質量分離装置及びイオントラップの設計方法、質量分離装置及びイオントラップの製作方法、質量分析計、イオントラップ及びサンプル分析方法
本発明の一実施形態として、一連の質量分離装置電界データからの質量分離装置の設計方法、及び一定範囲のデータ対及び質量分析計からのイオントラップの設計方法を提供する。約0.84ないし約1.2の範囲内のZ0/r0比をもつイオントラップを備える質量分離装置の製造方法を提供する。0.84ないし1.2の範囲内のZ0/r0比を持つイオントラップと縦に並ぶ質量分離装置から構成可能な質量分析計を提供する。容積の中心から第一部材面までの間隔の容積の中心から第二部材面までの間隔に対する比が0.84ないし1.2の範囲内となる容積を画定する第一及び第二部材セットを有する質量分離装置を用いたサンプルの分析方法を提供する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は広義には分析用検出器に関し、より詳細には質量スペクトルイオン検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析は無機及び有機サンプル双方の組成に関する定性及び定量的情報を与えることができる広範に適用可能な分析手法である。質量分析を用いて多種に亘る錯体分子種の構造決定を行うことが可能である。この分析技術を用いて固体表面の構造及び組成を決定することも可能である。
【0003】
早くは1920年には、元素の同位体存在度の測定を目的とした磁界中におけるイオン動作に関する記載がある。1960年代には、錯体分子構造の同定を目的として、分子種のフラグメンテーションについて言及する理論が発展した。1970年代には、錯体混合物の高速分析を可能とする質量分析計及び新しいイオン解離技術が導入され、構造決定能が増進された。
【0004】
一方、携帯型あるいは小型の装置を用いて質量分析を行えることが望まれている。このような装置の設計において猶目標とされることは、装置構成部材の最適化である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施態様においては、中心部分をもつ長さと該長さの第一端部から第二端部へ延びる開口をもつ本体部と、前記第一端部に直近しかつ前記中心部分から一定間隔を空けられた面を有する第一端部キャップと、前記第二端部に直近しかつ前記中心部分から一定間隔を空けられた面を有する前記本体部の第二端部に隣接する第二端部キャップを含み、前記本体及び両端部キャップによって前記第一及び第二端部キャップの表面間かつ前記開口内に一定容積が画定され、この容積により前記開口の間隔及び半径が構成され、前記半径の前記間隔に対する比が約0.84ないし約1.2であることを特徴とするイオントラップが提供される。
【0006】
また本発明の一実施態様においては、縦に並ぶ少なくとも2台の質量分離装置を含み、質量分離装置の少なくとも一方にはZ0/r0比が0.84〜1.2の範囲内であるイオントラップが含まれた質量分析計が提供される。
また以下の説明において明らかなように、他の実施態様も開示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明について好ましい実施態様を用いて添付図面を参照しながら説明する。
【0008】
本発明では少なくともいくつかの観点から、質量分離装置及びイオントラップの設計方法、質量分離装置及びイオントラップの製作方法、質量分析計、イオントラップ、及びサンプルの分析方法が提供される。
【0009】
図1には、質量分析装置10を説明するブロック図が示されている。この質量分析装置にはサンプル12を受け取りかつ調製及び/またはイオン化されたサンプルを質量分析器16へ搬送するように構成されたサンプル調製イオン化部14が備えられている。検出装置18を用いて検出を行う為、質量分析器16を配置してイオン化されたサンプルを分離することも可能である。
【0010】
図1に示すように、サンプル12はサンプル調製イオン化部14中へ導入される。本開示において、サンプル12は無機あるいは有機物質を含めた固体、液体及び/または蒸気の形態をしたいずれかの化学組成物である。分析に適するサンプル12の具体例としては、トルエン等の揮発性化合物、あるいはブラディキニン等の極めて複雑な不揮発性タンパク質を挙げることができる。いくつかの観点において、サンプル12は2以上の物質を含む混合物であってもよく、また他の観点においてサンプル12は実質的に純粋な物質であってもよい。サンプル12の分析は以下に記載する例示的態様に従って実施可能である。
【0011】
サンプル調製イオン化部14には投入システム(図示せず)及びイオン源(図示せず)を備えることも可能である。この投入システムは一定量のサンプルを分析装置10内へ導入可能とする装置である。サンプル12によっては、この投入システムをイオン化のための調整が行えるように構成してもよい。この投入システムの方式は、バッチ方式、直接探測方式、クロマトグラフィー方式、及び透過性あるいは毛管膜方式で構成することが可能である。この投入システムには気体、液体及び/または固体相で分析を行うためのサンプル調製手段12を含めてもよい。態様によってはこの投入システムをイオン源と併用することも可能である。
【0012】
前記イオン源はサンプル12を受け取り、サンプル12の成分を分析対象物イオンへ変換するように構成することができる。この変換は、サンプル12の成分に対して電子、イオン、分子、及び/または光子を用いて衝撃を与えることによって行うことができる。なお、この変換は熱あるいは電気エネルギーを加えることによっても実施可能である。
【0013】
前記イオン源としては、例えば電子イオン化(EI、一般的にはガス相イオン化に適する)、光イオン化(PI)、化学的イオン化、衝突活性化解離、及び/または電子噴霧イオン化(ESI)を利用することができる。例えばPIの場合、例えば光エネルギーを変化させることによりサンプルの内部エネルギーを変えることが可能である。また、ESIを利用する場合には、サンプルを大気圧下でエネルギー化し、またイオンを大気圧から質量分析器内の真空中へ運ぶ際に加えられる電位を変えて解離度合を変化させることが可能である。
【0014】
分析対象物は質量分析器16へ移される。質量分析器16にはイオン輸送ゲート(図示せず)及び質量分離装置17を設けることができる。イオン輸送ゲートにはイオン源によって発生した分析対象物ビームをゲート制御する手段を設けてもよい。
【0015】
質量分離装置17には磁気部、電子部、及び/または4極子フィルター部を設けることができる。より具体的には、質量分離装置には、1または2以上の三重4極子、4極子イオントラップ(ポール)、円筒形状イオントラップ、線形イオントラップ、直線状イオントラップ(例えばイオンサイクロトロン共鳴、4極子イオントラップ/飛行時間型質量分析計)、あるいは他の構造物を含ませることができる。
【0016】
質量分離装置17へ複数の縦型質量分離装置を含ませてもよい。一実施形態では、2台の縦型質量分離装置の少なくとも1台をイオントラップとして使用し、縦型質量分離装置を直列あるいは並列して配列することができる。例示的な一実施形態では、複数の縦型質量分離装置が同一イオン源からイオンを受け取ることが可能である。複数の縦型質量分離装置が同一あるいは複数のイオン源から分析対象物イオンを受け取ることも可能である。
【0017】
分析対象物が検出器18へ移動してもよい。検出器の一例では、電子増倍管、フアラデーカップ集電極、写真型及び刺激型検出器が備えられている。投入システム3から検出器7へ至る分析経過を処理制御装置20によって制御かつモニターすることも可能である。
【0018】
本発明に従ったデータの取得及び生成は処理制御装置20を用いることによって容易化することができる。処理制御装置20は、分析装置10の各種素子を制御できるコンピュータあるいはミニコンピュータであればよい。この制御には上記RF及びDC電圧の特定な処理の他、質量スペクトルの測定、記憶、及び表示が含まれる。処理制御装置20にはデータ取得及び探索ソフトウェアを備えることも可能である。一実施態様として、かかるデータ取得探索ソフトウェアを、上述した分析対象物全数のプログラム化された取得を含むデータ取得及び探索を実行するように構成することができる。別の実施形態において、データ取得及び探索パラメータへ、生成された分析対象物量をデータ取得用の所定のプログラムと相関させる方法を含ませることも可能である。
【0019】
例示的イオントラップを図2〜5に示す。図2には、2つの端キャップ電極34間に定置されたリング電極32を含むポールイオントラップ30が示されている。このイオントラップ30はドーナツ形状を呈している。図3に示されたポールイオントラップ30の断面図(例えば双曲的断面図)にはリング電極32及び端キャップ34が示されている。この断面図において、リング電極32を一組の構成部材、また端キャップ34を一組の構成部材として特徴付けることができる。リング電極32には内面36があり、また端キャップ34にも内面38がある。リング電極32と端キャップ34によって中心42を有する容積部分40が画定されている。前記内面36は対向面36との間の間隔の半分に相当する間隔46を置いて配置されている。この間隔46をr0とする。前記内面38は対向面38との間の間隔の半分に相当する間隔48をおいて配置されている。この間隔48をZ0とする。
【0020】
図4には円筒形イオントラップ(CIT)50が示されている。CIT50には開口53を有するリング電極52を含ませることができる。例示的に図示された環状構造とは別のリング電極52構造とすることも可能である。例えば、リング電極52を本体が何らかの外部構造をもつ素材から成る開口として作製することも可能である。リング電極は2つの端キャップ電極54の間に定置させることができる。例示的な一実施形態として、リング電極52を端キャップ電極54間の中心へ配列してもよい。
【0021】
一実施形態として、端キャップ電極54を前記開口53の上方へ対向するように配列することができる。端キャップ電極54は固体材料から成る中に開口56を持つ平らな形状とすることができる。前記固体材料の例示としてステンレススチールを挙げることができるが、非導電性材料も含めて他の材料を用いることも可能であると考えられる。前記開口56は中心に位置していてもよい。端キャップ電極54には複数の開口56があってもよい。個々の端キャップ電極54の一部あるは全体が網状構造に作製されていてもよい。CIT50の例示的断面を図5に示す。
【0022】
図5に示すように、リング電極52には内面58が備えられている。この内面58は実質的に平坦であるか、あるいは均質であってよい。端キャップ電極54も内面60を有する。この内面は実質的に平坦であるか、平面であってもよい。この断面図において、リング電極52は一組の構成部材として、また端キャップ電極54は一組の構成部材として、それぞれ互いに対向する面58及び60を有する面として特徴付けることができる。一実施形態では、内面58は互いに向き合い、また内面60も互いに向き合っている。内面58及び60は直交位置関係にあってもよい。リング電極52及び端キャップ電極54は中心64のある容積部分62を画定している。一実施形態では、端キャップ54の開口56は前記中心64に対して一直線に並んでいる。内面58は対向面59との間の間隔の半部に相当する間隔68を空けて配置されている。この間隔68はr0として表し、また開口53の半径であると言うことができる。前記内面60は対向面60との間の間隔の半分に相当する間隔70を空けて配置されている。この間隔70をZ0とする。リング電極52にはさらに半分の高さ72が含まれる。CIT50では、リング電極52の末端面76と内面60との間に電極スペーシング74を設けることができる。スペーシング74は間隔70と半分の高さ72間の差であってもよい。一実施形態では、半分の高さ72は長さの中心が中心64に対して一直線に並ぶリング電極52の長さの2倍であると考えることができる。
【0023】
図5に示した実施態様について以下に説明するが、以下の説明は図3に示した実施態様及び他の態様の構造にも当て嵌まることに留意されたい。通常、電極へ適切な無線周波数(RF)及び直流電圧を加えることによりイオントラップ等の質量分離装置17を用いて分析対象物を保蔵あるいはトラップすることができる。例えば、図5に示した実施態様に関しては、単に例示であるが、端キャップ電極54をアースした上でRF電圧をリング電極52へ印加することができる。前記容積部分62内部に生じたイオン、あるいはサンプル調製イオン化部14から容積部分62中へ導入されたイオンは、例えばRF電圧の印加によって容積部分62中に十分に生じた共鳴電位中に保蔵あるいはトラップされる。
【0024】
前記保蔵に加えて、分析対象物をイオントラップ等の質量分離装置17を用いて分離することができる。例えば、単に例示であるが、容積部分62中に単一(m/z)値をもつ分析対象物を一度にトラップする電界が生ずるようにRF及びDC電圧をリング電極52及び端キャップ電極54へ印加することが可能である。次いで電圧は次のm/z値段階へ移り、容積部分62中の電界を変化させ、その電界中でそのm/z値をもつ分析対象物はトラップされ、前のm/z値をもつ分析対象物は検出器へ放出される。この分析を段階的に継続することにより所望のm/z範囲に亘ってすべての質量スペクトルを記録することが可能である。
【0025】
例示的な一態様として、m/z値範囲内の分析対象物を同時にトラップする電界を容積部分62中に発生させるようにリング電極52及び端キャップ電極54へRF及びDC電圧を印加することが可能である。次いで、トラップされた分析対象物がm/zに依存する形でイオントラップから外部検出器へと放出されるように電圧が切り替えられる。例えば、DCが印加されずRF振幅が直線的に増加している場合、m/zの増加したイオンをトラップから検出器へ放出することができる。RF振幅ランプ増加中(あるいはRF周波数等の他のパラメータの走査中)に補助電圧を印加して検出器へのイオン放出を増減することも可能である。例えば、交流(AC)電圧を適当な周波数で印加してイオンを共鳴励起し、共鳴放出と称される過程においてそれらイオンの放出を起こすことも可能である。
【0026】
