりも大きくなるような周波数である。一実施の形態によれば、質量ピークの端から端までの強度データ間隔の数は、16以上であり得る。
【0074】
次いで、得られた1つの連続マススペクトルは、好ましくは、マススペクトルデータが好ましくは強度値に対応する飛行時間、質量又は質量電荷比値に変形(reduce)されるようにさらに処理される。
【0075】
上記好適な実施の形態によれば、1つの連続マススペクトルは、好ましくは、各取得からの電圧信号が好ましくは連続マススペクトルを複数の飛行時間及び関連の強度値に変形するために処理されるのと同様のやり方で処理される。離散マススペクトルが処理又は出力され得る。
【0076】
上記好適な実施の形態によれば、連続マススペクトルにおいて観測された各質量又はデータピークの開始時間又は時点が、好ましくは、決定される。また同様に、各質量又はデータピークの終了時間又は時点が、好ましくは、決定される。次いで、各質量又はデータピークの強度が、好ましくは、得られる。また、各質量又はデータピークのモーメントが、好ましくは、得られる。各質量又はデータピークの飛行時間が、好ましくは、質量又はデータピークの開始時間又は時点及び/又は質量データピークの終了時間又は時点、データピーク合成強度、並びに、質量又はデータピークの合成モーメントから得られる。
【0077】
質量又はデータピークの開始時間又は時点は、連続マススペクトルが所定の閾値よりも上に上昇する時間であるとして決定され得る。質量又はデータピークのその後の終了時間又は時点は、連続マススペクトルが所定の閾値の下へ降下する時間であるとして決定され得る。
【0078】
あるいは、質量又はデータピークの開始時間又は時点は、連続マススペクトルの二階微分がゼロよりも下へ降下する時間又は時点であるとして決定され得る。同様に、質量又はデータピークの終了時間又は時点は、連続マススペクトルの二階微分がその後にゼロよりも上へ上昇する時間又は時点であるとして決定され得る。
【0079】
質量又はデータピークの合成強度は、質量又はデータピークの開始時間又は時点及び質量又はデータピークの終了時間又は時点によって画定されるすべての質量又はデータ点の強度の合計から決定され得る。
【0080】
各質量又はデータピークの合成モーメントは、好ましくは、質量又はデータピークの開始時間又は時点及び終了時間又は時点によって画定されるすべての質量又はデータ点に対して、各質量又はデータ点強度、及び、質量又はデータピーク飛行時間と開始時間又は時点又は終了時間又は時点との間の時間差の積の合計から決定される。
【0081】
データ又は質量ピークの飛行時間は、質量又はデータピークの合成モーメントを質量又はデータピークの合成強度によって除算することにより決定され、質量又はデータピークの質量中心時間を決定し得る。次いで、質量又はデータピークの質量中心時間は、好ましくは、質量又はデータピークの開始時間又は時点に加算されるか、又は、質量又はデータピークの終了時間又は時点から適切に減算される。質量又はデータピークの飛行時間は、デジタル化時間間隔よりも高精度に、かつ、各質量又はデータピークよりも高精度に計算され得る。
【0082】
次いで、質量又はデータピークの飛行時間及び対応の強度値のセットは、1セットの質量又は質量電荷比値及び対応の強度値に変換され得る。飛行時間データの質量又は質量電荷比データへの変換は、較正手順から得られる関係を使用してデータを変換することによって行われ得るので、当該分野において周知である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0083】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の種々の実施の形態を、あくまで例として、説明する。
【0084】
図1は、MALDIイオン源を使用してサンプルをイオン化して得られたイオンをさらに直交加速式飛行時間質量分析器を使用して質量分析して得られたポリエチレングリコールの生の未処理マススペクトルの一部を示す。
【0085】
図2は、1回の実験から得られたスペクトルであって、他のスペクトルと合計されて図1に示す合成マススペクトルを形成するスペクトルを示す。
【0086】
図3は、質量電荷及び強度ペアの形態のデータを準備するために好適な実施の形態にしたがって処理された後の、図2に示すスペクトルを示す。
【0087】
図4は、48個の別個の処理された飛行時間マススペクトルを合計又は合成した結果を示す。
【0088】
図5は、連続マススペクトルを形成するためにボックスカー積分アルゴリズムを使用して図4に示すデータペアを積分した結果を示す。
【0089】
図6は、図5に示す連続マススペクトルの二階微分を示す。
【0090】
図7は、図5に示す連続マススペクトルを離散マススペクトルに変形する(reducing)ことによって図4のデータから得られる質量ピークを示す。
【0091】
好適な実施の形態は、質量分析方法に関する。好ましくは従来の時間−デジタル変換器ではなくアナログ−デジタル変換器を内蔵する検出器システムを備える飛行時間質量分析器が、好ましくは、提供される。イオンは、好ましくは、飛行時間質量分析器によって質量分析され、そのイオンは、好ましくは、イオン検出器によって検出される。イオン検出器は、好ましくは、マイクロチャンネル・プレート(MCP)電子増倍管アセンブリを備える。好ましくは、1パルスの電子がマイクロチャンネル・プレートイオン検出器から出力されることに応答して電圧パルス又は信号を生成する電流−電圧変換器又は増幅器が提供される。1個のイオンがイオン検出器に到着したことに応答する電圧パルス又は信号は、好ましくは、半値幅が1〜3nsである。
【0092】
1個以上のイオンが飛行時間質量分析器のイオン検出器に到着した結果得られる電圧パルス又は信号は、好ましくは、例えば、高速8ビット過渡記録器又はアナログ−デジタル変換器(ADC)を使用してデジタル化される。過渡記録器又はアナログ−デジタル変換器のサンプリングレートは、好ましくは、1GHz以上である。
【0093】
電圧パルス又は信号は、信号閾値化され得る。ここで、好ましくは、一定の数又は値がアナログ−デジタル変換器からの各出力数から減算され、いずれのアナログ−デジタル変換器ノイズもその大半が除去される。一定の数又は値を減算した後の信号が負ならば、信号のその部分は、好ましくは、ゼロにリセットされる。
【0094】
移動平均又はボックスカー積分器アルゴリズムなどの平滑化アルゴリズムが、好ましくは、データに適用され得る。あるいは、サビツキ・ゴレイ(Savitsky Golay)アルゴリズム、ハイツ・ビーマン(Hites Biemann)アルゴリズム、又は、別のタイプの平滑化アルゴリズムが使用され得る。例えば、3つのデジタル化間隔のウィンドウを用いた移動平均平滑を1回行うことは、以下によって与えられる。
【0095】
【数1】

