赤外線検出素子及び赤外線撮像装置
【課題】焦電型の赤外線検出素子及びこれを用いた赤外線検出装置において、画素として用いる赤外線検出素子の受光面積を小さく、膜厚を薄くしても、ノイズの影響を低減化することを目的とする。
【解決手段】基板11と、支持電気絶縁層12と、第1の電極14と、焦電層15と、第2の電極16と、を備える。焦電層15は、受光面積が1×102μm2以上1×104μm2以下であり、膜厚が0.8μm以上10μm以下であり、且つ、Pb(ZrxTi1−x)O3(但し0.57<x<0.93とする)で表される化合物を主成分とする。圧電ノイズを抑え、十分な焦電特性が得られ、高い感度の検出が可能となる。
【解決手段】基板11と、支持電気絶縁層12と、第1の電極14と、焦電層15と、第2の電極16と、を備える。焦電層15は、受光面積が1×102μm2以上1×104μm2以下であり、膜厚が0.8μm以上10μm以下であり、且つ、Pb(ZrxTi1−x)O3(但し0.57<x<0.93とする)で表される化合物を主成分とする。圧電ノイズを抑え、十分な焦電特性が得られ、高い感度の検出が可能となる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線照射により自発分極が変化して表面電荷を発生させる焦電型の赤外線検出素子及び赤外線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線を検出するセンサは、動作原理から大きく量子型と熱型と呼ばれる2種類に大別される。特に入射した赤外線を吸収し、受光素子の温度が変化することで赤外線を検知する熱型の赤外線検出素子は、冷却が不要であるという利点を有する。このため、近年では赤外線撮像装置(サーモグラフィ)のイメージャとしてや、エコ製品等に搭載される人感センサとして利用されるようになってきている。
【0003】
この熱型の赤外線検出素子にも、例えば以下の3種類があることが知られている。一つは、ゼーベック効果を生じさせる熱電対を接続したサーモパイル型である。もう一つは、温度上昇による抵抗値の変化を利用したボロメータ型である。そして、焦電素子の自発分極の変化により表面電荷を発生させる焦電型が知られている。
【0004】
この焦電型の赤外線検出素子では、赤外線に対する感度を高めるため、焦電材料の種類や配合を工夫し温度変化による表面電荷の発生の効率である焦電係数を大きくする研究や、入射した赤外線を効率よく吸収する研究がなされている。例えば特許文献1には、非接触で温度測定する赤外線温度センサとして、焦電効果薄膜を用いた赤外線検出部が記載されている。そして、この赤外線検出部に対向して赤外線を遮蔽する部材を配置し、この遮蔽部材に微小窓を設けることで、微小領域の温度測定を可能とする構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−349601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載の赤外線温度センサでは、微小領域の温度を精度よく測定するために一つの焦電素子を用いる構成である。これに対し、多数の焦電素子zを配置して赤外線によるイメージングを行う場合は、単に感度を上げるのみでは実用上問題が生じる。例えば、焦電素子を一画素とし、その画素面積を小型化して数百×数百程度にアレイ化することで、一万以上の画素を用いた赤外線によるイメージングが可能である。このような赤外線検出による解像度の高いイメージングは、例えば上述した人感センサの分野において、より高機能な判別を行う技術として求められている。
【0007】
しかしながら、焦電素子による赤外線検出素子を多数アレイ化した赤外線撮像装置は、小型化に起因する問題のため、現状では量産化に至っていない。すなわち、焦電素子を用いた赤外線検出素子を一片100μm以下程度まで小型化させていくと、赤外線の受光面積が小さくなるため入力されるエネルギーも低減化し、出力に対するノイズの影響が大きくなってしまう。
【0008】
以上の課題に鑑みて、本発明は、焦電型の赤外線検出素子及びこれを用いた赤外線検出装置において、画素として用いる赤外線検出素子の受光面積を小さくしても、ノイズの影響を低減化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による赤外線検出素子は、基板と、基板上に形成される支持電気絶縁層と、この支持電気絶縁層上に形成される第1の電極と、焦電層と、第2の電極と、を備える。そして、焦電層は、受光面積が1×102μm2以上1×104μm2以下であり、膜厚が0.8μm以上10μm以下であり、且つ、Pb(ZrxTi1−x)O3(但し0.57<x<0.93とする)で表される化合物を主成分とする。
【0010】
また、本発明による赤外線撮像装置は、複数の焦電型の赤外線検出素子と、赤外線検出素子に赤外線を集光する集光部と、赤外線検出素子において赤外線照射により得られる電荷の出力を制御する電荷制御部と、赤外線検出素子からの出力を信号に変換して赤外線像を得る信号処理回路と、を備える。そして、焦電型の赤外線検出素子として上述した本発明構成の赤外線検出素子を用いるものである。
【0011】
本発明者等は、焦電型の赤外線検出素子において、特にその受光面積を1×102μm2以上1×104μm2以下とし、膜厚を0.8μm以上10μm以下として小型化する場合に、この材料の持つ圧電特性による出力がノイズに影響することを見出した。つまり、受光面積を微小化して画素を小型化すると、圧電特性による出力は、赤外線による映像の信号出力に対して相対的に大きなノイズの原因となってしまう。これは、画素を小型化すると、すなわち赤外線検出素子の受光領域を微小化すると、赤外線検出素子自体の剛性が低下することが原因である。
【0012】
つまり、赤外線検出素子の剛性が低下すると、外部応力や振動、温度変化から生じる歪みによって圧電特性に起因する出力(圧電出力)が容易に発生する。この圧電出力は焦電特性から得られる出力からすると全てノイズであり、焦電型の赤外線検出素子の小型化、ひいては赤外線撮像装置の多画素化に対して大きな問題となる。また、焦電型の赤外線検出素子の感度を向上させるためには、焦電特性の向上とともに、誘電率を下げることも有効である。
【0013】
このため、本発明は小型で多画素化が可能な焦電型の赤外線検出素子における焦電層の材料として、焦電特性を上げつつ誘電率を抑えて焦電効率を高め、且つ、圧電特性を抑制する組成比を特定するものである。これにより、焦電型の赤外線検出素子による高画素、高解像度の赤外線の撮像が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、赤外線検出素子の受光面積を小さくすることで画素サイズを微小化しても焦電効率を確保すると共に、ノイズとなる圧電効率を下げることによってS/N比の良好な感度が得られ、高解像度で感度の良好な赤外線像を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子の断面図である。
【図2】Pb(ZrxTi1−x)O3の組成に対する焦電係数、比誘電率及び圧電特性を示す図である
【図3】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子を用いた赤外線撮像装置の要部の平面図である。
【図4】図3に示す赤外線撮像装置に用いる赤外線検出素子の一例の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子の第1の変形例の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子の第2の変形例の斜視図である。
