質量分析計
イオンが使用時に移送される開口を有する複数の電極を含む閉ループイオンガイド(1)が開示される。イオンは、閉ループイオンガイド(1)中へ注入され、イオンガイド(1)から排出される前に閉ループイオンガイド(1)を数回周回し得る。一動作モードにおいて、イオンガイド(1)は、イオンをそのイオン移動度にしたがって時間的に分離するように構成され得る。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計および質量分析の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析は、生物学的に対象となる分子などの分子を同定および定量するための確立された技術である。その圧倒的な速度、感度および特異性ゆえにタンパク質を同定するための主要な技術である。タンパク質を分析するための戦略には、タンパク質を損壊させずに分析するか、またはより一般にはペプチド骨格に沿って予測可能な残基で切断する特定のプロテアーゼを使用してタンパク質を消化することのいずれかが含まれ得る。後者は、質量分析を介する分析により適するより短いペプチド配列を提供する。
【0003】
これらの実験は、通常エレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用するタンデム質量分析計に直接接合された液体クロマトグラフィによって複雑な消化混合物を分離することを含む。MSおよびMS/MSスペクトルは、クロマトグラフ分離全体にわたって集められ得、この情報を直接使用し、データベースを検索して一致する配列を見つけ出し、これにより親タンパク質を同定し得る。
【0004】
このアプローチを使用して低内因性濃度で存在するタンパク質を同定し得る。しかし、そのような消化混合物は、何千とはいかなくとも何百もの成分を含み得、その多くはクロマトグラフィカラムから共溶出する。消化混合物を分析するために設計された方法は、複雑な混合物内でできるだけ多くのピークを同定することを目的としている。試料が複雑になればなるほど、各個々の前駆体イオンを後のフラグメンテーションのために選択することはますます困難となる。ピーク容量を増加する一つの方法は、大量の親または前駆体イオンを同時にフラグメンテーションし、それらのフラグメントまたは娘イオンを記録する、「ショットガン」として知られる方法である。次いで、フラグメントまたは娘イオンは、それらのLC溶離時間の位置関係の近似度にしたがって親または前駆体イオンと対応づけられる。結局のところ、試料の複雑性が増加するにつれ、当該分野において重要な進歩を刻んだこの方法でさえ時々失敗し得る。
【0005】
非常に複雑な混合物の問題を扱う別の方法は、分離能力をさらに向上させることである。さらなる直交分離段を付加することは、特に有効であり得る。特に、各分離プロセスに対する時間要件と質量分析計に対する時間要件が重なり合わない場合に有効であり得る。
【0006】
質量分析による分析の前にイオンを分離するために使用され得る一つの公知方法は、イオン移動度分光分析または気相電気泳動の方法である。ドリフト管またはセルを含むイオン移動度分光計であって、軸方向電界がドリフト管の長さに沿って維持されるイオン移動度分光計が公知である。バッファガスがイオン移動度分光計内に提供される。比較的高い移動度を有するイオンは、イオン移動度分光計に沿って比較的速く移動するが、比較的低い移動度を有するイオンはよりゆっくりと移動する。したがって、イオンは、そのイオン移動度にしたがって時間的に分離される。
【0007】
イオン移動度分光計は、大気圧もしくはその近傍でまたは0.01mbarという低い圧力に下げられた部分的真空下で動作し得る。開口を有する複数の電極を含む、部分的真空下で動作するイオン移動度分光計が公知であり、DC電圧勾配が、イオン移動度分光計の長さに沿って維持され、かつ電極は、ACまたはRF電圧源に接続される。ACまたはRF電圧の周波数は、0.1〜3.0MHzの範囲内であり得る。この形態のイオン移動度分光計は、ACまたはRF電圧が電極に印加されることによってイオン移動度分光計を通るイオンが半径方向に閉じ込められるという点で有利である。イオンが半径方向に閉じ込められるので、イオンを半径方向に閉じ込めないイオン移動度分光計と比べてイオン移送がより高速になる。
【0008】
イオンが不均一なRF電界によってイオンガイド内に半径方向に閉じ込められ、かつイオンがバッファガスの存在下にイオンガイドの軸に沿って移動するポテンシャルの山または障壁によって推進される、別の形態のイオン移動度分光計が公知である。進行するポテンシャルの障壁の振幅および速度ならびにガスの種類および圧力を適切に選択することによって、イオンがそのイオン移動度にしたがって選択的にポテンシャル障壁を越えることが可能となる。その結果、異なるイオン移動度を有するイオンが異なる速度で輸送され、それにより時間的に分離されることが可能となる。
【0009】
イオン移動度分離(IMS)または気相電気泳動デバイスを使用することによって得られるさらなる分離によって、質量分析計のピーク容量が増加することが知られている。この利点は、液体クロマトグラフィ(LC)などの他の分離技術がまた使用されるかどうかにかかわらず得られる。さらに、イオン移動度分離を使用することによって得られる利点は、イオンがまず質量分析され得、次いでフラグメンテーションに誘導され得(CID)、かつその結果得られたフラグメントイオンが質量分析されるタンデム質量分析計(MS/MS)に同様に関連する。
【0010】
直線軸方向電圧勾配を有するドリフト管を含むイオン移動度セパレータにおいて、イオン移動度セパレータの最大分解能力は、比(td/Δtd)によって表わされる。ここで、tdは、ドリフト時間であり、Δtdは、移動度ピークの半値幅である。この比は、デバイスの物理構成によって決定され、以下の関係によって与えられる。
【0011】
【数1】
【0012】
ここで、Eは、軸方向電界であり、Lは、ドリフト管の長さであり、Tは、バッファガス温度である。項z、eおよびkBは、それぞれ、イオン上の電荷数、電子1個の電荷、およびボルツマン定数である。
【0013】
実際は、電気的破壊が生じる前に印加され得る最大電界強度Eが存在する。また、非常に高い電界強度において、デバイスは、非線形になり始める。したがって、通常、ドリフト管の長さは、セパレータの分解能を増加するために増加される。その結果、ドリフト管にわたって印加される電圧が増加される。加えて、従来のドリフト管において、ビームの広がりは、その長さとともに増加し、したがって、ドリフト管の直径は、その長さとともに増加する必要がある。最終的には、機器寸法は、容認できないほどに大きくなる。
【0014】
ビームの広がりの問題は、低圧(100mbar未満)で動作するドリフト管において、不均一なRF電界を使用してイオンを半径方向に閉じ込めることによって克服され得る。さらに、大きな電圧を長いドリフト管の長さにわたって印加する必要から生じる困難は、ドリフト管上で重ね合わされた進行波を使用することによって克服され得る。ここでは、比較的低い電圧で十分である。しかし、非常に長いドリフト管の使用によって生じる不都合が残る。
【0015】
この問題は、イオンをそのイオン移動度にしたがって高い分解能で分離し、次いでイオンを特定のやり方で変更し、次いでさらに得られた生成物をそのイオン移動度にしたがって再度高い分解能で分離する必要がある場合にはさらに複雑となる。例えば、イオン移動度にしたがって分離されたイオンは、その後にガス分子と高エネルギーに衝突させることによって、部分的に展開(unfold)されるか、完全に展開されるか、またはフラグメンテーションされ得る。したがって、ある実験では、イオンをそのイオン移動度にしたがって分離するための長いドリフト管、イオンの展開またはフラグメンテーションを誘起するための衝突領域、および次いで生成物イオンをそのイオン移動度にしたがって分離するための第2のドリフト管が必要とされ得る。各場合において、高い分解能のイオン移動度分離が必要とされ得る。しかし、2つの長いドリフト管を有する質量分析計は、容認できないほど長くなる。
【0016】
さらに多くの段を必要とするより複雑な実験が想起可能である。例えば、あるさらにより複雑な実験では、第1のIMS段によるイオンの分離、衝突によって誘起される展開、展開されたイオンの第2のIMS段による分離、衝突によって誘起されるフラグメンテーション、生成物イオンの第3のIMS段による分離、および最終的な質量分析が含まれ得る。
【0017】
特定の実験を行うように設計された装置もフレキシブルではない。例えば、単純な実験だけを行うように設計された装置は、より複雑な実験を行うことができない。逆に、複雑な実験を行うように設計された装置は、性能をある程度損なわずには単純な実験を行うことができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、改善された質量分析計を提供することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一局面によると、複数の電極を含む閉ループイオンガイドを含む質量分析計が提供される。
【0020】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、閉ループイオンガイドを、またはその周辺を複数回周回または回転するように構成される。一動作モードにおいて、閉ループイオンガイド内のイオンのうちの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、特定の時点で閉ループイオンガイドに沿ってまたは周りで実質的に同じ方向に移動するか、または実質的に同じ向きに回転するように構成され得る。
【0021】
ゼロでないDC電圧勾配が、好ましくは、イオンガイドの1つ以上の区分または部分にわたって維持される。閉ループイオンガイドの周りの軸方向DC電圧勾配の積分が好ましくは実質的にゼロである。
【0022】
イオンガイドは、好ましくは、周回または円形経路または回旋状経路を形成する、曲った、迷路状の、曲がりくねった(tortuous)、らせん状の(serpentine)、または回り道の(circuitous)イオンガイド経路を含む。イオンは、好ましくは、閉ループイオンガイドの周りを移動する際に回転するか、または方向を変更する。
【0023】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、閉ループイオンガイドの周りを回転または循環するように構成される。一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回または10回より多く周回するように構成される。
【0024】
特に好適な実施形態によると、複数の電極は、好ましくは、開口を有する電極を含み、イオンは、使用時に開口を通って移送される。好ましくは、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、実質的に円形、長方形、正方形または楕円形の開口を有する。
【0025】
上記好適な実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズであるか、または実質的に同じ面積を有する開口を有する。他の実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、サイズまたは面積がイオンガイドの軸または長さに沿った方向に漸進的により大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する。
【0026】
電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、好ましくは、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する開口を有する。上記好適な実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに離される。
【0027】
複数の電極のうちの少なくともいくつかは、好ましくは開口を含み、開口の内径または寸法の隣り合う電極間の中心間軸方向間隔に対する比は、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0、および(xxii)>5.0からなる群から選択される。
【0028】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さまたは軸方向長さを有する。
【0029】
好ましさが劣る実施形態によると、イオンガイドは、セグメント化ロッドセットイオンガイドを含み得る。イオンガイドは、例えば、セグメント化四重極、六重極もしくは八重極イオンガイドまたは8個より多くのセグメント化ロッドセットを含むイオンガイドを含み得る。一実施形態によると、イオンガイドは、(i)略または実質的に円形断面、(ii)略または実質的に双曲面、(iii)円弧または部分円形断面、(iv)略または実質的に長方形断面、および(v)略または実質的に正方形断面からなる群から選択される断面を有する複数の電極を含み得る。
【0030】
別の実施形態によると、イオンガイドは、複数のプレート電極を含み得、複数のグループの電極は、イオンガイドの軸方向長さに沿って配置される。各グループの電極は、好ましくは、第1の電極および第2の電極を含む。第1および第2の電極は、好ましくは、実質的に同じ平面内に配置され、かつイオンガイドの中心長軸のいずれか一方の側に配置される。質量分析計は、好ましくは、イオンをイオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを第1および第2の電極を印加するための手段をさらに含む。各グループの電極は、好ましくは第3の電極および第4の電極をさらに含む。第3および第4の電極は、好ましくは、第1および第2の電極と実質的に同じ平面内に配置され、かつイオンガイドの中心長軸のいずれか一方の側に第1および第2の電極とは異なる方向に配置される。ACまたはRF電圧を印加するための手段は、好ましくは、イオンをイオンガイド内に第2の半径方向(好ましくは、第1の方向に直交する方向)に閉じ込めるために、ACまたはRF電圧を第3および第4の電極に印加するように構成される。
【0031】
別の実施形態によると、イオンガイドは、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極を含み得る。1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極は、好ましくは、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含む。好ましくは、平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時にイオンが走行する平面内に概して配置される。
【0032】
さらなる実施形態によると、イオンガイドは、1つ以上のロッドセット電極および1つ以上のロッドセット電極の周りに配置される複数のリング電極を含み得る。
【0033】
質量分析計は、好ましくは、ACまたはRF電圧を閉ループイオンガイドを構成する電極に供給するためのACまたはRF電圧手段をさらに含む。ACまたはRF電圧は、好ましくは、イオンを閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する。ACまたはRF電圧は、好ましくは、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有する。ACまたはRF電圧は、好ましくは、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有する。
【0034】
イオンガイドは、好ましくはn個の軸方向セグメントを含み、nは、(i)1〜10、(ii)11〜20、(iii)21〜30、(iv)31〜40、(v)41〜50、(vi)51〜60、(vii)61〜70、(viii)71〜80、(ix)81〜90、(x)91〜100、および(xi)>100からなる群から選択される。各軸方向セグメントは、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個または20個より多くの電極を含む。
【0035】
軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の軸方向長さは、好ましくは、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、および(xi)>10mmからなる群から選択される。軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の間の間隔は、好ましくは、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、および(xi)>10mmからなる群から選択される。
【0036】
イオンガイドは、好ましくは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、および(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有する。イオンガイドは、好ましくは、少なくとも(i)10〜20個の電極、(ii)20〜30個の電極、(iii)30〜40個の電極、(iv)40〜50個の電極、(v)50〜60個の電極、(vi)60〜70個の電極、(vii)70〜80個の電極、(viii)80〜90個の電極、(ix)90〜100個の電極、(x)100〜110個の電極、(xi)110〜120個の電極、(xii)120〜130個の電極、(xiii)130〜140個の電極、(xiv)140〜150個の電極、または(xv)>150個の電極を含む。
【0037】
特に好適な実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、イオンガイドの長さまたはイオンガイド経路のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って、またはその周りにイオンを駆動または推進するための手段をさらに含む。
【0038】
イオンを駆動または推進するための手段は、好ましくは、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するための手段を含む。1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形は、好ましくは、(i)1つのポテンシャルの山もしくは障壁、(ii)1つのポテンシャル井戸、(iii)複数のポテンシャルの山もしくは障壁、(iv)複数のポテンシャル井戸、(v)1つのポテンシャルの山もしくは障壁および1つのポテンシャル井戸の組み合わせ、または(vi)複数のポテンシャルの山もしくは障壁および複数のポテンシャル井戸の組み合わせを生成する。
【0039】
1つ以上の過渡DC電圧またはポテンシャル波形は、好ましくは、繰り返し波形または方形波を含む。使用時に、複数の軸方向DCポテンシャル井戸がイオンガイドの長さに沿って平行移動され得るか、または複数の過渡DCポテンシャルまたは電圧がイオンガイドの軸方向長さに沿って電極に漸進的に印加され得る。
【0040】
一実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形の振幅、高さまたは深さを期間t1にわたってx1ボルトだけ漸進的に増加するか、漸進的に低減するか、漸進的に変更するか、スキャンするか、直線的に増加するか、直線的に低減するか、段階的、漸進的もしくは他のやり方で増加するか、または段階的、漸進的もしくは他のやり方で低減するように構成および適合される第1の手段を含む。好ましくは、x1は、(i)<0.1V、(ii)0.1〜0.2V、(iii)0.2〜0.3V、(iv)0.3〜0.4V、(v)0.4〜0.5V、(vi)0.5〜0.6V、(vii)0.6〜0.7V、(viii)0.7〜0.8V、(ix)0.8〜0.9V、(x)0.9〜1.0V、(xi)1.0〜1.5V、(xii)1.5〜2.0V、(xiii)2.0〜2.5V、(xiv)2.5〜3.0V、(xv)3.0〜3.5V、(xvi)3.5〜4.0V、(xvii)4.0〜4.5V、(xviii)4.5〜5.0V、(xix)5.0〜5.5V、(xx)5.5〜6.0V、(xxi)6.0〜6.5V、(xxii)6.5〜7.0V、(xxiii)7.0〜7.5V、(xxiv)7.5〜8.0V、(xxv)8.0〜8.5V、(xxvi)8.5〜9.0V、(xxvii)9.0〜9.5V、(xxviii)9.5〜10.0V、および(xxix)>10.0Vからなる群から選択される。好ましくは、t1は、(i)<lms、(ii)1〜10ms、(iii)10〜20ms、(iv)20〜30ms、(v)30〜40ms、(vi)40〜50ms、(vii)50〜60ms、(viii)60〜70ms、(ix)70〜80ms、(x)80〜90ms、(xi)90〜100ms、(xii)100〜200ms、(xiii)200〜300ms、(xiv)300〜400ms、(xv)400〜500ms、(xvi)500〜600ms、(xvii)600〜700ms、(xviii)700〜800ms、(xix)800〜900ms、(xx)900〜1000ms、(xxi)1〜2s、(xxii)2〜3s、(xxiii)3〜4s、(xxiv)4〜5s、および(xxv)>5sからなる群から選択される。
【0041】
一実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形が電極に期間t2にわたってx2m/sだけ印加される速度またはレートを漸進的に増加するか、漸進的に低減するか、漸進的に変更するか、スキャンするか、直線的に増加するか、直線的に低減するか、段階的、漸進的もしくは他のやり方で増加するか、または段階的、漸進的もしくは他のやり方で低減するように構成および適合される第2の手段をさらに含む。好ましくは、x2は、(i)<1、(ii)1〜2、(iii)2〜3、(iv)3〜4、(v)4〜5、(vi)5〜6、(vii)6〜7、(viii)7〜8、(ix)8〜9、(x)9〜10、(xi)10〜11、(xii)11〜12、(xiii)12〜13、(xiv)13〜14、(xv)14〜15、(xvi)15〜16、(xvii)16〜17、(xviii)17〜18、(xix)18〜19、(xx)19〜20、(xxi)20〜30、(xxii)30〜40、(xxiii)40〜50、(xxiv)50〜60、(xxv)60〜70、(xxvi)70〜80、(xxvii)80〜90、(xxviii)90〜100、(xxix)100〜150、(xxx)150〜200、(xxxi)200〜250、(xxxii)250〜300、(xxxiii)300〜350、(xxxiv)350〜400、(xxxv)400〜450、(xxxvi)450〜500、および(xxxvii)>500からなる群から選択される。好ましくは、t2は、(i)<1ms、(ii)1〜10ms、(iii)10〜20ms、(iv)20〜30ms、(v)30〜40ms、(vi)40〜50ms、(vii)50〜60ms、(viii)60〜70ms、(ix)70〜80ms、(x)80〜90ms、(xi)90〜100ms、(xii)100〜200ms、(xiii)200〜300ms、(xiv)300〜400ms、(xv)400〜500ms、(xvi)500〜600ms、(xvii)600〜700ms、(xviii)700〜800ms、(xix)800〜900ms、(Xx)900〜1000ms、(xxi)1〜2s、(xxii)2〜3s、(xxiii)3〜4s、(xxiv)4〜5s、および(xxv)>5sからなる群から選択される。
【0042】
一実施形態によると、質量分析計は、一定のゼロでないDC電圧勾配をイオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するように構成される手段を含む。
【0043】
特に好適な実施形態によると、イオンガイドの1つ以上の部分は、イオン移動度分光計またはセパレータ部分、区分または段を含み得る。イオンは、好ましくは、イオン移動度分光計またはセパレータ部分、区分または段において、そのイオン移動度にしたがって時間的に分離するようにされる。
【0044】
別の実施形態によると、イオンガイドの1つ以上の部分は、フィールド非対称イオン移動度分光計(「FAIMS」)部分、区分または段を含み得、イオンは、フィールド非対称イオン移動度分光計(「FAIMS」)部分、区分または段において、そのイオン移動度の電界強度に対する変化速度にしたがって時間的に分離するようにされる。
【0045】
上記好適な実施形態によると、バッファガスが好ましくは使用時にイオンガイドの1つ以上の区分内に提供される。一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際にフラグメンテーションせずに衝突により冷却されるように構成される。
【0046】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際に加熱されるように構成される。
【0047】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際にフラグメンテーションされるように構成される。
【0048】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際に展開(unfold)または少なくとも部分的に展開するように構成される。
【0049】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの部分または領域内に軸方向にトラップされる。
【0050】
質量分析計は、好ましくは、イオンをイオンガイド中へ注入するための手段を含む。イオンを注入するための手段は、好ましくはイオンガイド中へ注入されるイオンが通り得る、1、2、3個または3個より多くの個別のイオンガイドチャネルまたは入力イオンガイド領域を含み得る。イオンを注入するための手段は、複数の電極を含み得、各電極は、好ましくは、1、2、3個または3個より多くの開口を含む。イオンを注入するための手段は、1つ以上の偏向電極を含み得る。好ましくは、イオンを1つ以上のイオンガイドチャネルまたは入力イオンガイド領域からイオンガイド中へ方向づけるために、1つ以上の電圧が1つ以上の偏向電極に印加される。
【0051】
一実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、イオンをイオンガイドから排出するための手段をさらに含む。イオンを排出するための手段は、好ましくは、イオンガイドから排出されるイオンが通り得る、1、2、3個または3個より多くの個別のイオンガイドチャネルまたは出口イオンガイド領域を含む。イオンを排出するための手段は、複数の電極を含み得、各電極は、1、2、3個または3個より多くの開口を含む。一実施形態によると、イオンを排出するための手段は、好ましくは、1つ以上の偏向電極をさらに含む。好ましくは、イオンをイオンガイドから1つ以上のイオンガイドチャネルまたは出口イオンガイド領域中へ方向づけるために、1つ以上の電圧が1つ以上の偏向電極に印加される。
【0052】
質量分析計は、好ましくは、一動作モードにおいて、イオンガイドの少なくとも一部分を(i)>1.0×10-3mbar、(ii)>1.0×10-2mbar、(iii)>1.0×10-1mbar、(iv)>1mbar、(v)>10mbar、(vi)>100mbar、(vii)>5.0×10-3mbar、(viii)>5.0×10-2mbar、(ix)10-4〜10-3mbar、(x)10-3〜10-2mbar、および(xi)10-2〜10-1mbarからなる群から選択される圧力に維持するための手段を含む。
【0053】
質量分析計は、好ましくは、一動作モードにおいて、イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持するための手段を含み、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される。
【0054】
上記好適な実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、および(xvi)ニッケル−63放射性イオン源からなる群から選択されるイオン源をさらに含む。質量分析計は、連続またはパルス化イオン源をさらに含み得る。
【0055】
質量分析計は、閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタをさらに含み得る。1つ以上の質量フィルタは、(i)四重極ロッドセット質量フィルタ、(ii)飛行時間質量フィルタまたは質量分析器、(iii)ウィーンフィルタ、および(iv)扇形磁場質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択され得る。特に好適な実施形態によると、1つ以上の質量フィルタが閉ループイオンガイドの一部分を形成し得る。
【0056】
一実施形態によると、質量分析計は、閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップを含み得る。1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、
(i)四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセットまたは8個より多くのロッドを含むロッドセットを含む多重極ロッドセットまたはセグメント化多重極ロッドセットイオントラップまたはイオンガイド、
(ii)開口を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含むイオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドであって、使用時にイオンは、開口を通って移送され、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズまたは面積の開口を有するか、またはサイズまたは面積が漸進的により大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイド、
(iii)1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極であって、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極は、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含むか、または平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時にイオンが走行する平面内に概して配置される、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極、および
(iv)イオントラップまたはイオンガイドの長さに沿って軸方向に配置される複数のグループの電極を含むイオントラップまたはイオンガイドであって、各グループの電極は、(a)第1および第2の電極ならびにイオンをイオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを第1および第2の電極に印加するための手段と、(b)第3および第4の電極ならびにイオンをイオンガイド内に第2の半径方向に閉じ込めるためにACまたはRF電圧を第3および第4の電極に印加するための手段とを含む、イオントラップまたはイオンガイド
からなる群から選択され得る。
【0057】
1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、好ましくは、イオントンネルまたはイオンファネルイオンガイドまたはイオントラップを含み、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、好ましくは、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する。
【0058】
1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、好ましくは、イオンを1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に半径方向に閉じ込めるために、ACまたはRF電圧を1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの複数の電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に印加するように構成および適合される第2のACまたはRF電圧手段をさらに含む。
【0059】
1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、好ましくは、1ビームまたはグループのイオンを受け取り、1ビームまたはグループのイオンを変換または分割し、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の別々のパケットのイオンが任意の特定の時間に1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に閉じ込めおよび/または隔離されるように構成および適合される。各パケットのイオンは、好ましくは、1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に形成される別々の軸方向ポテンシャル井戸内に別々に閉じ込めおよび/または隔離される。
【0060】
質量分析計は、一動作モードにおいて、少なくともいくつかのイオンを1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を通ってまたはそれに沿って上流および/または下流へ駆動するように構成および適合される手段を含み得る。
【0061】
質量分析計は、少なくともいくつかのイオンを1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って下流および/または上流へ駆動するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたは1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャル波形を1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップを形成する電極に印加するように構成および適合される過渡DC電圧手段をさらに含み得る。
