説明

質量分析計

【課題】
【解決手段】電子衝突解離、電子移動解離または表面誘起解離フラグメンテーションデバイスが高フラグメンテーションモードと低フラグメンテーションモードとの間で繰り返し切り換えられる質量分析の方法が開示される。第1の試料からの親イオンがデバイスを通され、親イオン質量スペクトルおよびフラグメンテーションイオン質量スペクトルが得られる。次いで、第2の試料からの親イオンがデバイスを通され、第2セットの親イオン質量スペクトルおよびフラグメンテーションイオン質量スペクトルが得られる。次いで、質量スペクトルは、比較され、2つの試料における所定の親イオンまたは所定のフラグメンテーションイオンのいずれか一方が異なって表現される場合、さらなる分析が行われて、2つの異なる試料において異なって表現されるイオンを同定しようとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析の方法および質量分析計に関する。
【背景技術】
【0002】
タンパク質をまず酵素的にまたは化学的に消化し、次いでペプチド生成物を質量分析によって分析することによってそのタンパク質を分析することが一般に行われるようになってきた。ペプチド生成物の質量分析は、通常、ペプチド生成物の質量の測定を行う。この方法は、「ペプチドマッピング」または「ペプチド指紋法」と呼ばれることがある。
【0003】
また、親または前駆体ペプチドイオンを同定しようとする方法として、その親または前駆体ペプチドイオンをフラグメンテーションするように誘導し、次いで1つ以上のフラグメントまたは娘イオンの質量を測定することが知られている。また、ペプチドイオンのフラグメンテーションパターンは、アイソバリックペプチドイオンの識別を首尾よく行う方法であることが示されてきた。したがって、1つ以上のフラグメントまたは娘イオンの質量電荷比を使用して、親または前駆体ペプチドイオンを同定し、これによってペプチドが由来するタンパク質を同定し得る。また、いくつかの場合に、ペプチドの部分配列がフラグメントまたは娘イオンスペクトルから決定され得る。この情報を使用して、タンパク質およびゲノムデータベースを検索することによって候補のタンパク質を決定し得る。
【0004】
あるいは、候補のタンパク質は、1つ以上の観察されたフラグメントまたは娘イオンの質量を、対象の候補のタンパク質のペプチド配列に基づいて観察されると予想され得るフラグメントまたは娘イオンの質量と比較することによって排除または確定され得る。同定の信頼度は、より多くのペプチド親または前駆体イオンがフラグメンテーションするように誘導され、それらのフラグメント質量が予想されるものと一致すると示されるにつれて増加する。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
改善された質量分析の方法および改善された質量分析計を提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一局面によると、質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいては、第1の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいて、第2の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいて、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
第1の親または前駆体イオンの強度を第2の親または前駆体イオンの強度と比較するステップと
を含み、
第1の親または前駆体イオンの強度が第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0008】
上記好適な実施形態によると、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のモードおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0009】
第1の動作モードにおいて、電子は、好ましくは(i)<1eV、(ii)1〜2eV、(iii)2〜3eV、(iv)3〜4eV、および(v)4〜5eVからなる群から選択されるエネルギーを有する。第1の動作モードにおいて、比較的低エネルギーの電子は、好ましくは比較的強力な磁場によって閉じ込められる。フラグメンテーションされるべきイオンは、好ましくはイオンガイド内に閉じ込められる。好ましくはイオンをイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する半径方向擬ポテンシャル場または井戸を生成するために、ACまたはRF電圧が好ましくはイオンガイドの電極に印加される。
【0010】
好ましくは、比較的低いエネルギーの電子は、好ましくはイオンガイドのイオンガイド領域を重複または重なり合わせる磁場によって閉じ込められ、その結果、多価検体イオンが比較的低いエネルギーの電子と相互作用するようにする。電子捕獲解離によるイオンのフラグメンテーションは、好ましくは内部振動エネルギーをイオンに導入させることを含まない。
【0011】
上記方法は、好ましくは電子源を準備するステップをさらに含む。第1の動作モードにおいて、電子源は、好ましくは親または前駆体イオンと相互作用するように構成される複数の電子を生成する。第2の動作モードにおいて、電子源は、好ましくはOFFに切り換えられ、検体イオンが好ましくは電子と相互作用せず、したがって好ましくはフラグメンテーションしないようにされる。
【0012】
本発明の一局面によると、質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいては、第1の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいて、第2の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいて、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
第1の親または前駆体イオンの強度を第2の親または前駆体イオンの強度と比較するステップと
を含み、
第1の親または前駆体イオンの強度が第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法が提供される。
【0013】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0014】
上記好適な実施形態によると、電子移動解離フラグメンテーションデバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のモードおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0015】
本発明の一局面によると、質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいては、第1の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいて、第2の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいて、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
第1の親または前駆体イオンの強度を第2の親または前駆体イオンの強度と比較するステップと
を含み、
第1の親または前駆体イオンの強度が第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法が提供される。
【0016】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0017】
上記好適な実施形態によると、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のモードおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0018】
第1の動作モードにおいて、親または前駆体イオンは、好ましくは表面またはターゲットプレート上へ方向づけられるか、進路変更されるか、または偏向される。第2の動作モードにおいて、親または前駆体イオンは、好ましくは表面またはターゲットプレート上へ方向づけられず、進路変更されず、または偏向されない。
【0019】
表面またはターゲットプレートは、好ましくは自己組織化単層を含む。表面またはターゲットプレートは、好ましくはフッ化炭素または炭化水素単層を含む。
【0020】
表面またはターゲットプレートは、好ましくは第2の動作モードにおいて親または前駆体イオンの走行方向に実質的に平行である平面内に構成される。なお、第2の動作モードは、イオンが好ましくは表面またはターゲットプレート上へ方向づけられずに表面またはターゲットプレートを通過して移送される場合である。
【0021】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいては、第1の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応されて、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいて、第2の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応されて、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成し、第2のモードにおいて、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
第1の親または前駆体イオンの強度を第2の親または前駆体イオンの強度と比較するステップと
を含み、
第1の親または前駆体イオンの強度が第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
方法が提供される。
【0022】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0023】
上記好適な実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のモードおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0024】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいては、第1の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいて、第2の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいて、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
第1の親または前駆体イオンの強度の第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定するステップと、
第2の親または前駆体イオンの強度の第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定するステップと、
第1の比を第2の比と比較するステップと
を含み、
第1の比が第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法が提供される。
【0025】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0026】
上記好適な実施形態によると、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のモードおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0027】
第1の動作モードにおいて、電子は、好ましくは(i)<1eV、(ii)1〜2eV、(iii)2〜3eV、(iv)3〜4eV、および(v)4〜5eVからなる群から選択されるエネルギーを有する。
【0028】
第1の動作モードにおいて、電子は、好ましくは磁場によって閉じ込められる。
【0029】
上記方法は、好ましくは電子源を準備するステップをさらに含む。
【0030】
第1の動作モードにおいて、電子源は、好ましくは親または前駆体イオンと相互作用するように構成される複数の電子を生成する。第2の動作モードにおいて、電子源は、好ましくはOFFに切り換えられる。
【0031】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいては、第1の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいて、第2の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいて、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
第1の親または前駆体イオンの強度の第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定するステップと、
第2の親または前駆体イオンの強度の第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定するステップと、
第1の比を第2の比と比較するステップと
を含み、
第1の比が第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法が提供される。
【0032】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0033】
上記好適な実施形態によると、電子移動解離フラグメンテーションデバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のモードおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0034】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいては、第1の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいて、第2の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいて、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
第1の親または前駆体イオンの強度の第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定するステップと、
第2の親または前駆体イオンの強度の第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定するステップと、
第1の比を第2の比と比較するステップと
を含み、
第1の比が第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法が提供される。
【0035】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0036】
上記好適な実施形態によると、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のモードおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0037】
第1の動作モードにおいて、親または前駆体イオンは、好ましくは表面またはターゲットプレート上へ方向づけられるか、進路変更されるか、または偏向される。第2の動作モードにおいて、親または前駆体イオンは、好ましくは表面またはターゲットプレート上へ方向づけられず、進路変更されず、または偏向されない。
【0038】
表面またはターゲットプレートは、好ましくは自己組織化単層を含む。表面またはターゲットプレートは、好ましくはフッ化炭素または炭化水素単層を含む。
【0039】
表面またはターゲットプレートは、好ましくは第2の動作モードにおいて親または前駆体イオンの走行方向に実質的に平行である平面内に構成される。
【0040】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいては、第1の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応されて、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいて、第2の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応されて、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成し、第2のモードにおいて、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
第1の親または前駆体イオンの強度の第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定するステップと、
第2の親または前駆体イオンの強度の第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定するステップと、
第1の比を第2の比と比較するステップと
を含み、
第1の比が第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
方法が提供される。
【0041】
上記好適な実施形態によると、親または前駆体イオンは、二価、三価、四価イオンまたは五価以上のイオンを含む。
【0042】
上記好適な実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、好ましくは1回の実験試行または1回の試料分析の間に第1のモードおよび第2のモード間で繰り返し切り換えられる。
【0043】
反応デバイスは、イオン、原子または分子が新しい種のイオン、原子または分子を形成するように再構成または反応されるデバイスを含むと理解されるべきである。X−Y反応フラグメンテーションデバイスは、XおよびYが組み合わさって生成物を形成し、次いでフラグメンテーションするデバイスを意味すると理解されるべきである。これは、イオンが最初に生成物を形成せずにフラグメンテーションされ得るフラグメンテーションデバイス自体とは異なる。X−Y反応デバイスは、XおよびYが組み合わさって生成物を形成し、かつ次いでその生成物が必ずしもフラグメンテーションしないデバイスを意味すると理解されるべきである。
【0044】
本発明によると、イオンは、衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス以外のデバイス内で衝突、フラグメンテーションまたは反応される。特に好適な実施形態によると、電子捕獲解離(「ECD」)または電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイスが検体イオンをフラグメンテーションするために使用される。
【0045】
ポリペプチド鎖は、所定の質量を有するアミノ酸残基からなる。ペプチド骨格に沿って3つの異なる結合があり、1つの結合が壊れると、その電荷は、その構造のN末端部またはその構造のC末端部のいずれかに残存し得る。ポリペプチドがフラグメンテーションされると、a、b、cおよびx、y、zと一般に呼ばれる6つの可能なフラグメンテーションシリーズが生じる。
【0046】
衝突誘起解離を用いる場合、最も一般的なフラグメンテーション経路は、アミノ結合(II)を介して起こるフラグメンテーションに関するものである。電荷がN−末端に残存する場合、イオンは、bシリーズイオンと呼ばれる。電荷がC末端に残存する場合、イオンは、yシリーズイオンと呼ばれる。
【0047】
添え字は、フラグメント中に何個のアミノ酸残基が含まれるかを示すために使用され得る。例えば、b3は、電荷がN−末端に残存するようにアミド結合(II)を切断した結果得られるフラグメントイオンであって、フラグメント中に3個のアミノ酸残基がある。
【0048】
本発明の一実施形態によると、電子捕獲解離(「ECD」)または電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイスを使用してイオンをフラグメンテーションする場合、ポリペプチド鎖は、ポリペプチドが衝突誘起解離によってフラグメンテーションされる場合にフラグメンテーションが生じると予想される位置とは異なる位置でフラグメンテーションされ得る。特に、電子捕獲解離(「ECD」)または電子移動解離(「ETD」)デバイスは、xおよびcシリーズフラグメントイオンが主に生成されることを可能にする。所定の状況においては、イオンをbおよびyシリーズフラグメントイオンではなく、xおよびcシリーズフラグメントイオンにフラグメンテーションさせることが特に有利である(衝突誘起解離の場合)。いくつかの状況においては、ECDまたはETDを使用してより完全な配列が可能となり、また、フラグメントイオンの同定における曖昧性がより低くなる。これによって、ペプチドの配列決定処理がより容易にできる。
【0049】
また、ポリペプチドは、リン酸化などの翻訳後修飾によって修飾され得る。ECDまたはETDフラグメンテーションデバイスの使用およびその結果生成されるフラグメンテーションシリーズによって、リン酸化などの翻訳後修飾をより簡単に観察することが可能になる。また、ポリペプチドの長さに沿ってどこで修飾が生じるかについて決定することが可能である。
【0050】
別の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。衝突誘起解離は、比較的ゆっくりとしたプロセスであって、フラグメンテーションがイオンとガス分子との間の多数回衝突の結果生じることが多いプロセスと考えられ得る。その結果、フラグメンテーションは、平均化されやすく、比較的広い範囲のフラグメンテーション生成物が通常観察される。反対に、表面誘起解離は、比較的急速または瞬時のプロセスであると考えられ得る。その結果、ポリペプチドは、非常に特異的なやり方でフラグメンテーションし得る。所定の状況において、これは、ポリペプチドの構造についての所定の有用な情報を明らかにし得るので特に有用である。
【0051】
したがって、本発明は、親または前駆体イオンが好ましくは衝突誘起解離によって得られ得るものに異なるフラグメンテーション経路を介してフラグメンテーションされる点で特に有利であることが分かる。さらに、また、本発明は、ペプチドの翻訳後修飾が観察されること、かつペプチドにおける修飾位置が決定されることを可能にする。また、本発明は、検体イオンをフラグメンテーションし、対応するフラグメントイオンを分析することによって検体イオンに関する構造情報を解明しようとする従来のアプローチに比べて、特に有利である。
【0052】
したがって、本発明は、従来の構成に比べて特に有利である。
【0053】
上記好適な実施形態によると、上記方法は、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを少なくとも第1のモードおよび第2のモードの間で、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10秒毎に1回、自動的に切り換え、改変、または変更するステップを含む。
【0054】
また、他の親または前駆体イオンに対する第1の親または前駆体イオンの第1の比を決定する代わりに、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対する第1の親または前駆体イオンの第1の比が決定され得るような他の構成が考えられる。同様に、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対する第2の親または前駆体イオンの第2の比が決定され、第1および第2の比が比較され得る。
【0055】
第1の試料において存在する他の親または前駆体イオンおよび/または第2の試料において存在する他の親または前駆体イオンは、試料に対して内因性であるか、または外因性であるかのいずれかであり得る。第1の試料において存在する他の親または前駆体イオンおよび/または第2の試料において存在する他の親または前駆体イオンは、さらにクロマトグラフ保持時間基準として使用され得る。
【0056】
一実施形態によると、2つの異なる試料からの親または前駆体イオン、好ましくはペプチドイオンは、別々の実験試行において分析される。各実験試行において、親または前駆体イオンは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡される。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、好ましくフラグメンテーションまたは反応モードと実質的にフラグメンテーションまたは反応しないモードとの間で繰り返し切り換えられる。次いで、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスから現れるか、または衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを通って移送されてきたイオンは、好ましくは質量分析される。次いで、一方の試料における所定の質量電荷比を有する親または前駆体イオンの強度が他方の試料における同じ所定の質量電荷比を有する親または前駆体イオンの強度と比較される。親または前駆体イオン表現レベルの直接的な比較がなされ得るか、または試料における親または前駆体イオンの強度がまず内部基準と比較され得る。したがって、一方の試料における親または前駆体イオンの内部基準に関連する親または前駆体イオンの強度に対する比と、他の試料における親または前駆体イオンの好ましくは同じ内部基準に関連する親または前駆体イオンの強度に対する比との間で、非直接的な比較がなされ得る。次いで、2つの比の比較がなされ得る。2つの試料における親または前駆体イオン表現レベルの比較に関して上記好適な実施形態を記載したが、3つ以上の試料における親または前駆体イオンの表現レベルが比較され得ることが明らかである。
