説明

赤外線吸収粒子とその製造方法

【課題】赤外線吸収粒子層の形成性等に優れ、かつ製造コストを低減することが可能な赤外線吸収粒子を提供する。
【解決手段】本発明の赤外線吸収粒子は、Mg、Ca、Sr、BaおよびPbからなる群より選ばれる少なくとも1種のAサイト元素と、Ti、ZrおよびHfからなる群より選ばれる少なくとも1種のBサイト元素とを含有し、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、Tl、V、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Dがドープされたペロブスカイト型酸化物微粒子からなる。ペロブスカイト型酸化物微粒子は波長1.0μmにおける赤外線の拡散反射率が50%以下で、波長2.0μmにおける赤外線の拡散反射率が25%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線吸収粒子とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線吸収粒子としては、従来から酸化亜鉛系や酸化インジウムスズ(スズドープ酸化インジウム(ITO))系等が知られている(特許文献1、2参照)。これらのうち、酸化亜鉛系の赤外線吸収粒子は耐薬品性に劣り、例えばガラス基板の表面に赤外線吸収粒子層(コート層)を形成する際に使用可能な薬剤が限られることから、赤外線吸収粒子層の形成性等に劣るという難点を有している。ITO系の赤外線吸収粒子は、ガラス基板の表面に対するコート層の形成性等に優れる反面、レアメタルの1種であるInを含むため、赤外線吸収粒子の製造コストの増大が避けられない。このようなことから、安価でかつコート層の形成性等に優れる赤外線吸収粒子が求められている。
【0003】
一方、チタン酸ストロンチウム(SrTiO3)、チタン酸バリウム(BaTiO3)、チタン酸バリウムストロンチウム(BaxSr1-xTiO3)等のペロブスカイト型酸化物は、誘電体材料や圧電体材料等として使用されている(特許文献3参照)。ペロブスカイト型酸化物は、誘電体材料として使用されていることからも明らかなように、赤外線吸収粒子としてはキャリア密度が不十分であるため、そのままでは赤外線吸収粒子として使用することができない。ペロブスカイト型酸化物はITOに比べて安価であるため、キャリア密度を高めて赤外線吸収粒子としての機能を発現させることが望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−297260号公報
【特許文献2】特開2008−024577号公報
【特許文献3】特開2005−024577号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、赤外線吸収粒子層(コート層)の形成性等に優れ、かつ製造コストを低減することが可能な赤外線吸収粒子とその製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の赤外線吸収粒子は、Mg、Ca、Sr、BaおよびPbからなる群より選ばれる少なくとも1種のAサイト元素と、Ti、ZrおよびHfからなる群より選ばれる少なくとも1種のBサイト元素とを含有し、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、Tl、V、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Dがドープされたペロブスカイト型酸化物微粒子からなり、波長1.0μmにおける赤外線の拡散反射率が50%以下であり、かつ波長2.0μmにおける赤外線の拡散反射率が25%以下であることを特徴としている。
【0007】
本発明の赤外線吸収粒子の製造方法は、Mg、Ca、Sr、BaおよびPbからなる群より選ばれる少なくとも1種のAサイト元素の酸化物と、Ti、ZrおよびHfからなる群より選ばれる少なくとも1種のBサイト元素の酸化物と、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、Tl、V、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Dの酸化物と、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、MnおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mの酸化物と、酸化ホウ素とを含む溶融物を得る溶融工程と、前記溶融物を冷却して固化物を得る冷却工程と、前記固化物を加熱し、前記Aサイト元素と前記Bサイト元素とを含有し、かつ前記元素Dがドープされたペロブスカイト型酸化物結晶を含む析出物を得る加熱工程と、前記析出物から前記ペロブスカイト型酸化物結晶を分離してペロブスカイト型酸化物微粒子を得る分離工程とを、この順に具備し、前記固化物を還元ガス中で加熱するか、もしくは前記ペロブスカイト型酸化物微粒子を還元ガス中で熱処理することを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明の赤外線吸収粒子は、元素Dをドープしてキャリア密度を高めたペロブスカイト型酸化物微粒子からなる。従って、赤外線吸収粒子層(コート層)の形成性等に優れる赤外線吸収粒子を安価に提供することができる。また、本発明の製造方法によれば、そのような赤外線吸収粒子を再現性よくかつ効率的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の赤外線吸収粒子とその製造方法の実施形態について説明する。
