説明

赤外線センサ及びこれを備えた誘導加熱調理器

【課題】 磁界中において渦電流の発生を低減して発熱による検出誤差を低減可能な赤外線センサ及びこれを備えた電磁加熱調理器を提供すること。
【解決手段】 絶縁性フィルム2と、絶縁性フィルム2に設けられ一対の端子電極を有する感熱素子3と、絶縁性フィルム2にパターン形成され一対の端子電極に接続された導電性の一対の配線パターン4とを備え、一対の配線パターン4が、線状に形成され、感熱素子3を中心にして該感熱素子3から半径方向外方に向けて放射状に延在する複数の放射状パターン4aを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物からの赤外線を検知して該測定対象物の温度等を測定する赤外線センサ及びこれを備えた誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、測定対象物から輻射により放射される赤外線を非接触で検知して測定対象物の温度を測定する温度センサとして、赤外線センサが使用されている。
例えば、特許文献1には、絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、絶縁性フィルムの一方の面に形成され第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、第2の感熱素子に対向して絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜とを備えている赤外線センサが提案されている。
【0003】
この赤外線センサでは、第1の感熱素子に対して赤外線の影響を抑制して高いリファレンスが得られる赤外線反射膜下の第2の感熱素子と、薄く熱伝導性の低い絶縁性フィルムとによって、第1の感熱素子と第2の感熱素子との良好な温度差分を得ることができ、高感度化を図ることができると共に、小型かつ安価に作製可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−102791号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、特許文献1の赤外線センサを、誘導加熱調理器においてトッププレート上の鍋等の被加熱物を電磁誘導加熱(IH)で加熱する際に鍋底温度を検出する温度センサとして使用する場合、赤外線センサの配線膜が電磁コイルからの磁界によって生じる渦電流のため発熱してしまい、検出誤差が生じて測定温度に誤差が生じてしまう場合があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、磁界中において渦電流の発生を低減して発熱による検出誤差を低減可能な赤外線センサ及びこれを備えた電磁加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明の赤外線センサは、絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルムに設けられ一対の端子電極を有する感熱素子と、前記絶縁性フィルムにパターン形成され一対の前記端子電極に接続された導電性の一対の配線パターンとを備え、前記一対の配線パターンが、線状に形成され、前記感熱素子を中心にして該感熱素子から半径方向外方に向けて放射状に延在する複数の放射状パターンを有していることを特徴とする。
【0008】
この赤外線センサでは、一対の配線パターンが、線状に形成され、感熱素子を中心にして該感熱素子から半径方向外方に向けて放射状に延在する複数の放射状パターンを有しているので、配線パターンが線状であるため磁界中でも渦電流が生じ難いと共に、放射状パターンによって集熱効果を得ることができる。すなわち、配線パターンが線状であって、幅広の帯状や矩形状の広い面積など渦電流が発生しやすい形状でないことから、全体として渦電流の発生を抑制可能である。また、絶縁性フィルム上に放射状に拡がった複数の放射状パターンは、絶縁性フィルムの表面全体で受けた赤外線による熱を中心の感熱素子まで伝導して集熱させる機能を有している。
【0009】
第2の発明の赤外線センサは、第1の発明において、前記絶縁性フィルムにパターン形成され前記一対の配線パターンに接続された一対の電極パッドを備え、前記一対の電極パッドが、前記感熱素子を挟んで互いに反対側の前記絶縁性フィルムの外周部近傍に配されていること特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、一対の電極パッドが、感熱素子を挟んで互いに反対側の絶縁性フィルムの外周部近傍に配されているので、表面が広く面積があるため渦電流が発生し易い電極パッドを感熱素子から離して電極パッドからの熱影響を抑制すると共に、電極パッドを互いに反対側に配して熱的なバランスを取ることができる。
【0010】