【0057】
親または前駆体イオンは、それらの表現レベルが1%、10%、50%、100%、150%、200%、250%、300%、350%、400%、450%、500%、1000%、5000%または10000%よりも大きく異なる場合に2つの試料において著しく異なると考えられ得る。
【0058】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、好ましくは(i)0.0001mbar以上、(ii)0.001mbar以上、(iii)0.05mbar以上、(iv)0.01mbar以上、(v)0.0001〜100mbar、および(vi)0.001〜10mbarからなる群から選択される圧力に維持される。好ましくは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)0.0001mbar以上、(ii)0.0005mbar以上、(iii)0.001mbar以上、(iv)0.005mbar以上、(v)0.01mbar以上、(vi)0.05mbar以上、(vii)0.1mbar以上、(viii)0.5mbar以上、(ix)1mbar以上、(x)5mbar以上、および(xi)10mbar以上からなる群から選択される圧力に維持される。好ましくは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)10mbar以下、(ii)5mbar以下、(iii)1mbar以下、(iv)0.5mbar以下、(v)0.1mbar以下、(vi)0.05mbar以下、(vii)0.01mbar以下、(viii)0.005mbar以下、(ix)0.001mbar以下、(x)0.0005mbar以下、および(xi)0.0001mbar以下からなる群から選択される圧力に維持される。
【0059】
好ましさが劣る実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス内のガスは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが高フラグメンテーションまたは反応モードにある場合には第1の圧力に維持され、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが低フラグメンテーションまたは反応モードにある場合にはより低い第2の圧力に維持され得る。好ましさが劣る別の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス内のガスは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが高フラグメンテーションまたは反応モードにある場合には第1のガスまたは第1のガス混合物を含み、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが低フラグメンテーションまたは反応モードにある場合には異なる第2のガスまたは異なる第2のガス混合物を含み得る。
【0060】
対象の親または前駆体イオンと考えられる親または前駆体イオンが好ましくは同定される。これは、対象の親または前駆体イオンの質量電荷比を、好ましくは20ppm、15ppm、10ppmまたは5ppm以下の正確さで、決定するステップを含み得る。次いで、対象の親または前駆体イオンの決定された質量電荷比は、イオンおよびそれらの質量電荷比のデータベースと比較され得、したがって対象の親または前駆体イオンのアイデンティティが確立され得る。
【0061】
上記好適な実施形態によると、対象の親または前駆体イオンを同定するステップは、対象の親または前駆体イオンのフラグメンテーションから得られると判断される1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを同定するステップを含む。好ましくは、1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを同定するステップは、1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比を、20ppm、15ppm、10ppmまたは5ppm以下で、決定するステップをさらに含む。
【0062】
対象の第1の親または前駆体イオンを同定するステップは、親または前駆体イオンが、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが所定の期間低フラグメンテーションまたは反応モードにある場合に得られる質量スペクトルにおいて観察されるかどうか、および第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンが、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが高フラグメンテーションまたは反応モードにある場合の所定の期間の直前、または衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが高フラグメンテーションまたは反応モードにある場合の所定の期間の直後のいずれかに得られる質量スペクトルにおいて観察されるかどうかを決定するステップを含み得る。
【0063】
対象の第1の親または前駆体イオンを同定するステップは、親または前駆体イオンの溶離時間を第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの擬溶離時間と比較するステップを含み得る。フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、擬溶離時間を有するといわれる。なぜなら、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、実際にはクロマトグラフィカラムから物理的に溶離しないからである。しかし、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンのうちの少なくともいくつかは、特定の親または前駆体イオンに対してかなりユニークであり、かつ親または前駆体イオンは、特定の時間にだけクロマトグラフィカラムから溶離し得るので、対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、それらの関連の親または前駆体イオンと実質的に同じ溶離時間に同様に観察されるだけであり得る。同様に、対象の第1の親または前駆体イオンを同定するステップは、親または前駆体イオンの溶離プロファイルを第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの擬溶離プロファイルと比較するステップを含み得る。やはり、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、実際にはクロマトグラフィカラムから物理的に溶離しないが、それらは有効な溶離プロファイルを有すると考えられ得る。なぜなら、それらは、特定の親または前駆体イオンがカラムから溶離する場合にだけ観察される傾向にあり、かつ溶離する親または前駆体イオンの強度が数秒にわたり変化するにつれ、同様に特徴的なフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの強度も同様に変化するからである。
【0064】
イオンは、逐次得られる2つの質量スペクトルを比較して、親または前駆体イオンであると決定され得る。第1の質量スペクトルは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが高フラグメンテーションおよび反応モードであった場合に得られ、第2の質量スペクトルは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが低フラグメンテーションおよび反応モードにあった場合に得られる。イオンは、第2の質量スペクトルにおけるイオンに対応するピークが第1の質量スペクトルにおけるイオンに対応するピークよりも強度が高い場合に親または前駆体イオンであると判断される。同様に、イオンは、第1の質量スペクトルにイオンに対応するピークが第2の質量スペクトルにおけるイオンに対応するピークよりも強度が高い場合にフラグメント、生成物、娘または付加物イオンであると判断され得る。別の実施形態によると、質量フィルタが衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流に提供され得る。質量フィルタは、第1の範囲内の質量電荷比を有するイオンを移送するが、第2の範囲内の質量電荷比を有するイオンを実質的に減衰させるように構成される。イオンは、第2の範囲内にある質量電荷比を有すると判断された場合に、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンであると判断される。
【0065】
第1の親または前駆体イオンおよび第2の親または前駆体イオンは、好ましくは40ppm、35ppm、30ppm、25ppm、20ppm、15ppm、10ppmまたは5ppm以下だけ異なる質量電荷比を有すると判断される。第1の親または前駆体イオンおよび第2の親または前駆体イオンは、実質的に同じ溶離時間後にクロマトグラフィカラムから溶離したと判断され得る。また、第1の親または前駆体イオンは、1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせたと判断され、第2の親または前駆体イオンは、1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせたと判断され得る。1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンおよび1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、実質的に同じ質量電荷比を有する。1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンおよび1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比は、40ppm、35ppm、30ppm、25ppm、20ppm、15ppm、10ppmまたは5ppm以下だけ異なると判断され得る。
【0066】
また、第1の親または前駆体イオンは、1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせたと判断され得、第2の親または前駆体イオンは、1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせたと判断され得る。第1の親または前駆体イオンおよび第2の親または前駆体イオンは、所定の時点で低フラグメンテーションまたは反応モードにおいて得られるデータに関連する質量スペクトルにおいて観察され、1つ以上の第1および第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが高フラグメンテーションまたは反応モードにある場合の所定の時点の直前または衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが高フラグメンテーションまたは反応モードにある場合の所定の時点の直後のいずれか一方において得られるデータに関連する質量スペクトルにおいて観察される。
【0067】
第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンが第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンと実質的に同じ擬溶離時間を有する場合、第1の親または前駆体イオンは、1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせたと判断され得、第2の親または前駆体イオンは、1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせたと判断され得る。
【0068】
第1の親または前駆体イオンは、1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせたと判断され得、第2の親または前駆体イオンは、1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせたと判断され得る。第1の親または前駆体イオンは、第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの擬溶離プロファイルに相関する溶離プロファイルを有すると判断され、対応する第2の親または前駆体イオンは、第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの擬溶離プロファイルに相関する溶離プロファイルを有すると判断される。
【0069】
別の実施形態によると、比較されている第1の親または前駆体イオンおよび第2の親または前駆体イオンは、多価であると判断され得る。これにより、かなり頻繁に一価である傾向にある多くのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを除外し得る。より好適な実施形態によると、第1の親または前駆体イオンおよび第2の親または前駆体イオンは、同じ荷電状態を有すると判断され得る。別の実施形態によると、2つの異なる試料において比較されている親または前駆体イオンは、同じ電荷状態を有するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせると判断され得る。
【0070】
第1の試料および/または第2の試料は、複数の異なる生体高分子、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、アミノ酸、炭水化物、糖、脂質、脂肪酸、ビタミン、ホルモン、DNAの部分またはフラグメント、cDNAの部分またはフラグメント、RNAの部分またはフラグメント、mRNAの部分またはフラグメント、tRNAの部分またはフラグメント、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、リボヌクレアーゼ、酵素、代謝産物、多糖類、リン酸化ペプチド、リン酸化タンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質またはステロイドを含み得る。また、第1の試料および/または第2の試料は、異なるアイデンティティを有する少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000個の分子を含み得る。
【0071】
第1の試料は、罹患生物から採取され得、第2の試料は、非罹患生物から採取され得る。あるいは、第1の試料は、処置生物から採取され得、第2の試料は、非処置生物から採取され得る。別の実施形態によると、第1の試料は、突然変異生物から採取され得、第2の試料は、野生型生物から採取され得る。
【0072】
第1のおよび/または第2の試料からの分子は、好ましくは高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)、陰イオン交換、陰イオン交換クロマトグラフィ、陽イオン交換、陽イオン交換クロマトグラフィ、イオン対逆相クロマトグラフィ、クロマトグラフィ、1次元電気泳動、多次元電気泳動、サイズ排除、親和性、逆相クロマトグラフィ、キャビラリ−電気泳動クロマトグラフィ(「CEC」)、電気泳動、イオン移動度分離、フィールド非対称イオン移動度分離(「FAIMS」)、またはキャピラリー電気泳動によってイオン化される前に、他の分子の混合物から分離される。
【0073】
特に好適な実施形態によると、第1および第2の試料イオンは、ペプチドイオンを含み得る。ペプチドイオンは、好ましくは1つ以上のタンパク質の消化生成物を含む。対象の親ペプチドイオンに相関するタンパク質を同定しようとする試みがなされ得る。好ましくは、タンパク質が消化された場合にどのペプチド生成物が形成されると予測されるかについて決定がなされ、次いで、いずれかの予測ペプチド生成物が対象の親または前駆体イオンに相関するかどうかを判断される。また、対象の親または前駆体イオンが1つ以上のタンパク質と相関するかどうかついて判断がなされ得る。
【0074】
第1および第2の試料は、同じ生物または異なる生物から採取され得る。
【0075】
比較されている第1および第2の親または前駆体イオンがフラグメント、生成物、娘または付加物イオンではなく、本当に親または前駆体イオンであると確定するためにチェックをしてもよい。高フラグメンテーションまたは反応モードにおいて得られるデータに関連する高フラグメンテーション質量スペクトルは、低フラグメンテーションまたは反応モードにおいて得られるデータに関連する低フラグメンテーション質量スペクトルと比較され得る。ここで、両質量スペクトルは、実質的に同時に得られたものである。第1のおよび/または第2の親または前駆体イオンが高フラグメンテーション質量スペクトルに比べて低フラグメンテーション質量スペクトルにおける強度がより大きい場合に、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンではないと判断され得る。同様に、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、低フラグメンテーション質量スペクトルに比べて高フラグメンテーション質量スペクトルにおける強度がより大きいイオンに注目することによって認識され得る。
【0076】
第1の試料からの親または前駆体イオンおよび第2の試料からの親または前駆体イオンは、好ましくは同じ衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡される。しかし、より好ましさの低い実施形態によると、第1の試料からの親または前駆体イオンおよび第2の試料からの親または前駆体イオンは、異なる衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡され得る。
【0077】
本発明の別の局面によると、
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスであって、第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)第1の親または前駆体イオンの強度を第2の親または前駆体イオンの強度と比較する
制御システムと
を含み、
第1の親または前駆体イオンの強度が第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計が提供される。
【0078】
本発明の別の局面によると、
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される電子移動解離フラグメンテーションデバイスであって、第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが負に荷電した試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、電子移動解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)第1の親または前駆体イオンの強度を第2の親または前駆体イオンの強度と比較する
制御システムと
を含み、
第1の親または前駆体イオンの強度が第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計が提供される。
【0079】
本発明の別の局面によると、
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される表面誘起解離フラグメンテーションデバイスであって、第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)第1の親または前駆体イオンの強度を第2の親または前駆体イオンの強度と比較する
制御システムと
を含み、
第1の親または前駆体イオンの強度が第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計が提供される。
【0080】
本発明の一局面によると、
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応されて、1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)第1の親または前駆体イオンの強度を第2の親または前駆体イオンの強度と比較する
制御システムと
を含み、
第1の親または前駆体イオンの強度が第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
質量分析計が提供される。
【0081】
本発明の別の局面によると、
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスであって、第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)第1の親または前駆体イオンの強度の第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定し、
(iv)第2の親または前駆体イオンの強度の第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定し、
(v)第1の比を第2の比と比較する
制御システムと
を含み、
第1の比が第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計が提供される。
【0082】
本発明の別の局面によると、
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される電子移動解離フラグメンテーションデバイスであって、第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが負に荷電した試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、電子移動解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)第1の親または前駆体イオンの強度の第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定し、
(iv)第2の親または前駆体イオンの強度の第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定し、
(v)第1の比を第2の比と比較する
制御システムと
を含み、
第1の比が第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計が提供される。
【0083】
本発明の一局面によると、
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される表面誘起解離フラグメンテーションデバイスであって、第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)第1の親または前駆体イオンの強度の第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定し、
(iv)第2の親または前駆体イオンの強度の第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定し、
(v)第1の比を第2の比と比較する
制御システムと
を含み、
第1の比が第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計が提供される。
【0084】
本発明の一局面によると、
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応されて、1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生成し、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)第1の親または前駆体イオンの強度の第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定し、
(iv)第2の親または前駆体イオンの強度の第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定し、
(v)第1の比を第2の比と比較する
制御システムと
を含み、
第1の比が第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
質量分析計が提供される。
【0085】
質量分析計は、好ましくはイオン源をさらに含む。イオン源は、好ましくは(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、および(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択される。
【0086】
イオン源は、パルス化または連続イオン源を含み得る。
【0087】
特に好適な実施形態によると、質量分析計は、エレクトロスプレー、大気圧化学イオン化(「APCI」)、大気圧光イオン化(「APPI」)、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)、レーザ脱離イオン化(「LDI」)、誘導結合プラズマ(「ICP」)、高速原子衝撃(「FAB」)、または液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源を含み得る。そのようなイオン源には、所定期間にわたり溶離剤が提供され得、溶離剤は、液体クロマトグラフィまたはキャピラリー電気泳動によって混合物から分離されたものである。
【0088】
