説明

赤外線アレイセンサを用いた水位検出装置

【課題】非接触で容易かつ高精度に水位を検出することの可能な水位検出装置及び水位検出方法を提供する。
【解決手段】この水位検出装置100は、赤外線アレイセンサ20と、赤外線アレイセンサ20の出力を2次元情報として出力する出力部10と、信号処理部30とを具備し、赤外線アレイセンサ20の設置高さと、検出角度とに基づき、水位を求めるものである。赤外線アレイセンサ20は、液体としての水を収納するケースの上方の所定位置に配置され、ケースの内壁とケース内に収納された液体表面からの熱放射に基づく赤外線を検出するものである。そして、出力部10は、赤外線アレイセンサ20の出力を、液体とケースとの反射率の差に基づき、2次元情報として出力する。さらに信号処理部30は、2次元情報と、赤外線アレイセンサ20の設置高さと、赤外線アレイセンサ20の検出角度とに基づき、液体の水位を算出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線アレイセンサを用いた水位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
種々の水位検出方法が提案されているが、一般的には、フロートや圧力センサなどを用いて、直接液体に接触する形が一般的であった。しかしながら、炊飯器やポットなど、食品などにかかわる液体の水位検出を行う場合、衛生面から、直接接触しての水位検出は問題がある。
【0003】
そこで、非接触で水位検出を行う方法が提案されている。例えば非接触で温度検出を行う方法として、従来、熱放射線を検出することで、熱放射量の変化を検出し、湯面レベルを測定するようにした溶鋼湯面レベルの測定方法が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭58−150826号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法では、熱放射量の変化により湯面レベルを測定しているため、溶鋼湯面の温度によっても、熱放射量の変化が生じ、十分な測定精度を得ることができない。
本発明は前記実情に鑑みてなされたもので、非接触で容易かつ高精度に水位を検出することの可能な水位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体の収納されたケースの上方の所定位置に配置され、赤外線信号を受信する赤外線アレイセンサと、ケースの内壁と前記ケース内に収納された液体表面からの熱放射に基づく赤外線を検出し、前記液体と前記ケースとの反射率の差に基づく、2次元情報として出力する出力部と、前記2次元情報と、前記赤外線アレイセンサの設置高さと、前記赤外線アレイサンサの検出角度とに基づき、前記液体の水位を求める信号処理部とを有する。
【0007】
また本発明は、上記水位検出装置であって、前記赤外線センサアレイを前記液体から生成された気体から保護する保護部材を具備したものを含む。
【0008】
また本発明は、上記水位検出装置であって、前記保護部材は、前記赤外線センサアレイを熱遮断するシャッタであるものを含む。
【発明の効果】
【0009】
本発明の水位検出装置によれば、非接触で高精度の水位検出が可能である。また同時に水温(液温)検知も可能である。さらにまた衛生面での問題も解決することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1の水位検出装置を示す図(水位が高い時)、(a)は装置構成を示す図、(b)は測定結果を示す図
【図2】本発明の実施の形態1の水位検出装置を示す図(水位が低い時)、(a)は装置構成を示す図、(b)は測定結果を示す図
【図3】本発明の実施の形態1の水位検出装置を用いた炊飯器を示す図
【図4】本発明の実施の形態1の水位検出装置を用いた炊飯器を示す図
【図5】本発明の実施の形態1の水位検出装置に用いられる赤外線アレイセンサを示す図であり、(a)は一部破断概略斜視図、(b)は、パッケージ蓋を外した状態を示す概略斜視図、(c)はパッケージ蓋を外した状態を示す概略側面図、(d)は概略断面図
【図6】本発明の実施の形態1の水位検出装置の赤外線アレイセンサに搭載される赤外線センサチップの要部断面図
【図7】同赤外線センサチップの平面レイアウトを示す図
【図8】同赤外線センサチップの等価回路図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1(a)及び図2(a)は、本発明の実施の形態の水位検出装置を示す説明図であり、水位検出装置はケース内に収容された液体の水位を計測する8行8列の画素を備えた赤外線アレイセンサを備えている。図2は図1よりも水位が低くなった状態を示す。図3及び図4はこの水位検出装置を搭載した炊飯器を示す説明図及び外観斜視図である。図1(b)及び図2(b)はこの水位検出装置の図1(a)及び図2(a)の状態に対応する水位の場合の測定結果を示す図である。図5乃至8はここで用いられる赤外線アレイセンサを示す図である。
