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質量標識体
説明

質量標識体

質量分析によって検出するために生体分子を標識するための反応性質量標識体であって、チオール基又はカルボニル基を標識するための反応性官能基を含む反応性質量標識体。また、質量分析によって検出するために生体分子を標識するための反応性質量標識体であって、以下の構造を含む質量標識体を提供する。
X−L−M−S−Re
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分であり、Sは、以下の基:式(I)を含む質量系列修飾基であり、Reは、前記質量標識体を前記生体分子に結合させるための反応性官能基である



式(I)
(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKは両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、少なくとも1である))

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アナライト、特にタンパク質等の生体分子を標識するための化合物に関する。また、本発明は、特定の質量標識体を用いて質量分析により分析を行う方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの医療分野は、疾患によって引き起こされる変化又は疾患に応答して引き起こされる変化を検出する能力に依存している。かかる変化は、診断手段を提供し、ワクチン及び薬剤等の治療用化合物の標的についての洞察をもたらす。医療では、核酸、タンパク質、ステロイド、糖、及び脂質を含む広範囲に亘る生体分子を用いることができる。この状況では、質量分析計を用いてかかる生体分子を定量的に検出する能力によって、前記生体分子に関する研究が著しく進展し、ヒト及び動物の疾患、環境分析及びモニタリング、並びに食品及び飲料の製造に応用される。特に、全ての分類の生体分子をモニタリングするための同位体希釈質量分析において、合成定量レファレンスを提供するための安定同位体の使用が開発されている。しかし、これら方法は、利用可能な合成標準物質を以前から必要としているが、これは常に可能である訳ではない。
【0003】
近年、質量分析による生体分子の定量分析を更に改良するために、重同位体置換基を有する広範囲に亘る化学質量タグが開発されている。タグの設計によって、タグセットに含まれるタグは、同一の化学構造を有するが絶対質量は異なるアイソケミックタグ、又は構造も絶対質量も同一であるアイソバリックタグのいずれかである。アイソケミックタグは、一般的に、MSモードにおける定量に用いられるが、一方アイソバリックタグは、固有の質量を有するレポーターフラグメントを放出するためにMS/MSモードでフラグメント化されなければならない。今日まで、同位体でドープされた質量タグは、主にタンパク質及び核酸を分析するために使用されている。
【0004】
初期のアイソケミック質量タグの例は、同位体コード化親和性タグ(ICAT)であった(非特許文献1)。ICAT試薬は、一対の質量タグであり、前記対の一方は、重同位体によって重量に差をつけた(重)タグであり、他方は置換基を有しない(軽)タグである。2個のサンプルを重タグ又は軽タグのいずれかで標識し、次いで、混合した後、LC−MSによって分析する。両方のサンプル中に存在するペプチドは、重同位体原子置換数に比例して異なる質量を有するプレカーサーイオンの対を提供する。アイソケミックタグの更なる例としては、4個以下の異なる試薬を提供するICPL試薬が挙げられる。
【0005】
アイソケミックタグは、プロテオミクス研究の再現性をある程度改善することができるが、これは、質量スペクトルの複雑性を高めることを犠牲にして達成されるものである。この制限を克服するため及びタンデム質量分析の特異性の利点を活かすために、アイソバリック質量タグが開発された。2000年に導入されてから、アイソバリック質量タグは、タンパク質及びペプチドにおけるアミン官能基を普遍的に標識した後に複数のサンプルを混合し同時に分析することによってプロテオミクス発現プロファイリングの手段を改善している。タグが同一の質量を有するアイソバリックタグであるので、質量スペクトルの複雑性を高めることがない。その理由は、同一ペプチドの全てのプレカーサーが、クロマトグラフィー分離において正確に同一の点で出現し、同一の総質量を有しているためである。タンデム質量分析の前に分子がフラグメント化される場合のみ、固有の質量レポーターが放出されて、各オリジナルサンプルに存在するペプチドの相対量又は絶対量を計算することが可能となる。
【0006】
特許文献1には、アイソバリック質量タグの基礎となる原理が記載されており、分子内の様々な特定の分子がそれぞれ13C及び15Nを含む重同位体で置換されている好適なタグの具体例が提供されている。特許文献1は、複数のアイソバリックセットを作製して、個々のタグのサイズを過度に増大させることなしに利用可能な全多重化率を高めるためのオフセット質量の使用について更に記載している。特許文献2は、更なるアイソバリックタグセットについて記載している。特許文献3は、3−[2−(2,6−ジメチル−ピペリジン−1−イル)−アセチルアミノ]−プロパン酸−(2,5−ジオキソ−ピロリジン−1−イル)−エステル(DMPip−βAla−OSu)を含むアイソバリック質量タグの更なるセットについて記載している。
【0007】
既に開示されているアイソバリック質量タグの大きな利点にも関わらず、かかるタグで標識することができる分子の範囲、及び実現可能なマルチプレックス分析のレベルを更に改善する必要性が依然として存在する。したがって、本発明の目的は、特に、既に開示されている分子の制限を取り除くための様々な新規アイソバリック質量タグを提供することにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第7,294,456号明細書
【特許文献2】国際公開第2004/070352号パンフレット
【特許文献3】国際公開第2007/012849号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Gygi et al.,Nature Biotechnology17:994−999,“Quantitative analysis of complex protein mixtures using isotope−coded affinity tags”1999
【発明の概要】
【0010】
本発明者らは、好ましくはDMPip−βAlaに基づく共通のコア構造を用いることによって、定量的質量分析データを解釈するためのワークフロー又はソフトウェアを再設計する必要のない、選択的標識特性及び/又は付加オフセット質量を有する広範な生成物を開発することができることを見出した。更に、本発明者らは、バイオマーカーの定量及び/又は臨床アッセイの開発用に、等価なアイソバリック質量タグに直接変換されるというLC−MSにおける定量の利点を提供するアイソケミックタグを開発するために同一のコア構造を使用可能であることを示した。
【0011】
したがって、本発明は、質量分析によって検出するために生体分子を標識するための反応性質量標識体であって、以下の構造を含む反応性質量標識を提供する。
【化1】

(式中、R、R、R、及びZは、以下の定義a)〜d)のうちの1つから選択され、
a)R及びRは、共に
【化2】

を形成し、Rは、存在せず、Zは、Oであり、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、且つ互いに独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、及び置換又は非置換の複素環基から選択される;
b)R及びRは、共に
【化3】

を形成し、Rは、
【化4】

であり、Zは、Nであり、R〜Rの各々は、独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、及び置換又は非置換の複素環基から選択される;
c)Rは、
【化5】

であり、Rは、Aであり、Rは、存在せず、Zは、Oであり、haloは、ハロゲンである;
d)Rは、
【化6】

であり、Rは、Aであり、Rは、存在せず、Zは、Oであり、Bは、−NH又は−(CH−ONH(式中、nは1〜6である)であり;
前記a)、b)、c)、及びd)において、Aは、以下の構造を含む
X−L−M
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分である))
【0012】
本発明の状況で用いられる質量標識体という用語は、分析されるアナライトを標識するのに適した部分を指すことを意図する。用語「標識体」は、用語「タグ」の同義語である。本願全体を通して、用語「タンデム質量タグ(TMT)」は、用語「質量標識体」の同義語である。
【0013】
本発明の状況で用いられる質量マーカー部分という用語は、質量分析によって検出される部分を指すことを意図する。
【0014】
本発明の状況で用いられる質量正規化部分という用語は、質量分析によって必ずしも検出される訳ではないが、質量標識体が確実に所望の総質量を有するようにするために存在する部分を指すことを意図する。質量正規化部分は、構造的には特に限定されず、単に質量標識体の全体質量を変化させるためのものである。
【0015】
基Aにおける質量正規化部分Mが、質量標識体の残りの部分に結合することが好ましい。しかし、基Aにおける質量マーカー部分Xが、質量標識体の残りの部分に結合することも可能である。
【0016】
上記実施形態a)〜c)では、アミノ酸システインでみられるスルフヒドリル基を特異的に標識するための新規化合物が調製される。システイン残基の標識は、分析されるサンプルが非常に複雑である場合に好ましい。現在公知であるアイソバリック質量タグを用いると、それぞれリジン残基のN−末端及び側鎖を表すアルファ及びイプシロンアミン基が標識される。一般的に用いられているプロテオミクスワークフローでは、タンパク質は、分析前に酵素トリプシンを用いて分解される。この分解を行うと、標識に利用可能な自由N−末端が生じるので、標識されたペプチドミックスではサンプル全体に複雑性が存在する。システインは、出現頻度の比較的低いアミノ酸であり、少数のトリプシン分解ペプチドでしかみられない。システイン残基を標識し、次いで、標識されていない種を除去することによって、トリプシン分解サンプルの複雑性を劇的に低下させることが可能である。このように複雑性が低下することにより、質量分析によって、より迅速且つ高感度の分析が可能となるので非常に好ましい。欧州特許第1105517号明細書には、1回の実験で2つのサンプルを分析することができる、システイン反応性を有する同位体質量タグのセットが開示されている。本発明では、国際公開第2007/012849号に記載されているアミン標識試薬を使用する同じワークフロー及び分析方法を採用できるように、アイソバリック質量タグの原理とシステイン標識による複雑性の低下が組み合わせられる。これは、一般的なプレカーサーを適用することができるため、製造コストの点で、また方法の開発にかかる時間及びコストの点で大きな利点を有する。
【0017】
上記実施形態b)は、2−ジチオピリジン基を含み、以下のような幾つかの利点を有する:プロテオミクス研究において有用な緩衝溶液で用いられることが多い高pHでさえもシステイン残基に対して高い選択性を示す(例えば、トリエチルアンモニウム二炭酸塩 TEAB)、及び水への曝露に対して安定である。更に、この基は、必要な場合、任意のジスルフィド還元試薬で処理することによってペプチドから容易に再開裂させることができる。
【0018】
好ましい実施形態では、R及びRは、共に
【化7】

を形成し;Rは、存在せず;Zは、Oであり;R及びRは、両方ともHである。
【0019】
別の実施形態では、R及びRは、共に、
【化8】

を形成し;Rは、
【化9】

であり;Zは、Nであり;各R〜Rは、Hである。
【0020】
更なる実施形態では、Rは、
【化10】

であり;Rは、Aであり;Rは、存在せず;Zは、Oである。
【0021】
上記実施形態d)には、アルデヒド及びケトン等のカルボニル基に対して選択的反応性を有するアイソバリック質量タグのセットが開示されている。アルデヒド基及びケトン基は、自然界では、ステロイド等の複雑な生物活性分子にみられ、酸化を受けたタンパク質及び糖タンパク質にも存在している場合がある。したがって、カルボニル基に対して選択的反応性を有するアイソバリック質量タグは、広範囲に亘って有用となり得る。多数の化学基が、ケトンと反応可能であり、本発明では、ヒドラジド基及びアミノキシ基をコア分子に結合させて、カルボニル選択的アイソバリック質量タグのセットを生成する。
【0022】
好ましくは、Rは、
【化11】

であり;Rは、Aであり;Rは、存在せず;Zは、Oであり;Bは、−NHである。
【0023】
別の実施形態では、Rは、
【化12】

であり;Rは、Aであり;Rは、存在せず;Zは、Oであり;Bは、−(CH−ONHである。
【0024】
本発明の更なる態様では、質量分析によって検出するために生体分子を標識するための反応性質量標識体であって、以下の構造を含む反応性質量標識体を提供する。
X−L−M−Re
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分であり、Reは、以下の構造を含む生体分子に前記質量標識体を結合させるための反応性官能基である)
【化13】

【0025】
かかる反応性質量標識体は、改善された水可溶性及び安定性を有する。質量タグの大部分は、ペプチド及びタンパク質におけるアミン官能基を効率的に標識できるようにスクシンイミドエステル基を有する。スクシンイミド標識反応は、迅速であり且つ比較的低モル過剰で完了させることができるが、スクシンイミドエステルの加水分解に対して非常に感受性が高い。細胞表面の標識等の特定の用途では、大部分で水性環境を使用することが必要であるので、標準的なスクシンイミドエステルの使用は不可能である。スルホン化されていない親よりも加水分解に対する耐性が高いスルホ−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(スルホ−NHS)を用いたスクシンイミドエステルの改良が行われている。スルホ−NHS種の基の更なる利点は、タンデム質量タグの極性を高め、インタクトな細胞膜を通して細胞にタグが取り込まれるのを防ぐという点である。その結果、TMTのスルホ−NHS誘導体は、細胞外タンパク質を特異的に標識することができる。しかし、質量タグの製造中に遊離スルホ−NHSを除去すると問題になる場合がある。これを回避するために、本発明者らは、スルホ−テトラフルオロフェニル部分を使用可能であることを見出した。
【0026】
本発明の別の態様では、質量分析によって検出するために生体分子を標識するための反応性質量標識体であって、以下の構造を含む反応性質量標識体を提供する。
X−L−M−S−Re
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分であり、Sは、以下の基を含む質量系列修飾基であり、Reは、生体分子に前記質量標識体を結合させるための反応性官能基である)
【化14】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKが両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、少なくとも1である)
【0027】
単一のアイソバリック質量タグセットの多重化率に関する制限は、各々が固有の付加質量を有する複数のセットを提供することにより克服することができる。付加質量は、質量系列修飾基により提供される。この概念は、本明細書に援用される米国特許第7,294,456号に記載されている。本発明において、本発明者らは、DMPip−βALAコア構造のリンカー領域に更なるベータ−アラニン部分を付加することによってアイソバリック質量タグセットのアレイを開発することができることを見出した。かかる単一のアプローチは、6〜12、18、24、又はそれ以上にサンプルの多重化率を高める迅速且つ安価な手段を提供する。本発明の主な利点は、アレイに含まれる各アイソバリックセットにおける質量レポーターが、国際公開第2007/012849号に開示されている既に確立されたタンデム質量タグレポーターと正確に同じ挙動を示すという点である。1個又は2個のベータ−アラニンを組み込むと、更なる不安定なアミド結合が導入されるので、アミノヘキサン酸を用いる別のアプローチも考えられる。当業者であれば、DMPip−βALAコア構造に付加質量を導入するための具体的な手段は、特に限定されず、別の手段も本発明の範囲内であるとみなされることを理解するであろう。
【0028】
反応性官能基は、上記a)〜d)のいずれかに定義されているか、又はスルホ−テトラフルオロフェニル部分を含むことが好ましい。
【0029】
別の好ましい実施形態では、反応性官能基は、以下の基を含む。
【化15】