別の実施形態では、m/z値域が同時にトラップされるか、あるいは単一m/z値だけがトラップされるように、リング電極52及び端キャップ電極54へRF及びDC電圧を印加することができる。イオンは容積部分62中において特徴的な移動を行う際に一定形態の受信回路へ影響を与えることから、この影響に基いてイオンの検出が行われる。例示的受信回路としては、電極52及び/または54上、あるいは補助電極上の帯電したイオン雲によって誘導されるイメージ電流を受け取り、及びイオンのm/z値に相関するイメージ電流を測定できる回路がある。
【0027】
質量分離装置は、一例として、質量選択的不安定状態及び共鳴放出作動モードにおける性能も含めて最適質量分析性能を備えるように設計することができる。例示的実施形態では、容積部分62の電界を質量分離装置の配置を操作することによって制御して性能を高めることが可能である。前記質量分離装置の配置としては、Z0、r0、半高さ、及び/または電極スペーシング等のパラメータがある。前記電界としては、4極子電界、さらに高位数の電界、あるいは他の電界がある。例示的実施形態では、4極子電界及びより高位数電界は容積部分62中に存在可能であり、質量分析前及び分析中、容積部分62中における分析対象物の移動に対して影響を及ぼすことができる。
【0028】
いくつかの実施態様においては、質量分離装置配置パラメータを選択して質量分析計に対してより向上されあるいは最適な性能が与えられる。次に質量分離装置電界データを得る最初の方法について説明する。質量分離装置電界データには質量分離装置配置パラメータと対応する膨張係数に関するデータセットが含まれる。一実施形態では、質量分離装置配置パラメータのリストを作成し(例えばZ0、r0)、下記式1、2及び/または3へ適用して対応する膨張係数を得ることにより前記データセットを作成することができる。一態様においては、設計者によって、対応する前記係数の決定のための前記式へ適用可能な前記配置パラメータの選択を行うことができる。前記配置パラメータについての数値を得るために他の方法を用いることも可能である。例示的態様では、前記リストが下記式3へ適用される。
【0029】
リング端面76と端キャップ電極面60間にスペーシング74がなく、またリング電極52へRF電圧が印加されるとともに端キャップ電極54がアースされている例示的円筒形イオントラップにおける電位は例示的に下記式1によって表される。
【数1】
【0030】
上記式において、J0及びJ1は第1種のベッセル関数であり、xjr0はJ0(x)のj番目のゼロである。一実施形態として、式1を球面調和に展開して式2を与えることができる。
【数2】
【0031】
例示的な一実施形態において、式2は、前記CIT中の電界を種々位数の電界の重ね合わせあるいは極(多重極展開)として考えることができることを示している。An(nは式2において0〜4)についての膨張係数は、単極子、双極子、4極子、6極子及び8極子成分にそれぞれ対応し、これら膨張係数の相対的大きさによって前記CIT中の全電界に対する各電界の相対的寄与を求めることができる。一手段として、n=0及びn=2についての前記膨張係数だけがゼロでない場合、前記電界を純粋に4極子であると考えることができる。Kornienkoらの式3からその同等位数係数を計算することが可能である。
【数3】
尚、上記式においてδn,0は、n=0ならば1であり、その他の場合は0である。
【0032】
質量分離装置電界データを与える別の方法に従って、ロス・アラモス国立研究所に保存されているポアソン/スーパーフィッシュ・コード(ポアソン/スーパーフィッシュ・コードはhttp://laacq1.lanl.gov/laacq/servics/possup.htmlから入手可能である;また本願に含めた資料、Billen,J.H.及びL.M.Young、PC互換性ポアソン/スーパーフィッシュ、1993年粒子加速器会議報告第2号、790〜792頁、(1993年)を参照されたい)とR.Graham Cooks教授の大学研究室、パーデュー大学、ウエスト・ラファイアット、インディアナ州において入手可能なCalcQuad/Multifitプログラムを対で用いて、与えられた配置パラメータのリストから対応する膨張係数を数字に表して得ることができる。例示的な一手段として、構造パラメータ(例えばZ0、r0)、さらには各成分へ印加された電位を、ポアソン/スーパーフィッシュ・コードを用いてプログラム中へ入力することができる。ポアソンプログラムによれば特定の構造パラメータ内で容積62をメッシュでカバーすることができ、次いで前記特定の構造パラメータに対応するメッシュ上の各点における電位及び各成分へ印加された対応電位(ポアソン電界データ)を計算することができる。次いでポアソン電界データをCalcQuad/Multifitプログラムへ入力することによってポアソン電界データの調和分析を実施して前記配置パラメータそれぞれについての膨張係数を得ることができる。
【0033】
具体的なデータセットには前記係数のすべて(例えばn=0〜8)と、さらには前記対応する配置パラメータ(例えばZ0、r0)を含めることができる。いくつかの態様においては、前記データセットへ8極子及び12極子の膨張係数を含めることができる。
【0034】
一実施態様においては、配置パラメータの範囲は正の8極子係数及び最も小さい負の12極子係数に調和するデータセットから選択される。例えば、単に例示であるが、特に位数のより高い係数がA2条件とは符号において逆であるならば、より高い位数の電界は、質量選択的不安定モードにおける質量分離装置の性能の重大な低下を生ずる全電界に大きく寄与する。一法として、この寄与をA2条件と同じ符号(すなわち式2に示すように正の符号)をもつ8極子を小さく重ね合わせることによって釣り合いを取ることができ、この釣り合いにより、イオン及び/または電子等のイオン化因子の出入りを許容するキャップ端部開口56中への電界透過の相殺効果によって性能を向上させることができる。この正の8極子係数をもつ例示的データは典型例として負の12極子係数(例えば≧−0.18、0〜−0.2、または≧−0.05)と対である。データセットが大きな負の12極子係数であると、対応する質量分離装置配置は全電界を減じてトラップ効率及び質量分離装置性能を低下させる。一例であるが、適当な8極子係数を与えると同時に12極子係数を最小とすることにより、前記負の12極子重ね合わせ効果をある程度まで相殺することができる。別の例では、正の8極子の比率を高くすることによりCIT50の性能を最適化することができる。前記正の8極子係数と前記最小の負の12極子係数を例示的に用いることにより最初の比率範囲を与えることができる。
【0035】
前記比率範囲は、所定値のスペーシング74についての前記比率の最小及び最大を明らかにすることによってさらに正確にすることができる。図6には、例示的なスペーシングパラメータとして0.06cmを用いて、Z0/r0関数で8極子係数を12極子係数に対してプロット(A4/A2)した図が示されている。この図では、電極間に0.06cmのスペーシングがある正の8極子を与えるためにはZ0/r0比は0.84以上でなければならないことを示している。図7は、例示的にスペーシングが0.06cmである場合にZ0/r0の関数としての4極子(A2)によって、Z0/r0比の増加に伴って4極子電界が弱まり、同じm/z分析範囲を得るためにはより高いRF振幅が必要となることが説明されることを示している。Z0/r0が1.2未満である時、一定範囲に亘って質量分析を実施するためには理想的トラップ(A2=1)に要する電圧のおおよそ2倍の電圧が必要とされる。従って、一実施態様として、最小Z0/r0比を0.84、最大Z0/r0比を1.2に限定して、これらZ0/r0比を0.06cm以外のスペーシングをもつ配置において用いることが可能である。
【0036】
少なくとも1つの観点から、電極間に介在するスペーシング74に関して別の配置パラメータが限定される。例えば、電極間の間隔の増加を用いて前記負の12極子係数を最小化することによって電界を最適化することができる。図8にはAn/A2が種々のZ0/r0比の関数として示されている。図8に示すように、各Z0/r0値について、スペーシングが増加するにつれて、スペーシング74の数値(スペーサー値とも記載)は8極子係数A4が0を交差して負になる数値に達する。0交点におけるこれらスペーサー値は一定のZ0/r0について用いることができるスペーシング74の最大値を与える。これらスペーサー最大値及び前記範囲内の対応Z0/r0値は図8中の各0交点に一致する。1以上のZ0/r0比では、Z0/r0とスペーサー最大値との相関は本質的に直線的であり、スペーサー最大値は1.2(Z0/r0)−0.77cmである。
【0037】
Z0/r0比及びスペーサー最大係数から成る対のデータの例示的範囲を下記表1に示す。これら対のデータのスペーサー最大係数は各Z0/r0比についてスペーサー最大値を計算して正の8極子重ね合わせを確保するために用いることができる。一実施態様として、スペーサー最大係数を測定してスペーサー最大値を得ることができる。例えば、スペーサー最大係数にスケーリング係数(例えばr0)を掛け算して各比についてスペーサー最大値を決めることができる。このスケーリング係数は、例えばηm、μm、mm、あるいはcm等の尺度で与えられる。前記例においては、スペーサー最大係数にr0を掛け算して共通尺度化して結果として生ずるスペーサー最大値を測定することができる。
【0038】
【表1】
【0039】
一実施態様として、質量分離装置を、図5において示し説明した構成部分の第一及び第二セットを約0.84ないし約1.2のr0に対するZ0比を用いて配列することによって製造することができる。一例として、設計基準(例えば有効RF電力供給、ガス気密性、ガススループット、ガスのポンプ注入の最小限化)に基づいて所望のr0及びZ0/r0比を選択することができる。Z0は選択されたr0及び比から決まる。スペーシング74はスケーリング係数(例えばr0)を最大スペーサー係数倍して決められる。一実施態様において、用いられたスペーシング74はr0を最大スペーサー係数倍した数値に等しいか、あるいはそれ以下である。
【0040】
パーフルオロトリn−ブチルアミン(pftba)あるいはパーフルオロケロセン等の既知組成物を用いて本発明に係る質量分離装置10を検量又は校正することができる。一旦検量が行われれば、本装置によって前記方法に従って製造された分析対象物の質量スペクトルを与えることができる。
【0041】
開示された態様に従って設計された本発明装置10と他の設計についてのシミュレーションを以下に示す。このシミュレーション結果は図9〜12及び14に示されている。
【0042】
質量スペクトルデータシミュレーションをパーデュー大学R.Graham Cooks教授の研究室から入手可能なITSIM5.1プログラム(Bui,H.A.;Cooks,R.G.、トントラップシミュレーションプログラムITSIMウインドウズ版:イオントラップ質量分光計における強力発見予測手段、J.Mass Spectrom.、1998年、33、297〜304頁、参照のため本願に包含)を用いて実施した。このITSIMプログラムは円筒形イオントラップを含めたイオントラップ質量分光計中に蓄積されたイオン軌跡(移動路)の計算を可能とするものである。数千のイオン移動をシミュレーションし、試験的に得られるデータとシミュレーションされたイオンの動きを十分に有効かつ実際的に比較することが可能である。このシミュレーションプログラムを用いることにより、RFトラップ電圧の周波数及び振幅、及びイオントラップキャップ端へ印加された付加波長の周波数及び振幅を含む試験での変数の全制御が可能である。Z0/r0比プログラムには、イオンと衝突する可能性があるイオントラップ中に存在するバックグラウンド中性分子の影響のシミュレーションを可能とする衝突モデルも提供されている。シミュレーションは下記工程を経て実施することができる。1)シミュレーションされるイオンの特性(例えば質量、電荷等)を明らかにする、2)イオントラップの特徴(例えばサイズ)を明らかにする、3)シミュレーションされる試験特性(例えばCITへ印加される電圧)を明らかにする、及び4)これらの条件下でのイオンの動きを積分法を用いて計算する。次項においてこれら各工程の詳細について例示的に説明する。
【0043】
1)イオン
トルエン(C7H8)の電子イオン化を介して発生するイオンをシミュレーションするため3組のイオンを生成した。前記イオンはシミュレーションの最初の3マイクロ秒の間ランダムに発生させた。これらイオンの詳細な特徴を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
2)円筒形イオントラップ
シミュレーションと試験間で最も正確な比較を行うため、ここで説明されるシミュレーションにおいて用いる円筒形イオントラップを、検討中の特定のCIT配列について電位値アレーを計算して限定した。この方法により、各配列の電極スペーシング、イオンキャップ孔サイズ等の詳細による影響を最も正確に示すことが可能である。ITSIMプログラムを用いて前記比較を達成するため、各電極へ印加される電位とともに、トラップの各電極についての幾何座標をテキストファイル中にx,yの対で明記した。次いでこのファイルはイオントラップ容積内の矩形格子上の各点における電位を計算するクリエートポット・プログラム(インディアナ州ウェストラファイエット、パーデュー大学、R.グラハム・クック研究室から入手可能、前記ポアソン/スーパーフイッシュ・コードに基づく)中へロードされ、次いでこの電位点配列はイオン軌跡計算において使用するメモリ中へロードされる。ここで述べるシミュレーションでは、凡そ100,000箇所から成る格子を用いてCIT中の電位分布を示した。シミュレーションの開始前、中心差分化を用いて前記格子箇所上の電位の導関数を導き出すことにより電界ベクトル成分が得られる。シミュレーション期間中、前記電界は、隣接格子点上の電界成分から双一次補間法によって各イオン位置について各時間段階において測定される。
【0046】
以下に示すシミュレーションデータに関して、CIT構造の各性状は試験下にあるパラメータを除いて一定に保持された。電位配列ファイルを各構造について生成し、以下で規定される同一シミュレーション条件を用いて前記と同様にイオン同一集団の軌跡のシミュレーションに用いた。かかる方法により、イオン移動、そして最終的には質量スペクトルに対する構造変化の影響を測定することが可能である。
【0047】
3)シミュレーション試験の特徴