【0012】
この水位検出装置100は、赤外線アレイセンサ20と、赤外線アレイセンサ20の出力を2次元情報として出力する出力部10と、信号処理部30とを具備し、赤外線アレイセンサ20の設置高さと、検出角度とに基づき、水位を求めるものである。外線アレイセンサ20は、液体としての水111を収納するケース110の上方の所定位置に配置され、ケースの内壁とケース内に収納された液体表面からの熱放射に基づく赤外線を検出するものである。そして、出力部10は、赤外線アレイセンサ20の出力を、液体とケースとの反射率の差に基づき、2次元情報として出力する。さらに信号処理部30は、2次元情報と、赤外線アレイセンサ20の設置高さと、赤外線アレイサンサ20の検出角度とに基づき、液体の水位を算出する。このケースは、ポリイミド樹脂製であり、この水111とその反射率が異なる。信号処理部30は、赤外線アレイセンサ20からの信号を受信するとともに、その信号値と、赤外線アレイセンサ20の設置高さと、赤外線アレイサンサ20の検出角度とを用いて、水位を算出する。
【0013】
そしてこの水位検出装置100は図3及び図4に示すように、炊飯器1000に搭載されている。炊飯器はケース110を備えた容器本体部200と、容器本体部200に符合する蓋部300とを具備している。そしてこの蓋部300は、内壁にこの水位検出装置の赤外線アレイセンサ20が装着され、透明な蒸気遮断部であるシャッタ40を具備している。
【0014】
この保護部材としてのシャッタ40は、赤外線アレイセンサ20を、この液体から生成された気体から保護するものである。
この測定結果を図1(b)及び図2(b)に示す。図1(b)は図1(a)に示したように水位が高い場合で液体面からの赤外線エネルギーのみを検出した、赤外線2次元情報である。図2(b)は図2(a)に示したように水位が低くなった状態で赤外線エネルギーのみを検出した赤外線2次元情報である。ここで中央部R1は液体面からの赤外線エネルギーを、外周部R2はケース110からの赤外線エネルギーを検出したものである。
【0015】
このとき、放射量の違いで、液体である水111と水が収納されているケース110とでは、同じ温度であっても、赤外線エネルギー量は異なり、赤外線2次元画像の検出結果に違いが出る。
【0016】
このようにして、赤外線アレイセンサ20から検出される赤外線画像を取り出すことで、液体面の高さを検出することができる。たとえば基準水位にある時の赤外線2次元画像を基準画像とし、図1(b)に示したような液体面のみの画像となっているように設定しておく。そしてその水位よりも低くなると、図2(b)に示したように周囲にケース110の内壁が見え、赤外線画像における外周部がケース110による画像となる。この中央部R1の外周の半径a1と外周部R2の外周の半径a2との比から、赤外線アレイセンサ20を臨む角度が算出され、水位を算出することができる。
【0017】
次にこの水位の算出方法について説明する。
まず図1(a)および(b)に示すように、基準水位にある時、容器の内壁の検出角がθのときのセンサから液面までの高さをhとし、その時の容器内壁から容器中心までの距離をb2とする。そしてこのときの出力画像の半径をa2とする。
そして、水位が低下したとき、出力画像は図2(b)に示すように、周囲にケース110の内壁が見え、外周部がケース110による画像となる。一方、図2(a)に示すように、実際に測定したいのは、容器の内壁の検出角がθのときのセンサから液面までの高さhであり、その時の容器内壁から容器中心までの距離をb1とする。そしてこの中央部R1の外周の半径a1と外周部R2の外周の半径a2に基づき、そしてこのときの出力画像の半径をa1とすると、次式によってセンサから液面までの高さhが算出される。
h=h・(b2/b1)
=h・(a2/a1)
そして実際の容器の基準面からの深さh1は、
h1=h−h
となり、容易に液面の高さが検出可能となる。
【0018】
このようにして、信号処理部30は出力部10からの出力データに基づき液面上部に設置した赤外線アレイセンサの検出角度と、検出される温度情報からセンサ設置高さからの液面の位置を検出することができる。
【0019】
次にこの水位検出装置100を構成する赤外線アレイセンサ20について説明する。図5はこの赤外線アレイセンサを示す図であり、(a)は一部破断概略斜視図、(b)は、パッケージ蓋を外した状態を示す概略斜視図、(c)はパッケージ蓋を外した状態を示す概略側面図、(d)は概略断面図、図6はこの赤外線アレイセンサに搭載される赤外線センサチップの要部断面図、図7はこの赤外線センサチップの平面レイアウトを示す図、図8はこの赤外線センサチップの等価回路図である。
