説明

赤外線検出のための有機薄膜

本発明は、赤外線の検出のための方法および有機感光材料およびデバイスを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の参照
本出願は、その内容が参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれている2008年3月19日に出願した米国仮出願第61/070,093号および2008年5月15日に出願した米国仮出願第61/053,289号の優先権を主張するものである。
【0002】
米国政府の権利
この発明は、助成DAAB07−01−D−G602、Army Night Vision and Electronic Sensors Directorateに基づく米国政府の援助によってなされた。この政府はこの発明における一定の権利を有する。
【0003】
共同研究契約
特許請求の範囲に記載した発明は、共同の大学−企業研究契約に関係している1つまたは複数の以下の団体:プリンストン大学、ミシガン大学、サザンカリフォルニア大学、およびユニバーサルディスプレイコーポレーションによって、および/または関連して行われた。上記契約は、特許請求の範囲に記載の発明がなされた日およびそれ以前に発効しており、特許請求の範囲に記載された発明は、前記契約の範囲内で行われた活動の結果としてなされた。
【0004】
本発明は、大まかには有機感光デバイスに関する。より具体的には、本発明は赤外線に対する感度を有する有機感光デバイスを対象とする。
【背景技術】
【0005】
光検出器は、入射電磁放射線を測定可能な電気信号に転換する感光デバイスである。それらは、一般的には、光検出器が電磁放射線にさらされたとき発生する光電流を測定する電流検出回路とつないで使用される。
【0006】
光検出器は、以下で定義する整流接合が存在するかどうかにより、およびそのデバイスがバイアスまたはバイアス電圧としても知られる外部から加えられる電圧によって操作されるかどうかによっても分類することができる。光伝導体(またはフォトレジスター)セルは、コンダクタンスの変化を伴う入射放射の影響を受け、それらは整流接合を有さず、通常はバイアスによって操作される。光ダイオードおよび光起電デバイスは、励起子の発生を伴う入射放射の影響を受ける。それらは少なくとも1つの整流接合を有し、フォトダイオードは常にとは限らないが普通はバイアスによって操作される。
【0007】
本明細書で使用される用語の「整流する」とは、とりわけ、界面が、非対称の伝導特性を有すること、すなわち、界面が一方向における電子電荷の輸送を優先的に支援することを意味する。用語の「半導体」とは、電荷担体が熱または電磁励起によって誘発されたときに電気を伝導することができる物質を意味する。用語の「光伝導性の」とは、一般に、電磁放射エネルギーが吸収されて電荷担体の励起エネルギーに転換し、その結果その担体が、その物質中の電荷を伝導する(すなわち輸送する)ことができる過程に関連している。用語の「光伝導物質」とは、電磁放射線を吸収すると電荷担体を発生するその能力のために利用される半導体物質を指す。本明細書で使用される用語の「ヘテロ接合」とは、別段の特徴付けがされていない限りは、ドナー/アクセプター半導体ヘテロ接合を指す。
【0008】
ソリッドステートの電子デバイスは、ほとんどの場合、固体基板上にさまざまな物質を堆積してパターン層にすることによって組み立てられる。本明細書で使用される「トップ」とは、基板から最も離れたところを意味し、一方「ボトム」とは、基板に最も近いところを意味する。間に入る層が(例えば、第1層が第2層の「上」または「全体を覆う」場合)、第1層が第2層に「物理的接触状態」であるか「直接乗っている」と規定されていない限りは(この記述は、間に入る表面処理(例えば、第1層の酸素もしくは水素プラズマ、またはイオンインプランテーションへの暴露)を排除しない)、存在し得る。
【0009】
適切なエネルギーの電磁放射線が有機半導体物質に投射されるとき、光子が吸収されて励起された分子の状態を生じることができる。有機光伝導物質において、その励起された分子の状態は、擬粒子として輸送される「励起子」、結合された状態の電子−正孔の対、であると一般に考えられている。励起子は、重複した再結合(「失活」)の前にかなりの寿命を有することができ、そこでは元の電子と正孔が互いに再結合する(他の対からの正孔または電子との再結合に対抗して)。光電流を生ずるために、励起子を形成している電子−正孔対は、一般的には整流接合において分離される。
【0010】
感光デバイスの場合、整流接合は、ヘテロ接合である。有機光起電ヘテロ接合のタイプとしては、ドナー物質とアクセプター物質の界面に形成されたドナー−アクセプターヘテロ接合、および光伝導材料と金属の界面に形成されたショットキー障壁ヘテロ接合が挙げられる。
【0011】
有機物質の広い吸収スペクトルおよび高い吸収係数(約10cm−1)、ならびに特定用途またはスペクトル領域に適合する電子および光子特性を調整する化学者の能力は、有機物質を光検出および太陽エネルギー変換のための用途に対して特に興味深いものにしている。P. Peumans、A. YakimovおよびS. R. Forrest、J. Appl. Phys.、93巻、3693頁(2003年); C. W. Tang、Appl. Phys. Lett.、48巻、183頁(1986年); A. Shah、P. Torres、R. Tscharner、N. WyrschおよびH. Keppner、Science 285巻、692頁(1999年); P. PeumansおよびS. R. Forrest、Appl. Phys. Lett.、79巻、126頁(2001年)。有機物質およびそれらの対応する透明基板(ガラスまたはプラスチック)の低い屈折率もデバイス中への効率的光結合を可能にさせて潜在的に高い量子効率をもたらす。
【0012】
有機半導体の重要な特性は、担体移動度である。移動度は電荷担体が電場に応じて導電性材料中を移動することができる容易さの測定単位となる。有機感光デバイスとの関連で、高い電子移動度のせいで優先的に電子によって伝導する物質は、電子輸送物質と称することができる。高い正孔移動度のせいで優先的に正孔によって伝導する物質は、正孔輸送物質と称することができる。デバイス中の層の移動度および/または位置のせいで優先的に電子によって伝導する層は、電子輸送層(「ETL」)と称することができる。デバイス中の層の移動度および/または位置のせいで優先的に正孔によって伝導する層は、正孔輸送層(「HTL」)と称することができる。
【0013】
さらなる背景説明および有機感光デバイスについてのそれらの一般的な構成、特性、材料、および特徴を含めた最新技術の記述のために、ForrestおよびXueに対する米国特許第6,972,431号、Forrestらに対する米国特許第6,657,378号、Forrestらに対する米国特許第6,580,027号、およびBulovicらに対する米国特許第6,352,777号を、参照によりそれらの全体を本明細書に組み込む。概説については、P. Peumans、V. BulovicおよびS. R. Forrest、Appl. Phys. Lett. 76巻、3855頁(2000年)を参照されたい。
【0014】
赤外線に敏感な光検出器は当技術分野において知られており、リモートセンシング、軍事および天文学用途において広く使用されている。感度が最重要である場合は、一般的にはHgCdTe等の小さいバンドギャップ(約0.1〜0.2eV)の半導体でできている極低温の赤外光検出器が普通は使用される。これら検出器の製造原価は、特に撮像配列の形においては高く、回路設計は複雑であり、極低温度が必要であり、それはデバイスの複雑度を増加させる。極低温の検出器の感度が必要でない場合の用途においては、費用のかからない冷却しない熱検出器を利用することができる。これらのデバイス(例えば、パイロメータおよびボロメータ)は、受け取った赤外光子の熱への最初の転換を頼りにする。精度が高く、それにもかかわらず比較的単純で費用のかからない赤外検出器が必要である。
【0015】
有機半導体は、製造に費用がかからず、それ自体大量生産に向いている。けれども有機感光デバイスの分野においては赤外線照射に対する感度を有するデバイスに対する必要性が存在したままである。典型的な有機半導体のバンドギャップは、>1.5eVであり、それは最大で約0.3eVを運ぶ赤外線照射により励起を可能にするには大き過ぎる。本発明は、近および中間赤外線の検出が可能な有機半導体デバイスを提供する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】米国仮出願第61/070,093号
【特許文献2】米国仮出願第61/053,289号
【特許文献3】米国特許第6,972,431号
【特許文献4】米国特許第6,657,378号
【特許文献5】米国特許第6,580,027号
【特許文献6】米国特許第6,352,777号
【特許文献7】米国特許第6,420,031号
【特許文献8】米国特許第6,013,982号
【特許文献9】米国特許第6,087,196号
【特許文献10】米国特許第6,337,102号
【特許文献11】米国特許出願第10/233,470号
【特許文献12】米国特許第6,294,398号
【特許文献13】米国特許第6,468,819号
【特許文献14】米国特許出願第2005/0224113号
【特許文献15】米国特許出願公開第2005/0110007号
【特許文献16】米国特許出願公開第2006−0032529A1号
【特許文献17】米国特許出願公開第2006−0027802A1号
【特許文献18】米国特許出願第09/054,707号
【特許文献19】米国特許第5,703,436号
【特許文献20】米国特許第6,333,458号
【特許文献21】米国特許第6,440,769号
【特許文献22】米国特許出願公開第2005/0266218号
【特許文献23】米国特許第6,303,238号
【特許文献24】米国特許第6,310,360号
【特許文献25】米国特許第6,830,828号
【特許文献26】米国特許第6,939,624号
【特許文献27】米国特許第6,835,469号
【特許文献28】国際公開第02/074015号
【特許文献29】米国特許出願公開第2008/0061681号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】P. Peumans、A. YakimovおよびS. R. Forrest、J. Appl. Phys.、93巻、3693頁(2003年)
【非特許文献2】C. W. Tang、Appl. Phys. Lett.、48巻、183頁(1986年)
【非特許文献3】A. Shah、P. Torres、R. Tscharner、N. WyrschおよびH. Keppner、Science 285巻、692頁(1999年)
【非特許文献4】P. PeumansおよびS. R. Forrest、Appl. Phys. Lett.、79巻、126頁(2001年)
【非特許文献5】P. Peumans、V. BulovicおよびS. R. Forrest、Appl. Phys. Lett. 76巻、3855頁(2000年)
【非特許文献6】Sudhakar Madhusoodhananら、JACS、2003年、125(26)、7796〜7797頁
【非特許文献7】Gary L. MiesslerおよびDonald A. Tarr、「Inorganic Chemistry」(第2版)、Prentice Hall社、(1998年)
【非特許文献8】Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、Nature、395巻、151〜154頁、1998年
【非特許文献9】Baldoら、「Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl. Phys. Lett.、75巻、No. 1、4〜6(1999年)
【非特許文献10】「Organic Light−Emitting Devices: Synthesis, Properties and Applications」、K. MullenおよびU. Scherf編、(Wiley−VCH、ワインハイム、ドイツ、2006年)
【非特許文献11】R.C. Evans、P. DouglasおよびC.J. Winscom、Coordination Chem. Rev.、250巻(15〜16)、2093〜2126頁(2006年)
【非特許文献12】P. Djurovichら、Dalton Trans.、2007年、3763〜3770頁
【非特許文献13】M. Sudhakarら、J. Am. Chem. Soc.、2003年、125巻、7796〜7797頁
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0018】
本出願は、赤外線を検出する方法を提供する。本発明の方法は、光伝導性有機物質中に1つまたは複数のエネルギーEの第一の励起子を発生させるのに適した光子エネルギーを有するポンプ光をその光伝導性有機物質に照射するステップ(Eは、電磁スペクトルの赤外域に相当するエネルギー差によってその光伝導性有機物質中に電荷担体を発生させるための最小励起エネルギーEminより低い)と、その光伝導性有機物質を赤外線にさらすステップと、その第一の励起子による赤外線の吸収によって発生した電荷担体を検出するステップと、を含む。本発明の方法は、約0.1〜約1.7eVの範囲のエネルギーを有する近および中間赤外線を検出するために使用することができる。
