赤外線検出素子、赤外線検出素子の製造方法及び電子機器
【課題】赤外線検出部が配置された支持部が凹部と対向する場所に位置し、支持部が凹部の底に張り付くのを防止できる赤外線検出素子を提供する。
【解決手段】基板2と、基板2上に設置され空隙17を囲む凹部15を備えた絶縁膜14と、一端が基板2に固定される梁22によって保持され空隙17と対向する場所に位置する支持部23と、支持部23上に設置され赤外線を検出する赤外線検出部4と、を備え、凹部15はポリシリコンを含む撥水膜16に覆われ、梁22及び支持部23は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含む。
【解決手段】基板2と、基板2上に設置され空隙17を囲む凹部15を備えた絶縁膜14と、一端が基板2に固定される梁22によって保持され空隙17と対向する場所に位置する支持部23と、支持部23上に設置され赤外線を検出する赤外線検出部4と、を備え、凹部15はポリシリコンを含む撥水膜16に覆われ、梁22及び支持部23は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含む。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線検出素子にかかわり、特に、赤外線の照射量を検出する素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板にマイクロマシーニング技術を用いた赤外線検出素子が研究されている。赤外線検出素子には赤外線による温度変化を検出するボロメーター型赤外線検出素子がある。赤外線検出素子は赤外線によって加熱された後、放熱しない断熱構造にすることにより感度良く赤外線を検出することができる。
【0003】
赤外線を検出する検出部をシリコン基板から浮かせた場所に作成したボロメーター型赤外線検出素子が特許文献1に開示されている。それによると、ダイアモンドライクカーボンにて犠牲層を形成し、犠牲層の上に支持部及び検出部を形成していた。そして、酸素を含んだプラズマ処理により犠牲層をエッチングし空洞を形成していた。これにより検出部を断熱構造にすることができる。このとき、検出部が加熱される状態に長時間曝され、プラズマ放電の環境に長時間曝される。これにより、検出部が損傷を受ける可能性が高くなっていた。
【0004】
犠牲層をエッチングするときウェットプロセスにて行うことにより、検出部が熱やプラズマに長時間さらされることを防止することができる。その方法として、まず凹部を形成し凹部の表面にエッチング液から保護する保護膜を形成する。次に、凹部に犠牲層を配置し、犠牲層上に支持部及び検出部を配置する。続いて、犠牲層をエッチング液に浸漬して除去する方法が考えられる。エッチング液はエッチャントとも称す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−192350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
犠牲層を除去した後、基板を純水に浸漬してエッチング液を凹部から排出する。次に、凹部から純水を排出する。凹部と対向する場所には支持部が位置する。そして、純水が徐々に排出されるとき、純水の表面張力が支持部に作用することにより支持部が凹部の底に張り付く。この現象をスティッキングと称す。このとき、支持部や支持部を保持する梁が変形する。そして、支持部が凹部に接触する為、検出部の熱が凹部に伝導する。これにより、赤外線の検出感度が悪くなる。そこで、支持部が凹部の底に張り付くのを防止することができる赤外線検出素子が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかる赤外線検出素子であって、基板と、前記基板上に設置され凹部を備えた絶縁膜と、前記基板に一端が固定される梁によって保持され前記凹部の上方に空隙を介して位置する支持部と、前記支持部上に設置され赤外線を検出する赤外線検出部と、を備え、前記凹部はポリシリコンを含む撥水膜に覆われ、前記梁及び前記支持部は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含むことを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、基板上に絶縁膜が設置されている。そして、絶縁膜には凹部が形成されている。凹部と対向する場所には空隙を介して支持部が位置し、支持部は、基板に一端が固定される梁によって保持されている。支持部上には赤外線検出部が設置され、赤外線検出部は赤外線を検出する。赤外線が赤外線検出部及び支持部を照射するとき、赤外線検出部は加熱されて温度が高くなる。赤外線検出部は赤外線検出部の温度変化を検出することにより赤外線の照射量を検出する。そして、赤外線検出部及び支持部が赤外線によって加熱された熱量は空隙により断熱される為、赤外線検出部は感度良く赤外線の照射量を検出することができる。
【0010】
凹部に空隙を形成する工程で基板が純水にて洗浄される。純水を凹部から排出するとき純水の表面張力が作用することにより凹部と支持部とが張り付き易くなる。凹部はポリシリコンの撥水膜に覆われている。ポリシリコンの撥水膜は撥水性を有することから、凹部から純水が排出され易くなっている。そして、梁及び支持部は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含んでいる。窒化シリコンまたは炭窒化シリコンはシリコンや酸化シリコンに比べて剛性が高い材料である。従って、凹部から純水を排出するとき支持部が凹部の底に張り付くのを防止することができる。
【0011】
[適用例2]
上記適用例にかかる赤外線検出素子において、前記赤外線検出部は前記支持部上に下部電極、焦電体、上部電極が重ねて配置され、前記支持部は窒化シリコンを含み、前記焦電体は優先配向していることを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、赤外線検出部は支持部上に下部電極、焦電体、上部電極が重ねて配置されている。そして、焦電体は優先配向しているので感度良く赤外線を検出することができる。下部電極は窒化シリコンを含む支持部上に配置されている。窒化シリコンの膜は表面粗さを小さく成膜することができる為、平坦な支持部上に下部電極を配置することができる。従って、精度良く下部電極を形成し、焦電体を優先配向させることができる。その結果、赤外線検出素子の感度をさらに良くすることができる。
【0013】
[適用例3]
本適用例にかかる赤外線検出素子の製造方法であって、基板上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、前記絶縁膜に凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部を覆って撥水膜を形成する撥水膜形成工程と、前記凹部に犠牲膜を形成する犠牲膜形成工程と、前記犠牲膜上に支持部材を成膜する支持部材形成工程と、前記支持部材上に赤外線検出部を形成する検出部形成工程と、前記支持部材を、前記赤外線検出部を支持する支持部及び前記支持部を保持する梁の形状にパターニングする支持部形成工程と、前記犠牲膜をエッチングするエッチング工程と、を有し、前記撥水膜はポリシリコンを含み、前記支持部材は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含むことを特徴とする。
【0014】
本適用例によれば、絶縁膜形成工程において基板上に絶縁膜を形成する。次に、凹部形成工程において絶縁膜に凹部を形成する。撥水膜形成工程では凹部を覆って撥水膜を形成する。犠牲膜形成工程では凹部に犠牲膜を形成している。支持部材形成工程では犠牲膜上に支持部材を成膜する。そして、検出部形成工程では支持部材上に赤外線検出部を形成する。支持部形成工程では支持部材を支持部及び梁の形状にパターニングする。そして、エッチング工程では犠牲膜をエッチングして除去している。これにより、凹部の犠牲膜があった場所には空隙が形成され、凹部と対向する場所に支持部が位置する。赤外線検出部及び支持部が赤外線を照射されるとき、赤外線検出部は赤外線検出部の温度変化を検出することにより赤外線の照射量を検出する。そして、赤外線検出部及び支持部が赤外線によって加熱された熱量は空隙により断熱される為、赤外線検出部は感度良く赤外線の照射量を検出することができる。
【0015】
エッチング工程において基板を純水に浸漬させて洗浄する。このとき、純水が凹部に侵入する。純水を凹部から排出するとき純水の表面張力が作用することにより凹部と支持部とが張り付き易くなる。ポリシリコンを含む撥水膜が凹部を覆っている。ポリシリコンの撥水膜は撥水性を有することから、基板は凹部から純水を排出し易くすることができる。そして、支持部材は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含んでいる為、支持部材をシリコンや酸化シリコンにするときに比べて支持部及び梁は剛性を高くすることができる。従って、支持部が凹部の底に張り付くのを防止することができる。
【0016】
[適用例4]
上記適用例にかかる赤外線検出素子の製造方法において、前記犠牲膜形成工程において前記撥水膜の一部を露出させ、前記支持部材形成工程において露出された前記撥水膜の表面をエッチングして、前記撥水膜上に前記支持部材を重ねて配置することを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、犠牲膜形成工程で撥水膜の一部を露出させている。露出された撥水膜はポリシリコンであり、ポリシリコンは酸化して酸化シリコンとなる。酸化シリコンはエッチング工程にてエッチングされ易いためエッチング液が漏洩する危険性が生ずる。本実施形態では露出したポリシリコンの表面をエッチングして、支持部材を重ねて配置している。従って、酸化シリコンが形成されているときにも除去できる為、エッチング工程にてエッチング液が凹部から絶縁膜に漏洩することを防止できる。
【0018】
さらに、露出したポリシリコンの表面をエッチングするとき犠牲層がエッチングされるため、ポリシリコンの表面が犠牲層の表面に比べて凸状になる。従って、撥水膜と支持部材との接触面積を増やすことができる。撥水膜と支持部材との接触面積が広いとき、接触面積が狭いときに比べて、エッチング液が漏洩するのにかかる時間が長くなる。従って、エッチング液を凹部から絶縁膜に漏洩し難くすることができる。
【0019】
[適用例5]
本適用例にかかる電子機器は、赤外線を検出する光検出部を備える電子機器であって、前記光検出部に上記に記載の赤外線検出素子を備えることを特徴とする。
【0020】
本適用例によれば、電子機器は赤外線を検出する光検出部を備えている。そして、光検出部は上記適用例に記載の赤外線検出素子を備えている。上記適用例に記載の赤外線検出素子は基板を洗浄するときにも支持部が凹部の底に張り付くのを防止され、感度良く赤外線を検出する素子である。従って、本適用例の電子機器は光検出部に感度の良い赤外線検出素子を備えた電子機器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態にかかわり、(a)は、赤外線検出装置の構成を示す模式平面図、(b)は、赤外線検出装置の構成を示す模式断面図。
【図2】(a)は、赤外線検出素子の構成を示す要部模式平面図、(b)は、赤外線検出素子の構成を示す要部模式側断面図。
【図3】赤外線検出素子の製造方法を示すフローチャート。
【図4】赤外線検出素子の製造方法を説明するための模式図。
【図5】赤外線検出素子の製造方法を説明するための模式図。
【図6】赤外線検出素子の製造方法を説明するための模式図。
【図7】比較例にかかわり、支持部材の材質にポリシリコンを用いたときとSiNを用いたときの(111)面配向率を比較したグラフ。
【図8】第2の実施形態にかかわり、(a)は、赤外線検出装置の構成を示すブロック図、(b)は、赤外線検出素子の配列を説明するための模式図。
【図9】第3の実施形態にかかわる赤外線カメラの構成を示すブロック図。
【図10】第4の実施形態にかかわる運転支援装置の構成を示すブロック図。
【図11】運転支援装置を搭載した自動車を示す概略斜視図。
【図12】第5の実施形態にかかわるセキュリティー機器の構成を示すブロック図。
【図13】キュリティー機器が設置された家を示す模式図。
【図14】第6の実施形態にかかわるゲーム機器のコントローラーの構成を示すブロック図。
【図15】コントローラーの使用方法を説明するための模式図。
【図16】第7の実施形態にかかわる体温測定装置の構成を示すブロック図。
【図17】第8の実施形態にかかわる特定物質探知装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、構造に特徴のある赤外線検出素子の実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、赤外線検出素子と赤外線検出素子の製造方法の特徴的な例について図1〜図6に従って説明する。
【0023】
(赤外線検出装置)
図1(a)は、赤外線検出装置の構成を示す模式平面図であり、図1(b)は、赤外線検出装置の構成を示す模式断面図である。図1(b)は図1(a)のA−A’線に沿った断面図である。図1に示すように、赤外線検出装置1は平面視が四角形の基板2を備えている。基板2の4辺のうち直交する2辺の方向をX方向及びY方向とする。そして、鉛直方向を−Z方向とする。基板2のZ方向の面を基板表面2aとし、基板2の−Z方向の面を基板裏面2bとする。つまり、基板表面2aと基板裏面2bとは互いに反対側を向く面となっている。
【0024】
基板2には20個の赤外線検出素子3が5行4列の格子状に配列して配置されている。赤外線検出素子3の個数や配列の数は特に限定されない。赤外線検出素子3は1個〜19個でも良く、21個以上でも良い。赤外線検出素子3の個数が多い程空間分解能を高くすることができる。
【0025】
基板2の基板表面2a側には赤外線検出素子3毎に赤外線を検出する赤外線検出部4が設置されている。赤外線検出部4と接続して上電極配線5と下電極配線6とが設置されている。基板2の基板表面2aには図示しない膜が積層され、この膜を貫通する上貫通電極7と下貫通電極8とが形成されている。そして、上電極配線5は上貫通電極7と接続され、下電極配線6は下貫通電極8と接続されている。
【0026】
(赤外線検出素子)
図2(a)は、赤外線検出素子の構成を示す要部模式平面図であり。図2(b)は、赤外線検出素子の構成を示す要部模式側断面図である。図2(b)は、図2(a)のB−B’線に沿った断面図である。図2に示すように、赤外線検出素子3は基板2を備え、基板2はシリコン基板である。基板2の基板表面2aには駆動回路9が形成されている。駆動回路9は半導体素子が集積された回路である。基板2上には配線層10が設置されている。配線層10には配線層絶縁膜11が積層されており、各配線層絶縁膜11の間、基板表面2a、配線層10の上面には配線12が設置されている。そして、各配線層絶縁膜11を貫通する貫通電極13が配置され、貫通電極13は各配線層絶縁膜11の間や基板2上に位置する配線12を接続する。
【0027】
配線層絶縁膜11の材質は絶縁性があり薄膜が形成可能であれば良く特に限定されず例えばSiO2(酸化シリコン)等を用いることができる。配線12及び貫通電極13の材質は導電性があり微細なパターンが形成可能であれば良く特に限定されないが例えばTi(チタン)、W(タングステン)、Al(アルミニウム)等の金属を用いることができる。
【0028】
配線層10上には絶縁膜14が設置されている。図を見やすくするために基板2は絶縁膜14より薄く図示されているが、基板2は絶縁膜14より厚い板となっている。絶縁膜14の図中上側の面には凹部15が形成されている。絶縁膜14の材質は絶縁性があり薄膜が形成可能であれば良く特に限定されず例えばSiO2(酸化シリコン)、SiN(窒化シリコン)またはSiCN(炭窒化シリコン)を用いることができる。本実施形態では絶縁膜14の材質にSiO2を用いている。
【0029】
凹部15の表面を覆って撥水膜16が形成され、凹部15の中は空隙17となっている。絶縁膜14及び空隙17の上には支持部材20が設置されている。支持部材20は本体部21、梁22、支持部23から構成されている。本体部21は絶縁膜14上に設置されている。支持部23は空隙17上に位置し四角形に形成されており支持部23上には赤外線検出部4が設置されている。梁22は一端が本体部21に固定され他端が支持部23を保持している。図2(b)では見やすくするために梁22が短く記載されているが図2(a)に示すように梁22はY方向に長く形成されている。そして、梁22が長く形成されていることにより、本体部21と支持部23との間の熱伝導が小さくなっている。所定の範囲の中に支持部23及び梁22を配置するために梁22は2箇所で曲げられた形状となっている。梁22の形状及び長さは特に限定されないが、長い梁22は短いときに比べて熱が移動し難い。従って、梁22が長い方が赤外線検出部4は精度良く赤外線を検出できる。