【0062】
質量分析計は、少なくともいくつかのイオンを1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って下流および/または上流へ駆動するために、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧を1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップを形成する電極に印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段を含み得る。
【0063】
一実施形態によると、質量分析計は、1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの少なくとも一部分を(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)>1mbar、(viii)0.0001〜100mbar、および(ix)0.001〜10mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含む。
【0064】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に設けられ得る。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、好ましくは、衝突誘起解離(「CID」)によってイオンをフラグメンテーションするように構成および適合される。しかし、他の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択され得る。
【0065】
質量分析計は、好ましくは、閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される質量分析器をさらに含む。質量分析器は、好ましくは、(i)フーリエ変換(「FT」)質量分析器、(ii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(iii)飛行時間(「TOF」)質量分析器、(iv)直交加速飛行時間(「oaTOF」)質量分析器、(v)軸方向加速飛行時間質量分析器、(vi)扇形磁場質量分析器、(vii)ポールまたは3D四重極質量分析器、(viii)2Dまたは直線四重極質量分析器、(ix)ペニングトラップ質量分析器、(x)イオントラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換オービトラップ、(xii)静電イオンサイクロトロン共鳴質量分析器、(xiii)静電フーリエ変換質量分析器、および(xiv)四重極ロッドセット質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択される。
【0066】
本発明の別の局面によると、複数の電極を含む閉ループイオンガイドを通ってイオンをガイドするステップを含む質量分析の方法が提供される。
【0067】
本発明の別の局面によると、質量フィルタおよび衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを含む閉ループイオンガイドを含む質量分析計が提供され、一動作モードにおいて、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて生成されるフラグメントまたは娘イオンが閉ループイオンガイドを介して質量フィルタに渡る。
【0068】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
質量フィルタおよび衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを含む閉ループイオンガイドを準備するステップと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて生成されたフラグメントまたは娘イオンを閉ループイオンガイドを介して質量フィルタに渡すステップと
を含む方法が提供される。
【0069】
本発明の別の局面によると、
複数の電極を含む閉ループイオンガイドと、
一動作モードにおいて、イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持する手段であって、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される、手段と、
ACまたはRF電圧を電極に供給するためのACまたはRF電圧手段であって、ACまたはRF電圧は、使用時に、イオンを閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する、ACまたはRF電圧手段と、
一定のゼロでないDC電圧勾配をイオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するように構成される手段と、
1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するための手段と
を含む質量分析計が提供される。
【0070】
イオンガイドは、好ましくは、イオン移動度分光計もしくはセパレータまたは衝突、フラグメンテーションもしくは反応デバイスを含む。
【0071】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
複数の電極を含む閉ループイオンガイドを準備するステップと、
一動作モードにおいて、イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持するステップであって、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される、ステップと、
ACまたはRF電圧を電極に供給するためのステップであって、ACまたはRF電圧は、イオンを閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する、ステップと、
一定のゼロでないDC電圧勾配をイオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するステップと、
イオンを駆動または推進するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するステップと
を含む方法が提供される。
【0072】
従来の2D直線イオントラップおよび3D四重極イオントラップは、本発明の意味においては、閉ループイオンガイドを含むと解釈されるべきでない。従来のイオントラップにおいて、イオンは、上記好適な実施形態の意味においては、回り道の(circuitous)イオンガイド経路を辿らない。
【0073】
上記好適な実施形態にかかる質量分析計は、高分解能イオン移動度分離が可能であり、かつまた、好ましくは、性能を損なわず、かつ過度に大きくならずに単純な実験および複雑な実験の両方を行うことができる。
【0074】
上記好適な実施形態は、閉ループを形成するように配置される1つ以上のイオンガイドに関する。バッファガスが閉ループイオンガイド中に導入されるか、またはその内に存在する。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が好ましくは閉ループイオンガイドの少なくとも1区分に印加される。好ましくは、イオンは、好ましくはイオンガイドの少なくとも1区分に印加される1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形によって、所望の方向へ閉ループイオンガイドを通って、またはそれに沿って推進または駆動される。
【0075】
上記好適な実施形態によると、イオンを閉ループイオンガイド内に半径方向にイオンガイドの中心軸の周りに閉じ込めるために、RF電圧が1つ以上の閉ループイオンガイドを構成する電極に印加される。イオンは、好ましくはイオンガイド内の半径方向擬ポテンシャル井戸内に閉じ込められる。
【0076】
イオンガイドのうちの1つ以上は、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、セグメント化多重極ロッドセット、積重ねリングセット、イオントンネル、イオンファネルまたは平行プレートアセンブリ(サンドイッチプレート)、またはRF電圧を印加して不均一なRF電界を与え得る電極の他の構成を含み得る。
【0077】
上記好適な実施形態によると、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形の進行方向にイオンを推進または駆動するために、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が好ましくは上記好適なイオンガイドの電極に印加される。
【0078】
バッファガスが好ましくはイオンガイドのうちの少なくとも1つにおいて提供され、イオンとガス分子との間の衝突が頻繁に生じるようにされる。ガス分子との衝突を使用して、イオンを冷却するか、またはイオンを加熱するかのいずれかが行われ得る。イオンとガス分子との間の衝突は、イオンの運動に対する抗力(drag)を生じさせ得る。この抗力を利用して、イオンをそのイオン移動度にしたがって分離し得る。
【0079】
ガス分子との衝突を使用して、イオンを冷却または熱化し、その運動エネルギーが低減されるようにし得る。これは、イオンが閉ループ構成において必要に応じて角の周りでガイドされるべき場合に特に有利である。低エネルギーまたは熱化イオンは、好ましくは、RFイオンガイドの中心軸に向かって崩壊する。ガス分子との衝突によってイオンを冷却するために、10-4mbarを超える圧力が好ましくは必要とされ、さらに好ましくは10-3mbarを超える圧力が必要とされる。
【0080】
ガス分子との衝突をさらにおよび/またはあるいは使用してイオンを加熱し、その内部エネルギーが増加されるようにし得る。これは、イオンが展開および/またはフラグメンテーションされるべき場合に必要とされる。
【0081】
イオンは、まずイオンを比較的高運動エネルギー(一般に、10または15eVより大きい)に加速することによってフラグメンテーションするように誘導され得る。次いで、イオンは、好ましくはガス分子中へ衝突される。あるいは、イオンは、十分に高いガス圧力を有する領域を通って加速され得るか、または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形によって十分に高いガス圧力を有する領域を通って推進され得る。約500〜1000m/sを超える速度でバッファガスを通って推進された分子イオンは、高エネルギーイオン−分子衝突を起こす。高エネルギーイオン−分子衝突は、好ましくはイオンの内部エネルギーの増加を引き起こし、かつ適宜イオンの展開(unfolding)を引き起こし得る。イオンは、あるいはおよび/またはさらにフラグメンテーションするようにされる。ガス分子との衝突によってイオンを加熱およびフラグメンテーションさせるために、10-4mbarを超える圧力が好ましくは必要とされ、さらに好ましくは10-3mbarを超える圧力が必要とされる。
【0082】
イオンの運動がバッファガスの粘性抗力によって妨げられると、イオンは、そのイオン移動度にしたがって分離され得る。ガス圧力および電界強度が同じ条件の場合、比較的高いイオン移動度を有するイオンは、比較的低いイオン移動度を有するイオンよりも速く走行する。この特徴を使用して、イオンを空間的および時間的に分離し得る。イオンをそのイオン移動度にしたがって分離するために、10-2mbarを超える圧力が好ましくは提供され、さらに好ましくは10-1mbarを超える圧力が好ましくは提供される。
【0083】
好適な一実施形態において、上記好適なイオンガイドのうちの1つ以上における圧力は、衝突によって誘起されるイオンの展開および/またはイオンのフラグメンテーションおよび/またはイオンのそのイオン移動度にしたがった分離を可能にするのに十分であり得る。
【0084】
イオンガイドのうちの1つ以上においてガスが存在すると、好ましくは、イオンの運動が減衰され、イオンの速度が低減され、最終的に前進方向の運動がすべて失われる。したがって、イオンを前進方向へ駆動する手段を設けることが望ましい。好適な一実施形態において、イオンは、好ましくは1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形によって前進方向へ駆動される。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形を使用して、所望する限り多くの回数イオンを閉ループイオンガイドの周りで駆動し得る。
【0085】
好ましさが劣る実施形態によると、イオンは、一定の軸方向DC電圧勾配によって、閉ループイオンガイドの1区分に沿って、またはその周りで前進方向へ駆動され得る。しかし、ある箇所で電圧勾配がイオンの運動に反対するように作用することなしにDC電圧勾配を閉ループの周りに与えることはできない。反対するDC軸方向電界に対抗してイオンを前進方向に駆動するために、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形がこの箇所で閉ループイオンガイドの電極に重ね合わされ得る。
【0086】
好適な一実施形態において、イオンは、1つ以上のイオンディフレクタまたはダイバータ(diverter)によって閉ループイオンガイド中へ導入または切り換えられ得る。さらに、好適な一実施形態において、イオンは、1つ以上のディフレクタまたはダイバータによって閉ループイオンガイドから除去、切り換えまたは進路変更され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
ここで、本発明の種々の実施形態を、あくまで例として、添付の図面を参照して説明する。
【0088】
図1は、本発明の好適な一実施形態にかかる閉ループイオンガイドを示す。
【0089】
図2は、上記好適な実施形態にかかる閉ループイオンガイドを含む質量分析計を示す。
【0090】
図3Aは、イオンを好適な閉ループイオンガイド中へ導入するためのデバイスの断面を示す。図3Bは、イオンを好適な閉ループイオンガイドから除去するためのデバイスの断面を示す。
【0091】
図4A〜図4Eは、イオンを好適な閉ループイオンガイドへ導入またはそこから除去するためのデバイスを示す。
【0092】
図5Aは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図5Bは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。図5Cは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図5Dは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。
【0093】
図6Aは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図6Bは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。図6Cは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図6Dは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。
【0094】
図7は、イオンがポテンシャル差に打ち克つように前方へ駆動される(そうしなければ、ポテンシャル差はイオンの前方移送に反対するように作用する)好適なイオンガイドの1区分を模式的に示す。
【0095】
図8Aは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図8Bは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。
【0096】
図9Aは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図9Bは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。
【0097】
図10Aは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段の一実施形態を示す。図10Bは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段の別の実施形態を示す。図10Cは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段のさらなる実施形態を示す。
【0098】
図11Aは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口の一実施形態を示す。図11Bは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口の別の実施形態を示す。図11Cは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口のさらなる実施形態を示す。
【0099】
図12は、質量フィルタが閉ループイオンガイドに含まれる実施形態を示す。
【0100】
ここで、図1を参照して本発明の好適な一実施形態を説明する。この好適な実施形態によると、閉ループイオンガイド1を含む質量分析計が提供される。イオンは、好ましくは閉ループイオンガイド1中へ注入され、かつイオンは、好ましくは、イオンガイド1の周りを数回回転または周回するようにされる。次いで、イオンは、好ましくは、イオンガイド1から排出または除去される。上記好適な実施形態によると、イオンは、好ましくは、イオンガイド1の周りを循環する際に、イオンガイドサーキットのある固定箇所を数回通過する。イオンは、好ましくは、一動作モードにおいてイオンガイド1を数回周回する。
【0101】
イオンガイド1内のイオンは、好ましくは実質的に同時にイオンガイド1の周りを実質的に同じ方向に移動するようにされる。イオンは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回または10回より多くイオンガイド1の周りを通過または周回した後、イオンガイド1から排出され得る。
【0102】
イオンガイド1は、好ましくは円形または曲ったイオンガイド経路を含む。しかし、イオンガイド経路が、曲った相互接続区分を有する1つ以上のまっすぐな区分を含み得る実施形態が考えられる。イオンガイド経路は、比較的複雑であり得る。例えば、イオンガイド経路は、迷路状であるか、曲がりくねっている(tortuous)か、またはらせん状(serpentine)であり得る。2D直線イオントラップまたは3Dイオントラップとは対照的に、イオンは、好ましくは閉ループイオンガイド1の周りを周回する。
【0103】
バッファガスが好ましくは閉ループイオンガイド1の少なくとも一部分または区分内に提供される。一動作モードにおいて、イオンは、バッファガスとの相互作用によって、衝突により冷却、または、選択的に衝突により加熱され得る。一動作モードにおいて、イオンは、イオンがイオンガイド1の一部分内に存在するガス分子と衝突する際にフラグメンテーションされるように加速され得る。別の動作モードにおいて、イオンガイド1の少なくとも一部分がイオン移動度分光計またはセパレータ区分として動作し得る。イオンは、好ましくは、イオンガイド1のイオン移動度分光計またはセパレータ区分を通って、またはその周りで移動する際に、そのイオン移動度にしたがって時間的に分離される。
【0104】
上記好適な実施形態によると、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が好ましくはイオンガイド1の少なくとも1区分上に重ね合わされるか、またはそれに印加される。重ね合わされた過渡DCポテンシャルまたは電圧は、好ましくはイオンを閉ループイオンガイド1の少なくとも一部分の周りで推進または駆動する。イオンは、好ましくは、1つ以上の過渡DCポテンシャルまたは電圧がイオンガイド1を構成する電極に漸進的に印加されるのと同じ方向に移動するようにされる。
【0105】
好ましくは、イオンガイド1は、好ましくは1パルスまたはストリームのイオンを閉ループイオンガイド1中へ導入するように構成されるイオン注入手段2を含む。好ましくは、イオンガイド1はまた、好ましくはイオンのうちの少なくともいくつかを閉ループイオンガイド1から外部へ進路変更するように構成されるイオン排出手段3をさらに含む。イオンガイド1から排出されたイオンは、さらなる分析にかけられ得、かつ/またはイオン検出器(図示せず)によって検出され得る。
【0106】
上記好適な実施形態によると、閉ループイオンガイド1は、複数の電極を含む積重ねリングイオンガイドを含む。各電極は、好ましくはイオンが使用時に移送される開口を含む。閉ループイオンガイド1を形成する電極の開口は、好ましくはすべて同じサイズである。別の実施形態において、電極のうちの少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、実質的に同じサイズの開口を有する。
【0107】
イオンガイド1の隣り合う電極は、好ましくはACまたはRF電圧源の互いに反対の位相に接続される。ACまたはRF電圧は、好ましくはイオンガイド1の電極に印加され、かつ好ましくはイオンが半径方向擬ポテンシャル井戸内のイオンガイド1内に半径方向に閉じ込められるようにする。
【0108】
好ましくはイオンガイド1の電極に印加される1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、好ましくは、イオンガイド1の長さに沿って、および/またはその周りで有効に移動または回転する1つ以上のポテンシャルの山または障壁を形成する。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、好ましくは、1つ以上のポテンシャルの山または障壁がイオンガイドの長さまたはサーキットに沿って、またはそれの周りで所定の方向に移動するように、イオンガイド1を形成する一続きの電極に漸進的に印加される。イオンは、好ましくは、イオンガイド1に沿って、またはそれの周りで、ポテンシャルの山または障壁が漸進的に電極に印加されるのと同じ方向または向きに推進または駆動される。
【0109】
イオンガイド1は、好ましくは真空チャンバ内に設けられる。真空チャンバは、好ましくは、使用時に10-3〜10mbarの範囲内の圧力に維持される。好ましさが劣る実施形態によると、真空チャンバは、10mbarより大きな圧力から大気圧またはその近傍の圧力までの圧力に維持され得る。好ましさが劣る実施形態によると、真空チャンバは、10-3mbarより低い圧力で維持され得る。
【0110】
ガスがイオンガイド1内に存在することによって、好ましくはイオン−分子衝突が生じ、それにより好ましくはイオンが冷却され、その平均運動エネルギーが低減される。イオンの運動エネルギーが低減されると、イオンは、イオンガイド1の中心軸に向かって崩壊する。
【0111】
あるいは、イオンとガス分子との間の衝突が比較的高エネルギーであるように構成されると、イオンは加熱され、その内部エネルギーが増加される。加熱が十分であれば、生体分子(タンパク質など)などの複雑なイオンが展開または少なくとも部分的に展開され、これによりその断面面積が増加され得る。複雑な分子が展開または部分的に展開すると、これにより、次いでそのイオン移動度の低減が生じる。イオンがさらに加熱されると、イオンは、フラグメントまたは娘イオンにフラグメンテーションするようにされ得る。
【0112】
イオン−分子衝突が十分に頻繁である場合、バッファガスは、粘性抗力をイオンの運動に与える。ガスの粘性抗力ならびに電極に印加される1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形の1つ以上のポテンシャルの山または障壁の振幅および平均速度が適切に設定される場合、イオンは、イオンガイド1の周りを平行移動されているポテンシャルの山または障壁を、時々、越える。これらの条件下において、イオンは、そのイオン移動度にしたがって分離し始める。イオンの移動度が低ければ低いほど、イオンがイオンガイド1の一部分の周りを平行移動または回転されているポテンシャルの山または障壁を超える可能性が高くなる。その結果、異なるイオン移動度のイオンは、好ましくはイオンガイド1の周りを異なる平均速度で輸送され、したがって時間的に分離される。
【0113】
閉ループイオンガイド1の1つ以上の段または区分は、イオン移動度分光計またはセパレータ区分を含み得る。ここで、イオンは、好ましくはそのイオン移動度にしたがって時間的に分離される。別の実施形態によると、イオンは、閉ループイオンガイド1の1つ以上の段または区分において、展開または部分的に展開するように誘導され得る。別の実施形態によると、イオンは、閉ループイオンガイド1の1つ以上の段または区分においてフラグメンテーションするように誘導され得る。段または区分の種々の異なる並び換えまたは組み合わせが提供される、さらなる実施形態が考えられる。したがって、例えば、イオン移動度分離段の後段にイオンフラグメンテーション段が設けられ得る。
【0114】
バッファガスが閉ループイオンガイド1の1つ以上の区分内に提供されると、イオンは、イオン運動に対する所定の程度の抵抗を受ける。したがって、イオンの閉ループイオンガイド1の周りの数回の循環を支援するために、イオンガイド1の少なくとも一部分または区分の周りでイオンを推進または駆動するための手段が好ましくは設けられる。好適な実施形態によると、イオンガイド1からの排出が所望されるまで少なくともいくつかのイオンを実質的に連続に閉ループイオンガイド1の周りで推進するために、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形がイオンガイド1を形成する電極に印加され得る。
【0115】
イオンは、一定の軸方向DC電圧勾配をイオンガイド1の少なくとも一部分に沿って重ね合わせることによって、閉ループイオンガイド1の少なくとも一部分に沿って、またはそれの周りで駆動され得る。しかし、閉ループにおいて、ループの周りの軸方向DC電圧勾配の積分は、ゼロに等しいのがよい。したがって、イオンを一方向に駆動するためにDC電圧勾配がイオンガイド1の1区分にわたってまたは沿って印加されると、サーキットがそれ自身に接続する閉ループイオンガイド1の周りのある他の箇所で、イオンは、イオンの前方移送に反対するように作用するDC電圧勾配を受ける。
【0116】
上記好適な実施形態によると、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、イオンがDC電圧勾配を受ける箇所でイオンガイド1を形成する電極に印加され得る。そうしなければ、DC電圧勾配は、イオンの前方移送に反対するように作用する。過渡DC電圧またはポテンシャルをイオンガイド1にこの箇所で印加することで、好ましくは、DC電圧勾配を越えて、わたって、または対抗してイオンを推進することが支援される。そうしなければ、DC電圧勾配は、イオンの前方移送に反対するように作用する。
【0117】
別の実施形態によると、イオンガイド1は、イオンが使用時にイオンガイド1の長さにわたってまたは沿って走行する平面において一般にまたは実質的に配置される複数のプレート電極を含み得る。イオンガイド1は、上側および/または下側プレート電極を含み得る。上側および/または下側プレート電極は、軸方向にセグメント化され得る。少なくともいくつかのイオンをイオンガイド1の長さまたは周回の少なくとも一部分に沿って、またはそれの周りで駆動するために、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形がセグメント化された上側および/または下側プレート電極に印加され得る。イオンが好ましくはイオンガイド.内に半径方向に閉じ込められるように、ACまたはRF電圧の互いに反対の位相が、好ましくは、上側および下側プレート電極の間に配置された隣り合うプレート電極に印加される。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が上側および下側プレート電極の間に配置されたプレート電極に印加されてもよい。
【0118】
好ましさが劣る実施形態によると、閉ループイオンガイド1は、セグメント化ロッドセットイオンガイドを含み得る。隣り合うロッドは、好ましくはACまたはRF供給源の互いに反対の位相に接続される。好ましくはイオンガイドの長さの周りで、およびそれに沿って移動する1つ以上のポテンシャルの山または障壁が形成されるように、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が好ましくはロッドセグメントの1つ以上に印加される。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、1つ以上のポテンシャルの山または障壁が好ましくはイオンガイドの軸に沿ってイオンが推進または駆動されるべき方向へ移動するように、好ましくは漸進的に一続きのロッドセグメントに印加される。
【0119】
好ましさが劣る実施形態によると、イオンガイド1は、リングポール構成を形成するようにロッド電極がリング電極の開口内に設けられるよう、ロッドセットとロッドセットを囲む複数のリング電極との組み合わせを含み得る。隣り合うロッド電極は、好ましくはACまたはRF供給源の互いに反対の位相に接続される。1つ以上の過渡DCポテンシャルの山または障壁がロッドセット内に形成されるイオンガイド領域内に生成されるように、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が、好ましくは、リング電極に印加される。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、1つ以上のポテンシャルの山または障壁がイオンガイドの軸に沿って、またはイオンガイドの周りで、イオンを推進または駆動したい方向へ移動するように、好ましくは漸進的に一続きのリング電極に印加される。
【0120】
本発明の好適な一実施形態にかかる質量分析計を図2に示す。質量分析計は、好ましくは、イオン源4、イオンを閉ループイオンガイド1中に注入するためのイオンゲートまたはデバイス2、イオンを閉ループイオンガイド1から排出するためのイオンゲートまたはデバイス3、および好ましくはイオンガイド1の下流に配置される質量分析器5を含む。閉ループイオンガイド1中に注入されたイオンは、好ましくは閉ループイオンガイド1の周りを1回以上通過または周回する。少なくともいくつかのイオンは、好ましくはイオンゲートまたはデバイス3によってイオンガイド1から排出され、かつイオンは、好ましくは質量分析器5へ前方移送され、次いで質量分析器5においてイオンは質量分析される。
【0121】
イオン源4は、レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、またはシリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源などのパルス化イオン源を含み得る。あるいは、イオン源4は、連続イオン源を含み得る。イオン源4が連続イオン源を含む場合、イオンを格納し、かつ周期的にイオンを放出するためのイオントラップが閉ループイオンガイド1の上流に設けられ得る。連続イオン源は、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、電子衝突(「EI」)イオン源、大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、化学イオン化(「CI」)イオン源、高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、電界イオン化(「FI」)イオン源、または電界脱離(「FD」)イオン源を含み得る。イオン源4は、別の形態の連続または擬連続イオン源を含み得る。
【0122】
多重極ロッドセット質量フィルタ、イオンファネル、四重極質量フィルタ、ウィーンフィルタ、飛行時間質量フィルタもしくは質量分析器、または扇形磁場質量フィルタもしくは質量分析器などの1つ以上の質量選択段が閉ループイオンガイド1の上流および/または下流に設けられ得る。
【0123】
多重極ロッドセットイオンガイド、積重ねリングイオンガイド、イオントンネルイオンガイド、イオンファネルイオンガイドまたは積重ねプレートイオンガイドなどの1つ以上のACまたはRFイオンガイドが、イオン源4の下流に、かつ好ましくは、イオンを好適な閉ループイオンガイド1中へ注入するように好ましくは構成されるイオンゲートまたはデバイス2の上流に設けられ得る。
【0124】
質量分析器5は、好ましくは直交加速飛行時間質量分析器を含む。しかし、他の実施形態によると、質量分析器5は、軸方向加速飛行時間質量分析器、四重極質量分析器、3D四重極イオントラップ、直線四重極イオントラップ、四重極質量フィルタ、扇形磁場質量分析器、イオンサイクロトロン共鳴質量分析器またはオービトラップ質量分析器を含み得る。質量分析器5は、質量依存性共鳴周波数のフーリエ変換を使用する上記種類の質量分析器の変形例を含み得る。
【0125】
一実施形態によると、イオンを閉ループガイド1中へ導入または注入するための手段2および/またはイオンを閉ループイオンガイド1から除去または排出するための手段3は、複数のイオン入口および/またはイオン出口ポートを含む積重ねプレートイオンガイド区分を含み得る。イオンガイド区分は、連続ストリームのイオンが1つのイオンガイド経路またはチャネルから別のイオンガイド経路またはチャネルへ合併、分割または切り換えされることを可能にするように構成され得る。
【0126】
本発明の一実施形態によると、イオンを閉ループイオンガイドに導入するための手段2および/またはイオンを閉ループイオンガイド1から除去または選択するための手段3は、閉ループイオンガイド1の一体部分を形成し得る。イオンを閉ループイオンガイド1中へ導入し、かつ/またはイオンを閉ループイオンガイド1から排出するためのイオン選択デバイス2、3は、閉ループイオンガイド1と実質的に同じ圧力に維持され得る。
【0127】
図3Aは、イオンを閉ループイオンガイド1中へ導入または注入するために使用され得るデバイスの断面を示す。図3Bは、イオンを閉ループイオンガイド1から除去または排出するために使用され得るデバイスの断面を示す。
【0128】