【0019】
ポンプ光波長は、使用される光伝導性有機物質に基づいて決定され、一般に電磁スペクトルの可視および紫外領域内である。ポンプ光の強度は、好ましくは、正確な荷電検出のために、十分な数の第一の励起子が発生してIRによる十分な電荷の発生を可能にするように選択される。
【0020】
そのポンプ光は、任意の適当な一時的な形態であり得る。好ましい実施形態において、そのポンプ光は、パルス光である。
【0021】
1つの実施形態において、その第一の励起子は、最初の一重項励起子である。この最初の一重項励起子は、光伝導性有機物質中でポンプ光により直接の一重項−一重項遷移によって発生させることができる。別の実施形態においては、ポンプ光は、光伝導性有機物質中に1つまたは複数のより高位の一重項励起子を発生させ、それはその後に1つまたは複数の最初の一重項励起子に転化する。
【0022】
光伝導性有機物質は、純粋な物質または混合された物質であり得る。好ましい実施形態において、光伝導性有機物質は、ホスト物質およびドーパント物質を含む。1つの実施形態において、該ホスト物質およびドーパント物質は、ドーパント物質がポンプ光を吸収して第一の励起子を発生するように選択することができる。別の実施形態においては、該ホスト物質およびドーパント物質は、ホスト物質がポンプ光を吸収してホスト物質中に励起子を発生し、それが次に第一の励起子をドーパント物質中に発生するように選択することができる。
【0023】
別の実施形態において、該光伝導性有機物質は、ホスト物質および電荷分離を促すために役立つドーパント物質を含む。この実施形態において、第一の励起子による赤外線の吸収は、ドーパント物質のLUMOへの緩和によって電荷担体中に解離する第二励起子の発生をもたらす。
【0024】
別の実施形態において、第一の励起子は、最初の三重項励起子である。これらの三重項励起子による赤外線吸収は、電荷担体に解離するより高位の三重項励起子の発生をもたらす。1つの実施形態において、ポンプ光は、後で1つまたは複数の最初の三重項励起子に転化する1つまたは複数の一重項励起子を光伝導性有機物質中に発生させる。最初の三重項励起子は、また、光伝導性有機物質中でポンプ光によって直接の一重項−三重項遷移によって発生させることができる。
【0025】
最初の三重項励起子を使用する実施形態において、光伝導性有機物質は、ホスト物質およびリン光性ドーパント物質を含むことができる。好ましい実施形態において、ポンプ光は、そのリン光性物質中に1つまたは複数の一重項励起子を発生し、それはリン光性ドーパント物質中で例えば項間交差によって最初の三重項励起子に転化する。別の好ましい実施形態において、ポンプ光は、ホスト物質中で1つまたは複数の一重項励起子を発生し、それはリン光性ドーパント物質中で最初の三重項励起子に転化する。その転化は、一重項励起子から最初の三重項励起子への直接の項間交差により達成され得る。その転化は、また、リン光性ドーパント中の一重項励起子から最初の三重項励起子への項間交差が後に続くリン光性ドーパント物質中の一重項励起子へのエネルギーの移行によっても達成され得る。好ましくは、一重項励起子は、電荷分離のためのタイムスケール未満のタイムスケールで最初の三重項励起子に転化する。具体的な実施形態において、一重項励起子は、最初の三重項励起子に約1ピコ秒未満のタイムスケールで転化する。そのような速さの一重項から三重項への転化は、適切なエネルギーの三重項励起子を発生させるためにEminより上にある一重項励起子を利用することを可能にする。
【0026】
別の好ましい実施形態においては、最初の三重項励起子の生成を高めるために増感剤を使用する。1つの実施形態において、該ホスト物質は、リン光性ドーパント物質の一重項および三重項励起子準位内にはめこまれた一重項および三重項励起子準位を有するように選択する。かかるホスト物質は、したがって、増感剤としての役目を果たす。
【0027】
別の実施形態において、該光伝導性有機物質は、ホスト物質、リン光性ドーパント物質および増感剤物質を含む。ポンプ光は、リン光性ドーパント物質中で最初の三重項励起子に転化する1つまたは複数の一重項励起子を増感剤物質中で発生する。好ましくは、その増感剤物質は、前記リン光性ドーパント物質の一重項および三重項励起子準位内にはめこまれた一重項および三重項励起子準位を有する。
【0028】
本発明の方法は、IRによって発生した担体が光伝導物質における伝導性または抵抗の変化を検出することによって検出される光伝導デバイスを用いて実行することができる。
【0029】
本発明の方法は、また、整流接合を含む光起電デバイスを用いて実行することもでき、IRによって発生した担体は整流接合を横切る電圧を検出することによって検出される。この整流接合は、平面整流接合、混合ヘテロ接合、またはバルクヘテロ接合であり得るがこれらに限定されない。1つの実施形態において、該光伝導性有機物質は、整流接合を形成するためにアクセプター物質と接触して使用されるドナー物質である。かかる実施形態においてEminは、好ましくは、前記アクセプター物質のLUMOエネルギー以上である。より好ましくは、Eminは、前記アクセプター物質のLUMOエネルギーより約50mV高い。
【0030】
別の実施形態において、該光伝導性有機物質は、整流接合を形成するためにドナー物質と接触して使用されるアクセプター物質である。かかる実施形態においてEminは、好ましくは、前記アクセプター物質のHOMOエネルギーより高くない。より好ましくは、Eminは、前記アクセプター物質のHOMOエネルギーより約50mV低い。
【0031】
本発明は、また、第一の電極および第二の電極、ならびに該第一の電極と該第二の電極の間に配置されている本発明の光伝導性有機物質を含む赤外線を検出するための有機感光性光電子デバイスを提供する。その光伝導性有機物質は、本発明の方法に関連して上で記載した任意のものであり得る。
【0032】
本発明の有機感光性光電子デバイスは、有機光伝導物質に照射するために配置される可視および/または紫外光の光源をさらに含むことができる。可視および/または紫外光の強度は、本発明の方法と関連して記載したのと同じような方法で選択することができる。本発明の該有機感光性光電子デバイスは、2つの電極の間および2つの電極の少なくとも1つに隣接した少なくとも1つの励起子障壁層をさらに含むことができる。
【0033】
本発明は、また、赤外線の検出のための有機感光性光電子デバイス中で使用するための有機物質を提供する。その有機物質は、本発明の方法と関連して上で記載した任意のものであり得る。
【0034】
本発明は、また、複数の本発明の有機感光性光電子デバイスを含む赤外線を画像化するためのイメージャーも提供する。本発明のイメージャーは、好ましくは、少なくとも10、100、10000または10以上の有機感光性光電子デバイスを有する。本発明の該イメージャー中の有機感光性光電子デバイスは、1μm×1μm以下の大きさであり得る。好ましくは、本発明の該イメージャー中の複数の有機感光性光電子デバイスは、個別にアドレスできる配列を形成する。
【0035】
次の図に示されているデバイスにおける構造物構成要素は、必ずしも縮尺通りに描かれてはいない。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1A】ドーパントのS一重項(1Aおよび1D)およびT三重項(1Bおよび1C)励起状態による2つの光子の励起を示すエネルギー準位図を提示する図である。
【図1B】ドーパントのS一重項(1Aおよび1D)およびT三重項(1Bおよび1C)励起状態による2つの光子の励起を示すエネルギー準位図を提示する図である。
【図1C】ドーパントのS一重項(1Aおよび1D)およびT三重項(1Bおよび1C)励起状態による2つの光子の励起を示すエネルギー準位図を提示する図である。
【図1D】ドーパントのS一重項(1Aおよび1D)およびT三重項(1Bおよび1C)励起状態による2つの光子の励起を示すエネルギー準位図を提示する図である。
【図2】ドナー−アクセプターヘテロ接合のどちらかの成分における光で誘起された励起子の形成、およびその励起子が接合点において分離した電荷担体になる解離を説明するエネルギー準位図である。
【図3】ドナー中での光誘起された励起子の形成、およびドナー−アクセプター二重層の平面ヘテロ接合における励起子の解離を説明する図である。
【図4】ドナー層とアクセプター層の間に挟まれた混合ヘテロ接合中での光誘起された励起子の形成および解離を説明する図である。
【図5】バルク(非平面)ヘテロ接合中での光誘起された励起子の形成および解離を説明する図である。
【図6】一体の光源を有する有機感光デバイスを説明する図である。
【図7】代表的な三重項増感剤の構造を示す図である。
【図8】増感剤による三重項励起子の発生を説明するエネルギー準位図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本明細書で用いられる第一HOMOまたはLUMOエネルギー準位は、第一エネルギー準位が真空エネルギー準位に近い場合、第二HOMOまたはLUMOエネルギー準位より「より大きい」かまたは「より高い」。より高いHOMOエネルギー準位は、真空準位と比較してより小さい絶対エネルギーを有するイオン化ポテンシャル(「IP」)に相当する。同様に、より高いLUMOエネルギー準位は、真空準位と比較してより小さい絶対エネルギーを有する電子親和力(「EA」)に相当する。真空準位が首位を占める標準的なエネルギー準位図に関しては、物質のLUMOエネルギー準位は同じ物質のHOMOエネルギー準位より高い。
【0038】
有機物質との関連で、用語の「ドナー」および「アクセプター」とは、2つの接してはいるが異なる有機物質の最高被占分子軌道(「HOMO」)および最低空分子軌道(「LUMO」)のエネルギー準位の相対位置を表す。1つの物質がもう1つの物質と接している場合、より低いエネルギーのLUMOを有する物質がアクセプターであり、より高いエネルギーのLUMOを有する物質がドナーである。外部バイアスがない場合、ドナーのLUMOに昇格する電子が、ドナー−アクセプター接合点でアクセプター物質中に移動することはエネルギー的に起こり易い。その結果、励起子は分離された電荷担体に解離され、それは検出のために外付け回路に導くことができる。
【0039】
図2は、ドナー−アクセプターヘテロ接合のエネルギー準位の略図である。ドナー152またはアクセプター154中の光子6の吸収は、整流界面において解離する励起子8を生ずる。ドナー152は、正孔(白丸)を輸送し、アクセプター154は電子(黒丸)を輸送する。
【0040】
図3は、二重層ヘテロ接合のドナー層における励起子の光誘起生成、平面接合点におけるその励起子の電荷担体への解離、およびその電荷担体の接合点から離れる伝導を説明している。
【0041】
図4は、光活動性平面混合ヘテロ接合層153において起こる同じプロセスを説明している。平面混合ヘテロ接合において、ドナーおよびアクセプター物質は、約数ナノメートル以下の分子レベルでまたはその近くでブレンドされ、図4に示されている複合型のヘテロ接合の場合は、その混合された層はドナー層とアクセプター層の間に挟まれる。混合された層中の成分の濃度は、対応するドナーまたはアクセプター層あるいは電極に向かう勾配に沿って増加することができる。
【0042】
図5は、光活動性層が相互浸透性の有機ドナーおよびアクセプター相のブレンドであるバルクヘテロ接合において起こるプロセスを説明している。その相領域は、バルクヘテロ接合内の数ナノメートルから約100ナノメートルまでのいろいろなサイズであり得る。そのヘテロ接合は、不規則な混合物、またはドナー相とアクセプター相とが相互に浸透した規則的な網状組織であり得る。
【0043】
本明細書で使用される用語の「有機」としては、有機オプトエレクトロニックデバイスを組み立てるために使用することができるポリマー材料ならびに小分子の有機物質が挙げられる。「小分子」とは、ポリマーではない任意の有機物質を指し、「小分子」は、実際はかなり大きくてもよい。小分子としては、状況次第で繰り返し単位を含むことができる。例えば、置換基として長鎖アルキル基を使用することは分子を「小分子」の類から取り除かない。小分子は、また、例えばポリマー骨格のペンダント基として、またはその骨格の一部としてポリマー中に組み込むこともできる。小分子は、また、コア部分の上に形成された一連の化学殻からなるデンドリマーのコア部分としての役目を果たすこともできる。デンドリマーのコア部分は、蛍光またはリン光を発する小分子エミッターであり得る。デンドリマーは、「小分子」であり得る。一般に、小分子は、分子量が分子ごとに同じである確定した化学式を有しており、一方、ポリマーは、分子量が分子ごとに異なってもよい確定した元素比を有する。本明細書で使用される「有機」には、ヒドロカルビルおよびヘテロ原子置換ヒドロカルビル配位子の金属錯体を含める。
【0044】
本明細書で使用される「近および中間赤外線」とは、0.1と1.7eVの間のエネルギーを有する放射線を意味する。
【0045】
本出願は、赤外線を検出する方法を提供する。本発明の方法においては、光伝導性有機物質が、1つまたは複数のエネルギーEの第一の励起子を光伝導性有機物質中に発生させるのに適した光子エネルギーを有するポンプ光を照射される(ただし、Eは、電磁スペクトルの赤外域におけるエネルギー差によってその光伝導性有機物質中に電荷担体を発生させるための伝導性の最小励起エネルギーより低い)。ΔEがエネルギー差を表し、Eminが、光伝導性有機物質中に電荷担体を発生させるための伝導性の最小励起エネルギーを表す場合、そのとき、ΔE=Emin−Eである。その光伝導性有機物質は、赤外線にさらされる。赤外線が存在する場合、第一の励起子によるその赤外線の吸収は、電荷担体の発生をもたらし、それが検出される。本発明の方法は、近または中間赤外線(すなわち、ΔEが約0.1〜約1.7eVの範囲内である)を検出するために使用することができる。
