説明

赤外線センサ装置およびこれを備えた誘導加熱調理器

【課題】 周囲の影響(冷却風や輻射熱)による測定誤差をさらに抑制することができる赤外線センサ装置およびこれを備えた誘導加熱調理器を提供すること。
【解決手段】 赤外線を検出するセンサ本体2と、赤外線がセンサ本体2に対して入射可能な中央開口端部を有して該センサ本体2の周囲を覆う内側筒状壁部3と、該内側筒状壁部3の周囲を覆うと共に内側筒状壁部3に対して間隔を空けて設置された外側筒状壁部4とを備え、内側筒状壁部3が、径方向外方に向けて突出していると共に外側筒状壁部4に形成された下部開口部7bに挿通されて外部まで延在した放熱フィン3bを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物からの赤外線を検知して該測定対象物の温度等を測定する赤外線センサ装置と、これを備え、トッププレート上の鍋等の被加熱物を電磁誘導加熱(IH)で加熱すると共に鍋底温度を検出可能な誘導加熱調理器とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、トッププレート上の鍋等の被加熱物を電磁誘導加熱で加熱すると共に鍋底温度を検出可能な誘導加熱調理器として、例えば、特許文献1には、調理容器を載置する非磁性体で構成したトッププレートと、トッププレートの下部に設けて誘導磁界を発生し調理容器を加熱する加熱コイルと、加熱コイルを保持する加熱コイルベースと、トッププレートを介して調理容器の底面の温度を検出する放射温度検出手段と、放射温度検出手段の検出温度に応じて加熱コイルに供給する電力を制御する制御手段とを備えた誘導加熱調理器が提案されている。
【0003】
この誘導加熱調理器の放射温度検出手段は、測定物から放射される赤外線を検出する赤外線素子(赤外線センサ)によって構成され、トッププレートの内部に嵌め込んだ赤外線透過材を介して調理容器の底面の温度を検出している。また、この誘導加熱調理器では、加熱コイルからの熱を遮蔽する断熱手段が赤外線素子の周囲に設けられている。該断熱手段は、熱伝導率の小さい耐熱樹脂材料で形成された円筒形のもので構成されている。さらに、この断熱手段は、内面を鏡面または鏡面に近い放射率を低くしたアルミ等の金属材料による鏡面手段が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−227977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
従来、誘導加熱調理器などに設置された赤外線センサは、周囲の影響、すなわち冷却風や加熱コイル等の輻射熱によって測定誤差が生じてしまうため、上記特許文献1に記載の技術では、赤外線素子の周囲に円筒形の断熱手段を設置している。しかしながら、この円筒形の断熱手段により周囲の影響を遮断しようとしても、円筒形の部材自体が冷却風や輻射熱によって温度変化してしまい、円筒形の部材を介して内側に熱伝導され、内部の赤外線センサが周囲の影響を少なからず受けてしまう不都合があった。なお、特許文献1に記載の技術では、断熱手段の内面を放射率の低い面(鏡面手段)として断熱手段内面からの熱影響を低減しているが、不十分であった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、周囲の影響(冷却風や輻射熱)による測定誤差をさらに抑制することができる赤外線センサ装置およびこれを備えた誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明の赤外線センサ装置は、赤外線を検出するセンサ本体と、赤外線が前記センサ本体に対して入射可能な中央開口端部を有して該センサ本体の周囲を覆う内側筒状壁部と、該内側筒状壁部の周囲を覆うと共に前記内側筒状壁部に対して間隔を空けて設置された外側筒状壁部とを備え、前記内側筒状壁部が、径方向外方に向けて突出していると共に前記外側筒状壁部に形成された開口部に挿通されて外部まで延在した放熱フィンを備えていることを特徴とする。
【0008】
すなわち、この赤外線センサ装置では、センサ本体の周囲を覆う内側筒状壁部と、該内側筒状壁部の周囲を覆うと共に内側筒状壁部に対して間隔を空けて設置された外側筒状壁部とを備えているので、二重構造を構成する内側筒状壁部と外側筒状壁部との間の空間に形成された空気層によって、高い断熱効果を得ることができる。したがって、外側筒状壁部が周囲の影響によって温度変化しても、断熱性の高い空気層により内側筒状壁部およびその内側のセンサ本体への熱影響を抑制することができる。また、外側筒状壁部は、開口部から流入する自然対流を除いて、外部からの空気を遮断する風防として機能する。なお、外側筒状壁部を、互いに半径方向に間隔を空けて配置した複数の筒状壁部による多重筒構造とすることで、複数の空気層が得られ、より高い断熱性を得ることが可能になる。
