説明

赤外線サーマルディテクタ及びその製造方法

【課題】赤外線サーマルディテクタ及びその製造方法を提供する。
【解決手段】赤外線サーマルディテクタ10は、基板20と、検知部30と、サーマルレッグ50とを含む。検知部30は、基板20から離隔され、入射される赤外線光を、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収し、吸収された赤外線による温度変化によって、抵抗値が変わるように設けられサーマルレッグ50は、検知部30からの信号を基板20に伝達する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線サーマルディテクタ及びその製造方法に係り、さらに詳細には、温度を有する物体から放射される赤外線を受光してこれを検知する赤外線サーマルディテクタ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
任意の温度Tを有している物体は、黒体輻射によって、特定波長で最大値を示す広域の光を放射する。周囲に存在する常温の物体から放射された光は、ほぼ10μmの波長帯域で最大値を示す赤外線を放射する。このように放射された赤外線が、その周囲とサーマルレッグ(thermal leg)で連結されたサーマルマス(thermal mass)に入射すれば、温度が上昇する。このような赤外線入射による温度変化により、材料の性質によって、抵抗変化、極性変化、起電力変化、反り変化のような特性を得ることができ、これをイメージアレイ(image array)化させてサーマルイメージを得る。特に、材料の抵抗変化を利用したサーマルイメージの実現方式をボロメータ(bolometer)という。
【0003】
ピクセルの温度変化量を決定する主要因子は、与えられた波長帯域でのピクセルの平均光吸収率とピクセル面積との積に比例する入射エネルギー量、ピクセルの熱容量(thermal mass)及び熱伝導度(thermal conductance)がある。
【0004】
高解像度の高い温度精度を有するサーマルカメラの実現のために、ピクセルの小型化を介したVGA(video graphics array)クラス以上のフォーマット(format)を有するアレイが開発されている。しかし、このようなピクセルサイズの小型化においては、ピクセル面積の縮小によって、入射エネルギー量が減少し、またサーマルレッグ長の縮小に伴う熱伝導度の上昇によって、温度変化量が減少する。従って、温度ノイズ指数が増大し、現在では、使用波長(〜10μm)の回折限界より大きいサイズを有するピクセルが、小型化の限界であると見られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、局部的な表面プラズモン共鳴現象を起こすことができる構造を介して、小面積に光を集束させることによって、同じ入射エネルギー量下で小さいサーマルマス及び小さい熱伝導度を確保し、超小型/高感度特性を有する赤外線サーマルディテクタ及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタは、基板と、前記基板から離隔されており、入射される赤外線光を、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収し、吸収された赤外線による温度変化によって、抵抗値が変わるように設けられた検知部と、前記検知部からの信号を前記基板に伝達するサーマルレッグと、を含む。
【0007】
前記検知部は、入射される赤外線光を、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収するようにパターニングされた構造を有する金属層と、金属層の下部側に、吸収された赤外線による温度変化を抵抗変化に変換する物質を含むように設けられた熱電材料層と、を含んでもよい。
【0008】
前記検知部は、ディスク形態、リング形態、バー形態、あるいはバー形態を組み合わせた形態を有するようにパターニングされてもよい。
【0009】
前記サーマルレッグは、前記熱電材料層と同一材料で一体に形成されてもよい。
【0010】
前記熱電材料層は、前記金属層に対応する構造にパターニングされてもよい。
【0011】
前記熱電材料層は、平板構造に形成されてもよい。
【0012】
前記熱電材料層は、非晶質シリコン、酸化バナジウムまたは酸化ニッケルのように、温度変化によって抵抗値が変わる材料のうち少なくとも一つを含んでもよい。
【0013】
前記金属層は、金、アルミニウム、銅、チタン、白金、銀を含むグループのうちから選択された少なくとも1つの物質を含んでもよい。
【0014】
前記検知部は、前記金属層と前記熱電材料層との間に誘電体層をさらに含んでもよい。
【0015】
前記サーマルレッグは、電気的連結が可能な材料で、前記検知部と別途に形成されてもよい。
【0016】
前記基板と前記検知部との間に空気層が存在しうる。
【0017】
前記基板と前記検知部との間に熱伝導を遮断する物質層が存在しうる。
【0018】
