説明

赤外線反射用黒色顔料、該赤外線反射用顔料を用いた塗料及び樹脂組成物

【課題】 本発明は、有害な元素を含有せず、しかも、優れた赤外線反射性を有する熱遮蔽性塗料を得ることができる赤外線反射用黒色顔料を提供する。
【解決手段】 FeとCoとAlを含有し、更に、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属を含有する複合酸化物からなる黒色顔料であって、該黒色顔料の平均粒子径が0.02〜2.0μmである赤外線反射用黒色顔料であって、可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が10%以下であり、且つ、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%以上である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、有害な元素を含有せず、しかも、優れた赤外線反射性を有する熱遮蔽性塗料を得ることができる赤外線反射用黒色顔料を提供する。
【背景技術】
【0002】
屋外で用いられている道路、建築物、備蓄タンク、自動車、船舶等は、太陽の日射によって内部温度が上昇するため、建築物及び自動車等の外観塗装を白色から淡色にすることで太陽光を反射し、ある程度熱遮蔽効果を高めることが行われている。
【0003】
しかしながら、殊に、屋外建築物の屋根などは、汚れを目立たなくするために、濃彩色から黒色を呈している場合が多く、外観塗装が濃彩色から黒色を有する建築物及び自動車等の場合には、淡色から白色の外観塗装を有する建築物及び自動車等に比べて太陽光を吸収しやすく、屋内の温度が著しく上昇する傾向にある。物品の輸送、保存に当たって、内部が高温になることは好ましいものではない。
【0004】
そこで、地球温暖化防止のためのエネルギー節約という観点からも、濃彩色から黒色の外観を有する建築物及び自動車等の内部温度の上昇を抑制することが強く望まれている。
【0005】
従来より、濃彩色から黒色の外観塗装を有する建築物及び自動車等の内部温度の上昇を低減するために、熱遮蔽性黒色塗料が知られている(特許文献1〜3等)。また、黒色度に優れたストロンチウム鉄酸化物ペロブスカイトが知られている(特許文献4)。また、黒色度に優れたマグネシウム、アルミニウム含有酸化鉄が知られている(特許文献5)。
【0006】
【特許文献1】特開2000−72990号公報
【特許文献2】特開2001−311049号公報
【特許文献3】特開2004−83616号公報
【特許文献4】特開2000−264639号公報
【特許文献5】特開2003−238164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
有害な元素を含有せず、しかも、優れた赤外線反射性を有する熱遮蔽性塗料を得ることができる赤外線反射用黒色顔料は、現在最も要求されているところであるが、未だ得られていない。
【0008】
即ち、特許文献1には、CoO、Cr及びFeからなるスピネル構造を有する黒色焼成顔料が記載されているが、Crを含有するものであり、また、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%未満であり、十分な遮熱効果を有するとは言い難いものであった。
【0009】
また、特許文献2には、Feを必須成分とし、Cr、Mn又はNiOを含む焼成顔料からなる黒色顔料が記載されているが、Crを含有するものであるので好ましくない。
【0010】
また、特許文献3には、希土類元素、アルカリ土類金属及び鉄からなる黒色複合酸化物が記載されているが、十分な遮熱効果を有するとは言い難いものであった。
【0011】
また、特許文献4には、黒色度に優れたストロンチウム鉄酸化物ペロブスカイトが記載されているが、可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が10%以下であって、且つ、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%未満であるので、十分な遮熱効果は得られていない。
【0012】
また、特許文献5には、黒色度に優れたマグネシウム、アルミニウム含有スピネルが記載されているが、可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が10%以下であって、且つ、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%未満であるので、十分な遮熱効果は得られていない。
【0013】
そこで、本発明は、有害な元素を含有せず、しかも、黒色顔料であって優れた赤外線反射性を有する赤外線反射用黒色顔料を得ることを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記技術的課題は、次の通りの本発明によって達成できる。
【0015】
即ち、本発明は、FeとCoとAlを含有し、更に、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、ZnSn,Zr,Si,及びCuから選ばれる一種以上の金属を含有する複合酸化物からなる黒色顔料であって、該黒色顔料の平均粒子径が0.02〜2.0μmであることを特徴とする赤外線反射用黒色顔料である(本発明1)。
【0016】
また、本発明は、前記赤外線反射用黒色顔料の結晶構造がスピネル型であることを特徴とする赤外線反射用黒色顔料である(本発明2)。
【0017】
また、本発明は、前記赤外線反射用黒色顔料の黒色度(L)が30以下であることを特徴とする赤外線反射用黒色顔料である(本発明3)。
【0018】