(式中、各Rは、独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、或いは置換又は非置換の複素環基である)
【0030】
本発明の上記実施形態のいずれかにおいても、開裂可能リンカーLは、アミド結合を含むことが好ましい。
【0031】
本発明の態様のいずれかの好ましい実施形態では、質量マーカー部分Xは、以下の基を含む。
【化16】

(式中、環状単位は、芳香族又は脂肪族であり、且つ任意の2個の隣接する原子間に独立して0個〜3個の二重結合を含み;各Zは、独立して、N、N(R)、C(R)、CO、CO(R)、C(R、O、又はSであり;Xは、N、C、又はC(R)であり;各Rは、独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、或いは置換又は非置換の複素環基であり;yは、0〜10の整数である)
【0032】
質量マーカー部分は、以下の基:
【化17】

及び
【化18】

から選択される基を含む。
【0033】
質量マーカー部分は、以下の基:
【化19】

及び
【化20】

から選択される基を含むことが好ましい。
【0034】
反応性質量標識体は、以下の構造のうちの1つを有することがより好ましい。
【化21】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKが両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、0を含む任意の正の整数である)
【0035】
好ましい実施形態では、m=0であり、反応性質量標識体は、以下の構造のうちの1つを有する。
【化22】

【0036】
これら標識は、システイン残基のチオール基と反応する。
【0037】
別の好ましい実施形態では、反応性質量標識体は、以下の構造のうちの1つを有する。
【化23】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKが両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、0を含む任意の正の整数である)
【0038】
好ましい実施形態では、m=0であり、反応性質量標識体は、以下の構造のうちの1つを有する。
【化24】

【0039】
これら標識は、ステロイドホルモン等でみられるカルボニル基と反応する。
【0040】
更なる好ましい実施形態では、反応性質量標識体は、以下の構造を有する。
【化25】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKが両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、0を含む任意の正の整数である)
【0041】
mは0であることが好ましく、したがって、前記標識体は、以下の構造を有する。
【化26】

【0042】
更なる好ましい実施形態では、反応性質量標識体は、以下の構造のうちの1つを有する。
【化27】

(式中、nは、少なくとも1である)
【0043】
nは1であることが好ましく、したがって、前記質量標識体は、以下の構造のうちの1つを有する。
【化28】

【0044】
本発明の別の態様では、2以上の反応性質量標識体のセットであって、前記セットにおける各標識体が上に定義された通りであり、各質量正規化部分によって前記質量標識体が所望の総質量を確実に有し、前記セットが以下の群:
−共通の質量の質量マーカー部分を有する標識体の群であって、前記群における各標識体が固有の総質量を有する群;又は
−質量マーカー部分を有する標識体の群であって、各質量マーカー部分が前記群における他の全ての質量マーカー部分とは異なる質量を有し、前記群における各標識体が共通の総質量を有する群;
のいずれかを含み、前記セットにおける全ての質量標識体が、質量分析によって互いに識別可能であるセットを提供する。
【0045】
1つの実施形態では、前記セットにおける各標識体は、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する。別の実施形態では、前記セットにおける各標識体は、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する。
【0046】
前記セットにおける標識体数は、前記セットが複数の標識体を含む限り特に限定されない。しかし、前記セットが2以上、3以上、4以上、又は5以上の標識体を含む場合が好ましく、6以上の標識体を含む場合がより好ましく、8以上の標識体を含む場合が最も好ましい。
【0047】
本発明の状況において総質量という用語は、質量標識体の合計質量、即ち、質量マーカー部分、開裂可能リンカー、質量正規化部分、及び質量標識体の任意の他の成分の質量の合計を指す。
【0048】
質量正規化部分は、質量のみによって限定され、前記質量は、セットにおける様々な質量標識体間で異なっていてもよい。例えば、質量の異なる質量マーカー部分を有するが、総質量は共通である標識体の群をセットが含む場合、質量正規化部分の質量は、セットにおける各質量標識体によって異なる。この場合、個々の質量標識体における質量正規化部分の質量は、共通の総質量から、前記質量標識体における特定の質量マーカー部分の質量を減じ、更に開裂可能リンカーの質量を減じたものに等しい。共通の質量の質量マーカー部分を有するが、総質量は異なる標識体の群をセットが含む場合、群中の全ての標識体の総質量が異なるように質量正規化部分の質量を変動させる必要があることは明らかである。
【0049】
前記セットにおける全ての質量標識体は、質量分析によって互いに識別可能である。したがって、質量分析計によって質量標識体を区別することができる、即ち、個々の質量標識体に由来するピークを互いに明確に分離することができる。質量マーカー部分又は質量標識体間の質量差は、異なる質量標識体又は質量マーカー部分に由来するイオンを質量分析計で区別可能であることを意味する。
【0050】
セットにおける各質量標識体は、以下の構造を有するAを含むことが好ましい。
M(D)−L−X(D)
(式中、Mは、質量正規化部分であり、Xは、質量マーカー部分であり、Dは、質量調整部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、y及びzは、0以上の整数であり、y+zは、1以上の整数である)
【0051】
質量調整部分は、以下から選択されることが好ましい:
(a)質量マーカー部分及び/又は質量正規化部分内に位置する同位体置換基、及び
(b)質量マーカー部分及び/又は質量正規化部分に結合している置換原子又は基。
【0052】
一般的に、質量調整部分は、ハロゲン原子置換基、メチル基置換基、及びH、15N、13C又は18O同位体置換基から選択される。
【0053】
本発明の1つの好ましい実施形態では、セットにおける各質量標識体は、以下の構造を有するAを含む。
X(−L−M(
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分であり、は、同位体質量調整部分であり、n及びmは、0以上の整数であり、
前記セットにおける各標識が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【0054】
好ましくは、反応性質量標識体のセットは、以下の構造のいずれかのうちの2以上の質量標識体を含む。
【化29】

(式中、は、酸素がO18であるか、炭素がC13であるか、又は窒素がN15であることを表し、前記セットにおける各標識体は、1以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【0055】
標識試薬の脱離基(例えば、チオピリジン、スクシンイミド部分)には、重同位体が存在しないことが好ましい。
【0056】
特に好ましい実施形態では、質量調整部分はC13又はN15であり、前記セットは、以下の構造を有する6個の反応性質量標識体を含む。
【化30】

【0057】
別の好ましい実施形態では、質量調整部分は、C13又はN15であり、前記セットは、以下の構造を有する6個の反応性質量標識体を含む。
【化31】

【0058】
或いは、質量調整部分は、C13又はN15であり、前記セットは、以下の構造を有する6個の反応性質量標識体を含む。
【化32】

【0059】
本発明の更なる態様では、上に定義された質量標識体の2以上のセットを含む質量標識体のアレイであって、前記アレイにおける任意の1セットの質量標識体の各々の総質量が、前記アレイの他の全てのセットの質量標識体の各々の総質量と異なるアレイを提供する。
【0060】
本発明のこの態様の目的は、1回の実験で分析することができるサンプル数(多重化率)を増加させることにある。多重化率を増加させる場合、MS/MS分析におけるサンプル数と感度との間の関係を考慮する必要がある。当業者であれば、MS/MS実験の第1段階において、有限容量を有するコリジョンセル内に所望の質量電荷比のイオンが蓄積することを理解する。次いで、捕捉されたイオンをフラグメント化し、そのフラグメントを検出器に通して、質量電荷比及び存在量を求める。含まれているサンプルが多すぎる場合、検出器に放出されるフラグメント数が機器の検出限界を下回るリスクがある。大まかに述べると、存在するアイソバリックサンプル数が増えるにつれて、感度は低下する。
【0061】
好ましくは、少なくとも1セットにおける各質量標識体は、共通の質量を有する質量系列修飾基を含み、任意の1セットの質量標識体の各々における質量系列修飾基は、アレイにおける他の全てのセットの質量標識体の各々における質量系列修飾基と異なる質量を有する。質量系列修飾基は、セットの質量を互いに分離する。
【0062】
好ましいアレイでは、少なくとも1セットにおける各質量標識体は、以下の基を含む質量系列修飾基を含む。
【化33】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKが両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、少なくとも1であり;異なる数の同位体質量調整部分が存在することにより、任意の1セットの質量標識体の各々の質量系列修飾基は、アレイにおける他の全てのセットの質量標識体の各々における質量系列修飾基と異なる質量を有する)
【0063】
特に好ましい実施形態では、質量標識体のアレイは、以下を含む:
a)質量標識体の第1のセットであって、前記セットにおける各質量標識体が、以下の構造を有する質量修飾基を含む第1のセットと、
【化34】

