説明

質量分析計

【課題】
【解決手段】四重極ロッドセットイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを備える質量分析計が開示される。複数の周波数ノッチ(16a、16b、16c)を有する広帯域周波数信号(13、14、15)が四重極ロッドセットのロッドに順次印加される。ノッチ広帯域周波数信号(16a、16b、16c)により、イオンガイドから不要なイオンが共振によりまたはパラメトリックに排出される。結果として得られるイオン信号がデコンボリューションされ、質量スペクトルが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス、イオンをガイドまたは質量フィルタリングする方法、質量分析計および質量分析の方法に関する。
【背景技術】
【0002】
4つの平行なロッドを備えるRF四重極ロッドセットが公知である。隣り合うロッド間にRF電圧が印加され、RF四重極ロッドセットは、イオンガイド、質量フィルタまたは質量分析部として一般に使用される。四重極ロッドセットを用いて線形イオントラップの一部を形成することも公知であり、この線形イオントラップでは、四重極ロッドセット内にイオンを軸方向に閉じ込めるためにさらなる軸方向トラップ電位が印加される。
【0003】
4つの平行なロッドを備える四重極ロッドセットをイオンガイドとして使用し、二位相RF信号または電圧をロッドに印加することによって、イオンを実質的に質量フィルタリングすることなくイオンを移送し得る。隣り合うロッドは、それらに印加されるRF信号または電圧が逆位相となるように配置される。RF信号または電圧をロッドに印加することにより、四重極ロッドセット内にイオンを半径方向に閉じ込めるように作用する半径方向擬電位谷が生成される。4つのロッドは、同じDC電位または電圧に維持される。四重極ロッドセットイオンガイドは、実用において、質量電荷比カットオフが本来低く、イオンガイドの移送効率は、比較的高い質量電荷比において徐々に低下し得る。それにもかかわらず、この公知の四重極ロッドセットイオンガイドは、広範囲の質量電荷比を有するイオンを実質的に同時に有効に移送することが可能であると考えられ得る。
【0004】
四重極ロッドセットは、質量フィルタまたは質量分析部としても動作され得る。この構成によると、四重極ロッドセットがイオンガイドのみの動作モードで動作される場合と同様にRF信号または電圧がロッドに印加される。すなわち、隣り合うロッドに二位相RF信号または電圧の逆位相が供給される。しかし、全てのロッドを同じDC電圧または電位に維持するのではなく、隣り合うロッド間にDC電圧成分が印加または維持される。RF電圧をロッドに印加し、さらに、隣り合うロッド間のDC電位差を維持することによって、四重極ロッドセットは、明確に定義された上側および下側質量電荷比内に質量電荷比を有するイオンのみが四重極ロッドセット質量フィルタによって前方へ移送されるような質量フィルタとして機能するように構成され得る。
【0005】
質量フィルタの質量電荷比移送ウィンドウは、特定の質量電荷比を有する実質的に1種のイオンのみが四重極ロッドセット質量フィルタによって前方へ移送されるような程度に狭められ得る。質量スペクトルは、異なる質量電荷比を有するイオンを選択的かつ順次移送するようにRFおよびDC信号を時間の関数としてスキャンすることによって得ることが可能となる。
【0006】
四重極ロッドセットは、線形四重極イオントラップの一部も形成し得る。この構成によると、上記のようなイオンガイドのみのモードで動作される四重極ロッドセットイオンガイドと同様にイオンを半径方向に閉じ込めるためにRF信号または電圧がロッドに印加される。ロッドは全て同じDC電位または電圧に維持される。加えて、ロッドセット中に一旦注入されたイオンが軸方向にロッドセットを出射することを防止するために、軸方向電位障壁が四重極ロッドセットの入射口および出射口において維持される。したがって、イオンは、四重極ロッドセット内に有効にトラップされる。一旦イオンがイオントラップ内にトラップされると、所定のイオンをイオントラップから軸方向または半径方向のいずれかに質量選択的に排出するために補助AC波形がイオントラップを形成する電極に印加され得る。電極に印加される補助AC波形の周波数は、イオンをイオントラップから質量選択的に順次排出するためにスキャンされ得、それによって質量スペクトルが生成可能となる。閉じ込めRF電界におけるイオン励起のための共振または第1高調波振動数ωrは、以下によって与えられる。
【0007】
【数1】

ここで、Ωは主閉じ込めRF電圧の角周波数であり、βはマシュー安定性パラメータaおよびqを介したイオンの質量電荷比に関連するパラメータである。
【0008】
ここで、従来の四重極ロッドセット質量フィルタをさらに詳細に考察する。質量分解モードで質量フィルタを動作させることにより、単に質量フィルタをイオンガイドのみのモードまたは非分解モードで動作させるよりも特異性が良好となる。しかし、質量フィルタをスキャンして質量スペクトルを生成する場合、1つのイオン種のみが一度に移送されることになり、その他のイオンは破棄されることになる。このスキャンモードにおける四重極ロッドセット質量フィルタの効率またはデューティサイクルDCは、以下の式によって近似的に与えられる。

DC=W/(Mh−Ml) (2)

ここで、Wはピーク半値幅、Mhはスキャンにおける最高質量電荷比、Mlはスキャンにおける最低質量電荷比である。
【0009】
例えば、最高質量電荷比が900であり、最低質量電荷比が100であり、ピーク半値幅が0.5質量単位であれば、デューティサイクルDCは、1600分の1、すなわち0.0625%である。
【0010】
スキャンモードで動作中の四重極ロッドセット質量フィルタに対するデューティサイクルは非常に低いことが分かる。
【0011】
これに対し、単一の質量をモニタリングする場合、四重極ロッドセット質量フィルタの効率またはデューティサイクルは非常に高く、通常100%である。しかし、四重極ロッドセット質量フィルタが1つの対象質量から次の対象質量へと順次切り替えることによってN個の対象質量をモニタリングする必要がある場合、デューティサイクルは、典型的には、1/Nに低減する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
改良された質量フィルタデバイスを提供することが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の一態様によると、イオンをガイドまたは質量フィルタリングする方法であって、
複数の電極またはロッドを備えるイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを準備する工程と、
複数の電極またはロッドにACまたはRF電圧を印加する工程と、
複数の電極またはロッドに複数の信号を供給する工程を含み、
前記複数の信号を供給する工程が、少なくとも、
(i)、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために、複数の周波数ノッチを含む第1の信号を複数の電極またはロッドに供給し、第1のデータセットを取得する工程と、次いで
(ii)イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために、複数の周波数ノッチを含む第2の異なる信号を複数の電極またはロッドを供給し、第2のデータセットを取得する工程と、
第1のデータセットおよび/または第2のデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定する工程と
含む方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、従来の四重極ロッドセットイオンガイドを示す。
【図2】図2は、不要なイオンを共振により励起させ、半径方向に排出するために、ノッチ広帯域周波数信号が2つの対向するロッドに印加される、公知の方法で動作されるイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを示す。
【図3】図3は、不要なイオンを時間変調または変動式に共振により励起させ、半径方向に排出するために、変調されたノッチ広帯域周波数信号が2つの対向するロッドに印加される本発明の好適な実施形態に係るイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを示す。
【図4】図4は、四重極ロッドセットの2つの対向するロッドに従来の方法で印加され得るノッチ広帯域周波数信号の模式図を示す。
【図5】図5A〜図5Cは、本発明の好適な実施形態に係る四重極ロッドセットの2つの対向するロッドに順次印加され得る1組の変調されたノッチ広帯域信号の模式図を示し、本例においては、3つの質量電荷比移送ウィンドウに対応するイオン信号がデコンボリューションされる。
【図6】図6Aは、簡易な質量分析計を形成するようにイオン源とイオン検出器との間に配置される好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの模式図を示し、図6Bは、1つの質量電荷比を有するイオンを所与の時間に移送するために四重極ロッドセットの2つの対向するロッドに従来の方法で印加され得るノッチ広帯域周波数信号を示し、図6Cは、図6Bに示すノッチ広帯域周波数信号が四重極ロッドセットに印加される場合に従来の方法で生成される出力信号の模式図であり、図6Dは、図5に示すようなノッチ広帯域周波数信号が四重極ロッドセットに印加される場合に生成され得る改良された出力信号を示す。
【図7】図7Aは、タンデム四重極(三連四重極)型質量分析計形態において利用される2つの好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを示し、図7Bは、タンデム四重極飛行時間質量分析計形態において利用される好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この好適な実施形態によると、
複数の信号を供給する工程は、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の電極またはロッドにn個のさらなる信号を順次供給し、n個のさらなるデータセットを取得する工程であって、n個のさらなる信号は、それぞれ、複数の周波数ノッチを含む工程をさらに含み、
デコンボリューション、復号または復調工程は、さらなるデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量または質量電荷比を有するイオンの強度を決定する工程をさらに含み、
ここで、nは、(i)1、(ii)2、(iii)3、(iv)4、(v)5、(vi)6、(vii)7、(viii)8、(ix)9、(x)10、(xi)11、(xii)12、(xiii)13、(xiv)14、(xv)15、(xvi)16、(xvii)17、(xviii)18、(xix)19、(xx)20、(xxi)20−25、(xxii)25−30、(xxiii)30−35、(xxiv)35−40、(xxv)40−45、(xxvi)45−50、(xxvii)50−55、(xxviii)55−60、(xxix)60−65、(xxx)65−70、(xxxi)70−75、(xxxii)75−80、(xxxiii)80−85、(xxxiv)85−90、(xxxv)90−95、(xxxvi)95−100、および(xxxvii)>100からなる群から選択される。
【0016】
第1のデータセットおよび/または第2のデータセットおよび/またはさらなるデータセットは、飛行時間または質量スペクトルデータを含むのが好ましい。しかし、特定のイオンがモニタリングされ、したがって、質量電荷比がすでに分かっている場合、データセットは、強度値のみを含んでもよい。
【0017】
ACまたはRF電圧を印加する工程は、
(a)複数の電極またはロッドに二位相電圧を印加する工程であって、イオンをイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内に半径方向に閉じ込めるために、ACまたはRF電圧の逆位相が隣り合う電極またはロッドに印加される工程、および/または
(b)(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、(xi)500〜1000Vピークトゥピーク、(xii)1〜2kVピークトゥピーク、(xiii)2〜3kVピークトゥピーク、(xiv)3〜4kVピークトゥピーク、(xv)4〜5kVピークトゥピーク、(xvi)5〜6kVピークトゥピーク、(xvii)6〜7kVピークトゥピーク、(xviii)7〜8kVピークトゥピーク、(xix)8〜9kVピークトゥピーク、(xx)9〜10kVピークトゥピーク、および(xxi)>10kVピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有するACまたはRF電圧を印加する工程、および/または
(c)(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するACまたはRF電圧を印加する工程をさらに含む。
【0018】
第1の信号および/または第2の信号および/またはさらなる信号を供給する工程により、少なくともいくつかの不要なイオンがイオンガイドまたは質量フィルタデバイスから半径方向に排出されるか、あるいは実質的に減衰されるのが好ましい。
【0019】
少なくともいくつかのイオンが、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内に半径方向に実質的に閉じ込められるかトラップされることなく前方に移送されるのが好ましい。このことは、イオンがイオントラップ内に軸方向に閉じ込められるイオントラップ構成とは異なる。
【0020】
イオンガイドまたは質量フィルタデバイスを準備する工程は、四重極ロッドセットイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを準備する工程を含むのが好ましい。
【0021】
この好適な実施形態は、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内に半径方向2次電位分布または半径方向直線電界を維持する工程をさらに含むのが好ましい。
【0022】
第1の信号および/または第2の信号および/またはさらなる信号を供給する工程は、
(a)複数の電極またはロッドに広帯域周波数信号を供給する工程、および/または
(b)複数の電極またはロッドに広帯域周波数信号を供給する工程であって、第1の信号および/または第2の信号および/またはさらなる信号は、(i)<1kHz、(ii)1〜2kHz、(iii)2〜3kHz、(iv)3〜4kHz、(v)4〜5kHz、(vi)5〜6kHz、(vii)6〜7kHz、(viii)7〜8kHz、(ix)8〜9kHz、(x)9〜10kHz、(xi)10〜11kHz、(xii)11〜12kHz、(xiii)12〜13kHz、(xiv)13〜14kHz、(xv)14〜15kHz、(xvi)15〜16kHz、(xvii)16〜17kHz、(xviii)17〜18kHz、(xix)18〜19kHz、(xx)19〜20kHz、(xxi)20〜21kHz、(xxii)21〜22kHz、(xxiii)22〜23kHz、(xxiv)23〜24kHz、(xxv)24〜25kHz、(xxvi)25〜26kHz、(xxvii)26〜27kHz、(xxviii)27〜28kHz、(xxix)28〜29kHz、(xxx)29〜30kHz、および(xxxi)>30kHzの範囲のうち1つ以上から選択される1つ以上の周波数成分を含む工程、および/または
