説明

質量分析計

【課題】質量分析計
【解決手段】飛行時間型質量分析器(7)を含む質量分析計が開示される。飛行時間型質量分析器(7)は、分圧器を形成する一連の抵抗器(2)によって相互接続される複数の電極(1)を含むイオンガイドを含む。イオンは、電極(1)に対する二相RF電圧の印加によって、イオンガイド内において径方向に閉じ込められる。イオンガイドの長さに沿って不均一な擬ポテンシャル力が維持されるように、分圧器に跨って付加的な単相RF電圧が印加される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、質量分析計及び質量分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
既知の質量分析計は、電子衝撃(EI)イオン源とリフレクトロン飛行時間型質量分析器とを併用する。既知の飛行時間型質量分析器は、分圧器すなわち抵抗鎖に接続される一連のリング電極を含む。静的な軸方向DC電圧勾配及び不均一な軸方向RF電圧が質量分析器の長さに沿って維持されるように、分圧器すなわち抵抗鎖の両端に、RF電圧及び静的DC電圧が印加される。質量分析計は、さらに、ゼロ場の位置に、質量分析器の中心軸に一致するように配置される電子増倍管イオン検出器を含む。リング電極に印加されるRF電圧の所定位相において、電子衝撃イオン源によって形成されるイオンは、質量分析器の入口アパーチャに隣接して配置される加速グリッドに対する電圧パルスの印加によって、飛行時間型質量分析器にパルス入力される。飛行時間型質量分析器内へと加速されるイオンは、質量分析器の入口に向かって反射しかえされるまでに、質量分析器の長さの一部分を移動する。イオンは、次いで、質量分析器から退出し、加速グリッドを通り抜け、その後、イオン検出器によって検出される。加速グリッドに電圧パルスが印加された時刻からその後イオン検出器によってイオンが検出されるまでのイオンの飛行時間は、イオンの質量電荷比と、飛行時間型質量分析器内の場パラメータとに関係している。
【0003】
既知の飛行時間型質量分析器の問題は、1つには、イオンが効果的に質量分析器内に径方向に閉じ込められないことにある。したがって、イオン伝送効率は、相対的に低い。
【0004】
既知の飛行時間型質量分析器のもう1つの問題は、質量分析器に進入するイオンの初期速度及び初期位置が相対的に大きな広がりを有しており、ゆえに、既知の飛行時間型質量分析器の解像度が相対的に悪いことにある。
【0005】
既知の飛行時間型質量分析計のさらなる問題は、質量分析器が低圧で動作する電子衝撃イオン源との併用でのみ動作するように構成され、ゆえに、大気圧イオン化イオン源との併用で動作するようには構成されないことにある。
【0006】
したがって、改良された質量分析計及び質量分析方法を提供することが望まれている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の態様にしたがって、
複数の電極を含むイオンガイドと、
イオンをイオンガイド内に径方向に閉じ込めるように構成及び適応される第1の手段と、
時間変化する不均一な軸方向電場をイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って印加するように構成及び適応される第2の手段と、
を含む飛行時間型質量分析器が提供される。
【0008】
イオンガイドは、(i)多重極ロッドセット若しくはセグメント化多重極ロッドセット、(ii)イオントンネル若しくはイオンファネル、又は(iii)積層状若しくは配列状の平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極を含むことが好ましい。
【0009】
一実施形態にしたがうと、多重極ロッドセットは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、又は8を超えるロッドを含むロッドセットを含むことが好ましい。
【0010】
一実施形態にしたがうと、イオントンネル又はイオンファネルは、使用時にイオンを通過させるアパーチャを有する複数の電極又は少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100個の電極を含むことが好ましく、電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、実質的に同サイズすなわち同面積の又はサイズすなわち面積が漸進的に大きくなる及び/若しくは小さくなるアパーチャを有する。好ましくは、電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、及び(xi)>10.0mmからなる群より選択される内径すなわち内部寸法を有する。
【0011】
積層状又は配列状の平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極は、複数の又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20個の平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極を含むことが好ましく、平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、使用時にイオンが移動する平面内に概して配置される。好ましくは、平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極の少なくとも一部又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%は、AC電圧又はRF電圧を供給され、隣り合う平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極は、逆位相のAC電圧又はRF電圧を供給される。
【0012】
イオンガイドは、複数の軸方向セグメント又は少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100個の軸方向セグメントを含むことが好ましい。
【0013】
隣り合う電極間の中心間距離は、(i)<0.5mm、(ii)0.5〜1.0mm、(iii)1.0〜1.5mm、(iv)1.5〜2.0mm、(v)2.0〜2.5mm、(vi)2.5〜3.0mm、(vii)3.0〜3.5mm、(viii)3.5〜4.0mm、(ix)4.0〜4.5mm、(x)4.5〜5.0mm、(xi)5.0〜5.5mm、(xii)5.5〜6.0mm、(xiii)6.0〜6.5mm、(xiv)6.5〜7.0mm、(xv)7.0〜7.5mm、(xvi)7.5〜8.0mm、(xvii)8.0〜8.5mm、(xviii)8.5〜9.0mm、(xix)9.0〜9.5mm、(xx)9.5〜10.0mm、及び(xxi)>10.0mmからなる群より選択されることが好ましい。
【0014】
イオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、(xi)200〜220mm、(xii)220〜240mm、(xiii)240〜260mm、(xiv)260〜280mm、(xv)280〜300mm、及び(xvi)>300mmからなる群より選択される軸方向長さを有することが好ましい。
【0015】
第1の手段は、イオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込めるために、イオンガイドを構成する電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に第1のAC電圧又はRF電圧を印加するように構成及び適応される第1のAC電圧手段又はRF電圧手段を含むことが好ましい。
【0016】
第1のAC電圧手段又はRF電圧手段は、イオンガイドの電極に(i)<50V、(ii)50〜100V、(iii)100〜150V、(iv)150〜200V、(v)200〜250V、(vi)250〜300V、(vii)300〜350V、(viii)350〜400V、(ix)400〜450V、(x)450〜500V、及び(xi)>500Vからなる群より選択される最高最低振幅を有する第1のAC電圧又はRF電圧を供給するように構成及び適応されることが好ましい。
【0017】
第1のAC電圧手段又はRF電圧手段は、イオンガイドの電極に(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、及び(xxv)>10.0MHzからなる群より選択される周波数を有する第1のAC電圧又はRF電圧を供給するように構成及び適応されることが好ましい。
【0018】
隣り合う電極間又は隣り合う電極群間における第1のAC電圧又はRF電圧の位相差は、(i)>0o、(ii)1〜30o、(iii)30〜60o、(iv)60〜90o、(v)90〜120o、(vi)120〜150o、(vii)150〜180o、(viii)180o、(ix)180〜210o、(x)210〜240o、(xi)240〜270o、(xii)270〜300o、(xiii)300〜330o、及び(xiv)330〜360oからなる群より選択されることが好ましい。
【0019】
使用時に電極に印加される第1のAC電圧又はRF電圧は、使用時にイオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込める働きをする径方向の擬ポテンシャル井戸を生じさせる又は生成することが好ましい。
【0020】
第1のAC電圧又はRF電圧は、二相又は多相のAC電圧又はRF電圧を含むことが好ましい。
【0021】
一実施形態にしたがうと、第2の手段は、イオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、時間変化する非ゼロの不均一な軸方向電場を印加するように構成及び適応されることが好ましい。
【0022】
第2の手段は、電極に第2のAC電圧又はRF電圧を印加するための手段を含むことが好ましい。第2のAC電圧又はRF電圧は、単相のAC電圧又はRF電圧を含むことが好ましい。隣り合う電極間又は隣り合う電極群間における第2のAC電圧又はRF電圧の位相差は、実質的に0oであることが好ましい。
【0023】
好ましい実施形態にしたがうと、第2のAC電圧又はRF電圧は、複数の電極の少なくとも一部に跨って印加されることが好ましい。第2のAC電圧又はRF電圧は、少なくともxの電極に印加されることが好ましく、xは、(i)<10、(ii)10〜20、(iii)20〜30、(iv)30〜40、(v)40〜50、(vi)50〜60、(vii)60〜70、(viii)70〜80、(ix)80〜90、(x)90〜100、(xi)100〜150、(xii)150〜200、及び(xiii)>200からなる群より選択される。
【0024】
一動作モードにおいて、イオンガイドの軸方向長さに沿った1つ又は2つ以上の点における第2のAC電圧又はRF電圧の最大振幅は、時間によらずに実質的に一定に留まるように構成されることが好ましい。代替の一動作モードにしたがうと、イオンガイドの軸方向長さに沿った1つ又は2つ以上の点における第2のAC電圧又はRF電圧の最大振幅は、時間とともに変化、増大、又は減少するように構成されてよい。
【0025】
好ましくは、複数の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、分圧器すなわち抵抗鎖に沿った異なる点に接続される。
【0026】
第2の手段は、時間変化する軸方向電場をイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って印加するように構成及び適応されることが好ましい。軸方向電場は、イオンガイドのイオン入口領域からイオンガイドのイオン出口領域に向かう方向に、イオンガイドの長さに沿って増大又は減少することが好ましい。軸方向電場は、イオンガイドのイオン入口領域からイオンガイドのイオン出口領域に向かう方向に、イオンガイドの長さに沿って直線的又は非直線的なかたちで増大又は減少するように構成されることが好ましい。
【0027】
好ましい実施形態にしたがうと、第2の手段は、イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って軸方向にイオンを加速又は減速させるように構成及び適応されることが好ましい。
【0028】
次善の好ましい一実施形態にしたがうと、第2の手段は、1つ又は2つ以上の補助電極をさらに含んでよい。1つ又は2つ以上の補助電極は、イオンガイドを構成する複数の電極の外側に配置されることが好ましい。
【0029】
1つ又は2つ以上の補助電極は、イオンガイドのイオン入口領域からイオンガイドのイオン出口領域に向かう方向にイオンガイドの長さに沿って変化、増大、又は減少することが好ましい断面積又は断面形状を有することが好ましい。
【0030】
1つ又は2つ以上の補助電極は、軸方向にセグメント化されることが好ましい。
【0031】
一実施形態にしたがうと、1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、900〜1000、又は>1000の範囲の質量電荷比を有する一価イオンは、イオンガイドを通る(i)0〜50μs、(ii)50〜100μs、(iii)100〜150μs、(iv)150〜200μs、(v)200〜250μs、(vi)250〜300μs、(vii)300〜350μs、(viii)350〜400μs、(ix)400〜450μs、(x)450〜500μs、(xi)500〜550μs、(xii)550〜600μs、(xiii)600〜650μs、(xiv)650〜700μs、(xv)700〜750μs、(xvi)750〜800μs、(xvii)800〜850μs、(xviii)850〜900μs、(xix)900〜950μs、(xx)950〜1000μs、及び(xxi)>1000μsの範囲のドリフト時間すなわち通過時間を有する。
【0032】
一実施形態にしたがうと、1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、900〜1000、又は>1000の範囲の質量電荷比を有する一価イオンは、イオンガイドを通る(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、(xxxi)30〜35ms、(xxxii)35〜40ms、(xxxiii)40〜45ms、(xxxiv)45〜50ms、(xxxv)50〜55ms、(xxxvi)55〜60ms、(xxxvii)60〜65ms、(xxxviii)65〜70ms、(xxxix)70〜75ms、(xl)75〜80ms、(xli)80〜85ms、(xlii)85〜90ms、(xliii)90〜95ms、(xliv)95〜100ms、及び(xlv)>100msの範囲のドリフト時間すなわち通過時間を有する。
【0033】
一実施形態にしたがうと、飛行時間型質量分析器は、イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%に沿って実質的に一定のDC電圧勾配を維持するためのDC電圧手段をさらに含んでよい。
【0034】
一実施形態にしたがうと、飛行時間型質量分析器は、イオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、イオンガイドを構成する電極の少なくとも一部に1つ若しくは2つ以上の過渡DC電圧若しくは過渡DC電位又は1つ若しくは2つ以上の過渡DC電圧波形若しくは過渡DC電位波形を印加するように構成及び適応される過渡DC電圧手段をさらに含んでよい。
【0035】
一実施形態にしたがうと、飛行時間型質量分析器は、イオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、イオンガイドを構成する電極に2つ又は3つ以上の位相シフトされたAC電圧又はRF電圧を印加するように構成及び適応されるAC電圧手段又はRF電圧手段をさらに含んでよい。
【0036】
飛行時間型質量分析器は、一動作モードにおいてイオンが第1の方向に移動し、イオンガイド内において反射され、次いで第1の方向と実質的に反対であることが好ましい第2の方向に移動する、リフレクトロン飛行時間型質量分析器を含むことが好ましい。
【0037】
一動作モードにおいて、イオンは、入口電極、入口領域、又は入口アパーチャを通じてイオンガイドに進入することが好ましく、イオンガイドの長さを突っ切ることが好ましく、出口電極、出口領域、又は出口アパーチャを通じてイオンガイドから出ることが好ましい。
【0038】
一実施形態にしたがうと、イオンは、入口電極、入口領域、又は入口アパーチャから出口電極、出口領域、又は出口アパーチャへと突っ切る際に、イオンガイド内において軸方向に実質的に反射されないことが好ましい。
【0039】
一実施形態にしたがうと、イオンガイドの少なくとも一部分は、(i)>0.001ミリバール、(ii)>0.01ミリバール、(iii)>0.1ミリバール、(iv)>1ミリバール、(v)>10ミリバール、(vi)>100ミリバール、(vii)0.001〜100ミリバール、(viii)0.01〜10ミリバール、及び(ix)0.1〜1ミリバールからなる群より選択される圧力に維持されるように構成される。
【0040】
一実施形態にしたがうと、イオンガイドの少なくとも一部分は、(i)0.001〜0.005ミリバール、(ii)0.005〜0.010ミリバール、(iii)0.01〜0.05ミリバール、(iv)0.05〜0.10ミリバール、(v)0.1〜0.5ミリバール、(vi)0.5〜1.0ミリバール、(vii)1〜5ミリバール、(viii)5〜10ミリバール、(ix)10〜50ミリバール、(x)50〜100ミリバール、及び(xi)>100ミリバールからなる群より選択される圧力に維持されるように構成される。
【0041】
一動作モードにおいて、イオンは、それらのイオン移動度にしたがって実質的に分離されることなくそれらの質量電荷比にしたがって実質的に分離されることが好ましい。
【0042】
一動作モードにおいて、イオンは、それらの質量電荷比及び/又はそれらのイオン移動度にしたがって実質的に分離されることが好ましい。
【0043】
一動作モードにおいて、質量分析器は、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置として動作するように構成及び適応されることが好ましい。
【0044】
一動作モードにおいて、質量分析器は、イオンガイド内においてイオンを衝突によって冷却する又は熱運動化するように構成及び適応されることが好ましい。
【0045】
一動作モードにおいて、質量分析器は、イオン移動度分析計又はイオン移動度分離器として動作するように構成及び適応されることが好ましい。
【0046】
一動作モードにおいて、イオンは、イオンガイド内を第1の方向に通るように構成されることが好ましく、衝突、バックグラウンド、又はその他のガスは、イオンガイド内を第2の方向に流れるように構成される。第1の方向は、第2の方向と実質的に反対であってよい。あるいは、第1の方向は、第2の方向と実質的に同じ方向であってよい。
【0047】
本発明の別の一態様にしたがって、上記に開示された飛行時間型質量分析器を含む質量分析計が提供される。
【0048】
質量分析計は、加速電極、押し込み電極(pusher electrode)、引き込み電極(puller electrode)、又はグリッド電極をさらに含むことが好ましく、一動作モードにおいて、イオンは、加速電極、押し込み電極、引き込み電極、又はグリッド電極に対する電圧パルスの印加によって、イオンガイド内へと加速されることが好ましい。加速電極、押し込み電極、引き込み電極、又はグリッド電極は、イオンガイドの入口電極、入口領域、又は入口アパーチャに隣接して配置されることが好ましい。
【0049】
質量分析計は、イオンガイドの入口電極、入口領域、又は入口アパーチャに隣接して配置されるイオン検出器をさらに含むことが好ましい。あるいは、イオン検出器は、イオンガイドの出口電極、出口領域、又は出口アパーチャに隣接して配置されてよく、出口電極、出口領域、又は出口アパーチャは、入口電極、入口領域、又は入口アパーチャと反対側のイオンガイドの端に配置される。
【0050】
質量分析計は、飛行時間型質量分析器の上流及び/又は下流に配置されるさらなるイオンガイド、イオントラップ、又はイオン捕捉領域をさらに含むことが好ましい。さらなるイオンガイド、イオントラップ、又はイオン捕捉領域は、イオンを捕捉、貯蔵、又は蓄積するように、そして次いでイオンを飛行時間型質量分析器に周期的にパルス入力する又は向かわせるように構成されることが好ましい。
【0051】
一動作モードにおいて、飛行時間型質量分析器の一部を構成するイオンガイドの軸方向長さに沿った1つ又は2つ以上の地点における第2のAC電圧又はRF電圧の最大振幅は、飛行時間型質量分析器の上流及び/又は下流に配置されるさらなるイオンガイド、イオントラップ、又はイオン捕捉領域からのイオンの放出に同期化されたかたちで時間とともに変化、増大、又は減少するように構成されることが好ましい。
【0052】
質量分析計は、複数の電極を含む第2のイオンガイドをさらに含んでよい。第2のイオンガイドは、飛行時間型質量分析器の上流及び/又は下流に配置されることが好ましい。第2のイオンガイドは、(i)多重極ロッドセット若しくはセグメント化多重極ロッドセット、(ii)イオントンネル若しくはイオンファネル、又は(iii)積層状若しくは配列状の平坦電極、平板電極、若しくはメッシュ電極を含むことが好ましい。
【0053】
一実施形態にしたがうと、多重極ロッドセットは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、又は8を超えるロッドを含むロッドセットを含むことが好ましい。
【0054】
一実施形態にしたがうと、イオントンネル又はイオンファネルは、使用時にイオンを通過させるアパーチャを有する複数の電極又は少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100個の電極を含み、電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、実質的に同サイズすなわち同面積の又はサイズすなわち面積が漸進的に大きくなる及び/若しくは小さくなるアパーチャを有する。好ましくは、電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、及び(xi)>10.0mmからなる群より選択される内径すなわち内部寸法を有する。
【0055】
一実施形態にしたがうと、積層状又は配列状の平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極は、複数の又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20個の平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極を含み、平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、使用時にイオンが移動する平面内に概して配置される。好ましくは、平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極の少なくとも一部又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%は、AC電圧又はRF電圧を供給され、隣り合う平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極は、逆位相のAC電圧又はRF電圧を供給される。
【0056】
第2のイオンガイドは、複数の軸方向セグメント又は少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100個の軸方向セグメントを含むことが好ましい。
【0057】
第2のイオンガイドの隣り合う電極間の中心間距離は、(i)<0.5mm、(ii)0.5〜1.0mm、(iii)1.0〜1.5mm、(iv)1.5〜2.0mm、(v)2.0〜2.5mm、(vi)2.5〜3.0mm、(vii)3.0〜3.5mm、(viii)3.5〜4.0mm、(ix)4.0〜4.5mm、(x)4.5〜5.0mm、(xi)5.0〜5.5mm、(xii)5.5〜6.0mm、(xiii)6.0〜6.5mm、(xiv)6.5〜7.0mm、(xv)7.0〜7.5mm、(xvi)7.5〜8.0mm、(xvii)8.0〜8.5mm、(xviii)8.5〜9.0mm、(xix)9.0〜9.5mm、(xx)9.5〜10.0mm、及び(xxi)>10.0mmからなる群より選択されることが好ましい。