【0046】
ポンプ光波長は、使用される光伝導性有機物質に基づいて決定され、一般に、電磁スペクトルの可視および紫外領域である。ポンプ光の強度は、十分な数の第一の励起子が発生するように好ましくは選択する。ポンプ強度の選択には、(a)検出される波長に対する励起状態の吸収係数、(b)励起状態の寿命、(c)デバイス活性領域の厚さ(さらにこれは電荷収集効率に依存する)、および(d)検出される入射光の期待される繰り返し率の1つまたは複数を含むさまざまな要因が影響を及ぼし得る。1つの実施形態において、ポンプ光の強度は、下の方程式(1)および(2)に基づいて決定される。ポンプ出力Pによって発生する励起子の数Nは、
【0047】
【数1】

【0048】
によって与えられ、ただし、
τ=励起状態の寿命、
α=グラウンドが励起状態に転移する吸収係数
R=層の反射率
d=層の厚さ
E=光子エネルギー
である。
信号電流は、そのとき、
【0049】
【数2】

【0050】
であり、ただし記号の意味は、それらがポンプではなくて持続時間tの信号パルスを表し、信号波長における吸収係数が、αSIG=αSIG(N)であることを除けば上と同じである。したがって、所定の信号電流検出方法に対して、その望ましいポンプ出力Pは、JSIGを検出する望ましい感度に基づいて、方程式(1)および(2)によって決定することができる。
【0051】
そのポンプ光は、任意の適当な時間的形態であることができる。好ましい実施形態において、そのポンプ光は、パルス光である。
【0052】
第一の励起子は、ポンプ光によって発生させることができ、赤外線を吸収して十分な能率で担体を発生する光伝導性有機物質中の任意の励起子であり得る。その第一の励起子は、ポンプ光によって光伝導性有機物質中で直接遷移により発生させることができる。その第一の励起子は、また、ポンプ光によって内部転換を経由して間接的に発生させることもでき、その場合、ポンプ光の吸収は、第一の励起子に転化する励起子を発生させる。
【0053】
1つの実施形態において、その第一の励起子は、最初の一重項励起子である。この最初の一重項励起子は、光伝導性有機物質中でポンプ光により直接の一重項−一重項遷移によって発生させることができる(例えば、図1A参照)。別の実施形態においては、ポンプ光は、光伝導性有機物質中に1つまたは複数のより高位の一重項励起子を発生させ、それはその後に1つまたは複数の最初の一重項励起子に転化する(例えば、図1D参照)。
【0054】
本発明において使用するのに適する一重項物質としては、可視またはUVの高いモル吸光係数、長い一重項励起子の寿命およびIR吸収によるより高位状態に遷移する十分な確率を有する一重項ベースの物質が挙げられる。このためには、凝集および自己失活を防ぐために好ましい十分に立体的にかさばっているアセンであるアセンが良好な候補である。ルブレンはそのような化合物の好例である。フェニルまたはt−ブチル置換ピレンまたはペリレンも良好な候補である。
【0055】
該光伝導性有機物質は、純物質または混合物質であり得る。好ましい実施形態において、該光伝導性有機物質は、ホスト物質およびドーパント物質を含む。1つの実施形態において、そのホスト物質およびドーパント物質は、ドーパント物質がポンプ光を吸収して第一の励起子を発生するように選択することができる。別の実施形態においては、そのホスト物質およびドーパント物質は、ホスト物質がポンプ光を吸収してホスト物質中で励起子を発生し、それが次にドーパント物質中で第一の励起子を発生するように選択することができる。
【0056】
別の実施形態においては、該光伝導性有機物質は、ホスト物質および電荷分離を促すために役立つドーパント物質を含む。この実施形態において、例えばホスト物質中の第一の励起子による赤外線の吸収は、ドーパント物質のLUMOへの緩和によって電荷担体に解離する第二励起子の発生をもたらす。
【0057】
ホスト物質およびドーパント物質を利用する実施形態において好ましいホスト物質の例としては、以下に限定はされないが、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド例えばポリ(フェニレンビニレン)など、フタロシアニン、ポルフィリンおよびそれらの遷移金属錯体例えばCoPc、F16CoPc、F16ZnPc、NiTPPなど、フラーレン例えばC60など、多環芳香族例えばPTCDA、NTCDA、TCTA、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ビスベンズイミダゾールなど、ならびに遷移金属、アクチニドおよびランタニドの錯体が挙げられる。
【0058】
好ましいドーパント物質の例としては、以下に限定はされないが、金属フタロシアニン、金属ポルフィリン、アントラセン、テトラセンおよびペンタセン等のアセン、ルブレン等の置換アセン、ならびにクマリン、蛍光染料、ローダミンその他等の通常のレーザー色素が挙げられる。
【0059】
本発明の方法は、IRによって発生した担体が光伝導物質における伝導性または抵抗の変化を検出することによって検出される光伝導デバイスを用いて実行することができる。
【0060】
本発明の方法は、また、整流接合を含む光起電デバイスを用いて実行することもでき、IRによって発生した担体は整流接合を横切る電圧を検出することによって検出される。この整流接合は、平面整流接合、混合ヘテロ接合、またはバルクヘテロ接合であり得るがこれらに限定されない。1つの実施形態において、該光伝導性有機物質は、整流接合を形成するためにアクセプター物質と接触して使用されるドナー物質である。かかる実施形態において、Eminは、好ましくは、前記アクセプター物質のLUMOエネルギー以上である。より好ましくは、Eminは、前記アクセプター物質のLUMOエネルギーより約50mV高い。
【0061】
別の実施形態において、該光伝導性有機物質は、整流接合を形成するためにドナー物質と接触して使用されるアクセプター物質である。かかる実施形態においてEminは、好ましくは、前記アクセプター物質のHOMOエネルギーより高くない。より好ましくは、Eminは、前記アクセプター物質のHOMOエネルギーより約50mV低い。
【0062】
整流接合を使用する実施形態において、適当なドナー物質としては、以下に限定されないが、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、オリゴチオフェン、フェニレンビニレン、オリゴピロール、テトラチアフルバレン、その誘導体および関連するフルバレン物質、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド例えばポリ(フェニレンビニレン)、フタロシアニン、ポルフィリン、アセンおよび置換アセン、カーボンナノチューブ、ならびに、それらが有効な電子ドナーであるように、デバイス中に使用されているアクセプター物質のそれより上のHOMO準位を有する配位化合物および有機金属錯体が挙げられる。
【0063】
適当なアクセプター物質としては、以下に限定はされないが、F16CoPc、F16ZnPc、NiTPPなど、テトラシアノエチレン、テトラシアノキヌクリジンおよびその誘導体、C60、C70およびその他のフラーレン、多環芳香族例えばPTCDA、NTCDA、TCTA、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ビスベンズイミダゾール、ならびに、それらが有効な電子アクセプターであるように、ドナーのそれより低いLUMO準位を有する配位化合物および有機金属錯体が挙げられる。
【0064】
別の実施形態において、該第一の励起子は、最初の三重項励起子である。これらの三重項励起子による赤外線吸収は、電荷担体に解離するより高位の三重項励起子の発生をもたらす。三重項励起状態は、一重項励起状態より数桁長い寿命を有し、三重項励起状態によるIR光子の吸収の可能性は著しく増加する。金属ポルフィリンは使用することができる物質の好例である。好ましくは、そのポルフィリンは、三重項状態の凝集および自己失活を防ぐために立体的に置換されている。ポルフィリンは、また、ソーレー(Soret)帯およびQ帯の両方への可視光に対する高い分子吸光度を有する。本発明において使用することができるポルフィリンの好ましい例は、テトラフェニルポルフィリン、テトラフェニルテトラベンゾポルフィリンおよび関連する立体的に置換された金属ポルフィリンのPtおよびPd錯体である。これらの物質は、高いISC効率を与え、100マイクロ秒を超える三重項寿命を有する。
【0065】
本発明において使用することができる物質の別の群は、重金属を含有する錯体、特に白金およびイリジウムのものである。これらの錯体の多くは、非常に高濃度においてさえも自己失活を防ぐために立体的に置換することができる。これらの錯体は、また、高効率のISCを有する。3つのPt錯体が実施例1に列挙されており、それらは純固体としてでさえも長い三重項の寿命を有する。これらの物質は、軽度におよび重度にドープした両方のフィルムにおいて長い三重項の寿命を有する(実施例1の表1参照)。ここでのTエネルギーは、薄膜に対するリン光エネルギーに基づいている。これらの化合物に対する励起は、UV〜青色光により達成することができる。
【0066】
1つの実施形態において、ポンプ光は、後で1つまたは複数の最初の三重項励起子に転化する1つまたは複数の一重項励起子を光伝導性有機物質中に発生させる(例えば、図1B参照)。最初の三重項励起子は、また、光伝導性有機物質中でポンプ光によって直接の一重項−三重項遷移によって発生させることができる(例えば、図1C参照)。
【0067】
最初の三重項励起子を使用する実施形態において、光伝導性有機物質は、ホスト物質および三重項発生性ドーパント物質例えばリン光性ドーパント物質等を含むことができる。その三重項発生性物質は、1つには、三重項−三重項吸収のエネルギーが、検出される放射線のエネルギー、高いモル吸光係数、効果的な項間交差、長い三重項寿命、およびより高位の三重項状態における効果的な電荷分離と釣り合うということに基づいて選択することができる。当然のことながら、本発明における使用に対して、三重項を生ずるドーパント物質からの効果的な光の放射は必要ではない。適当な三重項を生ずるドーパント物質としては、以下に限定はされないが、リン光性物質が挙げられる。本出願においては、簡単にするための理由で、三重項を生ずるドーパント物質を使用する実施形態は、リン光性物質に関連して多くの場合開示される。しかしながら、そのような開示は、他の三重項を発生する物質に同様に適用できることが考えられる。
【0068】
好ましい実施形態において、ポンプ光は、そのリン光性物質中に1つまたは複数の一重項励起子を発生し、それはリン光性ドーパント物質中で例えば項間交差によって最初の三重項励起子に転化する。別の好ましい実施形態において、ポンプ光は、ホスト物質中で1つまたは複数の一重項励起子を発生し、それはリン光性ドーパント物質中で最初の三重項励起子に転化する。その転化は、一重項励起子から最初の三重項励起子への直接の項間交差により達成され得る。この実施形態において、その転化は、また、リン光性ドーパント中の一重項励起子から最初の三重項励起子への項間交差が後に続くリン光性ドーパント物質中の一重項励起子へのエネルギーの移行によっても達成され得る。好ましくは、一重項励起子は、電荷分離のためのタイムスケール未満のタイムスケールで最初の三重項励起子に転化する。具体的な実施形態において、一重項励起子は、最初の三重項励起子に約1ピコ秒未満のタイムスケールで転化する。そのような速さの一重項から三重項への転化は、適切なエネルギーの三重項励起子を発生させるためにEminより上にある一重項励起子を利用することを可能にする。
【0069】
好ましいホスト物質としては、以下に限定されないが、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、オリゴチオフェン、フェニレンビニレン、オリゴピロール、テトラチアフルバレン、その誘導体および関連するフルバレン物質、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド例えばポリ(フェニレンビニレン)、フタロシアニン、ポルフィリン、アセンおよび置換アセン、カーボンナノチューブ、ならびに、それらが有効な電子ドナーであるように、デバイス中に使用されているアクセプター物質のそれより上のHOMO準位を有する配位化合物および有機金属錯体が挙げられる。
【0070】
好ましいリン光性ドーパント物質としては、以下に限定されないが、原子番号が40より大きい、好ましくはPd、Pt、Auである重金属イオンを有する金属ポルフィリンおよびフタロシアニン、金属イオンの原子番号が40より大きい、好ましくはRe、Os、Ir、Pt、Pb、Th、Biである有機金属錯体、強い項間交差を示すCuおよびMn錯体等の40未満の原子番号を有する金属錯体、25%より大きい項間交差効率を有するケトンおよび複素環物質等の有機物質が挙げられる。より好ましい実施形態においては、IrまたはPtの有機金属錯体がリン光性ドーパント物質として使用される。
【0071】