(c)双極および/または四重極波形を有する信号を供給する工程、および/または
(d)イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって使用に際して受け取られた複数のイオンの永続、共振、第1または基本高調波振動数に対応する複数の周波数成分を有する信号を供給する工程を含むのが好ましい。
【0023】
第1の信号および/または第2の信号および/またはさらなる信号は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜55、55〜60、60〜65、65〜70、70〜75、75〜80、80〜85、85〜90、90〜95、95〜100または>100個の周波数ノッチを含むのが好ましい。
【0024】
複数の周波数ノッチは、
(a)イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって前方に移送されることが所望される複数の異なる質量電荷比を有するイオンの永続、共振、第1または基本高調波振動数、および/あるいは
(b)少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜55、55〜60、60〜65、65〜70、70〜75、75〜80、80〜85、85〜90、90〜95、95〜100または>100個の異なる種の対象検体イオンの永続、共振、または第1、基本高調波振動数に対応するのが好ましい。
【0025】
第1の信号および/または第2の信号および/またはさらなる信号は、少なくともいくつかの対象検体イオンをイオンガイドまたは質量フィルタデバイスから共振によりまたはパラメトリックに励起させ、かつ/または半径方向に排出させることが実質的にないのが好ましい。
【0026】
上記好適な実施形態によると、複数の周波数ノッチに対応する周波数において、
(a)イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内のイオンが実質的に共振によりまたはパラメトリックに励起されないか、あるいは
(b)イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内のイオンが共振によりまたはパラメトリックに励起されるが、イオンがイオンガイドまたは質量フィルタデバイスから半径方向に排出されるのに十分には共振によりまたはパラメトリックにより励起されない。
【0027】
上記好適な実施形態によると、第1の信号および/または第2の信号は、
(i)M1およびM3の質量電荷比を有するイオンをイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって同時に前方へ移送させ、かつ/あるいは
(ii)M2の質量電荷比を有するイオンをイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって実質的に減衰させるか、あるいはイオンガイドまたは質量フィルタデバイスから共振によりまたはパラメトリックに排出させ(ここで、M1<M2<M3)、かつ/あるいは
(iii)M3およびM5の質量電荷比を有するイオンをイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって同時に前方へ移送させ、かつ/あるいは
(iv)M4の質量電荷比を有するイオンをイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって実質的に減衰させるか、あるいはイオンガイドまたは質量フィルタデバイスから共振によりまたはパラメトリックに排出させる(ここで、M3<M4<M5)ように構成及び適合されているのが好ましい。
【0028】
第1の信号および/または第2の信号および/またはさらなる信号は、
(a)質量電荷比移送ウィンドウ内に質量電荷比を有するイオンがイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって前方へ移送され、かつ/あるいは
(b)質量電荷比移送ウィンドウ外に質量電荷比を有するイオンがイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって実質的に減衰されるか、かつ/あるいはイオンガイドまたは質量フィルタデバイスから共振によりまたはパラメトリックに排出されるように、
イオンガイドまたは質量フィルタデバイスが、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜55、55〜60、60〜65、65〜70、70〜75、75〜80、80〜85、85〜90、90〜95、95〜100または>100個の離散したかまたは分離した同時質量電荷比移送ウィンドウを有するのが好ましい。
【0029】
離散したかまたは分離した同時質量電荷比移送ウィンドウは、実質的に重複しないか、かつ/または連続しないのが好ましい。
【0030】
上記好適な実施形態によると、
(a)1つ以上の質量電荷比移送ウィンドウの中心および/または幅は、経時的に、または(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、(xxxi)30〜40ms、(xxxii)40〜50ms、(xxxiii)50〜60ms、(xxxiv)60〜70ms、(xxxv)70〜80ms、(xxxvi)80〜90ms、(xxxvii)90〜100ms、(xxxviii)100〜200ms、(xxxix)200〜300ms、(xl)300〜400ms、(xli)400〜500ms、(xlii)500〜600ms、(xliii)600〜700ms、(xliv)700〜800ms、(xlv)800〜900、(xlvi)900〜1000ms、および(xlvii)>1sからなる群から選択される期間にわたって実質的に一定のままであるか、あるいは
(b)1つ以上の質量電荷比移送ウィンドウの中心および/または幅は、経時的に、または(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、(xxxi)30〜40ms、(xxxii)40〜50ms、(xxxiii)50〜60ms、(xxxiv)60〜70ms、(xxxv)70〜80ms、(xxxvi)80〜90ms、(xxxvii)90〜100ms、(xxxviii)100〜200ms、(xxxix)200〜300ms、(xl)300〜400ms、(xli)400〜500ms、(xlii)500〜600ms、(xliii)600〜700ms、(xliv)700〜800ms、(xlv)800〜900、(xlvi)900〜1000ms、および(xlvii)>1sからなる群から選択される期間にわたって実質的に変動および/または増加および/または低減する。
【0031】
上記好適な実施形態によると、動作モードにおいて、
(a)実質的にすべての電極またはロッドは、実質的に同じDC電位または電圧に維持されるか、
(b)イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、実質的に非分解またはイオンガイド動作モードで動作されるか、
(c)隣り合う電極またはロッド間で実質的に異なるDC電位または電圧差が維持されるか、
(d)隣り合う電極またはロッド間でDC電位または電圧差が維持されるか、
(e)対向する電極またはロッドは、実質的に同じDC電位または電圧に維持されるか、
(f)イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、分解または質量フィルタリング動作モードで動作されるか、あるいは
(g)DCおよび/またはACもしくはRF電圧の組み合わせが、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスが低域通過、帯域通過または高域通過質量フィルタリングモードで動作するように構成されるように複数の電極またはロッドに印加される。
【0032】
上記好適な実施形態によると、動作モードにおいて、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、1つ以上の質量電荷比移送ウィンドウを有し、1つ以上の質量電荷比移送ウィンドウは、z質量単位の幅を有し、ここで、zは、(i)<1、(ii)1〜2、(iii)2〜3、(iv)3〜4、(v)4〜5、(vi)5〜6、(vii)6〜7、(viii)7〜8、(ix)8〜9、(x)9〜10、(xi)10〜15、(xii)15〜20、(xiii)20〜25、(xiv)25〜30、(xv)30〜35、(xvi)35〜40、(xvii)40〜45、(xviii)45〜50、(xix)50〜60、(xx)60〜70、(xxi)70〜80、(xxii)80〜90、(xxiii)90〜100、(xxiv)100〜120、(xxv)120〜140、(xxvi)140〜160、(xxvii)160〜180、(xxviii)180〜200、(xxix)200〜250、(xxx)250〜300、(xxxi)300〜350、(xxxii)350〜400、(xxxiii)400〜450、(xxxiv)450〜500、および(xxxv)>500からなる群から選択される範囲内にある。
【0033】
上記好適な実施形態によると、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>10-2mbar、(vi)>10-3mbar、(vii)>10-4mbar、(viii)>10-5mbar、(ix)>10-6mbar、(x)<100mbar、(xi)<10mbar、(xii)<1mbar、(xiii)<0.1mbar、(xiv)<10-2mbar、(xv)<10-3mbar、(xvi)<10-4mbar、(xvii)<10-5mbar、(xviii)<10-6mbar、(xix)10〜100mbar、(xx)1〜10mbar、(xxi)0.1〜1mbar、(xxii)10-2〜10-1mbar、(xxiii)10-3〜10-2mbar、(xxiv)10-4〜10-3mbar、および(xxv)10-5〜10-4mbarの圧力に維持されるのが好ましい。
【0034】
本発明の別の態様によると、上記のような方法を含む質量分析の方法が提供される。
【0035】
本発明の別の態様によると、
イオンガイドまたは質量フィルタデバイスであって、
複数の電極またはロッドと、
ACまたはRF電圧を複数の電極またはロッドに供給するACまたはRF電圧源と、
(i)イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の電極またはロッドに複数の周波数ノッチを含む第1の信号を供給し、第1のデータセットが得られ、次いで、
(ii)イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の電極またはロッドに複数の周波数ノッチを有する第2の異なる信号を供給し、第2のデータセットが得られるように構成および適合された信号手段と、
第1のデータセットおよび/または第2のデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定するデバイスと
を備えるイオンガイドまたは質量フィルタデバイスが提供される。
【0036】
信号手段は、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために、それぞれが複数の周波数ノッチを含むn個のさらなる信号を複数の電極またはロッドに順次供給し、n個のさらなるデータセットが得られるように構成および適合され、
デコンボリューション、復号または復調デバイスは、さらなるデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量または質量電荷比を有するイオンの強度を決定するように構成および適合されているのが好ましく、
ここで、nは、(i)1、(ii)2、(iii)3、(iv)4、(v)5、(vi)6、(vii)7、(viii)8、(ix)9、(x)10、(xi)11、(xii)12、(xiii)13、(xiv)14、(xv)15、(xvi)16、(xvii)17、(xviii)18、(xix)19、(xx)20、(xxi)20〜25、(xxii)25〜30、(xxiii)30〜35、(xxiv)35〜40、(xxv)40〜45、(xxvi)45〜50、(xxvii)50〜55、(xxviii)55〜60、(xxix)60〜65、(xxx)65〜70、(xxxi)70〜75、(xxxii)75〜80、(xxxiii)80〜85、(xxxiv)85〜90、(xxxv)90〜95、(xxxvi)95〜100、および(xxxvii)>100からなる群から選択される。
【0037】
本発明の別の態様によると、上述のようなイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを備える質量分析計が提供される。
【0038】
上記好適な実施形態によると、質量分析計は、
(a)(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、および(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択されるイオン源、ならびに/あるいは
(b)イオンガイドまたは質量フィルタデバイスの上流および/または下流に配置されるイオン移動度分光計もしくはセパレータおよび/またはフィールド非対称イオン移動度分光計、ならびに/あるいは
(c)イオンガイドまたは質量フィルタデバイスの上流および/または下流に配置されるイオントラップまたはイオントラップ領域、ならびに/あるいは
(d)イオンガイドまたは質量フィルタデバイスの上流および/または下流に配置される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定イオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定分子反応デバイス、および(xxviii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定原子反応デバイスからなる群から選択されるフラグメンテーションまたは反応デバイス、ならびに/あるいは
(e)(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場型質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速式飛行時間質量分析部、および(xiv)直線加速式飛行時間質量分析部からなる群から選択される質量分析部をさらに備えるのが好ましい。
【0039】
