説明

赤外線センサ

【課題】焦電素子を用いた構造で薄型化が図られた、赤外線センサを提供する。
【解決手段】シリコン基板2上には、チタン酸ジルコン酸鉛からなる薄膜状の焦電素子14が設けられている。薄膜状の焦電素子14は、ゾルゲル法により形成することができる。ゾルゲル法では、粉体原料の焼結により焦電素子14を形成する手法と比較して、焦電素子14の厚さを小さくすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線を検出する赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線センサは、赤外線の受光による薄膜の温度の変化を利用した熱型赤外線センサと、赤外線の光エネルギーにより半導体材料に生じる電気現象(光電変換)を利用した量子型赤外線センサとに大別される。熱型赤外線センサは、量子型赤外線センサと比較して、検出感度および応答速度は低いが、検出対象の波長帯域が広く、常温で使用可能であることから、サーモグラフィや放射温度計などに広く用いられている。
【0003】
熱型赤外線センサとしては、熱起電力効果により赤外線を検出するサーモパイルと、焦電効果により赤外線を検出する焦電センサ(パイロセンサ)とが知られている。
サーモパイルは、基板上に薄膜が形成され、その薄膜上に熱電対(サーモカップル)が設けられた構造を有している。基板には、キャビティが形成されており、薄膜は、基板の表面側からキャビティを閉塞するように設けられている。熱電対の温接点がキャビティと対向する位置に配置され、その冷接点が基板におけるキャビティの周囲の部分と対向する位置に配置されることにより、温接点と冷接点とが熱的に分離されている。赤外線により薄膜の温度が上昇すると、熱電対の温接点と冷接点との間に温度差が生じ、その温度差に応じた電圧が検出信号として出力される。
【0004】
サーモパイルでは、ICチップなどの半導体装置に用いられている材料と同じ材料が用いられる。すなわち、基板、薄膜および熱電対の材料として、たとえば、それぞれシリコン(Si)、酸化シリコン(SiO)およびポリシリコンが用いられる。そのため、サーモパイルは、その検出信号を処理する回路などと同一の基板上に形成することができる。
【0005】
焦電センサは、パッケージ内に、粉体原料を焼結したセラミックス(バルクセラミックス)を封入した構造を有している。セラミックスは、分極処理により、自発分極を有している。赤外線によりセラミックスの温度が上昇すると、その温度に応じてセラミックスの自発分極が変化して、セラミックスの表面に電荷が生じ、この電荷の流れ(焦電流)が検出信号として出力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−94521号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
焦電センサでは、焦電素子として焼結セラミックスが用いられるため、焦電素子が信号処理回路などを含むICチップと分離して設けられている。また、焼結セラミックスは、薄化が困難であり、その厚さの限界が100μm程度である。そのため、焦電センサには、その全体のサイズが大きいという問題がある。
本発明の目的は、焦電素子を用いた構造で薄型化が図られた、赤外線センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するため、本発明に係る赤外線センサは、半導体基板と、前記半導体基板上に設けられ、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)からなる薄膜状の焦電素子と、前記焦電素子を被覆し、その最表面が赤外線の受光面をなす被覆膜と、前記焦電素子と対向する部分に、前記半導体基板の表面から掘り下がった形状に形成され、前記焦電素子を前記半導体基板から熱的に分離するためのキャビティとを備えている。
【0009】
半導体基板上には、チタン酸ジルコン酸鉛からなる薄膜状の焦電素子が設けられている。赤外線の入射により焦電素子の温度が上昇すると、その温度に応じて焦電素子の自発分極の変化による焦電流が出力される。したがって、その焦電流に基づいて、赤外線を検出することができる。
半導体基板には、焦電素子と対向する部分に、その表面から掘り下がった形状のキャビティが形成されている。これにより、焦電素子が半導体素子から熱的に分離されるので、焦電素子から半導体基板に熱が逃げるのを防止することができる。その結果、赤外線の検出精度を高めることができる。
【0010】
薄膜状の焦電素子は、ゾルゲル法により形成することができる。ゾルゲル法では、粉体原料の焼結により焦電素子を形成する手法と比較して、焦電素子の厚さを小さくすることができる。よって、焦電素子を用いた赤外線センサの薄型化を図ることができる。
焦電素子は、被覆膜により被覆されている。これにより、焦電素子を水分などから保護することができる。とくに、被覆膜にアルミナからなるアルミナ膜が含まれる場合には、アルミナ膜の水素バリア性により、焦電素子の材料であるチタン酸ジルコン酸鉛の水素還元を防止することができる。よって、その水素還元に起因する焦電素子の特性劣化を防止することができる。
【0011】
半導体基板には、能動素子が形成されていてもよい。
半導体基板を利用して、能動素子を形成することができる。さらに、半導体基板上に層間絶縁膜を挟んで配線を形成し、この配線をコンタクトプラグなどを介して能動素子に接続することができる。よって、赤外線センサに、焦電素子から出力される焦電流(出力信号)を処理する信号処理回路などを内蔵することができる。
【0012】
能動素子および配線を備える赤外線センサは、次の工程A〜Fを含む製造方法により製造することができる。
A.半導体基板に能動素子を形成する工程と、
B.前記半導体基板上に層間絶縁膜を形成する工程と、
