説明

質量分析計

質量選択的イオントラップ(12)、及び質量選択的イオントラップ(12)の下流に配置される四重極ロッドセット質量フィルタ(14)を含む質量分析計が開示される。質量フィルタ(14)のデューティサイクルを向上させるために、イオンは、質量フィルタ(14)のスキャンに実質的に同期してイオントラップ(12)から質量選択的に排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計及び質量分析の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量スキャン型四重極質量フィルタ/分析器は、どこにでもある分析装置である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、質量スキャン型四重極質量フィルタ/分析器には、デューティサイクルが低いために感度が低いという大きな欠点がある。四重極質量フィルタ/分析器が、質量範囲xDaを質量分解能又はピーク幅yDaでスキャンする場合、その四重極質量フィルタ/分析器のデューティサイクルは、y/xとなる。従来の四重極質量フィルタ/分析器は、通常、質量範囲1000Daを質量分解能1でスキャンし得る。従って、従来の四重極質量フィルタ/分析器のデューティサイクルは、ほんの1/1000又は0.1%であり得る。その結果、四重極質量フィルタ/分析器は、いずれの特定の時点においてもその四重極質量フィルタ/質量分析器が受け取ったイオンの全質量範囲の0.1%を前方へ移送することができるだけである。特定の時点で前方へ移送されるイオン以外のすべてのイオンは、四重極質量フィルタ/分析器を通る軌跡が不安定であるので、四重極質量フィルタ/分析器によって減衰される。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一局面によれば、
複数の電極を含む、質量又は質量電荷比選択的イオントラップと、
前記質量又は質量電荷比選択的イオントラップの下流に配置された第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計と、
制御手段であって、
(i)イオンがその質量又は質量電荷比にしたがって前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるようにし、
(ii)前記イオントラップからのイオンの選択的排出又は放出に実質的に同期するように前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計をスキャンする、
ように構成及び適合される制御手段と
を含む質量分析計が提供される。
【0005】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、好ましくは、質量又は質量電荷比スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計を含む。前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、好ましくは、四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器又は質量分析計などの四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計を含む。
【0006】
好ましさの劣る実施の形態によれば、前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、磁場型質量フィルタ/分析器又は質量分析計を含み得る。
【0007】
前記イオントラップは、好ましくは、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜100、(xiii)100〜150、(xiv)150〜200、(xv)200〜250、(xvi)250〜300、(xvii)300〜350、(xviii)350〜400、(xix)400〜450、(xx)450〜500、(xxi)500〜600、(xxii)600〜700、(xxiii)700〜800、(xxiv)800〜900、(xxv)900〜1000、及び(xxvi)>1000からなる群から選択される質量又は質量電荷比分解能を有する。
【0008】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、好ましくは、(i)<100、(ii)100〜200、(iii)200〜300、(iv)300〜400、(v)400〜500、(vi)500〜600、(vii)600〜700、(viii)700〜800、(ix)800〜900、(x)900〜1000、(xi)1000〜1500、(xii)1500〜2000、(xiii)2000〜2500、(xiv)2500〜3000、及び(xv)>3000からなる群から選択される質量又は質量電荷比分解能を有する。
【0009】
本発明の好ましい特徴は、前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計の質量又は質量電荷比分解能が、前記イオントラップの質量又は質量電荷比分解能よりも大きくあり得ることである。一実施の形態によれば、前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計の質量又は質量電荷比分解能は、前記イオントラップの質量又は質量電荷比分解能よりも(i)1〜2、(ii)2〜3、(iii)3〜4、(iv)4〜5、(v)5〜6、(vi)6〜7、(vii)7〜8、(viii)8〜9、(ix)9〜10、(x)10〜11、(xi)11〜12、(xii)12〜13、(xiii)13〜14、(xiv)14〜15、(xv)15〜16、(xvi)16〜17、(xvii)17〜18、(xviii)18〜19、(xix)19〜20、(xx)20〜50、(xxi)50〜100、(xxii)100〜150、(xxiii)150〜200、(xxiv)200〜250、及び(xxv)>250からなる群から選択される倍数因子だけ大きい。
【0010】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、好ましくは、前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるイオンを受け取るように構成される。
【0011】
前記制御手段は、好ましくは、イオンをその質量又は質量電荷比にしたがって前記イオントラップから順次又は漸次排出又は放出させるように構成及び適合される。
【0012】
前記制御手段は、好ましくは、前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計を実質的に連続的及び/又は直線的及び/又は漸次的及び/又は規則的にスキャンするように構成及び適合される。別の実施の形態によれば、前記制御手段は、前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計を実質的に非連続的及び/又は段階的及び/又は非直線的及び/又は非漸次的及び/又は不規則的にスキャンするように構成及び適合され得る。
【0013】
前記制御手段は、好ましくは、前記イオントラップからのイオンの選択的排出又は放出を前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計の質量又は質量電荷比移送ウィンドウのスキャンと同期させるように構成及び適合される。
【0014】
前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるイオンのうちの少なくともいくつかは、好ましくは、前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計によって前方へ移送される。
【0015】
一実施の形態によれば、1つ以上のイオン検出器が前記イオントラップ及び/又は前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計の上流及び/又は下流に配置され得る。
【0016】
さらなる質量分析器が、好ましくは、前記イオントラップ及び/又は前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計の下流及び/又は上流に配置される。前記さらなる質量分析器は、(i)フーリエ変換(「FT」)質量分析器、(ii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(iii)飛行時間(「TOF」)質量分析器、(iv)直交加速式飛行時間(「oaTOF」)質量分析器、(v)軸方向加速式飛行時間質量分析器、(vi)磁場型質量分析計、(vii)ポール又は三次元四重極質量分析器、(viii)二次元又は線形四重極質量分析器、(ix)ペニングトラップ質量分析器、(x)イオントラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換オービトラップ、(xii)静電フーリエ変換質量分析計、及び(xiii)四重極質量分析器からなる群から選択される。
【0017】
前記イオントラップは、好ましくは、動作モードにおいて、第1の範囲の質量電荷比を有するイオンを放出し、同時に前記第1の範囲から外れた質量電荷比を有するイオンを前記イオントラップ内に実質的に保持するように構成される。前記第1の範囲の質量電荷比は、好ましくは、(i)<100、(ii)100〜200、(iii)200〜300、(iv)300〜400、(v)400〜500、(vi)500〜600、(vii)600〜700、(viii)700〜800、(ix)800〜900、(x)900〜1000、(xi)1000〜1100、(xii)1100〜1200、(xiii)1200〜1300、(xiv)1300〜1400、(xv)1400〜1500、(xvi)1500〜1600、(xvii)1600〜1700、(xviii)1700〜1800、(xix)1800〜1900、(xx)1900〜2000、及び(xxi)>2000からなる群から選択される1つ以上の範囲内にある。
【0018】
前記イオントラップは、好ましくは、イオンガイド手段を含む。
【0019】
前記イオントラップは、好ましくは、RF電極セットを含む。前記RF電極セットは、少なくとも1対のRF電極スタックを含み得る。各RF電極スタック対のスタックは、好ましくは、ガスセルを挟んで間隔があいており、各スタックのRF電極は、イオン抽出経路に沿ってスタックされる。
【0020】
前記RF電極セットは、好ましくは、イオン抽出経路に沿って配置されるRF電極のサブセットを含む。
【0021】
1つ以上のポテンシャル障壁が、好ましくは、前記RF電極のサブセットに印加される振動RFポテンシャルにおける周期性によって前記イオントラップの軸に沿って生成される。
【0022】
好ましくは、共通位相の振動RFポテンシャルを1サブセットのRF電極のうちの複数の隣り合うRF電極に印加するための手段が提供され、前記サブセットうちのRF電極のグループ間に振動RFポテンシャルの周期性を確立する。
【0023】
好ましくは、振動RFポテンシャルを前記電極に印加するための手段が提供され、(i)一般的にイオン抽出経路をわたる少なくとも1つの軸に沿って動重力イオントラップポテンシャルを生成し、(ii)イオン抽出経路に沿って、少なくも部分的に、有効ポテンシャルを生成する。ここで、前記有効ポテンシャルは、少なくとも1つのポテンシャル障壁を含み、前記ポテンシャル障壁の大きさは、一供給のイオンにおけるイオンの質量電荷比に依存し、かつ、前記イオン抽出経路をわたる軸に沿ったイオンの位置に実質的に依存せず、前記少なくとも1つのポテンシャル障壁は、前記電極に印加される振動RFポテンシャルにおける周期性によって生じる。
【0024】
前記イオントラップは、好ましくは、AC又はRF電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成及び適合されるAC又はRF電圧手段をさらに含む。
【0025】
前記AC又はRF電圧手段は、好ましくは、少なくともいくつかのイオンを前記イオントラップ内に半径方向に閉じ込めるために、前記AC又はRF電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成及び適合される。
【0026】
前記AC又はRF電圧手段は、好ましくは、AC又はRF電圧を前記複数の電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に印加するように構成及び適合される。
【0027】
前記AC又はRF電圧手段は、好ましくは、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、及び(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークからなる群から選択される振幅を有するAC又はRF電圧を供給するように構成及び適合される。
【0028】
前記AC又はRF電圧手段は、好ましくは、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、及び(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するAC又はRF電圧を供給するように構成及び適合される。
【0029】
前記イオントラップは、好ましくは、イオンを前記イオントラップ内に半径方向に閉じ込める手段を含む。前記イオントラップは、好ましくは、動重力又はRFイオントラップポテンシャルを生成するための手段を含む。前記動重力又はRFイオントラップポテンシャルは、好ましくは、前記イオントラップを通るガス及び/又はイオンのフローの方向を横切るか又はそれに直交する方向に生成される。前記動重力又はRFイオントラップポテンシャルは、好ましくは、静電又はDCイオントラップポテンシャルの方向に直交する方向に生成される。前記動重力又はRFイオントラップポテンシャルは、好ましくは、前記イオントラップの長さに沿って印加される軸方向電界の方向に直交する方向に生成される。
【0030】
前記イオントラップは、好ましくは、周期性を有する複数の軸方向擬ポテンシャル井戸を生成する手段を含む。前記軸方向擬ポテンシャル井戸の振幅は、好ましくは、イオンの質量電荷比に依存する。
【0031】
前記イオントラップは、好ましくは、静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段をさらに含む。
【0032】
前記静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸は、好ましくは、前記イオントラップを通るガス及び/又はイオンのフローの方向を横切るか又はそれに直交する方向に生成される。前記静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸は、好ましくは、動重力又はRFポテンシャルが生成される方向に直交する方向に生成される。前記静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸は、好ましくは、前記イオントラップの長さに沿って印加される軸方向電界の方向に直交する方向に生成される。
【0033】
前記静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段は、好ましくは、少なくとも1対の電極を含み、前記少なくとも1対の電極うちの電極は、ガスセルを挟んで間隔をあけられる。
【0034】
前記静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段は、好ましくは、ガスセルに沿って配置される一連の電極対を含む。
【0035】
前記イオントラップは、好ましくは、イオンが前記イオントラップの抽出領域から抽出されることを防止する有効ポテンシャルを与えるためのさらなるポテンシャルを生成するための手段をさらに含む。
【0036】
前記イオントラップは、好ましくは、前記イオンが前記イオントラップの前記抽出領域から抽出されることを防止する有効ポテンシャルの特性が、少なくとも部分的に、動重力又はRFイオントラップポテンシャルの生成によって生じるように構成される。
【0037】
上記好適な実施の形態によれば、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%に沿って軸方向電界を印加するための手段が提供される。
【0038】
前記イオントラップは、好ましくは、イオン抽出経路に沿ってドリフトポテンシャルを印加するための手段をさらに含む。
【0039】
前記イオントラップは、好ましくは、イオンを選択的に抽出するために前記ドリフトポテンシャルの大きさを変化させるための手段をさらに含む。
【0040】
前記イオントラップは、好ましくは、ガス体での一供給のイオンが使用時に位置するガスセルを含む。
【0041】
前記ガスセルの少なくとも一部は、ガスのフローに同伴するイオンが輸送され得るガスフロー導管であって、前記導管がガスフローの方向を有する、ガスフロー導管を含む。前記ガスフローを提供するためのガスフロー手段が好ましくは提供される。
【0042】
前記イオントラップは、好ましくは、イオン抽出経路を規定するイオン抽出容積を含む。前記イオン抽出容積は、好ましくは、幅、高さ及び長さを有する直方体を含む。前記直方体の幅の高さに対する比は、(i)≧1、(ii)≧1.1、(iii)≧1.2、(iv)≧1.3、(v)≧1.4、(vi)≧1.5、(vii)≧1.6、(viii)≧1.7、(ix)≧1.8、(x)≧1.9及び(xi)≧2.0からなる群から選択される。
【0043】
上記好適な実施の形態によれば、好ましくは、所定の質量電荷比又はイオン移動度を有するイオンを前記イオントラップの抽出領域から選択的に抽出するためのイオン抽出手段が提供される。
【0044】
イオン抽出手段は、好ましくは、前記イオントラップ内の所定の空間位置に位置するイオン群を空間選択的に抽出するように構成される。
【0045】
前記イオン抽出手段は、ガスセルにわたって配置され、内部に開口部が形成されるイオン障壁を含み得る。前記イオントラップは、前記開口部を通してイオンを抽出するために抽出電界を印加するための手段をさらに含み得る。前記イオントラップは、好ましくは、前記開口部と連絡し、漏洩誘電体から形成され、内部に向かって伸びるチューブをさらに含む。
【0046】
前記イオントラップは、好ましくは、前記イオントラップの軸方向長さに沿って生成される複数の軸方向擬ポテンシャル井戸を変化又はスキャンするための手段をさらに含む。
【0047】
前記イオントラップは、好ましくは、所定の質量電荷比又はイオン移動度のイオンが前記イオントラップから選択的に抽出されるように有効ポテンシャルを変化させるための手段をさらに含む。
【0048】
前記有効ポテンシャルを変化させるための手段は、イオンを選択的に抽出するように振動RFポテンシャルを変化させ得る。
【0049】
前記有効ポテンシャルを変化させるための手段は、好ましくは、選択された1群のイオンを所定の空間位置に移動させるために前記イオントラップ内の動重力又はRFイオントラップポテンシャルを変化させる。
【0050】
前記有効ポテンシャルを変化させるための手段は、選択された1群のイオンを所定の空間位置に移動させるために前記イオントラップ内の静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を変化させ得る。
【0051】
好ましさの劣る実施の形態によれば、選択された1群のイオンを所定の空間位置に移動させるためにガス体の圧力を変化させるための手段が提供され得る。
【0052】
一実施の形態に係る前記イオントラップは、イオンがキャリアガスの層流に同伴し、電界が前記層流を横切って印加される障壁領域内にトラップされるデバイスを含み得る。
【0053】
別の実施の形態によれば、前記イオントラップは、第1の動作モードにおいて1つ以上のDC、実又は静的ポテンシャル井戸又は実質的に静的で不均一な電界を前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って維持するように構成及び適合される第1の手段を含み得る。前記第1の手段は、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は>10個のポテンシャル井戸を前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って維持するように構成及び適合され得る。好ましくは、前記第1の手段は、1つ以上の実質的に二次のポテンシャル井戸を前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って維持するように構成及び適合される。
【0054】
前記第1の手段は、好ましくは、1つ以上の実質的に非二次のポテンシャル井戸を前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って維持するように構成及び適合される。
【0055】
前記第1の手段は、好ましくは、1つ以上のポテンシャル井戸を前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に沿って維持するように構成及び適合される。
【0056】
前記第1の手段は、好ましくは、(i)<10V、(ii)10〜20V、(iii)20〜30V、(iv)30〜40V、(v)40〜50V、(vi)50〜60V、(vii)60〜70V、(viii)70〜80V、(ix)80〜90V、(x)90〜100V、及び(xi)>100Vからなる群から選択される深さを有する1つ以上のポテンシャル井戸を維持するように構成及び適合される。
【0057】
前記第1の手段は、前記第1の動作モードにおいて、前記イオントラップの軸方向長さに沿って第1の位置に位置する極小を有する1つ以上のポテンシャル井戸を維持するように構成及び適合され得る。前記イオントラップは、好ましくは、イオン入口及びイオン出口を有し、前記第1の位置は、前記イオン入口から下流へ距離Lのところ、及び/又は、前記イオン出口から上流へ距離Lのところに位置し、ここで、Lは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、及び(xi)>200mmからなる群から選択される。
【0058】
前記第1の手段は、好ましくは、1つ以上のDC電圧を前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に供給するための1つ以上のDC電圧源を含む。
【0059】
前記第1の手段は、好ましくは、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って変化又は増加する電界強度を有する電界を与えるように構成及び適合される。
【0060】
前記第1の手段は、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に沿って変化又は増加する電界強度を有する電界を与えるように構成及び適合され得る。
【0061】
上記好適な実施の形態によれば、前記イオントラップは、好ましくは、前記第1の動作モードにおいて、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界を維持するように構成及び適合される第2の手段を含む。前記第2の手段は、好ましくは、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に沿って前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界を維持するように構成及び適合される。
【0062】
前記第2の手段は、1つ以上のDC電圧を前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に供給するための1つ以上のDC電圧源を含み得る。
【0063】
前記第2の手段は、前記第1の動作モードにおいて、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って、いずれの時点においても、実質的に一定の電界強度を有する軸方向電界を生成するように構成及び適合され得る。
【0064】
前記第2の手段は、好ましくは、前記第1の動作モードにおいて、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に沿って、いずれの時点においても、実質的に一定の電界強度を有する軸方向電界を生成するように構成及び適合される。
【0065】
前記第2の手段は、好ましくは、前記第1の動作モードにおいて、時間とともに変化する電界強度を有する軸方向電界を生成するように構成及び適合される。
【0066】
前記第2の手段は、前記第1の動作モードにおいて、時間とともに少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%だけ変化する電界強度を有する軸方向電界を生成するように構成及び適合される。
【0067】
前記第2の手段は、好ましくは、前記第1の動作モードにおいて、時間とともに方向が変化する軸方向電界を生成するように構成及び適合される。
【0068】
前記第2の手段は、時間とともに変化するオフセットを有する軸方向電界を生成するように構成及び適合される。
【0069】
前記第2の手段は、好ましくは、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界を第1の周波数f1を用いて、又はそれにおいて変化させるように構成及び適合され、ここで、f1は、(i)<5kHz、(ii)5〜10kHz、(iii)10〜15kHz、(iv)15〜20kHz、(v)20〜25kHz、(vi)25〜30kHz、(vii)30〜35kHz、(viii)35〜40kHz、(ix)40〜45kHz、(x)45〜50kHz、(xi)50〜55kHz、(xii)55〜60kHz、(xiii)60〜65kHz、(xiv)65〜70kHz、(xv)70〜75kHz、(xvi)75〜80kHz、(xvii)80〜85kHz、(xviii)85〜90kHz、(xix)90〜95kHz、(xx)95〜100kHz、及び(xxi)>100kHzからなる群から選択される。
【0070】
前記第1の周波数f1は、好ましくは、前記イオントラップ内のイオントラップ領域内に位置するイオンのうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の共鳴又は基本調波周波数よりも大きい。
【0071】
前記第1の周波数f1は、好ましくは、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、300%、350%、400%、450%又は500%だけ、前記イオントラップ内のイオントラップ領域内に位置するイオンのうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の共鳴又は基本振動周波数よりも大きい。
【0072】
前記イオントラップは、動作モードにおいて、少なくともいくつかのイオンを前記イオントラップのトラップ領域から実質的に共鳴によらずに排出し、同時に他のイオンは、前記イオントラップの前記トラップ領域内に実質的にトラップされたままとなるように構成されるように構成及び適合される排出手段を含む。
【0073】
前記排出手段は、好ましくは、時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振幅を変更及び/又は変化及び/又はスキャンするように構成及び適合される。
【0074】
前記排出手段は、好ましくは、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振幅を増加させるように構成及び適合される。
【0075】
前記排出手段は、好ましくは、時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振幅を実質的に連続的及び/又は直線的及び/又は漸次的及び/又は規則的に増加させるように構成及び適合される。
【0076】
前記排出手段は、好ましくは、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振幅を実質的に非連続的及び/又は非直線的及び/又は非漸次的及び/又は不規則的に増加させる構成及び適合される。
【0077】
前記排出手段は、好ましくは、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振動又は変調の周波数を変更及び/又は変化及び/又はスキャンするように構成及び適合される。
【0078】
前記排出手段は、好ましくは、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振動又は変調の周波数を低減するように構成及び適合される。前記排出手段は、好ましくは、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振動又は変調の周波数を実質的に連続的及び/又は直線的及び/又は漸次的及び/又は規則的に低減するように構成及び適合される。
【0079】