【0030】
撥水膜16は空隙17を形成するときに使用するエッチング液から絶縁膜14を保護する機能を有する。撥水膜16の材質はエッチング液に対して耐食性があり、洗浄に用いる純水に対して撥水性があれば良く特に限定されない。本実施形態では、例えば、撥水膜16の材質にポリシリコンを用いている。支持部材20の材質は剛性があって絶縁性があり、空隙17を形成するときに用いるエッチング液に対して耐食性があればよい。支持部材20の材料には例えば、SiN(窒化シリコン)やSiCN(炭窒化シリコン)を用いることができる。支持部材20は単層でも良く多層構造でもよい。多層構造にすることにより内部応力のバランスをとっても良い。単層にするときには多層にするより少ない工程にできるので生産性を良くすることができる。本実施形態では、例えば、支持部材20の材質にはSiNを用いている。
【0031】
支持部23上には下部電極24が設置され、下部電極24に重ねて焦電体25が設置されている。さらに、焦電体25上には上部電極26が重ねて設置されている。下部電極24、焦電体25、上部電極26等によりキャパシター27が構成され、キャパシター27は温度変化に対応して分極量が変化する。従って、キャパシター27の分極量を検出することにより温度を推定することができる。
【0032】
下部電極24の材質は電導性の良い金属であればよく、さらには耐熱性のある金属が好ましい。本実施形態では、例えば、下部電極24の材質にIr(イリジウム)、IrOx(酸化イリジウム)、Pt(白金)をこの順に積層している。Irは配向制御、IrOxは還元ガスバリア、Ptはシード層としての機能を備えている。
【0033】
焦電体25はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)またはPZTにNb(ニオブ)を添加したPZTNを用いることができる。上部電極26の材質は電導性の良い金属であればよく、さらには耐熱性のある金属が好ましい。本実施形態では、例えば、上部電極26の材質にPt(白金)、IrOx(酸化イリジウム)、Ir(イリジウム)、をこの順に積層している。Ptは配向整合、IrOxは還元ガスバリア、Irは低抵抗層、としての機能を備えている。
【0034】
キャパシター27を覆って絶縁膜28が設置されている。絶縁膜28には下部電極24に通ずる第1コンタクトホール28aと、上部電極26に通ずる第2コンタクトホール28bとが形成されている。支持部材20上及び絶縁膜28上には下電極配線6及び上電極配線5が設置されている。下電極配線6は第1コンタクトホール28aを通じて下部電極24に接続されている。同様に、上電極配線5は第2コンタクトホール28bを通じて上部電極26に接続されている。
【0035】
絶縁膜28の材料は絶縁性があり、成膜し易い材料であれば良い。本実施形態では、例えば、絶縁膜28はAl2O3(アルミナ)の層とSiO2またはSiNの層とが積層された膜となっている。Al2O3の層はガスバリアの機能を有し、SiO2またはSiNの層は絶縁性の機能を有している。下電極配線6及び上電極配線5の材質は、導電性が良く成膜し易い材料であれば良く、W(タングステン)、Ti(チタン)またはAl(アルミニウム)等を用いることができる。本実施形態では、例えば、下電極配線6及び上電極配線5の材質には、Alを用いている。
【0036】
上電極配線5、下電極配線6及びキャパシター27と重ねて絶縁膜29が形成されている。絶縁膜29は絶縁膜28と同様な材質であり、同様な性能を持った膜である。絶縁膜29は電気的に絶縁させるとともに、覆われた場所を保護する機能も備えている。
【0037】
キャパシター27と重ねて赤外線吸収膜30が設置されている。これにより、赤外線吸収膜30は赤外線を反射させずに吸収するので、赤外線検出素子3は感度をさらに良くすることができる。赤外線検出部4はキャパシター27、絶縁膜28、下電極配線6、上電極配線5、絶縁膜29、赤外線吸収膜30等から構成されている。
【0038】
赤外線吸収膜30は赤外線の吸収率の良い材料からなる膜であれば良く、特に限定されない。赤外線吸収膜30は例えば、シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、金黒膜を用いることができる。金黒膜は多孔性の金の膜をガス中蒸着法にて形成したものである。本実施形態では例えば赤外線吸収膜30にSiN膜とSiO2膜の積層膜を採用している。
【0039】
絶縁膜14及び支持部材20にはビアホール14aが形成されている。ビアホール14a内には導電体が設置され、ビアホール14a及び導電体により上貫通電極7及び下貫通電極8が構成されている。下電極配線6と下貫通電極8とが接続し、上電極配線5と上貫通電極7とが接続している。上貫通電極7及び下貫通電極8の材質は、導電性が良く成膜し易い材料であれば良く、W、TiまたはAl等を用いることができる。本実施形態では、例えば、上貫通電極7及び下貫通電極8の材質には、Wを用いている。
【0040】
上貫通電極7及び下貫通電極8は配線層10の配線12と接続されている。従って、キャパシター27の下部電極24は下電極配線6、下貫通電極8、配線12、貫通電極13を介して駆動回路9と接続されている。同様に、キャパシター27の上部電極26は上電極配線5、上貫通電極7、配線12、貫通電極13を介して駆動回路9と接続されている。従って、駆動回路9は配線12から信号を入力してキャパシター27の分極量を検出することが可能になっている。
【0041】
基板2の基板裏面2bには反り抑制膜31が設置されている。反り抑制膜31は絶縁膜14及び支持部材20等の膜により基板2が反ることを抑制するために設けられた膜である。従って、反り抑制膜31の膜厚は基板2が反る量に合わせて調整するのが好ましい。反り抑制膜31の材質はSiO2、SiN、SiCN等を用いることができる。反り抑制膜31は単層でも良く多層構造でもよい。本実施形態では、例えば、反り抑制膜31の材質にSiNを用いている。
【0042】
赤外線検出素子3に赤外線が照射されるとき、赤外線検出部4は赤外線を吸収して温度が上昇する。赤外線検出部4において赤外線が照射される面には赤外線吸収膜30が設置されている。従って、赤外線検出部4は効率的に赤外線を吸収して温度を上げることができる。赤外線検出部4が備える焦電体25は温度変化に応じて分極量が変化する。従って、キャパシター27に電圧を印加し焦電体25の分極量を検出することにより赤外線検出部4の温度を検出することができる。そして、赤外線検出部4における温度変化の検出結果を用いて赤外線検出部4に照射された赤外線の照射量を検出することができる。
【0043】
(赤外線検出素子の製造方法)
次に、上述した赤外線検出素子3の製造方法について図3〜図6にて説明する。図3は、赤外線検出素子の製造方法を示すフローチャートであり、図4〜図6は赤外線検出素子の製造方法を説明するための模式図である。
【0044】
図3のフローチャートにおいて、ステップS1は絶縁膜形成工程に相当する。配線層上に絶縁膜を形成し、基板裏面に反り抑制膜を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は凹部形成工程に相当し、絶縁膜に凹部を形成する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は撥水膜形成工程に相当し、凹部を覆って撥水膜を形成する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は犠牲膜形成工程に相当し、凹部内を犠牲膜で埋める工程である。犠牲膜は後工程にて除去する予定の膜である。次にステップS5に移行する。
【0045】
ステップS5は支持部材形成工程に相当し、絶縁膜及び犠牲膜と重ねて支持部材を形成する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は貫通電極形成工程に相当し、絶縁膜を貫通する貫通電極を形成する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS7はキャパシター形成工程に相当し、支持部材上にキャパシターを形成する工程である。次にステップS8に移行する。ステップS8は配線形成工程に相当し、キャパシターに接続する配線を形成する工程である。次にステップS9に移行する。ステップS9は支持部形成工程に相当し、支持部及び梁の形状を形成する工程である。次にステップS10に移行する。
【0046】
ステップS10は赤外線吸収膜形成工程に相当する。配線及びキャパシターと重ねて絶縁膜を形成し、キャパシターを覆って赤外線吸収膜を形成する工程である。次にステップS11に移行する。ステップS11はエッチング工程に相当し、凹部と支持部との間に空隙を形成する工程である。以上の製造工程にて赤外線検出素子が完成する。尚、ステップS7のキャパシター形成工程及びステップS8の配線形成工程によりステップS12の検出部形成工程が構成されている。
【0047】
次に、図4〜図6を用いて図3に示したステップと対応させて製造方法を詳細に説明する。図4(a)はステップS1の絶縁膜形成工程及びステップS2の凹部形成工程に対応する図である。図4(a)に示すように、駆動回路9及び配線層10が形成された基板2を用意する。駆動回路9は半導体回路であり公知の方法にて製造することができる。配線層10においても配線12の形成方法、配線層絶縁膜11の成膜方法、貫通電極13の形成方法は公知である。駆動回路9及び配線層10の形成方法は公知であり、説明を省略する。
【0048】
ステップS1において、配線層10上に絶縁膜14を成膜し、基板裏面2bに反り抑制膜31を成膜する。このとき、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて絶縁膜14にはSiO2膜を形成し、反り抑制膜31にはSiN膜を形成する。次に、ステップS2においてフォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて凹部15を形成する。ドライエッチング法の製造条件を調整して凹部15の側面15aを基板表面2aに対して斜面にする。次に、マスクを除去して凹部15が完成する。
【0049】
図4(b)はステップS3の撥水膜形成工程に対応する図である。図4(b)に示すように、凹部15及び絶縁膜14上に減圧CVD法を用いてポリシリコンの膜からなる撥水膜16を成膜する。減圧CVDにて成膜することによりステップカバリッジ可能な膜を成膜できるため側面15aにも確実に成膜することができる。次に、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて凹部15以外の撥水膜16を除去する。
【0050】
図4(c)はステップS4の犠牲膜形成工程に対応する図である。図4(c)に示すように、ステップS4において絶縁膜14にCVD法を用いてSiO2の膜からなる犠牲膜32を形成する。このとき、凹部15に加えて絶縁膜14上にもSiO2の膜を形成し、膜厚を凹部15の深さより厚くする。次に、CMP法(Chemical Mechanical Polishing)を用いて犠牲膜32の上面を平坦にし、絶縁膜14の面と犠牲膜32の面とを同一の面とする。このとき、撥水膜16の一部である面16aが露出する。
【0051】
図4(d)はステップS5の支持部材形成工程に対応する図である。図4(d)に示すように、ステップS5において絶縁膜14、撥水膜16及び犠牲膜32上に支持部材20を形成する。まず、絶縁膜14、撥水膜16及び犠牲膜32の表面をエッチングする。これにより、撥水膜16の酸化した部分が除去される。さらに、絶縁膜14と犠牲膜32とがエッチングされることで撥水膜16の露出している面16aが凸状になるので、面16aの表面積を広くすることができる。次に、CVD法を用いてSiNの膜を形成する。
【0052】
図5(a)はステップS6の貫通電極形成工程に対応する図である。図5(a)に示すように、ステップS6において絶縁膜14及び支持部材20を貫通する上貫通電極7及び下貫通電極8を形成する。まず、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いてビアホール14aを形成する。次に、タングステン等の金属を埋め込むことで上貫通電極7及び下貫通電極8が形成される。
【0053】
続いて、上貫通電極7の図中上側の端に端子7aを形成する。端子7aは上貫通電極7を形成するときにできる膜を用いても良く、別途、成膜しても良い。同様に、下貫通電極8の図中上側の端に端子8aを形成する。フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて端子7a及び端子8aを形成する。
【0054】
図5(b)はステップS7のキャパシター形成工程に対応する図である。図5(b)に示すように、ステップS7において、まず、下部電極24となる膜を形成する。Ir(イリジウム)、IrOx(酸化イリジウム)、Pt(白金)をこの順にスパッタ法を用いて積層する。次に、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて下部電極24を形成する。
【0055】
キャパシター27の焦電体25、下部電極24及び上部電極26の結晶配向は、その優先配向方位が例えば(111)面方位で揃えられている。(111)面方位に優先配向されることで、全ての面方位に対して(111)配向の配向率が例えば90%以上に制御される。焦電係数を大きくするには(111)配向よりもむしろ(100)配向等が好ましいが、印加電界方向に対して分極を制御しやくするために(111)配向としている。そして、Irの配向制御層を例えば(111)面に優先配向するように成膜する。ただし、優先配向方位はこれに限定されない。
【0056】
支持部材20はSiNの膜である。SiNの膜は表面粗さの小さい平坦な膜を形成することができる。従って、支持部材20上に成膜された下部電極24は設計した通りの表面にすることができる。これにより、下部電極24は精度良く焦電体25を配向制御することができる。
【0057】
次に、焦電体25を形成する。焦電体25の材料となる物質を塗布して加熱し、例えば(111)方位で優先配向させて結晶成長させる。下部電極24が配向制御しているので、焦電体25は下部電極24に倣って配向される。そして、焦電体25の材料を加熱するとき支持部材20側からの還元性の阻害要因により焦電体25の材料が還元されるのを下部電極24のIrOx(酸化イリジウム)が防止する。
【0058】
次に、上部電極26となる膜を形成する。Pt(白金)、IrOx(酸化イリジウム)、Ir(イリジウム)をこの順にスパッタ法を用いて積層する。次に、加熱してPt(白金)を再結晶化する。これにより、Pt(白金)の層は焦電体25と結晶配向が整合する。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて焦電体25及び上部電極26を形成する。下部電極24、焦電体25、上部電極26の側面はエッチング条件を調整して斜面にするのが好ましい。これにより、キャパシター27上に絶縁膜28を品質良く成膜することができる。
【0059】
次に、下部電極24、焦電体25、上部電極26と積層して還元ガスバリア層を成膜する。バリア層は、例えば酸化アルミニウムAl2O3をスパッタ法もしくはCVD法により成膜して形成する。続いて、絶縁膜28を成膜する。絶縁膜28はSiO2またはSiNをCVD法にて成膜する。次に、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて還元ガスバリア層及び絶縁膜28をパターニングする。パターニングでは還元ガスバリア層及び絶縁膜28の外形形状と第1コンタクトホール28a及び第2コンタクトホール28bを形成する。
【0060】
図5(c)はステップS8の配線形成工程に対応する図である。図5(c)に示すように、ステップS8において絶縁膜28に重ねて上電極配線5及び下電極配線6を形成する。まず、Al(アルミニウム)等の配線材料をスパッタにて膜付けしてパターニングする。上電極配線5は第2コンタクトホール28bから端子7aまで繋げて配線する。下電極配線6は第1コンタクトホール28aから端子8aまで繋げて配線する。
【0061】
図6(a)はステップS9の支持部形成工程に対応する図である。図6(a)に示すように、ステップS9において梁22及び支持部23を形成する。フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて支持部材20をパターニングする。これにより支持部材20の平面形状は支持部23、梁22、本体部21の形状に形成される。
【0062】
図6(b)はステップS10の赤外線吸収膜形成工程に対応する図であり、図6(a)のC−C’線に沿った模式断面図である。図6(b)に示すようにステップS10においてキャパシター27上の絶縁膜29と重ねて赤外線吸収膜30を形成する。SiN及びSiO2をCVD法にて成膜する。そして、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて赤外線吸収膜30をパターニングする。