C.前記層間絶縁膜をその厚さ方向に貫通し、前記能動素子に電気的に接続されるコンタクトを形成する工程と、
D.ゾルゲル法により、前記層間絶縁膜上にチタン酸ジルコン酸鉛からなる薄膜状の焦電素子を形成する工程と、
E.前記焦電素子の形成後、前記層間絶縁膜上に前記焦電素子を被覆する被覆膜を形成する工程と、
F.前記被覆膜上に前記能動素子および前記焦電素子とそれぞれ電気的に接続される配線を形成する工程
また、半導体基板上に熱電対が設けられていてもよい。この場合、熱電対の温接点と冷接点との間の温度差に応じた電圧に基づいて、赤外線を検出することができる。よって、赤外線センサの用途に応じて、赤外線の検出素子として、焦電素子および熱電対の一方または両方を使用することができる。
【0013】
半導体基板は、シリコン基板であり、被覆膜には、それを厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されており、貫通孔の内面には、窒化シリコンからなる窒化シリコン膜が被着されていてもよい。貫通孔の内面に窒化シリコン膜が被着されているので、シリコン基板にキャビティを形成するために、貫通孔を介してシリコン基板にエッチング流体を供給しても、被覆膜がエッチング流体によるエッチングを受けることがない。よって、被覆膜の不所望なエッチングを生じることなく、シリコン基板にキャビティを形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る赤外線センサのレイアウト図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態に係る赤外線センサの模式的な断面図である。
【図3】図3は、熱電対のレイアウトを示す図解的な平面図である。
【図4A】図4Aは、図2に示す赤外線センサの製造工程を示す模式的な断面図である。
【図4B】図4Bは、図4Aの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4C】図4Cは、図4Bの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4D】図4Dは、図4Cの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4E】図4Eは、図4Dの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4F】図4Fは、図4Eの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4G】図4Gは、図4Fの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4H】図4Hは、図4Gの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4I】図4Iは、図4Hの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4J】図4Jは、図4Iの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4K】図4Kは、図4Jの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4L】図4Lは、図4Kの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4M】図4Mは、図4Lの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4N】図4Nは、図4Mの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4O】図4Oは、図4Nの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4P】図4Pは、図4Oの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4Q】図4Qは、図4Pの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4R】図4Rは、図4Qの次の工程を示す模式的な断面図である。
【図4S】図4Sは、図4Rの次の工程を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、本発明の実施の形態について、添付図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る赤外線センサのレイアウト図である。図2は、本発明の一実施形態に係る赤外線センサの模式的な断面図である。図2以降の各図では、導体からなる部分にのみハッチングが付され、その他の部分に対するハッチングの付与が省略されている。
【0016】
赤外線センサ1は、平面視正方形状のシリコン基板2を備えている。シリコン基板2上には、焦電センサ領域4、サーモパイル領域5およびロジック回路領域6が設けられている。ロジック回路領域6は、シリコン基板2の周縁に沿って四角環状に形成されており、シリコン基板2の周縁に沿って環状に並べられた複数のパッド(後述する第2配線83〜85など)を有している。一方、焦電センサ領域4およびサーモパイル領域5は、ロジック回路領域6に取り囲まれるシリコン基板2の中央領域に集約されて形成されている。具体的には、焦電センサ領域4およびサーモパイル領域5は、赤外線を検出する素子としてそれぞれ焦電素子14および熱電対33を有しており、これらの素子14,33が、シリコン基板2の中央領域に全体として行列状に集約されて配置されている。そして、焦電素子14が配置された領域が焦電センサ領域4をなし、熱電対33が配置された領域がサーモパイル領域5をなしている。
【0017】