図4Aは、イオンを閉ループイオンガイド1中へ導入するか、またはイオンを閉ループイオンガイド1から除去するかのいずれかのために使用され得る図3Aおよび図3Bに示すデバイスと同様のデバイスの斜視図を示す。図4Aに示すようなデバイスは、好ましくは、図4A、図4Dおよび図4Eに示すような、それぞれ2つの円形開口を有する複数のリング電極6を含む第1の区分を有する。2つの開口7、8の間の分離または間隔は、第1の区分の長さに沿って実質的に一定のままであり得る(例えば、図3Aを参照)。あるいは、図4Dに示すような一実施形態によると、電極6のうちの1つは、他の電極内の開口よりも互いの間隔がより狭い2つの開口7、8を含み得る。他の電極内の開口よりも互いの間隔がより狭い2つの開口を有する電極6は、好ましくは1対の偏向電極9、10に隣接するように配置される。
【0129】
図3Aおよび図4Aは、第1の区分の下流に配置される1対の偏向電極9、10を示す。偏向電極9、10の下流にイオンガイドの第2の区分が好ましくは設けられる。イオンガイドの第2の区分は、好ましくは複数のリング電極11を含む。各リング電極11は、好ましくは図4Bに示すように1つの開口を含む。第2の区分におけるリング電極11の開口は、好ましくは実質的に同じサイズである。
【0130】
好ましさが劣る実施形態によると、第1の区分における電極6および第2の区分における電極11は、非円形開口を含み得る。例えば、電極6、11は、正方形または三角形開口を含み得る。
【0131】
上記好適な実施形態によると、第1および/または第2の区分内の隣り合う電極は、好ましくはACまたはRF供給源の互いに反対の位相に接続される。電極6、11に印加されるACまたはRF電圧は、好ましくはイオンガイド内に形成される擬ポテンシャル井戸内に半径方向にイオンが閉じ込められるようにする。ACまたはRF電圧はまた、イオンをデバイスの中心区分内に閉じ込めるために偏向電極9、10に印加され得る。
【0132】
好ましくは使用時にイオンガイド1の第1および/または第2の区分の長さに沿って平行移動される1つ以上のポテンシャルの山または障壁が好ましくは生成されるように、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が好ましくは第1および/または第2の区分における電極の1つ以上に印加される。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、1つ以上のポテンシャル山または障壁が好ましくはイオンガイド1の軸に沿って、イオンを推進または駆動したい方向に移動するように、好ましくは一続きの電極に漸進的に印加される。
【0133】
第1の区分における電極6が2つより多くの開口を含み得、例えば、3つ以上の入力イオンガイドチャネルが設けられることによって、種々の異なるチャネルからのイオンが必要に応じて閉ループイオンガイド1中へ注入されることが可能となる他の実施形態が考えられる。
【0134】
上記好適な実施形態によると、2つの偏向電極9、10は、好ましくは使用時にDC電圧が印加され、それにより好ましくは偏向電極9、10を通過したイオンビームが特定の方向へ進路変更または偏向されるようにする。例えば、図3Bおよび図4Aに示すデバイスは、イオンが1つの開口を有する電極を含むイオンガイドの区分から偏向電極9、10を通ってイオンガイドの別の区分内に設けられる2つのイオンガイドチャネルのうちの1つに渡るように配置され得る。したがって、イオンは、偏向電極9、10によってイオンガイド1の区分の2つの開口7、8のうちの1つの内部に配置されるイオンガイド経路中に偏向または進路変更される。
【0135】
図3Bは、閉ループイオンガイド1内のイオンがイオンガイドから2つのチャネルのうちの1つに排出され得る実施形態を示す。2つの偏向電極9、10は、好ましくは、イオンビームを偏向電極9、10の下流に配置される電極区分内に設けられる2つのチャネルのうちの1つの中へ偏向するために、DC電圧がそれらに印加されるように配置される。同様に、図3Aを参照して、イオンを入力イオンチャネルから閉ループイオンガイド中へガイドするために、適切なDC電圧が偏向電極9、10に印加され得る。
【0136】
偏向レンズが好ましくは使用され、イオンを閉ループイオンガイド中へ注入するか、かつ/またはそこから排出する。偏向レンズは、好ましくは1対の電極9、10を含む。しかし、イオンビームを進路変更または偏向するように構成される3つ以上の電極を含む偏向レンズが設けられ得る他の実施形態が考えられる。偏向レンズまたは偏向電極9、10によって形成される開口は、好ましくは円形であり、かつ各偏向電極9、10は、好ましくは半円形開口を含む。しかし、偏向レンズが、非円形開口を一緒になって形成する1つ以上の偏向電極を含み得る他の実施形態が考えられる。
【0137】
種々のシミュレーションを1対の偏向電極によって分離された2つの区分を含むイオンガイドのコンピュータモデルを使用して行った。シミュレーションは、イオンガイドのモデルを使用して行った。ここで、イオンは、1つのイオンガイド領域内に閉じ込められた。次いで、イオンは、2つの偏向電極によって、偏向電極の下流に配置されるイオンガイドの別の区分内に設けられる2つのイオンガイドチャネルのうちの1つ中に進路変更または偏向された。1つのイオンガイドチャネルを含むイオンガイドの上流区分内の電極の開口の直径を5mmであるとモデル化した。イオンガイドのすべての電極を厚さが0.5mmであり、電極間間隔が1mmであるとしてモデル化した。
【0138】
2つのイオンガイドチャネルを含むイオンガイドの下流区分内の電極を、直径がそれぞれ4mmの2つの開口を有する電極を含むとしてモデル化した。2つの開口を5mmの間隔(中心間距離)をあけて離されるとしてモデル化した。ただし、2つの偏向電極に最も近い電極は除く。2つの偏向電極に最も近い電極は、それぞれ直径が4mmであり、4.4mmの間隔(中心間距離)をあけて離される2つの開口を有するとしてモデル化した。
【0139】
2つの偏向電極は、1mm厚であるとしてモデル化し、かつ2つの偏向電極によって形成される中心開口は、直径が5mmであるとしてモデル化した。2つの偏向電極は、他方の電極から1mmの間隔をあけて離されるとしてモデル化した。
【0140】
図5A〜図5Dは、上記のようなイオンガイドを通るイオン軌跡のSIMIONコンピュータシミュレーションを示す。SIMIONコンピュータシミュレーションにおいて、イオンは、図の右から左へ移動した。使用したSIMIONモデルは、イオンとバッファガスとの衝突を考慮した。図5A〜図5Dに示すシミュレーションした軌跡のすべてについて、バッファガスは、圧力が0.5mbarのアルゴンとしてモデル化した。
【0141】
RF電圧は、イオンガイドの上流および下流区分内の電極に印加されるとしてモデル化した。電極に印加されるRF電圧は、振幅が200Vピークトゥピークであり、かつ周波数が2.7MHzであるとしてモデル化した。
【0142】
振幅が10Vである過渡DC電圧は、連続する電極対に10μs間印加され、その後次の近接する電極対に印加されるとしてモデル化した。また、偏向電極の上流の電極は、+15Vの一定のDCバイアスに維持されるとしてモデル化し、他方2つの偏向電極の下流に配置される電極は、0VのDCバイアスに保持されるとしてモデル化した。2つの偏向電極に最も近く、かつ偏向電極の下流に配置される電極は、2Vのポテンシャルに保持されるとしてモデル化した。2つの偏向電極は、18Vおよび7Vのポテンシャルに保持されるとしてモデル化した。
【0143】
図5Aは、質量電荷比が100である5個のイオンがイオンガイドの区分を通る軌跡を示す。イオンは、イオンガイドの中心軸から±1mmの範囲内に開始位置を有した。イオンは、2つの偏向電極の下流に配置されるイオンガイドの区分における開口のうちの1つにおいて規定されるイオンガイド領域またはチャネル中へうまく方向づけられた。
【0144】
2つの偏向電極に印加されるDCポテンシャルを変更または逆転させることによって、イオンビームがイオンガイド内の2つのチャネルのうちの他方中へガイドされ得ることは明らかである。図5Bは、2つの偏向電極に印加されるポテンシャルが交換または逆転された場合のシミュレーション結果を示す。次いで、イオンは、2つの偏向電極の下流に配置されるイオンガイド区分内の2つのチャネルのうちの他方中へ進路変更された。
【0145】
図5Cは、図5Aに関連して上記したシミュレーションのために使用された条件と同様であるが、イオンの質量電荷比が1000に増加された条件下のシミュレーション結果を示す。同じく、図5Dは、図5Bに関連して上記したシミュレーションのために使用された条件と同様であるが、イオンの質量電荷比が1000に増加された条件下のシミュレーション結果を示す。図5A〜図5Dから明らかなように、デバイスがイオンの質量電荷比に関係なくイオンを所望のチャネル中へ進路変更または偏向できる。
【0146】
図6A〜図6Dは、図5A〜図5Dに関連してモデル化および上記した条件と同様の条件下であるが、アルゴンガスの圧力を1×10-2mbarに低減されたとしてモデル化し、かつ電極に印加される過渡DC電圧の振幅を1Vに低減されたとしてモデル化したシミュレーション結果を示す。その他すべてのパラメータは、図5A〜図5Dに関連して上記したシミュレーションと同じであった。図6A〜図6Dから明らかなように、イオンは、ガス圧力が比較的低く、かつ電極に印加される過渡DC電圧またはポテンシャルの振幅も比較的低いシミュレーション条件下で所望のチャネル中へ方向づけられた。
【0147】
上記好適な実施形態にかかる閉ループイオンガイドは、イオンガイドの長さに沿ったある箇所で、イオンの前方移送に反対するように作用する軸方向DCポテンシャル勾配を有し得る。イオンに閉ループの周りで複数回の周回を完了させるために、イオンをポテンシャル勾配を越えて強制、推進または駆動する手段が好ましくは設けられる。そうしなければ、ポテンシャル勾配は、イオンの前方移送に反対する可能性がある。
【0148】
図7は、どのようにイオンがDCポテンシャル勾配に対抗して強制、推進または駆動され得るか(そうしなければ、ポテンシャル勾配は、イオンの前方移送に反対するように作用する)を示すようにモデル化したイオンガイド12の1区分を示す。図7に示すようなイオンガイド区分12において、イオンは、イオンガイドの右側から左側へ移送されるとしてモデル化した。イオンの移送は、右から左へ増加するDCポテンシャル勾配によって反対される。ポテンシャル勾配の高さは、15Vであるとしてモデル化した。イオンガイド区分12の電極は、直径が5mmである開口を有するとしてモデル化した。バッファガスは、存在し、かつ0.5mbarの圧力に維持されるアルゴンを含むとしてモデル化した。
【0149】
RF電圧は、イオンをイオンガイド区分12内に半径方向に閉じ込めるためにイオンガイド区分12の電極に印加されるとモデル化した。RF電圧は、振幅が200Vピークトゥピークであり、かつ周波数が2.7MHzであるとしてモデル化した。
【0150】
振幅が25Vである過渡DC電圧は、連続する電極対に10μs間印加され、その後近接する電極対に印加されるとしてモデル化した。
【0151】
図8Aは、質量電荷比が100であり、かつ図7に示すようなイオンガイド区分12を通るイオンのSIMIONシミュレーションの結果を示す。図8Bは、質量電荷比が1000であり、かつイオンガイド区分12を通るイオンのSIMIONシミュレーションの結果を示す。両方の場合において、イオンは、イオンガイド区分12の中心軸から±1mmに開始位置を有するとしてモデル化した。図8Aおよび8Bから明らかなように、イオンガイド区分12の電極に印加される過渡DC電圧は、反対するDCポテンシャル勾配に対抗してイオンガイド区分12に沿ってイオンを輸送または強制するのに有効である。
【0152】
図9Aは、図8Aに示したシミュレーションと同様であるが、アルゴンガスのガス圧力を1×10-2mbarに低減されたとしてモデル化したシミュレーションの結果を示す。図9Bは、図8Bに示したシミュレーションと同様であるが、1×10-2mbarに低減されたアルゴンのガス圧力でのシミュレーションの結果を示す。図9Aおよび図9Bに示すシミュレーションにおいて、イオンガイド区分12の電極に印加される過渡DC電圧の振幅は、25Vから15Vに低減され、かつ電極に印加されるRF電圧は、200Vピークトゥピークから260Vピークトゥピークに増加された。図9Aおよび図9Bから明らかなように、イオンは、より低い振幅を有する過渡DC電圧またはポテンシャルを電極に印加することによって、より低い圧力で、反対するDCポテンシャル勾配を越えて駆動され得る。
【0153】
本発明の種々のさらなる実施形態が考えられ、それらをここで図10A〜図10Cを参照して説明する。これらのさらなる実施形態によると、イオンを閉ループイオンガイド中へ導入するための手段およびイオンを閉ループイオンガイドから除去する手段を含むイオンガイドが設けられる。イオンを閉ループイオンガイド中へ導入するための手段およびイオンを閉ループイオンガイドから除去する手段はともに、図10A〜図10Cにおいてイオン軌跡を切り換えるための手段13によって模式的に表わされる。
【0154】
図10A〜図10Cに示す実施形態において、イオンは、閉ループイオンガイドを構成する各イオンガイド区分14における連続した電極に過渡DCポテンシャルを印加することによって、閉ループイオンガイドの周りに時計周りに輸送される。イオンが閉ループイオンガイドの周りに反時計方向に輸送され得る他の実施形態が考えられる。図10Aに示す実施形態において、イオンは、イオン切り換え区分13のうちのいくつかにおいて、あるイオンガイドチャネルから別のイオンガイドチャネルへ再方向づけられる。他の区分において、イオンは、あるイオンガイド区分14から別のイオンガイド区分へ移送される。
【0155】
イオンガイド区分14は、まっすぐなまたは曲ったイオンガイド区分のいずれかを含み得る。例えば、図10Cに示す実施形態において、イオンガイド区分14のうちの1つは、曲ったイオンガイド経路を含む。
【0156】
図10A〜図10Cに示す実施形態において、イオン切り換え区分13は、好ましくはすべてがイオンを閉ループイオンガイド中へ導入し、かつ/またはイオンを閉ループイオンガイドから引き出すための手段を含む。イオン切り換え区分13はまた、好ましくはイオンを閉ループイオンガイドの1つの区分から次の区分へ方向づける。しかし、また、イオンがイオンガイド区分14中へ導入され、かつ/またはイオンガイド区分14から引き出される実施形態が考えられる。
【0157】
図10A〜図10Cを参照して例示および説明した実施形態によると、イオン選択および/または再方向づけデバイスまたは区分13は、好ましくはイオンガイド区分14と実質的に同じ圧力に維持される。
【0158】
イオンガイド区分14のうちの1つ以上が、イオンがイオンガイド区分14中へ加速される際に、イオンが好ましくは衝突誘起分解(「CID」)よってフラグメンテーションされてフラグメントまたは娘イオンにされるような圧力に維持され得る実施形態が考えられる。
【0159】
一実施形態によると、イオンガイド区分14のうちの1つ以上が、イオンがそのイオン移動度にしたがって分離されるのに最適な圧力に維持され得る。したがって、イオンガイドの1つ以上の区分14は、イオン移動度分離区分を含み得る。
【0160】
イオンガイドの一部分が衝突、フラグメンテーションまたは反応セルとして動作される場合、イオンガイド区分は、好ましくは、使用時に、10-3〜10-1mbarの範囲内の圧力に維持され得る。イオンガイドの一部分がイオン移動度セパレータとして動作される場合、イオンガイド区分は、好ましくは、使用時に10-1〜10mbarの範囲内の圧力に維持され得る。
【0161】
図11A〜図11Cは、差動ポンプ開口15がイオンガイド区分14とイオンを導入、引き出し、または再方向づけするための手段13との間に設けられる本発明のさらなる実施形態を例示する。この実施形態によると、差動ポンプ開口15を設けることによって、好ましくは閉ループイオンガイドの異なる区分が異なる圧力に維持されることが可能となる。例えば、イオンガイド区分14のうちの1つ以上は、比較的高い圧力に維持され得、他方他のイオンガイド区分14は、比較的低い圧力に維持され得る。イオンを導入、引き出し、または再方向づけするための手段13は、イオンガイド区分14よりも比較的高いまたは比較的低い圧力に維持され得る。
【0162】
比較的低い圧力が要求されるイオンガイドの区分にポンプが適用され、かつ比較的高い圧力が要求される区分にガスが導入される場合、2つの区分を分離する差動ポンプ開口15を隔てて圧力差が確立される。
【0163】
一実施形態によると、閉ループイオンガイドの1つ以上の区分14は、使用時に、イオン移動度分離に適した圧力に維持され得、他方閉ループイオンガイドの1つ以上の他の区分は、使用時に、イオンの衝突誘起展開および/またはイオンの衝突誘起フラグメンテーションに適した圧力に維持され得る。
【0164】
図12は、質量フィルタ17が閉ループイオンガイド内に含まれるさらなる実施形態を示す。イオン源(図示せず)からのイオンは、好ましくはイオントラップ16内にトラップされる。イオンは、好ましくはイオントラップ16内にとどまり、他方前回に放出された1塊のイオンが分析される。次いで、1塊またはパルスのイオンは、好ましくはイオントラップ16から放出され、その後合併セル(merger cell)13に入る。次いで、イオンは、好ましくは合併セル13から質量フィルタ17へ渡る。質量フィルタ17は、好ましくは四重極ロッドセット質量フィルタを含む。しかし、他の実施形態によると、質量フィルタ17は、別の形態の質量フィルタ含み得る。質量フィルタ17は、いくつかの異なるモードで動作され得る。質量フィルタ17は、例えば、低域通過、帯域通過または高域通過質量フィルタ動作モードで動作され得る。
【0165】
好適な実施形態によると、質量フィルタ17は、好ましくは、特定の質量電荷比を有する親または前駆体イオンを前方移送し、かつ他の質量電荷比を有するイオンを実質的に減衰するように構成される。次いで、選択された親または前駆体イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応セル18へ前方移送される。一動作モードにおいて、衝突、フラグメンテーションまたは反応セル18は、親または前駆体イオンを複数のフラグメントまたは娘イオンにフラグメンテーションするように構成される。次いで、結果として生じるフラグメントまたは娘イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス18からダイバータ19へ渡る。ダイバータ19は、フラグメントまたは娘イオンをオプションの冷却器セル21または、あるいは好ましくは閉ループイオンガイドの一部分を形成するイオンガイド14のいずれかに前方移送するように構成され得る。冷却器セル21は、パルス化イオンビームを実質的に連続したイオンビームに再合併するように構成され得る。イオンは、好ましくは、冷却器セル21から好ましくは直交加速飛行時間質量分析器を含む質量分析器22へ前方移送される。
【0166】
フラグメントまたは娘イオンがダイバータ19によって、閉ループイオンガイドの一部分を形成するイオンガイド14へ渡される場合、次いで、イオンは、好ましくはリターンセル20に前方移送される。イオンは、好ましくは、合併セル13および衝突、フラグメンテーションまたは反応セル18から最後のパルスからのイオンがなくなるまでリターンセル20に格納され得る。次いで、イオンは、好ましくはリターンセル20から別のイオンガイド区分14を介して合併セル13へ移送される。次いで、フラグメントまたは娘イオンは、好ましくは質量フィルタ17に渡され得る。質量フィルタ17は、前方移送するための所定のフラグメントまたは娘イオンを選択し、かつ望ましくない質量電荷比を有する他のイオンを実質的に減衰するように構成され得る。次いで、選択されたフラグメントまたは娘イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応セル18に渡され、そこでイオンは、フラグメンテーションされて第2世代のフラグメントイオンを形成し得る。
【0167】
次いで、第2世代のフラグメントイオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応セル18からダイバータ19中へ渡る。ダイバータ19は、第2世代のフラグメントイオンをオプションの冷却器セル21に前方移送するか、またはそのイオンを閉ループイオンガイドの一部分を形成するイオンガイド14に移送するかのいずれかを行うように構成され得る。第2世代のフラグメントイオンが閉ループイオンガイドのイオンガイド区分14へ移送される場合、MSn実験が行われ得ることは明らかである。
【0168】
合併セル13は、ガスを含んでもよいし、含まなくてもよい。ダイバータセル19は、好ましくは、イオンビームが、あるイオンガイドチャネルを通って出射するか、または別のイオンガイドチャネルを通って出射するかを制御する。
【0169】
リターンセル20は、ガスを含んでもよいし、含まなくてもよい。1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたは1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャル波形は、好ましくは、イオンのダイバータセル19から合併セル13への輸送を支援するために、リターンセル20を構成する電極に印加され得る。
【0170】
合併セル13および/または衝突セル18および/またはダイバータセル19および/または冷却器セル21および/またはリターンセル20は、積重ねリングデバイス、積重ねプレートデバイス、または両方の組み合わせとして、同じプリント回路基盤アセンブリ上に実装され得る。
【0171】
本発明の種々のさらなる実施形態が考えられる。例えば、種々の異なる並び換えおよび組み合わせで、閉ループイオンガイドの異なる区分が使用時にイオン移動度分離および/または衝突誘起分解に適した圧力で維持され得る実施形態が考えられる。
【0172】
一動作モードにおいて、イオンは、まず、閉ループイオンガイドを第1回目に周回する際にそのイオン移動度にしたがって分離され得る。次いで、いくつかのイオンが閉ループイオンガイドを第2回目に周回するように選択され得、他方他のイオンは、閉ループイオンガイドから引き出され、そのイオンに対してさらなる分析および/またはイオン検出がなされ得る。第2回目の周回をするように閉ループイオンガイドの周を通過するように方向づけられたこれらのイオンは、さらにそのイオン移動度にしたがって分離され得る。次いで、イオンのうちのいくつかまたはすべてが閉ループイオンガイドから引き出され、そのイオンに対してさらなる分析および/またはイオン検出がなされ得る。あるいは、イオンのうちのいくつかまたはすべては、閉ループイオンガイドを通って、またはそこに沿って通過し、閉ループイオンガイドを3回以上周回し、その後好ましくはさらなる分析および/またはイオン検出のために引き出されるようにし得る。
【0173】
イオン移動度セパレータまたはイオン移動度分光計として作用する閉ループイオンガイドの分解能は、閉ループイオンガイドの周りのイオンの周回間の所定の条件を変更することによってさらに改善され得る実施形態が考えられる。例えば、イオンを閉ループイオンガイドの周りで駆動するために閉ループイオンガイドの電極に印加される過渡DC電圧またはポテンシャルの振幅は周回ごとに変化、変更、増加、または低減され得る。同様に、過渡DC電圧が閉ループイオンガイドの電極に印加されるレートは周回ごとに変化、変更、増加、または低減され得る。
【0174】
一実施形態によると、イオンガイド区分のうちの1つ以上がポテンシャル回復機能を含み得る。
【0175】
好ましさが劣る実施形態によると、閉ループイオンガイドは、従来のイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分を含み得る。イオン移動度分光計またはセパレータは、例えば、ドリフト管であって、このドリフト管内に分散された複数のガードリングを含むドリフト管を含み得る。ガードリングは、値の等しい抵抗器によって相互接続され、かつDC電圧源に接続され得る。直線DC電圧勾配がドリフト管の長さに沿って生成され得る。ガードリングは、ACまたはRF電圧源に接続されなくてもよい。
【0176】
一実施形態によると、閉ループイオンガイドは、いくつかのリングまたは環状電極またはいくつかのプレート電極を含むイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分を含み得る。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分を形成する交互電極が、好ましくはACまたはRF電圧源の互いに反対の位相に結合される。ACまたはRF電圧源は、0.1〜10.0MHz、好ましくは0.3〜3.0MHz、さらに好ましくは0.5〜2MHzの範囲の周波数を有するのが好ましい。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分を構成する電極は、抵抗器を介してDC電圧源に相互接続され得る。DC電圧源は、一実施形態において、400V供給源を含み得る。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分を形成する電極を相互接続する抵抗器は、実質的に値が等しくあり得る。この場合、直線軸方向DC電圧勾配が提供され得る。DC電圧勾配は、閉ループイオンガイドの周りで必要とされる方向にイオンを推進するために維持され得る。印加されるACまたはRF電圧は、好ましくはDC電圧に重ね合わされ、イオンをイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分内に半径方向に閉じ込めるように働く。
【0177】
上記好ましさが劣る実施形態のうちのいくつかによると、イオンの前方移送に反対するように作用するより大きなポテンシャル差が閉ループイオンガイドの1区分に沿って与えられ得る。これらの実施形態によると、イオンをポテンシャル差を越えて推進するか、またはポテンシャルを回復するために、イオンの前方移送に反対する比較的大きなポテンシャル差を有するイオンガイドのその区分に隣接する電極に、1つ以上の過渡DC電圧または1つ以上の過渡DC電圧波形が印加される必要があり得る。
【0178】
本発明を好適な実施形態を参照して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載されるような発明の範囲を逸脱することなく種々の変更が形態および詳細においてなされ得ることが当業者に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、本発明の好適な一実施形態にかかる閉ループイオンガイドを示す。
【図2】図2は、上記好適な実施形態にかかる閉ループイオンガイドを含む質量分析計を示す。
【図3】図3Aは、イオンを好適な閉ループイオンガイド中へ導入するためのデバイスの断面を示す。図3Bは、イオンを好適な閉ループイオンガイドから除去するためのデバイスの断面を示す。
【図4】図4A〜図4Eは、イオンを好適な閉ループイオンガイドへ導入またはそこから除去するためのデバイスを示す。
【図5】図5Aは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図5Bは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。図5Cは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図5Dは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。
【図6】図6Aは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図6Bは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。図6Cは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図6Dは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。
【図7】図7は、イオンがポテンシャル差に打ち克つように前方へ駆動される(そうしなければ、ポテンシャル差はイオンの前方移送に反対するように作用する)好適なイオンガイドの1区分を模式的に示す。
【図8】図8Aは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図8Bは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。
【図9】図9Aは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図9Bは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。
【図10】図10Aは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段の一実施形態を示す。図10Bは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段の別の実施形態を示す。図10Cは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段のさらなる実施形態を示す。
【図11】図11Aは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口の一実施形態を示す。図11Bは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口の別の実施形態を示す。図11Cは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口のさらなる実施形態を示す。
【図12】図12は、質量フィルタが閉ループイオンガイドに含まれる実施形態を示す。
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計および質量分析の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析は、生物学的に対象となる分子などの分子を同定および定量するための確立された技術である。その圧倒的な速度、感度および特異性ゆえにタンパク質を同定するための主要な技術である。タンパク質を分析するための戦略には、タンパク質を損壊させずに分析するか、またはより一般にはペプチド骨格に沿って予測可能な残基で切断する特定のプロテアーゼを使用してタンパク質を消化することのいずれかが含まれ得る。後者は、質量分析を介する分析により適するより短いペプチド配列を提供する。
【0003】
これらの実験は、通常エレクトロスプレーイオン化(ESI)を使用するタンデム質量分析計に直接接合された液体クロマトグラフィによって複雑な消化混合物を分離することを含む。MSおよびMS/MSスペクトルは、クロマトグラフ分離全体にわたって集められ得、この情報を直接使用し、データベースを検索して一致する配列を見つけ出し、これにより親タンパク質を同定し得る。
【0004】
このアプローチを使用して低内因性濃度で存在するタンパク質を同定し得る。しかし、そのような消化混合物は、何千とはいかなくとも何百もの成分を含み得、その多くはクロマトグラフィカラムから共溶出する。消化混合物を分析するために設計された方法は、複雑な混合物内でできるだけ多くのピークを同定することを目的としている。試料が複雑になればなるほど、各個々の前駆体イオンを後のフラグメンテーションのために選択することはますます困難となる。ピーク容量を増加する一つの方法は、大量の親または前駆体イオンを同時にフラグメンテーションし、それらのフラグメントまたは娘イオンを記録する、「ショットガン」として知られる方法である。次いで、フラグメントまたは娘イオンは、それらのLC溶離時間の位置関係の近似度にしたがって親または前駆体イオンと対応づけられる。結局のところ、試料の複雑性が増加するにつれ、当該分野において重要な進歩を刻んだこの方法でさえ時々失敗し得る。
【0005】
非常に複雑な混合物の問題を扱う別の方法は、分離能力をさらに向上させることである。さらなる直交分離段を付加することは、特に有効であり得る。特に、各分離プロセスに対する時間要件と質量分析計に対する時間要件が重なり合わない場合に有効であり得る。
【0006】
質量分析による分析の前にイオンを分離するために使用され得る一つの公知方法は、イオン移動度分光分析または気相電気泳動の方法である。ドリフト管またはセルを含むイオン移動度分光計であって、軸方向電界がドリフト管の長さに沿って維持されるイオン移動度分光計が公知である。バッファガスがイオン移動度分光計内に提供される。比較的高い移動度を有するイオンは、イオン移動度分光計に沿って比較的速く移動するが、比較的低い移動度を有するイオンはよりゆっくりと移動する。したがって、イオンは、そのイオン移動度にしたがって時間的に分離される。
【0007】
イオン移動度分光計は、大気圧もしくはその近傍でまたは0.01mbarという低い圧力に下げられた部分的真空下で動作し得る。開口を有する複数の電極を含む、部分的真空下で動作するイオン移動度分光計が公知であり、DC電圧勾配が、イオン移動度分光計の長さに沿って維持され、かつ電極は、ACまたはRF電圧源に接続される。ACまたはRF電圧の周波数は、0.1〜3.0MHzの範囲内であり得る。この形態のイオン移動度分光計は、ACまたはRF電圧が電極に印加されることによってイオン移動度分光計を通るイオンが半径方向に閉じ込められるという点で有利である。イオンが半径方向に閉じ込められるので、イオンを半径方向に閉じ込めないイオン移動度分光計と比べてイオン移送がより高速になる。
【0008】
イオンが不均一なRF電界によってイオンガイド内に半径方向に閉じ込められ、かつイオンがバッファガスの存在下にイオンガイドの軸に沿って移動するポテンシャルの山または障壁によって推進される、別の形態のイオン移動度分光計が公知である。進行するポテンシャルの障壁の振幅および速度ならびにガスの種類および圧力を適切に選択することによって、イオンがそのイオン移動度にしたがって選択的にポテンシャル障壁を越えることが可能となる。その結果、異なるイオン移動度を有するイオンが異なる速度で輸送され、それにより時間的に分離されることが可能となる。
【0009】
イオン移動度分離(IMS)または気相電気泳動デバイスを使用することによって得られるさらなる分離によって、質量分析計のピーク容量が増加することが知られている。この利点は、液体クロマトグラフィ(LC)などの他の分離技術がまた使用されるかどうかにかかわらず得られる。さらに、イオン移動度分離を使用することによって得られる利点は、イオンがまず質量分析され得、次いでフラグメンテーションに誘導され得(CID)、かつその結果得られたフラグメントイオンが質量分析されるタンデム質量分析計(MS/MS)に同様に関連する。