【0010】
[赤外線吸収粒子]
本発明の赤外線吸収粒子は、Mg、Ca、Sr、BaおよびPbからなる群より選ばれる少なくとも1種のAサイト元素と、Ti、ZrおよびHfからなる群より選ばれる少なくとも1種のBサイト元素とを含有し、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、Tl、V、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Dがドープされたペロブスカイト型酸化物微粒子からなるものである。
【0011】
Aサイト元素とBサイト元素とを含有するペロブスカイト型酸化物は、ABO3で表される基本組成を有することが好ましい。このようなペロブスカイト型酸化物において、Aサイト元素の一部を3価の価数を取り得る元素Dで置換したり、あるいはBサイト元素の一部を5価の価数を取り得る元素Dで置換することによって、ペロブスカイト型酸化物のキャリア密度を高めることができる。これによって、ペロブスカイト型酸化物に赤外線吸収粒子としての機能を付与することが可能となる。具体的には、ペロブスカイト型酸化物微粒子の波長1.0μmにおける赤外線の拡散反射率を50%以下とし、かつ波長2.0μmにおける赤外線の拡散反射率を25%以下とすることができる。
【0012】
ペロブスカイト型酸化物は、元素Dを0.1〜20モル%の範囲で含有することが好ましい。元素Dが0.1〜20モル%の範囲で含有されるように、Aサイト元素およびBサイト元素の少なくとも一方の一部を元素Dで置換することによって、ペロブスカイト型酸化物の基本構造を維持しつつ、赤外線吸収粒子としての機能を再現性よく発現させることができる。元素Dによる置換は、Aサイト元素およびBサイト元素のいずれか一方のみでもよいし、Aサイト元素およびBサイト元素の両方であってもよい。
【0013】
ペロブスカイト型酸化物における元素Dの含有量が20モル%を超えると、ペロブスカイト型酸化物としての基本構造が維持できないおそれがある。一方、元素Dの含有量が0.1モル%未満であると、ペロブスカイト型酸化物のキャリア密度を十分に高めることができず、赤外線吸収粒子としての機能を発現させることができないおそれがある。ペロブスカイト型酸化物は、元素Dを0.1〜10モル%の範囲で含有することがより好ましく、1〜5モル%の範囲で含有することが特に好ましい。
【0014】
さらに、ペロブスカイト型酸化物は酸素欠損を有することが好ましい。これによって、赤外線吸収粒子を構成するペロブスカイト型酸化物微粒子のキャリア密度をより一層高めることができる。酸素欠損量は特に限定されるものではなく、ペロブスカイト型酸化物の基本構造が維持し得る範囲で適宜に設定可能である。酸素欠損δを有するペロブスカイト型酸化物の基本組成をABO3-δで表した場合、酸素欠損量は0<δ≦0.1であることが好ましい。酸素欠損量が0.1を超えると、ペロブスカイト構造(単純ペロブスカイト構造)を安定して維持することができないおそれがある。
【0015】
上述したペロブスカイト型酸化物の微粒子を赤外線吸収粒子として使用するにあたって、ペロブスカイト型酸化物微粒子はX線回折測定によりシェラー法を使用して算出した結晶子径が1〜100nmの範囲であることが好ましい。ペロブスカイト型酸化物微粒子の結晶子径が100nmを超えると散乱が大きくなり、透明性が失われるおそれがある。一方、結晶子径が1nm未満であると、赤外線の吸収効果を得ることができないおそれがある。ペロブスカイト型酸化物微粒子の結晶子径は5〜40nmの範囲であることがより好ましい。
【0016】
赤外線吸収粒子を構成するペロブスカイト型酸化物微粒子は、
一般式:(Aab1-xx3-δ (1)
(式中、aは0.3≦a≦1.2、bは0.8≦b≦1.2、xは0.001≦x≦0.2であり、δは酸素欠損を表す。)
で表される組成を有することが好ましい。
【0017】
式(1)において、Aサイト元素はMg、Ca、Sr、BaおよびPbからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。Aサイト元素としては、特にSrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を使用することが好ましい。これによって、安定して特性を発現させることができる。また、Bサイト元素はTi、ZrおよびHfからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素である。Bサイト元素としては、特にTiを使用することが好ましい。これによって、容易にペロブスカイト型酸化物を合成することができる。
【0018】
