説明

赤外線反射性積層体

【課題】外見的には黒色または有彩色などに着色されていても特定波長の赤外線を反射して蓄熱を防止する特性を有するとともに耐熱性にも優れた赤外線反射性積層体、特に、太陽電池用バックシートを提供する。
【解決手段】下記層(B)を基材層として、その一方の面に下記層(A)を積層し、その他方の面に下記層(C)を積層してなる赤外線反射性積層体。層(A):波長800〜1400nmの光の吸収率が10%以下の着色樹脂層、層(B):150℃で30分間放置したときの寸法変化率(s)が1%≧s≧−1%を満たす熱可塑性樹脂層、層(C):ZnO、TiO、Al・nHO、[ZnS+BaSO]、CaSO・2HO、BaSO、CaCO、及びPbCO・Pb(OH)からなる群より選ばれた白色顔料を含有する樹脂からなり、波長400〜1400nmの光の反射率が50%以上である着色樹脂層。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光線が照射された場合に可視光は吸収するが赤外光は反射して蓄熱を防止する特性を有するとともに耐熱性にも優れた積層体に関するものであり、さらには、耐候性、耐加水分解性および可撓性に優れる赤外線反射性積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の原因となる石油に代わるエネルギー供給手段として、太陽電池が注目を浴びており、その需要が高まっている。太陽電池の需要増に伴い、太陽電池用バックシートなどの部品の安定供給及び低コスト化が求められており、また、太陽電池の発電効率を向上させるための要求も高まっている。
太陽電池用バックシートは、ガラス板の下にシリコンセルをエチレン酢酸ビニル樹脂などの封止樹脂で封止した後、この封止樹脂面に積層される。
【0003】
従来、太陽電池用バックシートとしては、太陽光の反射率を高めて太陽電池の発電効率を高めるために、ポリエステルシートの両面に白色の熱可塑性樹脂シートを積層したものが用いられている。(特許文献1、2)。
【0004】
一方、太陽電池は家屋の屋根などに配置されるので、近年、デザインの観点から、黒色などの暗色に着色した太陽電池用バックシートが要求されている。
しかしながら、従来の黒色の太陽電池用バックシートは、樹脂にカーボンブラックを練り込んで成形されたものが一般的であり、カーボンブラックが太陽光を吸収して温度が上昇し、太陽電池の発電効率を低下させるだけでなく、耐久性も低下させるおそれがあった。
【0005】
一方、ゴム強化ビニル系樹脂に赤外線反射特性を有する無機顔料を練り込んで成形された低蓄熱性の太陽電池用バックシートも提案されている(特許文献3)が、赤外線反射率の更なる向上が求められている。
また、ペリレン系顔料を含有させた黒色樹脂層を表面に備え、波長800〜1100nmの光の反射率を30%以上として近赤外線を反射させることにより蓄熱を防止した太陽電池用バックシートも提案されている(特許文献4)が、基材がポリエチレンテレフタレートフィルムからなるため、耐候性と耐加水分解性に劣るという欠点があった。
【0006】
【特許文献1】特開2006−270025号公報
【特許文献2】特開2007−177136号公報
【特許文献3】特開2007−103813号公報
【特許文献4】特開2007−128943号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、外見的には黒色または有彩色などに着色されていても特定波長の赤外線を反射して蓄熱を防止する性質を有し、かつ、熱変形が小さく耐熱性に優れ、さらには、屋外で長期間使用しても加水分解を起しにくく耐候性にも優れ、しかもフィルム状であっても割れにくく可撓性に優れ、加工性や生産性、取扱い性が良好な赤外線反射性積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、特定の耐熱性を有する熱可塑性樹脂層の一方の側に、赤外光の吸収率が低い着色樹脂層を配置し、前記熱可塑性樹脂層の他方の側に光の反射率が高い着色樹脂層を配置することにより、外見的には着色されていても赤外線を反射して蓄熱を防止する性質を有し、かつ、耐熱性に優れる積層体を得ることができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明は、
基材層である下記層(B)と、
該層(B)の一方の側に積層された下記層(A)と、
該層(B)の他方の側に積層された下記層(C)と、
を備えてなる赤外線反射性積層体
を提供する。
層(A):波長800〜1400nmの光の吸収率が10%以下の着色樹脂層、
層(B):150℃で30分間放置したときの寸法変化率(s)が1%≧s≧−1%を満たす熱可塑性樹脂層、
層(C):波長400〜1400nmの光の反射率が50%以上である着色樹脂層。
また、本発明の好ましい実施形態によれば、さらに、前記層(A)の外表面または前記層(C)の外表面に保護層(D)が積層される。
また、本発明の他の好ましい実施形態によれば、上記本発明の積層体からなる太陽電池用バックシート及び太陽電池モジュールが提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明の積層体は、耐熱性の熱可塑性樹脂層(B)の一方の面に赤外線透過性の着色樹脂層(A)を積層し、他方の面に赤外線反射性の樹脂層(C)を積層したので、着色樹脂層(A)に光線を照射した場合、該着色樹脂層(A)は可視光を吸収して着色された外観を呈するが赤外光は内部に透過させ、上記層(B)を透過した赤外光は樹脂層(C)によって反射されて再び上記層(B)及び上記層(A)から放射される。
したがって、本発明の赤外線反射性積層体は、太陽電池用バックシートなどの赤外線反射または放射機能が要求される用途に好適であり、また、赤外線による発熱や蓄熱が抑制され、耐熱性も備えているので、太陽光が照射される屋外装置や赤外線を放射させる装置での使用に好適である。
また、本発明の赤外線反射性積層体は、3層とも成形樹脂層として構成できるため、製造が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(共)重合」とは、単独重合および共重合を意味し、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及び/又はメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及び/又はメタクリレートを意味する。
【0012】
本発明の基材層(層(B))
本発明の赤外線反射性積層体の基材層を構成する上記層(B)は、150℃で30分間放置したときの寸法変化率(s)が1%≧s≧−1%を満たす熱可塑性樹脂層である。この基材層は、太陽光などの光線照射下における長期使用に対する耐久性をもたらすと同時に、本発明の積層体への印刷後の乾燥や表面処理、或いはその他の二次加工時に大きな温度履歴を受けても熱収縮及び熱膨張による寸法変化を小さく維持する機能を有する。また、この基材層は、上記層(A)を透過した赤外線を透過させ、かつ、上記層(C)から反射した赤外線を透過させる機能を有するものであり、上記層(A)を透過した赤外線の透過性が高いほうが好ましい。かかる機能を備える層(B)は、通常、着色剤を含まない樹脂をフィルム又はシートとして成形することで作成でき、透明又は半透明であることが好ましく、透明であることがより好ましい。
【0013】
この基材層を構成する熱可塑性樹脂(I)(以下、「成分(I)」ともいう。)としては、上記寸法変化率を充足するものであれば特に限定されず、具体例としては、ビニル系樹脂(例えば、スチレン系樹脂、ゴム強化スチレン系樹脂、アクリロニトリル・スチレン系樹脂、芳香族ビニル化合物の(共)重合体などの芳香族ビニル系樹脂)、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−α−オレフィン系樹脂など)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の(共)重合体など)、フッ素系樹脂、エチレン・酢酸ビニル系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。
【0014】
前記熱可塑性樹脂(I)は、耐熱性の観点から、ガラス転移温度が120℃以上であるものが好ましく、120〜220℃であるものがより好ましく、130〜190℃であるものがさらにより好ましく、140〜170℃であるものが一層さらにより好ましくは、145〜160℃が特に好ましい。ガラス転移温度が120℃未満の場合は、耐熱性が十分でなくなる。
【0015】
前記熱可塑性樹脂(I)としては、代表的には、ビニル系樹脂(I’)、すなわち、ゴム質重合体(i)の存在下にビニル系単量体(ii)を重合させてなるゴム強化ビニル系樹脂(I−1)及び/又は前記ビニル系単量体(ii)の(共)重合体(I−2)が挙げられる。後者の(共)重合体(I−2)は、ゴム質重合体(i)の非存在下に、ビニル系単量体(ii)を重合して得られるものである。ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)には、通常、上記ビニル系単量体(ii)がゴム質重合体(i)にグラフト共重合した共重合体とゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト成分〔上記(共)重合体(I−2)と同じもの〕が含まれる。
そのうち、好ましい熱可塑性樹脂(I)は、ゴム質重合体(i)の存在下に芳香族ビニル化合物及び所望により該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体からなるビニル系単量体(ii’)を重合して得られるゴム強化スチレン系樹脂(I−1’)及び/又は前記ビニル系単量体(ii’)の(共)重合体(I−2’)である。
【0016】
本発明の熱可塑性樹脂(I)は、耐衝撃性、可撓性の面から、前記ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)を少なくとも1種含むものが好ましく、所望により前記(共)重合体(I−2)を含有してもよい。ゴム質重合体(i)の含有量は、成分(I)を100質量部として、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは8〜30質量部、さらに好ましくは10〜20質量部、特に好ましくは12〜18質量部である。ゴム質重合体(i)の含有量が40質量部を超えると、耐熱性が十分でなく、また、フィルム加工が困難となる場合がある。一方、ゴム質重合体(i)の含有量が5質量部未満となると、耐衝撃性、可撓性が十分でなくなる場合がある。
【0017】
また、ビニル系樹脂(I’)は、耐熱性の点から、ビニル系単量体(ii)としてマレイミド系化合物単位を含んでなることが好ましく、該ビニル系樹脂(I’)100質量%に対する、該マレイミド系化合物単位の含有量は、通常、0〜30質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜27質量%であることがさらにより好ましく、10〜27質量%であることが一層さらにより好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。マレイミド系化合物単位の含有量が30質量%を超えると、積層体の可撓性が十分でなくなる。また、マレイミド系化合物単位は、ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)に由来するものであっても、前記(共)重合体(I−2)に由来するものであってもよい。ビニル系樹脂(I’)のガラス転移温度は、後述のように、マレイミド系化合物単位の含有量によって調整することが可能であり、マレイミド系化合物単位を構成単量体として含有する(共)重合体(I−2)は、所望のガラス転移温度を備えたビニル系樹脂(I’)を調製するために好都合である。
【0018】
上記ゴム質重合体(i)は、特に限定されないが、ポリブタジエン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、ブタジエン・スチレンブロック共重合体、ブタジエン・アクリロニトリル共重合体などの共役ジエン系ゴム及びその水素添加物(即ち、水添共役ジエン系ゴム)、エチレン−α−オレフィン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム、シリコーン・アクリル複合ゴムなどの非ジエン系ゴムが挙げられ、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらのうち、耐候性の観点からエチレン−α−オレフィン系ゴム(i−1)、水添共役ジエン系ゴム(i−2)、アクリル系ゴム(i−3)、シリコーン系ゴム(i−4)及びシリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)が好ましく、この中でも、アクリル系ゴム(i−3)、シリコーン系ゴム(i−4)及びシリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)がより好ましく、シリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)が可撓性の観点から特に好ましい。尚、これらは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0019】
