説明

赤外線反射性複合黒色顔料、該赤外線反射性複合黒色顔料を用いた塗料及び樹脂組成物

【課題】本発明は、有害な元素を含有しない赤外線反射性複合黒色顔料であって、黒色顔料の粒子表面に有機顔料が付着し、優れた赤外線反射性を有すると共に塗料安定性に優れる赤外線反射性複合黒色顔料を提供する。
【解決手段】FeとCoを含有し、更に、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属元素を含有する複合酸化物からなる黒色顔料の表面を表面処理剤で被覆し得られる複合黒色顔料であって、該黒色顔料の粒子表面に1〜50wt%の有機顔料が付着されている黒色顔料であり、該黒色顔料の平均粒子径が0.02〜2.0μmであることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料及びそれらを用いた塗料並びに樹脂組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な元素を含有せず、しかも、優れた赤外線反射性を有する熱遮蔽性塗料を得ることができる赤外線反射性複合黒色顔料に関し、特に黒色顔料の粒子表面に有機顔料が付着している赤外線反射性複合黒色顔料に関する。
【背景技術】
【0002】
屋外で用いられている道路、建築物、備蓄タンク、自動車、船舶等は、太陽の日射によって内部温度が上昇するため、建築物及び自動車等の外観塗装を白色から淡色にすることで太陽光を反射させ、ある程度の熱遮蔽効果を高めることが行われている。
【0003】
しかしながら、殊に、屋外建築物の屋根などは、汚れを目立たなくするために、濃彩色から黒色を呈している場合が多く、外観塗装が濃彩色から黒色を有する建築物及び自動車等の場合には、淡色から白色の外観塗装を有する建築物及び自動車等に比べて太陽光を吸収しやすく、屋内の温度が著しく上昇する傾向にある。物品の輸送、保存に当たって、内部が高温になることは好ましいものではない。
【0004】
そこで、地球温暖化防止のためのエネルギー節約という観点からも、濃彩色から黒色の外観を有する建築物及び自動車等の内部温度の上昇を抑制することが強く望まれている。
【0005】
従来より、粒子表面に有機青色顔料を付着した複合酸化鉄顔料は知られている(特許文献1、2参照)。
【0006】
また、本発明者らは、有害な元素を含有せず、しかも優れた赤外線反射性を有する赤外線反射性黒色顔料を開発し、既に特許出願を行っている(特許文献3及び4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−188021号公報
【特許文献2】特開2007−262237号公報
【特許文献3】特開2007−197570号公報
【特許文献4】特開2006−249411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の通り有害な元素を含有せず、しかも優れた赤外線反射性を有する黒色顔料としていくつかの黒色顔料が開発されているものの、これら顔料も必ずしも十分とは言えず、さらなる改良が求められている。これは黒色顔料のみならず灰色がかった黒灰色顔料にも当てはまる。
【0009】
特許文献1には、粒子表面に有機青色顔料を付着した複合酸化鉄顔料が記載されているが、十分な遮熱効果を有するとは言い難いものであった。
【0010】
また、特許文献2には、粒子表面に3色以上の有機顔料が付着している複合粒子粉末が記載されているが、十分な黒色度を有するとは言い難いものであった。
【0011】
また、特許文献3記載の黒色顔料は、FeとCoとAlを含有し、更に、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属元素を含有する複合酸化物からなる黒色顔料であって、該黒色顔料の平均粒子径が0.02〜2.0μmである赤外線反射性黒色顔料であり、有害な元素を含有せず、しかも優れた赤外線反射性を有する。しかしながら、可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が十分とは言えず屋外晴天時における黒色度が十分とはいえない。
【0012】
また、特許文献4記載の黒色顔料は、FeとCoを含有し、更に、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn及びCuから選ばれる一種以上の金属元素を含有する複合酸化物からなる黒色顔料であって、該黒色顔料の平均粒子径が0.02〜5.0μmである赤外線反射性黒色顔料であり、有害な元素を含有せず、しかも優れた赤外線反射性を有する。しかしながら、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が十分とは言えない。
【0013】
本発明の目的は、有害な元素を含有しない黒色顔料であって、黒色顔料の粒子表面に有機顔料が付着し、優れた赤外線反射性を有すると共に塗料安定性に優れる赤外線反射性複合黒色顔料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記目的は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0015】
即ち、本発明は、FeとCoを含有し、更に、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属元素を含有する複合酸化物からなる黒色顔料の表面を表面処理剤で被覆し、該表面処理剤で被覆した黒色顔料の粒子表面に1〜50重量%の有機顔料が付着されている複合黒色顔料であり、且つ、該複合黒色顔料の平均粒子径が0.02〜2.0μmであることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料である(本発明1)。