第3の発明の赤外線センサは、第1又は第2の発明において、前記一対の配線パターンが、複数の前記放射状パターンのうち少なくとも一部から分岐して線状に延在した複数の枝状パターンを有していることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、一対の配線パターンが、複数の放射状パターンのうち少なくとも一部から分岐して線状に延在した複数の枝状パターンを有しているので、配線パターン全体が樹枝状又は葉脈状になって絶縁性フィルム全体に枝状パターンを緻密に拡げることで、さらに高い集熱効果を得ることができる。
【0011】
第4の発明の赤外線センサは、第3の発明において、前記絶縁性フィルムにパターン形成され前記一対の配線パターンに接続された一対の電極パッドを備え、前記電極パッドが接続されている前記放射状パターンだけが、前記枝状パターンが分岐されていないことを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、電極パッドが接続されている放射状パターンだけが、枝状パターンが分岐されていないので、枝状パターンで集熱した熱が電極パッドを介して該電極パッドに接続されるリード線等から外部に熱が逃げることを抑制することができる。
【0012】
第5の発明の誘導加熱調理器は、被加熱物を載置するトッププレートと、該トッププレートの下部に設置され前記被加熱物を電磁誘導加熱により加熱する電磁コイルと、前記トッププレートの下方に該トッププレートから離間して設置された温度センサである第1から第4の発明のいずれかの赤外線センサとを備えていることを特徴とする。
すなわち、この誘導加熱調理器では、トッププレートの下方に該トッププレートから離間して設置された温度センサである第1から第4の発明のいずれかの赤外線センサを備えているので、電磁コイルからの誘導磁界によって赤外線センサに生じる渦電流を抑制することができ、鍋底温度を正確に測定することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る赤外線センサによれば、一対の配線パターンが、線状に形成され、感熱素子を中心にして該感熱素子から半径方向外方に向けて放射状に延在する複数の放射状パターンを有しているので、磁界中でも渦電流が生じ難いと共に、全体の熱を集熱させることができる。
したがって、この赤外線センサを採用した本発明の誘導加熱調理器によれば、電磁コイルからの磁界による渦電流を抑制して鍋底温度を正確に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る赤外線センサ及び誘導加熱調理器の一実施形態において、赤外線センサを示す平面図である。
【図2】本実施形態において、赤外線センサの要部を拡大した平面図である。
【図3】本実施形態において、誘導加熱調理器を示す概略的な断面図である。
【図4】本実施形態において、誘導加熱調理器の要部を示す断面図である。
【図5】本実施形態において、筒状導光路部材と検出回路基板とを示す平面図である。
【図6】本実施形態において、温度センサ装置を示す斜視図である。
【図7】本実施形態において、筒状導光路部材を取り付けた温度センサ装置を示す斜視図である。
【図8】本実施形態において、一対用絶縁性フィルムに設けた一対の赤外線センサを示す下面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明に係る赤外線センサ及びこれを備えた誘導加熱調理器の一実施形態を、図1から図8を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面の中には、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している部分がある。
【0016】
本実施形態の赤外線センサ1は、図1及び図2に示すように、絶縁性フィルム2と、該絶縁性フィルム2に設けられ一対の端子電極3aを有する感熱素子3と、絶縁性フィルム2にパターン形成され一対の端子電極3aに接続された導電性の一対の配線パターン4と、絶縁性フィルム2にパターン形成され一対の配線パターン4に接続された一対の電極パッド5とを備えている。
【0017】
上記一対の配線パターン4は、線状に形成され、感熱素子3を中心にして該感熱素子3から半径方向外方に向けて放射状に延在する複数の放射状パターン4aと、複数の放射状パターン4aのうち少なくとも一部から分岐して線状に延在した複数の枝状パターン4bとを有している。すなわち、一対の配線パターン4は、樹枝状又は葉脈状にパターン形成されている。
【0018】
また、一対の配線パターン4は、絶縁性フィルム2の中央に配された基端にそれぞれ一対の接着電極6が形成されている。これら接着電極6には、それぞれ感熱素子3の端子電極3aが半田等の導電性接着剤で接着され、感熱素子3が実装されている。すなわち、感熱素子3は、絶縁性フィルム2の中央に設置されている。
【0019】