【0063】
図6(c)はステップS11のエッチング工程に対応する図であり、図6(a)のD−D’線に沿った模式断面図である。図6(c)に示すようにステップS11において犠牲膜32をエッチングして除去し犠牲膜32があった場所を空隙17にする。フォトリソグラフィ法を用いて支持部材20及び赤外線検出部4を覆ってマスクを形成しパターニングする。レジストはフッ化水素のエッチング液に耐性の高いものを使用する。次に、基板2をフッ化水素のエッチング液に浸漬することにより支持部材20の本体部21と支持部23との間からエッチング液を犠牲膜32に触れさせる。そして、犠牲膜32のSiO2が腐食され除去されて空隙17が形成される。支持部材20及び撥水膜16はエッチング液に対して耐食性がある膜となっている。従って、エッチング液は支持部材20及び撥水膜16をエッチングすることなく犠牲膜32のみエッチングする。その後、純水にて洗浄して乾燥する。撥水膜16は純水をはじくので、純水は凹部15から排除され易くなっている。そして、支持部材20の材質はSiNであることから剛性が高いので、支持部23は凹部15の底に張り付き難くなっている。そして、凹部15から純水が排出されて乾燥される。続いて、マスクを除去することにより赤外線検出素子3が完成する。
【0064】
(比較例)
続いて、支持部材20の材質にポリシリコンを用いたときとSiNを用いたときの(111)面配向率を比較した例を紹介する。(111)面配向率は次の数式(数1)のように表すことができる。尚、(111)面ピーク強度はPZT薄膜の結晶面(111)のX線回折ピーク強度を示す。
【0065】
【数1】
【0066】
図7は支持部材の材質にポリシリコンを用いたときとSiNを用いたときの(111)面配向率を比較したグラフである。図7に示すように、支持部材20をポリシリコンにしたときの(111)面配向率は73%程度である。一方、支持部材20をSiNにしたときの(111)面配向率は98%程度である。従って、支持部材20をSiNにする方が、支持部材20をポリシリコンにするときに比べて明らかに(111)面配向率を高くすることができる。その結果、支持部材20の材質をSiNにすることにより赤外線検出部4の感度を良くすることができる。
【0067】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、空隙17を形成するステップS11のエッチング工程で基板2が純水にて洗浄される。凹部15はポリシリコンの撥水膜16に覆われている。撥水膜16は撥水性を有することから、凹部15から純水が排出され易くなっている。さらに、凹部15から純水が排出されるとき、支持部23と凹部15との間に表面張力が作用し難くすることができる。そして、梁22及び支持部23の材質は窒化シリコンである。窒化シリコンはシリコンや酸化シリコンに比べて剛性が高い材料である。従って、純水を凹部15から排出するときに支持部23が凹部15の底に張り付くのを防止することができる。
【0068】
(2)本実施形態によれば、赤外線検出部4は支持部23上に下部電極24、焦電体25、上部電極26が重ねて配置されている。そして、焦電体25は下部電極24によって優先配向されているので感度良く赤外線を検出することができる。下部電極24は窒化シリコンの支持部23上に配置されている。窒化シリコンの膜は表面粗さを小さく成膜することができる為、平坦な支持部23上に下部電極24を配置することができる。従って、精度良く下部電極24を形成し、焦電体25を優先配向させることができる。その結果、赤外線検出素子3の感度をさらに良くすることができる。
【0069】
(3)本実施形態によれば、ステップS4の犠牲膜形成工程で撥水膜16の一部の面16aを露出させている。露出された撥水膜16はポリシリコンであり、ポリシリコンは酸化して酸化シリコンとなる。酸化シリコンはステップS11のエッチング工程にてエッチングされ易いためエッチング液が漏洩する危険性が生ずる。本実施形態ではステップS5の支持部材形成工程にて露出したポリシリコンの面16aをエッチングして、支持部材20を重ねて配置している。従って、ステップS4にて酸化シリコンが形成されているときにもステップS5にて除去される為、ステップS11のエッチング工程にてエッチング液が漏洩することを防止できる。
【0070】
さらに、ステップS5にてポリシリコンの面16aをエッチングするとき絶縁膜14と犠牲膜32とがエッチングされることにより撥水膜16の面16aが凸状になる。従って、撥水膜16と支持部材20との接触面積を増やすことができる為、ステップS11のエッチング工程でエッチング液を漏洩し難くすることができる。
【0071】
(4)本実施形態によれば、ステップS11のエッチング工程においてウエットエッチングを行って空隙17を形成している。特許文献1にて開示されたドライエッチングを用いた方法では赤外線検出部4が高温の環境及びプラズマが生じている環境に長時間さらされる。これにより赤外線検出部4が損傷を受ける可能性が高い。一方、本実施形態の方法では高温の環境やプラズマが生じている環境に赤外線検出部4が長時間さらされないので、赤外線検出部4が損傷を受け難くすることができる。
【0072】
(5)本実施形態によれば、ステップS11のエッチング工程においてウエットエッチングを用いて空隙17を形成している。ウエットエッチングではエッチング液に基板2を浸漬して行うので、多数の基板2を並行してエッチングすることができる。従って、ドライエッチングを用いた方法に比べて生産性良く空隙17を形成することができる。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、赤外線検出装置の一実施形態について図8を用いて説明する。図8(a)は、赤外線検出装置の構成を示すブロック図であり、図8(b)は、赤外線検出素子の配列を説明するための模式図である。本実施形態では第1の実施形態における駆動回路9の駆動内容の例を詳しく説明する。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0074】
すなわち、本実施形態では、図8(a)に示したように電子機器としてのセンサーデバイス35は、センサーアレイ36と、行選択回路37と、読み出し回路38を含む。さらに、センサーデバイス35はA/D変換部39、制御回路40を含む。行選択回路37を行ドライバーとも称す。第1の実施形態における駆動回路9は行選択回路37、読み出し回路38、A/D変換部39、制御回路40等を備えている。センサーデバイス35を用いることで例えばナイトビジョン機器等に用いられる赤外線カメラ等を実現できる。
【0075】
図8(a)に示すように、センサーデバイス35はセンサーアレイ36を備えている。図8(b)に示すように、センサーアレイ36には複数の赤外線検出素子3が格子状に配列される。複数の行線と複数の列線との配線が設けられている。行線はワード線や走査線とも称し、列線はデータ線とも称す。尚、行線及び列線の一方の本数は1本であってもよい。例えば行線が1本である場合には行線に沿った方向(図中横方向)に複数の赤外線検出素子3が配列される。一方、列線が1本である場合には列線に沿った方向(図中縦方向)に複数の赤外線検出素子3が配列される。
【0076】
センサーアレイ36の各赤外線検出素子3は、各行線と各列線の交差位置に対応する場所に配置される。例えば、行線WL1と列線DL1の交差位置に対応する場所に赤外線検出素子3の1つが配置されている。他の赤外線検出素子3も同様に配置されている。センサーアレイ36のサイズは特に限定されない。本実施形態では例えばセンサーアレイ36は320×240画素のQVGA(Quarter Video Graphics Array)となっている。そして、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239及び列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319が配置されている。
【0077】
図8(a)に戻って、行選択回路37は複数の行線に接続される。そして各行線の選択動作を行う。つまり、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239を順次選択して走査する動作を行う。即ちこれらの行線を選択する信号であるワード選択信号をセンサーアレイ36に出力する。
【0078】
読み出し回路38は、複数の列線に接続され、各列線の読み出し動作を行う。QVGAのセンサーアレイ36を例にとれば、列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319からの検出信号(検出電流、検出電荷)を読み出す動作を行う。
【0079】
A/D変換部39は、読み出し回路38において取得された検出電圧(測定電圧、到達電圧)をデジタルデータにA/D変換する処理を行う。そしてA/D変換後のデジタルデータDOUTを出力する。具体的には、A/D変換部39には、複数の列線の各列線に対応して各A/D変換器が設けられる。そして、各A/D変換器は、対応する列線において読み出し回路38により取得された検出電圧のA/D変換処理を行う。尚、複数の列線に対応して1つのA/D変換器を設け、この1つのA/D変換器を用いて、複数の列線の検出電圧を時分割にA/D変換してもよい。
【0080】
制御回路40は、各種の制御信号を生成して、行選択回路37、読み出し回路38、A/D変換部39に出力する。例えば、充電や放電(リセット)の制御信号を生成して出力する。或いは、各回路のタイミングを制御する信号を生成して出力する。第1の実施形態における駆動回路9は行選択回路37、読み出し回路38、A/D変換部39及び制御回路40等により構成されている。
【0081】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、センサーデバイス35は格子状に配列した赤外線検出素子3を備えている。そして、行選択回路37及び読み出し回路38が順次赤外線検出素子3を選択して赤外線の受光量を検出して出力する。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。従って、センサーデバイス35は照射される赤外線の分布を感度良く検出する赤外線検出素子3を備えた装置とすることができる。
【0082】
(第3の実施形態)
次に、赤外線検出部に赤外線検出素子を備える電子機器の1つである赤外線カメラの一実施形態について図9の赤外線カメラの構成を示すブロック図を用いて説明する。図9に示すように、電子機器としての赤外線カメラ41は、光学系42、光検出部43、画像処理部44、処理部45、記憶部46、操作部47、表示部48を含んで構成されている。
【0083】
光学系42は、例えば1枚または複数枚のレンズやレンズの位置を移動させる駆動部等を含んで構成されている。そして、光学系42は光検出部43への物体像の結像を行う。必要に応じて光学系42はフォーカス調整や絞り調整等の機能も備えても良い。
【0084】
光検出部43には上記実施形態の赤外線検出素子3が二次元配列された検出器が用いられている。光検出部43は、検出器に加えて行選択回路(行ドライバー)、列線を介して検出器からのデータを読み出す読み出し回路及びA/D変換部等を備えている。そして、二次元配列された各検出器からのデータを順次読み出すことで、被写体の画像データを形成することができる。
【0085】
画像処理部44は、光検出部43からのデジタルの画像データに基づいて、画像補正処理等の各種の画像処理を行う。画像データは画素データとも称す。
【0086】
処理部45は、赤外線カメラ41の全体の制御を行い、赤外線カメラ41内の各ブロックの制御を行う。この処理部45は例えばCPU等により実現される。記憶部46は各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部45や画像処理部44のワーク領域として機能する。操作部47は、操作者が赤外線カメラ41を操作するためのインターフェイスとなるものであり、例えば、各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面等により実現される。表示部48は、例えば光検出部43により取得された画像やGUI画面等を表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の各種のディスプレイにより実現される。
【0087】
このように、直交する二方向に赤外線検出素子3を二次元配置された光検出部43を用いて熱(光)分布画像を提供することができる。この光検出部43を用いて、サーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラ等の電子機器を構成することができる。
【0088】
もちろん、1セル分または複数セルの赤外線検出素子3をセンサーとして用いることで物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場等に設けられるFA(Factory Automation)機器等の各種の電子機器を構成することもできる。
【0089】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、赤外線カメラ41は光検出部43を備え、光検出部43には赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。光検出部43の赤外線検出素子3は感度良く赤外線を検出するので、赤外線カメラ41は感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子を備えた電子機器とすることができる。
【0090】
(第4の実施形態)
次に、光検出部に赤外線検出素子を備えた赤外線カメラを用いた電子機器の1つである運転支援装置の一実施形態について図10及び図11を用いて説明する。図10は、運転支援装置の構成を示すブロック図であり、図11は、運転支援装置を搭載した自動車を示す概略斜視図である。
【0091】
図10に示すように、電子機器としての運転支援装置51は、運転支援装置51を制御するCPUを備えた処理ユニット52と、車両外部の所定の撮像領域における赤外線を検出可能な赤外線カメラ41と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサー54とを備えている。さらに、運転支援装置51は、車両の走行速度を検出する車速センサー55と、運転者のブレーキ操作の有無を検出するブレーキセンサー56と、スピーカー57と、表示装置58とを備えて構成されている。そして、本実施形態の赤外線カメラ41は上記実施形態における赤外線カメラ41と同じカメラが用いられている。従って、赤外線カメラ41は光検出部に赤外線検出素子3を備えている。
【0092】
この運転支援装置51の処理ユニット52は、例えば、赤外線カメラ41の撮像により得られる自車両周辺の赤外線画像と、ヨーレートセンサー54、車速センサー55、ブレーキセンサー56により検出される自車両の走行状態にかかる検出信号を用いる。そして、処理ユニット52は赤外線画像及び検出信号を用いて自車両の進行方向前方に存在する物体及び歩行者等の対象物を検出する。検出した対象物と自車両との接触が発生する可能性があると判断したときには、スピーカー57または表示装置58により警報を出力する。
【0093】
図11に示すように、赤外線カメラ41は、自動車の前部において車幅方向の中心付近に配置されている。表示装置58は、フロントウィンドーにおいて運転者の前方視界を妨げない位置に各種情報を表示するHUD(Head Up Display)59等を備えて構成されている。
【0094】
(1)本実施形態によれば、運転支援装置51は赤外線カメラ41を備えている。赤外線カメラ41は光検出部43を備え、光検出部43には上記実施形態の赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。従って、運転支援装置51は感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子を有する赤外線カメラ41を備えた電子機器とすることができる。
【0095】
(第5の実施形態)
次に、赤外線検出部に赤外線検出素子を備えた赤外線カメラを用いた電子機器の1つであるセキュリティー機器の一実施形態について図12及び図13を用いて説明する。図12は、セキュリティー機器の構成を示すブロック図であり、図13はセキュリティー機器が設置された家を示す模式図である。
【0096】
図12に示すように、電子機器としてのセキュリティー機器62は、監視エリアを撮影する赤外線カメラ41と、監視エリアへの侵入者を検知する人感センサー63を備える。人感センサー63は光検出部を備え、光検出部に赤外線検出素子3を備えている。そして、本実施形態の赤外線カメラ41は上記実施形態における赤外線カメラ41と同じカメラが用いられている。従って、赤外線カメラ41は光検出部に赤外線検出素子3を備えている。
【0097】