【0016】
また、本発明は、本発明1記載の赤外線反射性複合黒色顔料の表面が、Si、Al、Zr、Ti、Zn、Pから選ばれる一種以上の化合物又は/及び有機系表面処理剤であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料である(本発明2)。
【0017】
また、本発明は、本発明1記載の有機顔料が青色系有機顔料、緑色系有機顔料、赤色系有機顔料、黄色系顔料から選ばれることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料である(本発明3)。
【0018】
また、本発明は、本発明1乃至3のいずれかに記載の赤外線反射性黒色顔料の黒色度(L)が24以下であり、a値が−2〜+1であり、b値が−2〜+2であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料である(本発明4)。
【0019】
また、本発明は、本発明1乃至4のいずれかに記載の赤外線反射性複合黒色顔料の可視光領域波長250〜780nmにおける日射反射率が5%以下であり、且つ、赤外線領域波長780〜2500nmにおける日射反射率が40%以上であり、且つ、全範囲領域波長250〜2500nmにおける日射反射率が20%以上であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料である(本発明5)。
【0020】
また、本発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色顔料を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする塗料である(本発明6)。
【0021】
また、本発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の赤外線反射性複合黒色顔料を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物である(本発明7)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料は、有害な元素を含有しない黒色顔料であって、黒色顔料の粒子表面に有機顔料が付着し、優れた赤外線反射性を有すると共に塗料安定性に優れているので赤外線反射性黒色顔料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0024】
先ず、本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料について述べる。
【0025】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料は、FeとCoを含有し、更に、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属元素を含有する複合酸化物を芯粒子とし、該芯粒子の表面を表面処理剤で被覆し、当該表面処理剤で被覆した芯粒子の粒子表面に有機顔料を付着させた複合黒色顔料であって、芯粒子を構成する複合酸化物に対し、表面処理剤の被覆量は、0.1〜10重量%である。
【0026】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料中のFeの含有割合は、黒色顔料中の全金属元素に対して、10〜90重量%が好ましい。本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料中のCoの含有割合は、黒色顔料中の全金属元素に対して、0.5〜40重量%が好ましい。本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料中のAl、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属元素の含有量割合は、黒色顔料中の全金属元素に対して、0〜70重量%が好ましい。
【0027】
また、表面処理剤の被覆量は芯粒子に対して0.1〜10重量%が好ましい。被覆量が芯粒子に対して0.1重量%未満では、芯粒子を十分に被覆することができず、顔料の耐薬品性、特に耐酸性が不十分となる。一方、被覆量が芯粒子に対して10重量%を超えると、耐薬品性効果が飽和するため、必要以上に被覆することは不経済である。
【0028】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料の平均粒子径は、0.02〜2.0μmが好ましい。黒色顔料の平均粒子径が2.0μmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため、着色力が低下する。平均粒子径が0.02μm未満の場合には、ビヒクル中への分散が困難となる場合がある。より好ましくは0.025〜2.0μm、更により好ましくは0.04〜2.0μmである。
【0029】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料のBET比表面積は、1〜100m/gが好ましい。BET比表面積が1m/g未満の場合には、粒子が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、着色力が低下する。一方、BET比表面積が100m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、粒子表面への表面処理剤による均一な被覆処理が困難となる。より好ましくは1.5〜75m/g、更により好ましくは1.8〜65m/gである。