Aサイト元素量を示すaの値が0.3未満または1.2を超える場合には、ペロブスカイト型酸化物としての基本構造が維持できないおそれがある。aの値は0.5〜1.2の範囲であることがより好ましく、0.8〜1.2の範囲が特に好ましい。Bサイト元素量を示すbの値も同様であり、0.8未満または1.2を超える場合にはペロブスカイト型酸化物としての基本構造が維持できないおそれがある。bの値は0.9〜1.2の範囲であることがより好ましく、0.95〜1.2の範囲が特に好ましい。
【0019】
元素DはAサイト元素およびBサイト元素の少なくとも一方の一部と置換されることによりペロブスカイト型酸化物にドープされる元素である。元素DによるAサイト元素やBサイト元素の置換量を示すxの値が0.2を超えると、ペロブスカイト型酸化物としての基本構造が維持できないおそれがある。xの値が0.001未満であると、ペロブスカイト型酸化物のキャリア密度を十分に高めることがでず、赤外線吸収粒子としての機能を発現させることができないおそれがある。xの値は0.01〜0.2の範囲であることがより好ましく、0.05〜0.2の範囲であることが特に好ましい。
【0020】
Aサイト元素の一部を元素Dで置換する場合、元素DはSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(以下、元素D1と記す。)であることが好ましい。また、Bサイト元素の一部を元素Dで置換する場合、元素DはV、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素(以下、元素D2と記す。)であることが好ましい。
【0021】
D1元素は、3価で安定であることから、La、YおよびAlからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。さらにD1元素は、Aサイト元素とイオン半径が近いことから、Laであることが特に好ましい。D1元素としてLaを使用することによって、比較的容易に元素を置換することができる。D2元素は、同様の理由から、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種であることがより好ましい。
【0022】
赤外線吸収粒子を構成するペロブスカイト型酸化物微粒子は、さらに
一般式:(A1-yD1ya(B1-zD2zb3-δ (2)
(式中、aは0.3≦a≦1.2、bは0.8≦b≦1.2、yおよびzは0≦y≦0.2、0≦z≦0.2、0.001≦y+z≦0.2であり、δは酸素欠損を表す。)
で表される組成を有することがさらに好ましい。Aサイト元素量を示すaの値およびBサイト元素量を示すbの値の規定理由は、上述した通りである。
【0023】
元素D1によるAサイト元素の置換量を示すyの値が0.2を超える場合、元素D2によるBサイト元素の置換量を示すzの値が0.2を超える場合、もしくはyとzの合計量が0.2を超える場合には、ペロブスカイト型酸化物としての基本構造が維持できないおそれがある。yとzの合計量が0.001未満の場合には、ペロブスカイト型酸化物のキャリア密度を十分に高めることがでず、赤外線吸収粒子としての機能を発現させることができないおそれがある。yの値は0〜0.15の範囲であることがより好ましい。zの値は0〜0.15の範囲であることがより好ましい。なお、いずれの場合にもyとzの合計量は0.001≦y+z≦0.2を満足するものとする。
【0024】
上述したペロブスカイト型酸化物微粒子は、元素Dをドープすることによって、さらには酸素欠損を生じさせることによって、赤外線吸収粒子として機能させることが可能なキャリア密度を有している。従って、波長1.0μmにおける赤外線の拡散反射率が50%以下であり、かつ波長2.0μmにおける赤外線の拡散反射率が25%以下のペロブスカイト型酸化物微粒子を提供することができる。このような赤外線の拡散反射率を有するペロブスカイト型酸化物微粒子は、赤外線吸収粒子として使用することができる。波長1.0μmにおける赤外線の拡散反射率は40%以下であることがより好ましく、25%以下であることが特に好ましい。また、波長2.0μmにおける赤外線の拡散反射率は20%以下であることがより好ましく、15%以下であることが特に好ましい。
【0025】
ペロブスカイト型酸化物微粒子の赤外線の拡散反射率は、以下のようにして測定するものとする。すなわち、ガラスセルに粉体をのせ、石英のカバーガラスで固定した後、分光光度計(日立社製、U−4100)で赤外線の拡散反射率を測定する。
【0026】
本発明の赤外線吸収粒子は、各種の用途に使用することができる。代表的な用途としては、車両用ガラスや建築用ガラスの表面に赤外線吸収粒子の被膜を形成し、車内や建物内に流入する赤外線を遮蔽し、車内や建物内の温度上昇を抑制したり、また冷房負荷を軽減することが挙げられる。赤外線吸収粒子の被膜は、ゾルゲル法等による無機バインダや有機バインダを用いて、赤外線吸収粒子をガラスの表面に被着させることにより形成することができる。本発明の赤外線吸収粒子は、安価でかつ被膜の形成性等に優れることから、例えばITO系の赤外線吸収粒子を用いた赤外線遮蔽膜の代替品として有用である。
【0027】
[赤外線吸収粒子の製造方法]