また、内側筒状壁部が、径方向外方に向けて突出していると共に外側筒状壁部に形成された開口部に挿通されて外部まで延在した放熱フィンを備えているので、内側筒状壁部の熱を放熱フィンを介して外側筒状壁部の外に逃がすことで、内側筒状壁部とセンサ本体との温度差を低減し、測定対象物からの影響により内側筒状壁部の温度が上昇してセンサ本体に影響を与えることを抑制することができる。
【0009】
また、第2の発明の赤外線センサ装置は、第1の発明において、前記外側筒状壁部の上部および下部に、該外側筒状壁部と前記内側筒状壁部との間の空気が内外に流通可能な上部開口部および下部開口部が設けられていることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサ装置では、外側筒状壁部の上部および下部に、該外側筒状壁部と内側筒状壁部との間の空気が内外に流通可能な上部開口部および下部開口部が設けられているので、上部開口部および下部開口部を介して空気層の空気が内外に流通して対流するため、空気層の空気の滞留により空気層自体の温度が変化することを抑制することができる。
【0010】
また、第3の発明の赤外線センサ装置は、第1または第2の発明において、前記内側筒状壁部が、前記外側筒状壁部よりも赤外線放射率が低い材料で形成されていることを特徴とする。
すなわち、赤外線センサ装置では、内側筒状壁部が、外側筒状壁部よりも赤外線放射率が低い材料で形成されているので、外乱の影響をさらに抑制し、中央開口端部からの赤外線のみをセンサ本体が受光することができ、高い精度で検出することが可能になる。
【0011】
また、第4の発明の赤外線センサ装置は、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記外側筒状壁部が、前記内側筒状壁部よりも熱伝導率が低い材料で形成されていることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサ装置では、外側筒状壁部が、内側筒状壁部よりも熱伝導率が低い材料で形成されているので、外側筒状壁部により周囲からの輻射熱の影響をさらに抑制することができる。
【0012】
また、第5の発明の赤外線センサ装置は、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記センサ本体が、絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、前記絶縁性フィルムの一方の面に形成され前記第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び前記第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、前記第2の感熱素子に対向して前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜と、を備えていることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサ装置では、第2の感熱素子に対向して絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜を備えているので、第1の感熱素子は赤外線が照射されて赤外線吸収した絶縁性フィルムの部分的な温度を測定するのに対し、第2の感熱素子は赤外線反射膜によって赤外線が反射されて赤外線吸収が大幅に抑制された絶縁性フィルムの部分的な温度を測定する。したがって、第1の感熱素子に対して赤外線の影響を抑制して高いリファレンスが得られる赤外線反射膜下の第2の感熱素子と、薄く熱伝導性の低い絶縁性フィルムと、によって、第1の感熱素子と第2の感熱素子との良好な温度差分を得ることができる。
【0013】
第6の発明の誘導加熱調理器は、被加熱物を載置するトッププレートと、該トッププレートの下部に設置され前記被加熱物を電磁誘導加熱により加熱する電磁コイルと、前記トッププレートの下方に該トッププレートから離間して設置された温度センサとを備え、前記温度センサが、第1から第5の発明のいずれかの赤外線センサ装置であり、該赤外線センサ装置が、前記外側筒状壁部を前記電磁コイル側に向けて前記電磁コイルの中央に設置されていることを特徴とする。