また、本発明は、前記いずれかの赤外線反射用黒色顔料の可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が10%以下であり、且つ、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%以上であることを特徴とする赤外線反射用黒色顔料である(本発明4)。
【0019】
また、本発明は、前記いずれかの赤外線反射用黒色顔料の赤外線反射用黒色顔料の表面がSi,Al,Zr,Tiから選ばれる一種以上の化合物で被覆されていることを特徴とする赤外線反射用黒色顔料である(本発明5)。
【0020】
また、本発明は、前記いずれかに記載の赤外線反射用黒色顔料を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする塗料である(本発明6)。
【0021】
また、本発明は、前記いずれかに記載の赤外線反射用黒色顔料を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物である(本発明7)。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料は、黒色であって、しかも、赤外線反射性に優れているので赤外線反射用黒色顔料として好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明の構成をより詳しく説明すれば次の通りである。
【0024】
先ず、本発明に係る赤外線反射用黒色顔料について述べる。
【0025】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料は、FeとCoとAlを含有し、更に、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属を含有する複合酸化物からなる黒色顔料である。
【0026】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料中のFeの含有割合は、黒色顔料中の全金属元素に対して、10〜90モル%が好ましい。本発明に係る赤外線反射用黒色顔料中のCoの含有割合は、黒色顔料中の全金属元素に対して、1.0〜70モル%が好ましい。本発明に係る赤外線反射用黒色顔料中のAlの含有割合は、黒色顔料中の全金属元素に対して、1.0〜70モル%が好ましい。
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料のFe、Co及びAl含有量が前記範囲外の場合、黒色度(L)が30より大きくなり、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%未満となるため好ましくない。
より好ましくは、Feの含有割合は、黒色顔料中の全金属元素に対して10〜80モル%、更に好ましくは10〜50モル%であり、Coの含有割合は、黒色顔料中の全金属元素に対して3.0〜60モル%、更に好ましくは5.0〜50モル%であり、Alの含有割合は、黒色顔料中の全金属元素に対して3.0〜68モル%、更に好ましくは5〜65モル%である。
【0027】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料中のFeとCoとAlの含有量の合計量は、黒色顔料中の全金属元素に対するモル比で20〜98モル%が好ましく、より好ましくは30〜95モル%、更により好ましくは40〜95モル%である。本発明に係る赤外線反射用黒色顔料のFe、Co及びAl含有量が前記範囲外の場合、黒色度(L)が30より大きくなり、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%未満となるため好ましくない。
【0028】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料の結晶構造は、スピネル型が好ましい。
【0029】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料には、不可避的に各種原料由来の不純物が混入しているが、例えば、Crの含有量は1wt%以下であり、殊に、Cr6+の含有量は10ppm以下である。
【0030】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料の平均粒子径は0.02〜2.0μmである。赤外線反射用黒色顔料の平均粒子径が2.0μmを超える場合には、粒子サイズが大きすぎるため、着色力が低下する。平均粒子径が0.02μm未満の場合には、ビヒクル中への分散が困難となる場合がある。好ましくは0.025〜1.5μm、より好ましくは0.040〜1.20μmである。
【0031】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料のBET比表面積値は1.0〜100m/gが好ましい。BET比表面積値が1.0m/g未満の場合には、粒子が粗大であったり、粒子及び粒子相互間で焼結が生じた粒子となっており、着色力が低下する。より好ましくは1.5〜75m/g、更により好ましくは1.8〜60m/gである。
【0032】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料の黒色度(L)は、上限値が30.0程度である。黒色度(L)が30を越える場合には、黒色度に優れるとは言い難い。より好ましくは25.0以下である。黒色度(L)の下限値は5.0程度である。
【0033】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料のaは−5〜+10が好ましい。aが前記範囲外の場合には、黒色度に優れるとは言い難い。より好ましくは−1〜+5である。
【0034】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料のbは−5〜+10が好ましい。bが前記範囲外の場合には、黒色度に優れるとは言い難い。より好ましくは−1〜+5である。