【0058】
第2のイオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、(xi)200〜220mm、(xii)220〜240mm、(xiii)240〜260mm、(xiv)260〜280mm、(xv)280〜300mm、及び(xvi)>300mmからなる群より選択される軸方向長さを有することが好ましい。
【0059】
一実施形態にしたがうと、質量分析器は、第2のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、第2のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%に沿って実質的に一定のDC電圧勾配を維持するためのDC電圧手段をさらに含む。
【0060】
一実施形態にしたがうと、質量分析計は、第2のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、第2のイオンガイドを構成する電極の少なくとも一部に1つ若しくは2つ以上の過渡DC電圧若しくは過渡DC電位又は1つ若しくは2つ以上の過渡DC電圧波形若しくは過渡DC電位波形を印加するように構成及び適応される過渡DC電圧手段をさらに含む。
【0061】
一実施形態にしたがうと、質量分析計は、第2のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、第2のイオンガイドを構成する電極に2つ又は3つ以上の位相シフトされたAC電圧又はRF電圧を印加するように構成及び適応されるAC電圧手段又はRF電圧手段をさらに含む。
【0062】
一実施形態にしたがうと、質量分析計は、飛行時間型質量分析器の上流及び/又は下流に配置される第2の質量分析器をさらに含む。第2の質量分析器は、(i)四重極質量分析器、(ii)2D型又は直線型の四重極質量分析器、(iii)Paul型又は3D型の四重極質量分析器、(iv)Penningトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)磁場セクタ型質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(ICR)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析器、(ix)静電型又はオービトラップ質量分析器、(x)フーリエ変換静電型又はオービトラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換質量分析器、(xii)飛行時間型質量分析器、(xiii)直交加速方式飛行時間型質量分析器、(xiv)軸方向加速方式飛行時間型質量分析器、及び(xv)ウィーンフィルタからなる群より選択されることが好ましい。
【0063】
一実施形態にしたがうと、質量分析計は、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置をさらに含む。衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置は、衝突誘起解離(CID)によってイオンを断片化するように構成及び適応されることが好ましい。代替の一実施形態にしたがうと、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置は、(i)表面誘起解離(SID)フラグメンテーション装置、(ii)電子移動解離フラグメンテーション装置、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーション装置、(iv)電子衝突又は電子衝撃解離フラグメンテーション装置、(v)光誘起解離(PID)フラグメンテーション装置、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーション装置、(vii)赤外線放射誘起解離装置、(viii)紫外線放射誘起解離装置、(ix)ノズル−スキマ界面フラグメンテーション装置、(x)インソースフラグメンテーション装置、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーション装置、(xii)熱源又は温度源フラグメンテーション装置、(xiii)電場誘起フラグメンテーション装置、(xiv)磁場誘起フラグメンテーション装置、(xv)酵素消化又は酵素分解フラグメンテーション装置、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーション装置、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーション装置、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーション装置、(xix)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーション装置、(xx)イオン−準安定分子反応フラグメンテーション装置、(xxi)イオン−準安定原子反応フラグメンテーション装置、(xxii)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−イオン反応装置、(xxiii)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−分子反応装置、(xxiv)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−原子反応装置、(xxv)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−準安定イオン反応装置、(xxvi)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−準安定分子反応装置、及び(xxvii)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−準安定原子反応装置からなる群より選択される。
【0064】
一実施形態にしたがうと、質量分析計は、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置内へとイオンを加速するように構成及び適応される加速手段をさらに含み、一動作モードにおいて、イオンの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入する際に断片化又は反応を引き起こされる。
【0065】
一実施形態にしたがうと、質量分析計は、イオンが衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入する前に通る電位差を、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入する際にイオンが実質的に断片化又は反応される相対的に高いフラグメンテーション又は反応の動作モードと、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入する際に断片化又は反応されるイオンが大幅に少ない又は実質的にない相対的に低いフラグメンテーション又は反応の動作モードとの間で切り替える又は繰り返し切り替えるように構成及び適応される制御システムをさらに含む。相対的に高いフラグメンテーション又は反応の動作モードにおいて、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入するイオンは、(i)≧10V、(ii)≧20V、(iii)≧30V、(iv)≧40V、(v)≧50V、(vi)≧60V、(vii)≧70V、(viii)≧80V、(ix)≧90V、(x)≧100V、(xi)≧110V、(xii)≧120V、(xiii)≧130V、(xiv)≧140V、(xv)≧150V、(xvi)≧160V、(xvii)≧170V、(xviii)≧180V、(xix)≧190V、及び(xx)≧200Vからなる群より選択される電位差を通して加速されることが好ましい。相対的に低いフラグメンテーション又は反応の動作モードにおいて、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入するイオンは、(i)≦20V、(ii)≦15V、(iii)≦10V、(iv)≦5V、及び(v)≦1Vからなる群より選択される電位差を通して加速されることが好ましい。制御システムは、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置を、1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、60ms、65ms、70ms、75ms、80ms、85ms、90ms、95ms、100ms、200ms、300ms、400ms、500ms、600ms、700ms、800ms、900ms、1s、2s、3s、4s、5s、6s、7s、8s、9s、又は10sごとに少なくとも1回づつ、相対的に高いフラグメンテーション又は反応の動作モードと相対的に低いフラグメンテーション又は反応の動作モードとの間で切り替えるように構成及び適応されることが好ましい。
【0066】
衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置は、イオンのビームを受け取り、そして任意の特定の時間において少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20の個別のイオングループ又はイオンパケットが衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置内に閉じ込められるなおかつ/又は隔離されるようにイオンのビームを変換する又は分割するように構成及び適応されることが好ましく、各イオングループ又は各イオンパケットは、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置内に形成される個別の軸方向のポテンシャル井戸内に個別に閉じ込められるなおかつ/又は隔離される。
【0067】
一実施形態にしたがうと、質量分析計は、飛行時間型質量分析器の上流及び/又は下流に配置されるさらなる質量フィルタ又は質量分析器をさらに含む。さらなる質量フィルタ又は質量分析器は、(i)四重極ロッドセット質量フィルタ、(ii)飛行時間型の質量フィルタ又は質量分析器、(iii)ウィーンフィルタ、及び(iv)磁場セクタ型の質量フィルタ又は質量分析器からなる群より選択されることが好ましい。
【0068】
一実施形態にしたがうと、質量分析計は、イオン源をさらに含むことが好ましい。イオン源は、(i)エレクトロスプレイイオン化(ESI)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(APPI)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(APCI)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(LDI)イオン源、(vi)大気圧イオン化(API)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(DIOS)イオン源、(viii)電子衝撃(EI)イオン源、(ix)化学イオン化(CI)イオン源、(x)電界イオン化(FI)イオン源、(xi)電界脱離(FD)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(FAB)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(LSIMS)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレイイオン化(DESI)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源、(xvii)サーモスプレイイオン源、(xviii)粒子ビーム(PB:)イオン源、及び(xix)フロー高速原子衝撃(フローFAB)イオン源からなる群より選択されることが好ましい。
【0069】
質量分析計は、連続イオン源又はパルスイオン源をさらに含むことが好ましい。
【0070】
本発明の別の一態様にしたがって、イオンをそれらの飛行時間にしたがって質量分析する方法であって、
複数の電極を含むイオンガイドを提供することと、
イオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込めることと、
時間変化する不均一な軸方向電場をイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って印加することと、
を含む方法が提供される。
【0071】
本発明の別の一態様にしたがって、上記に開示された方法を含む質量分析方法が提供される。
【0072】
本発明の別の一態様にしたがって、イオンをそれらの質量電荷比及び/又はイオン移動度にしたがって時間的に分離するための装置であって、
複数の電極を含むイオンガイドと、
イオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込めるように構成及び適応される第1の手段と、
時間変化する不均一な軸方向電場をイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って印加するように構成及び適応される第2の手段と、
を含む装置が提供される。
【0073】
本発明の別の一態様にしたがって、イオンをそれらの質量電荷比及び/又はイオン移動度にしたがって時間的に分離する方法であって、
複数の電極を含むイオンガイドを提供することと、
イオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込めることと、
時間変化する不均一な軸方向電場をイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って印加することと、
を含む方法が提供される。
【0074】
好ましい実施形態は、RFイオンガイドを含む質量分析計又は質量分析器に関する。RFイオンガイドは、隣り合うリング電極にAC電圧又はRF電圧を印加されるリングスタックイオンガイドを含むことが好ましい。リング電極に印加されるAC電圧又はRF電圧は、隣り合うリング電極に同じ振幅のAC電圧又はRF電圧が印加されるがそのAC電圧又はRF電圧の位相が隣り合う2つの電極間で好ましくは180度異なるようなものであることが好ましい。したがって、好ましい実施形態にしたがうと、隣り合う電極は、逆位相のAC電圧又はRF電圧を供給されることが好ましい。電極に印加されるAC電圧又はRF電圧は、その結果、イオンガイド内にイオンを径方向に包含する又は閉じ込める働きをすることが好ましい径方向の擬ポテンシャル井戸を形成又は生成させることが好ましい。
【0075】
イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部又は実質全長に沿って、補助的な、二次的な、又は付加的な不均一なAC電場、RF電場、又は時間変化電場が追加として印加又は維持されることが好ましい。結果得られる軸方向の不均一なAC電場、RF電場、又は時間変化電場は、イオンガイドの長さに沿って特定の方向にイオンを推進する、強いる、又は追い立てる働きをすることが好ましい。
【0076】
補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧、RF電圧、又は時間変化電圧は、イオンガイドを構成する好ましくは全ての電極に同位相の補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧、RF電圧、又は時間変化電圧がかかるように、すなわち電極間の位相差がゼロであるように、イオンガイドの軸方向長さに跨って印加又は維持されることが好ましい。しかしながら、補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧、RF電圧、又は時間変化電圧の振幅は、イオンガイドの長さに沿って増大又は減少するように構成されることが好ましい。好ましい一実施形態にしたがうと、振幅は、非直線的なかたちで変化する。
【0077】
軸方向の擬ポテンシャル力は、軸方向の擬ポテンシャル力の最も弱い領域にイオンが向かうように、一方向にイオンを追い立てることが好ましい。イオンにかかる軸方向の擬ポテンシャル力は、イオンの質量電荷比に反比例することが好ましい。
【0078】
好ましい実施形態にしたがうと、イオンガイドは、複数のリング電極を含む。この実施形態は、異なるAC電圧又はRF電圧を異なる軸方向セグメントに印加可能であるゆえに、とりわけ有利である。しかしながら、その他の次善の好ましい実施形態したがうと、イオンガイドは、四重極ロッドセットイオンガイド、六重極ロッドセットイオンガイド、又は八重極ロッドセットイオンガイドなど延長されたRF多重極ロッドセットイオンガイドを含んでよい。ロッドセットイオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込めるためにロッド電極にAC電圧又はRF電圧を印加する結果として軸方向の電場が発生されることはない。
【0079】
別の一実施形態にしたがうと、多重極ロッドセットイオンガイドは、軸方向にセグメント化されることによって、補助的な、二次的な、又は付加的な不AC電圧、RF電圧、又は時間変化電圧を軸方向セグメントに個別に印加可能にし、好ましくはイオンガイドの長さに沿って非ゼロで軸方向の不均一な擬ポテンシャル力が生成されるようにしてよい。
【0080】
別の一実施形態にしたがうと、軸方向の擬ポテンシャル駆動力を生み出すために、1つ又は2つ以上の補助成形電極が使用されてよい。1つ又は2つ以上の補助電極は、多重極ロッド電極の外側に配置されてよい。1つ又は2つ以上の補助電極には、イオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込めるために多重極ロッド電極に印加されることが好ましいAC電圧又はRF電圧に無関係であることが好ましい補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧、RF電圧、又は時間変化電圧が供給されてよい。1つ又は2つ以上の補助電極は、ロッド電極間の、ゼロ電位の領域に配置されてよい。1つ又は2つ以上の補助電極は、所要の軸方向の場を生じるように成形されてよい。別の一実施形態にしたがうと、1つ又は2つ以上の補助電極は、振幅の異なる補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧、RF電圧、又は時間変化電圧が個々のセグメントに印加されえるように、軸方向にセグメント化されてよい。
【0081】
一実施形態にしたがうと、好ましくはイオン集団をイオンガイド内において操作する又は追い立てるとともに好ましくはイオンをイオンガイドの長さに沿ってイオンガイドを通って平行移動させる、滑らかに変化する電位又は進行波電圧若しくは進行波電位が生み出されるように、1つ又は2つ以上の補助電極に、DC電圧が追加で印加されてよい。
【0082】
別の次善の好ましい一実施形態にしたがうと、RFイオンガイドは、複数の平板電極を含むセグメント化された平板イオンガイドを含んでよい。イオンガイドを構成する平板電極は、板の面をイオンガイドの軸に平行に配置されたサンドイッチ構造に構成されてよい。イオンガイド内にイオンを閉じ込めるために、隣り合う板間に、AC電圧又はRF電圧が印加されることが好ましい。イオンガイドの異なる軸方向セグメントに対して異なるAC電圧又はRF電圧を印加可能にすることによって、イオンガイドの長さに沿って非ゼロで軸方向のAC電場又はRF電場が維持されえるように、板は、軸方向にセグメント化されることが好ましい。
【0083】
イオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込めるためにイオンガイドを構成する電極に印加されるAC又はRFの電圧又は電位は、イオンがイオンガイド内に実質的に最適なかたちで径方向に閉じ込められるように調整することができるので、本発明の様々な実施形態にしたがったイオンガイド又は質量分析器は、とりわけ有利である。イオンの径方向の閉じ込めは、イオンガイド又は質量分析器の長さに沿って軸方向の擬ポテンシャル駆動力を印加又は生成することと基本的に無関係なかたちで構成及び最適化することができる。好ましい実施形態にしたがったイオンガイド又は質量分析器は、したがって、数々の異なる応用にあわせて最適化することができる。
【0084】
本発明の様々な実施形態にしたがったイオンガイド又は質量分析器のもう1つの利点は、この好ましいイオンガイド又は質量分析器が大気圧イオン化源に結合可能であることにある。
【0085】
以下では、例示のみを目的として提示される装置構成とともに、本発明の様々な実施形態が、添付の図面を参照にしながら単なる例として説明される。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】既知のリフレクトロン飛行時間型質量分析器を示す図である。
【図2A】本発明の一実施形態にしたがった飛行時間型質量分析器を示しており、イオンは、入口電極を通じて質量分析器に出入りする様子を示す図である。
【図2B】一実施形態にしたがった質量分析器の長さに沿って軸方向の擬ポテンシャルがどのように変化するかを示す図である。
【図3A】本発明の別の一実施形態にしたがった飛行時間型質量分析器を示しており、イオンは、入口電極を通じて質量分析器に進入し、入口電極と反対側の質量分析器の端に配置された出口電極を通じて質量分析器から退出する図である。
【図3B】一実施形態にしたがった質量分析器の長さに沿って軸方向の擬ポテンシャルがどのように変化するかを示す図である。
【図4】本発明の一実施形態にしたがった質量分析計を示しており、イオンガイドを通じて直交加速方式飛行時間型質量分析器に好ましい飛行時間型質量分析器が結合されたものを示す図である。
【図5】質量分析器の長さに沿って補助的な、二次的な、又は付加的なAC電位又はRF電位が維持されたがイオンは質量分析器内に径方向に閉じ込められなかった場合について、リフレクトロン飛行時間型質量分析器に進入するものとしてモデル化された質量電荷比500を有する10個のイオンの軌道をSIMION(RTM)シミュレーションした結果を示す図である。
【図6】質量分析器の長さに沿って補助的な、二次的な、又は付加的なAC電位又はRF電位が維持されなおかつイオンが質量分析器内に径方向に閉じ込められるものとしてモデル化された場合について、リフレクトロン飛行時間型質量分析器に進入するものとしてモデル化された質量電荷比500を有する10個のイオンの軌道をSIMION(RTM)シミュレーションした結果を示す図である。
【図7】イオンが質量分析器内に径方向に閉じ込められ、なおかつ補助的な、二次的な、又は付加的なAC電位又はRF電位が質量分析器の長さに沿って維持されるものとしてモデル化され、なおかつ補助的な、二次的な、又は付加的なAC電位又はRF電位の振幅が時間の関数として増大するものとしてモデル化された場合について、最初から飛行時間型質量分析器内に存在しているものとしてモデル化された質量電荷比500を有する5個のイオンの軌道をSIMION(RTM)シミュレーションした結果を示す図である。
【図8】図7に関連して開示されたように最初から飛行時間型分析器内に存在しているものとしてシミュレーションされた、異なる質量電荷比を有するイオンについて、それらのイオンの到着時間を質量電荷比の関数として示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0087】
電子衝撃イオン源とリフレクトロン飛行時間型質量分析器とを含む既知の質量分析計が、例示のみを目的として図1を参照にして説明される。質量分析器は、抵抗鎖2を通じてRF電源及びDC電源の両方に相互接続される一連のリング電極1を含む。抵抗鎖は、所定の電極に印加される電位を次式で与えられるように構成される。
【0088】
【数1】