前記検知部及び前記サーマルレッグの下側の基板上には、光を透過させない金属反射層をさらに含んでもよい。
【0019】
本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタの製造方法は、基板を準備する段階と、サーマルレッグの両端と電気的な連結がなされる前記基板上の金属配線部分に開口を有する犠牲層を、前記基板上に形成する段階と、前記開口及び前記犠牲層の上に電気的連結が可能な材料を積層してこれをパターニングし、前記金属配線にその両端だけが電気的に連結され、残りの部分は、前記基板から離隔されたサーマルレッグを形成する段階と、前記サーマルレッグと電気的に連結され、入射される赤外線光を、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収し、吸収された赤外線による温度変化によって、抵抗値が変わるように設けられた検知部を形成する段階と、を含む。
【0020】
前記熱電材料層は、前記サーマルレッグと同一材料で、前記サーマルレッグ形成時に、前記サーマルレッグと一体に製造される。
【0021】
前記犠牲層を除去し、前記基板と前記サーマルレッグとの間に空気層を形成する段階をさらに含んでもよい。
【0022】
前記犠牲層は、熱伝導を遮断する物質から形成され、前記サーマルレッグと前記基板との間の熱伝導を遮断するように形成される。
【0023】
前記検知部及び前記サーマルレッグの下側に該当する前記基板上に、光を透過させないように形成された金属反射層をさらに含み、前記金属反射層の形成後に、前記犠牲層を形成することができる。
【0024】
前記金属反射層は、前記金属配線の形成時に、同時に形成することができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタ及びこれを製造する方法によれば、局部的な表面プラズモン共鳴現象を起こすことができる構造を介して、小面積に光を集束させることによって、同じ入射エネルギー量下で、小さいサーマルマス及び小さい熱伝導度を確保し、超小型/高感度特性を有する赤外線サーマルディテクタを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】赤外線サーマルディテクタの概略構成を示す概念図である。
【図2】通常の構造の場合と、サーマルレッグ長を2倍増大させたときの温度変化ΔTの差を比較して示すグラフである。
【図3】本発明の実施形態による局部的な表面プラズモン共鳴を利用した光吸収技術を適用した赤外線サーマルディテクタを概略的に示す図面である。
【図4】本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタの概略断面図である。
【図5】図3及び図4の検知部を拡大して示す概略斜視図である。
【図6】本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタでの検知部の他の例を概略的に示す図面である。
【図7】本発明の他の実施形態による赤外線サーマルディテクタの概略断面図である。
【図8】発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタを製造する方法を示す図面である。
【図9】発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタを製造する方法を示す図面である。
【図10】発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタを製造する方法を示す図面である。
【図11】発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタを製造する方法を示す図面である。
【図12】発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタを製造する方法を示す図面である。
【図13】発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタを製造する方法を示す図面である。
【図14】本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタの断面図を概略的に示す図面である。
【図15】本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタの断面図を概略的に示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付された図面を参照しつつ、本発明の望ましい実施形態について詳細に説明する。
【0028】
図1は、赤外線サーマルディテクタの概略構成を示す概念図である。放射された赤外線光が、その周囲とサーマルレッグ(thermal leg)3で連結されたサーマルマス(thermal mass)1、すなわち、検知部に入射すれば、サーマルマス1の温度が上昇する。この温度変化ΔTは、平衡状態で、下記数式1のように表現される。