すなわち、この誘導加熱調理器では、上記本発明の赤外線センサ装置が、外側筒状壁部を電磁コイル側に向けて電磁コイルの中央に設置されているので、加熱コイルである電磁コイル等からの輻射熱や周囲からの冷却風の影響を抑制できると共に電磁コイルやトッププレートからの影響で内側筒状壁部が温度上昇することを抑制して、被加熱物の底面の温度測定を高精度に行うことができる。
【0014】
また、第7の発明の誘導加熱調理器は、第6の発明のおいて、前記トッププレート、前記電磁コイルおよび前記赤外線センサ装置が設置された本体ケースを備え、前記放熱フィンが、前記本体ケースに接続されていることを特徴とする。
すなわち、この誘導加熱調理器では、放熱フィンが、本体ケースに接続されているので、内側筒状壁部の熱を放熱フィンを介して本体ケースへ逃がすことができ、より高い放熱性が得られる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る赤外線センサ装置によれば、センサ本体の周囲を覆う内側筒状壁部と、該内側筒状壁部の周囲を覆うと共に内側筒状壁部に対して間隔を空けて設置された外側筒状壁部とを備えているので、内側筒状壁部と外側筒状壁部との間の空間に形成された空気層によって、高い断熱効果を得ることができ、周囲からセンサ本体への熱影響を抑制することができる。また、内側筒状壁部が、外側筒状壁部に形成された開口部に挿通されて外部まで延在した放熱フィンを備えているので、内側筒状壁部の熱を放熱フィンを介して逃がすことで、内側筒状壁部の温度が上昇してセンサ本体に影響を与えることを抑制することができる。
したがって、この赤外線センサ装置を備えた本発明の誘導加熱調理器によれば、加熱コイルである電磁コイル等からの輻射熱や周囲からの冷却風の影響を抑制して、鍋など被加熱物の底面の温度測定を高精度に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に係る赤外線センサ装置および誘導加熱調理器の一実施形態において、赤外線センサ装置を示す概略的な斜視図である。
【図2】本実施形態において、赤外線センサ装置を示す縦断面図である。
【図3】本実施形態において、センサ本体を示す斜視図である。
【図4】本実施形態において、筐体を外した状態のセンサ本体を示す斜視図である。
【図5】本実施形態のセンサ本体を示す断面図である。
【図6】本実施形態において、誘導加熱調理器を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る赤外線センサ装置およびこれを備えた誘導加熱調理器の一実施形態を、図1から図6を参照しながら説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能又は認識容易な大きさとするために縮尺を適宜変更している。
【0018】
本実施形態の赤外線センサ装置1は、図1および図2に示すように、赤外線を検出するセンサ本体2と、赤外線がセンサ本体2に対して入射可能な中央開口端を有して該センサ本体2の周囲を覆う内側筒状壁部3と、該内側筒状壁部3の周囲を覆うと共に内側筒状壁部3に対して間隔を空けて設置された外側筒状壁部4と、センサ本体2が実装されていると共に内側筒状壁部3および外側筒状壁部4が設置された回路基板である実装基板5とを備えている。
【0019】
上記外側筒状壁部4と上記内側筒状壁部3とは、中心軸を同じにした円筒形状であり、外側筒状壁部4は、その上部が測定対象物(本実施形態では、後述するトッププレート22および被加熱物N)に当接されているが、内側筒状壁部3は、その上部が測定対象物との間に隙間を設けて若干離間させて設置されている。すなわち、内側筒状壁部3の上方端部は、開口端とされている。
【0020】
外側筒状壁部4には、該外側筒状壁部4と内側筒状壁部3との間の空気が内外に流通可能な上部開口部7aおよび下部開口部7bが設けられている。上部開口部7aは、外側筒状壁部4の上端において周方向に互いに間隔を開けて複数取り付けられた上部断熱体4aの間に形成され、下部開口部7bは、外側筒状壁部4の下端において互いに対向する位置に一対形成された貫通孔である。なお、上部断熱体4aは、耐熱性樹脂などで形成されている。
【0021】
外側筒状壁部4と内側筒状壁部3との間には、空気層7が形成され、上部開口部7aおよび下部開口部7bを介して空気層7の空気が内外を流出入可能になっていると共に空気層7内を上下方向に流通可能になっている。