特に好適な実施形態によると、上記好適な実施形態によるイオンガイドまたは質量フィルタデバイスと組み合わせてエレクトロスプレーまたは他の大気圧イオン源が準備される。好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスから現れる親イオンをフラグメンテーションするために、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスが上記好適なイオンガイドまたは質量フィルタの下流に準備されるのが好ましい。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、衝突誘起解離フラグメンテーションデバイスを含むのが好ましい。好適な実施形態によると、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの下流に直交加速式飛行時間質量分析部が準備され得る。別の好適な実施形態によると、第2の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスが、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの下流に準備され得る。第2の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの下流にイオン検出器が好ましくは準備される。
【0040】
本発明の別の態様によると、
広帯域周波数信号を変調するか、変動させるか、あるいは合成する工程であって、それぞれが2つ以上の周波数ノッチを有する複数の信号がイオンガイドまたは質量フィルタデバイスに順次生成されかつ/または印加される工程と、
イオンガイドまたは質量フィルタによって移送されるイオンをイオン検出器を用いて検出する工程と、
複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定するために、イオン検出器によって出力される信号を復調、デコンボリューション、復号または分解(deconstructing)する工程と
を含むイオンをガイドまたは質量フィルタリングする方法が提供される。
【0041】
復調、デコンボリューション、復号または分解工程は、位相同期増幅器および/またはニューラルネットワークおよび/または復号用ルーチンもしくはアルゴリズムおよび/またはウェーブレットに基づく変調技術を使用する工程を含むのが好ましい。
【0042】
本発明の別の態様によると、
イオンガイドまたは質量フィルタデバイスと、
広帯域周波数信号を変調するか、変動させるか、あるいは合成するデバイスであって、それぞれが2つ以上の周波数ノッチを有する複数の信号がイオンガイドまたは質量フィルタデバイスに順次生成されかつ/または印加されるデバイスと、
イオンガイドまたは質量フィルタによって移送されるイオンを検出するイオン検出器と、
複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定するために、イオン検出器によって出力される信号を復調、デコンボリューション、復号または分解(deconstructing)するデバイスとを備える装置が提供される。
【0043】
復調、デコンボリューション、復号または分解デバイスは、位相同期増幅器および/またはニューラルネットワークおよび/または復号用ルーチンもしくはアルゴリズムおよび/またはウェーブレットに基づく変調器を備えるのが好ましい。
【0044】
本発明の別の態様によると、
第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスと、
第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの下流に配置される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの下流に配置される第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスとを備える装置であって、
第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、
(a)第1の複数の電極またはロッドと、
(b)第1の複数の電極またはロッドに第1のACまたはRF電圧を供給する第1のACまたはRF電圧源と、
(c)(i)第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の周波数ノッチを含む第1の信号を複数の第1の電極またはロッドに供給し、次いで、(ii)第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の周波数ノッチを含む第2の異なる信号を複数の第1の電極またはロッドに供給するように構成および適合された信号手段とを含み、
第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、
(a)第2の複数の電極またはロッドと、
(b)第2の複数の電極またはロッドに第2のACまたはRF電圧を供給する第2のACまたはRF電圧源と、
(c)(i)不要なイオンを第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の第2の電極またはロッドに複数の周波数ノッチを含む第3の信号を供給し、第1のデータセットが得られ、次いで、(ii)第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の周波数ノッチを含む第4の異なる信号を複数の第2の電極またはロッドに供給し、第2のデータセットが得られるように構成および適合された信号手段と、
第1のデータセットおよび/または第2のデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定するデバイスとを備える装置が提供される。
【0045】
第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの下流にイオン検出器または質量分析部が準備されるのが好ましい。質量分析部は、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場型質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速式飛行時間質量分析部、および(xiv)直線加速式飛行時間質量分析部からなる群から選択されるのが好ましい。
【0046】
イオン源が好ましくは準備され、上記のイオン源の群から選択されるのが好ましい。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離 (「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定イオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定分子反応デバイス、および(xxviii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定原子反応デバイス形成するからなる群から選択されるのが好ましい。衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイスが特に好ましい。
【0047】
本発明の別の態様によると、第1の複数の電極またはロッドを備える第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを準備する工程と、
第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの下流に衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを準備する工程と、
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの下流に、第2の複数の電極またはロッドを備える第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを準備する工程と、
第1の複数の電極またはロッドに第1のACまたはRF電圧源を供給する工程と、
不要なイオンを第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の第1の電極またはロッドに複数の周波数ノッチを含む第1の信号を供給し、次いで、第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の周波数ノッチを含む第2の異なる信号を複数の第1の電極またはロッドに供給する工程と、
第2の複数の電極またはロッドに第2のACまたはRF電圧源を供給する工程と、
第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の周波数ノッチを含む第3の信号を複数の第2の電極またはロッドに供給し、第1のデータセットを得、次いで、不要なイオンを第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の第2の電極またはロッドに複数の周波数ノッチを含む第4の異なる信号を供給し、第2のデータセットを得る工程と、
第1のデータセットおよび/または第2のデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定する工程とを含む方法が提供される。
【0048】
第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの下流にイオン検出器または質量分析部が準備されるのが好ましい。質量分析部は、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場型質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速式飛行時間質量分析部、および(xiv)直線加速式飛行時間質量分析部からなる群から選択されるのが好ましい。
【0049】
イオン源が好ましくは準備され、上記のイオン源の群から選択されるのが好ましい。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離 (「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定イオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定分子反応デバイス、および(xxviii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定原子反応デバイス形成するからなる群から選択されるのが好ましい。衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイスが特に好ましい。
【0050】
本発明の別の態様によると、広帯域信号を生成する方法であって、
好ましくは実質的にコヒーレントな周波数のスペクトルを合成する工程と、
第1の時間t1において、第1の複数の周波数または周波数成分を、完全に除去するか、実質的に除去するかまたは減衰させるか、あるいは除外する工程と、
第2の後の時間t2において、第2の異なる複数の周波数または周波数成分を、完全に除去するか、実質的に除去するかまたは減衰させるか、あるいは除外する工程とを含み、
時間遅延t2−t1は、(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、(xxxi)30〜40ms、(xxxii)40〜50ms、(xxxiii)50〜60ms、(xxxiv)60〜70ms、(xxxv)70〜80ms、(xxxvi)80〜90ms、(xxxvii)90〜100ms、(xxxviii)100〜200ms、(xxxix)200〜300ms、(xl)300〜400ms、(xli)400〜500ms、(xlii)500〜600ms、(xliii)600〜700ms、(xliv)700〜800ms、(xlv)800〜900、(xlvi)900〜1000ms、および(xlvii)>1sからなる群から選択される方法が提供される。
【0051】
上記好適な実施形態によると、時間遅延t2−t1は、好ましくは1〜20msの範囲、さらに好ましくは1〜10msの範囲にある。上記方法は、合成された広帯域信号を、上記に示され、好ましくは上述の実施形態のいずれかによる質量分析計の一部を形成するイオンガイドまたは質量フィルタデバイスに印加する工程をさらに含むのが好ましい。
【0052】
本発明の別の態様によると、広帯域信号を生成する装置であって、
好ましくは実質的にコヒーレントな周波数のスペクトルを合成する合成器と、
第1の時間t1において、第1の複数の周波数または周波数成分を、完全に除去するか、実質的に除去するかまたは減衰させるか、あるいは除外するように構成および適合されたデバイスと、
第2の後の時間t2において、第2の異なる複数の周波数または周波数成分を、完全に除去するか、実質的に除去するかまたは減衰させるか、あるいは除外する構成および適合されたデバイスとを含み、
時間遅延t2−t1は、(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、(xxxi)30〜40ms、(xxxii)40〜50ms、(xxxiii)50〜60ms、(xxxiv)60〜70ms、(xxxv)70〜80ms、(xxxvi)80〜90ms、(xxxvii)90〜100ms、(xxxviii)100〜200ms、(xxxix)200〜300ms、(xl)300〜400ms、(xli)400〜500ms、(xlii)500〜600ms、(xliii)600〜700ms、(xliv)700〜800ms、(xlv)800〜900、(xlvi)900〜1000ms、および(xlvii)>1sからなる群から選択される装置が提供される。
【0053】
上記好適な実施形態によると、時間遅延t2−t1は、好ましくは1〜20msの範囲、さらに好ましくは1〜10msの範囲にある。上記方法は、合成された広帯域信号を、上記に示され、好ましくは上述の実施形態のいずれかによる質量分析計の一部を形成するイオンガイドまたは質量フィルタデバイスに印加する工程を好ましくはさらに含む。
【0054】
これより前に示した好適な実施形態は、広帯域信号を生成するための直前に示した方法および装置にも等しく適用が可能である。
【0055】
この好適な実施形態は、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス、質量分析計、イオンをガイドまたは質量フィルタリングする方法および質量分析の方法に関する。この好適な実施形態は、特に、四重極ロッドセットイオンガイドのロッドにノッチ広帯域周波数信号が好ましくは印加される四重極ロッドセットイオンガイドに関する。ノッチ広帯域周波数信号は、イオンガイド中に存在する検体イオンをイオンガイドを通って移送し、一方選択されない不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させ半径方向に排出することにより、実質的に除去するように印加されるのが好ましい。ノッチ広帯域周波数信号は、対象イオンが変調パターンに応じて移送または排出されるように公知の所定の方法で周波数変調されるのが好ましい。所与の時間において、複数のイオン種が好ましくは移送され、かつ同時に検出され得る。変調された検出器出力は、好ましくは、変調パターンを把握することによってデコンボリューションまた復号される。この構成により、好ましくは、従来の構成を用いて得られるものを超える大きく向上した効率またはデューティサイクルが実現される。
【0056】
一実施形態によると、多重極ロッドセットと、多重極ロッドセットの隣り合うロッド間にACまたはRF電圧を供給する第1のACまたはRF電圧源と、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の電極またはロッドに信号を供給するように構成および適合された第2のAC電圧または信号手段と、第2のAC電圧または信号を公知の所定のまたは予測可能な方法で変調する手段とを備えるイオンガイドまたは質量フィルタデバイスが提供される。