さらに、セキュリティー機器62は、赤外線カメラ41から出力された画像データを処理して監視エリアに侵入した移動体を検知する動き検知処理部64を備える。さらに、セキュリティー機器62は人感センサー63が出力する信号を用いて侵入者の検知処理を行う人感センサー検知処理部65を備える。さらに、セキュリティー機器62は画像圧縮部66を備え、画像圧縮部66は赤外線カメラ41から出力された画像データを所定の方式で圧縮する。さらに、セキュリティー機器62は通信処理部67を備え、通信処理部67は圧縮された画像データや侵入者検知情報を外部装置に送信し、セキュリティー機器62への各種設定情報等を外部装置から受信する。さらに、セキュリティー機器62は制御部68等を備え、制御部68はセキュリティー機器62の各処理部に対して条件設定、処理コマンド送信、レスポンス処理をCPU(Central Processing Unit)にて行う。セキュリティー機器62は以上の要素等で構成されている。そして、本実施形態の赤外線カメラ41は上記実施形態における赤外線カメラ41と同じカメラが用いられている。従って、赤外線カメラ41は光検出部に赤外線検出素子3を備えている。
【0098】
動き検知処理部64は、図示しないバッファメモリーと、バッファメモリーの出力信号が入力されるブロックデータ平滑部と、ブロックデータ平滑部の出力信号が入力される状態変化検出部とを備える。そして、状態変化検出部は撮影した動画の画像であるフレームを比較する。そして、監視エリアが静止状態であれば動画で撮影した異なるフレームが同一画像の画像データとなり、移動体の侵入による状態変化があるときフレーム間の画像データで差が生じる。フレーム間の画像データで差を利用して状態変化検出部は状態変化を検知する。
【0099】
図13に示すように、セキュリティー機器62は軒下に赤外線カメラ41及び人感センサー63が設置されている。そして、赤外線カメラ41は撮像エリア69を検出し、人感センサー63は検知エリア70を検出する。
【0100】
(1)本実施形態によれば、セキュリティー機器62は人感センサー63及び赤外線カメラ41を備えている。人感センサー63及び赤外線カメラ41は光検出部を備え、光検出部には赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。従って、セキュリティー機器62は感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子を有する人感センサー63及び赤外線カメラ41を備えた電子機器とすることができる。
【0101】
(第6の実施形態)
次に、赤外線検出部に赤外線検出素子を備えた赤外線カメラを用いた電子機器の1つであるゲーム機器の一実施形態について図14及び図15を用いて説明する。図14は、ゲーム機器のコントローラーの構成を示すブロック図であり、図15はコントローラーの使用方法を説明するための模式図である。
【0102】
図14に示すように、ゲーム機器に用いられる電子機器としてのコントローラー73は、撮像情報演算ユニット74と、操作スイッチ75と、加速度センサー76と、コネクター77と、プロセッサー78と、無線モジュール79と、を備えて構成される。
【0103】
撮像情報演算ユニット74は、撮像ユニット80と、この撮像ユニット80で撮像した画像データを処理するための画像処理回路81とを有する。撮像ユニット80は光検出部82を備え、さらに、光検出部82と接続して赤外線だけを通すフィルターである赤外線フィルター83及びレンズ等の光学系84を備えている。そして、画像処理回路81は、撮像ユニット80から得られた赤外線画像データを処理して、高輝度部分を検知し、高輝度部分の重心位置や面積を検出してこれらのデータを出力する。光検出部82には上記実施形態の赤外線検出素子3が用いられている。
【0104】
プロセッサー78は、操作スイッチ75からの操作データと、加速度センサー76からの加速度データ及び赤外線画像の高輝度部分データを一連のコントロールデータとして無線モジュール79に出力する。無線モジュール79は所定周波数の搬送波をこのコントロールデータで変調する。無線モジュール79はアンテナ85を備え、アンテナ85から搬送波を電波信号にして出力する。
【0105】
尚、コントローラー73に設けられているコネクター77を通して入力されたデータもプロセッサー78によって上述のデータと同様に処理されてコントロールデータとして無線モジュール79とアンテナ85を介して出力される。
【0106】
図15に示すように、電子機器としてのゲーム機器86は、コントローラー73と、ゲーム機本体87と、ディスプレイ88と、LEDモジュール89及びLEDモジュール90とを備えている。ゲーム機器86を操作するプレイヤー91は一方の手でコントローラー73を操作してゲームをプレイすることができる。そして、コントローラー73の撮像ユニット80をディスプレイ88の画面92を向くようにすると、ディスプレイ88の近傍に設置された二つのLEDモジュール89及びLEDモジュール90から出力される赤外線を撮像ユニット80が検知する。そして、コントローラー73は、二つのLEDモジュール89,90の位置や面積情報を高輝度点の情報として取得する。輝点の位置や大きさのデータがコントローラー73から無線でゲーム機本体87に送信され、ゲーム機本体87に受信される。プレイヤー91がコントローラー73を動かすと、輝点の位置や大きさのデータが変化する。それを利用して、ゲーム機本体87はコントローラー73の動きに対応した操作信号を取得できる。そして、操作信号にしたがってゲーム機器86はゲームを進行させることができる。
【0107】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ゲーム機器86のコントローラー73は光検出部82を備え、光検出部82には上記実施形態の赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。光検出部82の赤外線検出素子3は感度良く赤外線を検出するので、ゲーム機器86は感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子3が設置されたコントローラー73を有する電子機器とすることができる。
【0108】
(第7の実施形態)
次に、赤外線検出部に赤外線検出素子を備えた赤外線カメラを用いた電子機器の1つである体温測定装置の一実施形態について図16を用いて説明する。図16は、体温測定装置の構成を示すブロック図である。
【0109】
図16に示すように、電子機器としての体温測定装置95は、赤外線カメラ41と、体温分析装置96と、情報通信装置97と、ケーブル98とを備えて構成されている。本実施形態の赤外線カメラ41は上記の実施形態の赤外線カメラ41と同じカメラが用いられている。
【0110】
赤外線カメラ41は所定の対象領域を撮影し、撮影された対象者99の画像情報をケーブル98を経由して体温分析装置96に送信する。体温分析装置96は、赤外線カメラ41からの熱分布画像を読み取る画像読取処理ユニットと、画像読取処理ユニットからのデータと画像分析設定テーブルに基づいて体温分析テーブルを作成する体温分析処理ユニットとを含み、体温分析テーブルに基づいて体温情報送信用データを情報通信装置97へ送信する。この体温情報送信用データは体温異常であることに対応する所定のデータを含んでもよい。また、撮影領域内に複数の対象者99を含んでいると判断した場合には、対象者99の人数と体温異常者の人数の情報を体温情報送信用データに含んでもよい。
【0111】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、体温測定装置95は赤外線カメラ41を備えている。赤外線カメラ41は光検出部を備え、光検出部には赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。従って、体温測定装置95は感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子を有する赤外線カメラ41を備えた電子機器とすることができる。
【0112】
(第8の実施形態)
次に、光検出部に赤外線検出素子を備える電子機器の1つである特定物質探知装置の一実施形態について図17の特定物質探知装置の構成を示すブロック図を用いて説明する。
【0113】
図17に示すように電子機器としての特定物質探知装置102は、制御ユニット103と、照射光ユニット104と、光学フィルター105と、撮像ユニット106と、表示部107とを備えて構成されている。撮像ユニット106は、図示しないレンズ等の光学系と光検出部を備え、該光検出部は第1の実施形態の赤外線検出素子3を備えている。そして、赤外線検出素子3の赤外線検出部4が備える赤外線吸収膜30の吸収波長はテラヘルツ域となっている。
【0114】
制御ユニット103は、本装置全体を制御するシステムコントローラーを含み、該システムコントローラーは制御ユニットに含まれる光源駆動部及び画像処理ユニットを制御する。照射光ユニット104は、波長が100μm〜1000μmの範囲にある電磁波であるテラヘルツ光を射出するレーザー装置と光学系を含み、テラヘルツ光を検査対象の人物108に照射する。
【0115】
人物108と撮像ユニット106との間には光学フィルター105が配置されている。光学フィルター105は探知対象である特定物質109の分光スペクトルのみを通過させる。人物108から反射するテラヘルツ光は、光学フィルター105にて分離されて特定物質109の分光スペクトルのみ撮像ユニット106に受光される。撮像ユニット106で生成された画像信号は、制御ユニット103の画像処理ユニットで所定の画像処理が施され、その画像信号が表示部107へ出力される。そして人物108の衣服内等に特定物質109が存在するか否かにより受光信号の強度が異なるので特定物質109の存在が判別できる。
【0116】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、特定物質探知装置102は撮像ユニット106に光検出部を備え、光検出部には上記実施形態の赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。光検出部の赤外線検出素子3は感度良く赤外線を検出するので、特定物質探知装置102は撮像ユニット106に感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子を備えた電子機器とすることができる。
【0117】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例は総て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【0118】
本発明は、種々の焦電型検出器に広く適用することができる。検出する光の波長は問わない。また、焦電型検出器または焦電型検出装置、あるいはそれらを有する電子機器は、例えば、供給する熱量と流体が奪う熱量とが均衡する条件下にて流体の流量を検出するフローセンサー等にも適用できる。このフローセンサーに設けられる熱電対等に代えて本発明の焦電型検出器または焦電型検出装置を設けることができ、光以外を検出対象とすることができる。
【0119】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
【0120】
(変形例1)
前記第1の実施形態では、2つの梁22が設置されたが、梁22の個数は限定されない。梁22の個数は1個でも良く、3個以上でも良い。支持部23を安定して支持できれば良い。また、梁22は折れ曲がった角柱状であったが、梁22の形状は曲線でも良く、真直ぐでもよい。支持部23を安定して支持できれば良く、設計し易い形状にしても良い。また、梁22を長くすることにより梁22を介して熱伝導する熱量を減らすことができる。
【0121】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、基板2上に駆動回路9を設置し、同じ基板2上に赤外線検出素子3を配列して形成した。駆動回路9は基板2でなく外部基板に設置しても良い。バンプを接点に用いて基板2と外部基板との間で通信しても良い。良品の駆動回路9と赤外線検出素子3が配列した良品のセンサーアレイとを組み立ててセンサーデバイスとする。従って、歩留まり良くセンサーデバイスを製造できるので、生産性良くセンサーデバイスを製造することできる。
【0122】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、ステップS12の検出部形成工程の後にステップS9の支持部形成工程を行った。ステップS9はステップS5の支持部材形成工程とステップS6の貫通電極形成工程との間に行われても良い。また、ステップS9はステップS6の貫通電極形成工程とステップS12の検出部形成工程との間に行われても良い。製造し易いステップ順にて行っても良い。
【0123】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、支持部材20をSiNの膜にした。支持部材20の空隙17側にはポリシリコンの膜を配置しても良い。これにより、空隙17と接する場所を純水に対して撥水性を良くすることができる。従って、空隙17から純水を排出しやすくなるので、支持部23が凹部15の底に吸着することをさらに防止することができる。
【0124】
(変形例5)
前記第1の実施形態では、ステップS3の撥水膜形成工程にて撥水膜16を成膜した。続けて撥水膜16をパターニングした。撥水膜16のパターニングはステップS4の犠牲膜形成工程にてCMP法を用いて犠牲膜32の上面を平坦にする工程にて行っても良い。撥水膜16のパターニングは凹部15以外の場所の撥水膜16を除去する内容であり、犠牲膜32の上面を平坦にすることによりパターニングすることができる。この方法を用いることにより、マスクを形成する工程とドライエッチングする工程とを削減することができる。その結果、生産性良く赤外線検出素子3を製造することができる。
【0125】
(変形例6)
前記第1の実施形態では、ステップS9の支持部形成工程の後にステップS10の赤外線吸収膜形成工程を行った。ステップS10の後にステップS9を行っても良い。つまり、赤外線検出部4に赤外線吸収膜30を成膜した後で梁22及び支持部23の形状をパターニングしても良い。製造し易い工程順にて製造しても良い。
【0126】
(変形例7)
前記第1の実施形態では、ステップS11のエッチング工程において純水を用いて洗浄し乾燥した。純水にて洗浄した後にアルコール等の沸点の低い液体で水置換しても良い。さらに、凹部15から液体が早く排出されるので支持部23を凹部15の底に張り付き難くすることができる。
【0127】
(変形例8)
前記第1の実施形態では、ステップS11のエッチング工程において、基板2をフッ化水素のエッチング液に浸漬した。尚、エッチング液はフッ化水素酸とフッ化アンモニウムとを混合したバッファードフッ酸を用いても良い。
【符号の説明】
【0128】
2…基板、4…赤外線検出部、14…絶縁膜、15…凹部、16…撥水膜、17…空隙、22…梁、23…支持部、24…下部電極、25…焦電体、26…上部電極、32…犠牲膜、35…電子機器としてのセンサーデバイス、41…電子機器としての赤外線カメラ、43,82…光検出部、51…電子機器としての運転支援装置、62…電子機器としてのセキュリティー機器、73…電子機器としてのコントローラー、86…電子機器としてのゲーム機器、95…電子機器としての体温測定装置、102…電子機器としての特定物質探知装置。
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線検出素子にかかわり、特に、赤外線の照射量を検出する素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
シリコン基板にマイクロマシーニング技術を用いた赤外線検出素子が研究されている。赤外線検出素子には赤外線による温度変化を検出するボロメーター型赤外線検出素子がある。赤外線検出素子は赤外線によって加熱された後、放熱しない断熱構造にすることにより感度良く赤外線を検出することができる。
【0003】
赤外線を検出する検出部をシリコン基板から浮かせた場所に作成したボロメーター型赤外線検出素子が特許文献1に開示されている。それによると、ダイアモンドライクカーボンにて犠牲層を形成し、犠牲層の上に支持部及び検出部を形成していた。そして、酸素を含んだプラズマ処理により犠牲層をエッチングし空洞を形成していた。これにより検出部を断熱構造にすることができる。このとき、検出部が加熱される状態に長時間曝され、プラズマ放電の環境に長時間曝される。これにより、検出部が損傷を受ける可能性が高くなっていた。
【0004】