また、シリコン基板2の表面(上面)には、LOCOS(Local Oxidation of Silicon)法により形成されるシリコン酸化膜であるLOCOS膜3が形成されている。LOCOS膜3により、焦電センサ領域4、サーモパイル領域5およびロジック回路領域6がそれぞれ個別に取り囲まれて、互いに絶縁分離されている。
焦電センサ領域4には、後述する焦電素子14をシリコン基板2から熱的に分離するためのキャビティ7が形成されている。キャビティ7は、シリコン基板2をその上面から掘り下げることにより形成され、下方ほど窄まった断面台形状をなしている。
【0018】
キャビティ7を上方から閉塞するように、メンブレン8が形成されている。メンブレン8は、窒化シリコン(SiN)からなる。
メンブレン8上には、エッチングストッパ膜9が形成されている。エッチングストッパ膜9により、メンブレン8の上面の全域が覆われている。エッチングストッパ膜9は、窒化シリコン(SiN)からなる。
【0019】
エッチングストッパ膜9上には、第1層間絶縁膜10が積層されている。第1層間絶縁膜10の上面は、平坦化されている。第1層間絶縁膜10は、BPSG(Boron Phospho Silicate Glass)からなる。
第1層間絶縁膜10上には、下部電極11が形成されている。下部電極11は、本体部12と、本体部12から延出した延出部13とを一体的に備えている。下部電極11は、チタン(Ti)からなる層およびプラチナ(Pt)からなる層を第1層間絶縁膜10側からこの順に積層した2層構造を有している。
【0020】
下部電極11の本体部12上には、焦電素子14が設けられている。焦電素子14は、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT:Pb(Zr,Ti)O)からなり、ゾルゲル法により形成される。
焦電素子14上には、上部電極15がその上面の全域を覆うように形成されている。上部電極15は、イリジウム(Ir)からなる層および酸化イリジウム(IrO)からなる層を焦電素子14側からこの順に積層した2層構造を有している。
【0021】
また、第1層間絶縁膜10上には、被覆膜16が形成されている。第1層間絶縁膜10の上面の下部電極11から露出する部分、下部電極11の延出部13、焦電素子14の側面および上部電極15は、被覆膜16により一括して被覆されている。被覆膜16は、アルミナ(Al)からなるアルミナ膜と、アルミナ膜上に形成され、酸化シリコン(SiO)からなる酸化シリコン膜とを備えている。
【0022】
被覆膜16上には、配線19,20がそれぞれ所定のパターンで形成されている。配線19,20は、アルミニウム(Al)を主成分として含む金属材料からなる。
配線19は、下部電極11の延出部13と被覆膜16を挟んで対向する位置に設けられている。配線19と延出部13との間において、被覆膜16には、貫通孔21が厚さ方向に貫通して形成されている。配線19の一端部は、貫通孔21内に入り込み、延出部13と接続されている。配線19の他端部は、ロジック回路領域6に形成されたロジック回路に接続されている。
【0023】
配線20は、上部電極15と被覆膜16を挟んで対向する位置に設けられている。配線20と上部電極15との間において、被覆膜16には、貫通孔22が厚さ方向に貫通して形成されている。配線20の一端部は、貫通孔22内に入り込み、上部電極15と接続されている。配線20の他端部は、ロジック回路領域6に形成されたロジック回路に接続されている。
【0024】
また、被覆膜16上には、第2層間絶縁膜23が積層されている。第2層間絶縁膜23は、その上面が平坦化された下層24と、下層24上に積層された上層25とを備えている。下層24および上層25は、酸化シリコンからなる。
第2層間絶縁膜23上には、第3層間絶縁膜26が積層されている。第3層間絶縁膜26は、酸化シリコンからなる。
【0025】
メンブレン8、エッチングストッパ膜9、第1層間絶縁膜10、被覆膜16、第2層間絶縁膜23および第3層間絶縁膜26を連続して貫通することにより、複数の貫通孔27が形成されている。一部の貫通孔27は、下部電極11の延出部13を貫通している。各貫通孔27は、メンブレン8を貫通する部分でその他の部分よりもサイズが小さく形成され、これにより、その内面には、メンブレン8とエッチングストッパ膜9との間で段差が生じている。各貫通孔27は、キャビティ7と連通している。
【0026】
第3層間絶縁膜26の上面および各貫通孔27の内面に連続して、パッシベーション膜28が形成されている。パッシベーション膜28は、貫通孔27内において、貫通孔27の内面に生じている段差と等しい厚さを有している。そして、パッシベーション膜28は、貫通孔27内において、エッチングストッパ膜9、第1層間絶縁膜10、被覆膜16、第2層間絶縁膜23および第3層間絶縁膜26を被覆し、その下端がメンブレン8の上面に接している。パッシベーション膜28は、シリコンおよび酸化シリコンとエッチング選択比を確保可能な材料である窒化シリコンからなる。
【0027】
サーモパイル領域5には、後述する熱電対33の温接点45をシリコン基板2から熱的に分離するためのキャビティ31が形成されている。キャビティ31は、シリコン基板2をその上面から掘り下げることにより形成され、下方ほど窄まった断面台形状をなしている。
キャビティ31を上方から閉塞するように、メンブレン32が形成されている。メンブレン32は、メンブレン8と同一工程で同一層に形成され、窒化シリコンからなる。
【0028】
メンブレン32上には、たとえば、2つの熱電対33が設けられている。各熱電対33は、互いに間隔を空けて平行に延びる1対の導線34,35からなる。一方の導線34は、p型ポリシリコンからなる。他方の導線35は、n型ポリシリコンからなる。
図3は、熱電対のレイアウトを示す図解的な平面図である。