別の好ましい実施形態においては、最初の三重項励起子の生成を高めるために増感剤が使用される。三重項励起状態の高い光学密度を有するためには、固体フィルム中の高密度の三重項励起子が好ましい。有機物質中の三重項励起状態の形成は、三重項増感によって増進することができる。このプロセスは、IRを吸収する有機物質の三重項よりエネルギーが高い三重項状態に有効な項間交差を与える増感剤物質を使用する。その増感剤の三重項は、IRを吸収する有機分子に移される。このプロセスは図8に示されている。この実施形態において、重要な態様は、適切なエネルギーを有する増感剤を選択することである。好ましくは、増感剤の一重項と三重項のエネルギーは、IRを吸収する有機物質の一重項と三重項エネルギーの間(「はめこまれた形」)である。このようにして、増感剤は、IRを吸収する有機物質における三重項準位にエネルギー移行する三重項に急速に項間交差する一重項状態、例えばS、に選択的に励起させる(例えば同調レーザーによって)ことができる。このエネルギーの流れのプロセスは、J. Am. Chem. Soc.に発表された論文に報告されている(Sudhakar Madhusoodhananら、JACS、2003年、125(26)、7796〜7797頁)。この論文においては、(C^N)Ir(acac)のフッ素の三量体に移動するエネルギーについてのエネルギー移動プロセスが開示されている。(C^N)Ir(acac)とポリフルオレンの間のエネルギー移動プロセスも研究されている。
【0072】
このプロセスに対する増感剤の例としては、例えば、OLEDエミッターのために開発されたタイプの重金属を含有する錯体が挙げられる。それらは小さい一重項−三重項ギャップを有しており、要求されるほとんどの任意の三重項エネルギーを準備することができる。特定の実施形態において、ルブレンIR吸収物質に対しての増感剤として(Inp)Pt(dpm)または(btp)Pt(dpm)が使用される。有機物における三重項準位へのエネルギー移動は、非常に効率的であることが実証されている(上で引用したJACSの論文参照)。その有機物質(IR吸収剤)は、電荷分離がより高位の三重項準位、すなわち、Tを形成するヘテロ接合をつくるドナーまたはアクセプターに適合したエネルギー準位を有する固体状態で寿命の長い三重項を有するように選択することができる。第2の例は、フッ素オリゴマーまたはポリマーに対する増感剤としての(ppy)Ir(acac)の組合せである。オリゴマーまたはポリマーにおける三重項準位は、長寿命を有しており、それを優れたIR吸収剤にする。オリゴおよびポリフルオレンならびにテトラセンまたはペンタセン等のアセンも使用することができ、好ましくは、それらは自己失活を防ぐために置換されている。
【0073】
増感剤は、また、当業者には三重項増感剤であることが知られている有機物質から選択することができる。1つの実施形態において、このタイプの有機物質は、一重項と三重項の間に小さいエネルギー間隔を有しており、π−πおよびn−π遷移の両方を有する。三重項増感有機物質の例としては、ケトン類、例えばベンゾイン、ベンゾフェノンおよびチオキサントンなどが挙げられる。これらの物質は、オリゴおよびポリフルオレンについての三重項状態の形成に対する優れた増感剤でもある。
【0074】
1つの実施形態において、該ホスト物質は、前記リン光性ドーパント物質の一重項および三重項励起子準位にはめこまれた一重項および三重項励起子準位を有するように選択する。かかるホスト物質は、したがって、増感剤としての役目を果たす。特定の実施形態において、該光伝導性有機物質は、(1np)Pt(dpm)または(btp)Pt(dpm)のホスト物質、およびルブレンのリン光性ドーパント物質を含む。
【0075】
別の実施形態において、該光伝導性有機物質は、ホスト物質、リン光性ドーパント物質および増感剤物質を含む。ポンプ光は、リン光性ドーパント物質中で最初の三重項励起子に転化する1つまたは複数の一重項励起子を増感剤物質中で発生する。好ましくは、その増感剤物質は、前記リン光性ドーパント物質の一重項および三重項励起子準位内にはめこまれた一重項および三重項励起子準位を有する。
【0076】
本発明は、また、第一の電極および第二の電極、ならびに該第一の電極と該第二の電極の間に配置されている本発明の光伝導性有機物質を含む赤外線を検出するための有機感光性光電子デバイスを提供する。そのデバイスは、また、有機光伝導物質に照射するために配置された可視および/または紫外光の光源を含むこともできる。1つの実施形態において、そのデバイスは、2つの電極の間および2つの電極の少なくとも1つに隣接した少なくとも1つの励起子障壁層を含むこともできる。
【0077】
有機感光デバイスは、光を吸収して励起子を形成し、それを後に電子と正孔とに解離することができる少なくとも1つの光活性領域を含む。図2において、該光活性領域は、ドナー物質152およびアクセプター物質154を含む。その光活性領域において使用するための有機物質としては、シクロメタル化有機金属化合物を含めた有機金属化合物を挙げることができる。本明細書において用いられる用語の「有機金属」は、当業者に一般に理解されているものおよび、例えば、Gary L. MiesslerおよびDonald A. Tarrによる「Inorganic Chemistry」(第2版)、Prentice Hall社、(1998年)に示されているものと同じである。したがって、用語の有機金属は、炭素−金属結合を介して金属に結合した有機基を有する化合物を指す。この種類は、本質的に、ヘテロ原子由来のドナー結合のみを有する材料、例えば、アミン、ハロゲン化物、擬似ハロゲン化物(CN等)などの金属錯体である配位化合物などは含まない。実際には、有機金属化合物は、1つまたは複数の有機種に対する炭素−金属結合に加えて、1つまたは複数のヘテロ原子由来のドナー結合を一般に含む。その有機種に対する炭素−金属結合は、金属と有機基、例えば、フェニル、アルキル、アルケニルなどの炭素原子との間の直接結合を表すが、しかし、「無機炭素」例えばCNまたはCOの炭素などに対する金属の結合は意味しない。好ましくは、その金属は、遷移金属、アクチニド、またはランタニドである。重金属、すなわち、周期律表の5〜7周期のものは特に好ましい。本発明において使用するための三重項エネルギー準位の適当なエネルギーを有する多数の適切な有機金属錯体が当技術分野において知られている。
【0078】
用語の「電極」および「コンタクト」は、光誘起電流を外部回路に供給するためまたはバイアス電流もしくは電圧をデバイスに提供するための媒体を提供する層を表すために本明細書では同じ意味で用いられる。電極は、金属または「金属代替物」からなることができる。本明細書においては用語の「金属」は、元素として純粋な金属からなる物質と、また元素として純粋な2つ以上の金属からなる物質である金属合金の両方を包括して使用される。用語の「金属代替物」とは、通常の定義では金属ではないが、伝導性等の金属に似た特性を有する、例えばドープした広バンドギャップ半導体、縮退した半導体、伝導性酸化物、および伝導性ポリマー等の物質を表す。電極は、単一層または複数層(「複合電極」)を含むことができ、透明、半透明、または不透明であり得る。電極および電極材料の例としては、それぞれ、これらそれぞれの機能を開示するために参照により本明細書に組み込まれているBulovicらに対する米国特許第6,352,777号およびParthasarathyらに対する米国特許第6,420,031号に開示されているものが挙げられる。本明細書において使用される場合、層は、それが与えられた波長の電磁放射線に対して、それがその波長を有する電磁放射線の少なくとも50%を伝達する場合に「透明」であると言われ、それがその放射線の20%と50%の間を伝達する場合に「部分的に透明」であると言われる。
【0079】
基板は、望ましい構造特性を提供する任意の適当な基板であり得る。その基板は、柔軟性または硬直性、平面的または非平面的であり得る。その基板は、透明、半透明または不透明であり得る。硬直なプラスチックおよびガラスは、好ましい硬直な基板材料の例である。柔軟なプラスチックおよび金属箔は、好ましい柔軟な基板材料の例である。
【0080】
陽極平滑層を、陽極層とドナー層の間に置くことができる。陽極平滑層は、この機能に関係するその開示のために参照により本明細書に組み込まれているForrestらに対する米国特許第6,657,378号に記載されている。
【0081】
他に特定されていない限り、さまざまな実施形態のいずれの層も、任意の適当な方法によって堆積させることができる。有機層については、好ましい方法としては、それら全体が参照により組み込まれている米国特許第6,013,982号および米国特許第6,087,196号に記載されているような熱蒸着、インクジェット、それら全体が参照により組み込まれているForrestらに対する米国特許第6,337,102号に記載されているような有機気相蒸着法(OVPD)、およびそれら全体が参照により組み込まれている米国特許出願第10/233,470号に記載されているような有機蒸気ジェット印刷(OVJP)による堆積が挙げられる。その他の適当な堆積方法としては、スピンコーティングおよびその他の溶液に基づくプロセスが挙げられる。溶液に基づくプロセスは、好ましくは窒素または不活性雰囲気中で行う。その他の層については、好ましい方法としては、熱蒸着が挙げられる。好ましいパターン形成法としては、それら全体が参照により組み込まれている米国特許第6,294,398号および米国特許第6,468,819号に記載されているようなマスク、冷間圧接による堆積、およびインクジェットおよびOVJD等のいくつかの堆積方法と関連するパターニングが挙げられる。その他の方法も使用することができる。堆積すべき物質は、特定の堆積方法にそれらを適合させるように修正することができる。例えば、枝分かれしたまたは枝分かれしていない、好ましくは少なくとも3つの炭素を含有するアルキルおよびアリール基等の置換基を、小分子にそれらの溶液処理に耐える能力を高めるために使用することができる。20以上の炭素を有する置換基を使用することができるが、3〜20の炭素が好ましい範囲である。非対称構造を有する物質は、対称構造を有するものより、非対称物質が再結晶するより低い傾向を有し得るためにより良好な溶液処理の可能性を有することができる。溶液処理に耐える小分子の能力を高めるためにはデンドリマー置換基を使用することができる。
【0082】
担体移動度ならびに相対的HOMOおよびLUMO準位に基づいて光起電性ヘテロ接合中のドナーおよびアクセプターとしての役割を果たすように2つの有機光伝導性物質を如何に組み合わせるかは、技術的に周知であり、ここでは取り扱わない。
【0083】
さまざまなタイプのドナー−アクセプターヘテロ接合の例が、図3〜5に示されている。図3は、平面のヘテロ接合を形成するドナー−アクセプターの二重層を説明している。図4は、ドナー物質152とアクセプター物質154の間に配置されたドナー物質とアクセプター物質の混合物を含む混合されたヘテロ接合153を含むハイブリッドヘテロ接合を説明している。図5は、理想的な「バルク」ヘテロ接合を説明している。理想的な光電流の場合におけるバルクヘテロ接合は、ドナー物質252とアクセプター物質254の間に1つだけの連続的なインターフェースを有しているが、実際のデバイス中には多重インターフェースが一般的には存在する。混合およびバルクヘテロ接合は、複数の領域の物質を有する結果として複数のドナー−アクセプターインターフェースを有することができる。反対の型の物質によって取り巻かれている領域(例えばアクセプター物質によって取り巻かれているドナー物質の領域)は、これらの領域が光電流に寄与しないように電気的に隔離することができる。その他の領域は、これらの他の領域が光電流に寄与することができるように、パーコレーション経路(連続する光電流経路)により接続することができる。混合およびバルクヘテロ接合間の区別は、ドナーおよびアクセプター物質間の相分離度による。混合ヘテロ接合においては、相分離がほとんどないか全くなく(例えば、数ナノメートル未満と領域が非常に小さい)、一方、バルクヘテロ接合においては、顕著な相分離が存在する(例えば、数nm〜100nmの大きさの領域を形成する)。
【0084】
小分子混合ヘテロ接合は、例えば、真空堆積または蒸着を用いてドナーおよびアクセプター物質の同時堆積によって形成することができる。小分子バルクヘテロ接合は、例えば、制御成長、堆積後のアニーリングを伴う同時堆積、または溶解処理によって形成することができる。ポリマー混合またはバルクヘテロ接合は、例えば、ドナーおよびアクセプター材料のポリマーブレンドの溶解処理によって形成することができる。
【0085】
光活性領域が混合層(153)またはバルク層(252、254)と、ドナー(152)およびアクセプター層(154)の一方または両方とを含む場合、光活性領域は、「複合型」ヘテロ接合と言われる。図4の層の配列は、例示である。ハイブリッドヘテロ接合の付加的な説明のために、2005年10月13日に公開されたJiangeng Xueらによる名称が「High efficiency organic photovoltaic cells employing hybridized mixed−planar heterojunctions」である公開された米国特許出願第2005/0224113号を参照により本明細書に組み込む。
【0086】
一般に、平面ヘテロ接合は、良好な担体伝導性であるが、不十分な励起子解離性を有し、混合層は、不十分な担体伝導性と良好な励起子解離性とを有し、バルクヘテロ接合は、良好な担体伝導性と良好な励起子解離性とを有するが、材料の「行き止まり」の末端に電荷の積み上げを受けて効率を低下することがあり得る。特に明記しない限り、平面、混合バルクおよびハイブリッドヘテロ接合は、本明細書に開示されている実施形態を通してドナー−アクセプターヘテロ接合として互換的に使用することができる。