あるいは、質量分析計は、電子衝撃(「EI」)、化学イオン化(「CI」)または電界イオン化(「FI」)イオン源を含み得る。そのようなイオン源には、所定期間にわたり溶離剤が提供され得、溶離剤は、ガスクロマトグラフィによって混合物から分離されたものである。
【0089】
質量分析器は、好ましくは四重極質量フィルタ、飛行時間(「TOF」)質量分析器(直交加速飛行時間質量分析器が特に好適である)、2D(直線)または3D(2つのエンドキャップ電極を有する2つのドーナッツ形電極)イオントラップ、扇形磁場分析器またはフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器を含む。
【0090】
一実施形態によると、質量分析器は、好ましくは(i)四重極質量分析器、(ii)2Dまたは直線四重極質量分析器、(iii)ポールまたは3D四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)扇形磁場質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ質量分析器、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換質量分析器、(xii)飛行時間質量分析器、(xiii)直交加速飛行時間質量分析器、(xiv)軸方向加速飛行時間質量分析器、および(xv)四重極ロッドセット質量フィルタまたは分析器からなる群から選択される。
【0091】
質量分析計は、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流および/または下流に配置されるイオントラップまたはイオンガイドをさらに含む。
【0092】
イオントラップまたはイオンガイドは、好ましくは、
(i)四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセットまたは8個より多くのロッドを含むロッドセットを含む多重極ロッドセットまたはセグメント化多重極ロッドセットイオントラップもしくはイオンガイド、
(ii)開口を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含むイオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドであって、使用時にイオンは、開口を通って移送され、電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズまたは面積の開口を有するか、またはサイズまたは面積が順次より大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイド、
(iii)1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極であって、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極は、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含み、平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時に概してイオンが走行する平面内に配置される、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極、および
(iv)イオントラップまたはイオンガイドの長さに沿って軸方向に配置される複数のグループの電極を含むイオントラップまたはイオンガイドであって、各グループの電極は、(a)第1および第2の電極ならびにイオンをイオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを第1および第2の電極に印加するための手段、および(b)第3および第4の電極ならびにイオンをイオンガイド内に第2の半径方向に閉じ込めるためにACまたはRF電圧を第3および第4の電極に印加するための手段を含む、イオントラップまたはイオンガイド
からなる群から選択される。
【0093】
イオントラップまたはイオンガイドは、好ましくはイオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドを含み、電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する。
【0094】
イオントラップまたはイオンガイドは、好ましくはイオンをイオントラップまたはイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるためにACまたはRF電圧をイオントラップまたはイオンガイドの複数の電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に印加するように構成および適合される第1のACまたはRF電圧手段をさらに含む。
【0095】
第1のACまたはRF電圧手段は、好ましくは(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有するACまたはRF電圧を印加するように構成および適合される。
【0096】
第1のACまたはRF電圧手段は、好ましくは(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するACまたはRF電圧を印加するように構成および適合される。
【0097】
イオントラップまたはイオンガイドは、好ましくはイオンのビームまたはグループを受け取り、このイオンのビームまたはグループを変換または分割して、複数のまたは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の別々のパケットのイオンが任意の特定の時間にイオントラップまたはイオンガイド内に閉じ込めおよび/または隔離されるよう構成および適合され、各パケットのイオンは、イオントラップまたはイオンガイド内に形成される別々の軸方向ポテンシャル井戸内に別々に閉じ込めおよび/または隔離される。
【0098】
質量分析計は、一動作モードにおいて、少なくともいくつかのイオンをイオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を通って、またはそれに沿って上流および/または下流へ駆動するように構成および適合される手段をさらに含む。
【0099】
質量分析計は、好ましくは少なくともいくつかのイオンをイオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って上流および/または下流へ駆動するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたは1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャル波形をイオントラップまたはイオンガイドを形成する電極に印加するように構成および適合される第1の過渡DC電圧手段をさらに含む。
【0100】
質量分析計は、好ましくは少なくともいくつかのイオンをイオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さ少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って上流および/または下流へ駆動するために、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧をイオントラップまたはイオンガイドを形成する電極に印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段をさらに含む。
【0101】
質量分析計は、好ましくはイオントラップまたはイオンガイドの少なくとも一部を(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)>1mbar、(viii)0.0001〜100mbar、および(ix)0.001〜10mbarからなる群から選択される圧力に維持するように、一動作モードにおいて、構成および適合される手段をさらに含む。
【0102】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極もしくはそれより高次のロッドセット、または開口を有する複数の電極を含むイオントンネルであって、イオンがその開口を通って移送される、イオントンネルを含み得る。開口は、好ましくは実質的に同じサイズである。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、より一般には、イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス内に半径方向に閉じ込めるためのACまたはRF電圧源に接続された複数の電極を含み得る。軸方向DC電圧勾配がイオントンネル衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの長さの少なくとも一部に沿って印加されてもよいし、またはされなくてもよい。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、ハウジングに収容され得るか、またはそうでなければ、イオンを入れる任意の開口と、イオンを出す開口と、ガスを導入するための任意のポートは別にして、実質的に気密な封入体が衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの周辺に形成されるように構成され得る。ヘリウム、アルゴン、窒素、空気またはメタンなどのガスが衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス中へ導入され得る。
【0103】
また、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが高フラグメンテーションまたは反応モードと低フラグメンテーションまたは反応モードとの間で繰り返し切り換え、可変または変更されないような他の構成が考えられる。例えば、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、不変的にONのままにし、かつ衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス内に受け取られるイオンをフラグメンテーションまたは反応させるように構成され得る。電極または他のデバイスが衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流に提供され得る。高フラグメンテーションまたは反応動作モードは、電極または他のデバイスによってイオンが衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡ることが可能になるならば生じる。低フラグメンテーションまたは反応動作モードは、電極または他のデバイスによってイオンが衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを迂回し、したがって衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスフラグメンテーションまたは反応されないようにされるならば生じる。
【0104】
また、特定の親または前駆体イオンが他の一般に観察されるペプチドイオンとともに共溶離するために容易に観察され得ない場合に有用であり得るような他の実施形態が考えられる。そのような状況において、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンの表現レベルは、2つの試料間で比較される。
【0105】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいては、第1の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションまたは反応され、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいて、第2の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションまたは反応され、第2のモードにおいて、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第1の試料からの第1の親または前駆体イオンに由来する第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を自動的に決定するステップであって、第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、第1の質量電荷比を有する、ステップと、
第2の試料からの第2の親または前駆体イオンに由来する第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を自動的に決定するステップであって、第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、同じ第1の質量電荷比を有する、ステップと、
第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度と比較するステップと
を含み、
第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度が第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
方法が提供される。
【0106】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいては、第1の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションまたは反応され、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、第1のモードにおいて、第2の試料からの親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションまたは反応され、第2のモードにおいて、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第1の試料からの第1の親または前駆体イオンに由来する第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を自動的に決定するステップであって、第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、第1の質量電荷比を有する、ステップと、
第2の試料からの第2の親または前駆体イオンに由来する第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を自動的に決定するステップであって、第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、同じ第1の質量電荷比を有する、ステップと、
第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度の第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度との、または第1の試料における他の親または前駆体イオンに由来する他のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度との第1の比を決定するステップと
第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度の第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度との、または第2の試料における他の親または前駆体イオンに由来する他のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度との第2の比を決定するステップと
第1の比を第2の比と比較するステップと
を含み、
第1の比が第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
方法が提供される。
【0107】
本発明の別の局面によると、
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションまたは反応され、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の試料からの第1の親または前駆体イオンに由来する第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を決定し、第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、第1の質量電荷比を有し、
(ii)第2の試料からの第2の親または前駆体イオンに由来する第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を決定し、第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、同じ第1の質量電荷比を有し、
(iii)第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度と比較する
制御システムと
を含み、
第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度が第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
質量分析計が提供される。
【0108】
本発明の別の局面によると、
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションされ、第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の試料からの第1の親または前駆体イオンに由来する第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を決定し、第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、第1の質量電荷比を有し、
(ii)第2の試料からの第2の親または前駆体イオンに由来する第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を決定し、第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、同じ第1の質量電荷比を有し、
(iii)第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度の第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度との、または第1の試料における他の親または前駆体イオンに由来する他のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度との第1の比を決定し、
(iv)第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度の第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度との、または第2の試料における他の親または前駆体イオンに由来する他のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度との第2の比を決定し、
(v)第1の比を第2の比と比較する
制御システムと
を含み、
第1の比が第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、第1の親または前駆体イオンおよび/または第2の親または前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
質量分析計が提供される。
【0109】
親または前駆体イオンではなく、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンの表現レベルを直接的にまたは間接的にのいずれか一方で比較することに関する上記実施形態は、上記好適な実施形態に関する方法および装置を使用し得ることが明らかとなる。したがって、また、上記好適な実施形態について記載する同じ好適な特徴は、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンの表現レベルを比較することに関する上記実施形態とともに使用され得る。
【0110】
特定の質量電荷比を有する親または前駆体イオンが2つの異なる試料において異なって表現される場合、上記好適な実施形態によると対象の親または前駆体イオンがさらに調べられる。このさらなる調査は、2つの異なる試料において異なって表現される対象の親または前駆体イオンを同定しようとするステップを含み得る。表現レベルが2つの異なる試料において比較されている親または前駆体イオンが本当に同じイオンであることを検証するために、いくつかのチェックがなされ得る。
【0111】
複雑なタンパク質混合物におけるタンパク質の存在度の変化を測定すると非常に多くの情報が得られ得る。例えば、細胞におけるタンパク質の存在度(タンパク質発現レベルと呼ばれることが多い)の変化は、異なる細胞ストレス、刺激効果、疾患効果または薬物効果が原因であり得る。そのようなタンパク質は、研究、スクリーニングまたは介入に対する関連ターゲットを提供し得る。そのようなタンパク質の同定は、通常対象となり得る。そのようなタンパク質は、上記好適な実施形態の方法によって同定され得る。
【0112】
したがって、上記好適な実施形態によると、対象の親または前駆体イオンを発見するための新しい判断基準は、2つの異なる試料におけるタンパク質の定量に基づく。これには、2つ以上の試料におけるそれらのペプチド生成物の相対存在度を決定することが必要である。しかし、相対存在度の決定には、同じペプチドイオンが2つ(またはそれより多く)の異なる試料において比較されなければならず、かつこれが生じることを確実にすることは、簡単な問題ではない。したがって、ペプチドイオンを、それが試料内でユニークに認識され得る程度に、認識および好ましくは同定できることが必要である。そのようなペプチドイオンは、親または前駆体イオンの質量の測定によって、およびその親または前駆体イオンに由来する1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比の測定によって十分に認識され得る。ペプチドが認識され得る特異性は、親または前駆体イオンの正確な質量および/または1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの正確な質量の決定によって増加され得る。
【0113】
また、1つの試料における親または前駆体イオンを認識するのと同じ方法を好ましくは使用して別の試料における同じ親または前駆体イオンを認識し、これにより、2つの異なる試料における親または前駆体イオンの相対存在度を測定することが可能になる。
【0114】
相対存在度の測定によって、発現レベルに著しい変化または差異を有するタンパク質を発見することが可能になる。同じデータによって、各そのようなペプチド生成物イオンに対応づけられた数個またはすべてのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンがそれらのそれぞれの溶離時間の一致度によって発見される上記方法を用いたタンパク質の同定が可能になる。やはり、親または前駆体イオンおよび対応づけられたフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量を正確に測定することによって、タンパク質が同定され得る特異性および信頼度が実質的に向上される。
【0115】
また、ペプチドが認識され得る特異性は、保持時間の比較によって増加され得る。例えば、HPLCまたはCE保持または溶離時間は、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンを親または前駆体イオンに対応づけるための手順の一部として測定され、また、これらの溶離時間は、2つ以上の試料について比較され得る。溶離時間は、所定の互いの時間差内に収まっていない測定結果を棄却するために使用され得る。あるいは、保持時間は、所定の互いのウィンドウ内に収まる場合に、同じペプチドであるとの認識を確定するために使用され得る。一般に、親または前駆体イオンの正確な質量、1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの正確な質量、および保持時間がすべて測定および比較される場合、ある程度の冗長性が存在し得る。多くの場合、これらの測定のうちのたった2つで十分に2つ以上の試料における同じペプチド親または前駆体イオンを認識できる。例えば、正確な親または前駆体イオン質量電荷比およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷比、または正確な親または前駆体イオン質量電荷比および保持時間を測定するだけで、おそらく十分である。それにもかかわらず、さらなる測定結果を使用して同じ親ペプチドイオンの認識を確定し得る。
【0116】
一致する親ペプチドイオンの相対表現レベルは、内部基準に対するピーク面積を測定することによって定量され得る。
【0117】
上記好適な実施形態は、データの取得を中断する必要がなく、したがって、定量用途に特に適する。一実施形態によると、試料の実験状態によって変化しない両方の混合物に共通の1つ以上の内因性ペプチドは、相対ピーク面積を測定するための内部基準または基準として使用され得る。別の実施形態によると、そのような内部基準が存在しないか、または信用できない場合は、内部基準が各試料に付加され得る。また、内部基準は、自然に存在するかまたは付加されるかにかかわらず、クロマトグラフ保持時間基準および質量正確度基準として機能を有し得る。
【0118】