【0030】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料の黒色度(L)は、24以下が好ましい。明度(L)が前記範囲外の場合には、黒色顔料とは言い難い。
【0031】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料のaは、−2〜+1が好ましい。aが前記範囲外の場合には、黒色顔料とは言い難い。より好ましくは−1〜+1である。
【0032】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料のbは、−2〜+2が好ましい。bが前記範囲外の場合には、黒色顔料とは言い難い。より好ましくは−2〜+1である。
【0033】
また本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料の赤外線反射性は、ラッカー色見本塗膜をJIS R 3106に従い測定したときの日射反射率が20%以上であることが好ましく、より好ましくは24%以上である。日射反射率が20%未満では、日射反射率が十分に高いとは言えない。
【0034】
また本発明に係る赤外線反射性複合顔料の可視光領域波長250〜780nmにおける日射反射率は、5%以下であることが好ましい。5%を超える場合は、可視光領域波長における日射反射率が十分とはいえず、屋外晴天時における黒色度が十分とはいえない。
【0035】
また本発明に係る赤外線反射性複合顔料の赤外線領域波長780〜2500nmにおける日射反射率は、40%以上であることが好ましい。40%未満の場合は、赤外線領域波長における日射反射率が十分とはいえない。
【0036】
芯粒子の形状は、特定の形状に限定されず、球状、粒状、八面体状、六面体状、多面体状等の粒状粒子、針状、紡錘状、米粒状等の針状粒子及び板状粒子等を使用することができる。得られる黒色顔料の分散性を考慮すれば、球状粒子又は粒状粒子が好ましい。
【0037】
本発明における黒色顔料の結晶構造は、スピネル型が好ましい。
【0038】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料の粒子形状や粒子サイズは、芯粒子の粒子形状や粒子サイズに大きく依存し、芯粒子に相似する粒子形態を有し、芯粒子よりも若干大きな粒子サイズを有している。
【0039】
また、芯粒子における全金属元素量とは、芯粒子である複合酸化物に対する全金属元素量であり、芯粒子における全金属元素量は50〜80重量%が好ましく、好ましくは55〜80重量%、更により好ましくは55〜75重量%である。
【0040】
芯粒子のBET比表面積は、1〜200m/g、好ましくは1.5〜150m/g、より好ましくは2.0〜100m/gである。BET比表面積が1m/g未満の場合には、芯粒子が粗大であったり、粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、得られる顔料もまた粗大粒子となり、着色力が低下する。BET比表面積が200m/gを超える場合には、粒子の微細化による分子間力の増大により凝集を起こしやすいため、芯粒子表面への表面処理剤による均一な被覆処理が困難となる。
【0041】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料において、芯粒子を被覆する表面処理剤は、Si、Al、Zr、Ti、Zn、Pから選ばれる1種以上の化合物又は/及び有機系表面処理剤を使用することができる。
【0042】
Si、Al、Zr、Ti、Zn、Pから選ばれる1種以上の化合物としては、アルミニウム化合物として、酢酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等のアルミニウム塩や、アルミン酸ナトリウム等のアルミン酸アルカリ塩等が挙げられる。ケイ素化合物として、3号水ガラス、オルトケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等が挙げられる。
【0043】
有機系表面処理剤としては、ステアリン酸又はその塩、ロジン、アルコキシシラン、フルオロアルキルシラン、シラン系カップリング剤及びオルガノポリシロキサン等の有機ケイ素化合物、チタネート系、アルミネート系及びジルコネート系などのカップリング剤、低分子あるいは高分子界面活性剤、リン酸化合物等が挙げられる。
【0044】
有機ケイ素化合物としては、具体的には、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン及びデシルトリエトキシシラン等のアルコキシシラン、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン、トルフルオロプロピルトリエトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリエトキシシラン及びトリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等のシラン系カップリング剤、ポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、変性ポリシロキサン等のオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