前記エチレン−α−オレフィン系ゴム(i−1)としては、例えば、エチレン−α−オレフィン共重合体、エチレン−α−オレフィン−非共役ジエン共重合体が挙げられる。該エチレン−α−オレフィン系ゴム(i−1)を構成するα−オレフィンとしては、例えば、炭素数3〜20のα−オレフィンが挙げられ、具体的には、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−ヘキサデセン、1−エイコセンなどが挙げられる。これらのα−オレフィンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。α−オレフィンの炭素数は、好ましくは3〜20、より好ましくは3〜12、さらに好ましくは3〜8である。炭素数が20を超えると、共重合性が低下し、成形品の表面外観が十分でなくなる可能性がある。代表的なエチレン−α−オレフィン系ゴム(i−1)としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・1−ブテン共重合体、エチレン・1−ブテン・非共役ジエン共重合体などが挙げられる。エチレン/α−オレフィンの質量比は、好ましくは5〜95/95〜5、より好ましくは50〜90/50〜10、さらに好ましくは60〜88/40〜12、特に好ましくは70〜85/30〜15である。α−オレフィンの質量比が95を超えると、耐侯性が十分でなく、一方、5未満になるとゴム質重合体のゴム弾性が十分でなくなるため、フィルムとしての可撓性が十分でなくなる可能性がある。
【0020】
非共役ジエンとしては、アルケニルノルボルネン類、環状ジエン類、脂肪族ジエン類が挙げられ、好ましくは5−エチリデン−2−ノルボルネンおよびジシクロペンタジエンである。これらの非共役ジエンは、単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。非共役ジエンの、エチレン−α−オレフィン系ゴム(i−1)全量に対する割合は、好ましくは0〜30質量%、より好ましくは0〜20質量%、さらに好ましくは0〜10質量%である。非共役ジエンの割合が30質量%を超えると、成形外観および耐侯性が十分でなくなる可能性がある。尚、該エチレン−α−オレフィン系ゴム(i−1)における不飽和基量は、ヨウ素価に換算して4〜40の範囲が好ましい。
また、前記エチレン−α−オレフィン系ゴム(i−1)のムーニー粘度(ML1+4,100℃;JIS K6300に準拠)は、好ましくは5〜80、より好ましくは10〜65、さらに好ましくは15〜45である。該成分(i−1)のムーニー粘度が80を超えると重合が困難になり、一方、ムーニー粘度が5未満になると、フィルムとしての耐衝撃性、可撓性が不十分になる可能性がある。
【0021】
水添共役ジエン系ゴム(i−2)としては、例えば、下記の構造を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。すなわち、芳香族ビニル化合物単位からなる重合体ブロックA、1,2−ビニル結合含量が25モル%を超える共役ジエン系化合物単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックB、1,2−ビニル結合含量が25モル%以下の共役ジエン系化合物単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックC、および芳香族ビニル化合物単位と共役ジエン系化合物単位の共重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックDのうち、2種以上を組み合わせたものからなるブロック共重合体である。
【0022】
上記重合体ブロックAの製造に用いられる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン及びその他のメチルスチレン、ビニルキシレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノブロモスチレン、ジブロモスチレン、フルオロスチレン、p−t−ブチルスチレン、エチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも好ましいものは、スチレンである。ブロック共重合体中の重合体ブロックAの割合は、ブロック共重合体中の0〜65質量%が好ましく、さらに好ましくは10〜40質量%である。重合体ブロックAが65質量%を超えると、耐衝撃性が十分でなくなる可能性がある。
【0023】
上記重合体ブロックB、CおよびDは、共役ジエン系化合物の重合体を水素添加することにより得られる。上記重合体ブロックB、CおよびDの製造に用いられる共役ジエン系化合物としては、1,3−ブタジエン、イソプレン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどが挙げられるが、工業的に利用でき、物性の優れた水添共役ジエン系ゴム(i−2)を得るには、1,3−ブタジエン、イソプレンが好ましい。これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。上記重合体ブロックDの製造に用いられる芳香族ビニル化合物としては、上記重合体ブロックAの製造に用いられる芳香族ビニル化合物と同様のものが挙げられ、これらは、1種単独で、または2種以上を混合して用いることができる。中でも好ましいものは、スチレンである。
【0024】
上記重合体ブロックB、CおよびDの水素添加率は、95モル%以上であり、好ましくは96モル%以上である。95モル%未満であると、重合中にゲルの発生を招き、安定に重合できない可能性がある。重合体ブロックBの1,2−ビニル結合含量は、25モル%を超え90モル%以下が好ましく、30〜80モル%がさらに好ましい。重合体ブロックBの1,2−ビニル結合含量が25モル%以下であると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でなくなる可能性があり、一方、90モル%を超えると、耐薬品性が十分でなくなる可能性がある。また、重合体ブロックCの1,2−ビニル結合含量は、25%モル以下が好ましく、20モル%以下がさらに好ましい。重合体ブロックCの1,2−ビニル結合含量が25モル%を超えると、耐傷つき性および摺動性が十分に発現しない可能性がある。重合体ブロックDの1,2−ビニル結合含量は、25〜90モル%が好ましく、30〜80モル%がさらに好ましい。重合体ブロックDの1,2−ビニル結合含量が25モル%未満であると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でなくなる可能性があり、一方、90モル%を超えると、耐薬品性が十分に得られない可能性がある。また、重合体ブロックDの芳香族ビニル化合物含量は、25質量%以下が好ましく、20質量%以下がさらに好ましい。重合体ブロックDの芳香族ビニル化合物含量が25質量%を超えると、ゴム的性質が失われ耐衝撃性が十分でなくなく可能性がある。
【0025】
上記ブロック共重合体の分子構造は、分岐状、放射状またはこれらの組み合わせでもよく、さらにブロック構造としては、ジブロック、トリブロック、もしくはマルチブロック、またはこれらの組み合わせでもよい。例えば、A−(B−A)n 、(A−B)n 、A−(B−C)n 、C−(B−C)n 、(B−C)n 、A−(D−A)n 、(A−D)n 、A−(D−C)n 、C−(D−C)n 、(D−C)n 、A−(B−C−D)n 、(A−B−C−D)n 、(ただし、n=1以上の整数)で表されるブロック共重合体であり、好ましくは、A−B−A、A−B−A−B、A−B−C、A−D−C、C−B−Cの構造を有するブロック共重合体である。
【0026】
上記水添共役ジエン系ゴム(i−2)の重量平均分子量(Mw)は、1万〜100万が好ましく、さらに好ましくは3万〜80万、より好ましくは5万〜50万である。Mwが1万未満では、フィルムとしての可撓性が十分でなくなる可能性があり、一方、100万を超えると重合が困難となる。
【0027】
前記アクリル系ゴム(i−3)としては、アルキル基の炭素数が2〜8のアクリル酸アルキルエステルの重合体であり、アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上併用して使用することが出来る。好ましいアクリル酸アルキルエステルは、アクリル酸(n−,i)−ブチル又はアクリル酸2−エチルヘキシルである。なお、アクリル酸アルキルエステルの一部は、最高20質量%まで、共重合可能な他の単量体で置換することが出来る。この他の単量体としては、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリロニトリル、ビニルエステル、メタクリル酸アルキルエステル、メタクリル酸、アクリル酸、スチレン等が挙げられる。
【0028】
前記アクリル系ゴム(i−3)は、そのガラス転移温度が−10℃以下になるように、単量体の種類と共重合量を選ぶことが好ましい。また、アクリル系ゴムは、適宜、架橋性単量体を共重合することが好ましく、架橋性単量体の使用量は、アクリル系ゴム中の割合として、通常0〜10質量%、好ましくは0.01〜10質量%、更に好ましくは0.1〜5質量%である。
【0029】
架橋性単量体の具体例としては、エチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート等のモノ又はポリエチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート等のモノ又はポリエチレングリコールジメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジアリルフタレート、ジアリルマレエート、ジアリルサクシネート、トリアリルトリアジン等のジ又はトリアリル化合物、アリルメタクリレート、アリルアクリレート等のアリル化合物、1,3−ブタジエン等の共役ジエン化合物などが挙げられる。上記アクリル系ゴムは、公知の重合法で製造されるが、好ましい重合法は乳化重合法である。
【0030】
前記シリコーン系ゴム(i−4)としては、公知の重合法で得られる全てのものが使用できるが、グラフト重合の容易さから、乳化重合でラテックスの状態で得られるポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体ラテックスが好ましい。
【0031】
前記ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体のラテックスは、公知の方法、例えば米国特許第2,891,920号明細書、同第3,294,725号明細書などに記載された方法で得ることが出来る。例えば、ホモミキサー又は超音波混合機を使用し、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルスルホン酸などのスルホン酸系乳化剤の存在下に、オルガノシロキサンと水とを剪断混合した後に縮合させる方法が挙げられる。アルキルベンゼンスルホン酸は、オルガノシロキサンの乳化剤として作用すると共に重合開始剤として作用するので好適である。この際、アルキルベンゼンスルホン酸金属塩、アルキルスルホン酸金属塩などを併用すると、グラフト重合を行う際に、ポリマーを安定に維持するのに効果があるので好ましい。また、必要により、本発明の目的の性能を損なわない範囲でグラフト交叉剤または架橋剤を共縮合させてもよい。
【0032】
使用されるオルガノシロキサンは、例えば、一般式RSiO(4−m)/2(式中、Rは置換または非置換の1価の炭化水素基であり、mは0〜3の整数を示す)で表される構造単位を有するものであり、直鎖状、分岐状または環状構造を有するものがあるが、好ましくは環状構造を有するオルガノシロキサンである。このオルガノシロキサンの有する置換または非置換の1価の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、フェニル基、それらをシアノ基などで置換した置換炭化水素基などを挙げることが出来る。
【0033】