本発明の赤外線吸収粒子の製造方法では、以下の溶融工程(I)〜分離工程(IV)の各工程を、この順に行う。溶融工程(I)〜分離工程(IV)の工程前、工程間、および工程後には、各工程に影響を及ぼさない限り、他の工程を行ってもよい。
【0028】
溶融工程(I):Mg、Ca、Sr、BaおよびPbからなる群より選ばれる少なくとも1種のAサイト元素(以下、元素Aとも記す。)の酸化物と、Ti、ZrおよびHfからなる群より選ばれる少なくとも1種のBサイト元素(以下、元素Bとも記す。)の酸化物と、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、Tl、V、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Dの酸化物と、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、MnおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mの酸化物と、酸化ホウ素とを含む溶融物を得る工程、
冷却工程(II):前記溶融物を冷却して固化物を得る工程、
加熱工程(III):前記固化物を加熱し、Aサイト元素とBサイト元素とを含有し、かつ元素Dがドープされたペロブスカイト型酸化物結晶を含む析出物を得る工程と、
分離工程(IV):前記析出物から前記ペロブスカイト型酸化物結晶を分離してペロブスカイト型酸化物微粒子を得る分離工程。
各工程について以下に詳述する。
【0029】
(溶融工程(I))
溶融工程(I)においては、まず目的とするペロブスカイト型酸化物を構成する各元素源(元素A源、元素B源、元素D源)と、ガラス骨格の形成成分として元素M源および酸化ホウ素源とを含む原料調合物を調製する。なお、元素AとしてMg、Ca、SrおよびBaの少なくとも1種を用いた場合、これらはガラス骨格の形成成分である元素Mとして機能するため、元素A源の一部を元素M源として使用することができる。すなわち、元素A源および元素M源として共通の原料を使用することができる。
【0030】
原料調合物は酸化物基準のモル%表示で、元素Aの酸化物および元素Bの酸化物を合計量で10〜70%、元素Dの酸化物を0.1〜20%、元素Mの酸化物を10〜70%、酸化ホウ素を10〜70%の範囲で含むことが好ましい。なお、元素AとしてMg、Ca、SrおよびBaの少なくとも1種を用いた場合には、元素Mの酸化物の含有量を含む元素Aの酸化物の含有量を10〜70%の範囲とすることが好ましい。このような組成域の原料調合物は、溶融工程で良好に溶融させることができ、また冷却工程(II)で非晶質物を得ることが可能である。さらに、上記組成域の原料調合物によれば、式(1)や式(2)で表される組成を有するペロブスカイト型酸化物微粒子を得ることができる。
【0031】
元素Aの原料となる元素A源としては、Aの酸化物(AO)、Aの水酸化物(A(OH2等)、Aの炭酸塩(ACO3等)、Aのホウ酸塩(AB24、AB47等)、Aのフッ化物(AF2等)、Aの塩化物(ACl2等)、Aの硝酸塩(A(NO32等)、Aの硫酸塩(ASO4等)、およびAの酢酸塩(A(CH3COO)2)やシュウ酸塩(AC24)等の有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、安価でかつ取り扱いが容易な点で、Aの炭酸塩が特に好ましい。
【0032】
元素Bの原料となる元素B源としては、Bの酸化物(BO2)、Bのフッ化物(BF4等)、Bの塩化物(BCl2、BCl4等)、Bの硝酸塩(B(NO34等)、Bの硫酸塩(B(SO42等)、Bのアルコキシド(B(OCH33、B(OCH34、B(OC254等)、およびBの酢酸塩(B(CH3COO)4)等の有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物を用いることが好ましい。なかでも、安価でかつ取り扱いが容易な点で、Bの酸化物が特に好ましい。
【0033】
元素Dの原料となる元素D源としては、Dの酸化物(D23、D25等)、Dの水酸化物(D(OH)3、D(OH)5等)、Dのフッ化物(DF3、DF5等)、Dの塩化物(DCl3、DCl5等)、Dの硝酸塩(D(NO33、D(NO35等)、Dの硫酸塩(D2(SO43、D2(SO45等)、AまたはBのバナジン酸塩、AまたはBのニオブ酸塩、AまたはBのタンタル酸塩、Dのアルコキシド(D(OCH33、D(OC253、D(OCH35、D(OC255等)、およびDの酢酸塩(D(CH3COO)3、D(CH3COO)4等)やシュウ酸塩(D2(C243、D2(C245等)等の有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、安価でかつ取り扱いが容易な点で、Dの酸化物が特に好ましい。
【0034】
非晶質物を得るためのガラス骨格形成成分としては、工程の容易さ、目的微粒子の得やすさ、安全性等の点からホウ酸塩系が用いられる。ガラス骨格形成成分である酸化ホウ素源としては、酸化ホウ素(B23)、窒化ホウ素(BN)、ホウ酸(HBO3)、フッ化ホウ素(BF3)、およびAまたはBのホウ酸塩(AB24、AB47等)からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、安価でかつ取り扱いが容易な点で、酸化ホウ素やホウ酸が特に好ましい。