理想では、定量されるべき各タンパク質に対して1つより多くのペプチド親または前駆体イオンが測定され得る。各ペプチドに対して、異なる試料のそれぞれの強度を比較する場合に同じ認識手段が好ましくは使用される。異なるペプチドの測定は、相対存在度の測定結果を確証する機能を有する。さらに、数個のペプチドからの測定結果は、平均相対存在度を決定し、測定結果の相対有意性を決定する手段を提供する。
【0119】
一実施形態によると、すべての親または前駆体イオンが同定され得、それらの相対存在度は、それらの強度と1つ以上の他の試料における同じアイデンティティのものとを比較することによって決定され得る。
【0120】
別の実施形態において、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンとの関係に基づいて発見されるすべての対象の親または前駆体イオンの相対存在度は、それらの強度と1つ以上の他の試料における同じアイデンティティのものとを比較することによって決定され得る。
【0121】
別の実施形態において、所定の質量損失を生じたことに基づいて発見されるすべての対象の親または前駆体イオンの相対存在度は、それらの強度と1つ以上の他の試料における同じアイデンティティのものとを比較することによって決定され得る。
【0122】
別の実施形態において、すでに同定されたタンパク質を定量することが単に求められ得る。タンパク質は、複雑な混合物中に存在し得、上記と同じ分離および認識手段が使用され得る。ここで、関連ペプチド生成物または生成物を認識し、1つ以上の試料におけるそれらの強度を測定することが必要なだけである。認識の基礎となるのは、ペプチド親または前駆体イオンの質量または正確な質量の認識、および1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量または正確な質量の認識であり得る。また、それらの保持時間が比較され、それにより、同じペプチドの認識を確定するか、または不一致のペプチドを棄却する手段を提供する。
【0123】
上記好適な実施形態は、プロテオミックスの研究に利用可能である。しかし、同定および定量の同じ方法は、メタボロミックスの研究などの他の領域の分析において使用され得る。
【0124】
上記方法は、成分を順番に溶離させるクロマトグラフィなどの手段によって、混合物の異なる成分が最初に分離または部分的に分離される混合物分析に利用可能である。
【0125】
イオン源は、好ましくは主に分子イオンまたは擬分子イオンおよび比較的少ない(存在する場合)フラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生成し得る。そのようなイオン源の例には、大気圧力イオン源(例えば、エレクトロスプレーおよびAPCI)およびマトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)が含まれる。
【0126】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの2つのおもな動作モードが適切に設定される場合、親または前駆体イオンは、それらが実質的なフラグメンテーションまたは反応なしに質量スペクトルにおいて強度が比較的より高くなるという事実によって認識され得る。同様に、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、それらが実質的なフラグメンテーションまたは反応を用いると質量スペクトルにおいて強度が比較的より高くなるという事実によって認識され得る。
【0127】
質量分析器は、四重極、飛行時間、イオントラップ、扇形磁場またはFT−ICR質量分析器を含み得る。好適な実施形態によると、質量分析器は、イオンに対して精密または正確な質量電荷値を決定できるべきである。これは、特徴的なフラグメント、生成物、娘もしくは付加物イオンまたは質量の損失の検出に対する選択性を最大化し、かつタンパク質の同定に対する特異性を最大化することである。
【0128】
質量分析器は、好ましくは全スペクトルを同時にサンプリングまたは記録する。これにより、すべての質量に対して観察される溶離時間が質量分析器によって変更または歪曲されないことを確実にし、その結果として親およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンなどの異なる質量の溶離時間の正確なマッチングを可能にし得る。また、これは、定量測定が過渡信号の存在度を測定することの必要性によって損なわれないことを確実にすることに役立つ。
【0129】
質量フィルタ(好ましくは四重極質量フィルタ)は、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流に備えてもよい。質量フィルタは、高域通過フィルタ特性を有し、かつ、例えば、質量電荷比が100、150、200、250、300、350、400、450または500以上であるイオンを移送するように構成され得る。あるいは、質量フィルタは、低域通過または帯域通過フィルタ特性を有し得る。
【0130】
イオンガイドを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流に備えてもよい。イオンガイドは、六重極、四重極、八重極またはより高次の多重極ロッドセットのいずれか一つを含み得る。別の実施形態において、イオンガイドは、開口を有する複数の電極を含むイオントンネルイオンガイドであって、使用時にイオンがその開口を通って移送される、イオントンネルイオンガイドを含み得る。好ましくは、電極のうちの少なくとも90%が実質的に同じサイズの開口を有する。あるいは、イオンガイドは、実質的に先細りの内径を有する複数のリング電極(「イオンファネル」)を含み得る。
【0131】
特定のクラスの親または前駆体イオンに属し、かつ特徴的なフラグメント、生成物、娘または付加物イオンまたは特徴的なニュートラルロスによって認識可能である親または前駆体イオンは、親または前駆体イオンスキャンまたはコンスタントニュートラルロススキャンの方法によって従来発見される。親または前駆体イオンスキャンまたはコンスタントニュートラルロススキャンを記録するための従来の方法は、三連四重極質量分析計における1つまたは両方の四重極のスキャン、またはタンデム四重極直交TOF質量分析計における四重極のスキャン、または他の種類のタンデム質量分析計における少なくとも1つの要素のスキャンを含む。その結果、これらの方法は、スキャン機器に関連するデューティサイクルが低くなってしまう。さらにその結果、質量分析計が親または前駆体イオンスキャンまたはコンスタントニュートラルロススキャンの記録に占有されている間に情報が廃棄および喪失され得る。さらにその結果、質量分析計がガスまたは液体クロマトグラフィ装置から直接溶離する物質を分析する必要がある場合にこれらの方法を使用することは適当でない。
【0132】
好ましい実施形態によると、タンデム四重極直交TOF質量分析計は、一連の低および高衝突エネルギー質量スペクトルが記録される方法を用いて、対象の親または前駆体イオンが発見されるように使用される。行ったり来たりを切り換え、改変または変更することは、好ましくは中断されない。その代りに、完全な1セットのデータが取得され、次いで、これは、後で処理され得る。フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、それらのそれぞれの溶離時間の一致度によって親または前駆体イオンと対応づけられ得る。このように、対象の親または前駆体イオンは、確定され得、またはそうでなければ、データの取得は中断されず、かつ情報は喪失されずに済む。
【0133】
一実施形態によると、予想される対象の親または前駆体イオンは、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対するそれらの関係に基づいて選択され得る。所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、例えば、ペプチドからのインモニウムイオン、リン酸化ペプチドからのリン酸基PO3-イオンを含む官能基、または特定の分子または特定クラスの分子から切断され、かつその後同定され、したがってその特定の分子または特定クラスの分子の存在を報告するように意図される質量タグを含み得る。親または前駆体イオンは、高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルを使用して所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対する質量クロマトグラムを生成することによって、予想される親または前駆体イオンとして選抜候補リストに載せられ得る。次いで、質量クロマトグラムにおける各ピークの中心が、対応する所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間とともに決定される。次いで、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークに対して、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直前に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルと、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直後に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルとの両方が、予め認識された親または前駆体イオンの存在について調べられる。次いで、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直前に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルと、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間の直後に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルとの両方に存在すると分かったいずれの予め認識された親または前駆体イオンに対しても質量クロマトグラムが生成され、各質量クロマトグラムにおける各ピークの中心が、対応する可能な親または前駆体イオン溶離時間とともに決定される。次いで、予想される対象の親または前駆体イオンは、それらの溶離時間と、所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間との一致度にしたがって順位づけされ、最終の予想される対象の親または前駆体イオンのリストが、予想される対象の親または前駆体イオンを、それらの溶離時間が所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間よりも所定量より多く先行または超える場合に、棄却することによって作成され得る。
【0134】
別の実施形態によると、親または前駆体イオンは、それが所定の質量損失を生じることに基づいて、予想される対象の親または前駆体イオンとして選抜候補リストに載せられ得る。各低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルに対して、低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトル中に存在する各予め認識された親または前駆体イオンから所定のイオンまたは中性粒子が損失した結果得られ得るターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷値のリストが生成される。次いで、低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの直前に得られる高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルと、低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの直後に得られる高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルとの両方が、ターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷値に対応する質量電荷値を有するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの存在について調べられる。次いで、予想される対象の親または前駆体イオンのリスト(必要に応じて、それらに対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを含む)が、ターゲットフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量電荷値に対応する質量電荷値を有するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンが、低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの直前の高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルと、低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルの直後の高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルとの両方において存在することが分かった場合に、親または前駆体イオンをリストに含めることによって作成される。次いで、質量損失クロマトグラムが候補と考えられる親または前駆体イオンおよびそれらに対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに基づいて生成され得る。質量損失クロマトグラムにおける各ピークの中心が、対応する質量損失溶離時間とともに決定される。次いで、各候補と考えられる親または前駆体イオンに対して、質量クロマトグラムが低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルを使用して作成される。また、対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムが、対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対して作成される。次いで、候補と考えられる親または前駆体イオン質量クロマトグラムおよび対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心が、対応する候補と考えられる親または前駆体イオン溶離時間と、対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間と共に決定される。次いで、最終候補の親または前駆体イオンのリストが、候補と考えられる親または前駆体イオンの溶離時間が対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間から所定量よりも大きく先行または超える場合に、候補と考えられる親または前駆体イオンを棄却することによって作成され得る。
【0135】
一旦対象の親または前駆体イオンのリストが作成されると(好ましくは、元々認識された親または前駆体イオンおよび予想される対象の親または前駆体イオンのいくつかだけを含む)、各対象の親または前駆体イオンが同定され得る。
【0136】
親または前駆体イオンの同定は、情報の組み合わせを使用することによってなされ得る。これは、親または前駆体イオンの正確に決定された質量または質量電荷比を含み得る。また、それは、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量または質量電荷比を含み得る。いくつかの場合、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンの正確に決定された質量または質量電荷比が好適であり得る。酵素によって消化されたタンパク質からのペプチド生成物の質量または質量電荷比、好ましくは正確な質量からタンパク質が同定され得ることが知られている。これらは、既知のタンパク質のライブラリから予想されるものと比較され得る。また、この比較結果が1つより多くの可能なタンパク質を示唆する場合、そのペプチドのうちの1つ以上についてそのフラグメントを分析することによって曖昧性が解決され得ることが知られている。上記好適な実施形態によって、酵素によって消化されたタンパク質の混合物が1回の分析によって同定されることが可能となる。すべてのペプチドおよびそれらの関連フラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量もしくは質量電荷比または正確な質量もしくは質量電荷比は、既知のタンパク質のライブラリと突き合わせて検索され得る。あるいは、ペプチド質量もしくは質量電荷比または正確な質量もしくは質量電荷比は、既知のタンパク質のライブラリと突き合わせて検索され得る。1つより多くのタンパク質が示唆される場合、正しいタンパク質は、各候補タンパク質からの関連ペプチドから予想されるものに一致するフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを求めて検索することによって確定され得る。
【0137】
各対象の親または前駆体イオンを同定するステップは、好ましくは、対象の親または前駆体イオンの溶離時間を呼び戻すステップと、対象の親または前駆体イオンの溶離時間の直前に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルと、対象の親または前駆体イオンの溶離時間の直後に得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルとの両方に存在する、予め認識されたフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを含む可能なフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストを生成するステップと、各予想されるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量クロマトグラムを生成するステップと、各予想されるフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心を決定するステップと、対応する候補と考えられるフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間を決定するステップとを含む。次いで、予想されるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、それらの溶離時間と対象の親または前駆体イオンの溶離時間との一致度にしたがって順位づけされ得る。次いで、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストが、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンの溶離時間が対象の親または前駆体イオンの溶離時間から所定量よりも大きく先行または超える場合に、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンを棄却することによって作成され得る。
【0138】
フラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストは、最終候補の親または前駆体イオンの溶離時間に時間的に最も近くに得られる低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルにおいて存在する近接の親または前駆体イオンのリストを作成することによってさらに絞り込みまたは低減され得る。次いで、リストに含まれる各親または前駆体イオンの質量クロマトグラムが作成され、各質量クロマトグラムの中心が、対応する近接の親または前駆体イオン溶離時間とともに決定される。次いで、対象の親または前駆体イオンの溶離時間よりも近接の親または前駆体イオン溶離時間により接近して対応する溶離時間を有するいずれのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンもフラグメント、生成物、娘または付加物イオンのリストから棄却され得る。
【0139】
フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、それらの溶離時間の一致度にしたがって親または前駆体イオンに割り当てられ得、親または前駆体イオンに対応づけられたすべてのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンがリストされ得る。
【0140】
また、より大量のデータ処理を含むが、本質的により簡単である別の実施形態が考えられる。一旦親およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンが同定されると、各認識された親または前駆体イオンに対して親または前駆体イオン質量クロマトグラムが作成される。次いで、親または前駆体イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心および対応する親または前駆体イオン溶離時間が決定される。同様に、各認識されたフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムが作成され、次いで、フラグメント、生成物、娘または付加物イオン質量クロマトグラムにおける各ピークの中心および対応するフラグメント、生成物、娘または付加物イオン溶離時間が決定される。次いで、認識された親または前駆体イオンのサブセットだけを同定するのではなく、認識された親または前駆体イオンのうちのすべて(または、ほとんどすべて)が同定される。フラグメントイオンは、それらのそれぞれの溶離時間の一致度にしたがって親または前駆体イオンに割り当てられ、次いで親または前駆体イオンに対応づけられたすべてのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンがリストされ得る。
【0141】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡される前に、質量フィルタ、好ましくは四重極質量フィルタにイオンを渡すステップは、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンを認識する別のまたはさらなる方法を提供する。フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスによって移送されない質量電荷比を有する高フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルにおけるイオンを認識することによって認識され得る、すなわち、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、質量フィルタの移送ウィンドウ外にある質量電荷比を有するイオンによって認識される。イオンは、質量フィルタによって移送されない場合は、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて生成されたもの違いない。
【0142】
ここで、添付の図面を参照して本発明の種々の実施形態を、あくまで例として、説明する。
【0143】
図1は、好適な質量分析計の模式図である。
【0144】
図2は、試料装填および脱塩の際のバルブスイッチ構成の模式図であり、挿入図は、分析カラムからの試料の脱離を示す。
【0145】
図3Aは、フラグメントまたは娘イオン質量スペクトルを示し、図3Bは、衝突セルの上流の質量フィルタが、質量電荷比が>350であるイオンを衝突セルへ移送するように構成された場合に得られた、対応する親または前駆体イオン質量スペクトルを示す。
【0146】
図4Aは、親または前駆体イオンの質量クロマトグラムを示し、図4Bは、親または前駆体イオンの質量クロマトグラムを示し、図4Cは、親または前駆体イオンの質量クロマトグラムを示し、図4Dは、フラグメントまたは娘イオンの質量クロマトグラムを示し、図4Eは、フラグメントまたは娘の質量クロマトグラムを示す。
【0147】
図5は、図4A〜4Eを順に重ねた質量クロマトグラムを示す。
【0148】
図6は、質量電荷比が87.04であるアスパラギンインモニウムイオンの質量クロマトグラムを示す。
【0149】
図7は、配列がANELLINVKであり、分子量が1012.59であるADH由来のペプチドイオンT5の質量スペクトルを示す。
【0150】
図8は、衝突セルが低フラグメンテーションモードにあった場合に得られたβ−カゼインのトリプシン消化の質量スペクトルを示す。
【0151】
図9は、衝突セルが高フラグメンテーションモードにあった場合に得られたβ−カゼインのトリプシン消化の質量スペクトルを示す。
【0152】
図10は、図9に示す質量スペクトルを処理および拡大した図である。
【0153】
図11Aは、質量電荷比が880.4である第1の試料からのイオンの質量クロマトグラムを示し、図11Bは、第2の試料からの同じイオンの同様の質量クロマトグラムを示し、図11Cは、質量電荷比が582.3である第1の試料からのイオンの質量クロマトグラムを示し、図11Dは、第2の試料からの同じイオンの同様の質量クロマトグラムを示す。
【0154】
図12Aは、第1の試料から記録された質量スペクトルを示し、図12Bは、両方の試料に共通のタンパク質カゼインのより高い濃度の消化生成物を含む以外は第1の試料と同様の第2の試料から記録される対応の質量スペクトルを示す。
【0155】
図13は、図12Aに示す質量スペクトルをより詳細に示し、挿入図は、質量電荷比880.4においてアイソトープピークを示す質量スペクトルの拡大部分を示す。
【0156】
図14は、図12Bに示す質量スペクトルをより詳細に示し、挿入図は、質量電荷比880.4においてアイソトープピークを示す質量スペクトルの拡大部分を示す。