オルガノシロキサンの具体例としては、ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン等の環状化合物の他に、直鎖状または分岐状のオルガノシロキサンを挙げることが出来る。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
尚、前記オルガノシロキサンは、予め縮合された、例えばポリスチレン換算の重量平均分子量が500〜10,000程度のポリオルガノシロキサンであってもよい。また、オルガノシロキサンがポリオルガノシロキサンである場合、その分子鎖末端は、例えば、水酸基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基、メチルジフェニルシリル基などで封鎖されていてもよい。
【0035】
グラフト交叉剤としては、例えば、不飽和基とアルコキシシリル基とを併せ持つ化合物が使用できる。かかる化合物の具体例としては、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、1−(m−ビニルフェニル)メチルジメチルイソプロポキシシラン、2−(p− ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルフェノキシ)プロピルメチルジエトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)−1,1,2−トリメチル−2,2−ジメトキシジシラン、1−(p−ビニルフェニル)−1,1−ジフェニル−3−エチル−3,3−ジエトキシジシロキサン、m−ビニルフェニル−〔3−(トリエトキシシリル)プロピル〕ジフェニルシラン、〔3−(p−イソプロペニルベンゾイルアミノ)プロピル〕フェニルジプロポキシシラン、2−(m−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(o−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(m−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、1−(o−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン等の他、これらの混合物を挙げることが出来る。これらの中では、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン、2−(p−ビニルフェニル)エチルメチルジメトキシシラン、3−(p−ビニルベンゾイロキシ)プロピルメチルジメトキシシランが好ましく、p−ビニルフェニルメチルジメトキシシランが更に好ましい。
【0036】
グラフト交叉剤の使用割合は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤および架橋剤の合計量100質量部に対し、通常0〜10質量部、好ましくは0.2〜10質量部、更に好ましくは0.5〜5質量部である。グラフト交叉剤の使用量が多い場合は、グラフトしたビニル系ポリマーの分子量が低下し、その結果、充分な耐衝撃性が得られない。また、グラフト化後のポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体の2重結合より酸化劣化が進行し易く、耐候性の良好なグラフト共重合体が得られない。
【0037】
尚、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体ラテックスの粒子の平均粒子径は、通常0.5μm以下、好ましくは0.4μm以下、更に好ましくは0.05〜0.4μmである。この平均粒子径は前記の乳化剤および水の量、ホモミキサー又は超音波混合機を使用して混合したときの分散の程度またはオルガノシロキサンのチャージ方法によって、容易に制御することが出来る。ラテックスの粒子の平均粒子径が0.5μmを超える場合は光沢が劣る。
【0038】
また、前記のようにして得られるポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体のポリスチレン換算重量平均分子量は、通常3万〜100万、好ましくは5万〜30万である。重量平均分子量が3万未満では、フィルムとしての可撓性が十分に得られない可能性がある。一方、重量平均分子量が100万を超える場合と、ゴムの高分子鎖間の絡み合いが強くなり、ゴム弾性が低下するため、フィルムとしての可撓性が低下したり、グラフト粒子が溶融しにくくなって、フィルム外観が損なわれる恐れがある。
【0039】
前記の重量平均分子量の調整は、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体調製時の縮重合温度と時間を変えることにより、容易に調整することが出来る。すなわち、縮重合温度が低いほど、及び/又は、冷却時間が長いほど、重合体は高分子量化する。また、架橋剤を少量添加することでも、重合体を高分子量化することが出来る。
【0040】
なお、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体の分子鎖末端は、例えば、水酸基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、ジメチルビニルシリル基、メチルフェニルビニルシリル基、メチルジフェニルシリル基などで封鎖されていてもよい。
【0041】
前記乳化剤の使用量は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤および架橋剤の合計量100質量部に対し、通常0.1〜5質量部、好ましくは0.3〜3質量部である。なお、この際の水の使用量は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤および架橋剤の合計量100質量部に対し、通常100〜500質量部、好ましくは200〜400質量部である。また、縮重合温度は、通常5〜100℃である。
【0042】
なお、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体の製造に際し、得られるグラフト共重合体の耐衝撃性を改良するために、第3成分として架橋剤を添加することも出来る。この架橋剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン等の4官能性架橋剤を挙げることが出来る。これらは2種以上を併用することが出来る。また、これら架橋剤として、予め縮重合させた架橋プレポリマーを使用してもよい。この架橋剤の添加量は、オルガノシロキサンとグラフト交叉剤および架橋剤の合計量100質量部に対し、通常10質量部以下、好ましくは5質量部以下、更に好ましくは0.01〜5質量部である。上記架橋剤の添加量が10質量部を超える場合は、ポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体の柔軟性が損なわれるため、フィルムの可撓性が低下する可能性がある。
【0043】
前記シリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)とは、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムを含有するゴム質重合体をいう。好ましいシリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)は、ポリオルガノシロキサンゴムとポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムが分離できないように相互に絡み合った構造を有する複合ゴムである。
【0044】
前記ポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシトリプロピレングリコールアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート(単量体)を共重合して得られるものが挙げられる。これらのアルキル(メタ)アクリレートは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
さらに前記アルキル(メタ)アクリレートの単量体中には、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;メタクリル酸変性シリコーン、フッ素含有ビニル化合物等の各種のビニル系単量体を30質量%以下の範囲で共重合成分として含んでいてもよい。
【0046】
上記ポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムとしては、2つ以上のガラス転移温度を有する共重合体であることが好ましい。このようなポリアルキル(メタ)アクリレート系ゴムは、フィルムに可撓性を発現させるのに好ましい。
【0047】
上記ポリオルガノシロキサンゴムとしては、オルガノシロキサンを共重合したものを用いることができる。上記オルガノシロキサンとしては、3員環以上の各種の還元体が挙げられ、好ましくはヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、トリメチルトリフェニルシクロトリシロキサン、テトラメチルテトラフェニルシクロテトラシロキサン、オクタフェニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。そして、これらのオルガノシロキサンは単独又は2種類以上を混合して用いることができる。これらのオルガノシロキサンの使用量はポリオルガノシロキサンゴム成分中50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上である。
【0048】
シリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)は、例えば、特開平4−239010号公報、特許第2137934号明細書等に記載された方法で製造することができる。かかるシリコーン・アクリル複合ゴムグラフト共重合体としては、例えば、三菱レーヨン社製の「メタブレン SX−006(商品名)」などが市販されている。
【0049】
本発明におけるビニル系単量体(ii)としては、代表的には、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物が挙げられ、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の両者を含むものが好ましい。
【0050】
前記芳香族ビニル化合物としては、スチレン、α−メチルスチレン及びその他のメチルスチレン、ビニルトルエン、ビニルキシレン、エチルスチレン、ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、ビニルナフタレン、メトキシスチレン、モノブロムスチレン、ジブロムスチレン、トリブロムスチレン、フルオロスチレン等が挙げられる。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレンが好ましい。また、これらの芳香族ビニル化合物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
前記シアン化ビニル化合物としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロロ(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。これらのうち、アクリロニトリルが好ましい。また、これらのシアン化ビニル化合物は、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0052】
尚、前記ビニル系単量体(ii)は、前記芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物のほか、これらと共重合可能な他の化合物を用いてもよい。かかる他の化合物としては、(メタ)アクリル酸エステル、マレイミド系化合物、その他の官能基含有不飽和化合物(例えば、不飽和酸、エポキシ基含有不飽和化合物、ヒドロキシル基含有不飽和化合物、オキサゾリン基含有不飽和化合物、酸無水物基含有不飽和化合物等)等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。かかる他の化合物の使用量は、ビニル系単量体(ii)を100質量%として、好ましくは0〜50質量%、より好ましくは1〜40質量%、さらに好ましくは1〜30質量%である。
【0053】
(メタ)アクリル酸エステルとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、メタクリル酸メチルが好ましい。