【0035】
ガラス骨格形成成分である元素MとしてLi、NaおよびKからなる群より選ばれる少なくとも1種を用いた場合、元素M源としてはMの炭酸塩(M2CO3)、Mの炭酸水素塩(MHCO3)、Mの水酸化物(MOH)、Mのホウ酸塩(M3BO3)、Mのフッ化物(MF)、Mの塩化物(MCl)、Mの硝酸塩(MNO3)、Mの硫酸塩(M2SO4)、およびMの酢酸塩(CH3COOM)やシュウ酸塩(M224)等の有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が好ましい。元素MとしてZnを用いた場合、元素M源としては酸化亜鉛(ZnO)、水酸化亜鉛(Zn(OH)2)、ホウ酸亜鉛(Zn2611等)、フッ化亜鉛(ZnF2)、塩化亜鉛(ZnCl2)、硝酸亜鉛(Zn(NO32)、硫酸亜鉛(ZnSO4)、および酢酸亜鉛(Zn(CH3COO)2)やシュウ酸亜鉛(Zn224)等の有機酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種を用いることが好ましい。なお、元素AとしてMg、Ca、SrおよびBaの少なくとも1種を用いた場合には、元素M源は元素A源と同一となる。
【0036】
原料調合物中の各原料の純度は特に限定されない。反応性やペロブスカイト型酸化物の物性等を考慮すると、水和水を除く純度が99質量%以上であることが好ましい。各原料としては、粉砕した原料を用いるのが好ましい。各原料は、粉砕してから混合しても、混合した後に粉砕してもよい。粉砕は、ミキサー、ボールミル、ジェットミル、遊星ミル等を用いて、乾式または湿式で行うことが好ましく、溶媒の除去工程が不要なことから、乾式が好ましい。原料調合物中の各原料の粒度は、混合操作、混合物の溶融容器への充填操作、混合物の溶融性等に悪影響を及ぼさない範囲であれば、限定されない。
【0037】
溶融工程(I)においては、上記した原料調合物を容器等に入れ、加熱炉を用いて加熱して溶融することが好ましい。該容器としては、アルミナ製、カーボン製、炭化ケイ素製、ホウ化ジルコニウム製、ホウ化チタン製、窒化ホウ素製、炭素製、白金製、ロジウムを含む白金合金製等、耐火物系煉瓦、および還元材料(例えばグラファイト)等の材料からなる容器が挙げられる。該容器は蓋を装着することが加熱炉中での揮発および蒸発防止のために好ましい。加熱は、抵抗加熱炉、高周波誘導炉またはプラズマアーク炉を用いて行うことが好ましい。抵抗加熱炉は、ニクロム合金等の合金製、炭化ケイ素製、またはケイ化モリブデン製の発熱体を備えた電気炉であるのが好ましい。
【0038】
原料調合物の加熱温度は1300〜1600℃が好ましく、1350〜1550℃が特に好ましい。溶融とは各原料が融解し、目視で透明な状態となることをいう。加熱温度が上記範囲の下限値以上であると溶融が容易になり、上限値以下であると原料の揮発がしにくくなる。加熱時間は0.1〜2時間が好ましく、0.1〜1時間が特に好ましい。加熱時間が上記範囲の下限値以上であると溶融物の均一性が高まり、上限値以下であると原料が揮発しにくい。溶融工程(I)においては、溶融物の均一性を上げるために撹拌してもよい。また、次工程の冷却工程(II)を行うまで、溶融温度より低い温度で溶融物を清澄してもよい。
【0039】
加熱雰囲気は大気中、不活性ガス中または還元ガス中のいずれであってもよいが、特に制御する必要がない大気中で加熱することが好ましい。溶融の条件は、容器または加熱炉の種類や熱源等の加熱方法等の条件により、適宜変更できる。圧力は、常圧、加圧(1.1×105Pa以上)、減圧(0.9×105Pa以下)のいずれであってもよい。原料調合物は粉体状態で溶融してもよいし、予め成型した混合物を溶融してもよい。溶融物の組成は、基本的には原料調合物の組成と理論上対応するものである。
【0040】
(冷却工程(II))
冷却工程(II)は、溶融工程(I)で得られた溶融物を室温(20〜25℃)付近まで冷却して固化物を得る工程である。固化物は非晶質物であることが好ましいが、固化物の一部は結晶化物であってもよい。固化物が非晶質物を含むことで、加熱工程(III)で結晶化物が結晶核となり、結晶が析出しやすくなる。固化物中の結晶化物の量は、固化物の全質量に対して0〜30質量%であることが好ましい。結晶化物を多く含むと粒状やフレーク状の固化物を得ることが困難になると共に、加熱工程(III)で析出されるペロブスカイト型酸化物結晶の組成均一性や微粒子性等が低下するおそれがある。
【0041】
溶融物の冷却は大気中、不活性ガス中または還元ガス中のいずれで行ってもよいが、特に制御の必要がない大気中で冷却することが好ましい。溶融物の冷却速度は−1×103℃/秒以上が好ましく、−1×104℃/秒以上が特に好ましい。本明細書では、冷却する場合の単位時間当たりの温度変化(冷却速度)を負の値で示す。冷却速度を該値以上にすると非晶質物が得られやすい。冷却速度の上限値は製造設備や大量生産性の点から−1×1010℃/秒程度が好ましく、実用性の点からは−1×108℃/秒が特に好ましい。
【0042】