チタネート系カップリング剤としては、イソプロピルトリステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N−アミノエチル・アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスフェイト)チタネート、テトラ(2−2−ジアリルオキシメチル−1−ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスフェイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート等が挙げられる。
【0046】
アルミネート系カップリング剤としては、アセトアルコキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムジイソプロボキシモノエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0047】
ジルコネート系カップリング剤としては、ジルコニウムテトラキスアセチルアセトネート、ジルコニウムジブトキシビスアセチルアセトネート、ジルコニウムテトラキスエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシモノエチルアセトアセテート、ジルコニウムトリブトキシアセチルアセトネート等が挙げられる。
【0048】
低分子系界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、ジオクチルスルホンコハク酸塩、アルキルアミン酢酸塩、アルキル脂肪酸塩等が挙げられる。高分子系界面活性剤としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸塩、カルボキシメチルセルロース、アクリル酸−マレイン酸塩コポリマー、オレフィン−マレイン酸塩コポリマー等が挙げられる。
【0049】
本発明における有機顔料としては、一般に、塗料、樹脂組成物及びゴム組成物の着色剤として用いられている青色系有機顔料、緑色系有機顔料、赤色系有機顔料、黄色系有機顔料の各種有機顔料を使用することができる。また複数の色の有機顔料を混合して使用することができ、青色系有機顔料、緑色系有機顔料は、単独で用いることができ、赤色系有機顔料、黄色系有機顔料は、青色系有機顔料、緑色系有機顔料と併用して用いることができる。
【0050】
有機顔料の添加量は、芯粒子に対して1〜50重量%である。好ましくは2〜40重量%であり、より好ましくは3〜30重量%である。添加量が50重量%を超えると黒色度が十分とはいえない。
【0051】
各種有機顔料の中で、青色系有機顔料としては、無金属フタロシアニンブルー、フタロシアニンブルー、ファストスカイブルー等のフタロシアニン系顔料、インダンスロンブルー、インジゴブルー等の縮合多環系顔料及びアルカリブルーを用いることができる。緑色系有機顔料としては、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系の顔料を用いることができる。赤色系有機顔料としては、ブリリアントカーミン、パーマネントレッド等のアゾ系顔料、縮合アゾレッド等の縮合アゾ顔料及びジアミノアントラキノニルレッド、キナクリドンレッド、チオインジゴレッド、チオインジゴレッド、ペリレンレッド、ペリノンレッド、イソインドリンレッド、ジケトピロロピロールレッド等の縮合多環系顔料、リソールルビンBCA等を用いることができる。黄色系顔料としては、ハンザエロー等のモノアゾ系顔料、ベンジジンエロー、パーマネントエロー等のジスアゾ系顔料、縮合アゾイエロー等の縮合アゾ顔料、及びアントラピリミジンイエロー、イソインドリノンイエロー、イソインドリンイエロー、キノフタロンイエロー等の縮合多環系顔料を用いることができる。本発明に用いられる有機顔料としては、以上に例示した顔料に限られるものではない。
【0052】
次に、本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料の製造法について述べる。
【0053】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料は、予め作製した黒色顔料に表面処理剤の被覆処理を行った後、次いで、有機顔料の付着処理を行って得ることができる。
【0054】
本発明における黒色顔料(芯粒子)は、各種原料を混合、焼成して得ることができる。
【0055】
出発原料は、前記各金属元素の酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩などを用いることができる。
【0056】
出発原料の混合は、均一に混合することができれば、特に限定されるものではなく、湿式混合でも乾式混合でもよい。
【0057】
加熱焼成温度は700〜1200℃好ましく、750〜1100℃がより好ましい。加熱雰囲気は大気中である。
【0058】
加熱後の粉末は、常法に従って、水洗、粉砕を行えばよい。
【0059】
芯粒子表面への表面処理剤の被覆は、乾式又は湿式方法等の常法に従って行えばよい。乾式処理の場合、芯粒子と表面処理剤とを機械的に混合撹拌したり、芯粒子に表面処理剤を噴霧しながら機械的に混合撹拌すればよい。添加した表面処理剤は、ほぼその全量が芯粒子の粒子表面に被覆される。
【0060】
表面処理剤を均一に芯粒子の表面に被覆するためには、芯粒子の凝集をあらかじめ粉砕機を用いて解きほぐしておくことが好ましい。
【0061】
芯粒子と表面処理剤との混合撹拌に使用する機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることが好ましい。ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0062】