【0010】
直線軸方向電圧勾配を有するドリフト管を含むイオン移動度セパレータにおいて、イオン移動度セパレータの最大分解能力は、比(td/Δtd)によって表わされる。ここで、tdは、ドリフト時間であり、Δtdは、移動度ピークの半値幅である。この比は、デバイスの物理構成によって決定され、以下の関係によって与えられる。
【0011】
【数1】
【0012】
ここで、Eは、軸方向電界であり、Lは、ドリフト管の長さであり、Tは、バッファガス温度である。項z、eおよびkBは、それぞれ、イオン上の電荷数、電子1個の電荷、およびボルツマン定数である。
【0013】
実際は、電気的破壊が生じる前に印加され得る最大電界強度Eが存在する。また、非常に高い電界強度において、デバイスは、非線形になり始める。したがって、通常、ドリフト管の長さは、セパレータの分解能を増加するために増加される。その結果、ドリフト管にわたって印加される電圧が増加される。加えて、従来のドリフト管において、ビームの広がりは、その長さとともに増加し、したがって、ドリフト管の直径は、その長さとともに増加する必要がある。最終的には、機器寸法は、容認できないほどに大きくなる。
【0014】
ビームの広がりの問題は、低圧(100mbar未満)で動作するドリフト管において、不均一なRF電界を使用してイオンを半径方向に閉じ込めることによって克服され得る。さらに、大きな電圧を長いドリフト管の長さにわたって印加する必要から生じる困難は、ドリフト管上で重ね合わされた進行波を使用することによって克服され得る。ここでは、比較的低い電圧で十分である。しかし、非常に長いドリフト管の使用によって生じる不都合が残る。
【0015】
この問題は、イオンをそのイオン移動度にしたがって高い分解能で分離し、次いでイオンを特定のやり方で変更し、次いでさらに得られた生成物をそのイオン移動度にしたがって再度高い分解能で分離する必要がある場合にはさらに複雑となる。例えば、イオン移動度にしたがって分離されたイオンは、その後にガス分子と高エネルギーに衝突させることによって、部分的に展開(unfold)されるか、完全に展開されるか、またはフラグメンテーションされ得る。したがって、ある実験では、イオンをそのイオン移動度にしたがって分離するための長いドリフト管、イオンの展開またはフラグメンテーションを誘起するための衝突領域、および次いで生成物イオンをそのイオン移動度にしたがって分離するための第2のドリフト管が必要とされ得る。各場合において、高い分解能のイオン移動度分離が必要とされ得る。しかし、2つの長いドリフト管を有する質量分析計は、容認できないほど長くなる。
【0016】
さらに多くの段を必要とするより複雑な実験が想起可能である。例えば、あるさらにより複雑な実験では、第1のIMS段によるイオンの分離、衝突によって誘起される展開、展開されたイオンの第2のIMS段による分離、衝突によって誘起されるフラグメンテーション、生成物イオンの第3のIMS段による分離、および最終的な質量分析が含まれ得る。
【0017】
特定の実験を行うように設計された装置もフレキシブルではない。例えば、単純な実験だけを行うように設計された装置は、より複雑な実験を行うことができない。逆に、複雑な実験を行うように設計された装置は、性能をある程度損なわずには単純な実験を行うことができない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、改善された質量分析計を提供することが所望される。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の一局面によると、複数の電極を含む閉ループイオンガイドを含む質量分析計が提供される。
【0020】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、閉ループイオンガイドを、またはその周辺を複数回周回または回転するように構成される。一動作モードにおいて、閉ループイオンガイド内のイオンのうちの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、特定の時点で閉ループイオンガイドに沿ってまたは周りで実質的に同じ方向に移動するか、または実質的に同じ向きに回転するように構成され得る。
【0021】
ゼロでないDC電圧勾配が、好ましくは、イオンガイドの1つ以上の区分または部分にわたって維持される。閉ループイオンガイドの周りの軸方向DC電圧勾配の積分が好ましくは実質的にゼロである。
【0022】
イオンガイドは、好ましくは、周回または円形経路または回旋状経路を形成する、曲った、迷路状の、曲がりくねった(tortuous)、らせん状の(serpentine)、または回り道の(circuitous)イオンガイド経路を含む。イオンは、好ましくは、閉ループイオンガイドの周りを移動する際に回転するか、または方向を変更する。
【0023】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、閉ループイオンガイドの周りを回転または循環するように構成される。一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回または10回より多く周回するように構成される。
【0024】
特に好適な実施形態によると、複数の電極は、好ましくは、開口を有する電極を含み、イオンは、使用時に開口を通って移送される。好ましくは、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、実質的に円形、長方形、正方形または楕円形の開口を有する。
【0025】
上記好適な実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズであるか、または実質的に同じ面積を有する開口を有する。他の実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、サイズまたは面積がイオンガイドの軸または長さに沿った方向に漸進的により大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する。
【0026】
電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、好ましくは、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する開口を有する。上記好適な実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに離される。
【0027】
複数の電極のうちの少なくともいくつかは、好ましくは開口を含み、開口の内径または寸法の隣り合う電極間の中心間軸方向間隔に対する比は、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0、および(xxii)>5.0からなる群から選択される。
【0028】
一実施形態によると、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さまたは軸方向長さを有する。
【0029】
好ましさが劣る実施形態によると、イオンガイドは、セグメント化ロッドセットイオンガイドを含み得る。イオンガイドは、例えば、セグメント化四重極、六重極もしくは八重極イオンガイドまたは8個より多くのセグメント化ロッドセットを含むイオンガイドを含み得る。一実施形態によると、イオンガイドは、(i)略または実質的に円形断面、(ii)略または実質的に双曲面、(iii)円弧または部分円形断面、(iv)略または実質的に長方形断面、および(v)略または実質的に正方形断面からなる群から選択される断面を有する複数の電極を含み得る。
【0030】
別の実施形態によると、イオンガイドは、複数のプレート電極を含み得、複数のグループの電極は、イオンガイドの軸方向長さに沿って配置される。各グループの電極は、好ましくは、第1の電極および第2の電極を含む。第1および第2の電極は、好ましくは、実質的に同じ平面内に配置され、かつイオンガイドの中心長軸のいずれか一方の側に配置される。質量分析計は、好ましくは、イオンをイオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを第1および第2の電極を印加するための手段をさらに含む。各グループの電極は、好ましくは第3の電極および第4の電極をさらに含む。第3および第4の電極は、好ましくは、第1および第2の電極と実質的に同じ平面内に配置され、かつイオンガイドの中心長軸のいずれか一方の側に第1および第2の電極とは異なる方向に配置される。ACまたはRF電圧を印加するための手段は、好ましくは、イオンをイオンガイド内に第2の半径方向(好ましくは、第1の方向に直交する方向)に閉じ込めるために、ACまたはRF電圧を第3および第4の電極に印加するように構成される。
【0031】
別の実施形態によると、イオンガイドは、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極を含み得る。1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極は、好ましくは、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含む。好ましくは、平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時にイオンが走行する平面内に概して配置される。
【0032】
さらなる実施形態によると、イオンガイドは、1つ以上のロッドセット電極および1つ以上のロッドセット電極の周りに配置される複数のリング電極を含み得る。
【0033】
質量分析計は、好ましくは、ACまたはRF電圧を閉ループイオンガイドを構成する電極に供給するためのACまたはRF電圧手段をさらに含む。ACまたはRF電圧は、好ましくは、イオンを閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する。ACまたはRF電圧は、好ましくは、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有する。ACまたはRF電圧は、好ましくは、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有する。
【0034】
イオンガイドは、好ましくはn個の軸方向セグメントを含み、nは、(i)1〜10、(ii)11〜20、(iii)21〜30、(iv)31〜40、(v)41〜50、(vi)51〜60、(vii)61〜70、(viii)71〜80、(ix)81〜90、(x)91〜100、および(xi)>100からなる群から選択される。各軸方向セグメントは、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個または20個より多くの電極を含む。
【0035】
軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の軸方向長さは、好ましくは、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、および(xi)>10mmからなる群から選択される。軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の間の間隔は、好ましくは、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、および(xi)>10mmからなる群から選択される。
【0036】
イオンガイドは、好ましくは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、および(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有する。イオンガイドは、好ましくは、少なくとも(i)10〜20個の電極、(ii)20〜30個の電極、(iii)30〜40個の電極、(iv)40〜50個の電極、(v)50〜60個の電極、(vi)60〜70個の電極、(vii)70〜80個の電極、(viii)80〜90個の電極、(ix)90〜100個の電極、(x)100〜110個の電極、(xi)110〜120個の電極、(xii)120〜130個の電極、(xiii)130〜140個の電極、(xiv)140〜150個の電極、または(xv)>150個の電極を含む。
【0037】
特に好適な実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、イオンガイドの長さまたはイオンガイド経路のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って、またはその周りにイオンを駆動または推進するための手段をさらに含む。
【0038】
イオンを駆動または推進するための手段は、好ましくは、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するための手段を含む。1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形は、好ましくは、(i)1つのポテンシャルの山もしくは障壁、(ii)1つのポテンシャル井戸、(iii)複数のポテンシャルの山もしくは障壁、(iv)複数のポテンシャル井戸、(v)1つのポテンシャルの山もしくは障壁および1つのポテンシャル井戸の組み合わせ、または(vi)複数のポテンシャルの山もしくは障壁および複数のポテンシャル井戸の組み合わせを生成する。
【0039】
1つ以上の過渡DC電圧またはポテンシャル波形は、好ましくは、繰り返し波形または方形波を含む。使用時に、複数の軸方向DCポテンシャル井戸がイオンガイドの長さに沿って平行移動され得るか、または複数の過渡DCポテンシャルまたは電圧がイオンガイドの軸方向長さに沿って電極に漸進的に印加され得る。
【0040】
一実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形の振幅、高さまたは深さを期間t1にわたってx1ボルトだけ漸進的に増加するか、漸進的に低減するか、漸進的に変更するか、スキャンするか、直線的に増加するか、直線的に低減するか、段階的、漸進的もしくは他のやり方で増加するか、または段階的、漸進的もしくは他のやり方で低減するように構成および適合される第1の手段を含む。好ましくは、x1は、(i)<0.1V、(ii)0.1〜0.2V、(iii)0.2〜0.3V、(iv)0.3〜0.4V、(v)0.4〜0.5V、(vi)0.5〜0.6V、(vii)0.6〜0.7V、(viii)0.7〜0.8V、(ix)0.8〜0.9V、(x)0.9〜1.0V、(xi)1.0〜1.5V、(xii)1.5〜2.0V、(xiii)2.0〜2.5V、(xiv)2.5〜3.0V、(xv)3.0〜3.5V、(xvi)3.5〜4.0V、(xvii)4.0〜4.5V、(xviii)4.5〜5.0V、(xix)5.0〜5.5V、(xx)5.5〜6.0V、(xxi)6.0〜6.5V、(xxii)6.5〜7.0V、(xxiii)7.0〜7.5V、(xxiv)7.5〜8.0V、(xxv)8.0〜8.5V、(xxvi)8.5〜9.0V、(xxvii)9.0〜9.5V、(xxviii)9.5〜10.0V、および(xxix)>10.0Vからなる群から選択される。好ましくは、t1は、(i)<lms、(ii)1〜10ms、(iii)10〜20ms、(iv)20〜30ms、(v)30〜40ms、(vi)40〜50ms、(vii)50〜60ms、(viii)60〜70ms、(ix)70〜80ms、(x)80〜90ms、(xi)90〜100ms、(xii)100〜200ms、(xiii)200〜300ms、(xiv)300〜400ms、(xv)400〜500ms、(xvi)500〜600ms、(xvii)600〜700ms、(xviii)700〜800ms、(xix)800〜900ms、(xx)900〜1000ms、(xxi)1〜2s、(xxii)2〜3s、(xxiii)3〜4s、(xxiv)4〜5s、および(xxv)>5sからなる群から選択される。
【0041】
一実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形が電極に期間t2にわたってx2m/sだけ印加される速度またはレートを漸進的に増加するか、漸進的に低減するか、漸進的に変更するか、スキャンするか、直線的に増加するか、直線的に低減するか、段階的、漸進的もしくは他のやり方で増加するか、または段階的、漸進的もしくは他のやり方で低減するように構成および適合される第2の手段をさらに含む。好ましくは、x2は、(i)<1、(ii)1〜2、(iii)2〜3、(iv)3〜4、(v)4〜5、(vi)5〜6、(vii)6〜7、(viii)7〜8、(ix)8〜9、(x)9〜10、(xi)10〜11、(xii)11〜12、(xiii)12〜13、(xiv)13〜14、(xv)14〜15、(xvi)15〜16、(xvii)16〜17、(xviii)17〜18、(xix)18〜19、(xx)19〜20、(xxi)20〜30、(xxii)30〜40、(xxiii)40〜50、(xxiv)50〜60、(xxv)60〜70、(xxvi)70〜80、(xxvii)80〜90、(xxviii)90〜100、(xxix)100〜150、(xxx)150〜200、(xxxi)200〜250、(xxxii)250〜300、(xxxiii)300〜350、(xxxiv)350〜400、(xxxv)400〜450、(xxxvi)450〜500、および(xxxvii)>500からなる群から選択される。好ましくは、t2は、(i)<1ms、(ii)1〜10ms、(iii)10〜20ms、(iv)20〜30ms、(v)30〜40ms、(vi)40〜50ms、(vii)50〜60ms、(viii)60〜70ms、(ix)70〜80ms、(x)80〜90ms、(xi)90〜100ms、(xii)100〜200ms、(xiii)200〜300ms、(xiv)300〜400ms、(xv)400〜500ms、(xvi)500〜600ms、(xvii)600〜700ms、(xviii)700〜800ms、(xix)800〜900ms、(Xx)900〜1000ms、(xxi)1〜2s、(xxii)2〜3s、(xxiii)3〜4s、(xxiv)4〜5s、および(xxv)>5sからなる群から選択される。
【0042】
一実施形態によると、質量分析計は、一定のゼロでないDC電圧勾配をイオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するように構成される手段を含む。
【0043】
特に好適な実施形態によると、イオンガイドの1つ以上の部分は、イオン移動度分光計またはセパレータ部分、区分または段を含み得る。イオンは、好ましくは、イオン移動度分光計またはセパレータ部分、区分または段において、そのイオン移動度にしたがって時間的に分離するようにされる。
【0044】
別の実施形態によると、イオンガイドの1つ以上の部分は、フィールド非対称イオン移動度分光計(「FAIMS」)部分、区分または段を含み得、イオンは、フィールド非対称イオン移動度分光計(「FAIMS」)部分、区分または段において、そのイオン移動度の電界強度に対する変化速度にしたがって時間的に分離するようにされる。
【0045】
上記好適な実施形態によると、バッファガスが好ましくは使用時にイオンガイドの1つ以上の区分内に提供される。一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際にフラグメンテーションせずに衝突により冷却されるように構成される。
【0046】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際に加熱されるように構成される。
【0047】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際にフラグメンテーションされるように構成される。
【0048】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際に展開(unfold)または少なくとも部分的に展開するように構成される。
【0049】
一動作モードにおいて、イオンは、好ましくは、イオンガイドの部分または領域内に軸方向にトラップされる。
【0050】
質量分析計は、好ましくは、イオンをイオンガイド中へ注入するための手段を含む。イオンを注入するための手段は、好ましくはイオンガイド中へ注入されるイオンが通り得る、1、2、3個または3個より多くの個別のイオンガイドチャネルまたは入力イオンガイド領域を含み得る。イオンを注入するための手段は、複数の電極を含み得、各電極は、好ましくは、1、2、3個または3個より多くの開口を含む。イオンを注入するための手段は、1つ以上の偏向電極を含み得る。好ましくは、イオンを1つ以上のイオンガイドチャネルまたは入力イオンガイド領域からイオンガイド中へ方向づけるために、1つ以上の電圧が1つ以上の偏向電極に印加される。
【0051】
一実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、イオンをイオンガイドから排出するための手段をさらに含む。イオンを排出するための手段は、好ましくは、イオンガイドから排出されるイオンが通り得る、1、2、3個または3個より多くの個別のイオンガイドチャネルまたは出口イオンガイド領域を含む。イオンを排出するための手段は、複数の電極を含み得、各電極は、1、2、3個または3個より多くの開口を含む。一実施形態によると、イオンを排出するための手段は、好ましくは、1つ以上の偏向電極をさらに含む。好ましくは、イオンをイオンガイドから1つ以上のイオンガイドチャネルまたは出口イオンガイド領域中へ方向づけるために、1つ以上の電圧が1つ以上の偏向電極に印加される。
【0052】
質量分析計は、好ましくは、一動作モードにおいて、イオンガイドの少なくとも一部分を(i)>1.0×10-3mbar、(ii)>1.0×10-2mbar、(iii)>1.0×10-1mbar、(iv)>1mbar、(v)>10mbar、(vi)>100mbar、(vii)>5.0×10-3mbar、(viii)>5.0×10-2mbar、(ix)10-4〜10-3mbar、(x)10-3〜10-2mbar、および(xi)10-2〜10-1mbarからなる群から選択される圧力に維持するための手段を含む。
【0053】
質量分析計は、好ましくは、一動作モードにおいて、イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持するための手段を含み、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される。
【0054】
上記好適な実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、および(xvi)ニッケル−63放射性イオン源からなる群から選択されるイオン源をさらに含む。質量分析計は、連続またはパルス化イオン源をさらに含み得る。
【0055】
質量分析計は、閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタをさらに含み得る。1つ以上の質量フィルタは、(i)四重極ロッドセット質量フィルタ、(ii)飛行時間質量フィルタまたは質量分析器、(iii)ウィーンフィルタ、および(iv)扇形磁場質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択され得る。特に好適な実施形態によると、1つ以上の質量フィルタが閉ループイオンガイドの一部分を形成し得る。
【0056】
一実施形態によると、質量分析計は、閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップを含み得る。1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、
(i)四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセットまたは8個より多くのロッドを含むロッドセットを含む多重極ロッドセットまたはセグメント化多重極ロッドセットイオントラップまたはイオンガイド、
(ii)開口を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含むイオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドであって、使用時にイオンは、開口を通って移送され、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズまたは面積の開口を有するか、またはサイズまたは面積が漸進的により大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイド、
(iii)1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極であって、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極は、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含むか、または平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時にイオンが走行する平面内に概して配置される、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極、および
(iv)イオントラップまたはイオンガイドの長さに沿って軸方向に配置される複数のグループの電極を含むイオントラップまたはイオンガイドであって、各グループの電極は、(a)第1および第2の電極ならびにイオンをイオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを第1および第2の電極に印加するための手段と、(b)第3および第4の電極ならびにイオンをイオンガイド内に第2の半径方向に閉じ込めるためにACまたはRF電圧を第3および第4の電極に印加するための手段とを含む、イオントラップまたはイオンガイド
からなる群から選択され得る。
【0057】
1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、好ましくは、イオントンネルまたはイオンファネルイオンガイドまたはイオントラップを含み、電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、好ましくは、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する。
【0058】
1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、好ましくは、イオンを1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に半径方向に閉じ込めるために、ACまたはRF電圧を1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの複数の電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に印加するように構成および適合される第2のACまたはRF電圧手段をさらに含む。
【0059】
1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、好ましくは、1ビームまたはグループのイオンを受け取り、1ビームまたはグループのイオンを変換または分割し、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の別々のパケットのイオンが任意の特定の時間に1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に閉じ込めおよび/または隔離されるように構成および適合される。各パケットのイオンは、好ましくは、1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に形成される別々の軸方向ポテンシャル井戸内に別々に閉じ込めおよび/または隔離される。
【0060】
質量分析計は、一動作モードにおいて、少なくともいくつかのイオンを1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を通ってまたはそれに沿って上流および/または下流へ駆動するように構成および適合される手段を含み得る。
【0061】
質量分析計は、少なくともいくつかのイオンを1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って下流および/または上流へ駆動するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたは1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャル波形を1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップを形成する電極に印加するように構成および適合される過渡DC電圧手段をさらに含み得る。
【0062】
質量分析計は、少なくともいくつかのイオンを1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って下流および/または上流へ駆動するために、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧を1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップを形成する電極に印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段を含み得る。
【0063】
一実施形態によると、質量分析計は、1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの少なくとも一部分を(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)>1mbar、(viii)0.0001〜100mbar、および(ix)0.001〜10mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含む。
【0064】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に設けられ得る。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、好ましくは、衝突誘起解離(「CID」)によってイオンをフラグメンテーションするように構成および適合される。しかし、他の実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離(「ETD」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離(「ECD」)フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、および(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイスからなる群から選択され得る。
【0065】
質量分析計は、好ましくは、閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される質量分析器をさらに含む。質量分析器は、好ましくは、(i)フーリエ変換(「FT」)質量分析器、(ii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(iii)飛行時間(「TOF」)質量分析器、(iv)直交加速飛行時間(「oaTOF」)質量分析器、(v)軸方向加速飛行時間質量分析器、(vi)扇形磁場質量分析器、(vii)ポールまたは3D四重極質量分析器、(viii)2Dまたは直線四重極質量分析器、(ix)ペニングトラップ質量分析器、(x)イオントラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換オービトラップ、(xii)静電イオンサイクロトロン共鳴質量分析器、(xiii)静電フーリエ変換質量分析器、および(xiv)四重極ロッドセット質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択される。
【0066】
本発明の別の局面によると、複数の電極を含む閉ループイオンガイドを通ってイオンをガイドするステップを含む質量分析の方法が提供される。
【0067】
本発明の別の局面によると、質量フィルタおよび衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを含む閉ループイオンガイドを含む質量分析計が提供され、一動作モードにおいて、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて生成されるフラグメントまたは娘イオンが閉ループイオンガイドを介して質量フィルタに渡る。
【0068】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
質量フィルタおよび衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを含む閉ループイオンガイドを準備するステップと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて生成されたフラグメントまたは娘イオンを閉ループイオンガイドを介して質量フィルタに渡すステップと
を含む方法が提供される。
【0069】
本発明の別の局面によると、
複数の電極を含む閉ループイオンガイドと、
一動作モードにおいて、イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持する手段であって、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される、手段と、
ACまたはRF電圧を電極に供給するためのACまたはRF電圧手段であって、ACまたはRF電圧は、使用時に、イオンを閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する、ACまたはRF電圧手段と、
一定のゼロでないDC電圧勾配をイオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するように構成される手段と、
