説明

赤外線ガス分析装置の赤外線制御システム

【課題】1つの実装回路で複数の赤外光源を駆動することが可能であるとともに、測定システムの信頼性を向上させることができる赤外線ガス分析装置の赤外線制御システムを提供する。
【解決手段】制御部12と、複数の赤外光源10の種類および駆動条件を記憶した記憶部14と、赤外光源の駆動電圧を制御する電圧制御回路16と、赤外光源の駆動電圧を検出する電圧検出回路18と、赤外光源の駆動電流を検出する電流検出回路20とを具備し、制御部が下記機能(1)および(2)を有するシステムとする。
(1)電圧検出回路により検出した赤外光源の駆動電圧22に基づき、記憶部に記憶した電圧駆動条件に合わせて電圧制御回路により赤外光源の駆動電圧を制御する機能。
(2)電流検出回路で検出した赤外光源の駆動電流24と記憶部に記憶した電流駆動条件とを比較することにより駆動電流の正常または異常を判定するとともに、駆動電流が異常と判定したときにこの異常に対する処理を行う機能。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料ガス中の特定ガス成分の濃度を測定する赤外線ガス分析装置の赤外線制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試料ガス中に含まれる特定ガス成分を測定するための装置として、非分散型赤外吸収式ガス分析装置(NDIR)が使用されている(例えば、特許文献1参照)。この非分散型赤外吸収式ガス分析装置の測定セルの一例を図2に示す。図2において、10は試料ガス導入口12および試料ガス排出口14を有するセル本体、16はセル本体10内の一端側に配置された赤外光源、18はセル本体10内の他端側に配置された受光部を示す。本例の測定セルでは、試料ガス導入口12からセル本体10内に試料ガス20を導入するとともに、セル本体10内の試料ガス20に赤外光源16から赤外光を照射し、この赤外光を受光部18で検出する。この場合、受光部18に光学フィルタを設け、目的成分が吸収する波長以外の波長の光をカットする。
【0003】
上述した非分散型赤外吸収式ガス分析装置は、ガス濃度計やガス漏洩検知器に利用されているが、目的ガス成分の濃度を測定するに当たり、目的ガス成分の赤外領域にある特定吸収波長帯域の吸光度を検出し、下記ランバート・ベルの法則によりガス濃度を決定している。具体的には、目的ガスの特定吸収波長での透過光(サンプル光)の強度を、その目的ガスの吸収がない波長における透過光(参照光)の強度に対する吸光度として演算し、これに温度等の条件を補正して濃度算出を行っている。
【0004】
<ランバート・ベルの法則>
A=log(I/I)=εcd
A:吸光度
:参照光強度
:サンプル光強度
ε:物質固有の吸光係数
c:ガス濃度
d:セル長
【0005】
【特許文献1】実開平7−5053号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した赤外吸収式ガス分析装置で用いる赤外光源は、放射物質であるフィラメントや窓材によりその放射波長(分光分布)が決まっている。なお、赤外光源としては、上記フィラメント以外にも、セラミックス自体が発熱して赤外光を発生するセラミックス製発光体、特殊な薄膜を用いたものなどの各種タイプのものがある。
【0007】
一方、測定に使用する特性波長領域は、目的ガス成分の種類によって大きく異なる。そのため、従来の赤外吸収式ガス分析装置では、目的ガス成分の特性波長領域でより放射強度の大きい分光分布を有する1つの赤外光源を選択し、その使用する赤外光源に対応した回路を実装する必要があったり、同じタングステン製のフィラメントを用いた赤外光源であっても、目的ガス成分の種類によりその駆動条件を変える必要があったりした。また、赤外光源は、周囲の測定環境(温度、湿度)の変化により、光源発光量などの光源自体の特性が変化してしまい、制御するのが困難であった。