溶融物の冷却方法としては、高速で回転する双ローラの間に溶融物を滴下して冷却する方法、回転する単ローラに溶融物を滴下して冷却する方法、溶融物を冷却したカーボン板や金属板にプレスして冷却する方法等が挙げられる。なかでも、双ローラを用いた冷却方法は冷却速度が速く、大量に処理できるので好ましい。双ローラとしては、金属製、カーボン製、セラミックス製のものを用いることが好ましい。
【0043】
冷却工程(II)で得る固化物は、フレーク状または繊維状であることが好ましい。フレーク状の場合には、平均厚さが200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることが特に好ましい。繊維状の場合には、平均直径が50μm以下であることが好ましく、30μm以下であることが特に好ましい。上記した厚さや直径を超える固化物が形成されるような条件下で冷却すると、続く加熱工程(III)における結晶化効率が低下するおそれがある。上記した厚さや直径を超える固化物の場合、また細粒化する場合には、固化物の粉砕を行った後に加熱工程(III)を実施することが好ましい。
【0044】
(加熱工程(III))
加熱工程(III)は、冷却工程(II)で得られた固化物を加熱し、Aサイト元素とBサイト元素とを含有し、かつ元素Dがドープされたペロブスカイト型酸化物結晶を含む析出物を得る工程である。加熱温度は600〜900℃とすることが好ましい。600℃以上の温度で固化物を加熱すると反応が生じやすく、これによりペロブスカイト型酸化物結晶を良好に析出させることができる。ただし、加熱温度が900℃を超えると固化物が融解するおそれがあり、また結晶系や粒子径の制御性が低下するおそれがある。加熱温度は650〜800℃とすることが特に好ましい。
【0045】
加熱は一定温度で保持することに限らず、多段階に保持温度を設定して行ってもよい。加熱温度が高くなると、生成する粒子の粒子径が大きくなる傾向があるため、所望の粒子径に応じて加熱温度を設定することが好ましい。また、加熱時間(加熱温度による保持時間)は、所望の粒子径を考慮して2〜6時間とすることが好ましい。加熱は、ボックス炉、トンネルキルン炉、ローラーハースキルン炉、ロータリーキルン炉、マイクロウェーブ加熱炉等を用いて行うのが好ましい。
【0046】
加熱は還元ガス中で実施する。これによって、ペロブスカイト型酸化物結晶のキャリア密度を高めることができ、赤外線吸収粒子としての特性を向上させることが可能となる。還元ガスとは、窒素ガス(N2)、ヘリウムガス(He)、アルゴンガス(Ar)等の不活性ガスに、水素ガス(H2)、一酸化炭素ガス(CO)、アンモニアガス(NH3)等の還元性を有するガスを添加し、実質的に酸素を含まないガスをいう。不活性ガス中の還元性を有するガスの量は、全気体体積中に含まれる還元性を有するガスの量が0.1体積%以上であるのが好ましく、1〜10体積%であるのが特に好ましい。酸素の含有量は、該気体体積中に1体積%以下が好ましく、0.1体積%以下が特に好ましい。
【0047】
また、加熱工程(III)を還元ガス中で実施することに代えて、分離工程(IV)で得られたペロブスカイト型酸化物微粒子を還元ガス中で熱処理してもよい。これによっても、ペロブスカイト型酸化物微粒子のキャリア密度を高めることができ、赤外線吸収粒子としての特性を向上させることが可能となる。分離工程(IV)後に実施する熱処理工程は、上記した還元ガス中にて600〜900℃の温度で2〜16時間保持することにより実施することが好ましい。このような条件下でペロブスカイト型酸化物微粒子を熱処理することによって、キャリア密度を再現性よく向上させることができる。
【0048】
(分離工程(IV))
分離工程(IV)は、加熱工程(III)で得た析出物からペロブスカイト型酸化物結晶を分離し、目的とするペロブスカイト型酸化物微粒子を得る工程である。析出物は、目的物質であるペロブスカイト型酸化物微粒子部分とそれ以外のMO(AO)−B23化合物を主とするマトリックス部分とからなる。このような析出物からペロブスカイト型酸化物微粒子を分離するために、マトリックス部分を酸溶液やアルカリ溶液等の分離液で溶解して除去する。分離液としては、塩酸、硝酸、硫酸等の無機酸溶液や、酢酸、ギ酸、クエン酸、アスコルビン酸等の有機酸溶液を用いることが好ましく、酢酸溶液を用いることが特に好ましい。酸溶液の濃度は0.1〜2mol/Lの範囲とすることが好ましい。
【0049】
マトリックス部分の溶解処理は、例えば室温から90℃以下の範囲の温度の分離液中で実施することが好ましい。分離液を室温未満に冷却する必要はない。また、析出物からの目的粒子の分離能を高める上で、分離液は加温して使用することが好ましい。ただし、分離液の温度が90℃を超えると沸騰するおそれがあり、成分の揮発や蒸発が生じるために、密閉する等の方策を講じない限り好ましくない。
【0050】
ペロブスカイト型酸化物微粒子の分離処理は、上述したような分離液を用いて析出物からマトリックス部分を溶解し、生成された微粒子を沈降させて上澄み液と分離することにより実施することが好ましい。微粒子と上澄み液との分離は、自然沈降、ろ過、フィルタープレス、遠心沈降等を適用して実施することが好ましい。マトリックス部分の溶解処理と微粒子の上澄み液からの分離処理は、目的とするペロブスカイト型酸化物微粒子のみが得られるまで繰り返し実施してもよい。また、ペロブスカイト型酸化物微粒子の分離処理に引き続いて、必要に応じて精製処理を行う。精製処理は溶解処理後に残存する水溶性のイオンや塩を除去するために、例えば水を用いて実施するものである。
