説明

質量弁別器

質量弁別のための分析装置を開示する。分析装置は、気体試料を保持するための試料チャンバと、試料チャンバから試料気体を受け取るように構成された分析チャンバと、分析チャンバ内で試料気体から発生したイオン種を弁別するように構成された質量弁別器と、試料チャンバを分析チャンバから分離する壁とを含み、壁は、破断しそれによって試料チャンバから分析チャンバに試料気体を放出するように制御可能な破断ゾーンを含む。1実施形態では、破断ゾーンは、電流または機械的力を加えると破断するように適応される。壁はミクロ機械加工することができる。質量弁別の方法も開示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は質量弁別器に関する。特に、質量弁別器はミクロ機械加工された素子およびコントローラを備えることができる。
【背景技術】
【0002】
質量分析計は、イオンの質量対電荷比を測定して試料の組成を決定することを可能にする分析機器である。質量分析計は3つの基本部分、すなわちイオン源、質量分離器、および1つ以上の検出器を備える。イオン源は気体試料をイオンに変換する。質量分離器は、異なるイオン種が異なる検出器、または同一の空間的感応型検出器の異なる部分に入射するように、異なる質量対電荷比のイオンを分離する。一般的に、試料は電子衝撃、大きい電界の影響、または熱イオン化等によってイオン化する。質量分離を実行するための技術も複数知られている。例えば異なる質量対電荷比を有するイオンは、電界および磁界の組合せによって異なる量だけ偏向する。したがって、イオンの経路を横切る電界および磁界の印加を利用して、イオンを異なる種に分離することができる。
【0003】
質量分析計の多くは、大量の空間を占める重量物である。
【0004】
質量分析計の大きさを軽減して、それらを可搬型にすることができるように、努力されてきた。例えばGB2026231はそのような装置を記載している。それにもかかわらず、そのような装置は大型かつ高価であり続けている。
【0005】
GB2384908およびGB2411046は、小型質量分析計を記載している。これらの装置は精密製作を必要とする。後者の装置は気体試料の流動の微調整をも必要とする。これは膜の使用によって達成される。
【0006】
先行技術の装置は全て高価である。中には、他より長い作業期間および高い精度を提供するものがある。
【0007】
医療診断では、患者を検査するための正確な単回使用装置を持つことが望ましい。使用後に装置は処分され、それによって感染が他の患者に伝わるのが回避される。そのような装置は小さくコンパクトであって、結果をおそらく看護師または患者のかかりつけの開業医または医師によって容易かつ迅速に得ることができることが理想である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】GB2026231
【特許文献2】GB2384908
【特許文献3】GB2411046
【発明の概要】
【0009】
本発明は、先行技術の問題を克服しようとするものである。したがって、本発明は、気体試料を保持するための試料チャンバと、試料チャンバから試料気体を受け取るように構成された分析チャンバと、分析チャンバで試料気体から発生したイオン種を弁別するように構成された質量弁別器と、試料チャンバを分析チャンバから分離する壁であって、破断するように制御可能でありそれによって試料チャンバから分析チャンバ内へ試料気体を放出する破断ゾーンを含む壁とを備える、質量弁別素子、コンポーネント、またはサブシステムのような分析装置を提供する。破断は断裂ゾーンまたは脆弱部としても知られる。破断後、2つのチャンバをつなぐアパーチャが形成される。破断ゾーンのため、装置は単回使用の使い捨て装置である。用語「質量弁別器」によって、我々が意味するものは、フル質量分析計が可能であるように任意のイオン種(またはより正確には、特定の質量対電荷比を有するイオン)を識別することができるのではなく、少数のイオンを弁別することのできる質量分析計である。そのような分析装置は呼気分析に用途を見出す。単一の分析装置より多くのイオン種を弁別するために、複数の分析装置を(例えば積み重ねて)一緒に使用することができる。
【0010】
試料チャンバは開放または閉鎖チャンバとすることができる。チャンバが閉鎖される場合、これは、前記試料を試料チャンバ内に導入するために構成された進入弁によって達成することができる。
【0011】
壁の破断ゾーンは、コントローラによって電流を印加すると破断するように適応することができる。したがって、破断ゾーンは少なくとも部分的に、電流を印加すると溶融するヒューズ材から作ることができる。破断ゾーンは、前記壁の残部より薄肉の部分から構成することができる。
【0012】
分析装置は、ミクロ機械加工、印刷、電気メッキ、LIGA、またはマイクロミリング等によって製造することができる。印刷および電気メッキは、電極のために導電性または可溶性材料を堆積するのに特に有用である。電極のいずれかに印刷を使用する場合、金属は粉末と結合性マトリクスの形を取る。全ての電極は、ガラス、シリコン、シリカ、またはそれらの組合せから作られた非導電性基板上に組み立てられる。破断ゾーンは金属膜から構成することができる。
【0013】
分析装置はさらに、試料からイオンを発生させるためのイオン調製領域を備える。また、イオンをイオンビームに集束させるように構成されたレンズ効果領域、イオンビームを偏向させるように構成された磁石、および入射イオンを検出するように構成された検出器も存在してよい。
【0014】