【図7】A〜Fは図6に示す赤外線検出素子の製造方法の一例を示す製造工程図である。
【図8】図6に示す赤外線検出素子を用いた赤外線撮像装置の斜視図である。
【図9】図6に示す赤外線検出素子の一例の断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子の第3の変形例の断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子の第4の変形例の断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る赤外線撮像装置の構成図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る赤外線撮像装置の第1の変形例の構成図である。
【図14】Pb(Zr0.6Ti0.4)O3における温度と焦電係数との関係を示す図である。
【図15】Aは本発明の実施例による出力波形を示す図であり、Bは比較例による出力波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態とする)の赤外線検出素子及び赤外線撮像装置の例を説明する。ただし、本発明は以下に示す例に限定されるものではない。例えば、以下の例では赤外線検出素子を2次元状に配列した撮像装置を例に挙げ説明するが、これに限定されず、赤外線検出素子を1次元状、または3次元状に積層する場合も含むものである。説明は下記の順序で行う。
1.赤外線検出素子の実施形態
(1)赤外線検出素子の基本構成
(2)赤外線検出素子の第1の変形例(基板との間に中間層を設ける構成)
(3)赤外線検出素子の第2の変形例(空間部を設ける構成)
(4)赤外線検出素子の第3の変形例(電極を2層とする構成)
(5)赤外線検出素子の第4の変形例(赤外線吸収膜を設ける構成)
2.赤外線撮像装置の実施形態
(1)赤外線撮像装置の基本構成
(2)赤外線撮像装置の第1の変形例(温度制御部を設ける構成)
3.具体例
【0017】
[1.赤外線検出素子の実施形態]
(1)赤外線検出素子の基本構成
図1は本発明の実施形態に係る焦電型の赤外線検出素子の基本構成を示す断面図である。図1に示す赤外線検出素子10は、基板11と、支持電気絶縁層12と、第1の電極14と、焦電層15と、第2の電極16とがこの順に積層されて構成される。基板11は例えばSiウェハ等が好適であるが、これに限定されるものではなく、その他MgO単結晶基板等、焦電層15の持つ焦電特性に影響を与えない材料であれば利用可能である。また、支持電気絶縁層12の材料は、熱伝導率の低い絶縁性材料、例えばSiO2等が利用可能であり、熱酸化、CVD(化学気相成長)等により形成される。この支持電気絶縁層12の材料は、基板11の材料より熱伝導性の低い材料であることが好ましい。熱伝導性の低い材料とすることによって、この上に形成される焦電層15の熱を逃がしにくく、感度の低下を抑えることができる。また、第1の電極14は、この上に形成される焦電層15の結晶配向性を良好にするために、少なくとも第1の電極14の最表面層には結晶配向性を有する導電性材料を用いることが好ましい。このような材料としては例えばPtが好適である。また、第2の電極16の材料は、導電性で赤外線反射率が低く、また蓄熱性の低い材料であることが好ましく、Cr、Pt等を用いることができる。第1及び第2の電極14及び16はスパッタ等により形成される。
【0018】
そして、本発明の実施形態に係る赤外線検出素子10は、その受光面積を1×102μm2以上1×104μm2以下として構成する。すなわち、1つの素子に設ける焦電層15の表面積のうち、受光領域となる部分の面積を、1×102μm2以上1×104μm2以下として構成する。このような微小な受光面積とする赤外線検出素子10は、例えば一方向に数十個から数百個程度配列したものを2次元状に配置し、全体として数百〜数十万個程度設けることができる。そして、多画素化することにより従来と比べて格段に解像度を高くすることができるので、人感センサ等の単なる赤外線の有無の検出のみではなく、より明確な赤外線像を撮像することが可能となる。特に、被検出物の大きさに加え形状の違いを判別することも可能となるので、人の検知装置の他、製造ラインの計測・制御や医療・診断装置等、種々の分野での応用が可能となる。
【0019】
また、焦電層15の膜厚は0.8μm以上10μm以下とする。従来方法で焦電型の赤外線検出素子を製造する場合、一辺1mm程度のバルク焦電材料から膜厚100μm程度の焦電薄膜を切り出して赤外線検出素子に利用している。このようにバルク材料から切り出す場合と比べると、本実施形態に用いる焦電層15は10分の1以下と非常に薄い。上述したように一つの赤外線検出素子10を一画素に対応させて、これを数百〜数十万画素配列する場合、従来のようにバルク材から切り出して形成した素子を、その形状を均一化して精度よく配列することは困難である。このため、スパッタやCVD等の成膜プロセスによる製造方法を採ることが好ましい。成膜プロセスによって焦電層15を形成する場合、厚さが10μmを超えると、結晶配向性が乱れるうえ、その成膜に時間がかかり過ぎ、コストの増大に繋がる。このため、焦電層15の厚さは10μm以下とする。また、焦電層15の厚さを0.8μm未満とすると十分な焦電特性が得られず、すなわち赤外線検出時の電荷発生の効率が低下する。このため、焦電層15の膜厚は0.8μm以上とする。
【0020】
そして焦電層15の材料は、下記の組成式(1)
Pb(ZrxTi1−x)O3・・・(1)
で表される化合物(チタン酸ジルコン酸鉛、PZT)において、xの範囲を0.57<x<0.93とする化合物を主成分とする材料とする。一般的に、赤外線検出素子10が小型になればなるほど、S/N比が低下するため、焦電特性を高くすることが求められる。この焦電特性の性能は以下の式(2)で表すことができる。
【0021】
F=λ/(εC)・・・(2)
(ただし、F:焦電性能指数、λ:焦電係数、ε:比誘電率、C:比熱)
【0022】
ここで、焦電特性を向上させるためには、焦電係数λを大きくし、かつ比誘電率εを小さくする必要がある。図2に、Pb(ZrxTi1−x)O3で表される化合物におけるPbZrO3の組成モル比xを0から1まで変化させたときの、焦電係数λ、比誘電率C及び圧電特性の変化を示す。なお、図2においては、上記化合物の厚さを3μm、面積を200μm2として1画素分形成し、温度40℃の条件下における場合を示す。なお、比誘電率は、(株)東陽テクニカ製FCEシリーズの強誘電体ヒステリシス評価装置を用いて発生電荷を測定後、下記式(3)により演算して求めた。
εr=tC/(ε0S)・・・(3)
上記式(3)中、tはPZTの膜厚、ε0は真空の誘電率、Sは受光面積、Cは測定した発生電荷である。焦電特性は恒温槽にて、また圧電特性はフォースゲージ、変位計を用いてそれぞれ測定した。
【0023】
図2からわかるように、組成モル比xが0.52<x<0.95の範囲で焦電係数λが高い傾向があり、比誘電率εは0.55<xで低くなる傾向がある。またノイズ成分となってしまう圧電特性も、0.55<xで低くなる傾向がある。圧電特性が十分低くないと、焦電層15に歪みによる圧電効果が生じてしまい、焦電出力に対して無視できないノイズ成分となってしまう。特に焦電層15の受光面積を上述したように1×104μm2以下とする場合、発生する電荷量に対する圧電歪みの影響が相対的に大きく、すなわち歪みストレスに弱いため、圧電特性の小さい組成範囲とすることが必要となる。また、0.95<xの範囲では反強誘電体(anti-ferroelectric)になってしまうので、焦電性能が急激に不安定になることが分った。
【0024】