【0022】
内側筒状壁部3は、外側筒状壁部4よりも赤外線放射率が低い材料で形成されている。また、外側筒状壁部4が、内側筒状壁部3よりも熱伝導率が低い材料で形成されている。
すなわち、本実施形態の内側筒状壁部3は、表面が鏡面仕上げされたアルミニウムの金属板で形成されていると共に、外側筒状壁部4は、樹脂材料で形成されている。この外側筒状壁部4の樹脂材料としては、例えば赤外線遮蔽効果のあるポリフェニレンサルファイド樹脂(PPS)等の耐熱性樹脂が採用可能である。
また、外側筒状壁部4の外周面には、アルミニウム箔等の外熱反射膜4bが形成されている。この外熱反射膜4bは、測定対象物以外の外部からの輻射熱を反射して内部のセンサ本体2への影響を低減させる効果を有している。
【0023】
また、内側筒状壁部3は、樹脂等の断熱材料で形成された円環状の本体支持部材3aを介して実装基板5上に設置されている。さらに、内側筒状壁部3は、径方向外方に向けて突出していると共に外側筒状壁部4に形成された下部開口部7bに挿通されて外部まで延在した一対の放熱フィン3bを備えている。これら放熱フィン3bは、実装基板5上に設置され樹脂等の断熱材料で形成されたフィン支持部材5aで支持されている。
【0024】
上記センサ本体2は、図3から図5に示すように、絶縁性フィルム11と、該絶縁性フィルム11の一方の面(下面)に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子12A及び第2の感熱素子12Bと、絶縁性フィルム11の一方の面に銅箔等でパターン形成され第1の感熱素子12Aに接続された導電性の第1の配線膜13A及び第2の感熱素子12Bに接続された導電性の第2の配線膜13Bと、第1の感熱素子12Aに対向して絶縁性フィルム11の他方の面(上面)に設けられた赤外線吸収膜14と、第2の感熱素子12Bに対向して絶縁性フィルム11の他方の面に設けられた赤外線反射膜15と、絶縁性フィルム11の一方の面に固定されて該絶縁性フィルム11を支持する筐体16と、をそれぞれ備えている。
【0025】
すなわち、上記赤外線吸収膜14は、第1の感熱素子12Aの直上に配されていると共に、上記赤外線反射膜15は、第2の感熱素子12Bの直上に配されている。上記絶縁性フィルム11は、赤外線透過性フィルムで形成されている。なお、本実施形態では、絶縁性フィルム11がポリイミド樹脂シートで形成されている。
【0026】
上記第1の感熱素子12A及び第2の感熱素子12Bは、両端部に端子電極12aが形成されたチップサーミスタ(サーミスタ素子)である。このサーミスタとしては、NTC型、PTC型、CTR型等のサーミスタがあるが、本実施形態では、第1の感熱素子12A及び第2の感熱素子12Bとして、例えばNTC型サーミスタを採用している。このサーミスタは、Mn−Co−Cu系材料、Mn−Co−Fe系材料等のサーミスタ材料で形成されている。なお、これら第1の感熱素子12A及び第2の感熱素子12Bは、各端子電極12aを配線膜13A,13B上に接合させて絶縁性フィルム11に実装されている。
【0027】
上記赤外線吸収膜14は、絶縁性フィルム11よりも高い赤外線吸収率を有する材料で形成され、例えば、カーボンブラック等の赤外線吸収材料を含むフィルムや赤外線吸収性ガラス膜(二酸化珪素を71%含有するホーケー酸ガラス膜など)で形成されている。すなわち、この赤外線吸収膜14によって測定対象物からの輻射による赤外線を吸収する。そして、赤外線を吸収し発熱した赤外線吸収膜14から絶縁性フィルム11を介した熱伝導によって、直下の第1の感熱素子12Aの温度が変化するようになっている。この赤外線吸収膜14は、第1の感熱素子12Aよりも大きなサイズでこれを覆うように形成されている。
【0028】
上記赤外線反射膜15は、絶縁性フィルム11よりも高い赤外線放射率を有する材料で形成され、例えば、鏡面のアルミニウム蒸着膜、アルミニウム箔またはAuメッキ膜等で形成されている。この赤外線反射膜15は、第2の感熱素子12Bよりも大きなサイズでこれを覆うように形成されている。
【0029】
上記筐体16は、例えば樹脂製であり、絶縁性フィルム11の熱を必要以上に放熱しないように絶縁性フィルム11よりも熱伝導性の低い材料であることが好ましい。