イオン調製領域は、試料気体がそこを通して流動することのできるギャップを間に有する1対の火花電極を備え、1対の火花電極は、電極間に充分な電位差を印加すると放電が生じ、それによって、試料が前記ギャップを流動通過するときに試料がイオン化するように構成される。イオン調製領域はさらに、1対のイオン抽出電極を含むことができる。イオン抽出電極は、火花電極の領域に電界をもたらすように構成される。イオン抽出電極および破断ゾーンの溶解アパーチャは、試料チャンバから質量弁別チャンバへの気体の流動を調整する大きさに作られる。
【0015】
試料を試料チャンバに導入する前に、試料チャンバおよび分析チャンバは、例えば10-1Pa(10-3mb)または10-2Pa(10-4mb)未満の圧力まで真空排気することができる。火花電極は間隔を置いて配置され、それらの間の電位差は、圧力が閾値より上に上昇したときに放電が発生するようにすることができる。電極は、絶縁破壊および火花の発生に充分となるまで圧力が上昇するように、固定電圧またはペデスタル電圧に保持することができる。圧力は火花が開始した後も上昇し続ける。閾圧力は約10Pa(0.1mb)または100Pa(1mb)とすることができる。火花の後、分析チャンバの圧力は、様々な電極間のギャップおよび破断の大きさによって制御される。レンズ効果領域の電極間の電圧および制御される圧力上昇は火花工程を維持し、信頼できる測定値が得られるように充分長い間測定工程を進行させることを可能にする。
【0016】
レンズ効果領域はアインツェルレンズを含むことができる。
【0017】
磁石はネオジム鉄ボロンまたは別の材料を含むことができる。磁石は代わりに電磁石とすることができる。1対の磁石を設けることが好ましい。
【0018】
ゲッタ材を分析チャンバに設けることができる。ゲッタ材という用語により、我々が意味するものは痕跡量の気体を吸収するための物質である。
【0019】
分析装置はミクロ機械加工によって製造することができる。分析装置は、イオン種が平面内の経路に沿って移動するように単一平面内に配置された電極およびアパーチャを有する略平面状装置として構成することができる。イオンを偏向させるように構成された磁石は、平面と直角に磁界をもたらすように構成され、その結果、磁石は素子の平面の外に位置する唯一のコンポーネントになりそうである。分析装置は電極間のアパーチャが共通軸上に位置する状態に構成することができ、前記軸は装置の中心から偏位することができる。
【0020】
装置はまた、破断ゾーン、イオン調製領域、レンズ効果領域、および検出器のうちの少なくとも1つを外部コントローラに接続するために、電気端子を備えることもできる。
【0021】
また、分析装置を備え、かつ電極および破断ゾーンに電界および電流を提供するように構成されたコントローラをさらに備えた、分析システムまたは質量弁別システムをも提供する。
【0022】
コントローラは電流源およびスイッチを含むことができる。加えて、コントローラは電圧源、さらなるスイッチ、および検出器で受け取る電流を監視するための計器を含むことができる。コントローラはまた、電極への電圧の印加、特に破断ゾーンおよび火花ギャップへの電流の印加のタイミングを計るためのタイミング装置をも含むことができる。
【0023】
分析システムはさらに、弁別の結果を使用者に対して表示するために、ディスプレイまたは1組のLEDインジケータのような読出し手段を備えることができる。読出し手段は、例えば試料が試料チャンバ内に受け取られた後、試料が分析チャンバ内に導入された後、または弁別事象が発生した後で、分析装置を差し込むことのできる別個の基本ユニットまたはカード読取装置に設けてもよい。このようにして、分析装置は、基本ユニットのソケットまたはキャディによって受容されるカートリッジとみなすことができる。
【0024】
本発明はまた、試料チャンバと破断するように制御可能な破断ゾーンを含む壁によって試料チャンバから分離された分析チャンバとを備えた分析装置を使用する質量弁別の方法であって、気体試料を試料チャンバ内に導入するステップと、電流を印加して壁を破断ゾーンで破断させ、壁を介して分析チャンバ内に試料を放出させるステップと、分析チャンバ内の1対の火花電極間に電位差を印加して、電極間に放電を生じさせ、放電により試料をイオン化させるステップと、試料気体から発生したイオン種を弁別するステップと、を含む方法をも提供する。
【0025】
分析装置の製造中に、試料チャンバおよび分析チャンバは真空排気される。この真空は、気体試料が試料チャンバ内に導入されるまで維持される。試料チャンバおよび分析チャンバは10-2Pa未満の圧力まで真空排気してよい。
【0026】
火花電極間の放電は、分析チャンバまたはその一部分における圧力が閾値を超えた後で発生する。分析チャンバまたはその一部分における圧力の閾値は、約100Paとすることができる。
【0027】
以下に、本発明の実施形態を先行技術の態様と共に、添付の図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る質量弁別器の略図である。
【図2】図1の実施形態の2つのチャンバを分離する壁にある破断ゾーンが破断する前の壁の顕微鏡図である。
【図3a】質量弁別素子の略断面図である。
【図3b】質量弁別素子の略断面図。
【図3c】質量弁別素子の略断面図である。
【図3d】質量弁別素子の略斜視図である。
【図4】図2の壁の破断後の顕微鏡図である。
【図5】破断点を制御するために使用することのできる追加的特徴を示す略図である。
【図6】アインツェルレンズの領域における電気力線を示す略図である。
【図7a】図1の素子を備えた第1実施形態に係る質量弁別システムの略図である。
【図7b】図1の素子を備えた第2実施形態に係る質量弁別システムの略図である。
【図8】第2実施形態に係る質量弁別器の略図である。