以上の結果から、本実施形態に係る赤外線検出素子10の焦電層15は、上記式(1)における組成モル比xを0.57<x<0.93とする化合物を用いるとよいことが分る。このような組成とすることで、歪みストレスに弱い小型化された赤外線検出素子10であるにも係わらず、圧電ノイズが低減化されて、高い焦電出力が得られる。
【0025】
なお、図2の結果はPb(ZrxTi1−x)O3の表面積(受光面積)を200μm2、厚さを3μmとする場合の結果であるが、この傾向は、圧電特性においてより厳しい条件となる、受光面積が1×102μm2、厚さが0.8μmの場合も同様であった。また、受光面積を1×104μm、厚さを10μmとする場合においては、上記組成範囲で焦電係数λを十分大きく、また比誘電率εを小さく、且つ、圧電特性もより小さくなる。このため、本発明においては、焦電層15の受光面積を1×102μm2以上1×104μm2以下とし、厚さを0.8〜10μmとする場合に、上記組成モル比xを0.57<x<0.93とするものである。
【0026】
更に、焦電層15の材料のキューリー点は自発分極に影響を及ぼすため、使用環境の温度範囲についても考慮することがより好ましい。上記式(1)で示す化合物では、Zrの割合が多くなるとキューリー点が徐々に下がる傾向がある。つまり、Zrの割合を多くし過ぎると、キューリー点が低くなってしまい、突発的な温度上昇の際にキューリー点を超えてしまう恐れがある。このため、使用環境の温度範囲における最上限の摂氏温度に対して、キューリー点摂氏温度が2倍以上のマージンを有するように、組成を選定することが好ましい。例えば使用環境温度範囲が−15℃以上80℃の場合は、上記式(1)における組成モル比xを0.57<x<0.81とする化合物を主成分とすることが好ましい。この範囲とする場合は、キューリー点のマージンを2倍以上確保することができるので、焦電出力が高く、圧電ノイズが低く、かつ温度信頼性を確保した焦電型の赤外線検出素子10を得ることができる。
【0027】
また更に、焦電層15の材料の上記式(1)における組成モル比xを0.57<x<0.76の範囲とする場合は、キューリー点のマージンをより多く確保することができる。この結果、実使用環境温度、すなわち−15℃以上80℃以下の温度範囲において、温度制御を必要とせずに安定した高効率の焦電特性が得られる。
【0028】
なお、焦電層15の材料としては、上記化合物に対して微量の添加物や不純物が混入されていてもよい。例えば、La、Sr、Ba、Cdなどは添加(混入)可能であり、添加量の上限は10%以下とすることが好ましい。このような材料及び添加量の添加物や不純物が微量混入していても、焦電特性への影響が低く、焦電特性が十分得られ、また圧電ノイズが十分低く抑えられる範囲であれば、同様に、小型化による圧電ノイズを抑え、高い感度を得ることができる。また、添加条件により焦電特性の向上を図ることが可能である。
【0029】
図3は、図1に示す例と同様の構成の赤外線検出素子10(10a1,10a2、・・・10b1、・・・10c1、・・・10mn)をm×n行にアレイ状に配列し、m×n個に多画素化した赤外線撮像装置100の概略平面図である。また、図4は各赤外線検出素子10a1(10a2、・・・10mn)の断面構成図である。この例では、図1に示す例と同様に基板11上に支持電気絶縁層12と、第1の電極14、焦電層15及び第2の電極16がこの順に形成される。そして、第1の電極14は、一端が基板11側の、例えば支持電気絶縁層12の側面上に延在し、更に基板11と支持電気絶縁層12との間の一部の領域に形成される端子導出部14aに接続される構成とする。また、第1の電極14が延在する側とは離間する他端において、第2の電極16も同様に基板11側に延在し、基板11と支持電気絶縁層12との間で、端子導出部14aと異なる位置に形成される端子導出部16aに接続される。端子導出部14a及び16aは、例えば一方が接地され、他方が後述する電荷制御部における図示しない電圧変換器やスイッチング回路等に接続されて、各焦電層15の表面に発生した電荷が信号として取り出される。
【0030】
なお、第2の電極16の延在する部分では、第1の電極14及び焦電層15の側面と、第2の電極16の延在部との間に、例えば支持電気絶縁層と同材料より成る絶縁層12aを形成してもよい。また、図示しないが犠牲層成膜及びエッチング除去等によって、第1の電極14及び焦電層15の側面と、第2の電極16の延在部との間に空間部を設ける構成としてもよい。また、図4においては各素子間をRIE(異方性エッチング)等により分離して、空間部を設ける例を示すが、素子間に例えば支持電気絶縁層12と同様の材料や、その他熱伝導率が低く絶縁性の材料より成る素子分離層が形成されていてもよい。また、支持電気絶縁層12は、複数の赤外線検出素子10に跨って共通に設けられていてもよい。このように、赤外線検出素子10の間に絶縁層等が形成される場合は、赤外線検出素子10の振動を抑え、また機械的強度を高めることが可能である。
【0031】
上述したように、各赤外線検出素子10(10a1、・・・10mn)の受光面積を1×102μm2以上1×104μm2以下と小型化しているので、数万程度の2次元アレイ状としても装置全体のサイズの小型化を図ることができる。なお、図3に示す例においては2次元状に赤外線検出素子10を配列した構成であるが、一列に配列した1次元アレイ状とすることもできる。このように1次元アレイ状とする場合でも、装置の最長部分のサイズの小型化を図ることができる。また焦電層15は単層構成に限定されず、2層以上とし、空間部等を介した積層構成としてもよい。この場合は受光面積に対する赤外線吸収率を高めることができ、より高い出力を良好なS/N比で得ることが可能となる。
【0032】
(2)赤外線検出素子の第1の変形例(基板との間に中間層を設ける構成)
図5は、本発明の実施形態の第1の変形例による赤外線検出素子20の概略構成を示す断面図である。この赤外線検出素子20においては、基板21上に、支持電気絶縁層22、中間層23、第1の電極24、焦電層25及び第2の電極26がこの順に成膜されて構成される。中間層23としては、熱伝導性が低く、また結晶配向性に有利な材料を用いることが好ましい。このような機能を有する層としては、CVDまたはスパッタ法によって形成されたMgO層を用いることができる。すなわち、MgOより成る中間層23を第1の電極24の直下に配することによって、第1の電極24の上に成膜される焦電層25は、その結晶配向性が揃うように成膜されるため、高い焦電特性が得られる。また、MgOは電極材料より熱伝導性が低いので、焦電層25の熱を逃がしにくく、焦電特性を保持して高い感度を得ることができる。なお、中間層23の材料はMgO以外でも、熱伝導性が低く、焦電層25の結晶配向性が良好となる材料以外であれば利用可能である。
【0033】
その他、基板21、支持電気絶縁層22、第1の電極24、焦電層25及び第2の電極26の材料及び各層の成膜方法は、図1に示す例と同様とすることができる。また、焦電層35の受光面積、膜厚及び組成を図1に示す例と同様とすることで、小型化による多画素化にあたって、焦電特性が十分得られると共に、圧電ノイズを抑えることができる。そしてこの赤外線検出素子20を数千〜数万個程度配列することで、解像度の高い赤外線像を撮像することが可能となる。
【0034】
なお、第1の電極24の材料をPtとする場合、第1の電極24の膜厚を、MgOより成る中間層23の膜厚よりも薄くすることで、以下の効果が得られる。Ptの熱伝導率は約7.1×10W・m−1・K−1であり、MgOの熱伝導率は約5.9×10W・m−1・K−1である。したがって、焦電層25と支持電気絶縁層22との間を全てPtより成る第1の電極24とするよりもMgOより成る中間層23を設ける方が、焦電層25から熱を逃がしにくい。特に中間層23の厚さを第1の電極24より十分大とすることで、熱伝導を抑える効果を高め、焦電特性を保持して高い感度を得ることができる。中間層23の厚さとしては、第1の電極24の2倍以上であれば十分熱伝導を抑える効果が得られ、具体的には50nm以上とすることが好ましい。一方、厚すぎると成膜に時間がかかり過ぎてしまうため、200nm以下とすることが好ましい。これにより、焦電特性の低下を抑制することができ、また、Ptに比べMgOの方が安い材料であることから、コストの低減化を図ることもできる。