【0008】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたもので、1つの実装回路で複数の赤外光源を駆動することが可能な赤外線ガス分析装置の赤外線制御システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明らは、前記目的を達成するため、制御部と、複数の赤外光源の種類および駆動条件を記憶した記憶部と、赤外光源の駆動電圧を制御する電圧制御回路と、赤外光源の駆動電圧を検出する電圧検出回路と、赤外光源の駆動電流を検出する電流検出回路とを具備し、前記制御部は、前記記憶部、電圧制御回路、電圧検出回路および電流検出回路と接続されているとともに、下記機能(1)および(2)を有することを特徴とする赤外線ガス分析装置の赤外線制御システムを提供する。
(1)電圧検出回路により検出した赤外光源の駆動電圧に基づき、記憶部に記憶した電圧駆動条件に合わせて電圧制御回路により赤外光源の駆動電圧を制御する機能。
(2)電流検出回路で検出した赤外光源の駆動電流と記憶部に記憶した電流駆動条件とを比較することにより駆動電流の正常または異常を判定するとともに、駆動電流が異常と判定したときにこの異常に対する処理を行う機能。
【0010】
本発明において、前記異常に対する処理としては、下記(a)〜(e)から選ばれる1つ以上を行うことができる。
(a)電圧制御回路により赤外光源の駆動電圧を低下させる。
(b)電圧制御回路により赤外光源の駆動電圧を切断する。
(c)赤外線ガス分析装置による測定を中止する。
(d)赤外線ガス分析装置が異常であることを外部に発信する。
(e)赤外線ガス分析装置の測定値が利用できないことを外部に発信する。
【0011】
本発明において、赤外光源の駆動条件としては、光源駆動電圧、光源駆動電流上限、光源周波数、パルス条件等を挙げることができる。
【0012】
本発明では、複数の赤外光源の種類および駆動条件を記憶部に記憶させ、この駆動条件を用いて制御部の制御により目的ガス成分の測定に適した赤外光源を駆動することにより、1つの実装回路(電圧制御回路)で複数の赤外光源を駆動することが可能となる。また、本発明では、測定環境による赤外光源の特性変化(発光量変化)などに対応するため、赤外光源の駆動制御方式として駆動電圧制御方式を採用し、赤外光源の断線、短絡等の異常を検出して測定を停止する等の処理を施すことにより、測定システムの信頼性を向上させている。
【0013】
本発明の赤外線制御システムは、非分散型等の赤外吸収式ガス分析装置や赤外分光器等の赤外線制御システムとして使用することができる。上記赤外吸収式ガス分析装置としては、例えば、環境中の二酸化炭素、メタン、亜酸化窒素、ハイドロフルオロカーボン、テトラフルオロメタン、テトラフルオロエタン等のパーフルオロカーボン、六フッ化硫黄、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類といった赤外吸光活性物質を測定するものを挙げることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る赤外線ガス分析装置の赤外線制御システムは、1つの実装回路で複数の赤外光源を駆動することが可能であるとともに、測定システムの信頼性を向上させることができる。また、赤外光源の駆動制御方式として駆動電圧制御方式を採用しているので、測定システムの信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明をさらに詳しく説明する。図1は本発明の一実施形態に係る赤外線ガス分析装置の赤外線制御システムを示すフロー図である。本実施形態では、赤外線ガス分析装置を非分散型赤外吸収式ガス分析装置に構成してある。
【0016】
本例の赤外線制御システムは、制御部(本例ではマイクロコンピュータシステムを使用)12と、複数の赤外光源(1つのみ図示)10の種類および駆動条件のそれぞれを記憶した記憶部(本例では不揮発メモリを使用)14と、赤外光源10の駆動電圧を制御する電圧制御回路16と、赤外光源10の駆動電圧を検出する電圧検出回路18と、赤外光源10の駆動電流を検出する電流検出回路20とを具備する。
【0017】
制御部12は、記憶部14、電圧制御回路16、電圧検出回路18および電流検出回路20と接続されているとともに、下記機能(1)および(2)を有する。
(1)電圧検出回路18により検出した赤外光源10の駆動電圧22に基づき、記憶部14に記憶した電圧駆動条件に合わせて電圧制御回路16により赤外光源10の駆動電圧を制御する機能。