【図9】第3実施形態に係る質量弁別器の略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、分析装置または質量弁別素子1の第1実施形態を示す。分析装置は試料チャンバ10および質量弁別チャンバ20を含む。質量弁別チャンバ20は、2つの領域、すなわちイオン調製領域50および分析領域70を含むとみなすことができる。イオン調製領域50は、従来の質量分析計のイオン源と同じ機能を有する。
【0030】
2つのチャンバは、チャンバ10、20内で真空を形成しかつ維持することができるように、清浄な低気体放出材料から製造することができる。加えて、真空システムから気体の痕跡を除去するための物質であるゲッタ材を、分析領域70に含めることができる。
【0031】
試料チャンバ10は一定量の試料を封入するように構成される。試料は進入弁30を介して試料チャンバ10内に導入される。この弁30はシリコンダイアフラム、穿刺システム、または衝撃破壊システム(break‐by‐blow システム)に基づくマイクロバルブとすることができ、試料チャンバ10の周囲または縁部の任意の位置に配置することができる。
【0032】
試料チャンバ10および質量弁別チャンバ20は壁15によって分離される。この壁15は、試料チャンバ10から弁別チャンバ20へ物質が通過することを可能にするアパーチャを提供するために破壊することのできる領域を含む。これは、予め弱化された部分の制御された破断の結果、アパーチャがもたらされるように、壁15の残部と比較して厚さが低減された部分のような、予め弱化された部分を壁15に含めることによって達成される。破断するように適応された部分は破断ゾーンとして知られるが、断裂ゾーンまたは脆弱ゾーンとしても知られる。
【0033】
図1に示す特定の実施形態では、壁15の予め弱化された部分は、薄い金属膜として製造された可溶装置40として提供される。可溶装置に電流が印加されると、加熱が生じ、膜を溶解または溶融させ、こうしてアパーチャを開口させる。可溶装置40の実施例を図2および4により詳細に示す。図2および4の可溶装置に種々の変形を施すことができ、かつ代替的可溶装置を使用することもできる。
【0034】
図2は、溶融前の可溶装置を示す。この実施例では、装置は最上部にメタライズ層を堆積したシリコン基板上の二酸化シリコンから作られる。図2において、淡灰色はメタライズを示す。この実施例では、未破断構造は、長さ100μm×幅6μm×厚さ0.2μmの予め弱化された構造を有する。厚さはメタライズ層の厚さによって決定される。メタライズは、要求される物理的性質、低い溶融温度、良好な気体透過性、堆積の容易性、および半導体基板への良好な接着性を持つ金属、例えばクロム、アルミニウム等から構成されることが好ましい。構造はメタライズをマスクとして使用して半導体基板にエッチングするか、あるいはビルドアップし、次いでメタライズを頂面に被覆することができる。図3は分析装置の断面を示す。図3bは、図3aの装置を線Y‐Y*に沿った断面で示し、さらに分析装置の蓋4および基部3を示す。図3cは、可溶装置を線X‐X*に沿った断面で示す。蓋は、可溶装置40が蓋と接触するように、装置の側面5に接着される。メタライズ層15aは非導電性(例えば半導体)基板15bの頂部にあって可溶装置を形成し、かつ蓋と接触する。製造中に、蓋が頂部に封着されるときに、試料容積と分析容積との間にシールが形成される。壁15および可溶装置40は2つの容積間の障壁を形成する。
【0035】
図4は、間隙ができた状態の溶融後の可溶装置を示す。発射された試料の間隙は幅1.2mmである。図2および4に示す可溶装置は、両側から狭窄された狭窄部を有する。別の実施形態では、可溶装置は図3dの斜視図に示すように片側だけから狭窄される。図3dの構造は、メタライズの面積の縮小により、装置を溶解させて間隙を生じるように破断させるのに必要な電流が少なくてすむという点で、図2および4の構造より有利である。溶解後に金属層に形成された間隙は蓋に隣接し、気体は試料チャンバ10から弁別チャンバ20に流動する。すなわち、気体は図1および3aでは左から右に、図4では上から下に流れる。代替的実施形態では、間隙が壁15の狭窄部のどの位置でも生じることができるように、可溶性メタライズ層を2つの半導体基板の間に介設することができる。
【0036】
可溶装置はさらに、電流が印加されたときの破断の位置を制御する特徴を含むことができる。図5に示す通り、これらの特徴は、薄い切口または切欠きのような異形特徴の形を取ることができる。
【0037】
可溶装置40を用いて試料チャンバから試料を放出する代わりに、任意のタイプの微小構造の弁を使用するか、あるいは上述したものに類似しているが、ねじりまたはクラック動作によるなどの機械的力を加えることで破断する破断可能ゾーンを使用することができる。
【0038】
可溶装置40は、試料を試料チャンバ10から弁別チャンバ20に通過させる機能を有する。それはその後のイオン光学(以下で述べる)には関与せず、したがって、試料チャンバ10と弁別チャンバ20との間の境界上のどの位置にでも配置することができる。
【0039】
可溶装置40の後の弁別チャンバ20には、一連のコンポーネントが存在する。コンポーネントはその後のイオン光学で作動する部分を有する。これらのコンポーネントの各々の作動部は共通軸上に位置する。軸はチャンバ20の中心に位置してよいが、チャンバ20の片側にわずかに偏位することが好ましい。イオン分離領域50およびキャニオン(canyon)電極領域60の全てのコンポーネントは共通軸を有する。
【0040】
