説明

赤外線検出器

【課題】薄型化が可能で且つ生産性を向上させた赤外線検出器を提供することにある。
【解決手段】赤外線検出器Aは、焦電素子Xと、IC素子16、チップ状電子部品17からなる電子回路素子と実装するとともにチップ状電子部品17を内蔵した基板部3をステム1及びキャップ2からなる容器内部に収容して構成される。そして、ステム1は基板部3に向かって端子ピン12を突出させ、基板部3は端子ピン12を下面から上面へ貫挿させる貫通孔18を設けるとともに端子ピン12を基板部3に接着固定し且つ電気接続するための接続部19を貫通孔18の上側開口端周辺に設けおり、この接続部19に導電性接着剤を充填する保持させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は人体等から放射される赤外線を焦電素子で検出するようにした赤外線検出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、人体を赤外線の変化量で検出する赤外線検出素子には、焦電素子と呼ばれるものが多く使用されている。このような焦電素子を用いた赤外線検出器は、防犯用の進入検知の他、照明などの負荷制御用として使われている。この赤外線検出器としては例えば図6に示すように人体の動作により発生した赤外線を、レンズ100により焦電素子Xの受光部に集光させ、赤外線の変化に応じて発生する焦電素子Xの分極による信号を電流電圧変換回路101で電圧信号に変換した後、バンドパスアンプ102で所定の周波数帯域を選択的に増幅し、予め閾値を設定しているウィンドコンパレータ103から”H”、”L”レベルの検出信号を出力するタイプのものがあり、このウィンドコンパレータ103から出力される検出信号が負荷制御に用いられるのである。
【0003】
ところで、従来の赤外線検出器には図7(a)に示すように焦電素子Xの両端部を回路基板104上に設けた電子回路素子からなる凸状支持部105、105間に橋渡すように固定して回路基板104から焦電素子Xを浮かして焦電素子Xの受光面と背方の回路基板104との間に熱絶縁用の空間を設け、焦電素子Xが赤外線を受光したときに赤外線のエネルギが逃げないようにし、焦電素子Xの感度を高めているものがある。そして焦電素子Xの電荷は非常に微小なため、非常に大きな増幅をしなければならず、その影響で、焦電素子Xの出力にわずかでもノイズが入ると、後段のバンドパスアンプ102でノイズも増幅され、本来の信号とノイズとの区別が困難となる。そこで図7(a)に示すように金属製のキャップ(CAN)106と、ステム107からなる容器の中に焦電素子X及び回路基板104を封止してシールドを図ったパッケージ構造によって、外来ノイズを遮断している(例えば特許文献1)。尚図7(a)中108は出力用の端子ピン、109はキャップ106の赤外線通過窓で、この赤外線通過窓109には所定の周波数域の赤外線のみを通過させるバンドパス型の光学フィルタ110が装着されている。
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているパッケージ構造の赤外線検出器は、内部に上述の電流電圧変換回路のみを設ける構成であるため、図7(b)のような構成をとっており、プリント板111上に図7(b)に示すキャップ106とステム107からなる容器内に焦電素子Xを内蔵した赤外線検出器のほか、レンズ112、更にコンデンサや抵抗、ICのチップなどの外付け電子回路素子113が実装され、上述の光学フィルタやウィンドウコンパレータ、更にはタイマ、出力アンプが付加されて用いられるのが一般的である。
【0005】
一方、図8(a)〜(c)に示すように樹脂成型品で製作される3次元回路ブロック(MID基板)200に、焦電素子Xとバンドパスアンプやとウィンドウコンパレータを構成する電子回路素子201を実装し、キャップ106とステム107からなる容器内に内蔵して封止することにより、小型化を図った赤外線検出器が提供されている(例えば特許文献2)。この赤外線検出器に用いる3次元回路ブロック200は、表立面と裏立面とを形成した縦方向に起立する縦長のブロックとなっており、立面には電子回路素子201を実装し、上部には焦電素子Xの熱絶縁をとるための空間を作る凹部202を一体形成し、凹部202の両端間に焦電素子Xを橋渡ししてある。
【特許文献1】特開平5−332829号公報(図1、段落番号0015〜1006)