【0035】
(3)赤外線検出素子の第2の変形例(空間部を設ける構成)
次に、図6を参照して本発明の実施の形態の第2の変形例による赤外線検出素子30の概略構成を説明する。図6に示すように、この赤外線検出素子30は、基板31上に、支持電気絶縁層32、第1の電極34、焦電層35、第2の電極36がこの順に形成されて成る。基板31、第1の電極34及び第2の電極36の材料及び各層の成膜方法は、図1及び図5に示す例と同様とし得る。また、焦電層35の受光面積、厚さ及び材を図1及び図5に示す例と同様とすることで、小型化による多画素化にあたって、焦電特性が十分得られると共に、圧電ノイズを抑えることができる。
【0036】
一方、支持電気絶縁層32は、平面四角形状とされる第1の電極34の四隅の直下に例えば角柱状に形成され、各支持電気絶縁層32の間はいわば平面十字形状の空間部39として構成される。即ちこの場合、基板31と焦電層35直下の第1の電極34との間に空間部39を有する中空構造とするものである。このように中空構造とすることによって、焦電層35から支持電気絶縁層32を通じて基板31へ熱が伝わりにくくなるため熱絶縁性を高めることができる。そして、熱的な影響を抑えることで焦電特性を損なうことなく高い感度を得ることができる。すなわち、焦電層35の受光面積、厚さ及び材料を上述の構成とすることと相まって、より感度に優れ、解像度の高い赤外線像を撮像することが可能となる。
【0037】
図7A〜Fは、図6に示す赤外線検出素子30の製造方法の一例を示す製造工程図である。先ず、図7Aに示すように、Si等より成る基板31上に、SiO2、LP−TEOS(Low Pressure TEOS;TEOSはSi(OC2H5)4の略称)等より成る絶縁層132をCVD等により全面的に成膜する。次に、図7Bに示すように、RIE等により、図6に示す空間部39となる領域の絶縁層132を除去し、例えば図6に示すような角柱状等の支持電気絶縁層32を形成する。支持電気絶縁層32の形状は角柱状に限定されず、その他円柱状や、平面多角形の柱状等、また不均一な形状など適宜選定可能である。次いで、図7Cに示すように、この柱状の支持電気絶縁層32上を含んで全面的にCVD等によって犠牲層38を成膜する。犠牲層38の材料としては、支持電気絶縁層32の材料とエッチング選択性を有していればよく、例えばpoly−Si等を利用できる。なお、犠牲層38の成膜後に適宜加熱処理を行ってもよい。加熱により犠牲層38の膜質が改善され、この犠牲層38上に第1の電極34を介して成膜する焦電層35の結晶配向性への影響を抑えることができる。
【0038】
次に、図7Dに示すように、CMP(化学機械研磨)等によって、犠牲層38と支持電気絶縁層32の上面をほぼ同一面とする平坦化処理を行う。そして図7Eに示すように、平坦化した犠牲層38及び支持電気絶縁層32の上に、Pt等より成る第1の電極34をスパッタ等により成膜する。続いて焦電層35をCVD等により成膜する。焦電層35の材料及び厚さは、図1等において説明した例と同様の材料、厚さとする。更にその上に、Pt等より成る第2の電極36を成膜する。次いで、図7Fに示すように、犠牲層38をフッ化キセノン等によりエッチング除去して、支持電気絶縁層32の間に空間部39を形成する。最後に、RIE等によって一画素分の支持電気絶縁層32、第1の電極34、焦電層35及び第2の電極36をパターニングし、例えば図6に示す平面四角形状のパターンとして赤外線検出素子を形成する。以上の工程により、図6に示す赤外線検出素子30を基板31上に複数個形成することができる。
【0039】
基板31上に複数の赤外線検出素子30を配列した例を図8に示す。図8においては2行×2列の計4個の素子のみを示すがこれに限定されるものではなく、数千〜数万個配列することが可能である。なお、図示の例では支柱となる支持電気絶縁層32は一画素毎に分離した場合を示すがこれに限定されるものではなく、複数の画素に跨って一つの柱状の支持電気絶縁層32を共通して設けてもよい。この場合は、支持電気絶縁層32の幅を大きくできるので、機械的強度を高めることができる。また、赤外線検出素子30の振動を抑えることもできる。
【0040】
なお、例えば図9に示すように、第1の電極34及び第2の電極36から、図4において説明した例と同様の延在部及び端子導出部34a、36aを設けてもよい。図9において、図6〜8と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。基板31への延在部は、例えば支持電気絶縁層32のいずれかの側面に接して配置すればよい。また、第2の電極36の端子導出部36aへの延在部と焦電層35、第1の電極34との間には、支持電気絶縁層32と同じ材料等より成る絶縁材料による延在部32aを設けてもよく、或いは犠牲層を利用して空間部を設けてもよい。この場合は、例えば前述の図7Aに示す工程の前に予め基板31上に端子導出部34a、36aを形成すればよい。また、図7Eに示す工程のうち第1の電極34を成膜した後、一旦この第1の電極34の延在部を形成し、その後、図7Fに示す工程に続いて、支持電気絶縁層32の延在部32aと第2の電極36の延在部を形成する工程を追加すればよい。
【0041】
このようにして形成した支持電気絶縁層32は、焦電層35の下部に配置され、いわば画素の直下に設けられて、画素を下から支える構造となる。このため、例えば特許3608298号公報や特許3763822号公報に記載されているような、赤外線検出素子の側面が突出したブリッジ構造とは異なり、素子全体の剛性が保持される。すなわち、上記公報に記載のブリッジ構造では、横方向から赤外線検出素子の側面にブリッジが接続され、このブリッジで赤外線検出素子全体を支える構造であり、素子の直下には支持部を設けていない。このため、振動等の影響によって赤外線検出素子全体が撓みやすい。赤外線検出素子全体が撓んでしまうと、焦電層において歪み応力による圧電出力ノイズが発生してしまう。したがって、焦電型の赤外線検出素子には、このようなブリッジ構造を採る場合、S/N比を高めることが難しい。
【0042】
これに対し、図6に示すように、赤外線検出素子30の下面に複数の支持電気絶縁層32を設ける場合は、剛性が保持されるので撓みが生じにくくなり、すなわち赤外線検出素子30の振動自体を抑えることができる。このため、焦電層35における歪み応力による圧電出力ノイズを抑えることができ、S/N比の向上を図ることができる。
【0043】
更にこのように柱状の支持電気絶縁層32を下部のみに設ける場合は、ブリッジ構造とする場合と異なり、周辺に設ける支持構造及びブリッジ構造に要する面積を省略できる。このため、赤外線を受光する有効画素面積を実質的に増やすことができ、同じ基板面積内で得られる出力を高めることができるという利点を有する。
【0044】
また、焦電型の赤外線検出素子においてブリッジ構造を採用すると、分極状態を得るための加熱によって素子全体が変形する場合があり、多数の赤外線検出素子を配列する場合は、素子にばらつきが生じて不良品発生率が大きくなるという問題がある。焦電材料に対して分極状態を得るための加熱処理は、通常100℃から250℃で、5分から30分程度行われる。なお、Pb(ZrxTi1−x)O3以外の焦電材料を用いる場合も同様の加熱処理が必要である。したがって、上記特許3608298号公報等に記載されているようなブリッジ構造を焦電型の赤外線検出素子にそのまま適用すると、この加熱によってブリッジ構造が変形し、素子全体が傾いて、すなわち受光領域が傾斜する恐れがある。赤外線検出素子を多数配列する場合、一部の受光領域が傾斜すると、隣接する画素同士で入射光の入射角度がばらつくこととなり、いわば実効的な受光面積が不均一となって、精度良く赤外線像を得ることができなくなってしまう。