壁15および可溶装置40の後に配列された第1組の特徴は、イオン調製領域内の特徴である。最初に、1対の電極から成る火花ギャップ電極52が存在する。電極の対は約50ないし100μmの幅を有し、チャンバ壁からチャンバ20の共通軸に向かって延びる。電極が共通軸に近づくにつれて、幅は先細になり、共通軸においてギャップをもたらし、かつ特徴を2つの所要電極に分割する。これらの電極の高さは典型的には100〜200μmである(すなわち、図1ではこれは平面から外に出る方向である)。電極点の先端間のギャップは50〜100μmである。ギャップの大きさは、試料気体のような試料がギャップ間を通過し、かつ電圧が電極間のギャップに印加されたときに、火花が発生するように決定される。火花は、圧力/電圧/ギャップサイズ要件が気体の絶縁破壊電圧要件を満たすために生じる。
【0041】
火花ギャップ電極構造は非導電性基板上に作製される。これは半導体基板、ガラス、またはシリコンウェハ上に成長したシリカである。電極自体は非導電性構造上に堆積された金属から形成される。金属は多くの方法で堆積することができ、例えば結合性マトリクスを持つ粉末として、または薄膜スパッタリングによって堆積することができる。典型的には火花を発生するために、200〜300Vが、上記の50〜100μmのギャップに印加される。この結果、〜2×106ボルト/メートルの電界が生じる。他の大きさのギャップにも同様の電界が要求される。
【0042】
イオン分離領域50の最後のコンポーネントはイオン抽出電極54である。これは、チャンバ20の共通軸に近い方の電極の端部が先細になるのではなく、矩形であることを除いては、火花ギャップ電極と同様の構成を有する。イオン調製電極間のギャップは約500μmである。
【0043】
イオン抽出電極は主に3つの機能を有する。第一に、可溶装置40によってもたらされるアパーチャと同様に、イオン抽出電極54間のアパーチャは、イオン調製領域から分析領域70への物質の流れにインピーダンスをもたらすには充分小さい。第二に、電極は、電極の先端間に電界をもたらすためにDC電圧を印加することができるように構成される。この電界は、イオン調製領域50から陽イオンを抽出するのに役立つ。第三に、これらの電極によってもたらされる電界は、隣接する火花ギャップ電極52に向かって延びる。実験から、この電界は火花ギャップ電極52に気体放電を引き起こし、火花ギャップ領域を超えてイオン抽出電極54に向かって延びることが示された。これはより多くのイオンをもたらすという結果を有する。したがって、この電極は放電維持電極としても知られる。
【0044】
イオン調製電極54は、低導電性/流量アパーチャを提供するので、可溶装置40と同様の方法で製造することができる。しかし、電極54間のギャップはチャンバの共通軸上に正確に配置する必要がある。これを達成するために、イオン調製電極は火花ギャップ電極52と同じ技術を使用して製造することができる。
【0045】
イオン調製領域50の後、質量弁別チャンバ内の次の組のコンポーネントはキャニオン電極60である。図1に示す実施形態では、3対のキャニオン電極(参照番号62、64、66によって識別される)がある。キャニオン電極60は2次元アインツェルレンズとして働く。他のタイプのイオンビーム集束構成が公知であり、アインツェルレンズの代わりに使用することができる。
【0046】
キャニオン電極60は、ミクロ機械加工または印刷のような精密微細加工技術を用いて作成される。キャニオン電極60は100〜200μmの間隔を置いて配置され、各対の電極の先端間のギャップは約100〜200μmである。3対の電極のうちの真ん中の対64は、外側の電極より幅広にすることができる。図6は、アインツェルレンズによって発生する電界を示す。電気力線は、電界がイオンをどのように集束させるかを指示することが示される。この場合、本書に記載する質量弁別器は平面状の装置であるため、アインツェルレンズは単なる2次元装置である。
【0047】
キャニオン電極60の後、1対の磁石80がイオンビーム100の経路の領域に配置される。(図1には1つの磁石だけが示される)。磁石80は、1つがイオンビームの平面の上に、もう1つが下にくるように配置される。イオンビームは2つの磁石の間の空間を通過することができる。磁石はネオジム鉄ボロン磁石のような強力な永久磁石であることが好ましいが、他の材料を使用してもよい。電磁石を使用することもできる。磁石はそれらの間の中間点に約0.3テスラの磁界を生じることが好ましい。磁界によって生じるイオンビームの偏向は、磁石の位置が装置の平面より上または下にあるため、装置の平面内にで行なわれる。
【0048】
電極52、54、62、64、66は全部、全ての高さで同一断面を有する。つまりそれらは直角柱である。
【0049】
弁別チャンバ20の分析領域70の遠端にファラデーカップ90が存在する。ファラデーカップは導電電極を形成する金属カップである。カップは、そこに落下するイオンが電流を流れさせるように電位を維持する。誘発される電流は入射イオンの数に比例する。図1に示す実施形態では、関心対象の各イオン種に1つずつ、2つのカップが設けられる。ファラデーカップ90からの電流は、低雑音低電流測定回路(図示せず)に提供される。約10-15アンペアの感度が要求される。2つのファラデーカップは、12CO2および13CO2またはC162およびC182の分子イオンのような2つの種を検出するために使用される。ファラデーカップは、磁石80によって偏向された後のイオンを捕集するために、軸外に配置される。ファラデーカップは、検査されるイオン種によって、異なる位置に配置されるように作製することができる。加えて、3つ以上の種の存在を調べる場合には、3つ以上のファラデーカップを使用することができる。
【0050】
