説明

質量速度及び面積加重平均化流体組成サンプリング装置及び質量流量計

【課題】均一又は不均一な流体組成、速度、及び温度のプロフィールを有する導管内の流体組成及び質量流量のリアルタイムで正確な測定値を取得するためのサンプリング方法及び装置を提供する。
【解決手段】少なくとも1つのサンプリングノズル又はサンプル孔を有する流体のための導管で使用されるサンプリング装置及び方法。収集されたサンプルは、マニホルドに導かれ、そこで分析が行われ流量が測定される。採取された流体は、導管に戻される。静圧制御システムは、真空ポンプ又は他の装置を使用してサンプルノズル収集マニホルドの静圧と導管の静圧とを等しくし、質量速度及び面積加重平均流体組成及び質量流量を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、均一又は不均一な流体組成、速度、及び温度のプロフィールを有する導管内の流体組成及び質量流量のリアルタイムで正確な測定値を取得するためのサンプリング方法及び装置である。本発明は、ガス、エーロゾル、粒子状物質、液体、及びその組合せを含む全ての流体のサンプリングを含む。
【背景技術】
【0002】
均一又は不均一なガス速度、組成、温度のプロフィール、渦流、及び乱流を有する導管内の処理におけるエーロゾル及びガスのリアルタイムで正確な測定値を取得する問題は、公知のものである。未知の特性の導管内に一点ガスサンプリングプローブを単に挿入することは、導管内の流れ場全体の代表ではない1つの位置での流体組成を採取するに過ぎない。例えば、大型の石炭火力ボイラーのような燃焼用途において、最も大きい誤差は、5倍ほど容易に変化する可能性がある速度と、3倍ほど変化する組成と、50%ほど変化する温度とに一般的に起因するものである。この例においては、過剰酸素及び一酸化炭素の測定値は、燃焼を制御してプラント効率を改善するために不可欠なパラメータである。全ての処理からの粒子状物質の排出の測定は、公害防止のために非常に重要である。本発明は、粒子状物質を測定するためにも同様に使用することができる。
【0003】
本出願人は、導管を流れる流体のサンプリング及び測定に関する以下の参考文献を承知している。
【0004】