【特許文献2】特許第3211074号公報(図6〜図8及び段落番号0018〜0021)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の特許文献1に開示されているような赤外線検出器の場合、焦電素子Xが赤外線を受けたときに赤外線エネルギが逃げないようにするために焦電素子Xの受光面を回路基板104より浮かす支持部105を設けているが、この支持部105が回路基板104とは別部品であるため、別途部品実装工程が必要となりコストアップの要因となっていた。また別部品として支持部105を設ける場合、取り付け誤差により支持部105の高さが変わり、焦電素子Xの熱絶縁の効果にばらつきが発生するなどの問題があった。また特許文献1の赤外線検出器の場合、図7(b)のような外付け回路部が必要で、そのため電子回路素子113を大きなプリント基板111に実装する構成であるため回路規模が非常に大きくなるという問題があり、昨今の小型化・薄型化の要請には答えられないという問題があり、また回路部品が外付けになると電磁ノイズの影響を受けやすくなり、ノイズ環境が悪いところでは、誤動作の要因となっていた。これを防ぐために、外付け回路部に大きなシールド板を取り付けることが必要となるという問題もあった。
【0007】
一方特許文献2に開示されている赤外線検出器のように3次元回路ブロック200を用いたものは、特許文献1に開示されている赤外線検出器の問題点を或る程度解決できる。
【0008】
すなわち3次元回路ブロック200に直接焦電素子Xを浮かす凹部202を形成するためため、部品点数削減や低コスト化が可能となり、また電子回路素子201を金属製のキャップとステムからなる容器に内蔵するCANパッケージとすることで、小型化が可能となる上に、バンドパスアンプやウィンドコンパレータをIC化することで回路部を小型化することも可能である。また焦電素子Xとバンドパスアンプの入力部までの距離を短くすることができるため、プリント基板による外付け部品で増幅する方法より外来ノイズが入りにくくなり、ノイズに強い構成となる。更に焦電素子Xと回路部全体を金属製キャップとステムからなる容器内に内蔵してシールドすることにより、外来ノイズに非常に強い構成が実現できるという利点がある。
【0009】
しかしながら、この特許文献2に開示されている赤外検出器では、3次元回路ブロック200が縦長で起立して表立面と裏立面とを形成した回路部に電子部品やICを実装しているため、パッケージが縦長になるのは避けられない。
【0010】
そのため、この特許文献2に開示されている赤外線検出器を取り付ける機器の厚みに制限が発生し薄型化が困難になるなどの、更なる小型化、薄型化の要請には応えられなかった。
【0011】
本発明は、上述の点に鑑みて為されたものであって、その目的とするところは薄型化が可能で且つ生産性を向上させた赤外線検出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するために、請求項1の発明では、ステムと、該ステム上に被着するキャップとからなる容器内部に、赤外線検知素子と、IC素子を含む電子回路素子とを実装するとともに実装する一部の電子回路素子を内蔵した基板部を収納するものであって、
前記ステムは前記基板部に向かって端子ピンを突出させ、前記基板部は前記端子ピンを下面から上面へ貫挿させる貫通孔を設けるとともに前記端子ピンを前記基板部に接着固定し且つ電気接続するための導電性接着剤を充填する接着剤保持部を少なくとも前記貫通孔の上側開口端周辺の基板部面に設けていることを特徴とする。
【0013】
請求項1の発明によれば、実装する一部の電子回路素子を内蔵した基板部を用いているため、赤外線検出器全体の薄型化が可能で、しかも基板部の上面側に設けた接着剤保持部に充填される導電性接着剤によって端子ピンを基板部に接着するとともに基板部の回路との間で電気的に接続することで、基板部の回路からの出力を端子ピン側に取り出すことが可能となり、その上少なくとも貫通孔の上側開口端周辺の基板部面に接着剤保持部を設けて端子ピンの接着固定と導電を図る構成であるため、端子ピンの欠損などの不良検出を目視で行うことができ、そのため生産性の向上が図れ、結果コスト上昇の抑制も図れる。
【0014】
請求項2の発明では、請求項1の発明において、前記接着保持部は、前記貫通孔の開口端周辺の基板部面に形成した凹部により構成されていることを特徴とする。
【0015】
請求項2の発明によれば、端子ピンと基板部との接着固定位置を低くすることができ、その結果赤外線検出器全体の一層の薄型化を可能とする。
【0016】