前記排出手段は、好ましくは、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振動又は変調の周波数を実質的に非連続的及び/又は非直線的及び/又は非漸次的及び/又は不規則的に低減するように構成及び適合され得る。
【0080】
前記イオントラップは、好ましくは、イオンを前記イオントラップから質量又は質量電荷比選択的に排出するように構成及び適合される排出手段をさらに含む。
【0081】
前記排出手段は、好ましくは、前記第1の動作モードにおいて、第1の質量電荷比カットオフよりも低い質量電荷比を有する実質的にすべてのイオンが前記イオントラップのイオントラップ領域から排出されるように構成及び適合される。
【0082】
前記排出手段は、好ましくは、前記第1の動作モードにおいて、第1の質量電荷比カットオフよりも高い質量電荷比を有する実質的にすべてのイオンを前記イオントラップのイオントラップ領域内に維持又は保持もしくは閉じ込められるように構成及び適合される。
【0083】
前記第1の質量電荷比カットオフは、好ましくは、(i)<100、(ii)100〜200、(iii)200〜300、(iv)300〜400、(v)400〜500、(vi)500〜600、(vii)600〜700、(viii)700〜800、(ix)800〜900、(x)900〜1000、(xi)1000〜1100、(xii)1100〜1200、(xiii)1200〜1300、(xiv)1300〜1400、(xv)1400〜1500、(xvi)1500〜1600、(xvii)1600〜1700、(xviii)1700〜1800、(xix)1800〜1900、(xx)1900〜2000、及び(xxi)>2000からなる群から選択される範囲内にある。
【0084】
前記排出手段は、好ましくは、前記第1の質量電荷比カットオフを増加させるように構成及び適合される。前記排出手段は、好ましくは、前記第1の質量電荷比カットオフを実質的に連続的及び/又は直線的及び/又は漸次的及び/又は規則的に増加させるように構成及び適合される。あるいは、前記排出手段は、前記第1の質量電荷比カットオフを実質的に非連続的及び/又は非直線的及び/又は非漸次的及び/又は不規則的に増加させるように構成及び適合され得る。
【0085】
前記排出手段は、好ましくは、前記第1の動作モードにおいて、イオンを前記イオントラップから実質的に軸方向に排出するように構成及び適合される。
【0086】
イオンは、好ましくは、前記イオントラップ内のイオントラップ領域内にトラップされるか、又は軸方向に閉じ込められるように構成され、前記イオントラップ領域は、長さlを有し、ここで、lは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、及び(xi)>200mmからなる群から選択される。
【0087】
前記イオントラップは、好ましくは、直線イオントラップを含む。
【0088】
前記複数の電極は、(i)およそ又は実質的に円形、(ii)およそ又は実質的に双曲線形、(iii)およそ又は実質的にアーチ形又は部分円形、及び(iv)およそ又は実質的に長方形又は正方形からなる群から選択される断面を有し得る。
【0089】
前記イオントラップは、好ましくは、多重極ロッドセットイオントラップを含む。
【0090】
前記イオントラップは、好ましくは、四重極、六重極、八重極又はより高次の多重極ロッドセットを含む。前記多重極ロッドセットイオントラップが内接する半径は、好ましくは、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、及び(xi)>10mmからなる群から選択される。
【0091】
前記イオントラップは、軸方向にセグメント化されるか、又は複数の軸方向セグメントを含み得る。
【0092】
前記イオントラップは、好ましくは、x個の軸方向セグメントを含み、ここで、xは、(i)<10、(ii)10〜20、(iii)20〜30、(iv)30〜40、(v)40〜50、(vi)50〜60、(vii)60〜70、(viii)70〜80、(ix)80〜90、(x)90〜100、及び(xi)>100からなる群から選択される。
【0093】
各軸方向セグメントは、好ましくは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は>20個の電極を含む。
【0094】
前記軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%の軸方向長さは、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、及び(xi)>10mmからなる群から選択される。
【0095】
前記軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%間の間隔は、好ましくは、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、及び(xi)>10mmからなる群から選択される。
【0096】
前記イオントラップは、好ましくは、複数の非導電性、絶縁性又はセラミックのロッド、突起又はデバイスを含む。
【0097】
前記イオントラップは、好ましくは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は>20個のロッド、突起又はデバイスを含む。
【0098】
前記複数の非導電性、絶縁性又はセラミックのロッド、突起又はデバイスは、前記ロッド、突起又はデバイスの周り、隣、上又は近傍に配置される1つ以上の抵抗性又は導電性被膜、層、電極、フィルム又は表面をさらに含み得る。
【0099】
前記イオントラップは、好ましくは、開口部を有する複数の電極を含み、ここで、イオンは、使用時に、前記開口部を通って移送される。
【0100】
好ましくは、前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%は、実質的に同じ大きさ又は実質的に同じ面積の開口部を有する。
【0101】
一実施の形態によれば、前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%は、大きさ又は面積が前記イオントラップの軸に沿った方向に漸次大きく及び/又は小さくなる開口部を有する。
【0102】
一実施の形態によれば、前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm;及び(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径又は大きさの開口部を有する。
【0103】
前記イオントラップは、複数のプレート又はメッシュ電極を含み得、前記電極のうちの少なくともいくつかは、イオンが使用時に走行する概して平面内に構成されるか、又はイオンが使用時に走行する平面に概して直交するように構成される。
【0104】
前記イオントラップは、複数のプレート又はメッシュ電極を含み得、前記電極のうちの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%は、イオンが使用時に走行する概して平面内に構成されるか、又はイオンが使用時に走行する平面に概して直交するように構成される。
【0105】
前記イオントラップは、好ましくは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は>20個のプレート又はメッシュ電極を含む。
【0106】
前記プレート又はメッシュ電極は、好ましくは、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、及び(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さを有する。
【0107】
前記プレート又はメッシュ電極は、好ましくは、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、及び(xv)0.25mm以下からなる群から選択される距離だけ互いに間隔があけられる。
【0108】
前記プレート又はメッシュ電極には、好ましくは、AC又はRF電圧が供給される。隣り合うプレート又はメッシュ電極には、好ましくは、前記AC又はRF電圧の反対の位相が供給される。
【0109】
前記AC又はRF電圧は、好ましくは、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、及び(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有する。
【0110】
前記AC又はRF電圧の振幅は、好ましくは、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、及び(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークからなる群から選択される。
【0111】
前記イオントラップは、好ましくは、前記イオントラップの第1の側面上に配置される第1の外側プレート電極及び前記イオントラップの第2の側面上に配置される第2の外側プレート電極をさらに含む。
【0112】
前記イオントラップは、好ましくは、前記第1の外側プレート電極及び/又は前記第2の外側プレート電極を、AC又はRF電圧が印加される前記プレート又はメッシュ電極の平均電圧に対して、バイアスDC電圧にバイアスするためのバイアス手段をさらに含む。前記バイアス手段は、好ましくは、前記第1の外側プレート電極及び/又は前記第2の外側プレート電極を(i)<−10V、(ii)−9〜−8V、(iii)−8〜−7V、(iv)−7〜−6V、(v)−6〜−5V、(vi)−5〜−4V、(vii)−4〜−3V、(viii)−3〜−2V、(ix)−2〜−1V、(x)−1〜0V、(xi)0〜1V、(xii)1〜2V、(xiii)2〜3V、(xiv)3〜4V、(xv)4〜5V、(xvi)5〜6V、(xvii)6〜7V、(xviii)7〜8V、(xix)8〜9V、(xx)9〜10V、及び(xxi)>10Vからなる群から選択される電圧にバイアスするように構成及び適合される。
【0113】
前記第1の外側プレート電極及び/又は前記第2の外側プレート電極には、使用時に、DC専用電圧が供給され得る。あるいは、前記第1の外側プレート電極及び/又は前記第2の外側プレート電極には、使用時に、AC又はRF専用電圧が供給され得る。別の実施の形態によれば、前記第1の外側プレート電極及び/又は前記第2の外側プレート電極には、使用時に、DC及びAC又はRF電圧が供給され得る。
【0114】
前記イオントラップは、前記複数のプレート又はメッシュ電極間に点在配置、配置、交互配置、又は堆積される1つ以上の絶縁体層をさらに含み得る。
【0115】
前記イオントラップは、実質的に湾曲状又は非直線状のイオンガイド又はイオントラップ領域を含み得る。
【0116】
前記イオントラップは、複数の軸方向セグメントを含み得る。例えば、前記イオントラップは、少なくとも5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個又は100個の軸方向セグメントを含み得る。
【0117】
前記イオントラップは、実質的に円形、長円形、正方形、長方形、規則的又は不規則的な断面を有し得る。
【0118】
一実施の形態によれば、前記イオントラップは、前記イオンガイド領域の少なくとも一部に沿って、大きさ及び/又は形状及び/又は幅及び/又は高さ及び/又は長さが変化するイオンガイド領域を有し得る。前記イオントラップは、好ましくは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は>10個の電極を含む。別の実施の形態によれば、前記イオントラップは、少なくとも(i)10〜20個の電極、(ii)20〜30個の電極、(iii)30〜40個の電極、(iv)40〜50個の電極、(v)50〜60個の電極、(vi)60〜70個の電極、(vii)70〜80個の電極、(viii)80〜90個の電極、(ix)90〜100個の電極、(x)100〜110個の電極、(xi)110〜120個の電極、(xii)120〜130個の電極、(xiii)130〜140個の電極、(xiv)140〜150個の電極、又は(xv)>150個の電極を含む。
【0119】
前記イオントラップは、好ましくは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、及び(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有する。
【0120】
一実施の形態によれば、動作モードにおいて、前記イオントラップを(i)<1.0×10-1mbar、(ii)<1.0×10-2mbar、(iii)<1.0×10-3mbar、(iv)<1.0×10-4mbar、(v)<1.0×10-5mbar、(vi)<1.0×10-6mbar、(vii)<1.0×10-7mbar、(viii)<1.0×10-8mbar、(ix)<1.0×10-9mbar、(x)<1.0×10-10mbar、(xi)<1.0×10-11mbar、及び(xii)<1.0×10-12mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成及び適合される手段が提供される。
【0121】
一実施の形態によれば、動作モードにおいて、前記イオントラップを(i)>1.0×10-3mbar、(ii)>1.0×10-2mbar、(iii)>1.0×10-1mbar、(iv)>1mbar、(v)>10mbar、(vi)>100mbar、(vii)>5.0×10-3mbar、(viii)>5.0×10-2mbar、(ix)10-3〜10-2mbar、及び(x)10-4〜10-1mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成及び適合される手段が提供される。
【0122】
動作モードにおいて、イオンは、前記イオントラップにおいてトラップされ得るが、実質的にフラグメント化されない。別の実施の形態によれば、動作モードにおいて、前記イオントラップの少なくとも一部においてイオンを衝突によって冷却するか、又は実質的に熱化するように構成及び適合され得る。
【0123】
前記イオントラップ内のイオンを衝突によって冷却するか、又は実質的に熱化するように構成及び適合される手段は、イオンが前記イオントラップから排出される前及び/又は後にイオンを衝突によって冷却するか、又は実質的に熱化するように構成される。
【0124】
前記イオントラップは、前記イオントラップ内のイオンを実質的にフラグメンテーションするように構成及び適合されるフラグメンテーション手段をさらに含み得る。前記フラグメンテーション手段は、好ましくは、衝突誘起解離(「CID」)又は表面誘起解離(「SID」)によってイオンをフラグメンテーションするように構成及び適合される。
【0125】
前記イオントラップは、好ましくは、動作モードにおいて、イオンを前記イオントラップから共鳴によって及び/又は質量選択的に排出するように構成及び適合される。
【0126】
前記イオントラップは、イオンを前記イオントラップから軸方向及び/又は半径方向に排出するように構成及び適合され得る。
【0127】
一実施の形態によれば、前記イオントラップは、質量選択的不安定性によってイオンを排出するために、前記複数の電極に印加されるAC又はRF電圧の周波数及び/又は振幅を調節するように構成及び適合され得る。前記イオントラップは、共鳴排出によってイオンを排出するために、AC又はRF補助波形又は電圧を前記複数の電極に重ね合わせるように構成及び適合され得る。前記イオントラップは、イオンを排出するために、DCバイアス電圧を前記複数の電極に印加するように構成及び適合され得る。
【0128】
動作モードにおいて、前記イオントラップは、イオンが前記イオントラップから質量選択的に及び/又は非共鳴的に排出されずに、前記イオンを移送又は格納するように構成され得る。
【0129】
動作モードにおいて、前記イオントラップは、イオンを質量フィルタリング又は質量分析するように構成され得る。
【0130】
動作モードにおいて、前記イオントラップは、イオンが前記イオントラップから質量選択的に及び/又は非共鳴的に排出されずに、衝突又はフラグメンテーションセルとして作用するように構成され得る。
【0131】
前記イオントラップは、動作モードにおいて、前記イオントラップの一部内に、前記イオントラップの入口及び/又は中心及び/又は出口に最も近い1つ以上の位置にイオンを格納又はトラップするように構成及び適合される手段を含み得る。
【0132】
一実施の形態によれば、前記イオントラップは、動作モードにおいて、イオンを前記イオントラップ内にトラップし、漸次前記イオンを前記イオントラップの入口及び/又は中心及び/又は出口に向かって移動させるように構成及び適合される手段をさらに含む。
【0133】
前記イオントラップは、1つ以上の過渡DC電圧又は1つ以上の過渡DC電圧波形をまず第1の軸方向位置において前記複数の電極に印加するように構成及び適合される手段をさらに含み得、ここで、前記1つ以上の過渡DC電圧又は1つ以上の過渡DC電圧波形は、その後に前記イオントラップに沿った第2、次いで第3の異なる軸方向位置に与えられる。
【0134】
前記イオントラップは、イオンを前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って推進するために、1つ以上の過渡DC電圧又は1つ以上の過渡DC電圧波形を前記イオントラップの一端部から別の端部へ印加、移動又は平行移動するように構成及び適合される手段をさらに含み得る。前記1つ以上の過渡DC電圧は、(i)ポテンシャル山又は障壁、(ii)ポテンシャル井戸、(iii)複数のポテンシャル山又は障壁、(iv)複数のポテンシャル井戸、(v)ポテンシャル山又は障壁及びポテンシャル井戸の組み合わせ、又は(vi)複数のポテンシャル山又は障壁及び複数のポテンシャル井戸の組み合わせを生成し得る。
【0135】
前記1つ以上の過渡DC電圧波形は、繰り返し波形又は方形波を含み得る。
【0136】
前記イオントラップは、1つ以上のトラップ静電又はDCポテンシャルを前記イオントラップの第1の端部及び/又は第2の端部に印加するように構成される手段をさらに含み得る。
【0137】
前記イオントラップは、1つ以上のトラップ静電ポテンシャルを前記イオントラップの軸方向長さに沿って印加するように構成される手段をさらに含み得る。
【0138】
一実施の形態によれば、前記質量分析計は、前記イオントラップの上流及び/又は下流に配置される1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域をさらに含み得る。前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域は、前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域内のイオンを衝突によって冷却するか、又は実質的に熱化するように構成及び適合され得る。前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域は、イオンが前記イオントラップに導入される前及び/又は後に、前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域内のイオンを衝突によって冷却するか、又は実質的に熱化するように構成及び適合され得る。
【0139】
前記質量分析計は、イオンを前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域から前記イオントラップ内へ導入、軸方向に注入又は排出、半径方向に注入又は排出、移送又はパルス化するように構成及び適合される手段をさらに含み得る。
【0140】
一実施の形態によれば、前記質量分析計は、前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域内のイオンを実質的にフラグメンテーションするように構成及び適合される手段をさらに含み得る。
【0141】
前記質量分析計は、イオンを前記イオントラップ内へ導入、軸方向に注入又は排出、半径方向に注入又は排出、移送又はパルス化するように構成及び適合される手段をさらに含み得る。
【0142】
前記イオントラップは、イオンを前記イオントラップから実質的に共鳴によらないか又は共鳴によって質量又は質量電荷比選択的に排出し、同時に他のイオンは、前記イオントラップ内にトラップされたままとなるように構成及び適合される手段を含む直線状の質量又は質量電荷比選択的イオントラップを含み得る。
【0143】
別の実施の形態によれば、前記イオントラップは、(i)三次元四重極電界又はポールイオントラップ、(ii)二次元又は線形四重極イオントラップ、又は(iii)磁気又はペニングイオントラップからなる群から選択され得る。
【0144】
前記質量分析計は、好ましくは、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、及び(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択されるイオン源をさらに含む。
【0145】
前記イオン源は、連続又はパルス化イオン源をさらに含み得る。
【0146】
前記質量分析計は、衝突セルをさらに含み得る。
【0147】
一実施の形態によれば、前記質量分析計は、第2の質量又は質量電荷比選択的イオントラップと、前記第2の質量又は質量電荷比選択的イオントラップの下流に配置された第2の質量フィルタ/分析器又は質量分析計と、第2の制御手段であって、(i)イオンがその質量又は質量電荷比にしたがって前記第2のイオントラップから選択的に排出又は放出されるようにし、(ii)イオンの前記第2のイオントラップからの選択的排出又は放出と実質的に同期して前記第2の質量フィルタ/分析器又は質量分析計をスキャンする、ように構成及び適合される第2の制御手段とをさらに含み得る。
【0148】
前記第2の質量又は質量電荷比選択的イオントラップは、好ましくは、上記のようなイオントラップを含む。同様に、前記第2の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、好ましくは、四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計又は磁場型質量フィルタ/分析器又は質量分析計などの質量スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計を含む。
【0149】
本発明の別の局面によれば、質量分析の方法であって、
質量又は質量電荷比選択的イオントラップを準備するステップと、
前記質量又は質量電荷比選択的イオントラップの下流に第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計を準備するステップと、
イオンがその質量又は質量電荷比にしたがって前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるようにするステップと、
イオンの前記イオントラップからの選択的排出又は放出に実質的に同期して前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計をスキャンするステップとを含む方法が提供される。
【0150】
本発明の別の実施の形態によれば、
複数の電極を含むイオン移動度選択的イオントラップと、
前記イオン移動度選択的イオントラップの下流に配置される第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計と、
制御手段であって、
(i)イオンがそのイオン移動度にしたがって前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるようにし、
(ii)イオンの前記イオントラップからの選択的排出又は放出に実質的に同期して前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計をスキャンする、
ように構成及び適合される制御手段とを含む質量分析計が提供される。
【0151】
本発明の別の実施の形態によれば、質量分析の方法であって、
複数の電極を含むイオン移動度選択的イオントラップを準備するステップと、
前記イオン移動度選択的イオントラップの下流に第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計を準備するステップと、
イオンがそのイオン移動度にしたがって前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるようにするステップと、
イオンの前記イオントラップからの選択的排出又は放出に実質的に同期して前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計をスキャンするステップとを含む方法が提供される。
【0152】
本発明の一局面によれば、
質量選択的又はイオン移動度選択的イオントラップと、
前記イオントラップの下流に位置する質量スキャン型質量分析計であって、前記イオントラップから排出されるイオンが質量スキャン型質量分析計内へ方向付けられるようにする質量スキャン型質量分析計と、
制御手段であって、(i)イオンをそのイオンの質量電荷比又はイオン移動度にしたがって前記イオントラップから順次及び選択的に排出し、(ii)前記質量スキャン型質量分析計によって移送されるイオンの質量をスキャンし、(iii)前記質量スキャン型質量分析計へ方向付けられたイオンのうちの少なくともいくつかの質量が質量スキャン型質量分析計によって移送されるイオンの質量に対応するように(i)及び(ii)を同期させる制御手段と
を含む質量分析計デバイスが提供される。
【0153】
本発明の一局面によれば、
イオンをそのイオンの質量電荷比又はイオン移動度にしたがって質量選択的又はイオン移動度選択的イオントラップから順次及び選択的に排出するステップと、
前記排出されたイオンを質量スキャン型質量分析計へ方向付けるステップと、
前記質量スキャン型質量分析計によって移送されるイオンの質量をスキャンするステップと
を含む質量分析を行う方法であって、
前記イオンのイオントラップからの排出及び前記質量スキャン型質量分析計のスキャンは、前記質量スキャン型質量分析計へ方向付けられたイオンの少なくともいくつかの質量が前記質量スキャン型質量分析計によって移送されるイオンの質量に対応するように、互いに同期するようにされる、
方法が提供される。
【0154】
上記好適な実施の形態は、四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器などのスキャン型質量フィルタ/分析器のデューティサイクルを著しく向上させるので、そのような質量フィルタ/分析器の感度を著しく向上させる。
【0155】
用語「質量スキャン型質量分析計」は、時間における任意の特定の場合において特定の又は選択された質量又は質量電荷比を有するイオンだけが前方へ移送されることを可能にするように構成される質量フィルタ/分析器又は質量分析計を意味すると理解されるべきである。前記質量フィルタ/分析器又は質量分析計の質量電荷比移送ウィンドウは、前記質量フィルタ/分析器がスキャンされるにつれて漸次変化する。その結果、前記質量フィルタ/分析器によって前方へ移送され、前記質量フィルタ/分析器を通るようにされるイオンの質量又は質量電荷比は、時間とともに漸次変化する。
【0156】
スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、例えば、広範囲の質量電荷比を有するイオンが同時にパルス化されてドリフト又は飛行時間領域に入る飛行時間質量分析器とは対照的に異なり得る。次いで、イオンは、時間的に分離され、イオンの質量電荷比は、イオンが前記ドリフト又は飛行時間領域の端部に配置されたイオン検出器に到達する前にイオンが前記ドリフト又は飛行時間領域を通る飛行時間を測定することによって決定される。
【0157】
上記好適な実施の形態によれば、前記イオントラップと結合される前記質量又は質量電荷比スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器又は質量分析計を備える。
【0158】
一実施の形態によれば、好ましくは前記質量フィルタ/分析器の上流に配置される前記質量選択的イオントラップは、ガスセルを含む。ガス体での一供給のイオンが、好ましくは、前記ガスセルへ与えられる。好ましくは、動重力イオントラップポテンシャルを生成するための手段が設けられる。前記動重力イオントラップポテンシャルは、好ましくは、イオンが前記イオントラップ内に半径方向に閉じ込められるようにする。加えて、さらなるポテンシャルを生成して、前記イオントラップの一端における抽出領域からイオンが抽出されることを防止する有効軸方向ポテンシャルを与えるための手段が、好ましくは、設けられる。
【0159】
前記質量選択的イオントラップは、好ましくは、少なくとも部分的には、動重力イオントラップポテンシャルを生成することによって、イオンが抽出領域から抽出されることを防止する有効ポテンシャルの特性が生じるように構成される。
【0160】