【0057】
好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内にイオンを閉じ込めるために複数の電極またはロッドに印加されるACまたはRF電圧は、好ましくは、第1のACまたはRF電圧を含む。イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから共振によりまたはパラメトリックにイオンを励起させるために複数の電極またはロッドに印加される信号は、好ましくは、第2の異なるAC電圧を含む。
【0058】
信号手段は、好ましくは、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスから不要なイオンを半径方向に排出するように構成および適合されている。イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内にイオンを軸方向に実質的に閉じ込めることもトラップすることもなくイオンを前方に移送するように構成および適合されているのが好ましく、すなわち、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、イオンがイオントラップ内に軸方向に閉じ込められるイオントラップとは異なる。
【0059】
イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、好ましくは、四重極イオンガイドまたは質量フィルタデバイスを備える。四重極イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、好ましくは、4つのロッドを備える四重極ロッドセットを備える。四重極ロッドセットの各ロッドは、好ましくは、長軸を有し、4つのロッドの各々の長軸は、好ましくは、互いに実質的に平行である。また、ロッドは、好ましくは、互いに等距離である。イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、半径方向2次電位分布または半径方向直線電界を維持するように構成されているのが好ましい。また、隣り合うロッド間にDC電圧を印加し、それにより、イオン移送の質量電荷比ウィンドウに対して、設定可能なイオン移送のための高質量カットオフおよび低質量カットオフを課してもよい。
【0060】
信号手段は、広帯域周波数信号を好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを備える複数の電極またはロッドに供給するように構成および適合されているのが好ましい。
【0061】
信号手段は、好ましくは、双極および/または四重極波形を有する信号を供給するように構成および適合されている。2つの対向するロッド間に双極波形信号が好ましくは印加され、この信号は、好ましくは、使用時に好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって受け取られる複数のイオンの永続、共振、第1または基本高調波振動数に好ましくは対応する複数の周波数成分を有するのが好ましい。もしくは、またはさらに、隣り合うロッド間に四重極波形信号が印加され得る。四重極波形信号は、使用時に好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって受け取られる複数のイオンの永続、共振、第1または基本高調波振動数の倍数または約数に好ましくは対応する複数の周波数成分を有するのが好ましい。四重極波形信号は、使用時に好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって受け取られる複数のイオンの永続、共振、第1または基本高調波振動数の好ましくは2倍に対応する複数の周波数成分を有するように構成および適合されているのが好ましい。
【0062】
信号手段は、好ましくは、2つ以上の周波数ノッチを有する信号を供給するように構成および適合されている。動作モードによっては、供給される信号は、少なくとも2個、好ましくはそれより多くの周波数ノッチを含むのが好ましい。2つ以上の周波数ノッチは、好ましくは、好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって移送されることが所望される1つ以上のイオンまたはイオン種の永続、共振、第1もしくは基本高調波振動数、またはその倍数もしくは約数に対応する。
【0063】
信号手段は、好ましくは、質量電荷比移送ウィンドウ内に質量電荷比を有するイオンが好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって前方へ移送され、かつ質量電荷比移送ウィンドウ外に質量電荷比を有するイオンが、好ましくは共振によりまたはパラメトリックに好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスから励起され、排出されるような1つまたは複数の離散したかまたは分離した同時質量電荷比移送ウィンドウを好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスが有するように構成および適合されている。
【0064】
信号手段は、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスが少なくとも2つの、好ましくは2つよりも多い離散したかまたは分離した同時質量電荷比移送ウィンドウを有するように構成および適合されているのが好ましい。離散したかまたは分離した同時質量電荷比移送ウィンドウは、好ましくは、実質的に重複しないか、および/または連続しない。2つの隣接する質量電荷比移送ウィンドウの中間の質量電荷比を有するイオンは、好ましくは、共振によりまたはパラメトリックに好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスから励起され、排出される。
【0065】
一実施形態によると、第1の動作モードにおいて、実質的にすべての電極またはロッドは、好ましくは、実質的に同じDC電位または電圧に維持される。この実施形態によると、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、好ましくは、実質的に非分解またはイオンガイドのみの動作モードで動作される。
【0066】
一実施形態によると、第2のAC信号手段は、好ましくは、好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの対向するかあるいは隣り合わない電極またはロッドに信号を印加するように構成および適合されている。
【0067】
別の実施形態によると、第2のAC信号手段は、好ましくは、好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの隣り合う電極またはロッドに信号を印加するように構成および適合されている。
【0068】
この好適な実施形態によると、所与の質量電荷比移送ウィンドウのいずれかの中心もしくは中間および/または幅は、好ましくは、少なくとも最短時間にわたって実質的に一定のままである。最短時間は、好ましくは、最高質量電荷比移送ウィンドウに対応する質量電荷比を有するイオンまたは選択されたイオンが好適なデバイス(および任意の後続要素)を通過する飛行時間である。
【0069】
一実施形態によると、第2のAC信号手段に印加される変調パターンは、所与の取得サイクル中、少なくとも1回、好ましくは多くの回数繰り返すのが好ましい。
【0070】
この好適な実施形態によると、信号手段に印加される変調パターンにより、好ましくは、取得期間の少なくともX%にわたってアクティブであるかまたは移送モードにある所与の質量電荷比移送ウィンドウが得られ、ここで、Xは、(i)>1(ii)>2(ii)>5(iii)>10(iv)>20(v)>30(vi)>40(vii)>50(viii)>60(ix)>70(x)>80(xi)>90である。
【0071】
一実施形態によると、第2のAC信号手段に印加される変調パターンは、好ましくは、選択された質量電荷比移送ウィンドウの数と少なくとも同じ数の離散パターンを有する。
【0072】
別の実施形態によると、第2のAC信号手段に印加される変調パターンは、好ましくは、選択された質量電荷比移送ウィンドウの数より多い数の離散パターンを有する。
【0073】
一実施形態によると、第2のAC信号手段に印加される変調パターンは、疑似乱数発生器によって提供されるか、あるいは制御され得る。
【0074】
一実施形態によると、第2のAC信号手段に印加される変調パターンは、ウェーブレットに基づく変調技術によって提供され得る。
【0075】
一実施形態によると、第2のAC信号手段に印加される変調パターンにより、各質量電荷比移送ウィンドウが固有かつ独立した周波数で変調され得る。
【0076】
一実施形態によると、第2のAC信号手段に印加される変調パターンは、イオンがデバイスを通る飛行時間を考慮し得る。
【0077】
本明細書に示されない同様の他の変調方法が当業者によって使用され得る。
【0078】
一実施形態によると、変調された検出器信号は、位相同期増幅器を用いてデコンボリューションまたは復号され得る。
【0079】
一実施形態によると、変調された検出器信号は、ニューラルネットワークを用いてデコンボリューションまたは復号され得る。
【0080】
一実施形態によると、変調された検出器信号は、デコンボリューションまたは復号用ルーチンに基づくソフトウェアまたはファームウェアを用いてデコンボリューションまたは復号され得る。
【0081】
一実施形態によると、変調された検出器信号は、ウェーブレットに基づく変調技術によってデコンボリューションまたは復号され得る。
【0082】
一実施形態によると、変調された検出器信号は、イオンがデバイスを通る飛行時間を考慮したアルゴリズムを用いてデコンボリューションまたは復号され得る。
【0083】
他の種々の変調またはデコンボリューションまたは復号方法が使用され得る。
【0084】
本発明の別の態様によると、上述のようなイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを備える質量分析計が提供される。質量分析計は、好ましくは、好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの上流および/または下流に配置される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスをさらに備える。衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスは、好ましくは、(i)多重極ロッドセットもしくはセグメント化多重極ロッドセット、(ii)イオントンネルもしくはイオンファネル、または(iii)積層もしくは配列された平面状、板状、もしくは網状の電極を備える。多重極ロッドセットは、好ましくは、四重極ロッドセット、六重極ロッドセット、八重極ロッドセット、または8つより多くのロッドを含むロッドセットを備える。
【0085】
質量分析計は、好ましくはさらにイオン源を備える。イオン源は、好ましくは、エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、および(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択される。
【0086】
イオン源は、パルス状または連続イオン源を含み得る。
【0087】
質量分析計は、好ましくは、さらなる質量分析部をさらに備える。質量分析部は、好ましくは、(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場型質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)フーリエ変換静電イオントラップ(「オービトラップ」)質量分析部からなる群から選択される。別の実施形態によると、質量分析部は、1つ以上の飛行時間質量分析部を含み得る。例えば、直交加速式または直線加速式飛行時間質量分析部が準備され得る。
【0088】
この好適な実施形態によると、質量分析計は、好ましくは、正に帯電したイオンおよび負に帯電したイオンを検出する手段あるいはイオン検出器を含み得る。
【0089】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の種々の実施形態を、単に例示を目的として示す構成と共に、あくまでも例として説明する。
【0090】
従来の四重極ロッドセットイオンガイド1を図1に示す。四重極ロッドセットは、4つの平行なロッド2a、2bを備える。4つの全てのロッド2a、2bは、実質的に同じDC電圧または電位に維持される。二位相RF電圧源3は、隣り合うロッドに逆位相のRF電圧が印加されるが、正反対側のロッド2a、2bに同じ位相のRF電圧が印加されるように、ロッド2a、2bに接続または供給される。ロッド2a、2bに印加されたRF電圧は、イオンをイオンガイド1内に半径方向に閉じ込めるように作用する疑似電位谷を生成する。この構成において、イオンは、イオンガイド内に軸方向には閉じ込められない。
【0091】
図1に示すような従来のRFのみの四重極イオンガイド1は、イオンガイドの入射口で受け取られた実質的に全てのイオンを同時に移送する。あるいは、四重極ロッドセット1は、隣り合うロッド間のDC電位差を維持することによって質量フィルタまたは質量分析部として動作され得る。質量フィルタまたは質量分析部として動作される場合、所定の質量電荷比移送ウィンドウ内に質量電荷比を有するイオンのみが安定した軌跡を描き、質量フィルタを通って移送される。したがって、質量電荷比移送ウィンドウ外に質量電荷比を有するイオンは、軌跡が不安定となり、質量フィルタから排出され、系から失われる。
【0092】
別の公知の四重極イオンガイドまたは質量フィルタデバイス6を図2に示す。この構成によると、ノッチ広帯域周波数信号7が対向するロッド対2a、2bに印加される。ノッチ広帯域周波数信号7は、AC波形を含む。広帯域周波数信号7を対向するロッド対2a、2bに印加することによって、不要なイオンが共振により励起され、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスから半径方向に排出される。
【0093】
広帯域周波数信号7に備えられるノッチは、広帯域周波数信号に存在しないか、または欠落したいくつかの周波数または周波数成分があるように配置される。したがって、印加された広帯域周波数信号7に存在しないかまたは欠落した周波数に実質的に対応する共振または第1高調波振動数を有するイオンは、共振により励起されない。したがってこれらのイオンは、印加された広帯域周波数信号によって排出されず、よって、これらのイオンは、広帯域周波数信号7をロッド2a、2bに印加することに実質的に影響されない。したがって、これらのイオンは、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって前方へ移送される。
【0094】
本発明の好適な一実施形態に係るイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6を図3に示す。イオンガイドまたは質量フィルタデバイス6は、好ましくは、4つの平行なロッド2a、2bを含む四重極ロッドセットを備え、図2に示すような従来の四重極ロッドセットと同様のものである。好ましくは、ノッチ広帯域周波数信号7が対向するロッド対2a、2bに印加される。しかし、この好適な実施形態によると、周波数ノッチまたは欠落周波数を印加または含有は、好ましくは、変調デバイスまたは制御器10によって決定される。