前記ホイール型混練機としては、エッジランナー(「ミックスマラー」、「シンプソンミル」、「サンドミル」と同義語である)、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、コナーミル、リングマラー等があり、好ましくはエッジランナー、マルチマル、ストッツミル、ウエットパンミル、リングマラーであり、より好ましくはエッジランナーである。前記ボール型混練機としては、振動ミルがある。前記ブレード型混練機としては、ヘンシェルミキサー、プラネタリーミキサー、ナウタミキサーがある。前記ロール型混練機としては、エクストルーダーがある。
【0063】
芯粒子と表面処理剤との混合撹拌条件は、芯粒子の表面に表面処理剤ができるだけ均一に被覆されるように、適宜調整すればよく、線荷重は19.6〜1960N/cm(2〜200Kg/cm)が好ましく、より好ましくは98〜1470N/cm(10〜150Kg/cm)、最も好ましくは147〜980N/cm(15〜100Kg/cm)であり、処理時間は5分〜24時間が好ましく、より好ましくは10分〜20時間の範囲であり、撹拌速度は2〜2000rpmが好ましく、より好ましくは5〜1000rpm、最も好ましくは10〜800rpmの範囲である。
【0064】
例えば、シランカップリング剤をヘンシェルミキサーで乾式処理する場合、芯粒子、水、助剤、アルコールを低速度回転で1時間予備混合する。その後、高速度回転に調整し、130℃で1時間維持した後、水冷却し排出する。その後150℃で1時間加熱する。
【0065】
また、ステアリン酸亜鉛を乾式で表面処理する場合には、振動ミルで30分間処理し、その後、乾燥器で150℃の温度で乾燥させる。
【0066】
湿式方法は、湿式分散した芯粒子スラリーに、Si、Al、Zr、Ti、Zn、Pから選ばれる1種又は2種以上の可溶性化合物を、酸又はアルカリでpH調整しながら添加・混合して被覆すればよい。これにより芯粒子の表面を水酸化物又は酸化物で被覆することができる。有機系表面処理剤の場合、湿式分散した芯粒子スラリーに有機系表面処理剤を投入して被覆すればよい。
【0067】
例えば、芯粒子を純水中で撹拌しながら3号水ガラスと硫酸、水酸化ナトリウムをpHが6〜8になるように滴下添加し、80℃で1時間維持した後、水洗し乾燥する。さらにその後150℃の温度で1時間加熱すればよい。
【0068】
また2種以上の表面処理剤を使用する場合には、芯粒子を純水中で撹拌しながら、例えば硫酸ジルコニウムとアルミン酸ナトリウムと硫酸、水酸化ナトリウムをpHが6〜8になるように滴下添加し、80℃で1時間維持した後、水洗、ろ過乾燥する。さらにその後180℃の温度で1時間加熱すればよい。
【0069】
芯粒子粉末の粒子表面への表面処理剤による被覆は、芯粒子粉末と表面処理剤又は表面処理剤の溶液とを機械的に混合攪拌したり、芯粒子粉末に表面処理剤の溶液又は表面処理剤を噴霧しながら機械的に混合攪拌すればよい。
【0070】
本発明においては、芯粒子の粒子表面をSi、Al、Zr、Ti、Zn、Pから選ばれる1種以上の無機化合物で被覆した後、更に有機系表面処理剤で被覆することが好ましい。被覆量は、Si、Al、Zr、Ti、Zn、Pから選ばれる1種以上の化合物と有機系表面処理剤との合計量で0.1〜10重量%が好ましい。
【0071】
有機顔料と粒子表面に表面処理剤が被覆されている芯粒子粉末との混合攪拌をするための機器としては、粉体層にせん断力を加えることのできる装置が好ましく、殊に、せん断、へらなで及び圧縮が同時に行える装置、例えば、ホイール型混練機、ボール型混練機、ブレード型混練機、ロール型混練機を用いることができ、ホイール型混練機がより効果的に使用できる。
【0072】
芯粒子粉末の粒子表面に表面処理剤を被覆した後、有機顔料を添加し、混合攪拌して表面処理剤被覆芯粒子表面に有機顔料を付着させる。2種以上の有機顔料を用いる場合は、別々に添加してもよいし、予め混合しておいたものを添加してもよい。また、有機顔料は処理量にもよるが、少量ずつ時間をかけながら、殊に5分〜12時間、好ましくは5分〜10時間程度をかけて添加するか、分割して添加することが好ましい。
【0073】
本発明においては、芯粒子の粒子表面をSi、Al、Zr、Ti、Zn、Pから選ばれる1種以上の化合物で被覆した後、次いで、有機系表面処理剤と有機顔料とを添加して、付着処理を行なっても良い。
【0074】
表面処理剤被覆芯粒子表面に有機顔料を付着させた後、必要により更に、乾燥乃至加熱処理を行ってもよい。乾燥乃至加熱処理を行う場合の加熱温度は、通常40〜200℃が好ましく、より好ましくは50〜180℃であり、加熱時間は、10分〜6時間が好ましく、30分〜3時間がより好ましい。
【0075】
なお、表面処理剤としてアルコキシシラン及びフルオロアルキルシランを用いた場合には、これらの工程を経ることにより、最終的にはアルコキシシランから生成するオルガノシラン化合物又はフルオロアルキルシランから生成するフッ素含有オルガノシラン化合物となって被覆されている。その後、該芯粒子を80〜200℃の温度で加熱処理する。こ
【0076】
次に、本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料を配合した塗料について述べる。
【0077】
本発明に係る塗料中における赤外線反射性複合黒色顔料の配合割合は、塗料構成基材100重量部に対して0.5〜100重量部の範囲で使用することができ、塗料のハンドリング性を考慮すれば、好ましくは1.0〜100重量部である。
【0078】
塗料構成基材としては、樹脂、溶剤、必要により油脂、消泡剤、体質顔料、乾燥促進剤、界面活性剤、硬化促進剤、助剤等が配合される。
【0079】