【0035】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料の赤外線反射性は、可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が10%以下であることが好ましい。
また、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率は30%以上が好ましい。30%未満の場合には、赤外線反射性が十分とは言い難いものである。より好ましくは33%以上である。
【0036】
本発明においては、粒子表面をSi、Al、Zr、Tiから選ばれる1種又は2種以上の化合物によって被覆しておいてもよい。被覆量は赤外線反射用黒色顔料に対して0.1〜10wt%が好ましい。
【0037】
次に、本発明に係る赤外線反射用黒色顔料の製造法について述べる。
【0038】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料は、各種原料を混合、焼成して得ることができる。
【0039】
出発原料は、前記各金属元素の酸化物、炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩などを用いることができる。
【0040】
出発原料の混合は、均一に混合することができれば、特に限定されるものではなく、湿式混合でも乾式混合でもよい。
【0041】
加熱焼成温度は700〜1200℃が好ましく、加熱雰囲気は大気中である。
【0042】
加熱後の粉末は、常法に従って、水洗、粉砕を行えばよい。
【0043】
本発明においては、赤外線反射用黒色顔料の粒子表面をSi,Al,Zr,Tiから選ばれる1種又は2種以上の化合物によって被覆しておいてもよい。表面処理方法は、湿式あるいは乾式方法等の常法に従って行えばよい。
例えば、湿式方法は湿式分散した赤外線反射用黒色顔料のスラリーに、Si、Al、Zr、Tiから選ばれる1種又は2種以上の可溶性化合物を、酸又はアルカリでpH調整しながら添加・混合して被覆する方法、乾式方法はヘンシェルミキサーなどの装置中で赤外線反射用黒色顔料にSi、Al、Zr、Tiから選ばれる1種又は2種以上のカップリング剤などにより被覆処理する方法である。
【0044】
次に、本発明に係る赤外線反射用黒色顔料を配合した塗料について述べる。
【0045】
本発明に係る塗料中における赤外線反射用黒色顔料の配合割合は、塗料構成基材100重量部に対して0.5〜100重量部の範囲で使用することができ、塗料のハンドリングを考慮すれば、好ましくは1.0〜100重量部である。
【0046】
塗料構成基材としては、樹脂、溶剤、必要により油脂、消泡剤、体質顔料、乾燥促進剤、界面活性剤、硬化促進剤、助剤等が配合される。
【0047】
樹脂としては、溶剤系塗料用や油性印刷インクに通常使用されているアクリル樹脂、アルキッド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、アミノ樹脂、塩化ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ガムロジン、ライムロジン等のロジン系樹脂、マレイン酸樹脂、ポリアミド樹脂、ニトロセルロース、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、ロジン変性フェノール樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂等のロジン変性樹脂、石油樹脂等を用いることができる。水系塗料用としては、水系塗料用や水性インクに通常使用されている水溶性アクリル樹脂、水溶性スチレン−マレイン酸樹脂、水溶性アルキッド樹脂、水溶性メラミン樹脂、水溶性ウレタンエマルジョン樹脂、水溶性エポキシ樹脂、水溶性ポリエステル樹脂等を用いることができる。
【0048】
溶剤としては、溶剤系塗料用に通常使用されている大豆油、トルエン、キシレン、シンナー、ブチルアセテート、メチルアセテート、メチルイソブチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールエーテル系溶剤、酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル等のエステル系溶剤、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素系溶剤、シクロヘキサン等の脂環族炭化水素系溶剤、ミネラルスピリット等の石油系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、脂肪族炭化水素等を用いることができる。
【0049】
水系塗料用溶剤としては、水と水系塗料用に通常使用されているエチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等のアルコール系溶剤、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、プロピルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のグリコールエーテル系溶剤、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等のオキシエチレン又はオキシプロピレン付加重合体、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール等のアルキレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン等の水溶性有機溶剤とを混合して使用することができる。
【0050】