【0157】
ここで図1を参照して一好適な実施形態を説明する。質量分析計6が示され、質量分析計6は、イオン源1(好ましくは、エレクトロスプレーイオン化源)、イオン源1の下流に配置されるイオンガイド2、四重極質量フィルタ3、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4、およびリフレクトロンを内蔵する直交加速飛行時間質量分析器5を含む。イオンガイド2および質量フィルタ3は、必要に応じて省略され得る。質量分析計6は、好ましくは液体クロマトグラフなどのクロマトグラフ(図示せず)と連結され、イオン源1に入る試料が液体クロマトグラフの溶離剤から取り出され得るようにする。
【0158】
四重極ロッドセット質量フィルタ3は、好ましくは比較的低い圧力(例えば、10-5mbar未満)に維持される真空チャンバに配置される。質量フィルタ3を含むロッド電極が、好ましくは質量フィルタ3の質量電荷値移送ウィンドウを決定するRFおよびDCポテンシャルの両方を生成する電源に接続される。
【0159】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、好ましくは表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、電子移動解離フラグメンテーションデバイスまたは電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む。
【0160】
一実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。この実施形態によると、多価検体イオンが好ましくは比較的低いエネルギーの電子と相互作用するようにされる。電子は、好ましくは<1eVまたは1〜2eVのエネルギーを有する。電子は、好ましくは比較的強い磁場によって閉じ込められ、かつ方向づけられて、好ましくはフラグメンテーションデバイス4内に配置される好ましくはRFイオンガイド内に閉じ込められる検体イオンと衝突するようにする。ACまたはRF電圧が好ましくはRFイオンガイドの電極に印加され、好ましくは半径方向擬ポテンシャル井戸が生成されるようにする。この半径方向擬ポテンシャル井戸は、好ましくはイオンをイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用し、イオンが低エネルギー電子と相互作用し得るようにする。
【0161】
別の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。この実施形態によると、正電荷の検体イオンは、好ましくは負電荷の試薬イオンと相互作用するようにされる。負電荷の試薬イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4内に位置するRFイオンガイドまたはイオントラップ中へ注入される。ACまたはRF電圧が好ましくはRFイオンガイドの電極に印加され、半径方向擬ポテンシャル井戸が好ましくは生成されるようにする。半径方向擬ポテンシャル井戸は、好ましくはイオンをイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用し、イオンが負電荷の試薬イオンと相互作用し得るようにする。あるいは、好ましさが劣る実施形態によると、負電荷の検体イオンが正電荷の試薬イオンと相互作用するようにされ得る。
【0162】
別の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。この実施形態によると、イオンは、好ましくは比較的低いエネルギーで表面またはターゲットプレートへ向かって方向づけられる。イオンは、例えば、1〜10eVのエネルギーを有するように構成され得る。表面またはターゲットプレートは、ステンレススチールを含み得、またはより好ましくは表面またはターゲットプレートは、単層のフッ化炭素または炭化水素でコーティングされた金属プレートを含み得る。単層は、好ましくは自己組織化単層を含む。表面またはターゲットプレートは、イオンがフラグメンテーションされない動作モードにおいて表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを通るイオンの走行方向に実質的に平行である平面内に配置され得る。イオンのフラグメンテーションが所望される動作モードにおいて、イオンは、表面またはターゲットプレート上へまたはそこへ向かって偏向され、イオンが表面またはターゲットプレートに対して比較的浅い角度で表面またはターゲットプレートに当たるようにし得る。フラグメントイオンは、好ましくは検体イオンが表面またはターゲットプレートに衝突した結果として生成される。フラグメントイオンは、好ましくは表面またはターゲットプレートに対して比較的浅い角度で表面またはターゲットプレートから外れるか、または離れるように方向づけられる。次いで、フラグメントイオンは、好ましくは、イオンが実質的にフラグメンテーションされない動作モードにおいて表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを通ってまたは通過して移送されるイオンの軌道に好ましくは対応する軌道を想定するように構成される。
【0163】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、イオンが比較的エネルギーの高い電子(例えば、>5eVの電子)と衝突する際にフラグメンテーションされる電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。
【0164】
他の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、赤外放射誘起解離デバイス、紫外放射誘起解離デバイス、熱または温度源フラグメンテーションデバイス、電界誘起フラグメンテーションデバイス、磁場誘起フラグメンテーションデバイス、酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、またはイオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスを含み得る。
【0165】
一実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、イオン源1の一部を形成し得る。例えば、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、インソースフラグメンテーションデバイス、またはイオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイスを含み得る。
【0166】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4は、四重極または六重極ロッドセットを含み得る。四重極または六重極ロッドセットは、ヘリウム、アルゴン、窒素、空気またはメタンなどのガスが10-4と10-1mbarとの間の圧力、好ましくは10-3mbar〜10-2mbarの圧力で導入され得る実質的に気密ケーシング(小さなイオン入口および出口孔は別にして)内に封入され得る。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4を構成する電極に対して適切なACまたはRFポテンシャルは、電源(図示せず)によって提供され得る。
【0167】
イオン源1によって生成されたイオンは、好ましくはイオンガイド2によって移送され、チャンバ間孔7を介して真空チャンバ8中へ渡される。イオンガイド2は、好ましくはイオン源1および真空チャンバ8の中間の圧力に維持される。上記の実施形態において、イオンは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4に入る前に質量フィルタ3によって質量フィルタリングされ得る。しかし、質量フィルタ3は、この実施形態の省略可能な特徴である。好ましくは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4を出たか、または衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4を通って移送されてきたイオンは、好ましくは飛行時間質量分析器5を含む質量分析器中へ渡る。さらなるイオンガイドおよび/または静電レンズなどの他のイオン光学構成要素(図示せずかつ本明細書中で説明せず)が提供され得る。そのような構成要素を使用して、質量分析計の種々の部品または段の間のイオン移送を最大化し得る。最適な真空条件を維持するために種々の真空ポンプ(図示せず)が提供され得る。リフレクトロンを内蔵する飛行時間質量分析器5は、1パケットのイオンに含まれるイオンの通過時間または飛行時間を測定して、それらの質量電荷比が決定され得るようにすることにより、公知のやり方で動作する。
【0168】
制御手段(図示せず)が好ましくはイオン源1、イオンガイド2、四重極質量フィルタ3、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4および飛行時間質量分析器5に対して必要な動作ポテンシャルをそれぞれ提供する種々の電源(図示せず)に対する制御信号を提供する。これらの制御信号は、好ましくは質量分析計の動作パラメータ(例えば、質量フィルタ3を通って移送される質量電荷比および質量分析器5の動作)を決定する。制御手段は、取得された質量スペクトルデータを処理するためにも使用され得るコンピュータ(図示せず)を含み得る。また、コンピュータは、質量分析器5によって生成された質量スペクトルを表示および格納し、操作者からの命令を受け取り得る。制御手段は、操作者の介入なしに、種々の方法を自動的に行いかつ種々の決定を行うように設定され得るか、または種々の段階で操作者の入力を適宜必要とし得る。
【0169】
制御手段は、好ましくは少なくとも2つの異なるモードの間を行ったり来たりするように衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4を切り換え、変更または改変するように構成される。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4が電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む場合、電子源またはビームは、第1の動作モードにおいてONに切り換えられ得、第2の動作モードにおいてOFFに切り換えられ得る。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4が電子移動解離フラグメンテーションデバイス4を含む場合、第1の動作モードにおいては、試薬イオンが検体イオンを含むイオンガイドまたはイオントラップ中に注入され、第2の動作モードにおいては、イオンガイドまたはイオントラップ中に試薬イオンが実質的に全く注入されないということであってもよい。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4が表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む場合、第1の動作モードにおいては、検体イオンが表面またはターゲットプレート上に衝突または当たるように方向づけられ得、第2の動作モードにおいては、検体イオンが表面またはターゲットプレートに衝突または当たらずに表面またはターゲットプレートを通り過ぎるように真っすぐに方向づけられ得る。
【0170】
一実施形態において、制御手段は、モードの間で、およそ1秒ごとに切り換え、改変または変更し得る。質量分析計6は、液体またはガスクロマトグラフィによって混合物から分離された溶離剤が提供されているイオン源1と併用して設けられる場合、数十分間稼働され得る。この期間にわたり、数百個の高および低フラグメンテーションまたは反応質量スペクトルフラグメンテーションまたは反応質量スペクトルが得られ得る。
【0171】
実験試行の終了時に、得られたデータが好ましくは分析され、親または前駆体イオンおよびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4があるモードにおける場合に得られる質量スペクトルにおけるピークの相対強度と、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス4が第2のモードにおける場合の時間的に約1秒後に得られる質量スペクトルにおける同じピークの強度との比較に基づいて認識される。
【0172】
一実施形態によると、各親およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンに対する質量クロマトグラムが生成され、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、それらの相対溶離時間に基づいて親または前駆体イオンに割り当てられる。
【0173】
この方法の利点は、すべてのデータが取得され、その後処理されるので、すべてのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンがそれらのそれぞれの溶離時間の一致度によって親または前駆体イオンと対応づけられ得る。これにより、すべての親または前駆体イオンが、それらが特徴的なフラグメント、生成物、娘もしくは付加物イオンまたは特徴的な「ニュートラルロス」の存在によって発見されたかどうかにかかわらず、それらのフラグメント、生成物、娘または付加物イオンから同定されることを可能にする。
【0174】
別の実施形態によると、対象の親または前駆体イオンの数を低減するような試みがなされ得る。予想される(すなわち、まだ最終決定されていない)候補の親または前駆体イオンのリストが、対象の所定のフラグメント、生成物、娘または付加物イオン(例えば、ペプチドからのインモニウムイオン)を生じさせたかもしれない親または前駆体イオンを探すことによって作成され得る。あるいは、親およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを求めて検索がなされ得る。ここで、親または前駆体イオンは、所定のイオンまたは中性粒子を含む第1の成分およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを含む第2の成分にフラグメンテーションしていた可能性がある。次いで、種々のステップを行って、候補と考えられる親または前駆体イオンのリストをさらに低減/絞り込みして、いくらかの最終候補の親または前駆体イオンを残し得る。次いで、好ましくは、その後に、最終候補の親または前駆体イオンは、対象の親または前駆体、およびフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの溶離時間を比較することによって同定される。上記からわかるように、2つのイオンは、同様の質量電荷比を有しても、化学構造が異なる場合があり、したがってそのフラグメンテーションは異なる可能性が極めて高いので、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンに基づいて親または前駆体イオンを同定することができる。
【0175】
試料導入システムの詳細を図2に示す。試料は、Micromass(登録商標)社のモジュラーCapLCシステムによって質量分析計6中に導入され得る。例えば、試料をC18カートリッジ(0.3mm×5mm)上に載せ、30μL/分の流量で0.1%HCOOHを用いて3分間脱塩した。次いで、10ポートバルブを切り換えて、ペプチドが分離のための分析カラム上へ溶離するようにした(図2の挿入図を参照)。2つのポンプAおよびBからのフローを分割して、カラムを通る流量を約200nL/分にした。
【0176】
好適な分析カラムは、Waters(登録商標)社のSymmetryC18を詰めたPicoFrit(登録商標)カラムである。これは、質量分析計6中へイオンを直接スプレーするように設定される。エレクトロスプレーポテンシャル(約3kV)が低死容量ステンレススチール継手を介して液体中に印加され得る。少量(約5psi(34.48kPa))の霧状ガスがエレクトロスプレー処理を補助するためにスプレー先端の周辺に導入され得る。
【0177】
データは、Z−spray(登録商標)のナノフローエレクトロスプレーイオン源を取り付けた質量分析計6を使用して取得され得る。質量分析計は、正イオンモードにおいて80℃のソース温度および40L/時間の円錐ガス流量で動作され得る。
【0178】
機器は、例えば、Glu−フィブリノペプチドbのフラグメンテーションから得られる選択フラグメント、生成物、娘または付加物イオンを使用して多点較正で較正され得る。データは、ソフトウェアのMassLynx(登録商標)suiteを使用して処理され得る。
【0179】
衝突誘起解離フラグメンテーションセルの2つの異なる動作モード間での切り換えは、本発明の範囲内に含まれるようには意図されない。しかし、本方法にしたがって得られる実験結果は、本発明の局面を例示することに役立つので、説明する。
【0180】
図3Aおよび3Bは、アルコール脱水素酵素(ADH)のトリプシン消化のフラグメントまたは娘および親または前駆体イオンスペクトルをそれぞれ示す。図3Aに示すフラグメントまたは娘イオンスペクトルは、ガス衝突セルを約30Vの比較的高いポテンシャルに維持し、ガス衝突セルを通るイオンの著しいフラグメンテーションを生じさせることによって得た。図3Bに示す親または前駆体イオンスペクトルは、低い衝突エネルギー(例えば、5V以下)で得た。図3Bに表すデータは、衝突セルの上流に配置され、質量電荷比が>350であるイオンを移送するように設定された質量フィルタ3を使用して得た。この特定の例における質量スペクトルは、液体クロマトグラフから溶離した試料から得た。スペクトルは、十分に迅速かつ時間について互いに接近して得られたので、液体クロマトグラフから溶離した同じ成分に本質的に対応する。
【0181】
図3Aに示す質量スペクトルは、衝突セルを使用し、衝突誘起解離によってイオンをフラグメンテーションして得た。そのようなアプローチは、本発明の範囲内に含まれるようには意図されない。しかし、得られた質量スペクトルおよび質量スペクトルデータの処理に関する以下の記載は、本発明の種々の局面を例示する。
【0182】
図3Bにおいて、親または前駆体イオンスペクトルにおいていくつかの高強度ピーク(例えば、418.7724および568.7813におけるピーク)がある。これらは、図3Aに示す対応のフラグメントイオンスペクトルにおいては実質的に強度がより低い。したがって、これらのピークは、親または前駆体イオンであると認識され得る。同様に、図3Bに示す親または前駆体イオンスペクトルよりも図3Aに示すフラグメントまたは娘イオンスペクトルにおいて強度が高いイオンは、フラグメントまたは娘イオンであると認識され得る。また、上記から明らかなように、したがって、図3Aに示す高フラグメンテーション質量スペクトルにおける質量電荷値が350未満のすべてのイオンは、それらのイオンが350未満の質量電荷値を有すること、かつ質量電荷値が350より大きな親または前駆体イオンだけが質量フィルタ5によって衝突セルに移送されたという事実に基づいて、フラグメントまたは娘イオンであると容易に認識され得る。
【0183】
図4A〜4Eは、3つの親または前駆体イオンおよび2つのフラグメントまたは娘イオンに対する質量クロマトグラムをそれぞれ示す。親または前駆体イオンは、質量電荷比が406.2(ピーク「MC1」)、418.7(ピーク「MC2」)および568.8(ピーク「MC3」)であると決定され、2つのフラグメントまたは娘イオンは、質量電荷比が136.1(ピーク「MC4」および「MC5」)および120.1(ピーク「MC6」)であると決定された。
【0184】
親または前駆体イオンピークMC1(質量電荷比が406.2)は、フラグメントまたは娘イオンピークMC5(質量電荷比が136.1)とよく相関すること、すなわち、質量電荷比が406.2である親または前駆体イオンがフラグメンテーションして質量電荷比が136.1であるフラグメントまたは娘イオンを生成したらしいことが分かる。同様に、親または前駆体イオンピークMC2およびMC3は、フラグメントまたは娘イオンピークMC4およびMC6とよく相関するが、どの親または前駆体イオンがどのフラグメントまたは娘イオンに対応するかを決定することは困難である。
【0185】
図5は、図4A〜4Eのピークを順に重ね、異なるスケールで再描画したものを示す。MC2、MC3、MC4およびMC6のピークを注意深く比較すると、実際に、親または前駆体イオンMC2およびフラグメントまたは娘イオンMC4がよく相関し、他方親または前駆体イオンMC3がフラグメントまたは娘イオンMC6とよく相関することが分かる。これは、質量電荷比が418.7である親または前駆体イオンがフラグメンテーションして、質量電荷比が136.1であるフラグメントまたは娘イオンを生成すること、および質量電荷比が568.8である親または前駆体イオンがフラグメンテーションして、質量電荷比が120.1であるフラグメントまたは娘イオンを生成することを示す。
【0186】
この質量クロマトグラムの相互相関は、適切なコンピュータ上で実行する適切なピーク比較ソフトウェアプログラムなどの自動ピーク比較手段によって実施され得る。
【0187】
図6は、質量分析計6を使用して得られたHPLC分離および質量分析から抽出された質量電荷比が87.04を有するフラグメントまたは娘イオンに対する質量クロマトグラムを示す。アミノ酸であるアスパラギンに対するインモニウムイオンは、質量電荷値が87.04であることが知られている。このクロマトグラムは、質量分析計に記録されたすべての高エネルギースペクトルから抽出された。図7は、スキャン番号604に対応する全質量スペクトルを示す。これは、質量分析計6上に記録された低エネルギー質量スペクトルであり、質量電荷比が87.04の質量クロマトグラムにおける最大のピークに対応するスキャン605における高エネルギースペクトルの隣の低いエネルギースペクトルである。これは、質量電荷比が87.04でのアスパラギンインモニウムイオンに対する親または前駆体イオンが1012.54の質量を有することを示す。なぜなら、質量電荷比が1013.54での一価の(M+H)+イオンおよび質量電荷比が507.27での二価の(M+2H)++イオンを示すからである。
【0188】
図8は、タンパク質β−カゼインのトリプシン消化の質量分析計6上に記録された低エネルギースペクトルからの質量スペクトルを示す。タンパク質消化生成物は、HPLCによって分離し、質量分析した。質量スペクトルは、MSモードにおいて動作する質量分析計6上で記録し、連続したスペクトルのためにガス衝突フラグメンテーションセルにおいて低および高衝突エネルギーを交番させた。図9は、上記図8における低エネルギー質量スペクトルと実質的に同時に記録された高エネルギースペクトルからの質量スペクトルを示す。図10は、上記図9に示す質量スペクトルを処理し、拡大した図を示す。このスペクトルに対して、連続データを処理して、ピークを同定し、ピーク面積に比例した高さを有する線で表示し、かつそれらの質量中心に対応する質量を注釈として付け加えた。質量電荷比が1031.4395でのピークは、ペプチドの二価(M+2H)++イオンであり、質量電荷比が982.4515でのピークは、二価フラグメントまたは娘イオンである。それは、フラグメントまたは娘イオンに違いない。なぜなら、それは、低エネルギースペクトルには存在しないからである。これらのイオンの質量差は、48.9880である。H3PO4に対する理論質量は、97.9769であり、二価H3PO4++イオンに対する質量電荷値は、48.9884であり、観察値との差は、ほんの8ppmである。したがって、質量電荷比が982.4515であるピークは、H3PO4++イオンを失った質量電荷比が1031.4395であるペプチドイオンから得られたフラグメントまたは娘イオンに関係する。
【0189】
タンパク質の混合物を含む2つの異なる試料に含まれる2つのタンパク質の相対存在度を定量化する上記好適な実施形態の能力を例示するいくつかの実験データをここで提示する。
【0190】
第1の試料は、3つのタンパク質であるBSA、グリコーゲンホスホリラーゼBおよびカゼインのトリプシン消化生成物を含むものであった。これら3つのタンパク質は、はしめに1:1:1の比で存在していた。3つのタンパク質のそれぞれは、330fmol/μlの濃度を有していた。第2の試料は、同じ3つのタンパク質であるBSA、グリコーゲンホスホリラーゼBおよびカゼインのトリプシン消化生成物を含んでいた。しかし、タンパク質は、はじめに1:1:Xの比で存在していた。Xは、不確定であったが、2〜3の範囲にあると考えられた。第2の試料混合物におけるタンパク質BSAおよびグリコーゲンホスホリラーゼBの濃度は、第1の試料における場合と同じであった(すなわち、330fmol/μl)。
【0191】
従った実験プロトコルは、1μlの試料を分離するためにHPLCカラム上へ4μl/分の流量で装填させるものであった。次いで、液体フローは、ナノエレクトロスプレーイオン化源への流量が約200nl/分となるように分割した。
【0192】
質量スペクトルは、質量分析計6上に記録された。質量スペクトルは、窒素衝突ガスを使用し、交番する低および高衝突エネルギーで記録された。低衝突エネルギー質量スペクトルは、10Vの衝突電圧で記録され、高衝突エネルギー質量スペクトルは、33Vの衝突電圧で記録された。質量分析計には、独立した液体フローをイオン化源に送るナノロックスプレーデバイスが取り付けられた。イオン化源は、基準質量を提供するようにときおりサンプリングされ得る。基準質量から質量較正が定期的に確認され得る。これにより、確実に、質量測定の正確さが5ppmのRMS精度内となった。データは、MassLynx(登録商標)データシステムを使用して記録および処理した。
【0193】
まず、第1の試料を分析し、そのデータを基準として使用した。次いで、第1の試料をさらに2回分析した。第2の試料を2回分析した。これらの分析からのデータを使用して、第2の試料におけるカゼインの(未知の)相対存在度を定量しようとした。
【0194】