イオントラップ試験は該トラップ電極へ印加される電圧により、及びこれら電圧が時間の関数としてどうように変化するかによってその範囲が限定される。ここで実施されるシミュレーションでは、電圧は2つの区分において印加され、全シミュレーションの長さは5.13msである。各区分中に印加される電圧の詳細について表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
区分1では、イオンが衝突を介してバックグラウンドガスと平衡させるため安定化時間は0.5msである。区分2は、共鳴放出を伴う質量選択的不安定性モードを用いた質量分析ランプである。リング電極上のトラップ電圧は、端キャップへ印加される電圧を用いてm/z比の順にイオンを共鳴に至らしめるため、この区分においてはその振幅に勾配が設けられている。イオンが共鳴点へ到達すると、それらイオンは前記端キャップ上の電圧によって励起され、トラップから放出される。
【0050】
ここで実施されるシミュレーションにはイオントラップ中に存在するバックグラウンドガスの影響が含まれる。前記ガスの質量は、試験に適合させるため、温度300K及び圧力6×10−5トルにおいて28(例えば空気バックグラウンドを擬似した窒素)と仮定される。シミュレーションの各時間段階において、バッファーガス原子にはマックスウェル・ボルツマン分布から生ずるランダムな速度が与えられる。次いで均質分布からのランダムな数が衝突可能性と比較され衝突が起こるか否かが判定される。前記衝突可能性は、50Å2に等しいイオンの剛体球半径及び0.205Å2に等しい中性ガスの分極性をもつランジュバン衝突断面を想定して計算される。このシミュレーションでは、ガス速度はランダムに分布し、また起こり得るイオン軌跡の散乱はランダムな方向に起こることが仮定されている。弾性衝突だけが考慮されているため、動的エネルギーのみが前記衝突中に伝達され、内部エネルギーは伝達されない。
【0051】
4)イオン移動の計算
ITSIMは、前記条件下で前記移動式を数値的に積分することにより前記集団中の各イオンの軌跡を計算する。イオンがイオントラップ容積を離れる時、あるいはシミュレーションの終了時に、各イオンの位置、及び当て嵌まる場合はイオンがトラップを離れた時間、が記録される。ここで実施されるシミュレーションでは、前記積分は10nsの底時間段階量をもつ4次ルンゲ・クッタ・アルゴリズムを用いて実施された。トラップへ印加された電圧は前記したように変化し、またトラップ中の各イオンの位置は10ns毎に算定された。ここで実施されるシミュレーションでは、イオンの殆どはトラップから端キャップ孔を通って放出するので、イオンはトラップから出たことが記録され、トラップ容積のすぐ外側に配置された「検出器」へ衝突した。
【0052】
ここでシミュレーションされる共鳴放出作動モードを用いた質量選択的不安定性状態において、イオンは前記した最低m/z比から最高m/z比の順にイオントラップから放出される。イオンの放出時間をイオン数の関数としてプロットすることにより、該イオンの質量スペクトルを生成することができる。検出器におけるイオン数対放出時間に関するシミュレーションデータは、下記計算において与えられる質量スペクトル生成するための座標表示及び検量線作成のためエクセルへデータ転送された。
【0053】
また、試験データも本開示の一観点に従って作製された例示的器具10から得られた。試験結果は図9、13及び14に示されている。
【0054】
試験の詳細
下記計算において与えられる試験データはCIT質量分析計、グリフィン・アナリティカル・テクノロジー社製Minotaurモデル2001A(インディアナ州(グリフィン)ウェストラファイエット)、において生成された。以下に示すデータを記録するためにグリフィン質量分析計に用いられたCITのリング電極半径r0は4.0mm、中心・端キャップ間間隔Z0は4.6mm、そしてリング・端キャップ間隔は1.28mmである。CITは、イオン化のため電子をCITへ運ぶために用いられる電子発生フィラメント及びレンズと伴に、KNF Neuberger813.5隔膜ポンプに支持されたVarian V7OLPターボ分子ポンプによってポンピングされる真空室中に収容されている。この真空室内部の圧力はグランビル・フィリップス・モデル203可変漏れ弁を用いて設定され、ここで収集されるデータに関しては、前記室圧はグランビル・フィリップス354Micro−Ion(登録商標)真空ゲージモジュールでの測定で周辺空気圧として6×10−5トルであった。
【0055】
この装置を用いて、揮発性ガス相サンプルを前記真空室中へ前記室内に配置されたポリジメチルシロキサン(PDMS)毛管膜を通して送入した。トルエン等の有機化合物を前記膜内部を通して流し出して前記膜物質中へ浸透させ、次いで前記膜の外面から真空室中へ取り除く。酸素及び窒素等の空気の主成分は前記膜を透過できないため前記真空室中には入らない。前記真空室中へ入る分析対象分子はCIT内で加熱されたフィラメントから発生する電子ビームによってイオン化され、次いで3個の組レンズを備えたトラップ中へ向けられる。トラップされたイオンはバックグラウンド空気との衝突を介して冷却され、次いで前記共鳴放出モードを用いた質量選択的不安定状態下でトラップから外部検出器へ走査される。
【0056】
トルエン液そのものの頭隙蒸気をKNF Neuberger MPU937隔膜ポンプを用いて約2L/分の流速で1cmのPDMS膜を通して前記装置中へ送入した。前記膜の温度は室温とした。トルエン分子を、m/z50のトラップ中のLMCOに対応する電圧に設定された1.5MHzのトラップRFを用いて50ms間イオン化した(グリフィン製CITに関してLMCO値は、殆どの標準的イオントラップに一般的なqz=0.908ではなく、qz=0.64に特定した)。次いで質量分析前に、前記イオンをLMCO50で25ms間冷却させた。質量分析のため、リング電極上のRFにLMCO50からLMCO100まで走査速度10.7Da/msで勾配をもたせた。質量分析中、端キャップ正弦電圧375kHzの振幅を出発値0.95Vから1.85Vまで勾配をもたせた。尚、端キャップは、一方の端キャップが正の印加電圧をもち、他方が対応する負の印加電圧をもち、両端キャップ間電位が実際に各端キャップとアース間へ印加された電圧の振幅の2倍になるように接続される。これは、この試験に関する項で明記された端キャップ電圧と前記シミュレーションにおいて前記した端キャップ電圧における2つの要素の差異を考慮したものである。前記イオンは結合変換ダイノード/電子増倍検出器を用いて検出された。前記ダイノードは−4kVに保持され、一方電子増倍管は−1.2kVに保持された。
【0057】
試験データのシミュレーション
図9は、Z0=4.6mm、r0=4.0mm(Z0/r0=1.15)、及び電極間隔=1.28mmである円筒形イオントラップを用いて同一条件下で収集されたパーフルオロトリブタルアミン(PFTBA)についてのシミュレーションによる質量スペクトルと試験による質量スペクトルを比較した図である。
【0058】
図10は、Z0=3.2mm、r0=4.0mm(Z0/r0=0.8)、及び間隔=0.6mmである円筒形イオントラップについて計算したトルエンのシミュレーションによる質量スペクトルを示した図であり、この図は、条件0.84が適合しない場合、CITの質量スペクトル性能が劣ること、すなわちピークが広がり十分に分離されていないことを示している。
【0059】
図11は、Z0=4.6mm、r0=4.0mm(Z0/r0=1.15)、及び間隔=2.56mmである円筒形イオントラップについて計算したトルエンのシミュレーションによる質量スペクトルを示した図であり、この図は、スペーサーがこのZ0/r0値について表1に限定した値より大きい場合に質量スペクトル性能が劣ること、すなわちピークが広がり十分に分離されていないことを示している。
【0060】
図12は、Z0=4.6mm、r0=4.0mm(Z0/r0=1.15)、及び間隔=1.28mmである円筒形イオントラップについて計算したトルエンのシミュレーションによる質量スペクトルを示した図であり、この図は、スペーサーがこのZ0/r0値について表1に限定した範囲内にあり、質量スペクトル性能が向上されていること、すなわちピークがより狭くかつより限定され、またm/z91及びm/z92のイオンについて信号が十分に分離されていることを示している。
【0061】
図13は、Z0=4.6mm、r0=4.0mm(Z0/r0=1.15)、及び間隔=1.28mmである円筒形イオントラップを用いてグリフィン質量分析計において得られたトルエンの試験による質量スペクトルを示した図であり、この図は、CITが前記構造規格に従って作製された場合、質量スペクトル性能が向上することを示している。
【0062】
図14は図12及び図13のシミュレーションされたデータと試験によるデータを比較した図である。
【0063】
上記本発明についての説明ではその構造及び方法の特徴について幾分特定して述べてきた。しかしながら、本願において開示された手段は本発明を実施するための好ましい態様として構成された手段であるので、本発明は上記において図示され記載された特定の特徴に限定されないことが理解されるべきである。従って、本発明は均等理論に従って適切に解釈される添付の特許請求の範囲の適切な範囲内に含まれるいずれの形態及び変形に対しても特許を請求するものである。
【0064】
法令に従って、本発明は構造及び方法についての特徴を幾分特定して説明されてきた。しかしながら、本願において開示された手段は本発明を実施するための好ましい態様として構成された手段であるので、本発明は上記において図示され記載された特定の特徴に限定されないことが理解されるべきである。従って、本発明は均等理論に従って適切に解釈される添付の特許請求の範囲の適切な範囲内に含まれるいずれの形態及び変形に対しても特許を請求するものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施態様に従った質量分析計のブロック図である。
【図2】本発明の一実施態様に従ったポールイオントラップの断面図である。
【図3】図2に示したポールイオントラップの断面末端図である。
【図4】本発明の一実施態様に従った円筒形状イオントラップの断面図である。
【図5】図4に示した円筒形状イオントラップの断面末端図である。
【図6】本発明の一実施態様に従った間隔空け0.06cmの電極を有するCITについてZ0/r0比の関数として表した4極子係数に対する8極子係数のプロット図である。
【図7】本発明の一実施態様に従った間隔空け0.06cmの電極を有するCITについてZ0/r0比の関数として表した8極子係数のプロット図である。
【図8】本発明の一実施態様に従った5つのZ0/r0比について電極間隔の関数として表した4極子係数に対する8極子係数及び12極子係数のプロット図である。
【図9】本発明の一実施態様に従って得られた質量スペクトルのシミュレーションデータと試験データを比較した図である。
【図10】Z0/r0比が0.8である質量分離装置を用いて得られたシミュレーションによる質量スペクトルデータを示した図である。
【図11】間隔空けが2.56mmである質量分離装置を用いて得られたシミュレーションによる質量スペクトルデータを示した図である。
【図12】本発明の一実施態様に従って得られたシミュレーションによる質量スペクトルデータを示した図である。
【図13】本発明の一実施態様に従って得られた試験による質量スペクトルデータを示した図である。
【図14】本発明の一実施態様に従って得られた、図12のシミュレーションによるデータと図13の試験によるデータを比較した図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は広義には分析用検出器に関し、より詳細には質量スペクトルイオン検出器に関する。
【背景技術】
【0002】
質量分析は無機及び有機サンプル双方の組成に関する定性及び定量的情報を与えることができる広範に適用可能な分析手法である。質量分析を用いて多種に亘る錯体分子種の構造決定を行うことが可能である。この分析技術を用いて固体表面の構造及び組成を決定することも可能である。
【0003】
早くは1920年には、元素の同位体存在度の測定を目的とした磁界中におけるイオン動作に関する記載がある。1960年代には、錯体分子構造の同定を目的として、分子種のフラグメンテーションについて言及する理論が発展した。1970年代には、錯体混合物の高速分析を可能とする質量分析計及び新しいイオン解離技術が導入され、構造決定能が増進された。
【0004】
一方、携帯型あるいは小型の装置を用いて質量分析を行えることが望まれている。このような装置の設計において猶目標とされることは、装置構成部材の最適化である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施態様においては、中心部分をもつ長さと該長さの第一端部から第二端部へ延びる開口をもつ本体部と、前記第一端部に直近しかつ前記中心部分から一定間隔を空けられた面を有する第一端部キャップと、前記第二端部に直近しかつ前記中心部分から一定間隔を空けられた面を有する前記本体部の第二端部に隣接する第二端部キャップを含み、前記本体及び両端部キャップによって前記第一及び第二端部キャップの表面間かつ前記開口内に一定容積が画定され、この容積により前記開口の間隔及び半径が構成され、前記半径の前記間隔に対する比が約0.84ないし約1.2であることを特徴とするイオントラップが提供される。
【0006】
また本発明の一実施態様においては、縦に並ぶ少なくとも2台の質量分離装置を含み、質量分離装置の少なくとも一方にはZ0/r0比が0.84〜1.2の範囲内であるイオントラップが含まれた質量分析計が提供される。
また以下の説明において明らかなように、他の実施態様も開示されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に本発明について好ましい実施態様を用いて添付図面を参照しながら説明する。
【0008】
本発明では少なくともいくつかの観点から、質量分離装置及びイオントラップの設計方法、質量分離装置及びイオントラップの製作方法、質量分析計、イオントラップ、及びサンプルの分析方法が提供される。
【0009】
図1には、質量分析装置10を説明するブロック図が示されている。この質量分析装置にはサンプル12を受け取りかつ調製及び/またはイオン化されたサンプルを質量分析器16へ搬送するように構成されたサンプル調製イオン化部14が備えられている。検出装置18を用いて検出を行う為、質量分析器16を配置してイオン化されたサンプルを分離することも可能である。
【0010】