【0096】
ここで、m(i)は、アナログ−デジタル変換器時間ビン(time bin)iにおいて記録されるビット単位の強度値であり、s(i)は、平滑化手順の結果である。
【0097】
平滑化アルゴリズムは、データに対して複数回適用され得る。次いで、好ましくは平滑化されたデータの二階微分が、好ましくは、得られるか又は決定される。
【0098】
二階微分のゼロクロス点が、好ましくは、決定され、好ましくは、各観測された電圧ピーク又はイオン信号ピークの開始時間及び終了時間を示すか又は決定するために使用される。このピーク位置を決定する方法は、ノイズレベルが飛行時間スペクトル全体にわたっては一定とならないか、又は、ノイズレベルが個別の飛行時間スペクトル間で変動する場合に、特に有利である。
【0099】
3つのデジタル化間隔の移動ウィンドウを用いた簡単な差分計算(difference calculation)により、デジタル化信号D1(i)の一階微分(first differential)が生成される。デジタル化信号D1(i)は、以下の式によって表され得る。
【0100】
【数2】

【0101】
ここで、s(i)は、時間ビンiに入ったいずれかの平滑化手順の結果である。
【0102】
次いで、差分計算が、好ましくは3つのデジタル化間隔の移動ウィンドウを用いて、好ましくは、繰り返される。その結果、一階微分D1(i)の二階微分D2(i)が生成される。これは、以下の式によって表され得る。
【0103】
【数3】

【0104】
従って、二階微分は、以下の式によって表され得る。
【0105】
【数4】

【0106】
この差分計算は、異なる幅の移動ウィンドウを用いて行われ得る。電圧パルス半値幅に対する差分ウィンドウの幅は、好ましくは、33%〜100%、さらに好ましくは、約67%である。
【0107】
二階微分D2(i)は、好ましくは、観測された電圧ピークの開始及び終了時間を示すか、又は、決定するために積分される。電圧ピークの開始時間t1は、二階微分がゼロよりも下に降下した直後のデジタル化間隔となるように取られ得る。電圧ピークの終了時間t2は、二階微分がゼロよりも上に上昇した直前のデジタル化間隔となるように取られ得る。あるいは、電圧ピークの開始時間t1は、二階微分がゼロよりも下に降下した直前のデジタル化間隔となるように取られ得、電圧ピークの終了時間t2は、二階微分がゼロよりも上に上昇した直後のデジタル化間隔となるように取られ得る。
【0108】
好ましさが劣る実施の形態において、電圧ピーク開始時間t1は、アナログ−デジタル変換器出力m(i)の値が閾値レベルよりも上に上昇するデジタル化時間から得られ得る。同様に、電圧ピーク終了時間t2は、アナログ−デジタル変換器出力m(i)の値が閾値レベルよりも下へ降下するデジタル化時間から得られ得る。
【0109】
一旦電圧ピーク又はイオン信号ピークの開始及び終了時間が決定されると、開始及び終了時間によって画定される電圧ピーク又はイオン信号ピークの強度及びモーメントが、好ましくは、決定され得る。
【0110】
電圧又はイオン信号のピーク強度は、好ましくは、信号の面積に対応し、好ましくは、以下の式によって記述される。
【0111】
【数5】

【0112】
ここで、Iは、決定された電圧ピーク強度、miは、アナログ−デジタル変換器時間ビンiにおいて記録されるビット単位の強度値、t1は、電圧ピーク開始時のアナログ−デジタル変換器デジタル化時間ビンの番号、t2は、電圧ピーク終了時のアナログ−デジタル変換器デジタル化時間ビンの番号である。
【0113】
電圧ピークの開始に対するモーメントM1は、好ましくは、以下の式によって記述される。
【0114】
【数6】

【0115】
電圧ピークの終了に対するモーメントM2は、以下の式によって記述され得る。
【0116】
【数7】

【0117】
ここで、δt=(t2−t1)である。
【0118】
ピークの終了に対するモーメントM2の計算は、特に興味深い。あるいは、以下の式を使用して計算され得る。
【0119】
【数8】

【0120】
後者の式は、非常に高速に実行できる形態の計算を表す。以下の形態に書き換えられ得る。
【0121】
【数9】

【0122】
ここで、Iiは、式(5)の実行における各段階にて計算される強度である。
【0123】
従って、モーメントは、強度の計算中に計算され得る。モーメントは、好ましくは、強度計算における各段階にての強度の現在合計(the running total)を総計することによって得られる。
【0124】
上記好適な実施の形態にかかるこの種の計算は、フィールド・プログラマブル・ゲート・アレイ(FPGA)を使用して非常に高速に行われ得る。FPGAにおいては、多数の配列データ上の計算が本質的に並列に行われ得る。
【0125】
計算された強度及びモーメント値並びに電圧ピーク又はイオン信号の開始及び/又は終了に対応する時間ビンの番号は、好ましくは、さらなる処理のために記録される。
【0126】
ピークの開始に対する電圧ピークの質量中心時間C1は、以下から計算され得る。
【0127】
【数10】