犠牲層をエッチングするときウェットプロセスにて行うことにより、検出部が熱やプラズマに長時間さらされることを防止することができる。その方法として、まず凹部を形成し凹部の表面にエッチング液から保護する保護膜を形成する。次に、凹部に犠牲層を配置し、犠牲層上に支持部及び検出部を配置する。続いて、犠牲層をエッチング液に浸漬して除去する方法が考えられる。エッチング液はエッチャントとも称す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−192350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
犠牲層を除去した後、基板を純水に浸漬してエッチング液を凹部から排出する。次に、凹部から純水を排出する。凹部と対向する場所には支持部が位置する。そして、純水が徐々に排出されるとき、純水の表面張力が支持部に作用することにより支持部が凹部の底に張り付く。この現象をスティッキングと称す。このとき、支持部や支持部を保持する梁が変形する。そして、支持部が凹部に接触する為、検出部の熱が凹部に伝導する。これにより、赤外線の検出感度が悪くなる。そこで、支持部が凹部の底に張り付くのを防止することができる赤外線検出素子が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態または適用例として実現することが可能である。
【0008】
[適用例1]
本適用例にかかる赤外線検出素子であって、基板と、前記基板上に設置され凹部を備えた絶縁膜と、前記基板に一端が固定される梁によって保持され前記凹部の上方に空隙を介して位置する支持部と、前記支持部上に設置され赤外線を検出する赤外線検出部と、を備え、前記凹部はポリシリコンを含む撥水膜に覆われ、前記梁及び前記支持部は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含むことを特徴とする。
【0009】
本適用例によれば、基板上に絶縁膜が設置されている。そして、絶縁膜には凹部が形成されている。凹部と対向する場所には空隙を介して支持部が位置し、支持部は、基板に一端が固定される梁によって保持されている。支持部上には赤外線検出部が設置され、赤外線検出部は赤外線を検出する。赤外線が赤外線検出部及び支持部を照射するとき、赤外線検出部は加熱されて温度が高くなる。赤外線検出部は赤外線検出部の温度変化を検出することにより赤外線の照射量を検出する。そして、赤外線検出部及び支持部が赤外線によって加熱された熱量は空隙により断熱される為、赤外線検出部は感度良く赤外線の照射量を検出することができる。
【0010】
凹部に空隙を形成する工程で基板が純水にて洗浄される。純水を凹部から排出するとき純水の表面張力が作用することにより凹部と支持部とが張り付き易くなる。凹部はポリシリコンの撥水膜に覆われている。ポリシリコンの撥水膜は撥水性を有することから、凹部から純水が排出され易くなっている。そして、梁及び支持部は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含んでいる。窒化シリコンまたは炭窒化シリコンはシリコンや酸化シリコンに比べて剛性が高い材料である。従って、凹部から純水を排出するとき支持部が凹部の底に張り付くのを防止することができる。
【0011】
[適用例2]
上記適用例にかかる赤外線検出素子において、前記赤外線検出部は前記支持部上に下部電極、焦電体、上部電極が重ねて配置され、前記支持部は窒化シリコンを含み、前記焦電体は優先配向していることを特徴とする。
【0012】
本適用例によれば、赤外線検出部は支持部上に下部電極、焦電体、上部電極が重ねて配置されている。そして、焦電体は優先配向しているので感度良く赤外線を検出することができる。下部電極は窒化シリコンを含む支持部上に配置されている。窒化シリコンの膜は表面粗さを小さく成膜することができる為、平坦な支持部上に下部電極を配置することができる。従って、精度良く下部電極を形成し、焦電体を優先配向させることができる。その結果、赤外線検出素子の感度をさらに良くすることができる。
【0013】
[適用例3]
本適用例にかかる赤外線検出素子の製造方法であって、基板上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、前記絶縁膜に凹部を形成する凹部形成工程と、前記凹部を覆って撥水膜を形成する撥水膜形成工程と、前記凹部に犠牲膜を形成する犠牲膜形成工程と、前記犠牲膜上に支持部材を成膜する支持部材形成工程と、前記支持部材上に赤外線検出部を形成する検出部形成工程と、前記支持部材を、前記赤外線検出部を支持する支持部及び前記支持部を保持する梁の形状にパターニングする支持部形成工程と、前記犠牲膜をエッチングするエッチング工程と、を有し、前記撥水膜はポリシリコンを含み、前記支持部材は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含むことを特徴とする。
【0014】
本適用例によれば、絶縁膜形成工程において基板上に絶縁膜を形成する。次に、凹部形成工程において絶縁膜に凹部を形成する。撥水膜形成工程では凹部を覆って撥水膜を形成する。犠牲膜形成工程では凹部に犠牲膜を形成している。支持部材形成工程では犠牲膜上に支持部材を成膜する。そして、検出部形成工程では支持部材上に赤外線検出部を形成する。支持部形成工程では支持部材を支持部及び梁の形状にパターニングする。そして、エッチング工程では犠牲膜をエッチングして除去している。これにより、凹部の犠牲膜があった場所には空隙が形成され、凹部と対向する場所に支持部が位置する。赤外線検出部及び支持部が赤外線を照射されるとき、赤外線検出部は赤外線検出部の温度変化を検出することにより赤外線の照射量を検出する。そして、赤外線検出部及び支持部が赤外線によって加熱された熱量は空隙により断熱される為、赤外線検出部は感度良く赤外線の照射量を検出することができる。
【0015】
エッチング工程において基板を純水に浸漬させて洗浄する。このとき、純水が凹部に侵入する。純水を凹部から排出するとき純水の表面張力が作用することにより凹部と支持部とが張り付き易くなる。ポリシリコンを含む撥水膜が凹部を覆っている。ポリシリコンの撥水膜は撥水性を有することから、基板は凹部から純水を排出し易くすることができる。そして、支持部材は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含んでいる為、支持部材をシリコンや酸化シリコンにするときに比べて支持部及び梁は剛性を高くすることができる。従って、支持部が凹部の底に張り付くのを防止することができる。
【0016】
[適用例4]
上記適用例にかかる赤外線検出素子の製造方法において、前記犠牲膜形成工程において前記撥水膜の一部を露出させ、前記支持部材形成工程において露出された前記撥水膜の表面をエッチングして、前記撥水膜上に前記支持部材を重ねて配置することを特徴とする。
【0017】
本適用例によれば、犠牲膜形成工程で撥水膜の一部を露出させている。露出された撥水膜はポリシリコンであり、ポリシリコンは酸化して酸化シリコンとなる。酸化シリコンはエッチング工程にてエッチングされ易いためエッチング液が漏洩する危険性が生ずる。本実施形態では露出したポリシリコンの表面をエッチングして、支持部材を重ねて配置している。従って、酸化シリコンが形成されているときにも除去できる為、エッチング工程にてエッチング液が凹部から絶縁膜に漏洩することを防止できる。
【0018】
さらに、露出したポリシリコンの表面をエッチングするとき犠牲層がエッチングされるため、ポリシリコンの表面が犠牲層の表面に比べて凸状になる。従って、撥水膜と支持部材との接触面積を増やすことができる。撥水膜と支持部材との接触面積が広いとき、接触面積が狭いときに比べて、エッチング液が漏洩するのにかかる時間が長くなる。従って、エッチング液を凹部から絶縁膜に漏洩し難くすることができる。
【0019】
[適用例5]
本適用例にかかる電子機器は、赤外線を検出する光検出部を備える電子機器であって、前記光検出部に上記に記載の赤外線検出素子を備えることを特徴とする。
【0020】
本適用例によれば、電子機器は赤外線を検出する光検出部を備えている。そして、光検出部は上記適用例に記載の赤外線検出素子を備えている。上記適用例に記載の赤外線検出素子は基板を洗浄するときにも支持部が凹部の底に張り付くのを防止され、感度良く赤外線を検出する素子である。従って、本適用例の電子機器は光検出部に感度の良い赤外線検出素子を備えた電子機器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】第1の実施形態にかかわり、(a)は、赤外線検出装置の構成を示す模式平面図、(b)は、赤外線検出装置の構成を示す模式断面図。
【図2】(a)は、赤外線検出素子の構成を示す要部模式平面図、(b)は、赤外線検出素子の構成を示す要部模式側断面図。
【図3】赤外線検出素子の製造方法を示すフローチャート。
【図4】赤外線検出素子の製造方法を説明するための模式図。
【図5】赤外線検出素子の製造方法を説明するための模式図。
【図6】赤外線検出素子の製造方法を説明するための模式図。
【図7】比較例にかかわり、支持部材の材質にポリシリコンを用いたときとSiNを用いたときの(111)面配向率を比較したグラフ。
【図8】第2の実施形態にかかわり、(a)は、赤外線検出装置の構成を示すブロック図、(b)は、赤外線検出素子の配列を説明するための模式図。
【図9】第3の実施形態にかかわる赤外線カメラの構成を示すブロック図。
【図10】第4の実施形態にかかわる運転支援装置の構成を示すブロック図。
【図11】運転支援装置を搭載した自動車を示す概略斜視図。
【図12】第5の実施形態にかかわるセキュリティー機器の構成を示すブロック図。
【図13】キュリティー機器が設置された家を示す模式図。
【図14】第6の実施形態にかかわるゲーム機器のコントローラーの構成を示すブロック図。
【図15】コントローラーの使用方法を説明するための模式図。
【図16】第7の実施形態にかかわる体温測定装置の構成を示すブロック図。
【図17】第8の実施形態にかかわる特定物質探知装置の構成を示すブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、構造に特徴のある赤外線検出素子の実施形態について図面に従って説明する。尚、各図面における各部材は、各図面上で認識可能な程度の大きさとするため、各部材毎に縮尺を異ならせて図示している。
(第1の実施形態)
本実施形態では、赤外線検出素子と赤外線検出素子の製造方法の特徴的な例について図1〜図6に従って説明する。
【0023】
(赤外線検出装置)
図1(a)は、赤外線検出装置の構成を示す模式平面図であり、図1(b)は、赤外線検出装置の構成を示す模式断面図である。図1(b)は図1(a)のA−A’線に沿った断面図である。図1に示すように、赤外線検出装置1は平面視が四角形の基板2を備えている。基板2の4辺のうち直交する2辺の方向をX方向及びY方向とする。そして、鉛直方向を−Z方向とする。基板2のZ方向の面を基板表面2aとし、基板2の−Z方向の面を基板裏面2bとする。つまり、基板表面2aと基板裏面2bとは互いに反対側を向く面となっている。
【0024】
基板2には20個の赤外線検出素子3が5行4列の格子状に配列して配置されている。赤外線検出素子3の個数や配列の数は特に限定されない。赤外線検出素子3は1個〜19個でも良く、21個以上でも良い。赤外線検出素子3の個数が多い程空間分解能を高くすることができる。
【0025】
基板2の基板表面2a側には赤外線検出素子3毎に赤外線を検出する赤外線検出部4が設置されている。赤外線検出部4と接続して上電極配線5と下電極配線6とが設置されている。基板2の基板表面2aには図示しない膜が積層され、この膜を貫通する上貫通電極7と下貫通電極8とが形成されている。そして、上電極配線5は上貫通電極7と接続され、下電極配線6は下貫通電極8と接続されている。
【0026】
(赤外線検出素子)
図2(a)は、赤外線検出素子の構成を示す要部模式平面図であり。図2(b)は、赤外線検出素子の構成を示す要部模式側断面図である。図2(b)は、図2(a)のB−B’線に沿った断面図である。図2に示すように、赤外線検出素子3は基板2を備え、基板2はシリコン基板である。基板2の基板表面2aには駆動回路9が形成されている。駆動回路9は半導体素子が集積された回路である。基板2上には配線層10が設置されている。配線層10には配線層絶縁膜11が積層されており、各配線層絶縁膜11の間、基板表面2a、配線層10の上面には配線12が設置されている。そして、各配線層絶縁膜11を貫通する貫通電極13が配置され、貫通電極13は各配線層絶縁膜11の間や基板2上に位置する配線12を接続する。
【0027】
配線層絶縁膜11の材質は絶縁性があり薄膜が形成可能であれば良く特に限定されず例えばSiO2(酸化シリコン)等を用いることができる。配線12及び貫通電極13の材質は導電性があり微細なパターンが形成可能であれば良く特に限定されないが例えばTi(チタン)、W(タングステン)、Al(アルミニウム)等の金属を用いることができる。
【0028】
配線層10上には絶縁膜14が設置されている。図を見やすくするために基板2は絶縁膜14より薄く図示されているが、基板2は絶縁膜14より厚い板となっている。絶縁膜14の図中上側の面には凹部15が形成されている。絶縁膜14の材質は絶縁性があり薄膜が形成可能であれば良く特に限定されず例えばSiO2(酸化シリコン)、SiN(窒化シリコン)またはSiCN(炭窒化シリコン)を用いることができる。本実施形態では絶縁膜14の材質にSiO2を用いている。
【0029】
凹部15の表面を覆って撥水膜16が形成され、凹部15の中は空隙17となっている。絶縁膜14及び空隙17の上には支持部材20が設置されている。支持部材20は本体部21、梁22、支持部23から構成されている。本体部21は絶縁膜14上に設置されている。支持部23は空隙17上に位置し四角形に形成されており支持部23上には赤外線検出部4が設置されている。梁22は一端が本体部21に固定され他端が支持部23を保持している。図2(b)では見やすくするために梁22が短く記載されているが図2(a)に示すように梁22はY方向に長く形成されている。そして、梁22が長く形成されていることにより、本体部21と支持部23との間の熱伝導が小さくなっている。所定の範囲の中に支持部23及び梁22を配置するために梁22は2箇所で曲げられた形状となっている。梁22の形状及び長さは特に限定されないが、長い梁22は短いときに比べて熱が移動し難い。従って、梁22が長い方が赤外線検出部4は精度良く赤外線を検出できる。
【0030】
撥水膜16は空隙17を形成するときに使用するエッチング液から絶縁膜14を保護する機能を有する。撥水膜16の材質はエッチング液に対して耐食性があり、洗浄に用いる純水に対して撥水性があれば良く特に限定されない。本実施形態では、例えば、撥水膜16の材質にポリシリコンを用いている。支持部材20の材質は剛性があって絶縁性があり、空隙17を形成するときに用いるエッチング液に対して耐食性があればよい。支持部材20の材料には例えば、SiN(窒化シリコン)やSiCN(炭窒化シリコン)を用いることができる。支持部材20は単層でも良く多層構造でもよい。多層構造にすることにより内部応力のバランスをとっても良い。単層にするときには多層にするより少ない工程にできるので生産性を良くすることができる。本実施形態では、例えば、支持部材20の材質にはSiNを用いている。
【0031】
支持部23上には下部電極24が設置され、下部電極24に重ねて焦電体25が設置されている。さらに、焦電体25上には上部電極26が重ねて設置されている。下部電極24、焦電体25、上部電極26等によりキャパシター27が構成され、キャパシター27は温度変化に対応して分極量が変化する。従って、キャパシター27の分極量を検出することにより温度を推定することができる。
【0032】
下部電極24の材質は電導性の良い金属であればよく、さらには耐熱性のある金属が好ましい。本実施形態では、例えば、下部電極24の材質にIr(イリジウム)、IrOx(酸化イリジウム)、Pt(白金)をこの順に積層している。Irは配向制御、IrOxは還元ガスバリア、Ptはシード層としての機能を備えている。
【0033】
焦電体25はPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)またはPZTにNb(ニオブ)を添加したPZTNを用いることができる。上部電極26の材質は電導性の良い金属であればよく、さらには耐熱性のある金属が好ましい。本実施形態では、例えば、上部電極26の材質にPt(白金)、IrOx(酸化イリジウム)、Ir(イリジウム)、をこの順に積層している。Ptは配向整合、IrOxは還元ガスバリア、Irは低抵抗層、としての機能を備えている。
【0034】
キャパシター27を覆って絶縁膜28が設置されている。絶縁膜28には下部電極24に通ずる第1コンタクトホール28aと、上部電極26に通ずる第2コンタクトホール28bとが形成されている。支持部材20上及び絶縁膜28上には下電極配線6及び上電極配線5が設置されている。下電極配線6は第1コンタクトホール28aを通じて下部電極24に接続されている。同様に、上電極配線5は第2コンタクトホール28bを通じて上部電極26に接続されている。
【0035】