図1に示すように、サンプル12はサンプル調製イオン化部14中へ導入される。本開示において、サンプル12は無機あるいは有機物質を含めた固体、液体及び/または蒸気の形態をしたいずれかの化学組成物である。分析に適するサンプル12の具体例としては、トルエン等の揮発性化合物、あるいはブラディキニン等の極めて複雑な不揮発性タンパク質を挙げることができる。いくつかの観点において、サンプル12は2以上の物質を含む混合物であってもよく、また他の観点においてサンプル12は実質的に純粋な物質であってもよい。サンプル12の分析は以下に記載する例示的態様に従って実施可能である。
【0011】
サンプル調製イオン化部14には投入システム(図示せず)及びイオン源(図示せず)を備えることも可能である。この投入システムは一定量のサンプルを分析装置10内へ導入可能とする装置である。サンプル12によっては、この投入システムをイオン化のための調整が行えるように構成してもよい。この投入システムの方式は、バッチ方式、直接探測方式、クロマトグラフィー方式、及び透過性あるいは毛管膜方式で構成することが可能である。この投入システムには気体、液体及び/または固体相で分析を行うためのサンプル調製手段12を含めてもよい。態様によってはこの投入システムをイオン源と併用することも可能である。
【0012】
前記イオン源はサンプル12を受け取り、サンプル12の成分を分析対象物イオンへ変換するように構成することができる。この変換は、サンプル12の成分に対して電子、イオン、分子、及び/または光子を用いて衝撃を与えることによって行うことができる。なお、この変換は熱あるいは電気エネルギーを加えることによっても実施可能である。
【0013】
前記イオン源としては、例えば電子イオン化(EI、一般的にはガス相イオン化に適する)、光イオン化(PI)、化学的イオン化、衝突活性化解離、及び/または電子噴霧イオン化(ESI)を利用することができる。例えばPIの場合、例えば光エネルギーを変化させることによりサンプルの内部エネルギーを変えることが可能である。また、ESIを利用する場合には、サンプルを大気圧下でエネルギー化し、またイオンを大気圧から質量分析器内の真空中へ運ぶ際に加えられる電位を変えて解離度合を変化させることが可能である。
【0014】
分析対象物は質量分析器16へ移される。質量分析器16にはイオン輸送ゲート(図示せず)及び質量分離装置17を設けることができる。イオン輸送ゲートにはイオン源によって発生した分析対象物ビームをゲート制御する手段を設けてもよい。
【0015】
質量分離装置17には磁気部、電子部、及び/または4極子フィルター部を設けることができる。より具体的には、質量分離装置には、1または2以上の三重4極子、4極子イオントラップ(ポール)、円筒形状イオントラップ、線形イオントラップ、直線状イオントラップ(例えばイオンサイクロトロン共鳴、4極子イオントラップ/飛行時間型質量分析計)、あるいは他の構造物を含ませることができる。
【0016】
質量分離装置17へ複数の縦型質量分離装置を含ませてもよい。一実施形態では、2台の縦型質量分離装置の少なくとも1台をイオントラップとして使用し、縦型質量分離装置を直列あるいは並列して配列することができる。例示的な一実施形態では、複数の縦型質量分離装置が同一イオン源からイオンを受け取ることが可能である。複数の縦型質量分離装置が同一あるいは複数のイオン源から分析対象物イオンを受け取ることも可能である。
【0017】
分析対象物が検出器18へ移動してもよい。検出器の一例では、電子増倍管、フアラデーカップ集電極、写真型及び刺激型検出器が備えられている。投入システム3から検出器7へ至る分析経過を処理制御装置20によって制御かつモニターすることも可能である。
【0018】
本発明に従ったデータの取得及び生成は処理制御装置20を用いることによって容易化することができる。処理制御装置20は、分析装置10の各種素子を制御できるコンピュータあるいはミニコンピュータであればよい。この制御には上記RF及びDC電圧の特定な処理の他、質量スペクトルの測定、記憶、及び表示が含まれる。処理制御装置20にはデータ取得及び探索ソフトウェアを備えることも可能である。一実施態様として、かかるデータ取得探索ソフトウェアを、上述した分析対象物全数のプログラム化された取得を含むデータ取得及び探索を実行するように構成することができる。別の実施形態において、データ取得及び探索パラメータへ、生成された分析対象物量をデータ取得用の所定のプログラムと相関させる方法を含ませることも可能である。
【0019】
例示的イオントラップを図2〜5に示す。図2には、2つの端キャップ電極34間に定置されたリング電極32を含むポールイオントラップ30が示されている。このイオントラップ30はドーナツ形状を呈している。図3に示されたポールイオントラップ30の断面図(例えば双曲的断面図)にはリング電極32及び端キャップ34が示されている。この断面図において、リング電極32を一組の構成部材、また端キャップ34を一組の構成部材として特徴付けることができる。リング電極32には内面36があり、また端キャップ34にも内面38がある。リング電極32と端キャップ34によって中心42を有する容積部分40が画定されている。前記内面36は対向面36との間の間隔の半分に相当する間隔46を置いて配置されている。この間隔46をr0とする。前記内面38は対向面38との間の間隔の半分に相当する間隔48をおいて配置されている。この間隔48をZ0とする。
【0020】
図4には円筒形イオントラップ(CIT)50が示されている。CIT50には開口53を有するリング電極52を含ませることができる。例示的に図示された環状構造とは別のリング電極52構造とすることも可能である。例えば、リング電極52を本体が何らかの外部構造をもつ素材から成る開口として作製することも可能である。リング電極は2つの端キャップ電極54の間に定置させることができる。例示的な一実施形態として、リング電極52を端キャップ電極54間の中心へ配列してもよい。
【0021】
一実施形態として、端キャップ電極54を前記開口53の上方へ対向するように配列することができる。端キャップ電極54は固体材料から成る中に開口56を持つ平らな形状とすることができる。前記固体材料の例示としてステンレススチールを挙げることができるが、非導電性材料も含めて他の材料を用いることも可能であると考えられる。前記開口56は中心に位置していてもよい。端キャップ電極54には複数の開口56があってもよい。個々の端キャップ電極54の一部あるは全体が網状構造に作製されていてもよい。CIT50の例示的断面を図5に示す。
【0022】
図5に示すように、リング電極52には内面58が備えられている。この内面58は実質的に平坦であるか、あるいは均質であってよい。端キャップ電極54も内面60を有する。この内面は実質的に平坦であるか、平面であってもよい。この断面図において、リング電極52は一組の構成部材として、また端キャップ電極54は一組の構成部材として、それぞれ互いに対向する面58及び60を有する面として特徴付けることができる。一実施形態では、内面58は互いに向き合い、また内面60も互いに向き合っている。内面58及び60は直交位置関係にあってもよい。リング電極52及び端キャップ電極54は中心64のある容積部分62を画定している。一実施形態では、端キャップ54の開口56は前記中心64に対して一直線に並んでいる。内面58は対向面59との間の間隔の半部に相当する間隔68を空けて配置されている。この間隔68はr0として表し、また開口53の半径であると言うことができる。前記内面60は対向面60との間の間隔の半分に相当する間隔70を空けて配置されている。この間隔70をZ0とする。リング電極52にはさらに半分の高さ72が含まれる。CIT50では、リング電極52の末端面76と内面60との間に電極スペーシング74を設けることができる。スペーシング74は間隔70と半分の高さ72間の差であってもよい。一実施形態では、半分の高さ72は長さの中心が中心64に対して一直線に並ぶリング電極52の長さの2倍であると考えることができる。
【0023】
図5に示した実施態様について以下に説明するが、以下の説明は図3に示した実施態様及び他の態様の構造にも当て嵌まることに留意されたい。通常、電極へ適切な無線周波数(RF)及び直流電圧を加えることによりイオントラップ等の質量分離装置17を用いて分析対象物を保蔵あるいはトラップすることができる。例えば、図5に示した実施態様に関しては、単に例示であるが、端キャップ電極54をアースした上でRF電圧をリング電極52へ印加することができる。前記容積部分62内部に生じたイオン、あるいはサンプル調製イオン化部14から容積部分62中へ導入されたイオンは、例えばRF電圧の印加によって容積部分62中に十分に生じた共鳴電位中に保蔵あるいはトラップされる。
【0024】
前記保蔵に加えて、分析対象物をイオントラップ等の質量分離装置17を用いて分離することができる。例えば、単に例示であるが、容積部分62中に単一(m/z)値をもつ分析対象物を一度にトラップする電界が生ずるようにRF及びDC電圧をリング電極52及び端キャップ電極54へ印加することが可能である。次いで電圧は次のm/z値段階へ移り、容積部分62中の電界を変化させ、その電界中でそのm/z値をもつ分析対象物はトラップされ、前のm/z値をもつ分析対象物は検出器へ放出される。この分析を段階的に継続することにより所望のm/z範囲に亘ってすべての質量スペクトルを記録することが可能である。
【0025】
例示的な一態様として、m/z値範囲内の分析対象物を同時にトラップする電界を容積部分62中に発生させるようにリング電極52及び端キャップ電極54へRF及びDC電圧を印加することが可能である。次いで、トラップされた分析対象物がm/zに依存する形でイオントラップから外部検出器へと放出されるように電圧が切り替えられる。例えば、DCが印加されずRF振幅が直線的に増加している場合、m/zの増加したイオンをトラップから検出器へ放出することができる。RF振幅ランプ増加中(あるいはRF周波数等の他のパラメータの走査中)に補助電圧を印加して検出器へのイオン放出を増減することも可能である。例えば、交流(AC)電圧を適当な周波数で印加してイオンを共鳴励起し、共鳴放出と称される過程においてそれらイオンの放出を起こすことも可能である。
【0026】
別の実施形態では、m/z値域が同時にトラップされるか、あるいは単一m/z値だけがトラップされるように、リング電極52及び端キャップ電極54へRF及びDC電圧を印加することができる。イオンは容積部分62中において特徴的な移動を行う際に一定形態の受信回路へ影響を与えることから、この影響に基いてイオンの検出が行われる。例示的受信回路としては、電極52及び/または54上、あるいは補助電極上の帯電したイオン雲によって誘導されるイメージ電流を受け取り、及びイオンのm/z値に相関するイメージ電流を測定できる回路がある。
【0027】
質量分離装置は、一例として、質量選択的不安定状態及び共鳴放出作動モードにおける性能も含めて最適質量分析性能を備えるように設計することができる。例示的実施形態では、容積部分62の電界を質量分離装置の配置を操作することによって制御して性能を高めることが可能である。前記質量分離装置の配置としては、Z0、r0、半高さ、及び/または電極スペーシング等のパラメータがある。前記電界としては、4極子電界、さらに高位数の電界、あるいは他の電界がある。例示的実施形態では、4極子電界及びより高位数電界は容積部分62中に存在可能であり、質量分析前及び分析中、容積部分62中における分析対象物の移動に対して影響を及ぼすことができる。
【0028】
いくつかの実施態様においては、質量分離装置配置パラメータを選択して質量分析計に対してより向上されあるいは最適な性能が与えられる。次に質量分離装置電界データを得る最初の方法について説明する。質量分離装置電界データには質量分離装置配置パラメータと対応する膨張係数に関するデータセットが含まれる。一実施形態では、質量分離装置配置パラメータのリストを作成し(例えばZ0、r0)、下記式1、2及び/または3へ適用して対応する膨張係数を得ることにより前記データセットを作成することができる。一態様においては、設計者によって、対応する前記係数の決定のための前記式へ適用可能な前記配置パラメータの選択を行うことができる。前記配置パラメータについての数値を得るために他の方法を用いることも可能である。例示的態様では、前記リストが下記式3へ適用される。
【0029】
リング端面76と端キャップ電極面60間にスペーシング74がなく、またリング電極52へRF電圧が印加されるとともに端キャップ電極54がアースされている例示的円筒形イオントラップにおける電位は例示的に下記式1によって表される。
【数1】
【0030】
上記式において、J0及びJ1は第1種のベッセル関数であり、xjr0はJ0(x)のj番目のゼロである。一実施形態として、式1を球面調和に展開して式2を与えることができる。
【数2】
【0031】
例示的な一実施形態において、式2は、前記CIT中の電界を種々位数の電界の重ね合わせあるいは極(多重極展開)として考えることができることを示している。An(nは式2において0〜4)についての膨張係数は、単極子、双極子、4極子、6極子及び8極子成分にそれぞれ対応し、これら膨張係数の相対的大きさによって前記CIT中の全電界に対する各電界の相対的寄与を求めることができる。一手段として、n=0及びn=2についての前記膨張係数だけがゼロでない場合、前記電界を純粋に4極子であると考えることができる。Kornienkoらの式3からその同等位数係数を計算することが可能である。
【数3】
尚、上記式においてδn,0は、n=0ならば1であり、その他の場合は0である。
【0032】
質量分離装置電界データを与える別の方法に従って、ロス・アラモス国立研究所に保存されているポアソン/スーパーフィッシュ・コード(ポアソン/スーパーフィッシュ・コードはhttp://laacq1.lanl.gov/laacq/servics/possup.htmlから入手可能である;また本願に含めた資料、Billen,J.H.及びL.M.Young、PC互換性ポアソン/スーパーフィッシュ、1993年粒子加速器会議報告第2号、790〜792頁、(1993年)を参照されたい)とR.Graham Cooks教授の大学研究室、パーデュー大学、ウエスト・ラファイアット、インディアナ州において入手可能なCalcQuad/Multifitプログラムを対で用いて、与えられた配置パラメータのリストから対応する膨張係数を数字に表して得ることができる。例示的な一手段として、構造パラメータ(例えばZ0、r0)、さらには各成分へ印加された電位を、ポアソン/スーパーフィッシュ・コードを用いてプログラム中へ入力することができる。ポアソンプログラムによれば特定の構造パラメータ内で容積62をメッシュでカバーすることができ、次いで前記特定の構造パラメータに対応するメッシュ上の各点における電位及び各成分へ印加された対応電位(ポアソン電界データ)を計算することができる。次いでポアソン電界データをCalcQuad/Multifitプログラムへ入力することによってポアソン電界データの調和分析を実施して前記配置パラメータそれぞれについての膨張係数を得ることができる。