前記質量選択的イオントラップは、好ましくは、所定の質量電荷比又はイオン移動度を有するイオンを前記イオントラップの抽出領域から選択的に抽出するためのイオン抽出手段をさらに含む。
【0161】
上記好適なイオントラップは、質量又は質量電荷比選択的イオントラップ又はイオン移動度選択的デバイスのいずれかとして動作され得る。
【0162】
上記好適な実施の形態に係るイオントラップの特定の利点は、前記イオントラップが前記イオントラップの下流に配置された前記質量フィルタ/分析器又は質量分析計が質量範囲にわたってスキャンする時間スケールに釣り合った時間スケールでイオンを選択的に出射できることである。この時間スケールは、数百ミリ秒のオーダーであり得る。
【0163】
別の好ましさの劣る実施の形態によれば、前記イオントラップは、イオン移動度選択的デバイスを含み得る。イオンは、キャリアガスの層流に同伴し得る。次いで、イオンは、電界が前記層流を横切って印加される障壁領域において、好ましくは、トラップされ得る。イオン移動度選択的イオントラップのこの形態の利点は、前記イオントラップの下流に配置された質量フィルタ/分析器又は質量分析計が質量範囲にわたってスキャンする時間スケールに釣り合った時間スケールで、前記イオントラップがイオンを選択的に出射できることである。この時間スケールは、数百ミリ秒のオーダーであり得る。
【0164】
他の実施の形態によれば、前記質量選択的イオントラップは、ポールイオントラップ、三次元四重極電界イオントラップ、磁気(「ペニング」)イオントラップ、又は線形四重極イオントラップを含み得る。
【0165】
上記好適なイオントラップは、好ましくは、イオンを格納し、次いで好ましくは実質的にこれらのイオンだけを前記質量フィルタ/分析器の質量電荷比移送ウィンドウに概して対応する前記質量スキャン型質量フィルタ/分析器に供給することによって質量スキャン型質量フィルタ/分析器の感度を改善する、前記質量フィルタ/分析器の前記質量スキャン型サイクルにおける任意の与えられた時間に前記質量フィルタ/分析器によって前方へ移送される。
【0166】
感度を最大にするには、イオンは、好ましくはそのような質量電荷比を有するイオンが質量選択的質量分析計によってスキャンされている時間にイオンが質量スキャン型質量フィルタ/分析器に到達し、他の時間ではそうならないように質量選択的イオントラップから排出される。質量選択的イオントラップの分解能が質量フィルタ/分析器の分解能と等しいか、又はそれよりも良いならば、質量フィルタ/分析器は、概して不要であることが明らかである。しかし、上記好適な実施の形態は、質量フィルタ/分析器よりも低い分解能を有する質量選択的イオントラップが使用される場合に特に有利である。一実施の形態によれば、質量フィルタ/分析器の質量又は質量電荷比分解能は、質量選択的イオントラップの質量分解能よりも5〜15倍高くあり得る。好ましくは、質量フィルタ/分析器の質量分解能は、質量選択的イオントラップよりも10倍高くあり得る。質量分解能は、M/ΔMとして定義され得る。ここで、Mは、イオンの質量又は質量電荷比であり、ΔMは、イオンが質量Mと異なり得、かつなおも質量Mのイオンと区別され得る最小数の質量単位である。
【0167】
イオン蓄積トラップ又は段が質量選択的又はイオン移動度選択的イオントラップの上流に設けられ得る。
【0168】
一実施の形態によれば、2つの質量選択的イオントラップ及び/又は2つの対応する質量フィルタ/分析器を含む質量分析計が提供され得る。また、三連四重極質量分析計の変形例が提供され得るために、衝突、フラグメンテーション又は反応セルが提供され得る。
【0169】
本発明の一実施の形態によれば、イオンが質量選択的又はイオン移動度選択的イオントラップから順次及び選択的に排出される質量分析の方法が提供される。好ましくは、排出されたイオンは、好ましくは四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器を含む質量スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計へ渡されるか、又は方向付けられる。質量スキャン型質量フィルタ/分析器によって移送されるイオンの質量又は質量電荷比は、好ましくはスキャンされる。イオントラップからのイオンの排出及び質量スキャン型質量フィルタ/分析器のスキャンは、好ましくは、質量スキャン型質量フィルタ/分析器へ方向付けられるか、又は渡されるイオンのうちの少なくともいくつかイオンの質量又は質量電荷比が質量スキャン型質量フィルタ/分析器の瞬間的な質量電荷比移送ウィンドウに実質的に対応するように、互いに同期するようにされる。
【0170】
また、好ましくはガス体での一供給のイオンを準備するステップを含む、イオンを選択的に抽出する方法が開示される。この方法は、好ましくはイオンを半径方向に閉じ込めるために動重力イオントラップポテンシャルを生成するステップをさらに含む。さらなるポテンシャルが好ましくはイオンが抽出領域から抽出されることを防止する有効ポテンシャルを提供するために生成される。イオンは、好ましくは有効ポテンシャルにおいてトラップされる。所定の質量電荷比又はイオン移動度を有するイオンが好ましくは選択的に抽出領域から抽出される。好ましくは、イオンが抽出領域から抽出されることを防止する有効ポテンシャルの特性が、少なくとも部分的に、動重力イオントラップポテンシャルを生成することによって生じる。
【0171】
上記好適な質量選択的イオントラップは、好ましくは動重力イオントラップポテンシャルが概して軸に沿って生成されるようにする。さらなるポテンシャルが好ましくは生成され、(a)好ましくは異なる質量電荷比及び/又はイオン移動度を有するイオンを空間分離する有効ポテンシャル、及び/又は(b)有効な大きさが好ましくはデバイスを通るイオンの質量又は質量電荷比に依存する1つ以上のポテンシャル障壁を含む有効ポテンシャルを与える。イオンは、好ましくは有効ポテンシャルにトラップされる。この方法は、好ましくは所定の質量電荷比又はイオン移動度のイオンを選択的に抽出するステップをさらに含む。
【0172】
イオンを選択的に抽出する方法であって、(i)ガス体での一供給のイオンをイオン抽出容積中に準備するステップであって、イオン抽出容積がイオン抽出経路を規定する、ステップ、(ii)概して第1の軸に沿って動重力イオントラップポテンシャルを生成するステップ、(iii)第1の軸に好ましくは直交する第2の軸に概して沿って静電イオントラップポテンシャル井戸を生成するステップを含む方法が開示される。ステップ(i)、(ii)及び(iii)は、好ましくは異なる質量電荷比を有するイオン及び/又は異なるイオン移動度を有するイオンを空間分離する有効ポテンシャルを提供するために行われる。異なる質量電荷比及び/又は異なるイオン移動度を有する、空間的に分離された複数のイオン群が好ましくは生成される。この方法は、好ましくは1群のイオンを選択的に抽出するステップをさらに含む。
【0173】
好適なイオントラップ内の有効ポテンシャル井戸は、好ましくはRFポテンシャル及び静電ポテンシャルの組み合わせにより生成され、かつ好ましくは異なる質量電荷比のイオン(例えば、質量は同様だが電荷の異なるイオン)の空間分離が可能となるようにポテンシャルにおけるイオン上の電荷に依存する。上記好適なイオントラップは、イオンの選択的抽出を与えるこの現象を利用する。
【0174】
好ましさの劣る実施の形態によれば、有効ポテンシャルがまたイオン移動度に依存するので、このこともイオンをイオン移動度に依存して選択的に抽出するために利用され得る。
【0175】
上記好適なイオントラップは、空間分離を達成するために空間電荷効果に依存しない。空間電荷効果は、イオントラップ環境を適切に設計することで低減され得る。
【0176】
上記好適な実施の形態は、イオンを予測的なやり方で分離する方法を提供し、かつ質量分析計段などのさらなる段への効率的な結合を可能にする。イオン分離、格納又はトラップ及びフラグメンテーションの方法がまた開示される。
【0177】
上記好適なイオントラップにおけるイオンは、ガスのフローに同伴し得る。動重力イオントラップポテンシャル及び静電イオントラップポテンシャルは、好ましくはガスのフローの方向に直交する単一軸に概して沿って生成される。
【0178】
静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸がポテンシャルを少なくとも1対の好ましくは間隔のあいた電極に印加することによって生成され得る。ガス体及びイオンは、好ましくは2つの電極の間を通る。
【0179】
動重力又はRFイオントラップポテンシャルは、好ましくはAC又はRF電圧を1セットの電極(多重極ロッドセット又はリングセットなど)に印加することによって生成される。また、DC静電ポテンシャルが、静電イオントラップポテンシャル井戸の生成を補助するために、好ましくはRF電極に印加され得る。
【0180】
1群のイオンが上記好適なイオントラップ内の所定の空間位置から抽出され得る。1群のイオンの選択的抽出は、選択された1群のイオンを所定の空間位置に移動させることによって達成され得る。次いで、1群のイオンが所定の空間位置から抽出され得る。選択された1群のイオンが有効ポテンシャルを変化させることによって所定の空間位置へ移動され得る。有効ポテンシャルは、動重力又はRFイオントラップポテンシャル及び/また静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を変化させることによって変化され得る。
【0181】
好ましさの劣る実施の形態によれば、有効ポテンシャルは、ガス体の圧力を変化させることによって変化され得る。
【0182】
1群のイオンがガス体を横切ってイオン障壁を設けることによって所定の空間位置から抽出され得る。イオン障壁は、その内部に位置する開口部を有し得る。イオンは、好ましくは開口部を通って抽出される。選択されたイオン群を有効ポテンシャルを調整することによって抽出して、1群のイオンによって占有される空間位置をイオンが開口部を通って抽出され得る所定の空間位置に一致するように調節することができる。
【0183】
ドリフトポテンシャルは、ガス体に沿って印加され得る。
【0184】
一実施の形態によれば、イオン抽出容積内のガス体での一供給のイオンが提供されるような、イオンを選択的に抽出する方法が使用され得る。イオン抽出容積は、好ましくはイオン抽出経路を規定する。AC又はRF電圧が印加される電極セットが好ましくは提供される。振動RFポテンシャルが好ましくはRF電極セットに提供され、(a)好ましくはイオン抽出経路をわたる少なくとも1つの軸に概して沿って動重力イオントラップポテンシャルを生成し、(b)イオン抽出経路に沿って有効ポテンシャルを生成する。イオン抽出経路に沿った有効ポテンシャルは、好ましくは少なくとも1つのポテンシャル障壁を含む。ポテンシャル障壁の大きさは、好ましくは供給イオン内のイオンの質量電荷比に依存し、かつ好ましくはイオン抽出経路をわたる軸に沿ったイオンの位置に依存しない。イオン抽出経路に沿った有効ポテンシャルは、好ましくは、少なくとも部分的に、RF電極セットに印加される振動RFポテンシャルによって生成される。少なくとも1つのポテンシャル障壁は、好ましくはRF電極セットに印加される振動RFポテンシャルにおける周期性によって生じる。有効ポテンシャルは、好ましくは所定の質量電荷比又はイオン移動度のイオンが選択的に抽出されるように変化される。
【0185】
このように、イオンをトラップ及び抽出する、フレキシブルで、感度がよく、かつ正確な方法が好ましくは提供される。全質量範囲にわたって100%デューティサイクルに近いか、又はそれを実際に達成する高デューティサイクルが得られ得る。上記好適なイオントラップのさらなる利点は、イオンを強力なパケットにまとめることが達成され得、これによりADCシステムにおけるノイズが低減されることである。
【0186】
RF電極セットは、好ましくはイオン抽出経路に沿って配置されるRF電極のサブセットを含む。イオン抽出経路に沿った少なくとも1つのポテンシャル障壁は、好ましくはイオン抽出経路に沿って配置されたRF電極のサブセットに印加される振動RFポテンシャルにおける周期性によって生じる。
【0187】
また、有効ポテンシャルは、好ましくはイオン抽出経路に沿って印加され得るさらなるドリフトポテンシャルを含み得る。イオンは、ドリフトポテンシャルの大きさを変化させることによって選択的に抽出され得る。あるいは、又はさらに、イオンは、振動RFポテンシャルの大きさを変化させることによって選択的に抽出され得る。
【0188】
イオンは、好ましくはガスのフローに同伴し、好ましくは、動重力イオントラップポテンシャルは、好ましくはガスのフローの方向に直交する少なくとも1つの軸に概して沿って生成される。
【0189】
上記方法は、動重力イオントラップポテンシャルが沿って生成される軸に直交する軸に概して沿って静電イオントラップポテンシャル井戸を生成するステップをさらに含み得る。静電イオントラップポテンシャル井戸は、ポテンシャルを少なくとも1対の電極に印加することによって生成され得る。この少なくとも1対の電極は、ガス体を挟んで間隔があけられる。これらの実施の形態において、DC静電ポテンシャルが静電イオントラップポテンシャル井戸の生成を補助するようにRF電極セットに印加され得る。
【0190】
別の実施の形態において、動重力イオントラップポテンシャルが、互いに直交し、かつまたイオン抽出経路に直交する2つの軸に概して沿って生成され得る。この場合、好ましくはイオン抽出経路に沿って配置されるさらなるRF電極のサブセットを有する拡張されたRF電極セットが使用され得る。利点としては、さらなるサブセットにおけるRF電極は、その他のサブセットのRF電極におけるRF電極よりも薄くあり得ることである。
【0191】
一実施の形態によれば、イオン抽出デバイスが提供される。イオン抽出デバイスは、好ましくはガス体での一供給のイオンが位置するガスセルを含む。動重力イオントラップポテンシャルを概して軸に沿って生成するための手段が提供される。また、イオンが抽出領域から抽出されることを防止する有効ポテンシャルを提供するようにさらなるポテンシャルを生成するための手段が好ましくは提供される。このデバイスは、好ましくはイオンが抽出領域から抽出されることを防止する有効ポテンシャルの特性が、少なくとも部分的に、動重力イオントラップポテンシャルを生成することによって生じるように構成される。所定の質量電荷比又はイオン移動度を有するイオンを抽出領域から選択的に抽出するためのイオン抽出手段が提供され得る。
【0192】
一実施の形態によればガス体での一供給のイオンが使用時に提供されるガスセルを含むイオン抽出デバイスが提供される。ガスセルは、好ましくはイオン抽出経路を規定するイオン抽出容積を有する。動重力イオントラップポテンシャルを生成するための手段が好ましくは提供される。動重力ポテンシャルは、好ましくはガスセルにわたって生成される。静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を生成する手段が好ましくは提供される。静電又はDCポテンシャル井戸は、好ましくは動重力ポテンシャルが沿って生成される単一軸に好ましくは直交する単一軸に概して沿って、ガスセルにわたり生成される。また、所定の空間位置に位置するイオン群の空間選択的抽出のためのイオン抽出手段が好ましくは提供される。
【0193】
イオン抽出デバイスは、イオン分離、イオン格納又はイオンフラグメンテーション動作モードを含む種々のモードにおいて動作され得る。
【0194】
ガスセルの少なくとも一部は、ガスのフローに同伴するイオンが好ましくは輸送されるガスフロー導管を含み得る。導管は、ガスフローの方向を有する。上記デバイスは、ガスのフローを提供するためのガスフロー手段をさらに含み得る。動重力又はRFイオントラップポテンシャルを生成するための手段がフローの方向を横切るDCポテンシャルを生成し得る。また同様に、静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段がフローの方向を横切るポテンシャル井戸を生成し得る。
【0195】
動重力イオントラップポテンシャルを生成する手段は、好ましくはRF電極セットを提供する手段を含む。RF電極セットは、少なくとも1対のRF電極を含み得る。各RF電極対における電極は、好ましくはガスセルを挟んで間隔があけられる。1対のRF電極スタックを有するいくつかの実施の形態において、このRF電極スタックにおけるRF電極は、ガスセルの実質的に全長に沿って伸び得る。1対のRF電極スタックを有する他の実施の形態において、各スタックにおけるRF電極は、ガスセルの長さに沿ってスタックされ得る。
【0196】
あるいは、RF電極セットは、ガスセルを挟んで間隔のあいた一連のRF電極スタック対を含み得る。各スタックにおける電極は、ガスセルの長軸に直交する方向にスタックされ得る。
【0197】
静電イオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段は、少なくとも1対の電極を含み得る。少なくとも1対の電極における電極は、好ましくはガスセルを挟んで間隔があけられる。静電イオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段は、好ましくはガスセルに沿って配置された一連の電極対を含む。あるいは、静電イオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段は、ガスセルを挟んで間隔のあいた1対の電極を含み得る。この1対の電極は、フローの方向に対して傾けられ得る。ポテンシャルを一連の電極対に印加して、ドリフト電界がガスセルの少なくとも一部に沿って印加されるようにし得る。
【0198】
別の実施の形態において、動重力イオントラップポテンシャルを生成する手段は、RF電極セットを含み得、静電イオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段は、ガスセルに沿って配置された一連の電極対を含み、かつデバイスは、複数のセグメント化RF電極/電極ユニットを含む。各ユニットは、2つの対向するRF電極及び2つの対向する電極が同一平面に配置された構成を含む。
【0199】
DC静電ポテンシャルは、静電イオントラップポテンシャル井戸の生成を補助するように、動重力イオントラップポテンシャルを生成するための手段に印加され得る。
【0200】
イオン抽出手段は、内部に開口部が形成されたガスフロー導管を横切って配置されたイオン障壁を含み得る。イオン障壁は、好ましくはイオンが障壁を横断し、したがってイオン抽出デバイスから出ることを防止する。イオン障壁は、エンドキャップなどの物理的な障壁を含み得、及び/又はイオンを減速させる電界を印加するための手段を含み得る。イオン抽出デバイスは、開口部を通ってイオンを抽出するように抽出電界を印加するための手段をさらに備える。
【0201】
イオン抽出手段は、開口部と連絡する、漏洩誘電体から形成される、内側へ向かって伸びるチューブを含み得る。
【0202】
動重力イオントラップポテンシャルを生成するための手段、静電イオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段、及びガス体の圧力のうちの少なくとも1つは、選択された1群のイオンを所定の空間位置へ移動させるために可変であり得る。
【0203】
イオン抽出デバイスは、ガス衝突セルとして使用され得る。
【0204】
別の実施の形態によれば、ガス体での一供給のイオンが使用時に位置するガスセルを含むイオン抽出デバイスが提供される。ガスセルは、好ましくはイオン抽出経路を規定するイオン抽出容積を有する。RF電極セットを含むイオンガイド手段が好ましくは提供される。振動RFポテンシャルをRF電極セットに印加して、(a)イオン抽出経路をわたる少なくとも1つの軸に概して沿って動重力イオントラップポテンシャルを生成し、(b)少なくとも部分的に、有効ポテンシャルをイオン抽出経路に沿って生成するための手段が好ましくは提供される。イオン抽出経路に沿った有効ポテンシャルは、好ましくは少なくとも1つのポテンシャル障壁を含み、そのポテンシャル障壁の大きさは、供給イオンにおけるイオンの質量電荷比に依存し、かつイオン抽出経路をわたる軸に沿ったイオンの位置に実質的に依存しない。この少なくとも1つのポテンシャル障壁は、RF電極セットに印加される振動RFポテンシャルにおける周期性によって生じる。また、所定の質量電荷比又はイオン移動度のイオンがデバイスから選択的に抽出されるように有効ポテンシャルを変化させるための手段が好ましくは提供される。
【0205】
好ましくは、イオンガイド手段は、静電イオントラップポテンシャル井戸を、動重力イオントラップポテンシャルが沿って生成される軸に直交し、かつイオン抽出経路に直交する軸に概して沿って、生成するための手段をさらに含む。静電イオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段は、少なくとも1対の電極を含み得る。この少なくとも1対の電極における電極は、ガスセルを挟んで間隔があけられる。静電イオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段は、ガスセルに沿って配置される一連の電極対を含み得る。イオン抽出経路に沿ってドリフト電界を印加するように、ポテンシャルが一連の電極対に印加され得る。
【0206】
静電イオントラップポテンシャル井戸の生成を補助するように、DC静電ポテンシャルがRF電極セットに印加され得る。
【0207】
イオン抽出容積は、幅、高さ及び長さを有し、断面が長方形の直方体を含むことが有利である。ここで、幅と高さは異なる。動重力イオントラップポテンシャルは、好ましくは直方体の幅に対応する軸に概して沿って生成される。直方体の幅対高さの比は、好ましくは少なくとも1:1.5であり、さらに好ましくは1:1.7より大きい。
【0208】
上記デバイスは、少なくとも1つのイオン入口を有する入口端板をデバイスの一端に含み得る。デバイスは、少なくとも1つのイオン出口を有する出口端板をデバイスの他端に含み得る。ドリフトポテンシャルは、電圧を端板に印加することによってイオン抽出経路に沿って印加され得る。
【0209】
好適なデバイスは、x、yもしくはz方向又はそれらを組み合わせた方向に、デバイス配列を生成するように縦続接続され得る。イオンは、スロット、孔、メッシュ又は他の開口部を有する電極を使用することによって、隣り合うデバイス間を移送され得る。これらの電極は、好ましくは隣り合う電極に共通であり得る。
【0210】
RF電極セットは、少なくとも1対のRF電極スタックを含み得る。ここで、各RF電極スタック対におけるスタックは、ガスセルを挟んで間隔があけられ、各スタックにおけるRF電極は、イオン抽出経路に沿ってスタックされる。
【0211】
振動RFポテンシャルを印加するための手段は、共通位相の振動RFポテンシャルを1サブセットのRF電極における複数の隣り合うRF電極に印加し得る。従って、振動RFポテンシャルにおける周期性は、サブセットにおけるRF電極のグループ間に確立される。また、この場合、イオントラップ振動RFポテンシャルを各RF電極スタック対におけるRF電極に印加することが望ましい。ここで、隣り合うRF電極に印加されるイオントラップ振動RFポテンシャルの位相が反対である。このイオントラップ振動RFポテンシャルは、高い質量のイオン(イオントラップ振動RFポテンシャルがなければデバイスの電極に衝突しやすい)は、主なデバイス軸に沿って有効ポテンシャルに著しい影響を与えずに、強力なポテンシャル障壁をデバイスの側面に向かって与えることによって閉じ込めるように作用する。好ましくは、イオントラップ振動RFポテンシャルは、各サブセットのRF電極に印加される振動RFポテンシャルに対して90°位相がずれて印加される。これにより、イオントラップが向上し、RF電極にかかるピーク電圧が低減する。
【0212】
イオン走行波デバイスが使用され得る。時間平均された場合に、隣り合う電極間のポテンシャル分割器によって生成される場合のDC軸方向電界と同様に障壁に打ち勝つ周期性を有する、走行軸方向電界を印加するための手段が提供され得る。
【0213】
一実施の形態によれば、ガスセルに対する一供給のイオンを生成するためのイオン供給手段を含むイオン抽出デバイスが提供され得る。イオンは、レーザなどの従来の光源によって生成される真空紫外又はソフトx線放射を使用する、エレクトロスプレーイオン化、MALDI(マトリックス支援レーザ脱離イオン化)、電子衝突、化学イオン化、高速原子衝撃、電界イオン化、電界脱離、及びソフトイオン化技術などの適切なイオン化技術を使用して生成され得る。概して、イオンは、ガスセルの外部で生成されるが、原理的にはガスセル内部で生成され得る。
【0214】
別の実施の形態によれば、イオン分離段に結合された第1のイオン抽出デバイスを含むタンデムイオン分離デバイスが提供され得る。イオン移動度セパレータとして動作する上流のイオン抽出デバイスが提供され得、イオンをその質量電荷比にしたがって分離する下流のイオン抽出デバイスが提供され得る。次いで、上流のイオン抽出デバイスは、比較的高い圧力で動作し得る。あるいは、イオン分離段は、質量分析手段を含み得る。質量分析手段は、多重極質量分析計を含み得る。この場合、質量分析手段は、質量フィルタとして動作し得、第1のイオン抽出デバイスは、イオン移動度セパレータとして動作し得る。イオン分離段は、イオンを第1のイオン抽出デバイスに供給し得る。
【0215】
一実施の形態によれば、質量選択的又はイオン移動度選択的イオントラップ、及びイオントラップの下流に位置する質量スキャン型質量分析計であって、イオントラップから排出されるイオンが質量スキャン型質量分析計内へ方向付けられるようにする質量スキャン型質量分析計を含む質量分析計デバイスが提供される。制御手段であって、(i)イオンをそのイオンの質量電荷比又はイオン移動度にしたがってイオントラップから順次及び選択的に排出し、(ii)質量スキャン型質量分析計によって移送されるイオンの質量をスキャンし、(iii)前記質量スキャン型質量分析計へ方向付けられたイオンのうちの少なくともいくつかのイオンの質量が質量スキャン型質量分析計によって移送されるイオンの質量に対応するように(i)及び(ii)を同期させて、質量スキャン型質量分析計の感度が改善する制御手段が提供される。
【0216】
このように、デューティサイクルが改善され得る。デューティサイクルは、質量選択的又はイオン移動度選択的イオントラップを含まない同一の質量スキャン型質量分析計と比較して改善され得る。
【0217】
上記好適なイオントラップのスキャン速度及び質量スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計のスキャン速度は、好ましくは一致するようにされる。実際には、これは、質量スキャン型質量分析計のスキャン速度に一致させるために十分にゆっくりとしたスキャン速度を有するイオントラップを使用することを意味し得る。
【0218】
好ましくは、質量スキャン型質量分析計の質量分解能は、イオントラップから排出されるイオンの質量分解能よりも2〜250の範囲、好ましくは5〜15の範囲、さらに好ましくは約10の倍数因子だけ大きい。質量分解能は、M/ΔMとして定義される。ここで、Mは、イオンの質量であり、ΔMは、イオンが質量Mと異なり得、かつなおも質量Mのイオンと区別され得る最小数の質量単位である。尚、四重極質量分析計についての質量分解能M/ΔMは、概してMの関数として変化する。また、イオントラップの質量分解能は、Mの関数として変化することが可能である。従って、倍数因子は、Mの関数として変化し得る。上記の倍数因子の範囲は、質量100amuのイオンを基準にし得る。イオン蓄積トラップは、質量選択的又はイオン移動度選択的イオントラップの上流に配置されることが有利である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0219】
ここで、添付の図面を参照して、本発明の種々の実施の形態を、あくまで例として、説明する。
【0220】
図1は、本発明の好適な実施の形態を例示する模式図を示す。
【0221】
図2は、本発明の一実施の形態を示す。
【0222】
図3は、図2に示す実施の形態の動作を例示する。
【0223】
図4は、一実施の形態に係るDC電極及びRF並列ロッドセットイオントラップの断面図を示す。
【0224】
図5Aは、本発明の一実施の形態に係るイオン抽出デバイスのxy平面における断面図を示し、図5Bは、端板の端面図を示す。
【0225】
図6は、好適なイオントラップの側面図を示す。
【0226】
図7は、別の好適なイオン抽出デバイスの側面図を示す。
【0227】
図8は、さらなる好適なイオン抽出デバイスの側面図を示す。
【0228】
図9は、イオン抽出デバイスの一実施の形態の斜視側面図を示す。
【0229】
図10は、イオン抽出デバイスの一実施の形態の斜視側面図を示す。
【0230】
図11は、イオン抽出デバイスの一実施の形態の斜視側面図を示す。
【0231】
図12は、図2に示すようなイオン抽出デバイスを使用して生成されるy軸に沿った典型的な静電ポテンシャル井戸を示す。
【0232】
図13は、図5Aに示すようなデバイスを使用して生成されるx軸に沿った典型的な負の分散プロットを示す。
【0233】
図14は、図5Aに示すようなデバイスを使用して生成されるx軸に沿った有効ポテンシャル井戸の形状を示す。
【0234】
図15は、図5Aに示すようなデバイスを使用して生成されるx軸に沿った静電及び動重力ポテンシャルの組み合わせによる合成ポテンシャルを示す。
【0235】