【0054】
不飽和酸としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
マレイミド系化合物としては、マレイミド、N−メチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。また、共重合樹脂にマレイミド系化合物単位を導入するために、無水マレイン酸を(共)重合させ、後イミド化してもよい。他の共重合可能な化合物としてマレイミド系化合物を含有することは、前記熱可塑性樹脂(I)の耐熱性を向上させる観点から好ましい。
【0056】
マレイミド系化合物の含有量は、上記熱可塑性樹脂(I)100質量%に対して、マレイミド系化合物単位として通常0〜30質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜27質量%であることがさらにより好ましく、10〜27質量%であることが一層さらにより好ましく、15〜25質量%であることが特に好ましい。マレイミド系化合物単位が1質量%未満の場合は耐熱性が不十分に、一方、30質量%を超えるとフィルムとしての可撓性が不十分になる可能性がある。
【0057】
エポキシ基含有不飽和化合物としては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0058】
ヒドロキシル基含有不飽和化合物としては、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、ヒドロキシスチレン等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0059】
オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
酸無水物基含有不飽和化合物としては、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。これらは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0061】
上記ビニル系単量体(ii)としては、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物を主として用いることが好ましく、これらの化合物の合計量は、ビニル系単量体全量に対して、好ましくは70〜100質量%、さらに好ましくは80〜100質量%である。また、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の使用比率は、これらの合計を100質量%とした場合、それぞれ、好ましくは5〜95質量%及び5〜95質量%、より好ましくは50〜95質量%及び5〜50質量%、さらにより好ましくは60〜95質量%及び5〜40質量%、特に好ましくは65〜85質量%及び15〜35質量%である。
【0062】
本発明の好ましい実施形態によれば、熱可塑性樹脂(I)として、アクリル系ゴム(i−3)、シリコーン系ゴム(i−4)及びシリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)からなる群より選ばれたゴム質重合体(i)の存在下に芳香族ビニル化合物を含有するビニル系単量体(ii‘)を重合させてなるゴム強化スチレン系樹脂(I−1’)及び所望により該ビニル系単量体(ii‘)の(共)重合体(I−2’)からなるゴム強化スチレン系樹脂が使用される。そのうち、ゴム質重合体(i)としてシリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)を使用したシリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂、及び、ゴム質重合体(i)としてシリコーン系ゴム(i−4)を使用したシリコーン系ゴム強化スチレン系樹脂と、ゴム質重合体(i)としてアクリル系ゴム(i−3)を使用したアクリル系ゴム強化スチレン系樹脂との混合物が好ましく、シリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂が特に好ましい。
【0063】
前記ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)は、公知の重合法である乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、または、これらを組み合わせた重合法によって得ることが出来る。
【0064】
ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)のグラフト率は、好ましくは20〜170%であり、より好ましくは30〜170%、さらに好ましくは40〜150%、特に好ましくは50〜150%である。このグラフト率が低すぎると、フィルムとしての可撓性が十分でなくなる場合がある。また、グラフト率が高すぎると、熱可塑性樹脂の粘度が高くなり、薄肉化が困難になる場合がある。
【0065】
前記グラフト率は、下記式により求めることができる。
グラフト率(質量%)=((S−T)/T)×100
上記式中、Sはゴム強化ビニル系樹脂(I−1)1グラムをアセトン(アクリル系ゴムの場合、アセトニトリル)20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはゴム強化ビニル系樹脂(I−1)1グラムに含まれるゴム質重合体の質量(g)である。このゴム質重合体の質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
【0066】
尚、前記グラフト率は、例えば前記ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
【0067】
前記ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)のアセトン可溶分(アクリル系ゴムの場合、アセトニトリル可溶分)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、好ましくは0.1〜2.5dl/g、より好ましくは0.2〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.25〜1.2dl/gである。該極限粘度がこの範囲内であることは、フィルムの加工性、肉厚精度の高い積層体を得る観点から好ましい。
【0068】
前記ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)のアセトン可溶分(アクリル系ゴムの場合、アセトニトリル可溶分)の極限粘度[η]の測定は下記方法で行った。まず、前記ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)のアセトン可溶分(アクリル系ゴムの場合、アセトニトリル可溶分)をメチルエチルケトンに溶解させ、濃度の異なるものを5点作った。ウベローデ粘度管を用い、30℃で各濃度の還元粘度を測定した結果から、極限粘度[η]を求めた。単位は、dl/gである。
【0069】
尚、前記極限粘度[η]は、例えば前記ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。また、異なる極限粘度[η]を持つ前記(共)重合体(I−2)を、適宜選択して配合することにより調整することができる。
【0070】
前記熱可塑性樹脂(I)は、あらかじめ各成分の必要部数を配合し、ヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機にて溶融、混練後、ペレット化して用いてもよいし、各成分をフィルム成形機又は押出成形機に直接供給し、フィルム加工又はシート加工を行ってもよい。この際、前記熱可塑性樹脂(I)には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、老化防止剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、防かび剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤、黒鉛、カーボブラック、カーボンナノチューブ、顔料(たとえば、赤外線吸収、反射能力を有する、機能性を付与した顔料も含む。)等を本発明の目的を損なわない範囲で添加することもできる。
【0071】
本発明の着色樹脂層(層(A))
本発明の層(A)は、赤外線透過性の着色樹脂層であり、具体的には、波長800〜1400nmの光の吸収率が10%以下の着色樹脂層である。該層(A)は、例えば、層(A)を構成する樹脂成分に着色剤、とりわけ赤外線透過性着色剤を含有させて構成することができる。
本発明において、波長800〜1400nmの光の吸収率が10%以下とは、波長800〜1400nmの範囲における吸収率の最小値が10%以下であることを意味し、波長800〜1400nmの範囲内の全ての波長の光の吸収率が10%以下であることを要求するものではない。なお、通常、波長800〜1400nmの範囲内の或る1つの波長の光の吸収率が10%以下であれば、それに隣接する波長の光の吸収率も同程度に低くなるものと考えられる。
【0072】
赤外線透過性着色剤は、可視光線は吸収して呈色するが、赤外線は透過させる性質を有するものであり、具体例としては、ペリレン系黒色顔料が挙げられる。かかるペリレン系黒色顔料は、Paliogen Black S 0084、Paliogen Black L 0086、Lumogen Black FK4280、Lumogen Black FK4281(商品名:BASF社製)などとして市販されている。また、赤外線透過性着色剤として、特開2007−128943号公報に記載されているペリレン系顔料も使用することができる。かかる赤外線透過性着色剤は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができる。
【0073】
また、赤外線透過性着色剤は、層(A)の赤外線透過性を損なわない限り、他の顔料や染料などの着色剤と組み合わせて使用することもできる。他の着色剤としては、公知の無機顔料及び有機顔料並びに染料を使用することができる。例えば、上記ペリレン系黒色顔料に黄色系顔料を組み合わせて使用すると、茶色の層(A)が得られ、青色系顔料を組み合わせて使用すると、紺色の層(A)が得られ、白色系顔料を組み合わせて使用すると、灰色の層(A)が得られる。
【0074】
層(A)の着色度合いは、層(A)の赤外線透過性を充足する限り特に限定されないが、通常、積層体の層(A)側の表面のL値(明度)が40以下、好ましくは35以下、より好ましくは30以下となる程度に着色していればよい。なお、積層体の層(A)側の表面とは、保護層(D)が層(A)の外表面に設けられていない場合は、層(A)の表面を意味し、保護層(D)が層(A)の外表面に設けられている場合は、層(D)の表面を意味する。
層(A)における着色剤の含有量(赤外線透過性着色剤及びその他の着色剤の総量)は、層(A)の赤外線透過性を損なわない限り、特に制限されないが、通常、層(A)を構成する樹脂成分100質量部に対し、0.1〜5質量部が好ましく、0.1〜4.5質量部がより好ましく、0.5〜4.0質量部が更により好ましい。着色剤の含有量が0.1質量部未満では、着色が不十分になり、着色剤の含有量が5質量部を超えると、赤外線の透過が不十分になったり、製造コストが上昇するおそれがある。
【0075】
層(A)を構成する樹脂成分としては、特に制限されるものではないが、積層体の成形加工性の点から熱可塑性樹脂(II)が好ましい。また、熱可塑性樹脂(II)は、積層体に可撓性を付与する点から、上記層(B)を構成する熱可塑性樹脂(I)よりも低いガラス転移温度を有することが好ましい。熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度は、好ましくは90〜200℃、より好ましくは、95〜160℃、さらにより好ましくは、95〜150℃、特に好ましくは、110〜140℃である。該熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度が200℃よりも高くなると、積層体の可撓性が悪化する傾向があり、一方、ガラス転移温度が90℃よりも低くなると、耐熱性が不十分となる傾向がある。
【0076】