【実施例】
【0051】
次に、本発明の具体的な実施例およびその評価結果について述べる。なお、以下の説明は本発明を限定するものではく、本発明の趣旨に沿った形での改変が可能である。
【0052】
(実施例1〜10、比較例1)
溶融物の組成がLa23、Nb25、Ta25、SrO、BaO、TiO2およびB23を基準とするモル%表示で、それぞれ表1に示す割合となるように、酸化ランタン(La23)、酸化ニオブ(Nb25)、酸化タンタル(Ta25)、炭酸ストロンチウム(SrCO3)、炭酸バリウム(BaCO3)、酸化チタン(TiO2)、および酸化ホウ素(B23)を秤量し、乾式で混合・粉砕して原料調合物を得た。原料調合物を、ロジウムを20質量%含む白金合金製のノズル付きるつぼに充填し、ケイ化モリブデン製の発熱体を備える電気炉を用いて、大気中にて1500℃で0.5時間加熱して溶融させた。
【0053】
次に、るつぼに設けられたノズルの下端部を電気炉で加熱しながら溶融物を滴下させ、毎分400回転する直径約15cmのステンレス製双ローラを通すことによって、溶融物を−1×105℃/秒程度の冷却速度で室温まで冷却し、フレーク状の固化物を得た。得られた固化物はガラス状物質であった。フレーク状の固化物を乳鉢で粉砕した後に150μmの篩を通してフレーク粉砕物を得た。
【0054】
得られたフレーク粉砕物を還元ガス焼成炉中で加熱して、元素D(La、Nb、Ta)がドープされたペロブスカイト型酸化物結晶を析出させた。加熱条件は表1に示すように、実施例1〜9は3体積%H2−Arガス中にて700〜800℃×8時間、実施例10は10体積%H2−Arガス中にて750℃×8時間とした。次いで、ペロブスカイト型酸化物結晶を含む析出物を乳鉢で粉砕した後、1mol/Lの酢酸溶液(70℃)中で4時間、振とう撹拌して可溶性物質を溶脱した。溶脱した液を遠心分離して上澄み液を捨てた。この分離操作を5回行った。さらに、水で5回洗浄した後に乾燥させることによって、目的の微粒子を得た。得られた微粒子を後述する特性評価に供した。
【0055】
(実施例11)
実施例1と同様にして原料調合物を溶融および冷却し、さらに粉砕してフレーク粉砕物を得た。このフレーク粉砕物を大気中で加熱して、ペロブスカイト型酸化物結晶を析出させた後、析出物に実施例1と同様な分離工程を実施した。分離工程で得た微粒子を3体積%H2−Arガス中にて750℃×8時間の条件で熱処理した。得られた微粒子(熱処理後の微粒子)を後述する特性評価に供した。
【0056】
(比較例2)
フレーク粉砕物を大気中にて750℃×8時間の条件で加熱して、ペロブスカイト型酸化物結晶を析出させる以外は、実施例1と同様にして微粒子を得た。得られた微粒子を後述する特性評価に供した。
【0057】
(参考例1)
実施例1と同様にして調製した原料調合物を20MPaの圧力で成形した。得られた成形体をマッフル炉で800℃×8時間の条件で仮焼成した。次いで、仮焼成物をタンマン管式雰囲気電気炉で焼成した。焼成は3体積%H2−Arガスを1L/分で流しながら1400℃で8時間保持することにより実施した。このような固相法により合成したペロブスカイト型酸化物を後述する特性評価に供した。
【0058】
【表1】

【0059】
得られた微粒子の鉱物相をX線回折装置で同定したところ、その回折パターンはいずれも既存の正方晶系のSrTiO3(PDF番号35−0734)の回折パターンと一致した。また、X線回折パターンから結晶子径を算出した。さらに、各微粒子の波長1.0μmにおける赤外線の拡散反射率、波長2.0μmにおける赤外線の拡散反射率を前述した方法にしたがって測定した。これらの値を表2に示す。
【0060】
【表2】

【0061】
表2から明らかなように、実施例1〜11によるペロブスカイト型酸化物微粒子は赤外線の拡散反射率に優れ、赤外線吸収粒子として機能させることが可能であることが分かる。これに対して、元素Dをドープしていない比較例1のペロブスカイト型酸化物微粒子や、結晶化を大気中で実施した比較例2のペロブスカイト型酸化物微粒子は、いずれも赤外線の拡散反射率に劣り、赤外線吸収粒子としては使用できないことが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Mg、Ca、Sr、BaおよびPbからなる群より選ばれる少なくとも1種のAサイト元素と、Ti、ZrおよびHfからなる群より選ばれる少なくとも1種のBサイト元素とを含有し、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、Tl、V、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Dがドープされたペロブスカイト型酸化物微粒子からなる赤外線吸収粒子であって、
波長1.0μmにおける赤外線の拡散反射率が50%以下であり、かつ波長2.0μmにおける赤外線の拡散反射率が25%以下であることを特徴とする赤外線吸収粒子。
【請求項2】
前記ペロブスカイト型酸化物微粒子は、前記元素Dを0.1〜20モル%の範囲で含有することを特徴とする請求項1記載の赤外線吸収粒子。