ここで、z0は、イオンガイド又は飛行時間型質量分析器の全長であり、r0は、各リング電極の内半径であり、Vdcは、印加されるDC電圧の振幅であり、Vacは、印加されるAC電圧の振幅であり、Ωは、印加されるAC電圧の振動の周波数である。
【0089】
イオンを生成する電子衝撃(EI)イオン源は、低圧領域内に配置される。イオン源によって生成されるイオンの一部は、飛行時間型質量分析器の入口電極1a又は入口アパーチャに隣接する領域3内に存在する。イオン源によって形成されるイオンは、飛行時間型質量分析器の入口電極1a又は入口アパーチャに隣接して配置される加速グリッド4に対する電圧パルスの印加によって、飛行時間型質量分析器内へと周期的に加速される。イオンは、質量分析器にパルス入力され、質量分析器の長さに沿って移動し始める。イオンは、イオンガイド又は飛行時間型質量分析器の反対側の端に近づき始めるにつれて、(イオンガイド又は質量分析器の長さに沿って維持される)軸方向DC電圧勾配と、やはりイオンガイド又は質量分析器の長さに沿って維持される時間平均されたすなわち擬似的なポテンシャル力との組み合わせによって、イオンガイド又は質量分析器の入口電極1a及び入口アパーチャに向けて反射しかえされる。軸方向の擬ポテンシャル力は、イオンガイド又は質量分析器の長さに跨ってAC電圧又はRF電圧が印加される結果として生じる。イオンは、入口電極1aを通じてイオンガイド又は質量分析器から退出し、そしてその後、イオン検出器5によって検出される。イオン検出器5は、イオンガイド又は質量分析器の中心軸と同軸上に配置される。イオン検出器5にイオンが到着する時間は、イオンの質量電荷比と、イオンガイド又は質量分析器の場パラメータとに関係している。イオンは、相対的に低圧に維持されるイオンガイド又は質量分析器の長さを突っ切る際に、イオンガイド又は質量分析器内に径方向に閉じ込められない。
【0090】
図2Aは、本発明の一実施形態にしたがったリフレクトロン飛行時間型のイオンガイド又は質量分析器7を示している。イオンガイド又は質量分析器7は、使用時にイオンを通過させることが好ましいアパーチャを有する一連の複数のリング電極1又は電極を含むことが好ましい。電極1は、二相のAC電源又はRF電源6に接続されることが好ましい。隣り合う電極1は、二相のAC電源又はRF電源6の逆位相に接続されることが好ましい。その結果、好ましくは、イオンガイド又は質量分析器7内にイオンを径方向に閉じ込めるように機能する又はそのような働きをすることが好ましい径方向の擬ポテンシャル井戸が、イオンガイド又は質量分析器7内に生成される、すなわち生み出される。これは、イオンを中に径方向に閉じ込めない既知の飛行時間型質量分析器と対照的である。イオンガイド又は質量分析器7を構成する電極1に対する二相のAC電圧又はRF電圧の印加は、イオンガイド又は質量分析器7の長さに沿って、一連の軸方向の擬ポテンシャルコルゲーションが形成される又は生み出される結果になることが好ましい。軸方向の擬ポテンシャルコルゲーションは、相対的に小さい振幅を有することが好ましく、いかなる軸方向駆動場も軸方向駆動力も存在しない場合に、イオンガイド又は質量分析器7内を前方に通過する少なくとも一部のイオンを減速させる又は実質的に停止させる効果を有してよい。この効果は、緩衝ガスの存在下でとりわけ顕著であろう。
【0091】
本発明の好ましい実施形態にしたがうと、補助的な、二次的な、又は付加的な振動するAC電圧又はRF電圧が、イオンガイド又は質量分析器7に跨って印加されることが好ましい。補助的な、二次的な、又は付加的な振動するAC電圧又はRF電圧は、単相電圧であることが好ましい。補助的な、二次的な、又は付加的な振動するAC電圧又はRF電圧の最大振幅は、イオンガイド又は質量分析器7の軸方向長さに沿って変化することが好ましい。一実施形態にしたがうと、補助的な、二次的な、又は付加的な振動するAC電圧又はRF電圧の最大振幅は、イオンガイド又は質量分析器7の軸方向長さに沿って、図2Bに示されるように非直線的なかたちで変化してよい。
【0092】
特定の電極1又はイオンガイド若しくは質量分析器7の特定の要素に印加される補助的な、二次的な、又は付加的な振動するAC電位又はRF電位Vnの一般式は、次式によって記述されてよい。
【0093】
【数2】