この筐体16には、第1の感熱素子12A及び第2の感熱素子12Bをそれぞれ個別に収納する第1の収納部16a及び第2の収納部16bが設けられている。これら第1の収納部16a及び第2の収納部16bは、第1の感熱素子12A及び第2の感熱素子12Bの位置にそれぞれ対応して形成された断面矩形状の孔部であり、内部に空気を密封した状態で開口部が絶縁性フィルム11で閉塞されている。なお、第1の収納部16a及び第2の収納部16bの内部には、絶縁性フィルム11よりも熱伝導率の低い発泡樹脂を封入させても構わない。
【0030】
また、筐体16の側面には、第1の配線膜13Aに上端が接続されていると共に筐体16の底部まで延在された第1の側面電極部13aと、第2の配線膜13Bに上端が接続されていると共に筐体16の底部まで延在された第2の側面電極部13bと、筐体16の側面下部において第1の側面電極部13aの下端に接続されて実装基板5上に接続させる第1の実装用外部端子13cと、筐体16の側面下部において第2の側面電極部13bの下端に接続されて実装基板5上に接続させる第2の実装用外部端子13dと、が設けられている。
【0031】
次に、上記赤外線センサ装置1を備えた本実施形態の誘導加熱調理器21について、図6を参照して説明する。
【0032】
本実施形態の誘導加熱調理器21は、図6に示すように、被加熱物Nを載置するトッププレート22と、該トッププレート22の下部に設置され被加熱物Nを電磁誘導加熱により加熱する電磁コイル23と、トッププレート22の下方に該トッププレート22から離間して設置された温度センサである上記赤外線センサ装置1と、電磁コイル23および赤外線センサ装置1に電気的に接続された制御部Cと、これらが設置された本体ケース24とを備えている。
【0033】
なお、トッププレート22の下面には、該下面を覆うと共に一部が赤外線透過窓(図示略)として開けられた赤外線遮蔽層(図示略)が設けられている。
該赤外線遮蔽層は、例えばトッププレート22下面に貼り付けられたカーボンブラックを含む結晶化ガラスの吹付材などの赤外線遮蔽シートである。なお、この赤外線遮蔽層は、赤外線遮蔽シート以外にも赤外線遮蔽効果のある塗料をトッププレート22の下面に塗って形成しても構わない。また、上記赤外線透過窓は、赤外線センサ装置1の中央開口端の直上に位置する部分のみ赤外線遮蔽層に開口部を設けてトッププレート22を露出させて形成したものである。
【0034】
上記被加熱物Nは、磁性体(鉄等)または非磁性体(アルミニウム等)で形成された鍋等である。
上記トッププレート22は、結晶化ガラス等で形成されて高い耐熱性を有しており、本体ケース24の上部に取り付けられている。
【0035】
上記電磁コイル23は、トッププレート22の下方かつ本体ケース24内に円環形状または渦巻き形状に配置され、交流電流による電力が供給されると高周波磁界を発生させてトッププレート22上の被加熱物Nを誘導加熱するものである。
【0036】
上記赤外線センサ装置1は、赤外線透過窓の直下に中央開口端を対向状態に配して赤外線透過窓からの赤外線を中央開口端から入光させてセンサ本体2で検出するように設置されている。また、赤外線センサ装置1は、外側筒状壁部4を電磁コイル23側に向けて電磁コイル23の中央に設置されている。
また、放熱フィン3bは、本体ケース24の内壁にまで延在しており、先端が該内壁に接続されている。
【0037】
上記制御部Cは、電磁コイル23に電力を供給するインバータ電源(図示略)を備え、赤外線センサ装置1で検出した被加熱物Nの温度に基づいて、電磁コイル23に供給する電力を制御する機能を有している。
この制御部Cは、第1の感熱素子12Aと第2の感熱素子12Bとで検出された赤外線の差分(出力の差分)を演算処理し、第2の感熱素子12Bをリファレンスとして第1の感熱素子12Aで検出された温度を算出する機能を有している。
【0038】
このように本実施形態の赤外線センサ装置1は、センサ本体2の周囲を覆う内側筒状壁部3と、該内側筒状壁部3の周囲を覆うと共に内側筒状壁部3に対して間隔を空けて設置された外側筒状壁部4とを備えているので、図2に示すように、二重構造を構成する内側筒状壁部3と外側筒状壁部4との間の空間に形成された空気層7によって、高い断熱効果を得ることができる。したがって、外側筒状壁部4が周囲の影響によって温度変化しても、断熱性の高い空気層7により内側筒状壁部3およびその内側のセンサ本体2への熱影響を抑制することができる。
【0039】
また、内側筒状壁部3が、径方向外方に向けて突出していると共に外側筒状壁部4に形成された下部開口部7bに挿通されて外部まで延在した放熱フィン3bを備えているので、内側筒状壁部3の熱を放熱フィン3bを介して外側筒状壁部4の外に逃がすことで、内側筒状壁部3とセンサ本体2との温度差を低減し、測定対象物からの影響により内側筒状壁部3の温度が上昇してセンサ本体2に影響を与えることを抑制することができる。