【0128】
電圧ピークの開始として記録される時間ビンをt1とすると、電圧ピークに関連する代表的な又は平均の時間tは、以下のようになる。
【0129】
【数11】

【0130】
他方、ピークの終了に対する電圧ピークの質量中心時間C2は、以下から計算され得る。
【0131】
【数12】

【0132】
電圧ピークの終了として記録される時間ビンをt2とすると、電圧ピークに関連する代表的な又は平均の時間tは、以下のようになる。
【0133】
【数13】

【0134】
tの計算値の精度は、式(10)又は式(12)において計算される除算の精度に依存する。除算計算は、この手順における他の計算と比べると相対的に遅く、必要とされる精度が高いほど、計算にかかる時間が長くなる。
【0135】
一実施の形態によれば、t1及び/又はt2、I並びにM1又はM2の値は、記録され得、tの値は、オフラインで計算され得る。このアプローチにより、どのような精度が要求されてもtはその精度で計算が可能とされる。しかし、このアプローチは、また場合によっては、tの値をリアルタイムで計算するために実用され得る。
【0136】
各電圧ピーク又はイオン信号に対する平均時間t及び強度Iの値は、好ましくは、コンピュータメモリ内にリストとして記憶される。
【0137】
1つの飛行時間スペクトルは、複数のイオン到着による電圧信号を含む。各電圧信号は、好ましくは、時間値及び強度値を生成するように変換される。次いで、時間及び強度値は、好ましくは、リスト中に記憶される。
【0138】
上記好適な実施の形態によれば、さらなるスペクトルが得られ、各スペクトルは、好ましくは、上記好適な実施の形態にしたがって処理される。次いで、その後の各飛行時間実験から生成される時間及び強度が、好ましくは、リストに追加される。
【0139】
所定数の飛行時間スペクトルが記録された後、時間及び強度の個別の値が、好ましくは、各個別の測定の精度を維持するように合成又は積分される。次いで、合成されたリストは、1つの連続マススペクトルとして表示され得る。
【0140】
上記好適な実施の形態において、電圧ピーク強度及び平均又は代表的な飛行時間ペアのリストは、好ましくは、質量ピークの存在を決定するために分析される。次いで、各質量又は質量電荷比ピークの強度、飛行時間、及び質量は、好ましくは、マススペクトルが生成できるように決定される。
【0141】
電圧強度時間ペアのリスト内の質量ピークの存在を検出する上記好適な方法は、二階微分を得るために差分計算を使用する。しかし、これが計算され得る前に、データはまず積分アルゴリズムを使用して連続マススペクトルを形成するように処理されなければならない。
【0142】
上記好適な実施の形態によれば、複数のスペクトルから得られる強度及び飛行時間値は、好ましくは、1つのリストに集められる。次いで、データの合成セットは、好ましくは、例えば、移動平均又はボックスカー積分器アルゴリズムを使用して処理される。移動ウィンドウは、好ましくは、時間変化する幅W(t)を有し、ウィンドウが階段状に時間変化する増分をS(t)とする。W(t)及びS(t)の両方には、互いに完全に独立で、かつ、アナログ−デジタル変換器デジタル化間隔に対して完全に独立な値が与えられ得る。W(t)及びS(t)の両方は、一定の値を有してもよいし、又は、可変な時間の関数であってもよい。
【0143】
上記好適な実施の形態によれば、質量ピークの半値幅に対する積分ウィンドウの幅W(t)は、好ましくは、33%〜100%、さらに好ましくは、約67%である。ステップ間隔S(t)は、好ましくは、質量ピークの端から端までのステップの数が少なくとも4個、より好ましくは、少なくとも8個、さらにより好ましくは、16個以上となるようなものである。
【0144】
各ウィンドウ内の強度データは、好ましくは、合計され、各強度合計は、好ましくは、合計が計算されるステップに対応する時間間隔とともに記録される。
【0145】
nを時間がT(n)であるステップ間隔S(t)のステップの数とすると、簡単な移動平均又はボックスカー積分器アルゴリズムの1回目の実行からの合計G(n)は、以下によって得られる。
【0146】
【数14】

【0147】
ここで、T(n)は、ステップ間隔S(t)のnステップ後の時間であり、I(t)は、平均又は代表的な飛行時間tで記録される電圧ピークの強度であり、W(T)は、時間T(n)での積分ウィンドウの幅であり、G(n)は、時間T(n)を中心とする積分ウィンドウW(T)内の飛行時間を有するすべての電圧ピーク強度の合計である。
【0148】
一実施の形態によれば、複数回の積分アルゴリズムがデータに適用され得る。次いで、平滑な連続(continuum)合成データセットが、好ましくは、提供され、次いで、この合成データセット又は連続マススペクトルは、好ましくは、さらに分析される。
【0149】
上記好適な実施の形態によれば、平滑な連続合成データセット又は連続マススペクトルの二階微分が決定され得る。
【0150】
連続マススペクトルの二階微分のゼロクロス点が、好ましくは、決定される。二階微分のゼロクロス点は、合成連続データセット又はマススペクトルにおける質量ピークの開始時間及び終了時間を示す。
【0151】
一階及び二階微分は、差分計算を二回順次行うことによって決定され得る。例えば、連続データGの一階微分H1(n)を生成する3つのステップ間隔の移動ウィンドウを用いた差分計算は、以下の式によって表され得る。
【0152】
【数15】