分析装置1は、図7aに示すように、質量弁別システム200の一部として含めることができる。システム200は、装置または素子1の動作を制御するためのコントローラ210を含む。コントローラ210は、制御システム220および分析システム230を含むことができる。制御システム220は、試料チャンバと弁別チャンバとを分離する壁の破断ゾーンを溶解または破断するために電流を供給するための電流源を含むことができる。制御システム220はまた、種々の電極に、例えば火花ギャップ電極52およびアインツェルレンズ電極60に電位差を印加するために、電圧源をも含むことができる。コントローラ210は、接続212(溶解/破断装置への電流源接続)、214(火花ギャップ電極および任意選択的にイオン抽出電極への電圧接続)、および216(キャニオン電極への電圧接続)によって質量弁別素子に接続される。コントローラはまた、分析工程を最適化するように、可溶装置40の溶解後の時間または分析チャンバ20の圧力上昇に基づく火花ギャップにおける電圧のタイミングのような、電流および電圧の印加のタイミングをも制御することができる。コントローラはまた、検出器に到達するイオン電荷/電流を読み出すために、検出器に接続することもできる218。分析システム230は、検出されたイオン電荷/電流に計算を実行して、使用者に試料の内容についての指標を提供するように構成することができる。コントローラ210は装置1と一体化したユニットとして設けることができる。
【0051】
代替的実施形態では、質量弁別システム201は分析システム230を含まない。この場合、図7bに示す通り、分析システム230は、コンピュータのような別個の基本ユニット内に設けることができ、そこにシステム201を接続することができる。図7bのシステム201は、図7aのシステム200よりコンパクトであり、かつ製造がより安価である。システム201は、クレジットカード、タバコの箱、またはUSBメモリスティックの大きさの小型携帯ユニットとして提供することができる。システム201は質量弁別素子1、および測定を実行するために必要な全ての制御システムを含む。生の測定結果は、ユニットがベースステーションまたはコンピュータ230に接続またはプラグインされるまで、保存される。接続されたときに、結果の分析が、分析ユニット230によって使用者に提供される。弁別システム201と分析システム230との間の接続は、USBまたは他の適切な接続によって行なうことができる。図1に示した分析装置1の動作を以下で説明する。
【0052】
上述の通り、装置1は、試料チャンバ10および質量弁別チャンバ20の2つの容積を有する。使用前の初期状態では、2つの容積は約10-4ミリバール(10-2Pa)の高真空に製造かつ保持される。これは、上述の通り、清浄な低気体放出材料を用いて、かつ分析領域70内にゲッタ材を含めることによって維持される。呼気試料のような試料は試料入口弁30を介して導入される。試料は一般的に任意の気体試料、例えば混合気体試料、またはエアロゾルでもよい。呼気の試料が導入されると、試料チャンバ10の圧力が約1000ミリバール(105Pa)に上昇する。
【0053】
次のステップは、測定シーケンスを起動することである。最初に種々の電圧がそれぞれの電極に印加される。例えば火花ギャップ電極52、イオン抽出電極54、およびキャニオン電極60に電圧が印加される。この初期化ステップの後、測定シーケンスを開始することができる。試料気体は試料チャンバ10内に保持され、かつ可溶装置40の存在によって弁別チャンバ20に進入することが防止される。図1の実施形態では可溶装置40を溶解することである破断ゾーンの破断によって、可溶装置40のアパーチャが開口する。可溶装置は、電極に電流を印加することによって溶解する。電流は可溶装置の導電部を加熱し、幅が狭められ予め弱化された部分を溶融または溶解させる。ひとたび開口すると、アパーチャは試料チャンバ10から弁別チャンバ20への試料気体の流動を制限する大きさになる。例えば、図2に示すように、アパーチャの大きさは5μm未満、好ましくは1〜2μmとなる。図1の実施形態では、このアパーチャは呼気を試料リザーバからイオン調製領域に通過させるという唯一の機能を有し、イオン光学には関与しない。
【0054】
試料気体の一部が溶解した可溶装置40を介して流れた後、弁別チャンバ20内の圧力は上昇する。
【0055】
弁別チャンバ20は、イオン抽出電極54によって複数の領域に分割される。第1領域はイオン調製領域20であり、第2領域は分析領域70である。イオン抽出電極54はまた、試料気体の流動を減速するような大きさに作られる。したがって、可溶装置40の破断後、試料気体はイオン調製領域50に流入し、そこの圧力が上昇する。上記初期化ステップで、約200ないし300Vの電圧が火花ギャップ電極に印加される。火花ギャップ電極間の小さい(〜100μm)ギャップは、約2×106ボルト/メートルの電界をもたらす。イオン調製領域50の圧力が約1ミリバール(100Pa)に達すると、火花ギャップ電極52間の気体に放電が自然発生する。放電は気体の絶縁破壊およびイオン化によって引き起こされる。放電の結果、陽および陰イオン、電子、ならびに中性気体原子の混合物を含むプラズマが生成される。弁別器が透明な材料で作られた場合、放電を見ることができる。気体流動の設計およびシステム内の圧力上昇のため、火花ギャップの放電は、溶解した間隙に由来する試料気体の圧力波と同時に起きる。
【0056】
イオン調製領域50の圧力は上昇し続ける。圧力上昇の速度は、可溶装置40のアパーチャによってもたらされる流れへのインピーダンスによって決定される。イオン調製領域50の圧力が約0.5ミリバール(50Pa)の圧力下限P1より高く、かつ予め定められた圧力上限P2より低く維持される間、放電は続く。圧力が圧力下限P1より低くなると、気体密度が低すぎて放電は続かない。圧力上限P2は少なくとも10ミリバール(103Pa)であり、これよりかなり高く、例えば100ミリバール(104Pa)であってもよい。P2より高い圧力では、自由電子およびイオンを維持するには気体密度が高すぎる。したがって、気体密度は放電を抑制する。圧力は最終的にシステム全体で約300ミリバールに等しくなる。