【0033】
具体的なデータセットには前記係数のすべて(例えばn=0〜8)と、さらには前記対応する配置パラメータ(例えばZ0、r0)を含めることができる。いくつかの態様においては、前記データセットへ8極子及び12極子の膨張係数を含めることができる。
【0034】
一実施態様においては、配置パラメータの範囲は正の8極子係数及び最も小さい負の12極子係数に調和するデータセットから選択される。例えば、単に例示であるが、特に位数のより高い係数がA2条件とは符号において逆であるならば、より高い位数の電界は、質量選択的不安定モードにおける質量分離装置の性能の重大な低下を生ずる全電界に大きく寄与する。一法として、この寄与をA2条件と同じ符号(すなわち式2に示すように正の符号)をもつ8極子を小さく重ね合わせることによって釣り合いを取ることができ、この釣り合いにより、イオン及び/または電子等のイオン化因子の出入りを許容するキャップ端部開口56中への電界透過の相殺効果によって性能を向上させることができる。この正の8極子係数をもつ例示的データは典型例として負の12極子係数(例えば≧−0.18、0〜−0.2、または≧−0.05)と対である。データセットが大きな負の12極子係数であると、対応する質量分離装置配置は全電界を減じてトラップ効率及び質量分離装置性能を低下させる。一例であるが、適当な8極子係数を与えると同時に12極子係数を最小とすることにより、前記負の12極子重ね合わせ効果をある程度まで相殺することができる。別の例では、正の8極子の比率を高くすることによりCIT50の性能を最適化することができる。前記正の8極子係数と前記最小の負の12極子係数を例示的に用いることにより最初の比率範囲を与えることができる。
【0035】
前記比率範囲は、所定値のスペーシング74についての前記比率の最小及び最大を明らかにすることによってさらに正確にすることができる。図6には、例示的なスペーシングパラメータとして0.06cmを用いて、Z0/r0関数で8極子係数を12極子係数に対してプロット(A4/A2)した図が示されている。この図では、電極間に0.06cmのスペーシングがある正の8極子を与えるためにはZ0/r0比は0.84以上でなければならないことを示している。図7は、例示的にスペーシングが0.06cmである場合にZ0/r0の関数としての4極子(A2)によって、Z0/r0比の増加に伴って4極子電界が弱まり、同じm/z分析範囲を得るためにはより高いRF振幅が必要となることが説明されることを示している。Z0/r0が1.2未満である時、一定範囲に亘って質量分析を実施するためには理想的トラップ(A2=1)に要する電圧のおおよそ2倍の電圧が必要とされる。従って、一実施態様として、最小Z0/r0比を0.84、最大Z0/r0比を1.2に限定して、これらZ0/r0比を0.06cm以外のスペーシングをもつ配置において用いることが可能である。
【0036】
少なくとも1つの観点から、電極間に介在するスペーシング74に関して別の配置パラメータが限定される。例えば、電極間の間隔の増加を用いて前記負の12極子係数を最小化することによって電界を最適化することができる。図8にはAn/A2が種々のZ0/r0比の関数として示されている。図8に示すように、各Z0/r0値について、スペーシングが増加するにつれて、スペーシング74の数値(スペーサー値とも記載)は8極子係数A4が0を交差して負になる数値に達する。0交点におけるこれらスペーサー値は一定のZ0/r0について用いることができるスペーシング74の最大値を与える。これらスペーサー最大値及び前記範囲内の対応Z0/r0値は図8中の各0交点に一致する。1以上のZ0/r0比では、Z0/r0とスペーサー最大値との相関は本質的に直線的であり、スペーサー最大値は1.2(Z0/r0)−0.77cmである。
【0037】
Z0/r0比及びスペーサー最大係数から成る対のデータの例示的範囲を下記表1に示す。これら対のデータのスペーサー最大係数は各Z0/r0比についてスペーサー最大値を計算して正の8極子重ね合わせを確保するために用いることができる。一実施態様として、スペーサー最大係数を測定してスペーサー最大値を得ることができる。例えば、スペーサー最大係数にスケーリング係数(例えばr0)を掛け算して各比についてスペーサー最大値を決めることができる。このスケーリング係数は、例えばηm、μm、mm、あるいはcm等の尺度で与えられる。前記例においては、スペーサー最大係数にr0を掛け算して共通尺度化して結果として生ずるスペーサー最大値を測定することができる。
【0038】
【表1】
【0039】
一実施態様として、質量分離装置を、図5において示し説明した構成部分の第一及び第二セットを約0.84ないし約1.2のr0に対するZ0比を用いて配列することによって製造することができる。一例として、設計基準(例えば有効RF電力供給、ガス気密性、ガススループット、ガスのポンプ注入の最小限化)に基づいて所望のr0及びZ0/r0比を選択することができる。Z0は選択されたr0及び比から決まる。スペーシング74はスケーリング係数(例えばr0)を最大スペーサー係数倍して決められる。一実施態様において、用いられたスペーシング74はr0を最大スペーサー係数倍した数値に等しいか、あるいはそれ以下である。
【0040】
パーフルオロトリn−ブチルアミン(pftba)あるいはパーフルオロケロセン等の既知組成物を用いて本発明に係る質量分離装置10を検量又は校正することができる。一旦検量が行われれば、本装置によって前記方法に従って製造された分析対象物の質量スペクトルを与えることができる。
【0041】
開示された態様に従って設計された本発明装置10と他の設計についてのシミュレーションを以下に示す。このシミュレーション結果は図9〜12及び14に示されている。
【0042】
質量スペクトルデータシミュレーションをパーデュー大学R.Graham Cooks教授の研究室から入手可能なITSIM5.1プログラム(Bui,H.A.;Cooks,R.G.、トントラップシミュレーションプログラムITSIMウインドウズ版:イオントラップ質量分光計における強力発見予測手段、J.Mass Spectrom.、1998年、33、297〜304頁、参照のため本願に包含)を用いて実施した。このITSIMプログラムは円筒形イオントラップを含めたイオントラップ質量分光計中に蓄積されたイオン軌跡(移動路)の計算を可能とするものである。数千のイオン移動をシミュレーションし、試験的に得られるデータとシミュレーションされたイオンの動きを十分に有効かつ実際的に比較することが可能である。このシミュレーションプログラムを用いることにより、RFトラップ電圧の周波数及び振幅、及びイオントラップキャップ端へ印加された付加波長の周波数及び振幅を含む試験での変数の全制御が可能である。Z0/r0比プログラムには、イオンと衝突する可能性があるイオントラップ中に存在するバックグラウンド中性分子の影響のシミュレーションを可能とする衝突モデルも提供されている。シミュレーションは下記工程を経て実施することができる。1)シミュレーションされるイオンの特性(例えば質量、電荷等)を明らかにする、2)イオントラップの特徴(例えばサイズ)を明らかにする、3)シミュレーションされる試験特性(例えばCITへ印加される電圧)を明らかにする、及び4)これらの条件下でのイオンの動きを積分法を用いて計算する。次項においてこれら各工程の詳細について例示的に説明する。
【0043】
1)イオン
トルエン(C7H8)の電子イオン化を介して発生するイオンをシミュレーションするため3組のイオンを生成した。前記イオンはシミュレーションの最初の3マイクロ秒の間ランダムに発生させた。これらイオンの詳細な特徴を表2に示す。
【0044】
【表2】
【0045】
2)円筒形イオントラップ
シミュレーションと試験間で最も正確な比較を行うため、ここで説明されるシミュレーションにおいて用いる円筒形イオントラップを、検討中の特定のCIT配列について電位値アレーを計算して限定した。この方法により、各配列の電極スペーシング、イオンキャップ孔サイズ等の詳細による影響を最も正確に示すことが可能である。ITSIMプログラムを用いて前記比較を達成するため、各電極へ印加される電位とともに、トラップの各電極についての幾何座標をテキストファイル中にx,yの対で明記した。次いでこのファイルはイオントラップ容積内の矩形格子上の各点における電位を計算するクリエートポット・プログラム(インディアナ州ウェストラファイエット、パーデュー大学、R.グラハム・クック研究室から入手可能、前記ポアソン/スーパーフイッシュ・コードに基づく)中へロードされ、次いでこの電位点配列はイオン軌跡計算において使用するメモリ中へロードされる。ここで述べるシミュレーションでは、凡そ100,000箇所から成る格子を用いてCIT中の電位分布を示した。シミュレーションの開始前、中心差分化を用いて前記格子箇所上の電位の導関数を導き出すことにより電界ベクトル成分が得られる。シミュレーション期間中、前記電界は、隣接格子点上の電界成分から双一次補間法によって各イオン位置について各時間段階において測定される。
【0046】
以下に示すシミュレーションデータに関して、CIT構造の各性状は試験下にあるパラメータを除いて一定に保持された。電位配列ファイルを各構造について生成し、以下で規定される同一シミュレーション条件を用いて前記と同様にイオン同一集団の軌跡のシミュレーションに用いた。かかる方法により、イオン移動、そして最終的には質量スペクトルに対する構造変化の影響を測定することが可能である。
【0047】
3)シミュレーション試験の特徴
イオントラップ試験は該トラップ電極へ印加される電圧により、及びこれら電圧が時間の関数としてどうように変化するかによってその範囲が限定される。ここで実施されるシミュレーションでは、電圧は2つの区分において印加され、全シミュレーションの長さは5.13msである。各区分中に印加される電圧の詳細について表3に示す。
【0048】
【表3】
【0049】
区分1では、イオンが衝突を介してバックグラウンドガスと平衡させるため安定化時間は0.5msである。区分2は、共鳴放出を伴う質量選択的不安定性モードを用いた質量分析ランプである。リング電極上のトラップ電圧は、端キャップへ印加される電圧を用いてm/z比の順にイオンを共鳴に至らしめるため、この区分においてはその振幅に勾配が設けられている。イオンが共鳴点へ到達すると、それらイオンは前記端キャップ上の電圧によって励起され、トラップから放出される。
【0050】
ここで実施されるシミュレーションにはイオントラップ中に存在するバックグラウンドガスの影響が含まれる。前記ガスの質量は、試験に適合させるため、温度300K及び圧力6×10−5トルにおいて28(例えば空気バックグラウンドを擬似した窒素)と仮定される。シミュレーションの各時間段階において、バッファーガス原子にはマックスウェル・ボルツマン分布から生ずるランダムな速度が与えられる。次いで均質分布からのランダムな数が衝突可能性と比較され衝突が起こるか否かが判定される。前記衝突可能性は、50Å2に等しいイオンの剛体球半径及び0.205Å2に等しい中性ガスの分極性をもつランジュバン衝突断面を想定して計算される。このシミュレーションでは、ガス速度はランダムに分布し、また起こり得るイオン軌跡の散乱はランダムな方向に起こることが仮定されている。弾性衝突だけが考慮されているため、動的エネルギーのみが前記衝突中に伝達され、内部エネルギーは伝達されない。
【0051】
4)イオン移動の計算
ITSIMは、前記条件下で前記移動式を数値的に積分することにより前記集団中の各イオンの軌跡を計算する。イオンがイオントラップ容積を離れる時、あるいはシミュレーションの終了時に、各イオンの位置、及び当て嵌まる場合はイオンがトラップを離れた時間、が記録される。ここで実施されるシミュレーションでは、前記積分は10nsの底時間段階量をもつ4次ルンゲ・クッタ・アルゴリズムを用いて実施された。トラップへ印加された電圧は前記したように変化し、またトラップ中の各イオンの位置は10ns毎に算定された。ここで実施されるシミュレーションでは、イオンの殆どはトラップから端キャップ孔を通って放出するので、イオンはトラップから出たことが記録され、トラップ容積のすぐ外側に配置された「検出器」へ衝突した。
【0052】
ここでシミュレーションされる共鳴放出作動モードを用いた質量選択的不安定性状態において、イオンは前記した最低m/z比から最高m/z比の順にイオントラップから放出される。イオンの放出時間をイオン数の関数としてプロットすることにより、該イオンの質量スペクトルを生成することができる。検出器におけるイオン数対放出時間に関するシミュレーションデータは、下記計算において与えられる質量スペクトル生成するための座標表示及び検量線作成のためエクセルへデータ転送された。
【0053】
また、試験データも本開示の一観点に従って作製された例示的器具10から得られた。試験結果は図9、13及び14に示されている。
【0054】
試験の詳細
下記計算において与えられる試験データはCIT質量分析計、グリフィン・アナリティカル・テクノロジー社製Minotaurモデル2001A(インディアナ州(グリフィン)ウェストラファイエット)、において生成された。以下に示すデータを記録するためにグリフィン質量分析計に用いられたCITのリング電極半径r0は4.0mm、中心・端キャップ間間隔Z0は4.6mm、そしてリング・端キャップ間隔は1.28mmである。CITは、イオン化のため電子をCITへ運ぶために用いられる電子発生フィラメント及びレンズと伴に、KNF Neuberger813.5隔膜ポンプに支持されたVarian V7OLPターボ分子ポンプによってポンピングされる真空室中に収容されている。この真空室内部の圧力はグランビル・フィリップス・モデル203可変漏れ弁を用いて設定され、ここで収集されるデータに関しては、前記室圧はグランビル・フィリップス354Micro−Ion(登録商標)真空ゲージモジュールでの測定で周辺空気圧として6×10−5トルであった。