【0005】
Russel他は、加熱チャンバ内にガス状燃料が導入される前に分析するための装置を開示している。サンプルが収集され、制御された条件の下で燃焼される。この燃焼生成物が分析される。
Carboneは、導管の断面積にわたる導管通過流の測定を開示している。衝撃圧と静圧の間の平均全体差が、測定機構及び記録計量機構を作動させる。
Caponeは、爆発性混合物の分析のためのガス分析器を開示している。補正ループ流回路が、ガス検知素子を通過するサンプルを共通の入口−出口チャンバに戻すために使用される。
【0006】
Grobergは、導管内の差圧及び容積流量を測定するための装置を開示している。圧力を検知するための一連のポートを有するパイプループが提供される。
Dimeffは、空気流中に制限オリフィスを設けて圧力降下を測定して流量を判断する空気流量測定装置を開示している。
Maylotte他は、ガス流の選択された特性を測定するための無線センサアセンブリを開示している。
【0007】
Buschは、流動するガス混合物内のガス状成分を測定するためのシステムを開示している。流れ内の混合装置が、ガス混合物をそれが個々のガス成分を検知するセンサによって検知される前に均一化する。
Staphanoes他は、燃焼排出流内のガス成分の濃度を測定するための燃焼ガス分析器を開示している。
Orieskie他は、自己平均オリフィス板を有する処理流量装置を開示している。容積流量が、差圧処理によって測定される。
【0008】
これらの参考文献のどれも、導管流体の流量及び組成を導管内の流体の同じ特性を有する流体の小サンプル流れから分析することができるマニホルド内に流体サンプル流れを導く1つ又はそれよりも多くのサンプリングノズルを使用する方法を開示せず、又は各サンプル流れが、互いに独立して収集され、かつプローブ内の各ノズル又は孔での流体組成と導管質量流量との積を表すサンプルを収集する方法も開示しない。
【0009】
【特許文献1】米国特許第2,523,721号
【特許文献2】米国特許第2,614,423号
【特許文献3】米国特許第4,115,229号
【特許文献4】米国特許第4,290,315号
【特許文献5】米国特許第6,164,142号
【特許文献6】米国特許第6,642,720号
【特許文献7】米国特許第6,843,104号
【特許文献8】米国特許第6,862,915号
【特許文献9】米国特許第2003/018,586号
【発明の開示】
【0010】
本発明の目的は、導管内の流体組成及び導管内の質量流量の測定のための多点式自己平均質量速度及び流れ面積加重サンプリング方法を提供することである。
本発明の教示に従って均一又は不均一な組成、速度、及び温度のプロフィールを有する導管内の流体及び粒子状物質組成及び流量を測定するためのサンプリング装置を開示する。サンプリング装置は、導管の壁に取り付けられた少なくとも1つのプローブを有するサンプリングループを有し、少なくとも1つのノズルがこの少なくとも1つのプローブ上に取り付けられ、かつそのノズルは、この少なくとも1つのプローブから外側に延びている。少なくとも1つのサンプリングノズルが、導管内部に流れに面して方向付けられ、導管内の圧力が、その少なくとも1つのサンプリングノズルに接続したサンプル収集マニホルド内にこの少なくとも1つのノズルを通過してサンプルを強制送入する。サンプル収集マニホルド内の静圧が導管内の静圧に等しくなるように調節するための手段が提供される。組成測定チャンバが、サンプル収集マニホルドに接続される。流体組成アナライザが組成測定チャンバに接続され、サンプルが各望ましい組成について分析され、それによって導管内の流れを代表する流体組成が提供される。質量流量計が組成測定チャンバに接続され、組成測定チャンバ内の流量が測定される。更に、質量流量計は、静圧ポートを通じて導管に接続される。各望ましい成分に関する流量と流体組成との積は、質量速度加重流体組成を提供する。
【0011】
更に、本発明の教示によれば、均一又は不均一な組成、速度、及び温度のプロフィールを有する導管内の流体組成と流量とを測定するためのサンプリング装置が提供される。サンプリング装置は、導管のある一定の断面区域にわたって配置された複数のサンプリングノズルを有する。各サンプリングノズルは、サンプル収集マニホルドと連通する。圧力調節手段が、サンプル収集マニホルドと連通している。組成測定チャンバが、サンプル収集マニホルドに接続される。ガスアナライザは、組成測定チャンバに接続される。流量測定の手段が、サンプル収集マニホルドに接続される。このようにして、導管からの流体は、サンプリングノズル内に収集され、サンプル収集マニホルド内に導かれる。サンプル収集マニホルド内の静圧は、導管内の静圧と等しくなるように調節される。組成測定チャンバ内の流体は、組成及び流量について分析される。
【0012】
更に、本発明の教示に従えば、導管内を流れる均一又は不均一な組成、速度、及び温度のプロフィールを有する流体のサンプルを取得する方法を開示する。少なくとも1つのプローブが、導管内に取り付けられる。少なくとも1つのサンプリングノズルが、この少なくとも1つのプローブ上に取り付けられてそのプローブから外側に延びている。この少なくとも1つのサンプリングノズルは、サンプリングポイントで流れの中に面して導管内に設けられ、それによってこの少なくとも1つのサンプリングノズル内の質量速度を有する流体の流れを生成する。この流体の流れは、サンプリングポイントでの導管内の質量速度に1次比例する。その流体の流れは、サンプル収集マニホルド内に導入され、ある一定の静圧でのサンプル流れが導管内の流体と同じガス組成特性を有して形成される。サンプル収集マニホルド内の静圧は、導管内の静圧に等しくなるように調節される。流体の流れは、サンプル収集マニホルドから組成測定チャンバ内に導かれる。組成測定チャンバ内の流体の組成は、ガスアナライザを用いて測定される。組成測定チャンバ内の流体の流量は、質量流量計を用いて測定される。その流量計からの流れは、静圧ポイントを通じて導管内に戻される。
本発明の上記及び他の目的は、添付図面と併せて得られる以下の明細書の読解から明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
作動の原理:
図1は、単一のサンプリングプローブアセンブリのためのサンプルループの好ましい実施形態の簡略化図面を示している。いくつかのこのようなプローブアセンブリが大きい導管のためには必要とされる。各プローブは、導管10内の均等流れ面積の重心に位置する。サンプルノズル及びプローブの数は、速度、温度、及び流体組成のプロフィールの不均一特性の重大度によって判断される。サンプルプローブ12は、サンプルノズル収集マニホルド16に接続した1つ又はそれよりも多くのサンプルノズル14で構成され、採取された流れは、このマニホルド内で混合し、粒子状物質アナライザ38(必要に応じて)、粒子状物質フィルタ18(必要に応じて)、流体組成測定チャンバ20、流体アナライザ32、34、いずれかの他の測定装置、質量流量計22及び真空ポンプ24又は同等装置を通過して流れる。サンプルノズル収集マニホルド16は、内壁と同一平面上に取り付けられた静圧ポート26を有する。平均導管静圧ポート28は、サンプリングプローブの外側壁の表面上に位置する。好ましい実施形態は、流れに直交する円形チューブ上の圧力分布について、円形シリンダ上の流れ淀み点の両側約35°の角度に導管静圧が存在することを利用している。導管静圧ポート28は、平均導管静圧を取得するために使用される。本方法は、ダクト内に渦流及び非軸流速度成分が存在する時、非常に良好な平均静圧を与える。
【0014】
サンプリングプローブ12の内部構造の簡略図面は、2ノズル型サンプリングシステムについて図2に示されている。その基本概念は、質量速度比例のサンプル流れを各ノズル内に強制送入するために導管内の流体の動圧を使用することである。各ノズルからのサンプル流れは、サンプルノズル収集マニホルド16内で一緒に集められて混合され、次に、図1に表されたサンプルループに流入する。以下の用語が図2に適用される。
M=MA+MB=プローブ、ノズルA及びBの合計質量流量
A=ρAA2×A=ノズルAを通過する質量流量
B=ρBB2×B=ノズルBを通過する質量流量
A2は、ノズルAでのサンプルノズル速度である
B2は、ノズルBでのサンプルノズル速度である
N=各フローノズルの面積=πd2/4
d=サンプルノズルの内径
D=サンプル収集マニホルドの内径、D≫d
θ=円形シリンダ上の淀み点からの静圧ポート角度
ρA=ノズルAでの流体密度
ρB=ノズルBでの流体密度
A、CB=ノズルA、Bでの流体濃度
A、TB=ノズルA、Bでの流体温度
SA1=ノズルAでの導管スタック圧力
SB1=ノズルBでの導管スタック圧力
SA2=ノズルAへの入口での圧力
SB2=ノズルBへの入口での圧力
SM=サンプルノズル収集マニホルドの静圧
C=32.15フィート/秒2
【0015】
図3は、2ノズル型サンプルプローブに関する図面(全ての変数の定義を含む)である。ベルヌーイの公式を適用すれば、ノズルAでの流体流れラインの全圧は、以下の通りである。
式1:

サンプル流れをサンプルノズル及びサンプルマニホルドに送入するのに有効な圧力差は、以下の通りである。
式2:

A2=0であれば、流れは生じることができず、装置は、ピトー管として機能し、サンプルノズル収集マニホルド16内の平均圧力に応答する。
【0016】
サンプリング目的のためには、ノズル速度VA2が、局所導管質量速度VA1に比例していることが望ましい。ノズルを通過してサンプルノズル収集マニホルド16に入るサンプル流れは、サンプルノズル収集マニホルド静圧(PSM)の圧力に依存している。従って、以下の式が適用される。
式3:

最大のサンプル流量は、サンプルループが「短絡」される時に生じる。PSA2−PSMが0になるように強制されると、VA1=VA2であることは明らかであり、システムは自己駆動1次比例サンプリング装置であるが、しかし、サンプルノズルによって圧力低下が生じる。この圧力低下ΔPnは、式4に示されている。
式4:

式中、CDは、ノズル圧力低下係数である。
【0017】
この圧力低下は、以下に示すように式3の右辺からこの圧力低下を差し引くことによって説明されるべきである。
式5:

SA2−PSM=0とすれば、
ρC2A1/2gC=(1+CD)ρA2A2/2gC
式6:

【0018】
式6は、本方法が局所導管速度に正比例するサンプルノズル速度を提供することを明示している。従って、サンプルノズル収集マニホルド内の静圧が、導管静圧に等しく維持されると、サンプルノズル速度VA2は、局所導管速度(VA1)に比例することになる。実際には、例えば、ガスについては、VA2は、VA1の約90%である。
サンプルループの付加的な圧力低下は、摩擦、曲り部、接続部、弁、粒子状物質フィルタ、ガス組成アナライザ、質量流量計によって生じ、サンプルノズルマニホルド静圧が導管静圧を超えて上昇してサンプリング速度を低下させることになり、ノズル速度が局所導管速度に比例せず、従って、要求される平均流体組成又は全ダクトの質量流量のいずれも満たさないことになるので、これは、本発明の機能に大きく影響する。この問題の解決法かつ本発明の核心は、式6で与えられるのと同じ結果を得る目的で、あらゆるサンプルループ圧力低下を相殺するために真空ポンプ24又は他の適切な装置を使用することである。この他の装置は、噴流排出器、ファン、送風機、又は当業者に公知の他の装置とすることができる。基準を満たすことにより、各ノズルのオペレータは、他のノズルから独立し、これは、質量速度加重組成測定のための要件である。
【0019】
これは、能動制御システム30を使用することによって達成され、このシステムでは、差圧トランスミッタ2がサンプルノズル収集マニホルド静圧ポート26と導管静圧ポート28の間の差を測定し、真空ポンプ24(又は他の装置)を制御してサンプルノズル収集マニホルド静圧を上昇又は低下させ、それによってサンプルループ内のあらゆる圧力低下が相殺される。
式5を使用し、かつあらゆる付加的なサンプルループ圧力低下ΔPを組み込むことにより、本発明が圧力低下の妨害問題を解決することを示すことができる。
式7:

ΔP=PSM−PSA1=先に定めたように、サンプルノズル収集静圧マニホルドと導管静圧の間の差。
従って:PSA2−PSM=ρV2A1/2gC−ρV2A2(1+CD)/2gC−PSM−PSA1
故に:
式8:

これは、式5と同様な結果を与え、それは、この能動静圧コントローラの特徴が、忠実な質量速度加重流体組成及び質量流量測定値を取得するのに必須であり、本発明の好ましい実施形態であることを確認するものである。
【0020】
作動特性:
図5は、本発明の作動特性を示している。縦軸PSA2−PSMは、ノズルAへの入口での圧力とサンプル収集マニホルド静圧(PSM)との差である。横軸(VA2)は、サンプルノズル内の速度である。図5は、上述の式8のプロットである。
本発明に関しては、4つの作動モードが存在する:
1)質量速度比例サンプリングモード
2)アンダーサンプリングモード
3)オーバーサンプリングモード
4)ピトー管速度モード
【0021】
A)質量速度比例サンプリングモード:このモードは、真空ポンプ24又は他の装置を用いてサンプルマニホルド静圧を導管静圧に等しく維持するために能動制御システムを使用する。このモードのための作動ポイントは、図5にAと表示される。これは、サンプルノズル14の間に流れの循環がなく、異なるサンプル流れが互いに無関係になることを保証する。流体組成は、各サンプルノズルで質量速度加重され、サンプルノズル収集マニホルド16で集められた全てのサンプル投入の混合物は、全ての流体成分に関する正確な質量速度及び導管流面積加重サンプルに相当する。ガスについては、サンプルノズル内の速度は局所導管速度の約90%であり、合計サンプル流量は理想サンプル流量の約90%である。速度比率は、実験的に判断することができ、それによってこの比率を知れば、導管の流れ面積、サンプル流量及び合計サンプルノズル面積、導管の合計質量流量を作動の全範囲にわたって正確に取得することができるようになっている。
【0022】
好ましい実施形態におけるサンプルノズルは、ノズル設計によって渦流及び非軸線方向ダクト速度成分に不感性である(図6)。
【0023】
(表1)

【0024】
この好ましい実施形態の必須的な特徴は、サンプルループ10内の流体組成アナライザ32、34、粒子状物質フィルタ18、サンプル質量流量計22、及びあらゆる他の圧力低下発生装置によって生じた圧力低下が、サンプルマニホルド静圧と導管静圧とが互いに等しくなるという条件で相殺することができることである。清浄流体又は含塵流体のための全ての状況について、これは、好ましい実施形態である。
【0025】
B)アンダーサンプリングモード:図5でBと表示された作動範囲は、図5でDと表示されたピトー管速度モードと図5でAと表示された質量速度比例モードの間にある。サンプルノズル収集マニホルド静圧は、導管静圧よりも高く、そのためにサンプル速度は、質量速度比例モードと比較して低くかつ不正確である。導管の低速度領域は、適切に採取されず、かつノズルの間の流れの循環が生じることになるので、各ノズルからのサンプル流れは、互いに無関係ではなくなり、それは、本発明の必然性である。このモードは、サンプルループ内の圧力低下の影響を受ける。このモードは、サンプルループ圧力低下が非常に低く、かつ長期にわたって一定である一部の用途のためにのみ使用することができる。
【0026】
C)オーバーサンプリングモード:このモードにおいては、サンプルマニホルド静圧は、導管静圧よりも非常に低く、より大きいサンプル流量が、真空ポンプ24又は他の装置によって達成される。図5でCと表示された平均等速条件(ノズル速度が局所導管速度に等しい)で能動制御システムがサンプルシステムを作動させることができる特別な条件が存在するが、サンプルノズルが全て等速であり又は互いに無関係であるとは限らないことになる。このサンプルは、質量加重されてはいない。
【0027】
D)ピトー管速度モード:このモードは、図5でDとして示される。サンプルノズル収集マニホルド16は遮断され、そのためにサンプル流量はゼロである。このモードは、平均差圧マイナス導管静圧である多点ピトー管として作動する。これらの装置は、速度プロフィールが非常に均一でなければ、正確な平均速度読取値を与えない。このモードは、サンプリングモードではなく、本発明の方法及び装置の全ての作動特性を示すためにのみ開示している。
【0028】
質量流量測定方法:
導管に関する合計質量流量は、導管内に適切に配置されて好ましい実施形態を用いる1つ又はそれよりも多くのサンプリングアセンブリの質量流量から判断することができる。導管速度に対するサンプルノズル速度の比率は、式6に示すようにサンプルノズル圧力低下係数(CD)の関数である。図3の2ノズル型サンプリングの例について示される1つのサンプリングアセンブリに関する導管の合計質量流量は、以下の通りである。
式9:

式中、
T=合計サンプル質量流量
D=実験的に判断されるノズル圧力低下係数
A=ノズルAを通過する質量流量
B=ノズルBを通過する質量流量
C=導管の流れ面積
N=各ノズルの面積
【0029】
非軸線方向導管速度の影響:
いくつかのノズル設計が、最小のノズル圧力低下で最大のサンプル流量を生じさせ、かつ良好なピッチ及びヨー挙動を有する最良の形状を見出すために試験された。ノズルに関する理想的な応答は、速度ベクトルのピッチ及びヨー角度に対して「余弦」応答を有することである。丸い入口、鋭い端部のノズル入口、内側及び/又は外側テーパノズル入口、及びノズルに代わるプローブ内の孔を含む多くのノズル形状が試験された。好ましい実施形態は、フロー流れ内に突出するノズル先端での丸い入口を有する定直径ノズルである。この好ましい実施形態は、高サンプルノズルを有することと、ピッチ及びヨー特性と、粉塵蓄積との間の良好な折衷体である。突出ノズルが使用される時、プローブ表面から1又は2直径だけ延びるノズル先端を有することによって、より良好なピッチ及びヨー性能が得られることが見出されている。これは、円形チューブプローブ構造体の周囲の圧力分布が角度に伴って非常に急速に変化し、延びた先端を有するノズルが使用される時に、それがプローブ構造体によって影響を受けにくいという事実に基づいている。
【0030】
図6は、理想的余弦応答と比較した好ましい実施形態のピッチ及びヨー応答データを示している。この応答は、本発明者が知る大部分の他の流体サンプリング装置よりも非常に良好である。
唯一の正確なサンプリングモードは、上述のように質量速度比例サンプリングモードであるが、本発明は、他のモードの作動を含む。それは、各ノズルでの独立サンプリング率をもたらし、サンプルループ内の全ての圧力低下を補償し、良好な偏軸速度応答特性を有し、空力的に実行されて、広範囲の流体速度、流体組成、温度、圧力、及び含塵流体にわたる平均流体組成及び導管質量流量のための数学的に正確な流体組成方程式を提供する。
【0031】
好ましい実施形態の説明
本発明のシステムを示すダイアグラムが図1に示されている。本発明は、質量速度加重サンプリングプローブであり、アナライザのための忠実な代表サンプルを取得するために使用される。本発明は、真の濃度平均の正確な定義である次の式に従った質量速度及び面積平均化を空力的に実行する。
式10:

式中、

は、流体成分iの導管内の質量速度及び面積平均濃度、ρ(x,y)は流体密度、V(x,y)は流体速度、かつC(x,y)iは成分iの濃度である。
【0032】
図1に示すように、プローブ12は、その中で測定が行われる導管、通気管、ダクト、又は煙道10内に垂直に延びて設けられる。好ましくは、導管の面積にわたって有効に採取するために複数のプローブ12が使用される。各プローブ12は、導管内の均等な流れ面積位置の重心に配置される。少なくとも1つ、好ましくは複数のノズル14が、各プローブ12に取り付けられる。ノズルは、プローブから外側に延びている。サンプルノズル14は、導管内の流体の流れがノズルの開口部内に導かれるように方向付けられる。この開口部は、サンプルノズル収集マニホルド16と連通する。プローブ12及びサンプリングノズル14の数は、導管内の速度、温度、及び流体濃度のプロフィールの不均一性の程度によって判断される。好ましくは、この複数のプローブ及びノズルは、導管の断面区域に配列される。
【0033】
従って、少なくとも1つのサンプリングノズル14が、導管内の均等な面積に関して流れに面して置かれ、各々のノズルは、導管内の局所質量速度に1次比例する質量速度を有し、それによって全体のノズルからもたらされる流量は、導管内のエーロゾル及びガスの忠実な代表サンプルを表すようになる。このサンプルは、真空ポンプ24(又は他の適切な装置)によって、粒子状物質アナライザ38(使用される時)、粒子状物質アナライザ18(使用される時)、流体組成測定チャンバ20、インライン質量流量計22を通過して流れて導管10に排出されて戻り、このようにしてサンプルループが完結される。
【0034】
サンプルループの質量流量は、測定されている導管の面積に関する質量流量に比例する。1つ又はそれよりも多くのこうした多点サンプリングプローブアセンブリが、導管全体の平均流体濃度及び質量流量を取得するために使用される。サンプリングプローブアセンブリの数で除した各サンプリングプローブアセンブリに関する質量流量と流体成分濃度との積の和は、測定されている各成分に関する質量速度加重平均濃度を提供する。「全てのシステムの平均質量流量」掛ける「導管の全体面積」掛ける「局所導管速度と比較したノズル速度」は、本発明の開示の「作動の原理」の節で上述したように、導管内の正確で再現性ある質量流量を提供する。
導管内のエルボ、障害物、及び断面積変化が、渦流、乱流、及び非軸線方向流速度ベクトルを生じさせることは公知である。好ましい実施形態に関するサンプリングノズル14の形状は、導管内の速度のピッチ及びヨー角度への良好な応答を提供し、これは、図6で理想余弦応答と比較される。
【0035】
本発明の重要な用途は、化石燃料発電プラントで燃焼処理を測定して制御するためのものである。過剰酸素及び一酸化炭素の正確な測定が、効率を最適化するために必要とされる。フライアッシュが石炭燃焼発電プラントでの主要問題であることは公知である。このような、粉塵のある用途については、粒子状物質フィルタ18が、サンプルループ内に含まれる。このフィルタは、サンプル流体が流体組成測定チャンバ20及び質量流量計22に入る前にサンプル流体を清浄化する。サンプルループ圧力低下の全ては、能動静圧制御装置30の実施形態によって相殺される。
【0036】
導管10内の粒子の濃度は、サンプルノズル収集マニホルド16に直列にかつ粒子状物質フィルタ38の上流に設けられた粒子状物質アナライザ38によって測定される。あらゆる他の流体特性の検出は、サンプルノズル収集マニホルド16に直列に、及び必要に応じて粒子状物質フィルタ18の上流又は下流のいずれかに適切なアナライザを設置することによって行うことができる。
能動静圧制御システム30は、差圧トランスミッタ42を使用してサンプルノズル収集マニホルドポート26と導管静圧ポート28の間の差を測定し、真空ポンプ24(又は他の適切な装置)を制御してこの差をゼロに等しくする。能動静圧制御システム30は、本発明の核心を構成する。図4は、サンプリングプローブ及び導管静圧ポートの断面を示している。
質量流量計22は、図1に示されているサンプルループに位置している。好ましい実施形態は、圧力低下が小さく流量ターンダウン性能が高いインライン型サーマル質量流量計である。
【0037】
図1に示されている本発明の別の好ましい実施形態は、含塵流体用途のための空気パージ式クリーニングコントローラ36である。これは、加圧空気の「ブロー−ダウン」タンクを使用し、加圧空気は、加熱器(必要に応じ)を通過して流れ、粒子状物質フィルタ18、サンプルノズル収集マニホルド16、サンプルノズル14、サンプルノズルマニホルド静圧ポート26及び導管静圧ポート28を清浄化する。集めた粉塵を含む清浄用空気は、導管内に排出される。プローブ12の端部には、弁40が取り付けられ、これは、清浄化サイクルが作動する時に開いて、蓄積した粉塵を導管10内に逃散させる。制御弁44は、パージ空気を適切な構成要素に導き、かつパージ空気を導管に排気するために使用される。
【0038】
好ましい実施形態は、流体アナライザ測定チャンバ20を利用し、これは、本質的にはパイプであり、その中でサンプルガスが一端に流入し、他端から質量流量計22内に流出する。流体組成アナライザ32、34は、通常は導管内に挿入される原位置計器である。サンプルループから直接サンプルを取り出すことにより、米国EPA「CEMスタックモニタ」に使用されるものに類似した取り出し型ガスアナライザを使用することも可能である。
明らかに、本発明の基本的な精神を逸脱することなく多くの修正を行うことができる。従って、特許請求の範囲内で、本明細書に具体的に説明した以外で本発明を実施することができることは、当業者によって認められるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明のサンプルループの図解である。
【図2】サンプリングプローブの平面図である。
【図3】図2の3−3線に沿って得られた断面図である。
【図4】図3の4−4線に沿って得られた断面図である。
【図5】本発明の作動特性を示すグラフである。
【図6】ピッチ及びヨーデータを示すグラフである。
【符号の説明】
【0040】
10 導管
12 サンプルプローブ
14 サンプルノズル
16 サンプルノズル収集マニホルド
20 流体組成測定チャンバ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
均一又は不均一な組成、速度、及び温度のプロフィールを有する導管内の流体及び粒子状物質組成及び流量を測定するためのサンプリング装置であって、