上記一対の電極パッド5は、矩形状に形成され外部の回路との接続を行うための電極であり、感熱素子3を挟んで互いに反対側の絶縁性フィルム2の外周部近傍に配されている。すなわち、互いに同一直線状に配された2つの放射状パターン4aの各先端に、一対の電極パッド5が接続されている。
また、電極パッド5が接続されている放射状パターン4aだけが、枝状パターン4bが分岐されていない。すなわち、電極パッド5が先端に接続されている2つの放射状パターン4aは、互いに一本の直線状とされ、分岐していない。
【0020】
上記絶縁性フィルム2は、ポリイミド樹脂シートで円形に形成され、一対の配線パターン4が銅箔で形成されている。すなわち、これらは、絶縁性フィルム2とされるポリイミド基板の片面に、一対の配線パターン4とされる銅箔のフロート電極がパターン形成されたフレキシブル基板によって作製されたものである。なお、配線パターン4は、例えば厚み9μm、幅0.15μmの線状パターンとされる。
【0021】
上記感熱素子3は、両端部に端子電極3aが形成されたチップサーミスタである。このサーミスタとしては、NTC型、PTC型、CTR型等のサーミスタがあるが、本実施形態では、感熱素子3として、例えばNTC型サーミスタを採用している。このサーミスタは、Mn−Co−Cu系材料、Mn−Co−Fe系材料等のサーミスタ材料で形成されている。
【0022】
次に、本発明の赤外線センサを備えた本実施形態の誘導加熱調理器について、図3から図8を参照して説明する。
【0023】
本実施形態の誘導加熱調理器101は、図3及び図4に示すように、被加熱物Nを載置するトッププレート102と、該トッププレート102の下部に設置され被加熱物Nを電磁誘導加熱により加熱する電磁コイル103と、トッププレート102の下方に該トッププレート102から離間して設置され上記赤外線センサ1A,1Bを有する温度センサ装置11と、電磁コイル103および赤外線センサ1A,1Bに電気的に接続され電磁コイル103の出力を制御する制御部Cと、これらが設置された本体ケース104とを備えている。
【0024】
なお、トッププレート102の下面には、該下面を覆うと共に一部が赤外線透過窓102aとして開けられた赤外線遮蔽層102bが設けられている。
該赤外線遮蔽層102bは、例えばトッププレート102下面に貼り付けられたカーボンブラックを含む結晶化ガラスの吹付材などの赤外線遮蔽シートである。なお、この赤外線遮蔽層102bは、赤外線遮蔽シート以外にも赤外線遮蔽効果のある塗料をトッププレート102の下面に塗って形成しても構わない。また、上記赤外線透過窓102aは、赤外線センサ1Aの直上に位置する部分のみ赤外線遮蔽層102bに開口部を設けてトッププレート102を露出させて形成したものである。
【0025】
上記被加熱物Nは、磁性体(鉄等)または非磁性体(アルミニウム等)で形成された鍋等である。
上記トッププレート102は、結晶化ガラス等で形成されて高い耐熱性を有しており、本体ケース104の上部に取り付けられている。
上記電磁コイル103は、トッププレート102の下方かつ本体ケース104内に円環形状または渦巻き形状に配置され、交流電流による電力が供給されると高周波磁界を発生させてトッププレート102上の被加熱物Nを誘導加熱する加熱コイルである。
【0026】
上記温度センサ装置11は、図4から図7に示すように、一対用絶縁性フィルム22を共用している上記赤外線センサ1A,1Bと、これら赤外線センサ1A,1Bが形成された一対用絶縁性フィルム22を上面に設置していると共に検出回路基板7の上面に設置されたセンサ筐体23とで構成されている。なお、上述した赤外線センサ1では、円形状の絶縁性フィルム2を用いているが、本実施形態の誘導加熱調理器101では、一対の赤外線センサ1A,1Bを共通の一対用絶縁性フィルム22に形成している。
また、一対用絶縁性フィルム22の上面には、筒状導光路部材10が設置されている。
【0027】
上記一対用絶縁性フィルム22は、図8に示すように、下面側に一対の赤外線センサ1A,1Bを並べて設け、各赤外線センサ1A,1Bの周囲に各4つの円弧状孔部22aが感熱素子3を中心とした円周上に形成されている。これら円弧状孔部22aは、一対用絶縁性フィルム22の各赤外線センサ1A,1Bの部分を宙に浮かして外気間の熱抵抗を大きくする機能を有している。
また、各電極パッド5は、一対用絶縁性フィルム22の外周部近傍に配されており、電極パッド5に接続される放射状パターン4aがその位置まで延在している。
【0028】
上記センサ筐体23は、各赤外線センサ1A,1Bの直下が空洞となっており、下方の検出回路基板7と赤外線センサ1A,1Bとの間に空間が設けられている。また、センサ筐体23の側面には、各電極パッド5に接続される4つの実装用端子部23aが設けられている。これらの実装用端子部23aは、上部がセンサ筐体23の上面に配されて各電極パッド5にハンダ付け等により接続されていると共に、センサ筐体23の側面を介して下部まで延在し、下部が検出回路基板7の配線にハンダ付け等により接続されている。これにより、温度センサ装置11が、検出回路基板7の上面に実装されると共に、各赤外線センサ1A,1Bと検出回路基板7の配線とが電気的に接続される。なお、赤外線センサ1A,1Bをセンサ筐体23上に設置して検出回路基板7から隙間を空けて配しているので、検出回路基板7の熱容量の影響を低減することができる。