【0153】
ここで、G(n)は、ステップnでの1回以上の積分アルゴリズムの最終の合計である。
【0154】
この簡単な差分計算を、やはり3つのデジタル化間隔の移動ウィンドウを用いて、繰り返すと、一階微分H1(n)の二階微分H2(n)が生成される。これは、以下の式によって表され得る。
【0155】
【数16】

【0156】
2つの差分計算の合成は、以下の式によって表され得る。
【0157】
【数17】

【0158】
この差分計算は、異なる幅の移動ウィンドウを用いて行われ得る。質量ピーク半値幅に対する差分ウィンドウの幅は、好ましくは、33%〜100%、より好ましくは、約67%である。
【0159】
二階微分H2(n)は、好ましくは、連続マススペクトルにおいて観測された質量ピークの開始及び終了時間を位置づけるために使用される。質量ピークの開始時間T1は、好ましくは、二階微分がゼロよりも下に降下する前のステップ間隔である。質量ピークの終了時間T2は、好ましくは、二階微分がゼロよりも上に上昇した後のステップ間隔である。あるいは、質量ピークの開始時間T1は、好ましくは、二階微分がゼロよりも下に降下した後のステップ間隔であり、質量ピークの終了時間T2は、好ましくは、二階微分がゼロよりも上に上昇する前のステップ間隔である。さらに別の実施の形態において、質量ピークの開始時間T1は、二階微分がゼロよりも下に降下する前後のステップ間隔から補間され、質量ピークの終了時間T2は、二階微分がゼロよりも上に上昇する前後のステップ間隔から補間される。
【0160】
好ましさが劣る実施の形態において、質量ピーク開始時間T1及び質量ピーク終了時間T2は、積分手順出力Gの値が閾値レベルよりも上に上昇し、その後、閾値レベルよりも下へ降下するステップ時間から得られる。
【0161】
一旦質量ピークの開始時間及び終了時間が決定されると、画定領域内の質量ピークの強度及びモーメントに対応する値が、好ましくは、決定される。質量ピークの強度及びモーメントは、好ましくは、質量ピーク開始時間及び質量ピーク終了時間によって画定される電圧ピークの強度及び飛行時間から決定される。
【0162】
質量ピーク強度は、質量ピーク開始時間及び質量ピーク終了時間によって画定される強度値の合計に対応し、以下の式によって記述され得る。
【0163】
【数18】

【0164】
ここで、Aは、質量ピーク強度、Itは、飛行時間tに対する電圧ピークの強度、T1は、質量ピークの開始時間、T2は、質量ピークの終了時間である。
【0165】
各質量ピークのモーメントは、質量ピーク開始時間及び質量ピーク終了時間によって画定されるすべての電圧ピークのモーメントの合計から決定される。
【0166】
ピークの開始に対する質量ピークのモーメントB1は、ピーク開始に対する各電圧ピークの強度及び時間差から決定され、以下の式によって与えられる。
【0167】
【数19】

【0168】
完全を期すると、ピークの終了に対するモーメントB2は、以下の式によって与えられる。
【0169】
【数20】

【0170】
しかし、ピークの開始に対するモーメントB1の計算とは反対に、ピークの終了に対するモーメントB2を計算しても得られる利点は特にない。
【0171】
質量ピークに関連する代表的な又は平均の時間Tpkは、以下によって与えられる。
【0172】
【数21】

【0173】
Tpkの計算値の精度は、式(21)において計算される除算の精度に依存し、どのような精度が要求されてもその精度で計算され得る。
【0174】
各質量ピークに対する値Tpk及びAは、好ましくは、コンピュータメモリ内にリストとして記憶される。質量ピークのリストには、飛行時間、及び、較正手順から得られた飛行時間と質量との関係を使用して質量又は質量電荷比が与えられる。そのような較正手順は、当該技術分野で公知である。
【0175】
飛行時間質量分析計についての時間対質量の関係の最も簡単な形は、以下によって示される。
【0176】
【数22】