内部に静圧が存在する導管の壁上に取り付けられた少なくとも1つのプローブを有し、少なくとも1つのノズルが、該少なくとも1つのプローブ上に取り付けられて該少なくとも1つのプローブから外側に延びているサンプリングループ、
を含み、
前記少なくとも1つのサンプリングノズルは、流れに対向する方向に前記導管内で配向され、該導管内の前記静圧は、サンプルを前記少なくとも1つのノズルを通じて該少なくとも1つのサンプリングノズルに接続したサンプル収集マニホルド内に強制送入し、該サンプル収集マニホルド内には、静圧が存在し、
前記サンプル収集マニホルド内の前記静圧を前記導管内の前記静圧と等しくなるように調節する手段と、
前記サンプル収集マニホルドに接続された組成測定チャンバ、及びサンプルが各望ましい成分について分析され、それによって前記導管内の流れを代表する流体組成がもたらされる、該組成測定チャンバに接続された流体組成アナライザと、
前記組成測定チャンバに接続され、該組成測定チャンバ内の流量が測定される質量流量計と、
を更に含み、
前記質量流量計は、更に、前記流量に各望ましい成分に関する前記流体組成を乗じた積が質量速度加重流体組成をもたらすように、静圧ポートを通じて前記導管に接続されている、
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記望ましい成分は、酸素であることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項3】
前記望ましい成分は、一酸化炭素であることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項4】
粒子状物質を除去するために前記サンプル収集マニホルドに配置され、前記少なくとも1つのサンプリングノズル、該サンプル収集マニホルド、及び質量流量トランスミッタを清浄化し、かつ該粒子状物質を前記静圧ポートを通じて記導管内に放出する自動清浄システムを更に有することを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項5】
前記望ましい成分は、「米国環境保護局」によって特定された流体汚染物質から選択された流体汚染物質であることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項6】
前記サンプル収集マニホルド内の前記圧力を調節する前記手段は、真空ポンプ、噴流排出器、ファン、及び送風機から成る群から選択されることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項7】
エーロゾル/粒子アナライザ及び粒子状物質フィルタが、前記組成測定チャンバと前記組成測定チャンバの間に接続され、エーロゾル及び粒子を分析することができ、粒子状物質を前記サンプリングループから除去することができることを特徴とする請求項1に記載のサンプリング装置。
【請求項8】
不均一な組成、速度、及び温度のプロフィールを有する導管内の流体組成及び流量を測定するためのサンプリング装置であって、
各サンプリングノズルがサンプル収集マニホルドに連通した導管の断面積にわたって配置された複数のサンプリングノズルと、
前記サンプル収集マニホルドに連通した圧力調節手段、及び該サンプル収集マニホルドに接続した組成測定チャンバと、
前記組成測定チャンバに接続したガスアナライザと、
前記サンプル収集マニホルドに接続された流量を測定するための手段と、
を含み、
前記導管からの流体が、前記サンプリングノズルに収集されて前記サンプル収集マニホルド内に導かれ、該サンプル収集マニホルド内の前記静圧が、該導管内の前記静圧と等しくなるように調節され、前記組成測定チャンバ内の前記流体は、組成及び流量に関して分析される、
ことを特徴とする装置。
【請求項9】
前記複数のノズルは、前記少なくとも1つのサンプリングプローブ上に取り付けられ、各ノズルは、該少なくとも1つのプローブから外側に前記導管内の対向流体の中に延びていることを特徴とする請求項8に記載のサンプリング装置。
【請求項10】
各ノズルが、直径を有し、該ノズルは、前記少なくとも1つのプローブから該ノズルの該直径の1から2倍の長さだけ外側に延びていることを特徴とする請求項8に記載のサンプリング装置。
【請求項11】
前記圧力調節手段は、真空の供給源であることを特徴とする請求項8に記載のサンプリング装置。
【請求項12】
前記圧力調節手段は、ファンであることを特徴とする請求項8に記載のサンプリング装置。
【請求項13】
前記圧力調節手段は、排出装置であることを特徴とする請求項8に記載のサンプリング装置。
【請求項14】
制御手段が、前記圧力調節手段に接続されていることを特徴とする請求項8に記載のサンプリング装置。
【請求項15】
流体組成、速度、及び温度のプロフィールを有する導管内を流れる流体のサンプルを採取する方法であって、
導管に取り付けられた少なくとも1つのプローブを準備する段階と、
前記少なくとも1つのプローブ上に取り付けられ、該プローブから外側に延びる少なくとも1つのサンプリングノズルを準備する段階と、
前記少なくとも1つのサンプリングノズルをサンプリングポイントで流れに対向して前記導管に配置し、それによって該サンプリングポイントでの該導管内の質量速度に1次比例して質量速度を有する流体の流れを該少なくとも1つのサンプリングノズル内に発生させる段階と、
ある一定の静圧にある前記導管内の前記流体と同じガス組成特性を有するある一定の静圧でのサンプル流れが形成されるサンプル収集マニホルド内に前記流体の流れを導く段階と、
前記サンプル収集マニホルド内の前記静圧を前記導管内の前記静圧と等しくなるように調節する段階と、
前記サンプル収集マニホルドから前記流体の流れを組成測定チャンバ内に導く段階と、
前記組成測定チャンバ内の前記流体の組成をガスアナライザを用いて測定する段階と、
前記組成測定チャンバ内の前記流体の流量を質量流量計を用いて測定する段階と、
前記流体計からの前記流体を静圧ポイントを通じて前記導管内に戻すように誘導する段階と、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
フィルタを準備し、該フィルタを前記サンプリングノズルと前記サンプリング収集マニホルドの間に接続する段階と、
前記導管内の前記静圧を測定する段階と、
前記サンプリング収集マニホルド内の前記静圧を測定する段階と、
流量制御回路及び制御弁を準備する段階と、
前記導管内の前記静圧と前記サンプリング収集マニホルド内の前記静圧の間にゼロ差が得られるように該サンプル収集マニホルド内の該静圧を調節する段階と、
を更に含むことを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項17】
次式:

によって表され、式中、PSA1は、第1のノズルの導管圧力であり、PSA2は、第2のノズルの導管圧力であり、ρVA1は、該第1のノズルでの導管質量速度であり、ρVA2は、該第2のノズルでの導管質量速度であり、gCは、重力定数であり、CDは、抗力係数であることを特徴とする請求項15に記載の方法。
【請求項18】
均一又は不均一な組成、速度、及び温度のプロフィールを有する導管内の流体及び粒子状物質組成及び流量を測定するためのサンプリング装置であって、
導管の壁上に取り付けられた少なくとも1つのプローブを有し、少なくとも1つの孔が該少なくとも1つのプローブに形成されたサンプリングループ、
を含み、
前記少なくとも1つの孔は、流れに対向して前記導管内に配向され、該導管内の圧力が、サンプルを該少なくとも1つの孔に接続したサンプル収集マニホルド内に該少なくとも1つの孔を通じて強制送入し、
前記導管に第1の静圧、及び前記サンプル収集マニホルドに第2の静圧が存在し、
前記サンプル収集マニホルド内の前記静圧を前記導管内の前記静圧と等しくなるように調節する手段と、
前記サンプル収集マニホルドに接続された組成測定チャンバ、及びサンプルが各望ましい成分について分析され、それによって前記導管内の流れを代表する流体組成がもたらされる、該組成測定チャンバに接続された流体組成アナライザと、
前記組成測定チャンバに接続され、該組成測定チャンバ内の流量が測定される質量流量計と、
を更に含み、
前記質量流量計は、更に、前記流量に各望ましい成分に関する前記流体組成を乗じた積が質量速度加重流体組成をもたらすように、静圧ポートを通じて前記導管に接続されている、
ことを特徴とする装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−544281(P2008−544281A)
【公表日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−518352(P2008−518352)
【出願日】平成18年6月21日(2006.6.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/024133
【国際公開番号】WO2007/002190
【国際公開日】平成19年1月4日(2007.1.4)
【出願人】(507416229)ロス ロブレス アドヴァタイジング インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】