【0095】
好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6によって前方へ移送させることが所望され、かつノッチ広帯域周波数信号の印加によって実質的に影響されないイオンは、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス6の入射口において受け取られたイオン8のサブセットまたは低減されたセットを構成する。
【0096】
従来のノッチ広帯域周波数信号11を図4に示す。従来のノッチ広帯域周波数信号11は、例えば、3つの周波数ノッチ12a、l2b、l2cを有し得る。この図において、イオンガイドまたは質量フィルタによって移送される質量電荷比値の全範囲もまた、隣り合うロッド間のDC電圧の印加によって制限されている。したがって、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス中に受け取られたすべてのイオンは、周波数ノッチ12a、12b、12cのうち1つに対応する共振周波数を有するイオンを除いて、共振により励起され、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスから半径方向に排出される。周波数ノッチ12a、12b、12cのうち1つに対応する質量電荷比を有するイオンは、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスから半径方向に排出されず、よって、イオンガイドまたは質量フィルタデバイスの出射口へと前方へ移送される。
【0097】
図3を参照すると、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス6を通って前方へ移送されるイオン9のサブセットは、イオンガイドまたは質量フィルタデバイス6を出射し、そして、イオン検出器(図示せず)によって検出され得る。あるいは、イオンは、質量分析計の別のデバイスまたは構成部品へ移送され得る。イオンのサブセット9がイオン検出器へ直接移送される場合、イオンのサブセット9の各構成要素の相対強度が決定され得る。
【0098】
図5は、本発明の好適な実施形態に係るイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6に順次印加され得る連続した3つの異なるノッチ広帯域周波数信号13、14、15の例を示す。3つのノッチ広帯域周波数信号13、14、15は、好ましくは、それぞれ、3つの異なる周波数ノッチ16a、16b、16cのうち2つを有する。3つ周波数ノッチ16a、16b、16cは、好ましくは、3つの質量電荷比ウィンドウΔM1、ΔM2およびΔM3に対応し、これらは、好ましくは、3つの質量電荷比M1、M2およびM3をそれぞれ中心としている。好ましくは、3つの周波数ノッチ16a、16b、16cのうち2つの異なる組み合わせが3つの広帯域周波数信号13、14、15のそれぞれにおいて形成される。各信号に存在する周波数ノッチのパターンは、好ましくは、変調制御デバイス10によって予め定められ、形成される。
【0099】
3つの広帯域周波数信号13、14、15のそれぞれの全範囲は、好ましくは、好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6によって好ましくは受け取られるイオンビーム8に存在する全ての不要なイオンが半径方向に好ましくは排出されるが、対象検体イオンの少なくともいくつかが実質的に保持されかつ移送される程度に十分広い。各広帯域周波数信号13、14、15について、イオンが前方へ移送される質量電荷比のセットは、好ましくは、対象イオンの全ての質量電荷比のサブセットを構成する。
【0100】
上記好適な実施形態によると、3つの広帯域周波数信号13、14、15のそれぞれは、イオンのサブセット中の最大質量電荷比を有するイオンの少なくともいくつかが好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6を横切り、好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6の下流に好ましくは配置されるイオン検出器に到達することを可能にするのに十分な実質的に一定の期間にわたって印加されるのが好ましい。
【0101】
一実施形態によると、好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6は、図6Aに示すように、イオン源17の下流かつイオン検出器18の上流に準備または配置され得る。
【0102】
以下に、質量電荷比M1、M2およびM3を有する3つの対象検体イオンの測定が所望される実験について説明の目的でのみ検討する。公知の手法によると、四重極ロッドセット質量フィルタ6は、3つの異なる質量電荷比値M1、M2およびM3のそれぞれを有するイオンがイオン検出器に順次移送されるような3つの異なる設定のシーケンスを周期的に繰り返すように構成され得る。各設定にかかった時間が同じである場合、各質量電荷比のイオンは、等しい期間、したがって、全測定時間の実質的に3分の1にわたって移送される。
【0103】
この公知の手法によると、図6Bに示すようなノッチ広帯域周波数信号が四重極ロッドセットイオンガイド6に順次印加され得る。周波数ノッチ16a、16b、16cは、3つの質量電荷比ウィンドウΔM1、ΔM2およびΔM3に対応し、これらは、3つの質量電荷比M1、M2およびM3をそれぞれ中心としている。3つの別個のノッチ広帯域周波数信号19、20、21のそれぞれは、1つの周波数ノッチ16a、16b、16cを含み、各ノッチ広帯域周波数信号は、一定の期間ΔTにわたって印加され得る。3つの異なるノッチ広帯域周波数信号19、20、21を順次印加することによるイオン検出器からの出力は、例えば、図6Cに示すような出力となり得る。ここで、M1に対する信号の強度はIM1、M2に対する信号の強度はIM2、M3に対する信号の強度はIM3であり、IM1=I、IM2=2I、およびIM3=Iである。各質量電荷比を有するイオンは、等しい期間にわたって、かつ全測定時間の実質的に3分の1にわたって移送される。
【0104】
上記好適な実施形態によると、それぞれが1つの周波数ノッチを有する図6Bに示すような広帯域周波数信号を順次印加する代わりに、それぞれが2つの周波数ノッチを有する図5に示すような広帯域周波数信号13、14、15が順次印加されるのが好ましい。この好適な実施形態によると、出力信号は、図6Dに示すようなものとなる。図6Dに示す出力信号は、好ましくは、以下の3つの連立方程式を用いてデコンボリューションまたは復号される。
【0105】
【数2】

【0106】
【数3】

【0107】
【数4】

これら3つの連立方程式を解いて、IM1=I、IM2=2IおよびIM3=Iの適正な信号強度を得ることができる。各質量電荷比のイオンは、従来の手法と同様に、等しい期間にわたって移送される。しかし、上記好適な実施形態によると、各質量電荷比のイオンは、全測定時間の実質的に3分の2にわたって移送されるのが有利である。
【0108】
この例において、上記好適な実施形態によると、各ノッチ広帯域周波数信号13、14、15は2つの周波数ノッチ16a、16b、16cを含み、デューティサイクルまたは積分信号は、一度に1つのみの周波数ノッチ16a、16b、16cが印加される従来の手法と比べて2倍に増加している。上記好適な実施形態は、同様に、従来の四重極ロッドセット質量フィルタが各質量電荷比のイオンを順次移送する従来の構成と比べてデューティサイクルまたは積分信号の2倍の向上を示している。
【0109】
異なる質量電荷比を有する3つより多い検体イオンを測定することが所望され、かつ、上記好適な実施形態に従って印加されるノッチ広帯域周波数信号が2つより多い周波数ノッチを含む場合、信号における全体的な増加は、従来の構成を用いて記録されるものと比べてさらに大きい。例えば、4つの共溶出(co-eluting)化合物を測定することが所望される場合、上記好適な実施形態によると、デューティサイクルおよび感度は、2つの周波数ノッチが同時に印加されると2倍に増加する。デューティサイクルは、3つの周波数ノッチが同時に印加されると3倍に増加する。同様に、5つの共溶出化合物を測定することが所望される場合、上記好適な実施形態によると、デューティサイクルおよび感度は、2つの周波数ノッチが同時に印加されると2倍に、3つの周波数ノッチが同時に印加されると3倍に、4つの周波数ノッチが同時に印加されると4倍に増加する。
【0110】
より一般には、異なる対象化合物をモニタリングするために実験が行われ、一度にモニタリングすることが所望される化合物数がNcである場合、上記好適な実施形態によると、好ましくは同時に印加される周波数ノッチの最大数は、(Nc−1)となる。印加される各ノッチ広帯域周波数信号についてデータを取得するのに等しい時間がかかる場合、従来の動作モードで動作する四重極ロッド質量フィルタを用いて得ることが可能なデューティサイクルと比較したデューティサイクルおよび感度におけるゲインは、周波数ノッチの数に等しい。
【0111】
上記好適な実施形態の原理は、完全な質量スペクトルが得られるように拡張され得る。例えば、質量電荷比範囲100〜900にわたって(すなわち、合計質量範囲800質量単位にわたって)質量スペクトルを測定することが所望され、それぞれが1つの質量単位にわたる400の周波数ノッチを含むノッチ広帯域周波数信号が上記好適な実施形態に従って印加される場合、信号強度におけるゲインは、従来の四重極ロッドセット質量フィルタを従来の方法でスキャンすることによって得ることが可能なものと比べて400倍も高くなり得る。
【0112】
実用においては、上記好適な実施形態による手法によって提供され得る電位ゲインは、各サブセットにおける最高質量電荷比を有するイオンがイオンガイドまたは質量フィルタの長さを横断するのを待つ必要があるため低減され得る。例えば、質量電荷比900を有するイオンは、このイオンの運動エネルギー1eVであるとすると、長さ20cmのイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの長さを移動するのに約0.43msを要することになる。データ取得がノッチ広帯域周波数スペクトルを印加してから0.43ms後に開始され、次いで、データが0.43msの期間にわたって取得される場合、データ取得のデューティサイクルは、50%低くなる。質量電荷比範囲100〜900にわたってスペクトルが記録される上記例については、信号における全ゲインは、従来の構成についてのものに比べて、それに応じて実質的に200倍減少する。この実験のための取得時間は、0.86msの各取得サイクルの800倍、すなわち、0.688sとなる。
【0113】
完全な質量スペクトルの取得に適用される場合、上記好適な実施形態は、多数の特定の質量電荷比値を有するイオンについての信号を完全なスペクトルにわたって印加された全信号から差し引くことによって実質的に構成される。これにより、結果として得られる復号されたスペクトルのダイナミックレンジが制限される。実現可能なダイナミックレンジは、全信号の安定性に依存し、全信号における不安定性が大きいほどダイナミックレンジの低下は大きい。よって、より高いダイナミックレンジを必要とする状況においては、印加される広帯域周波数信号における周波数ノッチ数を少なくして、それにより、従来の構成に対する信号ゲインを低くすることが必要である場合がある。それでもなお、上記好適な実施形態は、従来の構成と比べて感度の大きな改良をもたらす。
【0114】
本発明の一実施形態によると、図7Aに示すような質量分析計が提供され得、ここで、質量分析計は、イオン源17、第1の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス22、第2の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス23およびイオン検出器18を備える。この実施形態において、1グループのイオンを第1の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6に通すことにより1つ以上の親イオンが選択される。上記のような2つ以上の周波数ノッチを有する第1のノッチ広帯域周波数信号が第1の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6に好ましくは印加される。選択され、前方に移送された親イオンは、次いで、好ましくは、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス22においてフラグメンテーションされ得、それにより、複数の娘またはフラグメントイオンが得られる。上記のような2つ以上の周波数ノッチを有する第2のノッチ広帯域周波数信号を第2の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス23に印加することにより、選択され前方に移送された各親イオンに対して2つ以上の娘またはフラグメントイオンが順に選択され、第2の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス23を通って移送される。第2の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス23は、好ましくは、現在選択されかつ移送される親イオンに対応する対象の娘イオンのみを選択しかつ前方に移送するようにプログラムされる。
【0115】
この実施形態は、例えば、多重反応モニタリング(Multiple Reaction Monitoring (「MRM」))実験を行う際に2つ以上の対象化合物の検出および定量を同時に行うことを可能にするために使用され得る。同時多重反応モニタリングまたは並列多重反応モニタリング(Parallel Multiple Reaction Monitoring)(「SMRM」または「PMRM」)のこの方法により、例えば、多数の共溶出または部分共溶出対象化合物のスクリーニングを行う際のクロマトグラフィー分離実験中、親/娘の異なる組み合わせを切り替える必要がなくなる。よって、上記好適な実施形態により、多重反応モニタリング(MRM)型の実験におけるデューティサイクルおよび感度が従来の三連四重極質量分析計に対するものと比べて向上する。
【0116】
上記好適な実施形態により、各親イオンについて2つ以上の娘またはフラグメントイオンを同時にモニタリングすることが可能となる。対象化合物の測定の確認手段として、2つ以上の娘またはフラグメントイオンの相対強度の測定が必要となるか、あるいは使用される場合がある。上記好適な実施形態により、従来の三連四重極質量分析計を用いて達成可能であるものと比べて向上したデューティサイクルおよび感度で複数の娘またはフラグメントイオンを測定することが可能となる。
【0117】
同時または並列多重反応モニタリング実験には、対象外の他の共溶出化合物からの干渉のリスクがある場合がある。例えば、干渉共溶出化合物は、第1の対象検体イオンと実質的に同じ親イオン質量電荷比を有し得、第2の異なる対象検体イオンのフラグメンテーションすることで得られる娘またはフラグメントイオンと実質的に同じ質量電荷比を有する娘またはフラグメントイオンを生じ得る。しかし、各対象親イオンについて多数の娘またはフラグメントイオンが測定される場合、上記好適な実施形態によると、干渉共溶出化合物の存在をより容易に認識し、差し引くことができる。
【0118】