図2,3に示すように、メンブレン32を挟んでキャビティ31と対向する位置において、一方の熱電対33の導線34,35の一端とそれぞれ他方の熱電対33の導線35,34の一端とが接続されており、それらの接続部が温接点45をなしている。そして、一方の熱電対33の導線34,35は、温接点45から一方向に延び、90°屈曲して延びた後、さらに折り返すように90°屈曲して延びている。一方の熱電対33の導線34,35の他端は、メンブレン32を挟んでシリコン基板2と対向する位置に配置され、互いに接続されて、それらの接続部が冷接点46をなしている。
【0029】
他方の熱電対33の導線34,35は、一方の熱電対33の導線35,34に対して、平面視でキャビティ31の中心まわりに180°回転対称となるように設けられている。他方の熱電対33の導線34,35の他端は、メンブレン32を挟んでシリコン基板2と対向する位置に配置され、温接点45と冷接点46との温度差に応じた電圧を出力信号として出力するための出力端子47をなしている。この出力端子47は、ロジック回路領域6に形成されたロジック回路に接続されている。
【0030】
図2に示すように、メンブレン32上には、エッチングストッパ膜36が積層されている。エッチングストッパ膜36により、メンブレン32の上面の熱電対33から露出する部分および熱電対33の表面が一括して覆われている。エッチングストッパ膜36は、エッチングストッパ膜9と同一工程で同一層に形成され、窒化シリコンからなる。
エッチングストッパ膜36上には、第1層間絶縁膜37が積層されている。エッチングストッパ膜36は、第1層間絶縁膜37により、その表面の全域が覆われている。第1層間絶縁膜37は、第1層間絶縁膜10と同一工程で同一層に形成され、BPSGからなる。熱電対33上において、熱電対33に沿って延び、微小な間隔を空けて隣接する複数の平面視矩形状の領域から、第1層間絶縁膜37の上部が除去されている。そのため、当該領域上における第1層間絶縁膜37の上面は、当該領域外における第1層間絶縁膜37の上面よりも一段低くなっている。当該領域外における第1層間絶縁膜37の上面は、平坦化されている。
【0031】
そして、その平坦化されている第1層間絶縁膜37上には、キャップ層38が積層されている。キャップ層38は、NSG(None-doped Silicate Glass)からなる。
キャップ層38上には、第2層間絶縁膜39が積層されている。第2層間絶縁膜39は、その上面が平坦化された下層40と、下層40上に積層された上層41とを備えている。下層40および上層41は、それぞれ第2層間絶縁膜23の下層24および上層25と同一工程で同一層に形成され、いずれも酸化シリコンからなる。
【0032】
第2層間絶縁膜39上には、第3層間絶縁膜42が積層されている。第3層間絶縁膜42は、第3層間絶縁膜26と同一工程で同一層に形成され、酸化シリコンからなる。
第1層間絶縁膜37の上面が一段低い平面視矩形状の各領域に対して、その長手方向と直交する方向の両側方には、貫通孔43が形成されている。各貫通孔43は、その側方の平面視矩形状の領域の長手方向の長さと同じ長さを有し、メンブレン32、エッチングストッパ膜36および第1層間絶縁膜37を連続して貫通している。各貫通孔43は、メンブレン32およびエッチングストッパ膜36を貫通する部分でその他の部分よりもサイズが小さく形成され、これにより、その内面には、エッチングストッパ膜36と第1層間絶縁膜37との間で段差が生じている。各貫通孔43は、キャビティ31と連通している。
【0033】
第3層間絶縁膜42の上面、第1層間絶縁膜37の上面ならびに第1層間絶縁膜37、第2層間絶縁膜39および第3層間絶縁膜42の各側面には、パッシベーション膜44が形成されている。パッシベーション膜44は、貫通孔43内において、貫通孔43の内面に生じている段差と等しい厚さを有している。そして、パッシベーション膜44の下端は、貫通孔43内において、エッチングストッパ膜36の上面に接している。パッシベーション膜44は、パッシベーション膜28と同一工程で同一層に形成され、窒化シリコンからなる。
【0034】
ロジック回路領域6には、MOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)51およびMOS(Metal Oxide Semiconductor)キャパシタ52を含み、焦電センサ領域4の配線19,20から入力される信号およびサーモパイル領域5の熱電対33から入力される信号を処理するためのロジック回路が形成されている。
ロジック回路領域6において、MOSFET51が形成されるFET領域53と、MOSキャパシタ52が形成されるキャパシタ領域54とは、シリコン基板2の表面に形成されたLOCOS膜55により互いに絶縁分離されている。また、シリコン基板2には、p型不純物がドープされている。
【0035】
FET領域53には、シリコン基板2の表面の全域上に、ゲート絶縁膜56が形成されている。ゲート絶縁膜56は、酸化シリコンからなる。
また、FET領域53において、シリコン基板2の表層部には、n型のソース領域57およびドレイン領域58が間隔を空けて形成されている。
ゲート絶縁膜56上には、ソース領域57とドレイン領域58との間の領域(チャネル領域)と対向する部分に、ゲート電極59が形成されている。ゲート電極59は、ドープトポリシリコンからなるポリシリコン層60および金属材料からなる金属層61をゲート絶縁膜56側からこの順に積層した構造を有している。
【0036】
ゲート電極59上には、ゲートキャップ膜62が形成されている。ゲートキャップ膜62は、NSGからなる。
ゲート電極59およびゲートキャップ膜62の周囲には、サイドウォール63が形成されている。サイドウォール63により、ゲート電極59およびゲートキャップ膜62の側面が取り囲まれて覆われている。サイドウォール63は、NSGからなる。
【0037】