【0055】
この装置を用いて、揮発性ガス相サンプルを前記真空室中へ前記室内に配置されたポリジメチルシロキサン(PDMS)毛管膜を通して送入した。トルエン等の有機化合物を前記膜内部を通して流し出して前記膜物質中へ浸透させ、次いで前記膜の外面から真空室中へ取り除く。酸素及び窒素等の空気の主成分は前記膜を透過できないため前記真空室中には入らない。前記真空室中へ入る分析対象分子はCIT内で加熱されたフィラメントから発生する電子ビームによってイオン化され、次いで3個の組レンズを備えたトラップ中へ向けられる。トラップされたイオンはバックグラウンド空気との衝突を介して冷却され、次いで前記共鳴放出モードを用いた質量選択的不安定状態下でトラップから外部検出器へ走査される。
【0056】
トルエン液そのものの頭隙蒸気をKNF Neuberger MPU937隔膜ポンプを用いて約2L/分の流速で1cmのPDMS膜を通して前記装置中へ送入した。前記膜の温度は室温とした。トルエン分子を、m/z50のトラップ中のLMCOに対応する電圧に設定された1.5MHzのトラップRFを用いて50ms間イオン化した(グリフィン製CITに関してLMCO値は、殆どの標準的イオントラップに一般的なqz=0.908ではなく、qz=0.64に特定した)。次いで質量分析前に、前記イオンをLMCO50で25ms間冷却させた。質量分析のため、リング電極上のRFにLMCO50からLMCO100まで走査速度10.7Da/msで勾配をもたせた。質量分析中、端キャップ正弦電圧375kHzの振幅を出発値0.95Vから1.85Vまで勾配をもたせた。尚、端キャップは、一方の端キャップが正の印加電圧をもち、他方が対応する負の印加電圧をもち、両端キャップ間電位が実際に各端キャップとアース間へ印加された電圧の振幅の2倍になるように接続される。これは、この試験に関する項で明記された端キャップ電圧と前記シミュレーションにおいて前記した端キャップ電圧における2つの要素の差異を考慮したものである。前記イオンは結合変換ダイノード/電子増倍検出器を用いて検出された。前記ダイノードは−4kVに保持され、一方電子増倍管は−1.2kVに保持された。
【0057】
試験データのシミュレーション
図9は、Z0=4.6mm、r0=4.0mm(Z0/r0=1.15)、及び電極間隔=1.28mmである円筒形イオントラップを用いて同一条件下で収集されたパーフルオロトリブタルアミン(PFTBA)についてのシミュレーションによる質量スペクトルと試験による質量スペクトルを比較した図である。
【0058】
図10は、Z0=3.2mm、r0=4.0mm(Z0/r0=0.8)、及び間隔=0.6mmである円筒形イオントラップについて計算したトルエンのシミュレーションによる質量スペクトルを示した図であり、この図は、条件0.84が適合しない場合、CITの質量スペクトル性能が劣ること、すなわちピークが広がり十分に分離されていないことを示している。
【0059】
図11は、Z0=4.6mm、r0=4.0mm(Z0/r0=1.15)、及び間隔=2.56mmである円筒形イオントラップについて計算したトルエンのシミュレーションによる質量スペクトルを示した図であり、この図は、スペーサーがこのZ0/r0値について表1に限定した値より大きい場合に質量スペクトル性能が劣ること、すなわちピークが広がり十分に分離されていないことを示している。
【0060】
図12は、Z0=4.6mm、r0=4.0mm(Z0/r0=1.15)、及び間隔=1.28mmである円筒形イオントラップについて計算したトルエンのシミュレーションによる質量スペクトルを示した図であり、この図は、スペーサーがこのZ0/r0値について表1に限定した範囲内にあり、質量スペクトル性能が向上されていること、すなわちピークがより狭くかつより限定され、またm/z91及びm/z92のイオンについて信号が十分に分離されていることを示している。
【0061】
図13は、Z0=4.6mm、r0=4.0mm(Z0/r0=1.15)、及び間隔=1.28mmである円筒形イオントラップを用いてグリフィン質量分析計において得られたトルエンの試験による質量スペクトルを示した図であり、この図は、CITが前記構造規格に従って作製された場合、質量スペクトル性能が向上することを示している。
【0062】
図14は図12及び図13のシミュレーションされたデータと試験によるデータを比較した図である。
【0063】
上記本発明についての説明ではその構造及び方法の特徴について幾分特定して述べてきた。しかしながら、本願において開示された手段は本発明を実施するための好ましい態様として構成された手段であるので、本発明は上記において図示され記載された特定の特徴に限定されないことが理解されるべきである。従って、本発明は均等理論に従って適切に解釈される添付の特許請求の範囲の適切な範囲内に含まれるいずれの形態及び変形に対しても特許を請求するものである。
【0064】
法令に従って、本発明は構造及び方法についての特徴を幾分特定して説明されてきた。しかしながら、本願において開示された手段は本発明を実施するための好ましい態様として構成された手段であるので、本発明は上記において図示され記載された特定の特徴に限定されないことが理解されるべきである。従って、本発明は均等理論に従って適切に解釈される添付の特許請求の範囲の適切な範囲内に含まれるいずれの形態及び変形に対しても特許を請求するものである。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の一実施態様に従った質量分析計のブロック図である。
【図2】本発明の一実施態様に従ったポールイオントラップの断面図である。
【図3】図2に示したポールイオントラップの断面末端図である。
【図4】本発明の一実施態様に従った円筒形状イオントラップの断面図である。
【図5】図4に示した円筒形状イオントラップの断面末端図である。
【図6】本発明の一実施態様に従った間隔空け0.06cmの電極を有するCITについてZ0/r0比の関数として表した4極子係数に対する8極子係数のプロット図である。
【図7】本発明の一実施態様に従った間隔空け0.06cmの電極を有するCITについてZ0/r0比の関数として表した8極子係数のプロット図である。
【図8】本発明の一実施態様に従った5つのZ0/r0比について電極間隔の関数として表した4極子係数に対する8極子係数及び12極子係数のプロット図である。
【図9】本発明の一実施態様に従って得られた質量スペクトルのシミュレーションデータと試験データを比較した図である。
【図10】Z0/r0比が0.8である質量分離装置を用いて得られたシミュレーションによる質量スペクトルデータを示した図である。
【図11】間隔空けが2.56mmである質量分離装置を用いて得られたシミュレーションによる質量スペクトルデータを示した図である。
【図12】本発明の一実施態様に従って得られたシミュレーションによる質量スペクトルデータを示した図である。
【図13】本発明の一実施態様に従って得られた試験による質量スペクトルデータを示した図である。
【図14】本発明の一実施態様に従って得られた、図12のシミュレーションによるデータと図13の試験によるデータを比較した図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分離装置構造パラメータ及び対応する少なくとも8極子及び12極子膨張係数から成る膨張係数を含むデータセットから成る質量分離装置電界データを提供する工程と、
正の8極子係数及び最小の負の12極子係数に対応する質量分離装置構造パラメータを含む前記データセットの範囲を選択する工程と、
前記構造パラメータの範囲内で一構造を構成する質量分離装置を設計する工程と、
から構成される質量分離装置の設計方法。
【請求項2】
前記質量分離装置電界データにイオントラップ電界データが含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項3】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項2項記載の方法。
【請求項4】
前記質量分離装置電界データの提供に、式、
を用いて前記データセットを数値計算する操作が含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項5】
前記質量分離装置構造パラメータにr0及びZ0パラメータが含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項6】
前記質量分離装置がイオントラップから成り、前記12極子係数が正であり、及び前記構造パラメータに質量分離装置の電極間に最大間隔距離を与える電極スペーサー最大値がさらに含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項7】
個々にZ0/r0比及びイオントラップ電極間に介在する対応スペーシングを含むデータ対の範囲を設ける工程と、
望ましいr0を選択する工程と、
前記範囲から前記データ対の少なくとも一方を選択する工程と、
選択されたZ0/r0比及び選択されたr0を用いてZ0値を決定する工程と、
選択されたr0及び選択されたスペーシングから電極スペーシングを決定する工程と、
選択されたZ0/r0比及び決定された電極スペーシングから構成される質量分析装置を設計する工程と、
から構成されるイオントラップの設計方法。
【請求項8】
前記データ対の範囲を設ける工程に、個々にZ0/r0比及びスペーサー最大ファクターから成る前記対応スペーシングを含む前記データ対を設ける工程が含まれ、及び前記選択されたr0を前記選択されたスペーサー最大ファクターで掛け算して前記選択されたスペーシングを与える工程をさらに含むことを特徴とする請求項7項記載の方法。
【請求項9】
個々に面を構成する第一及び第二部材の各セットを設ける工程と、
断面中において、前記第一部材セットの面を互いに向き合わせ、及び前記第二部材セットの面を互いに向き合わせ、前記第一部材セットの面と前記第二部材セットの面によって容積を画定し、前記容積は前記第一部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第一間隔と前記第二部材セットの対向する各面間に介在する間隔の半分に相当する第二間隔が含まれ、前記第一間隔の前記第二間隔に対する比が約0.84ないし約1.2となるように並べる工程を含んで構成される質量分離装置の製造方法。
【請求項10】
前記第一部材にイオントラップの少なくとも1個の端キャップが含まれることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項11】
前記第一間隔がZ0であることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項12】
前記第二間隔がr0であることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項13】
前記第一間隔がZ0であり、前記第二間隔がr0であることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項14】
前記第二部材にイオントラップのリング電極が含まれることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項15】
前記第一部材の面が前記第二部材の面に対して直交することを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項16】
電極体の第一端から電極体の第二端へ延びかつ半径及び中心のある長さをもつ開口部を備える、前記第一端から前記第二端までの長さをもつイオントラップ電極体を設ける工程と、
少なくとも1個の面を有する第一イオントラップ電極端キャップを設ける工程と、
前記第一イオントラップ電極端キャップ面を、前記第一端に隣接する電極体の第一面上へ前記第一面に対向するように、かつ前記イオントラップ電極体の長さの中心から一定間隔を空け、前記間隔の前記半径に対する比が約0.84ないし約1.2の範囲内となるように並べる工程と、
を含んで構成されるイオントラップの製造方法。
【請求項17】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項18】
前記第一端キャップ電極が中心に位置した開口部をもつ固体材料から成ることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項19】
前記第一端キャップ電極にメッシュが含まれることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項20】
面を備える第二イオントラップ電極端キャップを設ける工程と、
前記第二イオントラップ電極端キャップ面を、前記第二端に隣接する電極体の第二面上へ前記第二面に対向するように、かつ前記イオントラップ電極体の長さの中心から前記間隔を空けて並べる工程をさらに含むことを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項21】
前記第二電極キャップが中心に位置した開口部をもつ固体材料から成ることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項22】
前記第二電極キャップにメッシュが含まれることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項23】
前記比に関連スペーサー最大ファクターが含まれ、前記質量分離装置が前記端キャップ面と前記電極体との間の電極スペーシング及び対応スペーサー最大値からさらに構成されることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項24】
イオントラップ電極及びイオントラップ端キャップを整列させる工程と、
第一間隔2Z0を離して空けた前記イオントラップ端キャップ、前記端キャップに隣接した端部をもち、前記イオントラップ端キャップ間の中心に並べられ、かつ半径r0及び前記イオントラップ本体の中心から端部までの第二間隔を含む半分の高さをもつ開口部を備える前記イオントラップ電極体、前記イオントラップ電極体端部から前記半分の高さより小さい電極スペーシングZ0によって間隔が空けられた前記端キャップを設ける工程を含んで構成されるイオントラップの製造方法であって、