【0040】
また、外側筒状壁部4の上部および下部に、該外側筒状壁部4と内側筒状壁部3との間の空気が内外に流通可能な上部開口部7aおよび下部開口部7bが設けられているので、上部開口部7aおよび下部開口部7bを介して空気層7の空気が内外に流通して対流するため、空気層7の空気の滞留により空気層7自体の温度が変化することを抑制することができる。すなわち、図2に示すように、空気層7の空気が温められると上方への対流(図中の矢印A)が生じて下部開口部7bを介して外気が流入すると共に、上部開口部7aを介して内部の温かい空気が外部に流出する自然対流が生じる。これにより、空気層7内の空気の温度上昇を抑制し、周囲温度に適度な時定数で内側筒状壁部3の温度を追従させることができる。なお、外側筒状壁部4は、上部開口部7aまたは下部開口部7bから流入する自然対流を除いて、外部からの空気を遮断する風防として機能する。
【0041】
さらに、内側筒状壁部3が、外側筒状壁部4よりも赤外線放射率が低い材料で形成されているので、外乱の影響をさらに抑制し、中央開口端からの赤外線のみをセンサ本体2が受光することができ、高い精度で検出することが可能になる。
また、外側筒状壁部4が、内側筒状壁部3よりも熱伝導率が低い材料で形成されているので、外側筒状壁部4により周囲からの輻射熱の影響をさらに抑制することができる。
【0042】
また、センサ本体2が、第2の感熱素子12に対向して絶縁性フィルム11の他方の面に設けられた赤外線反射膜15を備えているので、第1の感熱素子12は赤外線が照射されて赤外線吸収した絶縁性フィルム11の部分的な温度を測定するのに対し、第2の感熱素子12は赤外線反射膜15によって赤外線が反射されて赤外線吸収が大幅に抑制された絶縁性フィルム11の部分的な温度を測定する。したがって、第1の感熱素子12に対して赤外線の影響を抑制して高いリファレンスが得られる赤外線反射膜15下の第2の感熱素子12と、薄く熱伝導性の低い絶縁性フィルム11と、によって、第1の感熱素子12と第2の感熱素子12との良好な温度差分を得ることができる。
【0043】
そして、上記赤外線センサ装置1を備えた本実施形態の誘導加熱調理器21では、赤外線センサ装置1が、外側筒状壁部4を電磁コイル23側に向けて電磁コイル23の中央に設置されているので、加熱コイルである電磁コイル23等からの輻射熱や周囲からの冷却風の影響を抑制できると共に電磁コイル23やトッププレート22からの影響で内側筒状壁部3が温度上昇することを抑制して、被加熱物Nの底面の温度測定を高精度に行うことができる。
【0044】
さらに、放熱フィン3bが、本体ケース24に接続されているので、内側筒状壁部3の熱を放熱フィン3bを介して本体ケース24へ逃がすことができ、より高い放熱性が得られる。
本実施形態の誘導加熱調理器21では、電磁コイル23によりアルミニウムの内側筒状壁部3に渦電流が発生して熱が生じるが、上述した空気層7の空気の対流効果と、放熱フィン3bによる放熱効果とにより、内側筒状壁部3の温度上昇が抑制され、センサ本体2による計測温度の高い精度が得られる。また、電磁コイル23による加熱停止後の放熱時間が早くなり、連続的な再加熱によるセンサ本体2の温度上昇を抑えることができる。
【0045】
なお、アルミニウムの内側筒状壁部3および外熱反射膜4bに発生する渦電流によって内側筒状壁部3の内部に、電磁コイル23による磁界に対する反磁界が発生することで、センサ本体2に交差する磁界を低減することができる。これにより、センサ本体2の金属部分に発生する渦電流損が減り、発熱を抑制することができる。
【0046】
なお、本発明の技術範囲は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0047】
例えば、上記実施形態では、チップサーミスタの第1の感熱素子及び第2の感熱素子を採用しているが、薄膜サーミスタで形成された第1の感熱素子及び第2の感熱素子を採用しても構わない。
なお、感熱素子としては、上述したように薄膜サーミスタやチップサーミスタが用いられるが、サーミスタ以外に焦電素子等も採用可能である。
また、上記放熱フィンは、先端が直接、本体ケースに接続されているが、金属等の熱伝導性の高い他の部材を介して本体ケースに接続しても構わない。
【0048】