b)質量標識体の第2のセットであって、前記セットにおける各質量標識体が、以下の構造を有する質量修飾基を含む第2のセットと、
【化35】

c)質量標識体の第3のセットであって、前記セットにおける各質量標識体が、以下の構造を有する質量修飾基を含む第3のセット。
【化36】

【0064】
本発明の更なる態様は、質量分析による分析方法における、上に定義された反応性質量標識体の使用を提供する。
【0065】
また、分析方法であって、生体分子に関連付け可能な質量標識体を質量分析によって同定することにより生体分子を検出することを含み、前記質量標識体が上に定義された質量標識体である方法を提供する。
【0066】
前記方法は、以下の工程を含むことが好ましい:
1. 上に定義された反応性質量標識体と生体分子とを反応させる工程と、
2. 標識された前記生体分子を分離する工程と、
3. 前記生体分子に関連付け可能な前記質量標識体を質量分析によって同定する工程。
【図面の簡単な説明】
【0067】
次に、一例として、添付図面を参照して本発明を更に詳細に説明する。
【図1】図1は、システイン残基と反応することができる様々な反応性基を示す。A)マレイミド基、B)ハロアセチル基(ヨードアセチル、ブロモアセチル)、C)2−ジチオピリジン基。
【図2】図2は、システイン反応性質量標識体DMPip−βALA−DTPを合成するための反応スキームを得られる収率と共に示す。出発点は、確立されているTMT構造体と市販の化合物である。
【図3】図3は、Cys含有ペプチド(VATVCLPR)とDMPip−bALA−DTPとの標識反応のモニタリングを示す。A)は、ネイティブなペプチドを示す。B)は、還元及び標識後の粗反応混合物(は、標識されたペプチドであり、#は、質量標識体であり、は、試薬特異的副生成物である)を示す。C)は、精製後の標識されたペプチドの純度を示し、標識されていないネイティブなペプチドは、観察されない。D)は、DMPip−bALA−DTP試薬を示す。
【図4】図4は、選択されたステロイド構造を示す:エストロン(左)、プロゲステロン(中央)、テストステロン(右)。
【図5】図5は、カルボニル基と反応することができるヒドラジド質量標識体を合成するための反応スキームを示す。
【図6】図6は、カルボニル基と反応することができるアミノキシプロピル質量標識体を合成するための反応スキームを示す。
【図7】図7は、質量標識体で誘導体化されたテストステロン(T)、ナンドロロン(N)、及びベタメタゾン(B)の質量スペクトルを示す。
【図8】図8は、質量標識体されたナンドロロン及びテストステロンのMS/MSスペクトルを示す。
【図9】図9は、ヒドラジド形態のTMT質量標識体の構造を示す。図9(A)は、TMTゼロヒドラジドを示す。図9(B)は、TMT二重ヒドラジド(TMT−126ヒドラジド(左)、TMT−127−ヒドラジド(右))を示す。図9(C)は、TMT六重−ヒドラジド(TMT−126ヒドラジド(左上)からTMT−131ヒドラジド(右下))を示す。
【図10】図10は、アミノキシプロピルアミド形態のTMT質量標識体の構造を示す。図10(A)は、TMTゼロアミノキシを示す。図10(B)は、TMT二重アミノキシ(TMT−126アミノキシ(左)、TMT−127アミノキシ(右))を示す。図10(C)は、TMT六重−アミノキシ(TMT−126アミノキシ(左上)からTMT−131アミノキシ(右下))を示す。
【図11】図11は、多重化率18を達成するために異なる組み合わせの2個のβ−アラニン基本単位によって伸長された既知の質量標識体構造を示す。
【図12】図12は、DMP−(bAla)−OSuを用いる質量標識体アレイの合成経路を示す。
【図13】図13は、質量差6で多重化率12を達成するために1個のアミノヘキサン酸基本単位によって伸長された既知の質量標識体構造を示す。
【図14】図14は、アミノヘキサン酸部分によって伸長された質量標識体を生成するための合成経路を示す。
【図15A】図15は、標準的なTMT質量標識体(上方のプロット)又は2個のベータ−アラニン部分によって伸長された質量標識体(下方のプロット)のいずれかで標識されたBSAのトリプシン分解物のLC−MS/MS実験から得られたデータを示す。図15Aは、保持時間において少ししか変化しないことを示すために強調されたペプチドを用いた両方の試薬についての基準ピーククロマトグラムを示す。
【図15B】図15は、標準的なTMT質量標識体(上方のプロット)又は2個のベータ−アラニン部分によって伸長された質量標識体(下方のプロット)のいずれかで標識されたBSAのトリプシン分解物のLC−MS/MS実験から得られたデータを示す。図15Bの左側は、再度保持時間において少ししか変化しないことを示すために所与のペプチドについての質量トレースを示す。右側は、衝突解離後に得られるbイオン及びyイオンを割り当てたペプチドのMS/MSスペクトルを示す。Sequestサーチから得られた類似するXcorr因子によって示される通り、両方の標識試薬について同様にデータベースサーチが成功した。
【図16】図16は、既知のTMT試薬及び本発明の2×ベータ−アラニンで伸長された試薬の更なるフラグメントの詳細な研究から得られたデータを示す。A)標準的なTMT標識ペプチドから得られた一般的なフラグメントパターン。b及びyイオン、並びに残留プレカーサーに加えて、(最も高い強度を有する)レポーターイオンと(両方とも強度の低い)タグイオン(全標識体部分の放出)及び所謂擬yイオンという3つのTMT結合フラグメントが観察される。B)伸長された試薬で標識されていることを除いて同一であるペプチドのフラグメントパターンを示す。A)に示されるフラグメントに加えて、2つの更なるタグ関連フラグメントが観察される。これらは、予測される通り追加で導入されたアミド結合におけるフラグメント化を示すことができるが、低強度である。レポーターイオンと、構造bイオン及びyイオンとの両方の強度が低下する訳ではないので、相対的定量及び同定には悪影響を与えない。
【図17】図17は、各々が分子量415.55Da及び分子式13C412C15H301514N3O2S2を有する6個のチオール反応性質量標識体のセットを示す。
【図18】図18(A)は、2個のチオール反応性質量標識体のセットを示す。図18(B)は、同位体標識されていないチオール反応性質量標識体を示す。
【図19】図19は、2個の質量標識体を4セット含む質量標識体のアレイの構造を示す。標準的な標識体は、β−アラニンジペプチド質量系列修飾基を用いて伸長されている。
【発明を実施するための形態】
【0068】
次に、本発明を更に詳細に説明する。
【0069】
(反応性質量標識体)
質量分析によって検出するために生体分子を標識するための本発明の反応性質量標識体は、以下に定義される質量標識体Aと、質量標識体の生体分子に対する結合を促進するか又は結合させるための反応性官能基とを含む。本発明の好ましい実施形態では、反応性官能基は、質量標識体と、生体分子における適切な官能基とを共有結合的に反応させる。前記生体分子としては、ヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、又はステロイドホルモンが挙げられるが、これらに限定されない。反応性官能基は、リンカーを介して質量標識体に結合してもよく、前記リンカーは、開裂可能であってもなくてもよい。反応性官能基は、質量標識体の質量マーカー部分に結合してもよく、質量標識体の質量正規化部分に結合してもよい。
【0070】
様々な反応性官能基を提供することができる。
【0071】
反応性官能基は、例えば、リジン残基のε−アミノ基等の生体分子のアミノ基と反応することができる。最も単純な実施形態では、反応性官能基は、N−ヒドロキシスクシンイミドエステルであってもよい。しかし、本発明者らは、アミノ基以外の官能基と反応することができる様々な質量標識体を提供する必要があることを認識していた。
【0072】
したがって、本発明者らは、生体分子のチオール基と反応する反応性官能基を同定した。具体的には、これら反応性官能基は、システイン残基のチオール基と反応するように設計される。システイン残基と反応することができる本発明の反応性基の例は、図1に示されるマレイミド、ハロアセチル、及び2−ジチオピリジン基である。システインのチオール基は、マレイミド基の二重結合に求核付加され、ハロアセチル又は2−ジチオピリジン基で求核置換される。
【0073】
また、本発明者らは、生体分子におけるカルボニル基又はヒドロキシル基と反応することができる反応性官能基を有する質量標識体を設計した。具体的には、これら反応性官能基は、ステロイドホルモンのカルボニル基又はヒドロキシル基と反応するように設計される。生体分子におけるカルボニル基又はヒドロキシル基と反応することができる本発明の反応性基は、ヒドラジド又は−CONH−(CH−ONH(式中、nは1〜6であり、好ましくは、nは3である、即ち、アミノキシプロピルアミド(図5、6、9、及び10を参照されたい))である。これら基は、カルボニル基と反応して、それぞれヒドラゾン又はO−アルキルオキシムを形成する。
【0074】
本発明は、質量分析によって検出するために生体分子を標識するための反応性質量標識体であって、以下の構造を含む標識体を提供する。
【化37】

(式中、R、R、R、及びZは、以下の定義a)〜d)のうちの1つから選択され、
a)R及びRは、共に
【化38】

を形成し、Rは、存在せず、Zは、Oであり、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、且つ互いに独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、及び置換又は非置換の複素環基から選択される;
b)R及びRは、共に
【化39】

を形成し、Rは、
【化40】

であり、Zは、Nであり、R〜Rの各々は、独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、及び置換又は非置換の複素環基から選択される;
c)Rは、
【化41】

であり、Rは、Aであり、Rは、存在せず、Zは、Oであり、haloは、ハロゲンである;
d)Rは、

であり、Rは、Aであり、Rは、存在せず、Zは、Oであり、Bは、−NH又は−(CH−ONH(式中、nは1〜6である)であり;
前記a)、b)、c)、及びd)において、Aは、以下の構造を含む
X−L−M
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分である))
【0075】
置換基R、R、R、R、R、Rは、特に限定されず、B原子、Si原子、N原子、P原子、O原子、S原子、若しくはハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、又はI)等の、周期律表の第IIIA族、第IVA族、第VA族、第VIA族若しくは第VIIA族のいずれかに属する1以上の原子及び/又は任意の有機基を含んでいてもよい。
【0076】
置換基が有機基を含む場合、有機基は、炭化水素基を含むことが好ましい。炭化水素基は、直鎖、分枝鎖、又は環状基を含んでいてもよい。これとは独立に、炭化水素基は、脂肪族基又は芳香族基を含んでいてもよい。また、独立に、炭化水素基は、飽和基又は不飽和基を含んでいてもよい。
【0077】
炭化水素が不飽和基を含む場合、1以上のアルケン官能基及び/又は1以上のアルキン官能基を含んでいてもよい。炭化水素が直鎖又は分枝鎖基を含む場合、1以上の一級、二級、及び/又は三級のアルキル基を含んでいてもよい。炭化水素が環状基を含む場合、芳香環基、脂環式基、複素環基、及び/又はこれら基の縮合環誘導体を含んでいてもよい。したがって、環状基は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、インデン、フルオレン、ピリジン、キノリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、ピロール、インドール、イミダゾール、チアゾール、及び/又はオキサゾール基、並びに上記基の位置異性体を含んでいてもよい。
【0078】
炭化水素基における炭素原子数は、特に限定されないが、1〜40個のC原子を含む炭化水素基が好ましい。したがって、炭化水素基は、低級炭化水素(炭素数1〜6)又は高級炭化水素(炭素数7以上、例えば、炭素数7〜40)であってもよい。環状基の環における原子数は、特に限定されないが、環状基の環は、3〜10個の原子、例えば、3、4、5、6、又は7個の原子を含むことが好ましい。
【0079】
上記ヘテロ原子及び上に定義された他の基のいずれかを含む基は、B原子、Si原子、N原子、P原子、O原子、S原子、又はハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、又はI)等の、周期律表の第IIIA族、第IVA族、第VA族、第VIA族又は第VIIA族のいずれかに属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。したがって、置換基は、ヒドロキシ基、カルボン酸基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、アミン基、アミド基、イミン基、チオール基、チオエーテル基、サルフェート基、スルホン酸基、及びリン酸基等の、有機化学において一般的な官能基のいずれかのうちの1以上を含んでいてもよい。また、置換基は、これら基の誘導体、例えば無水カルボン酸及びカルボン酸ハロゲン化物等を含んでいてもよい。
【0080】
更に、任意の置換基は、上に定義された置換基及び/又は官能基のうちの2以上の組み合わせを含んでいてもよい。
【0081】
好ましい実施形態では、R及びRは、共に
【化42】

を形成し、Rは、存在せず、Zは、Oであり、R及びRは、両方Hである、即ち、標識体は、マレイミド基を含む。
【0082】
好ましい実施形態では、R及びRは、共に
【化43】

を形成し、Rは、
【化44】

であり、Zは、Nであり、R〜Rの各々はHである、即ち、標識体は、2−ジチオピリジン基を含む。
【0083】
更なる実施形態では、Rは、
【化45】

であり、Rは、Aであり、Rは、存在せず、Zは、Oである、即ち、標識体は、ハロアセチル基を含む。ハロ基は、ヨード又はブロモであることが好ましい。
【0084】
これら3つの好ましい実施形態は全て、システイン残基のチオール基と反応する。
【0085】
或いは、Rは、
【化46】

であり、Rは、Aであり、Rは、存在せず、ZはOであり、Bは、−NHである。
【0086】
別の実施形態では、Rは、
【化47】

であり、Rは、Aであり、Rは、存在せず、ZはOであり、Bは−(CH−ONHである。
【0087】
これら2つの好ましい実施形態は、生体分子のカルボニル基と反応する。
【0088】
基Aにおける質量正規化部分Mが、質量標識体の残りの部分に結合することが好ましい。しかし、基Aにおける質量マーカー部分Xが、質量標識体の残りの部分に結合することも可能である。
【0089】
本発明の状況で用いられる質量標識体という用語は、分析されるアナライトを標識するのに適した部分を指すことを意図する。用語「標識体」は、用語「タグ」の同義語である。本願全体を通して、用語「タンデム質量タグ(TMT)」は、用語「質量標識体」の同義語である。
【0090】
質量マーカー部分
本発明の状況で用いられる質量マーカー部分という用語は、質量分析によって検出される部分を指すことを意図する。
【0091】
本発明の質量マーカー部分の成分は、衝突解離(CID)によって容易に破壊される結合を導入することによってマーカーのフラグメント化部位を制御することができるように、フラグメント化耐性であることが好ましい。
【0092】
本発明の質量マーカー部分は、以下の基を含む。
【化48】

(式中、環状単位は、芳香族又は脂肪族であり、且つ任意の2個の隣接する原子間に独立して0個〜3個の二重結合を含み;各Zは、独立して、N、N(R)、C(R)、CO、CO(R)(即ち、−O−C(R1)−又は−C(R1)−O−)、C(R、O、又はSであり;Xは、N、C、又はC(R)であり;各Rは、独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、或いは置換又は非置換の複素環基であり;yは、0〜10の整数である;Lは、アミド結合を含む開裂可能リンカーであり;Mは、質量正規化部分である)
【0093】
質量マーカー部分の置換基は、特に限定されず、B原子、Si原子、N原子、P原子、O原子、S原子、若しくはハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、又はI)等の、周期律表の第IIIA族、第IVA族、第VA族、第VIA族若しくは第VIIA族のいずれかに属する1以上の原子及び/又は任意の有機基を含んでいてもよい。
【0094】
置換基が有機基を含む場合、有機基は、炭化水素基を含むことが好ましい。炭化水素基は、直鎖、分枝鎖、又は環状基を含んでいてもよい。これとは独立に、炭化水素基は、脂肪族基又は芳香族基を含んでいてもよい。また、独立に、炭化水素基は、飽和基又は不飽和基を含んでいてもよい。
【0095】
炭化水素が不飽和基を含む場合、1以上のアルケン官能基及び/又は1以上のアルキン官能基を含んでいてもよい。炭化水素が直鎖又は分枝鎖基を含む場合、1以上の一級、二級、及び/又は三級のアルキル基を含んでいてもよい。炭化水素が環状基を含む場合、芳香環基、脂環式基、複素環基、及び/又はこれら基の縮合環誘導体を含んでいてもよい。したがって、環状基は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、インデン、フルオレン、ピリジン、キノリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、ピロール、インドール、イミダゾール、チアゾール、及び/又はオキサゾール基、並びに上記基の位置異性体を含んでいてもよい。
【0096】
炭化水素基における炭素原子数は、特に限定されないが、1〜40個のC原子を含む炭化水素基が好ましい。したがって、炭化水素基は、低級炭化水素(炭素数1〜6)又は高級炭化水素(炭素数7以上、例えば、炭素数7〜40)であってもよい。環状基の環における原子数は、特に限定されないが、環状基の環は、3〜10個の原子、例えば、3、4、5、6、又は7個の原子を含むことが好ましい。
【0097】
上記ヘテロ原子及び上に定義された他の基のいずれかを含む基は、B原子、Si原子、N原子、P原子、O原子、S原子、又はハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、又はI)等の、周期律表の第IIIA族、第IVA族、第VA族、第VIA族又は第VIIA族のいずれかに属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。したがって、置換基は、ヒドロキシ基、カルボン酸基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、アミン基、アミド基、イミン基、チオール基、チオエーテル基、サルフェート基、スルホン酸基、及びリン酸基等の、有機化学において一般的な官能基のいずれかのうちの1以上を含んでいてもよい。また、置換基は、これら基の誘導体、例えば無水カルボン酸及びカルボン酸ハロゲン化物等を含んでいてもよい。
【0098】
更に、任意の置換基は、上に定義された置換基及び/又は官能基のうちの2以上の組み合わせを含んでいてもよい。
【0099】
本発明では、上に定義された基を含む質量マーカー部分に対する言及は、質量標識体の開裂が生じる箇所によっては質量マーカー部分が他の基を含んでいてもよいことを意味する。アミド結合のCOとNHとの間のアミド結合でリンカーの開裂が生じる1つの実施形態では、質量マーカー部分は、以下に示すようにCO基を更に含んでいてもよい。
【化49】