例証として、以下に多重反応モニタリング(MRM)法による4つの共溶出親イオンの分析について検討するとともに、同時または並列多重反応モニタリング(SMRMまたはPMRM)法と比較する。4つの共溶出親イオンのそれぞれからの3つの娘またはフラグメントイオンが多重反応モニタリング法によってモニタリングされるとすると、その実験は、一連の12個の異なる親/娘イオン質量組み合わせを切り替えることから構成される。各親/娘反応組み合わせについてのデータ取得に等しい時間がかかる場合(すなわち、従来の手法によると)、各反応のサンプリングデューティサイクルは、12分の1、すなわち8.33%である。その代わりに、どの時点においても4つの異なる親イオンのうち3つが実質的に同時に前方へ移送され、かつ第1の四重極または質量フィルタデバイス6を通って移送されている3つの各親イオンの3つの娘またはフラグメントイオンのうち2つを移送するように6つの周波数ノッチを有する第2のノッチ広帯域周波数信号が第2の四重極または質量フィルタデバイス23に印加されるよう、3つの周波数ノッチを有するノッチ広帯域周波数信号が上記好適な実施形態に従った方法で第1の四重極または質量フィルタデバイス6に印加される場合、各反応のサンプリングデューティサイクルは50%である。これは、デューティサイクルおよび感度における6倍の増加を示す。
【0119】
衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの上流に配置される第1の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス(例えば四重極)および衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの下流に配置される第2の好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス(例えば四重極)に周波数ノッチ異なる組み合わせがどのようにして印加され得るかを示す周波数ノッチテーブルを以下に示す。上述のような同時または平行多重反応モニタリング(SMRMまたはPMRM)実験を行うために、周波数ノッチの異なる順序組み合わせが適用され得る。このテーブルは、一連の12個の信号を示している。各信号について、第1の四重極は、4つの異なる親イオンのうち3つの移送を可能とするよう3つの周波数ノッチを含み、第2の四重極は、第1の四重極を通って移送される3つの親イオンのそれぞれについて3つのフラグメントイオンのうち2つの移送を可能とするよう、6つの周波数ノッチを含む。4つの親イオンのそれぞれの3つのフラグメントイオンのそれぞれは、各サイクルにおける12の段階のうち6つの段階において、したがって、上記時間の50%にわたって移送される。12セットの測定のサイクルにより、データの復号、デコンボリューションまたは復調を行うことが可能となり、これにより、12個のフラグメントイオンのそれぞれの強度を決定することができる。
【0120】
【表1】

X=存在する周波数ノッチ、すなわち移送されるイオン。
【0121】
別の実施形態によると、図7Bに示すような質量分析計が提供され得、この質量分析計は、イオン源17、好適なイオンガイドまたは質量フィルタデバイス6、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス22および飛行時間質量分析部24を備える。この実施形態においては、2つ以上の周波数ノッチを有するノッチ広帯域周波数信号を上記好適な実施形態に従った方法で印加することにより、2つ以上の親イオンが選択され得、好適なイオンガイドまたは質量フィルタ6を通って移送され得る。選択され前方に移送された親イオンは、次いで、衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイス22においてフラグメンテーションされ、これにより、複数のフラグメントまたは娘イオンが生じるように好ましくは配置される。次いで、フラグメントまたは娘イオンの質量スペクトルは、好ましくは、フラグメントまたは娘イオンを質量分析するための飛行時間質量分析部24を用いて収集または取得される。ノッチ広帯域周波数信号のそれぞれが印加された際に取得されたフラグメントまたは娘イオンの質量スペクトルは、好ましくは、別々に合計され、ノッチ広帯域周波数信号のそれぞれについて捕集されたデータの1つの質量スペクトルが得られる。各娘イオンの質量についての強度変調質量スペクトルをノッチ広帯域周波数信号の変調パターンと比較することにより、当該データはデコンボリューションまたは復号され、それにより、選択され移送された各親イオンに対応する娘イオンのスペクトルが抽出され得る。
【0122】
このような実施形態を用いて、例えば、各親イオンについての娘イオンのスペクトルをイオンがクロマトグラフィー分離機器から溶出する際に自動的に取得することを目的とするタンデムMS/MS機器上で行われるデータ指向型実験のデューティサイクルおよび感度を向上させることができる。例えば、従来のタンデムQ−TOF(RTM)型質量分析計においては、探査スキャンから多数の親イオン候補が同定される。次いで、親イオンは順次選択され、それらの対応するフラグメントイオンの質量スペクトルが収集される。この好適な実施形態によると、同じデータがより高いデューティサイクルおよび感度で取得され得、それにより、所与の時間においてより多くの候補を選択することが可能となる。
【0123】
別の実施形態によると、図7Aに示す第2の四重極質量フィルタ23または図7Bに示す飛行時間質量分析部24を、好ましくは、線形または三次元イオントラップ質量分析部、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、フーリエ変換静電イオントラップ(「オービトラップ」)質量分析部、ペニングトラップ質量分析部または磁場型質量分析部などの好ましくは並列検出を行うことが可能な別のタイプの質量分析部に置き換えてもよい。
【0124】
別の実施形態によると、1つ以上のイオンガイド、1つ以上の質量分析部、1つ以上のイオンフラグメンテーション誘起手段、1つ以上のイオン−分子反応誘起手段、1つ以上のイオン−イオン反応誘起手段、1つ以上のイオン移動度分離手段、1つ以上の微分イオン移動度分離手段、またはその任意の組み合わせを含む質量分析計が提供され得る。
【0125】
この好適な実施形態によると、広帯域周波数信号は、周波数合成スペクトルを含み得、このスペクトルにおいて、各周波数はコヒーレントであり、特定の質量電荷比のイオンを共振によりパラメトリックに励起させ、半径方向に排出するのに十分な期間にわたって維持される。複数の周波数ノッチは、広帯域周波数信号を含む周波数合成スペクトルから不要な周波数を除外することにより生成され得る。複数の電極またはロッドに印加される各信号は、広帯域周波数信号を含む同じ周波数合成スペクトルから異なるセットの周波数が除外されるようにプログラムされ得る。
【0126】
本発明を好適な実施形態を参照して記載したが、添付の特許請求の範囲に記載の本発明の範囲から逸脱することなく、形態および詳細における種々の変更が可能であることが当業者に理解される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオンをガイドまたは質量フィルタリングする方法であって、
複数の電極またはロッドを備えるイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを準備する工程と、
前記複数の電極またはロッドにACまたはRF電圧を印加する工程と、
前記複数の電極またはロッドに複数の信号を供給する工程を含み、
前記複数の信号を供給する工程が、少なくとも、
(i)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために、複数の周波数ノッチを含む第1の信号を前記複数の電極またはロッドに供給し、第1のデータセットを取得する工程と、次いで
(ii)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために、複数の周波数ノッチを含む第2の異なる信号を前記複数の電極またはロッドを供給し、第2のデータセットを取得する工程と、
前記第1のデータセットおよび/または前記第2のデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定する工程と含む方法。
【請求項2】
前記複数の信号を供給する工程は、前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために前記複数の電極またはロッドにn個のさらなる信号を順次供給し、n個のさらなるデータセットを取得する工程であって、前記n個のさらなる信号は、それぞれ、複数の周波数ノッチを含む工程をさらに含み、
前記デコンボリューション、復号または復調工程は、前記さらなるデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量または質量電荷比を有するイオンの強度を決定する工程をさらに含み、
ここで、nは、(i)1、(ii)2、(iii)3、(iv)4、(v)5、(vi)6、(vii)7、(viii)8、(ix)9、(x)10、(xi)11、(xii)12、(xiii)13、(xiv)14、(xv)15、(xvi)16、(xvii)17、(xviii)18、(xix)19、(xx)20、(xxi)20〜25、(xxii)25〜30、(xxiii)30〜35、(xxiv)35〜40、(xxv)40〜45、(xxvi)45〜50、(xxvii)50〜55、(xxviii)55〜60、(xxix)60〜65、(xxx)65〜70、(xxxi)70〜75、(xxxii)75〜80、(xxxiii)80〜85、(xxxiv)85〜90、(xxxv)90〜95、(xxxvi)95〜100、および(xxxvii)>100からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のデータセットおよび/または前記第2のデータセットおよび/または前記さらなるデータセットは、飛行時間または質量スペクトルデータを含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記ACまたはRF電圧を印加する工程は、
(a)前記複数の電極またはロッドに二位相電圧を印加する工程であって、イオンを前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内に半径方向に閉じ込めるために、前記ACまたはRF電圧の逆位相が隣り合う電極またはロッドに印加される工程、および/または
(b)(i)<50Vピークトゥピーク、(ii)50〜100Vピークトゥピーク、(iii)100〜150Vピークトゥピーク、(iv)150〜200Vピークトゥピーク、(v)200〜250Vピークトゥピーク、(vi)250〜300Vピークトゥピーク、(vii)300〜350Vピークトゥピーク、(viii)350〜400Vピークトゥピーク、(ix)400〜450Vピークトゥピーク、(x)450〜500Vピークトゥピーク、(xi)500〜1000Vピークトゥピーク、(xii)1〜2kVピークトゥピーク、(xiii)2〜3kVピークトゥピーク、(xiv)3〜4kVピークトゥピーク、(xv)4〜5kVピークトゥピーク、(xvi)5〜6kVピークトゥピーク、(xvii)6〜7kVピークトゥピーク、(xviii)7〜8kVピークトゥピーク、(xix)8〜9kVピークトゥピーク、(xx)9〜10kVピークトゥピーク、および(xxi)>10kVピークトゥピークからなる群から選択される振幅を有するACまたはRF電圧を印加する工程、および/または
(c)(i)<100kHz、(ii)100〜200kHz、(iii)200〜300kHz、(iv)300〜400kHz、(v)400〜500kHz、(vi)0.5〜1.0MHz、(vii)1.0〜1.5MHz、(viii)1.5〜2.0MHz、(ix)2.0〜2.5MHz、(x)2.5〜3.0MHz、(xi)3.0〜3.5MHz、(xii)3.5〜4.0MHz、(xiii)4.0〜4.5MHz、(xiv)4.5〜5.0MHz、(xv)5.0〜5.5MHz、(xvi)5.5〜6.0MHz、(xvii)6.0〜6.5MHz、(xviii)6.5〜7.0MHz、(xix)7.0〜7.5MHz、(xx)7.5〜8.0MHz、(xxi)8.0〜8.5MHz、(xxii)8.5〜9.0MHz、(xxiii)9.0〜9.5MHz、(xxiv)9.5〜10.0MHz、および(xxv)>10.0MHzからなる群から選択される周波数を有するACまたはRF電圧を印加する工程をさらに含む、請求項1、2または3に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の信号および/または前記第2の信号および/または前記さらなる信号を供給する工程により、少なくともいくつかの不要なイオンが前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスから半径方向に排出されるか、あるいは実質的に減衰される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
少なくともいくつかのイオンが、前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内に半径方向に実質的に閉じ込められるかトラップされることなく前方に移送される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスを準備する工程は、四重極ロッドセットイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを準備する工程を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項8】
前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内に半径方向2次電位分布または半径方向直線電界を維持する工程をさらに含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
前記第1の信号および/または前記第2の信号および/または前記さらなる信号を供給する工程は、
(a)前記複数の電極またはロッドに広帯域周波数信号を供給する工程、および/または
(b)前記複数の電極またはロッドに広帯域周波数信号を供給する工程であって、前記第1の信号および/または前記第2の信号および/または前記さらなる信号は、(i)<1kHz、(ii)1〜2kHz、(iii)2〜3kHz、(iv)3〜4kHz、(v)4〜5kHz、(vi)5〜6kHz、(vii)6〜7kHz、(viii)7〜8kHz、(ix)8〜9kHz、(x)9〜10kHz、(xi)10〜11kHz、(xii)11〜12kHz、(xiii)12〜13kHz、(xiv)13〜14kHz、(xv)14〜15kHz、(xvi)15〜16kHz、(xvii)16〜17kHz、(xviii)17〜18kHz、(xix)18〜19kHz、(xx)19〜20kHz、(xxi)20〜21kHz、(xxii)21〜22kHz、(xxiii)22〜23kHz、(xxiv)23〜24kHz、(xxv)24〜25kHz、(xxvi)25〜26kHz、(xxvii)26〜27kHz、(xxviii)27〜28kHz、(xxix)28〜29kHz、(xxx)29〜30kHz、および(xxxi)>30kHzの範囲のうち1つ以上から選択される1つ以上の周波数成分を含む工程、および/または