また、上記実施形態のように第1の感熱素子の上方の受光領域に赤外線吸収膜を形成することが好ましいが、第2の感熱素子の上方に赤外線反射膜を形成してあれば、第1の感熱素子の上方の受光領域に赤外線吸収膜を形成しなくても構わない。すなわち、第1の感熱素子の上方の受光領域は、絶縁性フィルムが直接露出した面でも構わない。
さらに、上記実施形態では、円筒形状の内側筒状壁部および外側筒状壁部を採用しているが、他の筒形状、例えば四角筒形状の内側筒状壁部および外側筒状壁部を採用しても構わない。
【符号の説明】
【0049】
1…赤外線センサ装置(温度センサ)、2…センサ本体、3…内側筒状壁部、3b…放熱フィン、4…外側筒状壁部、7a…上部開口部、7b…下部開口部、11…絶縁性フィルム、12A…第1の感熱素子、12B…第2の感熱素子、13A…第1の配線膜、13B…第2の配線膜、15…赤外線反射膜、22…トッププレート、23…電磁コイル、24…本体ケース、C…制御部、N…被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を検出するセンサ本体と、
赤外線が前記センサ本体に対して入射可能な中央開口端部を有して該センサ本体の周囲を覆う内側筒状壁部と、
該内側筒状壁部の周囲を覆うと共に前記内側筒状壁部に対して間隔を空けて設置された外側筒状壁部とを備え、
前記内側筒状壁部が、径方向外方に向けて突出していると共に前記外側筒状壁部に形成された開口部に挿通されて外部まで延在した放熱フィンを備えていることを特徴とする赤外線センサ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線センサ装置において、
前記外側筒状壁部の上部および下部に、該外側筒状壁部と前記内側筒状壁部との間の空気が内外に流通可能な上部開口部および下部開口部が設けられていることを特徴とする赤外線センサ装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の赤外線センサ装置において、
前記内側筒状壁部が、前記外側筒状壁部よりも赤外線放射率が低い材料で形成されていることを特徴とする赤外線センサ装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載の赤外線センサ装置において、
前記外側筒状壁部が、前記内側筒状壁部よりも熱伝導率が低い材料で形成されていることを特徴とする赤外線センサ装置。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の赤外線センサ装置において、
前記センサ本体が、絶縁性フィルムと、
該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、
前記絶縁性フィルムの一方の面に形成され前記第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び前記第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、
前記第2の感熱素子に対向して前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜と、を備えていることを特徴とする赤外線センサ装置。
【請求項6】
被加熱物を載置するトッププレートと、
該トッププレートの下部に設置され前記被加熱物を電磁誘導加熱により加熱する電磁コイルと、
前記トッププレートの下方に該トッププレートから離間して設置された温度センサとを備え、
前記温度センサが、請求項1から5のいずれか一項に記載の赤外線センサ装置であり、
該赤外線センサ装置が、前記外側筒状壁部を前記電磁コイル側に向けて前記電磁コイルの中央に設置されていることを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項7】
請求項6に記載の誘導加熱調理器において、
前記トッププレート、前記電磁コイルおよび前記赤外線センサ装置が設置された本体ケースを備え、
前記放熱フィンが、前記本体ケースに接続されていることを特徴とする誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−181073(P2012−181073A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43400(P2011−43400)
【出願日】平成23年2月28日(2011.2.28)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】