Z0/r0比に関連スペーサー最大ファクターが含まれ、前記電極スペーシングが前記r0を前記スペーサー最大ファクター倍した積より小さいことを特徴とする前記方法。
【請求項25】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項24項記載の方法。
【請求項26】
前記イオントラップ端キャップがステンレススチールから成ることを特徴とする請求項24項記載の方法。
【請求項27】
前記イオントラップ端キャップが中心に位置した開口部をもつ固体材料から成ることを特徴とする請求項24項記載の方法。
【請求項28】
前記イオントラップ端キャップにメッシュが含まれることを特徴とする請求項24項記載の方法。
【請求項29】
前記Z0/r0比及び前記関連スペーサー最大ファクターが下記列を構成することを特徴とする請求項24項記載の方法:
【請求項30】
それぞれが面を備える第一及び第二電極部材セットを含む質量分離装置であって、
断面において、前記第一部材セットの面は互いに向かい合い、また前記第二部材セットの面は互いに向かい合い、及び前記第一及び第二部材セットの面によって容積が画定され、前記容積は前記第一部材の対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第一間隔と前記第二部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第二間隔から構成され、前記第一間隔の前記第二間隔に対する比が約0.84ないし約1.2の範囲内であることを特徴とする前記質量分離装置。
【請求項31】
前記質量分離装置がイオントラップから成り、前記第一部材の面が前記イオントラップの少なくとも1個の端キャップ面から成り、及び前記第二部材の面が前記イオントラップのリング電極の内面から成ることを特徴とする請求項30項記載の質量分離装置。
【請求項32】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項31項記載の質量分離装置。
【請求項33】
前記端キャップにステンレススチールメッシュが含まれることを特徴とする請求項31項記載の質量分離装置。
【請求項34】
前記第一部材セットが前記第二部材セットに対して直交することを特徴とする請求項30項記載の質量分離装置。
【請求項35】
サンプル投入口と、
前記サンプル投入口から少なくともサンプルの一部を受け取るように構造化された、各部材が面を備えた第一及び第二電極部材セットを含む質量分離装置であって、前記質量分離装置の断面中において、前記第一部材セットの面が互いに向かい合い、前記第二部材セットの面が互いに向かい合い、前記第一及び第二部材セットの対向する面によって前記第一部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第一間隔と前記第二部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第二間隔から構成される容積が画定され、前記第一間隔の前記第二間隔に対する比が約0.84ないし約1.2の範囲内になるように構成された前記質量分離装置と、
前記質量分離装置からイオンを受け取り及び検出するように構造化された検出器と、
から構成される質量分析計。
【請求項36】
前記サンプル投入口が毛管膜から成ることを特徴とする請求項35項記載の質量分析計。
【請求項37】
前記質量分離装置が少なくともサンプルの一部をイオン化し、及び少なくとも前記イオン化されたサンプルの一部を分離するように構造化されたことを特徴とする請求項35項記載の質分析計。
【請求項38】
前記質量分離装置がイオントラップから成ることを特徴とする請求項35項記載の質量分析計。
【請求項39】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項38項記載の質量分析計。
【請求項40】
前記第一部材セットの部材面が前記円筒形イオントラップの少なくとも1個の端キャップ内面から成り、前記第二部材セットの部材面が前記円筒形イオントラップのリング電極内面から成ることを特徴とする請求項39項記載の質量分析計。
【請求項41】
前記端キャップにさらに開口部が含まれることを特徴とする請求項40項記載の質量分析計。
【請求項42】
前記端キャップにステンレススチールメッシュが含まれることを特徴とする請求項41項記載の質量分析計。
【請求項43】
前記開口部が前記容積中心と一直線に並ぶことを特徴とする請求項40項記載の質量分析計。
【請求項44】
前記円筒形イオントラップに、前記比に相関する前記端キャップの各個と前記リング電極間の電極スペーシング間隔がさらに含まれることを特徴とする請求項40項記載の質量分析計。
【請求項45】
前記電極スペーシング間隔がスペーサー最大ファクターによって前記比に相関されることを特徴とする請求項35項記載の質量分析計。
【請求項46】
前記電極スペーシング間隔が前記第二間隔の前記スペーサー最大ファクター倍の積よりも小さいことを特徴とする請求項35項記載の質量分析計。
【請求項47】
前記円筒形イオントラップがステンレススチールから成ることを特徴とする請求項39項記載の質量分析計。
【請求項48】
前記検出器が電子乗数検出器から成ることを特徴とする請求項35項記載の質量分析計。
【請求項49】
中心部分をもつ長さと本体部の第一端から前記本体部の第二端まで延びる開口部を有する本体部と、
前記本体部の前記第一端に隣接し、前記第一端に最も近くかつ前記中心部分から一定間隔が空けられた面をもつ第一端キャップと、
前記本体部の前記第二端に隣接し、前記第二端に最も近くかつ前記中心部分から前記間隔が空けられた面をもつ第二端キャップとを含んで構成されるイオントラップであって、
前記本体部及び端キャップによって前記第一及び第二端キャップ面間かつ前記開口部内に容積が画定され、前記容積が前記間隔及び前記開口部の半径から成り、前記半径の前記間隔に対する比が約0.84ないし約1.2の範囲内となることを特徴とする前記イオントラップ。
【請求項50】
前記本体部及び前記端キャップがステンレススチールから成ることを特徴とする請求項49項記載のイオントラップ。
【請求項51】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項49項記載のイオントラップ。
【請求項52】
少なくとも1台が0.84ないし1.2の範囲内のZ0/r0比をもつイオントラップである縦に並んだ少なくとも2台の質量分離装置を含んで構成される質量分析計。
【請求項53】
前記質量分離装置が直列に配置されることを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項54】
前記質量分離装置が並列に配置されることを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項55】
イオン源をさらに含み、及び前記質量分離装置が前記イオン源からイオンを受け取ることを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項56】
前記双方の質量分離装置がイオントラップから成ることを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項57】
前記イオントラップのそれぞれが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項58】
前記縦に並んだ質量分離装置がそれぞれ異なるr0パラメータをもつことを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項59】
前記縦に並んだ質量分析計の双方が約0.84ないし約1.2の範囲内のZ0/r0比を持つことを特徴とする請求項58項記載の質量分析計。
【請求項60】
前記少なくとも2台の質量分離装置へイオンを与える少なくとも2つのイオン源をさらに含むことを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項61】
分析対象のサンプルをイオン化して一定の質量/電荷比をもつ分析対象物を生成する工程と、
断面において、前記第一部材セットの面が互いに向き合わされ、前記第二部材セットの面が互いに向き合わされ、前記第一部材セット及び前記第二部材セットの面によって容積が画定され、前記容積は前記第一部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第一間隔と前記第二部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第二間隔から成り、前記第一間隔の前記第二間隔に対する比が約0.84ないし約1.2の範囲内であるように構成された、各部材が面を構成する第一及び第二電極部材セットを含む質量分離装置へ前記分析対象物を移動させる工程と、
前記部材セットへ前記容積内に前記分析対象物を前記容積内に保持する第一電界を生成する第一電圧を与える工程と、
前記部材セットへ前記容積内に前記分析対象物を前記容積から放出させる第二電界を生成する第二電圧を与える工程と、
前記容積からの前記分析対象物の放出に際して前記分析対象物を検出する工程と、
から構成される分析方法。
【請求項62】
前記質量分離装置が円筒形イオントラップから成り、前記第一部材面が端キャップ面から成り、及び前記第二部材面がリング電極内面から成ることを特徴とする請求項61項記載の方法。
【請求項63】
前記円筒形イオントラップがステンレススチールから成ることを特徴とする請求項61項記載の方法。
【請求項64】
前記端キャップにメッシュが含まれることを特徴とする請求項62項記載の方法。
【請求項65】
前記端キャップが中心に位置する開口部をもつ固体材料から成ることを特徴とする請求項62項記載の方法。
【請求項66】
前記第一及び第二電圧を与えることによって単一の質量対電荷比をもつ分析対象物が保持され及び放出されることを特徴とする請求項61項記載の方法。
【請求項67】
前記第一及び第二電圧を与えることにより一定範囲の質量対電荷比をもつ分析対象物が保持され及び放出されることを特徴とする請求項61項記載の方法。
【請求項1】
質量分離装置構造パラメータ及び対応する少なくとも8極子及び12極子膨張係数から成る膨張係数を含むデータセットから成る質量分離装置電界データを提供する工程と、
正の8極子係数及び最小の負の12極子係数に対応する質量分離装置構造パラメータを含む前記データセットの範囲を選択する工程と、
前記構造パラメータの範囲内で一構造を構成する質量分離装置を設計する工程と、
から構成される質量分離装置の設計方法。
【請求項2】
前記質量分離装置電界データにイオントラップ電界データが含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項3】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項2項記載の方法。
【請求項4】
前記質量分離装置電界データの提供に、式、
を用いて前記データセットを数値計算する操作が含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項5】
前記質量分離装置構造パラメータにr0及びZ0パラメータが含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項6】
前記質量分離装置がイオントラップから成り、前記12極子係数が正であり、及び前記構造パラメータに質量分離装置の電極間に最大間隔距離を与える電極スペーサー最大値がさらに含まれることを特徴とする請求項1項記載の方法。
【請求項7】
個々にZ0/r0比及びイオントラップ電極間に介在する対応スペーシングを含むデータ対の範囲を設ける工程と、
望ましいr0を選択する工程と、
前記範囲から前記データ対の少なくとも一方を選択する工程と、
選択されたZ0/r0比及び選択されたr0を用いてZ0値を決定する工程と、
選択されたr0及び選択されたスペーシングから電極スペーシングを決定する工程と、
選択されたZ0/r0比及び決定された電極スペーシングから構成される質量分析装置を設計する工程と、
から構成されるイオントラップの設計方法。
【請求項8】
前記データ対の範囲を設ける工程に、個々にZ0/r0比及びスペーサー最大ファクターから成る前記対応スペーシングを含む前記データ対を設ける工程が含まれ、及び前記選択されたr0を前記選択されたスペーサー最大ファクターで掛け算して前記選択されたスペーシングを与える工程をさらに含むことを特徴とする請求項7項記載の方法。
【請求項9】
個々に面を構成する第一及び第二部材の各セットを設ける工程と、
断面中において、前記第一部材セットの面を互いに向き合わせ、及び前記第二部材セットの面を互いに向き合わせ、前記第一部材セットの面と前記第二部材セットの面によって容積を画定し、前記容積は前記第一部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第一間隔と前記第二部材セットの対向する各面間に介在する間隔の半分に相当する第二間隔が含まれ、前記第一間隔の前記第二間隔に対する比が約0.84ないし約1.2となるように並べる工程を含んで構成される質量分離装置の製造方法。
【請求項10】
前記第一部材にイオントラップの少なくとも1個の端キャップが含まれることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項11】
前記第一間隔がZ0であることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項12】
前記第二間隔がr0であることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項13】
前記第一間隔がZ0であり、前記第二間隔がr0であることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項14】
前記第二部材にイオントラップのリング電極が含まれることを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項15】
前記第一部材の面が前記第二部材の面に対して直交することを特徴とする請求項9項記載の方法。