樹脂としては、溶剤系塗料用や油性印刷インクに通常使用されているアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ガムロジン、ライムロジン等のロジン系樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン変性樹脂、石油樹脂等を用いることができる。水系塗料用としては、水系塗料用や水性インクに通常使用されている水溶性アクリル樹脂、水溶性スチレン−マレイン酸樹脂、水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性ウレタンエマルジョン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル樹脂等を用いることができる。
【0080】
溶剤としては、溶剤系塗料用に通常使用されている大豆油、トルエン、キシレン、シンナー、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット等の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0081】
水系塗料用溶剤としては、水と水系塗料用に通常使用されているエチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン等の水溶性有機溶剤とを混合して使用することができる。
【0082】
油脂としては、あまに油、きり油、オイチシカ油、サフラワー油等の乾性油を加工したボイル油を用いることができる。
【0083】
消泡剤としては、ノプコ8034(商品名)、SNデフォーマー477(商品名)、SNデフォーマー5013(商品名)、SNデフォーマー247(商品名)、SNデフォーマー382(商品名)(以上、いずれもサンノプコ株式会社製)、アンチホーム08(商品名)、エマルゲン903(商品名)(以上、いずれも花王株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0084】
体質顔料としては、TiO、ZnO、Al、CaCO、BaSO、SiO、Mg(OH)、ドロマイト、雲母、カオリン、タルク、ハイドロタルサイト等を使用することができる。
【0085】
次に、本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料を含有する樹脂組成物について述べる。
【0086】
本発明に係る樹脂組成物中における赤外線反射性複合黒色顔料の配合割合は、樹脂100重量部に対して0.01〜200重量部の範囲で使用することができ、樹脂組成物のハンドリング性を考慮すれば、好ましくは0.05〜150重量部、更に好ましくは0.1〜100重量部である。
【0087】
本発明に係る樹脂組成物における構成基材としては、赤外線反射性複合黒色顔料と周知の熱可塑性樹脂とともに、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0088】
樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・エステル、ロジン、天然ゴム、合成ゴム等を用いることができる。
【0089】
添加剤の量は、赤外線反射性複合黒色顔料と樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加剤の含有量が50重量%を超える場合には、成形性が低下する。
【0090】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂原料と赤外線反射性複合黒色顔料をあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、赤外線反射性複合黒色顔料の凝集体を破壊し、樹脂組成物中に赤外線反射性複合黒色顔料を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0091】
また本発明に係る樹脂組成物は、マスターバッチペレットを経由して得ることもできる。
【0092】
本発明におけるマスターバッチペレットは、塗料及び樹脂組成物の構成基材としての結合材樹脂と前記赤外線反射性複合黒色顔料とを必要により、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機で混合した後、周知の単軸混練押出機や二軸混練押出機等で混練、成形した後切断するか、又は、上記混合物をバンバリーミキサー、加圧ニーダー等で混練して得られた混練物を粉砕又は成形、切断することにより製造される。
【0093】
結合材樹脂と赤外線反射性複合黒色顔料の混練機への供給は、それぞれを所定比率で定量供給してもよいし、両者の混合物を供給してもよい。
【0094】
本発明におけるマスターバッチペレットは、平均長径1〜6mm、好ましくは2〜5mmの範囲である。平均短径は2〜5mm、好ましくは2.5〜4mmである。平均長径が1mm未満の場合には、ペレット製造時の作業性が悪く好ましくない。6mmを超える場合には、希釈用結合材樹脂の大きさとの違いが大きく、十分に分散させるのが困難となる。また、その形状は種々のものができ、不定形及び球形等の粒状、円柱形、フレーク状等にできる。
【0095】
本発明におけるマスターバッチペレットに使用する結合材樹脂としては、前記樹脂組成物用樹脂と同一の樹脂が使用できる。
【0096】
なお、マスターバッチペレット中の結合材樹脂の組成は、希釈用結合材樹脂と同一の樹脂を用いても、また、異なる樹脂を用いてもよいが、異なる樹脂を使用する場合には、樹脂同士の相溶性により決まる諸特性を考慮して決めればよい。
【0097】