【0087】
該ドナー物質は、アクセプター物質のそれより小さいイオン化ポテンシャルを有する。さらにドナー層のイオン化ポテンシャルHOMO/LUMOギャップは、アクセプター層のそれよりも小さくなくてはならない。一般に、ドナーまたはアクセプター層を含む材料は、長い励起子拡散距離を有するべきであり、したがって、好ましくは、平面的な芳香族分子のような分子の整然とした積み重ねにそれら自身が役立つような物質である。
【0088】
該アクセプター物質は、例えば、ペリレン、ナフタレン、フラーレンまたはナノ小管を含むことができる。適当なアクセプター物質は、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ビス−ベンズイミダゾール(PTCBI)である。あるいは、該アクセプター層は、それら全体が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,580,027号に記載されているようなフラーレン物質を含むことができる。
【0089】
アクセプター層に隣接しているのは、有機ドナー型の物質の層である。アクセプター層とドナー層の境界は、内部的に発生される電界を生ずることができるヘテロ接合を形成する。本発明の光伝導性有機物質は、可視または紫外光を照射した際に励起子を発生する技術的に既知の任意の物質であり得る。ドナーおよびアクセプター成分のための適当な物質としては、以下に限定されないが、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド例えばポリ(フェニレンビニレン)など;フタロシアニン、ポルフィリンおよびそれらの遷移金属錯体例えばCoPc、F16CoPc、F16ZnPc、NiTPPなど;C60;多環芳香族例えばPTCDA、NTCDA、TCTA、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ビスベンズイミダゾールなど、ならびに遷移金属、アクチニドおよびランタニドの錯体、例えばRu(bpy)2+錯体などが挙げられる。
【0090】
一定の実施形態において、該活性領域は複数のサブセルを含み、すなわち、それは交互のドナー−アクセプター多層スタックである。その交互のドナー層とアクセプター層は、電荷トンネル現象を可能にするために薄い層であることが好ましい。当然のことながら、すべての光活性層は、好ましくは、少なくともIR放射線が検出されるオーダーであり、より好ましくは波長より数倍または多数倍厚い厚さを有する。
【0091】
図6に示されているデバイスは、光検出器が光にさらされたときに発生され、デバイスにバイアスを供給することができる電流または電圧を測定する電流または電圧検出回路であるエレメント607に接続することができる(例えば、Forrestらに対する2005年5月26日に公開された米国特許出願公開第2005/0110007号に記載されている)。整流接合が該デバイスから除かれる場合(例えば、光活性領域として単一の光伝導性物質を使用して)、その得られた構造物は、光伝導体セルとして使用することができ、その場合、エレメント607は、光の吸収によるそのデバイスを横切る抵抗の変化を監視する信号検出回路である。特に明記しない限り、これらの手筈と修正のそれぞれは、本明細書に開示されているそれぞれの図面および実施形態におけるデバイスに対して使用することができる。
【0092】
有機感光デバイスはまた、透明な電荷移動層、電極、または電荷再結合ゾーンも含むことができる。電荷移動層は、有機または無機であり得、光伝導的に活性であってもなくてもよい。電荷移動層は、電極と似ているが、デバイスの外部に対する電気的接続を有さず、電荷担体をデバイスの1つの小区分から隣接する小区分に送るのみである。電荷再結合ゾーンは、電荷移動層と似ているが、直列の感光デバイスの隣接する小区分間の電子および正孔の再結合を可能にする。電荷再結合ゾーンは、例えば、その再結合ゾーン物質および構造の開示に対してそれぞれ参照により本明細書に組み込まれているForrestらに対する米国特許第6,657,378号、2006年2月16日に公開されたRandらによる名称が「Organic Photosensitive Devices」である米国特許出願公開第2006−0032529A1号、および2006年2月9日に公開されたForrestらによる名称が「Stacked Organic Photosensitive Devices」である米国特許出願公開第2006−0027802A1号に記載されているようなナノクラスター、ナノ粒子および/またはナノロッドを含む半透明の金属または金属代替物の再結合中心を含むことができる。電荷再結合ゾーンは、再結合中心が埋め込まれる透明なマトリックス層を含んでも含まなくてもよい。電荷移動層、電極、または電荷再結合ゾーンは、デバイスの小区分の陰極および/または陽極としての役目を果たすことができる。電極または電荷移動層はショットキーコンタクトとしての役目を果たすことができる。
【0093】
有機感光デバイスにおいて使用される電極の例は、参照により本明細書に組み込まれている米国特許第6,352,777号に示されている。本明細書において使用されるとき、用語の「電極」とは、光によって発生された電荷担体を外部回路に送るため、および何らかのバイアス電圧をそのデバイスに提供するための媒体を提供する導電層を指す。すなわち、電極は、デバイスの光活性領域と電荷担体を外部回路に行き来させるためのワイヤ、リード、トレースまたはその他の手段との間のインターフェースを提供する。
【0094】
感光デバイスにおいては、デバイス外部からの周囲の電磁放射線の最大量が光活性内部領域に入ることが可能であることが望ましい。すなわち、電磁放射線は、それが電荷担体を生じさせる励起子を発生することができる光活性層に到達しなければならない。これはしばしば、好ましくは、電極の少なくとも1つが入射電磁放射線を最小限に吸収し、最小限に反射するものであるべきことを決定付ける。すなわち、かかる電極は実質的に透明でなくてはならない。対向電極は同様に透明であることが良く、さもないとそれは反射性であり得、その結果吸収されずにセルを通過した光がセルによって反射して戻される。本明細書において使用される場合、物質の層またはさまざまな物質の一連の層は、その層または複数層が、関連する波長の周囲の電磁放射線の少なくとも50%がその層または複数層を通って伝わることを許容するとき「透明」であると言われる。
【0095】
本発明の実施形態は、該感光デバイスの1つまたは複数の透明電極として、Parthasarathyらに対する米国特許出願第09/054,707号に開示されているような高度に透明な非金属の低い抵抗の陰極、またはForrestらに対する米国特許第5,703,436号(「Forrest’436」)に開示されているような高効率の低い抵抗の金属/非金属化合物の陰極を含むことができる。それぞれのタイプの陰極は、ITO層を高度に透明な非金属で低抵抗の陰極を形成するためにCuPc等の有機物質上にかまたは高効率で低抵抗の金属/非金属化合物の陰極を形成するために薄いMg:Ag層上に堆積させるスパッタリングステップを含む加工プロセスにおいて好ましくは調製される。Parthasarathyらは、ITO層が堆積されている有機層の代わりに有機層が堆積されているITO層は、効率的な陰極として機能しないことを開示している。
【0096】
上記のデバイスのそれぞれにおいて、反射層または追加の光活性領域等の層を追加することができる。層の順番は、変更または逆にすることができる。効率を増すために、例えば、参照により本明細書に組み込まれているForrestらに対する米国特許第6,333,458号およびPeumansらに対する米国特許第6,440,769号に開示されているようなコンセントレータまたはトラッピング構造を使用することができる。例えば、参照により本明細書に組み込まれている2005年12月1日に公開されたPeumansらの米国特許出願公開第2005/0266218号に開示されているようなコーティングを使用してデバイスの望ましい領域に光エネルギーを集中させることができる。直列デバイスにおいては、透明な絶縁層をセル間に形成させることができ、そのセル間の電気的接続は電極によって提供される。また、直列デバイスにおいては、1つまたは複数の光活性領域が、ドナー−アクセプターヘテロ接合の代わりにショットキー障壁ヘテロ接合であることができる。例えばセルの間に配置した再結合ゾーンのような具体的に記載したもの以外の配置を使用することができる。
【0097】
本発明の検出器の光活性領域は、光伝導性有機物質を含む。操作中、この光活性物質は、S状態の励起子を生成する十分なエネルギーを有する高エネルギー放射線のパルス(例えば、フラッシュランプまたはダイオードレーザーから)によって最初に励起される。その励起子の寿命の間に、その光活性領域は、次に検出すべき近または中間IR放射線にさらされる。当然のことながら、一重項励起子の寿命は一般的には非常に短く、適切に短いパルスおよび速いサーキットリをこれらの検出器の操作においては使用する。中間または近IR放射線は、基底状態の光伝導性物質をS状態に励起できるほど強力ではないが、S励起子をより高い、ただしより狭い間隔準位の一般的にはSまたはLUMO状態に上げるには十分に強力である。
【0098】
赤外線の吸収は、有機物質中では一般的に振動モードで励起する。電子励起は、有機物質中のHOMOとLUMOの間のエネルギーギャップが一般的には大きく、励起子の形成には、SからSへの遷移を引き起こすためにスペクトルの可視および紫外領域の光子を必要とするために稀である。本発明の検出器は、S〜Sのギャップより接近した間隔である半導体またはドーパント中の励起状態間の電子エネルギー準位を利用する。分子は最初のUVまたは可視光パルスによって励起状態に送り込まれ、その励起状態は、接近した間隔の励起状態の故に、IR吸収性の種としての役割を果たす。好ましい実施形態において、該IR放射線は近および中間IR放射線である。
【0099】
得られたより高いエネルギーの励起子の解離に由来する電荷担体を検出することによって、次に、そのIRの強度の測定結果が提供される。好ましくは、該光伝導性有機ホスト物質は、SまたはLUMO励起子のそれらの構成要素である電荷への緩和および解離のためのルートを提供し、その電荷の収集および検出を可能にするようにドープされている。該光伝導性有機ホスト物質は、1つには、利用できるSまたはLUMO準位が、検出されるべき放射線のエネルギーに相当するギャップによってS状態から分離されることに基づいて選択することができる。そのドーパントは、1つには、ドーパントLUMOのエネルギー準位がホスト物質SまたはLUMO励起子のエネルギー準位より低いことに基づいて選択することができる。適当な物質としては、以下に限定されないが、ルブレンおよびフェニルまたはt−ブチル置換ピレン、ペリレン、およびアセン(例えば、テトラセンおよびペンタセン)が挙げられる。
【0100】
もう1つの別の実施形態においては、光伝導性物質の照射は、IR吸収性一重項状態の励起子より高いエネルギーの一重項状態の励起子を発生し、エネルギーがそのより高いエネルギーの一重項状態の励起子からIR吸収性一重項状態の励起子に移動する。IR吸収性一重項状態の励起子の検出すべき近または中間赤外線による照射は、これらの励起子の少なくとも1つを電荷に解離する十分なエネルギーを有する一重項状態の励起子に転化する(例えば図1D参照)。そのより高いエネルギーの一重項状態の励起子はそのとき解離し、発生した電荷が上記のように検出される。
【0101】
好ましい実施形態において、一重項状態の励起子の短い寿命から生じる不都合は、三重項発生物質を使用することによって減少される。可視またはUVパルスによる照射の後、一重項状態からより長い寿命の三重項状態(例えば、T)への項間交差が三重項発生物質中で起こる。その三重項状態の励起子の寿命の間にそれらはそれらをより高い三重項(例えば、T)状態に励起する検出されるべき近または中間IR放射線にさらされる。上記の一重項の実施形態によるのと同様に、これらのより高いエネルギーの三重項励起子は、例えばヘテロ接合における解離によって緩和し、それによって生じた電荷のその後の検出が伴う。その三重項発生物質は、1つには、三重項状態の励起子のエネルギー準位からのより高位の三重項エネルギー準位が、検出されるべき放射線のエネルギーと釣り合うギャップによるポンプ光によって発生するということに基づいて選択することができる。好ましい物質は、高いモル吸光係数、効率的な項間交差、長い三重項寿命、およびより高位の三重項状態における効率的な電荷分離を有する。適当な物質としては、以下に限定されないが、立体的に束縛された金属ポルフィリン、特にテトラフェニルポルフィリン、テトラフェニルテトラベンゾポルフィリンのPdおよびPt錯体などが挙げられる。
【0102】
適当なのは、シクロメタル化したPtおよびIrジケトネート錯体であり、その代表的な例は図7に示されている。
【0103】