熱可塑性樹脂(II)としては、例えば、スチレン系樹脂(例えば、ゴム強化スチレン系樹脂、アクリロニトリル・スチレン系樹脂、その他の芳香族ビニル化合物の(共)重合体など)、ポリオレフィン系樹脂(例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、エチレン−α−オレフィン系樹脂など)、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、飽和ポリエステル系樹脂(たとえば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリトリメチレンテレフタレートなど)、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂(例えば、(メタ)アクリル酸エステル化合物の(共)重合体など)、フッ素系樹脂、エチレン・酢酸ビニル系樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することが出来る。これらのうち、屋外で長期間使用しても加水分解を起しにくい点から、スチレン系樹脂(II−1)を使用することが好ましい。
【0077】
本発明で使用するスチレン系樹脂(II−1)(以下、「成分(II−1)」ともいう。)は、代表的には、ゴム質重合体(a)の存在下に芳香族ビニル化合物及び所望により該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体からなるビニル系単量体(b)を重合させてなるゴム強化スチレン系樹脂組成物(II−1−1)及び/又は前記ビニル系単量体(b)の(共)重合体(II−1−2)である。後者の(共)重合体(II−1−2)は、ゴム質重合体(a)の非存在下に、前記ビニル系単量体(b)を重合して得られるものである。ゴム強化スチレン系樹脂(II−1−1)には、通常、上記ビニル系単量体(b)がゴム質重合体(a)にグラフト共重合した共重合体とゴム質重合体にグラフトしていない未グラフト成分〔上記(共)重合体(II−1−2)と同じもの〕が含まれる。
【0078】
本発明の成分(II−1)は、耐衝撃性、可撓性の面から、前記ゴム強化スチレン系樹脂(II−1−1)を少なくとも1種含むものが好ましく、所望により前記(共)重合体(II−1−2)を含有してもよい。ゴム質重合体(a)の含有量は、成分(II−1)を100質量部として、好ましくは5〜40質量部、より好ましくは8〜30質量部、さらに好ましくは10〜20質量部、特に好ましくは12〜18質量部である。ゴム質重合体(a)の含有量が40質量部を超えると、耐熱性が十分でなく、フィルム加工が困難となる場合がある。一方、ゴム質重合体(a)の含有量が5質量部未満となると、可撓性が十分でなくなる場合がある。
【0079】
前記ゴム質重合体(a)は、前記ゴム質重合体(i)として記載したものを用いることができ、好ましいゴム質重合体(a)も、前記ゴム質重合体(i)と同様である。但し、本発明の積層体において、スチレン系樹脂(II-1)で用いるゴム質重合体(a)は、前記熱可塑性樹脂(I)で用いたゴム質重合体(i)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0080】
前記ビニル系単量体(b)は、前記ビニル系単量体(ii)として記載したものを用いることができ、好ましいビニル系単量体(b)も、前記ビニル系単量体(ii)と同様である。但し、本発明の積層体において、スチレン系樹脂(II-1)で用いるビニル系単量体(b)は、前記熱可塑性樹脂(I)で用いたビニル系単量体(ii)と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0081】
また、前記スチレン系樹脂(II-1)は、耐熱性の点から、マレイミド系化合物単位を含んでなることが好ましく、該スチレン系樹脂(II-1)100質量%に対する、該マレイミド系化合物単位の含有量は通常0〜30質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、5〜25質量%であることがさらにより好ましく、10〜20質量%であることが特に好ましい。マレイミド系化合物単位は、ゴム強化スチレン系樹脂(II-1−1)に由来するものであっても、前記(共)重合体(II-1−2)に由来するものであってもよい。スチレン系樹脂(II-1)のガラス転移温度は、後述のようにマレイミド系化合物単位の含有量によって調整することが可能で、マレイミド系化合物単位を構成単量体として含有する(共)重合体(II-1−2)は、所望のガラス転移温度を備えたスチレン系樹脂(II-1)を調製するために好都合である。
【0082】
本発明の好ましい実施形態によれば、熱可塑性樹脂(II)として、アクリル系ゴム(i−3)、シリコーン系ゴム(i−4)及びシリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)からなる群より選ばれたゴム質重合体(a)の存在下に芳香族ビニル化合物を含有するビニル系単量体(b)を重合させてなるゴム強化スチレン系樹脂(II-1−1)及び所望により該ビニル系単量体(b)の(共)重合体(II-1−2)からなるゴム強化スチレン系樹脂が使用される。そのうち、ゴム質重合体(b)としてシリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)を使用したシリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂、及び、ゴム質重合体(b)としてシリコーン系ゴム(i−4)を使用したシリコーン系ゴム強化スチレン系樹脂と、ゴム質重合体(b)としてアクリル系ゴム(i−3)を使用したアクリル系ゴム強化スチレン系樹脂との混合物が好ましく、シリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂が特に好ましい。
【0083】
前記スチレン系樹脂(II-1)は、公知の重合法である乳化重合、懸濁重合、溶液重合、塊状重合、またはこれらを組み合わせた重合法によって得ることが出来る。
【0084】
前記ゴム強化スチレン系樹脂(II-1−1)のグラフト率は、好ましくは20〜170%であり、より好ましくは30〜170%、さらに好ましくは40〜150%、特に好ましくは50〜150%である。このグラフト率が低すぎると、フィルムとしての可撓性が十分でなくなる場合がある。また、グラフト率が高すぎると、熱可塑性樹脂の粘度が高くなり、薄肉化が困難になる場合がある。
【0085】
前記グラフト率は、前記ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)について記載した方法と同様の方法で測定することができる。
【0086】
尚、前記グラフト率は、例えば前記ゴム強化スチレン系樹脂(II-1−1)の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。
【0087】
前記ゴム強化スチレン系樹脂(II-1−1)のアセトン可溶分(アクリル系ゴムの場合、アセトニトリル可溶分)の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、好ましくは0.1〜2.5dl/g、より好ましくは0.2〜1.5dl/g、さらに好ましくは0.25〜1.2dl/gである。該極限粘度がこの範囲内であることは、肉厚精度の高い積層体を得る観点から好ましい。
【0088】
前記極限粘度[η]は、前記ゴム強化ビニル系樹脂(I−1)で行った測定と同様に行うことができる。
【0089】
尚、前記極限粘度[η]は、例えば前記ゴム強化スチレン系樹脂(II-1−1)の製造時に用いる連鎖移動剤の種類及び使用量、重合開始剤の種類及び使用量、重合時の単量体成分の添加方法及び添加時間、重合温度等を適宜選択することにより調整することができる。また、異なる極限粘度[η]を持つ前記(共)重合体(II-1−2)を、適宜選択して配合することにより調整することができる。
【0090】
前記スチレン系樹脂(II-1)は、あらかじめ各成分の必要部数を配合し、ヘンシェルミキサー等で混合した後、押出機にて溶融、混練後、ペレット化して用いてもよいし、各成分をフィルム成形機又は押出成形機に直接供給し、フィルム加工又はシート加工を行ってもよい。この際、前記スチレン系樹脂(II-1)には、酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候剤、老化防止剤、充填剤、帯電防止剤、難燃剤、防曇剤、滑剤、抗菌剤、防かび剤、粘着付与剤、可塑剤、着色剤、黒鉛、カーボブラック、カーボンナノチューブ等を本発明の目的を損なわない範囲で添加することもできる。
【0091】
本発明の着色樹脂層(層(C))
本発明の層(C)は、光線反射性の着色樹脂層であり、具体的には、波長400〜1400nmの光の反射率が50%以上、好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である着色樹脂層である。該層(C)は、例えば、層(C)を構成する樹脂成分に明度の高い着色剤を含有させた樹脂を成形して構成することができる。したがって、前記層(C)の着色度合いは、上記反射率を充足する限り特に限定されないが、通常、積層体の層(C)側の表面のL値(明度)が55以上、好ましくは70以上、より好ましくは80以上、特に好ましくは95以上となる程度に着色していればよい。なお、積層体の層(C)側の表面とは、保護層(D)の有無に拘わらず、層(C)の表面を意味する。太陽電池バックシート用として表面又は裏面が白色のものは従来知られているが、本発明では、このような白色度の高い層を、着色樹脂層(A)を透過した赤外線の反射層として機能させることとした。
本発明において、波長400〜1400nmの光の反射率が50%以上とは、波長400〜1400nmの範囲における反射率の最大値が50%以上であることを意味し、波長400〜1400nm範囲内の全ての波長の光の反射率が50%以上であることを要求するものではない。なお、通常、波長400〜1400nm範囲内の或る1つの波長の光の反射率が50%以上であれば、それに隣接する波長の光の反射率も同程度に高くなるものと考えられる。なお、層(C)は、層(A)及び層(B)を透過した赤外線を反射させる機能を有するものであるから、波長800〜1400nmの光の反射率が50%以上であること、すなわち、波長800〜1400nmの範囲における反射率の最大値が50%以上であることが好ましい。
【0092】
上記(C)層に配合される明度の高い着色剤としては、赤外線を反射する性質を有するものであれば特に限定されず、通常、白色顔料が用いられる。白色顔料としては、ZnO、TiO、Al・nHO、[ZnS+BaSO]、CaSO・2HO、BaSO、CaCO、2PbCO・Pb(OH)等が挙げられる。これらは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
層(C)における顔料の含有量は、層(C)の赤外線反射性を損なわない限り、特に制限されないが、積層体の層(C)側の表面のL値(明度)を55以上とするに十分な量を含有させることが好ましく、具体的には、層(C)を構成する樹脂成分100質量部に対し、1〜40質量部が好ましく、3〜40質量部がより好ましく、5〜30質量部が更により好ましく、10〜25質量部が特に好ましい。この含有量が1質量部未満では、赤外線反射の効果が十分でなく、40質量部を超えると、フィルムの可撓性が十分でなくなる傾向がある。
【0093】
層(C)を構成する樹脂成分としては、層(A)について上記したものを使用することができ、積層体の成形加工性の点から熱可塑性樹脂(II)が好ましい。また、熱可塑性樹脂(II)は、積層体に可撓性を付与する点から、上記層(B)を構成する熱可塑性樹脂(I)よりも低いガラス転移温度を有することが好ましい。熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度は、好ましくは90〜200℃、より好ましくは、95〜160℃、さらにより好ましくは、95〜150℃、特に好ましくは、110〜140℃である。該熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度が200℃よりも高くなると、積層体の可撓性が悪化する傾向があり、一方、ガラス転移温度が90℃よりも低くなると、耐熱性が不十分となる傾向がある。なお、層(A)に関して上記した好ましい熱可塑性樹脂(II)の記述を含む全ての記述は、そのまま、層(C)を構成する樹脂成分についても当てはまる。
【0094】