【0045】
これに対し、図6に示すように、支持電気絶縁層32を支柱構造として焦電層35の直下に配置することで、このような分極状態を得るための加熱による変形を抑制ないしは回避することができる。したがって、数千から数万画素分の赤外線検出素子30を配置する場合であっても、焦電特性の均一化を図り、不良品発生率を抑え、赤外線撮像装置の生産性を高めることが可能となる。
【0046】
支持電気絶縁層32の好ましい形状及び配置を例示すると、例えば焦電層35の厚さが3μm、受光面積(表面積)が300μm2程度の場合、支柱となる支持電気絶縁層32を幅3μmの断面正方形の角柱状とし得る。焦電層35の平面形状を四角形として、このような柱状の支持電気絶縁層32をその四隅の直下に設けることで、振動等による歪みを十分抑え、圧電出力を無視できる程度に抑制することができる。なお、支持電気絶縁層32の第1の電極34と接する面積の受光面積に対する比率を大きくすると、支持電気絶縁層32の熱伝導により焦電特性が低下し、比率が小さすぎると、歪み抑制による圧電特性の低下の効果が十分でなくなる。検討の結果、焦電層35の受光面積を1×102〜1×104μm2とし、膜厚を0.8〜10μmとする場合は、この比率を0.1以上0.4以下とすることで、焦電特性を十分確保し、且つ、圧電特性によるノイズを抑えることができることが分った。
【0047】
なお、支柱となる支持電気絶縁層32の平面形状や配置位置は、受光面積に関係なく適宜選定することができる。このため、比較的受光面積が広く撓みが生じやすい場合は、例えば受光領域の中央部においても支持電気絶縁層32を配置して、振動をより抑える構成としてもよい。
【0048】
なお、この例においても支持電気絶縁層32として図5で示したような中間層23を含めてもよい。例えばSiO2等の支持電気絶縁層32の下部にMgOより成る中間層(図示せず)を基板31との間に介在させることで、熱絶縁性を高め、またこの上に形成する焦電層35の結晶配向性を良好にすることができる。これにより、更に焦電特性の向上を図り、感度を高めることが可能となる。
【0049】
(4)赤外線検出素子の第3の変形例(電極を2層とする構成)
次に、図10を参照して第3の変形例による赤外線検出素子40について説明する。図10に示すように、この場合、基板41上に支持電気絶縁層42、第1の電極44、焦電層45及び第2の電極46がこの順に形成されて成る。基板41、支持電気絶縁層42、第2の電極46の材料は図1等に示す例と同様とし得る。また、焦電層45の材料、厚さ及び受光面積も、図1等に示す例と同様とすることで、小型化による多画素化にあたって焦電特性が十分得られると共に、圧電ノイズを抑えることができる。この赤外線検出素子40を数千〜数万個程度配列することで、解像度の高い赤外線像を撮像することが可能となる。
【0050】
そしてこの場合、第1の電極44として、例えばTi又はTiO2等の下地層44aとPt層44bがこの順に成膜された2層構成とする。支持電気絶縁層42としてSi系の材料を用いる場合、この上に直接的にPt層44bを成膜すると良好な接合性を得ることが難しい。これに対し、Pt44bと支持電気絶縁層42との間に、Ti又はTiO2等の下地層44aをスパッタ等により成膜して介在させることで、接合性を改善することができる。なお、図5に示す例のように、支持電気絶縁層22と第1の電極24との間にMgO等の中間層23を設ける場合においても、同様に、第1の電極24にTi又はTiO2等の下地層を設けてもよく、接合性を改善することが可能である。
【0051】
また、図6に示すように中空構造とする場合においても、このように第1の電極34を2層構成としてもよい。いずれの場合においても、下地層44aの厚さを10nm以上200nm以下とすることで、下層の支持電気絶縁層42の表面の微小な段差を吸収することができる。このため、この上にPt層44bを介して形成する焦電層45の結晶配向性への影響を抑え、焦電特性の低下を抑制することができる。
【0052】
この第3の変形例によれば、第1の電極44の支持電気絶縁層42との接合性を良好にすることができるので、剥がれ等の不具合の発生を抑制し、多数の赤外線検出素子40を配列する場合に形状のばらつきを抑えることができる。このため、数千から数万画素分の赤外線検出素子40を配置する場合であっても、形状のばらつきによる焦電特性の不均一化を抑え、不良品発生率を抑制して、赤外線撮像装置の生産性を高めることができる。
【0053】
(5)赤外線検出素子の第4の変形例(赤外線吸収膜を設ける構成)
次に、図11を参照して第4の変形例による赤外線検出素子50について説明する。図11に示すように、この場合基板51上に、支持電気絶縁層52、第1の電極54、焦電層55及び第2の電極56がこの順に形成される。これら基板51、支持電気絶縁層52、第1及び第2の電極54及び56の材料及び形成方法は、図1等に示す例と同様とし得る。また、焦電層55の材料、厚さ及び受光面積を図1等に示す例と同様とすることで、圧電出力によるノイズを抑え、十分な焦電特性が得られ、高い感度で赤外線像を撮像することができる。そしてこの例では、第2の電極56上に赤外線吸収層57を設ける。赤外線吸収層57の材料としては、例えば表面放射率が60%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上の材料を用いることが好ましい。表面放射率が60%以上の材料としては、例えば有機色素、有機溶剤可溶性染料、油溶染料、分散染料、スタティック染料、フォトクロミック染料、遠赤外線吸収樹脂組成物、遠赤外線吸収インキ、遠赤外線吸収塗料等が挙げられる。他に、シアニン色素アミニュウム塩タイプの化合物、金属錯体化合物、アントラキノン系化合物、フタロシアニン類、ナフタロシアニン等も利用可能である。このような赤外線吸収層57を設けることにより、赤外線の吸収効率が高まり、更に感度を高くすることができる。なお、このように赤外線吸収層57を設ける構成は、前述の図1、図4〜図10において説明した各例において適用可能であり、同様に感度をより高めることが可能となる。
【0054】
2.赤外線撮像装置の実施形態
(1)赤外線撮像装置の基本構成
次に、本発明の赤外線撮像装置の実施の形態について説明する。図12は、この赤外線撮像装置200の基本構成を示す概略構成図である。この赤外線撮像装置200は、前述した実施形態の各例を含む本発明構成の赤外線検出素子70と、この赤外線検出素子70に外部の赤外光を集光する集光部71とを備える。また、赤外線検出素子70への赤外線照射によって得られる電荷の出力を制御し、すなわち電荷の蓄積、放電等を制御する電荷制御部72、赤外線検出素子70からの出力を信号に変換して赤外線像による映像(画像)信号を得る信号処理回路73を備える。
【0055】
集光部71は、撮像対象からの赤外線等を集光し、結像させるものであれば、特に限定されない。1枚のレンズであってもよいし、2枚以上のレンズを含むレンズ群であってもよく、また一画素や複数の画素に対応するマイクロレンズが配列されたレンズアレイを含んで構成してもよい。赤外線集光用のレンズ材料としてはGeレンズやSiレンズ等が挙げられる。
【0056】