【0020】
この赤外線アレイセンサ20は、赤外線イメージセンサであり、赤外線センサチップ1と、この赤外線センサチップ1の出力信号を信号処理するICチップ2と、赤外線センサチップ1およびICチップ2を収納するパッケージ3とを具備している。ここで、絶対温度を測定するサーミスタ(図示せず)も、このパッケージ3に収納されている。
【0021】
この赤外線センサチップ1は、ベース基板11としてのシリコン基板内に熱型赤外線検出部が形成されたものである。熱型赤外線検出部は、異種金属を繋いだ熱電対において、赤外線による熱によりこれら金属の接合点間に温度差を生じさせ、この温度差により接点間に電位差を発生させる熱起電力効果(ゼーベック効果)を利用して、赤外線を電圧として検知するように構成したものである。この熱型赤外線検出部は、受光した赤外線を赤外線吸収膜で熱に変換し、この熱を、直列に多数個接続された熱電対に加え、発生した温接点部の温度変化を、熱電対により電圧として出力する。この熱型赤外線検出部において、赤外線を吸収する赤外線吸収膜の材料としては、赤外線吸収率の高い黒色膜やカーボン膜などが用いられている。
【0022】
そしてパッケージ3は、赤外線センサチップ1とICチップ2とサーミスタが搭載された配線基板からなるパッケージ本体4と、パッケージ蓋5とが気密的に接合され、水分を遮断する構成となっている。またこのパッケージ蓋5には窓9aが設けられ、この窓にはレンズ9が設けられ、集光された赤外線が、赤外線センサチップ1に導かれるようになっている。さらにパッケージ3内部では熱伝導性の良好なカバー部材6が設けられ、赤外線センサチップ1の温度変化を緩和するようになっている。また赤外線は赤外線透過窓7を透過し、赤外線センサチップ1に導かれる。
【0023】
この赤外線センサチップにおいては、図7および8に示すように熱型赤外線検出部Thと画素選択用スイッチング素子であるMOSトランジスタTrとを有する画素Cpがベース基板11の一表面側においてアレイ状(ここでは、2次元アレイ状)に配列されている。ここで、ベース基板11は、シリコン基板を用いて形成されている。なお、本実施形態では、1つのベース基板11の上記一表面側にm×n個(図示例では、8×8個)の画素Cpが形成されているが、画素の数や配列は特に限定するものではない。
【0024】
そしてこの赤外線センサは、複数の垂直読み出し線Lと、複数の水平信号線Sと、複数のグラウンド線と、共通グラウンド線Gndと、複数の基準バイアス線Vrefとを備えており、全ての熱型赤外線検出部Thの感温部の出力を時系列的に読み出すことができるようになっている。この複数の垂直読み出し線Lは、各列の複数の熱型赤外線検出部Thの感温部の一端が上述のMOSトランジスタTrを介して各列ごとに共通接続したものである。複数の水平信号線Sは、各行の熱型赤外線検出部Thの感温部に対応するMOSトランジスタTrのゲート電極が各行ごとに共通接続したものである。複数のグラウンド線は、各列のMOSトランジスタTrのp形ウェル領域を各列ごとに共通接続したものである。そして各グラウンド線は共通接続され、共通グラウンド線Gndを構成する。また、複数の基準バイアス線Vrefは、各列の複数個の熱型赤外線検出部の感温部の他端を各列ごとに共通接続したものである。
【0025】
このように、本実施の形態の赤外線センサは、ベース基板11の上記一表面側に熱型赤外線検出部Thと当該熱型赤外線検出部Thに並設され当該熱型赤外線検出部Thの出力を読み出すためのMOSトランジスタTrとを有する複数の画素Cpが形成されている。ここで、MOSトランジスタTrは、ゲート電極が水平信号線に接続され、ソース電極が感温部を介して基準バイアス線Vrefに接続されている。そして、各基準バイアス線Vrefが共通基準バイアス線に共通接続され、ドレイン電極が垂直読み出し線に接続されている。各水平信号線それぞれが各別の画素選択用パッドに電気的に接続される。そして、各垂直読み出し線それぞれが各別の出力用パッドに電気的に接続される。そして、共通グラウンド線がグラウンド用パッドに電気的に接続される。また、共通基準バイアス線が基準バイアス用パッドと電気的に接続され、シリコン基板が基板用パッドに電気的に接続されている。
【0026】
このようにして、MOSトランジスタTrが順次オン状態になるように各画素選択用パッドVselの電位を制御することで各画素Cpの出力電圧を順次読み出すことができる。例えば、基準バイアス用パッドの電位を1.65、グラウンド用パッドの電位を0V、基板用パッドの電位を5Vとしておく。このとき、画素選択用パッドの電位を5Vとすれば、MOSトランジスタTrがオンとなり、出力用パッドから画素Cpの出力電圧(1.65V+感温部の出力電圧)が読み出される。一方、画素選択用パッドの電位を0Vとすれば、MOSトランジスタTrがオフとなり、出力用パッドから画素Cpの出力電圧は読み出されない。