【0029】
【数1】

【0030】
数式1で、εは、光吸収率、Φは、入射される赤外線光放射フラックス、Aは、サーマルマス1の検知面積、Gthは、サーマルレッグ3の熱伝導度、ωは、検知器で信号を受け入れる周波数、Cthは、サーマルマス1の熱容量を示す。
【0031】
数式1から、赤外線サーマル検知効率を良好にするためには、サーマルレッグの熱伝導度Gth及びサーマルマス1の熱容量Cthを小さくし、入射エネルギー量Φ及び検知部面積Aを大きくする必要があることが分かる。
【0032】
図2は、通常の構造の場合と、サーマルレッグ長を2倍増大させたときとの温度変化ΔTの差を比較して示すグラフである。図2で、横軸は、ピクセルサイズ(単位μm)を示し、縦軸は、温度変化ΔTを示す。図2で、横軸と縦軸との数値は、絶対的な意味があると限定されるものではない。同一ピクセルサイズ下で、サーマルレッグ長を2倍増大させた場合、温度変化ΔTがさらに大きくなることが分かる。併せて、ピクセルサイズが大きくなるほど、温度変化ΔTが大きくなることが分かる。
【0033】
ところで、高解像度の高い温度精度を有するサーマルカメラなどを実現するために、ピクセルを小型化した場合、ピクセル面積縮小によって、入射エネルギー量が減少するだけではなく、サーマルレッグ長の縮小によって熱伝導度も上昇し、温度変化量の低減につながる。従って、温度ノイズ指数が増大するようになり、使用波長約10μmの回折限界(diffraction limit)より大きいサイズを有するピクセル、例えば、約17μmのサイズを有するピクセルが小型化の限界であると見なされている。
【0034】
本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタによれば、局部的な表面プラズモン共鳴(LSPR:localized surface Plasmon resonance)現象を起こす構造を介して、小面積に光を集束させることによって、同じ入射エネルギー量下で、小さいサーマルマス及び小さい熱伝導度を確保し、超小型/高感度特性を有する赤外線サーマルディテクタを実現することができる。
【0035】
局部的な表面プラズモン共鳴を利用した素子は、ナノ光学(nanooptics)分野で多くの研究がなされている。局部的な表面プラズモン共鳴現象を利用した完全に近い吸収現象は、パターニングされた金属層/パターニングされた金属層または平らな金属層形態で積層構造を形成しつつ、使用する金属の材料または形態を調節することによって、入射光との電気的な結合(electric coupling)を調節し、熱電材料層の種類または厚さを調節することによって、入射光との磁気的な結合(magnetic coupling)を調節し、入射光の透過及び反射を最大限抑制して実現することができる。局部的な表面プラズモン共鳴を利用した光吸収の場合、光学的な断面積が広いので、小さい構造物で広い領域の光を吸収することが可能であり、局部的な表面プラズモン共鳴現象を介した入射光と金属構造物との結合が発生すれば、非常に狭い領域に光が集中するので、サーマルマスを従来に比べて極めて小さくできる。例えば、サーマルマスを従来に比べて、ほぼ1/5以下に小さくできる。これにより、サーマルレッグを長く製作するための物理的空間を確保できるので、熱伝導度を、ほぼ1/5以下に減らすことができる。
【0036】
このような局部的な表面プラズモン共鳴を利用した吸収技術を適用すれば、赤外線サーマルディテクタにおいて現在の最小ピクセルを有する技術に比べて、ほぼ半分以下のピクセルサイズで同じ温度変化量を確保することができ、同じピクセルサイズでは、ほぼ3倍以上の温度変化量を確保することができる。
【0037】
図3は、本発明の実施形態による局部的な表面プラズモン共鳴を利用した光吸収技術を適用した赤外線サーマルディテクタを概略的に示す図面である。図4は、本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタの概略断面図である。図3では、図示の明確化のために、便宜上、基板の図示を省略した。
【0038】
図3及び図4を参照すれば、本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタ10は、基板20と、検知部30と、サーマルレッグ50と、を含む。検知部30は、基板20から離隔されており、入射される赤外線光を、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収し、吸収された赤外線による温度変化によって、抵抗値が変わるように設けられる。サーマルレッグ50は、温度変化によって得られる検知部30からの信号を、基板20に伝達するように設けられる。
【0039】
基板20には、読み取り回路(read−out IC:図示せず)が設けられてもよい。この基板20には、サーマルレッグ50と基板20の読み取り回路との電気的な連結のための金属配線21が形成されてもよい。
【0040】
図5は、図3及び図4の検知部30を拡大して示す概略斜視図である。