集光部71によって集光された赤外線は、赤外線検出素子70において受光されるが、撮像対象が停止していると受光量の変化による温度変化が生じず、電荷が発生しなくなってしまい、画像が取得できない。このため、赤外線検出素子70と撮像対象との間に、入射する赤外線を周期的に制御するチョッパーを設けてもよい。そして電荷制御部72の制御によって、図示しない駆動回路によりチョッパーを駆動することで赤外線を変調し、特定の角周波数の赤外線を赤外線検出素子70に入射させる。これにより、撮像対象が停止している場合でも、得られる赤外線量に対応して温度変化が生じ、画像に応じた電荷を発生させて映像信号(画像信号)を得ることができる。チョッパーとしては、例えば機械的に開閉するシャッター機構や、液晶シャッターのように赤外線の透過領域と遮断領域とを電気的に制御する機構等が利用できる。
【0057】
なお、チョッパー(シャッター)の駆動周期は撮像系のフレームレートに対応する。30fpsであれば30Hzで動作させることが基本であるが、60、120、240Hzのように2倍速、4倍速、8倍速でシャッターを動作させてもよい。このようにして平均化した出力をフレームレート毎に出せば、突発的なノイズが平均化されてキャンセルされ、安定した出力データを得ることが可能である。また、昨今のTVの高倍速フレームレートにも対応可能である。なお、移動体に設ける場合等、静止した撮像対象の検出を除外できる場合は、チョッパーを設けずに直接赤外線検出を行う構成とすることも可能である。
【0058】
このようにして撮像対象の画像に対応して発生した電荷は、電荷制御部72に設けられるスタートパルスやクロックパルス等のタイミングジェネレータにより、チョッパーと同期して画素毎に順次制御されて信号処理回路73に出力される。
【0059】
信号処理回路73は、電荷電圧変換回路、ノイズ補正回路、アナログデジタル変換回路等を有し、赤外線検出素子70からの出力信号に対して例えば相関二重サンプリング等の信号処理が行われる。映像信号は、図示しないが必要に応じてメモリ等の記録媒体に記録され、また液晶ディスプレイ等のモニターに表示される。
【0060】
上述したように、本発明の赤外線撮像装置200に用いる赤外線検出素子70は、焦電層の受光面積を1×102μm2以上1×104μm2以下、膜厚を0.8μm以上10μm以下、材料及び組成を上記式(1)において0.57<x<0.93とする。これにより、数千から数万画素に配列することが可能であり、また小型で薄膜であるにも拘らず、十分な焦電特性が得られ、且つ圧電ノイズを抑えて良好なS/N比をもって電荷を発生させることができる。これにより、高感度で高解像の赤外線像による映像信号を得ることができる。
【0061】
(2)赤外線撮像装置の第1の変形例(温度制御部を設ける構成)
次に、図13を参照して第1の変形例による赤外線撮像装置300について説明する。図13に示す例では、図12に示す赤外線撮像装置200に対して、赤外線検出素子70の温度を制御する温度制御部74を追加して設けるものである。図13において、図12と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0062】
上記式(1)に示す組成で形成した焦電層15(25,35・・)を構成する化合物はペロブスカイト構造の結晶構造である。このため、温度を制御することで、結晶相は強誘電性菱面体晶相(Ferroelectric Rhombohedral)の低温相と高温相との境界近傍付近で相転移が行われる。この相転移温度付近においては焦電特性を更に上げることが可能となり、より感度が高くなる。したがって、焦電層15の温度をこの相転位温度近傍に制御することによって確実に焦電特性を確保し、また圧電ノイズを十分に抑制することができ、高い感度を有する性能の優れた赤外線撮像装置が得られる。
【0063】
図14は、上記式(1)において組成モル比xを0.4とした場合の温度に対する焦電係数の変化を示す図である。この組成比とする場合は、温度40℃で相転位が行われ、焦電係数が最大値となることが分る。すなわちこの場合は、赤外線検出素子70の温度が40℃近傍となるように冷却、又は加温すればよいことがわかる。例えば赤外線撮像装置300の機器内温度最大値が80℃である場合、−40℃の冷却機能を備える水冷、空冷機構等の温度制御部74を設けることにより、焦電係数を最大値に近づけて、より高い焦電特性を得ることが可能である。逆に、機器内温度と、温度制御部74の機能及びコスト等を考慮して、赤外線検出素子70内の焦電層15(25,25・・・)の組成を選定してもよい。この場合は、高価な冷却機構を用いることなく、焦電特性を最大限とすることができる。このように、赤外線検出素子70の焦電層15(25,35・・)に対応して適切な温度制御部74を設けることよって、焦電特性を十分に確保し、また圧電ノイズを抑制して、高感度で高解像の赤外線像による映像信号を得ることが可能となる。
【0064】
3.具体例
次に、本発明の実施例による赤外線検出素子と、比較例による赤外線検出素子における出力例を説明する。各例共に、図1、図3及び図4に示す構成の赤外線検出素子10を、図12に示す赤外線撮像装置200に設けた場合の出力波形図である。この赤外線検出素子10における焦電層15の上記式(1)中の組成モル比xは0.6である。また焦電層15の受光面積は200μm2、厚さは3μmである。また、比較例による赤外線検出素子の焦電層の式(1)中の組成モル比xは0.4であり、受光面積及び膜厚は実施例と同様とした。実施例及び比較例共に、40℃に設定したペルチェ素子を検出対象の熱源として用いた。図15Aは実施例による赤外線撮像装置における一画素の波形、図15Bは比較例における一画素の波形をそれぞれ示す。図15から、本発明構成による赤外線検出素子を用いた赤外線撮像装置においては、S/N比の高い出力信号が得られることが分る。これに対し、比較例においては、ノイズ出力が高く、良好なS/N比が得られないことが明らかである。
【0065】
なお、以上説明した本発明の実施形態においては、組成Pb(ZrxTi1−x)O3(ただし、0.57<x<0.93)とする化合物を赤外線検出素子の焦電層に用いる。これに対し、ZrをBa、Cd、Sr、Snに置き換えた化合物を用いる場合においても、同様に適切なxの範囲を選定することで、同様に圧電出力を抑えて十分な焦電特性を得て、高感度、高解像の赤外線像が得られることが分る。
【符号の説明】
【0066】
10,20,30,40,50,70・・・赤外線検出素子、11,21,31,41,51・・・基板、12,22,32,42,52・・・支持電気絶縁層、12a・・・絶縁層、14a,16a・・・端子導出部、23・・・中間層、14,24,34,44,54・・・第1の電極、15,25,35,45,55・・・焦電層、16,26,36,46,56・・・第2の電極、38・・・犠牲層、39・・・空間部、44a・・・Pt層、44b・・・Ti層、71・・・集光レンズ、72・・・電荷制御部、73・・・信号処理回路、74・・・温度制御部、100,130,200,300・・・赤外線撮像装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線照射により自発分極が変化して表面電荷を発生させる焦電型の赤外線検出素子及び赤外線撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
赤外線を検出するセンサは、動作原理から大きく量子型と熱型と呼ばれる2種類に大別される。特に入射した赤外線を吸収し、受光素子の温度が変化することで赤外線を検知する熱型の赤外線検出素子は、冷却が不要であるという利点を有する。このため、近年では赤外線撮像装置(サーモグラフィ)のイメージャとしてや、エコ製品等に搭載される人感センサとして利用されるようになってきている。
【0003】