油脂としては、あまに油、きり油、オイチシカ油、サフラワー油等の乾性油を加工したボイル油を用いることができる。
【0051】
消泡剤としては、ノプコ8034(商品名)、SNデフォーマー477(商品名)、SNデフォーマー5013(商品名)、SNデフォーマー247(商品名)、SNデフォーマー382(商品名)(以上、いずれもサンノプコ株式会社製)、アンチホーム08(商品名)、エマルゲン903(商品名)(以上、いずれも花王株式会社製)等の市販品を使用することができる。
【0052】
次に、本発明に係る赤外線反射用黒色顔料を含有する樹脂組成物について述べる。
【0053】
本発明に係る樹脂組成物中における赤外線反射用黒色顔料の配合割合は、樹脂100重量部に対して0.01〜200重量部の範囲で使用することができ、樹脂組成物のハンドリングを考慮すれば、好ましくは0.05〜150重量部、更に好ましくは0.1〜100重量部である。
【0054】
本発明に係る樹脂組成物における構成基材としては、赤外線反射用黒色顔料と周知の熱可塑性樹脂とともに、必要により、滑剤、可塑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、各種安定剤等の添加剤が配合される。
【0055】
樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソブチレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルペンテン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリスチレン、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、アクリロニトリル−EPDM−スチレン共重合体、アクリル系樹脂、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアセタール、ポリウレタン等の熱可塑性樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂、ロジン・エステル、ロジン、天然ゴム、合成ゴム等を用いることができる。
【0056】
添加剤の量は、赤外線反射用黒色顔料と樹脂との総和に対して50重量%以下であればよい。添加剤の含有量が50重量%を超える場合には、成形性が低下する。
【0057】
本発明に係る樹脂組成物は、樹脂原料と赤外線反射用黒色顔料をあらかじめよく混合し、次に、混練機もしくは押出機を用いて加熱下で強いせん断作用を加えて、赤外線反射用黒色顔料の凝集体を破壊し、樹脂組成物中に赤外線反射用黒色顔料を均一に分散させた後、目的に応じた形状に成形加工して使用する。
【0058】
本発明に係る樹脂組成物はマスターバッチペレットを経由して得ることもできる。
【0059】
本発明におけるマスターバッチペレットは、塗料及び樹脂組成物の構成基材としての結合材樹脂と前記赤外線反射用黒色顔料とを必要により、リボンブレンダー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の混合機で混合した後、周知の単軸混練押出機や二軸混練押出機等で混練、成形した後切断するか、又は、上記混合物をバンバリーミキサー、加圧ニーダー等で混練して得られた混練物を粉砕又は成形、切断することにより製造される。
【0060】
結合材樹脂と赤外線反射用黒色顔料の混練機への供給は、それぞれを所定比率で定量供給してもよいし、両者の混合物を供給してもよい。
【0061】
本発明におけるマスターバッチペレットは、平均長径1〜6mm、好ましくは2〜5mmの範囲である。平均短径は2〜5mm、好ましくは2.5〜4mmである。平均長径が1mm未満の場合には、ペレット製造時の作業性が悪く好ましくない。6mmを超える場合には、希釈用結合材樹脂の大きさとの違いが大きく、十分に分散させるのが困難となる。また、その形状は種々のものができ、不定形及び球形等の粒状、円柱形、フレーク状等にできる。
【0062】
本発明におけるマスターバッチペレットに使用する結合材樹脂としては、前記樹脂組成物用樹脂と同一の樹脂が使用できる。
【0063】
なお、マスターバッチペレット中の結合材樹脂の組成は、希釈用結合材樹脂と同一の樹脂を用いても、また、異なる樹脂を用いてもよいが、異なる樹脂を使用する場合には、樹脂同士の相溶性により決まる諸特性を考慮して決めればよい。
【0064】
マスターバッチペレット中に配合される赤外線反射用黒色顔料の量は、結合材樹脂100重量部に対して1〜200重量部、好ましくは1〜150重量部、より好ましくは1〜100重量部である。1重量部未満の場合には、混練時の溶融粘度が不足し、赤外線反射用黒色顔料の良好な分散混合が困難である。200重量部を超える場合には、赤外線反射用黒色顔料に対する結合材樹脂が少ないため、赤外線反射用黒色顔料の良好な分散混合が難しく、また、マスターバッチペレットの添加量のわずかな変化によって樹脂組成物中に配合される赤外線反射用黒色顔料の含有量が大きく変化するため所望の含有量に調製することが困難となり好ましくない。また、機械摩耗が激しく適当ではない。
【0065】
<作用>
本発明において最も重要な点は、本発明に係る赤外線反射用黒色顔料は、有害元素を含有することなく、高い赤外線反射性を有するという事実である。
【0066】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料が高い赤外線反射性を有する理由は、未だ明らかではないが、後出する実施例及び比較例から明らかなとおり、Fe、Co及びAlとともに、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属を含有することによって、赤外線領域(780〜2500nm)での反射率を向上させることができたものである。
【0067】
また、本発明に係る赤外線反射用黒色顔料は、Cr6+などの有害金属元素を含有しておらず、安全な顔料である。