キャパシタ領域54には、シリコン基板2の表面の全域に、キャパシタ絶縁膜64が形成されている。
また、キャパシタ領域54において、シリコン基板2の表層部には、n型の不純物拡散領域65が形成されている。
キャパシタ絶縁膜64上には、上部電極66がLOCOS膜3,55と間隔を空けて形成されている。上部電極66は、ドープトポリシリコンからなるポリシリコン層67および金属材料からなる金属層68をキャパシタ絶縁膜64側からこの順に積層した構造を有している。ポリシリコン層67および金属層68は、それぞれゲート電極59のポリシリコン層60および金属層61と同一層に形成されている。
【0038】
上部電極66上には、キャパシタキャップ膜69が形成されている。キャパシタキャップ膜69は、ゲート電極59上のゲートキャップ膜62と同一層に形成され、NSGからなる。
上部電極66およびキャパシタキャップ膜69の周囲には、サイドウォール70が形成されている。サイドウォール70により、上部電極66およびキャパシタキャップ膜69の側面が取り囲まれて覆われている。サイドウォール70は、サイドウォール63と同一工程で形成され、NSGからなる。
【0039】
ロジック回路領域6の全域上には、エッチングストッパ膜71が積層されている。エッチングストッパ膜71により、LOCOS膜3,55の表面、ゲート絶縁膜56、ゲートキャップ膜62、キャパシタ絶縁膜64およびキャパシタキャップ膜69の各上面ならびにサイドウォール63,70の表面が一括して覆われている。エッチングストッパ膜71は、エッチングストッパ膜9,36と同一工程で同一層に形成され、窒化シリコンからなる。
【0040】
エッチングストッパ膜71上には、第1層間絶縁膜72が積層されている。第1層間絶縁膜72は、第1層間絶縁膜10,37と同一工程で同一層に形成され、BPSGからなる。第1層間絶縁膜72の上面は、平坦化されている。
第1層間絶縁膜72上には、キャップ層73が積層されている。キャップ層73は、キャップ層38と同一工程で同一層に形成され、NSGからなる。
【0041】
キャップ層73上には、第1配線74,75,76がそれぞれ所定のパターンで形成されている。第1配線74〜76は、配線19,20と同一工程で同一層に形成されており、アルミニウムを主成分として含む金属材料からなる。
第1配線74の一部は、ゲート電極59と対向している。その第1配線74の一部とゲート電極59との間には、ビア77が形成されている。ビア77は、ゲートキャップ膜62、エッチングストッパ膜71、第1層間絶縁膜72およびキャップ層73を貫通し、その上端が第1配線74に接続され、下端がゲート電極59に接続されている。ビア77は、タングステン(W)からなる。
【0042】
第1配線75の一部は、ソース領域57と対向している。その第1配線75の一部とソース領域57との間には、ビア78が形成されている。ビア78は、エッチングストッパ膜71、第1層間絶縁膜72およびキャップ層73を貫通し、その上端が第1配線75に接続され、下端がソース領域57に接続されている。ビア78は、タングステンからなる。
【0043】
第1配線76の一部は、上部電極66と対向している。その第1配線76の一部と上部電極66との間には、ビア79が形成されている。ビア79は、キャパシタキャップ膜69、エッチングストッパ膜71、第1層間絶縁膜72およびキャップ層73を貫通し、その上端が第1配線76に接続され、下端が上部電極66に接続されている。ビア79は、タングステンからなる。
【0044】
また、キャップ層73上には、第2層間絶縁膜80が積層されている。第1配線74〜76は、第2層間絶縁膜80により覆われている。第2層間絶縁膜80は、その上面が平坦化された下層81と、下層81上に積層された上層82とを備えている。下層81および上層82は、それぞれ第2層間絶縁膜23の下層24および上層25と同一工程で同一層に形成され、いずれも酸化シリコンからなる。
【0045】
第2層間絶縁膜80上には、第2配線83,84,85がそれぞれ所定のパターンで形成されている。第2配線83〜85は、アルミニウムを主成分として含む金属材料からなる。
第2配線83の一部は、第1配線74と対向している。その第2配線83の一部と第1配線74との間には、ビア86が形成されている。ビア86は、第2層間絶縁膜80を貫通し、その上端が第2配線83に接続され、下端が第1配線74に接続されている。ビア86は、タングステンからなる。
【0046】
第2配線84の一部は、第1配線75と対向している。その第2配線84の一部と第1配線75との間には、ビア87が形成されている。ビア87は、第2層間絶縁膜80を貫通し、その上端が第2配線84に接続され、下端が第1配線75に接続されている。ビア87は、タングステンからなる。
第2配線85の一部は、第1配線76と対向している。その第2配線85の一部と第1配線76との間には、ビア88が形成されている。ビア88は、第2層間絶縁膜80を貫通し、その上端が第2配線85に接続され、下端が第1配線76に接続されている。ビア88は、タングステンからなる。
【0047】
第2層間絶縁膜80上には、第3層間絶縁膜89が積層されている。第2配線83〜85は、第3層間絶縁膜89により覆われている。第3層間絶縁膜89は、第3層間絶縁膜26と同一工程で同一層に形成され、酸化シリコンからなる。
第3層間絶縁膜89上には、パッシベーション膜90が積層されている。パッシベーション膜90は、パッシベーション膜28と同一工程で同一層に形成され、窒化シリコンからなる。
【0048】
第3層間絶縁膜89およびパッシベーション膜90には、第2配線83〜85と対向する位置に、それぞれパッド開口91,92,93が形成されている。これにより、第2配線83〜85の上面は、パッド開口91,92,93を介して、外部との接続のためのパッドとして露出している。
図4A〜4Sは、図2に示す赤外線センサの製造工程を順に示す模式的な断面図である。