【0100】
NH基の後の結合でリンカーの開裂が生じる別の実施形態では、質量マーカー部分は、以下に示すようにCO基及びNH基を更に含んでいてもよい。
【化50】

【0101】
CO基の前にリンカーが開裂する更に別の実施形態では、質量マーカー部分は、以下の基のみを含む。
【化51】

【0102】
好ましい実施形態では、yは、0、1、又は2であり、より好ましくは、yは0又は1である。
【0103】
1つの好ましい実施形態では、環状単位は芳香族であり、環状単位における各ZはNである。また、XはCが好ましい。環状単位に存在しないZはSが好ましい。
【0104】
別の好ましい実施形態では、環状単位は脂肪族であり、環状単位における各ZはC(Rである。また、XはNが好ましい。また、環状単位に存在しないZは、C(Rが好ましい。
【0105】
好ましい実施形態では、質量マーカー部分は、以下の基:
【化52】

及び
【化53】

からなる群より選択される基を含む。
【0106】
また、上記基は、質量標識体の開裂が生じる箇所によっては他の基を含んでいてもよい。アミド結合のCOとNHとの間のアミド結合でリンカーの開裂が生じる1つの実施形態では、上記質量マーカー部分は、以下に示すようにCO基を更に含んでいてもよい。
【化54】

【0107】
NH基の後の結合でリンカーの開裂が生じる別の実施形態では、上記質量マーカー部分は、以下に示すようにCO基及びNH基を更に含んでいてもよい。
【化55】

【0108】
CO基の前でリンカーが開裂する更に別の実施形態では、質量マーカー部分は、以下の基のみを含む。
【化56】

【0109】
より好ましい実施形態では、質量マーカー部分は、以下の基:
【化57】

及び
【化58】

から選択される基を含む。
【0110】
また、上記基は、質量標識体の開裂が生じる箇所によっては他の基を含んでいてもよい。アミド結合のCOとNHとの間のアミド結合でリンカーの開裂が生じる1つの実施形態では、上記質量マーカー部分は、以下に示すようにCO基を更に含んでいてもよい。
【化59】

【0111】
NH基の後の結合でリンカーの開裂が生じる別の実施形態では、上記質量マーカー部分は、以下に示すようにCO基及びNH基を更に含んでいてもよい。
【化60】

【0112】
CO基の前でリンカーが開裂する更に別の実施形態では、質量マーカー部分は、以下の基のみを含む。
【化61】

【0113】
<リンカー>
リンカーの構造は、開裂可能である限り特に限定されない。リンカーは、アミド結合を含むことが好ましい。開裂可能リンカーは、衝突よって開裂可能なリンカーが好ましい。リンカーは、アミド結合からなることがより好ましい。
【0114】
上述及び後述する説明において、本発明の質量標識体化合物に対象分子を結合させるために用いることができるリンカー基について言及する。本発明の質量標識体とそれに共有結合している生体分子との間に導入される様々なリンカーが当該技術分野において知られている。これらリンカーの一部は、開裂可能であってもよい。Maskos,U.&Southern,E.M. Nucleic Acids Research20:1679−1684,1992に開示されている通り、オリゴエチレングリコール若しくはポリエチレングリコール又はこれらの誘導体をリンカーとして用いてもよい。コハク酸系リンカーも広く用いられているが、これらは、オリゴヌクレオチドの標識を含む用途にはあまり適していない。その理由は、一般的に、塩基に対して不安定であるので、多数のオリゴヌクレオチド合成機で用いられている塩基を介した脱保護工程に不適合であるためである。
【0115】
プロパルギル酸アルコールは、オリゴヌクレオチド合成条件下で安定な結合を提供する二官能性リンカーであり、オリゴヌクレオチドに対して本発明を使用するのに好ましいリンカーである。同様に、6−アミノヘキサノールは、適切に官能化された分子を結合させるのに有用な二官能性試薬であり、これも好ましいリンカーである。
【0116】
光開裂可能リンカー等の様々な既知の開裂可能リンカーを、本発明の化合物と共に用いることができる。オルト−ニトロベンジル基、特に、2−ニトロベンジルエステル及び2−ニトロベンジルアミンは、ベンジルアミン結合で開裂する光開裂可能リンカーとして知られている。開裂可能リンカーについての概説は、様々な光開裂可能リンカー及び化学的開裂可能リンカーを網羅しているLloyd−Williams et al.,Tetrahedron 49,11065−11133,1993を参照されたい。
【0117】
国際公開第00/02895号パンフレットには、特にポリペプチド、ペプチド、及びアミノ酸の標識を含む用途において本発明と共に用いることができる開裂可能リンカーとしてビニルスルホン化合物が開示されている。この出願の内容は、参照することによって援用される。
【0118】
国際公開第00/02895号パンフレットには、気相中の塩基によって開裂可能なリンカーとして、ケイ素化合物の使用が開示されている。また、これらリンカーは、特にオリゴヌクレオチドの標識を含む用途において本発明と共に用いることができる。この出願の内容は、参照することによって援用される。
【0119】
<質量正規化部分>
本発明の質量標識体の質量正規化部分の構造は、質量標識体が所望の総質量を確実に有するのに適している限り特に限定されない。しかし、質量正規化部分は、直鎖又は分枝C−C20置換若しくは非置換の脂肪族基及び/又は1以上の置換若しくは非置換のアミノ酸を含むことが好ましい。
【0120】
質量正規化部分は、好ましくはC−C置換又は非置換の脂肪族基、より好ましくはC、C、C、C、C置換又は非置換の脂肪族基、更により好ましくはC、C、又はC置換又は非置換の脂肪族基、或いはCメチル置換基を含む。
【0121】
1以上の置換又は非置換のアミノ酸は、自然界に存在する任意の必須又は非必須アミノ酸であってもよく、自然界に存在しないアミノ酸であってもよい。好ましいアミノ酸は、アラニン、β−アラニン、及びグリシンである。
【0122】
質量正規化部分の置換基は、特に限定されず、B原子、Si原子、N原子、P原子、O原子、S原子、若しくはハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、又はI)等の、周期律表の第IIIA族、第IVA族、第VA族、第VIA族若しくは第VIIA族のいずれかに属する1以上の原子及び/又は任意の有機基を含んでいてもよい。
【0123】
置換基が有機基を含む場合、有機基は、炭化水素基を含むことが好ましい。炭化水素基は、直鎖、分枝鎖、又は環状基を含んでいてもよい。これとは独立に、炭化水素基は、脂肪族基又は芳香族基を含んでいてもよい。また、独立に、炭化水素基は、飽和基又は不飽和基を含んでいてもよい。
【0124】
炭化水素が不飽和基を含む場合、1以上のアルケン官能基及び/又は1以上のアルキン官能基を含んでいてもよい。炭化水素が直鎖又は分枝鎖基を含む場合、1以上の一級、二級、及び/又は三級のアルキル基を含んでいてもよい。炭化水素が環状基を含む場合、芳香環基、脂環式基、複素環基、及び/又はこれら基の縮合環誘導体を含んでいてもよい。したがって、環状基は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、インデン、フルオレン、ピリジン、キノリン、チオフェン、ベンゾチオフェン、フラン、ベンゾフラン、ピロール、インドール、イミダゾール、チアゾール、及び/又はオキサゾール基、並びに上記基の位置異性体を含んでいてもよい。
【0125】
炭化水素基における炭素原子数は、特に限定されないが、1〜40個のC原子を含む炭化水素基が好ましい。したがって、炭化水素基は、低級炭化水素(炭素数1〜6)又は高級炭化水素(炭素数7以上、例えば、炭素数7〜40)であってもよい。環状基の環における原子数は、特に限定されないが、環状基の環は、3〜10個の原子、例えば、3、4、5、6、又は7個の原子を含むことが好ましい。
【0126】
上記ヘテロ原子及び上に定義された他の基のいずれかを含む基は、B原子、Si原子、N原子、P原子、O原子、S原子、又はハロゲン原子(例えば、F、Cl、Br、又はI)等の、周期律表の第IIIA族、第IVA族、第VA族、第VIA族又は第VIIA族のいずれかに属する1以上のヘテロ原子を含んでいてもよい。したがって、置換基は、ヒドロキシ基、カルボン酸基、エステル基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、アミン基、アミド基、イミン基、チオール基、チオエーテル基、サルフェート基、スルホン酸基、及びリン酸基等の、有機化学において一般的な官能基のいずれかのうちの1以上を含んでいてもよい。また、置換基は、これら基の誘導体、例えば無水カルボン酸及びカルボン酸ハロゲン化物等を含んでいてもよい。
【0127】
更に、任意の置換基は、上に定義された置換基及び/又は官能基のうちの2以上の組み合わせを含んでいてもよい。
【0128】
<標識ペプチドの濃縮>
本発明の第1、第2、第3、第4、及び第5の態様は、質量分析によって分析する前に標識ペプチドを選択的に濃縮する手段を更に組み込めることが好ましい。かかる濃縮に用いられる具体的な方法は、特に限定されず、親和性捕捉リガンドの組み込みを含む多くのかかる方法が当該技術分野において周知である。親和性捕捉リガンドは、高度に特異的な結合パートナーを有するリガンドである。これら結合パートナーは、リガンドでタグ付けされた分子を選択的に捕捉することができる。親和性リガンドでタグ付けされた分子が固相担体に選択的に捕捉され得るように、固相担体を結合パートナーで誘導体化することが好ましい。好ましい親和性捕捉リガンドはビオチンであり、これは、当該技術分野において公知である標準的な方法によって本発明の質量標識体に導入することができる。特に、リジン残基は、質量マーカー部分又は質量正規化部分の後に組み込むことができ、これら部分を介してアミン反応性ビオチンが質量標識体に結合することができる(例えば、Geahlen R.L.et al.,Anal Biochem 202(1):68−67,“A general method for preparation of peptides biotinylated at the carboxy terminus.”1992;Sawutz D.G.et al.,Peptides12(5):1019−1012,“Synthesis and molecular characterization of a biotinylated analogue of [Lys]bradykinin.”1991;Natarajan S.et al.,Int J Pept Protein Res40(6):567−567,“Site−specific biotinylation.A novel approach and its application to endothelin−1 analogues and PTH−analogue.”,1992を参照されたい)。イミノビオチンも適用可能である。例えば単量体及び四量体のアビジン及びストレプトアビジンを含むビオチン用の様々なアビジンカウンターリガンドが利用可能であり、これらは全て多くの固相担体において利用可能である。
【0129】
他の親和性捕捉リガンドとしては、ジゴキシゲニン、フルオロセイン、ニトロフェニル部分、及びc−mycエピトープ等の多数のペプチドエピトープが挙げられ、これらに対するカウンターリガンドとして選択的モノクローナル抗体が存在する。Ni2+イオンに容易に結合するヘキサヒスチジン等の金属イオン結合リガンドも適用可能である。例えば、イミノ二酢酸でキレートされたNi2+イオンを提示するクロマトグラフィー樹脂が市販されている。これら固定化されたニッケルカラムを用いて質量標識体を捕捉することができる。更なる選択肢として、親和性捕捉官能基は、適切に誘導体化された固相支持体と選択的に反応することができる。例えば、ボロン酸は、隣接するシス−ジオール、及びサリチルヒドロキサム酸等の化学的に類似するリガンドと選択的に反応することが知られている。
【0130】
<生体分子>
生体分子という用語は、特に限定されず、タンパク質、糖タンパク質、ペプチド、ポリペプチド、アミノ酸、核酸、ホルモン、代謝産物、及び炭化水素が挙げられる。ステロイドは、ホルモンの重要な分類である。ステロイドホルモンの例としては、エストロゲン、プロゲステロン、及びテストステロンが挙げられる。血漿、血清、尿、又は唾液等の体液中のホルモンを正確に分析及び定量することがより重要になってきている。例えば、エストロゲン及びエストロゲン様化合物は、ホルモン代替療法において重要な役割を果たしている。また、エストロゲン及びエストロゲン様化合物の分析及び定量は、乳癌等のエストロゲンに関連する疾患の管理にも役立つ。
【0131】
(質量標識体のセット)
別の態様では、本発明は、2以上の反応性質量標識体のセットであって、前記セットにおける各標識体が上に定義された通りであり、各質量正規化部分によって前記質量標識体が所望の総質量を確実に有し、前記セットが以下の群:
−共通の質量の質量マーカー部分を有する標識体の群であって、前記群における各標識体が固有の総質量を有する群;又は
−質量マーカー部分を有する標識体の群であって、各質量マーカー部分が前記群における他の全ての質量マーカー部分とは異なる質量を有し、前記群における各標識体が共通の総質量を有する群;
のいずれかを含み、前記セットにおける全ての質量標識体が、質量分析によって互いに識別可能であるセットを提供する。
【0132】
1つの実施形態では、前記セットにおける各標識体は、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する(第1の標識型)。別の実施形態では、前記セットにおける各標識体は、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する(第2の標識型)。
【0133】
標識のセットは、上記2つの好ましい実施形態に限定される必要はなく、例えば、全ての標識が質量分析によって識別可能である限り、両方の種類の標識を含んでいてもよい。
【0134】
第2の種類の標識のセットでは、前記セットにおける各質量マーカー部分が共通の基本構造を有し、前記セットにおける各質量正規化部分が共通の基本構造を有し、前記セットにおける各質量標識体が1以上の質量調整部分を含み、且つ前記質量調整部分が、前記質量マーカー部分の基本構造及び/又は前記質量正規化部分の基本構造に結合しているか又は位置していることが好ましい。この実施形態では、前記セットにおける全ての質量マーカー部分が異なる数の質量調整部分を含み、前記セットにおける全ての質量標識体が、同数の質量調整部分を有する。
【0135】
本明細書全体を通して、共通の基本構造とは、2以上の部分が、実質的に同じ構造骨格、主鎖、又はコアを有する構造を共有していることを意味する。骨格は、上記式の質量マーカー部分又は上に定義された質量正規化部分を含むが、アミド結合によって結合されている多数のアミノ酸を更に含んでいてもよい。しかし、アリールエーテル単位等の他の単位が存在していてもよい。骨格又は主鎖は、共通の基本構造を変化させることなしに、前記骨格又は主鎖から懸垂している置換基を含んでいてもよく、前記骨格又は主鎖の中に原子若しくは同位体置換を含んでいてもよい。
【0136】
前記セットにおける標識体数は、前記セットが複数の標識体を含む限り特に限定されない。しかし、前記セットが2以上、3以上、4以上、又は5以上の標識体を含むことが好ましく、6以上の標識体を含むことがより好ましく、8以上の標識体を含むことが最も好ましい。
【0137】
本発明の状況において総質量という用語は、質量標識体の合計質量、即ち、質量マーカー部分、開裂可能リンカー、質量正規化部分、及び質量標識体の任意の他の成分の質量の合計を指す。
【0138】
質量正規化部分は、質量のみによって限定され、前記質量は、セットにおける様々な質量標識体間で異なっていてもよい。例えば、質量の異なる質量マーカー部分を有するが、総質量は共通である標識体の群をセットが含む場合、質量正規化部分の質量は、セットにおける各質量標識体によって異なる。この場合、個々の質量標識体における質量正規化部分の質量は、共通の総質量から、前記質量標識体における特定の質量マーカー部分の質量を減じ、更に開裂可能リンカーの質量を減じたものに等しい。共通の質量の質量マーカー部分を有するが、総質量は異なる標識体の群をセットが含む場合、群中の全ての標識体の総質量が異なるように質量正規化部分の質量を変動させる必要があることは明らかである。
【0139】
前記セットにおける全ての質量標識体は、質量分析によって互いに識別可能である。したがって、質量分析計によって質量標識体を区別することができる、即ち、個々の質量標識体に由来するピークを互いに明確に分離することができる。質量マーカー部分又は質量標識体間の質量差は、異なる質量標識体又は質量マーカー部分に由来するイオンを質量分析計で区別可能であることを意味する。
【0140】
セットにおける各質量標識体は、以下の構造を有するAを含むことが好ましい。
M(D)−L−X(D)
(式中、Mは、質量正規化部分であり、Xは、質量マーカー部分であり、Dは、質量調整部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、y及びzは、0以上の整数であり、y+zは、1以上の整数である。Mは、フラグメント化耐性基が好ましく、Lは、別の分子又は原子との衝突によってフラグメント化しやすいリンカーであり、Xは、プレイオン化されたフラグメント化耐性基が好ましい。)
【0141】
質量標識体のセットが上記第2の種類である場合、MとXとの質量の合計は、前記セットの全てのメンバーについて同一である。MとXとは、同じ基本構造又はコア構造を有することが好ましく、この構造は、質量調整部分によって修飾される。質量調整部分は、MとXとの質量の合計がセットにおける全ての質量標識体について確実に同じになるが、各Xが確実に異なる(固有の)質量を有するようにする。
【0142】
質量調整部分は、以下から選択されることが好ましい:
(a)質量マーカー部分及び/又は質量正規化部分内に位置する同位体置換基、及び
(b)質量マーカー部分及び/又は質量正規化部分に結合している置換原子又は基。
【0143】
一般的に、質量調整部分は、ハロゲン原子置換基、メチル基置換基、及びH、15N、13C又は18O同位体置換基から選択される。
【0144】
本発明の1つの好ましい実施形態では、セットにおける各質量標識体は、以下の構造を有するAを含む。
X(−L−M(
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分であり、は、同位体質量調整部分であり、n及びmは、0以上の整数であり、
前記セットにおける各標識が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【0145】
Xは、以下の基を含むことが好ましい。
【化62】