図16Aは、M=1000及びz=2を有するイオンに対するポテンシャル極小の位置を、図16Bは、M=500及びz=2を有するイオンに対するポテンシャル極小の位置を、図16Cは、M=250及びz=2を有するイオンに対するポテンシャル極小の位置を示す。
【0236】
図17は、好適なイオン抽出デバイスの出口領域の断面図を示す。
【0237】
図18は、別の実施の形態に係るイオン抽出デバイスの出口領域の断面図を示す。
【0238】
図19Aは、DC電極/RF電極構成の断面図を、図19Bは、一実施の形態に係る直方体デバイスの斜視図を示す。
【0239】
図20Aは、xz平面における好適なイオントラップの断面図を、図20Bは、側面図を、図20Cは、後端面図を、図20Dは、好適なイオン抽出デバイスの前端面図を示す。
【0240】
図21は、イオン抽出デバイスの一実施の形態に係るRF電極の平面図であり、RFポテンシャルの電極への印加を示す。
【0241】
図22は、x方向におけるRF有効ポテンシャル井戸を示す。
【0242】
図23は、z方向におけるDC静電ポテンシャル井戸を示す。
【0243】
図24は、y方向又は軸方向における有効ポテンシャルを示す。
【0244】
図25Aは、デバイスの中心での質量電荷比=2000のイオンについてのy方向又は軸方向における好適なイオン抽出デバイス内の有効ポテンシャルを、図25Bは、RF電極での質量電荷比=2000のイオンについての有効ポテンシャルを、図25Cは、デバイスの中心での質量電荷比=200のイオンについての有効ポテンシャルを、図25Dは、RF電極での質量電荷比=200のイオンについての有効ポテンシャルを示す。
【0245】
図26は、V0=200V及び質量電荷比=2000の場合のxy平面(z=0)におけるポテンシャルを示す。
【0246】
図27は、V0=200V及び質量電荷比=50の場合のxy平面(z=0)におけるポテンシャルを示す。
【0247】
図28は、V0=50V及び質量電荷比=50の場合のxy平面(z=0)におけるポテンシャルを示す。
【0248】
図29は、V0=50V及び質量電荷比=2000の場合のxy平面(z=0)におけるポテンシャルを示す。
【0249】
図30は、V0=50V及び質量電荷比=50の場合のxy平面(x=0)におけるポテンシャルを示す。
【0250】
図31は、V0=50V及び質量電荷比=50の場合のyz平面(x=0)におけるポテンシャルを示す。
【0251】
図32は、V0=50V、質量電荷比=200、Vent=Vext=1Vの場合のyz平面(x=0)ポテンシャルを示す。
【0252】
図33Aは、比較的高い質量電荷比のイオンについてドリフト電界を印加した場合のy方向の有効ポテンシャルを、図33Bは、比較的低い質量電荷比のイオンについてドリフト電界を印加した場合のy方向の有効ポテンシャルを示す。
【0253】
図34は、本発明のイオン抽出デバイスのRF電極の平面図であり、電極グループのRFポテンシャルの共通位相への接続を示す。
【0254】
図35は、出口プレートを示す。
【0255】
図36Aは、質量電荷比=500のイオンについてx方向における有効ポテンシャルを、図36Bは、質量電荷比=50のイオンについてx方向における有効ポテンシャルを示す。
【0256】
図37は、上記好適なイオントラップの端板としての使用に適切な種々の電極構造を示す。
【0257】
図38は、好適な実施の形態に係る多段イオントラップ及び関連のDCポテンシャルエネルギー図を示す。
【0258】
図39は、好適なイオントラップについてのトラップ−TOF段及びパルス化抽出方式を示す。
【0259】
図40は、好適なイオントラップのビーム成形器部を示す。
【0260】
図41は、好適な実施の形態に係る、部分的に構築されたイオントラップの端面図を示す。
【0261】
図42は、本発明の一実施の形態に係る中空のRFプレートを示す。
【0262】
図43は、イオンの連続ビームを受け取る好適なイオントラップを示す。
【0263】
図44は、四重極質量フィルタ/分析器が2つの好適なイオントラップの間に設けられ、かつ、さらなる質量分析器(飛行時間質量分析器など)が設けられる好適な構成を示す。
【0264】
図45は、本発明の好適な実施の形態のイオントラップに結合されたスキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計についてのイオン質量の関数としてのデューティサイクルの、同じ質量フィルタ/分析器又は質量分析計に上流イオントラップが結合されない場合と比較した場合の改善を示す。
【0265】
図1を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。この好適な実施の形態によれば、質量又は質量電荷比スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計14とインタフェースをとるようにその上流に配置された質量又は質量電荷比選択的イオントラップ12を含む質量分析計10が提供される。質量又は質量電荷比スキャン型質量フィルタ/分析器は、好ましくは、四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器又は質量分析計を含み、より好ましさは低いが、質量又は質量電荷比スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、磁場型質量フィルタ/質量分析器又は質量分析計を含み得る。
【0266】
質量又は質量電荷比選択的イオントラップ12及び質量又は質量電荷比スキャン型質量分析計14は、好ましくは、制御手段16によって制御される。制御手段16は、好ましくは、質量又は質量電荷比選択的イオントラップ12からのイオンの排出を制御し、かつまた好ましくは、質量又は質量電荷比スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計14のスキャンを制御する。
【0267】
上記好適な実施の形態によれば、制御手段16は、好ましくは、質量又は質量電荷比選択的イオントラップ12からのイオンの排出又は放出を同期させて、特定又は所望の質量又は質量電荷比を有するイオンだけが、質量スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計14がスキャンにおけるある点にある場合に質量スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計14へ渡されるようにする。ここで、質量フィルタ/分析器又は質量分析計14の質量又は質量電荷比移送ウィンドウは、イオンの質量又は質量電荷比が上記特定の場合にイオントラップからの放出又は排出に実質的に対応する。
【0268】
好適なイオントラップ12は、比較的制限された又は低い質量又は質量電荷比分解能を有し得る。従って、特定の質量又は質量電荷比を有するいくつかのイオンは、与えられた質量又は質量電荷比のイオンが質量フィルタ/分析器又は質量分析計14によって移送されるよりもある期間だけ前及び/又は後にイオントラップ12から排出され得る。しかし、質量フィルタ/分析器又は質量分析計14のスキャンサイクルの著しく長い期間に、質量スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計14によって前方へ移送されないイオンは、好ましくは、上流の質量選択的イオントラップ12内に保持されるか、又はそうでなければ維持される。
【0269】
制御手段16は、好ましくは、1つ以上のコンピュータ及び関連の電子機器を含む。制御手段16は、その機能を行うためにカスタマイズされた回路を含み得る。あるいは、質量分析計10は、市販の質量スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計14を利用し得る。この場合、制御手段16は、質量スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計14のスキャンを制御するための市販の制御システム、及び質量又は質量電荷比選択的イオントラップ12からのイオンの排出を制御し、これを質量スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計14のスキャンと同期させるための適切なインタフェースを含み得る。
【0270】
例えば、毎秒1回1000Daにわたってスキャンし、質量0からスキャンを開始し、質量1000までスキャンする四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計14が考えられ得る。四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計12の上流に配置される蓄積イオントラップ12が考えられ得る。イオントラップ12は、四重極スキャンの最初の0.9秒の期間にわたってイオンを蓄積するように構成されると考えられ得る。次いで、イオントラップ12は、残りの0.1秒の期間にイオンを放出するように構成される。
【0271】
1秒のスキャン期間の質量スペクトルは、質量スケールの最後の10%(900〜1000Da)を除いてゼロとなる。しかし、最後の10%は、質量選択的イオントラップ12が設けられない場合よりも約10倍強度の高いイオンを有する。なぜなら、イオントラップ12は、イオンのすべてを格納し、次いでそのイオンを勢いよく放出するからである。全種のイオンのイオン電流は、放出期間中の強度が連続の場合よりも10倍高くなる(イオントラップにおいてイオンが失われないからである)。
【0272】
上記好適な実施の形態にしたがって、イオントラップ12が質量分解能10で1秒スキャンを行う間に質量又は質量電荷比依存又は選択的にイオントラップ12からイオンを放出するように構成される場合、イオントラップ12の出力を四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計14のスキャンとリンクされたスキャンにおいて同期させると、四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計14の感度は同率だけ増加する。質量又は質量電荷比依存又は選択的イオントラップ12の分解能が高ければ高いほど、連続な(トラップなしの)場合からの改善はより大きくなる。
【0273】
イオントラップ12が一定幅1Daの質量を有するイオンを出射、排出又は放出することが可能であるという制限においては、四重極は1000倍感度が高くなる。しかし、またその制限において、四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計14は、実質的に余分である。なぜなら、イオントラップ12が必要な分解能及び感度を提供しているからである。
【0274】
上記好適な実施の形態の有利な特徴は、比較的低い分解能の質量又は質量電荷比選択的イオントラップ12を使用して、イオントラップ12の下流に配置された比較的高い分解能のスキャン型四重極質量フィルタ/分析器の感度を著しく高めることができることである。
【0275】
図2は、本発明の実施の形態に係る多段イオンガイド又はイオントラップ20を示す。ここで、イオンガイド又はイオントラップ20は、第1の上流フラグメンテーション、熱化及びトラップ段22、及びその後段の第2の下流質量又は質量電荷比選択的イオン移送段24を含む。四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計26は、好ましくは、多段イオンガイド又はイオントラップ20の下流に設けられ又は配置される。
【0276】
好適なイオンガイド又はイオントラップ20の、上流の第1のフラグメンテーション、熱化及びトラップ段22、及び、下流の第2の質量選択的イオン移送段24を、以下にさらに詳細に説明する。第1のフラグメンテーション熱化及びトラップ段22は、好ましくは、間隔をあけて積み重ねられた(スタック)DC電極30内に間隔あけて積み重ねられた(スタック)RF電極28を含む。第1のフラグメンテーション、熱化及びイオントラップ段22及び第2の質量選択的イオン移送段24は、好ましくは、複数のセグメント化RF/DC電極ユニットを含む。各RF/DC電極ユニットは、好ましくは、同一平面に配置された2つの対向するRF電極28及び2つの対向するDC電極30を含む。イオンガイドは、好ましくは、第1のフラグメンテーション、熱化及びトラップ段22の上流に端板32を含む。
【0277】
第1のフラグメンテーション、熱化及びトラップ段22は、質量選択的排出が好ましくは第2の質量選択的イオン移送段24において生じる間に、好ましくは、適切なイオン供給段(図示せず)から受け取るイオンを蓄積するように構成される。質量選択的移送段24の動作を以下により詳細に説明する。
【0278】
図2は、また本発明の好適な実施の形態に係るイオンガイド又はイオントラップ20の長さに沿ったDCポテンシャルエネルギープロフィールを示す。図2は、有効軸方向ポテンシャルおける比較的大きな質量電荷比依存性リップル又は複数の周期的擬ポテンシャル井戸が好ましくは質量選択的段24の軸方向長さに沿って設けられ又は生成されることを示す。
【0279】
好ましくは、イオントラップの質量選択的移送段24からのイオンの質量又は質量電荷比選択的放出は、好ましくは下流に配置された四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計26のスキャンに同期するようにされる。この処理を図3を参照してより詳細に説明する。
【0280】
図3は、好ましくは連続イオンビーム源から受け取ったイオンをトラップ及び蓄積するイオントラップのイオントラップ段22を示す。イオントラップ段は、好ましくは、時間0から時間t1の期間にイオンをトラップ及び蓄積する。この期間は、好ましくは、また下流の四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計26のスキャン時間に対応する。
【0281】
時間0から時間t1の間、好ましくは、イオントラップの質量選択的段24から質量選択的に排出されたイオンの質量又は質量電荷比は、排出されたイオンの質量又は質量電荷比が好ましくは時間おけるその特定の場合において実質的に四重極質量フィルタ/分析器26の質量又は質量電荷比移送ウィンドウに対応するように変化させる。
【0282】
四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計26のスキャンサイクルが完了した後、時間t1から時間t2の抽出/充満フェーズが好ましくは生じる。時間t1から時間t2の期間に、イオンは、好ましくは、トラップ段22の下流に配置された質量選択的移送段24を満たすために上流のトラップ段22から排出されるように構成される。
【0283】
処理が完了した後、四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計26の別のスキャンサイクルが好ましくは質量選択的イオン移送段24からのイオンの質量又は質量電荷比選択的抽出と同期して行われる。
【0284】
好ましくは、質量選択的イオン移送段24は、比較的高い質量電荷比を有するイオンからイオンを質量選択的に排出し、比較的低い質量電荷比を有するイオンへ質量電荷比に関して下方にスキャンするように構成される。従って、いずれのサイクルにおいても、比較的高い質量電荷比を有するイオンは、比較的低い質量電荷比を有するイオンよりも前に移送される。
【0285】
しかし、他の好ましさの劣る実施の形態によれば、質量又は質量電荷比選択的イオントラップは、まず比較的低い質量又は質量電荷比を有するイオンを排出し、次いで質量又は質量電荷比に関して上方にスイープ又はスキャンして比較的高い質量又は質量電荷比を有するイオンを排出し得る。
【0286】
好ましくは質量又は質量電荷比スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計(例えば、四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器又は質量分析計又は磁場型質量フィルタ/分析器又は質量分析計)の上流に設けられた質量選択的イオントラップは、多くの異なる形態をとり得る。ここで特に好適なイオントラップを添付の図面を参照してより詳細に説明する。この好適なイオントラップは、イオンガイド領域を間に有するプレート電極対を含む。両方のプレート電極は、好ましくは、AC又はRF電圧源の同じ位相に接続される。複数のプレート電極対は、好ましくは、上記好適なイオントラップの長さに沿って配置される。好ましくは、軸方向に隣り合うプレート電極は、AC又はRF電圧源の反対の位相に接続される。
【0287】
複数のプレート電極に印加されるAC又はRF電圧は、半径方向の擬ポテンシャル井戸を生成する。この擬ポテンシャル井戸は、イオンをイオントラップ内に一半径方向に閉じ込めるよう作用する。
【0288】
好ましくは、イオンは、DC又は静電ポテンシャル井戸によって、好ましくは第1の半径方向に直交する第2の半径方向に閉じ込められる。
【0289】
DC又は静電ポテンシャル井戸は、好ましくは、DC電圧を上記好適なイオントラップの軸方向長さに沿って上及び下を走る複数のDC電極に印加することによって生成される。
【0290】
イオントラップが軸方向にセグメント化されていること、及び位相が反対のAC又はRF電圧がイオントラップの軸方向長さに沿って電極に印加されることにより、複数のさらなる擬ポテンシャル井戸が好ましくはイオントラップの軸に沿って生成される。さらなる軸方向擬ポテンシャル井戸は、好ましくは、上記好適なイオントラップの長さに沿って配置されるRF電極の周期性に対応する周期性を有する。
【0291】
軸方向擬ポテンシャル井戸の有効な高さ又は深さは、イオントラップの長さに沿って通過するイオンの質量電荷比に依存する。印加されるAC又はRF電圧の振幅を変化させることによって、軸方向擬ポテンシャル井戸の有効な振幅も変化させることができる。
【0292】
好適な実施の形態によれば、イオンは、多くの手段によってイオントラップの軸方向長さに沿って駆動又は推進され得る。イオンは、上記好適なイオントラップの長さに沿って一定のDC電圧勾配を維持することにより、イオントラップの長さに沿って推進され得る。あるいは、1つ以上の過渡DC電圧がイオントラップの電極に印加され得、過渡DC電圧の印加を使用して上記好適なイオントラップの長さに沿ってイオンを推進し得る。別の実施の形態によれば、イオンは、ガスフロー効果によってイオントラップの長さに沿って推進され得る。
【0293】
イオントラップにおける有効ポテンシャル(RF及び静電源の両方から)の一般形は、断熱近似を使用して導出され、以下のように与えられる。
【0294】
【数1】

【0295】
ここでR0は、イオンのゆっくりと変化する位置であり、qは、イオンの電荷であり、E0は、位置R0における角周波数(の振動電界の大きさであり、Mは、イオンの質量である。
【0296】
上記式は、古典的な静電ポテンシャルqΦsを含む。ここで、Φsは、任意の一般のシステムにおいて電極に印加されるDCポテンシャルによって生成される電圧である。
【0297】
振動電界によるポテンシャルが電荷の二乗に比例すると同時に静電ポテンシャルが電荷に比例することが分かる。上記好適な実施の形態による質量選択的イオントラップは、同程度の質量を有するが電荷の異なるイオンを分離するために、この関係を利用する。
【0298】
四重極、六重極、又は八重極における振動電界からの有効ポテンシャルの形態は、以下のようになる。
【0299】
【数2】

【0300】
リングセットについては、以下のようになる。
【0301】
【数3】

【0302】
上記イオンガイドは、ある程度の円筒対称性を有し、有効ポテンシャルに対して半径方向の依存性を有し、より高次の多重極及びリングセットに対してはポテンシャル井戸の側面がより急峻となる。
【0303】
上記好適な実施の形態によれば、RFプレートが直線状に積み重ねられたイオントラップが好ましくは設けられ、これにより、所望の質量又は質量電荷比及び/又はイオン移動度及び/又は荷電状態を有するイオンが選択的に排出又は放出されるようにすることができる。
【0304】
イオントラップは、好ましくは、長い直線状の形状を有し得、これにより、好ましくは、イオントラップの動作がその大きな電荷容量による空間電荷効果によって損なわれない(影響を受けない)ようにし得る。
【0305】
イオンガイド又はイオントラップ内の任意の点における有効ポテンシャルの形態についての解析解、すなわち、選択された一般形状に対する式(1)の解が所望される。そのような解は、RF及び静電要素別に解き、その2つの解を重ね合わせによって加え合わせることにより得られ得る。
【0306】
図4に形態及び表記法が示されたイオンガイド又はイオントラップに対して一般的な二次元解を見つけた。図4に示すイオンガイド又はイオントラップは、複数のRFロッドとともに1対の上部及び下部DC電極を含むRF並列ロッドセットを含む。その解は、以下のようになる。
【0307】
【数4】

【0308】
イオンガイド又はイオントラップは、y(又は垂直)方向の静電又はDCトラップ及びx方向の動重力又はRF有効ポテンシャル又は擬ポテンシャルトラップに関わる。
【0309】
ラプラス方程式の性質により、y方向にイオンをトラップする静電ポテンシャル井戸は、イオンをデバイスの中心からx方向に遠ざけるような鞍点である。動重力有効ポテンシャル井戸又は擬ポテンシャル井戸は、好ましくは、完全なx−yトラップが達成される場合にこの負の分散に打ち勝つのに十分であるように構成される。
【0310】
図5〜11は、本発明のそれぞれに若干異なる実施の形態に係るイオントラップを例示する。イオンをx−y次元(x-y dimension)にトラップすることに加えて、異なる手段を使用して複雑さが変化し得る軸方向電界を生成し得る。軸方向電界は、直線状の軸方向駆動電界又はより複雑な多項式電界を含み得る。好ましくは、軸方向電界を使用して上記好適なイオンガイド又はイオントラップの軸方向長さにそってイオンを推進させる。
【0311】
図5〜11に示す実施の形態には種々の共通の特徴があり、そのような共通の特徴は同様の参照符号を使用して示される。
【0312】
図5Aは、本発明の好適な実施の形態に係るイオントラップの中心を通るx−y断面を示す。好ましくは、イオントラップは、好ましくはDC電圧Vpに維持される上部及び下部DC専用トラップ電極22を含む。イオントラップは、好ましくは、また上部及び下部DC専用電極22の間に挟まれたRF電極20を含む。
【0313】
RF電極20は、好ましくは、対をなすように配置される。1対をなす2つのRF電極は、好ましくは、イオンガイド又はイオントラップ領域によって隔てられる。RF電極20の対向するプレート対は、好ましくは、RFの同じ位相に接続される。垂直方向に隣り合うプレート対は、好ましくは、RF電圧の反対の位相に接続される。これは、すべての例示の実施の形態について当てはまるが、簡単のために後の図面においては省略する。
【0314】
図5Bは、好ましくは上記好適なイオントラップの軸方向端に設けられる端板24を示す。端板24は、好ましくは、孔26を有する。孔26の中心を通って、イオンは、好ましくは、質量又は質量電荷比選択的に排出される。好ましさは劣るが、イオンは、質量電荷比ではなくイオン移動度に基づいて孔26を通って排出され得る。
【0315】
端板24と同様な入口プレートがまたイオン抽出デバイス又は上記好適なイオントラップの入口領域に設けられ得る。
【0316】
図6は、イオントラップが複数のセグメント化上部及び下部DC電極30を含む実施の形態を示す。この実施の形態によれば、所望の形状の軸方向DC電界又は電圧勾配が上記好適なイオントラップの長さに沿って維持され得る。軸方向DC又は静電界は、上部及び下部DC電極30のそれぞれに異なる電圧Vp1〜Vp8を印加することによって与えられ得る。同じDC電圧が、好ましくは、軸方向セグメントを含む上部及び下部電極に印加される。
【0317】
図7は、傾いた上部DC電極40及び下部DC電極42を設けることによって軸方向電界が生成され又は与えられる別の実施の形態を示す。
【0318】
図8は、軸方向セグメント化DC電極に加えて、複数の軸方向セグメント化RFプレート又は電極50が設けられる、さらなる実施の形態を示す。この実施の形態は、上流での格納を目的としてトラップ井戸を生成するという点でより大きなフレキシビリティが可能となる(さらなる説明は下記)。
【0319】
図9は、図5Aに示す実施の形態と類似の別のイオントラップを示す。但し、RFプレート又は電極22は、y方向ではなく、z方向又は軸方向にスタックされるところが異なる。従って、RF電極は、イオンの移動方向と直交する平面に設けられる。これは、図5Aを参照して図示及び説明された実施の形態とは対照的である。図5Aの実施の形態においては、RF電極は、概してイオンがイオントラップに沿って移送される方向に平行な平面に配置される。
【0320】
図10は、図7に示した実施の形態と類似の実施の形態を示す。但し、RFプレート又は電極72がz方向又は軸方向にスタックされるところが異なる。
【0321】
図11は、セグメント化RFプレート80がz方向又は軸方向にスタックされ、セグメント化DCプレート82がまたz方向又は軸方向にスタックされる実施の形態を示す。図11に示す実施の形態は、複数のセグメント化RF/DC電極ユニットを含む。ここで、各RF/DC電極ユニットは、2つの対向するRF電極及び2つの対向するDC電極が同一の平面に配置される構成を含むと考えられる。このように、多項式関数を有するDC電圧が上部及び下部DC電極82及び/又はRFプレート又は電極80に印加され、任意の所望の関数が生成され得る。
【0322】
上記イオン抽出デバイス又は好適なイオントラップは、好ましくは、長さが50〜250mm、幅が5〜50mm、抽出口径が0.5〜4mmであり得る。好ましくは、抽出口径は、約2mmである。
【0323】
図12は、図5Aに示すような好適なイオントラップのy方向(例えば、垂直方向)の典型的な静電又はDCポテンシャル井戸を示す。図13は、例えばRF電極間のx方向に沿った典型的な負の分散を示す。これらのプロットは、式(4)の第2項から計算された。
【0324】
図14は、式(4)の第1項から計算される、x軸に沿った有効ポテンシャル井戸の形状を示す。図15は、選択されたデバイス形状に対するx軸に沿った静電又はDCポテンシャル及び動重力又はRFポテンシャルによる合成ポテンシャルを示す。y軸近傍のデバイスの中心において、ポテンシャルが局所極大であることが分かる。なぜなら、イオンガイド又はイオントラップの中心におけるxでの静電又はDC鞍点からの分散力は、RF有効ポテンシャルからの動重力又はRFトラップ力によって生成されるものよりも大きい。RF有効ポテンシャルは、イオンガイド又はイオントラップの端に近づくにつれ、静電分散を超え、それにより、完全なx−yトラップがこれら2つの井戸において達成される。
【0325】
衝突ガスが存在する場合、イオンの運動エネルギーは、好ましくは減衰され、そのイオンは、好ましくは、上記好適なイオンガイド又はイオントラップの中心から離れたこれらのポテンシャル極小に局所的に閉じ込められる。
【0326】
式(4)の第1項を調べると、RF有効ポテンシャル井戸の大きさが電荷の二乗及び質量に依存することが分かる。静電又はDC電圧及び/又は印加されるRF電圧を注意して調節することにより、同様の質量を有するがzの異なるイオンを分離することができる。
【0327】
図16Aは、M=1000、z=2のイオンのポテンシャル極小の位置を示す。図16Bは、M=500、z=2のイオンのポテンシャル極小の位置を示す。図16Cは、M=250、z=2のイオンのポテンシャル極小の位置を示す。この3つの図面に対して上記好適なイオンガイド又はイオントラップにおいて同じ電圧設定を使用した。同様の質量を有するがzの異なるイオンの空間分離が達成できることが実証された。
【0328】
ここまでは、上記好適なイオンガイド又はイオントラップの二次元の振る舞いだけを説明し、さらなる段へのイオンの抽出は説明していない。上記好適なイオントラップは、性能が劣化する手前まで空間電荷容量を増加させるために種々の長さに構築され得る。
【0329】
図17に示すような一実施の形態において、端板140には、開口部142が設けられる。そして、開口部142を通って、イオンが好ましくは抽出される。通常動作において、端板140は、イオントラップのボディ内にイオンをトラップするようにバイアスされ得る。イオントラップの中心に局所抽出電界を生じさせるために、補助電極144が好ましくは端板140の後ろに設置される。図17は、また上部及び下部DC電極146の末端部分を示す。また、局所抽出電界を示す等ポテンシャル線を図17に示す。光軸から離れたポテンシャル井戸に位置するイオンは、好ましくは、デバイス内にトラップされたままとなるが、イオントラップの中心へ向かって位置するイオンは、好ましくはある動作モードにおいてイオントラップから抽出される。
【0330】
上記好適な実施の形態によれば、RF及び/又は静電DCポテンシャルを好ましくはスキャン又は変化させて、所望の質量電荷比及び/又は荷電状態zを有するイオンを光軸へ順次動かして、その後に端板孔を通って排出されるようにし得る。異なる種のイオンの空間分離は、好ましくは、イオントラップの性能が損なわれないように抽出処理の間維持される。
【0331】