【0049】
赤外線センサ1の製造工程では、まず、図4Aに示すように、熱酸化法により、シリコン基板2の表面の全域が酸化される。これにより、ロジック回路領域6にゲート絶縁膜56およびキャパシタ絶縁膜64が形成されるとともに、焦電センサ領域4およびサーモパイル領域5にその表面の全域を覆う酸化膜が形成される。その後、LOCOS法により、シリコン基板2の表面に、LOCOS膜3,55が形成される。LOCOS膜3,55の形成後、焦電センサ領域4およびサーモパイル領域5から酸化膜が除去される。
【0050】
次いで、図4Bに示すように、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法により、焦電センサ領域4におけるシリコン基板2の表面上に、ポリシリコンからなる犠牲層95が形成されるとともに、サーモパイル領域5におけるシリコン基板2の表面上に、ポリシリコンからなる犠牲層95が形成される。その後、フォトリソグラフィにより、犠牲層95上にメンブレン8が形成されるとともに、犠牲層95上にメンブレン32が形成される。
【0051】
次に、図4Cに示すように、ロジック回路領域6にMOSFET51およびキャパシタ52が形成される。具体的には、ロジック回路領域6におけるゲート絶縁膜56およびキャパシタ絶縁膜64上に、ポリシリコン層60,67の材料からなる層、金属層61,68の材料からなる層、ならびにゲートキャップ膜62およびキャパシタキャップ膜69の材料からなる層がシリコン基板2側からこの順に積層される。そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、これらの積層膜が選択的に除去される。これにより、ゲート絶縁膜56上に、ポリシリコン層60、金属層61およびゲートキャップ膜62が形成されるとともに、キャパシタ絶縁膜64上に、ポリシリコン層67、金属層68およびキャパシタキャップ膜69が形成される。
【0052】
その後、CVD(Chemical Vapor Deposition:化学的気相成長)法により、ロジック回路領域6の全域に、NSG膜が堆積される。そして、NSG膜がエッチバックされることにより、サイドウォール63,70が形成される。
また、ソース領域57、ドレイン領域58および不純物拡散領域65は、シリコン基板2の表層部にn型の不純物(たとえば、P(リン))をドープした後、その不純物を拡散させることにより形成することができる。
【0053】
また、サーモパイル領域5では、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、メンブレン32上に、導線34,35が形成される。この導線34,35は、金属層61,68と同一の工程で形成される。
その後、図4Dに示すように、減圧CVD法により、焦電センサ領域4、サーモパイル領域5およびロジック回路領域6の表面に、それぞれエッチングストッパ膜9,36,71が形成される。
【0054】
次に、図4Eに示すように、CVD法により、焦電センサ領域4、サーモパイル領域5およびロジック回路領域6の表面の全域に、それぞれ第1層間絶縁膜10,37,72が形成される。
その後、スパッタ法により、焦電センサ領域4における第1層間絶縁膜10上に、下部電極11の材料からなる金属膜が形成される。そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、金属膜が選択的に除去される。これにより、図4Fに示すように、第1層間絶縁膜10上に下部電極11が形成される。
【0055】
次いで、図4Gに示すように、下部電極11上に焦電素子14が形成される。具体的には、まず、ゾルゲル法により、下部電極11の表面を含む領域に、チタン酸ジルコン酸鉛の薄膜が形成される。その後、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、その薄膜が選択的に除去される。これにより、薄膜における下部電極11の本体部12上に形成された部分以外の部分が選択的に除去され、薄膜状の焦電素子14が得られる。
【0056】
次に、図4Hに示すように、スパッタ法により、焦電素子14上に上部電極15が形成される。
その後、図4Iに示すように、スパッタ法により、第1層間絶縁膜10上にアルミナ膜17が形成される。次いで、CVD法により、アルミナ膜17上に酸化シリコン膜18が形成される。これにより、第1層間絶縁膜10上に、アルミナ膜17および酸化シリコン膜18を積層した構造を有する被覆膜16が得られる。
【0057】
また、サーモパイル領域5およびロジック回路領域6では、CVD法により、第1層間絶縁膜37,72上に、それぞれキャップ層38,73が形成される。
次いで、図4Jに示すように、ロジック回路領域6にビア77,78,79が形成される。ビア77,78,79は、第1層間絶縁膜72およびキャップ層73に、それらを積層方向に貫通するビアホールが形成された後、そのビアホール内にタングステンを埋設することにより形成される。
【0058】
その後、図4Kに示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、焦電センサ領域4において、被覆膜16に貫通孔21,22が形成される。
そして、スパッタ法により、貫通孔21,22内を含む被覆膜16上およびロジック回路領域6におけるキャップ層73上に、アルミニウムからなる金属膜が形成される。この金属膜が選択的にパターニングされることにより、図4Lに示すように、配線19,20が形成されるとともに、各ビア77,78,79に接続される第1配線74,75,76が形成される。
【0059】