(式中、R、Z、X、及びyは、上に定義された通りであり、前記セットにおける各標識体は、0、1、又はそれ以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【0146】
好ましい実施形態では、質量マーカー部分は、以下の群から選択される基を含む。
【化63】

【化64】

(式中、前記セットは、0、1、又はそれ以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【0147】
更に好ましい実施形態では、質量マーカー部分は、以下の群から選択される基を含む。
【化65】

【化66】

(式中、前記セットは、0、1、又はそれ以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)。
【0148】
好ましくは、反応性質量標識体のセットは、以下の構造のいずれかのうちの2以上の質量標識体を含む。
【化67】

(式中、は、酸素がO18であるか、炭素がC13であるか、又は窒素がN15であることを表し、前記セットにおける各標識体は、0、1、又はそれ以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【0149】
特に好ましい実施形態では、質量調整部分はC13又はN15であり、前記セットは、以下の構造を有する6個の反応性質量標識体を含む。
【化68】

【0150】
別の好ましい実施形態では、質量調整部分は、C13又はN15であり、前記セットは、以下の構造を有する6個の反応性質量標識体を含む。
【化69】

【0151】
或いは、質量調整部分は、C13又はN15であり、前記セットは、以下の構造を有する6個の反応性質量標識体を含む。

【0152】
<質量標識体のアレイ>
本発明の更なる態様では、上に定義された質量標識体の2以上のセットを含む質量標識体のアレイであって、前記アレイにおける任意の1セットの質量標識体の各々の総質量が、前記アレイの他の全てのセットの質量標識体の各々の総質量と異なるアレイを提供する。
【0153】
好ましくは、少なくとも1セットにおける各質量標識体は、共通の質量を有する質量系列修飾基を含み、任意の1セットの質量標識体の各々における質量系列修飾基は、アレイにおける他の全てのセットの質量標識体の各々における質量系列修飾基と異なる質量を有する。
【0154】
<多重化容量を高めるために伸長されたTMT試薬>
アイソバリック質量タグの多重化率を6〜8に高めることによってプロテオミクス研究の改善がもたらされることから、アイソバリック質量タグの多重化容量を更に高めることが望まれている。全ての利用可能な原子が置換された場合、現在のTMTコア構造は潜在的に9重セットまで可能であるが、対応するレポーターイオンの強度が低下するので、アイソバリック試薬の任意のセットにおいて6を遥かに超えて多重化率を高めると定量の性能が悪影響を受ける可能性がある。このレベルを超えると、多くのタンパク質で検出限界を下回り、定量の正確性が低下する可能性がある。更に、より高い多重化率を有するアイソバリックな試薬1セットの製造コストは、非常に高くなると考えられる。
【0155】
多重化率をより高めるための別の方法は、様々なオフセット質量を導入する部分を付加することによってアイソバリックTMT6重試薬の複数のセットを提供することである。米国特許第7,294,456号明細書は、アイソバリック質量タグを質量系列修飾基に結合させることによってアイソバリック質量セットのアレイを提供するための1つのアプローチを記載している。米国特許第7,294,456号明細書に提供されている例は、フッ素、メチル基又は様々な数の環状アリールエーテルによる様々なレベルの置換を使用する。これらアプローチは所望の目的を達成するが、質量系列修飾基に同一ではない構造を使用すると、クロマトグラフィーの保持時間に影響を与えたり、1次元又は2次元のゲル電気泳動で共遊走したりするリスクがある。
【0156】
アイソバリック質量タグセットのアレイを製造する手段を改良するために、一連の同位体でドープされた質量系列修飾基が開発されている。更に、既存の質量標識体に質量系列修飾基を付加する合成方法を用いて、複数のセットの合成を簡略化し、且つペプチドのMS/MSスペクトルのサイレント領域に存在することが知られている同じコア構造及びレポーター種(質量マーカー部分)を保持する。
【0157】
本発明の状況で用いられる質量スペクトル(MS/MSスペクトル等)のサイレント領域という用語は、標識されたペプチドのフラグメント化によって生成されるフラグメントの存在に関連するピークによって引き起こされるバッククラウンド「ノイズ」の少ない質量スペクトルの領域を指すことを意図する。MS/MSスペクトルは、緩衝試薬、変性剤、及び界面活性剤等の汚染物質がMS/MSスペクトルに現れないように、MSモードにおける1つのピークのフラグメント化によって得られる。このように、MS/MSモードにおける定量は有利である。したがって、サイレント領域という用語は、検出される生体分子に関連するピークによって引き起こされる「ノイズ」の少ない質量スペクトルの領域を指すことを意図する。検出される生体分子がペプチド又はタンパク質である場合、質量スペクトルのサイレント領域は、200ダルトン未満である。検出される生体分子がDNA、RNA、オリゴヌクレオチド、又は核酸塩基である場合、質量スペクトルのサイレント領域は500ダルトン未満である。
【0158】
このアプローチを用いると、構造的には同一であるが質量が異なる、それぞれ6、12、18、24、及び30個の個々の質量タグを有する2、3、4、又は更には5セットのTMT6重セットを生成することができる。かかるセットは、同じ試薬中で組み合わせられた同位体的且つアイソバリックな特徴を有するので、多重化容量が高まる。
【0159】
重同位体原子によって置換することができる原子を最低4個有している限り、質量系列修飾基の性質は特に限定されない。質量系列修飾基は、既存のTMTコア分子に容易にカップリングできるように遊離アミノ基を有することが好ましい。質量系列修飾基は、タンパク質、核酸、脂質、又は糖における官能基と反応することができる反応性基を更に有することが更に好ましい。或いは、質量系列修飾基は、かかる反応性を提供するために容易に誘導体化することができる。
【0160】
TMTコア構造は、質量正規化基としてβアラニン残基を含有することが好ましい。これは、遊離アミン含有質量シリーズ変更試薬と容易に反応することができる遊離カルボキシル酸部分を含有する。
【0161】
本発明は、質量分析によって検出するために生体分子を標識するための反応性質量標識体であって、以下の構造を含む質量標識体を提供する。
X−L−M−S−Re
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分であり、Sは、以下の基を含む質量系列修飾基であり、Reは、前記質量標識体を前記生体分子に結合させるための反応性官能基である。
【化70】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKは両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、少なくとも1であり、mは、1〜10であってよく、1〜5が好ましく、1又は2がより好ましく、1が最も好ましい))
【0162】
したがって、質量系列修飾基は、以下のいずれかを含むことが好ましい。
【化71】

【化72】

(式中、nは、少なくとも1であり、1〜10であってよく、1〜5が好ましく、1又は2がより好ましく、1が最も好ましい)
【0163】
アミン反応性官能基、システイン反応性官能基、及びカルボニル反応性官能基が挙げられる任意の反応性官能基を含む質量標識体に質量系列修飾基を組み込むことができることが理解される。反応性官能基は、上記a)〜d)のいずれかに定義されるものであることが好ましい。
【0164】
別の好ましい実施形態では、反応性官能基は、以下の基を含む。この反応基は、生体分子のアミン基と反応するように設計される。
【化73】

(式中、各Rは、独立して、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、或いは置換又は非置換の複素環基から選択される)
【0165】
好ましいアレイでは、少なくとも1セット中の各質量標識体は、以下の基を含む質量系列修飾基を含む。
【化74】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKが両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、少なくとも1であり;任意の1セットの質量標識体の各々の質量系列修飾基は、様々な数の同位体質量調整部分が存在することによって、アレイにおける他の全てのセットの質量標識体の各々における質量系列修飾基とは異なる質量を有する)
【0166】
好ましい実施形態では、様々なレベルの重同位体原子と交換することができるβAla−βAlaジペプチジル質量系列修飾基が調製される。別の実施形態では、様々なレベルの重同位体原子と交換することができるアミノヘキサン酸質量系列修飾基が調製される。
【0167】
したがって、質量系列修飾基は、以下のいずれかを含むことが好ましい。
【化75】