すべてのデータファイルは、自動的に処理され、各実験に対してイオンとそれに関連する面積のリストおよび高衝突エネルギースペクトルを生成する。このリストは、次いでProteinLynx(登録商標)検索エンジンを使用して、Swiss−Protタンパク質データベースと突き合わせて検索される。クロマトグラフピーク面積は、Waters(登録商標)社のApex Peak Trackingアルゴリズムを使用して得た。存在が見つけられた各電荷状態に対するクロマトグラムを合計した後で積分した。
【0195】
2つの試料に対する、種々のペプチドイオンの実験により決定された相対表現レベルであって、基準データに対して正規化されたものを以下の表に与える。
【0196】
【表1】

【0197】
上記表において、配列が高衝突エネルギーデータによって確定されたペプチドには、下線が引かれている。確定とは、このペプチドの確率が、その正確な質量および対応する高衝突エネルギーデータが与えられた場合に、現在の電流フラグメンテーションまたは反応モデルが与えられたデータベースにおけるいずれの他のペプチドよりも大きいことを意味する。残りのペプチドは、確定されたペプチドに対するものと比較されたそれらの保持時間および質量に基づいて正確であると考えられる。注入体積誤差および他の効果によって結果に何らかの実験誤差があり得ることが予想された。
【0198】
BSAを内部基準とした場合、第1の試料におけるグリコーゲンホスホリラーゼBの相対存在度は、0.925(第1の分析)および1.119(第2の分析)であると決定され、その平均が1.0となった。第2の試料におけるグリコーゲンホスホリラーゼBの相対存在度は、1.244(第1の分析)および1.292(第2の分析)であると決定され、その平均が1.3となった。これらの結果は、予想値1と比べて遜色がない。
【0199】
同様に、第1の試料におけるカゼインの相対存在度は、0.980(第1の分析)および1.111(第2の分析)であると決定され、その平均が1.0となった。第2の試料におけるカゼインの相対存在度は、2.729(第1の分析)および2.761(第2の分析)であると決定され、その平均が2.7となった。これらの結果は、予想値1および2〜3と比べて遜色がない。
【0200】
以下のデータは、第1および第2の試料から得られるクロマトグラムおよび質量スペクトルに関する。配列HQGLPQEVLNENLLRを有するカゼイン由来のあるペプチドは、配列LVNELTEFAKを有するBSA由来のペプチドとほぼ正確に同時に溶離する。これはまれにしか起こらないが、2つの異なる試料におけるカゼインの存在度を比較する機会を与える。
【0201】
図11A〜11Dは、4つの質量クロマトグラムを示す。2つは、第1の試料に関し、2つは、第2の試料に関する。図11Aは、配列HQGLPQEVLNENLLRを有し、カゼインに由来するペプチドイオン(M+2H)++に対応する、質量電荷比が880.4のイオンに対する第1の試料に関する質量クロマトグラムを示す。図11Bは、カゼイン由来の配列HQGLPQEVLNENLLRを有する同じペプチドイオンに対応する第2の試料に関する質量クロマトグラムを示す。
【0202】
図11Cは、配列LVNELTEFAKを有し、BSAに由来するペプチドイオン(M+2H)++に対応する、質量電荷比が582.3のイオンに対する第1の試料に関する質量クロマトグラムを示す。図11Dは、配列LVNELTEFAKを有し、BSAに由来する同じペプチドイオンに対応する第2の試料に関する質量クロマトグラムを示す。質量クロマトグラムは、BSA由来の、質量電荷比が582.3であるペプチドイオンが両方の試料中にほぼ等量存在し、他方カゼイン由来の、質量電荷比が880.4であるペプチドイオンの強度においてはおよそ100%の違いがあることを示す。
【0203】
図12Aは、第1の試料からの約20分後に記録された親または前駆体イオン質量スペクトルを示し、図12Bは、第2の試料からの実質的に同じ時間後に記録された親または前駆体イオン質量スペクトルを示す。質量スペクトルは、質量電荷比が582.3である(BSA由来)イオンの強度が両方の質量スペクトルでおよそ同じであり、他方カゼインからのペプチドイオンに関する質量電荷比が880.4のイオンは、第1の試料と比較して、第2の試料における強度がおよそ2倍であることを示す。これは、予想と一致する。
【0204】
図13は、図12Aに示す親または前駆体イオン質量スペクトルをより詳細に示す。質量電荷が582.3であるBSAペプチドイオンに対応するピークおよび質量電荷比が880.4であるカゼインペプチドイオンに対応するピークが明らかに見られ得る。挿入図は、質量電荷比が880.4であるペプチドイオンのアイソトープピークを示すスペクトルの拡大部分を示す。同様に、図14は、図12Bに示す親または前駆体イオン質量スペクトルをより詳細に示す。やはり、質量電荷比が582.3であるBSAペプチドイオンに対応するピークおよび質量電荷比が880.4であるカゼインペプチドイオンに対応するピークが明らかに見られ得る。挿入図は、質量電荷比が880.4であるペプチドイオンのアイソトープピークを示すスペクトルの拡大部分を示す。図12〜14、ならびに図13および14の挿入図の比較から明らかなように、カゼイン由来の、質量電荷比880.4に質量スペクトルピークを有するペプチドイオンの存在度は、第1の試料に比較して、第2の試料における存在度がおよそ2倍である。
【0205】
本発明を好適な実施形態を参照して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載されるような発明の範囲を逸脱することなく種々の変更が形態および詳細においてなされ得ることが当業者に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0206】
【図1】図1は、好適な質量分析計の模式図である。
【図2】図2は、試料装填および脱塩の際のバルブスイッチ構成の模式図であり、挿入図は、分析カラムからの試料の脱離を示す。
【図3】図3Aは、フラグメントまたは娘イオン質量スペクトルを示し、図3Bは、衝突セルの上流の質量フィルタが、質量電荷比が>350であるイオンを衝突セルへ移送するように構成された場合に得られた、対応する親または前駆体イオン質量スペクトルを示す。
【図4】図4Aは、親または前駆体イオンの質量クロマトグラムを示し、図4Bは、親または前駆体イオンの質量クロマトグラムを示し、図4Cは、親または前駆体イオンの質量クロマトグラムを示し、図4Dは、フラグメントまたは娘イオンの質量クロマトグラムを示し、図4Eは、フラグメントまたは娘の質量クロマトグラムを示す。
【図5】図5は、図4A〜4Eを順に重ねた質量クロマトグラムを示す。
【図6】図6は、質量電荷比が87.04であるアスパラギンインモニウムイオンの質量クロマトグラムを示す。
【図7】図7は、配列がANELLINVKであり、分子量が1012.59であるADH由来のペプチドイオンT5の質量スペクトルを示す。
【図8】図8は、衝突セルが低フラグメンテーションモードにあった場合に得られたβ−カゼインのトリプシン消化の質量スペクトルを示す。
【図9】図9は、衝突セルが高フラグメンテーションモードにあった場合に得られたβ−カゼインのトリプシン消化の質量スペクトルを示す。
【図10】図10は、図9に示す質量スペクトルを処理および拡大した図である。
【図11】図11Aは、質量電荷比が880.4である第1の試料からのイオンの質量クロマトグラムを示し、図11Bは、第2の試料からの同じイオンの同様の質量クロマトグラムを示し、図11Cは、質量電荷比が582.3である第1の試料からのイオンの質量クロマトグラムを示し、図11Dは、第2の試料からの同じイオンの同様の質量クロマトグラムを示す。
【図12】図12Aは、第1の試料から記録された質量スペクトルを示し、図12Bは、両方の試料に共通のタンパク質カゼインのより高い濃度の消化生成物を含む以外は第1の試料と同様の第2の試料から記録される対応の質量スペクトルを示す。
【図13】図13は、図12Aに示す質量スペクトルをより詳細に示し、挿入図は、質量電荷比880.4においてアイソトープピークを示す質量スペクトルの拡大部分を示す。
【図14】図14は、図12Bに示す質量スペクトルをより詳細に示し、挿入図は、質量電荷比880.4においてアイソトープピークを示す質量スペクトルの拡大部分を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第1の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第2の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する前記第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する前記第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
前記第1の親または前駆体イオンの強度を前記第2の親または前駆体イオンの強度と比較するステップと
を含み、
前記第1の親または前駆体イオンの強度が前記第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法。
【請求項2】
前記第1の動作モードにおいて、前記電子は、(i)<1eV、(ii)1〜2eV、(iii)2〜3eV、(iv)3〜4eV、および(v)4〜5eVからなる群から選択されるエネルギーを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の動作モードにおいて、前記電子は、磁場によって閉じ込められる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
電子源を準備するステップをさらに含む、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の動作モードにおいて、前記電子源は、前記親または前駆体イオンと相互作用するように構成される複数の電子を生成する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の動作モードにおいて、前記電子源は、OFFに切り換えられる、請求項4または5に記載の方法。
【請求項7】
質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第1の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第2の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する前記第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する前記第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
前記第1の親または前駆体イオンの強度を前記第2の親または前駆体イオンの強度と比較するステップと
を含み、
前記第1の親または前駆体イオンの強度が前記第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法。
【請求項8】
質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第1の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第2の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する前記第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する前記第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
前記第1の親または前駆体イオンの強度を前記第2の親または前駆体イオンの強度と比較するステップと
を含み、
前記第1の親または前駆体イオンの強度が前記第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法。
【請求項9】
前記第1の動作モードにおいて、前記親または前駆体イオンは、前記表面またはターゲットプレート上へ方向づけられるか、進路変更されるか、または偏向される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の動作モードにおいて、前記親または前駆体イオンは、前記表面またはターゲットプレート上へ方向づけられず、進路変更されず、または偏向されない、請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
前記表面またはターゲットプレートは、自己組織化単層を含む、請求項8、9または10に記載の方法。
【請求項12】
前記表面またはターゲットプレートは、フッ化炭素または炭化水素単層を含む、請求項8〜11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記表面またはターゲットプレートは、前記第2の動作モードにおいて前記親または前駆体イオンの走行方向に実質的に平行である平面内に構成される、請求項8〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第1の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応されて、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第2の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応されて、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第1の質量電荷比を有する前記第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する前記第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
前記第1の親または前駆体イオンの強度を前記第2の親または前駆体イオンの強度と比較するステップと
を含み、
前記第1の親または前駆体イオンの強度が前記第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
方法。
【請求項15】
質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第1の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第2の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する前記第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する前記第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
前記第1の親または前駆体イオンの強度の前記第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定するステップと、
前記第2の親または前駆体イオンの強度の前記第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定するステップと、
前記第1の比を前記第2の比と比較するステップと
を含み、
前記第1の比が前記第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法。
【請求項16】
前記第1の動作モードにおいて、前記電子は、(i)<1eV、(ii)1〜2eV、(iii)2〜3eV、(iv)3〜4eV、および(v)4〜5eVからなる群から選択されるエネルギーを有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1の動作モードにおいて、前記電子は、磁場によって閉じ込められる、請求項15または16に記載の方法。
【請求項18】
電子源を準備するステップをさらに含む、請求項15、16または17に記載の方法。
【請求項19】
前記第1の動作モードにおいて、前記電子源は、前記親または前駆体イオンと相互作用するように構成される複数の電子を生成する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記第2の動作モードにおいて、前記電子源は、OFFに切り換えられる、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第1の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを電子移動解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記電子移動解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第2の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する前記第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する前記第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
前記第1の親または前駆体イオンの強度の前記第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定するステップと、
前記第2の親または前駆体イオンの強度の前記第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定するステップと、
前記第1の比を前記第2の比と比較するステップと
を含み、
前記第1の比が前記第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法。
【請求項22】
質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第1の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを含む衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記表面誘起解離フラグメンテーションデバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第2の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、ステップと、
第1の質量電荷比を有する前記第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する前記第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
前記第1の親または前駆体イオンの強度の前記第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定するステップと、
前記第2の親または前駆体イオンの強度の前記第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定するステップと、
前記第1の比を前記第2の比と比較するステップと
を含み、
前記第1の比が前記第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
方法。
【請求項23】
前記第1の動作モードにおいて、前記親または前駆体イオンは、前記表面またはターゲットプレート上へ方向づけられるか、進路変更されるか、または偏向される、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記第2の動作モードにおいて、前記親または前駆体イオンは、前記表面またはターゲットプレート上へ方向づけられず、進路変更されず、または偏向されない、請求項22または23に記載の方法。
【請求項25】
前記表面またはターゲットプレートは、自己組織化単層を含む、請求項22、23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記表面またはターゲットプレートは、フッ化炭素または炭化水素単層を含む、請求項22〜25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
前記表面またはターゲットプレートは、前記第2の動作モードにおいて前記親または前駆体イオンの走行方向に実質的に平行である平面内に構成される、請求項22〜26のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第1の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応されて、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第2の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかがフラグメンテーションまたは反応されて、フラグメント、娘、生成物または付加物イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第1の質量電荷比を有する前記第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
同じ第1の質量電荷比を有する前記第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を自動的に決定するステップと、
前記第1の親または前駆体イオンの強度の前記第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定するステップと、
前記第2の親または前駆体イオンの強度の前記第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定するステップと、
前記第1の比を前記第2の比と比較するステップと
を含み、
前記第1の比が前記第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
方法。
【請求項29】
前記第1の試料において存在する前記他の親または前駆体イオンおよび/または前記第2の試料において存在する前記他の親または前駆体イオンのいずれか一方は、前記試料に対して内因性である、請求項15〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記第1の試料において存在する前記他の親または前駆体イオンおよび/または前記第2の試料において存在する前記他の親または前駆体イオンのいずれか一方は、前記試料に対して外因性である、請求項15〜28のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記第1の試料において存在する前記他の親または前駆体イオンおよび/または前記第2の試料において存在する前記他の親または前駆体イオンは、さらにクロマトグラフ保持時間基準として使用される、請求項15〜30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを少なくとも前記第1のモードおよび前記第2のモードの間で、少なくとも0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、2、3、4、5、6、7、8、9または10秒毎に1回、自動的に切り換え、改変、または変更するステップを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記所定量は、(i)1%、(ii)10%、(iii)50%、(iv)100%、(v)150%、(vi)200%、(vii)250%、(viii)300%、(ix)350%、(x)400%、(xi)450%、(xii)500%、(xiii)1000%、(xiv)5000%、または(xv)10000%からなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)0.0001mbar以上、(ii)0.0005mbar以上、(iii)0.001mbar以上、(iv)0.005mbar以上、(v)0.01mbar以上、(vi)0.05mbar以上、(vii)0.1mbar以上、(viii)0.5mbar以上、(ix)1mbar以上、(x)5mbar以上、および(xi)10mbar以上からなる群から選択される圧力に維持される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)10mbar以下、(ii)5mbar以下、(iii)1mbar以下、(iv)0.5mbar以下、(v)0.1mbar以下、(vi)0.05mbar以下、(vii)0.01mbar以下、(viii)0.005mbar以下、(ix)0.001mbar以下、(x)0.0005mbar以下、および(xi)0.0001mbar以下からなる群から選択される圧力に維持される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス内のガスは、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第1のモードにある場合には第1の圧力に維持され、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第2のモードにある場合にはより低い第2の圧力に維持される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス内のガスは、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第1のモードにある場合には第1のガスまたは第1のガス混合物を含み、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第2のモードにある場合には異なる第2のガスまたは異なる第2のガス混合物を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記対象の親または前駆体イオンを同定するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記対象の親または前駆体イオンを同定するステップは、前記対象の親または前駆体イオンの質量電荷比を決定するステップを含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記対象の親または前駆体イオンの質量電荷比は、20ppm、15ppm、10ppmまたは5ppm以下で、決定される、請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記対象の親または前駆体イオンの前記決定された質量電荷比をイオンおよびそれらに対応する質量電荷比のデータベースと比較するステップをさらに含む、請求項39または40に記載の方法。