ここで、nは、電極の添数であり、f(n)は、その特定の電極についての振動の振幅を記述する関数であり、σは、補助的な、二次的な、又は付加的な振動するAC電位又はRF電位の変調の周波数である。
【0094】
もし、f(n)によって記述される補助的な、二次的な、又は付加的な振動するAC電位又はRF電位の最大振幅が、イオンガイド又は質量分析器7の入口電極1aからイオンガイド又は質量分析器7の反対側の端へと遠ざかるにつれて図2Bに示されるような非直線的なかたちで増大するならば、イオンガイド又は質量分析器7の軸方向長さに沿って、質量電荷比に依存する擬ポテンシャル傾斜が形成される、生み出される、又は存在することになる。擬ポテンシャル傾斜は、イオンガイド又は質量分析器7内にイオンを径方向に閉じ込めるために電極1に二相のAC電圧又はRF電圧を印加する結果として生じることが好ましい相対的に低振幅で規則正しい軸方向の擬ポテンシャルコルゲーションに重ね合わされることが好ましい。
【0095】
軸方向の擬ポテンシャル傾斜は、イオンガイド又は質量分析器7の長さに沿って、軸方向の擬ポテンシャル力の相対的に弱い領域に向かうように、すなわちイオンガイド又は質量分析器7の入口電極1a及び入口アパーチャに戻るように、イオンを推進する、方向付ける、又は追い立てる効果を有することが好ましい。イオンにかかる軸方向の擬ポテンシャル傾斜の大きさは、イオンの質量電荷比に反比例することが好ましい。
【0096】
好ましい実施形態にしたがうと、イオンを生成するイオン源は、電子衝撃イオン源に限定されず、パルスイオン源又は連続イオン源を含んでよい。一実施形態にしたがうと、イオン源からのイオンは、イオンガイド又は質量分析器7の入口電極1a及び入口アパーチャに隣接して配置されることが好ましい直交加速領域3に到着するように構成されてよい。直交加速領域3に到着するイオンは、連続的なイオン流を含んでよい、又は離散的な一連のイオンパケットにグループ分けされてよい。
【0097】
イオンは、直交加速領域3に到着するにつれて、加速グリッド4に対する電圧パルスの印加によって、イオンガイド又は質量分析器7内へと周期的に直交加速されることが好ましい。加速グリッド4は、直交加速領域3に隣接して配置されることが好ましく、また、イオンガイド又は質量分析器7に通じる入口電極1a及び入口アパーチャにごく接近していることが好ましい。イオンガイド又は質量分析器7に注入されるイオンは、イオンガイド又は質量分析器7の長さの一部分を突っ切らされることが好ましい。イオンは、次いで、軸方向の擬ポテンシャル傾斜によって入口電極1a及び入口アパーチャに向けて反射しかえされることが好ましい。イオンは、次いで、入口電極1a及び入口アパーチャを通じてイオンガイド又は質量分析器7から退出して加速グリッド4を通り抜けることが好ましい。イオンは、次いで、イオンガイド又は質量分析器7の中心軸と同軸上に配置されることが好ましいイオン検出器5によって検出されることが好ましい。イオン検出器5に到着するイオンの時間は、記録されることが好ましく、その到着時間は、実質的に直線的なかたちでイオンの質量電荷比とイオンガイド又は質量分析器7の場パラメータとに関係していることが好ましい。
【0098】
イオンは、イオンガイド又は質量分析器7を突っ切るにつれて、イオンガイド又は質量分析器7の電極1に対する二相のAC電圧又はRF電圧の印加の結果として生じることが好ましい径方向の擬ポテンシャル井戸によって、イオンガイド又は質量分析器7内に径方向に内包される又は閉じ込められることが好ましい。
【0099】
本発明の好ましい実施形態にしたがったイオンガイド又は質量分析器7は、大気圧イオン化イオン源を含む様々に異なるイオン化源と併用されるか又はそのようなイオン化源に結合されるかしてよい。大気圧イオン化イオン源を好ましいイオンガイド又は質量分析器7に結合できる能力は、とりわけ有利である。
【0100】
一実施形態にしたがうと、径方向に閉じ込めるための擬ポテンシャルの振幅又は強度は、軸方向の擬ポテンシャル傾斜の振幅又は強度と実質的に無関係に調整されてよい。したがって、イオンガイド又は質量分析器7は、イオンが好ましくは最適なかたちで径方向に閉じ込められると同時にイオンが好ましくは効率的でなおかつ最適なかたちでイオンガイド又は質量分析器7の長さに沿ってその中を通って運ばれそれらの質量電荷比にしたがって分離されるように構成されることが好ましい。
【0101】
本発明の別の一実施形態にしたがったイオンガイド又は飛行時間型質量分析器7が図3Aに示されている。この実施形態にしたがうと、イオンを中で反射させないイオンガイド又は質量分析器7が提供される。その代わり、イオンは、入口電極1a及び入口アパーチャを通じてイオンガイド又は質量分析器7に進入することが好ましい。イオンは、イオンガイド又は質量分析器7の長さを突っ切ることが好ましく、次いで、入口電極1a及び入口アパーチャと反対側のイオンガイド又は質量分析器7の端に配置されることが好ましい出口電極1b又は出口アパーチャを通じてイオンガイド又は質量分析器7から退出することが好ましい。イオン検出器5は、出口電極1b又は出口アパーチャに隣接して配置されることが好ましい。したがって、直交加速領域3は、イオン検出器5と反対側のイオンガイド又は質量分析器7の端に配置されることが好ましい。
【0102】
隣り合う電極が好ましくは逆位相のAC又はRFの電圧又は電位に接続又は維持されるように、イオンガイド又は質量分析器7を構成する電極1に、二相のAC又はRFの電圧又は電位が印加されることが好ましい。その結果、イオンは、径方向の擬ポテンシャル井戸によってイオンガイド又は質量分析器7内に径方向に閉じ込められることが好ましい。イオンガイド又は質量分析器7の長さに跨って、補助的な、二次的な、又は付加的な、駆動用の軸方向のAC電位又はRF電位が印加又は維持されることが好ましい。駆動用の軸方向のAC電位又はRF電位は、イオンガイド又は質量分析器7の入口領域、入口電極1a、又は入口アパーチャからイオンガイド又は質量分析器7の出口領域、出口電極1b、又は出口アパーチャに向けてイオンガイド又は質量分析器7の長さに沿ってイオンを推進する、方向付ける、又は追い立てる働きをすることが好ましい。
【0103】
直交加速領域3内に存在するイオンは、加速電極4に対する電圧パルスの印加によって、時刻T0において、イオンガイド又は質量分析器7にパルス入力されることが好ましい。加速電極4は、イオンガイド又は質量分析器7の入口電極1a又は入口アパーチャに接近しなおかつ隣接するように配置されることが好ましい。電極1に印加されることが好ましい補助的な、二次的な、又は付加的なAC電位又はRF電位は、最初、相対的に低い又はゼロの振幅を有するように構成されてよい。続く時刻T1(T1>T0)において、イオンがイオンガイド又は質量分析器7に進入すると、補助的な、二次的な、又は付加的な振動するAC電位又はRF電位の大きさ又は振幅は、相対的に低い又はゼロの振幅から最大の値又は振幅へと増大される又は切り替えられることが好ましい。
【0104】
一実施形態にしたがうと、二次的な、又は付加的な振動するAC電位又はRF電位の最大振幅は、それが好ましくはイオンガイド又は質量分析器7の入口領域、入口電極1a、又は入口アパーチャからイオンガイド又は質量分析器7の出口領域、出口電極1b、又は出口アパーチャに向かってイオンガイド又は質量分析器7の長さに沿って減少するようなかたちでイオンガイド又は質量分析器7の長さに沿って変化するように構成されることが好ましい。軸方向の擬ポテンシャルは、例えば図3Bに示されるように、非直線的なかたちで減少してよい。軸方向の擬ポテンシャル傾斜は、質量電荷比に依存することが好ましい。軸方向の擬ポテンシャル傾斜は、イオンガイド又は質量分析器7の電極1にAC電源又はRF電源6からの二相のAC電圧又はRF電圧を印加する結果として生じる相対的に低振幅の軸方向の擬ポテンシャルコルゲーションに重ね合わされることが好ましい。二相のAC電圧又はRF電圧は、イオンガイド又は質量分析器7内にイオンを径方向に閉じ込める働きをすることが好ましい径方向の擬ポテンシャル井戸を生成するために、電極1に印加されることが好ましい。軸方向の擬ポテンシャル傾斜は、イオンガイド又は質量分析器7の入口領域、入口電極1a、又は入口アパーチャからイオンガイド又は質量分析器7の出口領域、出口電極1b、又は出口アパーチャに向かってイオンガイド又は質量分析器7の長さに沿ってイオンを推進する、方向付ける、又は追い立てる働きをすることが好ましい。
【0105】
イオンにかかる軸方向の擬ポテンシャル傾斜の大きさは、イオンの質量電荷比に反比例することが好ましい。イオンガイド又は質量分析器7内にイオンを径方向に閉じ込めるために電極1に二相のAC電圧又はRF電圧6を印加する結果として生じる規則正しい軸方向の擬ポテンシャルコルゲーションの深さもやはり、イオンの質量電荷比に反比例することが好ましい。一実施形態にしたがうと、イオンガイド又は質量分析器7の長さに沿ってイオンを推進する、方向付ける、又は追い立てることが好ましい軸方向電場は、イオンの質量電荷比に関係なく全てのイオンについて、軸方向の擬ポテンシャルコルゲーションの深さと一致されてよい。
【0106】
出口電極1b又は出口アパーチャを通じてイオンガイド又は質量分析器7から出現してその後イオン検出器5に突き当たるイオンの到着時間は、記録されることが好ましい。イオン検出器5は、イオンガイド又は質量分析器7の出口電極1bに隣接して配置されることが好ましい。イオン検出器5に到着するイオンの時間は、イオンの質量電荷比と、イオンガイド又は質量分析器7の場パラメータとに関係していることが好ましい。
【0107】
イオンガイド又は質量分析器7の長さを突っ切るにつれて、イオンは、隣り合う電極が逆位相に維持されるようにイオンガイド又は質量分析器7の電極1にAC電圧又はRF電圧を印加することによって形成又は生成されることが好ましい径方向の擬ポテンシャル井戸によって、イオンガイド又は質量分析器7内に径方向に内包されることが好ましい。
【0108】
好ましいイオンガイド又は質量分析器7を通るイオンの飛行時間は、次式によって記述されることが好ましい。
【0109】
【数3】