マスターバッチペレット中に配合される赤外線反射性複合黒色顔料の量は、結合材樹脂100重量部に対して1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは1〜100重量部である。1重量部未満の場合には、混練時の溶融粘度が不足し、赤外線反射性複合黒色顔料の良好な分散混合が困難である。200重量部を超える場合には、赤外線反射性複合黒色顔料に対する結合材樹脂が少ないため、赤外線反射性複合黒色顔料の良好な分散混合が難しく、また、マスターバッチペレットの添加量のわずかな変化によって樹脂組成物中に配合される赤外線反射性複合黒色顔料の含有量が大きく変化するため所望の含有量に調製することが困難となり好ましくない。また、機械摩耗が激しく適当ではない。
【0098】
<作用>
本発明において最も重要な点は、本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料は、有害な元素を含有しない複合黒色顔料であって、優れた赤外線反射性を有するとともに熱遮蔽性塗料を得ることができ、塗料安定性に優れるという事実である。
【0099】
また、本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料は、Cr6+などの有害金属元素を含有しておらず、安全な顔料である。
【実施例】
【0100】
本発明の代表的な実施例は、次の通りである。
【0101】
粒子の平均粒子径は電子顕微鏡写真に示される粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0102】
比表面積は、BET法により測定した値で示した。
【0103】
赤外線反射性複合黒色顔料の金属元素含有量及び内部や表面に存在するSi量、Al量、Zr量、Ti及びZn量並びに有機系表面処理剤から生成するオルガノシラン化合物又はポリシロキサンに含有されているSi量のそれぞれは「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0104】
赤外線反射性複合黒色顔料の色相(L値、a値、b値)は、試料0.5gとヒマシ油0.5mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製した塗膜片について、「多光源分光測色計MSC−IS−2D」(スガ試験機株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z8729に定めるところに従って表色指数(L値、a値、b値)で示した。
【0105】
赤外線反射性複合黒色顔料の日射反射率は、上記の色相を測定するために作製した塗膜片について、「分光光度計 UV−3100PC」(株式会社島津製作所)を用い、JIS R3106に従い測定した。
【0106】
赤外線反射性複合黒色顔料の光沢度(GLOSS値)は、色判定、日射反射率を測定した色見本を、「デジタル変角光沢計UGV−5D」(スガ試験機株式会社製)を用いて60°−60°における値を示した。光沢度が高いほど、赤外線反射性複合黒色顔料を配合した塗料の分散性が優れていることを示す。
【0107】
赤外線反射性複合黒色顔料を含有する塗料の評価は、次の要領で行なった。
マヨネーズビン(内容積140ml)中に、ガラスビーズ90g、赤外線反射性複合黒色顔料10g、アミノアルキッド樹脂(クリヤー)16.0g、溶剤6.0g配合し、ペイントコンデイショナーで40分間分散後、更にアルミアルキッド樹脂(クリヤー)50g追加後、ペイントコンデイショナーで5分分散し、ガラスビーズと分離した。静置5時間後の塗料について、目視で分離状態を判定し、安定性を評価した。
【0108】
実施例1
CoO、Al、MgO、FeをCoOMgO(1−x)・n[(FeAl(1−y))](x=0.5、y=0.5、n=1)となるように計量、混合し、大気中1000℃で3時間焼成した。焼成品を粉砕し平均粒子径0.34μmの黒色顔料を得た。得られた黒色顔料の結晶構造はスピネル型であった。
【0109】
該黒色顔料を湿式攪拌しながら水ガラスと硫酸ジルコニウムをNaOH及びHSOを使用しながらpH6.5を維持しながら添加し、80℃で1時間熟成し水洗乾燥しSiO、ZrOの各1wt%ずつ表面被覆処理をした。次いで、該表面処理黒色顔料1800gとフタロシアニンブルー200gをヘンシェルミキサーでポリシロキサンをSi換算で1.0重量%添加し混合し、120℃で2時間維持し、更に180℃で1時間熱処理し、複合化した。
【0110】
得られた複合黒色顔料は、平均粒子径0.35μm、BET比表面積15m/gであった。また、可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が4.9%、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が45%、全領域波長250〜2500nmにおける平均反射率が27%であった。
【0111】
実施例2、比較例1〜8
種種の原料及び組成割合、複合化の熱処理温度を変化させた以外は、前記実施例1と同様にして複合黒色顔料を得た。尚、比較例1では、マンガン含有ヘマタイト(Mn含有量 16.5wt%、平均粒子径0.32μm)を用いた。比較例2では、マグネタイト(Fe、平均粒子径0.28μm)を用いた。比較例3では、二酸化チタン(TiO、平均粒子径0.25μm)を用いた。
【0112】
実施例3
FeSO・7HOとCoSO・7HO、MgSO・7HOをCoOMgO(1−x)・n[(FeAl(1−y))](x=0.5、y=1.0、n=1)となるように計量し、各種金属原料を水に溶かして混合溶液とする。次いで、混合溶液と18.55NのNaOH溶液をpH9.5を維持しながら混合し、90℃で3時間攪拌しながら熟成・成長反応を行った。更に冷却、洗浄、脱水、乾燥を経て、大気雰囲気中、900℃で3時間焼成した。焼成品を粉砕し平均粒子径0.06μmの黒色顔料を得た。
【0113】