請求項3の発明では、請求項1の発明において、前記接着保持部は、前記貫通孔の開口端を囲繞するように基板部面に立設された枠部により構成されていることを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明によれば、導電性接着剤を塗布する範囲を容易に規定できるため、導電性接着剤の塗布量の流動管理幅を広くすることができる上に導電性接着剤の漏れ防止も図れ、その結果生産性の一層の向上とコスト抑制とが可能となる。
【0018】
請求項4の発明では、請求項1乃至3の何れかの発明では、前記端子ピンの周部には前記基板部の貫通孔の内径寸法よりも大きく外方へ突出させた基板部下面支持用オフセット部を設けていることを特徴とする。
【0019】
請求項4の発明によれば、端子ピンの基板部下面支持用オフセット部で基板部下面を支持することができ、そのため端子ピンの最上端と基板部上面との位置関係の精度を高め、端子ピンとキャップとの接触を避けるためのキャップ内の高さ方向の余裕分を低く見積もることができ、その結果赤外線検出器全体の一層の薄型化を可能とし、しかも基板部下面とステムとの間にスペーサを設けずとも精度良く絶縁状態を保つことが可能となり、部材コストの削減と更なる薄型化も可能となる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、実装する一部の電子回路素子を内蔵した基板部を用いるため、赤外線検出器全体の薄型化が可能で、しかも基板部の上面側に設けた接着剤保持部に充填される導電性接着剤によって端子ピンを基板部に接着するとともに基板部の回路との間で電気的に接続することで、基板部の回路からの出力を端子ピン側に取り出すことが可能となり、その上少なくとも貫通孔の上側開口端周辺の基板部面に接着剤保持部を設けて端子ピンの接着固定と導電を図る構成であるため、端子ピンの欠損などの不良検出を目視で行うことができ、そのため生産性の向上が図れ、結果コスト上昇の抑制も図れるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下本発明を実施形態により説明する。
(実施形態1)
本実施形態の赤外線検出器Aは、図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)に示すように円盤状の金属製のステム1と、金属製のキャップ2とからなるCANパッケージ用の容器内に、赤外線検知素子である焦電素子XとIC素子16やチップ状電子部品17からなる電子回路素子を実装するとともに例えばチップ状の電子部品17を内蔵した基板部3を収納して構成されたものである。尚焦電素子X以外の赤外線検知素子(サーモパイルや、ボローメータ)を用いても良い。
【0022】
ステム1は中央部を周辺部より一段上方へ突出させて基板搭載部1aを形成するとともにこの基板搭載部1aの周部には基板搭載部1aの面よりも低い環状のフランジ1bを形成している。
【0023】
キャップ2は下部が開口し、天井部の中央には光学フィルタ5を装着した矩形の赤外線通過窓4を開口しており、ステム1の基板搭載部1aの周辺のフランジ1b上にキャップ2の下端周縁に突出形成した鍔部2aを載せて抵抗溶接等によって接合することでキャップ2はステム1上に被着されて容器を形成するとともに、容器内を封止するとともに電磁シールドを行うようになっている。
【0024】
赤外線通過窓4に装着する光学フィルタ5は、特定の波長域の赤外線のみを通過させるもので、外乱光の影響を低減するためのもので、人体検知の場合、おおよそ4μm以上の波長の光を通し、それより低い赤外線をカットするようにコーティングを施したものを用いる。
【0025】
基板部3は、ガラスエポキシ等から形成された回路基板7と、この回路基板7上に配置形成される樹脂層体8と、この樹脂層体8上に配置されるガラスエポキシ等から形成された基板9と、この基板9上に配置形成される樹脂層体10とからなる多層構造の基板ユニットから構成され、樹脂層体10、8は基板7、9に一体的に積層されるように形成される。
【0026】
基板部3の上面となる樹脂層体10の上面中央部には凹部11を形成しており、この凹部11は焦電素子Xの検知部(受光面)を空中に浮かすことによって熱絶縁を図るためのもので、凹部11の両側の樹脂層体10の上面部位が焦電素子Xの両側を支える支持受け部を構成する。この支持受け部には焦電素子Xの両側の電極を接合するランド(図示せず)を設けている。
【0027】
このように基板部3の上面に設けた凹部11で焦電素子Xの検知部の熱絶縁を図ることで、非常に感度の高い測定を可能としている。
【0028】