この熱型の赤外線検出素子にも、例えば以下の3種類があることが知られている。一つは、ゼーベック効果を生じさせる熱電対を接続したサーモパイル型である。もう一つは、温度上昇による抵抗値の変化を利用したボロメータ型である。そして、焦電素子の自発分極の変化により表面電荷を発生させる焦電型が知られている。
【0004】
この焦電型の赤外線検出素子では、赤外線に対する感度を高めるため、焦電材料の種類や配合を工夫し温度変化による表面電荷の発生の効率である焦電係数を大きくする研究や、入射した赤外線を効率よく吸収する研究がなされている。例えば特許文献1には、非接触で温度測定する赤外線温度センサとして、焦電効果薄膜を用いた赤外線検出部が記載されている。そして、この赤外線検出部に対向して赤外線を遮蔽する部材を配置し、この遮蔽部材に微小窓を設けることで、微小領域の温度測定を可能とする構成が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−349601号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した特許文献1に記載の赤外線温度センサでは、微小領域の温度を精度よく測定するために一つの焦電素子を用いる構成である。これに対し、多数の焦電素子zを配置して赤外線によるイメージングを行う場合は、単に感度を上げるのみでは実用上問題が生じる。例えば、焦電素子を一画素とし、その画素面積を小型化して数百×数百程度にアレイ化することで、一万以上の画素を用いた赤外線によるイメージングが可能である。このような赤外線検出による解像度の高いイメージングは、例えば上述した人感センサの分野において、より高機能な判別を行う技術として求められている。
【0007】
しかしながら、焦電素子による赤外線検出素子を多数アレイ化した赤外線撮像装置は、小型化に起因する問題のため、現状では量産化に至っていない。すなわち、焦電素子を用いた赤外線検出素子を一片100μm以下程度まで小型化させていくと、赤外線の受光面積が小さくなるため入力されるエネルギーも低減化し、出力に対するノイズの影響が大きくなってしまう。
【0008】
以上の課題に鑑みて、本発明は、焦電型の赤外線検出素子及びこれを用いた赤外線検出装置において、画素として用いる赤外線検出素子の受光面積を小さくしても、ノイズの影響を低減化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明による赤外線検出素子は、基板と、基板上に形成される支持電気絶縁層と、この支持電気絶縁層上に形成される第1の電極と、焦電層と、第2の電極と、を備える。そして、焦電層は、受光面積が1×102μm2以上1×104μm2以下であり、膜厚が0.8μm以上10μm以下であり、且つ、Pb(ZrxTi1−x)O3(但し0.57<x<0.93とする)で表される化合物を主成分とする。
【0010】
また、本発明による赤外線撮像装置は、複数の焦電型の赤外線検出素子と、赤外線検出素子に赤外線を集光する集光部と、赤外線検出素子において赤外線照射により得られる電荷の出力を制御する電荷制御部と、赤外線検出素子からの出力を信号に変換して赤外線像を得る信号処理回路と、を備える。そして、焦電型の赤外線検出素子として上述した本発明構成の赤外線検出素子を用いるものである。
【0011】
本発明者等は、焦電型の赤外線検出素子において、特にその受光面積を1×102μm2以上1×104μm2以下とし、膜厚を0.8μm以上10μm以下として小型化する場合に、この材料の持つ圧電特性による出力がノイズに影響することを見出した。つまり、受光面積を微小化して画素を小型化すると、圧電特性による出力は、赤外線による映像の信号出力に対して相対的に大きなノイズの原因となってしまう。これは、画素を小型化すると、すなわち赤外線検出素子の受光領域を微小化すると、赤外線検出素子自体の剛性が低下することが原因である。
【0012】
つまり、赤外線検出素子の剛性が低下すると、外部応力や振動、温度変化から生じる歪みによって圧電特性に起因する出力(圧電出力)が容易に発生する。この圧電出力は焦電特性から得られる出力からすると全てノイズであり、焦電型の赤外線検出素子の小型化、ひいては赤外線撮像装置の多画素化に対して大きな問題となる。また、焦電型の赤外線検出素子の感度を向上させるためには、焦電特性の向上とともに、誘電率を下げることも有効である。
【0013】
このため、本発明は小型で多画素化が可能な焦電型の赤外線検出素子における焦電層の材料として、焦電特性を上げつつ誘電率を抑えて焦電効率を高め、且つ、圧電特性を抑制する組成比を特定するものである。これにより、焦電型の赤外線検出素子による高画素、高解像度の赤外線の撮像が可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、赤外線検出素子の受光面積を小さくすることで画素サイズを微小化しても焦電効率を確保すると共に、ノイズとなる圧電効率を下げることによってS/N比の良好な感度が得られ、高解像度で感度の良好な赤外線像を撮像することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子の断面図である。
【図2】Pb(ZrxTi1−x)O3の組成に対する焦電係数、比誘電率及び圧電特性を示す図である
【図3】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子を用いた赤外線撮像装置の要部の平面図である。
【図4】図3に示す赤外線撮像装置に用いる赤外線検出素子の一例の断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子の第1の変形例の断面図である。
【図6】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子の第2の変形例の斜視図である。
【図7】A〜Fは図6に示す赤外線検出素子の製造方法の一例を示す製造工程図である。
【図8】図6に示す赤外線検出素子を用いた赤外線撮像装置の斜視図である。
【図9】図6に示す赤外線検出素子の一例の断面図である。
【図10】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子の第3の変形例の断面図である。
【図11】本発明の一実施形態に係る赤外線検出素子の第4の変形例の断面図である。
【図12】本発明の一実施形態に係る赤外線撮像装置の構成図である。
【図13】本発明の一実施形態に係る赤外線撮像装置の第1の変形例の構成図である。
【図14】Pb(Zr0.6Ti0.4)O3における温度と焦電係数との関係を示す図である。
【図15】Aは本発明の実施例による出力波形を示す図であり、Bは比較例による出力波形を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明を実施するための最良の形態(以下実施形態とする)の赤外線検出素子及び赤外線撮像装置の例を説明する。ただし、本発明は以下に示す例に限定されるものではない。例えば、以下の例では赤外線検出素子を2次元状に配列した撮像装置を例に挙げ説明するが、これに限定されず、赤外線検出素子を1次元状、または3次元状に積層する場合も含むものである。説明は下記の順序で行う。
1.赤外線検出素子の実施形態
(1)赤外線検出素子の基本構成
(2)赤外線検出素子の第1の変形例(基板との間に中間層を設ける構成)
(3)赤外線検出素子の第2の変形例(空間部を設ける構成)
(4)赤外線検出素子の第3の変形例(電極を2層とする構成)
(5)赤外線検出素子の第4の変形例(赤外線吸収膜を設ける構成)
2.赤外線撮像装置の実施形態
(1)赤外線撮像装置の基本構成
(2)赤外線撮像装置の第1の変形例(温度制御部を設ける構成)
3.具体例