【0177】
ここで、t*は、飛行時間におけるオフセットに等価な機器パラメータ、kは、定数、Mは、時間tでの質量電荷比である。
【0178】
より複雑な較正アルゴリズムが、データに適用され得る。例えば、GB−2401721(Micromass)又はGB−2405991(Micromass)に記載の較正手順が使用され得る。
【0179】
好ましさが劣る実施の形態によれば、各電圧ピークに関連する時間値は、積分手順の前及び電圧ピーク強度時間ペアを単一の連続マススペクトルに変換する前に、上記のように、質量値に変換され得る。積分ウィンドウW(m)及び/又はステップ間隔S(m)は、それぞれ一定値又は質量の関数に設定され得る。例えば、ステップ間隔関数S(m)は、各マススペクトルピークの端から端までにわたり実質的に一定数のステップを与えるように設定され得る。
【0180】
この方法には、他の公知の方法よりも有利な点がいくつかある。測定の精度及び正確さが、好ましくは、信号の最大又は頂点の簡単な測定を使用する他の構成に比べて改善される。これは、頂点において又はその近くで単に測定する場合とは反対に、測定において記録された実質的に全信号を使用した結果である。また、好適な方法は、実質的に同様な時間に到着する2個以上のイオンのためにイオン信号が非対称になる場合に到着平均時間を正確に表す。信号最大測定は、これらの信号の平均到着時間又は相対強度をもはや反映しない。
【0181】
各検出されたイオン信号に関連する時間tの値は、アナログ−デジタル変換器のデジタル化レートによって課される元々の精度よりも高い精度で計算され得る。例えば、2.5nsの電圧ピーク半値幅及び2GHzのアナログ−デジタル変換器デジタル化レートに対して、飛行時間は、典型的には、±125psか又はそれよりも良好な精度で計算され得る。
【0182】
上記本発明の好適な実施の形態の重要な局面は、電圧ピーク時間がADCデジタル化間隔又はADCデジタル化間隔の単分数によって達成できる精度よりも実質的に高い精度で記憶され得ることである。
【0183】
本発明の一実施の形態によれば、データは、各マススペクトルピーク(イオン到着包絡線)の端から端までの間のステップ間隔の数が実質的に一定であるような最終のスペクトルを生じるように処理され得る。一定のデジタル化間隔を使用して記録されるか、又は、ビン幅が一定のヒストグラム化法を使用して多くの飛行時間スペクトルから構築される飛行時間スペクトルについて、1質量ピーク(イオン到着包絡線)当たりの点の数は質量とともに増加することが知られている。この効果は、さらなる処理を複雑にし得、記憶すべきデータの量が不必要に増えることを招き得る。この実施の形態によれば、ステップ間隔の選択に対する制約はなく、ステップ間隔関数は、各質量ピークの端から端までの間のステップの数が一定となるように設定され得る。
【0184】
以下の分析は、そのようなステップ間隔関数の一例を示す。質量電荷比値が低い場合は別として、直交加速式飛行時間マススペクトルの分解能Rは、質量電荷比に対しておよそ一定である。
【0185】
【数23】

【0186】
ここで、Rは、質量分解能、tは、質量ピークの飛行時間、Δtは、質量ピークを形成するイオン到着包絡線の幅である。
【0187】
分解能がおよそ一定である場合、ピーク幅は、飛行時間tに比例する。
【0188】
【数24】