【化76】

(式中、nは、少なくとも1であり;任意の1セットの質量標識体の各々の質量系列修飾基は、様々な数の同位体質量調整部分が存在することによって、アレイにおける他の全てのセットの質量標識体の各々における質量系列修飾基とは異なる質量を有する)
【0168】
特に好ましい実施形態では、質量標識体のアレイは、
a)質量標識体の第1のセットであって、前記セットにおける各質量標識体が、以下の構造を有する質量修飾基を含む第1のセットと;
【化77】

b)質量標識体の第2のセットであって、前記セットにおける各質量標識体が、以下の構造を有する質量修飾基を含む第2のセットと;
【化78】

c)質量標識体の第3のセットであって、前記セット中の各質量標識体が、以下の構造を有する質量修飾基を含む第3のセットとを含む。
【化79】

【0169】
図11は、軽、中(+4Da)、及び重(+8Da)反応性質量を有する異なる標識体構造のアレイを示す。図11では、βAla−βAlaジペプチジル質量系列修飾基を強調している。図12は、アレイの様々な構成要素についての合成ストラテジを示す。個々の合成は、出発形態が異なるレベルの同位体置換を有するDMP−bALA及びbALA基本単位であることを必要とする。同位体質量タグのセットのアレイを形成するために、DMP−βALA基は、国際公開第2007/012849号パンフレットに開示されている通常のTMT2重置換又はTMT6重置換を有する。この方法によって、4重、6重、12重、又は18重のアレイが形成される。別の同位体置換を組み込んで、異なるオフセット質量及び/又は多重化率を得ることができることが理解されるであろう。
【0170】
複数のβアラニンの使用をすることによって、アイソバリック質量タグのアレイを生成するための比較的容易な経路が提供されるが、それは、更なる開裂可能なアミド結合をタグに導入することを含む。これらは、質量分析計においてフラグメント化され、MS/MSスペクトルにおいて更なるイオンを生成する。これは多くの用途では特に不都合がある訳ではないが、かかる更なるフラグメント化を避けることが好ましい場合がある。1つの別のアプローチは、アミノヘキサン酸等の単長鎖アミノ酸を使用することである。アミノヘキサン酸は、安定な重同位体等価物で置換することができる9個の原子を有し、これが10Da以下の質量差をもたらす。本発明のこの態様を立証するために、アミノヘキサン酸の軽い形態又は重い形態で伸長されたコアDMP−βALAを用いて一対の同位体TMTを合成した。図13は、2つの可能な構造を示し、重同位体置換を有するアミノヘキサン酸における原子が所望のオフセット質量をもたらすことを示す。図14は、アミノヘキサン酸質量標識体を合成する方法を示す。
【0171】
<標識された生体分子>
本発明は、質量標識された生体分子を提供する。また、本発明は、質量標識された生体分子のセット及びアレイを提供する。
【0172】
1つの実施形態では、各生体分子は、質量標識体の固有の組み合わせに結合することが好ましく、各組み合わせは、質量標識体のセットにおける各質量標識体の存在若しくは不在及び/又は生体分子に結合している各質量標識体の量によって識別される。上述の通り、これは、本発明の「混合モード」と呼ばれるが、その理由は、質量標識体の混合物に生体分子が結合することができるためである。
【0173】
<質量分析法によるペプチド分析>
質量分析計の必須の特徴は以下の通りである。
導入系→イオン源→質量分析計→イオン検出器→データ捕捉システム
【0174】
ペプチドを分析する目的によって、好ましい導入系、イオン源及び質量分析計がある。
【0175】
<導入系>
本発明の幾つかの態様では、質量分析法による分析前にサンプルの複雑さを軽減するために、クロマトグラフィー又は電気泳動によって分離することが好ましい。各種の質量分析法技術は、特にキャピラリーゾーン電気泳動法及びHPLC(高速液体クロマトグラフィー)等の分離技術に対応している。但し、固体表面から物質を除去するMALDI及びFAB(後述する)等のイオン化技術は、クロマトグラフィーによる分離にあまり適していないので、分離が必要な場合はイオン化源の選択が若干制限される。殆どの目的において、これらのうちの1つによりクロマトグラフィーによる分離と質量分析とをインラインで接続するには非常に多くのコストがかかっていた。動的FABやエレクトロスプレー、熱スプレー及びAPCI等のスプレーによるイオン化技術は全て、クロマトグラフィーによる分離と容易にインラインで対応しており、かかる液体クロマトグラフィー質量分析を実施するための装置は市販されている。
【0176】
<イオン化技術>
多くの生物学的な質量分析計の用途では、所謂ソフトイオン化技術が使用される。これにより、タンパク質及び核酸等の大きな分子をほぼ無傷でイオン化することができる。そして、液相技術を用いると、大きな生体分子を穏やかなpHの低濃度溶液で、質量分析計に導入することができる。多数の技術が本発明を用いるのに適しており、例えば、ESI−MS(エレクトロスプレーイオン化質量分析法)、FAB(高速原子衝撃イオン化質量分析法)、MALDI−MS(マトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析法)及びAPCI−MS(大気圧化学イオン化質量分析法)が挙げられる。ただし、これらに限定されるものではない。
【0177】
<エレクトロスプレーイオン化法>
エレクトロスプレーイオン化法には、アナライト生体分子の希釈溶液を質量分析計において「微細化」する、即ち、微細スプレーとして注入する必要がある。例えば、充填された針の先端から乾燥窒素流及び静電場に溶液を噴霧する。イオン化のメカニズムは完全には明らかになっていないが、概して以下のようなものであると考えられている。溶媒が窒素流において蒸発し、小さな液滴となり、アナライト分子を濃縮させる。殆どの生体分子は実効電荷を有していることから、溶解した分子の静電反発が高まる。蒸発するにつれ、この反発は最終的に液滴の表面張力よりも大きくなり、液滴が小さな液滴に分解される。このプロセスは、時にクーロン爆発とも呼ばれる。静電場は、液滴の表面張力を更に上昇させ、噴霧プロセスを容易にするのに役立つ。小さな液滴になっても蒸発が継続し、結果として、全ての溶媒のように、生体分子が本質的に気相となるまで繰り返し爆発が起こる。この技術は他の技術と比べ、イオン化の過程においてイオンに付加するエネルギーが比較的少量であり、集団内のエネルギーが比較的狭い範囲に分布するので、質量標識体の使用において特に重要である。適切に配置された電極による電場を使用することにより、イオンが加速しイオン化室から出てくる。電場の極性を変化させて、陰イオン又は陽イオンを抽出してもよい。これら電極間の電位差によって、質量分析機に導入されるのが陽イオンであるか陰イオンであるかが決定され、また、これらイオンを質量分析計に入れる運動エネルギーも決定される。このことは、質量分析計におけるイオンのフラグメント化を考慮する場合に重要である。イオン集団に付加されるエネルギーが多いほど、アナライト分子とイオン源に存在する浴ガスとの衝突によりフラグメント化が生じやすくなる。イオン化室からのイオンを加速させるのに用いられる電場を調整することにより、イオンのフラグメント化を制御することができる。標識した生体分子からタグを取り除く手段としてイオンのフラグメント化が用いられる場合、これは特に有利である。エレクトロスプレーイオン化法は、LC−MS(液体クロマトグラフィー質量分析法)と呼ばれる液体クロマトグラフィーとインラインで用いることができるので特に有利である。
【0178】
<マトリックス支援レーザー脱離イオン化法(MALDI)>
MALDIでは、大きくモル過剰である光励起性「マトリックス」に生体分子溶液を包埋する必要がある。適切な周波数を有するレーザー光を用いることにより、マトリックスが励起されて、捕捉されている生体分子と共にマトリックスが急速に蒸発する。プロトンが酸性マトリックスから生体分子に移動すると、特に飛行時間(TOF)質量分析等の陽イオン質量分析で検出できるプロトン化形態の生体分子を増加させることができる。MALDI−TOFによって陰イオン質量分析も行うことができる。この技術だと、イオンに大量の並進エネルギーを与えることができるにも関わらず、余分なフラグメント化を誘導せずにすむ傾向がある。また、加速電圧をフラグメント化の制御に再度用いることもできる。
【0179】
<高速原子衝撃>
高速原子衝撃(FAB)を用いて、比較的不揮発性である分子の気化及びイオン化するための多くの技術を説明する。これら技術では、サンプルとキセノン原子又はセシウムイオンの高エネルギービームとの衝突により表面からサンプルが脱離する。そして、一般的には不揮発性材料(例えば、m−ニトロベンジルアルコール(NBA)又はグリセロール)である単純マトリックスの表面をサンプルでコーティングする。FAB技術も液相導入系に対応しており、キャピラリー電気泳動導入系又は高圧液体クロマトグラフィー系から溶出する液体はフリットを通過し、アナライト溶液でフリット表面を本質的にコーティングし、原子衝撃により前記フリット表面から前記アナライト溶液をイオン化させる。
【0180】
<質量分析機>
タンパク質のタグを同定するために、本発明では衝突解離によるペプチドのフラグメント化を用いる。様々な質量分析機を用いて、ペプチドをフラグメント化し、そのフラグメントの質量を決定することができる。
【0181】
<ペプチドのMS/MS及びMS分析>
タンデム型質量分析計によって、衝突解離(CID)により所定の質量電荷比を有するイオンを選択し、フラグメント化することが可能である。次いで、フラグメントを検出し、選択したイオンの構造情報を得ることができる。タンデム型質量分析計でCIDによりペプチドを分析すると、特徴的な開裂パターンが観察され、これによってペプチド配列を決定することができる。天然ペプチドは、一般的に、ペプチド主鎖のアミド結合において無作為にフラグメント化し、そのペプチドに特徴的なイオンシリーズが得られる。イオンの電荷がイオンのN末端フラグメントに保持される場合、n番目のペプチド結合における開裂に対するCIDフラグメントシリーズはa、b、c等と表される。同様に、電荷がイオンのC末端フラグメントに保持される場合、フラグメントシリーズはx、y、z等と表される。
【化80】