基板9は、焦電素子Xの出力と後段のバンドパスアンプ(図6参照)との容量結合などによる発振現象を防ぐための金属箔(例えば銅箔)により形成したシールド層(図示せず)を上面又は下面若しくは両面に形成している。尚銅箔や金属板層のみでシールド層を形成しても勿論良い。また焦電素子Xの増幅部で余り大きく増幅しない場合は、容量結合などによる発振現象が起こりにくいため、シールド層を設けなくても良いため基板9を省略することができる。
【0029】
最下層となる回路基板7は図1に示すように下面側に増幅器(図6参照)やウィンドウコンパレータ(図6参照)を構成するIC素子16を実装し、上面には図2(e)に示すようにチップ状電子部品17を実装する面とし、夫々の面にはこれら電子回路素子を接続することで赤外線検出器として必要な回路部を構成するための回路パターン(図示せず)を形成している。そしてチップ状電子部品17をリフロー半田により回路パターンに接続実装し、IC素子16をフリップチップ(或いはワイヤボンディング)により回路パターンに実装している。
【0030】
回路基板7の上部と基板9との間に配置形成される樹脂層体8は回路基板7の上面側に実装された電子部品17を内蔵する(埋め込む)ことで多層基板ユニット構造である基板部3全体の薄型化を図っている。
【0031】
上述のように構成される回路基板7、樹脂層体8、基板9、樹脂層体10が積層されて多層の基板部3が構成されることになり、焦電素子Xの出力は基板部3の上面側から貫通させ、内面に導電メッキを施したスルーホール(図示せず)を介してIC素子16及び電子部品17から構成される回路部に電気的に接続され、また上述のシールド層が所定の電位部位(例えばグランド電位)に接続されることになる。
【0032】
また基板部3は、ステム1に突出させてある3本の端子ピン12に夫々対応させた貫通孔18を下面から上面に形成するとともに、夫々の貫通孔18の上側開口端周辺には端子ピン12を導電性接着剤によって電気的に接続するとともに固定する電極等の接続部19を形成してある。
【0033】
ここで容器をキャップ2とで構成するステム1は金属製(SPC、コバールなど)であって、上述したように中央部に基板搭載部1aを、その周部にフランジ1bを形成している。そして基板搭載部1には周方向に所定間隔を開けた位置で3本の端子ピン12を貫通させており、その3本の内の端子ピン12の内、グランド電位に接続する端子ピン12は基板搭載部1aを直接貫通し、基板搭載部1の下面側において半田13により貫通部位が封止される形でステム1に固定保持され、その他の端子ピン12は基板搭載部1aに貫通させた孔1cを埋める形で設けたガラス等の絶縁材14にインサートされることでステム1に固定保持されている。
【0034】
而して赤外線検出器を組み立てるに当たっては、まずステム1の基板搭載部1a上に絶縁樹脂製の円形枠状のスペーサ6を載置し、このスペーサ6の周囲に各端子ピン12に対応させて形成している切欠6aを介して各端子ピン12の上端をスペーサ6の上方へ突出させる。
【0035】
この状態で各端子ピン12に対応して設けてある基板部3の貫通孔18に各端子ピン12を基板部3の下面側から貫挿させながら基板部3をスペーサ6上に載置する。この基板部3をスペーサ6上に載置した状態で、基板部3の上面側から各端子ピン12の上端が上方へ突出することになる。
【0036】
次に各端子ピン12の突出部位の基部を基板部3の上面に設けた接続部19上に塗布充填した銀ペースト等の導電性接着剤により接続部19に接着固定して基板部3を端子ピン12に固定するとともに接続部19を対応する端子ピン12に電気的に接続する。ここで接続部19が接着剤保持部を兼ねることになる。
【0037】
このようにしてスペーサ6を介して基板部3をステム1の基板搭載部1a上に載置するとともに端子ピン12に固定させることで、端子ピン12を通じて基板部3の回路からの検出出力を容器外へ取り出すことができるようになる。尚基板部3の下面側に実装されたIC素子16は基板搭載部1aの上面から浮いた状態に配置される。
【0038】
また端子ピン12の上端は基板部3の上面より突出するため、その突出量をキャップ2の天井面に当たらないように設定している。また接続部19に対する端子ピン12の固定は導電性接着剤を用いて行うが、接着固定だけで基板部3を保持できる場合にはスペーサ6が不要となる。
【0039】
さて基板部3を上述のように基板搭載部1aの上方にスペーサ6を介して配置固定した後、キャップ2の鍔部2aをステム1のフランジ1a上に載せて抵抗溶接等により接合して封止することで、ステム1とキャップ2とからなる気密構造の容器内に基板部3を収納した所望の赤外線検出器Aが完成することになる。