【0057】
イオンが火花ギャップ電極52によった発生した後、イオンはイオン抽出電極54に向かって移動する。上述の通り、イオン抽出電極54は、火花ギャップ電極52に向かって延びかつイオンの抽出に役立つDC電界をもたらす。イオン抽出電極54はまた、分析領域70への試料気体の流れにインピーダンスをもたらす。イオン抽出電極54の位置は、イオンが後続キャニオン電極60の軸上に放出されることを確実にするように、装置の共通軸上にある。
【0058】
イオン抽出電極54間のアパーチャは、分析領域70の圧力が初期の高真空から上昇することを可能にする。圧力が上昇すると、イオンの平均自由行路が減少する。圧力が約5×10-3ミリバール(0.5Pa)に達すると、イオンの平均自由行路は小さすぎて、中性気体分子と衝突することなく充分なイオンをファラデーカップ検出器90に到達させることができない。したがって電極は、分析領域70の圧力を約10-3ミリバール(0.1Pa)未満に維持するために、イオン調製領域50における気体分子の流れにインピーダンスをもたらす。インピーダンスは、測定を行なうことができるように圧力の上昇を減速するのに充分である。
【0059】
イオン抽出電極54は、熱エネルギでイオンをキャニオン電極領域60に提示する。図1の実施形態では、キャニオン電極60は、一緒にアインツェル型レンズを形成する3対の電極62、64、66から構成される。イオン抽出電極54から出射するイオンは、一定範囲の運動方向を有する。実際には、方向はおおよそ2πの分布を取る。キャニオン電極60はこの分布を受けて、イオン抽出電極54から出射する充分な数のイオンを略直線状のビーム100としてファネリングする。キャニオン電極60に印加される電圧は、キャニオン電極60を通過した後、約10eVまたはそれをわずかに下回る低いエネルギのイオンを提供するように選択される。そのような用途では、アインツェルレンズにおける外側の電極62、66は接地され、真ん中の電極64は約100〜500Vの電圧に保持される。図1に示す実施形態では、2つの外側の電極62、66は、イオンに必要なエネルギを提供するために、固定電圧に保持される。例えば10eV程度の電圧を有するイオンを生成するために、約10Vの電圧が印加される。電極は、いつでも作動できる装置であるために装置毎の電圧のチューニングを全くまたはほとんど必要としないと解釈できるほど充分に精密である精密微細加工技術を使用して製造することが好ましい。
【0060】
上述の通り、略直線状でありかつよく閉じ込められたイオンビームが、キャニオン電極60の出力部から出現する。このビームは対を成す磁石80の間を通過する。イオンは磁石によって生じる磁界によって振れるので、磁石から出射するビームは、キャニオン電極60から出射したビームの方向に対して一定の角度だけ偏向している。磁石は、磁界の方向が装置1の平面に対して直角を成し、かつイオンビームの振れが装置1の平面内で行なわれるように配置される。振れの大きさはイオンの質量対電荷比に依存する。したがって1価のイオンの場合、振れ角は、軽イオンの場合より重イオンの方が小さい。例えば1価の炭素‐12イオンは1価の炭素‐13イオンより大きく振れる。イオンビームの振れは角度効果であるので、異なる質量対電荷比を有するイオンは、磁石からわずかに異なる発散経路に出現する。
【0061】
装置の端部で、振れたイオンビームの経路にはファラデーカップ配列が存在する。関心対象の各イオン種を検出するために1つのファラデーカップ90が使用される。イオンがファラデーカップ90内に落下すると、カップに小さい電荷が蓄積される。この電荷はカップに入射するイオンの数に比例する。蓄積された電荷は電流として読み出すことができる。各ファラデーカップからの電流は、低雑音電流測定回路によって検出される。他の実施形態では、多数のファラデーカップ検出器を使用して、異なるイオンの種の空間的分離を記録し、それによって異なる診断を生じることができる。代替的に、離散的検出器の代わりに、連続的な振れの範囲に跨る検出器アレイを使用することができる。
【0062】
別の代替的実施形態では、複数の弁別システムを、単一の弁別ユニットのみにより可能であるより広範囲のイオン種を分析するために、一体に積み重ねることができる。積重ねの各弁別器は、異なる組のイオンを検出するように構成される。これは、異なる量の振れを重荷電イオンまたは様々な荷電イオンの経路に整合させるように検出器の位置を変更することによって、達成することができる。
【0063】
一実施形態では、コントローラ210は、各々の検出器の電荷または電流の比を計算するように構成された測定回路を含むことができる。代替的に、図7bに示す通り、計算は、システム230に接続されたコンピュータのようなシステムの外部の装置で実行することができる。
【0064】
計算された質量対電荷比は、個人による特定の化学種の生物学的吸収を決定するために使用することができる。例えば、炭素‐13、窒素‐15、または酸素‐18のようなマーカ種を添加した化合物を患者に摂取させるか注入することができる。次いで、装置1を使用することによって、マーカ種が患者の呼気に到達する速度を検査することができる。吸収の速度により、患者に特定の疾患、疾病、または病状があるか否かを決定することができる。比率を使用すると、1つのイオン種に影響する要因は他のイオン種にも影響するので、個々の装置間の較正の問題が回避される。
【0065】