本発明の好ましい実施形態によれば、層(C)を構成する熱可塑性樹脂(II)として、アクリル系ゴム(i−3)、シリコーン系ゴム(i−4)及びシリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)からなる群より選ばれたゴム質重合体(a)の存在下に芳香族ビニル化合物を含有するビニル系単量体(b)を重合させてなるゴム強化スチレン系樹脂(II-1−1)及び所望により該ビニル系単量体(b)の(共)重合体(II-1−2)からなるゴム強化スチレン系樹脂が使用される。そのうち、ゴム質重合体(b)としてシリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)を使用したシリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂、及び、ゴム質重合体(b)としてシリコーン系ゴム(i−4)を使用したシリコーン系ゴム強化スチレン系樹脂と、ゴム質重合体(b)としてアクリル系ゴム(i−3)を使用したアクリル系ゴム強化スチレン系樹脂との混合物が好ましく、シリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂が特に好ましい。
【0095】
積層体の構成
本発明の赤外線反射性積層体は、層(B)を基材層として、その一方の面に赤外線透過性の着色樹脂層(A)を積層し、その他方の面に赤外線反射性の着色樹脂層(C)を積層することによって製造することができる。
【0096】
本発明の赤外線反射性積層体の好ましい実施形態においては、上記のように、積層体に耐熱性と可撓性を付与するために、前記層(B)をガラス転移温度120℃以上の熱可塑性樹脂(I)から構成し、前記層(A)及び前記層(C)を該熱可塑性樹脂(I)よりも低いガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂(II)から構成する。前記層(A)及び前記層(C)を構成する熱可塑性樹脂(II)は、配合される顔料以外は同様の構成とすると好都合である。層(B)の熱可塑性樹脂(I)のガラス転移温度(Tg(I))と、層(A)及び層(C)を構成する熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度(Tg(II))は、下記式(1)を満足することが好ましく、
(Tg(I)−Tg(II)) ≧ 10℃ (1)
下記式(1´)を満足することが、より好ましく、
50℃ ≧ (Tg(I)−Tg(II)) ≧ 10℃ (1´)
下記式(1´´)を満足することが、さらに好ましい。
30℃ ≧ (Tg(I)−Tg(II)) ≧ 15℃ (1´´)
【0097】
熱可塑性樹脂(I)と熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度が式(1)を満足しない場合、得られる積層体の可撓性の改良効果が不十分となる場合がある。また、熱可塑性樹脂(I)のガラス転移温度(Tg(I))と熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度(Tg(II))の差が、50℃を超えると、積層体の製造が困難になる傾向がある。
熱可塑性樹脂(I)(特にビニル系樹脂(I’))及び熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度は、使用するゴム質重合体(i)若しくは(a)の種類若しくは量、又は、使用するビニル系単量体(ii)若しくは(b)の種類若しくは量を適宜選択することによって調整することができ、好適には、マレイミド系化合物の量を変化させることによって調整することができる。また、可塑剤、無機フィラー等の添加剤や充填剤を配合することにより、ガラス転移温度を調整することもできる。
【0098】
本発明の積層体は、層(B)の熱可塑性樹脂(I)と層(A)及び層(C)の熱可塑性樹脂(II)とが、何れも、上記シリコーン・アクリル複合ゴム(i−5)に上記ビニル系単量体((ii),(a))を重合させてなるシリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂を含有し、マレイミド系化合物単位を含んでなる樹脂組成物であることが、耐候性、耐熱性、耐加水分解性、可撓性のバランスの点から好ましい。この場合、耐候性、耐熱性、耐加水分解性、可撓性のバランスの点から、層(B)の熱可塑性樹脂(I)を構成するシリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム量が熱可塑性樹脂(I)100質量部に対して10〜20質量部であり、ガラス転移温度が150〜160℃であり、N−フェニルマレイミド単位の含有量が熱可塑性樹脂(I)100質量%に対して15〜30質量%であることが好ましく、層(A)及び層(C)の熱可塑性樹脂(II)を構成するシリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂は、ゴム量が熱可塑性樹脂(II)100質量部に対して10〜20質量部であり、ガラス転移温度が120〜140℃であり、N−フェニルマレイミド単位の含有量が熱可塑性樹脂(II)100質量%に対して10〜20質量%であることが好ましい。
【0099】
本発明の積層体は、シート状又はフィルム状の何れであってもよい。例えば、本発明の積層体がフィルムの場合、熱可塑性プラスチックのフィルムの製造に利用できる方法、例えば溶液キャスト法、溶融押出法、共押出法、溶融プレス法などで製造することができる。大規模生産には溶融押出法が優れているが、小規模、特殊用途向け、品質評価のいずれかの目的のためには溶液キャスト法、溶融プレス法も有用である。溶融押出法では、Tダイ法やインフレーション法が利用される。溶融プレス法では、カレンダー法が利用される。本発明の積層体がシートの場合、熱可塑性プラスチックのシートの製造に利用できる方法、例えば共押出法などで製造することができる。
【0100】
Tダイ法では高速度で製造できるという利点があるが、その場合、成形時における樹脂温度は、溶融温度以上で且つ樹脂の分解温度よりも低い温度であればよく、一般に150〜250℃の温度が適当である。
インフレーション法の成形機の仕様や成形条件は限定されず、従来から公知の方法や条件をとることができる。例えば、押出機の口径は直径10〜600mm、口径Dとホッパ下からシリンダ先端までの長さLの比L/Dは8〜45である。ダイはインフレーション成形に一般に用いられている形状のものであり、例えば、スパイダー型、スパイラル型、スタッキング型等の流路形状を持ち、口径は1〜5000mmである。
カレンダー法の成形機としては、例えば直列型、L型、逆L型、Z型など、いずれも用いることができる。
【0101】
さらに本発明の積層体は、例えばTダイ成形やインフレーション成形等により単層フィルムを成形し、その後、熱ラミネーションや押出ラミネーションにより作製してもよいが、製造コストの観点から、Tダイ多層押出機を用いて成形することが好ましい。
【0102】
このようにして得られた本発明の積層体の厚さは、好ましくは、30〜500μm、より好ましくは、40〜400μm、さらに好ましくは、50〜350μmである。厚さが薄すぎると積層体の強度が不足し、使用時に積層体が破ける恐れがあり、一方、厚さが厚すぎると積層体の加工が困難となったり、積層体としての柔軟性が低下したり、折り曲げ白化する等の問題が生じる傾向がある。
【0103】
さらに、例えば積層体全体の厚みが250μmの場合、層(A)/層(B)/層(C)の厚さは、好ましくは、10〜100/10〜200/10〜200μm、より好ましくは、30〜100/50〜190/30〜100μm、さらにより好ましくは、40〜90/70〜170/40〜90μm、特に好ましくは50〜80/90〜150/50〜80μmである。層(A)の厚さが100μmを超えると、耐熱性が十分でなくなる傾向があり、一方、層(A)の厚さが10μm未満では、積層体フィルムの可撓性が不十分になる傾向がある。
【0104】
また、本発明の赤外線反射性積層体には、所望により保護層(D)を、上記層(A)の外表面及び/又は上記層(C)の外表面に積層することができ、上記層(C)の外表面に積層することがより好ましい。特に、本発明の積層体を太陽電池用バックシートとして使用する場合は、太陽電池セルとは反対側に位置することになる上記層(C)の外表面に保護層(D)を設けることが、発電効率、太陽電池セルとの密着性などの観点から好ましい。
この保護層(D)は、太陽電池用カバーフィルムやバックシートでは、その耐傷性、耐突き抜き性等の物理的性能、耐薬品性などの化学的性能、又は難燃性などの熱的性能を高めるためによく用いられているものであり、本発明では、積層体の難燃性及び耐傷性を向上させるものが好ましい。
かかる保護層(D)としては、例えば、ポリビニルフルオライドフィルム、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体フィルムなどのフッ素樹脂系フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリアリレートフィルム、ポリエーテルスルホンフィルム、ポリサルホンフィルム、ポリアクリロニトリルフィルム、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、耐加水分解性ポリエチレンナフタレート(PEN)フィルム、セルロースアセテートフィルム、アクリル樹脂フィルム、耐候性ポリプロピレンフィルム、ガラス繊維強化ポリエステルフィルム、ガラス繊維強化アクリル樹脂フィルム、ガラス繊維強化ポリカーボネートフィルムなどを使用することができる。これらのうち、本発明で使用する保護層としては、難燃性と耐傷性に優れていることから、フッ素樹脂系フィルム、耐加水分解性ポリエチレンテレフタレートフィルム、耐加水分解性ポリエチレンナフタレートフィルムが好ましい。これらは単独のフィルムを用いてもよく、二種以上を積層した積層フィルムを用いてもよい。
保護層(D)の厚さは、好ましくは25〜300μmであり、より好ましくは25〜200μmである。保護層(D)の厚さが25μm未満では、積層体を保護する効果が不十分となる。保護層(D)の厚さが300μmを超えると、積層体の柔軟性が不十分となり、積層体の重量も増加し、好ましくない。
【0105】
さらに本発明の赤外線反射性積層体は、通常、層(A)が太陽光などの光線を受ける表面として使用されるので、裏面となる層(C)または層(D)の表面に粘着層または接着層を形成することにより、粘着フィルム、接着フィルム、粘着シート、接着シート等とすることができる。粘着層または接着層の表面には、これらの層を保護するための保護膜を更に備えることもできる。
また、積層体の基材層(B)と層(A)又は層(C)との間には、本発明の効果を失わない範囲で、所望により、可飾層、製造時に生じるリサイクル樹脂(通常、熱可塑性樹脂(I)、熱可塑性樹脂(II)及びこれらの配合物の混合物)からなる層等の他の層を積層させることもできる。
【0106】
本発明の赤外線反射性積層体は、太陽電池用バックシート、特に結晶シリコン型太陽電池用バックシートの他、自動車用内装材、建材、赤外線ヒータの色付き反射板などとして好適に使用できる。
【0107】
本発明の太陽電池用バックシートを使用した太陽電池モジュールは、通常、太陽光の受光面側から、ガラス等の透明基板、封止膜、太陽電池素子、封止膜および本発明の太陽電池用バックシートの順で構成される。このうち、透明基板、封止膜、太陽電池素子及び封止膜が太陽電池シリコンセルを構成する。
【0108】
透明基板としては、一般的にガラスが使用される。ガラスは透明性および耐候性に優れるが、耐衝撃性が低く、重いため、一般住宅の屋根に載せる太陽電池の場合には、耐候性の透明樹脂も好ましく使用される。透明樹脂としては、フッ素系樹脂フィルムが挙げられる。透明基板の厚さは、ガラスを使用した場合は、通常3〜5mm、透明樹脂を使用した場合は、通常0.2〜0.6mmである。
【0109】
封止膜としては、オレフィン系樹脂が使用される。ここでオレフィン系樹脂とは、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン等のオレフィン、または、ジオレフィンを重合若しくは共重合した重合体の総称であり、エチレンとビニルアセテート、アクリル酸エステルなど他のモノマーとの共重合体やアイオノマーなども含む。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/ビニルアセテート共重合体(EVA)、エチレン/ビニルアルコール共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン等が挙げられ、そのうち、EVAが広く用いられている。EVAは、粘着剤や接着剤として塗工される場合や、シート状で使われる場合があるが、シート状で熱圧着して使われることが一般的である。シート状で使われる場合の厚みは、通常0.2〜5.0mmである。
【0110】