【請求項42】
前記対象の親または前駆体イオンを同定するステップは、前記対象の親または前駆体イオンのフラグメンテーションまたは反応から得られると判断される1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを同定するステップを含む、請求項38〜41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを同定するステップは、前記1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比を、20ppm、15ppm、10ppmまたは5ppm以下で、決定するステップをさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記対象の親または前駆体イオンを同定するステップは、
前記対象の親または前駆体イオンが、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが所定の期間前記第2のモードにある場合に得られる質量スペクトルにおいて観察されるかどうか、および
前記フラグメント、生成物、娘または付加物イオンが、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第1のモードにある場合の前記所定の期間の直前、または前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第1のモードにある場合の前記所定の期間の直後のいずれかに得られる質量スペクトルにおいて観察されるかどうかを決定するステップを含む、請求項42または43に記載の方法。
【請求項45】
前記対象の親または前駆体イオンを同定するステップは、前記対象の親または前駆体イオンの溶離時間が前記フラグメント、生成物、娘または付加物イオンの擬溶離時間と実質的に同じであると決定するステップを含む、請求項42、43または44に記載の方法。
【請求項46】
前記対象の親または前駆体イオンを同定するステップは、前記対象の親または前駆体イオンの溶離プロファイルを前記フラグメント、生成物、娘または付加物イオンの擬溶離プロファイルと比較するステップを含む、請求項42〜45のいずれかに記載の方法。
【請求項47】
逐次得られる2つの質量スペクトルを比較してイオンが親または前駆体イオンであると決定するステップであって、
第1の質量スペクトルは、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第1のモードであった場合に得られ、
第2の質量スペクトルは、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第2のモードにあった場合に得られ、
イオンは、前記第2の質量スペクトルにおける前記イオンに対応するピークが前記第1の質量スペクトルにおける前記イオンに対応するピークよりも強度が高い場合に親または前駆体イオンであると判断される、ステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項48】
逐次得られる2つの質量スペクトルを比較してイオンがフラグメント、生成物、娘または付加物イオンであると決定するステップであって、
第1の質量スペクトルは、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第1のモードであった場合に得られ、
第2の質量スペクトルは、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第2のモードにあった場合に得られ、
イオンは、前記第1の質量スペクトルにおける前記イオンに対応するピークが前記第2の質量スペクトルにおける前記イオンに対応するピークよりも強度が高い場合にフラグメント、生成物、娘または付加物イオンであると判断される、ステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項49】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流に質量フィルタを準備するステップであって、前記質量フィルタは、第1の範囲内の質量電荷比を有するイオンを移送するが、第2の範囲内の質量電荷比を有するイオンを実質的に減衰させるように構成される、ステップ
をさらに含み、
イオンは、前記第2の範囲内にある質量電荷比を有すると判断された場合に、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンであると判断される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
前記第1の親または前駆体イオンおよび前記第2の親または前駆体イオンは、40ppm、35ppm、30ppm、25ppm、20ppm、15ppm、10ppmまたは5ppm以下だけ異なる質量電荷比を有すると判断される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記第1の親または前駆体イオンおよび前記第2の親または前駆体イオンは、実質的に同じ溶離時間後にクロマトグラフィカラムから溶離したと判断される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記第1の親または前駆体イオンは、1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせると判断され、
前記第2の親または前駆体イオンは、1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせると判断され、
前記1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンおよび前記1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、実質的に同じ質量電荷比を有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンおよび前記1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの質量電荷比は、40ppm、35ppm、30ppm、25ppm、20ppm、15ppm、10ppmまたは5ppm以下だけ異なると判断される、請求項52に記載の方法。
【請求項54】
前記第1の親または前駆体イオンは、1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせると判断され、
前記第2の親または前駆体イオンは、1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせると判断され、
前記第1の親または前駆体イオンおよび前記第2の親または前駆体イオンは、所定の時点で前記第2のモードにおいて得られるデータに関連する質量スペクトルにおいて観察され、
前記1つ以上の第1および第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第1のモードにある場合の前記所定の時点の直前または前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第1のモードにある場合の前記所定の時点の直後のいずれか一方において得られるデータに関連する質量スペクトルにおいて観察される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
前記第1の親または前駆体イオンは、1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせると判断され、
前記第2の親または前駆体イオンは、1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせると判断され、
前記第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、前記第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンと実質的に同じ擬溶離時間を有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
前記第1の親または前駆体イオンは、1つ以上の第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせると判断され、
前記第2の親または前駆体イオンは、1つ以上の第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生じさせると判断され、
前記第1の親または前駆体イオンは、前記第1のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの擬溶離プロファイルに相関する溶離プロファイルを有すると判断され、
前記第2の親または前駆体イオンは、前記第2のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンの擬溶離プロファイルに相関する溶離プロファイルを有すると判断される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
前記第1の親または前駆体イオンおよび前記第2の親または前駆体イオンは、多価であると判断される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記第1の親または前駆体イオンおよび前記第2の親または前駆体イオンは、同じ荷電状態を有すると判断される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
前記第1の親または前駆体イオンのフラグメンテーションまたは反応から得られると判断されるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンは、前記第2の親または前駆体イオンのフラグメンテーションまたは反応から得られると判断されるフラグメント、生成物、娘または付加物イオンと同じ荷電状態を有すると判断される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項60】
前記第1の試料および/または前記第2の試料は、複数の異なる生体高分子、タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、オリゴヌクレオチド、オリゴヌクレオシド、アミノ酸、炭水化物、糖、脂質、脂肪酸、ビタミン、ホルモン、DNAの部分またはフラグメント、cDNAの部分またはフラグメント、RNAの部分またはフラグメント、mRNAの部分またはフラグメント、tRNAの部分またはフラグメント、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体、リボヌクレアーゼ、酵素、代謝産物、多糖類、リン酸化ペプチド、リン酸化タンパク質、糖ペプチド、糖タンパク質またはステロイドを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項61】
前記第1の試料および/または前記第2の試料は、異なるアイデンティティを有する少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1500、2000、2500、3000、3500、4000、4500、または5000個の分子を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項62】
(i)前記第1の試料は、罹患生物から採取され、前記第2の試料は、非罹患生物から採取される、(ii)前記第1の試料は、処置生物から採取され、前記第2の試料は、非処置生物から採取される、または(iii)前記第1の試料は、突然変異生物から採取され、前記第2の試料は、野生型生物から採取される、のいずれかである、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項63】
前記第1のおよび/または第2の試料からの分子は、(i)高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)、(ii)陰イオン交換、(iii)陰イオン交換クロマトグラフィ、(iv)陽イオン交換、(v)陽イオン交換クロマトグラフィ、(vi)イオン対逆相クロマトグラフィ、(vii)クロマトグラフィ、(viii)1次元電気泳動、(ix)多次元電気泳動、(x)サイズ排除、(xi)親和性、(xii)逆相クロマトグラフィ、(xiii)キャビラリ−電気泳動クロマトグラフィ(「CEC」)、(xiv)電気泳動、(xv)イオン移動度分離、(xvi)フィールド非対称イオン移動度分離(「FAIMS」)、または(xvi)キャピラリー電気泳動によってイオン化される前に、他の分子の混合物から分離される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項64】
前記第1および第2の試料イオンは、ペプチドイオンを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項65】
前記ペプチドイオンは、1つ以上のタンパク質の消化生成物を含む、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
前記対象の親または前駆体イオンに相関するタンパク質を同定しようとするステップをさらに含む、請求項64または65に記載の方法。
【請求項67】
タンパク質が消化された場合にどのペプチド生成物が形成されると予測されるかを決定し、いずれかの予測ペプチド生成物が対象の親または前駆体イオンに相関するかどうかを判断するステップをさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記対象の親または前駆体イオンが1つ以上のタンパク質と相関するかどうかを判断するステップをさらに含む、請求項66に記載の方法。
【請求項69】
前記第1および第2の試料は、同じ生物から採取される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項70】
前記第1および第2の試料は、異なる生物から採取される、請求項1〜68のいずれかに記載の方法。
【請求項71】
前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンは、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて親または前駆体イオンがフラグメンテーションすることによって生じたフラグメント、生成物、娘または付加物イオンではないと確定するステップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項72】
前記第1のモードにおいて得られるデータに関連する第1の質量スペクトルを前記第2のモードにおいて得られるデータに関連する第2の質量スペクトルと比較するステップであって、前記両質量スペクトルは、実質的に同時に得られる、ステップと、
前記第1のおよび/または前記第2の親または前駆体イオンが第1の質量スペクトルに比べて第2の質量スペクトルにおける強度がより大きい場合に、前記第1のおよび/または前記第2の親または前駆体イオンは、フラグメント、生成物、娘または付加物イオンではないと判断するステップと
をさらに含む、請求項71に記載の方法。
【請求項73】
前記第1の試料からの親または前駆体イオンおよび前記第2の試料からの親または前駆体イオンは、同じ衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項74】
前記第1の試料からの親または前駆体イオンおよび前記第2の試料からの親または前駆体イオンは、異なる衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡される、請求項1〜72のいずれかに記載の方法。
【請求項75】
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスであって、前記第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)前記第1の親または前駆体イオンの強度を前記第2の親または前駆体イオンの強度と比較する
制御システムと
を含み、
前記第1の親または前駆体イオンの強度が前記第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計。
【請求項76】
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される電子移動解離フラグメンテーションデバイスであって、前記第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、電子移動解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)前記第1の親または前駆体イオンの強度を前記第2の親または前駆体イオンの強度と比較する
制御システムと
を含み、
前記第1の親または前駆体イオンの強度が前記第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計。
【請求項77】
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される表面誘起解離フラグメンテーションデバイスであって、前記第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)前記第1の親または前駆体イオンの強度を前記第2の親または前駆体イオンの強度と比較する
制御システムと
を含み、
前記第1の親または前駆体イオンの強度が前記第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計。
【請求項78】
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、前記第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応されて、1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)前記第1の親または前駆体イオンの強度を前記第2の親または前駆体イオンの強度と比較する
制御システムと
を含み、
前記第1の親または前駆体イオンの強度が前記第2の親または前駆体イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
質量分析計。
【請求項79】
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスであって、前記第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが電子と相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、電子捕獲解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)前記第1の親または前駆体イオンの強度の前記第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定し、
(iv)前記第2の親または前駆体イオンの強度の前記第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定し、
(v)前記第1の比を前記第2の比と比較する
制御システムと
を含み、
前記第1の比が前記第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計。
【請求項80】
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される電子移動解離フラグメンテーションデバイスであって、前記第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが試薬イオンと相互作用する際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、電子移動解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)前記第1の親または前駆体イオンの強度の前記第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定し、
(iv)前記第2の親または前駆体イオンの強度の前記第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定し、
(v)前記第1の比を前記第2の比と比較する
制御システムと
を含み、
前記第1の比が前記第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計。
【請求項81】
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される表面誘起解離フラグメンテーションデバイスであって、前記第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが表面またはターゲットプレートに当たる際にフラグメンテーションされて、フラグメントまたは娘イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、表面誘起解離フラグメンテーションデバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)前記第1の親または前駆体イオンの強度の前記第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定し、
(iv)前記第2の親または前駆体イオンの強度の前記第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定し、
(v)前記第1の比を前記第2の比と比較する
制御システムと
を含み、
前記第1の比が前記第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられる、
質量分析計。
【請求項82】
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、前記第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応されて、1つ以上のフラグメント、生成物、娘または付加物イオンを生成し、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の質量電荷比を有する第1の試料からの第1の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(ii)同じ第1の質量電荷比を有する第2の試料からの第2の親または前駆体イオンの強度を決定し、
(iii)前記第1の親または前駆体イオンの強度の前記第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第1の比を決定し、
(iv)前記第2の親または前駆体イオンの強度の前記第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度に対する第2の比を決定し、
(v)前記第1の比を前記第2の比と比較する
制御システムと
を含み、
前記第1の比が前記第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(ii)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(iv)赤外放射誘起解離デバイス、(v)紫外放射誘起解離デバイス、(vi)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(vii)インソースフラグメンテーションデバイス、(viii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(ix)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(x)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xi)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xii)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xiii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xiv)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xv)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xx)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