【0189】
従って、質量ピークの端から端までの間のステップの数をおよそ一定にするために、ステップ間隔S(t)は、飛行時間tにおよそ比例して増加する必要がある。
【0190】
分解能と質量との間の関係がより複雑な質量分析計については、ステップ間隔S(t)及び飛行時間tに関するより複雑な関数を使用するのが望ましい。
【0191】
ここで、本発明の好適な実施の形態について、いくつかの実験データを参照しながら説明する。
【0192】
図1は、ポリエチレングリコールをサンプルとしたマススペクトルの一部を示す。サンプルは、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)イオン源を使用してイオン化した。マススペクトルは、直交加速式飛行時間質量分析器を使用して得た。図1に示すマススペクトルは、レーザを48回発射して得られた48個の個別の飛行時間スペクトルを単純に合成又は合計した結果である。すなわち、48個の別々の取得が得られた。スペクトルは、2GHzの8ビットアナログ−デジタル変換器を使用して取得又は記録した。
【0193】
図2は、図1と同じ質量電荷比範囲にわたる個別のスペクトルを示す。信号は、個別のイオンがイオン検出器に到着することによって生じる。
【0194】
図3は、7つの時間デジタル化点の平滑化ウィンドウを用いた2回移動平均平滑化(a two pass moving average smooth)(式(1))を使用することによって、本発明の実施の形態にしたがって図2に示す個別のスペクトルを処理した結果を示す。次いで、3点移動ウィンドウ差分計算(式(4))を使用して、平滑化信号を2回微分した。二階微分のゼロクロス点を、スペクトル内の対象信号の開始及び終了点であるとして決定した。式(12)を使用して、各信号の質量中心を決定した。式(13)によって決定した時間及び各検出した信号の強度を記録した。処理して得られたマススペクトルデータを強度−時間ペアの形態で図3に示す。各イオン到着に対する質量中心の決定の精度は、アナログ−デジタル変換器の個別の時間間隔によって達成できる精度よりも高かった。
【0195】
図4は、図3を参照して上記した方法を使用してそれぞれ処理された48個の個別のスペクトルを合成した上記好適な実施の形態の結果を示す。強度−時間ペアを含むデータの48セットを合成して、複数の強度−時間ペアを含む合成データセットを形成した。
【0196】
一旦図4に示す合成データセットが準備されるか又は得られると、上記好適な実施の形態にしたがって、合成データセットを、好ましくは、ボックスカー積分アルゴリズムを2回使用して積分する。一実施の形態によれば、積分アルゴリズムは、615psの幅及び246nsのステップ間隔を有し得る。得られた積分及び平滑化データセット又は連続マススペクトルを図5に示す。図から明らかなように、スペクトル内の質量分解能及び信号対ノイズは、図1に示すような合成された生のアナログ−デジタル変換器データと比較して大きく改善されている。
【0197】
図6は、図5に示す1つの処理された連続マススペクトルの二階微分を示す。二階微分は、1.23nsの移動ウィンドウを使用して得た。二階微分のゼロクロス点を使用して、連続マススペクトル内で観測された質量ピークの開始及び終了点を決定した。
【0198】
図7は、図4の48個のスペクトルを積分して連続マススペクトルとし、次いで、連続マススペクトルを離散マススペクトルへ変形した結果である最終の質量電荷比及び強度値を示す。各質量ピークに対する飛行時間は、式(21)を使用して決定し、各質量ピークに対する強度は、式(18)を使用して決定した。
【0199】
図1〜図7に示されたすべてのスペクトルについて、簡単な較正手順から得られる時間対質量関係を使用して、時間軸を質量電荷比軸に変換した。図示の質量において、0.5nsのADCデジタル化間隔は、0.065ドルトンの質量におよそ相当する。
【0200】
上記好適な実施の形態によれば、飛行時間検出器(二次電子増倍管)は、マイクロチャンネル・プレート、光電子増倍管又は電子増倍管、あるいは、これらのタイプの検出器の組み合わせを含み得る。
【0201】
ADCのデジタル化レートは、均一でもよいし、又は、不均一でもよい。
【0202】
本発明の一実施の形態によれば、いくつかの電圧ピークについて計算された強度I及び飛行時間tを、1つの代表的なピークに合成するのが望ましくあり得る。1つのスペクトルにおける電圧ピークの数が大きい、及び/又は、スペクトルの数が大きい場合、電圧ピークの最終の合計数は、非常に大きくなり得る。従って、メモリの必要量及び後処理時間を低減するためにこの数を低減することが利点となることが場合によってはあり得る。
【0203】
1個の代表的なピークは、好ましくは、データの完全性を損なわず、マススペクトルの分解能が維持されるのに十分に狭い範囲の時間を有する構成要素(constituent)電圧ピークから構成される。質量ピーク開始及び終了時間は、得られる質量ピークがピークのマージが起こらないような電圧ピークと実質的に同じ電圧ピークから構成されるのに十分な正確さで決定され得るのが望ましい。1個の代表的なピークは、好ましくは、すべての構成要素(constituent)電圧ピークの合成強度及び合成重み付け飛行時間を正確に表す強度及び飛行時間を有する。得られる質量ピークの強度及び飛行時間は、好ましくは、電圧ピークのマージがデータの処理において生じるか否かにかかわらずに実質的に同じである。
【0204】
本発明を好適な実施の形態を参照しながら説明したが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱せずに上記特定の実施の形態に対してその態様及び詳細に種々の変更がなされ得ることが当業者には理解される。
【図面の簡単な説明】
【0205】
【図1】図1は、MALDIイオン源を使用してサンプルをイオン化して得られたイオンをさらに直交加速式飛行時間質量分析器を使用して質量分析して得られたポリエチレングリコールの生の未処理マススペクトルの一部を示す。
【図2】図2は、1回の実験から得られたスペクトルであって、他のスペクトルと合計されて図1に示す合成マススペクトルを形成するスペクトルを示す。
【図3】図3は、質量電荷及び強度ペアの形態のデータを準備するために好適な実施の形態にしたがって処理された後の、図2に示すスペクトルを示す。
【図4】図4は、48個の別個の処理された飛行時間マススペクトルを合計又は合成した結果を示す。
【図5】図5は、連続マススペクトルを形成するためにボックスカー積分アルゴリズムを使用して図4に示すデータペアを積分した結果を示す。
【図6】図6は、図5に示す連続マススペクトルの二階微分を示す。
【図7】図7は、図5に示す連続マススペクトルを離散マススペクトルに変形することによって図4のデータから得られる質量ピークを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン検出器から出力される第1の信号をデジタル化して、第1のデジタル化信号を生成するステップと、
前記第1のデジタル化信号の二階微分を決定又は取得するステップと、
前記第1のデジタル化信号の前記二階微分から1個以上のイオンの到着時間を決定するステップとを含む質量分析方法。
【請求項2】
前記第1の信号は、出力信号、電圧信号、イオン信号、イオン電流、電圧パルス又は電子電流パルスを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器を使用して、前記第1の信号をデジタル化するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、nビットアナログ−デジタル変換器又は過渡記録器(nは、8、10、12、14又は16)を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、(i)<1GHz、(ii)1〜2GHz、(iii)2〜3GHz、(iv)3〜4GHz、(v)4〜5GHz、(vi)5〜6GHz、(vii)6〜7GHz、(viii)7〜8GHz、(ix)8〜9GHz、(x)9〜10GHz及び(xi)>10GHzからなる群から選択されるサンプリングレート又は取得レートを有する、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、実質的に均一なデジタル化レートを有する、請求項3、4又は5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、実質的に不均一なデジタル化レートを有する、請求項3、4又は5のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記第1のデジタル化信号から一定の数又は値を減算するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1のデジタル化信号から一定の数又は値を減算した後に前記第1のデジタル化信号の一部がゼロよりも下に降下する場合は、前記第1のデジタル化信号の前記一部をゼロにリセットするステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第1のデジタル化信号の一部が閾値よりも下に降下するかどうかを決定し、前記第1のデジタル化信号の前記一部が前記閾値よりも下に降下する場合は、前記第1のデジタル化信号の前記一部をゼロにリセットするステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記第1のデジタル化信号を平滑化するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
移動平均、ボックスカー積分器、サビツキ・ゴレイ又はハイツ・ビーマンアルゴリズムを使用して、前記第1のデジタル化信号を平滑化するステップをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のデジタル化信号の前記二階微分から1個以上のイオンの到着時間を決定する前記ステップは、前記第1のデジタル化信号の前記二階微分の1個以上のゼロクロス点を決定するステップを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