【0027】
以下、熱型赤外線検出部ThおよびMOSトランジスタTrそれぞれの構造について説明する。なお、本実施形態では、上述のシリコン基板として、導電形がn形で上記一表面が(100)面の単結晶シリコン基板を用いている。
【0028】
熱型赤外線検出部Thは、シリコン基板の上記一表面側の各画素Cpそれぞれにおける熱型赤外線検出部Thの形成用領域に形成されている。そして、MOSトランジスタTrは、シリコン基板の上記一表面側の各画素CpそれぞれにおけるMOSトランジスタTrの形成用領域に形成されている。
【0029】
熱型赤外線検出部Thは、シリコン基板を基礎とするベース基板11の上記一表面側においてベース基板11と空洞12によって空間的に分離して形成され赤外線を吸収する赤外線吸収部を有する薄膜構造部13と、熱電対を有し赤外線吸収部とベース基板11との温度差を検出する熱電対型の感温部とを備えている。この感温部は、赤外線吸収部とベース基板11とに跨って形成されたp形ポリシリコン層15、n形ポリシリコン層14、と熱電対とを具備している。この熱電対は、赤外線吸収部の赤外線入射面側でp形ポリシリコン層15とn形ポリシリコン層14とを電気的に接合した接続部(温接点T1,冷接点T2)で構成される。
【0030】
このようにして、赤外線センサによる出力を赤外線画像として撮像することで、容易に図1(b)および図2(b)に示したような2次元赤外線画像を出力することができ、容易に水位を検出することができる。
【0031】
以上説明してきたように、本発明の水位検出装置によれば、非接触で水位を検出することができることから、炊飯器やポットなど、食品の保存あるいは調理に用いられる用具への適用が極めて有効である。非接触であるため長時間にわたる連続的使用にも劣化を招いたりすることがない。
【0032】
従って、通信回線を使って、高齢者の安全な暮らしを遠隔的に確認するような安全確認システムなどにおける水位検出装置などにも適用可能である。たとえばポットの水位の変化率を検出し、ポットへの給水、お湯の使用などを確認することで、長期にわたるセンサとして使用可能である。
【0033】
また、2次元赤外情報により、検出しているため、たとえば8行8列の画素の内のいくつかが劣化したとしても、図1(b)および図2(b)に示したような輪郭情報は獲得できるため、誤動作がきわめて少ないという特徴を有している。
【符号の説明】
【0034】
1 赤外線センサチップ
2 ICチップ
3 パッケージ
4 パッケージ本体
5 パッケージ蓋
6 カバー部材
7 赤外線透過窓
9 レンズ
9a 窓
10 出力部
11 ベース基板
12 空洞
13 薄膜構造部
14 n形ポリシリコン層
15 p形ポリシリコン層
20 赤外線アレイセンサ
30 信号処理部
40 シャッタ
100 水位検出装置
110 ケース
1000 炊飯器
200 容器本体部
300 蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体の収納されたケースの上方の所定位置に配置され、赤外線信号を受信する赤外線アレイセンサと、
ケースの内壁と前記ケース内に収納された液体表面からの熱放射に基づく赤外線を検出し、前記液体と前記ケースとの反射率の差に基づく、2次元情報として出力する出力部と、
前記2次元情報と、前記赤外線アレイセンサの設置高さと、前記赤外線アレイサンサの検出角度とに基づき、前記液体の水位を求める信号処理部とを有する水位検出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の水位検出装置であって、
前記赤外線センサアレイを前記液体から生成された気体から保護する保護部材を具備した水位検出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の水位検出装置であって、
前記保護部材は、前記赤外線センサアレイを熱遮断するシャッタである水位検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−73033(P2012−73033A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−215889(P2010−215889)
【出願日】平成22年9月27日(2010.9.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】