1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するための手段と
を含む質量分析計が提供される。
【0070】
イオンガイドは、好ましくは、イオン移動度分光計もしくはセパレータまたは衝突、フラグメンテーションもしくは反応デバイスを含む。
【0071】
本発明の別の局面によると、質量分析の方法であって、
複数の電極を含む閉ループイオンガイドを準備するステップと、
一動作モードにおいて、イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持するステップであって、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される、ステップと、
ACまたはRF電圧を電極に供給するためのステップであって、ACまたはRF電圧は、イオンを閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する、ステップと、
一定のゼロでないDC電圧勾配をイオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するステップと、
イオンを駆動または推進するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するステップと
を含む方法が提供される。
【0072】
従来の2D直線イオントラップおよび3D四重極イオントラップは、本発明の意味においては、閉ループイオンガイドを含むと解釈されるべきでない。従来のイオントラップにおいて、イオンは、上記好適な実施形態の意味においては、回り道の(circuitous)イオンガイド経路を辿らない。
【0073】
上記好適な実施形態にかかる質量分析計は、高分解能イオン移動度分離が可能であり、かつまた、好ましくは、性能を損なわず、かつ過度に大きくならずに単純な実験および複雑な実験の両方を行うことができる。
【0074】
上記好適な実施形態は、閉ループを形成するように配置される1つ以上のイオンガイドに関する。バッファガスが閉ループイオンガイド中に導入されるか、またはその内に存在する。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が好ましくは閉ループイオンガイドの少なくとも1区分に印加される。好ましくは、イオンは、好ましくはイオンガイドの少なくとも1区分に印加される1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形によって、所望の方向へ閉ループイオンガイドを通って、またはそれに沿って推進または駆動される。
【0075】
上記好適な実施形態によると、イオンを閉ループイオンガイド内に半径方向にイオンガイドの中心軸の周りに閉じ込めるために、RF電圧が1つ以上の閉ループイオンガイドを構成する電極に印加される。イオンは、好ましくはイオンガイド内の半径方向擬ポテンシャル井戸内に閉じ込められる。
【0076】
イオンガイドのうちの1つ以上は、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、セグメント化多重極ロッドセット、積重ねリングセット、イオントンネル、イオンファネルまたは平行プレートアセンブリ(サンドイッチプレート)、またはRF電圧を印加して不均一なRF電界を与え得る電極の他の構成を含み得る。
【0077】
上記好適な実施形態によると、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形の進行方向にイオンを推進または駆動するために、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が好ましくは上記好適なイオンガイドの電極に印加される。
【0078】
バッファガスが好ましくはイオンガイドのうちの少なくとも1つにおいて提供され、イオンとガス分子との間の衝突が頻繁に生じるようにされる。ガス分子との衝突を使用して、イオンを冷却するか、またはイオンを加熱するかのいずれかが行われ得る。イオンとガス分子との間の衝突は、イオンの運動に対する抗力(drag)を生じさせ得る。この抗力を利用して、イオンをそのイオン移動度にしたがって分離し得る。
【0079】
ガス分子との衝突を使用して、イオンを冷却または熱化し、その運動エネルギーが低減されるようにし得る。これは、イオンが閉ループ構成において必要に応じて角の周りでガイドされるべき場合に特に有利である。低エネルギーまたは熱化イオンは、好ましくは、RFイオンガイドの中心軸に向かって崩壊する。ガス分子との衝突によってイオンを冷却するために、10-4mbarを超える圧力が好ましくは必要とされ、さらに好ましくは10-3mbarを超える圧力が必要とされる。
【0080】
ガス分子との衝突をさらにおよび/またはあるいは使用してイオンを加熱し、その内部エネルギーが増加されるようにし得る。これは、イオンが展開および/またはフラグメンテーションされるべき場合に必要とされる。
【0081】
イオンは、まずイオンを比較的高運動エネルギー(一般に、10または15eVより大きい)に加速することによってフラグメンテーションするように誘導され得る。次いで、イオンは、好ましくはガス分子中へ衝突される。あるいは、イオンは、十分に高いガス圧力を有する領域を通って加速され得るか、または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形によって十分に高いガス圧力を有する領域を通って推進され得る。約500〜1000m/sを超える速度でバッファガスを通って推進された分子イオンは、高エネルギーイオン−分子衝突を起こす。高エネルギーイオン−分子衝突は、好ましくはイオンの内部エネルギーの増加を引き起こし、かつ適宜イオンの展開(unfolding)を引き起こし得る。イオンは、あるいはおよび/またはさらにフラグメンテーションするようにされる。ガス分子との衝突によってイオンを加熱およびフラグメンテーションさせるために、10-4mbarを超える圧力が好ましくは必要とされ、さらに好ましくは10-3mbarを超える圧力が必要とされる。
【0082】
イオンの運動がバッファガスの粘性抗力によって妨げられると、イオンは、そのイオン移動度にしたがって分離され得る。ガス圧力および電界強度が同じ条件の場合、比較的高いイオン移動度を有するイオンは、比較的低いイオン移動度を有するイオンよりも速く走行する。この特徴を使用して、イオンを空間的および時間的に分離し得る。イオンをそのイオン移動度にしたがって分離するために、10-2mbarを超える圧力が好ましくは提供され、さらに好ましくは10-1mbarを超える圧力が好ましくは提供される。
【0083】
好適な一実施形態において、上記好適なイオンガイドのうちの1つ以上における圧力は、衝突によって誘起されるイオンの展開および/またはイオンのフラグメンテーションおよび/またはイオンのそのイオン移動度にしたがった分離を可能にするのに十分であり得る。
【0084】
イオンガイドのうちの1つ以上においてガスが存在すると、好ましくは、イオンの運動が減衰され、イオンの速度が低減され、最終的に前進方向の運動がすべて失われる。したがって、イオンを前進方向へ駆動する手段を設けることが望ましい。好適な一実施形態において、イオンは、好ましくは1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形によって前進方向へ駆動される。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形を使用して、所望する限り多くの回数イオンを閉ループイオンガイドの周りで駆動し得る。
【0085】
好ましさが劣る実施形態によると、イオンは、一定の軸方向DC電圧勾配によって、閉ループイオンガイドの1区分に沿って、またはその周りで前進方向へ駆動され得る。しかし、ある箇所で電圧勾配がイオンの運動に反対するように作用することなしにDC電圧勾配を閉ループの周りに与えることはできない。反対するDC軸方向電界に対抗してイオンを前進方向に駆動するために、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形がこの箇所で閉ループイオンガイドの電極に重ね合わされ得る。
【0086】
好適な一実施形態において、イオンは、1つ以上のイオンディフレクタまたはダイバータ(diverter)によって閉ループイオンガイド中へ導入または切り換えられ得る。さらに、好適な一実施形態において、イオンは、1つ以上のディフレクタまたはダイバータによって閉ループイオンガイドから除去、切り換えまたは進路変更され得る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0087】
ここで、本発明の種々の実施形態を、あくまで例として、添付の図面を参照して説明する。
【0088】
図1は、本発明の好適な一実施形態にかかる閉ループイオンガイドを示す。
【0089】
図2は、上記好適な実施形態にかかる閉ループイオンガイドを含む質量分析計を示す。
【0090】
図3Aは、イオンを好適な閉ループイオンガイド中へ導入するためのデバイスの断面を示す。図3Bは、イオンを好適な閉ループイオンガイドから除去するためのデバイスの断面を示す。
【0091】
図4A〜図4Eは、イオンを好適な閉ループイオンガイドへ導入またはそこから除去するためのデバイスを示す。
【0092】
図5Aは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図5Bは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。図5Cは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図5Dは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。
【0093】
図6Aは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図6Bは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。図6Cは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図6Dは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。
【0094】
図7は、イオンがポテンシャル差に打ち克つように前方へ駆動される(そうしなければ、ポテンシャル差はイオンの前方移送に反対するように作用する)好適なイオンガイドの1区分を模式的に示す。
【0095】
図8Aは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図8Bは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。
【0096】
図9Aは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図9Bは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。
【0097】
図10Aは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段の一実施形態を示す。図10Bは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段の別の実施形態を示す。図10Cは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段のさらなる実施形態を示す。
【0098】
図11Aは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口の一実施形態を示す。図11Bは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口の別の実施形態を示す。図11Cは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口のさらなる実施形態を示す。
【0099】
図12は、質量フィルタが閉ループイオンガイドに含まれる実施形態を示す。
【0100】
ここで、図1を参照して本発明の好適な一実施形態を説明する。この好適な実施形態によると、閉ループイオンガイド1を含む質量分析計が提供される。イオンは、好ましくは閉ループイオンガイド1中へ注入され、かつイオンは、好ましくは、イオンガイド1の周りを数回回転または周回するようにされる。次いで、イオンは、好ましくは、イオンガイド1から排出または除去される。上記好適な実施形態によると、イオンは、好ましくは、イオンガイド1の周りを循環する際に、イオンガイドサーキットのある固定箇所を数回通過する。イオンは、好ましくは、一動作モードにおいてイオンガイド1を数回周回する。
【0101】
イオンガイド1内のイオンは、好ましくは実質的に同時にイオンガイド1の周りを実質的に同じ方向に移動するようにされる。イオンは、例えば、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回または10回より多くイオンガイド1の周りを通過または周回した後、イオンガイド1から排出され得る。
【0102】
イオンガイド1は、好ましくは円形または曲ったイオンガイド経路を含む。しかし、イオンガイド経路が、曲った相互接続区分を有する1つ以上のまっすぐな区分を含み得る実施形態が考えられる。イオンガイド経路は、比較的複雑であり得る。例えば、イオンガイド経路は、迷路状であるか、曲がりくねっている(tortuous)か、またはらせん状(serpentine)であり得る。2D直線イオントラップまたは3Dイオントラップとは対照的に、イオンは、好ましくは閉ループイオンガイド1の周りを周回する。
【0103】
バッファガスが好ましくは閉ループイオンガイド1の少なくとも一部分または区分内に提供される。一動作モードにおいて、イオンは、バッファガスとの相互作用によって、衝突により冷却、または、選択的に衝突により加熱され得る。一動作モードにおいて、イオンは、イオンがイオンガイド1の一部分内に存在するガス分子と衝突する際にフラグメンテーションされるように加速され得る。別の動作モードにおいて、イオンガイド1の少なくとも一部分がイオン移動度分光計またはセパレータ区分として動作し得る。イオンは、好ましくは、イオンガイド1のイオン移動度分光計またはセパレータ区分を通って、またはその周りで移動する際に、そのイオン移動度にしたがって時間的に分離される。
【0104】
上記好適な実施形態によると、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が好ましくはイオンガイド1の少なくとも1区分上に重ね合わされるか、またはそれに印加される。重ね合わされた過渡DCポテンシャルまたは電圧は、好ましくはイオンを閉ループイオンガイド1の少なくとも一部分の周りで推進または駆動する。イオンは、好ましくは、1つ以上の過渡DCポテンシャルまたは電圧がイオンガイド1を構成する電極に漸進的に印加されるのと同じ方向に移動するようにされる。
【0105】
好ましくは、イオンガイド1は、好ましくは1パルスまたはストリームのイオンを閉ループイオンガイド1中へ導入するように構成されるイオン注入手段2を含む。好ましくは、イオンガイド1はまた、好ましくはイオンのうちの少なくともいくつかを閉ループイオンガイド1から外部へ進路変更するように構成されるイオン排出手段3をさらに含む。イオンガイド1から排出されたイオンは、さらなる分析にかけられ得、かつ/またはイオン検出器(図示せず)によって検出され得る。
【0106】
上記好適な実施形態によると、閉ループイオンガイド1は、複数の電極を含む積重ねリングイオンガイドを含む。各電極は、好ましくはイオンが使用時に移送される開口を含む。閉ループイオンガイド1を形成する電極の開口は、好ましくはすべて同じサイズである。別の実施形態において、電極のうちの少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%または95%は、実質的に同じサイズの開口を有する。
【0107】
イオンガイド1の隣り合う電極は、好ましくはACまたはRF電圧源の互いに反対の位相に接続される。ACまたはRF電圧は、好ましくはイオンガイド1の電極に印加され、かつ好ましくはイオンが半径方向擬ポテンシャル井戸内のイオンガイド1内に半径方向に閉じ込められるようにする。
【0108】
好ましくはイオンガイド1の電極に印加される1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、好ましくは、イオンガイド1の長さに沿って、および/またはその周りで有効に移動または回転する1つ以上のポテンシャルの山または障壁を形成する。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、好ましくは、1つ以上のポテンシャルの山または障壁がイオンガイドの長さまたはサーキットに沿って、またはそれの周りで所定の方向に移動するように、イオンガイド1を形成する一続きの電極に漸進的に印加される。イオンは、好ましくは、イオンガイド1に沿って、またはそれの周りで、ポテンシャルの山または障壁が漸進的に電極に印加されるのと同じ方向または向きに推進または駆動される。
【0109】
イオンガイド1は、好ましくは真空チャンバ内に設けられる。真空チャンバは、好ましくは、使用時に10-3〜10mbarの範囲内の圧力に維持される。好ましさが劣る実施形態によると、真空チャンバは、10mbarより大きな圧力から大気圧またはその近傍の圧力までの圧力に維持され得る。好ましさが劣る実施形態によると、真空チャンバは、10-3mbarより低い圧力で維持され得る。
【0110】
ガスがイオンガイド1内に存在することによって、好ましくはイオン−分子衝突が生じ、それにより好ましくはイオンが冷却され、その平均運動エネルギーが低減される。イオンの運動エネルギーが低減されると、イオンは、イオンガイド1の中心軸に向かって崩壊する。
【0111】
あるいは、イオンとガス分子との間の衝突が比較的高エネルギーであるように構成されると、イオンは加熱され、その内部エネルギーが増加される。加熱が十分であれば、生体分子(タンパク質など)などの複雑なイオンが展開または少なくとも部分的に展開され、これによりその断面面積が増加され得る。複雑な分子が展開または部分的に展開すると、これにより、次いでそのイオン移動度の低減が生じる。イオンがさらに加熱されると、イオンは、フラグメントまたは娘イオンにフラグメンテーションするようにされ得る。
【0112】
イオン−分子衝突が十分に頻繁である場合、バッファガスは、粘性抗力をイオンの運動に与える。ガスの粘性抗力ならびに電極に印加される1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形の1つ以上のポテンシャルの山または障壁の振幅および平均速度が適切に設定される場合、イオンは、イオンガイド1の周りを平行移動されているポテンシャルの山または障壁を、時々、越える。これらの条件下において、イオンは、そのイオン移動度にしたがって分離し始める。イオンの移動度が低ければ低いほど、イオンがイオンガイド1の一部分の周りを平行移動または回転されているポテンシャルの山または障壁を超える可能性が高くなる。その結果、異なるイオン移動度のイオンは、好ましくはイオンガイド1の周りを異なる平均速度で輸送され、したがって時間的に分離される。
【0113】
閉ループイオンガイド1の1つ以上の段または区分は、イオン移動度分光計またはセパレータ区分を含み得る。ここで、イオンは、好ましくはそのイオン移動度にしたがって時間的に分離される。別の実施形態によると、イオンは、閉ループイオンガイド1の1つ以上の段または区分において、展開または部分的に展開するように誘導され得る。別の実施形態によると、イオンは、閉ループイオンガイド1の1つ以上の段または区分においてフラグメンテーションするように誘導され得る。段または区分の種々の異なる並び換えまたは組み合わせが提供される、さらなる実施形態が考えられる。したがって、例えば、イオン移動度分離段の後段にイオンフラグメンテーション段が設けられ得る。
【0114】
バッファガスが閉ループイオンガイド1の1つ以上の区分内に提供されると、イオンは、イオン運動に対する所定の程度の抵抗を受ける。したがって、イオンの閉ループイオンガイド1の周りの数回の循環を支援するために、イオンガイド1の少なくとも一部分または区分の周りでイオンを推進または駆動するための手段が好ましくは設けられる。好適な実施形態によると、イオンガイド1からの排出が所望されるまで少なくともいくつかのイオンを実質的に連続に閉ループイオンガイド1の周りで推進するために、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形がイオンガイド1を形成する電極に印加され得る。
【0115】
イオンは、一定の軸方向DC電圧勾配をイオンガイド1の少なくとも一部分に沿って重ね合わせることによって、閉ループイオンガイド1の少なくとも一部分に沿って、またはそれの周りで駆動され得る。しかし、閉ループにおいて、ループの周りの軸方向DC電圧勾配の積分は、ゼロに等しいのがよい。したがって、イオンを一方向に駆動するためにDC電圧勾配がイオンガイド1の1区分にわたってまたは沿って印加されると、サーキットがそれ自身に接続する閉ループイオンガイド1の周りのある他の箇所で、イオンは、イオンの前方移送に反対するように作用するDC電圧勾配を受ける。
【0116】
上記好適な実施形態によると、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、イオンがDC電圧勾配を受ける箇所でイオンガイド1を形成する電極に印加され得る。そうしなければ、DC電圧勾配は、イオンの前方移送に反対するように作用する。過渡DC電圧またはポテンシャルをイオンガイド1にこの箇所で印加することで、好ましくは、DC電圧勾配を越えて、わたって、または対抗してイオンを推進することが支援される。そうしなければ、DC電圧勾配は、イオンの前方移送に反対するように作用する。
【0117】
別の実施形態によると、イオンガイド1は、イオンが使用時にイオンガイド1の長さにわたってまたは沿って走行する平面において一般にまたは実質的に配置される複数のプレート電極を含み得る。イオンガイド1は、上側および/または下側プレート電極を含み得る。上側および/または下側プレート電極は、軸方向にセグメント化され得る。少なくともいくつかのイオンをイオンガイド1の長さまたは周回の少なくとも一部分に沿って、またはそれの周りで駆動するために、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形がセグメント化された上側および/または下側プレート電極に印加され得る。イオンが好ましくはイオンガイド.内に半径方向に閉じ込められるように、ACまたはRF電圧の互いに反対の位相が、好ましくは、上側および下側プレート電極の間に配置された隣り合うプレート電極に印加される。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が上側および下側プレート電極の間に配置されたプレート電極に印加されてもよい。
【0118】
好ましさが劣る実施形態によると、閉ループイオンガイド1は、セグメント化ロッドセットイオンガイドを含み得る。隣り合うロッドは、好ましくはACまたはRF供給源の互いに反対の位相に接続される。好ましくはイオンガイドの長さの周りで、およびそれに沿って移動する1つ以上のポテンシャルの山または障壁が形成されるように、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が好ましくはロッドセグメントの1つ以上に印加される。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、1つ以上のポテンシャルの山または障壁が好ましくはイオンガイドの軸に沿ってイオンが推進または駆動されるべき方向へ移動するように、好ましくは漸進的に一続きのロッドセグメントに印加される。
【0119】
好ましさが劣る実施形態によると、イオンガイド1は、リングポール構成を形成するようにロッド電極がリング電極の開口内に設けられるよう、ロッドセットとロッドセットを囲む複数のリング電極との組み合わせを含み得る。隣り合うロッド電極は、好ましくはACまたはRF供給源の互いに反対の位相に接続される。1つ以上の過渡DCポテンシャルの山または障壁がロッドセット内に形成されるイオンガイド領域内に生成されるように、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が、好ましくは、リング電極に印加される。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、1つ以上のポテンシャルの山または障壁がイオンガイドの軸に沿って、またはイオンガイドの周りで、イオンを推進または駆動したい方向へ移動するように、好ましくは漸進的に一続きのリング電極に印加される。
【0120】
本発明の好適な一実施形態にかかる質量分析計を図2に示す。質量分析計は、好ましくは、イオン源4、イオンを閉ループイオンガイド1中に注入するためのイオンゲートまたはデバイス2、イオンを閉ループイオンガイド1から排出するためのイオンゲートまたはデバイス3、および好ましくはイオンガイド1の下流に配置される質量分析器5を含む。閉ループイオンガイド1中に注入されたイオンは、好ましくは閉ループイオンガイド1の周りを1回以上通過または周回する。少なくともいくつかのイオンは、好ましくはイオンゲートまたはデバイス3によってイオンガイド1から排出され、かつイオンは、好ましくは質量分析器5へ前方移送され、次いで質量分析器5においてイオンは質量分析される。
【0121】
イオン源4は、レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、またはシリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源などのパルス化イオン源を含み得る。あるいは、イオン源4は、連続イオン源を含み得る。イオン源4が連続イオン源を含む場合、イオンを格納し、かつ周期的にイオンを放出するためのイオントラップが閉ループイオンガイド1の上流に設けられ得る。連続イオン源は、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、電子衝突(「EI」)イオン源、大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、化学イオン化(「CI」)イオン源、高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、電界イオン化(「FI」)イオン源、または電界脱離(「FD」)イオン源を含み得る。イオン源4は、別の形態の連続または擬連続イオン源を含み得る。
【0122】
多重極ロッドセット質量フィルタ、イオンファネル、四重極質量フィルタ、ウィーンフィルタ、飛行時間質量フィルタもしくは質量分析器、または扇形磁場質量フィルタもしくは質量分析器などの1つ以上の質量選択段が閉ループイオンガイド1の上流および/または下流に設けられ得る。
【0123】
多重極ロッドセットイオンガイド、積重ねリングイオンガイド、イオントンネルイオンガイド、イオンファネルイオンガイドまたは積重ねプレートイオンガイドなどの1つ以上のACまたはRFイオンガイドが、イオン源4の下流に、かつ好ましくは、イオンを好適な閉ループイオンガイド1中へ注入するように好ましくは構成されるイオンゲートまたはデバイス2の上流に設けられ得る。
【0124】
質量分析器5は、好ましくは直交加速飛行時間質量分析器を含む。しかし、他の実施形態によると、質量分析器5は、軸方向加速飛行時間質量分析器、四重極質量分析器、3D四重極イオントラップ、直線四重極イオントラップ、四重極質量フィルタ、扇形磁場質量分析器、イオンサイクロトロン共鳴質量分析器またはオービトラップ質量分析器を含み得る。質量分析器5は、質量依存性共鳴周波数のフーリエ変換を使用する上記種類の質量分析器の変形例を含み得る。
【0125】
一実施形態によると、イオンを閉ループガイド1中へ導入または注入するための手段2および/またはイオンを閉ループイオンガイド1から除去または排出するための手段3は、複数のイオン入口および/またはイオン出口ポートを含む積重ねプレートイオンガイド区分を含み得る。イオンガイド区分は、連続ストリームのイオンが1つのイオンガイド経路またはチャネルから別のイオンガイド経路またはチャネルへ合併、分割または切り換えされることを可能にするように構成され得る。
【0126】
本発明の一実施形態によると、イオンを閉ループイオンガイドに導入するための手段2および/またはイオンを閉ループイオンガイド1から除去または選択するための手段3は、閉ループイオンガイド1の一体部分を形成し得る。イオンを閉ループイオンガイド1中へ導入し、かつ/またはイオンを閉ループイオンガイド1から排出するためのイオン選択デバイス2、3は、閉ループイオンガイド1と実質的に同じ圧力に維持され得る。
【0127】
図3Aは、イオンを閉ループイオンガイド1中へ導入または注入するために使用され得るデバイスの断面を示す。図3Bは、イオンを閉ループイオンガイド1から除去または排出するために使用され得るデバイスの断面を示す。
【0128】
図4Aは、イオンを閉ループイオンガイド1中へ導入するか、またはイオンを閉ループイオンガイド1から除去するかのいずれかのために使用され得る図3Aおよび図3Bに示すデバイスと同様のデバイスの斜視図を示す。図4Aに示すようなデバイスは、好ましくは、図4A、図4Dおよび図4Eに示すような、それぞれ2つの円形開口を有する複数のリング電極6を含む第1の区分を有する。2つの開口7、8の間の分離または間隔は、第1の区分の長さに沿って実質的に一定のままであり得る(例えば、図3Aを参照)。あるいは、図4Dに示すような一実施形態によると、電極6のうちの1つは、他の電極内の開口よりも互いの間隔がより狭い2つの開口7、8を含み得る。他の電極内の開口よりも互いの間隔がより狭い2つの開口を有する電極6は、好ましくは1対の偏向電極9、10に隣接するように配置される。
【0129】
図3Aおよび図4Aは、第1の区分の下流に配置される1対の偏向電極9、10を示す。偏向電極9、10の下流にイオンガイドの第2の区分が好ましくは設けられる。イオンガイドの第2の区分は、好ましくは複数のリング電極11を含む。各リング電極11は、好ましくは図4Bに示すように1つの開口を含む。第2の区分におけるリング電極11の開口は、好ましくは実質的に同じサイズである。
【0130】
好ましさが劣る実施形態によると、第1の区分における電極6および第2の区分における電極11は、非円形開口を含み得る。例えば、電極6、11は、正方形または三角形開口を含み得る。
【0131】
上記好適な実施形態によると、第1および/または第2の区分内の隣り合う電極は、好ましくはACまたはRF供給源の互いに反対の位相に接続される。電極6、11に印加されるACまたはRF電圧は、好ましくはイオンガイド内に形成される擬ポテンシャル井戸内に半径方向にイオンが閉じ込められるようにする。ACまたはRF電圧はまた、イオンをデバイスの中心区分内に閉じ込めるために偏向電極9、10に印加され得る。
【0132】
好ましくは使用時にイオンガイド1の第1および/または第2の区分の長さに沿って平行移動される1つ以上のポテンシャルの山または障壁が好ましくは生成されるように、1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形が好ましくは第1および/または第2の区分における電極の1つ以上に印加される。1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧または1つ以上の過渡DCポテンシャルもしくは電圧波形は、1つ以上のポテンシャル山または障壁が好ましくはイオンガイド1の軸に沿って、イオンを推進または駆動したい方向に移動するように、好ましくは一続きの電極に漸進的に印加される。
【0133】
第1の区分における電極6が2つより多くの開口を含み得、例えば、3つ以上の入力イオンガイドチャネルが設けられることによって、種々の異なるチャネルからのイオンが必要に応じて閉ループイオンガイド1中へ注入されることが可能となる他の実施形態が考えられる。
【0134】
上記好適な実施形態によると、2つの偏向電極9、10は、好ましくは使用時にDC電圧が印加され、それにより好ましくは偏向電極9、10を通過したイオンビームが特定の方向へ進路変更または偏向されるようにする。例えば、図3Bおよび図4Aに示すデバイスは、イオンが1つの開口を有する電極を含むイオンガイドの区分から偏向電極9、10を通ってイオンガイドの別の区分内に設けられる2つのイオンガイドチャネルのうちの1つに渡るように配置され得る。したがって、イオンは、偏向電極9、10によってイオンガイド1の区分の2つの開口7、8のうちの1つの内部に配置されるイオンガイド経路中に偏向または進路変更される。
【0135】
図3Bは、閉ループイオンガイド1内のイオンがイオンガイドから2つのチャネルのうちの1つに排出され得る実施形態を示す。2つの偏向電極9、10は、好ましくは、イオンビームを偏向電極9、10の下流に配置される電極区分内に設けられる2つのチャネルのうちの1つの中へ偏向するために、DC電圧がそれらに印加されるように配置される。同様に、図3Aを参照して、イオンを入力イオンチャネルから閉ループイオンガイド中へガイドするために、適切なDC電圧が偏向電極9、10に印加され得る。
【0136】
偏向レンズが好ましくは使用され、イオンを閉ループイオンガイド中へ注入するか、かつ/またはそこから排出する。偏向レンズは、好ましくは1対の電極9、10を含む。しかし、イオンビームを進路変更または偏向するように構成される3つ以上の電極を含む偏向レンズが設けられ得る他の実施形態が考えられる。偏向レンズまたは偏向電極9、10によって形成される開口は、好ましくは円形であり、かつ各偏向電極9、10は、好ましくは半円形開口を含む。しかし、偏向レンズが、非円形開口を一緒になって形成する1つ以上の偏向電極を含み得る他の実施形態が考えられる。
【0137】
種々のシミュレーションを1対の偏向電極によって分離された2つの区分を含むイオンガイドのコンピュータモデルを使用して行った。シミュレーションは、イオンガイドのモデルを使用して行った。ここで、イオンは、1つのイオンガイド領域内に閉じ込められた。次いで、イオンは、2つの偏向電極によって、偏向電極の下流に配置されるイオンガイドの別の区分内に設けられる2つのイオンガイドチャネルのうちの1つ中に進路変更または偏向された。1つのイオンガイドチャネルを含むイオンガイドの上流区分内の電極の開口の直径を5mmであるとモデル化した。イオンガイドのすべての電極を厚さが0.5mmであり、電極間間隔が1mmであるとしてモデル化した。
