説明

赤外線センサ

【課題】例えばリフロー実装可能な程度の優れた耐熱性を有する赤外線センサを提供する。
【解決手段】赤外線センサ1は、焦電体層10と、一対の電極11a、11bとを備える。焦電体層10は、窒化アルミニウム系圧電体材料からなる。一対の電極11a、11bは、焦電体層10を狭持している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1などにおいて、焦電性を有するチタン酸ジルコン酸鉛(PZT)を用いた焦電型赤外線センサが提案されている。このような赤外線センサでは、赤外線が照射されると電荷が発生する。この電荷を検出することにより、赤外線を検知することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9−178554号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
PZTは、キュリー点が200℃程度である。このため、例えば、PZTを用いた赤外線センサは、例えば260℃程度の温度が加わるリフロー実装に不向きである。
【0005】
本発明は、例えばリフロー実装可能な程度の優れた耐熱性を有する赤外線センサを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る焦電型赤外線センサは、焦電体層と、一対の電極とを備える。焦電体層は、窒化アルミニウム系圧電体材料からなる。一対の電極は、焦電体層を狭持している。
【0007】
本発明に係る赤外線センサのある特定の局面では、窒化アルミニウム系圧電体材料がスカンジウムを含む。
【0008】
本発明に係る赤外線センサの他の特定の局面では、焦電体層の厚みが10μm以下である。
【0009】
本発明に係る赤外線センサの別の特定の局面では、赤外線センサは、焦電体層と第1及び第2の電極の少なくとも一方との間に配された絶縁層をさらに備える。
【0010】
本発明に係る赤外線センサのさらに他の特定の局面では、絶縁層は、ポリイミド樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂からなる。
【0011】
本発明に係る赤外線センサのさらに別の特定の局面では、絶縁層の厚みが20μm以下である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、例えばリフロー実装可能な程度の優れた耐熱性を有する赤外線センサを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施形態に係る赤外線センサの略図的断面図である。
【図2】第2の実施形態に係る赤外線センサの略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施した好ましい形態の一例について説明する。但し、下記の実施形態は、単なる例示である。本発明は、下記の実施形態に何ら限定されない。
【0015】
また、実施形態等において参照する各図面において、実質的に同一の機能を有する部材は同一の符号で参照することとする。また、実施形態等において参照する図面は、模式的に記載されたものであり、図面に描画された物体の寸法の比率などは、現実の物体の寸法の比率などとは異なる場合がある。図面相互間においても、物体の寸法比率等が異なる場合がある。具体的な物体の寸法比率等は、以下の説明を参酌して判断されるべきである。
【0016】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る赤外線センサ1の略図的断面図である。赤外線センサ1は、焦電体層10を備えている。焦電体層10は、窒化アルミニウム系圧電体材料からなる。窒化アルミニウム系圧電体材料の具体例としては、例えば、窒化アルミニウム、窒化スカンジウム・アルミニウム等が挙げられる。なかでも、窒化スカンジウム・アルミニウムが窒化アルミニウム系圧電体材料として好ましく用いられる。焦電体層10の厚みは、10μm以下であることが好ましい。また、焦電体層10の厚みは、例えば、0.1μm以上であることが好ましい。
【0017】
焦電体層10は、第1の電極11aと第2の電極11bとにより挟持されている。第2の電極11bは、複数の電極部に分割されていてもよい。第2の電極11bをマトリクス状に位置する複数の電極部に分割することにより、赤外線を放出している物体の位置の特定等が可能となる。
【0018】
第1及び第2の電極11a、11bのそれぞれは、例えば、金、白金、タングステン、アルミニウム、銅、モリブデン、ルテニウム、チタン、クロム、ニクロムなどの少なくとも一種の金属などにより構成することができる。
【0019】
第1及び第2の電極11a、11bの厚みは、それぞれ、例えば、0.05μm〜1μm程度とすることができる。
【0020】
焦電体層10と、第1及び第2の電極11a、11bの少なくとも一方との間には、絶縁層12が配されている。具体的には、本実施形態では、焦電体層10と第2の電極11bとの間に絶縁層12が配されている。絶縁層12は、例えばポリイミド樹脂やポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂などからなる高分子フィルムにより構成することができる。赤外線センサ1の耐熱性を向上させる観点からは、絶縁層12がポリイミド樹脂からなることが好ましい。なお、絶縁層12は、焦電体層10と第1の電極11aとの間と、焦電体層10と第2の電極11bとの間との両方に配されていてもよい。
【0021】
本実施形態では、これら焦電体層10、第1及び第2の電極11a、11b並びに絶縁層12によって焦電素子13が構成されている。