ここで、qは、電子電荷であり、mは、イオンの質量であり、Cは、イオンが移動する距離に関係した定数であり、V*は、時間平均された軸方向の電位差すなわち擬ポテンシャルの差である。
【0110】
擬ポテンシャルは、次式によって記述されてよい。
【0111】
【数4】

ここで、E(z)は、印加される振動電圧の最大値に対応する軸方向の電場を記述しており、σは、変調の周波数である。
【0112】
上記の式(3)で与えられた飛行時間は、式(4)をもとにして次式に書き直せることがわかる。
【0113】
【数5】

【0114】
質量分析器の質量分解能R*を表す式は、式(5)の微分によって得られる。
【0115】
【数6】

【0116】
上記の式(6)で与えられる好ましいイオンガイド又は質量分析器7の分解能は、次式(7)で与えられるDCポテンシャル内で加速されるイオンについての関係式とは異なる。
【0117】
【数7】

【0118】
また、好ましい実施形態にしたがった擬ポテンシャル駆動力は、正イオンにも負イオンにも等しく作用し、イオンが正電荷を持つか負電荷を持つかに関係なく同じ方向にイオンを追い立てる。これは、イオンガイドにイオンを通らせるために静的電位又はDC電位が使用され、正イオンがDC電位によって負イオンと反対方向に加速される装置構成と対照的である。
【0119】
もし、好ましいイオンガイド又は質量分析器7に緩衝ガスが導入される場合は、イオンガイド又は質量分析器7を通るイオンの飛行時間は、少なくとも一部には、イオンの移動度に依存するようになるであろう。イオンの移動度は、イオンの断面積、緩衝ガス数密度、イオンの電荷、イオンの質量、ガス分子の質量、及び温度の関数である。
【0120】
好ましい実施形態にしたがった、異なる質量電荷比及び断面を有するイオンのイオンガイド又は質量分析器7内における分離を左右する様々なパラメータ及び関係は、緩衝ガスを通るイオンを加速するためにDC電位が用いられる従来のイオン移動度ドリフト管に適用されるものよりも複雑である。ドリフト管の長さに沿って直線的なDC電場が維持される既知のイオン移動度ドリフト管の場合は、イオンの運動方程式は、次式で表される。
【0121】
【数8】

ここで、Eは、場定数であり、λは、イオンの断面積、ガス数密度、断面積、及び温度に関係した抗力項である。
【0122】
最終速度uに達するようにイオンがドリフト管内において十分な衝突を経た場合を考えると、次のようになる。
【0123】
【数9】

【0124】
所定の長さLを有するドリフト管について、電荷q及び移動度λを有するイオンのドリフト時間Dtは、次式で与えられる。
【0125】
【数10】

【0126】
好ましい実施形態にしたがって、イオンに軸方向の擬ポテンシャル駆動力V*(上記の式(4)を参照せよ)がかかる場合は、上記の式(10)は、次のように変更される。
【0127】
【数11】

ここで、Aは、軸方向の擬ポテンシャルの場定数である。
【0128】
ドリフト時間Dt*は、同じ電荷qを有するイオンについて、そのイオンの移動度λ及び質量mの両方に比例することがわかる。
【0129】
図4は、好ましいイオンガイド又は質量分析器7が直交加速方式飛行時間型の質量分析器又は質量分析計10の上流に配置される本発明の一実施形態を示している。イオン源からのイオンは、好ましいイオンガイド又は質量分析器7の上流に配置されることが好ましいイオントラップ又はイオン捕捉領域8内に蓄積されることが好ましい。イオンは、ゲート電極8aに印加される電位又は電圧を交番させることによって、イオントラップ又はイオン捕捉領域8からパルス出力されて好ましいイオンガイド又は質量分析器7に入ることが好ましい。ゲート電極8aは、イオントラップ又はイオン捕捉領域8の下流になおかつ好ましいイオンガイド又は質量分析器7の上流に配置されることが好ましい。
【0130】
好ましいイオンガイド又は質量分析器7の電極に印加されることが好ましい補助的な、二次的な、又は付加的な軸方向のAC又はRFの電圧又は電位の大きさは、時刻T0において、相対的に低い又はゼロであることが好ましい。続く時刻T1(T1>T0)において、好ましいイオンガイド又は質量分析器7にイオンが進入すると、補助的な、二次的な、又は付加的なAC又はRFの電圧又は電位の大きさ又は振幅は、最大値に増大されることが好ましい。
【0131】
一実施形態にしたがうと、補助的な、二次的な、又は付加的なAC又はRFの電圧又は電位の最大振幅は、好ましいイオンガイド又は質量分析器7の入口領域、入口電極、又は入口アパーチャから好ましいイオンガイド又は質量分析器7の出口領域、出口電極、又は出口アパーチャに向かって非直線的なかたちで減少することが好ましい。上述のように、好ましいイオンガイド又は質量分析器7を通るイオンの通過時間は、イオンの質量電荷比と、イオンガイド又は質量分析器7の場パラメータとに関係していることが好ましい。
【0132】
一実施形態にしたがって、好ましいイオンガイド又は質量分析器7の下流に、進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドが配置されてよい。進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドは、好ましいイオンガイド又は質量分析器7から出力される又は出現するイオンをサンプリングするように構成されることが好ましい。好ましいイオンガイド又は質量分析器7からは、任意の瞬間において、制限された又は相対的に狭い範囲の質量電荷比を有するイオンが出現することが好ましい。任意の瞬間に出現するイオンは、次いで、進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドの長さに沿って生み出され次いで平行移動されることが好ましいいくつかの軸方向ポテンシャル井戸の1つに受け取られることが好ましい。進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドの長さに沿って、好ましくは1つ又は2つ以上の軸方向ポテンシャル井戸が連続的に運ばれる又は平行移動されるように、進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドの電極には、1つ若しくは2つ以上の過渡DC電圧若しくは過渡DC電位又は1つ若しくは2つ以上の過渡DC電圧波形若しくは過渡DC電位波形が印加されることが好ましい。軸方向ポテンシャル井戸が進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドの下流側の端に到達するにつれて、進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドの長さに沿って平行移動された軸方向ポテンシャル井戸からは、イオンが放出されることが好ましい。
【0133】
進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドから放出されるイオンは、進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドの下流に配置されることが好ましい直交加速方式飛行時間型質量分析器10に移動する又はそれに向かって前方に伝送されることが好ましい。直交加速方式飛行時間型質量分析器10の抽出電極又は押し込み電極及び/若しくは引き込み電極10aには、直交抽出パルス又は直交抽出電圧が周期的に印加されることが好ましい。直交抽出パルス又は直交抽出電圧は、進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドからのイオンの放出に実質的に同期化されたかたちで印加されることが好ましい。この実施形態にしたがうと、進行波イオンガイド9又は第2のイオンガイドの軸方向ポテンシャル井戸から放出されるイオンは、飛行時間型質量分析器10の直交加速領域へと伝送されることが好ましく、次いで、飛行時間型質量分析器10のドリフト領域内へと実質的に最適なかたちで直交加速される。
【0134】
一実施形態にしたがって、好ましいイオンガイド又は質量分析器7に緩衝ガスが導入されてよい。この実施形態にしたがうと、好ましいイオンガイド又は質量分析器7からのイオンの出力は、少なくとも一部には、緩衝ガス内におけるイオンの移動度に関係していてよい(式(11)を参照せよ)。
【0135】
図5は、SIMION(RTM)イオン光学系ソフトウェアを使用してモデル化された、イオンガイド又は質量分析器7内におけるイオンの軌道を示している。イオンガイド又は質量分析器7は、内接半径を2.5mmに設定された27個のリング電極又は環状電極11を含むものとしてモデル化された。リング電極又は環状電極11は、各自0.5mmの厚さを有し、隣り合う電極11間に1mmの間隔を有するものとしてモデル化された。イオンガイド又は質量分析器7のいずれの端も、環状の端平板電極12,13を提供されるものとしてモデル化された。環状の端平板電極12,13は、1mmの内半径を有するものとしてモデル化され、接地電位に設定又は維持されるものとしてモデル化された。
【0136】
隣り合う電極が同位相のAC電圧又はRF電圧に維持されるように、補助的な、二次的な、又は付加的なAC又はRFの電圧又は電位が、電極11に印加されるものとしてモデル化された。補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧又はRF電圧の振幅は、イオンガイド又は質量分析器7の長さに沿って変化するものとしてモデル化された。n個のリング電極の各自に印加される補助的な、二次的な、又は付加的なAC又はRFの電圧又は電位の振幅Vax(n)は、以下の一般的関係にしたがうものとしてモデル化された。
【0137】
【数12】