図6は、一例として、例えば発光ダイオードまたはレーザーダイオードであり得る光ポンプとしてのソリッドステートの高エネルギー光源601を組み込んでいる本発明によるデバイスを説明している。光源として特に好ましいのは注入レーザーダイオードである。この光源は、放出される放射線が、望ましい最初のSからSへの遷移のためにホスト物質またはドーパントの吸収スペクトルに的確に適合するように選択する。この実施形態においては、電源601からの光は、透明な絶縁層602および透明な電極603(これは陽極または陰極であり得る)を通過してドープした半導体層604に入り、そこで光子が吸収されてS状態の励起子が生ずる。これらのS状態の励起子は、エネルギーをドーパントに移し、項間交差を受けて比較的長寿命のT励起子を生ずる励起子を生ずる。検出されるべき赤外線がいくらかでもある場合は、それとの相互作用が、ドーパントT励起子を、ヘテロ接合のアクセプター成分のLUMOよりエネルギーの高いT(またはより高い)状態に昇進させる。その三重項励起子の層を有するヘテロ接合605への移動によりその接合点において電荷分離が続き、技術的に周知の方法によってその電荷は次に電極603および606を経由して検出器回路607に伝導される。別の実施形態においては、層604および605は、組み合わされて混合またはバルクヘテロ接合となる。電極606は、赤外線に対して透明であることができ、検出器窓としての役目を果たす。
【0104】
関連する励起状態の寿命に適合する周波数で、電源601をパルスにし、検出器607からの出力をサンプリングするためには、外付け回路を使用することができる。
【0105】
別の実施形態においては、層605は、同じか異なるドーパントによりドープしてよく、あるいは、より広い範囲の入射波長を旨く利用するために、複数のドーパントをどちらかまたは両方の層において使用することができる。
【0106】
該光伝導性有機物質は、ホスト励起子が移動することができるドーパントを含有している。光伝導性物質と共に使用するのに適している技術的に既知の任意のドーパントを使用することができる。適当な物質としては、以下に限定されないが、Zn(BTZ)、DPVBi、BCzVBi、NPAFN、インデノ[1,2,3−cd]ペリレンなどが挙げられる。ドーパントの量は、ホスト物質に対して一般的には重量基準で約15%未満である。好ましくは、該ドーパントは、2〜10%の水準で存在する。
【0107】
好ましい実施形態において、該ドーパントは、可視または紫外光を照射すると、または一重項励起子からエネルギー転移すると、項間交差を受けて三重項T状態を生じる物質である。特に好ましいのは、有機発光ダイオード(OLED)中のエミッターとして有用であることが技術的に既知である、金属ポルフィリンおよび有機金属イリジウム錯体である。OLEDの製造におけるリン光性ドーパントの有用性の故に、多くのそのような物質が当業者には知られている。例えば、参照によりそれら全体が組み込まれている、Baldoら、「Highly Efficient Phosphorescent Emission from Organic Electroluminescent Devices」、Nature、395巻、151〜154頁、1998年、および、Baldoら、「Very high−efficiency green organic light−emitting devices based on electrophosphorescence」、Appl. Phys. Lett.、75巻、No. 1、4〜6(1999年)、を参照されたい。その他の代表的なリン光性ドーパントは、すべてが参照によりそれら全体が本明細書に組み込まれている、米国特許第6,303,238号、米国特許第6,310,360号、米国特許第6,830,828号、米国特許第6,939,624号、および米国特許第6,835,469号、ならびに特許出願公開の国際公開第02/074015号および米国特許出願公開第2008/0061681号に開示されており、参照により本明細書に組み込まれている、「Organic Light−Emitting Devices: Synthesis, Properties and Applications」、K. MullenおよびU. Scherf編、(Wiley−VCH、ワインハイム、ドイツ、2006年)、およびR.C. Evans、P. DouglasおよびC.J. Winscom、Coordination Chem. Rev.、250巻(15〜16)、2093〜2126頁(2006年)も参照されたい。当然のことながら、本発明における使用に対して、効率的な光の放射は判断基準ではなく、好ましいドーパントは、より効率的に三重項励起子の成分電荷への解離を受けるものである。適当な例としては、以下に限定されないが、lr(ppy)、Ir(bim)acac、Ir(btb)acac、Ir(piq)(acac)などが挙げられる。
【0108】
別の実施形態においては、三重項増感剤を使用して、ポンピング放射を三重項状態の励起子に転化させ、これが、エネルギーがホスト物質に(または添加したドーパントに)移動した時点で長寿命のIR吸収性のT状態を直接生成する。その増感剤は、ホスト物質の一重項と三重項エネルギーの間の一重項と三重項エネルギーを有することができ、その結果、それは選択的にS状態に移すことができる。項間交差が次にT三重項状態を生じる。適当な増感剤としては、以下に限定されないが、ベンゾイン、ベンゾフェノン、チオキサントンなどのアリールケトン類、シクロメタル化イリジウム錯体FP、PPY、BT、PQ、BTPなどの重金属錯体類、および(1−np)Pt(dpm)および(btp)Pt(dpm)等の白金錯体類が挙げられる(図7参照)。増感剤T状態がエネルギーを移動する有機ホストまたはドーパントは、寿命の長い三重項を有するように選択することができる。エネルギー準位は、電荷分離がIR放射線の吸収によって生じたより高いT準位から起こるようにヘテロ接合ドナー−アクセプター対に合わせることができる。適当な物質としては、オリゴ−およびポリ−(9,9−ジアルキルフルオレニル−2,7−ジイル)、ルブレン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセンなどが挙げられる。適当な増感剤およびそれらを選択するための方法は、本明細書に参照によりそれら全体が組み込まれているP. Djurovichら、Dalton Trans.、2007年、3763〜3770頁およびM. Sudhakarら、J. Am. Chem. Soc.、2003年、125巻、7796〜7797頁に開示されている。
【0109】
本発明のIR感知性光検出器デバイスは、赤外線撮像応用に適する焦点面アレーで使用するための、例えば、大きさが1μm×1μm以下の小スケールで製造することができる。したがって、本発明は、上記の複数の有機感光性光電子デバイスを含む赤外線を画像化するためのイメージャーを提供する。複数の有機感光性光電子デバイスは、少なくとも10、100、10000または10以上の有機感光性光電子デバイスを含むことができる。好ましい実施形態において、その複数の有機感光性光電子デバイスは、配列を形成する。好ましくは配列中のそれぞれのデバイスは、個々にアドレス可能である。例として、本発明のイメージャーは、人工衛星および航空機に搭載される偵察および兵器の標的用カメラ、暗視ゴーグル、銃の照準器、ビデオカメラ、防犯カメラ、アマチュア望遠鏡、デジタルカメラ、製造ライン監視装置、医学画像、リモートセンシング装置、および自動車、トラックおよびバス用の暗視装置に組み込むことができる。画像形成の応用に加えて、本発明の検出器は、キャリブレーションに対して安定していて従順であることが期待され、パイロメータ、赤外線放射温度計、および赤外輝線走査システム等の装置において使用することができる。
【0110】
(実施例)
次の実施例は、本発明の方法およびデバイスを説明するために提示され、本発明を限定することは何ら意図されていない。
【0111】
(実施例1)
一重項ベースの物質を用いる赤外線の検出
この例は、ルブレンにおける赤外線の検出を示す。ルブレンは、約2.5eVの可視の青い領域における高いモル吸光係数、長いS寿命および約4eVのS状態へのNIR変換に対する良好な遷移確率を示す。それは、十分に立体的にかさだかでもあり、凝集および自己失活を防ぐ。
【0112】
ITO陰極層、LiF:Al陽極層およびルブレンの薄膜を含有する光伝導性セルを、ITOを被覆したガラス基板上に熱蒸着によって50nmのルブレンを堆積させ、続いて5nmのLiF層および100nmのAlを堆積させることによって作製する。
【0113】
その光伝導性セルの吸収性を測定する。その光伝導性セルは、450nmに合わせた可視ポンプ光、および750nmの波長の近赤外線の2つの独立した放射線源によってガラス側から照射する。その可視とIRのパルスの相対的タイミングは調節可能であり、IR吸収と電荷発生に関するIRと可視の間の遅延時間の影響を調査することが可能である。ポンプ光がスイッチを切られているときは赤外線の吸収は検出されず、赤外線がこれらの物質中の励起子を励起するには不十分であることを確認する。可視のポンプ光が調整されているとき、赤外線の吸収は可視とIRがタイミングよく重なり合うときは検出されるが、IRと可視の間の遅延時間が100ナノ秒より長いときは検出されない。結果はルブレンのS状態によるIR吸収を示す。
【0114】
フィルムの電気抵抗も測定する。抵抗の減少はIR吸収と関連付けて観察する。
【0115】
同様の測定を純ルブレン層の代わりに10%のルブレンをドープしたポリ層(フェニレンビニレン)(PPV)を含有する光伝導性セルにより実施する。類似した結果が得られる。
【0116】
ITO陰極層、C60(50nm)、10%のルブレン(50nm)をドープしたポリ(フェニレンビニレン)(PPV)の薄膜、およびLiF:Al陽極(5nmのLiF:100nmのAl)層を含有する光伝導性セルをガラス基板上に作製する。電極間の電圧を測定し、そのIR吸収を、IRと可視の間の遅延時間の関数として測定する。
【0117】
(実施例2)
三重項ベースの物質を用いる赤外線の検出
この例は、三重項ベースの物質における赤外線の検出を示す。
【0118】
ITO陰極層、LiF:Al陽極層および約10%のPtテトラフェニルポルフィリン(PtTPP)をドープしたポリ(フェニレンビニレン)(PPV)の薄膜を含有する光伝導性セルを、ITOを被覆したガラス基板上に、ITO上に50nmのPPV:PtTPPの層を生成させるために、超高真空中でPPVおよびPtTPPのための前駆体を熱共蒸着させることによって、続いて5nmのLiF層および100nmのAlを堆積させることによって作製する。
【0119】
その光伝導性セルの吸収性を最初に測定する。その光伝導性セルは、400nmに合わせた可視ポンプ光、および750nmの波長の近赤外線の2つの独立した放射線源によってガラス側から照射する。その可視とIRのパルスの相対的タイミングは調節可能であり、IR吸収と電荷発生に関するIRと可視の間の遅延時間の影響を調査することが可能である。ポンプ光がスイッチを切られているときは赤外線の吸収は検出されず、赤外線がこれらの物質中の励起子を励起するには不十分であることを確認する。可視のポンプ光がスイッチオンされており、可視とIRが時間内に重なり合うときは、赤外線の吸収が検出される。ポンプ光とIRの間の時間遅延のIR吸収に関する影響も詳細に調査する。IRの吸収は、IRと可視の間の遅延時間が増すと、約100μsの半減期により、減少が見られる。
【0120】
フィルムの電気抵抗も測定する。抵抗の減少はIR吸収と関連付けて観察する。
【0121】
同様の測定を、約10%の次の3つのPt錯体(dpm=ジピバロイルメタン(ビス−t−ブチルアセチルアセトン)、純固体としてでさえも非常に長い三重項寿命を有する)をドープしたPPVを含有する光伝導性セルにより実施する。これらの3つのPt錯体は、低濃度および高濃度にドープしたフィルムの両方において長い三重項寿命を有する。ここでのTエネルギーは、薄膜についてのリン光エネルギーに基づいている。これらの化合物に対する励起は、UV〜青色光により達成することができる。
【0122】
【化1】

【0123】
【表1】

【0124】
(実施例3)
三重項ベースの物質および増感剤を用いる赤外線の検出
電極および増感剤として約10%の(ppy)Ir(acac)を含むまたは含まないフッ素オリゴマーFの約10%をドープしたポリ(フェニレンビニレン)(PPV)の薄膜を含有する光伝導性セル。これらのセルを、PPVのための前駆体、PPV:FまたはPPV:(ppy)Ir(acac):Fの50nmの層を形成するための(ppy)Ir(acac)を含むまたは含まないフッ素オリゴマーFをITO上に熱共蒸着させ、続いて5nmのLiFおよび100nmのAlを堆積させることによって作製する。Fは、おおよそ約540〜580nmの三重項エネルギーを有すると推定される。加えて、Fは、リン光体が強く吸収する領域(すなわち435nm)においては無視できる吸収を有し、リン光体の直接励起を可能にする。
【0125】
その光伝導性セルの吸収性を最初に測定する。その光伝導性セルは、435nmに合わせた可視ポンプ光、および750nmの波長の近赤外線の2つの独立した放射線源によってガラス側から照射する。その可視とIRのパルスの相対的タイミングは調節可能であり、IR吸収と電荷発生に関するIRと可視の間の遅延時間の影響を調査することが可能である。ポンプ光がスイッチを切られているときは赤外線の吸収は検出されず、赤外線がこれらの物質中の励起子を励起するには不十分であることを確認する。可視のポンプ光がスイッチオンされており、可視とIRが時間内に重なり合うときは、赤外線の吸収が検出される。IRの吸収は、(ppy)Ir(acac)を有さないフィルムと比較すると(ppy)Ir(acac)を有するフィルムにおいてより高く、増感剤の含有の結果としての項間交差の高まりを示す。
【0126】
フィルムの電気抵抗も測定する。抵抗の減少はIR吸収と関連付けて観察する。
【符号の説明】
【0127】
6 光子
8 励起子
10 真空準位
152 ドナー
153 ヘテロ接合
154 アクセプター
252 ドナー物質
254 アクセプター物質
601 光源
602 絶縁層
603 電極
604 ドープした半導体層