【0022】
焦電素子13は、基板22の上に設けられた支持部材21により支持されている。本実施形態では、この支持部材21が金属などの導電材料により構成されており、焦電素子13は、支持部材21を介して、基板22の上に配された制御部材25に電気的に接続されている。制御部材25は、基板22の焦電素子13とは反対側の表面上に配された端子電極26に電気的に接続されている。なお、制御部材25は、例えば、ICにより構成することができる。
【0023】
焦電素子13の上方は、基板22に固定されたケーシング23により覆われている。ケーシング23の焦電素子13の上方に位置する部分には、赤外線入射窓23aが形成されている。
【0024】
次に、赤外線センサ1の動作について説明する。
【0025】
赤外線センサ1に対して赤外線が照射されると、赤外線入射窓23aを経由して焦電体層10に赤外線が入射する。赤外線が焦電体層10に入射すると、焦電体層10の赤外線が入射した部分において電荷が発生する。発生した電荷は、制御部材25において電圧に変換され、端子電極26から電気信号として出力される。このように、赤外線センサ1は、赤外線センサ1に入射した赤外線の強度に応じた大きさの電気信号を端子電極26から出力する。また、第2の電極11bが複数の電極部に分割されている場合は、赤外線を放出する物体の位置によって電極部の電位が異なる。このため、赤外線センサ1により赤外線を放出する物体の位置や移動を検出することもできる。
【0026】
以上説明したように、赤外線センサ1は、窒化アルミニウム系圧電体材料からなる焦電体層10を備えている。ここで、窒化アルミニウム系圧電体材料は、キュリー点を有さず、例えば、リフロー実装時に加わる260℃程度の熱に十分に耐え得る優れた耐熱性を有する。従って、赤外線センサ1は、リフロー実装可能な優れた耐熱性を有する。
【0027】
また、窒化アルミニウム系圧電体材料は、優れた耐湿性を有するため、焦電体層10に耐湿保護膜を設ける必要が必ずしもない。従って、赤外線センサ1を小型化し得る。
【0028】
さらに、窒化アルミニウム系圧電体材料からなる焦電体層10は、自発分極するため、赤外線センサ1の製造に際して、分極処理工程を行う必要が必ずしもない。従って、赤外線センサ1は製造容易である。
【0029】
赤外線センサ1では、絶縁層12が設けられているため、第1の電極11aと第2の電極11bとの間の絶縁抵抗が高められている。従って、赤外線センサ1の感度が高められている。但し、絶縁層12が厚すぎると、焦電素子13の熱容量が大きくなり、赤外線センサ1の感度がかえって低下してしまう場合がある。従って、絶縁層12の厚みは、20μm以下であることが好ましく、7.5μm以下であることがより好ましい。絶縁層12の厚みの下限値は、通常、1μm程度である。
【0030】
絶縁層12として赤外線吸収膜を用いると、さらに感度を向上させることができる。ただし、絶縁層12として赤外線吸収膜を用いる場合は、当該赤外線吸収膜は焦電体層10と第2の電極11bとの間に設けられる必要がある。
【0031】
赤外線センサ1の感度をさらに向上させる観点からは、焦電体層10がスカンジウムを含有する窒化スカンジウム・アルミニウムからなることが好ましい。この場合、圧電定数および焦電係数が大きくなるため、センシング感度が向上する。
【0032】
以下、本発明の好ましい実施形態の他の例について説明する。以下の説明において、上記第1の実施形態と実質的に共通の機能を有する部材を共通の符号で参照し、説明を省略する。
【0033】
(第2の実施形態)
図2は、第2の実施形態に係る赤外線センサ2の略図的断面図である。
【0034】
赤外線センサ2は、第1の実施形態に係る赤外線センサ1と、焦電素子13の支持態様において異なる。
【0035】
赤外線センサ2では、支持部材21がリング状に形成されている。また、支持部材21の外径よりも大きな内径を有する部分を有する支持部材24がさらに設けられている。焦電素子13は、支持部材21と支持部材24とによりかしめ止めされている。この場合、焦電素子13の固定に、振動を阻害する接着剤を必ずしも要さない。従って、赤外線センサ2の特性をさらに改善することができる。
【符号の説明】
【0036】
1,2…赤外線センサ
10…焦電体層
11a…第1の電極
11b…第2の電極
12…絶縁層
13…焦電素子
21…支持部材
22…基板
23…ケーシング
23a…赤外線入射窓
24…支持部材
25…制御部材
26…端子電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒化アルミニウム系圧電体材料からなる焦電体層と、
前記焦電体層を狭持する一対の電極と、
を備える、赤外線センサ。
【請求項2】
前記窒化アルミニウム系圧電体材料がスカンジウムを含む、請求項1に記載の赤外線センサ。
【請求項3】
前記焦電体層の厚みが10μm以下である、請求項1または2に記載の赤外線センサ。
【請求項4】
前記焦電体層と前記第1及び第2の電極の少なくとも一方との間に配された絶縁層をさらに備える、請求項1〜3のいずれか一項に記載の赤外線センサ。
【請求項5】
前記絶縁層は、ポリイミド樹脂またはポリエチレンテレフタレート樹脂からなる、請求項4に記載の赤外線センサ。
【請求項6】
前記絶縁層の厚みが20μm以下である、請求項4または5に記載の赤外線センサ。

【図1】
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【図2】
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