【0182】
トリプシン及びトロンビンは、分子の両末端に塩基性基、即ちN末端にα−アミノ基、C末端にリジン又はアルギニン側鎖を有するペプチドを生成するので、タンデム質量分析にとって好ましい開裂剤である。これは二重荷電イオンの形成に有利であり、前記二重荷電イオンは分子の両末端に荷電中心が存在する。CIDを行うと、これら二重荷電イオンからC末端イオンシリーズ及びN末端イオンシリーズが生成され、これを手がかりにしてペプチド配列を決定する。一般的に、所与ペプチドのCIDスペクトルでは、1又は2のイオンシリーズしかみられない。四重極装置に通常用いられる低エネルギー衝突では、N末端フラグメントのbシリーズ及びC末端フラグメントのyシリーズのいずれかが多い。二重荷電イオンを分析する場合には両方のシリーズが検出されることが多いが、一般にはyシリーズイオンがbシリーズよりも多い。
【0183】
一般的に、アミド主鎖のプロトン化とそれに続く分子内求核攻撃によって5員オキサゾロン構造が形成され、プロトン化アミド結合が開裂するというメカニズムを通してペプチドがフラグメント化される(Schlosser A.and Lehmann W.D. J.Mass Spectrom.35:1382−1390,“Five−membered ring formation in unimolecular reactions of peptides:a key structural element controlling low−energy collision induced dissociation”,2000)。
【0184】
一般的なタンデム質量分析計は、四重極衝突室で分離された2の四重極質量分析機を含む三連四重極型である。この衝突四重極は2つの質量分析機の四重極間のイオンガイドとして機能する。ガスを衝突四重極に導入して、第1の質量分析機からのイオン気流と衝突させることができる。第1の質量分析機は、質量電荷比に基づいて、フラグメント化が行われる衝突セルを通過するイオンを選択する。フラグメントイオンは、第3の四重極で分離され、検出される。誘起開裂は、タンデム分析機以外のジオメトリーで実施されてもよい。イオントラップ質量分析計は、トラップされたイオンが衝突するガスをトラップに導入することを通してフラグメント化を促進する。イオントラップは、一般的にヘリウム等の浴ガスを含有するが、例えばネオンを更に加えることによりフラグメント化が促進される。同様に、トラップされたイオンをフォトン誘導フラグメント化することもできる。他の好ましいジオメトリーは、高走査速度の四重極と高感度のレフレクトロンTOF質量分析機とを接続してフラグメント化生成物を同定する四重極/直交飛行時間タンデム装置である。
【0185】
従来の「セクター型」装置は、タンデム質量分析で用いられる別のジオメトリーである。セクター型質量分析機は2の別々の「セクター」からなり、電気セクターがイオンビームに焦点を合わせると、イオンビームがイオン源を離れ、電場により同じ運動エネルギーを持つイオン流となる。磁気セクターは、質量に基づいてイオンを分離し、検出器でスペクトルを生成する。タンデム質量分析では、電気セクターが第1の質量分析機として設けられ、磁気セクターが第2の質量分析機として設けられ、これら2つのセクター間に衝突セルが設けられるこの種の2つのセクター型質量分析機を使用することができる。衝突セルで分離された2つの完全なセクター型質量分析機は、質量タグ付けされたペプチドの分析にも使用することができる。
【0186】
<イオントラップ>
イオントラップ質量分析機は四重極質量分析機に関連している。一般的に、イオントラップは3つの電極で構成され、円筒状電極及び各端の「キャップ」電極により空洞が形成される。円筒状電極に交流高周波電位を印加し、キャップ電極にはDC又はAC電位でバイアスをかける。空洞に注入されたイオンは、円筒状電極の振動電場により安定した円軌道に拘束される。しかし、特定のイオンは、所与の振幅の振動電位に対して不安定な軌道をとり、トラップから放出される。振動高周波電位を変化させることによって、トラップに注入されたイオンのサンプルを質量電荷比に従ってトラップから連続的に放出することができる。次いで、放出されたイオンを検出することにより、質量スペクトルが得られる。
【0187】
イオントラップは、一般的に、イオントラップの空洞に存在する少量の浴ガス、例えばヘリウムで稼働する。これにより、装置の解像度及び感度の両方が増加し、また、トラップに入ったイオンは、浴ガスとの衝突を通して浴ガスの周囲温度まで本質的に冷却される。衝突すると、サンプルをトラップに導入したときのイオン化は増加するが、それと共にイオン軌道の振幅及び速度が低下して前記イオン軌道がトラップの中心付近に保持される。これは、振動電位を変更すると、軌道が不安定になったイオンは、低下した循環イオンに比べてより急速にエネルギーを獲得し、緊密な束となってトラップから飛び出し、その結果、より狭く且つより大きなピークが生じることを意味する。
【0188】
イオントラップは、タンデム質量分析計のジオメトリーに類似していてもよく、実際に、多重質量分析計のジオメトリーに類似させることによって、トラップされたイオンを複雑に分析することができる。サンプル由来の単一の質量種はトラップに保持できる。即ち、他の全ての種をトラップから放出させることができ、第1の振動周波上に第2の振動周波を重ねることにより保持した種を慎重に励起することができる。次いで、励起されたイオンは浴ガスと衝突し、十分に励起されるとフラグメント化する。次いで、このフラグメントを更に分析することができる。他のイオンを放出し、次いでフラグメントイオンを励起してフラグメント化することにより、更に分析するためにフラグメントイオンを保持することも可能である。更なる分析を行うのに十分なサンプルが存在する限り、このプロセスを繰り返してもよい。留意すべき点として、これらの装置は、一般的に、フラグメント化が誘導された後のフラグメントイオンを高い割合で保持する。これらの装置及びFTICR質量分析計(後述する)は、線形質量分析計においてみられる空間分解タンデム質量分析ではなく、時間分解タンデム質量分析の形態を表すものである。
【0189】
<フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析(FTICR MS)>
FTICR質量分析計は、イオンサンプルが空洞内に保持されるという点でイオントラップに類似する特徴を有する。しかし、FTICR MSでは、交差電磁場により高真空室にイオンがトラップされる。箱の2つの側面を形成する一対の平板電極によって電場が形成される。この箱は超伝導磁石の磁場に収容される。前記磁石は、2枚の平板、即ちトラッピングプレートと共に、前記トラッピングプレート間に有し、且つ印加された磁場に直交する円軌道に注入されたイオンを拘束する。箱の他の対向する側面を形成する2枚の「送信板」に高周波パルスを印加すると、イオンはより大きな軌道に励起される。イオンのサイクロイド運動により、「受信板」を含む箱の残り2つの対向する側面に対応する電場が発生する。イオンは、励起パルスによってより大きな軌道に励起されるが、イオンの固有運動が衝突によって失われるにつれこの軌道は崩壊する。受信板によって検出された対応シグナルは、FT(フーリエ変換)分析により質量スペクトルに変換される。
【0190】
誘起フラグメント化実験において、これらの装置は、イオントラップと類似の方法で実施することができる。対象の単一種を除く全てのイオンをトラップから放出することができる。衝突ガスをトラップに導入し、フラグメント化を誘起することができる。次いで、フラグメントイオンを分析することができる。一般的に、フラグメント化生成物と浴ガスとが結合すると、「受信板」によって検出されたシグナルのFT分析によって分析する場合に解像度が低くなる。しかし、フラグメントイオンを空洞から放出させ、例えば四重極タンデム分析器で分析することができる。
【0191】
<クロマトグラフィー又は電気泳動による標識されたペプチドの分離>
本発明の好ましい実施形態では、質量分析によって分析する前に、標識された生体分子をクロマトグラフィーで分離する。これは、ペプチドをクロマトグラフィーカラムから溶出しながらペプチドをインライン分析するために質量分析計に直接接続することができる高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いることが好ましい。HPLCによって様々な分離技術を行うことができるが、質量分析前にペプチド分離するには逆相クロマトグラフィーが一般的な方法である。別の分離方法は、溶出サンプルを自動的に分析するために質量分析計に直接接続することができるキャピラリーゾーン電気泳動である。これら及び他の分画技術を用いて、質量分析前の生体分子の混合物の複雑性を低下させることができる。直交分離等、分離技術を組み合わせて用いてもよい。
【0192】
<分析方法>
本発明の更なる態様は、質量分析による分析方法において上に定義された反応性質量標識体を使用することによって提供される。
【0193】
また、生体分子と関連付け可能な質量標識体を質量分析によって同定することにより前記生体分子を検出することを含み、前記質量標識体が上に定義された質量標識体である分析方法も提供される。
【0194】
前記方法は、以下の工程を含むことが好ましい:
1. 上に定義された反応性質量標識体と生体分子とを反応させる工程と;
2. 標識された前記生体分子を分離する工程と;
3. 前記生体分子に関連付け可能な前記質量標識体を質量分析によって同定する工程。
【0195】
質量分析は、タンデム質量分析が好ましい。特に好ましい実施形態では、本発明の工程2.は、逆相高圧液体クロマトグラフィー、カチオン交換、又はサイズ排除クロマトグラフィーによって、標識されたアナライトから標識されていないアナライトを分離することを含む。
【実施例】
【0196】
(実施例1)
<ジメチルピペリジン−βアラニン−ジチオピリジン:システイン反応性質量標識体の合成>
DMPip−βALA−Osu構造の便利な特徴は、スクシンイミドエステル反応基と反応させることによって別の反応性を容易に生じさせることができる点である。したがって、出発点及び一般的に入手可能な基本単位として国際公開第2007/012849号パンフレットに既に開示されている、公知のTMT(タンデム質量タグ又は質量標識体)構造を用いて、アミノ反応性化合物をそれぞれのシステイン反応性化合物に変換するもう1つの工程のみを必要とする反応スキームを設計した。本発明者らは、先ず、収率の高い単一反応で市販の化合物からジチオピリジン修飾試薬を合成した。次いで、この試薬をDMPip−βALA−Osuと反応させて、DMPip−βALA−DTP試薬を生成した(図2を参照されたい)。HPLC、MS、及びMS/MSによる分析から正確な構造及び純度が>90%であることが明らかになった。
【0197】
(実施例2)
<DMPip−βALA−DTPを用いる合成ペプチドの標識>
次いで、品質の制御されているDMPip−βALA−DTP試薬を適用して標識プロトコールを開発した。UV読み取り型HPLCによって反応の進行を容易にモニタリングできるように、個々のシステイン含有ペプチド(H−Vat−Ala−Thr−Val−Cys−Leu−Pro−Arg−OH)を選択した。本質的に完全に標識されるプロトコールを開発した。0.1%SDSを含む100μLのTEAB(100mM、pH8.5)に50μgのBSAを溶解させた。55℃で1時間、1mMのトリス[2−カルボキシエチル]ホスフィンHClで還元した後、5mMのDMPip−βALA−DTP(200mMのメタノール原液として提供される)でCys残基を標識した。RP及びSCXカートリッジを用いて反応混合物を精製することによって、高度に精製された形態の修飾ペプチドが得られた。図3は、標識反応における個々の種のHPLCモニタリングを示す。
【0198】
(実施例3)
<ステロイド分析のための質量標識体の合成>
ホルモンの分析は、一般的に、放射免疫測定法及び比色分析又は化学発光酵素免疫測定法により実施される。しかし、現在の免疫測定法は、アッセイ1回当たり1つのステロイドホルモンしか定量検出できないという制限があり、特異性に欠ける場合があり、また、かかる交差反応性の結果として、異なる製造業者のキットを用いた場合、同一サンプルの定量結果に最高15倍の差がみられる場合があり不都合である。
【0199】
ステロイドを測定するための別のアプローチは、ガスクロマトグラフィー・質量分析(GC−MS)である。GC−MSは、高感度且つ特異的であるが、サンプル調製が面倒で時間がかかる。液体クロマトグラフィー・質量分析(LC−MS)及び液体クロマトグラフィー・タンデム質量分析は、同様に特異的であり、多くの場合上記のような複雑なサンプル誘導体化工程を行わなくてもよいより簡便なサンプル調製アプローチを提供する。近年、ステロイドホルモンの測定について、異なるイオン源を用いるLC−MSに基づく方法が多数報告されている。複数の反応モニタリングモード(MRM)における安定な同位体希釈タンデムMSによって、単一サンプル中の多数のステロイドを迅速且つ同時に定量することが可能となる。一般的に、かかるアッセイの場合、ステロイドは、カルボニル官能基においてジラールPヒドラゾンに誘導体化され、ピコグラム未満のレベルの高い感度を有するタンデムMSによって同定することができる。カルボニル基でステロイドを誘導体化することが特に好ましいが、ピコリニル又はジメチルグリシンエステルへの誘導体化等、ヒドロキシル基における他の誘導体化を用いてもよい。用いられる誘導体化に関わらず、この方法は、中性ステロイドの定量に特に有用である。
【0200】
LC−MS/MS法は、免疫測定法及びGC−MS分析よりも有利な点が幾つかあるが、依然として、一度に1サンプルしか分析することができないという制限がある。同時に複数のサンプルにおける複数のステロイドを分析することができる別の誘導体化試薬を提供することが好ましい。或いは、質量タグを用いて幾つかのサンプル及びレファレンス標準物質からステロイドを誘導体化できることが特に望ましく、これによって単一アッセイで全てのサンプルを混合及び複合分析することが可能となる。現在知られているTMT試薬は、かかる混合能を提供するが、カルボニル基又はヒドロキシル基を介してステロイドを標識するために必要な反応性基が欠けている。
【0201】
LC−MS/MSによってステロイドホルモンを分析するための改善された試薬を提供するために、カルボニル反応性を有する新規アイソバリックタンデム質量タグを調製した。
【0202】
第1のアプローチでは、遊離酸形態のジメチルピペリジン−βアラニン−Osu TMTコア分子をジ−(N,N’−スクシンイミジル)カーボネート(DSC)で活性化し、ヒドラジンと反応させて、ジメチルピペリジン−βアラニン−ヒドラジンタグを形成した。
【0203】
第2のアプローチでは、遊離酸としてのジメチルピペリジン−βアラニンをDSCで活性化し、Boc−保護アミノキシプロピルアミンと反応させて、アミノキシプロピル反応性基を形成した。これらのタグを用いて、ステロイドを誘導体化して、それぞれヒドラゾン又はO−アルキルオキシムを得た。これらは、LC−タンデムMSによって定量化される。TMTタグの使用は、現在の分析方法を超える幾つかの利点をもたらす。塩基部分を導入することによって、LC−MSにおいて中性ステロイドでさえもイオン化でき、感度が改善される。前記タグは、カルボニル基を有する全てのステロイドと反応するので、単一サンプル中の多数のステロイドを分析することができる。アイソバリック形態では、これら試薬は、1回の実験で幾つかのサンプルを同時に定量し、比較することができる。
【0204】
ヒドラジド及びアミノキシプロピルTMT試薬についての合成反応を図5及び6に示す。
【0205】
(実施例4)
<DMPip−βAla−ヒドラジドによるステロイドの標識>
テストステロン、ナンドロロン、及びベータメタソンという3つのステロイドを、同位体でドープされていないDMPip−βAla−ヒドラジドで標識し、LC−MS/MS分析に供した。この分析について簡潔に述べる。まず、10mgのこれらステロイド混合物を1mLのCOH/CHCOH/HO(7:1:2)に溶解させた。これに、10mgのDMPip−βAla−ヒドラジドを添加し、混合物を30分間70℃で加熱した。標識が完了した後、Sep−PAK C18カラムに通すことによって混合物を清浄化し、その後、LTQ−Orbitrap(Thermo Scientific)を用いて、LC−MS/MSにより分析した。図7から、誘導体化ステロイド混合物のMSプロファイルを示し、テストステロン(T+H)、ナンドロロン(N+H)、及びベータメタソン(B+H)のピークが明らかに示されていることがわかった。
【0206】
これらの各イオンをタンデム質量分析に供したところ、固有のフラグメントのセットが生じ、ステロイドを同定することができた。更に、m/zが126.1Daである、固有のDMPip−βAla−ヒドラジドタグから誘導されたイオンが生じた。このフラグメントは、コアTMT質量標識体分子の質量レポーター基(質量マーカー部分)であり、同定されたステロイドの定量に用いられる。一連のアイソバリックDMPip−βAla−ヒドラジドタグを用いる場合、幾つかのステロイド含有サンプルを標識し、次いで、後続の分析のために前記サンプルを混合することができる。この場合、TMT誘導レポーターイオンの存在量により、それぞれのサンプルにおいて同定されたステロイドが定量される。図8は、ナンドロロン及びテストステロンのMS/MSプロファイルを示す。
【0207】
(実施例5)
<例示的なTMTアレイ試薬の性能>
βアラニン及びアミノヘキサン酸で伸長された試薬は、両方とも、有機溶媒及び有機水性溶媒への可溶性、並びに標識効率の点で、標準的なTMT試薬と非常に類似する性能を有することが見出された。したがって、これらの試薬を、標準的なTMT試薬で用いられる標識プロトコールを維持し、ウシ血清アルブミン(BSA)のトリプシン分解物を標識するために用いた。これらのサンプルを精製し、LC−MS/MS分析に供した。
【0208】
−2個のβアラニン部分により伸長されたTMT試薬から得られたデータ−
追加のβAla基によってTMTアレイタグの質量が増加しているにも関わらず、新規TMT試薬で標識された場合も個々のペプチドの溶出は標準的なTMTと比べてそれほど大きくは変化しないことが見出され、観察されたシフトは1分間未満であった。また、MS/MS挙動は、標準的な試薬と非常に類似していることが見出された。図15Aは、それぞれDMP−βALA−OSu又はDMP−(βAla)3−OSuのいずれかで標識されたBSAトリプシン分解物についての合計イオンカウントクロマトグラムを示す。選択されたペプチドについてのそれぞれのイオン及びそれに対応するMS/MSプロファイルを図15Bに示す。フラグメントイオンは、タグによって誘導される質量シフトを除いて本質的に同一であり、SEQUESTにおける同定の信頼度は、追加のタグに関連するフラグメントによる影響を受けないことが分かる。
【0209】
個々のペプチドのMS/MSプロファイルに対して追加のタグのフラグメントピークが影響を与える可能性について、更に調べるために、BSAのトリプシン分解物から得られた全てのMS/MSスペクトルを詳細に分析した。各追加のアミド結合において更なるフラグメント化が明らかに見られたが、これは、ペプチドの同定スコアには影響を与えるとは思われず、全体的に予測の範囲内であった。必要に応じて、タグに由来するフラグメントピークをデータベースサーチから除くことができた。図16は、標準的なTMT試薬及び2×ベータアラニンで伸長されたTMT試薬の両方についての質量標識体フラグメントのMS/MSスペクトルを示す。
【0210】
−アミノヘキサン酸により伸長されたTMT試薬から得られたデータ−
アミノヘキサン酸残基によって伸長されているTMT試薬で標識したことを除いて同一のウシ血清アルブミンのトリプシン分解物を用いて同様の実験を実施した。この場合、標準的なTMT試薬と比べて有意なシフトが観察され、保持時間は最高5分間長かった。他の調べられた特徴(一般的なMS及びMS/MS挙動、サーチアルゴリズムの有効性、追加のフラグメント)は、DMPip−(βAla)3−OSu試薬と非常に類似しており、予測された挙動に従っていた。
【0211】
(実施例6)
<スルホ−テトラフルオロフェニル反応性基を有する質量標識体の合成>
標識の合成は、出発点が対応する酸である1段階反応である。
【化81】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量分析によって検出するために生体分子を標識するための反応性質量標識体であって、以下の構造を含むことを特徴とする反応性質量標識体。
【化1】