605 ヘテロ接合層
607 検出器回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線を検出する方法であって、
(i)光伝導性有機物質中にEminより低いΔEの範囲内にあるエネルギー準位Eを有する1つまたは複数の第一の励起子を発生させるのに適した光子エネルギーを有するポンプ光を前記光伝導性有機物質に照射するステップ(ここで、Eminは、前記光伝導性有機物質中に電荷担体を発生させるための最小励起エネルギーであり、ΔEは電磁スペクトルの赤外域である)、
(ii)前記光伝導性有機物質を前記赤外線にさらし、前記第一の励起子による前記赤外線の吸収により電荷担体の発生をもたらすステップ、および
(iii)前記発生した電荷担体を検出するステップ
を含む方法。
【請求項2】
ΔEが、約0.1〜約1.7eVの範囲内である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポンプ光が可視および/または紫外線である請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ポンプ光が、パルス光である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ポンプ光の強度が、高感度の電荷検出のために、前記第一の励起子の十分な数が発生されるように選択される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数の第一の励起子が一重項励起子である請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記光伝導性有機物質が、ホスト物質およびドーパント物質を含み、前記ドーパント物質が前記ポンプ光を吸収して前記第一の励起子を発生する請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記光伝導性有機物質が、ホスト物質およびドーパント物質を含み、前記ホスト物質が前記ポンプ光を吸収して、前記ドーパント物質中の前記第一の励起子に転化する励起子を前記ホスト物質中で発生する請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記ホスト物質が、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド、フタロシアニン、ポルフィリン、遷移金属錯体、C60、多環芳香族、ならびに遷移金属、アクチニドおよびランタニドの錯体からなる群から選択される請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
前記ドーパント物質が、金属フタロシアニン、金属ポルフィリン、アセン、置換アセン、およびレーザー色素からなる群から選択される請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記光伝導性有機物質が、ホスト物質およびドーパント物質を含み、前記第一の励起子による前記赤外線の吸収が、前記ドーパント物質のLUMOへの緩和によって電荷担体に解離する第二励起子の発生をもたらす請求項6に記載の方法。
【請求項12】
前記光伝導性有機物質がドナー物質であり、前記ドナー物質がアクセプター物質と接触して整流接合を形成する請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
minが前記アクセプター物質のLUMOエネルギー以上である請求項12に記載の方法。
【請求項14】
minが前記アクセプター物質のLUMOエネルギーより約50mV高い請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記光伝導性有機物質がアクセプター物質であり、前記アクセプター物質がドナー物質と接触して整流接合を形成する請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
minが前記アクセプター物質のHOMOエネルギー以下である請求項15に記載の方法。
【請求項17】
minが前記アクセプター物質のHOMOエネルギーより約50mV低い請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記ドナー物質が、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、オリゴチオフェン、フェニレンビニレン、オリゴピロール、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド、フタロシアニン、ポルフィリン、アセンおよび置換アセン、カーボンナノチューブ、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される物質を含む請求項12から17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アクセプター物質が、F16CoPc、F16ZnPc、NiTPP、テトラシアノエチレン、テトラシアノキヌクリジンおよびその誘導体、フラーレン、多環芳香族、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される物質を含む請求項12から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記整流接合が、平面整流接合、混合ヘテロ接合、またはバルクヘテロ接合である請求項12から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記1つまたは複数の第一の励起子が、三重項励起子である請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記ポンプ光が、前記光伝導性有機物質中で前記1つまたは複数の第一の三重項励起子に転化する1つまたは複数の一重項励起子を発生し、前記1つまたは複数の第一の三重項励起子による前記赤外線の吸収が電荷担体に解離する1つまたは複数の第二の三重項励起子の発生をもたらす請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記光伝導性有機物質が、ホスト物質およびリン光性ドーパント物質を含み、前記ポンプ光が、前記リン光性ドーパント物質中で1つまたは複数の一重項励起子を発生し、これらの一重項励起子が前記リン光性ドーパント物質中で前記第一の三重項励起子に転化する請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記光伝導性有機物質が、ホスト物質およびリン光性ドーパント物質を含み、前記ポンプ光が、前記ホスト物質中で1つまたは複数の一重項励起子を発生し、これらの一重項励起子が前記リン光性ドーパント物質中で前記第一の三重項励起子に転化する請求項21または22に記載の方法。
【請求項25】
前記一重項励起子が、前記第一の三重項励起子に、電荷分離のためのタイムスケールより小さいタイムスケールで転化する請求項23または24に記載の方法。
【請求項26】
前記一重項励起子が、前記第一の三重項励起子に約1ピコ秒未満のタイムスケールで転化する請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記ホスト物質が、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、オリゴチオフェン、フェニレンビニレン、オリゴピロール、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド、フタロシアニン、ポルフィリン、アセンおよび置換アセン、カーボンナノチューブ、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される請求項21から26のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記リン光性ドーパント物質が、40より大きい原子番号を有する重金属イオンを有する金属ポルフィリンおよびフタロシアニン、40より大きい原子番号を有する金属イオンを有する有機金属錯体、および原子番号40未満であり25%より大きい項間交差効率を有する金属イオンを有する金属錯体からなる群から選択される請求項21から27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記リン光性ドーパント物質が、IrまたはPtの有機金属錯体である請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記ポンプ光が、前記光伝導性有機物質中で前記1つまたは複数の第一の三重項励起子を直接の一重項−三重項遷移によって発生させ、前記1つまたは複数の第一の三重項励起子による前記赤外線の吸収が、電荷担体に解離する1つまたは複数の第二の三重項励起子の発生をもたらす請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記ホスト物質が、前記リン光性ドーパント物質の一重項および三重項励起子準位内にはめこまれた一重項および三重項励起子準位を有する請求項24に記載の方法。
【請求項32】
前記ホスト物質が(1np)Pt(dpm)または(btp)Pt(dpm)であり、前記リン光性ドーパント物質がルブレンである請求項31に記載の方法。
【請求項33】
前記光伝導性有機物質が、ホスト物質、リン光性ドーパント物質および増感剤物質を含み、前記ポンプ光が、前記増感剤物質中で1つまたは複数の一重項励起子を発生し、これらの一重項励起子が前記リン光性ドーパント物質中で前記第一の三重項励起子に転化する請求項21または22に記載の方法。
【請求項34】
前記増感剤物質が、前記リン光性ドーパント物質の一重項および三重項励起子準位にはめこまれた一重項および三重項励起子準位を有する請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ホスト物質が、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、オリゴチオフェン、フェニレンビニレン、オリゴピロール、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド、フタロシアニン、ポルフィリン、アセンおよび置換アセン、カーボンナノチューブ、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される請求項33または34に記載の方法。
【請求項36】
前記リン光性ドーパント物質が、40より大きい原子番号を有する重金属イオンを有する金属ポルフィリンおよびフタロシアニン、40より大きい原子番号を有する金属イオンを有する有機金属錯体、および原子番号40未満であり25%より大きい項間交差効率を有する金属イオンを有する金属錯体からなる群から選択される請求項33から35のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記増感剤物質が、40より大きい原子番号を有する重金属イオンを有する金属ポルフィリンおよびフタロシアニン、40より大きい原子番号を有する金属イオンを有する有機金属錯体、および原子番号40未満であり25%より大きい項間交差効率を有する金属イオンを有する金属錯体からなる群から選択される請求項33から36のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記光伝導性有機物質がドナー物質であり、前記ドナー物質がアクセプター物質と接触して整流接合を形成する請求項21から37のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
minが前記アクセプター物質のLUMOエネルギー以上である請求項38に記載の方法。
【請求項40】
minが前記アクセプター物質のLUMOエネルギーより約50mV高い請求項39に記載の方法。
【請求項41】
前記光伝導性有機物質がアクセプター物質であり、前記アクセプター物質がドナー物質と接触して整流接合を形成する請求項21から37のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
minが前記アクセプター物質のHOMOエネルギー以下である請求項41に記載の方法。
【請求項43】
minが前記アクセプター物質のHOMOエネルギーより約50mV低い請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記ドナー物質が、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、オリゴチオフェン、フェニレンビニレン、オリゴピロール、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド、フタロシアニン、ポルフィリン、アセンおよび置換アセン、カーボンナノチューブ、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される物質を含む請求項38から43のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記アクセプター物質が、F16CoPc、F16ZnPc、NiTPP、テトラシアノエチレン、テトラシアノキヌクリジンおよびその誘導体、フラーレン、多環芳香族、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される物質を含む請求項38から44のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記整流接合が、平面整流接合、混合ヘテロ接合、またはバルクヘテロ接合である請求項38から45のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