上記好適なイオントラップからイオンを抽出する別の方法を図18に示す。この方法は、内側に向かって伸びた漏洩誘電チューブ150を有する端板140を準備するステップを含む。イオンは、内側に向かって伸びた漏洩誘電チューブ150から抽出され得る。漏洩誘電チューブ150は、好ましくは、開口部142に隣接するように配置される。トラップ電圧は、好ましくは端板140に印加され、好ましくはイオントラップ内にイオンを維持するように作用する。イオントラップを通るガスフロー及び/又はチューブ150における電界の印加は、好ましくは、イオンをチューブ150中へ及び上記好適なイオントラップの外へ駆動又は推進するように作用し得る。RF電界は、好ましくは、例えば後段の分光計段へイオンが出射する間又はイオンが好ましくは上記好適なイオントラップの下流に配置されたスキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計へ通過される間にチューブ150の中心へ向かうようにイオンを維持するように漏洩誘電体を通って維持され得る。
【0332】
上記好適なイオントラップの抽出要素は、質量分析計の下流要素(例えば、四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計)に対して最適なインタフェースをとるためにパルス化され得る。別の実施の形態において、イオン群は、上記好適なイオントラップの多くの所定の位置から抽出され得る。複数の開口部は、この目的で提供され得る。従って、イオン群は、イオントラップの中心などの固定抽出点へ移動されることなくその場(インサイチュ)で抽出され得る。
【0333】
上記好適なイオントラップは、二次元の一般解に伴う現象を利用する。本発明のさらなる実施の形態は、三次元の一般解に伴う現象を利用する。図19A及び19Bに形態及び表記法を示すイオンガイド又はイオントラップに対して三次元の一般解を見つけた。イオンガイド又はイオントラップは、複数のRFプレート212、複数の上部及び下部DC電極214、及び1対の端板216を含む。図19A及び19Bに示すイオンガイド又はイオントラップに対して利用された座標系は、図4を参照して図示及び説明したイオンガイド又はイオントラップに対する座標系と異なる。
【0334】
立方形状に対する解によれば、得られるポテンシャルは、やはり以下のように個々の成分の重ね合わせである。
【0335】
y=−cにおける注入プレートVent:
【0336】
【数5】

【0337】
y=cにおける抽出プレートVext:
【0338】
【数6】

【0339】
z=+/−dにおけるプレート(両プレートとも同じ電圧VP):
【0340】
【数7】

【0341】
ΦRFは、電極がz軸に沿って一定であり、y軸に沿って交番し、x=+/−aに位置するように定義される:
【0342】
【数8】

【0343】
このRF電界からの有効ポテンシャルは、上記式から導出されるが、得られる項は、長すぎるのでここに含められない。図19A及び19Bに示す形状に対して以下のパラメータを使用して計算された有効ポテンシャルの多くの例を以下の図に示す。z軸−RFプレート間距離aは、好ましくは6mmである。RFプレート幅bは、好ましくは10mmである。イオントラップのy方向の半分の長さdは、好ましくは20mmである。x軸からDCプレートまでのプレート数nは、好ましくは5である。ピーク電圧は、好ましくはV0である。挿入プレート電圧Ventは、好ましくは1Vである。抽出プレート電圧Vextは、特に断らない限り、好ましくは−1Vである。トラッププレート電圧Vpは、好ましくは1Vである。以下の例は、有効ポテンシャルの質量又は質量電荷比依存性及び上記好適なイオントラップの選択方向へのイオンのトラップ及び抽出能力を例示する。
【0344】
図20A〜図20Dは、本発明のイオン抽出デバイスの一実施の形態を示す。イオン抽出デバイスの動作は、上記の三次元解に基づく。図20Aは、イオントラップの中心を通るx−z断面であり、上部及び下部DC静電トラップ電極220及びRFプレート電極222を示す。RF電極は、好ましくは1対の電極を形成する。複数対のRF電極は、好ましくは図20Aに示すような2つのRF電極スタック224a、224bを形成する。一方のスタックにおける各RF電極は、好ましくはx方向にイオン抽出又はイオンガイド領域を介して位置する他方のスタックにおいて、一致又は対応する電極を有する。図20Aは、そのようなx方向に間隔をあけて離された1対のRF電極222a、222bを示す。
【0345】
電極222a、222bなどのx方向に間隔をあけて離されて対向するRF電極対は、好ましくは、RF電極222に印加されるAC又はRF電圧の同じ位相に接続される。これに対して、印加RFポテンシャルの反対の位相が好ましくは同じスタックの隣り合う電極に接続される。
【0346】
上部及び下部DC電極220は、好ましくは軸方向にセグメント化され、好ましくはイオントラップの長さに沿って軸方向に伸びる1対のDC電極スタック225a、225bを形成する。
【0347】
図20Aに示すイオンガイド又はイオントラップは、複数のセグメント化RF/DC電極ユニットを含み、各RF/DC電極ユニットは、2つの対向するRF電極222並びに2つの対向する上部及び下部DC電極224が同一平面に配置される構成を含むことが分かる。多項式関数を有するDC電圧は、DC専用電極224及びRFプレート又は電極222の両方に印加され、任意の所望の関数を生成し得る。
【0348】
イオンガイド又はイオントラップは、好ましくは、第1の端板226及び第2の端板228をさらに含む。図20Cに示すような第1の端板226は、好ましくは、イオンがイオンガイド又はイオントラップに供給されることを可能にする開口部230が内部に形成される。開口部230は、正方形又は円などの任意の都合のよい形状であり得る。第2の端板228は、好ましくは開口部232を有し、そこを通ってイオンがイオンガイド又はイオントラップから抽出され得る。開口部232は、図20Dに示すようなスロットなどの任意の適切な形状であり得る。イオンがデバイスから出射する開口部に適切な他の構成を以下に説明する。
【0349】
図21は、図20のRFプレート電極222が長軸方向に並列した2つのスタック224a、224bに配置された様子を示す平面図である。図21は、AC又はRFポテンシャル(式Θrf=Vocos(wt)で定義される)がRF電極222に印加される様子を示す。特に、図21は、各RF電極222に印加されるようなAC又はRFポテンシャルの位相を示す。x方向に間隔をあけて離されたRF電極222の対は、好ましくは、AC又はRFポテンシャルの同じ位相に接続される。これに対して、電極のスタックにおいて上記好適なイオンガイド又はイオントラップのy軸又は軸方向長さに沿って隣り合う電極は、好ましくは、AC又はRFポテンシャルの反対の位相に接続される。
【0350】
任意の与えられた電極に印加されるAC又はRFポテンシャルの位相は、時間の関数として変化し、従って、各電極222に印加されるRFポテンシャルを説明するために図21において利用される正及び負の記号は、時間におけるスナップショットを表すことが分かる。AC又はRFポテンシャルが軸方向にセグメント化されたRF電極222に印加されるこのようなやり方の効果は、y軸(すなわち、光軸)に沿った有効ポテンシャルにおいて空間周期性を生成することである。軸方向有効ポテンシャルにおける周期性は、図21において点線で示される。
【0351】
図22は、同じ位相に維持され、間隔をあけて配置されたRF電極222の対の間のx方向(すなわち、半径方向)における有効RFポテンシャル井戸の典型的な形状を示す。図22は、間隔をあけて対をなす同じ位相のRF電極222のいずれか一方にイオンが近づくにつれ、有効半径方向のトラップポテンシャルが急峻に上昇することを示す。
【0352】
図23は、電圧Vpを上部及び下部DC静電トラップ電極220に印加することによって生成されるz方向(すなわち、垂直半径方向)の典型的なDC静電ポテンシャル井戸を示す。ポテンシャルは、またイオンが上部又は下部DC電極220のいずれか一方に近づくにつれて非常に著しく上昇する。
【0353】
図24は、イオン抽出デバイス又はイオントラップのy方向(すなわち、軸方向長さ)に沿った有効ポテンシャルを示す。有効ポテンシャルがy軸に沿ったリップルを示すことが分かる。y軸に沿ったAC又はRFポテンシャルにおける周期性によって生じるリップルの大きさは、イオン抽出デバイス又はイオントラップにおけるイオンの質量電荷比に依存する。y軸に沿った有効ポテンシャルのリップルの大きさは、RF電極222又は上部及び下部DC電極220のいずれか一方へのイオンの近傍度に依存しないことが分かった。
【0354】
図25A〜図25Dは、多くの異なる場合においてy方向(すなわち、軸方向)の質量依存性有効ポテンシャルを示す。図25A及び25Bは、質量2000の一価イオンに対する有効ポテンシャルを示す。図25Aは、イオン抽出デバイスの中心(すなわち、x=0及びz=0)に沿った有効ポテンシャルを図19A〜19Bに示した座標系を使用して示す。図25Bは、RF電極222における有効ポテンシャルを示す。予想されるとおり、RF電極222におけるポテンシャルは、デバイスの中心におけるポテンシャルよりも高い。しかし、両方の場合において、リップルの大きさは、0.3Vである(すなわち、リップルの大きさは、イオンガイド又はイオントラップ内の位置について変化しない)。
【0355】
同様に、図25C及び25Dは、質量200の一価イオンに対するy方向の(すなわち、光軸に沿った)有効ポテンシャルを示す。図25Cは、デバイスの中心における有効ポテンシャルを示し、図25Dは、RF電極222における有効ポテンシャルを示す。やはり、RF電極222におけるポテンシャルは、デバイスの中心よりも高いが、観測されるリップルの大きさは、両方の場合において同じである。この場合のリップルの大きさは、ここでは3Vである。このことは、リップルの大きさがデバイスにおけるイオンの質量電荷比に依存しないことを例示する。
【0356】
図26〜図32は、図20Aを参照して図示及び説明されたようなイオン抽出デバイス又はイオントラップを通る多くの平面における種々の二次元有効ポテンシャルを示す。上記の有効軸方向ポテンシャルにおけるリップルは、質量依存性ポテンシャル障壁を表す。この現象は、好ましくは上記好適な実施の形態にしたがって利用され、フラグメント又は親イオンをトラップし、かつ、好ましくは質量選択的にイオンを放出する。
【0357】
本発明の好適な実施の形態において、軸方向電界がさらにイオントラップの長さに沿って印加され得る。例えば、適切なポテンシャルが図20Aに示すイオントラップの端板226、228に印加され得る。このさらなる軸方向電界によって、好ましくは比較的高い質量電荷比を有するイオンがデバイスの長さに沿って移動し、他方、比較的低い質量電荷比を有するイオンは、好ましくはy方向のより深いポテンシャル井戸に遭遇するので(図25A〜図25Dを参照)、好ましくはデバイスのボディ内にトラップされたままとなる。有効ポテンシャルを適切に変化させることによって、選択された質量電荷比を有するイオンは、イオントラップから選択的に抽出され得る。
【0358】
図33A〜図33Bは、どのようにイオンの質量選択的抽出がイオンガイド又はイオントラップの軸方向長さに沿った軸方向ドリフト電界の印加を介して達成され得るかを示す。図33Aは、ドリフト電界がRFポテンシャルによって生じるポテンシャル極大に打ち勝つほど十分に大きい場合にイオンが受ける有効ポテンシャルを示す。この場合、有効ポテンシャルにおいて軸方向エネルギー障壁はなく、ドリフト電界は、デバイスの長さに沿ってイオンが移送できる程度に十分である。図33Bは、印加されるドリフト電界がRFポテンシャルによって生成されるポテンシャル極大を低減するが無くしはしない場合における有効ポテンシャルを示す。この場合に、イオンは、有効ポテンシャルにおけるポテンシャル極大の後ろにトラップされることになる。印加されるRFポテンシャルは、高から低質量電荷比のイオンを選択的に移送するためにスイープされ得る。別の実施の形態において、印加されるドリフト電界の大きさは、イオンを選択的に移送するようにスイープされ得る。
【0359】
図34は、複数の軸方向に隣り合うRF電極222が印加される振動AC又はRFポテンシャルの共通位相に接続される別の実施の形態を示す。RF電極222の各スタック224a、224bにおいて、3つの隣り合うRF電極360のグループは、好ましくは印加されるRFポテンシャルの共通位相に接続される。従って、軸方向に沿って、印加されるRFポテンシャルの位相は、二つおいて三つめの電極ごとに変化する。実施の形態の効果は、与えられた1セットのRF電極に対して、印加されるRFポテンシャルにおける周期性の間隔が増加されること、すなわち、軸方向擬ポテンシャル井戸の周期性が好ましくは増加されることである。
【0360】
図34に示す例において、それぞれ3つの隣り合うRF電極からなるグループは、印加されるRFポテンシャルの共通位相に接続される。しかし、共通のRFポテンシャルに接続される1グループの隣り合う電極における電極数は、3個に限らない。例えば、2個、4個、5個、6個、7個、8個又は8個よりも多くの軸方向に隣り合うRF電極がRF電圧の共通位相にまとめて接続され得る他の実施の形態が考えられる。好適な実施の形態によれば、6つの軸方向に隣り合うRF電極がRF電圧の共通位相に接続され得る。
【0361】
スタックにおいて軸方向に隣り合うRF電極が図21に示すように印加されるRFポテンシャルの互いに対向するプレートに接続される場合、軸方向ポテンシャルにおいてより大きなリップルを生成するために、一実施の形態によれば比較的厚いRF電極が使用され得る。
【0362】
図21及び図34の両方を参照して図示及び説明したアプローチの組み合わせを使用することが可能である。例えば、印加されるRFポテンシャルの周期性を増加させるために、図34などに示すように、複数の軸方向に隣り合うRF電極を印加される振動RFポテンシャルの共通位相に接続することが可能である。x方向のさらなる閉じ込めを提供するためのさらなるイオントラップ振動AC又はRFポテンシャルがまた図21に示すやり方で隣り合うRF電極に印加され得る。すなわち、隣り合うRF電極に印加されるイオントラップ振動RFポテンシャルの位相は、反対である。
【0363】
尚、イオントラップ振動RFポテンシャルを用いる目的は、印加されるRFポテンシャルにおいて周期性を生成することではない。すなわち、周期的井戸は、接続された複数の隣り合うRF電極によってすでに生成されている。むしろ、イオントラップ振動RFポテンシャルは、主要な長軸方向のデバイス軸に沿った有効RFポテンシャルに著しくは影響を与えずに、デバイスの側面への強力なポテンシャル障壁を設けることによって高い質量電荷比のイオンを閉じ込めるように作用する。イオントラップ振動RFポテンシャルがなければ、高い質量電荷比のイオンは、デバイスの電極に衝突する。
【0364】
イオントラップ振動RFポテンシャルは、好ましくは、隣り合うRF電極のグループに印加されるRFポテンシャルとは位相が90°ずれて印加され得る。これは、イオントラップを向上し、RF電極のピーク電圧を低減する。一実施の形態によれば、隣り合うRF電極のグループに印加されるRFポテンシャルは、300Vであり得、イオントラップ振動RFポテンシャルは、85Vであり得る。両方のポテンシャルは、周波数が1.5MHzであり得る。ラプラス方程式の性質により、イオントラップ振動RFポテンシャルは、イオントラップの有効ポテンシャルに対して加法的であるという有利な特徴がある。
【0365】
図35は、好ましくはイオンガイド又はイオントラップの出口に設けられた好適な端板370を示す。端板370は、好ましくはスロット状の開口部372を有し、そこを通ってイオンが好ましくはイオントラップから抽出される。DC電極によって生成された静電又はDCポテンシャル及びRF有効ポテンシャルの重ね合わせにより、x軸(すなわち、デバイスをわたって、間隔をあけられたRF電極対の間)に沿った有効ポテンシャルは、イオンガイド又はイオントラップの中心軸から離れた位置にあるポテンシャル極小を呈示し得る。ポテンシャル極小の位置は、有効ポテンシャルにおけるイオンの質量電荷比に依存する。
【0366】
図36Aは、質量電荷比が500のイオンに対するx方向の有効ポテンシャルを示す。図36Bは、質量電荷比がより低い50のイオンに対する有効ポテンシャルを示す。図36Bから分かるように、質量電荷比が50のイオンに対する有効ポテンシャルの極小は、イオントラップの中心に位置し、他方、質量電荷比が500のイオンに対しては、イオンガイド又はイオントラップの中心から軸方向にずれた2つのポテンシャル極小が観測される。図35に示すようなスロット状の開口部372を設けることによって、x軸に沿った分布がどのような分布であろうともイオンをイオントラップから移送することができる。
【0367】
図37A〜図37Eは、他の実施の形態に係る端板を示す。図37Aは、複数の出口開口部を規定するグリッド又はメッシュ392を有する端板390を示す。図37Bは、垂直にスロット状の開口部394を有する端板390を示す。図37Cは、円形状の開口部396を有する端板390を示す。図37Dは、垂直及び水平スロットから形成された十字形状の開口部398を有する端板390を示す。図37Eは、複数の垂直にスロット状の開口部400を有する端板390を示す。図17及び18に図示及び説明した実施の形態に関して上記した方法は、イオンを抽出するために使用され得る。
【0368】
一実施の形態によれば、DC電極として作用する1対の間隔をあけたDCプレート又は電極が提供され得る。DCプレート又は電極は、好ましくは軸方向にイオンガイド又はイオントラップに沿って伸びている。あるいは、イオントラップに沿った軸方向電界が生成されることを可能にするDC電極として作用する、1対の間隔をあけられた傾斜DCプレートが提供され得る。
【0369】
イオントラップは、好ましくは長さが50〜250mmであり、幅が5〜50mmであり、かつ一好適な実施の形態によれば、各スタックにおいて140個のRF電極(すなわち、合計280個のRF電極)を含み得る。
【0370】
図38は、イオンガイド又はイオントラップが第1のフラグメンテーション、熱化及びトラップ段420、その後段の質量選択的移送段422を含む実施の形態を示す。質量選択的移送段422の後段は、トラップ−飛行時間段424である。光ビーム成形器段426は、イオンガイド又はイオントラップの出口領域及びトラップ−飛行時間段424の下流に設けられ得る。
【0371】
質量選択的移送段422は、好ましくは上記のようなイオントラップを含む。イオンガイド又はイオントラップ全体のうちの段420、422、424、426のそれぞれは、また好ましくはRF電極428からなる間隔をあけたスタック及び対応の上部及び下部DC電極430からなる間隔をあけたスタックを含み得る。端板432がまた好ましくは設けられる。
【0372】
最初のフラグメンテーション、熱化及びトラップ段420は、好ましくは有効軸方向ポテンシャルにおけるリップルが無視できるものでしかないように動作され得る。フラグメンテーション、熱化及びトラップ段は、好ましくは比較的緩やかな駆動軸方向電界がその段にわたって維持され得る。一実施の形態によれば、イオンは、ある動作モードにおいてこの段420内で好ましくは蓄積され、かつ必要に応じてフラグメント化される。次いで、親又はフラグメントイオン群は、好ましくは質量選択的移送段422へ移送される。好ましくは、フラグメンテーション、熱化及びトラップ段420は、質量選択的排出が好ましくは下流の質量選択的移送段422において生じる間に、入射イオンを蓄積するように構成される。
【0373】
質量選択的移送段422は、好ましくは概して上記のやり方で動作する。比較的大きな質量依存性リップルが好ましくは有効軸方向ポテンシャルにおいて与えられる。
【0374】
質量選択的移送段422の下流に設けられたトラップ−飛行時間段424は、好ましくは軸方向有効ポテンシャルにおけるリップルが無視できる。トラップ−飛行時間段424は、好ましくはイオンを蓄積し、イオンパケットを下流に配置されたビーム成形器段426へ送る。トラップ−飛行時間段424は、好ましくは比較的緩やかな駆動電界がこの段424の軸方向長さにわたって維持される。
【0375】
イオンガイド又はイオントラップからのイオンの抽出は、好ましくは図39に示すような可変質量依存性遅延によってプッシャとの同期がとられる。その他の段とは対照的に、ビーム成形器段426は、好ましくはRF専用電極段を含む。従って、ポテンシャルは、好ましくはこの段426におけるいずれのDC電極にも印加されない。従って、DC電極は、ビーム成形器段426に設けなくてもよい。ビーム成形器段426は、好ましくは軸方向有効ポテンシャルにおいてリップルが無視できる。
【0376】
図40に示すように、好ましくは、ビーム成形器段426は、好ましくは内部アスペクト比が変化する複数の異なるプレート440を含み得る。内部アスペクト比は、好ましくは後段の分析段に導入されるようにイオンビームの断面プロフィールを用意及び/又は改変し得る。その後段の分析段は、好ましくは四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器又は質量分析計などの質量分析計段を含む。従って、一実施の形態によれば、ビーム成形器段426は、イオンビームの断面プロフィールが下流四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器又は質量分析計14に受け取られるのに最適となるように、イオンビームの断面プロフィールを成形し得る。
【0377】
一実施の形態によれば、上記好適なイオンガイド又はイオントラップの電極は、プリント回路基板(PCB)上に実装され得る。電極のPCB上への実装は、イオントラップがどのように配線されるかに関してフレキシビリティを与える。都合がよいことに、PCBの孔は、所望のイオン−光性能を得るのに十分に正確であることが分かった。
【0378】
図41は、概して450で示した好適なイオントラップの端部の示す図である。このイオントラップは、複数のRF電極452並びに上部及び下部DC電極454を含む。RF電極452は、好ましくはRFプレート電極を含み、好ましくはPCB456、458上に直接実装される。1スタックのRF電極が好ましくは第1のPCB456上に実装され、第2のスタックのRF電極が好ましくは第2のPCB458上に実装される。好ましくは、上部及び下部DC電極454は、好ましくは端部コネクタ462を介してPCB456、458上に実装される部材460上に実装される。
【0379】
間隔のあいた上部及び下部DC電極454並びにRF電極452によって規定される通路又はイオンガイド領域は、好ましくはイオン抽出経路を有するイオン抽出容積を表すか、又は含む。この例において、イオン抽出容積は、上部及び下部DC電極454並びにRF電極452の間隔によって規定される矩形面を有する直方体である。その間隔は、好ましくはそれぞれ14mm及び8mmであり、そのアスペクト比は1.75である。他の次元及び/又はアスペクト比も考えられる。しかし、なお、立方体イオン抽出容積(アスペクト比が1.0)とは異なり、直方体イオン抽出容積を設けることは、特に所望の軸方向有効ポテンシャルの生成について有利である。
【0380】
図41に示すイオントラップは、好ましくは上部プレート463及び下部プレート464をさらに含む。上部及び下部プレート463、464は、金属から形成され得、PCB456、458に対向するようにガスケット466を用いて配置され得、ねじ268などの適切な固定手段を用いて所定位置に固定され得る。ガス入口470が上部プレート462に設けられ得る。好ましくは、RF電極452は、好ましくはPCB456、458を通って突き出たタブ452aを有し、これにより簡便な配線が可能となる。同様に、好ましくは、上部及び下部DC電極454は、好ましくは部材460を通って突き出たタブ454aを有し、これによりDC電極の簡便な配線が可能となる。
【0381】
各DC電極454は、独立した部材460に取り付けられ得、各DC電極454又は部材460ユニットは、互いに間隔をあけて配置される。このように、開口部は、好ましくは上部DC電極454又は部材460ユニットの間に設けられ、ガスがガス入口470からセルに入ることを可能にする。適切に成形された入口及び出口開口部を含む入口及び出口プレートアセンブリは、好ましくはガスケットを使用してPCB456、458並びに上部及び下部プレート462、464の端部に固定される。
【0382】
図42は、一実施の形態にしたがって使用され得る中空又は開口RFプレート480、482の可能な設計を示す。中空又は開口プレート電極によって、容量が低減し、従ってRF電源にかかる負荷が低減する。形状の異なる隣り合うプレートを提供することが可能である。プレートは、化学的にエッチングされ得、必要に応じて金メッキされ得る。図41に例示した構築アプローチは、簡便であり、費用対効果が高く、かつ上記好適なイオンガイド又はイオントラップの製造を簡単にすることができる。イオンガイド又はイオントラップは、はんだ付けによって構築され得る。この場合、プレートを所定の位置に保持するための構築ジグを使用することが必要となる。
【0383】
好適なイオンガイド又はイオントラップを質量分析計のさらなる段に結合する場合は、より分析的なユーティリティが提供され得る。上記好適な実施の形態によれば、イオントラップは、好ましくは下流の四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計に結合される。また、好適なイオンガイド又はイオントラップが直交加速飛行時間質量分析器に結合される場合に、デューティサイクルの向上が実現され得ることが考えられる。
【0384】
上記好適なイオンガイド又はイオントラップは、直交加速飛行時間質量分析器に結合される場合、すべてのイオン(例えば、親及びフラグメントイオン)に対して100%デューティサイクルが可能となる。一実施の形態において、所望のイオンは、例えばRFポテンシャルを変化させることによって、補助抽出電極によって、又は端板によって、パルス化されてイオンガイド又はイオントラップを出射され得る。直交加速飛行時間質量分析器のプッシャ電極のパルス化は、好ましくはイオンガイド又はイオントラップからのイオンの質量電荷比パケットの排出と一致するようにタイミングがとられ得る。抽出−パルスサイクルは、すべてのイオンがイオンガイド又はイオントラップから抽出されるまで繰り返され得、次いでイオンガイド又はイオントラップは、次の所望の質量電荷比値のイオンを排出するように調節され得る。抽出されたイオンの簡易操作及び単一エネルギー性は、従来の3D四重極イオントラップ(QIT)構成に比べて著しい利点を提供する。100%デューティサイクルは、イオン抽出デバイスがイオンを100%の効率で蓄積し、イオン抽出デバイスの上流にある効率が100%のイオントラップ領域によって隔離され、同時にイオンを順次飛行時間質量分析器へ排出することに依存する。
【0385】
一実施の形態において、上流のイオントラップ領域が、イオンが下流段に入ることを防止するように適切にバイアスされた別の好適なイオン抽出デバイスを含むこと考えられる。
【0386】
また、直交加速飛行時間質量分析器を用いた好適なイオン抽出デバイスの動作は、特にアナログ−デジタル変換器([ADC」)獲得電子機器に結合される場合に、信号対ノイズ比を向上させることができることが分かった。ADC変換器は、高イオン電流に対して、時間−デジタル変換器([TDC」)に比べて著しいダイナミック範囲を有するという利点がある。しかし、イオン電流が低い場合、そのノイズ特性が低いために特に長い積分期間にわたっては弱い信号が不明瞭になる。信号対ノイズの改善は、二つの概念、すなわちイオン信号をより短い時間パケットに集中させること、及びより小さな離散質量範囲に集中させることに依拠する。
【0387】
図43は、抽出パルス幅「W」及びトラップ時間「T」がn個の離散かつ等しい質量範囲に分けられた蓄積イオントラップ170の安定した実施(すなわち一定なデバイスへのイオン信号)を示す。イオントラップが100%の効率であり、かつあらゆる質量のイオンを等しく出射するならば、いずれの特定の質量に対しても、その抽出フェーズの間にイオンパケットの強度は、等価な連続実験よりもn(W+T)/W倍強い(かつW/n(W+T)の率でより短い時間で出射される)。信号対ノイズは、信号がない間はADCがデータを獲得する必要がないので劇的に改善される。ADCに設定される獲得の質量範囲は、その時点での上記好適な実施の形態のイオントラップによって出射されるイオンに関係する。典型的には、上記好適なイオントラップは、対象の全質量範囲を覆うために10個の独立した離散質量範囲にわたって出射するよう設定され得る。ここで、データは、イオントラップによって出射されるイオンに対応する質量チャネルに記録されるだけである。
【0388】
イオントラップ対抽出比は、イオントラップ内に含まれた全電荷が(W+T)/Wの比で増加するので、イオントラップの空間電荷容量によってのみ制限される。
【0389】