【請求項16】
電極体の第一端から電極体の第二端へ延びかつ半径及び中心のある長さをもつ開口部を備える、前記第一端から前記第二端までの長さをもつイオントラップ電極体を設ける工程と、
少なくとも1個の面を有する第一イオントラップ電極端キャップを設ける工程と、
前記第一イオントラップ電極端キャップ面を、前記第一端に隣接する電極体の第一面上へ前記第一面に対向するように、かつ前記イオントラップ電極体の長さの中心から一定間隔を空け、前記間隔の前記半径に対する比が約0.84ないし約1.2の範囲内となるように並べる工程と、
を含んで構成されるイオントラップの製造方法。
【請求項17】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項18】
前記第一端キャップ電極が中心に位置した開口部をもつ固体材料から成ることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項19】
前記第一端キャップ電極にメッシュが含まれることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項20】
面を備える第二イオントラップ電極端キャップを設ける工程と、
前記第二イオントラップ電極端キャップ面を、前記第二端に隣接する電極体の第二面上へ前記第二面に対向するように、かつ前記イオントラップ電極体の長さの中心から前記間隔を空けて並べる工程をさらに含むことを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項21】
前記第二電極キャップが中心に位置した開口部をもつ固体材料から成ることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項22】
前記第二電極キャップにメッシュが含まれることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項23】
前記比に関連スペーサー最大ファクターが含まれ、前記質量分離装置が前記端キャップ面と前記電極体との間の電極スペーシング及び対応スペーサー最大値からさらに構成されることを特徴とする請求項16項記載の方法。
【請求項24】
イオントラップ電極及びイオントラップ端キャップを整列させる工程と、
第一間隔2Z0を離して空けた前記イオントラップ端キャップ、前記端キャップに隣接した端部をもち、前記イオントラップ端キャップ間の中心に並べられ、かつ半径r0及び前記イオントラップ本体の中心から端部までの第二間隔を含む半分の高さをもつ開口部を備える前記イオントラップ電極体、前記イオントラップ電極体端部から前記半分の高さより小さい電極スペーシングZ0によって間隔が空けられた前記端キャップを設ける工程を含んで構成されるイオントラップの製造方法であって、
Z0/r0比に関連スペーサー最大ファクターが含まれ、前記電極スペーシングが前記r0を前記スペーサー最大ファクター倍した積より小さいことを特徴とする前記方法。
【請求項25】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項24項記載の方法。
【請求項26】
前記イオントラップ端キャップがステンレススチールから成ることを特徴とする請求項24項記載の方法。
【請求項27】
前記イオントラップ端キャップが中心に位置した開口部をもつ固体材料から成ることを特徴とする請求項24項記載の方法。
【請求項28】
前記イオントラップ端キャップにメッシュが含まれることを特徴とする請求項24項記載の方法。
【請求項29】
前記Z0/r0比及び前記関連スペーサー最大ファクターが下記列を構成することを特徴とする請求項24項記載の方法:
【請求項30】
それぞれが面を備える第一及び第二電極部材セットを含む質量分離装置であって、
断面において、前記第一部材セットの面は互いに向かい合い、また前記第二部材セットの面は互いに向かい合い、及び前記第一及び第二部材セットの面によって容積が画定され、前記容積は前記第一部材の対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第一間隔と前記第二部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第二間隔から構成され、前記第一間隔の前記第二間隔に対する比が約0.84ないし約1.2の範囲内であることを特徴とする前記質量分離装置。
【請求項31】
前記質量分離装置がイオントラップから成り、前記第一部材の面が前記イオントラップの少なくとも1個の端キャップ面から成り、及び前記第二部材の面が前記イオントラップのリング電極の内面から成ることを特徴とする請求項30項記載の質量分離装置。
【請求項32】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項31項記載の質量分離装置。
【請求項33】
前記端キャップにステンレススチールメッシュが含まれることを特徴とする請求項31項記載の質量分離装置。
【請求項34】
前記第一部材セットが前記第二部材セットに対して直交することを特徴とする請求項30項記載の質量分離装置。
【請求項35】
サンプル投入口と、
前記サンプル投入口から少なくともサンプルの一部を受け取るように構造化された、各部材が面を備えた第一及び第二電極部材セットを含む質量分離装置であって、前記質量分離装置の断面中において、前記第一部材セットの面が互いに向かい合い、前記第二部材セットの面が互いに向かい合い、前記第一及び第二部材セットの対向する面によって前記第一部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第一間隔と前記第二部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第二間隔から構成される容積が画定され、前記第一間隔の前記第二間隔に対する比が約0.84ないし約1.2の範囲内になるように構成された前記質量分離装置と、
前記質量分離装置からイオンを受け取り及び検出するように構造化された検出器と、
から構成される質量分析計。
【請求項36】
前記サンプル投入口が毛管膜から成ることを特徴とする請求項35項記載の質量分析計。
【請求項37】
前記質量分離装置が少なくともサンプルの一部をイオン化し、及び少なくとも前記イオン化されたサンプルの一部を分離するように構造化されたことを特徴とする請求項35項記載の質分析計。
【請求項38】
前記質量分離装置がイオントラップから成ることを特徴とする請求項35項記載の質量分析計。
【請求項39】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項38項記載の質量分析計。
【請求項40】
前記第一部材セットの部材面が前記円筒形イオントラップの少なくとも1個の端キャップ内面から成り、前記第二部材セットの部材面が前記円筒形イオントラップのリング電極内面から成ることを特徴とする請求項39項記載の質量分析計。
【請求項41】
前記端キャップにさらに開口部が含まれることを特徴とする請求項40項記載の質量分析計。
【請求項42】
前記端キャップにステンレススチールメッシュが含まれることを特徴とする請求項41項記載の質量分析計。
【請求項43】
前記開口部が前記容積中心と一直線に並ぶことを特徴とする請求項40項記載の質量分析計。
【請求項44】
前記円筒形イオントラップに、前記比に相関する前記端キャップの各個と前記リング電極間の電極スペーシング間隔がさらに含まれることを特徴とする請求項40項記載の質量分析計。
【請求項45】
前記電極スペーシング間隔がスペーサー最大ファクターによって前記比に相関されることを特徴とする請求項35項記載の質量分析計。
【請求項46】
前記電極スペーシング間隔が前記第二間隔の前記スペーサー最大ファクター倍の積よりも小さいことを特徴とする請求項35項記載の質量分析計。
【請求項47】
前記円筒形イオントラップがステンレススチールから成ることを特徴とする請求項39項記載の質量分析計。
【請求項48】
前記検出器が電子乗数検出器から成ることを特徴とする請求項35項記載の質量分析計。
【請求項49】
中心部分をもつ長さと本体部の第一端から前記本体部の第二端まで延びる開口部を有する本体部と、
前記本体部の前記第一端に隣接し、前記第一端に最も近くかつ前記中心部分から一定間隔が空けられた面をもつ第一端キャップと、
前記本体部の前記第二端に隣接し、前記第二端に最も近くかつ前記中心部分から前記間隔が空けられた面をもつ第二端キャップとを含んで構成されるイオントラップであって、
前記本体部及び端キャップによって前記第一及び第二端キャップ面間かつ前記開口部内に容積が画定され、前記容積が前記間隔及び前記開口部の半径から成り、前記半径の前記間隔に対する比が約0.84ないし約1.2の範囲内となることを特徴とする前記イオントラップ。
【請求項50】
前記本体部及び前記端キャップがステンレススチールから成ることを特徴とする請求項49項記載のイオントラップ。
【請求項51】
前記イオントラップが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項49項記載のイオントラップ。
【請求項52】
少なくとも1台が0.84ないし1.2の範囲内のZ0/r0比をもつイオントラップである縦に並んだ少なくとも2台の質量分離装置を含んで構成される質量分析計。
【請求項53】
前記質量分離装置が直列に配置されることを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項54】
前記質量分離装置が並列に配置されることを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項55】
イオン源をさらに含み、及び前記質量分離装置が前記イオン源からイオンを受け取ることを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項56】
前記双方の質量分離装置がイオントラップから成ることを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項57】
前記イオントラップのそれぞれが円筒形イオントラップから成ることを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項58】
前記縦に並んだ質量分離装置がそれぞれ異なるr0パラメータをもつことを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項59】
前記縦に並んだ質量分析計の双方が約0.84ないし約1.2の範囲内のZ0/r0比を持つことを特徴とする請求項58項記載の質量分析計。
【請求項60】
前記少なくとも2台の質量分離装置へイオンを与える少なくとも2つのイオン源をさらに含むことを特徴とする請求項52項記載の質量分析計。
【請求項61】
分析対象のサンプルをイオン化して一定の質量/電荷比をもつ分析対象物を生成する工程と、
断面において、前記第一部材セットの面が互いに向き合わされ、前記第二部材セットの面が互いに向き合わされ、前記第一部材セット及び前記第二部材セットの面によって容積が画定され、前記容積は前記第一部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第一間隔と前記第二部材セットの対向する面間に介在する間隔の半分に相当する第二間隔から成り、前記第一間隔の前記第二間隔に対する比が約0.84ないし約1.2の範囲内であるように構成された、各部材が面を構成する第一及び第二電極部材セットを含む質量分離装置へ前記分析対象物を移動させる工程と、
前記部材セットへ前記容積内に前記分析対象物を前記容積内に保持する第一電界を生成する第一電圧を与える工程と、
前記部材セットへ前記容積内に前記分析対象物を前記容積から放出させる第二電界を生成する第二電圧を与える工程と、
前記容積からの前記分析対象物の放出に際して前記分析対象物を検出する工程と、
から構成される分析方法。
【請求項62】
前記質量分離装置が円筒形イオントラップから成り、前記第一部材面が端キャップ面から成り、及び前記第二部材面がリング電極内面から成ることを特徴とする請求項61項記載の方法。
【請求項63】
前記円筒形イオントラップがステンレススチールから成ることを特徴とする請求項61項記載の方法。
【請求項64】
前記端キャップにメッシュが含まれることを特徴とする請求項62項記載の方法。
【請求項65】
前記端キャップが中心に位置する開口部をもつ固体材料から成ることを特徴とする請求項62項記載の方法。
【請求項66】
前記第一及び第二電圧を与えることによって単一の質量対電荷比をもつ分析対象物が保持され及び放出されることを特徴とする請求項61項記載の方法。
【請求項67】
前記第一及び第二電圧を与えることにより一定範囲の質量対電荷比をもつ分析対象物が保持され及び放出されることを特徴とする請求項61項記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公表番号】特表2006−516351(P2006−516351A)
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−557588(P2004−557588)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/038587
【国際公開番号】WO2004/051225
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505199429)グリフィン アナリティカル テクノロジーズ, インク. (1)
【出願人】(306010842)
【出願人】(306010853)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/US2003/038587
【国際公開番号】WO2004/051225
【国際公開日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(505199429)グリフィン アナリティカル テクノロジーズ, インク. (1)
【出願人】(306010842)
【出願人】(306010853)
【Fターム(参考)】
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