【0138】
2つのイオンガイドチャネルを含むイオンガイドの下流区分内の電極を、直径がそれぞれ4mmの2つの開口を有する電極を含むとしてモデル化した。2つの開口を5mmの間隔(中心間距離)をあけて離されるとしてモデル化した。ただし、2つの偏向電極に最も近い電極は除く。2つの偏向電極に最も近い電極は、それぞれ直径が4mmであり、4.4mmの間隔(中心間距離)をあけて離される2つの開口を有するとしてモデル化した。
【0139】
2つの偏向電極は、1mm厚であるとしてモデル化し、かつ2つの偏向電極によって形成される中心開口は、直径が5mmであるとしてモデル化した。2つの偏向電極は、他方の電極から1mmの間隔をあけて離されるとしてモデル化した。
【0140】
図5A〜図5Dは、上記のようなイオンガイドを通るイオン軌跡のSIMIONコンピュータシミュレーションを示す。SIMIONコンピュータシミュレーションにおいて、イオンは、図の右から左へ移動した。使用したSIMIONモデルは、イオンとバッファガスとの衝突を考慮した。図5A〜図5Dに示すシミュレーションした軌跡のすべてについて、バッファガスは、圧力が0.5mbarのアルゴンとしてモデル化した。
【0141】
RF電圧は、イオンガイドの上流および下流区分内の電極に印加されるとしてモデル化した。電極に印加されるRF電圧は、振幅が200Vピークトゥピークであり、かつ周波数が2.7MHzであるとしてモデル化した。
【0142】
振幅が10Vである過渡DC電圧は、連続する電極対に10μs間印加され、その後次の近接する電極対に印加されるとしてモデル化した。また、偏向電極の上流の電極は、+15Vの一定のDCバイアスに維持されるとしてモデル化し、他方2つの偏向電極の下流に配置される電極は、0VのDCバイアスに保持されるとしてモデル化した。2つの偏向電極に最も近く、かつ偏向電極の下流に配置される電極は、2Vのポテンシャルに保持されるとしてモデル化した。2つの偏向電極は、18Vおよび7Vのポテンシャルに保持されるとしてモデル化した。
【0143】
図5Aは、質量電荷比が100である5個のイオンがイオンガイドの区分を通る軌跡を示す。イオンは、イオンガイドの中心軸から±1mmの範囲内に開始位置を有した。イオンは、2つの偏向電極の下流に配置されるイオンガイドの区分における開口のうちの1つにおいて規定されるイオンガイド領域またはチャネル中へうまく方向づけられた。
【0144】
2つの偏向電極に印加されるDCポテンシャルを変更または逆転させることによって、イオンビームがイオンガイド内の2つのチャネルのうちの他方中へガイドされ得ることは明らかである。図5Bは、2つの偏向電極に印加されるポテンシャルが交換または逆転された場合のシミュレーション結果を示す。次いで、イオンは、2つの偏向電極の下流に配置されるイオンガイド区分内の2つのチャネルのうちの他方中へ進路変更された。
【0145】
図5Cは、図5Aに関連して上記したシミュレーションのために使用された条件と同様であるが、イオンの質量電荷比が1000に増加された条件下のシミュレーション結果を示す。同じく、図5Dは、図5Bに関連して上記したシミュレーションのために使用された条件と同様であるが、イオンの質量電荷比が1000に増加された条件下のシミュレーション結果を示す。図5A〜図5Dから明らかなように、デバイスがイオンの質量電荷比に関係なくイオンを所望のチャネル中へ進路変更または偏向できる。
【0146】
図6A〜図6Dは、図5A〜図5Dに関連してモデル化および上記した条件と同様の条件下であるが、アルゴンガスの圧力を1×10-2mbarに低減されたとしてモデル化し、かつ電極に印加される過渡DC電圧の振幅を1Vに低減されたとしてモデル化したシミュレーション結果を示す。その他すべてのパラメータは、図5A〜図5Dに関連して上記したシミュレーションと同じであった。図6A〜図6Dから明らかなように、イオンは、ガス圧力が比較的低く、かつ電極に印加される過渡DC電圧またはポテンシャルの振幅も比較的低いシミュレーション条件下で所望のチャネル中へ方向づけられた。
【0147】
上記好適な実施形態にかかる閉ループイオンガイドは、イオンガイドの長さに沿ったある箇所で、イオンの前方移送に反対するように作用する軸方向DCポテンシャル勾配を有し得る。イオンに閉ループの周りで複数回の周回を完了させるために、イオンをポテンシャル勾配を越えて強制、推進または駆動する手段が好ましくは設けられる。そうしなければ、ポテンシャル勾配は、イオンの前方移送に反対する可能性がある。
【0148】
図7は、どのようにイオンがDCポテンシャル勾配に対抗して強制、推進または駆動され得るか(そうしなければ、ポテンシャル勾配は、イオンの前方移送に反対するように作用する)を示すようにモデル化したイオンガイド12の1区分を示す。図7に示すようなイオンガイド区分12において、イオンは、イオンガイドの右側から左側へ移送されるとしてモデル化した。イオンの移送は、右から左へ増加するDCポテンシャル勾配によって反対される。ポテンシャル勾配の高さは、15Vであるとしてモデル化した。イオンガイド区分12の電極は、直径が5mmである開口を有するとしてモデル化した。バッファガスは、存在し、かつ0.5mbarの圧力に維持されるアルゴンを含むとしてモデル化した。
【0149】
RF電圧は、イオンをイオンガイド区分12内に半径方向に閉じ込めるためにイオンガイド区分12の電極に印加されるとモデル化した。RF電圧は、振幅が200Vピークトゥピークであり、かつ周波数が2.7MHzであるとしてモデル化した。
【0150】
振幅が25Vである過渡DC電圧は、連続する電極対に10μs間印加され、その後近接する電極対に印加されるとしてモデル化した。
【0151】
図8Aは、質量電荷比が100であり、かつ図7に示すようなイオンガイド区分12を通るイオンのSIMIONシミュレーションの結果を示す。図8Bは、質量電荷比が1000であり、かつイオンガイド区分12を通るイオンのSIMIONシミュレーションの結果を示す。両方の場合において、イオンは、イオンガイド区分12の中心軸から±1mmに開始位置を有するとしてモデル化した。図8Aおよび8Bから明らかなように、イオンガイド区分12の電極に印加される過渡DC電圧は、反対するDCポテンシャル勾配に対抗してイオンガイド区分12に沿ってイオンを輸送または強制するのに有効である。
【0152】
図9Aは、図8Aに示したシミュレーションと同様であるが、アルゴンガスのガス圧力を1×10-2mbarに低減されたとしてモデル化したシミュレーションの結果を示す。図9Bは、図8Bに示したシミュレーションと同様であるが、1×10-2mbarに低減されたアルゴンのガス圧力でのシミュレーションの結果を示す。図9Aおよび図9Bに示すシミュレーションにおいて、イオンガイド区分12の電極に印加される過渡DC電圧の振幅は、25Vから15Vに低減され、かつ電極に印加されるRF電圧は、200Vピークトゥピークから260Vピークトゥピークに増加された。図9Aおよび図9Bから明らかなように、イオンは、より低い振幅を有する過渡DC電圧またはポテンシャルを電極に印加することによって、より低い圧力で、反対するDCポテンシャル勾配を越えて駆動され得る。
【0153】
本発明の種々のさらなる実施形態が考えられ、それらをここで図10A〜図10Cを参照して説明する。これらのさらなる実施形態によると、イオンを閉ループイオンガイド中へ導入するための手段およびイオンを閉ループイオンガイドから除去する手段を含むイオンガイドが設けられる。イオンを閉ループイオンガイド中へ導入するための手段およびイオンを閉ループイオンガイドから除去する手段はともに、図10A〜図10Cにおいてイオン軌跡を切り換えるための手段13によって模式的に表わされる。
【0154】
図10A〜図10Cに示す実施形態において、イオンは、閉ループイオンガイドを構成する各イオンガイド区分14における連続した電極に過渡DCポテンシャルを印加することによって、閉ループイオンガイドの周りに時計周りに輸送される。イオンが閉ループイオンガイドの周りに反時計方向に輸送され得る他の実施形態が考えられる。図10Aに示す実施形態において、イオンは、イオン切り換え区分13のうちのいくつかにおいて、あるイオンガイドチャネルから別のイオンガイドチャネルへ再方向づけられる。他の区分において、イオンは、あるイオンガイド区分14から別のイオンガイド区分へ移送される。
【0155】
イオンガイド区分14は、まっすぐなまたは曲ったイオンガイド区分のいずれかを含み得る。例えば、図10Cに示す実施形態において、イオンガイド区分14のうちの1つは、曲ったイオンガイド経路を含む。
【0156】
図10A〜図10Cに示す実施形態において、イオン切り換え区分13は、好ましくはすべてがイオンを閉ループイオンガイド中へ導入し、かつ/またはイオンを閉ループイオンガイドから引き出すための手段を含む。イオン切り換え区分13はまた、好ましくはイオンを閉ループイオンガイドの1つの区分から次の区分へ方向づける。しかし、また、イオンがイオンガイド区分14中へ導入され、かつ/またはイオンガイド区分14から引き出される実施形態が考えられる。
【0157】
図10A〜図10Cを参照して例示および説明した実施形態によると、イオン選択および/または再方向づけデバイスまたは区分13は、好ましくはイオンガイド区分14と実質的に同じ圧力に維持される。
【0158】
イオンガイド区分14のうちの1つ以上が、イオンがイオンガイド区分14中へ加速される際に、イオンが好ましくは衝突誘起分解(「CID」)よってフラグメンテーションされてフラグメントまたは娘イオンにされるような圧力に維持され得る実施形態が考えられる。
【0159】
一実施形態によると、イオンガイド区分14のうちの1つ以上が、イオンがそのイオン移動度にしたがって分離されるのに最適な圧力に維持され得る。したがって、イオンガイドの1つ以上の区分14は、イオン移動度分離区分を含み得る。
【0160】
イオンガイドの一部分が衝突、フラグメンテーションまたは反応セルとして動作される場合、イオンガイド区分は、好ましくは、使用時に、10-3〜10-1mbarの範囲内の圧力に維持され得る。イオンガイドの一部分がイオン移動度セパレータとして動作される場合、イオンガイド区分は、好ましくは、使用時に10-1〜10mbarの範囲内の圧力に維持され得る。
【0161】
図11A〜図11Cは、差動ポンプ開口15がイオンガイド区分14とイオンを導入、引き出し、または再方向づけするための手段13との間に設けられる本発明のさらなる実施形態を例示する。この実施形態によると、差動ポンプ開口15を設けることによって、好ましくは閉ループイオンガイドの異なる区分が異なる圧力に維持されることが可能となる。例えば、イオンガイド区分14のうちの1つ以上は、比較的高い圧力に維持され得、他方他のイオンガイド区分14は、比較的低い圧力に維持され得る。イオンを導入、引き出し、または再方向づけするための手段13は、イオンガイド区分14よりも比較的高いまたは比較的低い圧力に維持され得る。
【0162】
比較的低い圧力が要求されるイオンガイドの区分にポンプが適用され、かつ比較的高い圧力が要求される区分にガスが導入される場合、2つの区分を分離する差動ポンプ開口15を隔てて圧力差が確立される。
【0163】
一実施形態によると、閉ループイオンガイドの1つ以上の区分14は、使用時に、イオン移動度分離に適した圧力に維持され得、他方閉ループイオンガイドの1つ以上の他の区分は、使用時に、イオンの衝突誘起展開および/またはイオンの衝突誘起フラグメンテーションに適した圧力に維持され得る。
【0164】
図12は、質量フィルタ17が閉ループイオンガイド内に含まれるさらなる実施形態を示す。イオン源(図示せず)からのイオンは、好ましくはイオントラップ16内にトラップされる。イオンは、好ましくはイオントラップ16内にとどまり、他方前回に放出された1塊のイオンが分析される。次いで、1塊またはパルスのイオンは、好ましくはイオントラップ16から放出され、その後合併セル(merger cell)13に入る。次いで、イオンは、好ましくは合併セル13から質量フィルタ17へ渡る。質量フィルタ17は、好ましくは四重極ロッドセット質量フィルタを含む。しかし、他の実施形態によると、質量フィルタ17は、別の形態の質量フィルタ含み得る。質量フィルタ17は、いくつかの異なるモードで動作され得る。質量フィルタ17は、例えば、低域通過、帯域通過または高域通過質量フィルタ動作モードで動作され得る。
【0165】
好適な実施形態によると、質量フィルタ17は、好ましくは、特定の質量電荷比を有する親または前駆体イオンを前方移送し、かつ他の質量電荷比を有するイオンを実質的に減衰するように構成される。次いで、選択された親または前駆体イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応セル18へ前方移送される。一動作モードにおいて、衝突、フラグメンテーションまたは反応セル18は、親または前駆体イオンを複数のフラグメントまたは娘イオンにフラグメンテーションするように構成される。次いで、結果として生じるフラグメントまたは娘イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス18からダイバータ19へ渡る。ダイバータ19は、フラグメントまたは娘イオンをオプションの冷却器セル21または、あるいは好ましくは閉ループイオンガイドの一部分を形成するイオンガイド14のいずれかに前方移送するように構成され得る。冷却器セル21は、パルス化イオンビームを実質的に連続したイオンビームに再合併するように構成され得る。イオンは、好ましくは、冷却器セル21から好ましくは直交加速飛行時間質量分析器を含む質量分析器22へ前方移送される。
【0166】
フラグメントまたは娘イオンがダイバータ19によって、閉ループイオンガイドの一部分を形成するイオンガイド14へ渡される場合、次いで、イオンは、好ましくはリターンセル20に前方移送される。イオンは、好ましくは、合併セル13および衝突、フラグメンテーションまたは反応セル18から最後のパルスからのイオンがなくなるまでリターンセル20に格納され得る。次いで、イオンは、好ましくはリターンセル20から別のイオンガイド区分14を介して合併セル13へ移送される。次いで、フラグメントまたは娘イオンは、好ましくは質量フィルタ17に渡され得る。質量フィルタ17は、前方移送するための所定のフラグメントまたは娘イオンを選択し、かつ望ましくない質量電荷比を有する他のイオンを実質的に減衰するように構成され得る。次いで、選択されたフラグメントまたは娘イオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応セル18に渡され、そこでイオンは、フラグメンテーションされて第2世代のフラグメントイオンを形成し得る。
【0167】
次いで、第2世代のフラグメントイオンは、好ましくは衝突、フラグメンテーションまたは反応セル18からダイバータ19中へ渡る。ダイバータ19は、第2世代のフラグメントイオンをオプションの冷却器セル21に前方移送するか、またはそのイオンを閉ループイオンガイドの一部分を形成するイオンガイド14に移送するかのいずれかを行うように構成され得る。第2世代のフラグメントイオンが閉ループイオンガイドのイオンガイド区分14へ移送される場合、MSn実験が行われ得ることは明らかである。
【0168】
合併セル13は、ガスを含んでもよいし、含まなくてもよい。ダイバータセル19は、好ましくは、イオンビームが、あるイオンガイドチャネルを通って出射するか、または別のイオンガイドチャネルを通って出射するかを制御する。
【0169】
リターンセル20は、ガスを含んでもよいし、含まなくてもよい。1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたは1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャル波形は、好ましくは、イオンのダイバータセル19から合併セル13への輸送を支援するために、リターンセル20を構成する電極に印加され得る。
【0170】
合併セル13および/または衝突セル18および/またはダイバータセル19および/または冷却器セル21および/またはリターンセル20は、積重ねリングデバイス、積重ねプレートデバイス、または両方の組み合わせとして、同じプリント回路基盤アセンブリ上に実装され得る。
【0171】
本発明の種々のさらなる実施形態が考えられる。例えば、種々の異なる並び換えおよび組み合わせで、閉ループイオンガイドの異なる区分が使用時にイオン移動度分離および/または衝突誘起分解に適した圧力で維持され得る実施形態が考えられる。
【0172】
一動作モードにおいて、イオンは、まず、閉ループイオンガイドを第1回目に周回する際にそのイオン移動度にしたがって分離され得る。次いで、いくつかのイオンが閉ループイオンガイドを第2回目に周回するように選択され得、他方他のイオンは、閉ループイオンガイドから引き出され、そのイオンに対してさらなる分析および/またはイオン検出がなされ得る。第2回目の周回をするように閉ループイオンガイドの周を通過するように方向づけられたこれらのイオンは、さらにそのイオン移動度にしたがって分離され得る。次いで、イオンのうちのいくつかまたはすべてが閉ループイオンガイドから引き出され、そのイオンに対してさらなる分析および/またはイオン検出がなされ得る。あるいは、イオンのうちのいくつかまたはすべては、閉ループイオンガイドを通って、またはそこに沿って通過し、閉ループイオンガイドを3回以上周回し、その後好ましくはさらなる分析および/またはイオン検出のために引き出されるようにし得る。
【0173】
イオン移動度セパレータまたはイオン移動度分光計として作用する閉ループイオンガイドの分解能は、閉ループイオンガイドの周りのイオンの周回間の所定の条件を変更することによってさらに改善され得る実施形態が考えられる。例えば、イオンを閉ループイオンガイドの周りで駆動するために閉ループイオンガイドの電極に印加される過渡DC電圧またはポテンシャルの振幅は周回ごとに変化、変更、増加、または低減され得る。同様に、過渡DC電圧が閉ループイオンガイドの電極に印加されるレートは周回ごとに変化、変更、増加、または低減され得る。
【0174】
一実施形態によると、イオンガイド区分のうちの1つ以上がポテンシャル回復機能を含み得る。
【0175】
好ましさが劣る実施形態によると、閉ループイオンガイドは、従来のイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分を含み得る。イオン移動度分光計またはセパレータは、例えば、ドリフト管であって、このドリフト管内に分散された複数のガードリングを含むドリフト管を含み得る。ガードリングは、値の等しい抵抗器によって相互接続され、かつDC電圧源に接続され得る。直線DC電圧勾配がドリフト管の長さに沿って生成され得る。ガードリングは、ACまたはRF電圧源に接続されなくてもよい。
【0176】
一実施形態によると、閉ループイオンガイドは、いくつかのリングまたは環状電極またはいくつかのプレート電極を含むイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分を含み得る。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分を形成する交互電極が、好ましくはACまたはRF電圧源の互いに反対の位相に結合される。ACまたはRF電圧源は、0.1〜10.0MHz、好ましくは0.3〜3.0MHz、さらに好ましくは0.5〜2MHzの範囲の周波数を有するのが好ましい。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分を構成する電極は、抵抗器を介してDC電圧源に相互接続され得る。DC電圧源は、一実施形態において、400V供給源を含み得る。イオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分を形成する電極を相互接続する抵抗器は、実質的に値が等しくあり得る。この場合、直線軸方向DC電圧勾配が提供され得る。DC電圧勾配は、閉ループイオンガイドの周りで必要とされる方向にイオンを推進するために維持され得る。印加されるACまたはRF電圧は、好ましくはDC電圧に重ね合わされ、イオンをイオン移動度分光計またはイオン移動度セパレータ区分内に半径方向に閉じ込めるように働く。
【0177】
上記好ましさが劣る実施形態のうちのいくつかによると、イオンの前方移送に反対するように作用するより大きなポテンシャル差が閉ループイオンガイドの1区分に沿って与えられ得る。これらの実施形態によると、イオンをポテンシャル差を越えて推進するか、またはポテンシャルを回復するために、イオンの前方移送に反対する比較的大きなポテンシャル差を有するイオンガイドのその区分に隣接する電極に、1つ以上の過渡DC電圧または1つ以上の過渡DC電圧波形が印加される必要があり得る。
【0178】
本発明を好適な実施形態を参照して説明してきたが、添付の特許請求の範囲に記載されるような発明の範囲を逸脱することなく種々の変更が形態および詳細においてなされ得ることが当業者に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【図1】図1は、本発明の好適な一実施形態にかかる閉ループイオンガイドを示す。
【図2】図2は、上記好適な実施形態にかかる閉ループイオンガイドを含む質量分析計を示す。
【図3】図3Aは、イオンを好適な閉ループイオンガイド中へ導入するためのデバイスの断面を示す。図3Bは、イオンを好適な閉ループイオンガイドから除去するためのデバイスの断面を示す。
【図4】図4A〜図4Eは、イオンを好適な閉ループイオンガイドへ導入またはそこから除去するためのデバイスを示す。
【図5】図5Aは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図5Bは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。図5Cは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図5Dは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。
【図6】図6Aは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図6Bは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。図6Cは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図6Dは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持されるイオンを導入または除去するためのデバイスを通る際の軌跡のシミュレーションであって、2つの偏向電極に印加される電圧が交換され、イオンが異なるチャネル中へ移送されるようにしたシミュレーションを示す。
【図7】図7は、イオンがポテンシャル差に打ち克つように前方へ駆動される(そうしなければ、ポテンシャル差はイオンの前方移送に反対するように作用する)好適なイオンガイドの1区分を模式的に示す。
【図8】図8Aは、質量電荷比が100であるイオンが0.5mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図8Bは、質量電荷比が1000であるイオンが0.5mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。
【図9】図9Aは、質量電荷比が100であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。図9Bは、質量電荷比が1000であるイオンが1×10-2mbarの圧力に維持される好適なイオンガイドのポテンシャル回復区分を通る際の軌跡のシミュレーションを示す。
【図10】図10Aは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段の一実施形態を示す。図10Bは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段の別の実施形態を示す。図10Cは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段のさらなる実施形態を示す。
【図11】図11Aは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口の一実施形態を示す。図11Bは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口の別の実施形態を示す。図11Cは、イオンを閉ループイオンガイドに導入し、およびそこから除去するための閉ループイオンガイド内蔵手段、およびイオン導入および除去デバイスのイオン移動度セパレータ段からの分離を可能にする差動ポンプ開口のさらなる実施形態を示す。
【図12】図12は、質量フィルタが閉ループイオンガイドに含まれる実施形態を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を含む閉ループイオンガイドを含む質量分析計。
【請求項2】
一動作モードにおいて、イオンは、前記閉ループイオンガイドを、またはその周辺を複数回周回または回転するように構成される、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
一動作モードにおいて、前記閉ループイオンガイド内のイオンのうちの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、特定の時点で前記閉ループイオンガイドに沿ってまたは周りで実質的に同じ方向に移動するか、または実質的に同じ向きに回転するように構成される、請求項1または2に記載の質量分析計。
【請求項4】
ゼロでないDC電圧勾配が、使用時に、前記イオンガイドの1つ以上の区分または部分にわたって維持され、かつ前記閉ループイオンガイドの周りの軸方向DC電圧勾配の積分が実質的にゼロである、請求項1、2または3に記載の質量分析計。
【請求項5】
前記イオンガイドは、周回または円形経路または回旋状経路を形成する、曲った、迷路状の、曲がりくねった(tortuous)、らせん状の(serpentine)、または回り道の(circuitous)イオンガイド経路を含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項6】
一動作モードにおいて、イオンは、前記閉ループイオンガイドの周りを回転または循環するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項7】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイドの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回または10回より多く周回するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項8】
前記複数の電極は、開口を有する電極を含み、イオンは、使用時に前記開口を通って移送される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項9】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、実質的に円形、長方形、正方形または楕円形の開口を有する、請求項8に記載の質量分析計。
【請求項10】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズであるか、または実質的に同じ面積を有する開口を有する、請求項8または9に記載の質量分析計。
【請求項11】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、サイズまたは面積が前記イオンガイドの軸または長さに沿った方向に漸進的により大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する、請求項8または9に記載の質量分析計。
【請求項12】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する開口を有する、請求項8〜11のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項13】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに離される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項14】
前記複数の電極のうちの少なくともいくつかは、開口を含み、かつ前記開口の内径または寸法の隣り合う電極間の中心間軸方向間隔に対する比は、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0、および(xxii)>5.0からなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項15】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さまたは軸方向長さを有する、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項16】
前記イオンガイドは、セグメント化ロッドセットイオンガイドを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項17】
前記イオンガイドは、セグメント化四重極、六重極もしくは八重極イオンガイドまたは8個より多くのセグメント化ロッドセットを含むイオンガイドを含む、請求項16に記載の質量分析計。
【請求項18】
前記イオンガイドは、(i)略または実質的に円形断面、(ii)略または実質的に双曲面、(iii)円弧または部分円形断面、(iv)略または実質的に長方形断面、および(v)略または実質的に正方形断面からなる群から選択される断面を有する複数の電極を含む、請求項16または17に記載の質量分析計。
【請求項19】
前記イオンガイドは、複数のプレート電極を含み、複数のグループの電極は、前記イオンガイドの軸方向長さに沿って配置される、請求項1〜7のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項20】
各グループの電極は、第1の電極および第2の電極を含み、前記第1および第2の電極は、実質的に同じ平面内に配置され、かつ前記イオンガイドの中心長軸のいずれか一方の側に配置される、請求項19に記載の質量分析計。
【請求項21】
前記質量分析計は、イオンを前記イオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを前記第1および第2の電極を印加するための手段をさらに含む、請求項20に記載の質量分析計。
【請求項22】
各グループの電極は、第3の電極および第4の電極をさらに含み、前記第3および第4の電極は、前記第1および第2の電極と実質的に同じ平面内に配置され、かつ前記イオンガイドの中心長軸のいずれか一方の側に前記第1および第2の電極とは異なる方向に配置される、請求項20または21に記載の質量分析計。
【請求項23】
前記ACまたはRF電圧を印加するための手段は、イオンを前記イオンガイド内に第2の半径方向に閉じ込めるために、前記ACまたはRF電圧を前記第3および第4の電極に印加するように構成される、請求項22に記載の質量分析計。
【請求項24】
前記イオンガイドは、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極を含み、前記1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極は、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含み、前記平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時にイオンが走行する平面内に概して配置される、請求項1〜7のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項25】
前記イオンガイドは、1つ以上のロッドセット電極および前記1つ以上のロッドセット電極の周りに配置される複数のリング電極を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項26】
前記質量分析計は、ACまたはRF電圧を前記閉ループイオンガイドを構成する前記電極に供給するためのACまたはRF電圧手段をさらに含み、前記ACまたはRF電圧は、イオンを前記閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項27】
前記ACまたはRF電圧は、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有する、請求項26に記載の質量分析計。
【請求項28】
前記ACまたはRF電圧は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有する、請求項26または27に記載の質量分析計。
【請求項29】
前記イオンガイドは、n個の軸方向セグメントを含み、nは、(i)1〜10、(ii)11〜20、(iii)21〜30、(iv)31〜40、(v)41〜50、(vi)51〜60、(vii)61〜70、(viii)71〜80、(ix)81〜90、(x)91〜100、および(xi)>100からなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項30】
各軸方向セグメントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個または20個より多くの電極を含む、請求項29に記載の質量分析計。
【請求項31】
前記軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の軸方向長さは、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、および(xi)>10mmからなる群から選択される、請求項29または30に記載の質量分析計。
【請求項32】