【実施例】
【0068】
本発明の代表的な実施例は、次の通りである。
【0069】
粒子の平均粒子径は電子顕微鏡写真に示される粒子350個の粒子径をそれぞれ測定し、その平均値で示した。
【0070】
比表面積値は、BET法により測定した値で示した。
【0071】
赤外線反射用黒色顔料の金属元素の含有量は、「蛍光X線分析装置3063M型」(理学電機工業株式会社製)を使用し、JIS K0119の「けい光X線分析通則」に従って測定した。
【0072】
Cr6+の測定方法は、「ICP発光分光分析装置」(エスエスアイ・ナノテクノロジー(株)社製)を使用し、JIS K0102 65.2.4の「ICP 発光分光分析法」に従って測定した。
【0073】
赤外線反射用黒色顔料の色相(L値、a値、b値)は、試料0.5gとヒマシ油0.5mlとをフーバー式マーラーで練ってペースト状とし、このペーストにクリアラッカー4.5gを加え、混練、塗料化してキャストコート紙上に150μm(6mil)のアプリケーターを用いて塗布した塗布片(塗膜厚み:約30μm)を作製した塗膜片について、「多光源分光測色計MSC−IS−2D」(スガ試験機株式会社製)を用いて測定を行い、JIS Z 8929に定めるところに従って表色指数(L値、a値)で示した。
【0074】
赤外線反射用黒色顔料の可視光領域及び赤外線領域での波長の反射性は、上記の色相を測定するために作製した塗膜片について、「分光光度計 UV−3100PC」(株式会社島津製作所)を用いて測定を行い、250〜780nm及び780〜2500nmの波長における各平均反射率(%)で示した。
【0075】
実施例1
CoO、Al、MgO及びFeを、CoOMgO・n[(FeAl1―y](x=0.5、y=0.5、n=1)となるように計量、混合し、大気中、1100℃で2時間焼成した。焼成品を粉砕し平均粒子径0.7μmの黒色顔料を得た。得られた黒色顔料の結晶構造はスピネル型であった。
【0076】
得られた黒色顔料は、可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が7%、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が40%であった。
【0077】
実施例2、比較例1〜7
種々の原料及び組成割合に変化させた以外は前記実施例1と同様にして黒色顔料を得た。
【0078】
このときの製造条件を表1に、得られた赤外線反射用黒色顔料の諸特性を表2に示す。なお、比較例7のマグネタイトは戸田工業(株)製 MAT−305である。
【0079】
実施例3
種々の原料及び組成割合に変化させた以外は前記実施例1と同様にして黒色顔料を得た。
次いで、得られた黒色顔料を水中に湿式分散させ、70℃に保温した黒色顔料のスラリーに対し水ガラス1wt%を滴下しながら塩酸及び水酸化ナトリウムでpH7に調整し1時間維持した。その後、水洗・乾燥・粉砕処理した。
【0080】
実施例4
種々の原料、組成割合及び表面処理を変化させた以外は前記実施例3と同様にして黒色顔料を得た。
【0081】
表2における結晶構造のうち、「spinel」はスピネル型を示すものである。なお、Cr6+の含有量が「5ppm未満」とは、前記測定装置の検出限界以下であることを示す。
【0082】
【表1】

【0083】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0084】
本発明に係る赤外線反射用黒色顔料は、赤外線反射性に優れているので赤外線反射用黒色顔料として好適である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
FeとCoとAlを含有し、更に、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Sn、Zr、Si及びCuから選ばれる一種以上の金属元素を含有する複合酸化物からなる黒色顔料であって、該黒色顔料の平均粒子径が0.02〜2.0μmであることを特徴とする赤外線反射用黒色顔料。
【請求項2】
請求項1記載の赤外線反射用黒色顔料の結晶構造がスピネル型であることを特徴とする赤外線反射用黒色顔料。
【請求項3】
請求項1又は2記載の赤外線反射用黒色顔料の黒色度(L)が30以下であることを特徴とする赤外線反射用黒色顔料。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の赤外線反射用黒色顔料の可視光領域波長250〜780nmにおける平均反射率が10%以下であり、且つ、赤外線領域波長780〜2500nmにおける平均反射率が30%以上であることを特徴とする赤外線反射用黒色顔料。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の赤外線反射用黒色顔料の表面がSi,Al,Zr,Tiから選ばれる一種以上の化合物で被覆されていることを特徴とする赤外線反射用黒色顔料。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の赤外線反射用黒色顔料を塗料構成基材中に配合したことを特徴とする塗料。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の赤外線反射用黒色顔料を用いて着色したことを特徴とする樹脂組成物。




【公開番号】特開2007−197570(P2007−197570A)
【公開日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−18019(P2006−18019)
【出願日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【出願人】(000166443)戸田工業株式会社 (406)
【Fターム(参考)】