【0040】
このように完成された本実施形態の赤外線検出器Aは電子回路素子の一部を内蔵した基板部3を用いるため薄型化が図れ、しかもステム1の端子ピン12と基板部3との接着固定を基板部3の上面側から直接行うことができ、また端子ピン12の欠損などの不良検出を目視で効率よく行うことができ、生産性の向上、ひいてはコストを抑えることができる。
【0041】
尚端子ピン12を基板部3の貫通孔18の下端開口側において接着固定しても良く、この場合下端開口側にも導電性接着剤を充填する接着剤保持部を設ける。そして下端開口側でも接着固定することで、端子ピン12と基板部3との接着面積を広げられ、結果基板部3を安定良く固定できて信頼性の向上が図れ、また導電性接着剤の規定量を多くして塗布量の流動管理幅を広げて生産性を更に向上させることも可能となる。
(実施形態2)
実施形態1では基板部3の上面に設けた接続部19を接着剤保持部として用い、この接続部19に充填する導電性接着剤によって端子ピン12と接続部19とを接着固定するものであったが、本実施形態は、図3(a)、(b)に示すように基板部3を構成する樹脂層体10に接着剤保持部を構成する切欠状の凹部20を形成するとともに凹部20の底部に貫通孔18の上側開口端を臨ませ且つその開口周辺に接続部19を形成した点に特徴がある。
【0042】
上述以外の構成は実施形態1と同じであるため、図3(a)、(b)において、図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)で示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0043】
而して凹部20に導電性接着剤を充填し、この充填した導電性接着剤によって凹部20の底部に開口した貫通孔18から突出する端子ピン12と接続部19との接着固定を行うのである。
【0044】
本実施形態によれば、端子ピン12の上端を樹脂層体10の上面、つまり基板部3の上面位置より低くして凹部20内に収まるようにすることで、キャップ2の高さ寸法を小さくすることが可能となって実施形態1に比して全体構成の薄型化が図れる。
(実施形態3)
実施形態2では切欠状の凹部20を形成して接着剤保持部を構成しているが、本実施形態は基板部3を構成する樹脂層体10に図4(a)、(b)に示すようにザグリ孔からなる枠部21を設け、この枠部21の底部に露出する基板9の上面に貫通孔18の上端側を開口させるとともにこの開口周辺に接続部19を設け、枠部21により接着剤保持部を構成している。
【0045】
上述以外の構成は実施形態1と同じであるため、図4(a)、(b)において、図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)で示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0046】
本実施形態によれば、導電性接着剤を塗布する範囲を枠部21で容易に規定することができ、塗布量の流動管理幅を広げて生産性を更に向上させることも可能となる。また導電性接着剤の漏れ防止も図れるため生産性を更に向上させてコスト上昇を抑えることもできる。
(実施形態4)
実施形態1〜3では基板部3とステム1の基板搭載部1aとの間にスペーサ6を介在させる構成であったが、本実施形態では図5(a)、(b)に示すように基板搭載部1aを貫通する端子ピン12の部位に基板部3の貫通孔18の内径より大きな外径を持つ太径部12aを設け、この太径部12aの上端部の上向き面を基板部3の下面を支持するオフセット部12bとすることで、基板搭載部1aと基板部3の下面との間の距離を一定間隔に保持できるようにし、スペーサを不要とした点に特徴がある。ここで基板搭載部1aの上面と基板部3の下面との間の距離を基板部3の下面に実装しているIC素子16の厚さ寸法よりも大きくしてIC素子16を基板搭載部1aの上面より浮かしている。
【0047】
尚図示例では接着剤保持部の構成を実施形態1と同じ構成としているが、実施形態2の接着剤保持部の構成を採用しても良い。また端子ピン12に設ける基板部支持用のオフセット部12bを、図5(c)に示すように貫通孔18に挿通させる部位より下側を基板部3の貫通孔18の内径より大きな外径とした太径部12a’とし、この太径部12a’の上端部の上向き面で構成しても良く、また図5(d)に示すように端子ピン12の周部に貫通孔18の内径よりも大きな外径を持つ環状膨出部12cを形成してその膨出部12cの上向き面で構成しても良い。