前記軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の間の間隔は、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、および(xi)>10mmからなる群から選択される、請求項29、30または31に記載の質量分析計。
【請求項33】
前記イオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、および(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有する、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項34】
前記イオンガイドは、少なくとも(i)10〜20個の電極、(ii)20〜30個の電極、(iii)30〜40個の電極、(iv)40〜50個の電極、(v)50〜60個の電極、(vi)60〜70個の電極、(vii)70〜80個の電極、(viii)80〜90個の電極、(ix)90〜100個の電極、(x)100〜110個の電極、(xi)110〜120個の電極、(xii)120〜130個の電極、(xiii)130〜140個の電極、(xiv)140〜150個の電極、または(xv)>150個の電極を含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項35】
前記質量分析計は、前記イオンガイドの長さまたはイオンガイド経路のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って、またはその周りにイオンを駆動または推進するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項36】
前記イオンを駆動または推進するための手段は、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するための手段を含む、請求項35に記載の質量分析計。
【請求項37】
前記1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形は、(i)1つのポテンシャルの山もしくは障壁、(ii)1つのポテンシャル井戸、(iii)複数のポテンシャルの山もしくは障壁、(iv)複数のポテンシャル井戸、(v)1つのポテンシャルの山もしくは障壁および1つのポテンシャル井戸の組み合わせ、または(vi)複数のポテンシャルの山もしくは障壁および複数のポテンシャル井戸の組み合わせを生成する、請求項36に記載の質量分析計。
【請求項38】
前記1つ以上の過渡DC電圧またはポテンシャル波形は、繰り返し波形または方形波を含む、請求項36または37に記載の質量分析計。
【請求項39】
使用時に、複数の軸方向DCポテンシャル井戸が前記イオンガイドの長さに沿って平行移動されるか、または複数の過渡DCポテンシャルまたは電圧が前記イオンガイドの軸方向長さに沿って電極に漸進的に印加される、請求項36、37または38に記載の質量分析計。
【請求項40】
前記質量分析計は、前記1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形の振幅、高さまたは深さを期間t1にわたってx1ボルトだけ漸進的に増加するか、漸進的に低減するか、漸進的に変更するか、スキャンするか、直線的に増加するか、直線的に低減するか、段階的、漸進的もしくは他のやり方で増加するか、または段階的、漸進的もしくは他のやり方で低減するように構成および適合される第1の手段をさらに含む、請求項36〜39のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項41】
x1は、(i)<0.1V、(ii)0.1〜0.2V、(iii)0.2〜0.3V、(iv)0.3〜0.4V、(v)0.4〜0.5V、(vi)0.5〜0.6V、(vii)0.6〜0.7V、(viii)0.7〜0.8V、(ix)0.8〜0.9V、(x)0.9〜1.0V、(xi)1.0〜1.5V、(xii)1.5〜2.0V、(xiii)2.0〜2.5V、(xiv)2.5〜3.0V、(xv)3.0〜3.5V、(xvi)3.5〜4.0V、(xvii)4.0〜4.5V、(xviii)4.5〜5.0V、(xix)5.0〜5.5V、(xx)5.5〜6.0V、(xxi)6.0〜6.5V、(xxii)6.5〜7.0V、(xxiii)7.0〜7.5V、(xxiv)7.5〜8.0V、(xxv)8.0〜8.5V、(xxvi)8.5〜9.0V、(xxvii)9.0〜9.5V、(xxviii)9.5〜10.0V、および(xxix)>10.0Vからなる群から選択される、請求項40に記載の質量分析計。
【請求項42】
t1は、(i)<lms、(ii)1〜10ms、(iii)10〜20ms、(iv)20〜30ms、(v)30〜40ms、(vi)40〜50ms、(vii)50〜60ms、(viii)60〜70ms、(ix)70〜80ms、(x)80〜90ms、(xi)90〜100ms、(xii)100〜200ms、(xiii)200〜300ms、(xiv)300〜400ms、(xv)400〜500ms、(xvi)500〜600ms、(xvii)600〜700ms、(xviii)700〜800ms、(xix)800〜900ms、(xx)900〜1000ms、(xxi)1〜2s、(xxii)2〜3s、(xxiii)3〜4s、(xxiv)4〜5s、および(xxv)>5sからなる群から選択される、請求項40または41に記載の質量分析計。
【請求項43】
前記質量分析計は、前記1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形が前記電極に期間t2にわたってx2m/sだけ印加される速度またはレートを漸進的に増加するか、漸進的に低減するか、漸進的に変更するか、スキャンするか、直線的に増加するか、直線的に低減するか、段階的、漸進的もしくは他のやり方で増加するか、または段階的、漸進的もしくは他のやり方で低減するように構成および適合される第2の手段をさらに含む、請求項36〜42のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項44】
x2は、(i)<1、(ii)1〜2、(iii)2〜3、(iv)3〜4、(v)4〜5、(vi)5〜6、(vii)6〜7、(viii)7〜8、(ix)8〜9、(x)9〜10、(xi)10〜11、(xii)11〜12、(xiii)12〜13、(xiv)13〜14、(xv)14〜15、(xvi)15〜16、(xvii)16〜17、(xviii)17〜18、(xix)18〜19、(xx)19〜20、(xxi)20〜30、(xxii)30〜40、(xxiii)40〜50、(xxiv)50〜60、(xxv)60〜70、(xxvi)70〜80、(xxvii)80〜90、(xxviii)90〜100、(xxix)100〜150、(xxx)150〜200、(xxxi)200〜250、(xxxii)250〜300、(xxxiii)300〜350、(xxxiv)350〜400、(xxxv)400〜450、(xxxvi)450〜500、および(xxxvii)>500からなる群から選択される、請求項43に記載の質量分析計。
【請求項45】
t2は、(i)<1ms、(ii)1〜10ms、(iii)10〜20ms、(iv)20〜30ms、(v)30〜40ms、(vi)40〜50ms、(vii)50〜60ms、(viii)60〜70ms、(ix)70〜80ms、(x)80〜90ms、(xi)90〜100ms、(xii)100〜200ms、(xiii)200〜300ms、(xiv)300〜400ms、(xv)400〜500ms、(xvi)500〜600ms、(xvii)600〜700ms、(xviii)700〜800ms、(xix)800〜900ms、(Xx)900〜1000ms、(xxi)1〜2s、(xxii)2〜3s、(xxiii)3〜4s、(xxiv)4〜5s、および(xxv)>5sからなる群から選択される、請求項43または44に記載の質量分析計。
【請求項46】
前記質量分析計は、一定のゼロでないDC電圧勾配を前記イオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するように構成される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項47】
前記イオンガイドの1つ以上の部分は、イオン移動度分光計またはセパレータ部分、区分または段を含み、イオンは、前記イオン移動度分光計またはセパレータ部分、区分または段において、そのイオン移動度にしたがって時間的に分離するようにされる、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項48】
前記イオンガイドの1つ以上の部分は、フィールド非対称イオン移動度分光計(「FAIMS」)部分、区分または段を含み、イオンは、前記フィールド非対称イオン移動度分光計(「FAIMS」)部分、区分または段において、そのイオン移動度の電界強度に対する変化速度にしたがって時間的に分離するようにされる、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項49】
使用時に、バッファガスが前記イオンガイドの1つ以上の区分内に提供される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項50】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際にフラグメンテーションせずに衝突により冷却されるように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項51】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際に加熱されるように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項52】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際にフラグメンテーションされるように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項53】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイド内でガス分子と相互作用する際に展開(unfold)または少なくとも部分的に展開するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項54】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイドの部分または領域内に軸方向にトラップされる、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項55】
前記質量分析計は、イオンを前記イオンガイド中へ注入するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項56】
前記イオンを注入するための手段は、前記イオンガイド中へ注入されるイオンが通り得る、1、2、3個または3個より多くの個別のイオンガイドチャネルまたは入力イオンガイド領域を含む、請求項55に記載の質量分析計。
【請求項57】
前記イオンを注入するための手段は、複数の電極を含み、各電極は、1、2、3個または3個より多くの開口を含む、請求項55または56に記載の質量分析計。
【請求項58】
前記イオンを注入するための手段は、1つ以上の偏向電極をさらに含み、使用時に、イオンを1つ以上のイオンガイドチャネルまたは入力イオンガイド領域から前記イオンガイド中へ方向づけるために、1つ以上の電圧が前記1つ以上の偏向電極に印加される、請求項55、56または57に記載の質量分析計。
【請求項59】
前記質量分析計は、イオンを前記イオンガイドから排出するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項60】
前記イオンを排出するための手段は、前記イオンガイドから排出されるイオンが通り得る、1、2、3個または3個より多くの個別のイオンガイドチャネルまたは出口イオンガイド領域を含む、請求項59に記載の質量分析計。
【請求項61】
前記イオンを排出するための手段は、複数の電極を含み、各電極は、1、2、3個または3個より多くの開口を含む、請求項59または60に記載の質量分析計。
【請求項62】
前記イオンを排出するための手段は、1つ以上の偏向電極をさらに含み、使用時に、イオンを前記イオンガイドから1つ以上のイオンガイドチャネルまたは出口イオンガイド領域中へ方向づけるために、1つ以上の電圧が前記1つ以上の偏向電極に印加される、請求項59、60または61に記載の質量分析計。
【請求項63】
前記質量分析計は、一動作モードにおいて、前記イオンガイドの少なくとも一部分を(i)>1.0×10-3mbar、(ii)>1.0×10-2mbar、(iii)>1.0×10-1mbar、(iv)>1mbar、(v)>10mbar、(vi)>100mbar、(vii)>5.0×10-3mbar、(viii)>5.0×10-2mbar、(ix)10-4〜10-3mbar、(x)10-3〜10-2mbar、および(xi)10-2〜10-1mbarからなる群から選択される圧力に維持するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項64】
前記質量分析計は、一動作モードにおいて、前記イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持するための手段をさらに含み、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項65】
前記質量分析計は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、および(xvi)ニッケル−63放射性イオン源からなる群から選択されるイオン源をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項66】
前記質量分析計は、連続またはパルス化イオン源をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項67】
前記質量分析計は、前記閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項68】
前記1つ以上の質量フィルタは、(i)四重極ロッドセット質量フィルタ、(ii)飛行時間質量フィルタまたは質量分析器、(iii)ウィーンフィルタ、および(iv)扇形磁場質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択される、請求項67に記載の質量分析計。
【請求項69】
前記質量分析計は、前記閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項70】
前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、
(i)四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセットまたは8個より多くのロッドを含むロッドセットを含む多重極ロッドセットまたはセグメント化多重極ロッドセットイオントラップまたはイオンガイド、
(ii)開口を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含むイオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドであって、使用時にイオンは、前記開口を通って移送され、前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズまたは面積の開口を有するか、またはサイズまたは面積が漸進的により大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイド、
(iii)1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極であって、前記1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極は、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含むか、または前記平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時にイオンが走行する平面内に概して配置される、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極、および
(iv)イオントラップまたはイオンガイドの長さに沿って軸方向に配置される複数のグループの電極を含むイオントラップまたはイオンガイドであって、各グループの電極は、(a)第1および第2の電極ならびにイオンを前記イオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを前記第1および第2の電極に印加するための手段と、(b)第3および第4の電極ならびにイオンを前記イオンガイド内に第2の半径方向に閉じ込めるためにACまたはRF電圧を前記第3および第4の電極に印加するための手段とを含む、イオントラップまたはイオンガイド
からなる群から選択される、請求項69に記載の質量分析計。
【請求項71】
前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、イオントンネルまたはイオンファネルイオンガイドまたはイオントラップを含み、前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する、請求項69または70に記載の質量分析計。
【請求項72】
前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、イオンを前記さらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に半径方向に閉じ込めるために、ACまたはRF電圧を前記さらなるイオンガイドまたはイオントラップの前記複数の電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に印加するように構成および適合される第2のACまたはRF電圧手段をさらに含む、請求項69、70または71に記載の質量分析計。
【請求項73】
前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、1ビームまたはグループのイオンを受け取り、前記1ビームまたはグループのイオンを変換または分割し、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の別々のパケットのイオンが任意の特定の時間に前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に閉じ込めおよび/または隔離されるように構成および適合され、かつ各パケットのイオンは、前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に形成される別々の軸方向ポテンシャル井戸内に別々に閉じ込めおよび/または隔離される、請求項69〜72のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項74】
前記質量分析計は、一動作モードにおいて、少なくともいくつかのイオンを前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を通ってまたはそれに沿って上流および/または下流へ駆動するように構成および適合される手段をさらに含む、請求項69〜73のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項75】
前記質量分析計は、少なくともいくつかのイオンを前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って下流および/または上流へ駆動するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたは1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャル波形を前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップを形成する前記電極に印加するように構成および適合される過渡DC電圧手段をさらに含む、請求項69〜74のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項76】
前記質量分析計は、少なくともいくつかのイオンを前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って下流および/または上流へ駆動するために、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧を前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップを形成する電極に印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段をさらに含む、請求項69〜75のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項77】
前記質量分析計は、前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの少なくとも一部分を(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)>1mbar、(viii)0.0001〜100mbar、および(ix)0.001〜10mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含む、請求項69〜76のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項78】
前記質量分析計は、前記閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項79】
前記質量分析計は、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイス、および(xxviii)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項80】
前記質量分析計は、前記閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される質量分析器をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項81】
前記質量分析器は、(i)フーリエ変換(「FT」)質量分析器、(ii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(iii)飛行時間(「TOF」)質量分析器、(iv)直交加速飛行時間(「oaTOF」)質量分析器、(v)軸方向加速飛行時間質量分析器、(vi)扇形磁場質量分析器、(vii)ポールまたは3D四重極質量分析器、(viii)2Dまたは直線四重極質量分析器、(ix)ペニングトラップ質量分析器、(x)イオントラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換オービトラップ、(xii)静電イオンサイクロトロン共鳴質量分析器、(xiii)静電フーリエ変換質量分析器、および(xiv)四重極ロッドセット質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択される、請求項80に記載の質量分析計。
【請求項82】
複数の電極を含む閉ループイオンガイドを通ってイオンをガイドするステップを含む質量分析の方法。
【請求項83】
質量フィルタおよび衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを含む閉ループイオンガイドを含む質量分析計であって、一動作モードにおいて、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて生成されるフラグメントまたは娘イオンが前記閉ループイオンガイドを介して前記質量フィルタに渡る、質量分析計。
【請求項84】
質量フィルタおよび衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを含む閉ループイオンガイドを準備するステップと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて生成されたフラグメントまたは娘イオンを前記閉ループイオンガイドを介して前記質量フィルタに渡すステップと
を含む質量分析の方法。
【請求項85】
複数の電極を含む閉ループイオンガイドと、
一動作モードにおいて、前記イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持する手段であって、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される、手段と、
ACまたはRF電圧を前記電極に供給するためのACまたはRF電圧手段であって、前記ACまたはRF電圧は、使用時に、イオンを前記閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する、ACまたはRF電圧手段と、
一定のゼロでないDC電圧勾配を前記イオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するように構成される手段と、
1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するための手段と
を含む質量分析計。
【請求項86】
前記イオンガイドは、イオン移動度分光計またはセパレータを含む、請求項85に記載の質量分析計。
【請求項87】
前記イオンガイドは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを含む、請求項85または86に記載の質量分析計。
【請求項88】
複数の電極を含む閉ループイオンガイドを準備するステップと、
一動作モードにおいて、前記イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持するステップであって、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される、ステップと、
ACまたはRF電圧を前記電極に供給するためのステップであって、前記ACまたはRF電圧は、イオンを前記閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する、ステップと、
一定のゼロでないDC電圧勾配を前記イオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するステップと、
イオンを駆動または推進するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するステップと
を含む質量分析の方法。
【請求項1】
複数の電極を含む閉ループイオンガイドを含む質量分析計。
【請求項2】
一動作モードにおいて、イオンは、前記閉ループイオンガイドを、またはその周辺を複数回周回または回転するように構成される、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項3】
一動作モードにおいて、前記閉ループイオンガイド内のイオンのうちの少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、特定の時点で前記閉ループイオンガイドに沿ってまたは周りで実質的に同じ方向に移動するか、または実質的に同じ向きに回転するように構成される、請求項1または2に記載の質量分析計。
【請求項4】
ゼロでないDC電圧勾配が、使用時に、前記イオンガイドの1つ以上の区分または部分にわたって維持され、かつ前記閉ループイオンガイドの周りの軸方向DC電圧勾配の積分が実質的にゼロである、請求項1、2または3に記載の質量分析計。
【請求項5】
前記イオンガイドは、周回または円形経路または回旋状経路を形成する、曲った、迷路状の、曲がりくねった(tortuous)、らせん状の(serpentine)、または回り道の(circuitous)イオンガイド経路を含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項6】
一動作モードにおいて、イオンは、前記閉ループイオンガイドの周りを回転または循環するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項7】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイドの少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10回または10回より多く周回するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項8】
前記複数の電極は、開口を有する電極を含み、イオンは、使用時に前記開口を通って移送される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項9】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、実質的に円形、長方形、正方形または楕円形の開口を有する、請求項8に記載の質量分析計。
【請求項10】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズであるか、または実質的に同じ面積を有する開口を有する、請求項8または9に記載の質量分析計。
【請求項11】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、サイズまたは面積が前記イオンガイドの軸または長さに沿った方向に漸進的により大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する、請求項8または9に記載の質量分析計。
【請求項12】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する開口を有する、請求項8〜11のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項13】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される軸方向距離だけ互いに離される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項14】
前記複数の電極のうちの少なくともいくつかは、開口を含み、かつ前記開口の内径または寸法の隣り合う電極間の中心間軸方向間隔に対する比は、(i)<1.0、(ii)1.0〜1.2、(iii)1.2〜1.4、(iv)1.4〜1.6、(v)1.6〜1.8、(vi)1.8〜2.0、(vii)2.0〜2.2、(viii)2.2〜2.4、(ix)2.4〜2.6、(x)2.6〜2.8、(xi)2.8〜3.0、(xii)3.0〜3.2、(xiii)3.2〜3.4、(xiv)3.4〜3.6、(xv)3.6〜3.8、(xvi)3.8〜4.0、(xvii)4.0〜4.2、(xviii)4.2〜4.4、(xix)4.4〜4.6、(xx)4.6〜4.8、(xxi)4.8〜5.0、および(xxii)>5.0からなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項15】
前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%は、(i)5mm以下、(ii)4.5mm以下、(iii)4mm以下、(iv)3.5mm以下、(v)3mm以下、(vi)2.5mm以下、(vii)2mm以下、(viii)1.5mm以下、(ix)1mm以下、(x)0.8mm以下、(xi)0.6mm以下、(xii)0.4mm以下、(xiii)0.2mm以下、(xiv)0.1mm以下、および(xv)0.25mm以下からなる群から選択される厚さまたは軸方向長さを有する、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項16】
前記イオンガイドは、セグメント化ロッドセットイオンガイドを含む、請求項1〜7のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項17】
前記イオンガイドは、セグメント化四重極、六重極もしくは八重極イオンガイドまたは8個より多くのセグメント化ロッドセットを含むイオンガイドを含む、請求項16に記載の質量分析計。
【請求項18】
前記イオンガイドは、(i)略または実質的に円形断面、(ii)略または実質的に双曲面、(iii)円弧または部分円形断面、(iv)略または実質的に長方形断面、および(v)略または実質的に正方形断面からなる群から選択される断面を有する複数の電極を含む、請求項16または17に記載の質量分析計。
【請求項19】
前記イオンガイドは、複数のプレート電極を含み、複数のグループの電極は、前記イオンガイドの軸方向長さに沿って配置される、請求項1〜7のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項20】
各グループの電極は、第1の電極および第2の電極を含み、前記第1および第2の電極は、実質的に同じ平面内に配置され、かつ前記イオンガイドの中心長軸のいずれか一方の側に配置される、請求項19に記載の質量分析計。
【請求項21】
前記質量分析計は、イオンを前記イオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを前記第1および第2の電極を印加するための手段をさらに含む、請求項20に記載の質量分析計。
【請求項22】
各グループの電極は、第3の電極および第4の電極をさらに含み、前記第3および第4の電極は、前記第1および第2の電極と実質的に同じ平面内に配置され、かつ前記イオンガイドの中心長軸のいずれか一方の側に前記第1および第2の電極とは異なる方向に配置される、請求項20または21に記載の質量分析計。
【請求項23】