【0041】
図3ないし図5を参照すれば、検知部30は、入射される赤外線光IRを、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収するようにパターニングされた構造を有する金属層31、及びその下部側に設けられた熱電材料層35を含む層構造を有する。入射される赤外線光IRによって、金属層31を含む構造において局部的な表面プラズモン共鳴が起こり、これによって、赤外線光IRが吸収される。熱電材料層35は、局部的な表面プラズモン共鳴によって赤外線光を吸収することによる検知部30の温度変化を、抵抗変化によって示すように設けられる。すなわち、熱電材料層35は、吸収された赤外線による温度変化を、抵抗変化に変換する物質を含むように形成される。
【0042】
金属層31は、金、アルミニウム、銅、チタン、白金、銀を含むグループのうちから選択された少なくとも1つの物質を含んで形成される。金属層31は、入射される赤外線光IRによって、局部的な表面プラズモン共鳴が起こり、赤外線光を吸収するようにパターニングされた構造を有する。このような局部的な表面プラズモン共鳴によって、赤外線光を吸収するように、共鳴が発生する金属層31構造物の長さあるいは幅は、入射される赤外線光の波長λのほぼ半分以下のサイズを有するように形成される。
【0043】
熱電材料層35は、吸収された赤外線による温度変化を、抵抗変化に変換する物質を含むように形成される。すなわち、熱電材料層35は、サーミスター材料を使用して形成される。例えば、熱電材料層35は、非晶質シリコン、酸化バナジウムまたは酸化ニッケルのように、温度変化によって抵抗値が変わる材料を含む物質から形成される。このように、熱電材料層35を、温度変化を抵抗変化に変換する物質から形成する場合、金属層31において、入射された赤外線光IRを局部的な表面プラズモン共鳴によって吸収して得られた温度変化は、熱電材料層35において抵抗変化として現れる。このような抵抗変化による信号は、サーマルレッグ50を介して、基板20に設けられた読み取り回路に伝えられる。
【0044】
ここで、検知部30は、ディスク形態、リング形態、バー形態、あるいはバー形態を組み合わせた形態を有するようにパターニングされてもよい。
【0045】
すなわち、金属層31は、局部的な表面プラズモン共鳴を介して入射される赤外線光を吸収するようにパターニングされた構造を有してもよく、熱電材料層35は、金属層31に対応する構造にパターニングされてもよい。ここで、熱電材料層35は、金属層31と同じ構造であり、また、そのサイズは、同一であっても異なってもよい。
【0046】
例えば、図3ないし図5に示すように、検知部30は、リング状構造に形成されてもよい。すなわち、金属層31は、リング状構造に形成され、熱電材料層35も、これに対応するリング状構造に形成される。図3ないし図5では、熱電材料層35が、金属層31より広い形態のリング状構造を有する場合を示すが、熱電材料層35は、金属層31と同一サイズに形成されてもよく、小さく形成されてもよい。
【0047】
検知部30は、図6に示すように、バー状構造や、バー状構造の組み合わせとして形成されてもよい。
【0048】
検知部30は、ディスク形態に形成されてもよい。また、検知部30は、金属層31をリング形態やバー形態、バー形態を組み合わせた形態に形成され、熱電材料層35をディスク形態などの平板構造に形成することも可能である。図14は、検知部30の金属層31をリング形態に形成し、熱電材料層35をディスク形態などの平板構造に形成した例を示している。
【0049】
ここで、検知部30は、金属層31と熱電材料層35との間に、図15に示すように、誘電体層135をさらに具備してもよい。図15に示すように、誘電体層135をさらに含む場合、金属層31と誘電体層135との界面133においても、表面プラズモン共鳴によって吸収が起きる。図15では、誘電体層135をさらに具備する検知部30が、リング形態である例を示している。検知部30が誘電体層135をさらに具備する場合にも、前述の通り、検知部30は、多様な形態を有することができる。
【0050】
一方、サーマルレッグ50は、検知部30からの抵抗変化による信号を、基板20の読み取り回路に伝達すると同時に、検知部30の熱が、サーマルレッグ50を介して基板20に伝わらずに、短時間で十分に除去されるように設けられる。図3及び図4に示すように、サーマルレッグ50は、所定の面積内で、サーマルレッグ50の長さを最大化するようにパターニングされた形態に形成されてもよい。
【0051】
サーマルレッグ50は、既定の面積内で、その長さが最大になるように、例えば図3に示すように、中心からの距離が異なる複数の半リング51と、半リング51を連結する第1連結部53と、を含む構造を有し、半リング51及び第1連結部53を含む構造一対が、検知部30を中心に互い対向すべく配置されるように設けられる。検知部30の熱電材料層35と、サーマルレッグ50の最内側の半リングは、第2連結部55によって、電気的に連結されてもよい。サーマルレッグ50は、パターニングによって、第1連結部53及び第2連結部55と半リング51とを含む構造に形成される。最外側の半リングは、ポスト23に電気的に連結されるように延長される構造にパターニングされてもよい。