【0138】
ここで、V0は、電極#27に印加される補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧又はRF電圧の最大ピーク振幅であり、σは、印加される補助的な、二次的な、又は付加的なAC又はRFの電圧又は電位の振動の周波数である。
【0139】
上記の式(12)で与えられた関係は、駆動用の軸方向の擬ポテンシャルの大きさがイオンガイド又は質量分析器7の長さに沿って直線的に変化するように構成されるように選択された。しかしながら、その他の実施形態にしたがうと、軸方向の擬ポテンシャルは、イオンガイド又は質量分析器7の長さに沿って別のかたちで変化するように構成されてよい。
【0140】
上記の式(12)において言及された最大振幅V0は、800Vに設定された。補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧又はRF電圧の振動周波数σは、1MHzに設定された。
【0141】
質量電荷比500を各自有する10個のイオンの軌道がシミュレーションされた。各イオンは、1eVの初期エネルギを有するように構成され、これらのイオンは、初期開始位置及び初期開始軌道の広がりを有するように構成された。シミュレーションでは、ガス無しのモデルが使用された。図5に結果を示されたこのシミュレーションの場合は、イオンは、イオンガイド又は質量分析器7内に径方向に閉じ込められなかった(すなわち、二相のAC電圧又はRF電圧が電極11に印加されるものとしてモデル化されなかった)。イオンは、進入位置14からイオンガイド又は質量分析器7に進入するものとしてシミュレーションされた。イオンガイド又は質量分析器7の長さを突っ切るにつれて、イオンは、イオンガイド又は質量分析器7の中心軸から逸れる又は離れる。一部のイオンは、電極11にごく接近する。図5に示されたシミュレーションでは、イオンガイド又は質量分析器7に最初に進入するものとしてモデル化された10個のイオンのうち、4個のみが、その後、電極13を通じてイオンガイド又は質量分析器7から出現した。その他のイオンは、イオンガイド又は質量分析器7内で電極11にぶつかって、システムへと散失された。
【0142】
図6は、図5を参照にして上述されたのと同様の条件下においてモデル化されたもののイオンガイド又は質量分析器7内に径方向に閉じ込められるものとしてモデル化された10個のイオンの軌道を示している。図6に示されたシミュレーションでは、50Vのピーク振幅を有する二相のAC電圧又はRF電圧が電極11に印加されるものとしてモデル化された。二相のAC電圧又はRF電圧の周波数は、1MHzに設定された。シミュレーションでは、ガス無しのモデルが使用された。図6からは、イオンがイオンガイド又は質量分析器7内に径方向に閉じ込められることが明らかである。イオンは、径方向に閉じ込めるためのRF電圧が電極11に印加されなかった場合よりも効率良くイオンガイド又は質量分析器7の中心軸に閉じ込められた。この例では、進入位置14からイオンガイド又は質量分析器7に最初に進入した10個全てのイオンが、その後、イオンガイド又は質量分析器7から退出し、ゆえに検出可能であった。
【0143】
図7は、イオンがイオンガイド又は質量分析器7内に径方向に閉じ込められるものとしてモデル化され、なおかつ補助的な、二次的な、又は付加的なAC又はRFの電圧又は電位が各リング電極11に印加されるものとしてモデル化された、本発明の異なる一実施形態にしたがったシミュレーションの結果を示している。この実施形態にしたがうと、補助的な、二次的な、又は付加的なAC又はRFの電圧又は電位は、時間とともに増大するものとしてモデル化された。
【0144】
イオンを径方向に閉じ込めるために電極11に印加された二相のAC電圧又はRF電圧のピーク振幅は、200Vに設定され、1MHzの周波数を有していた。隣り合うリング電極は、逆位相の二相AC電圧又は二相RF電圧に維持された。補助的な、二次的な、又は付加的なAC電位又はRF電位は、隣り合う電極11に同位相の補助的な、二次的な、又は付加的なAC電位又はRF電位がかかるようにモデル化された。補助的な、二次的な、又は付加的なAC電位又はRF電位の振幅は、軸方向変位及び時間の両方の関数としてイオンガイド又は質量分析器7の長さに沿って変化するように構成された。n個の電極の各自に印加される補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧又はRF電圧の振幅Vax(n)は、一定期間の間にゼロ振幅から最大振幅に引き上げられ、以下の関係式にしたがうように構成された。
【0145】
【数13】