可溶装置40を破断することによって測定工程を開始した後、イオン調製領域50および分析領域70内の圧力は上昇し始める。イオン調製領域50および分析領域70内の圧力が、イオンの発生を妨げあるいはイオンの平均自由行路を低減させる容認できないレベルに達し、検出器90に到達するイオンの数が非常に少なくなってしまう前に、測定工程を実行し、完了しなければならない。気体分子の数の増加も、衝突によってイオンを偏向させ、あるいはイオンを中性化させる。
【0066】
可溶装置40およびイオン調製電極のアパーチャは、アパーチャにおける低流速を確実にするために、1〜100μmの範囲の直径を有することが好ましい。この範囲の直径を有するアパーチャは、2秒もの間圧力上昇が起きることを可能にするが、数ミリ秒もの短時間にすることができる。短時間の測定期間のため、我々はこの技術を「フラッシュ質量分析法」と呼ぶことがある。
【0067】
図1の実施形態は、コンパクトで低コストの質量弁別器をいかにして達成することができるかを示す。装置1のコンパクトさは、コンピュータまたは単純なカード読取装置のようなベースステーションにプラグインすることのできるカードとして、装置を実現できることを意味する。ベースステーション(図7b参照)は、検出器から結果的に得られた電流の分析を実行し、試料に存在する選択されたイオンの数の比として質量弁別器の測定出力を提供する。カードはおおよそクレジットカードの大きさとすることができるが、厚さはそれより大きいかもしれず、あるいは大きさをさらに縮小してUSBメモリスティックの大きさにすることができる。装置1は、1回使用した後処分される、単回使用の装置とすることが期待される。
【0068】
質量弁別装置の代替的実施形態を図8および9に示す。
【0069】
図8は、イオン抽出電極54とキャニオン電極60との間の追加的フィルタ300を示す。フィルタ300は、分子のような中性粒子がキャニオン電極60に通過するのを防止するように構成された狭い間隙を提供する。フィルタは、他の電極の幾つかと同じミクロ機械加工技術を用いて製造することができる。
【0070】
図9は、可溶装置40および火花ギャップ電極52が単一の電極対53に結合され、それが両方の電極の機能を果たすようにした基本装置を示す。加えて、例えばキャニオン電極60に狭いアパーチャが設けられ、かつ電極53が充分な数のイオンを提供する場合、図9に示すように、イオン抽出電極は含まなくてもよい。
【0071】
当業者は、添付する特許請求の範囲から逸脱することなく、上述した質量弁別素子またはシステムに対し様々な変形および変更を施すことができることを容易に理解されるであろう。例えば異なる材料、寸法、および電極構成を使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気体試料を保持するための試料チャンバと、
前記試料チャンバから試料気体を受け取るように構成された分析チャンバと、
試料気体から発生したイオン種を前記分析チャンバで弁別するように構成された質量弁別器と、
前記試料チャンバを前記分析チャンバから分離する壁であって、破断し、それによって試料気体を前記試料チャンバから前記分析チャンバ内に放出するように制御可能な破断ゾーンを含む壁と、を備えた分析装置。
【請求項2】
前記試料チャンバが、前記試料を前記試料チャンバ内に導入するように構成された進入弁によって閉鎖される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記壁の前記破断ゾーンが、コントローラによって電流または機械的力を加えられると破断するように適応された、請求項1または2のいずれかに記載の装置。
【請求項4】
前記破断ゾーンが前記壁の残部より薄肉の部分から構成される、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記壁がミクロ機械加工される、請求項3または4に記載の装置。
【請求項6】
前記壁が金属、絶縁体、もしくは半導体、またはそれらの組合せである、請求項3ないし5のいずれかに記載の装置。
【請求項7】
前記破断ゾーンが金属、絶縁体、または半導体の薄膜を含む、請求項1ないし6のいずれかに記載の装置。
【請求項8】
前記質量弁別器が、試料からイオンを発生させるためのイオン調製領域を含む、請求項1ないし7のいずれかに記載の装置。
【請求項9】
前記質量弁別器が、
イオンをイオンビームに集束させるように構成されたレンズ効果領域と、
前記イオンビームを偏向させるように構成された磁石と、
入射イオンを検出するように構成された検出器と、をさらに含む、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記イオン調製領域は、試料気体がそこを通過流動することのできるギャップを間に有する1対の火花電極を含み、前記1対の火花電極は、電極間に電位差を印加することにより放電が発生し、それによって試料が前記ギャップを流動通過するときにイオン化されるように構成された、請求項8または9に記載の装置。
【請求項11】
試料が前記試料チャンバ内に導入される前に、前記試料チャンバおよび分析チャンバが真空排気される、請求項1ないし10のいずれかに記載の装置。
【請求項12】
前記試料チャンバおよび分析チャンバが10-2Pa未満の圧力まで真空排気される、請求項11に記載の装置。
【請求項13】
前記分析チャンバまたはその一部分の圧力が閾値を超えたときに放電が発生するように、前記火花電極および前記火花電極に印加される電位差が構成された、請求項10、または請求項10に従属する場合の請求項11および12のいずれかに記載の装置。
【請求項14】
前記分析チャンバまたはその一部分の圧力の閾値が100Paである、請求項13に記載の装置。
【請求項15】
前記イオン調製領域が1対のイオン抽出電極をさらに含む、請求項10、または請求項10に従属する場合の請求項11ないし14のいずれかに記載の装置。