絶縁膜28の材料は絶縁性があり、成膜し易い材料であれば良い。本実施形態では、例えば、絶縁膜28はAl2O3(アルミナ)の層とSiO2またはSiNの層とが積層された膜となっている。Al2O3の層はガスバリアの機能を有し、SiO2またはSiNの層は絶縁性の機能を有している。下電極配線6及び上電極配線5の材質は、導電性が良く成膜し易い材料であれば良く、W(タングステン)、Ti(チタン)またはAl(アルミニウム)等を用いることができる。本実施形態では、例えば、下電極配線6及び上電極配線5の材質には、Alを用いている。
【0036】
上電極配線5、下電極配線6及びキャパシター27と重ねて絶縁膜29が形成されている。絶縁膜29は絶縁膜28と同様な材質であり、同様な性能を持った膜である。絶縁膜29は電気的に絶縁させるとともに、覆われた場所を保護する機能も備えている。
【0037】
キャパシター27と重ねて赤外線吸収膜30が設置されている。これにより、赤外線吸収膜30は赤外線を反射させずに吸収するので、赤外線検出素子3は感度をさらに良くすることができる。赤外線検出部4はキャパシター27、絶縁膜28、下電極配線6、上電極配線5、絶縁膜29、赤外線吸収膜30等から構成されている。
【0038】
赤外線吸収膜30は赤外線の吸収率の良い材料からなる膜であれば良く、特に限定されない。赤外線吸収膜30は例えば、シリコン膜、窒化シリコン膜、酸化シリコン膜、金黒膜を用いることができる。金黒膜は多孔性の金の膜をガス中蒸着法にて形成したものである。本実施形態では例えば赤外線吸収膜30にSiN膜とSiO2膜の積層膜を採用している。
【0039】
絶縁膜14及び支持部材20にはビアホール14aが形成されている。ビアホール14a内には導電体が設置され、ビアホール14a及び導電体により上貫通電極7及び下貫通電極8が構成されている。下電極配線6と下貫通電極8とが接続し、上電極配線5と上貫通電極7とが接続している。上貫通電極7及び下貫通電極8の材質は、導電性が良く成膜し易い材料であれば良く、W、TiまたはAl等を用いることができる。本実施形態では、例えば、上貫通電極7及び下貫通電極8の材質には、Wを用いている。
【0040】
上貫通電極7及び下貫通電極8は配線層10の配線12と接続されている。従って、キャパシター27の下部電極24は下電極配線6、下貫通電極8、配線12、貫通電極13を介して駆動回路9と接続されている。同様に、キャパシター27の上部電極26は上電極配線5、上貫通電極7、配線12、貫通電極13を介して駆動回路9と接続されている。従って、駆動回路9は配線12から信号を入力してキャパシター27の分極量を検出することが可能になっている。
【0041】
基板2の基板裏面2bには反り抑制膜31が設置されている。反り抑制膜31は絶縁膜14及び支持部材20等の膜により基板2が反ることを抑制するために設けられた膜である。従って、反り抑制膜31の膜厚は基板2が反る量に合わせて調整するのが好ましい。反り抑制膜31の材質はSiO2、SiN、SiCN等を用いることができる。反り抑制膜31は単層でも良く多層構造でもよい。本実施形態では、例えば、反り抑制膜31の材質にSiNを用いている。
【0042】
赤外線検出素子3に赤外線が照射されるとき、赤外線検出部4は赤外線を吸収して温度が上昇する。赤外線検出部4において赤外線が照射される面には赤外線吸収膜30が設置されている。従って、赤外線検出部4は効率的に赤外線を吸収して温度を上げることができる。赤外線検出部4が備える焦電体25は温度変化に応じて分極量が変化する。従って、キャパシター27に電圧を印加し焦電体25の分極量を検出することにより赤外線検出部4の温度を検出することができる。そして、赤外線検出部4における温度変化の検出結果を用いて赤外線検出部4に照射された赤外線の照射量を検出することができる。
【0043】
(赤外線検出素子の製造方法)
次に、上述した赤外線検出素子3の製造方法について図3〜図6にて説明する。図3は、赤外線検出素子の製造方法を示すフローチャートであり、図4〜図6は赤外線検出素子の製造方法を説明するための模式図である。
【0044】
図3のフローチャートにおいて、ステップS1は絶縁膜形成工程に相当する。配線層上に絶縁膜を形成し、基板裏面に反り抑制膜を形成する工程である。次にステップS2に移行する。ステップS2は凹部形成工程に相当し、絶縁膜に凹部を形成する工程である。次にステップS3に移行する。ステップS3は撥水膜形成工程に相当し、凹部を覆って撥水膜を形成する工程である。次にステップS4に移行する。ステップS4は犠牲膜形成工程に相当し、凹部内を犠牲膜で埋める工程である。犠牲膜は後工程にて除去する予定の膜である。次にステップS5に移行する。
【0045】
ステップS5は支持部材形成工程に相当し、絶縁膜及び犠牲膜と重ねて支持部材を形成する工程である。次にステップS6に移行する。ステップS6は貫通電極形成工程に相当し、絶縁膜を貫通する貫通電極を形成する工程である。次にステップS7に移行する。ステップS7はキャパシター形成工程に相当し、支持部材上にキャパシターを形成する工程である。次にステップS8に移行する。ステップS8は配線形成工程に相当し、キャパシターに接続する配線を形成する工程である。次にステップS9に移行する。ステップS9は支持部形成工程に相当し、支持部及び梁の形状を形成する工程である。次にステップS10に移行する。
【0046】
ステップS10は赤外線吸収膜形成工程に相当する。配線及びキャパシターと重ねて絶縁膜を形成し、キャパシターを覆って赤外線吸収膜を形成する工程である。次にステップS11に移行する。ステップS11はエッチング工程に相当し、凹部と支持部との間に空隙を形成する工程である。以上の製造工程にて赤外線検出素子が完成する。尚、ステップS7のキャパシター形成工程及びステップS8の配線形成工程によりステップS12の検出部形成工程が構成されている。
【0047】
次に、図4〜図6を用いて図3に示したステップと対応させて製造方法を詳細に説明する。図4(a)はステップS1の絶縁膜形成工程及びステップS2の凹部形成工程に対応する図である。図4(a)に示すように、駆動回路9及び配線層10が形成された基板2を用意する。駆動回路9は半導体回路であり公知の方法にて製造することができる。配線層10においても配線12の形成方法、配線層絶縁膜11の成膜方法、貫通電極13の形成方法は公知である。駆動回路9及び配線層10の形成方法は公知であり、説明を省略する。
【0048】
ステップS1において、配線層10上に絶縁膜14を成膜し、基板裏面2bに反り抑制膜31を成膜する。このとき、CVD(Chemical Vapor Deposition)法を用いて絶縁膜14にはSiO2膜を形成し、反り抑制膜31にはSiN膜を形成する。次に、ステップS2においてフォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて凹部15を形成する。ドライエッチング法の製造条件を調整して凹部15の側面15aを基板表面2aに対して斜面にする。次に、マスクを除去して凹部15が完成する。
【0049】
図4(b)はステップS3の撥水膜形成工程に対応する図である。図4(b)に示すように、凹部15及び絶縁膜14上に減圧CVD法を用いてポリシリコンの膜からなる撥水膜16を成膜する。減圧CVDにて成膜することによりステップカバリッジ可能な膜を成膜できるため側面15aにも確実に成膜することができる。次に、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて凹部15以外の撥水膜16を除去する。
【0050】
図4(c)はステップS4の犠牲膜形成工程に対応する図である。図4(c)に示すように、ステップS4において絶縁膜14にCVD法を用いてSiO2の膜からなる犠牲膜32を形成する。このとき、凹部15に加えて絶縁膜14上にもSiO2の膜を形成し、膜厚を凹部15の深さより厚くする。次に、CMP法(Chemical Mechanical Polishing)を用いて犠牲膜32の上面を平坦にし、絶縁膜14の面と犠牲膜32の面とを同一の面とする。このとき、撥水膜16の一部である面16aが露出する。
【0051】
図4(d)はステップS5の支持部材形成工程に対応する図である。図4(d)に示すように、ステップS5において絶縁膜14、撥水膜16及び犠牲膜32上に支持部材20を形成する。まず、絶縁膜14、撥水膜16及び犠牲膜32の表面をエッチングする。これにより、撥水膜16の酸化した部分が除去される。さらに、絶縁膜14と犠牲膜32とがエッチングされることで撥水膜16の露出している面16aが凸状になるので、面16aの表面積を広くすることができる。次に、CVD法を用いてSiNの膜を形成する。
【0052】
図5(a)はステップS6の貫通電極形成工程に対応する図である。図5(a)に示すように、ステップS6において絶縁膜14及び支持部材20を貫通する上貫通電極7及び下貫通電極8を形成する。まず、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いてビアホール14aを形成する。次に、タングステン等の金属を埋め込むことで上貫通電極7及び下貫通電極8が形成される。
【0053】
続いて、上貫通電極7の図中上側の端に端子7aを形成する。端子7aは上貫通電極7を形成するときにできる膜を用いても良く、別途、成膜しても良い。同様に、下貫通電極8の図中上側の端に端子8aを形成する。フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて端子7a及び端子8aを形成する。
【0054】
図5(b)はステップS7のキャパシター形成工程に対応する図である。図5(b)に示すように、ステップS7において、まず、下部電極24となる膜を形成する。Ir(イリジウム)、IrOx(酸化イリジウム)、Pt(白金)をこの順にスパッタ法を用いて積層する。次に、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて下部電極24を形成する。
【0055】
キャパシター27の焦電体25、下部電極24及び上部電極26の結晶配向は、その優先配向方位が例えば(111)面方位で揃えられている。(111)面方位に優先配向されることで、全ての面方位に対して(111)配向の配向率が例えば90%以上に制御される。焦電係数を大きくするには(111)配向よりもむしろ(100)配向等が好ましいが、印加電界方向に対して分極を制御しやくするために(111)配向としている。そして、Irの配向制御層を例えば(111)面に優先配向するように成膜する。ただし、優先配向方位はこれに限定されない。
【0056】
支持部材20はSiNの膜である。SiNの膜は表面粗さの小さい平坦な膜を形成することができる。従って、支持部材20上に成膜された下部電極24は設計した通りの表面にすることができる。これにより、下部電極24は精度良く焦電体25を配向制御することができる。
【0057】
次に、焦電体25を形成する。焦電体25の材料となる物質を塗布して加熱し、例えば(111)方位で優先配向させて結晶成長させる。下部電極24が配向制御しているので、焦電体25は下部電極24に倣って配向される。そして、焦電体25の材料を加熱するとき支持部材20側からの還元性の阻害要因により焦電体25の材料が還元されるのを下部電極24のIrOx(酸化イリジウム)が防止する。
【0058】
次に、上部電極26となる膜を形成する。Pt(白金)、IrOx(酸化イリジウム)、Ir(イリジウム)をこの順にスパッタ法を用いて積層する。次に、加熱してPt(白金)を再結晶化する。これにより、Pt(白金)の層は焦電体25と結晶配向が整合する。続いて、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて焦電体25及び上部電極26を形成する。下部電極24、焦電体25、上部電極26の側面はエッチング条件を調整して斜面にするのが好ましい。これにより、キャパシター27上に絶縁膜28を品質良く成膜することができる。
【0059】
次に、下部電極24、焦電体25、上部電極26と積層して還元ガスバリア層を成膜する。バリア層は、例えば酸化アルミニウムAl2O3をスパッタ法もしくはCVD法により成膜して形成する。続いて、絶縁膜28を成膜する。絶縁膜28はSiO2またはSiNをCVD法にて成膜する。次に、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて還元ガスバリア層及び絶縁膜28をパターニングする。パターニングでは還元ガスバリア層及び絶縁膜28の外形形状と第1コンタクトホール28a及び第2コンタクトホール28bを形成する。
【0060】
図5(c)はステップS8の配線形成工程に対応する図である。図5(c)に示すように、ステップS8において絶縁膜28に重ねて上電極配線5及び下電極配線6を形成する。まず、Al(アルミニウム)等の配線材料をスパッタにて膜付けしてパターニングする。上電極配線5は第2コンタクトホール28bから端子7aまで繋げて配線する。下電極配線6は第1コンタクトホール28aから端子8aまで繋げて配線する。
【0061】
図6(a)はステップS9の支持部形成工程に対応する図である。図6(a)に示すように、ステップS9において梁22及び支持部23を形成する。フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて支持部材20をパターニングする。これにより支持部材20の平面形状は支持部23、梁22、本体部21の形状に形成される。
【0062】
図6(b)はステップS10の赤外線吸収膜形成工程に対応する図であり、図6(a)のC−C’線に沿った模式断面図である。図6(b)に示すようにステップS10においてキャパシター27上の絶縁膜29と重ねて赤外線吸収膜30を形成する。SiN及びSiO2をCVD法にて成膜する。そして、フォトリソグラフィ法を用いてマスクを形成しドライエッチング法を用いて赤外線吸収膜30をパターニングする。
【0063】
図6(c)はステップS11のエッチング工程に対応する図であり、図6(a)のD−D’線に沿った模式断面図である。図6(c)に示すようにステップS11において犠牲膜32をエッチングして除去し犠牲膜32があった場所を空隙17にする。フォトリソグラフィ法を用いて支持部材20及び赤外線検出部4を覆ってマスクを形成しパターニングする。レジストはフッ化水素のエッチング液に耐性の高いものを使用する。次に、基板2をフッ化水素のエッチング液に浸漬することにより支持部材20の本体部21と支持部23との間からエッチング液を犠牲膜32に触れさせる。そして、犠牲膜32のSiO2が腐食され除去されて空隙17が形成される。支持部材20及び撥水膜16はエッチング液に対して耐食性がある膜となっている。従って、エッチング液は支持部材20及び撥水膜16をエッチングすることなく犠牲膜32のみエッチングする。その後、純水にて洗浄して乾燥する。撥水膜16は純水をはじくので、純水は凹部15から排除され易くなっている。そして、支持部材20の材質はSiNであることから剛性が高いので、支持部23は凹部15の底に張り付き難くなっている。そして、凹部15から純水が排出されて乾燥される。続いて、マスクを除去することにより赤外線検出素子3が完成する。
【0064】
(比較例)
続いて、支持部材20の材質にポリシリコンを用いたときとSiNを用いたときの(111)面配向率を比較した例を紹介する。(111)面配向率は次の数式(数1)のように表すことができる。尚、(111)面ピーク強度はPZT薄膜の結晶面(111)のX線回折ピーク強度を示す。
【0065】
【数1】
【0066】
図7は支持部材の材質にポリシリコンを用いたときとSiNを用いたときの(111)面配向率を比較したグラフである。図7に示すように、支持部材20をポリシリコンにしたときの(111)面配向率は73%程度である。一方、支持部材20をSiNにしたときの(111)面配向率は98%程度である。従って、支持部材20をSiNにする方が、支持部材20をポリシリコンにするときに比べて明らかに(111)面配向率を高くすることができる。その結果、支持部材20の材質をSiNにすることにより赤外線検出部4の感度を良くすることができる。
【0067】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、空隙17を形成するステップS11のエッチング工程で基板2が純水にて洗浄される。凹部15はポリシリコンの撥水膜16に覆われている。撥水膜16は撥水性を有することから、凹部15から純水が排出され易くなっている。さらに、凹部15から純水が排出されるとき、支持部23と凹部15との間に表面張力が作用し難くすることができる。そして、梁22及び支持部23の材質は窒化シリコンである。窒化シリコンはシリコンや酸化シリコンに比べて剛性が高い材料である。従って、純水を凹部15から排出するときに支持部23が凹部15の底に張り付くのを防止することができる。
【0068】