【0146】
ここで、V0は、電極#27(図7を参照せよ)に印加される補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧又はRF電圧のピーク振幅であり、σは、印加される電圧の振動の周波数である。
【0147】
図7にモデル化されたシミュレーションにおいて、ピーク振幅V0は、900Vに設定され、補助的な、二次的な、又は付加的なAC電圧又はRF電圧の振動周波数σは、0.5MHzに設定された。出口レンズ又は出口電極1aに印加される電圧は、−2Vに設定された。
【0148】
質量電荷比500を有する5個のイオンが、好ましいイオンガイド又は質量分析器7内に最初から存在して位置15にあるものとしてモデル化された。好ましいイオンガイド又は質量分析器7内において1×10-2ミリバールの圧力で存在しているものとしてモデル化されたヘリウム緩衝ガスをシミュレーションするために、剛体球衝突ガスモデルが使用された。
【0149】
緩衝ガスによって冷却されたガスは、最初、イオンガイド又は質量分析器7内にイオンを径方向に閉じ込めるためにリング電極11に二相のAC又はRFの電圧又は電位を印加した結果として生じる軸方向の擬ポテンシャルコルゲーションの1つの中に捕捉された。駆動する用の軸方向のRF電位が時間とともに引き上げられる又は増大されるにつれて、イオンは、好ましくは、イオンガイド又は質量分析器7に沿ってその中を通って出口電極1aに向かって駆動された。
【0150】
図8は、図7との関連でモデル化及び上述された、好ましいイオンガイド又は質量分析器7を通るイオンの飛行時間のグラフを示している。図8は、350、400、450、500、550、600の質量電荷比を有するイオンの飛行時間を示している。各質量電荷比について、5個のイオンがモデル化された。図8からは、イオンの質量電荷比と飛行時間との間に直線的関係があることがわかる。直線的関係は、式(5)及び(11)によって上述された関係と上手く一致している。
【0151】
好ましいイオンガイド又は質量分析器7がその他のタイプの質量分析器と併用可能である又はそれに結合可能であるその他の実施形態が考えられる。例えば、好ましいイオンガイド又は質量分析器7は、走査型四重極ロッドセットタイプの質量フィルタ又は質量分析器に結合されてよい。この実施形態にしたがうと、有利なことに、質量フィルタ又は質量分析器のデューティサイクルを増大させられる。
【0152】
別の一実施形態にしたがうと、好ましいイオンガイド又は質量分析器7は、一動作モードにおいて、タンデム質量分析計内の衝突ガスセルとして使用されえる。
【0153】
イオンが擬ポテンシャル駆動力によってイオンガイド又は質量分析器7を通って追い立てられる又は推進されることが好ましい方向と実質的に反対の方向であることが好ましい方向に緩衝ガスが好ましいイオンガイド又は質量分析器7を通って流れるように構成可能であるその他の実施形態も考えられる。
【0154】
本発明は、好ましい実施形態を参照にして説明されてきたが、当業者ならば、添付の特許請求の範囲に定められた本発明の範囲から逸脱することなく各種の変更を形態及び詳細に加えられることが明らかである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電極を含むイオンガイドと、
イオンを前記イオンガイド内において径方向に閉じ込めるように構成及び適応される第1の手段と、
時間変化する不均一な軸方向電場を前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って印加するように構成及び適応される第2の手段と、
を備える飛行時間型質量分析器。
【請求項2】
請求項1に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記イオンガイドは、
(i)多重極ロッドセット若しくはセグメント化多重極ロッドセット、
(ii)イオントンネル若しくはイオンファネル、又は
(iii)積層状若しくは配列状の平坦電極、平板電極、若しくはメッシュ電極を含む、飛行時間型質量分析器。
【請求項3】
請求項2に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記多重極ロッドセットは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、又は8を超えるロッドを含むロッドセットを含む、飛行時間型質量分析器。
【請求項4】
請求項2に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記イオントンネル又はイオンファネルは、使用時にイオンを通過させるアパーチャを有する複数の電極又は少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100個の電極を含み、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、実質的に同サイズすなわち同面積の又はサイズすなわち面積が漸進的に大きくなる及び/若しくは小さくなるアパーチャを有する、飛行時間型質量分析器。
【請求項5】
請求項4に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、及び(xi)>10.0mmからなる群より選択される内径又は内部寸法を有する、飛行時間型質量分析器。
【請求項6】
請求項2に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記積層状若しくは配列状の平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極は、複数の又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20個の平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極を含み、前記平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、使用時にイオンが移動する平面内に概して配置される、飛行時間型質量分析器。
【請求項7】
請求項6に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極の少なくとも一部又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%は、AC電圧又はRF電圧を供給され、隣り合う平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極は、逆位相の前記AC電圧又はRF電圧を供給される、飛行時間型質量分析器。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記イオンガイドは、複数の軸方向セグメント又は少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100個の軸方向セグメントを含む、飛行時間型質量分析器。
【請求項9】
請求項1ないし8のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
隣り合う電極間の中心間距離は、(i)<0.5mm、(ii)0.5〜1.0mm、(iii)1.0〜1.5mm、(iv)1.5〜2.0mm、(v)2.0〜2.5mm、(vi)2.5〜3.0mm、(vii)3.0〜3.5mm、(viii)3.5〜4.0mm、(ix)4.0〜4.5mm、(x)4.5〜5.0mm、(xi)5.0〜5.5mm、(xii)5.5〜6.0mm、(xiii)6.0〜6.5mm、(xiv)6.5〜7.0mm、(xv)7.0〜7.5mm、(xvi)7.5〜8.0mm、(xvii)8.0〜8.5mm、(xviii)8.5〜9.0mm、(xix)9.0〜9.5mm、(xx)9.5〜10.0mm、及び(xxi)>10.0mmからなる群より選択される、飛行時間型質量分析器。
【請求項10】
請求項1ないし9のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記イオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、(xi)200〜220mm、(xii)220〜240mm、(xiii)240〜260mm、(xiv)260〜280mm、(xv)280〜300mm、及び(xvi)>300mmからなる群より選択される軸方向長さを有する、飛行時間型質量分析器。
【請求項11】
請求項1ないし10のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第1の手段は、前記イオンガイド内においてイオンを径方向に閉じ込めるために、前記イオンガイドを構成する電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に第1のAC電圧又はRF電圧を印加するように構成及び適応される第1のAC電圧手段又はRF電圧手段を含む、飛行時間型質量分析器。
【請求項12】
請求項11に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第1のAC電圧手段又はRF電圧手段は、前記イオンガイドの電極に(i)<50V、(ii)50〜100V、(iii)100〜150V、(iv)150〜200V、(v)200〜250V、(vi)250〜300V、(vii)300〜350V、(viii)350〜400V、(ix)400〜450V、(x)450〜500V、及び(xi)>500Vからなる群より選択される最高最低振幅を有する第1のAC電圧又はRF電圧を供給するように構成及び適応される、飛行時間型質量分析器。
【請求項13】
請求項11又は12に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第1のAC電圧手段又はRF電圧手段は、前記イオンガイドの電極に(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、及び(xxv)>10.0MHzからなる群より選択される周波数を有する第1のAC電圧又はRF電圧を供給するように構成及び適応される、飛行時間型質量分析器。
【請求項14】
請求項11、12、又は13に記載の飛行時間型質量分析器であって、
隣り合う電極間又は隣り合う電極群間における前記第1のAC電圧又はRF電圧の位相差は、(i)>0o、(ii)1〜30o、(iii)30〜60o、(iv)60〜90o、(v)90〜120o、(vi)120〜150o、(vii)150〜180o、(viii)180o、(ix)180〜210o、(x)210〜240o、(xi)240〜270o、(xii)270〜300o、(xiii)300〜330o、及び(xiv)330〜360oからなる群より選択される、飛行時間型質量分析器。
【請求項15】
請求項11ないし14のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
使用時に前記電極に印加される前記第1のAC電圧又はRF電圧は、使用時に前記イオンガイド内においてイオンを径方向に閉じ込める働きをする径方向の擬ポテンシャル井戸を生じさせる又は生成する、飛行時間型質量分析器。
【請求項16】
請求項11ないし15のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第1のAC電圧又はRF電圧は、二相若しくは多相のAC電圧又はRF電圧を含む、飛行時間型質量分析器。
【請求項17】
請求項1ないし16のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第2の手段は、前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って、時間変化する非ゼロの不均一な軸方向電場を印加するように構成及び適応される、飛行時間型質量分析器。
【請求項18】
請求項1ないし17のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第2の手段は、前記電極に第2のAC電圧又はRF電圧を印加するための手段を含む、飛行時間型質量分析器。
【請求項19】
請求項18に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第2のAC電圧又はRF電圧は、単相のAC電圧又はRF電圧を含む、飛行時間型質量分析器。
【請求項20】
請求項18又は19に記載の飛行時間型質量分析器であって、
隣り合う電極間又は隣り合う電極群間における前記第2のAC電圧又はRF電圧の位相差は、実質的に0oである、飛行時間型質量分析器。
【請求項21】
請求項18、19、又は20に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第2のAC電圧又はRF電圧は、前記複数の電極の少なくとも一部に跨って印加される、飛行時間型質量分析器。
【請求項22】
請求項18ないし21のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第2のAC電圧又はRF電圧は、少なくともx個の電極に印加され、xは、(i)<10、(ii)10〜20、(iii)20〜30、(iv)30〜40、(v)40〜50、(vi)50〜60、(vii)60〜70、(viii)70〜80、(ix)80〜90、(x)90〜100、(xi)100〜150、(xii)150〜200、及び(xiii)>200からなる群より選択される、飛行時間型質量分析器。
【請求項23】
請求項18ないし22のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
一動作モードにおいて、前記イオンガイドの軸方向長さに沿った1つ又は2つ以上の点における前記第2のAC電圧又はRF電圧の最大振幅は、時間によらずに実質的に一定に留まるように構成される、飛行時間型質量分析器。
【請求項24】
請求項18ないし22のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
一動作モードにおいて、前記イオンガイドの軸方向長さに沿った1つ又は2つ以上の点における前記第2のAC電圧又はRF電圧の最大振幅は、時間とともに変化、増大、又は減少するように構成される、飛行時間型質量分析器。
【請求項25】
請求項1ないし24のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記複数の電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、分圧器すなわち抵抗鎖に沿った異なる点に接続される、飛行時間型質量分析器。
【請求項26】
請求項1ないし25のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第2の手段は、時間変化する軸方向電場を前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って印加するように構成及び適応され、前記軸方向電場は、前記イオンガイドのイオン入口領域から前記イオンガイドのイオン出口領域に向かう方向に、前記イオンガイドの長さに沿って増大又は減少する、飛行時間型質量分析器。
【請求項27】
請求項26に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記軸方向電場は、前記イオンガイドのイオン入口領域から前記イオンガイドのイオン出口領域に向かう方向に、前記イオンガイドの長さに沿って直線的又は非直線的なかたちで増大又は減少するように構成される、飛行時間型質量分析器。
【請求項28】
請求項1ないし27のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第2の手段は、前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って軸方向にイオンを加速又は減速させるように構成及び適応される、飛行時間型質量分析器。
【請求項29】
請求項1ないし28のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第2の手段は、1つ又は2つ以上の補助電極をさらに含む、飛行時間型質量分析器。
【請求項30】
請求項29に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記1つ又は2つ以上の補助電極は、前記イオンガイドを構成する前記複数の電極の外側に配置される、飛行時間型質量分析器。
【請求項31】
請求項29又は30に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記1つ又は2つ以上の補助電極は、前記イオンガイドのイオン入口領域から前記イオンガイドのイオン出口領域に向かう方向に前記イオンガイドの長さに沿って変化、増大、又は減少する断面積又は断面形状を有する、飛行時間型質量分析器。
【請求項32】
請求項29、30、又は31に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記1つ又は2つ以上の補助電極は、軸方向にセグメント化される、飛行時間型質量分析器。
【請求項33】
請求項1ないし32のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、900〜1000、又は>1000の範囲の質量電荷比を有する一価イオンは、前記イオンガイドを通る(i)0〜50μs、(ii)50〜100μs、(iii)100〜150μs、(iv)150〜200μs、(v)200〜250μs、(vi)250〜300μs、(vii)300〜350μs、(viii)350〜400μs、(ix)400〜450μs、(x)450〜500μs、(xi)500〜550μs、(xii)550〜600μs、(xiii)600〜650μs、(xiv)650〜700μs、(xv)700〜750μs、(xvi)750〜800μs、(xvii)800〜850μs、(xviii)850〜900μs、(xix)900〜950μs、(xx)950〜1000μs、及び(xxi)>1000μsの範囲のドリフト時間すなわち通過時間を有する、飛行時間型質量分析器。
【請求項34】
請求項1ないし33のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
1〜100、100〜200、200〜300、300〜400、400〜500、500〜600、600〜700、700〜800、800〜900、900〜1000、又は>1000の範囲の質量電荷比を有する一価イオンは、前記イオンガイドを通る(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、(xxxi)30〜35ms、(xxxii)35〜40ms、(xxxiii)40〜45ms、(xxxiv)45〜50ms、(xxxv)50〜55ms、(xxxvi)55〜60ms、(xxxvii)60〜65ms、(xxxviii)65〜70ms、(xxxix)70〜75ms、(xl)75〜80ms、(xli)80〜85ms、(xlii)85〜90ms、(xliii)90〜95ms、(xliv)95〜100ms、及び(xlv)>100msの範囲のドリフト時間すなわち通過時間を有する、飛行時間型質量分析器。
【請求項35】
請求項1ないし34のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、さらに、
前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%に沿って実質的に一定のDC電圧勾配を維持するためのDC電圧手段を備える飛行時間型質量分析器。
【請求項36】
請求項1ないし35のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、さらに、
前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、前記イオンガイドを構成する電極の少なくとも一部に1つ若しくは2つ以上の過渡DC電圧若しくは過渡DC電位又は1つ若しくは2つ以上の過渡DC電圧波形若しくは過渡DC電位波形を印加するように構成及び適応される過渡DC電圧手段を備える飛行時間型質量分析器。
【請求項37】
請求項1ないし36のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、さらに、
前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、前記イオンガイドを構成する電極に2つ又は3つ以上の位相シフトされたAC電圧又はRF電圧を印加するように構成及び適応されるAC電圧手段又はRF電圧手段を備える飛行時間型質量分析器。
【請求項38】
請求項1ないし37のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記飛行時間型質量分析器は、一動作モードにおいてイオンが第1の方向に移動し、前記イオンガイド内において反射され、次いで前記第1の方向と実質的に反対である第2の方向に移動する、リフレクトロン飛行時間型質量分析器を含む、飛行時間型質量分析器。
【請求項39】
請求項1ないし38のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
一動作モードにおいて、イオンは、入口電極、入口領域、又は入口アパーチャを通じて前記イオンガイドに進入し、前記イオンガイドの長さを突っ切り、出口電極、出口領域、又は出口アパーチャを通じて前記イオンガイドから退出する、飛行時間型質量分析器。
【請求項40】
請求項39に記載の飛行時間型質量分析器であって、
イオンは、前記入口電極、入口領域、又は入口アパーチャから前記出口電極、出口領域、又は出口アパーチャへと突っ切る際に、前記イオンガイド内において軸方向に実質的に反射されない、飛行時間型質量分析器。
【請求項41】
請求項1ないし40のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記イオンガイドの少なくとも一部分は、(i)>0.001ミリバール、(ii)>0.01ミリバール、(iii)>0.1ミリバール、(iv)>1ミリバール、(v)>10ミリバール、(vi)>100ミリバール、(vii)0.001〜100ミリバール、(viii)0.01〜10ミリバール、及び(ix)0.1〜1ミリバールからなる群より選択される圧力に維持されるように構成される、飛行時間型質量分析器。
【請求項42】
請求項1ないし41のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記イオンガイドの少なくとも一部分は、(i)0.001〜0.005ミリバール、(ii)0.005〜0.010ミリバール、(iii)0.01〜0.05ミリバール、(iv)0.05〜0.10ミリバール、(v)0.1〜0.5ミリバール、(vi)0.5〜1.0ミリバール、(vii)1〜5ミリバール、(viii)5〜10ミリバール、(ix)10〜50ミリバール、(x)50〜100ミリバール、及び(xi)>100ミリバールからなる群より選択される圧力に維持されるように構成される、飛行時間型質量分析器。
【請求項43】
請求項1ないし42のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
一動作モードにおいて、イオンは、それらのイオン移動度にしたがって実質的に分離されることなくそれらの質量電荷比にしたがって実質的に分離される、飛行時間型質量分析器。
【請求項44】
請求項1ないし42のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
一動作モードにおいて、イオンは、それらの質量電荷比及び/又はそれらのイオン移動度にしたがって実質的に分離される、飛行時間型質量分析器。
【請求項45】
請求項1ないし44のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
一動作モードにおいて、前記質量分析器は、衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置として動作するように構成及び適応される、飛行時間型質量分析器。