イオン到着イベントの開始時間t1を、前記第1のデジタル化信号の前記二階微分がゼロ又は別の値よりも下に降下する時間の直前又は直後のデジタル化間隔に対応するように決定又は設定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
イオン到着イベントの終了時間t2を、前記第1のデジタル化信号の前記二階微分がゼロ又は別の値よりも上に上昇する時間の直前又は直後のデジタル化間隔に対応するように決定又は設定するステップをさらに含む、請求項13又は14に記載の方法。
【請求項16】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークの強度を決定するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークの強度を決定する前記ステップは、前記開始時間t1及び/又は前記終了時間t2によって画定される前記第1のデジタル化信号に存在する前記1個以上のピークの面積を決定するステップを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークのモーメントを決定するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークのモーメントを決定する前記ステップは、前記開始時間t1及び/又は前記終了時間t2によって画定されるピークのモーメントを決定するステップを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークの質量中心時間を決定するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークの平均又は代表的な時間を決定するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項22】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記第1のデジタル化信号に存在する1個以上のピークの平均あるいは代表的な時間及び/又は強度のリストを記憶あるいは編集するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項23】
前記イオン検出器から出力される1個以上のさらなる信号をデジタル化して、1個以上のさらなるデジタル化信号を生成するステップと、
前記1個以上のさらなるデジタル化信号の二階微分を決定又は取得するステップと、
前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記二階微分から1個以上のイオンの到着時間を決定するステップとをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項24】
前記1個以上のさらなる信号は、1個以上の出力信号、電圧信号、イオン信号、イオン電流、電圧パルス又は電子電流パルスを含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器を使用して、前記1個以上のさらなる信号をデジタル化するステップを含む、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、nビットアナログ−デジタル変換器又は過渡記録器(nは、8、10、12、14又は16)を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、(i)<1GHz、(ii)1〜2GHz、(iii)2〜3GHz、(iv)3〜4GHz、(v)4〜5GHz、(vi)5〜6GHz、(vii)6〜7GHz、(viii)7〜8GHz、(ix)8〜9GHz、(x)9〜10GHz及び(xi)>10GHzからなる群から選択されるサンプリングレート又は取得レートを有する、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、実質的に均一なデジタル化レートを有する、請求項25、26又は27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記アナログ−デジタル変換器又は過渡記録器は、実質的に不均一なデジタル化レートを有する、請求項25、26又は27のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記1個以上のさらなる信号をデジタル化する前記ステップは、前記イオン検出器からの少なくとも5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個、100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、2000個、3000個、4000個、5000個、6000個、7000個、8000個、9000個又は10000個の信号をデジタル化するステップを含み、各信号は、別々の実験実行又は取得に対応する、請求項23〜29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記1個以上のさらなるデジタル化信号の少なくともいくつか又は各々から一定の数又は値を減算するステップをさらに含む、請求項23〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記1個以上のさらなるデジタル化信号から一定の数又は値を減算した後、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の少なくともいくつか又は各々の一部がゼロよりも下に降下する場合は、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記一部をゼロにリセットするステップをさらに含む、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記1個以上のさらなるデジタル化信号の一部が閾値よりも下に降下したかどうかを決定し、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記一部が前記閾値よりも下に降下した場合は、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記一部をゼロにリセットするステップをさらに含む、請求項23〜32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記1個以上のさらなるデジタル化信号を平滑化するステップをさらに含む、請求項23〜33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
移動平均、ボックスカー積分器、サビツキ・ゴレイ又はハイツ・ビーマンアルゴリズムを使用して、前記1個以上のさらなるデジタル化信号を平滑化するステップをさらに含む、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記二階微分から1個以上のイオンの到着時間を決定する前記ステップは、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記二階微分の1個以上のゼロクロス点を決定するステップを含む、請求項23〜35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
イオン到着イベントの開始時間tn1を、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記二階微分がゼロ又は別の値よりも下に降下した時間の直前又は直後のデジタル化間隔に対応するように決定又は設定するステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
イオン到着イベントの終了時間tn2を、前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記二階微分がゼロ又は別の値よりも上に上昇した時間の直前又は直後のデジタル化間隔に対応するように決定又は設定するステップをさらに含む、請求項36又は37に記載の方法。
【請求項39】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する前記1個以上のピークの強度を決定するステップをさらに含む、請求項23〜38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する1個以上のピークの強度を決定する前記ステップは、前記開始時間tn1及び/又は前記終了時間tn2によって画定される前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する前記ピークの面積を決定するステップを含む、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する1個以上のピークのモーメントを決定するステップをさらに含む、請求項23〜40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する前記1個以上のピークのモーメントを決定する前記ステップは、前記開始時間tn1及び/又は前記終了時間tn2によって画定される前記1個以上のさらなるデジタル化信号のモーメントを決定するステップを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する前記1個以上のピークの質量中心時間を決定するステップをさらに含む、請求項23〜42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号に存在する1個以上のピークの平均又は代表的な時間を決定するステップをさらに含む、請求項23〜43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
1つ以上のイオン到着イベントに対応する前記1個以上のさらなるデジタル化信号の平均あるいは代表的な時間及び/又は強度のリストを記憶あるいは編集するステップをさらに含む、請求項23〜44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