(2)本実施形態によれば、赤外線検出部4は支持部23上に下部電極24、焦電体25、上部電極26が重ねて配置されている。そして、焦電体25は下部電極24によって優先配向されているので感度良く赤外線を検出することができる。下部電極24は窒化シリコンの支持部23上に配置されている。窒化シリコンの膜は表面粗さを小さく成膜することができる為、平坦な支持部23上に下部電極24を配置することができる。従って、精度良く下部電極24を形成し、焦電体25を優先配向させることができる。その結果、赤外線検出素子3の感度をさらに良くすることができる。
【0069】
(3)本実施形態によれば、ステップS4の犠牲膜形成工程で撥水膜16の一部の面16aを露出させている。露出された撥水膜16はポリシリコンであり、ポリシリコンは酸化して酸化シリコンとなる。酸化シリコンはステップS11のエッチング工程にてエッチングされ易いためエッチング液が漏洩する危険性が生ずる。本実施形態ではステップS5の支持部材形成工程にて露出したポリシリコンの面16aをエッチングして、支持部材20を重ねて配置している。従って、ステップS4にて酸化シリコンが形成されているときにもステップS5にて除去される為、ステップS11のエッチング工程にてエッチング液が漏洩することを防止できる。
【0070】
さらに、ステップS5にてポリシリコンの面16aをエッチングするとき絶縁膜14と犠牲膜32とがエッチングされることにより撥水膜16の面16aが凸状になる。従って、撥水膜16と支持部材20との接触面積を増やすことができる為、ステップS11のエッチング工程でエッチング液を漏洩し難くすることができる。
【0071】
(4)本実施形態によれば、ステップS11のエッチング工程においてウエットエッチングを行って空隙17を形成している。特許文献1にて開示されたドライエッチングを用いた方法では赤外線検出部4が高温の環境及びプラズマが生じている環境に長時間さらされる。これにより赤外線検出部4が損傷を受ける可能性が高い。一方、本実施形態の方法では高温の環境やプラズマが生じている環境に赤外線検出部4が長時間さらされないので、赤外線検出部4が損傷を受け難くすることができる。
【0072】
(5)本実施形態によれば、ステップS11のエッチング工程においてウエットエッチングを用いて空隙17を形成している。ウエットエッチングではエッチング液に基板2を浸漬して行うので、多数の基板2を並行してエッチングすることができる。従って、ドライエッチングを用いた方法に比べて生産性良く空隙17を形成することができる。
【0073】
(第2の実施形態)
次に、赤外線検出装置の一実施形態について図8を用いて説明する。図8(a)は、赤外線検出装置の構成を示すブロック図であり、図8(b)は、赤外線検出素子の配列を説明するための模式図である。本実施形態では第1の実施形態における駆動回路9の駆動内容の例を詳しく説明する。尚、第1の実施形態と同じ点については説明を省略する。
【0074】
すなわち、本実施形態では、図8(a)に示したように電子機器としてのセンサーデバイス35は、センサーアレイ36と、行選択回路37と、読み出し回路38を含む。さらに、センサーデバイス35はA/D変換部39、制御回路40を含む。行選択回路37を行ドライバーとも称す。第1の実施形態における駆動回路9は行選択回路37、読み出し回路38、A/D変換部39、制御回路40等を備えている。センサーデバイス35を用いることで例えばナイトビジョン機器等に用いられる赤外線カメラ等を実現できる。
【0075】
図8(a)に示すように、センサーデバイス35はセンサーアレイ36を備えている。図8(b)に示すように、センサーアレイ36には複数の赤外線検出素子3が格子状に配列される。複数の行線と複数の列線との配線が設けられている。行線はワード線や走査線とも称し、列線はデータ線とも称す。尚、行線及び列線の一方の本数は1本であってもよい。例えば行線が1本である場合には行線に沿った方向(図中横方向)に複数の赤外線検出素子3が配列される。一方、列線が1本である場合には列線に沿った方向(図中縦方向)に複数の赤外線検出素子3が配列される。
【0076】
センサーアレイ36の各赤外線検出素子3は、各行線と各列線の交差位置に対応する場所に配置される。例えば、行線WL1と列線DL1の交差位置に対応する場所に赤外線検出素子3の1つが配置されている。他の赤外線検出素子3も同様に配置されている。センサーアレイ36のサイズは特に限定されない。本実施形態では例えばセンサーアレイ36は320×240画素のQVGA(Quarter Video Graphics Array)となっている。そして、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239及び列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319が配置されている。
【0077】
図8(a)に戻って、行選択回路37は複数の行線に接続される。そして各行線の選択動作を行う。つまり、行線WL0、WL1、WL2・・・・WL239を順次選択して走査する動作を行う。即ちこれらの行線を選択する信号であるワード選択信号をセンサーアレイ36に出力する。
【0078】
読み出し回路38は、複数の列線に接続され、各列線の読み出し動作を行う。QVGAのセンサーアレイ36を例にとれば、列線DL0、DL1、DL2・・・・DL319からの検出信号(検出電流、検出電荷)を読み出す動作を行う。
【0079】
A/D変換部39は、読み出し回路38において取得された検出電圧(測定電圧、到達電圧)をデジタルデータにA/D変換する処理を行う。そしてA/D変換後のデジタルデータDOUTを出力する。具体的には、A/D変換部39には、複数の列線の各列線に対応して各A/D変換器が設けられる。そして、各A/D変換器は、対応する列線において読み出し回路38により取得された検出電圧のA/D変換処理を行う。尚、複数の列線に対応して1つのA/D変換器を設け、この1つのA/D変換器を用いて、複数の列線の検出電圧を時分割にA/D変換してもよい。
【0080】
制御回路40は、各種の制御信号を生成して、行選択回路37、読み出し回路38、A/D変換部39に出力する。例えば、充電や放電(リセット)の制御信号を生成して出力する。或いは、各回路のタイミングを制御する信号を生成して出力する。第1の実施形態における駆動回路9は行選択回路37、読み出し回路38、A/D変換部39及び制御回路40等により構成されている。
【0081】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、センサーデバイス35は格子状に配列した赤外線検出素子3を備えている。そして、行選択回路37及び読み出し回路38が順次赤外線検出素子3を選択して赤外線の受光量を検出して出力する。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。従って、センサーデバイス35は照射される赤外線の分布を感度良く検出する赤外線検出素子3を備えた装置とすることができる。
【0082】
(第3の実施形態)
次に、赤外線検出部に赤外線検出素子を備える電子機器の1つである赤外線カメラの一実施形態について図9の赤外線カメラの構成を示すブロック図を用いて説明する。図9に示すように、電子機器としての赤外線カメラ41は、光学系42、光検出部43、画像処理部44、処理部45、記憶部46、操作部47、表示部48を含んで構成されている。
【0083】
光学系42は、例えば1枚または複数枚のレンズやレンズの位置を移動させる駆動部等を含んで構成されている。そして、光学系42は光検出部43への物体像の結像を行う。必要に応じて光学系42はフォーカス調整や絞り調整等の機能も備えても良い。
【0084】
光検出部43には上記実施形態の赤外線検出素子3が二次元配列された検出器が用いられている。光検出部43は、検出器に加えて行選択回路(行ドライバー)、列線を介して検出器からのデータを読み出す読み出し回路及びA/D変換部等を備えている。そして、二次元配列された各検出器からのデータを順次読み出すことで、被写体の画像データを形成することができる。
【0085】
画像処理部44は、光検出部43からのデジタルの画像データに基づいて、画像補正処理等の各種の画像処理を行う。画像データは画素データとも称す。
【0086】
処理部45は、赤外線カメラ41の全体の制御を行い、赤外線カメラ41内の各ブロックの制御を行う。この処理部45は例えばCPU等により実現される。記憶部46は各種の情報を記憶するものであり、例えば処理部45や画像処理部44のワーク領域として機能する。操作部47は、操作者が赤外線カメラ41を操作するためのインターフェイスとなるものであり、例えば、各種ボタンやGUI(Graphical User Interface)画面等により実現される。表示部48は、例えば光検出部43により取得された画像やGUI画面等を表示するものであり、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ等の各種のディスプレイにより実現される。
【0087】
このように、直交する二方向に赤外線検出素子3を二次元配置された光検出部43を用いて熱(光)分布画像を提供することができる。この光検出部43を用いて、サーモグラフィー、車載用ナイトビジョンあるいは監視カメラ等の電子機器を構成することができる。
【0088】
もちろん、1セル分または複数セルの赤外線検出素子3をセンサーとして用いることで物体の物理情報の解析(測定)を行う解析機器(測定機器)、火や発熱を検知するセキュリティー機器、工場等に設けられるFA(Factory Automation)機器等の各種の電子機器を構成することもできる。
【0089】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、赤外線カメラ41は光検出部43を備え、光検出部43には赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。光検出部43の赤外線検出素子3は感度良く赤外線を検出するので、赤外線カメラ41は感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子を備えた電子機器とすることができる。
【0090】
(第4の実施形態)
次に、光検出部に赤外線検出素子を備えた赤外線カメラを用いた電子機器の1つである運転支援装置の一実施形態について図10及び図11を用いて説明する。図10は、運転支援装置の構成を示すブロック図であり、図11は、運転支援装置を搭載した自動車を示す概略斜視図である。
【0091】
図10に示すように、電子機器としての運転支援装置51は、運転支援装置51を制御するCPUを備えた処理ユニット52と、車両外部の所定の撮像領域における赤外線を検出可能な赤外線カメラ41と、車両のヨーレートを検出するヨーレートセンサー54とを備えている。さらに、運転支援装置51は、車両の走行速度を検出する車速センサー55と、運転者のブレーキ操作の有無を検出するブレーキセンサー56と、スピーカー57と、表示装置58とを備えて構成されている。そして、本実施形態の赤外線カメラ41は上記実施形態における赤外線カメラ41と同じカメラが用いられている。従って、赤外線カメラ41は光検出部に赤外線検出素子3を備えている。
【0092】
この運転支援装置51の処理ユニット52は、例えば、赤外線カメラ41の撮像により得られる自車両周辺の赤外線画像と、ヨーレートセンサー54、車速センサー55、ブレーキセンサー56により検出される自車両の走行状態にかかる検出信号を用いる。そして、処理ユニット52は赤外線画像及び検出信号を用いて自車両の進行方向前方に存在する物体及び歩行者等の対象物を検出する。検出した対象物と自車両との接触が発生する可能性があると判断したときには、スピーカー57または表示装置58により警報を出力する。
【0093】
図11に示すように、赤外線カメラ41は、自動車の前部において車幅方向の中心付近に配置されている。表示装置58は、フロントウィンドーにおいて運転者の前方視界を妨げない位置に各種情報を表示するHUD(Head Up Display)59等を備えて構成されている。
【0094】
(1)本実施形態によれば、運転支援装置51は赤外線カメラ41を備えている。赤外線カメラ41は光検出部43を備え、光検出部43には上記実施形態の赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。従って、運転支援装置51は感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子を有する赤外線カメラ41を備えた電子機器とすることができる。
【0095】
(第5の実施形態)
次に、赤外線検出部に赤外線検出素子を備えた赤外線カメラを用いた電子機器の1つであるセキュリティー機器の一実施形態について図12及び図13を用いて説明する。図12は、セキュリティー機器の構成を示すブロック図であり、図13はセキュリティー機器が設置された家を示す模式図である。
【0096】
図12に示すように、電子機器としてのセキュリティー機器62は、監視エリアを撮影する赤外線カメラ41と、監視エリアへの侵入者を検知する人感センサー63を備える。人感センサー63は光検出部を備え、光検出部に赤外線検出素子3を備えている。そして、本実施形態の赤外線カメラ41は上記実施形態における赤外線カメラ41と同じカメラが用いられている。従って、赤外線カメラ41は光検出部に赤外線検出素子3を備えている。
【0097】
さらに、セキュリティー機器62は、赤外線カメラ41から出力された画像データを処理して監視エリアに侵入した移動体を検知する動き検知処理部64を備える。さらに、セキュリティー機器62は人感センサー63が出力する信号を用いて侵入者の検知処理を行う人感センサー検知処理部65を備える。さらに、セキュリティー機器62は画像圧縮部66を備え、画像圧縮部66は赤外線カメラ41から出力された画像データを所定の方式で圧縮する。さらに、セキュリティー機器62は通信処理部67を備え、通信処理部67は圧縮された画像データや侵入者検知情報を外部装置に送信し、セキュリティー機器62への各種設定情報等を外部装置から受信する。さらに、セキュリティー機器62は制御部68等を備え、制御部68はセキュリティー機器62の各処理部に対して条件設定、処理コマンド送信、レスポンス処理をCPU(Central Processing Unit)にて行う。セキュリティー機器62は以上の要素等で構成されている。そして、本実施形態の赤外線カメラ41は上記実施形態における赤外線カメラ41と同じカメラが用いられている。従って、赤外線カメラ41は光検出部に赤外線検出素子3を備えている。
【0098】
動き検知処理部64は、図示しないバッファメモリーと、バッファメモリーの出力信号が入力されるブロックデータ平滑部と、ブロックデータ平滑部の出力信号が入力される状態変化検出部とを備える。そして、状態変化検出部は撮影した動画の画像であるフレームを比較する。そして、監視エリアが静止状態であれば動画で撮影した異なるフレームが同一画像の画像データとなり、移動体の侵入による状態変化があるときフレーム間の画像データで差が生じる。フレーム間の画像データで差を利用して状態変化検出部は状態変化を検知する。
【0099】
図13に示すように、セキュリティー機器62は軒下に赤外線カメラ41及び人感センサー63が設置されている。そして、赤外線カメラ41は撮像エリア69を検出し、人感センサー63は検知エリア70を検出する。
【0100】
(1)本実施形態によれば、セキュリティー機器62は人感センサー63及び赤外線カメラ41を備えている。人感センサー63及び赤外線カメラ41は光検出部を備え、光検出部には赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。従って、セキュリティー機器62は感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子を有する人感センサー63及び赤外線カメラ41を備えた電子機器とすることができる。
【0101】
(第6の実施形態)
次に、赤外線検出部に赤外線検出素子を備えた赤外線カメラを用いた電子機器の1つであるゲーム機器の一実施形態について図14及び図15を用いて説明する。図14は、ゲーム機器のコントローラーの構成を示すブロック図であり、図15はコントローラーの使用方法を説明するための模式図である。
【0102】
図14に示すように、ゲーム機器に用いられる電子機器としてのコントローラー73は、撮像情報演算ユニット74と、操作スイッチ75と、加速度センサー76と、コネクター77と、プロセッサー78と、無線モジュール79と、を備えて構成される。
【0103】
撮像情報演算ユニット74は、撮像ユニット80と、この撮像ユニット80で撮像した画像データを処理するための画像処理回路81とを有する。撮像ユニット80は光検出部82を備え、さらに、光検出部82と接続して赤外線だけを通すフィルターである赤外線フィルター83及びレンズ等の光学系84を備えている。そして、画像処理回路81は、撮像ユニット80から得られた赤外線画像データを処理して、高輝度部分を検知し、高輝度部分の重心位置や面積を検出してこれらのデータを出力する。光検出部82には上記実施形態の赤外線検出素子3が用いられている。