【請求項3】
前記ペロブスカイト型酸化物微粒子は、酸素欠損を有することを特徴とする請求項1または2記載の赤外線吸収粒子。
【請求項4】
前記ペロブスカイト型酸化物微粒子の結晶子径が1〜100nmの範囲であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の赤外線吸収粒子。
【請求項5】
前記ペロブスカイト型酸化物微粒子は、
一般式:(Aab1-xx3-δ
(式中、aは0.3≦a≦1.2、bは0.8≦b≦1.2、xは0.001≦x≦0.2であり、δは酸素欠損を表す。)
で表される組成を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の赤外線吸収粒子。
【請求項6】
前記ペロブスカイト型酸化物微粒子は、
一般式:(A1-yD1ya(B1-zD2zb3-δ
(式中、D1はSc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、InおよびTlからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素、D2はV、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素であり、aは0.3≦a≦1.2、bは0.8≦b≦1.2、yおよびzは0≦y≦0.2、0≦z≦0.2、0.001≦y+z≦0.2であり、δは酸素欠損を表す。)
で表される組成を有することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項記載の赤外線吸収粒子。
【請求項7】
前記Aサイト元素はSrおよびBaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含み、前記Bサイト元素は少なくともTiを含み、かつ前記元素DはLa、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項記載の赤外線吸収粒子。
【請求項8】
Mg、Ca、Sr、BaおよびPbからなる群より選ばれる少なくとも1種のAサイト元素の酸化物と、Ti、ZrおよびHfからなる群より選ばれる少なくとも1種のBサイト元素の酸化物と、Sc、Y、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Al、Ga、In、Tl、V、NbおよびTaからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Dの酸化物と、Li、Na、K、Mg、Ca、Sr、Ba、MnおよびZnからなる群より選ばれる少なくとも1種の元素Mの酸化物と、酸化ホウ素とを含む溶融物を得る溶融工程と、
前記溶融物を冷却して固化物を得る冷却工程と、
前記固化物を加熱し、前記Aサイト元素と前記Bサイト元素とを含有し、かつ前記元素Dがドープされたペロブスカイト型酸化物結晶を含む析出物を得る加熱工程と、
前記析出物から前記ペロブスカイト型酸化物結晶を分離してペロブスカイト型酸化物微粒子を得る分離工程とを、この順に具備し、
前記固化物を還元ガス中で加熱するか、もしくは前記ペロブスカイト型酸化物微粒子を還元ガス中で熱処理することを特徴する赤外線吸収粒子の製造方法。
【請求項9】
前記還元ガス中での加熱または熱処理を600〜900℃の範囲の温度で実施することを特徴とする請求項8記載の赤外線吸収粒子の製造方法。
【請求項10】
前記溶融物が、酸化物基準のモル%表示で、前記Aサイト元素の酸化物および前記Bサイト元素の酸化物を合計量で10〜70%、前記元素Dの酸化物を0.1〜20%、前記元素Mの酸化物を10〜70%、前記酸化ホウ素を10〜70%の範囲で含むことを特徴とする請求項8または9記載の赤外線吸収粒子の製造方法。
【請求項11】
前記冷却工程で、前記溶融物を−103〜−1010℃/秒の範囲の冷却速度で冷却し、非晶質物を含む前記固化物を得ることを特徴とする請求項8ないし10のいずれか1項記載の赤外線吸収粒子の製造方法。
【請求項12】
前記分離工程で、前記析出物を酸溶液またはアルカリ溶液で処理し、前記ペロブスカイト型酸化物結晶を分離することを特徴とする請求項8ないし11のいずれか1項記載の赤外線吸収粒子の製造方法。
【請求項13】
前記ペロブスカイト型酸化物微粒子の結晶子径が1〜100nmの範囲であることを特徴とする請求項8ないし12のいずれか1項記載の赤外線吸収粒子の製造方法。
【請求項14】
前記ペロブスカイト型酸化物微粒子は、
一般式:(Aab1-xx3-δ
(式中、A、BおよびDは前記と同じ種類の元素を示し、aは0.3≦a≦1.2、bは0.8≦b≦1.2、xは0.001≦x≦0.2であり、δは酸素欠損を表す。)
で表される組成を有することを特徴とする請求項8ないし13のいずれか1項記載の赤外線吸収粒子の製造方法。

【公開番号】特開2013−87151(P2013−87151A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226826(P2011−226826)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】