(2)電流検出回路20で検出した赤外光源の駆動電流24と記憶部14に記憶した電流駆動条件とを比較することにより駆動電流24の正常または異常を判定するとともに、駆動電流24が異常と判定したときにこの異常に対する処理を行う機能。
【0018】
本発明において、赤外光源としては、パルスあるいは連続点灯可能なフィラメントや、薄膜を熱源とする赤外光源等を用いることができるが、本実施形態では複数の赤外光源としてタングステン光源およびIR(赤外線)光源の2種類を使用し、それらの駆動条件として下記表1に示す光源電圧および電流上限を記憶部に記憶させた。なお、タングステン光源とIR光源各々の駆動条件の切り換えは、ディップスイッチ(図示せず)によって行う。これにより、切り換えの信号が制御部に伝わり、制御部によって記憶部にある各光源の記憶領域を選択し、そのデータを抽出することによって駆動条件を切り換える。
【0019】
【表1】

【0020】
本実施形態では、表1に示した赤外光源の駆動条件を用い、比例制御にて光源電圧を調整した。また、電流検出回路で検出した駆動電流を電流駆動条件と比較することにより、駆動電流が正常または異常の判定を行った。そして、判定が異常の場合は駆動電圧を低下させたり、切断したりすることにより、測定システムの破壊等を回避した。さらに、判定が異常の場合、測定を中止してから、システムが異常であり、測定値は利用できないことをアラーム表示あるいは警報発信などにより外部に発信した。
【0021】
なお、本発明の赤外線制御システムは上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更することが可能である。例えば、上記実施形態では2種類の赤外光源を用いたが、3種類以上の赤外光源を用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る赤外線ガス分析装置の赤外線制御システムを示すフロー図である。
【図2】非分散型赤外吸収式ガス分析装置の測定セルの一例を示す概略図である。
【符号の説明】
【0023】
10 赤外光源
12 制御部
14 記憶部
16 電圧制御回路
18 電圧検出回路
20 電流検出回路
22 駆動電圧
24 駆動電流

【特許請求の範囲】
【請求項1】
制御部と、複数の赤外光源の種類および駆動条件を記憶した記憶部と、赤外光源の駆動電圧を制御する電圧制御回路と、赤外光源の駆動電圧を検出する電圧検出回路と、赤外光源の駆動電流を検出する電流検出回路とを具備し、前記制御部は、前記記憶部、電圧制御回路、電圧検出回路および電流検出回路と接続されているとともに、下記機能(1)および(2)を有することを特徴とする赤外線ガス分析装置の赤外線制御システム。
(1)電圧検出回路により検出した赤外光源の駆動電圧に基づき、記憶部に記憶した電圧駆動条件に合わせて電圧制御回路により赤外光源の駆動電圧を制御する機能。
(2)電流検出回路で検出した赤外光源の駆動電流と記憶部に記憶した電流駆動条件とを比較することにより駆動電流の正常または異常を判定するとともに、駆動電流が異常と判定したときにこの異常に対する処理を行う機能。
【請求項2】
前記異常に対する処理は、下記(a)〜(e)から選ばれる1つ以上であることを特徴とする請求項1に記載の赤外線ガス分析装置の赤外線制御システム。
(a)電圧制御回路により赤外光源の駆動電圧を低下させる。
(b)電圧制御回路により赤外光源の駆動電圧を切断する。
(c)赤外線ガス分析装置による測定を中止する。
(d)赤外線ガス分析装置が異常であることを外部に発信する。
(e)赤外線ガス分析装置の測定値が利用できないことを外部に発信する。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−150828(P2009−150828A)
【公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−330418(P2007−330418)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(000219451)東亜ディーケーケー株式会社 (204)
【出願人】(501149950)バイオニクス機器株式会社 (6)
【Fターム(参考)】