選択荷電状態を選択することの有用性は、これまでに理解された。また、それはプロテオミックス型のアプリケーションにおいて信号対ノイズ比を改善するために重要である。例えば、タンデムイオン移動度分光計は、四重極質量フィルタを用いてタンデムにスキャンされ、選択荷電状態を選択し得る。また、好適なイオン抽出デバイスの出力は、移動度セパレータとして動作する場合、四重極質量フィルタ又は軸方向飛行時間(又は他の質量フィルタ/分析器)などの質量分析手段によってフィルタリングされ、所望の荷電状態の完全な選択を与えるので、例えば、プロテオミックス実験において信号対ノイズ比を改善し得る。本発明のイオン抽出デバイスの移動度分離デバイスとしての動作原理は、有効ポテンシャルの大きさがガス圧力及びイオン断面とともに変化することをさらに考慮して考えられるべきである。Tolmachev (A.V.Tolmachev et al:Nuclear Instruments and Methods、Physics Research B 124 (1997) 112−119)は、剛体球モデルを利用して、有効ポテンシャルの大きさがガス圧力及びイオン断面とともにどのように変化するかを予測する。乗法的減衰率γが有効ポテンシャルに組み込まれるべきであり、以下によって与えられる。
【0390】
【数9】

【0391】
ここで、
【0392】
【数10】

【0393】
ここで、ωは、RF駆動電界の角周波数、mは、背景ガス分子の質量、Mは、イオンの質量、nは、バッファガスの数密度、vは、平均マックスウェルガス速度、σは、イオンの衝突断面である。
【0394】
このモデルによれば、ガス圧力が増加するにつれ、有効ポテンシャル場が減衰することが予測される。特に、イオンが1RFサイクルの期間に残留ガス分子と多数回衝突するならば、有効ポテンシャルは低減されることが読み取れる。イオンの移動度は、以下の関係式によってその衝突断面と関係付けられる(Anal.Chem.1998、70、2236−2242)。
【0395】
【数11】

【0396】
ここで、Tは、絶対温度、Pは、mbar単位の圧力、kはボルツマン定数である。
【0397】
次いで、イオン抽出デバイス内のガス圧力は、項γが1よりも著しく小さくなり(低い圧力においてγは、すべてのイオンに対して1に等しく、かつ有効ポテンシャルの減衰がない)、ポテンシャル井戸の位置が上記の有効ポテンシャルの変化によって移動するにつれて、異なる断面又はイオン移動度のイオンが異なる位置を占めるようにされ得るように調節される。従って、イオンのデバイスからの移動度選択的抽出は、ガス圧力、又はさらに好ましくは印加されるRF電圧もしくはDCトラップ電圧のいずれかを上記の質量選択的排出と同じやり方で変化させることによって達成され得る。典型的には、イオン移動度セパレータとしてデバイスを使用するためのガス圧力は、0.1〜10mbarであるが、これに限定されない。
【0398】
上記好適なイオンガイド又はイオントラップは、衝突セルとして動作され得る。そうするために、イオンガイド又はイオントラップは、好ましくはイオンが所望のイオンエネルギーでイオンガイド又はイオントラップ中へ加速されるようなポテンシャルに保持される。イオンは、好ましくはフラグメンテーションするのに十分なエネルギーでイオンガイド又はイオントラップ中に存在するガスに衝突するように構成される。イオンは、好ましくはイオンガイド又はイオントラップの長さにわたって移動する際に概して熱化される。イオンは、好ましくはイオンガイド又はイオントラップの出口に到達する時間までに、低いエネルギーで注入された、未フラグメント化イオンが分離され得るのと同じやり方で質量電荷比にしたがって分離され得る。
【0399】
一好適な実施の形態にかかる質量分析計の例を図44に示す。イオンは、好ましくはエレクトロスプレー又はMALDI源などのイオン源180において生成される。次いで、イオンは、好適なイオントラップ182を通って従来の四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計184へ渡される。次いで、イオンは、好適なイオントラップ186を通過する。最後に、次いで、イオンは、質量分析器段188に移送される。質量分析器段188は、四重極質量分析器、飛行時間質量、フーリエ変換質量分析計、扇形磁場質量分析器、イオン−トラップ質量分析器、又は別の形態の質量分析計を含み得る。
【0400】
上記好適な実施の形態によれば、上記好適な質量分析計は、好ましくは充満−隔離−抽出サイクルで動作される。イオンは、好ましくは好適なイオントラップ186の空間電荷容量を好ましくは超えないような期間に好適なイオントラップ186に入ることが可能にされる。次いで、好適なイオントラップ186は、好ましくはいずれのさらなるイオンも入らないように隔離される。最後に、イオンは、好ましくは質量分析計のさらなる下流段へ順次抽出される。イオン抽出デバイス又はイオントラップ186を隔離して人為結果を防止するのが望ましい。例えば、デバイスが質量電荷比の低いイオン(MLと表記)を排出することによって開始し、漸次質量電荷比がより高いイオン(MHと表記)を排出するように進む場合、その時に好適なイオントラップ186に到達するMLのいずれのイオンもまた移送される。例えば、上記好適なイオントラップが移動度の高いイオンを排出することによって開始し、次いで移動度がより低いイオンを排出するようにスキャンされる場合に、同様の効果が生じ得る。そのような人為結果は、イオン抽出デバイス又は好適なイオントラップ186が飛行時間又は他の質量分析計段とインタフェースがとられる場合に最適には検出されないか、又は簡単なイオン検出器に単純にインタフェースがとられる場合は混乱を起こす。
【0401】
図44は、また好ましくは好適なイオン抽出デバイス又はイオントラップを含む上流のイオンガイド182が設けられ得ることを示す。エレクトロスプレーイオン化の場合、エレクトロスプレーの大気イオン化処理とのインタフェースをとった結果、差動排気型の上流チャンバは、四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器又は質量分析計の最適動作に必要な圧力よりも高い圧力に必ずなり得る。好適なイオントラップ182がそのような高い圧力で動作される場合、イオン抽出デバイス又はイオントラップは、効率のよい移動度セパレータとして動作され得る。従って、一実施の形態において、イオントラップ182は、例えば多価ペプチドに対する信号対ノイズを改善するために、四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器又は質量分析計184の上流に設けられるイオン移動度選択的イオントラップを含み得る。下流のイオントラップ186からの質量選択的排出は、後段の飛行時間又は他の質量分析器段188に対して100%までのデューティサイクルを与えるように生じ得る。
【0402】
すべてが同じ質量電荷比(Mc)を有する[nMcn+という形態のクラスターイオンを分離する実験例では、第1の四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計を使用して質量電荷比がMcのイオンを選択し、次いでそのイオンを好適なイオン移動度選択的イオントラップへ渡し、次いでこの好適なイオン移動度選択的イオントラップは、イオンをイオン移動度にしたがって順次排出し得る。最高の移動度(かつより高い荷電状態)のイオンは、より低い荷電状態のイオンよりも前にイオン抽出デバイス又はイオントラップの中心に閉じ込められ、かつ最初に抽出される。このような実験は、従来の質量分析ではこれらの種の区別ができなかった非共有タンパク質凝集研究において有用である。
【0403】
計算を行って、図2及び3に例示したように質量選択的イオン移送段に結合された四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計についてのデューティサイクルがどれだけ改善したかを決定した。デューティサイクルの改善は、図45に示めされ、四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計が質量選択的イオン移送段との結合なしに動作される場合と関係がある。改善は、質量選択的イオン移送段を用いた四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計のデューティサイクルと質量選択的イオン移送段を用いない四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計のデューティサイクルとの比として提示される。デューティサイクルの非常に大きな改善が広いイオン質量範囲にわたって見られることが分かる。比較的低いイオン質量又は質量電荷比において改善はさらに顕著である。物理的に、これは、イオン質量範囲にわたって多少の一定の質量分解能(上記定義)を有する質量又は質量電荷比選択的イオン移送段の性質による。これから、比較的低い質量Mにおいては、イオンが質量Mと異なり得、かつなおも質量Mのイオンと区別され得る質量単位(ΔM)の最小数がMの高い場合よりも小さいことが導かれる。従って、より大きなイオン群が任意の与えられた時点で四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計に導入されることは、四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計によってイオン質量が移送されることに対応する。言い換えると、質量選択的イオン移送段からのイオン排出と四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計の質量スキャンのより有効な同期が達成される。
【0404】
イオン移送段は、好ましくはイオンの質量選択的排出が質量又は質量電荷比の高いイオンから質量又は質量電荷比の低いイオンへと行われるように構成される。しかし、好ましさは劣るが、質量又は質量電荷比選択的イオントラップは、最初に質量又は質量電荷比が比較的低いイオンを排出し、質量又は質量電荷比が比較的高いイオンの排出へ向かって上昇するようにスイープし得る。
【0405】
例えば、図19Aに図示及び説明した上記好適な実施の形態にかかるイオントラップを詳細に説明したが、好ましさが劣る実施の形態によれば、イオントラップは、他の形態をとり得る。
【0406】
例えば、好ましさが劣る一実施の形態によれば、イオントラップ12は、複数の電極を含み得る。ここで、1つ以上の実質的に静的で不均一な電界がイオントラップ12の長さに沿って生成される。二次又は非二次ポテンシャル井戸が好ましくはイオントラップ12の長さに沿って生成される。時間的に変化する均一な軸方向電界は、好ましくは好適なイオントラップ12の長さに沿って重ね合わされる。時間的に変化する均一な軸方向電界は、好ましくはイオントラップ12内に位置するイオンのうちの大多数のイオンの共鳴又は基本振動周波数よりも大きな周波数で変化させる。イオンは、好ましくは時間的に変化する均一な軸方向電界の振動の振幅及び/又は周波数を変化させることによって、共鳴によらずにイオントラップ12から排出される。
【0407】
また、イオントラップの軸方向長さに沿ってイオンを推進させるために、1つ以上の過渡DC電圧がイオントラップを構成する軸方向にセグメント化された電極に印加され得る実施の形態が考えられる。
【0408】
好適な実施の形態によれば、イオントラップは、使用時にイオンが移送される複数の環状電極又は開口部を有する電極を含み得る。イオンガイド内にイオンを閉じ込め、かつ周期的擬ポテンシャル井戸をイオントラップの長さに沿って生成させるポテンシャル場を生成するために、DC及びAC/RF電圧の組み合わせが好ましくは環状電極又は開口部を有する電極に印加され得る。さらに、印加される電圧は、またイオントラップの長さに沿ってイオンを推進させるように作用するさらなる静的又は過渡的な軸方向電界を生成され得る。
【0409】
さらなる実施の形態によれば、イオントラップは、3D四重極又はポールイオントラップ、2D又は直線四重極イオントラップ、又は磁気又はペニングイオントラップを含み得る。このようなイオントラップは、当該分野で周知であるのでそのさらなる詳細は省略する。
【0410】
本発明を好適な実施の形態を参照して記載したが、添付の特許請求の範囲に記載の発明の範囲を逸脱せずに種々の変更が形態及び詳細に対してなされ得ることが当業者には理解される。
【図面の簡単な説明】
【0411】
【図1】図1は、本発明の好適な実施の形態を例示する模式図を示す。
【図2】図2は、本発明の一実施の形態を示す。
【図3】図3は、図2に示す実施の形態の動作を例示する。
【図4】図4は、一実施の形態に係るDC電極及びRF並列ロッドセットイオントラップの断面図を示す。
【図5】図5Aは、本発明の一実施の形態に係るイオン抽出デバイスのxy平面における断面図を示し、図5Bは、端板の端面図を示す。
【図6】図6は、好適なイオントラップの側面図を示す。
【図7】図7は、別の好適なイオン抽出デバイスの側面図を示す。
【図8】図8は、さらなる好適なイオン抽出デバイスの側面図を示す。
【図9】図9は、イオン抽出デバイスの一実施の形態の斜視側面図を示す。
【図10】図10は、イオン抽出デバイスの一実施の形態の斜視側面図を示す。
【図11】図11は、イオン抽出デバイスの一実施の形態の斜視側面図を示す。
【図12】図12は、図2に示すようなイオン抽出デバイスを使用して生成されるy軸に沿った典型的な静電ポテンシャル井戸を示す。
【図13】図13は、図5Aに示すようなデバイスを使用して生成されるx軸に沿った典型的な負の分散プロットを示す。
【図14】図14は、図5Aに示すようなデバイスを使用して生成されるx軸に沿った有効ポテンシャル井戸の形状を示す。
【図15】図15は、図5Aに示すようなデバイスを使用して生成されるx軸に沿った静電及び動重力ポテンシャルの組み合わせによる合成ポテンシャルを示す。
【図16】図16Aは、M=1000及びz=2を有するイオンに対するポテンシャル極小の位置を、図16Bは、M=500及びz=2を有するイオンに対するポテンシャル極小の位置を、図16Cは、M=250及びz=2を有するイオンに対するポテンシャル極小の位置を示す。
【図17】図17は、好適なイオン抽出デバイスの出口領域の断面図を示す。
【図18】図18は、別の実施の形態に係るイオン抽出デバイスの出口領域の断面図を示す。
【図19】図19Aは、DC電極/RF電極構成の断面図を、図19Bは、一実施の形態に係る直方体デバイスの斜視図を示す。
【図20】図20Aは、xz平面における好適なイオントラップの断面図を、図20Bは、側面図を、図20Cは、後端面図を、図20Dは、好適なイオン抽出デバイスの前端面図を示す。
【図21】図21は、イオン抽出デバイスの一実施の形態に係るRF電極の平面図であり、RFポテンシャルの電極への印加を示す。
【図22】図22は、x方向におけるRF有効ポテンシャル井戸を示す。
【図23】図23は、z方向におけるDC静電ポテンシャル井戸を示す。
【図24】図24は、y方向又は軸方向における有効ポテンシャルを示す。
【図25】図25Aは、デバイスの中心での質量電荷比=2000のイオンについてのy方向又は軸方向における好適なイオン抽出デバイス内の有効ポテンシャルを、図25Bは、RF電極での質量電荷比=2000のイオンについての有効ポテンシャルを、図25Cは、デバイスの中心での質量電荷比=200のイオンについての有効ポテンシャルを、図25Dは、RF電極での質量電荷比=200のイオンについての有効ポテンシャルを示す。
【図26】図26は、V0=200V及び質量電荷比=2000の場合のxy平面(z=0)におけるポテンシャルを示す。
【図27】図27は、V0=200V及び質量電荷比=50の場合のxy平面(z=0)におけるポテンシャルを示す。
【図28】図28は、V0=50V及び質量電荷比=50の場合のxy平面(z=0)におけるポテンシャルを示す。
【図29】図29は、V0=50V及び質量電荷比=2000の場合のxy平面(z=0)におけるポテンシャルを示す。
【図30】図30は、V0=50V及び質量電荷比=50の場合のxy平面(x=0)におけるポテンシャルを示す。
【図31】図31は、V0=50V及び質量電荷比=50の場合のyz平面(x=0)におけるポテンシャルを示す。
【図32】図32は、V0=50V、質量電荷比=200、Vent=Vext=1Vの場合のyz平面(x=0)ポテンシャルを示す。
【図33】図33Aは、比較的高い質量電荷比のイオンについてドリフト電界を印加した場合のy方向の有効ポテンシャルを、図33Bは、比較的低い質量電荷比のイオンについてドリフト電界を印加した場合のy方向の有効ポテンシャルを示す。
【図34】図34は、本発明のイオン抽出デバイスのRF電極の平面図であり、電極グループのRFポテンシャルの共通位相への接続を示す。
【図35】図35は、出口プレートを示す。
【図36】図36Aは、質量電荷比=500のイオンについてx方向における有効ポテンシャルを、図36Bは、質量電荷比=50のイオンについてx方向における有効ポテンシャルを示す。
【図37】図37は、上記好適なイオントラップの端板としての使用に適切な種々の電極構造を示す。
【図38】図38は、好適な実施の形態に係る多段イオントラップ及び関連のDCポテンシャルエネルギー図を示す。
【図39】図39は、好適なイオントラップについてのトラップ−TOF段及びパルス化抽出方式を示す。
【図40】図40は、好適なイオントラップのビーム成形器部を示す。
【図41】図41は、好適な実施の形態に係る、部分的に構築されたイオントラップの端面図を示す。
【図42】図42は、本発明の一実施の形態に係る中空のRFプレートを示す。
【図43】図43は、イオンの連続ビームを受け取る好適なイオントラップを示す。
【図44】図44は、四重極質量フィルタ/分析器が2つの好適なイオントラップの間に設けられ、かつ、さらなる質量分析器(飛行時間質量分析器など)が設けられる好適な構成を示す。
【図45】図45は、本発明の好適な実施の形態のイオントラップに結合されたスキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計についてのイオン質量の関数としてのデューティサイクルの、同じ質量フィルタ/分析器又は質量分析計に上流イオントラップが結合されない場合と比較した場合の改善を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を含む、質量又は質量電荷比選択的イオントラップと、
前記質量又は質量電荷比選択的イオントラップの下流に配置された第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計と、
制御手段であって、
(i)イオンがその質量又は質量電荷比にしたがって前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるようにし、
(ii)前記イオントラップからのイオンの選択的排出又は放出に実質的に同期するように前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計をスキャンする、
ように構成及び適合される制御手段と
を含む質量分析計。
【請求項2】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、質量又は質量電荷比スキャン型質量フィルタ/分析器又は質量分析計を含む、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、四重極質量フィルタ/分析器又は質量分析計を含む、請求項1又は2に記載の質量分析計。
【請求項4】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、四重極ロッドセット質量フィルタ/分析器又は質量分析計を含む、請求項1、2又は3に記載の質量分析計。
【請求項5】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、磁場型質量フィルタ/分析器又は質量分析計を含む、請求項1又は2に記載の質量分析計。
【請求項6】
前記イオントラップは、(i)<1、(ii)1〜5、(iii)5〜10、(iv)10〜15、(v)15〜20、(vi)20〜25、(vii)25〜30、(viii)30〜35、(ix)35〜40、(x)40〜45、(xi)45〜50、(xii)50〜100、(xiii)100〜150、(xiv)150〜200、(xv)200〜250、(xvi)250〜300、(xvii)300〜350、(xviii)350〜400、(xix)400〜450、(xx)450〜500、(xxi)500〜600、(xxii)600〜700、(xxiii)700〜800、(xxiv)800〜900、(xxv)900〜1000、及び(xxvi)>1000からなる群から選択される質量又は質量電荷比分解能を有する、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項7】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、(i)<100、(ii)100〜200、(iii)200〜300、(iv)300〜400、(v)400〜500、(vi)500〜600、(vii)600〜700、(viii)700〜800、(ix)800〜900、(x)900〜1000、(xi)1000〜1500、(xii)1500〜2000、(xiii)2000〜2500、(xiv)2500〜3000、及び(xv)>3000からなる群から選択される質量又は質量電荷比分解能を有する、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項8】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計の質量又は質量電荷比分解能は、前記イオントラップの質量又は質量電荷比分解能よりも大きい、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項9】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計の質量又は質量電荷比分解能は、前記イオントラップの質量又は質量電荷比分解能よりも(i)1〜2、(ii)2〜3、(iii)3〜4、(iv)4〜5、(v)5〜6、(vi)6〜7、(vii)7〜8、(viii)8〜9、(ix)9〜10、(x)10〜11、(xi)11〜12、(xii)12〜13、(xiii)13〜14、(xiv)14〜15、(xv)15〜16、(xvi)16〜17、(xvii)17〜18、(xviii)18〜19、(xix)19〜20、(xx)20〜50、(xxi)50〜100、(xxii)100〜150、(xxiii)150〜200、(xxiv)200〜250、及び(xxv)>250からなる群から選択される倍数因子だけ大きい、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項10】
前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計は、前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるイオンを受け取るように構成される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項11】
前記制御手段は、イオンをその質量又は質量電荷比にしたがって前記イオントラップから順次又は漸次排出又は放出させるように構成及び適合される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項12】
前記制御手段は、前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計を実質的に連続的及び/又は直線的及び/又は漸次的及び/又は規則的にスキャンするように構成及び適合される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項13】
前記制御手段は、前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計を実質的に非連続的及び/又は段階的及び/又は非直線的及び/又は非漸次的及び/又は不規則的にスキャンするように構成及び適合される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項14】
前記制御手段は、前記イオントラップからのイオンの選択的排出又は放出を前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計の質量又は質量電荷比移送ウィンドウのスキャンと同期させるように構成及び適合される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項15】
前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるイオンのうちの少なくともいくつかは、前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計によって前方へ移送される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項16】
前記イオントラップ及び/又は前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計の上流及び/又は下流に配置された1つ以上のイオン検出器をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項17】
前記イオントラップ及び/又は前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計の下流及び/又は上流に配置されたさらなる質量分析器をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項18】
前記さらなる質量分析器は、(i)フーリエ変換(「FT」)質量分析器、(ii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(iii)飛行時間(「TOF」)質量分析器、(iv)直交加速式飛行時間(「oaTOF」)質量分析器、(v)軸方向加速式飛行時間質量分析器、(vi)磁場型質量分析計、(vii)ポール又は三次元四重極質量分析器、(viii)二次元又は線形四重極質量分析器、(ix)ペニングトラップ質量分析器、(x)イオントラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換オービトラップ、(xii)静電フーリエ変換質量分析計、及び(xiii)四重極質量分析器からなる群から選択される、請求項17に記載の質量分析計。
【請求項19】
前記イオントラップは、動作モードにおいて、第1の範囲の質量電荷比を有するイオンを放出し、同時に前記第1の範囲から外れた質量電荷比を有するイオンを前記イオントラップ内に実質的に保持するように構成される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項20】
前記第1の範囲の質量電荷比は、(i)<100、(ii)100〜200、(iii)200〜300、(iv)300〜400、(v)400〜500、(vi)500〜600、(vii)600〜700、(viii)700〜800、(ix)800〜900、(x)900〜1000、(xi)1000〜1100、(xii)1100〜1200、(xiii)1200〜1300、(xiv)1300〜1400、(xv)1400〜1500、(xvi)1500〜1600、(xvii)1600〜1700、(xviii)1700〜1800、(xix)1800〜1900、(xx)1900〜2000、及び(xxi)>2000からなる群から選択される1つ以上の範囲内にある、請求項19に記載の質量分析計。
【請求項21】
前記イオントラップは、イオンガイド手段を含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項22】
前記イオントラップは、RF電極セットを含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項23】
前記RF電極セットは、少なくとも1対のRF電極スタックを含む、請求項22に記載の質量分析計。
【請求項24】
各RF電極スタック対のスタックは、ガスセルを挟んで間隔があいており、各スタックのRF電極は、イオン抽出経路に沿ってスタックされる、請求項23に記載の質量分析計。
【請求項25】
前記RF電極セットは、イオン抽出経路に沿って配置されるRF電極のサブセットを含む、請求項22、23又は24に記載の質量分析計。
【請求項26】
1つ以上のポテンシャル障壁が、前記RF電極のサブセットに印加される振動RFポテンシャルにおける周期性によって前記イオントラップの軸に沿って生成される、請求項25に記載の質量分析計。
【請求項27】
共通位相の振動RFポテンシャルを1サブセットのRF電極のうちの複数の隣り合うRF電極に印加して前記サブセットうちのRF電極のグループ間に振動RFポテンシャルの周期性を確立するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項28】