次いで、得られた黒色顔料を実施例1の表面処理方法同様にSiO/Al各1wt%表面処理した。更に同様にフタロシアニングリーンーを30重量%混合複合化した。
【0114】
得られた複合黒色顔料は、平均粒子径0.07μm、BET比表面積24m/gであった。また、可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が4.6%、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が42%、全領域波長250〜2500nmにおける平均反射率が25%であった。
【0115】
実施例1〜3及び比較例1〜6の製造条件、得られた赤外線反射性複合黒色顔料の諸特性、塗料及び塗膜の特性を表1、表2に示した。
【0116】
【表1】

【0117】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0118】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料は、赤外線反射性に優れ、且つ耐酸性及び塗料安定性にも優れるので、赤外線反射性複合黒色顔料として好適である。また本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料を含有する樹脂組成物は、赤外線反射性に優れるので、樹脂組成物を公知の方法でシート又はフィルムとすることで、以下のような用途に利用することができる。
【0119】
本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料を含有する樹脂組成物から得られるシートは、黒色であるので農業用マルチシートに利用すれば、雑草の発生、育成を防止することが可能であり、さらに赤外線反射性に優れるので地面の温度上昇を抑えることが可能であり、黒色の農業用マルチシートとして好適に使用することができる。
【0120】
同様に、太陽電池のバックシートに好適に使用することができる。太陽電池モジュールは、複数の太陽電池素子の表裏面がカバー材料で保護されている。太陽電池素子の裏面を保護するバックシートは、電力変換効率の点から高い反射性を有し、意匠の点から黒色を有するバックシートが好ましい。さらに太陽電池素子は高温になるほど発電効率が低下する。本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料を含有する樹脂組成物から得られるシートは、太陽電池のバックシートとして必要な特性を十分に備え、太陽電池のバックシートとして好ましい。
【0121】
外部から内部を見えにくくするために着色されたフィルムが車両の窓ガラス等に貼付され使用されているが、これらフィルムには室内の温度を上昇させないことも求められている。本発明に係る赤外線反射性複合黒色顔料を含有する樹脂組成物から得られるフィルムは、黒色度に優れかつ赤外線反射性に優れるので、車両、建物の窓ガラスに貼付する着色フィルムとして好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
FeとCoを含有し、更に、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属元素を含有する複合酸化物からなる黒色顔料の表面を表面処理剤で被覆し、該表面処理剤で被覆した黒色顔料の粒子表面に1〜50重量%の有機顔料が付着されている複合黒色顔料であり、且つ、該複合黒色顔料の平均粒子径が0.02〜2.0μmであることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線反射性複合黒色顔料において、表面が、Si、Al、Zr、Ti、Zn、Pから選ばれる一種以上の化合物又は/及び有機系表面処理剤であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料。
【請求項3】
請求項1記載の有機顔料が青色系有機顔料、緑色系有機顔料、赤色系有機顔料、黄色系顔料から選ばれることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の赤外線反射性複合黒色顔料の黒色度(L)が24以下であり、a値が−2〜+1であり、b値が−2〜+2であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の赤外線反射性複合黒色顔料の可視光領域波長250〜780nmにおける日射反射率が5%以下であり、且つ、赤外線領域波長780〜2500nmにおける日射反射率が40%以上であり、且つ、全範囲領域波長250〜2500nmにおける日射反射率が20%以上であることを特徴とする赤外線反射性複合黒色顔料。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の赤外線反射性複合黒色顔料を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする塗料。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の赤外線反射性複合黒色顔料を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物。


【公開番号】特開2011−37939(P2011−37939A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−184337(P2009−184337)
【出願日】平成21年8月7日(2009.8.7)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】