【0052】
サーマルレッグ50の両端と、基板20に形成された金属配線21とを電気的に連結する部分は、サーマルレッグ50を基板20に対して離隔させて支持するように、ポスト23として形成される。このポスト23は、サーマルレッグ50と同一材質であり、サーマルレッグ50の製造工程において形成される。また、このポスト23は、サーマルレッグ50と異なる材質で形成されてもよい。
【0053】
一方、サーマルレッグ50は、熱電材料層35と同一材料で一体に形成されてもよい。すなわち、サーマルレッグ50及び熱電材料層35は、同一材料で、同一製造工程において形成されてもよい。
【0054】
他の例として、サーマルレッグ50は、電気的連結が可能な材料で、熱電材料35と別途に形成されてもよい。すなわち、サーマルレッグ50は、熱電材料層35と異なる材料で、異なる製造工程において、熱電材料層35と電気的に連結されるように形成されてもよい。例えば、サーマルレッグ50は、熱電材料層35と積層されて形成されてもよい。
【0055】
本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタ10は、上記のような検知部30及びサーマルレッグ50が形成された二次元アレイの構造を具備してもよく、二次元ピクセル配列を有する赤外線サーマルディテクタ、例えば、赤外線サーマルカメラとして実現されてもよい。
【0056】
本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタ10によれば、検知部30のサイズを小さくすることが可能であるので、決まったサイズの1つのピクセル面積内で、従来に比べてサーマルレッグ50が占める面積をさらに大きくすることができ、サーマルレッグ50の長さを長くすることができる。
【0057】
従って、検知部30は、金属層31を含む構造によって入射される赤外線光を吸収するので、検知部30のサイズを少なくとも赤外線波長より何倍も小さいサイズに形成することができる。また、サーマルレッグ50をさらに長く形成しつつも、ピクセルサイズを小さくすることが可能になる。このように、検知部30のサイズを小さくすることにより、サーマルマスを小さくすることができ、サーマルレッグ50をさらに長くすることにより、熱伝導度も小さくすることができる。したがって、同じ入射エネルギー量下で、小さいサーマルマス及び小さい熱伝導度を確保し、超小型/高感度特性を有する赤外線サーマルディテクタを実現することができる。このとき、ピクセルサイズを従来に比べて著しく縮小させることができる。
【0058】
また、本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタ10は、図4に示すように、検知部30で吸収された赤外線によって生じた熱が、基板20に直ちに伝わらないように、基板20と検知部30との間に、空気層60が存在するように構成されてもよい。
【0059】
また、本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタ10は、図7に示すように、基板20と検知部30との間に、熱伝導を遮断する物質層70が存在するように構成されてもよい。この物質層70は、後述する本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタの製造方法における犠牲層に該当する。図4は、犠牲層を除去した構造に該当し、図7は、犠牲層を残した構造に該当する。
【0060】
また、本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタ10は、検知部30やサーマルレッグ50の下側の基板20上に光を透過させない金属反射層25をさらに含むことができる。基板20には、サーマルレッグ50と、基板20に設けられた読み取り回路とを電気的に連結するための金属配線21が形成され、金属反射層25は、金属配線21の形成時に、金属配線21と同一材質で同時に形成されてもよい。また、金属反射層25は、金属配線21とは異なる材質で形成されてもよい。金属反射層25は、パターニングされた形態で形成されてもよい。
【0061】
以下、図8ないし図13を参照しつつ、本発明の実施形態による赤外線サーマルディテクタ10を製造する方法について説明する。
【0062】
まず、基板20を準備する。そして、この準備された基板20上に、この基板20から離隔され、その両端だけ基板20に電気的に連結されるように、サーマルレッグ50を形成する。そして、形成されたサーマルレッグ50に電気的に連結されるように、入射される赤外線光を局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収し、吸収された赤外線による温度変化によって抵抗値が変わるように設けられた検知部30を形成する。