【0029】
また、赤外線センサ1A,1Bの間であってセンサ筐体23の下部には、凹部23bが形成され、凹部23b内の検出回路基板7上には、基準温度用のチップサーミスタ8が設置されている。なお、このチップサーミスタ8にも、検出回路基板7の配線を介して制御部Cが電気的に接続されている。
【0030】
一方の赤外線センサ1Aは、電磁コイル103の中心軸上であって赤外線透過窓102aの直下に設置されていると共に、他方の赤外線センサ1Bは、赤外線遮蔽層102bの直下に設置されている。
【0031】
上記筒状導光路部材10は、それぞれ一方の赤外線センサ1Aと他方の赤外線センサ1Bとの直上に中心軸を一致させた断面円形の第1導光路10aと第2導光路10bとを有した筒部材である。すなわち、一方の赤外線センサ1Aは、第1導光路10aを介して赤外線透過窓102aからの赤外線を一対用絶縁性フィルム22を介して受光可能になっており、他方の赤外線センサ1Bは、第2導光路10bを介して赤外線遮蔽層102bで遮断された状態でのリファレンスとして赤外線を一対用絶縁性フィルム22を介して受光可能になっている。このように筒状導光路部材10は、上部と下部とが開口しており、赤外線の導光路として機能し、トッププレート102からの赤外線が上部開口から入射されて一方の赤外線センサ1Aへ到達可能になっている。
【0032】
また、筒状導光路部材10は、下部の両側端部にそれぞれスリット部10cが一対用絶縁性フィルム22に沿って第1導光路10a又は第2導光路10bまで切り込まれて形成されている。これら一対のスリット部10cは、導光路内の温度上昇を防ぐために設けたものである。
また、筒状導光路部材10は、樹脂材で形成され、外周からの空気の流れを遮断する風防の機能を有していると共に周囲の熱を断熱性の高い樹脂材により内側に伝え難くする断熱機能を有している。
【0033】
上記検出回路基板7は、アルミニウムで作製されたシールドケース9内に設置されている。
なお、上記検出回路基板7には、赤外線センサ1A,1Bの制御回路を設けても構わない。また、検出回路基板7には、制御回路以外の回路であっても構わないと共に、赤外線センサ専用の基板としてだけでなく、他の回路基板と共用した基板でも構わない。
【0034】
上記制御部Cは、一対の赤外線センサ1A,1B及びチップサーミスタ8の出力に基づいて被加熱物Nの温度を算出する回路を有している。すなわち、制御部Cは、一方の赤外線センサ1Aと他方の赤外線センサ1Bとで検出された赤外線の差分(出力の差分)を演算処理し、他方の赤外線センサ1B及びチップサーミスタ8を温度補償用のリファレンスとして一方の赤外線センサ1Aで検出された温度を算出する機能を有している。また、制御部Cは、得られた被加熱物Nの温度に基づいて、電磁コイル103に供給する電力を制御するインバータ回路等を有している。
【0035】
このように本実施形態の赤外線センサ1,1A,1Bでは、一対の配線パターン4が、線状に形成され、感熱素子3を中心にして該感熱素子3から半径方向外方に向けて放射状に延在する複数の放射状パターン4aを有しているので、配線パターン4が線状であるため磁界中でも渦電流が生じ難いと共に、放射状パターン4aによって集熱効果を得ることができる。すなわち、配線パターン4が線状であって、幅広の帯状や矩形状の広い面積など渦電流が発生しやすい形状でないことから、全体として渦電流の発生を抑制可能である。また、絶縁性フィルム2,22上に放射状に拡がった複数の放射状パターン4aは、絶縁性フィルム2,22の表面全体で受けた赤外線による熱を中心の感熱素子3まで伝導して集熱させる機能を有している。
【0036】
また、一対の電極パッド5が、感熱素子3を挟んで互いに反対側の絶縁性フィルム2,22の外周部近傍に配されているので、表面が広く面積があるため渦電流が発生し易い電極パッド5を感熱素子3から離して電極パッド5からの熱影響を抑制すると共に、電極パッド5を互いに反対側に配して熱的なバランスを取ることができる。
さらに、一対の配線パターン4が、複数の放射状パターン4aのうち少なくとも一部から分岐して線状に延在した複数の枝状パターン4bを有しているので、配線パターン4全体が樹枝状又は葉脈状になって絶縁性フィルム2全体に枝状パターン4bを緻密に拡げることで、さらに高い集熱効果を得ることができる。
【0037】
また、電極パッド5が接続されている放射状パターン4aだけが、枝状パターン4bが分岐されていないので、枝状パターン4bで集熱した熱が電極パッド5を介して該電極パッド5に接続されるリード線等から外部に熱が逃げることを抑制することができる。