【請求項16】
前記イオン抽出電極が前記火花電極の領域に電界をもたらすように構成された、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記レンズ効果領域がアインツェルレンズを含む、請求項9に従属する場合の請求項9ないし16のいずれかに記載の装置。
【請求項18】
前記アインツェルレンズが3対の電極を含み、各電極対が間にギャップを有し、これらのギャップを介してイオンが通過することができる、請求項17に記載の装置。
【請求項19】
前記磁石がネオジム鉄ボロンを含む、請求項9に従属する場合の請求項9ないし18のいずれかに記載の装置。
【請求項20】
前記検出器がファラデーカップである、請求項9に従属する場合の請求項9ないし19のいずれかに記載の装置。
【請求項21】
前記分析チャンバにゲッタ材が設けられた、請求項1ないし20のいずれかに記載の装置。
【請求項22】
ミクロ機械加工によって製造された、請求項1ないし21のいずれかに記載の装置。
【請求項23】
前記破断ゾーン、前記イオン調製領域、前記レンズ効果領域、および前記検出器のうちの少なくとも1つに外部接続するための電気端子を備えた、請求項3、8、または請求項3もしくは8に従属するいずれかの請求項に記載の装置。
【請求項24】
請求項3ないし23のいずれかに記載の装置を備え、かつ前記破断ゾーンに電流を提供するように構成されたコントローラをさらに備えた分析システム。
【請求項25】
前記コントローラが電流源およびスイッチを含む、請求項24に記載の分析システム。
【請求項26】
前記コントローラがさらに、前記火花電極に電位差をもたらすように構成された、請求項10に従属する場合の請求項24または25に記載の分析システム。
【請求項27】
前記コントローラが電圧源および第2スイッチを含む、請求項26に記載の分析システム。
【請求項28】
イオン種分析結果を使用者に表示するように構成された読出し手段をさらに備えた、請求項24ないし27のいずれかに記載の分析システム。
【請求項29】
前記装置が第1ユニットに設けられ、前記読出し手段が第2ユニットに設けられ、イオン種分析結果を前記第1ユニットから前記第2ユニットに転送するために、前記第1ユニットが前記第2ユニットに着脱自在に結合されるように構成された、請求項28に記載の分析システム。
【請求項30】
試料チャンバと壁によって前記試料チャンバから分離された分析チャンバとを備え、前記壁に破断するように制御可能な破断ゾーンを含む分析装置を使用する質量弁別の方法であって、
気体試料を前記試料チャンバ内に導入するステップと、
前記壁を破断ゾーンで破断させ、それによって前記壁を介して前記分析チャンバ内に試料を放出させるステップと、
前記分析チャンバ内に放出された気体試料からイオン種を発生させるステップと、
試料気体から発生したイオン種を弁別するステップと、を含む方法。
【請求項31】
前記破断ゾーンが電流の印加によって破断する、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
イオン種を発生させるステップが、前記分析チャンバ内の1対の火花電極に電位差を印加して電極間に放電を発生させて、放電により試料をイオン化させることを含む、請求項30または31に記載の方法。
【請求項33】
気体試料を前記試料チャンバ内に導入する前に、前記試料チャンバおよび分析チャンバが真空排気される、請求項30ないし32のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
前記試料チャンバおよび分析チャンバが10-2Pa未満の圧力まで真空排気される、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
壁を破断させるステップの後、前記分析チャンバの圧力が上昇し、かつ前記分析チャンバまたはその一部分の圧力が閾値を超えた後、イオン種を発生させるステップが生じる、請求項30ないし34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記分析チャンバまたはその一部分の圧力の閾値が100Paである、請求項35に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a−3d】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a−7b】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2012−505495(P2012−505495A)
【公表日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−529622(P2011−529622)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【国際出願番号】PCT/GB2009/002399
【国際公開番号】WO2010/041010
【国際公開日】平成22年4月15日(2010.4.15)
【出願人】(507187802)ザ サイエンス アンド テクノロジー ファシリティーズ カウンシル (15)
【氏名又は名称原語表記】THE SCIENCE AND TECHNOLOGY FACILITIES COUNCIL
【住所又は居所原語表記】Harwell Innovation Campus, Rutherford Appleton Laboratory, Chilton, Didcot, Oxon OX11 0QX, UNITED KINGDOM
【Fターム(参考)】