【0063】
図8を参照すれば、基板20には、読み取り回路(図示せず)とサーマルレッグ50との電気的な連結のための金属配線21が設けられ、検知部30やサーマルレッグ50の下に該当する部分に、金属反射層25が設けられてもよい。金属配線21と金属反射層25は、同一材質または互いに異なる材質から形成される。金属反射層25は、検知部30やサーマルレッグ50の下側に該当する基板20上に、光を透過させないように形成される。この金属反射層25は、平らな構造であるか、またはパターニングされた構造に形成される。金属反射層25は、金属配線21の形成時に、同時に形成されてもよい。
【0064】
基板20から離隔され、その両端だけ基板20上の金属配線21に電気的に連結されるようにサーマルレッグ50を形成するために、まず、図9に示すように、準備された基板20上の金属配線21とサーマルレッグ50との連結部分に、開口100aを有する犠牲層100を形成する。金属反射層25を具備する構造である場合、金属反射層25の形成後に犠牲層100を形成することができる。この犠牲層100は、検知部30の形成後に除去される。その場合、基板20とサーマルレッグ50との間に、空気層60が存在する。他の例として、犠牲層100を、熱伝導を遮断する物質から形成し、この犠牲層100が、図7におけるサーマルレッグ50と基板20との間の熱伝導を遮断する物質層70として使われるようにすることができる。ここでは、犠牲層100を除去する場合を例に挙げて説明する。
【0065】
次に、図10に示すように、開口100a及び犠牲層100の上に、電気的連結が可能な材料からなる層200、すなわち、サーマルレッグ50を構成する層を積層する。
【0066】
その後、図11及び図12に示すように、層200をパターニングし、金属配線21にその両端だけが電気的に連結され、残りの部分は基板20から離隔されたサーマルレッグ50を形成する。
【0067】
図11及び図12では、熱電材料層35を、サーマルレッグ50と同一材料で、サーマルレッグ50の形成時に同一製造工程において、サーマルレッグ50と一体に形成する例を示している。また、図11及び図12では、層200上に、検知部30のパターニングされた金属層31をまず形成し、この金属層31を基に、金属層の下部側の熱電材料層35及びサーマルレッグ50を、同一材料で一体に形成する例を示している。熱電材料層35及びサーマルレッグ50を、まずパターニングして形成した後、熱電材料層35上の適正な位置上に、金属層31を形成してもよい。検知部30は、金属層31と熱電材料層35とを含み、金属層31は、入射される赤外線光を、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収するようにパターニングされた構造に形成される。金属層31は、金、アルミニウム、銅、チタン、白金、銀を含むグループのうちから選択された少なくとも1つの物質を含んで形成される。熱電材料層35は、吸収された赤外線による温度変化を抵抗変化に変換する物質から形成される。例えば、熱電材料層35は、非晶質シリコン、酸化バナジウム、酸化ニッケルのように、温度変化によって、抵抗値が変わる材料のうち少なくとも一つを含むように形成される。熱電材料層35を形成する材料は、電気的連結が可能な材料であり、またサーマルレッグ50を構成する。従って、このような材料を使用し、熱電材料層35とサーマルレッグとを同一製造工程において一体に形成することができる。熱電材料層35は、金属層31に対応する構造にパターニングされてもよい。他の例として、熱電材料層35は、図14に示すように、平板構造に形成されてもよい。
【0068】
ここでは、検知部30がリング形態に形成された例を示すが、この検知部30は、前述したように、ディスク形態、リング形態、バー形態またはバー形態を組み合わせた形態に形成されてもよい。
【0069】
また、層200は、犠牲層100の開口100aを充填する部分が、前述のポスト23に該当する。ポスト23は、その上端のサーマルレッグ50と同じ高さに形成された厚み部分までも含む。
【0070】
次に、図13に示すように、犠牲層100を除去し、基板20とサーマルレッグ50との間に空気層60を存在させることができる。前述のように、犠牲層100を、熱伝導を遮断する物質から形成する場合、この犠牲層100を残し、図7に示すような熱伝導を遮断する物質層70を有する赤外線サーマルディテクタ10を実現してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の赤外線サーマルディテクタ及びその製造方法は、例えば、サーマルカメラ関連の技術分野に効果的に適用可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 サーマルマス、
3 サーマルレッグ、
10 赤外線サーマルディテクタ、
20 基板、
21 金属配線、
23 ポスト、
25 金属反射層、
30 検知部、
31 金属層、
35 熱電材料層、
50 サーマルレッグ、
51 半リング、
53 第1連結部、