次に、図4Mに示すように、第2層間絶縁膜23,39,80が形成される。具体的には、まず、CVD法により、下層24,40,81が形成された後、つづけて下層24,40,81上にそれぞれ上層25,41,81が形成される。そして、ロジック回路領域6にビア86,87,88が形成される。ビア86,87,88は、第2層間絶縁膜80にビアホールが形成された後、そのビアホール内にタングステンを埋設することにより形成される。
【0060】
その後、スパッタ法により、第2層間絶縁膜80上に、アルミニウムからなる金属膜が形成される。この金属膜が選択的にパターニングされることにより、図4Nに示すように、各ビア86,87,88に接続される第2配線83,84,85が形成される。
次いで、CVD法により、図4Oに示すように、焦電センサ領域4、サーモパイル領域5およびロジック回路領域6に、それらの表面の全域を被覆する第3層間絶縁膜26,42,89が形成される。
【0061】
次に、図4Pに示すように、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、貫通孔27,43が形成される。貫通孔27は、焦電センサ領域4において、メンブレン8、エッチングストッパ膜9、第1層間絶縁膜10、被覆膜16、第2層間絶縁膜23および第3層間絶縁膜26を連続して貫通している。
貫通孔43の形成に際しては、まず、エッチングにより、第1層間絶縁膜37、キャップ層38、第2層間絶縁膜39および第3層間絶縁膜42において、熱電対33とその積層方向に対向する部分が上面から掘り下げられる。これにより、熱電対33の上方からキャップ層38、第2層間絶縁膜39および第3層間絶縁膜42が除去され、第1層間絶縁膜37の膜厚が残余の部分よりも小さくされる。その後、エッチングにより、熱電対33を取り囲む領域上から第1層間絶縁膜37、キャップ層38、第2層間絶縁膜39および第3層間絶縁膜42が除去される。これにより、貫通孔43が形成される。
【0062】
その後、図4Qに示すように、CVD法により、貫通孔27,43の内面を含む第3層間絶縁膜26,42,89上に、パッシベーション膜28,44,90が形成される。
そして、フォトリソグラフィおよびエッチングにより、図4Rに示すように、パッシベーション膜90および第3層間絶縁膜89が選択的に除去される。これにより、各第2配線83,84,85の上面の一部を露出させるパッド開口91,92,93が形成される。
【0063】
次に、図4Sに示すように、エッチングにより、メンブレン8,32およびエッチングストッパ膜9,36における貫通孔27,43の底面に臨む部分が除去される。これにより、貫通孔27,43の底面から犠牲層95が露出する。犠牲層95における貫通孔27,43から露出する部分には、酸化膜が形成される。
その後、CVD法により、パッシベーション膜28,44,90上に、PSG(Phospho Silicate Glass)からなるパッド保護膜96が形成される。そして、焦電センサ領域4、サーモパイル領域5およびロジック回路領域6の全域が、10%濃度のフッ酸(HF)に10秒間曝される。これにより、犠牲層95の酸化膜が除去される。
【0064】
つづいて、貫通孔27,43を介して、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液)が供給されることにより、犠牲層95が除去されるとともに、シリコン基板2の表層部が除去される。これにより、キャビティ7,31が形成され、図2に示す赤外線センサ1が得られる。
以上のように、シリコン基板2上には、チタン酸ジルコン酸鉛からなる薄膜状の焦電素子14が設けられている。赤外線の入射により焦電素子14の温度が上昇すると、その温度に応じて焦電素子14の自発分極の変化による焦電流が出力される。したがって、その焦電流に基づいて、赤外線を検出することができる。
【0065】
シリコン基板2には、焦電素子14と対向する部分に、その表面から掘り下がった形状のキャビティ7が形成されている。これにより、焦電素子14が半導体素子から熱的に分離されるので、焦電素子14からシリコン基板2に熱が逃げるのを防止することができる。その結果、赤外線の検出精度を高めることができる。
薄膜状の焦電素子14は、ゾルゲル法により形成することができる。ゾルゲル法では、粉体原料の焼結により焦電素子14を形成する手法と比較して、焦電素子14の厚さを小さくすることができる。よって、焦電素子14を用いた赤外線センサ1の薄型化を図ることができる。
【0066】
焦電素子14は、被覆膜16により被覆されている。これにより、焦電素子14を水分などから保護することができる。また、被覆膜16は、アルミナ膜を含んでいる。よって、アルミナ膜の水素バリア性により、焦電素子14の材料であるチタン酸ジルコン酸鉛の水素還元を防止することができる。したがって、その水素還元に起因する焦電素子14の特性劣化を防止することができる。
【0067】
シリコン基板2には、MOSFET51およびキャパシタ52が形成されている。さらに、シリコン基板2上に第1層間絶縁膜72を挟んで配線74,75,76を形成し、この配線74,75,76をビア77,78,79を介してMOSFET51およびキャパシタ52に接続することができる。よって、赤外線センサ1に、焦電素子14から出力される焦電流(出力信号)を処理する信号処理回路などを内蔵することができる。
【0068】
また、シリコン基板2上には、熱電対33が設けられている。熱電対33の温接点45と冷接点46との間の温度差に応じた電圧に基づいて、赤外線を検出することができる。よって、赤外線センサ1の用途に応じて、赤外線の検出素子として、焦電素子14および熱電対33の一方または両方を使用することができる。
被覆膜16には、それを厚さ方向に貫通する貫通孔27が形成されており、貫通孔27の内面には、窒化シリコンからなるパッシベーション膜28が被着されている。これにより、シリコン基板2にキャビティ7を形成するために、貫通孔27を介してシリコン基板2にエッチング液(TMAH)を供給しても、被覆膜16がエッチング液によるエッチングを受けることがない。よって、被覆膜16の不所望なエッチングを生じることなく、シリコン基板2にキャビティ7を形成することができる。