(式中、R、R、R、及びZは、以下の定義a)〜d)のうちの1つから選択され、
a)R及びRは、共に
【化2】

を形成し、Rは、存在せず、Zは、Oであり、R及びRは、同一であっても異なっていてもよく、且つ互いに独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、及び置換又は非置換の複素環基から選択される;
b)R及びRは、共に
【化3】

を形成し、Rは、
【化4】

であり、Zは、Nであり、R〜Rの各々は、独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、及び置換又は非置換の複素環基から選択される;
c)Rは、
【化5】

であり、Rは、Aであり、Rは、存在せず、Zは、Oであり、haloは、ハロゲンである;
d)Rは、

であり、Rは、Aであり、Rは、存在せず、Zは、Oであり、Bは、−NH又は−(CH−ONH(式中、nは1〜6である)であり;
前記a)、b)、c)、及びd)において、Aは、以下の構造を含む
X−L−M
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分である))
【請求項2】
基Aにおける質量正規化部分が、質量標識体の残りの部分に結合する請求項1に記載の反応性質量標識体。
【請求項3】
及びRが、共に
【化6】

を形成し;Rが、存在せず;Zが、Oであり;R及びRが、両方ともHである請求項1又は2に記載の反応性質量標識体。
【請求項4】
及びRが、共に、
【化7】

を形成し;Rが、
【化8】

であり;Zが、Nであり;各R〜Rが、Hである請求項1又は2に記載の反応性質量標識体。
【請求項5】
が、
【化9】

であり;Rが、Aであり;Rが、存在せず;Zが、Oである請求項1又は2に記載の反応性質量標識体。
【請求項6】
が、
【化10】

であり;Rが、Aであり;Rが、存在せず;Zが、Oであり;Bが、−NHである請求項1又は2に記載の反応性質量標識体。
【請求項7】
が、
【化11】

であり;Rが、Aであり;Rが、存在せず;Zが、Oであり;Bが、−(CH−ONHである請求項1又は2に記載の反応性質量標識体。
【請求項8】
質量分析によって検出するために生体分子を標識するための反応性質量標識体であって、以下の構造を含むことを特徴とする反応性質量標識体。
X−L−M−Re
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分であり、Reは、以下の構造:
【化12】

を含む、生体分子に前記質量標識体を結合させるための反応性官能基である)
【請求項9】
質量分析によって検出するために生体分子を標識するための反応性質量標識体であって、以下の構造を含むことを特徴とする反応性質量標識体。
X−L−M−S−Re
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分であり、Sは、以下の基を含む質量系列修飾基であり、Reは、生体分子に前記質量標識体を結合させるための反応性官能基である)
【化13】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKが両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、少なくとも1である)
【請求項10】
反応性官能基が請求項1のa)〜d)のいずれか又は請求項8に定義される反応性官能基である請求項9に記載の反応性質量標識体。
【請求項11】
反応性官能基が、以下の基を含む請求項9に記載の反応性質量標識体。
【化14】

(式中、各Rは、独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、或いは置換又は非置換の複素環基である)
【請求項12】
Lが、アミド結合を含む請求項1から11のいずれかに記載の反応性質量標識体。
【請求項13】
Xが、以下の基を含む請求項1から12のいずれかに記載の反応性質量標識体。
【化15】

(式中、環状単位は、芳香族又は脂肪族であり、且つ任意の2個の隣接する原子間に独立して0個〜3個の二重結合を含み;各Zは、独立して、N、N(R)、C(R)、CO、CO(R)、C(R、O、又はSであり;Xは、N、C、又はC(R)であり;各Rは、独立して、H、置換又は非置換の直鎖又は分枝C−Cアルキル基、置換又は非置換の脂環式基、置換又は非置換の芳香族基、或いは置換又は非置換の複素環基であり;yは、0〜10の整数である)
【請求項14】
質量マーカー部分が、以下の基:
【化16】

及び
【化17】

から選択される基を含む請求項1から13のいずれかに記載の反応性質量標識体。
【請求項15】
質量マーカー部分が、以下の基:
【化18】

及び
【化19】

から選択される基を含む請求項14に記載の反応性質量標識体。
【請求項16】
反応性質量標識体が、以下の構造のうちの1つを有する請求項1から15のいずれかに記載の反応性質量標識体。
【化20】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、
又はJ及びKが両方ともCHであり、且つnは1であり;
mは、0を含む任意の正の整数である)
【請求項17】
反応性質量標識体が、以下の構造のうちの1つを有する請求項1から15のいずれかに記載の反応性質量標識体。
【化21】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKが両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、0を含む任意の正の整数である)
【請求項18】
反応性質量標識体が、以下の構造を有する請求項1から15のいずれかに記載の反応性質量標識体。
【化22】

(式中、JはC=Oであり、KはNHであり、且つnは2であるか、又はJ及びKが両方ともCHであり、且つnは1であり;mは、0を含む任意の正の整数である)
【請求項19】
mが、0である請求項16から18のいずれかに記載の反応性質量標識体。
【請求項20】
反応性質量標識体が、以下の構造のうちの1つを有する請求項1から15のいずれかに記載の反応性質量標識体。
【化23】

(式中、nは、少なくとも1である)
【請求項21】
質量分析による分析方法における請求項1から20のいずれかに記載の反応性質量標識体の使用。
【請求項22】
生体分子に関連付け可能な質量標識体を質量分析によって同定することにより前記生体分子を検出することを含み、前記質量標識体が、請求項1から20のいずれかに記載の質量標識体であることを特徴とする分析方法。
【請求項23】
1. 請求項1から20のいずれかに記載の反応性質量標識体と生体分子とを反応させる工程と、
2. 標識された前記生体分子を分離する工程と、
3. 前記生体分子に関連付け可能な前記質量標識体を質量分析によって同定する工程とを含む請求項20に記載の方法。
【請求項24】
2以上の反応性質量標識体のセットであって、前記セットにおける各標識体が請求項1から20のいずれかに記載の標識体であり、各質量正規化部分によって前記質量標識体が所望の総質量を確実に有し、前記セットが以下の群:
−共通の質量の質量マーカー部分を有する標識体の群であって、前記群における各標識体が固有の総質量を有する群;又は
−質量マーカー部分を有する標識体の群であって、各質量マーカー部分が前記群における他の全ての質量マーカー部分とは異なる質量を有し、前記群における各標識体が共通の総質量を有する群;
のいずれかを含み、前記セットにおける全ての質量標識体が、質量分析によって互いに識別可能であることを特徴とするセット。
【請求項25】
セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み且つ固有の総質量を有する請求項24に記載の反応性質量標識体のセット。
【請求項26】
セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する請求項24に記載の反応性質量標識体のセット。
【請求項27】
セットにおける各質量標識体が、以下の構造を有するAを含む請求項24から26のいずれかに記載の反応性質量標識体のセット。
M(D)−L−X(D)
(式中、Mは、質量正規化部分であり、Xは、質量マーカー部分であり、Dは、質量調整部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、y及びzは、0以上の整数であり、y+zは、1以上の整数である)
【請求項28】
質量調整部分が、
(a)質量マーカー部分内及び質量正規化部分内の少なくともいずれかに位置する同位体置換基、並びに
(b)質量マーカー部分及び質量正規化部分の少なくともいずれかに結合している置換原子又は基
から選択される請求項27に記載の反応性質量標識体のセット。
【請求項29】
質量調整部分が、ハロゲン原子置換基、メチル基置換基、及びH、15N、13C又は18O同位体置換基から選択される請求項27又は28に記載の反応性質量標識体のセット。
【請求項30】
セットにおける各質量標識体が、以下の構造を有するAを含む請求項27から29のいずれかに記載の反応性質量標識体のセット。
X(−L−M(
(式中、Xは、質量マーカー部分であり、Lは、開裂可能リンカーであり、Mは、質量正規化部分であり、は、同位体質量調整部分であり、n及びmは、0以上の整数であり、
前記セットにおける各標識が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【請求項31】
セットが、以下の構造を有する2以上の質量標識体を含む請求項24から30のいずれかに記載の反応性質量標識体のセット。
【化24】

(式中、は、酸素がO18であるか、炭素がC13であるか、又は窒素がN15であることを表し、前記セットにおける各標識体は、1以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【請求項32】
セットが、以下の構造を有する2以上の質量標識体を含む請求項24から30のいずれかに記載の反応性質量標識体のセット。
【化25】

(式中、は、酸素がO18であるか、炭素がC13であるか、又は窒素がN15であることを表し、前記セットにおける各標識体は、1以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【請求項33】
セットが、以下の構造を有する2以上の質量標識体を含む請求項24から30のいずれかに記載の反応性質量標識体のセット。
【化26】

(式中、は、酸素がO18であるか、炭素がC13であるか、又は窒素がN15であることを表し、前記セットにおける各標識体は、1以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【請求項34】
セットが、以下の構造を有する2以上の質量標識体を含む請求項24から30のいずれかに記載の反応性質量標識体のセット。
【化27】

(式中、は、酸素がO18であるか、炭素がC13であるか、又は窒素がN15であることを表し、前記セットにおける各標識体は、1以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【請求項35】
セットが、以下の構造を有する2以上の質量標識体を含む請求項24から30のいずれかに記載の反応性質量標識体のセット。
【化28】

(式中、は、酸素がO18であるか、炭素がC13であるか、又は窒素がN15であることを表し、前記セットにおける各標識体は、1以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【請求項36】
セットが、以下の構造を有する2以上の質量標識体を含む請求項24から30のいずれかに記載の反応性質量標識体のセット。
【化29】

(式中、は、酸素がO18であるか、炭素がC13であるか、又は窒素がN15であることを表し、前記セットにおける各標識体は、1以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【請求項37】
セットが、以下の構造を有する2以上の質量標識体を含む請求項24から30のいずれかに記載の反応性質量標識体のセット。
【化30】

(式中、は、酸素がO18であるか、炭素がC13であるか、又は窒素がN15であることを表し、前記セットにおける各標識体は、1以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【請求項38】
セットが、以下の構造を有する2以上の質量標識体を含む請求項24から30のいずれかに記載の反応性質量標識体のセット。
【化31】

(式中、は、酸素がO18であるか、炭素がC13であるか、又は窒素がN15であることを表し、前記セットにおける各標識体は、1以上のを含み、
前記セットにおける各標識体が、共通の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ固有の総質量を有する;又は前記セットにおける各標識体が、固有の質量を有する質量マーカー部分を含み、且つ共通の総質量を有する)
【請求項39】
質量調整部分がC13又はN15であり、前記セットが、以下の構造を有する6個の反応性質量標識体を含む請求項31に記載の反応性質量標識体のセット。
【化32】

【請求項40】
質量調整部分が、C13又はN15であり、前記セットが、以下の構造を有する6個の反応性質量標識体を含む請求項34に記載の反応性質量標識体のセット。
【化33】

【請求項41】
質量調整部分が、C13又はN15であり、前記セットが、以下の構造を有する6個の反応性質量標識体を含む請求項35に記載の反応性質量標識体のセット。
【化34】

【請求項42】
請求項24から41のいずれかに記載の2以上の質量標識体のセットを含む質量標識体のアレイであって、前記アレイにおける任意の1セットの質量標識体の各々の総質量が、前記アレイの他の全てのセットの質量標識体の各々の総質量と異なることを特徴とするアレイ。
【請求項43】
少なくとも1セットにおける各質量標識体が、共通の質量を有する質量系列修飾基を含み、任意の1セットの質量標識体の各々における質量系列修飾基が、アレイにおける他の全てのセットの質量標識体の各々における質量系列修飾基と異なる質量を有する請求項42に記載の質量標識体のアレイ。
【請求項44】
少なくとも1セットにおける各質量標識体が、請求項8に記載の質量系列修飾基を含み、異なる数の同位体質量調整部分が存在することにより、任意の1セットの質量標識体の各々の質量系列修飾基が、アレイにおける他の全てのセットの質量標識体の各々における質量系列修飾基と異なる質量を有する請求項43に記載の質量標識体のアレイ。
【請求項45】
質量標識体のアレイが、
a)質量標識体の第1のセットであって、前記セットにおける各質量標識体が、以下の構造を有する質量修飾基を含む第1のセットと、
【化35】

b)質量標識体の第2のセットであって、前記セットにおける各質量標識体が、以下の構造を有する質量修飾基を含む第2のセットと、
【化36】

c)質量標識体の第3のセットであって、前記セットにおける各質量標識体が、以下の構造を有する質量修飾基を含む第3のセット
【化37】

を含む請求項43又は44に記載の質量標識体のアレイ。

【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図5】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公表番号】特表2013−505908(P2013−505908A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530210(P2012−530210)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/063191
【国際公開番号】WO2011/036059
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(505423678)エレクトロフォレティクス リミテッド (7)
【Fターム(参考)】