(c)双極および/または四重極波形を有する信号を供給する工程、および/または
(d)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって使用に際して受け取られた複数のイオンの永続、共振、第1または基本高調波振動数に対応する複数の周波数成分を有する信号を供給する工程を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項10】
前記第1の信号および/または前記第2の信号および/または前記さらなる信号は、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜55、55〜60、60〜65、65〜70、70〜75、75〜80、80〜85、85〜90、90〜95、95〜100または>100個の周波数ノッチを含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記複数の周波数ノッチは、
(a)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって前方に移送されることが所望される複数の異なる質量電荷比を有するイオンの永続、共振、第1または基本高調波振動数、および/あるいは
(b)少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜55、55〜60、60〜65、65〜70、70〜75、75〜80、80〜85、85〜90、90〜95、95〜100または>100個の異なる種の対象検体イオンの永続、共振、または第1、基本高調波振動数に対応する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
前記第1の信号および/または前記第2の信号および/または前記さらなる信号は、少なくともいくつかの対象検体イオンを前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスから共振によりまたはパラメトリックに励起させ、かつ/または半径方向に排出させることが実質的にない、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
前記複数の周波数ノッチに対応する周波数において、
(a)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内のイオンが実質的に共振によりまたはパラメトリックに励起されないか、あるいは
(b)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内のイオンが共振によりまたはパラメトリックに励起されるが、前記イオンが前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスから半径方向に排出されるのに十分には共振によりまたはパラメトリックにより励起されない、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
前記第1の信号および/または前記第2の信号は、
(i)M1およびM3の質量電荷比を有するイオンを前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって同時に前方へ移送させ、かつ/あるいは
(ii)M2の質量電荷比を有するイオンを前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって実質的に減衰させるか、あるいは前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスから共振によりまたはパラメトリックに排出させ(ここで、M1<M2<M3)、かつ/あるいは
(iii)M3およびM5の質量電荷比を有するイオンを前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって同時に前方へ移送させ、かつ/あるいは
(iv)M4の質量電荷比を有するイオンを前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって実質的に減衰させるか、あるいは前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスから共振によりまたはパラメトリックに排出させる(ここで、M3<M4<M5)ように構成及び適合されている、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
前記第1の信号および/または前記第2の信号および/または前記さらなる信号により、
(a)質量電荷比移送ウィンドウ内に質量電荷比を有するイオンが前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって前方へ移送され、かつ/あるいは
(b)質量電荷比移送ウィンドウ外に質量電荷比を有するイオンが前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスによって実質的に減衰されるか、かつ/あるいは前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスから共振によりまたはパラメトリックに排出されるように、
前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスが、複数のまたは少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、20〜25、25〜30、30〜35、35〜40、40〜45、45〜50、50〜55、55〜60、60〜65、65〜70、70〜75、75〜80、80〜85、85〜90、90〜95、95〜100または>100個の離散したかまたは分離した同時質量電荷比移送ウィンドウを有する、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項16】
前記離散したかまたは分離した同時質量電荷比移送ウィンドウは、実質的に重複しないか、かつ/または連続しない、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
(a)前記1つ以上の質量電荷比移送ウィンドウの中心および/または幅は、経時的に、または(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、(xxxi)30〜40ms、(xxxii)40〜50ms、(xxxiii)50〜60ms、(xxxiv)60〜70ms、(xxxv)70〜80ms、(xxxvi)80〜90ms、(xxxvii)90〜100ms、(xxxviii)100〜200ms、(xxxix)200〜300ms、(xl)300〜400ms、(xli)400〜500ms、(xlii)500〜600ms、(xliii)600〜700ms、(xliv)700〜800ms、(xlv)800〜900、(xlvi)900〜1000ms、および(xlvii)>1sからなる群から選択される期間にわたって実質的に一定のままであるか、あるいは
(b)前記1つ以上の質量電荷比移送ウィンドウの中心および/または幅は、経時的に、または(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、(xxxi)30〜40ms、(xxxii)40〜50ms、(xxxiii)50〜60ms、(xxxiv)60〜70ms、(xxxv)70〜80ms、(xxxvi)80〜90ms、(xxxvii)90〜100ms、(xxxviii)100〜200ms、(xxxix)200〜300ms、(xl)300〜400ms、(xli)400〜500ms、(xlii)500〜600ms、(xliii)600〜700ms、(xliv)700〜800ms、(xlv)800〜900、(xlvi)900〜1000ms、および(xlvii)>1sからなる群から選択される期間にわたって実質的に変動および/または増加および/または低減する、請求項15または16に記載の方法
【請求項18】
動作モードにおいて、
(a)実質的にすべての前記電極またはロッドは、実質的に同じDC電位または電圧に維持されるか、
(b)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、実質的に非分解またはイオンガイド動作モードで動作されるか、
(c)隣り合う電極またはロッド間で実質的に異なるDC電位または電圧差が維持されるか、
(d)隣り合う電極またはロッド間でDC電位または電圧差が維持されるか、
(e)対向する電極またはロッドは、実質的に同じDC電位または電圧に維持されるか、
(f)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、分解または質量フィルタリング動作モードで動作されるか、あるいは
(g)DCおよび/またはACもしくはRF電圧の組み合わせが、前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスが低域通過、帯域通過または高域通過質量フィルタリングモードで動作するように構成されるように前記複数の電極またはロッドに印加される、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項19】
動作モードにおいて、前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、1つ以上の質量電荷比移送ウィンドウを有し、前記1つ以上の質量電荷比移送ウィンドウは、z質量単位の幅を有し、ここで、zは、(i)<1、(ii)1〜2、(iii)2〜3、(iv)3〜4、(v)4〜5、(vi)5〜6、(vii)6〜7、(viii)7〜8、(ix)8〜9、(x)9〜10、(xi)10〜15、(xii)15〜20、(xiii)20〜25、(xiv)25〜30、(xv)30〜35、(xvi)35〜40、(xvii)40〜45、(xviii)45〜50、(xix)50〜60、(xx)60〜70、(xxi)70〜80、(xxii)80〜90、(xxiii)90〜100、(xxiv)100〜120、(xxv)120〜140、(xxvi)140〜160、(xxvii)160〜180、(xxviii)180〜200、(xxix)200〜250、(xxx)250〜300、(xxxi)300〜350、(xxxii)350〜400、(xxxiii)400〜450、(xxxiv)450〜500、および(xxxv)>500からなる群から選択される範囲内にある、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項20】
前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスを、(i)>100mbar、(ii)>10mbar、(iii)>1mbar、(iv)>0.1mbar、(v)>10-2mbar、(vi)>10-3mbar、(vii)>10-4mbar、(viii)>10-5mbar、(ix)>10-6mbar、(x)<100mbar、(xi)<10mbar、(xii)<1mbar、(xiii)<0.1mbar、(xiv)<10-2mbar、(xv)<10-3mbar、(xvi)<10-4mbar、(xvii)<10-5mbar、(xviii)<10-6mbar、(xix)10〜100mbar、(xx)1〜10mbar、(xxi)0.1〜1mbar、(xxii)10-2〜10-1mbar、(xxiii)10-3〜10-2mbar、(xxiv)10-4〜10-3mbar、および(xxv)10-5〜10-4mbarの圧力に維持する工程を含む、先行する請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項21】
先行する請求項のいずれかに記載の方法を含む質量分析の方法。
【請求項22】
イオンガイドまたは質量フィルタデバイスであって、
複数の電極またはロッドと、
ACまたはRF電圧を前記複数の電極またはロッドに供給するACまたはRF電圧源と、
(i)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために前記複数の電極またはロッドに複数の周波数ノッチを含む第1の信号を供給し、第1のデータセットが得られ、次いで、
(ii)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために前記複数の電極またはロッドに複数の周波数ノッチを有する第2の異なる信号を供給し、第2のデータセットが得られるように構成および適合された信号手段と、
前記第1のデータセットおよび/または前記第2のデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定するデバイスと
を備えるイオンガイドまたは質量フィルタデバイス。
【請求項23】
前記信号手段は、前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために、それぞれが複数の周波数ノッチを含むn個のさらなる信号を前記複数の電極またはロッドに順次供給し、n個のさらなるデータセットが得られるように構成および適合され、
前記デコンボリューション、復号または復調デバイスは、前記さらなるデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量または質量電荷比を有するイオンの強度を決定するように構成および適合され、
ここで、nは、(i)1、(ii)2、(iii)3、(iv)4、(v)5、(vi)6、(vii)7、(viii)8、(ix)9、(x)10、(xi)11、(xii)12、(xiii)13、(xiv)14、(xv)15、(xvi)16、(xvii)17、(xviii)18、(xix)19、(xx)20、(xxi)20〜25、(xxii)25〜30、(xxiii)30〜35、(xxiv)35〜40、(xxv)40〜45、(xxvi)45〜50、(xxvii)50〜55、(xxviii)55〜60、(xxix)60〜65、(xxx)65〜70、(xxxi)70〜75、(xxxii)75〜80、(xxxiii)80〜85、(xxxiv)85〜90、(xxxv)90〜95、(xxxvi)95〜100、および(xxxvii)>100からなる群から選択される、請求項22に記載のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス。
【請求項24】
請求項22または23に記載のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを備える質量分析計。
【請求項25】
(a)(i)エレクトロスプレーイオン化(「ESI」)イオン源、(ii)大気圧光イオン化(「APPI」)イオン源、(iii)大気圧化学イオン化(「APCI」)イオン源、(iv)マトリックス支援レーザ脱離イオン化(「MALDI」)イオン源、(v)レーザ脱離イオン化(「LDI」)イオン源、(vi)大気圧イオン化(「API」)イオン源、(vii)シリコンを用いた脱離イオン化(「DIOS」)イオン源、(viii)電子衝突(「EI」)イオン源、(ix)化学イオン化(「CI」)イオン源、(x)電界イオン化(「FI」)イオン源、(xi)電界脱離(「FD」)イオン源、(xii)誘導結合プラズマ(「ICP」)イオン源、(xiii)高速原子衝撃(「FAB」)イオン源、(xiv)液体二次イオン質量分析(「LSIMS」)イオン源、(xv)脱離エレクトロスプレーイオン化(「DESI」)イオン源、(xvi)ニッケル−63放射性イオン源、(xvii)大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化イオン源、および(xviii)熱スプレーイオン源からなる群から選択されるイオン源、ならびに/あるいは