55 第2連結部、
60 空気層、
70 物質層、
100 犠牲層、
100a 開口、
133 界面、
135 誘電体層、
200 層。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板から離隔されており、入射される赤外線光を、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収し、吸収された赤外線による温度変化によって、抵抗値が変わるように設けられた検知部と、
前記検知部からの信号を前記基板に伝達するサーマルレッグと、を含む赤外線サーマルディテクタ。
【請求項2】
前記検知部は、
入射される赤外線光を、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収するようにパターニングされた構造を有する金属層と、
前記金属層の下部側に、吸収された赤外線による温度変化を抵抗変化に変換する物質を含むように設けられた熱電材料層と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項3】
前記検知部は、ディスク形態、リング形態、バー形態、あるいはバー形態を組み合わせた形態を有するようにパターニングされたことを特徴とする請求項2に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項4】
前記サーマルレッグは、前記熱電材料層と同一材料で一体に形成されるか、または前記熱電材料層と異なる材料で積層されて形成されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項5】
前記熱電材料層は、前記金属層に対応する構造にパターニングされたことを特徴とする請求項4に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項6】
前記熱電材料層は、平板構造に形成されたことを特徴とする請求項4に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項7】
前記熱電材料層は、非晶質シリコン、酸化バナジウムまたは酸化ニッケルのように、温度変化によって抵抗値が変化する材料のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項2〜6のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項8】
前記金属層は、金、アルミニウム、銅、チタン、白金、銀を含むグループのうちから選択された少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする請求項2〜7のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項9】
前記検知部は、前記金属層と前記熱電材料層との間に誘電体層をさらに含むことを特徴とする請求項2〜8のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項10】
前記サーマルレッグは、電気的連結が可能である材料で、前記検知部と別途に形成されることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項11】
前記サーマルレッグは、中心からの距離が異なる複数の半リングと、前記半リング間を連結する第1連結部と、を含む構造を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項12】
前記サーマルレッグは、前記半リング及び前記第1連結部を含む構造一対が、前記検知部を中心に互いに対向すべく配置されるように設けられることを特徴とする請求項11に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項13】
前記基板と前記検知部との間に空気層が存在することを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項14】
前記基板と前記検知部との間に、熱伝導を遮断する物質層が存在することを特徴とする請求項1〜13のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項15】
前記検知部及び前記サーマルレッグの下側の基板上には、光を透過させない金属反射層をさらに含むことを特徴とする請求項1〜14のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタ。
【請求項16】
基板を準備する段階と、
サーマルレッグの両端と電気的な連結がなされる前記基板上の金属配線部分に開口を有する犠牲層を、前記基板上に形成する段階と、
前記開口及び前記犠牲層の上に電気的連結が可能な材料を積層してこれをパターニングし、前記金属配線にその両端だけが電気的に連結され、残りの部分は、前記基板から離隔されたサーマルレッグを形成する段階と、