したがって、この赤外線センサ1,1A,1Bをトッププレート102下方に備えた誘導加熱調理器101では、電磁コイル103からの誘導磁界によって赤外線センサ1に生じる渦電流を抑制することができ、鍋底温度を正確に測定することができる。
【0038】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0039】
例えば、上記実施形態では、感熱素子が赤外線を直接吸収した絶縁性フィルムから伝導される熱を検出しているが、絶縁性フィルム上に赤外線吸収膜を形成しても構わない。この場合、さらに感熱素子における赤外線吸収効果が向上する。すなわち、この赤外線吸収膜によって測定対象物からの輻射による赤外線を吸収するようにし、赤外線を吸収し発熱した赤外線吸収膜から絶縁性フィルムを介した熱伝導によって、感熱素子の温度が変化するようにしてもよい。
【0040】
この赤外線吸収膜は、絶縁性フィルムよりも高い赤外線吸収率を有する材料で形成され、例えば、カーボンブラック等の赤外線吸収材料を含むフィルムや赤外線吸収性ガラス膜(二酸化珪素を71%含有するホーケー酸ガラス膜など)で形成されているもの等が採用可能である。特に、赤外線吸収膜は、アンチモンドープ酸化錫(ATO)膜であることが望ましい。このATO膜は、カーボンブラック等に比べて赤外線の吸収率が良いと共に耐光性に優れている。また、ATO膜は、紫外線で硬化させるので、接着強度が強く、カーボンブラック等に比べて剥がれ難い。
また、上記実施形態では、感熱素子及び配線パターンが絶縁性フィルムの下側に設置されているが、これらを絶縁性フィルムの上側(トッププレート側)に設置しても構わない。
【0041】
また、チップサーミスタの感熱素子を採用しているが、薄膜サーミスタで形成された感熱素子を採用しても構わない。
なお、感熱素子としては、上述したように薄膜サーミスタやチップサーミスタが用いられるが、サーミスタ以外に焦電素子等も採用可能である。
さらに、単体の上記赤外線センサ1では円形の絶縁性フィルムを採用しているが、他の形状でも構わない。なお、熱分布のバランスを考慮して感熱素子は絶縁性フィルムの中心位置に設置されることが好ましく、絶縁性フィルムとしては円形状や多角形状(例えば12角形状)などが好ましい。
【符号の説明】
【0042】
1,1A,1B…赤外線センサ、2…絶縁性フィルム、22…一対用絶縁性フィルム、3…感熱素子、4…配線パターン、4a…放射状パターン、4b…枝状パターン、5…電極パッド、7…検出回路基板、11…温度センサ装置、101…誘導加熱調理器、102…トッププレート、103…電磁コイル、C…制御部、N…被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性フィルムと、
該絶縁性フィルムに設けられ一対の端子電極を有する感熱素子と、
前記絶縁性フィルムにパターン形成され一対の前記端子電極に接続された導電性の一対の配線パターンとを備え、
前記一対の配線パターンが、線状に形成され、前記感熱素子を中心にして該感熱素子から半径方向外方に向けて放射状に延在する複数の放射状パターンを有していることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線センサにおいて、
前記絶縁性フィルムにパターン形成され前記一対の配線パターンに接続された一対の電極パッドを備え、
前記一対の電極パッドが、前記感熱素子を挟んで互いに反対側の前記絶縁性フィルムの外周部近傍に配されていること特徴とする赤外線センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の赤外線センサにおいて、
前記一対の配線パターンが、複数の前記放射状パターンのうち少なくとも一部から分岐して線状に延在した複数の枝状パターンを有していることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項4】
請求項3に記載の赤外線センサにおいて、
前記絶縁性フィルムにパターン形成され前記一対の配線パターンに接続された一対の電極パッドを備え、
前記電極パッドが接続されている前記放射状パターンだけが、前記枝状パターンが分岐されていないことを特徴とする赤外線センサ。
【請求項5】
被加熱物を載置するトッププレートと、
該トッププレートの下部に設置され前記被加熱物を電磁誘導加熱により加熱する電磁コイルと、
前記トッププレートの下方に該トッププレートから離間して設置された温度センサである請求項1から4のいずれか一項に記載の赤外線センサとを備えていることを特徴とする誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−113732(P2013−113732A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260569(P2011−260569)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】