【請求項46】
請求項1ないし45のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
一動作モードにおいて、前記質量分析器は、前記イオンガイド内においてイオンを衝突によって冷却する又は熱運動化するように構成及び適応される、飛行時間型質量分析器。
【請求項47】
請求項1ないし46のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
一動作モードにおいて、前記質量分析器は、イオン移動度分析計又はイオン移動度分離器として動作するように構成及び適応される、飛行時間型質量分析器。
【請求項48】
請求項1ないし47のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器であって、
一動作モードにおいて、イオンは、前記イオンガイド内を第1の方向に通るように構成され、衝突、バックグラウンド、又はその他のガスは、前記イオンガイド内を第2の方向に流れるように構成される、飛行時間型質量分析器。
【請求項49】
請求項48に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第1の方向は、前記第2の方向と実質的に反対である、飛行時間型質量分析器。
【請求項50】
請求項48に記載の飛行時間型質量分析器であって、
前記第1の方向は、前記第2の方向と実質的に同じ方向である、飛行時間型質量分析器。
【請求項51】
請求項1ないし50のいずれかに記載の飛行時間型質量分析器を備える質量分析計。
【請求項52】
請求項51に記載の質量分析計であって、さらに、
加速電極、押し込み電極、引き込み電極、又はグリッド電極を備え、一動作モードにおいて、イオンは、前記加速電極、押し込み電極、引き込み電極、又はグリッド電極に対する電圧パルスの印加によって、前記イオンガイド内へと加速される、質量分析計。
【請求項53】
請求項52に記載の質量分析計であって、
前記加速電極、押し込み電極、引き込み電極、又はグリッド電極は、前記イオンガイドの入口電極、入口領域、又は入口アパーチャに隣接して配置される、質量分析計。
【請求項54】
請求項51、52、又は53に記載の質量分析計であって、さらに、
前記イオンガイドの前記入口電極、入口領域、又は入口アパーチャに隣接して配置されるイオン検出器を備える質量分析計。
【請求項55】
請求項51、52、又は53に記載の質量分析計であって、さらに、
前記イオンガイドの出口電極、出口領域、又は出口アパーチャに隣接して配置されるイオン検出器を備え、前記出口電極、出口領域、又は出口アパーチャは、前記入口電極、入口領域、又は入口アパーチャと反対側の前記イオンガイドの端に配置される、質量分析計。
【請求項56】
請求項51ないし55のいずれかに記載の質量分析計であって、さらに、
前記飛行時間型質量分析器の上流及び/又は下流に配置されるさらなるイオンガイド、イオントラップ、又はイオン捕捉領域をさらに備える質量分析計。
【請求項57】
請求項56に記載の質量分析計であって、
前記さらなるイオンガイド、イオントラップ、又はイオン捕捉領域は、イオンを捕捉、貯蔵、又は蓄積するように、そして次いでイオンを前記飛行時間型質量分析器に周期的にパルス入力する又は向かわせるように構成される、質量分析計。
【請求項58】
請求項56又は57に記載の質量分析計であって、
一動作モードにおいて、前記飛行時間型質量分析器の一部を構成する前記イオンガイドの軸方向長さに沿った1つ又は2つ以上の地点における前記第2のAC電圧又はRF電圧の最大振幅は、前記飛行時間型質量分析器の上流及び/又は下流に配置される前記さらなるイオンガイド、イオントラップ、又はイオン捕捉領域からのイオンの放出に同期化されたかたちで時間とともに変化、増大、又は減少するように構成される、質量分析計。
【請求項59】
請求項51ないし58のいずれかに記載の質量分析計であって、さらに、
前記飛行時間型質量分析器の上流及び/又は下流に配置される、複数の電極を含む第2のイオンガイドを備える質量分析計。
【請求項60】
請求項59に記載の質量分析計であって、
前記第2のイオンガイドは、
(i)多重極ロッドセット若しくはセグメント化多重極ロッドセット、
(ii)イオントンネル若しくはイオンファネル、又は
(iii)積層状若しくは配列状の平坦電極、平板電極、若しくはメッシュ電極を含む、質量分析計。
【請求項61】
請求項60に記載の質量分析計であって、
前記多重極ロッドセットは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、又は8を超えるロッドを含むロッドセットを含む、質量分析計。
【請求項62】
請求項60に記載の質量分析計であって、
前記イオントンネル又はイオンファネルは、使用時にイオンを通過させるアパーチャを有する複数の電極又は少なくとも2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、若しくは100個の電極を含み、前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、実質的に同サイズすなわち同面積の又はサイズすなわち面積が漸進的に大きくなる及び/若しくは小さくなるアパーチャを有する、質量分析計。
【請求項63】
請求項62に記載の質量分析計であって、
前記電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、(i)≦1.0mm、(ii)≦2.0mm、(iii)≦3.0mm、(iv)≦4.0mm、(v)≦5.0mm、(vi)≦6.0mm、(vii)≦7.0mm、(viii)≦8.0mm、(ix)≦9.0mm、(x)≦10.0mm、及び(xi)>10.0mmからなる群より選択される内径すなわち内部寸法を有する、質量分析計。
【請求項64】
請求項60に記載の質量分析計であって、
前記積層状若しくは配列状の平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極は、複数の又は少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、若しくは20個の平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極を含み、前記平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極の少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、使用時にイオンが移動する平面内に概して配置される、質量分析計。
【請求項65】
請求項64に記載の質量分析計であって、
前記平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極の少なくとも一部又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%は、AC電圧又はRF電圧を供給され、隣り合う平坦電極、平板電極、又はメッシュ電極は、逆位相の前記AC電圧又はRF電圧を供給される、質量分析計。
【請求項66】
請求項59ないし65のいずれかに記載の質量分析計であって、
前記第2のイオンガイドは、複数の軸方向セグメント又は少なくとも5、10、15、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、若しくは100個の軸方向セグメントを含む、質量分析計。
【請求項67】
請求項59ないし66のいずれかに記載の質量分析計であって、
前記第2のイオンガイドの隣り合う電極間の中心間距離は、(i)<0.5mm、(ii)0.5〜1.0mm、(iii)1.0〜1.5mm、(iv)1.5〜2.0mm、(v)2.0〜2.5mm、(vi)2.5〜3.0mm、(vii)3.0〜3.5mm、(viii)3.5〜4.0mm、(ix)4.0〜4.5mm、(x)4.5〜5.0mm、(xi)5.0〜5.5mm、(xii)5.5〜6.0mm、(xiii)6.0〜6.5mm、(xiv)6.5〜7.0mm、(xv)7.0〜7.5mm、(xvi)7.5〜8.0mm、(xvii)8.0〜8.5mm、(xviii)8.5〜9.0mm、(xix)9.0〜9.5mm、(xx)9.5〜10.0mm、及び(xxi)>10.0mmからなる群より選択される、質量分析計。
【請求項68】
請求項59ないし67のいずれかに記載の質量分析計であって、
前記第2のイオンガイドは、(i)<20mm、(ii)20〜40mm、(iii)40〜60mm、(iv)60〜80mm、(v)80〜100mm、(vi)100〜120mm、(vii)120〜140mm、(viii)140〜160mm、(ix)160〜180mm、(x)180〜200mm、(xi)200〜220mm、(xii)220〜240mm、(xiii)240〜260mm、(xiv)260〜280mm、(xv)280〜300mm、及び(xvi)>300mmからなる群より選択される軸方向長さを有する、質量分析計。
【請求項69】
請求項59ないし68のいずれかに記載の質量分析計であって、さらに、
前記第2のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、前記第2のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分又は少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、若しくは100%に沿って実質的に一定のDC電圧勾配を維持するためのDC電圧手段を備える質量分析計。
【請求項70】
請求項59ないし69のいずれかに記載の質量分析計であって、さらに、
前記第2のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、前記第2のイオンガイドを構成する電極の少なくとも一部に1つ若しくは2つ以上の過渡DC電圧若しくは過渡DC電位又は1つ若しくは2つ以上の過渡DC電圧波形若しくは過渡DC電位波形を印加するように構成及び適応される過渡DC電圧手段を備える質量分析計。
【請求項71】
請求項59ないし70のいずれかに記載の質量分析計であって、さらに、
前記第2のイオンガイドの軸方向長さの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%に沿って少なくとも一部のイオンを追い立てるために、前記第2のイオンガイドを構成する電極に2つ又は3つ以上の位相シフトされたAC電圧又はRF電圧を印加するように構成及び適応されるAC電圧手段又はRF電圧手段を備える質量分析計。
【請求項72】
請求項51ないし71のいずれかに記載の質量分析計であって、さらに、
前記飛行時間型質量分析器の上流及び/又は下流に配置される第2の質量分析器を備える質量分析計。
【請求項73】
請求項72に記載の質量分析計であって、
前記第2の質量分析器は、(i)四重極質量分析器、(ii)2D型又は直線型の四重極質量分析器、(iii)Paul型又は3D型の四重極質量分析器、(iv)Penningトラップ質量分析器、(v)イオントラップ質量分析器、(vi)磁場セクタ型質量分析器、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(ICR)質量分析器、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(FTICR)質量分析器、(ix)静電型又はオービトラップ質量分析器、(x)フーリエ変換静電型又はオービトラップ質量分析器、(xi)フーリエ変換質量分析器、(xii)飛行時間型質量分析器、(xiii)直交加速方式飛行時間型質量分析器、(xiv)軸方向加速方式飛行時間型質量分析器、及び(xv)ウィーンフィルタからなる群より選択される、質量分析計。
【請求項74】
請求項51ないし73のいずれかに記載の質量分析計であって、さらに、
衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置を備える質量分析計。
【請求項75】
請求項74に記載の質量分析計であって、
前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置は、衝突誘起解離(CID)によってイオンを断片化するように構成及び適応される、質量分析計。
【請求項76】
請求項74に記載の質量分析計であって、
前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置は、(i)表面誘起解離(SID)フラグメンテーション装置、(ii)電子移動解離フラグメンテーション装置、(iii)電子捕獲解離フラグメンテーション装置、(iv)電子衝突又は電子衝撃解離フラグメンテーション装置、(v)光誘起解離(PID)フラグメンテーション装置、(vi)レーザ誘起解離フラグメンテーション装置、(vii)赤外線放射誘起解離装置、(viii)紫外線放射誘起解離装置、(ix)ノズル−スキマ界面フラグメンテーション装置、(x)インソースフラグメンテーション装置、(xi)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーション装置、(xii)熱源又は温度源フラグメンテーション装置、(xiii)電場誘起フラグメンテーション装置、(xiv)磁場誘起フラグメンテーション装置、(xv)酵素消化又は酵素分解フラグメンテーション装置、(xvi)イオン−イオン反応フラグメンテーション装置、(xvii)イオン−分子反応フラグメンテーション装置、(xviii)イオン−原子反応フラグメンテーション装置、(xix)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーション装置、(xx)イオン−準安定分子反応フラグメンテーション装置、(xxi)イオン−準安定原子反応フラグメンテーション装置、(xxii)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−イオン反応装置、(xxiii)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−分子反応装置、(xxiv)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−原子反応装置、(xxv)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−準安定イオン反応装置、(xxvi)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−準安定分子反応装置、及び(xxvii)イオンを反応させて付加イオン又は生成イオンを形成するためのイオン−準安定原子反応装置からなる群より選択される、質量分析計。
【請求項77】
請求項74、75、又は76に記載の質量分析計であって、さらに、
前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置内へとイオンを加速するように構成及び適応される加速手段を備え、一動作モードにおいて、前記イオンの少なくとも5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、又は100%は、前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入する際に断片化又は反応を引き起こされる、質量分析計。
【請求項78】
請求項74ないし77のいずれかに記載の質量分析計であって、さらに、
イオンが前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入する前に通る電位差を、前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入する際にイオンが実質的に断片化又は反応される相対的に高いフラグメンテーション又は反応の動作モードと、前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入する際に断片化又は反応されるイオンが大幅に少ない又は実質的にない相対的に低いフラグメンテーション又は反応の動作モードとの間で切り替える又は繰り返し切り替えるように構成及び適応される制御システムを備える質量分析計。
【請求項79】
請求項78に記載の質量分析計であって、
前記相対的に高いフラグメンテーション又は反応の動作モードにおいて、前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入するイオンは、(i)≧10V、(ii)≧20V、(iii)≧30V、(iv)≧40V、(v)≧50V、(vi)≧60V、(vii)≧70V、(viii)≧80V、(ix)≧90V、(x)≧100V、(xi)≧110V、(xii)≧120V、(xiii)≧130V、(xiv)≧140V、(xv)≧150V、(xvi)≧160V、(xvii)≧170V、(xviii)≧180V、(xix)≧190V、及び(xx)≧200Vからなる群より選択される電位差を通して加速される、質量分析計。
【請求項80】
請求項78又は79に記載の質量分析計であって、
前記相対的に低いフラグメンテーション又は反応の動作モードにおいて、前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置に進入するイオンは、(i)≦20V、(ii)≦15V、(iii)≦10V、(iv)≦5V、及び(v)≦1Vからなる群より選択される電位差を通して加速される、質量分析計。
【請求項81】
請求項78、79、又は80に記載の質量分析計であって、
前記制御システムは、前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置を、1ms、5ms、10ms、15ms、20ms、25ms、30ms、35ms、40ms、45ms、50ms、55ms、60ms、65ms、70ms、75ms、80ms、85ms、90ms、95ms、100ms、200ms、300ms、400ms、500ms、600ms、700ms、800ms、900ms、1s、2s、3s、4s、5s、6s、7s、8s、9s、又は10sごとに少なくとも1回づつ、前記相対的に高いフラグメンテーション又は反応の動作モードと前記相対的に低いフラグメンテーション又は反応の動作モードとの間で切り替えるように構成及び適応される、質量分析計。
【請求項82】
請求項74ないし81のいずれかに記載の質量分析計であって、
前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置は、イオンのビームを受け取り、そして任意の特定の時間において少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、又は20の個別のイオングループ又はイオンパケットが前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置内に閉じ込められるなおかつ/又は隔離されるように前記イオンのビームを変換する又は分割するように構成及び適応され、各イオングループ又は各イオンパケットは、前記衝突、フラグメンテーション、又は反応の装置内に形成される個別の軸方向のポテンシャル井戸内に個別に閉じ込められるなおかつ/又は隔離される、質量分析計。
【請求項83】
請求項51ないし82のいずれかに記載の質量分析計であって、さらに、
前記飛行時間型質量分析器の上流及び/又は下流に配置されるさらなる質量フィルタ又は質量分析器を備える質量分析計。
【請求項84】
請求項83に記載の質量分析計であって、
前記さらなる質量フィルタ又は質量分析器は、(i)四重極ロッドセット質量フィルタ、(ii)飛行時間型の質量フィルタ又は質量分析器、(iii)ウィーンフィルタ、及び(iv)磁場セクタ型の質量フィルタ又は質量分析器からなる群より選択される、質量分析計。
【請求項85】
請求項51ないし84のいずれかに記載の質量分析計であって、さらに、
イオン源を備える質量分析計。
【請求項86】
請求項85に記載の質量分析計であって、さらに、
(i)エレクトロスプレイイオン化(ESI)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(APPI)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(APCI)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(MALDI)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(LDI)イオン源、(vi)大気圧イオン化(API)イオン源、(vii)シリコン上脱離イオン化(DIOS)イオン源、(viii)電子衝撃(EI)イオン源、(ix)化学イオン化(CI)イオン源、(x)電界イオン化(FI)イオン源、(xi)電界脱離(FD)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(ICP)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(FAB)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(LSIMS)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレイイオン化(DESI)イオン源、(xvi)ニッケル63放射性イオン源、(xvii)サーモスプレイイオン源、(xviii)粒子ビーム(PB)イオン源、及び(xix)フロー高速原子衝撃(フローFAB)イオン源からなる群より選択されるイオン源を備える質量分析計。
【請求項87】
請求項85又は86に記載の質量分析計であって、さらに、
連続イオン源又はパルスイオン源を備える質量分析計。
【請求項88】
イオンをそれらの飛行時間にしたがって質量分析する方法であって、
複数の電極を含むイオンガイドを提供することと、
前記イオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込めることと、
時間変化する不均一な軸方向電場を前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って印加することと、
を備える方法。
【請求項89】
請求項88に記載の方法を含む質量分析方法。
【請求項90】
イオンをそれらの質量電荷比及び/又はイオン移動度にしたがって時間的に分離するための装置であって、
複数の電極を含むイオンガイドと、
前記イオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込めるように構成及び適応される第1の手段と、
時間変化する不均一な軸方向電場を前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って印加するように構成及び適応される第2の手段と、
を備える装置。
【請求項91】
イオンをそれらの質量電荷比及び/又はイオン移動度にしたがって時間的に分離する方法であって、
複数の電極を含むイオンガイドを提供することと、
前記イオンガイド内にイオンを径方向に閉じ込めることと、
時間変化する不均一な軸方向電場を前記イオンガイドの軸方向長さの少なくとも一部分に沿って印加することと、
を備える方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−511985(P2010−511985A)
【公表日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−539808(P2009−539808)
【出願日】平成19年12月10日(2007.12.10)
【国際出願番号】PCT/GB2007/004732
【国際公開番号】WO2008/068515
【国際公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【出願人】(505156282)マイクロマス・ユーケイ・リミテッド (5)
【氏名又は名称原語表記】MICROMASS UK LIMITED
【Fターム(参考)】