(b)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスの上流および/または下流に配置されるイオン移動度分光計もしくはセパレータおよび/またはフィールド非対称イオン移動度分光計、ならびに/あるいは
(c)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスの上流および/または下流に配置されるイオントラップまたはイオントラップ領域、ならびに/あるいは
(d)前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスの上流および/または下流に配置される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスであって、(i)衝突誘起解離(「CID」)フラグメンテーションデバイス、(ii)表面誘起解離(「SID」)フラグメンテーションデバイス、(iii)電子移動解離フラグメンテーションデバイス、(iv)電子捕獲解離フラグメンテーションデバイス、(v)電子衝突または衝撃解離フラグメンテーションデバイス、(vi)光誘起解離(「PID」)フラグメンテーションデバイス、(vii)レーザ誘起解離フラグメンテーションデバイス、(viii)赤外放射誘起解離デバイス、(ix)紫外放射誘起解離デバイス、(x)ノズル−スキマ間インターフェースフラグメンテーションデバイス、(xi)インソースフラグメンテーションデバイス、(xii)イオン源衝突誘起解離フラグメンテーションデバイス、(xiii)熱または温度源フラグメンテーションデバイス、(xiv)電界誘起フラグメンテーションデバイス、(xv)磁場誘起フラグメンテーションデバイス、(xvi)酵素消化または酵素分解フラグメンテーションデバイス、(xvii)イオン−イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xviii)イオン−分子反応フラグメンテーションデバイス、(xix)イオン−原子反応フラグメンテーションデバイス、(xx)イオン−準安定イオン反応フラグメンテーションデバイス、(xxi)イオン−準安定分子反応フラグメンテーションデバイス、(xxii)イオン−準安定原子反応フラグメンテーションデバイス、(xxiii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−イオン反応デバイス、(xxiv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−分子反応デバイス、(xxv)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−原子反応デバイス、(xxvi)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定イオン反応デバイス、(xxvii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定分子反応デバイス、および(xxviii)イオンを反応させて付加または生成イオンを形成するイオン−準安定原子反応デバイスからなる群から選択されるフラグメンテーションまたは反応デバイス、ならびに/あるいは
(e)(i)四重極質量分析部、(ii)二次元または線形四重極質量分析部、(iii)ポールまたは三次元四重極質量分析部、(iv)ペニングトラップ質量分析部、(v)イオントラップ質量分析部、(vi)磁場型質量分析部、(vii)イオンサイクロトロン共鳴(「ICR」)質量分析部、(viii)フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴(「FTICR」)質量分析部、(ix)静電またはオービトラップ質量分析部、(x)フーリエ変換静電またはオービトラップ質量分析部、(xi)フーリエ変換質量分析部、(xii)飛行時間質量分析部、(xiii)直交加速式飛行時間質量分析部、および(xiv)直線加速式飛行時間質量分析部からなる群から選択される質量分析部をさらに備える、請求項24に記載の質量分析計。
【請求項26】
広帯域周波数信号を変調するか、変動させるか、あるいは合成する工程であって、それぞれが2つ以上の周波数ノッチを有する複数の信号がイオンガイドまたは質量フィルタデバイスに順次生成されかつ/または印加される工程と、
前記イオンガイドまたは質量フィルタによって移送されるイオンをイオン検出器を用いて検出する工程と、
複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定するために、前記イオン検出器によって出力される信号を復調、デコンボリューション、復号または分解(deconstructing)する工程と
を含むイオンをガイドまたは質量フィルタリングする方法。
【請求項27】
前記復調、デコンボリューション、復号または分解工程は、位相同期増幅器および/またはニューラルネットワークおよび/または復号用ルーチンもしくはアルゴリズムおよび/またはウェーブレットに基づく変調技術を使用する工程を含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
イオンガイドまたは質量フィルタデバイスと、
広帯域周波数信号を変調するか、変動させるか、あるいは合成するデバイスであって、それぞれが2つ以上の周波数ノッチを有する複数の信号が前記イオンガイドまたは質量フィルタデバイスに順次生成されかつ/または印加されるデバイスと、
前記イオンガイドまたは質量フィルタによって移送されるイオンを検出するイオン検出器と、
複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定するために、前記イオン検出器によって出力される信号を復調、デコンボリューション、復号または分解(deconstructing)するデバイスと
を備える装置。
【請求項29】
前記復調、デコンボリューション、復号または分解デバイスは、位相同期増幅器および/またはニューラルネットワークおよび/または復号用ルーチンもしくはアルゴリズムおよび/またはウェーブレットに基づく変調器を備える、請求項28に記載の装置。
【請求項30】
第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスと、
前記第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの下流に配置される衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスと、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの下流に配置される第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスとを備える装置であって、
前記第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、
(a)第1の複数の電極またはロッドと、
(b)前記第1の複数の電極またはロッドに第1のACまたはRF電圧を供給する第1のACまたはRF電圧源と、
(c)(i)前記第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の周波数ノッチを含む第1の信号を前記複数の第1の電極またはロッドに供給し、次いで、(ii)前記第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の周波数ノッチを含む第2の異なる信号を前記複数の第1の電極またはロッドに供給するように構成および適合された信号手段とを含み、
前記第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスは、
(a)第2の複数の電極またはロッドと、
(b)前記第2の複数の電極またはロッドに第2のACまたはRF電圧を供給する第2のACまたはRF電圧源と、
(c)(i)不要なイオンを前記第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから共振によりまたはパラメトリックに励起させるために前記複数の第2の電極またはロッドに複数の周波数ノッチを含む第3の信号を供給し、第1のデータセットが得られ、次いで、(ii)前記第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の周波数ノッチを含む第4の異なる信号を前記複数の第2の電極またはロッドに供給し、第2のデータセットが得られるように構成および適合された信号手段と、
前記第1のデータセットおよび/または前記第2のデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定するデバイスとを備える、装置。
【請求項31】
第1の複数の電極またはロッドを備える第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを準備する工程と、
前記第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスの下流に衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスを準備する工程と、
前記衝突、フラグメンテーションまたは反応デバイスの下流に、第2の複数の電極またはロッドを備える第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイスを準備する工程と、
前記第1の複数の電極またはロッドに第1のACまたはRF電圧源を供給する工程と、
不要なイオンを前記第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから共振によりまたはパラメトリックに励起させるために前記複数の第1の電極またはロッドに複数の周波数ノッチを含む第1の信号を供給し、次いで、前記第1のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の周波数ノッチを含む第2の異なる信号を前記複数の第1の電極またはロッドに供給する工程と、
前記第2の複数の電極またはロッドに第2のACまたはRF電圧源を供給する工程と、
前記第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから不要なイオンを共振によりまたはパラメトリックに励起させるために複数の周波数ノッチを含む第3の信号を前記複数の第2の電極またはロッドに供給し、第1のデータセットを得、次いで、不要なイオンを前記第2のイオンガイドまたは質量フィルタデバイス内でまたはそこから共振によりまたはパラメトリックに励起させるために前記複数の第2の電極またはロッドに複数の周波数ノッチを含む第4の異なる信号を供給し、第2のデータセットを得る工程と、
前記第1のデータセットおよび/または前記第2のデータセットをデコンボリューション、復号または復調し、複数の異なる質量電荷比を有するイオンの強度を決定する工程と
を含む方法。
【請求項32】
広帯域信号を生成する方法であって、
実質的にコヒーレントな周波数のスペクトルを合成する工程と、
第1の時間t1において、第1の複数の周波数または周波数成分を、完全に除去するか、実質的に除去するかまたは減衰させるか、あるいは除外する工程と、
第2の後の時間t2において、第2の異なる複数の周波数または周波数成分を、完全に除去するか、実質的に除去するかまたは減衰させるか、あるいは除外する工程とを含み、
時間遅延t2−t1は、(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、(xxxi)30〜40ms、(xxxii)40〜50ms、(xxxiii)50〜60ms、(xxxiv)60〜70ms、(xxxv)70〜80ms、(xxxvi)80〜90ms、(xxxvii)90〜100ms、(xxxviii)100〜200ms、(xxxix)200〜300ms、(xl)300〜400ms、(xli)400〜500ms、(xlii)500〜600ms、(xliii)600〜700ms、(xliv)700〜800ms、(xlv)800〜900、(xlvi)900〜1000ms、および(xlvii)>1sからなる群から選択される方法。
【請求項33】
広帯域信号を生成する装置であって、
実質的にコヒーレントな周波数のスペクトルを合成する合成器と、
第1の時間t1において、第1の複数の周波数または周波数成分を、完全に除去するか、実質的に除去するかまたは減衰させるか、あるいは除外するように構成および適合されたデバイスと、
第2の後の時間t2において、第2の異なる複数の周波数または周波数成分を、完全に除去するか、実質的に除去するかまたは減衰させるか、あるいは除外する構成および適合されたデバイスとを含み、
時間遅延t2−t1は、(i)0〜1ms、(ii)1〜2ms、(iii)2〜3ms、(iv)3〜4ms、(v)4〜5ms、(vi)5〜6ms、(vii)6〜7ms、(viii)7〜8ms、(ix)8〜9ms、(x)9〜10ms、(xi)10〜11ms、(xii)11〜12ms、(xiii)12〜13ms、(xiv)13〜14ms、(xv)14〜15ms、(xvi)15〜16ms、(xvii)16〜17ms、(xviii)17〜18ms、(xix)18〜19ms、(xx)19〜20ms、(xxi)20〜21ms、(xxii)21〜22ms、(xxiii)22〜23ms、(xxiv)23〜24ms、(xxv)24〜25ms、(xxvi)25〜26ms、(xxvii)26〜27ms、(xxviii)27〜28ms、(xxix)28〜29ms、(xxx)29〜30ms、(xxxi)30〜40ms、(xxxii)40〜50ms、(xxxiii)50〜60ms、(xxxiv)60〜70ms、(xxxv)70〜80ms、(xxxvi)80〜90ms、(xxxvii)90〜100ms、(xxxviii)100〜200ms、(xxxix)200〜300ms、(xl)300〜400ms、(xli)400〜500ms、(xlii)500〜600ms、(xliii)600〜700ms、(xliv)700〜800ms、(xlv)800〜900、(xlvi)900〜1000ms、および(xlvii)>1sからなる群から選択される装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2010−527496(P2010−527496A)
【公表日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−546814(P2009−546814)
【出願日】平成20年1月25日(2008.1.25)
【国際出願番号】PCT/GB2008/000275
【国際公開番号】WO2008/090365
【国際公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(504142097)マイクロマス ユーケー リミテッド (57)
【Fターム(参考)】