前記ACまたはRF電圧を印加するための手段は、イオンを前記イオンガイド内に第2の半径方向に閉じ込めるために、前記ACまたはRF電圧を前記第3および第4の電極に印加するように構成される、請求項22に記載の質量分析計。
【請求項24】
前記イオンガイドは、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極を含み、前記1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極は、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含み、前記平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時にイオンが走行する平面内に概して配置される、請求項1〜7のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項25】
前記イオンガイドは、1つ以上のロッドセット電極および前記1つ以上のロッドセット電極の周りに配置される複数のリング電極を含む、請求項1〜7のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項26】
前記質量分析計は、ACまたはRF電圧を前記閉ループイオンガイドを構成する前記電極に供給するためのACまたはRF電圧手段をさらに含み、前記ACまたはRF電圧は、イオンを前記閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項27】
前記ACまたはRF電圧は、(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、および(xi)>500Vピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有する、請求項26に記載の質量分析計。
【請求項28】
前記ACまたはRF電圧は、(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有する、請求項26または27に記載の質量分析計。
【請求項29】
前記イオンガイドは、n個の軸方向セグメントを含み、nは、(i)1〜10、(ii)11〜20、(iii)21〜30、(iv)31〜40、(v)41〜50、(vi)51〜60、(vii)61〜70、(viii)71〜80、(ix)81〜90、(x)91〜100、および(xi)>100からなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項30】
各軸方向セグメントは、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個または20個より多くの電極を含む、請求項29に記載の質量分析計。
【請求項31】
前記軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の軸方向長さは、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、および(xi)>10mmからなる群から選択される、請求項29または30に記載の質量分析計。
【請求項32】
前記軸方向セグメントのうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%の間の間隔は、(i)<1mm、(ii)1〜2mm、(iii)2〜3mm、(iv)3〜4mm、(v)4〜5mm、(vi)5〜6mm、(vii)6〜7mm、(viii)7〜8mm、(ix)8〜9mm、(x)9〜10mm、および(xi)>10mmからなる群から選択される、請求項29、30または31に記載の質量分析計。
【請求項33】
前記イオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、および(xi)>200mmからなる群から選択される長さを有する、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項34】
前記イオンガイドは、少なくとも(i)10〜20個の電極、(ii)20〜30個の電極、(iii)30〜40個の電極、(iv)40〜50個の電極、(v)50〜60個の電極、(vi)60〜70個の電極、(vii)70〜80個の電極、(viii)80〜90個の電極、(ix)90〜100個の電極、(x)100〜110個の電極、(xi)110〜120個の電極、(xii)120〜130個の電極、(xiii)130〜140個の電極、(xiv)140〜150個の電極、または(xv)>150個の電極を含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項35】
前記質量分析計は、前記イオンガイドの長さまたはイオンガイド経路のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って、またはその周りにイオンを駆動または推進するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項36】
前記イオンを駆動または推進するための手段は、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するための手段を含む、請求項35に記載の質量分析計。
【請求項37】
前記1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形は、(i)1つのポテンシャルの山もしくは障壁、(ii)1つのポテンシャル井戸、(iii)複数のポテンシャルの山もしくは障壁、(iv)複数のポテンシャル井戸、(v)1つのポテンシャルの山もしくは障壁および1つのポテンシャル井戸の組み合わせ、または(vi)複数のポテンシャルの山もしくは障壁および複数のポテンシャル井戸の組み合わせを生成する、請求項36に記載の質量分析計。
【請求項38】
前記1つ以上の過渡DC電圧またはポテンシャル波形は、繰り返し波形または方形波を含む、請求項36または37に記載の質量分析計。
【請求項39】
使用時に、複数の軸方向DCポテンシャル井戸が前記イオンガイドの長さに沿って平行移動されるか、または複数の過渡DCポテンシャルまたは電圧が前記イオンガイドの軸方向長さに沿って電極に漸進的に印加される、請求項36、37または38に記載の質量分析計。
【請求項40】
前記質量分析計は、前記1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形の振幅、高さまたは深さを期間t1にわたってx1ボルトだけ漸進的に増加するか、漸進的に低減するか、漸進的に変更するか、スキャンするか、直線的に増加するか、直線的に低減するか、段階的、漸進的もしくは他のやり方で増加するか、または段階的、漸進的もしくは他のやり方で低減するように構成および適合される第1の手段をさらに含む、請求項36〜39のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項41】
x1は、(i)<0.1V、(ii)0.1〜0.2V、(iii)0.2〜0.3V、(iv)0.3〜0.4V、(v)0.4〜0.5V、(vi)0.5〜0.6V、(vii)0.6〜0.7V、(viii)0.7〜0.8V、(ix)0.8〜0.9V、(x)0.9〜1.0V、(xi)1.0〜1.5V、(xii)1.5〜2.0V、(xiii)2.0〜2.5V、(xiv)2.5〜3.0V、(xv)3.0〜3.5V、(xvi)3.5〜4.0V、(xvii)4.0〜4.5V、(xviii)4.5〜5.0V、(xix)5.0〜5.5V、(xx)5.5〜6.0V、(xxi)6.0〜6.5V、(xxii)6.5〜7.0V、(xxiii)7.0〜7.5V、(xxiv)7.5〜8.0V、(xxv)8.0〜8.5V、(xxvi)8.5〜9.0V、(xxvii)9.0〜9.5V、(xxviii)9.5〜10.0V、および(xxix)>10.0Vからなる群から選択される、請求項40に記載の質量分析計。
【請求項42】
t1は、(i)<lms、(ii)1〜10ms、(iii)10〜20ms、(iv)20〜30ms、(v)30〜40ms、(vi)40〜50ms、(vii)50〜60ms、(viii)60〜70ms、(ix)70〜80ms、(x)80〜90ms、(xi)90〜100ms、(xii)100〜200ms、(xiii)200〜300ms、(xiv)300〜400ms、(xv)400〜500ms、(xvi)500〜600ms、(xvii)600〜700ms、(xviii)700〜800ms、(xix)800〜900ms、(xx)900〜1000ms、(xxi)1〜2s、(xxii)2〜3s、(xxiii)3〜4s、(xxiv)4〜5s、および(xxv)>5sからなる群から選択される、請求項40または41に記載の質量分析計。
【請求項43】
前記質量分析計は、前記1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形が前記電極に期間t2にわたってx2m/sだけ印加される速度またはレートを漸進的に増加するか、漸進的に低減するか、漸進的に変更するか、スキャンするか、直線的に増加するか、直線的に低減するか、段階的、漸進的もしくは他のやり方で増加するか、または段階的、漸進的もしくは他のやり方で低減するように構成および適合される第2の手段をさらに含む、請求項36〜42のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項44】
x2は、(i)<1、(ii)1〜2、(iii)2〜3、(iv)3〜4、(v)4〜5、(vi)5〜6、(vii)6〜7、(viii)7〜8、(ix)8〜9、(x)9〜10、(xi)10〜11、(xii)11〜12、(xiii)12〜13、(xiv)13〜14、(xv)14〜15、(xvi)15〜16、(xvii)16〜17、(xviii)17〜18、(xix)18〜19、(xx)19〜20、(xxi)20〜30、(xxii)30〜40、(xxiii)40〜50、(xxiv)50〜60、(xxv)60〜70、(xxvi)70〜80、(xxvii)80〜90、(xxviii)90〜100、(xxix)100〜150、(xxx)150〜200、(xxxi)200〜250、(xxxii)250〜300、(xxxiii)300〜350、(xxxiv)350〜400、(xxxv)400〜450、(xxxvi)450〜500、および(xxxvii)>500からなる群から選択される、請求項43に記載の質量分析計。
【請求項45】
t2は、(i)<1ms、(ii)1〜10ms、(iii)10〜20ms、(iv)20〜30ms、(v)30〜40ms、(vi)40〜50ms、(vii)50〜60ms、(viii)60〜70ms、(ix)70〜80ms、(x)80〜90ms、(xi)90〜100ms、(xii)100〜200ms、(xiii)200〜300ms、(xiv)300〜400ms、(xv)400〜500ms、(xvi)500〜600ms、(xvii)600〜700ms、(xviii)700〜800ms、(xix)800〜900ms、(Xx)900〜1000ms、(xxi)1〜2s、(xxii)2〜3s、(xxiii)3〜4s、(xxiv)4〜5s、および(xxv)>5sからなる群から選択される、請求項43または44に記載の質量分析計。
【請求項46】
前記質量分析計は、一定のゼロでないDC電圧勾配を前記イオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するように構成される手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項47】
前記イオンガイドの1つ以上の部分は、イオン移動度分光計またはセパレータ部分、区分または段を含み、イオンは、前記イオン移動度分光計またはセパレータ部分、区分または段において、そのイオン移動度にしたがって時間的に分離するようにされる、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項48】
前記イオンガイドの1つ以上の部分は、フィールド非対称イオン移動度分光計(「FAIMS」)部分、区分または段を含み、イオンは、前記フィールド非対称イオン移動度分光計(「FAIMS」)部分、区分または段において、そのイオン移動度の電界強度に対する変化速度にしたがって時間的に分離するようにされる、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項49】
使用時に、バッファガスが前記イオンガイドの1つ以上の区分内に提供される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項50】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際にフラグメンテーションせずに衝突により冷却されるように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項51】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際に加熱されるように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項52】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイドの部分または領域内でガス分子と相互作用する際にフラグメンテーションされるように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項53】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイド内でガス分子と相互作用する際に展開(unfold)または少なくとも部分的に展開するように構成される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項54】
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイドの部分または領域内に軸方向にトラップされる、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項55】
前記質量分析計は、イオンを前記イオンガイド中へ注入するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項56】
前記イオンを注入するための手段は、前記イオンガイド中へ注入されるイオンが通り得る、1、2、3個または3個より多くの個別のイオンガイドチャネルまたは入力イオンガイド領域を含む、請求項55に記載の質量分析計。
【請求項57】
前記イオンを注入するための手段は、複数の電極を含み、各電極は、1、2、3個または3個より多くの開口を含む、請求項55または56に記載の質量分析計。
【請求項58】
前記イオンを注入するための手段は、1つ以上の偏向電極をさらに含み、使用時に、イオンを1つ以上のイオンガイドチャネルまたは入力イオンガイド領域から前記イオンガイド中へ方向づけるために、1つ以上の電圧が前記1つ以上の偏向電極に印加される、請求項55、56または57に記載の質量分析計。
【請求項59】
前記質量分析計は、イオンを前記イオンガイドから排出するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項60】
前記イオンを排出するための手段は、前記イオンガイドから排出されるイオンが通り得る、1、2、3個または3個より多くの個別のイオンガイドチャネルまたは出口イオンガイド領域を含む、請求項59に記載の質量分析計。
【請求項61】
前記イオンを排出するための手段は、複数の電極を含み、各電極は、1、2、3個または3個より多くの開口を含む、請求項59または60に記載の質量分析計。
【請求項62】
前記イオンを排出するための手段は、1つ以上の偏向電極をさらに含み、使用時に、イオンを前記イオンガイドから1つ以上のイオンガイドチャネルまたは出口イオンガイド領域中へ方向づけるために、1つ以上の電圧が前記1つ以上の偏向電極に印加される、請求項59、60または61に記載の質量分析計。
【請求項63】
前記質量分析計は、一動作モードにおいて、前記イオンガイドの少なくとも一部分を(i)>1.0×10-3mbar、(ii)>1.0×10-2mbar、(iii)>1.0×10-1mbar、(iv)>1mbar、(v)>10mbar、(vi)>100mbar、(vii)>5.0×10-3mbar、(viii)>5.0×10-2mbar、(ix)10-4〜10-3mbar、(x)10-3〜10-2mbar、および(xi)10-2〜10-1mbarからなる群から選択される圧力に維持するための手段をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項64】
前記質量分析計は、一動作モードにおいて、前記イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持するための手段をさらに含み、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項65】
前記質量分析計は、(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、および(xvi)ニッケル−63放射性イオン源からなる群から選択されるイオン源をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項66】
前記質量分析計は、連続またはパルス化イオン源をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項67】
前記質量分析計は、前記閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上の質量フィルタをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項68】
前記1つ以上の質量フィルタは、(i)四重極ロッドセット質量フィルタ、(ii)飛行時間質量フィルタまたは質量分析器、(iii)ウィーンフィルタ、および(iv)扇形磁場質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択される、請求項67に記載の質量分析計。
【請求項69】
前記質量分析計は、前記閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項70】
前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、
(i)四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセットまたは8個より多くのロッドを含むロッドセットを含む多重極ロッドセットまたはセグメント化多重極ロッドセットイオントラップまたはイオンガイド、
(ii)開口を有する複数の電極または少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90もしくは100個の電極を含むイオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイドであって、使用時にイオンは、前記開口を通って移送され、前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、実質的に同じサイズまたは面積の開口を有するか、またはサイズまたは面積が漸進的により大きくおよび/またはより小さくなる開口を有する、イオントンネルまたはイオンファネルイオントラップまたはイオンガイド、
(iii)1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極であって、前記1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極は、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19もしくは20個の平面、プレートまたはメッシュ電極を含むか、または前記平面、プレートまたはメッシュ電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、使用時にイオンが走行する平面内に概して配置される、1スタックまたはアレイの平面、プレートまたはメッシュ電極、および
(iv)イオントラップまたはイオンガイドの長さに沿って軸方向に配置される複数のグループの電極を含むイオントラップまたはイオンガイドであって、各グループの電極は、(a)第1および第2の電極ならびにイオンを前記イオンガイド内に第1の半径方向に閉じ込めるためにDC電圧またはポテンシャルを前記第1および第2の電極に印加するための手段と、(b)第3および第4の電極ならびにイオンを前記イオンガイド内に第2の半径方向に閉じ込めるためにACまたはRF電圧を前記第3および第4の電極に印加するための手段とを含む、イオントラップまたはイオンガイド
からなる群から選択される、請求項69に記載の質量分析計。
【請求項71】
前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、イオントンネルまたはイオンファネルイオンガイドまたはイオントラップを含み、前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、および(xi)>10.0mmからなる群から選択される内径または寸法を有する、請求項69または70に記載の質量分析計。
【請求項72】
前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、イオンを前記さらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に半径方向に閉じ込めるために、ACまたはRF電圧を前記さらなるイオンガイドまたはイオントラップの前記複数の電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に印加するように構成および適合される第2のACまたはRF電圧手段をさらに含む、請求項69、70または71に記載の質量分析計。
【請求項73】
前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップは、1ビームまたはグループのイオンを受け取り、前記1ビームまたはグループのイオンを変換または分割し、少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19または20個の別々のパケットのイオンが任意の特定の時間に前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に閉じ込めおよび/または隔離されるように構成および適合され、かつ各パケットのイオンは、前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップ内に形成される別々の軸方向ポテンシャル井戸内に別々に閉じ込めおよび/または隔離される、請求項69〜72のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項74】
前記質量分析計は、一動作モードにおいて、少なくともいくつかのイオンを前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%を通ってまたはそれに沿って上流および/または下流へ駆動するように構成および適合される手段をさらに含む、請求項69〜73のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項75】
前記質量分析計は、少なくともいくつかのイオンを前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って下流および/または上流へ駆動するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたは1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャル波形を前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップを形成する前記電極に印加するように構成および適合される過渡DC電圧手段をさらに含む、請求項69〜74のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項76】
前記質量分析計は、少なくともいくつかのイオンを前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの軸方向長さの少なくとも1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%または100%に沿って下流および/または上流へ駆動するために、2つ以上の位相シフトACまたはRF電圧を前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップを形成する電極に印加するように構成および適合されるACまたはRF電圧手段をさらに含む、請求項69〜75のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項77】
前記質量分析計は、前記1つ以上のさらなるイオンガイドまたはイオントラップの少なくとも一部分を(i)>0.0001mbar、(ii)>0.001mbar、(iii)>0.01mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>1mbar、(vi)>10mbar、(vii)>1mbar、(viii)0.0001〜100mbar、および(ix)0.001〜10mbarからなる群から選択される圧力に維持するように構成および適合される手段をさらに含む、請求項69〜76のいずれかに記載の質量分析計。
【請求項78】
前記質量分析計は、前記閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項79】
前記質量分析計は、(i)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(v)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(vii)赤外放射誘起解離デバイス、(viii)紫外放射誘起解離デバイス、(ix)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(x)インソースフラグメンテーションデバイス、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiii)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xiv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−メタステーブルイオン反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−メタステーブル分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−メタステーブル原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−イオン反応デバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−分子反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−原子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブルイオン反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル分子反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加物または生成物イオンを形成するためのイオン−メタステーブル原子反応デバイス、および(xxviii)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイスからなる群から選択される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスをさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項80】
前記質量分析計は、前記閉ループイオンガイドの上流および/または内部および/または下流に配置される質量分析器をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載される質量分析計。
【請求項81】
前記質量分析器は、(i)フーリエ変換(「FT」)質量分析器、(ii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析器、(iii)飛行時間(「TOF」)質量分析器、(iv)直交加速飛行時間(「oaTOF」)質量分析器、(v)軸方向加速飛行時間質量分析器、(vi)扇形磁場質量分析器、(vii)ポールまたは3D四重極質量分析器、(viii)2Dまたは直線四重極質量分析器、(ix)ペニングトラップ質量分析器、(x)イオントラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換オービトラップ、(xii)静電イオンサイクロトロン共鳴質量分析器、(xiii)静電フーリエ変換質量分析器、および(xiv)四重極ロッドセット質量フィルタまたは質量分析器からなる群から選択される、請求項80に記載の質量分析計。
【請求項82】
複数の電極を含む閉ループイオンガイドを通ってイオンをガイドするステップを含む質量分析の方法。
【請求項83】
質量フィルタおよび衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを含む閉ループイオンガイドを含む質量分析計であって、一動作モードにおいて、前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて生成されるフラグメントまたは娘イオンが前記閉ループイオンガイドを介して前記質量フィルタに渡る、質量分析計。
【請求項84】
質量フィルタおよび衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを含む閉ループイオンガイドを準備するステップと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスにおいて生成されたフラグメントまたは娘イオンを前記閉ループイオンガイドを介して前記質量フィルタに渡すステップと
を含む質量分析の方法。
【請求項85】
複数の電極を含む閉ループイオンガイドと、
一動作モードにおいて、前記イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持する手段であって、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される、手段と、
ACまたはRF電圧を前記電極に供給するためのACまたはRF電圧手段であって、前記ACまたはRF電圧は、使用時に、イオンを前記閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する、ACまたはRF電圧手段と、
一定のゼロでないDC電圧勾配を前記イオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するように構成される手段と、
1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するための手段と
を含む質量分析計。
【請求項86】
前記イオンガイドは、イオン移動度分光計またはセパレータを含む、請求項85に記載の質量分析計。
【請求項87】
前記イオンガイドは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを含む、請求項85または86に記載の質量分析計。
【請求項88】
複数の電極を含む閉ループイオンガイドを準備するステップと、
一動作モードにおいて、前記イオンガイドの少なくとも長さLを圧力Pに維持するステップであって、積P×Lは、(i)≧1.0×10-3mbar cm、(ii)≧1.0×10-2mbar cm、(iii)≧1.0×10-1mbar cm、(iv)≧1mbar cm、(v)≧10mbar cm、(vi)≧102mbar cm、(vii)≧103mbar cm、(viii)≧104mbar cm、および(ix)≧105mbar cmからなる群から選択される、ステップと、
ACまたはRF電圧を前記電極に供給するためのステップであって、前記ACまたはRF電圧は、イオンを前記閉ループイオンガイド内に半径方向に閉じ込めるように作用する擬ポテンシャル井戸を生成する、ステップと、
一定のゼロでないDC電圧勾配を前記イオンガイドの長さまたはイオンガイド経路の少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に沿って維持するステップと、
イオンを駆動または推進するために、1つ以上の過渡DC電圧もしくはポテンシャルまたはDC電圧もしくはポテンシャル波形を前記電極のうちの少なくとも1%、5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%または100%に印加するステップと
を含む質量分析の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2009−532822(P2009−532822A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543897(P2008−543897)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004574
【国際公開番号】WO2007/066114
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/GB2006/004574
【国際公開番号】WO2007/066114
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]