【0104】
プロセッサー78は、操作スイッチ75からの操作データと、加速度センサー76からの加速度データ及び赤外線画像の高輝度部分データを一連のコントロールデータとして無線モジュール79に出力する。無線モジュール79は所定周波数の搬送波をこのコントロールデータで変調する。無線モジュール79はアンテナ85を備え、アンテナ85から搬送波を電波信号にして出力する。
【0105】
尚、コントローラー73に設けられているコネクター77を通して入力されたデータもプロセッサー78によって上述のデータと同様に処理されてコントロールデータとして無線モジュール79とアンテナ85を介して出力される。
【0106】
図15に示すように、電子機器としてのゲーム機器86は、コントローラー73と、ゲーム機本体87と、ディスプレイ88と、LEDモジュール89及びLEDモジュール90とを備えている。ゲーム機器86を操作するプレイヤー91は一方の手でコントローラー73を操作してゲームをプレイすることができる。そして、コントローラー73の撮像ユニット80をディスプレイ88の画面92を向くようにすると、ディスプレイ88の近傍に設置された二つのLEDモジュール89及びLEDモジュール90から出力される赤外線を撮像ユニット80が検知する。そして、コントローラー73は、二つのLEDモジュール89,90の位置や面積情報を高輝度点の情報として取得する。輝点の位置や大きさのデータがコントローラー73から無線でゲーム機本体87に送信され、ゲーム機本体87に受信される。プレイヤー91がコントローラー73を動かすと、輝点の位置や大きさのデータが変化する。それを利用して、ゲーム機本体87はコントローラー73の動きに対応した操作信号を取得できる。そして、操作信号にしたがってゲーム機器86はゲームを進行させることができる。
【0107】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、ゲーム機器86のコントローラー73は光検出部82を備え、光検出部82には上記実施形態の赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。光検出部82の赤外線検出素子3は感度良く赤外線を検出するので、ゲーム機器86は感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子3が設置されたコントローラー73を有する電子機器とすることができる。
【0108】
(第7の実施形態)
次に、赤外線検出部に赤外線検出素子を備えた赤外線カメラを用いた電子機器の1つである体温測定装置の一実施形態について図16を用いて説明する。図16は、体温測定装置の構成を示すブロック図である。
【0109】
図16に示すように、電子機器としての体温測定装置95は、赤外線カメラ41と、体温分析装置96と、情報通信装置97と、ケーブル98とを備えて構成されている。本実施形態の赤外線カメラ41は上記の実施形態の赤外線カメラ41と同じカメラが用いられている。
【0110】
赤外線カメラ41は所定の対象領域を撮影し、撮影された対象者99の画像情報をケーブル98を経由して体温分析装置96に送信する。体温分析装置96は、赤外線カメラ41からの熱分布画像を読み取る画像読取処理ユニットと、画像読取処理ユニットからのデータと画像分析設定テーブルに基づいて体温分析テーブルを作成する体温分析処理ユニットとを含み、体温分析テーブルに基づいて体温情報送信用データを情報通信装置97へ送信する。この体温情報送信用データは体温異常であることに対応する所定のデータを含んでもよい。また、撮影領域内に複数の対象者99を含んでいると判断した場合には、対象者99の人数と体温異常者の人数の情報を体温情報送信用データに含んでもよい。
【0111】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、体温測定装置95は赤外線カメラ41を備えている。赤外線カメラ41は光検出部を備え、光検出部には赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。従って、体温測定装置95は感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子を有する赤外線カメラ41を備えた電子機器とすることができる。
【0112】
(第8の実施形態)
次に、光検出部に赤外線検出素子を備える電子機器の1つである特定物質探知装置の一実施形態について図17の特定物質探知装置の構成を示すブロック図を用いて説明する。
【0113】
図17に示すように電子機器としての特定物質探知装置102は、制御ユニット103と、照射光ユニット104と、光学フィルター105と、撮像ユニット106と、表示部107とを備えて構成されている。撮像ユニット106は、図示しないレンズ等の光学系と光検出部を備え、該光検出部は第1の実施形態の赤外線検出素子3を備えている。そして、赤外線検出素子3の赤外線検出部4が備える赤外線吸収膜30の吸収波長はテラヘルツ域となっている。
【0114】
制御ユニット103は、本装置全体を制御するシステムコントローラーを含み、該システムコントローラーは制御ユニットに含まれる光源駆動部及び画像処理ユニットを制御する。照射光ユニット104は、波長が100μm〜1000μmの範囲にある電磁波であるテラヘルツ光を射出するレーザー装置と光学系を含み、テラヘルツ光を検査対象の人物108に照射する。
【0115】
人物108と撮像ユニット106との間には光学フィルター105が配置されている。光学フィルター105は探知対象である特定物質109の分光スペクトルのみを通過させる。人物108から反射するテラヘルツ光は、光学フィルター105にて分離されて特定物質109の分光スペクトルのみ撮像ユニット106に受光される。撮像ユニット106で生成された画像信号は、制御ユニット103の画像処理ユニットで所定の画像処理が施され、その画像信号が表示部107へ出力される。そして人物108の衣服内等に特定物質109が存在するか否かにより受光信号の強度が異なるので特定物質109の存在が判別できる。
【0116】
上述したように、本実施形態によれば、以下の効果を有する。
(1)本実施形態によれば、特定物質探知装置102は撮像ユニット106に光検出部を備え、光検出部には上記実施形態の赤外線検出素子3が用いられている。赤外線検出素子3は支持部23が凹部15に張り付かずに感度良く赤外線の受光量を検出する。光検出部の赤外線検出素子3は感度良く赤外線を検出するので、特定物質探知装置102は撮像ユニット106に感度良く赤外線を検出する赤外線検出素子を備えた電子機器とすることができる。
【0117】
以上、いくつかの実施形態について説明したが、本発明の新規事項及び効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できるものである。従って、このような変形例は総て本発明の範囲に含まれるものとする。例えば、明細書または図面において、少なくとも一度、より広義または同義な異なる用語と共に記載された用語は、明細書または図面のいかなる箇所においても、その異なる用語に置き換えることができる。
【0118】
本発明は、種々の焦電型検出器に広く適用することができる。検出する光の波長は問わない。また、焦電型検出器または焦電型検出装置、あるいはそれらを有する電子機器は、例えば、供給する熱量と流体が奪う熱量とが均衡する条件下にて流体の流量を検出するフローセンサー等にも適用できる。このフローセンサーに設けられる熱電対等に代えて本発明の焦電型検出器または焦電型検出装置を設けることができ、光以外を検出対象とすることができる。
【0119】
尚、本実施形態は上述した実施形態に限定されるものではなく、種々の変更や改良を加えることも可能である。変形例を以下に述べる。
【0120】
(変形例1)
前記第1の実施形態では、2つの梁22が設置されたが、梁22の個数は限定されない。梁22の個数は1個でも良く、3個以上でも良い。支持部23を安定して支持できれば良い。また、梁22は折れ曲がった角柱状であったが、梁22の形状は曲線でも良く、真直ぐでもよい。支持部23を安定して支持できれば良く、設計し易い形状にしても良い。また、梁22を長くすることにより梁22を介して熱伝導する熱量を減らすことができる。
【0121】
(変形例2)
前記第1の実施形態では、基板2上に駆動回路9を設置し、同じ基板2上に赤外線検出素子3を配列して形成した。駆動回路9は基板2でなく外部基板に設置しても良い。バンプを接点に用いて基板2と外部基板との間で通信しても良い。良品の駆動回路9と赤外線検出素子3が配列した良品のセンサーアレイとを組み立ててセンサーデバイスとする。従って、歩留まり良くセンサーデバイスを製造できるので、生産性良くセンサーデバイスを製造することできる。
【0122】
(変形例3)
前記第1の実施形態では、ステップS12の検出部形成工程の後にステップS9の支持部形成工程を行った。ステップS9はステップS5の支持部材形成工程とステップS6の貫通電極形成工程との間に行われても良い。また、ステップS9はステップS6の貫通電極形成工程とステップS12の検出部形成工程との間に行われても良い。製造し易いステップ順にて行っても良い。
【0123】
(変形例4)
前記第1の実施形態では、支持部材20をSiNの膜にした。支持部材20の空隙17側にはポリシリコンの膜を配置しても良い。これにより、空隙17と接する場所を純水に対して撥水性を良くすることができる。従って、空隙17から純水を排出しやすくなるので、支持部23が凹部15の底に吸着することをさらに防止することができる。
【0124】
(変形例5)
前記第1の実施形態では、ステップS3の撥水膜形成工程にて撥水膜16を成膜した。続けて撥水膜16をパターニングした。撥水膜16のパターニングはステップS4の犠牲膜形成工程にてCMP法を用いて犠牲膜32の上面を平坦にする工程にて行っても良い。撥水膜16のパターニングは凹部15以外の場所の撥水膜16を除去する内容であり、犠牲膜32の上面を平坦にすることによりパターニングすることができる。この方法を用いることにより、マスクを形成する工程とドライエッチングする工程とを削減することができる。その結果、生産性良く赤外線検出素子3を製造することができる。
【0125】
(変形例6)
前記第1の実施形態では、ステップS9の支持部形成工程の後にステップS10の赤外線吸収膜形成工程を行った。ステップS10の後にステップS9を行っても良い。つまり、赤外線検出部4に赤外線吸収膜30を成膜した後で梁22及び支持部23の形状をパターニングしても良い。製造し易い工程順にて製造しても良い。
【0126】
(変形例7)
前記第1の実施形態では、ステップS11のエッチング工程において純水を用いて洗浄し乾燥した。純水にて洗浄した後にアルコール等の沸点の低い液体で水置換しても良い。さらに、凹部15から液体が早く排出されるので支持部23を凹部15の底に張り付き難くすることができる。
【0127】
(変形例8)
前記第1の実施形態では、ステップS11のエッチング工程において、基板2をフッ化水素のエッチング液に浸漬した。尚、エッチング液はフッ化水素酸とフッ化アンモニウムとを混合したバッファードフッ酸を用いても良い。
【符号の説明】
【0128】
2…基板、4…赤外線検出部、14…絶縁膜、15…凹部、16…撥水膜、17…空隙、22…梁、23…支持部、24…下部電極、25…焦電体、26…上部電極、32…犠牲膜、35…電子機器としてのセンサーデバイス、41…電子機器としての赤外線カメラ、43,82…光検出部、51…電子機器としての運転支援装置、62…電子機器としてのセキュリティー機器、73…電子機器としてのコントローラー、86…電子機器としてのゲーム機器、95…電子機器としての体温測定装置、102…電子機器としての特定物質探知装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設置され凹部を備えた絶縁膜と、
前記基板に一端が固定される梁によって保持され前記凹部の上方に空隙を介して位置する支持部と、
前記支持部上に設置され赤外線を検出する赤外線検出部と、を備え、
前記凹部はポリシリコンを含む撥水膜に覆われ、前記梁及び前記支持部は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含むことを特徴とする赤外線検出素子。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線検出素子であって、
前記赤外線検出部は前記支持部上に下部電極、焦電体、上部電極が重ねて配置され、
前記支持部は窒化シリコンを含み、前記焦電体は優先配向していることを特徴とする赤外線検出素子。
【請求項3】
基板上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜に凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部を覆って撥水膜を形成する撥水膜形成工程と、
前記凹部に犠牲膜を形成する犠牲膜形成工程と、
前記犠牲膜上に支持部材を成膜する支持部材形成工程と、
前記支持部材上に赤外線検出部を形成する検出部形成工程と、
前記支持部材を、前記赤外線検出部を支持する支持部及び前記支持部を保持する梁の形状にパターニングする支持部形成工程と、
前記犠牲膜をエッチングするエッチング工程と、を有し、
前記撥水膜はポリシリコンを含み、前記支持部材は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含むことを特徴とする赤外線検出素子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の赤外線検出素子の製造方法であって、
前記犠牲膜形成工程において前記撥水膜の一部を露出させ、
前記支持部材形成工程において露出された前記撥水膜の表面をエッチングして、前記撥水膜上に前記支持部材を重ねて配置することを特徴とする赤外線検出素子の製造方法。
【請求項5】
赤外線を検出する光検出部を備える電子機器であって、
前記光検出部に請求項1または2に記載の赤外線検出素子を備えることを特徴とする電子機器。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に設置され凹部を備えた絶縁膜と、
前記基板に一端が固定される梁によって保持され前記凹部の上方に空隙を介して位置する支持部と、
前記支持部上に設置され赤外線を検出する赤外線検出部と、を備え、
前記凹部はポリシリコンを含む撥水膜に覆われ、前記梁及び前記支持部は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含むことを特徴とする赤外線検出素子。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線検出素子であって、
前記赤外線検出部は前記支持部上に下部電極、焦電体、上部電極が重ねて配置され、
前記支持部は窒化シリコンを含み、前記焦電体は優先配向していることを特徴とする赤外線検出素子。
【請求項3】
基板上に絶縁膜を形成する絶縁膜形成工程と、
前記絶縁膜に凹部を形成する凹部形成工程と、
前記凹部を覆って撥水膜を形成する撥水膜形成工程と、
前記凹部に犠牲膜を形成する犠牲膜形成工程と、
前記犠牲膜上に支持部材を成膜する支持部材形成工程と、
前記支持部材上に赤外線検出部を形成する検出部形成工程と、
前記支持部材を、前記赤外線検出部を支持する支持部及び前記支持部を保持する梁の形状にパターニングする支持部形成工程と、
前記犠牲膜をエッチングするエッチング工程と、を有し、
前記撥水膜はポリシリコンを含み、前記支持部材は窒化シリコンまたは炭窒化シリコンを含むことを特徴とする赤外線検出素子の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載の赤外線検出素子の製造方法であって、
前記犠牲膜形成工程において前記撥水膜の一部を露出させ、
前記支持部材形成工程において露出された前記撥水膜の表面をエッチングして、前記撥水膜上に前記支持部材を重ねて配置することを特徴とする赤外線検出素子の製造方法。
【請求項5】
赤外線を検出する光検出部を備える電子機器であって、
前記光検出部に請求項1または2に記載の赤外線検出素子を備えることを特徴とする電子機器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−57526(P2013−57526A)
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−194658(P2011−194658)
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月7日(2011.9.7)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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