1つ以上のイオン到着イベントに関係する前記第1のデジタル化信号の前記平均あるいは代表的な時間及び/又は強度に関係するデータを、1つ以上のイオン到着イベントに関係する前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記平均あるいは代表的な時間及び/又は強度に関係するデータと合成又は積分するステップをさらに含む、請求項23〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
移動平均積分器アルゴリズム、ボックスカー積分器アルゴリズム、サビツキ・ゴレイアルゴリズム又はハイツ・ビーマンアルゴリズムを使用して、1つ以上のイオン到着イベントに関係する前記第1のデジタル化信号の前記平均あるいは代表的な時間及び/又は強度に関係するデータを、1つ以上のイオン到着イベントに関係する前記1個以上のさらなるデジタル化信号の前記平均あるいは代表的な時間及び/又は強度に関係するデータと合成又は積分するステップをさらに含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
連続マススペクトルを準備又は形成するステップをさらに含む、請求項46又は47に記載の方法。
【請求項49】
前記連続マススペクトルの二階微分を決定又は取得するステップをさらに含む、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記連続マススペクトルの前記二階微分から1個以上のイオン又は質量ピークの質量又は質量電荷比を決定するステップをさらに含む、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記連続マススペクトルの前記二階微分から1個以上のイオン又は質量ピークの質量又は質量電荷比を決定する前記ステップは、前記連続マススペクトルの前記二階微分の1個以上のゼロクロス点を決定するステップを含む、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
質量ピークの開始点T1を、前記連続マススペクトルの前記二階微分がゼロ又は別の値よりも下に降下する時点の直前又は直後のステップ間隔に対応するように決定又は設定するステップをさらに含む、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
質量ピークの終了点T2を、前記連続マススペクトルの前記二階微分がゼロ又は別の値よりも上に上昇する時点の直前又は直後のステップ間隔に対応するように決定又は設定するステップをさらに含む、請求項51又は52に記載の方法。
【請求項54】
前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークの強度を決定するステップをさらに含む、請求項48〜53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークの強度を決定する前記ステップは、前記開始点T1及び/又は前記終了点T2によって画定される質量ピークの面積を決定するステップを含む、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークのモーメントを決定するステップをさらに含む、請求項48〜55のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークのモーメントを決定する前記ステップは、前記開始点T1及び/又は前記終了点T2によって画定される質量ピークのモーメントを決定するステップを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークの質量中心時間を決定するステップをさらに含む、請求項48〜57のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記連続マススペクトルから1個以上のイオン又は質量ピークの平均又は代表的な時間を決定するステップをさらに含む、請求項48〜58のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
マススペクトルを表示又は出力するステップをさらに含む、請求項48〜59のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記マススペクトルは、複数のマススペクトルデータ点を含み、各データ点は、1種のイオンを表すと考えられ、各データ点は、強度値及び質量又は質量電荷比値を含む、請求項60に記載の方法。
【請求項62】
前記イオン検出器は、マイクロチャンネル・プレート、光電子増倍管又は電子増倍管デバイスを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記イオン検出器は、1個以上のイオンが前記イオン検出器に到着したことに応答して電圧パルスを生成する電流−電圧変換器又は増幅器をさらに備える、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
質量分析器を準備するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記質量分析器は、(i)飛行時間(「TOF」)質量分析器、(ii)直交加速式飛行時間(「oaTOF」)質量分析器又は(iii)軸方向加速式飛行時間質量分析器を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記質量分析器は、(i)磁場型質量分析計、(ii)ポール又は三次元四重極質量分析器、(iii)二次元又は線形四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器及び(vi)四重極質量分析器からなる群から選択される、請求項64に記載の方法。
【請求項67】
イオン検出器から出力される第1の信号をデジタル化して、第1のデジタル化信号を生成するように構成された手段と、
前記第1のデジタル化信号の二階微分を決定又は取得するように構成された手段と、
前記第1のデジタル化信号の前記二階微分から1個以上のイオンの到着時間を決定するように構成された手段と
を備えた装置。
【請求項68】
(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源及び(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択されるイオン源をさらに備える、請求項67に記載の装置。
【請求項69】
連続又はパルス化イオン源をさらに備える、請求項67又は68に記載の装置。
【請求項70】
質量分析器をさらに備える、請求項67、68又は69のいずれかに記載の装置。
【請求項71】
前記質量分析器は、(i)飛行時間(「TOF」)質量分析器、(ii)直交加速式飛行時間(「oaTOF」)質量分析器又は(iii)軸方向加速式飛行時間質量分析器を含む、請求項70に記載の装置。
【請求項72】
前記質量分析器は、(i)磁場型質量分析計、(ii)ポール又は三次元四重極質量分析器、(iii)二次元又は線形四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器及び(vi)四重極質量分析器からなる群から選択される、請求項70に記載の装置。
【請求項73】
衝突、フラグメンテーション又は反応デバイスをさらに備える、請求項67〜72のいずれかに記載の装置。
【請求項74】
前記衝突、フラグメンテーション又は反応デバイスは、衝突誘起解離(「CID」)によってイオンをフラグメンテーションするように構成される、請求項73に記載の装置。
【請求項75】
前記衝突、フラグメンテーション又は反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突又は衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)イオン源フラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱又は温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化又は酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−メタステーブル分子反応デバイス及び(xxvii)イオンを反応させて付加又は生成イオンを形成するイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、請求項73に記載の装置。
【請求項76】
請求項67〜75のいずれかに記載の装置を備えた質量分析計。
【請求項77】
複数のペアのデータを準備するステップであって、各ペアのデータは、時間、質量又は質量電荷比値及び対応する強度値を含む、ステップと、
前記ペアのデータのうちの少なくともいくつかを合成又は積分して、マススペクトル、連続マススペクトル又は離散マススペクトルを生成するステップとを含む質量分析方法。
【請求項78】
複数のペアのデータを準備するように構成された手段であって、各ペアのデータは、時間、質量又は質量電荷比値及び対応する強度値を含む、手段と、
前記ペアのデータのうちの少なくともいくつかを合成又は積分して、マススペクトル、連続マススペクトル又は離散マススペクトルを生成するように構成された手段とを備えた装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2008−543009(P2008−543009A)
【公表日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−514191(P2008−514191)
【出願日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際出願番号】PCT/GB2006/001996
【国際公開番号】WO2006/129094
【国際公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】