(i)一般的にイオン抽出経路をわたる少なくとも1つの軸に沿って動重力(pondermotive)イオントラップポテンシャルを生成し、(ii)イオン抽出経路に沿って、少なくも部分的に、有効ポテンシャルを生成するように振動RFポテンシャルを前記電極に印加するための手段をさらに含み、前記有効ポテンシャルは、少なくとも1つのポテンシャル障壁を含み、前記ポテンシャル障壁の大きさは、一供給のイオンにおけるイオンの質量電荷比に依存し、かつ、前記イオン抽出経路をわたる軸に沿ったイオンの位置に実質的に依存せず、前記少なくとも1つのポテンシャル障壁は、前記電極に印加される振動RFポテンシャルにおける周期性によって生じる、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項29】
AC又はRF電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成及び適合されるAC又はRF電圧手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項30】
前記AC又はRF電圧手段は、少なくともいくつかのイオンを前記イオントラップ内に半径方向に閉じ込めるために、前記AC又はRF電圧を前記複数の電極の少なくともいくつかに印加するように構成及び適合される、請求項29に記載の質量分析計。
【請求項31】
前記AC又はRF電圧手段は、AC又はRF電圧を前記複数の電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に印加するように構成及び適合される、請求項29又は30に記載の質量分析計。
【請求項32】
前記AC又はRF電圧手段は、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、及び(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークからなる群から選択される振幅を有するAC又はRF電圧を供給するように構成及び適合される、請求項29、30又は31に記載の質量分析計。
【請求項33】
前記AC又はRF電圧手段は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、及び(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するAC又はRF電圧を供給するように構成及び適合される、請求項29〜32のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項34】
前記イオントラップは、イオンを前記イオントラップ内に半径方向に閉じ込める手段を含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項35】
前記イオントラップは、動重力又はRFイオントラップポテンシャルを生成するための手段を含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項36】
前記動重力又はRFイオントラップポテンシャルは、前記イオントラップを通るガス及び/又はイオンのフローの方向を横切るか又はそれに直交する方向に生成される、請求項35に記載の質量分析計。
【請求項37】
前記動重力又はRFイオントラップポテンシャルは、静電又はDCイオントラップポテンシャルの方向に直交する方向に生成される、請求項35又は36に記載の質量分析計。
【請求項38】
前記動重力又はRFイオントラップポテンシャルは、前記イオントラップの長さに沿って印加される軸方向電界の方向に直交する方向に生成される、請求項35、36又は37に記載の質量分析計。
【請求項39】
前記イオントラップは、周期性を有する複数の軸方向擬ポテンシャル井戸を生成する手段を含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項40】
前記軸方向擬ポテンシャル井戸の振幅は、イオンの質量電荷比に依存する、請求項39に記載の質量分析計。
【請求項41】
静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項42】
前記静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸は、前記イオントラップを通るガス及び/又はイオンのフローの方向を横切るか又はそれに直交する方向に生成される、請求項41に記載の質量分析計。
【請求項43】
前記静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸は、動重力又はRFポテンシャルが生成される方向に直交する方向に生成される、請求項41又は42に記載の質量分析計。
【請求項44】
前記静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸は、前記イオントラップの長さに沿って印加される軸方向電界の方向に直交する方向に生成される、請求項41、42又は43に記載の質量分析計。
【請求項45】
前記静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段は、少なくとも1対の電極を含み、前記少なくとも1対の電極うちの電極は、ガスセルを挟んで間隔をあけられる、請求項41〜44のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項46】
前記静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を生成するための手段は、ガスセルに沿って配置される一連の電極対を含む、請求項41〜45のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項47】
イオンが前記イオントラップの抽出領域から抽出されることを防止する有効ポテンシャルを与えるためのさらなるポテンシャルを生成するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項48】
前記イオントラップは、前記イオンが前記抽出領域から抽出されることを防止する有効ポテンシャルの特性が、少なくとも部分的に、動重力又はRFイオントラップポテンシャルの生成によって生じるように構成される、請求項47に記載の質量分析計。
【請求項49】
前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%に沿って軸方向電界を印加するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項50】
前記イオントラップは、イオン抽出経路に沿ってドリフトポテンシャルを印加するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項51】
イオンを選択的に抽出するために前記ドリフトポテンシャルの大きさを変化させるための手段をさらに含む、請求項50に記載の質量分析計。
【請求項52】
前記イオントラップは、ガス体での一供給のイオンが使用時に位置するガスセルを含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項53】
前記ガスセルの少なくとも一部は、ガスのフローに同伴するイオンが輸送され得るガスフロー導管であって、前記導管がガスフローの方向を有する、ガスフロー導管を含む、請求項52に記載の質量分析計。
【請求項54】
前記ガスフローを提供するためのガスフロー手段をさらに含む、請求項53に記載の質量分析計。
【請求項55】
前記イオントラップは、イオン抽出経路を規定するイオン抽出容積を含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項56】
前記イオン抽出容積は、幅、高さ及び長さを有する直方体を含む、請求項55に記載の質量分析計。
【請求項57】
前記直方体の幅の高さに対する比は、(i)≧1、(ii)≧1.1、(iii)≧1.2、(iv)≧1.3、(v)≧1.4、(vi)≧1.5、(vii)≧1.6、(viii)≧1.7、(ix)≧1.8、(x)≧1.9及び(xi)≧2.0からなる群から選択される、請求項56に記載の質量分析計。
【請求項58】
所定の質量電荷比又はイオン移動度を有するイオンを前記イオントラップの抽出領域から選択的に抽出するためのイオン抽出手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項59】
前記イオントラップ内の所定の空間位置に位置するイオン群を空間選択的に抽出するためのイオン抽出手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項60】
前記イオン抽出手段は、ガスセルにわたって配置され、内部に開口部が形成されるイオン障壁を含む、請求項58又は59に記載の質量分析計。
【請求項61】
前記開口部を通してイオンを抽出するために抽出電界を印加するための手段をさらに含む、請求項60に記載の質量分析計。
【請求項62】
前記イオントラップは、前記開口部と連絡し、漏洩誘電体から形成され、内部に向かって伸びるチューブをさらに含む、請求項60又は61に記載の質量分析計。
【請求項63】
前記イオントラップの軸方向長さに沿って生成される複数の軸方向擬ポテンシャル井戸を変化又はスキャンするための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項64】
所定の質量電荷比又はイオン移動度のイオンが前記イオントラップから選択的に抽出されるように有効ポテンシャルを変化させるための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項65】
前記有効ポテンシャルを変化させるための手段は、イオンを選択的に抽出するように振動RFポテンシャルを変化させる、請求項64に記載の質量分析計。
【請求項66】
前記有効ポテンシャルを変化させるための手段は、選択された1群のイオンを所定の空間位置に移動させるために前記イオントラップ内の動重力又はRFイオントラップポテンシャルを変化させる、請求項64又は65に記載の質量分析計。
【請求項67】
前記有効ポテンシャルを変化させるための手段は、選択された1群のイオンを所定の空間位置に移動させるために前記イオントラップ内の静電又はDCイオントラップポテンシャル井戸を変化させる、請求項64、65又は66に記載の質量分析計。
【請求項68】
選択された1群のイオンを所定の空間位置に移動させるためにガス体の圧力を変化させるための手段をさらに含む、請求項64〜67のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項69】
前記イオントラップは、イオンがキャリアガスの層流に同伴し、電界が前記層流を横切って印加される障壁領域内にトラップされるデバイスを含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項70】
前記イオントラップは、第1の動作モードにおいて1つ以上のDC、実又は静的ポテンシャル井戸又は実質的に静的で不均一な電界を前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って維持するように構成及び適合される第1の手段を含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項71】
前記第1の手段は、少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は>10個のポテンシャル井戸を前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って維持するように構成及び適合される、請求項70に記載の質量分析計。
【請求項72】
前記第1の手段は、1つ以上の実質的に二次のポテンシャル井戸を前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って維持するように構成及び適合される、請求項70又は71に記載の質量分析計。
【請求項73】
前記第1の手段は、1つ以上の実質的に非二次のポテンシャル井戸を前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って維持するように構成及び適合される、請求項70又は71に記載の質量分析計。
【請求項74】
前記第1の手段は、1つ以上のポテンシャル井戸を前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に沿って維持するように構成及び適合される、請求項70〜73のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項75】
前記第1の手段は、(i)<10V、(ii)10〜20V、(iii)20〜30V、(iv)30〜40V、(v)40〜50V、(vi)50〜60V、(vii)60〜70V、(viii)70〜80V、(ix)80〜90V、(x)90〜100V、及び(xi)>100Vからなる群から選択される深さを有する1つ以上のポテンシャル井戸を維持するように構成及び適合される、請求項70〜74のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項76】
前記第1の手段は、前記第1の動作モードにおいて、前記イオントラップの軸方向長さに沿って第1の位置に位置する極小を有する1つ以上のポテンシャル井戸を維持するように構成及び適合される、請求項70〜75のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項77】
前記イオントラップは、イオン入口及びイオン出口を有し、前記第1の位置は、前記イオン入口から下流へ距離Lのところ、及び/又は、前記イオン出口から上流へ距離Lのところに位置し、ここで、Lは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、及び(xi)>200mmからなる群から選択される、請求項76に記載の質量分析計。
【請求項78】
前記第1の手段は、1つ以上のDC電圧を前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に供給するための1つ以上のDC電圧源を含む、請求項70〜77のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項79】
前記第1の手段は、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って変化又は増加する電界強度を有する電界を与えるように構成及び適合される、請求項70〜78のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項80】
前記第1の手段は、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に沿って変化又は増加する電界強度を有する電界を与えるように構成及び適合される、請求項70〜79のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項81】
前記イオントラップは、前記第1の動作モードにおいて、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界を維持するように構成及び適合される第2の手段を含む、請求項70〜80のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項82】
前記第2の手段は、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に沿って前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界を維持するように構成及び適合される、請求項81に記載の質量分析計。
【請求項83】
前記第2の手段は、1つ以上のDC電圧を前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に供給するための1つ以上のDC電圧源を含む、請求項81又は82に記載の質量分析計。
【請求項84】
前記第2の手段は、前記第1の動作モードにおいて、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って、いずれの時点においても、実質的に一定の電界強度を有する軸方向電界を生成するように構成及び適合される、請求項81、82又は83に記載の質量分析計。
【請求項85】
前記第2の手段は、前記第1の動作モードにおいて、前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%に沿って、いずれの時点においても、実質的に一定の電界強度を有する軸方向電界を生成するように構成及び適合される、請求項81〜84のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項86】
前記第2の手段は、前記第1の動作モードにおいて、時間とともに変化する電界強度を有する軸方向電界を生成するように構成及び適合される、請求項81〜85のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項87】
前記第2の手段は、前記第1の動作モードにおいて、時間とともに少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%だけ変化する電界強度を有する軸方向電界を生成するように構成及び適合される、請求項81〜86のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項88】
前記第2の手段は、前記第1の動作モードにおいて、時間とともに方向が変化する軸方向電界を生成するように構成及び適合される、請求項81〜87のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項89】
前記第2の手段は、時間とともに変化するオフセットを有する軸方向電界を生成するように構成及び適合される、請求項81〜88のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項90】
前記第2の手段は、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界を第1の周波数f1を用いて、又はそれにおいて変化させるように構成及び適合され、ここで、f1は、(i)<5kHz、(ii)5〜10kHz、(iii)10〜15kHz、(iv)15〜20kHz、(v)20〜25kHz、(vi)25〜30kHz、(vii)30〜35kHz、(viii)35〜40kHz、(ix)40〜45kHz、(x)45〜50kHz、(xi)50〜55kHz、(xii)55〜60kHz、(xiii)60〜65kHz、(xiv)65〜70kHz、(xv)70〜75kHz、(xvi)75〜80kHz、(xvii)80〜85kHz、(xviii)85〜90kHz、(xix)90〜95kHz、(xx)95〜100kHz、及び(xxi)>100kHzからなる群から選択される、請求項81〜89のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項91】
前記第1の周波数f1は、前記イオントラップ内のイオントラップ領域内に位置するイオンのうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の共鳴又は基本調波周波数(resonance or fundamental harmonic frequency)よりも大きい、請求項90に記載の質量分析計。
【請求項92】
前記第1の周波数f1は、少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、110%、120%、130%、140%、150%、160%、170%、180%、190%、200%、250%、300%、350%、400%、450%又は500%だけ、前記イオントラップ内のイオントラップ領域内に位置するイオンのうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%の共鳴又は基本振動周波数よりも大きい、請求項90又は91に記載の質量分析計。
【請求項93】
前記イオントラップは、動作モードにおいて、少なくともいくつかのイオンを前記イオントラップのトラップ領域から実質的に共鳴によらずに排出し、同時に他のイオンは、前記イオントラップの前記トラップ領域内に実質的にトラップされたままとなるように構成されるように構成及び適合される排出手段を含む、請求項70〜92のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項94】
前記排出手段は、時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振幅を変更及び/又は変化及び/又はスキャンするように構成及び適合される、請求項93に記載の質量分析計。
【請求項95】
前記排出手段は、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振幅を増加させるように構成及び適合される、請求項94に記載の質量分析計。
【請求項96】
前記排出手段は、時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振幅を実質的に連続的及び/又は直線的及び/又は漸次的及び/又は規則的に増加させるように構成及び適合される、請求項94又は95に記載の質量分析計。
【請求項97】
前記排出手段は、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振幅を実質的に非連続的及び/又は非直線的及び/又は非漸次的及び/又は不規則的に増加させる構成及び適合される、請求項94又は95に記載の質量分析計。
【請求項98】
前記排出手段は、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振動又は変調の周波数を変更及び/又は変化及び/又はスキャンするように構成及び適合される、請求項93〜97のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項99】
前記排出手段は、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振動又は変調の周波数を低減するように構成及び適合される、請求項98に記載の質量分析計。
【請求項100】
前記排出手段は、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振動又は変調の周波数を実質的に連続的及び/又は直線的及び/又は漸次的及び/又は規則的に低減するように構成及び適合される、請求項98又は99に記載の質量分析計。
【請求項101】
前記排出手段は、前記時間的に変化する実質的に均一な軸方向電界の振動又は変調の周波数を実質的に非連続的及び/又は非直線的及び/又は非漸次的及び/又は不規則的に低減するように構成及び適合される、請求項98又は99に記載の質量分析計。
【請求項102】
イオンを前記イオントラップから質量又は質量電荷比選択的に排出する(mass or mass to charge ratio selectively eject)ように構成及び適合される排出手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項103】
前記排出手段は、前記第1の動作モードにおいて、第1の質量電荷比カットオフよりも低い質量電荷比を有する実質的にすべてのイオンが前記イオントラップのイオントラップ領域から排出されるように構成及び適合される、請求項93〜102のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項104】
前記排出手段は、前記第1の動作モードにおいて、第1の質量電荷比カットオフよりも高い質量電荷比を有する実質的にすべてのイオンを前記イオントラップのイオントラップ領域内に維持又は保持もしくは閉じ込められるように構成及び適合される、請求項93〜103のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項105】
前記第1の質量電荷比カットオフは、(i)<100、(ii)100〜200、(iii)200〜300、(iv)300〜400、(v)400〜500、(vi)500〜600、(vii)600〜700、(viii)700〜800、(ix)800〜900、(x)900〜1000、(xi)1000〜1100、(xii)1100〜1200、(xiii)1200〜1300、(xiv)1300〜1400、(xv)1400〜1500、(xvi)1500〜1600、(xvii)1600〜1700、(xviii)1700〜1800、(xix)1800〜1900、(xx)1900〜2000、及び(xxi)>2000からなる群から選択される範囲内にある、請求項103又は104に記載の質量分析計。
【請求項106】
前記排出手段は、前記第1の質量電荷比カットオフを増加させるように構成及び適合される、請求項103、104又は105に記載の質量分析計。
【請求項107】
前記排出手段は、前記第1の質量電荷比カットオフを実質的に連続的及び/又は直線的及び/又は漸次的及び/又は規則的に増加させるように構成及び適合される、請求項106に記載の質量分析計。
【請求項108】
前記排出手段は、前記第1の質量電荷比カットオフを実質的に非連続的及び/又は非直線的及び/又は非漸次的及び/又は不規則的に増加させるように構成及び適合される、請求項106に記載の質量分析計。
【請求項109】
前記排出手段は、前記第1の動作モードにおいて、イオンを前記イオントラップから実質的に軸方向に排出するように構成及び適合される、請求項93〜108のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項110】
イオンは、前記イオントラップ内のイオントラップ領域内にトラップされるか、又は軸方向に閉じ込められるように構成され、前記イオントラップ領域は、長さlを有し、ここで、lは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、及び(xi)>200mmからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項111】
前記イオントラップは、直線イオントラップを含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項112】
前記複数の電極は、(i)およそ又は実質的に円形、(ii)およそ又は実質的に双曲線形、(iii)およそ又は実質的にアーチ形又は部分円形、及び(iv)およそ又は実質的に長方形又は正方形からなる群から選択される断面を有する、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項113】
前記イオントラップは、多重極ロッドセットイオントラップを含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項114】
前記イオントラップは、四重極、六重極、八重極又はより高次の多重極ロッドセットを含む、請求項113に記載の質量分析計。
【請求項115】
前記多重極ロッドセットイオントラップが内接する半径は、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、及び(xi)>10mmからなる群から選択される、請求項113又は114に記載の質量分析計。
【請求項116】
前記イオントラップは、軸方向にセグメント化されるか、又は複数の軸方向セグメントを含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項117】
前記イオントラップは、x個の軸方向セグメントを含み、ここで、xは、(i)<10、(ii)10〜20、(iii)20〜30、(iv)30〜40、(v)40〜50、(vi)50〜60、(vii)60〜70、(viii)70〜80、(ix)80〜90、(x)90〜100、及び(xi)>100からなる群から選択される、請求項116に記載の質量分析計。
【請求項118】
各軸方向セグメントは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は>20個の電極を含む、請求項116又は117に記載の質量分析計。
【請求項119】
前記軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%の軸方向長さは、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、及び(xi)>10mmからなる群から選択される、請求項116、117又は118に記載の質量分析計。
【請求項120】
前記軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%間の間隔は、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、及び(xi)>10mmからなる群から選択される、請求項116〜119のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項121】