【0069】
その他、特許請求の範囲に記載された事項の範囲で種々の設計変更を施すことが可能である。
たとえば、前述の実施形態では、シリコン基板2の中央領域の紙面上側半分に焦電素子14を行列状に配置し、紙面下側半分に熱電対33を行列状に配置しているが、焦電素子14および熱電対33の配置形態は、適宜変更することができる。たとえば、焦電素子14および熱電対33は、シリコン基板2の中央領域において、各列における各焦電素子14が、隣接する列の焦電素子14と隣り合わないように、また、各列における各熱電対33が、隣接する列の熱電対33と隣り合わないように、それぞれの素子14,33が全体として千鳥状に配列されていてもよい。
【符号の説明】
【0070】
1 赤外線センサ
2 シリコン基板(半導体基板)
7 キャビティ
14 焦電素子
16 被覆膜
17 アルミナ膜
19 配線
20 配線
21 貫通孔
22 貫通孔
28 パッシベーション膜(窒化シリコン膜)
33 熱電対
51 MOSFET(能動素子)
52 キャパシタ(能動素子)
74 第1配線(配線)
75 第1配線(配線)
76 第1配線(配線)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体基板と、
前記半導体基板上に設けられ、チタン酸ジルコン酸鉛からなる薄膜状の焦電素子と、
前記焦電素子を被覆し、その最表面が赤外線の受光面をなす被覆膜と、
前記焦電素子と対向する部分に、前記半導体基板の表面から掘り下がった形状に形成され、前記焦電素子を前記半導体基板から熱的に分離するためのキャビティとを含む、赤外線センサ。
【請求項2】
前記被覆膜は、アルミナからなるアルミナ膜を含む、請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記半導体基板に形成された能動素子と、
前記能動素子に電気的に接続された配線とをさらに含む、請求項1または2に記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記半導体基板上に設けられた熱電対をさらに含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の赤外線センサ。
【請求項5】
前記半導体基板は、シリコン基板であり、
前記被覆膜には、それを厚さ方向に貫通する貫通孔が形成されており、
前記貫通孔の内面には、窒化シリコンからなる窒化シリコン膜が被着されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の赤外線センサ。
【請求項6】
半導体基板に能動素子を形成する工程と、
前記半導体基板上に層間絶縁膜を形成する工程と、
前記層間絶縁膜をその厚さ方向に貫通し、前記能動素子に電気的に接続されるコンタクトを形成する工程と、
ゾルゲル法により、前記層間絶縁膜上にチタン酸ジルコン酸鉛からなる薄膜状の焦電素子を形成する工程と、
前記焦電素子の形成後、前記層間絶縁膜上に前記焦電素子を被覆する被覆膜を形成する工程と、
前記被覆膜上に前記能動素子および前記焦電素子とそれぞれ電気的に接続される配線を形成する工程とを含む、赤外線センサの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図4E】
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【図4F】
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【図4G】
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【図4H】
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【図4I】
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【図4J】
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【図4K】
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【図4L】
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【図4M】
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【図4N】
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【図4O】
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【図4P】
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【図4Q】
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【図4R】
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【図4S】
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【公開番号】特開2011−179953(P2011−179953A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−44180(P2010−44180)
【出願日】平成22年3月1日(2010.3.1)
【出願人】(000116024)ローム株式会社 (3,539)
【Fターム(参考)】