太陽電池素子としては、公知のシリコンが使用できる。シリコンとしては、アモルファスシリコンであっても、単結晶シリコンであっても多結晶シリコンであってもよく、好ましくは多結晶シリコンである。これは、以下の理由による。アモルファスシリコンと多結晶シリコンとの太陽光スペクトルの感度帯域を比較すると、アモルファスシリコンは可視光側に感度帯域が存在するのに対し、多結晶シリコンは赤外線側に感度帯域が存在する。太陽光のエネルギー分布は、紫外線領域が約3%、可視光線領域が約47%、赤外線領域が約50%であり、赤外線領域のエネルギー割合が大きい。そのため、低蓄熱性であるだけでなく赤外線反射特性を有する本発明の太陽電池用バックシートと、太陽電池素子として多結晶シリコンとを組合せて使用することにより、発電効率が更に向上する。
【0111】
上記の太陽電池モジュールの構成単位は、接着剤を使用して接合してもよい。接着剤としては、公知の接着剤が使用でき、例えば、ブチルゴム系接着剤、シリコーン系接着剤、EPDM系接着剤などが挙げられる。
【実施例】
【0112】
以下に、例を挙げて、本発明をさらに実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、下記実施例に限定されるものではない。尚、実施例及び比較例において、部及び%は特に断らない限り質量基準である。
【0113】
1.評価方法
下記の実施例及び比較例における、各種評価項目の測定方法を以下に示す。
【0114】
1−1.熱可塑性樹脂(I)及び(II)のゴム含有率
原料仕込み時の組成から計算した。
【0115】
1−2.N−フェニルマレイミド単位含有率
原料仕込み時の組成から計算した。
【0116】
1−3.ガラス転移温度(Tg)
JIS K 7121に準拠して、示差走査熱量計DSC2910型(商品名;TA Instruments社製)を用いて測定した。
【0117】
1−4.層(A)単独の波長800〜1400nmの光の吸収率(%)
Tダイで表3記載の厚さの層(A)を単独で製膜後、その試験片(50mm×50mm)を用い、日本分光社製V−670により測定した。波長範囲は200〜2700nmであった。800〜1400nmの波長範囲における透過率及び反射率を測定し、吸収率を次式に基づいて求めた。
【0118】
【数1】

【0119】
1−5.層(C)単独の波長400〜1400nmの光の反射率(%)
Tダイで表3記載の厚さの層(C)を単独で製膜後、その試験片(50mm×50mm)を用い、日本分光社製V−670により測定した。波長範囲は200〜2700nmであった。400〜1400nmの波長範囲における反射率を測定した。
【0120】
1−6.L値
単層のL値は、50mm×50mm×100μの試験片を用い、東洋精機製分光光度計TCS−IIにより測定した。積層体のL値は、得られた積層体の各表面を上記分光光度計により測定した。
【0121】
1−7.層(B)単独の150℃30分後の寸法変化率(%)
Tダイで表3記載の厚さの層(B)を単独で製膜後、100mm(MD:Tダイからの樹脂押出方向)×100mm(TD:MDに対して直交方向)の試験片の表面中央に50mm(MD)×50mm(TD)の正方形を描き、150℃恒温槽中に30分間加熱放置し、その後取り出して試験片のMD及びTD方向の各辺の寸法変化を測定した。加熱後の長さは上記正方形のMD及びTD方向の各辺の長さの測定値の平均とした。収縮率(s)は、測定した加熱前後の寸法から次式に基づいて求めた。
【0122】
【数2】

【0123】
尚、下記収縮率(s)は、加熱後に試験片が収縮すると負の値に、加熱後に試験片が膨張すると正の値となる。
【0124】
1−8.可撓性(折り曲げ試験)
積層体から100mm(MD)×100mm(TD)の試験片を切り出し、MD方向の対称軸に沿って折り曲げ、その後TD方向の対称軸に沿って折り曲げた。折り曲げた試験片を、JIS Z0237に準拠し、手動式圧着ロール(2000g)を用い、5mm/秒の速度で、各折り目上を2往復させた。その後、折り目をひろげて元の状態に戻し、試験片の状態を目視にて観察した。以下に判断基準を示した。試験結果で折り目が割れていなものが、可撓性に優れる。
【0125】
◎ : 折り目が割れておらず、再度、折り曲げて、ひろげても、折り目が割れていない。
○ : 折り目が割れていないが、再度、折り曲げて、ひろげたら、折り目が割れている。
× : 折り目が割れている。
【0126】
1−9.耐加水分解性(プレッシャークッカー試験)
1−9−1.破断応力の保持
積層体から150mm(MD)×15mm(TD)の試験片を切り出し、温度120℃、湿度100%の条件下で100又は200時間放置した後、AG2000引張試験器(島津製作所製)を用い、JIS K 7127に準拠して試験片の破断応力を測定した。サンプルセット時のチャック間距離は100mm、引張速度は300mm/分であった。得られた破断応力の測定値から、下記式により破断応力の保持率を求めた。
【0127】
【数3】

【0128】
求めた破断応力の保持率から、以下の判断基準にしたがって、耐加水分解性を評価した。保持率が高いほど、耐加水分解性に優れる。
【0129】
○ : 破断応力の保持率が80%を超える。
△ : 破断応力の保持率が50〜80%。
× : 破断応力の保持率が50%未満。
【0130】
1−9−2.伸びの保持
上記1−9−1の測定と同時に破断伸びを測定した。得られた伸びの測定値から、下記式により、伸びの保持率を求めた。
【0131】
【数4】

【0132】
求めた伸びの保持率から、以下の判断基準にしたがって、耐加水分解性を評価した。保持率が高いほど、耐加水分解性に優れる。
○ : 伸びの保持率が80%を超える。
△ : 伸びの保持率が50〜80%。
× : 伸びの保持率が50%未満。
【0133】
1−10.変換効率向上率
温度25℃±2℃、湿度50±5%RHに調節された室において、Peccell社製Solar Simulator PEC−11を用い、予めセル単体の変換効率を測定した1/4多結晶シリコンセルの表面に厚み3mmのガラスを、裏面に積層体を挟み、シリコンセルをEVAで封止しモジュールを作成した後、変換効率を測定した。なお、温度の影響を低減させるために、光を照射後、すぐに変換効率を測定した。変換効率の向上率は、次式により求めた。上記変換効率の向上率が高くなると、太陽電池の発電効率が向上する。
【0134】
【数5】

【0135】
1−11.蓄熱性
温度25℃±2℃、湿度50±5%RHに調節された室において、80mm×50mm(厚さは表3に記載)の積層体試験片の表面(層(A)側の表面)に、高さ200mmから赤外線ランプ(出力100W)を照射して、60分後の試験片の表面温度を、表面温度計を用いて測定した。単位は℃である。
【0136】
1−12.耐候性
積層体から50mm(MD)×30mm(TD)の試験片を切り出し、メタリングウェザーメーターMV3000(スガ試験機製)を用い、以下に示すステップ1〜4の条件を繰り返して暴露試験を行い、暴露前と暴露100時間後の色調変化値△Eを算出した。なお、積層体の層(A)側の表面を暴露した。
【0137】
ステップ1:照射 0.53kW/m,63℃,50%RH,4時間
ステップ2:照射+降雨 0.53kW/m,63℃,95%RH,1分
ステップ3:暗黒 0kW/m,30℃,98%RH,4時間
ステップ4:照射+降雨 0.53kW/m,63℃,95%RH,1分
【0138】
△Eは、スペクトロフォトメーターV670(日本分光製)を用いてLab(L:明度、a:赤色度、b:黄色度)を測定し、次式により算出した。
【0139】
【数6】

【0140】
式中、L、a、bは暴露前の値を、L、a、bは暴露後の値を示す。△Eの値は、小さい方が色の変化が小さく、耐候性が優れていることを示す。評価基準は以下の通りである。
【0141】
○ : △Eが10以下である。
× : △Eが10を超える。
【0142】
1−13.難燃性
縦長に吊した試験片(幅20mm×長さ100mm)の下端を、UL94のVテスト用のバーナーを用い、バーナー先端から試験片まで10mm離した状態で、5秒間接炎した。接炎終了後、試験片の接炎部分の燃焼状態を目視で観察し、下記基準で評価した。
○:着火なし。
×:着火あり。
【0143】
1−14.耐傷性
東測精密工業株式会社製 往復動摩擦試験器を用いて、綿帆布かなきん3号、垂直荷重500gで試験片表面を500往復摩擦後、該表面を目視で観察し、下記基準で評価した。
○:傷が観察されない。
△:傷が僅かに観察される。
×:傷が明確に観察される。
【0144】
2.積層体の製造方法
2−1.使用原料
2−1−1.ブタジエンゴム強化スチレン系樹脂
[ブタジエン系グラフト共重合体(ア)の調製]
撹拌機を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水75部、ロジン酸カリウム0.5部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ポリブタジエンラテックス(平均粒子径:270nm、ゲル含率90%)32部(固形分換算)、スチレン−ブタジエン共重合ラテックス(スチレン含率25%、平均粒子径550nm)8部、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を入れ、窒素気流中で攪拌しながら昇温した。内温が45℃に達した時点でピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.2部をイオン交換水20部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始し、1時間重合させた。次いで、イオン交換水50部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、t−ドデシルメルカプタン0.05部及びクメンハイドロパーオキサイド0.01部を3時間かけて連続的に添加した。1時間重合させた後2,2´−メチレン−ビス(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し重合を完結させた。このラテックスに硫酸マグネシウムを添加し、樹脂成分を凝固させた。その後、水洗、更に乾燥することによりポリブタジエン系グラフト共重合体(ア)を得た。グラフト率は72%、アセトン可溶分の極限粘度[η]は0.47dl/gであった。
【0145】
2−1−2.シリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂
三菱レーヨン社製「メタブレン SX−006(商品名)」(樹脂改質剤、シリコーン・アクリル複合ゴムにアクリロニトリル−スチレン共重合体をグラフト、ゴム量50%、グラフト率80%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)0.38dl/g、ガラス転移温度(Tg)135℃)を用いた。
【0146】
2−1−3.シリコーン系ゴム強化スチレン系樹脂/アクリル系ゴム強化スチレン系樹脂混合物
[シリコーン系ゴム強化スチレン系樹脂(イ−1)の調製]
p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン1.3部およびオクタメチルシクロテトラシロキサン98.7部を混合し、これを、ドデシルベンゼンスルホン酸2.0部を溶解した蒸留水300部中に入れ、ホモジナイザーにより3分間攪拌して乳化分散させた。この混合液を、コンデンサー、窒素導入口および攪拌機を備えたセパラブルフラスコに移し、攪拌混合しながら、90℃で6時間加熱し、5℃で24時間保持し、縮合を完結させた。得られたポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体の縮合率は、93%であった。このラテックスを、炭酸ナトリウム水溶液でpH7に中和した。得られたポリオルガノシロキサン系ゴム質重合体ラテックスの平均粒径は0.3μmであった。
攪拌機を備えた内容積7リットルのガラス製フラスコに、イオン交換水100部、オレイン酸カリウム1.5部、水酸化カリウム0.01部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、前記ポリオルガノシロキサンラテックス40部(固形分換算)、スチレン15部、アクリロニトリル5部からなるバッチ重合成分を加え、攪拌しながら昇温した。温度が45℃に達した時点で、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・二水塩0.2部およびイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液、ならびにジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド0.1部を添加し、1時間反応を続けた。