質量分析計。
【請求項83】
イオン源をさらに含む、請求項75〜82のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項84】
前記イオン源は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、および(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択される、請求項83に記載の質量分析計。
【請求項85】
前記イオン源は、パルス化または連続イオン源を含む、請求項83または84に記載の質量分析計。
【請求項86】
前記イオン源には、所定期間にわたり溶離剤が提供され、前記溶離剤は、液体クロマトグラフィまたはキャピラリー電気泳動によって混合物から分離されたものである、請求項83、84または85のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項87】
前記イオン源には、所定期間にわたり溶離剤が提供され、前記溶離剤は、ガスクロマトグラフィによって混合物から分離されたものである、請求項83、84または85のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項88】
前記質量分析器は、(i)四重極質量分析器、(ii)2Dまたは直線四重極質量分析器、(iii)ポールまたは3D四重極質量分析器、(iv)ペニングトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)扇形磁場質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(ix)静電またはオービトラップ質量分析器、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換質量分析器、(xii)飛行時間質量分析器、(xiii)直交加速飛行時間質量分析器、(xiv)軸方向加速飛行時間質量分析器、および(xv)四重極ロッドセット質量フィルタまたは分析器からなる群から選択される、請求項75〜87のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項89】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流および/または下流に配置されるイオントラップまたはイオンガイドをさらに含む、請求項75〜88のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項90】
前記イオントラップまたはイオンガイドは、
(i)四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセットまたは8個より多くのロッドを含むロッドセットを含む多重極ロッドセットまたはセグメント化多重極ロッドセットイオントラップもしくはイオンガイド、
(ii)開口を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含むイオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドであって、使用時にイオンは、前記開口を通って移送され、前記電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズまたは面積の開口を有するか、またはサイズまたは面積が順次より大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイド、
(iii)1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極であって、前記1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極は、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含み、前記平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時に概してイオンが走行する平面内に配置される、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極、および
(iv)イオントラップまたはイオンガイドの長さに沿って軸方向に配置される複数のグループの電極を含むイオントラップまたはイオンガイドであって、各グループの電極は、(a)第1および第2の電極ならびにイオンを前記イオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを前記第1および第2の電極に印加するための手段、および(b)第3および第4の電極ならびにイオンを前記イオンガイド内に第2の半径方向に閉じ込めるためにACまたはRF電圧を前記第3および第4の電極に印加するための手段を含む、イオントラップまたはイオンガイド
からなる群から選択される、請求項89に記載の質量分析計。
【請求項91】
前記イオントラップまたはイオンガイドは、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドを含み、前記電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する、請求項90に記載の質量分析計。
【請求項92】
前記イオントラップまたはイオンガイドは、イオンを前記イオントラップまたはイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるために、ACまたはRF電圧を前記イオントラップまたはイオンガイドの前記複数の電極のうちの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に印加するように構成および適合される第1のACまたはRF電圧手段をさらに含む、請求項89、90または91に記載の質量分析計。
【請求項93】
前記第1のACまたはRF電圧手段は、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有するACまたはRF電圧を印加するように構成および適合される、請求項92に記載の質量分析計。
【請求項94】
前記第1のACまたはRF電圧手段は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するACまたはRF電圧を印加するように構成および適合される、請求項92または93に記載の質量分析計。
【請求項95】
前記イオントラップまたはイオンガイドは、イオンのビームまたはグループを受け取り、前記イオンのビームまたはグループを変換または分割して、複数のまたは少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の別々のパケットのイオンが任意の特定の時間に前記イオントラップまたはイオンガイド内に閉じ込めおよび/または隔離されるよう構成および適合され、各パケットのイオンは、前記イオントラップまたはイオンガイド内に形成される別々の軸方向ポテンシャル井戸内に別々に閉じ込めおよび/または隔離される、請求項89〜94のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項96】
一動作モードにおいて、少なくともいくつかのイオンを前記イオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を通って、またはそれに沿って上流および/または下流へ駆動するように構成および適合される手段をさらに含む、請求項89〜95のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項97】
少なくともいくつかのイオンを前記イオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って上流および/または下流へ駆動するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたは1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャル波形を、前記イオントラップまたはイオンガイドを形成する前記電極に印加するように構成および適合される第1の過渡DC電圧手段をさらに含む、請求項89〜96のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項98】
少なくともいくつかのイオンを前記イオントラップまたはイオンガイドの軸方向長さ少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って上流および/または下流へ駆動するために、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧を、前記イオントラップまたはイオンガイドを形成する電極に印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段をさらに含む、請求項89〜97のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項99】
前記イオントラップまたはイオンガイドの少なくとも一部を(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)>1mbar、(viii)0.0001〜100mbar、および(ix)0.001〜10mbarからなる群から選択される圧力に維持するように、一動作モードにおいて、構成および適合される手段をさらに含む、請求項89〜98のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項100】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流および/または下流に配置される質量フィルタをさらに含む、請求項75〜99のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項101】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)四重極ロッドセット、(ii)六重極ロッドセット、(iii)八重極ロッドセットまたはより高次のロッドセット、(iv)開口を有する複数の電極を含むイオントンネルであって、イオンが前記開口を通って移送される、イオントンネル、または(v)イオンを前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス内に半径方向に閉じ込めるためのACまたはRF電圧源に接続される複数の電極を含む、請求項75〜100のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項102】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、イオンを入れる開口と、イオンを出す開口と、ガスを導入するための任意のポートとを別にして実質的に気密な封入体を形成する、請求項75〜101のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項103】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)0.0001mbar以上、(ii)0.0005mbar以上、(iii)0.001mbar以上、(iv)0.005mbar以上、(v)0.01mbar以上、(vi)0.05mbar以上、(vii)0.1mbar以上、(viii)0.5mbar以上、(ix)1mbar以上、(x)5mbar以上、および(xi)10mbar以上からなる群から選択される圧力に維持される、請求項75〜102のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項104】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)10mbar以下、(ii)5mbar以下、(iii)1mbar以下、(iv)0.5mbar以下、(v)0.1mbar以下、(vi)0.05mbar以下、(vii)0.01mbar以下、(viii)0.005mbar以下、(ix)0.001mbar以下、(x)0.0005mbar以下、および(xi)0.0001mbar以下からなる群から選択される圧力に維持される、請求項75〜103のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項105】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス内のガスは、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第1のモードにある場合には第1の圧力に維持され、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第2のモードにある場合にはより低い第2の圧力に維持される、請求項75〜104のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項106】
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス内のガスは、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第1のモードにある場合には第1のガスまたは第1のガス混合物を含み、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが前記第2のモードにある場合には異なる第2のガスまたは異なる第2のガス混合物を含む、請求項75〜105のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項107】
前記第1の試料からの親または前駆体イオンおよび前記第2の試料からの親または前駆体イオンは、同じ衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡される、請求項75〜106のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項108】
前記第1の試料からの親または前駆体イオンおよび前記第2の試料からの親または前駆体イオンは、異なる衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスに渡される、請求項75〜107のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項109】
前記第1のおよび/または第2の試料からの分子は、(i)高速液体クロマトグラフィ(「HPLC」)、(ii)陰イオン交換、(iii)陰イオン交換クロマトグラフィ、(iv)陽イオン交換、(v)陽イオン交換クロマトグラフィ、(vi)イオン対逆相クロマトグラフィ、(vii)クロマトグラフィ、(viii)1次元電気泳動、(ix)多次元電気泳動、(x)サイズ排除、(xi)親和性、(xii)逆相クロマトグラフィ、(xiii)キャビラリ−電気泳動クロマトグラフィ(「CEC」)、(xiv)電気泳動、(xv)イオン移動度分離、(xvi)フィールド非対称イオン移動度分離(「FAIMS」)、または(xvi)キャピラリー電気泳動によってイオン化される前に、他の分子の混合物から分離される、請求項75〜108のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項110】
質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第1の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションまたは反応され、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第2の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションまたは反応され、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
前記第1の試料からの第1の親または前駆体イオンに由来する第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を自動的に決定するステップであって、前記第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、第1の質量電荷比を有する、ステップと、
前記第2の試料からの第2の親または前駆体イオンに由来する第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を自動的に決定するステップであって、前記第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、同じ第1の質量電荷比を有する、ステップと、
前記第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を前記第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度と比較するステップと
を含み、
前記第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度が前記第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
方法。
【請求項111】
質量分析の方法であって、
第1の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第1の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションまたは反応され、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
第2の試料からの親または前駆体イオンを衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスへ渡すステップと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更するステップであって、前記第1のモードにおいては、前記第2の試料からの前記親または前駆体イオンのうちの少なくともいくつかが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションまたは反応され、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、ステップと、
前記第1の試料からの第1の親または前駆体イオンに由来する第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を自動的に決定するステップであって、前記第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、第1の質量電荷比を有する、ステップと、
前記第2の試料からの第2の親または前駆体イオンに由来する第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を自動的に決定するステップであって、前記第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、同じ第1の質量電荷比を有する、ステップと、
前記第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度の、前記第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度との、または前記第1の試料における他の親または前駆体イオンに由来する他のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度との第1の比を決定するステップと
前記第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度の、前記第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度との、または前記第2の試料における他の親または前駆体イオンに由来する他のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度との第2の比を決定するステップと
前記第1の比を前記第2の比と比較するステップと
を含み、
前記第1の比が前記第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
方法。
【請求項112】
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、前記第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションまたは反応され、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションまたは反応される、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の試料からの第1の親または前駆体イオンに由来する第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を決定し、前記第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、第1の質量電荷比を有し、
(ii)第2の試料からの第2の親または前駆体イオンに由来する第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を決定し、前記第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、同じ第1の質量電荷比を有し、
(iii)前記第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を前記第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度と比較する
制御システムと
を含み、
前記第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度が前記第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
質量分析計。
【請求項113】
使用時に第1のモードと第2のモードとの間で繰り返し切り換え、改変または変更されるように構成および適合される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、前記第1のモードにおいては、少なくともいくつかの親または前駆体イオンが1つ以上のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンへとフラグメンテーションされ、前記第2のモードにおいては、実質的に少数の親または前駆体イオンがフラグメンテーションされる、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
質量分析器と、
制御システムであって、使用時に
(i)第1の試料からの第1の親または前駆体イオンに由来する第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を決定し、前記第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、第1の質量電荷比を有し、
(ii)第2の試料からの第2の親または前駆体イオンに由来する第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度を決定し、前記第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンは、同じ第1の質量電荷比を有し、
(iii)前記第1のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度の、前記第1の試料における他の親または前駆体イオンの強度との、または前記第1の試料における他の親または前駆体イオンに由来する他のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度との第1の比を決定し、
(iv)前記第2のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度の、前記第2の試料における他の親または前駆体イオンの強度との、または前記第2の試料における他の親または前駆体イオンに由来する他のフラグメント、娘、生成物または付加物イオンの強度との第2の比を決定し、
(v)前記第1の比を前記第2の比と比較する
制御システムと
を含み、
前記第1の比が前記第2の比から所定量よりも大きく異なる場合、前記第1の親もしくは前駆体イオンおよび/または前記第2の親もしくは前駆体イオンのいずれか一方が対象の親または前駆体イオンであると考えられ、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択される、
質量分析計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公表番号】特表2009−516843(P2009−516843A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−541822(P2008−541822)
【出願日】平成18年11月23日(2006.11.23)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004387
【国際公開番号】WO2007/060437
【国際公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】