前記イオントラップは、複数の非導電性、絶縁性又はセラミックのロッド、突起又はデバイスを含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項122】
前記イオントラップは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は>20個のロッド、突起又はデバイスを含む、請求項121に記載の質量分析計。
【請求項123】
前記複数の非導電性、絶縁性又はセラミックのロッド、突起又はデバイスは、前記ロッド、突起又はデバイスの周り、隣、上又は近傍に配置される1つ以上の抵抗性又は導電性被膜、層、電極、フィルム又は表面をさらに含む、請求項121又は122に記載の質量分析計。
【請求項124】
前記イオントラップは、開口部を有する複数の電極を含み、ここで、イオンは、使用時に、前記開口部を通って移送される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項125】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%は、実質的に同じ大きさ又は実質的に同じ面積の開口部を有する、請求項124に記載の質量分析計。
【請求項126】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%は、大きさ又は面積が前記イオントラップの軸に沿った方向に漸次大きく及び/又は小さくなる開口部を有する、請求項124に記載の質量分析計。
【請求項127】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%又は100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm;及び(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径又は大きさの開口部を有する、請求項124、125又は126に記載の質量分析計。
【請求項128】
前記イオントラップは、複数のプレート又はメッシュ電極を含み、前記電極のうちの少なくともいくつかは、イオンが使用時に走行する概して平面内に構成されるか、又はイオンが使用時に走行する平面に概して直交するように構成される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項129】
前記イオントラップは、複数のプレート又はメッシュ電極を含み、前記電極のうちの少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又は100%は、イオンが使用時に走行する概して平面内に構成されるか、又はイオンが使用時に走行する平面に概して直交するように構成される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項130】
前記イオントラップは、少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個又は>20個のプレート又はメッシュ電極を含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項131】
前記プレート又はメッシュ電極は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、及び(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さを有する、請求項128、129又は130のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項132】
前記プレート又はメッシュ電極は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、及び(xv)0.25mm以下からなる群から選択される距離だけ互いに間隔があけられる、請求項128〜131のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項133】
前記プレート又はメッシュ電極には、AC又はRF電圧が供給される、請求項128〜132のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項134】
隣り合うプレート又はメッシュ電極には、前記AC又はRF電圧の反対の位相が供給される、請求項133に記載の質量分析計。
【請求項135】
前記AC又はRF電圧は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、及び(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有する、請求項133又は134に記載の質量分析計。
【請求項136】
前記AC又はRF電圧の振幅は、(i)<50Vピーク・トゥ・ピーク、(ii)50〜100Vピーク・トゥ・ピーク、(iii)100〜150Vピーク・トゥ・ピーク、(iv)150〜200Vピーク・トゥ・ピーク、(v)200〜250Vピーク・トゥ・ピーク、(vi)250〜300Vピーク・トゥ・ピーク、(vii)300〜350Vピーク・トゥ・ピーク、(viii)350〜400Vピーク・トゥ・ピーク、(ix)400〜450Vピーク・トゥ・ピーク、(x)450〜500Vピーク・トゥ・ピーク、及び(xi)>500Vピーク・トゥ・ピークからなる群から選択される、請求項133、134又は135に記載の質量分析計。
【請求項137】
前記イオントラップは、前記イオントラップの第1の側面上に配置される第1の外側プレート電極及び前記イオントラップの第2の側面上に配置される第2の外側プレート電極をさらに含む、請求項133〜136のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項138】
前記第1の外側プレート電極及び/又は前記第2の外側プレート電極を、AC又はRF電圧が印加される前記プレート又はメッシュ電極の平均電圧に対して、バイアスDC電圧にバイアスするためのバイアス手段をさらに含む、請求項137に記載の質量分析計。
【請求項139】
前記バイアス手段は、前記第1の外側プレート電極及び/又は前記第2の外側プレート電極を(i)<−10V、(ii)−9〜−8V、(iii)−8〜−7V、(iv)−7〜−6V、(v)−6〜−5V、(vi)−5〜−4V、(vii)−4〜−3V、(viii)−3〜−2V、(ix)−2〜−1V、(x)−1〜0V、(xi)0〜1V、(xii)1〜2V、(xiii)2〜3V、(xiv)3〜4V、(xv)4〜5V、(xvi)5〜6V、(xvii)6〜7V、(xviii)7〜8V、(xix)8〜9V、(xx)9〜10V、及び(xxi)>10Vからなる群から選択される電圧にバイアスするように構成及び適合される、請求項138に記載の質量分析計。
【請求項140】
前記第1の外側プレート電極及び/又は前記第2の外側プレート電極には、使用時に、DC専用電圧が供給される、請求項137、138又は139に記載の質量分析計。
【請求項141】
前記第1の外側プレート電極及び/又は前記第2の外側プレート電極には、使用時に、AC又はRF専用電圧が供給される、請求項137、138又は139に記載の質量分析計。
【請求項142】
前記第1の外側プレート電極及び/又は前記第2の外側プレート電極には、使用時に、DC及びAC又はRF電圧が供給される、請求項137、138又は139に記載の質量分析計。
【請求項143】
前記複数のプレート又はメッシュ電極間に点在配置、配置、交互配置、又は堆積される1つ以上の絶縁体層をさらに含む、請求項128〜142のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項144】
前記イオントラップは、実質的に湾曲状又は非直線状のイオンガイド又はイオントラップ領域を含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項145】
前記イオントラップは、複数の軸方向セグメントを含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項146】
前記イオントラップは、少なくとも5個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個、55個、60個、65個、70個、75個、80個、85個、90個、95個又は100個の軸方向セグメントを含む、請求項145に記載の質量分析計。
【請求項147】
前記イオントラップは、実質的に円形、長円形、正方形、長方形、規則的又は不規則的な断面を有する、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項148】
前記イオントラップは、前記イオンガイド領域の少なくとも一部に沿って、大きさ及び/又は形状及び/又は幅及び/又は高さ及び/又は長さが変化するイオンガイド領域を有する、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項149】
前記イオントラップは、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個又は>10個の電極を含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項150】
前記イオントラップは、少なくとも(i)10〜20個の電極、(ii)20〜30個の電極、(iii)30〜40個の電極、(iv)40〜50個の電極、(v)50〜60個の電極、(vi)60〜70個の電極、(vii)70〜80個の電極、(viii)80〜90個の電極、(ix)90〜100個の電極、(x)100〜110個の電極、(xi)110〜120個の電極、(xii)120〜130個の電極、(xiii)130〜140個の電極、(xiv)140〜150個の電極、又は(xv)>150個の電極を含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項151】
前記イオントラップは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、及び(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有する、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項152】
動作モードにおいて、前記イオントラップを(i)<1.0×10-1mbar、(ii)<1.0×10-2mbar、(iii)<1.0×10-3mbar、(iv)<1.0×10-4mbar、(v)<1.0×10-5mbar、(vi)<1.0×10-6mbar、(vii)<1.0×10-7mbar、(viii)<1.0×10-8mbar、(ix)<1.0×10-9mbar、(x)<1.0×10-10mbar、(xi)<1.0×10-11mbar、及び(xii)<1.0×10-12mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成及び適合される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項153】
動作モードにおいて、前記イオントラップを(i)>1.0×10-3mbar、(ii)>1.0×10-2mbar、(iii)>1.0×10-1mbar、(iv)>1mbar、(v)>10mbar、(vi)>100mbar、(vii)>5.0×10-3mbar、(viii)>5.0×10-2mbar、(ix)10-3〜10-2mbar、及び(x)10-4〜10-1mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成及び適合される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項154】
動作モードにおいて、イオンは、前記イオントラップにおいてトラップされるが、実質的にフラグメント化されない、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項155】
動作モードにおいて、前記イオントラップの少なくとも一部においてイオンを衝突によって冷却するか、又は実質的に熱化するように構成及び適合される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項156】
前記イオントラップ内のイオンを衝突によって冷却するか、又は実質的に熱化するように構成及び適合される手段は、イオンが前記イオントラップから排出される前及び/又は後にイオンを衝突によって冷却するか、又は実質的に熱化するように構成される、請求項155に記載の質量分析計。
【請求項157】
前記イオントラップ内のイオンを実質的にフラグメンテーションするように構成及び適合されるフラグメンテーション手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項158】
前記フラグメンテーション手段は、衝突誘起解離(「CID」)又は表面誘起解離(「SID」)によってイオンをフラグメンテーションするように構成及び適合される、請求項157に記載の質量分析計。
【請求項159】
前記イオントラップは、動作モードにおいて、イオンを前記イオントラップから共鳴によって及び/又は質量選択的に排出するように構成及び適合される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項160】
前記イオントラップは、イオンを前記イオントラップから軸方向及び/又は半径方向に排出するように構成及び適合される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項161】
前記イオントラップは、質量選択的不安定性(mass selective instability)によってイオンを排出するために、前記複数の電極に印加されるAC又はRF電圧の周波数及び/又は振幅を調節するように構成及び適合される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項162】
前記イオントラップは、共鳴排出によってイオンを排出するために、AC又はRF補助(supplementary)波形又は電圧を前記複数の電極に重ね合わせるように構成及び適合される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項163】
前記イオントラップは、イオンを排出するために、DCバイアス電圧を前記複数の電極に印加するように構成及び適合される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項164】
動作モードにおいて、前記イオントラップは、イオンが前記イオントラップから質量選択的に及び/又は非共鳴的に排出されずに、前記イオンを移送又は格納するように構成される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項165】
動作モードにおいて、前記イオントラップは、イオンを質量フィルタリング又は質量分析するように構成される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項166】
動作モードにおいて、前記イオントラップは、イオンが前記イオントラップから質量選択的に及び/又は非共鳴的に排出されずに、衝突又はフラグメンテーションセルとして作用するように構成される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項167】
動作モードにおいて、前記イオントラップの一部内に、前記イオントラップの入口及び/又は中心及び/又は出口に最も近い1つ以上の位置にイオンを格納又はトラップするように構成及び適合される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項168】
動作モードにおいて、イオンを前記イオントラップ内にトラップし、漸次前記イオンを前記イオントラップの入口及び/又は中心及び/又は出口に向かって移動させるように構成及び適合される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項169】
1つ以上の過渡DC電圧又は1つ以上の過渡DC電圧波形をまず第1の軸方向位置において前記複数の電極に印加するように構成及び適合される手段をさらに含み、ここで、前記1つ以上の過渡DC電圧又は1つ以上の過渡DC電圧波形は、その後に前記イオントラップに沿った第2、次いで第3の異なる軸方向位置に与えられる、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項170】
イオンを前記イオントラップの軸方向長さの少なくとも一部に沿って推進するために、1つ以上の過渡DC電圧又は1つ以上の過渡DC電圧波形を前記イオントラップの一端部から別の端部へ印加、移動又は平行移動するように構成及び適合される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項171】
前記1つ以上の過渡DC電圧は、(i)ポテンシャル山又は障壁、(ii)ポテンシャル井戸、(iii)複数のポテンシャル山又は障壁、(iv)複数のポテンシャル井戸、(v)ポテンシャル山又は障壁及びポテンシャル井戸の組み合わせ、又は(vi)複数のポテンシャル山又は障壁及び複数のポテンシャル井戸の組み合わせを生成する、請求項169又は170に記載の質量分析計。
【請求項172】
前記1つ以上の過渡DC電圧波形は、繰り返し波形又は方形波を含む、請求項169、170又は171に記載の質量分析計。
【請求項173】
1つ以上のトラップ静電又はDCポテンシャルを前記イオントラップの第1の端部及び/又は第2の端部に印加するように構成される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項174】
1つ以上のトラップ静電ポテンシャルを前記イオントラップの軸方向長さに沿って印加するように構成される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項175】
前記イオントラップの上流及び/又は下流に配置される1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項176】
前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域は、前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域内のイオンを衝突によって冷却するか、又は実質的に熱化するように構成及び適合される、請求項175に記載の質量分析計。
【請求項177】
前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域は、イオンが前記イオントラップに導入される前及び/又は後に、前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域内のイオンを衝突によって冷却するか、又は実質的に熱化するように構成及び適合される、請求項176に記載の質量分析計。
【請求項178】
イオンを前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域から前記イオントラップ内へ導入、軸方向に注入又は排出、半径方向に注入又は排出、移送又はパルス化するように構成及び適合される手段をさらに含む、請求項175、176又は177に記載の質量分析計。
【請求項179】
前記1つ以上のさらなるイオンガイド、イオンガイド領域、イオントラップ又はイオントラップ領域内のイオンを実質的にフラグメンテーションするように構成及び適合される手段をさらに含む、請求項175〜178のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項180】
イオンを前記イオントラップ内へ導入、軸方向に注入又は排出、半径方向に注入又は排出、移送又はパルス化するように構成及び適合される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項181】
前記イオントラップは、イオンを前記イオントラップから実質的に共鳴によらないか又は共鳴によって質量又は質量電荷比選択的に排出し、同時に他のイオンは、前記イオントラップ内にトラップされたままとなるように構成及び適合される手段を含む直線状の質量又は質量電荷比選択的イオントラップを含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項182】
前記イオントラップは、(i)三次元四重極電界又はポールイオントラップ、(ii)二次元又は線形四重極イオントラップ、又は(iii)磁気又はペニングイオントラップからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項183】
(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、及び(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択されるイオン源をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項184】
連続又はパルス化イオン源をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項185】
衝突セルをさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項186】
第2の質量又は質量電荷比選択的イオントラップと、
前記第2の質量又は質量電荷比選択的イオントラップの下流に配置された第2の質量フィルタ/分析器又は質量分析計と、
第2の制御手段であって、
(i)イオンがその質量又は質量電荷比にしたがって前記第2のイオントラップから選択的に排出又は放出されるようにし、
(ii)イオンの前記第2のイオントラップからの選択的排出又は放出と実質的に同期して前記第2の質量フィルタ/分析器又は質量分析計をスキャンする、
ように構成及び適合される第2の制御手段と
をさらに含む、先行する請求項のいずれかの記載の質量分析計。
【請求項187】
質量分析の方法であって、
質量又は質量電荷比選択的イオントラップを準備するステップと、
前記質量又は質量電荷比選択的イオントラップの下流に第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計を準備するステップと、
イオンがその質量又は質量電荷比にしたがって前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるようにするステップと、
イオンの前記イオントラップからの選択的排出又は放出に実質的に同期して前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計をスキャンするステップと
を含む方法。
【請求項188】
複数の電極を含むイオン移動度選択的イオントラップと、
前記イオン移動度選択的イオントラップの下流に配置される第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計と、
制御手段であって、
(i)イオンがそのイオン移動度にしたがって前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるようにし、
(ii)イオンの前記イオントラップからの選択的排出又は放出に実質的に同期して前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計をスキャンする、
ように構成及び適合される制御手段と
を含む質量分析計。
【請求項189】
質量分析の方法であって、
複数の電極を含むイオン移動度選択的イオントラップを準備するステップと、
前記イオン移動度選択的イオントラップの下流に第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計を準備するステップと、
イオンがそのイオン移動度にしたがって前記イオントラップから選択的に排出又は放出されるようにするステップと、
イオンの前記イオントラップからの選択的排出又は放出に実質的に同期して前記第1の質量フィルタ/分析器又は質量分析計をスキャンするステップと
を含む方法。
【請求項190】
質量選択的又はイオン移動度選択的イオントラップと、
前記イオントラップの下流に位置する質量スキャン型質量分析計であって、前記イオントラップから排出されるイオンが質量スキャン型質量分析計内へ方向付けられるようにする質量スキャン型質量分析計と、
制御手段であって、(i)イオンをそのイオンの質量電荷比又はイオン移動度にしたがって前記イオントラップから順次及び選択的に排出し、(ii)前記質量スキャン型質量分析計によって移送されるイオンの質量をスキャンし、(iii)前記質量スキャン型質量分析計へ方向付けられたイオンのうちの少なくともいくつかの質量が質量スキャン型質量分析計によって移送されるイオンの質量に対応するように(i)及び(ii)を同期させる制御手段と
を含む質量分析計デバイス。
【請求項191】
イオンをそのイオンの質量電荷比又はイオン移動度にしたがって質量選択的又はイオン移動度選択的イオントラップから順次及び選択的に排出するステップと、
前記排出されたイオンを質量スキャン型質量分析計へ方向付けるステップと、
前記質量スキャン型質量分析計によって移送されるイオンの質量をスキャンするステップと
を含む質量分析を行う方法であって、
前記イオンのイオントラップからの排出及び前記質量スキャン型質量分析計のスキャンは、前記質量スキャン型質量分析計へ方向付けられたイオンの少なくともいくつかの質量が前記質量スキャン型質量分析計によって移送されるイオンの質量に対応するように同期される方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16A】
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【図16B】
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【図16C】
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【図17】
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【図18】
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【図19A】
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【図19B】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37A】
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【図37B】
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【図37C】
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【図37D】
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【図37E】
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【図38】
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【図39】
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【図40】
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【図41】
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【図42】
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【図43】
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【図44】
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【図45】
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【公表番号】特表2009−502017(P2009−502017A)
【公表日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−522061(P2008−522061)
【出願日】平成18年7月21日(2006.7.21)
【国際出願番号】PCT/GB2006/002728
【国際公開番号】WO2007/010272
【国際公開日】平成19年1月25日(2007.1.25)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】