前記サーマルレッグと電気的に連結され、入射される赤外線光を、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収し、吸収された赤外線による温度変化によって、抵抗値が変わるように設けられた検知部を形成する段階と、を含む赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項17】
前記検知部は、入射される赤外線光を、局部的な表面プラズモン共鳴を介して吸収するようにパターニングされた構造を有する金属層と、
前記金属層の下部側に、吸収された赤外線による温度変化を抵抗変化に変換する物質を含むように設けられた熱電材料層と、を含むことを特徴とする請求項16に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項18】
前記検知部は、ディスク形態、リング形態、バー形態またはバー形態を組み合わせた形態を有するように形成されることを特徴とする請求項17に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項19】
前記サーマルレッグは、前記熱電材料層と同一材料で一体に形成されるか、または前記熱電材料層と異なる材料で積層されて形成されることを特徴とする請求項17または請求項18に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項20】
前記熱電材料層は、前記金属層に対応する構造にパターニングされることを特徴とする請求項19に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項21】
熱電材料層は、平板構造に形成されることを特徴とする請求項19に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項22】
前記熱電材料層は、非晶質シリコン、酸化バナジウム、酸化ニッケルのように、温度変化によって抵抗値が変わる材料のうち少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項17〜請求項21のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項23】
前記金属層は、金、アルミニウム、銅、チタン、白金、銀を含むグループのうちから選択された少なくとも1つの物質を含むことを特徴とする請求項17〜22のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項24】
前記犠牲層を除去し、前記基板と前記サーマルレッグとの間に空気層を形成する段階をさらに含むことを特徴とする請求項16〜23のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項25】
前記犠牲層は、熱伝導を遮断する物質から形成され、前記サーマルレッグと前記基板との間の熱伝導を遮断することを特徴とする請求項16〜24のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項26】
前記サーマルレッグは、中心からの距離が異なる複数の半リングと、前記半リング間を連結する第1連結部と、を含む構造を有することを特徴とする請求項16〜25のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項27】
前記サーマルレッグは、前記半リング及び前記第1連結部を含む構造一対が、前記検知部を中心に互いに対向すべく配置されるように設けられることを特徴とする請求項26に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項28】
前記検知部及び前記サーマルレッグの下側に該当する前記基板上に、光を透過させないように形成された金属反射層をさらに含み、
前記金属反射層の形成後に、前記犠牲層を形成することを特徴とする請求項16〜27のいずれか一項に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。
【請求項29】
前記金属反射層は、前記金属配線の形成時に、同時に形成されることを特徴とする請求項28に記載の赤外線サーマルディテクタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−83651(P2013−83651A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225216(P2012−225216)
【出願日】平成24年10月10日(2012.10.10)
【出願人】(390019839)三星電子株式会社 (8,520)
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung−ro,Yeongtong−gu,Suwon−si,Gyeonggi−do,Republic of Korea
【Fターム(参考)】