その後、イオン交換水50部、オレイン酸カリウム1部、水酸化カリウム0.02部、t−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド0.2部およびスチレン30部、アクリロニトリル10部の単量体よりなるインクレメント重合成分の混合物を3時間にわたって連続的に添加し、反応を続けた。添加終了後、さらに攪拌しながら1時間反応を続けたのち、2,2−メチレン−ビス−(4−エチレン−6−t−ブチルフェノール)0.2部を添加し、重合体ラテックスを得た。さらに上記ラテックスに、硫酸1.5部を加えて、90℃で凝固させ、脱水、水洗、乾燥を行って、粉末状のシリコーン系ゴム強化スチレン系樹脂(イ−1)を得た。グラフト率は84%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.60dl/gであった。
【0147】
[アクリル系ゴム強化スチレン系樹脂(イ−2)の調製]
反応器に、アクリル酸n−ブチル99部と、アリルメタアクリレート1部とを乳化重合して得られたアクリル系ゴム質重合体(体積平均粒子径100nm及びゲル含率90%)を含む固形分濃度40%のラテックス50部(固形分換算)を入れ、更に、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部及びイオン交換水150部を入れて希釈した。その後、反応器内を窒素ガスで置換し、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム0.02部、硫酸第一鉄0.005部及びホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.3部を加え、撹枠しながら60℃まで昇温した。
一方、容器に、スチレン37.5部及びアクリロニトリル12.5部の混合物50部に、ターピノーレン1.0部及びクメンハイドロパーオキサイド0.2部を溶解し、その後、容器内を窒素ガスで置換し、単量体組成物を得た。
次いで、上記単量体組成物を、5時間かけて、一定流量で上記反応器に添加しながら70℃で重合を行い、ラテックスを得た。このラテックスに、硫酸マグネシウムを添加し、樹脂成分を凝固させた。その後、水洗、更に乾燥することによりアクリル系ゴム強化スチレン系樹脂(イ−2)を得た。グラフト率は93%、極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.30dl/gであった。
【0148】
2−1−4.スチレン−アクリロニトリル共重合体
テクノポリマー社製「SAN−H(商品名)」(AS樹脂)
【0149】
2−1−5.N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体
日本触媒社製「ポリイミレックス PAS1460(商品名)」(N−フェニルマレイミド−アクリロニトリル−スチレン共重合体、N−フェニルマレイミド単位含有率40%)
【0150】
2−1−6.ポリエチレンテレフタレート
三菱化学社製「ノバペックス GM700Z(商品名)」を使用した。ガラス転移温度(Tg)は、75℃であった。
【0151】
2−1−7.赤外線透過性有機黒色顔料(透過黒)
BASF社製「Lumogne Black FK4280(商品名)」
【0152】
2−1−8.カーボンブラック(黒)
三菱化学製「カーボンブラック#45(商品名)」
【0153】
2−1−9.酸化チタン(白)
石原産業株式会社製「タイペークCR−60−2(商品名)」
【0154】
2−2.層(A)(赤外線透過性着色樹脂層)
表1に記載の成分を表1に記載の割合でヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44、バレル温度270℃)で溶融混練し、ペレット化した。得られた組成物を上記評価方法に従い評価した。その結果を表1に示す。
【0155】
【表1】

【0156】
2−3.層(B)(基材層)
表2に記載の成分を表2に記載の割合でヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44、バレル温度270℃)で溶融混練し、ペレット化した。得られた組成物を上記評価方法に従い評価した。その結果を表2に示す。
【0157】
【表2】

【0158】
2−4.層(C)(赤外線反射性着色樹脂層)
表1に記載の成分を表1に記載の割合でヘンシェルミキサーにより混合した後、二軸押出機(日本製鋼所製、TEX44、バレル温度270℃)で溶融混練し、ペレット化した。得られた組成物を上記評価方法に従い評価した。その結果を表1に示す。
【0159】
2−5.層(D)(保護層)
下記の市販のPETフィルムを用いた。
(D−1):東レ株式会社製の膜厚50μmのPETフィルム「ルミラーX10S」(商品名)。
(D−2):帝人デュポンフィルム株式会社製の膜厚75μmのPETフィルム「Melinex238」(商品名)。
【0160】
3.積層体フィルムの製造
3−1.実施例1〜7、比較例1〜4
下記方法によりフィルムを製造した。
まず、Tダイ(ダイ幅;1400mm、リップ間隔;0.5mm)を備え、スクリュー径65mmの押出機3機を備えた多層フィルム成形機を用い、各押出機に上記ペレットを表3に示すように供給して、Tダイから、溶融温度270℃で樹脂を吐出させ、軟質フィルムとした。その後、この軟質フィルムをエアーナイフによりキャストロール(ロールの表面温度;95℃)に面密着させ、冷却固化しフィルムを得た。その際、押出機及びキャストロールの運転条件等を調整することで、フィルム全体の肉厚及び層(A)/層(B)/層(C)の各厚みが、表3に記載のようになるようにした。得られたフィルムの評価結果を表3に示した。
尚、フィルムの肉厚は、シックネスゲージ(型式「ID−C1112C、ミツトヨ社製)を用い、フィルム製造開始から1時間経過後のフィルムを切り取り、フィルム幅方向の中心、及び、中心より両端に向けて、10mm間隔で肉厚を測定し、その平均値とした。フィルムの端部から20mmの範囲にある測定点の値は、上記平均値の計算から除去した。
【0161】
【表3】

【0162】
表3より、以下のことが明らかである。本発明の層(A)、層(B)及び層(C)を備える積層体である実施例1〜7は、可撓性に優れ、表面が着色樹脂からなるにもかかわらず、赤外線透過性が良好で、蓄熱性が低く、耐熱性にも優れ、発電効率を向上させた。また、層(A)、層(B)及び層(C)の全てにシリコーン・アクリル複合ゴム強化スチレン系樹脂またはシリコーン系ゴム強化スチレン系樹脂とアクリル系ゴム強化スチレン系樹脂の混合物を使用した実施例1〜5は、さらに、耐候性及び耐加水分解性に優れていた。
【0163】
比較例1は層(A)の赤外線透過性着色剤の代わりに赤外線吸収性のカーボンブラックを使用したものであるが、蓄熱性が高く、発電効率に劣る。比較例2は本発明の層(B)を欠いたものであり、耐熱性に劣る。比較例3は、本発明の層(B)に顔料として酸化チタンを含有させて単層で使用したものであるが、可撓性に劣る。比較例4は、層(B)が本発明の耐熱性の要件を充足しないものであり、耐熱性に劣る。
【0164】
3−2.実施例8及び9
実施例2で得られたフィルムの層(C)の外表面に表4のPETフィルムをポリウレタン系の接着剤(塗布厚さ:8μm)を用いて貼り付けた。得られたフィルムおよび実施例2で得られたフィルムを試験片として用い、上記の方法に従い難燃性と耐傷性を評価した。その結果を表4に示した。
【0165】
【表4】

【0166】
表4から、本発明の積層体に保護層を積層することにより、耐傷性及び難燃性が付与される好ましいことがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0167】
本発明の赤外線反射性積層体は、着色された樹脂表面を備えながら、赤外線を反射して蓄熱を防止する特性を有し、かつ、耐熱性に優れ、さらには、耐候性、耐加水分解性及び可撓性にも優れたものとすることもできるので、太陽光に曝される過酷な環境下で使用される太陽電池用バックシートや、その他、高温下の過酷な環境下で赤外線反射性が要求される部品の素材として利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層である下記層(B)と、
該層(B)の一方の側に積層された下記層(A)と、
該層(B)の他方の側に積層された下記層(C)と、
を備えてなる赤外線反射性積層体。
層(A):波長800〜1400nmの光の吸収率が10%以下の着色樹脂層、
層(B):150℃で30分間放置したときの寸法変化率(s)が1%≧s≧−1%を満たす熱可塑性樹脂層、
層(C):ZnO、TiO、Al・nHO、[ZnS+BaSO]、CaSO・2HO、BaSO、CaCO、及びPbCO・Pb(OH)からなる群より選ばれた1種又は2種以上の白色顔料を含有する樹脂からなり、波長400〜1400nmの光の反射率が50%以上である着色樹脂層。
【請求項2】
前記積層体の層(A)側の表面のL値(明度)が40以下で、前記積層体の層(C)側の表面のL値(明度)が70以上である請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記層(A)が赤外線透過性着色剤を含有する樹脂からなる請求項2に記載の積層体。
【請求項4】
前記層(C)が、前記白色顔料を、前記層(C)を構成する樹脂成分100質量部に対して1〜40質量部含有する請求項1に記載の積層体。
【請求項5】
前記層(B)がガラス転移温度120℃以上の熱可塑性樹脂(I)からなり、前記層(A)及び前記層(C)は該熱可塑性樹脂(I)よりも低いガラス転移温度を有する熱可塑性樹脂(II)からなる請求項1に記載の積層体。
【請求項6】
上記熱可塑性樹脂(II)が、ゴム質重合体(a)の存在下に芳香族ビニル化合物及び所望により該芳香族ビニル化合物と共重合可能な他の単量体からなるビニル系単量体(b)を重合させてなるゴム強化スチレン系樹脂(II−1−1)、及び、所望によりビニル系単量体(b)の(共)重合体(II−1−2)を含有するスチレン系樹脂(II-1)であって、該スチレン系樹脂(II-1)100質量部に対する、該ゴム質重合体(a)の含有量が5〜40質量部である請求項5に記載の積層体。
【請求項7】
上記ゴム質重合体(a)が、エチレン−α−オレフィン系ゴム、水添共役ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム及びシリコーン・アクリル複合ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項6に記載の積層体。
【請求項8】
上記スチレン系樹脂(II-1)を構成するビニル系単量体(b)がマレイミド系化合物単位を含んでなり、該スチレン系樹脂(II-1)100質量%に対する、該マレイミド系化合物単位の含有量が1〜30質量%である請求項7に記載の積層体。
【請求項9】
上記熱可塑性樹脂(I)が、ゴム質重合体(i)の存在下にビニル系単量体(ii)を重合させてなるゴム強化ビニル系樹脂(I−1)、及び、所望によりビニル系単量体(ii)の(共)重合体(I−2)を含有するビニル系樹脂(I’)であり、該熱可塑性樹脂(I)100質量部に対する、該ゴム質重合体(i)の含有量が5〜40質量部である請求項5に記載の積層体。
【請求項10】
上記ゴム質重合体(i)が、エチレン−α−オレフィン系ゴム、水添共役ジエン系ゴム、アクリル系ゴム、シリコーン系ゴム及びシリコーン・アクリル複合ゴムからなる群より選ばれた少なくとも1種である請求項9に記載の積層体。
【請求項11】
上記熱可塑性樹脂(I)を構成するビニル系単量体(ii)がマレイミド系化合物単位を含んでなり、該熱可塑性樹脂(I)100質量%に対する、該マレイミド系化合物単位の含有量が1〜30質量%である請求項10に記載の積層体。
【請求項12】
上記熱可塑性樹脂(I)のガラス転移温度(Tg(I))が120〜220℃であり、上記熱可塑性樹脂(II)のガラス転移温度(Tg(II))が、下記式を満足する請求項5乃至11のいずれか一項に記載の積層体。
(Tg(I)−Tg(II)) ≧ 10℃
【請求項13】
前記層(A)の外表面または前記層(C)の外表面に保護層(D)を備えてなる請求項1に記載の積層体。
【請求項14】
請求項1に記載の積層体からなる太陽電池用バックシート。
【請求項15】
請求項13の太陽電池用バックシートを含んでなる太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2013−63659(P2013−63659A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−242578(P2012−242578)
【出願日】平成24年11月2日(2012.11.2)
【分割の表示】特願2008−273547(P2008−273547)の分割
【原出願日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【出願人】(396021575)テクノポリマー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】