【0048】
尚上述以外の構成は実施形態1と同じであるため、図5(a)、(b)において、図1(a)、(b)及び図2(a)、(b)で示す構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付し、説明を省略する。
【0049】
而して本実施形態の赤外線検出器Aでは、基板部3の下面を端子ピン12に形成したオフセット部12bで支持することで、基板部3の上面と、端子ピン12の上端との位置関係の精度が高くなり、キャップ2の天井面との接触を避けるために、高さ方向で見なければならない余裕分を低く見積もることができる。
【0050】
また基板部3の下面をオフセット部12bで保持するため、基板部3の下面と、ステム1の基板搭載部1aの上面との距離を精度良く保つことができ、そのためスペーサを用いずとも所定の絶縁状態を維持でき、更にスペーサが不要となるため、その分だけ高さ寸法を小さくすることが可能となって、部品点数の削減と全体構成の薄型化が図れる。
【0051】
更に精度の低い別部品であるスペーサを用いないため基板部3の上面側に実装される焦電素子Xと、別部品として設ける例えば集光用レンズとの間の位置精度が高くなって感度などの検出性能を向上させることも可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】(a)は実施形態1の断面図、(b)は実施形態1の斜めから見た断面図である。
【図2】(a)は実施形態1の斜視図、(b)はキャップを外した状態の斜視図である。
【図3】(a)は実施形態2の断面図、(b)は実施形態2の斜めから見た断面図である。
【図4】(a)は実施形態3の斜視図、(b)はキャップを外した状態の斜視図である。
【図5】(a)は実施形態4の断面図、(b)は実施形態4の斜めから見た断面図、(c)は実施形態4に用いる端子ピンの別の例の正面図、(d)は実施形態4に用いる端子ピンの他の例の正面図である。
【図6】赤外線検出器の回路構成図である。
【図7】(a)は従来例の断面図、(b)は従来例の実使用時の分解斜視図である。
【図8】(a)は別の従来例の3次元回路ブロックの分解斜視図、(b)は別の従来例のキャップを外した状態の斜視図、(c)は別の従来例の斜視図である。
【符号の説明】
【0053】
1 ステム
1a 基板搭載部
1b フランジ
2 キャップ
3 基板部
4 赤外線通過窓
5 光学フィルタ
6 スペーサ
7 回路基板
8 樹脂層体
9 基板
10 樹脂層体
11 凹部
12 端子ピン
13 半田
16 IC素子
17 電子部品
18 貫通孔
19 接続部
A 赤外線検出器
X 焦電素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステムと、該ステム上に被着するキャップとからなる容器内部に、赤外線検知素子とIC素子を含む電子回路素子とを実装するとともに実装する一部の電子回路素子を内蔵した基板部を収納するものであって、
前記ステムは前記基板部に向かって端子ピンを突出させ、前記基板部は前記端子ピンを下面から上面へ貫挿させる貫通孔を設けるとともに前記端子ピンを前記基板部に接着固定し且つ電気接続するための導電性接着剤を充填する接着剤保持部を少なくとも前記貫通孔の上側開口端周辺の基板部面に設けていることを特徴とする赤外線検出器。
【請求項2】
前記接着保持部は、前記貫通孔の開口端周辺の基板部面に形成した凹部により構成されていることを特徴とする請求項1記載の赤外線検出器。
【請求項3】
前記接着保持部は、前記貫通孔の開口端を囲繞するように基板部面に立設された枠部により構成されていることを特徴とする請求項1記載の赤外線検出器。
【請求項4】
前記端子ピンの周部には前記基板部の貫通孔の内径寸法よりも大きく外方へ突出させた基板部下面支持用オフセット部を設けていることを特徴とする請求項1乃至3の何れか記載の赤外線検出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2007−225455(P2007−225455A)
【公開日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−47474(P2006−47474)
【出願日】平成18年2月23日(2006.2.23)
【出願人】(000005832)松下電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】