赤外線を検出するための有機感光性光電子デバイスであって、
(i)第一の電極および第二の電極、ならびに
(ii)該第一の電極と該第二の電極の間に配置されている光伝導性有機物質(前記光伝導性有機物質は、Eminより低いΔEの範囲内にあるエネルギー準位Eを有する1つまたは複数の第一の励起子を発生させる可視および/または紫外光を吸収することができ、ここで、Eminは、前記光伝導性有機物質中に電荷担体を発生させるための最小励起エネルギーであり、ΔEは電磁スペクトルの赤外域内である)、
を含む有機感光性光電子デバイス。
【請求項48】
有機光伝導物質に照射するために配置された可視および/または紫外光の光源をさらに含む請求項47に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項49】
2つの電極の間および2つの電極の少なくとも1つに隣接した少なくとも1つの励起子障壁層をさらに含む請求項47に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項50】
ΔEが、約0.1〜約1.7eVの範囲内である請求項47から49のいずれか一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項51】
前記可視および/または紫外光がパルス光である請求項48に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項52】
前記可視および/または紫外光の強度が、高感度の電荷検出のために、前記第一の励起子の十分な数が発生されるように選択される請求項51に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項53】
前記第一の励起子が第一の三重項励起子であり、前記光伝導性有機物質がホスト物質およびリン光性ドーパント物質を含み、前記ホスト物質が、前記可視および/または紫外光を吸収して前記リン光性ドーパント物質中で前記第一の三重項励起子に転化する1つまたは複数の一重項励起子を発生することができる請求項47から52のいずれか一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項54】
前記ホスト物質が、前記リン光性ドーパント物質の一重項および三重項励起子準位内にはめこまれた一重項および三重項励起子準位を有する請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記ホスト物質が(1np)Pt(dpm)または(btp)Pt(dpm)であり、前記リン光性ドーパント物質がルブレンである請求項54に記載の方法。
【請求項56】
前記第一の励起子が第一の三重項励起子であり、前記光伝導性有機物質がホスト物質、リン光性ドーパント物質および増感剤物質を含み、前記増感剤物質が、前記可視および/または紫外光を吸収して前記リン光性ドーパント物質中で前記第一の三重項励起子に転化する1つまたは複数の一重項励起子を発生することができる請求項47から52のいずれ一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項57】
前記増感剤物質が、前記リン光性ドーパントの一重項および三重項励起子準位内にはめこまれた一重項および三重項励起子準位を有する請求項56に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項58】
前記ホスト物質が、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、オリゴチオフェン、フェニレンビニレン、オリゴピロール、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド、フタロシアニン、ポルフィリン、アセンおよび置換アセン、カーボンナノチューブ、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される請求項53から57のいずれか一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項59】
前記リン光性ドーパント物質が、40より大きい原子番号を有する重金属イオンを有する金属ポルフィリンおよびフタロシアニン、40より大きい原子番号を有する金属イオンを有する有機金属錯体、および原子番号40未満であり25%より大きい項間交差効率を有する金属イオンを有する金属錯体からなる群から選択される請求項53から58のいずれか一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項60】
前記増感剤物質が、40より大きい原子番号を有する重金属イオンを有する金属ポルフィリンおよびフタロシアニン、40より大きい原子番号を有する金属イオンを有する有機金属錯体、および原子番号40未満であり25%より大きい項間交差効率を有する金属イオンを有する金属錯体からなる群から選択される請求項56から57のいずれか一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項61】
前記光伝導性有機物質がドナー物質であり、前記ドナー物質がアクセプター物質と接触して整流接合を形成する請求項47から60のいずれか一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項62】
minが前記アクセプター物質のLUMOエネルギー以上である請求項61に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項63】
minが前記アクセプター物質のLUMOエネルギーより約50mV高い請求項62に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項64】
前記光伝導性有機物質がアクセプター物質であり、前記アクセプター物質がドナー物質と接触しており、前記アクセプター物質およびドナー物質が整流接合を形成する請求項47から60のいずれか一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項65】
minが前記アクセプター物質のHOMOエネルギー以下である請求項64に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項66】
minが前記アクセプター物質のHOMOエネルギーより約50mV低い請求項65に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項67】
前記ドナー物質が、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、オリゴチオフェン、フェニレンビニレン、オリゴピロール、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド、フタロシアニン、ポルフィリン、アセンおよび置換アセン、カーボンナノチューブ、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される物質を含む請求項61から66のいずれか一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項68】
前記アクセプター物質が、F16CoPc、F16ZnPc、NiTPP、テトラシアノエチレン、テトラシアノキヌクリジンおよびその誘導体、フラーレン、多環芳香族、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される物質を含む請求項61から67のいずれか一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項69】
前記ドナー物質および前記アクセプター物質が、平面整流接合、混合ヘテロ接合、またはバルクヘテロ接合を形成する請求項61から68のいずれか一項に記載の有機感光性光電子デバイス。
【請求項70】
ホスト物質、リン光性ドーパント物質、および増感剤物質を含む有機光伝導物質を含む赤外線を検出するための有機感光性光電子デバイスにおいて使用するための有機物質であって、前記増感剤物質が、(i)Eminより低いΔEの範囲内の励起子エネルギー準位(ここで、Eminは、前記光伝導性有機物質中に電荷担体を発生させるための最小励起エネルギーであり、ΔEは電磁スペクトルの赤外域内である)、および(ii)前記リン光性ドーパント物質の一重項および三重項励起子エネルギー準位内にはめこまれた一重項および三重項励起子準位を有しており、前記リン光性ドーパント物質の前記三重項励起子エネルギー準位が、Eminより低いΔEの範囲内である有機物質。
【請求項71】
ホスト物質およびリン光性ドーパント物質を含む有機光伝導物質を含む赤外線を検出するための有機感光性光電子デバイスにおいて使用するための有機物質であって、前記ホスト物質が、(i)Eminより低いΔEの範囲内の励起子エネルギー準位(ここで、Eminは、前記光伝導性有機物質中に電荷担体を発生させるための最小励起エネルギーであり、ΔEは電磁スペクトルの赤外域内である)、および(ii)前記リン光性ドーパント物質の一重項および三重項励起子エネルギー準位内にはめこまれた一重項および三重項励起子準位を有しており、前記リン光性ドーパント物質の前記三重項励起子エネルギー準位Eが、Eminより低いΔEの範囲内である有機物質。
【請求項72】
ΔEが、約0.1〜約1.7eVの範囲内である請求項70または71に記載の有機物質。
【請求項73】
前記光伝導性有機物質がドナー物質であり、前記有機物質が、整流接合を形成する前記ドナー物質と接触しているアクセプター物質をさらに含んでいる請求項70から72のいずれか一項に記載の有機物質。
【請求項74】
minが前記アクセプター物質のLUMOエネルギー以上である請求項73に記載の有機物質。
【請求項75】
minが前記アクセプター物質のLUMOエネルギーより約50mV高い請求項74に記載の有機物質。
【請求項76】
前記光伝導性有機物質がアクセプター物質であり、前記アクセプター物質がドナー物質と接触して整流接合を形成する請求項70から72のいずれか一項に記載の有機物質。
【請求項77】
minが前記アクセプター物質のHOMOエネルギー以下である請求項76に記載の有機物質。
【請求項78】
minが前記アクセプター物質のHOMOエネルギーより約50mV低い請求項77に記載の有機物質。
【請求項79】
前記ドナー物質が、カルバゾール含有物質、アリールアミン、テトラアリールフェニレンジアミン、オリゴチオフェン、フェニレンビニレン、オリゴピロール、テトラチアフルバレンおよびその誘導体、共役半導体ポリマーまたはポリマーブレンド、フタロシアニン、ポルフィリン、アセンおよび置換アセン、カーボンナノチューブ、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される物質を含む請求項73から78のいずれかに記載の有機物質。
【請求項80】
前記アクセプター物質が、F16CoPc、F16ZnPc、NiTPP、テトラシアノエチレン、テトラシアノキヌクリジンおよびその誘導体、フラーレン、多環芳香族、配位化合物ならびに有機金属錯体からなる群から選択される物質を含む請求項73から79のいずれか一項に記載の有機物質。
【請求項81】
前記ドナー物質および前記アクセプター物質が、平面整流接合、混合ヘテロ接合、またはバルクヘテロ接合を形成する請求項73から80のいずれか一項に記載の有機物質。
【請求項82】
赤外線を画像化するためのイメージャーであって、請求項47から69のいずれか一項に記載の複数個の有機感光性光電子デバイスを含むイメージャー。
【請求項83】
前記複数個が、少なくとも10、100、10000または10以上の前記有機感光性光電子デバイスを含む請求項82に記載のイメージャー。
【請求項84】
前記有機感光性光電子デバイスのそれぞれが、1μm×1μm以下の大きさである請求項82または83に記載のイメージャー。
【請求項85】
前記複数個の有機感光性光電子デバイスが、個別にアドレスできる配列を形成する請求項82から84のいずれか一項に記載のイメージャー。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2011−515857(P2011−515857A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−500965(P2011−500965)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際出願番号】PCT/US2009/037724
【国際公開番号】WO2009/117613
【国際公開日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【出願人】(509119061)ザ・リージェンツ・オブ・ザ・ユニバーシティ・オブ・ミシガン (14)
【出願人】(502023332)ザ ユニバーシティ オブ サザン カリフォルニア (20)
【Fターム(参考)】