【0017】
[1.赤外線検出素子の実施形態]
(1)赤外線検出素子の基本構成
図1は本発明の実施形態に係る焦電型の赤外線検出素子の基本構成を示す断面図である。図1に示す赤外線検出素子10は、基板11と、支持電気絶縁層12と、第1の電極14と、焦電層15と、第2の電極16とがこの順に積層されて構成される。基板11は例えばSiウェハ等が好適であるが、これに限定されるものではなく、その他MgO単結晶基板等、焦電層15の持つ焦電特性に影響を与えない材料であれば利用可能である。また、支持電気絶縁層12の材料は、熱伝導率の低い絶縁性材料、例えばSiO2等が利用可能であり、熱酸化、CVD(化学気相成長)等により形成される。この支持電気絶縁層12の材料は、基板11の材料より熱伝導性の低い材料であることが好ましい。熱伝導性の低い材料とすることによって、この上に形成される焦電層15の熱を逃がしにくく、感度の低下を抑えることができる。また、第1の電極14は、この上に形成される焦電層15の結晶配向性を良好にするために、少なくとも第1の電極14の最表面層には結晶配向性を有する導電性材料を用いることが好ましい。このような材料としては例えばPtが好適である。また、第2の電極16の材料は、導電性で赤外線反射率が低く、また蓄熱性の低い材料であることが好ましく、Cr、Pt等を用いることができる。第1及び第2の電極14及び16はスパッタ等により形成される。
【0018】
そして、本発明の実施形態に係る赤外線検出素子10は、その受光面積を1×102μm2以上1×104μm2以下として構成する。すなわち、1つの素子に設ける焦電層15の表面積のうち、受光領域となる部分の面積を、1×102μm2以上1×104μm2以下として構成する。このような微小な受光面積とする赤外線検出素子10は、例えば一方向に数十個から数百個程度配列したものを2次元状に配置し、全体として数百〜数十万個程度設けることができる。そして、多画素化することにより従来と比べて格段に解像度を高くすることができるので、人感センサ等の単なる赤外線の有無の検出のみではなく、より明確な赤外線像を撮像することが可能となる。特に、被検出物の大きさに加え形状の違いを判別することも可能となるので、人の検知装置の他、製造ラインの計測・制御や医療・診断装置等、種々の分野での応用が可能となる。
【0019】
また、焦電層15の膜厚は0.8μm以上10μm以下とする。従来方法で焦電型の赤外線検出素子を製造する場合、一辺1mm程度のバルク焦電材料から膜厚100μm程度の焦電薄膜を切り出して赤外線検出素子に利用している。このようにバルク材料から切り出す場合と比べると、本実施形態に用いる焦電層15は10分の1以下と非常に薄い。上述したように一つの赤外線検出素子10を一画素に対応させて、これを数百〜数十万画素配列する場合、従来のようにバルク材から切り出して形成した素子を、その形状を均一化して精度よく配列することは困難である。このため、スパッタやCVD等の成膜プロセスによる製造方法を採ることが好ましい。成膜プロセスによって焦電層15を形成する場合、厚さが10μmを超えると、結晶配向性が乱れるうえ、その成膜に時間がかかり過ぎ、コストの増大に繋がる。このため、焦電層15の厚さは10μm以下とする。また、焦電層15の厚さを0.8μm未満とすると十分な焦電特性が得られず、すなわち赤外線検出時の電荷発生の効率が低下する。このため、焦電層15の膜厚は0.8μm以上とする。
【0020】
そして焦電層15の材料は、下記の組成式(1)
Pb(ZrxTi1−x)O3・・・(1)
で表される化合物(チタン酸ジルコン酸鉛、PZT)において、xの範囲を0.57<x<0.93とする化合物を主成分とする材料とする。一般的に、赤外線検出素子10が小型になればなるほど、S/N比が低下するため、焦電特性を高くすることが求められる。この焦電特性の性能は以下の式(2)で表すことができる。
【0021】
F=λ/(εC)・・・(2)
(ただし、F:焦電性能指数、λ:焦電係数、ε:比誘電率、C:比熱)
【0022】
ここで、焦電特性を向上させるためには、焦電係数λを大きくし、かつ比誘電率εを小さくする必要がある。図2に、Pb(ZrxTi1−x)O3で表される化合物におけるPbZrO3の組成モル比xを0から1まで変化させたときの、焦電係数λ、比誘電率C及び圧電特性の変化を示す。なお、図2においては、上記化合物の厚さを3μm、面積を200μm2として1画素分形成し、温度40℃の条件下における場合を示す。なお、比誘電率は、(株)東陽テクニカ製FCEシリーズの強誘電体ヒステリシス評価装置を用いて発生電荷を測定後、下記式(3)により演算して求めた。
εr=tC/(ε0S)・・・(3)
上記式(3)中、tはPZTの膜厚、ε0は真空の誘電率、Sは受光面積、Cは測定した発生電荷である。焦電特性は恒温槽にて、また圧電特性はフォースゲージ、変位計を用いてそれぞれ測定した。
【0023】
図2からわかるように、組成モル比xが0.52<x<0.95の範囲で焦電係数λが高い傾向があり、比誘電率εは0.55<xで低くなる傾向がある。またノイズ成分となってしまう圧電特性も、0.55<xで低くなる傾向がある。圧電特性が十分低くないと、焦電層15に歪みによる圧電効果が生じてしまい、焦電出力に対して無視できないノイズ成分となってしまう。特に焦電層15の受光面積を上述したように1×104μm2以下とする場合、発生する電荷量に対する圧電歪みの影響が相対的に大きく、すなわち歪みストレスに弱いため、圧電特性の小さい組成範囲とすることが必要となる。また、0.95<xの範囲では反強誘電体(anti-ferroelectric)になってしまうので、焦電性能が急激に不安定になることが分った。
【0024】
以上の結果から、本実施形態に係る赤外線検出素子10の焦電層15は、上記式(1)における組成モル比xを0.57<x<0.93とする化合物を用いるとよいことが分る。このような組成とすることで、歪みストレスに弱い小型化された赤外線検出素子10であるにも係わらず、圧電ノイズが低減化されて、高い焦電出力が得られる。
【0025】
なお、図2の結果はPb(ZrxTi1−x)O3の表面積(受光面積)を200μm2、厚さを3μmとする場合の結果であるが、この傾向は、圧電特性においてより厳しい条件となる、受光面積が1×102μm2、厚さが0.8μmの場合も同様であった。また、受光面積を1×104μm、厚さを10μmとする場合においては、上記組成範囲で焦電係数λを十分大きく、また比誘電率εを小さく、且つ、圧電特性もより小さくなる。このため、本発明においては、焦電層15の受光面積を1×102μm2以上1×104μm2以下とし、厚さを0.8〜10μmとする場合に、上記組成モル比xを0.57<x<0.93とするものである。
【0026】
更に、焦電層15の材料のキューリー点は自発分極に影響を及ぼすため、使用環境の温度範囲についても考慮することがより好ましい。上記式(1)で示す化合物では、Zrの割合が多くなるとキューリー点が徐々に下がる傾向がある。つまり、Zrの割合を多くし過ぎると、キューリー点が低くなってしまい、突発的な温度上昇の際にキューリー点を超えてしまう恐れがある。このため、使用環境の温度範囲における最上限の摂氏温度に対して、キューリー点摂氏温度が2倍以上のマージンを有するように、組成を選定することが好ましい。例えば使用環境温度範囲が−15℃以上80℃の場合は、上記式(1)における組成モル比xを0.57<x<0.81とする化合物を主成分とすることが好ましい。この範囲とする場合は、キューリー点のマージンを2倍以上確保することができるので、焦電出力が高く、圧電ノイズが低く、かつ温度信頼性を確保した焦電型の赤外線検出素子10を得ることができる。
【0027】
また更に、焦電層15の材料の上記式(1)における組成モル比xを0.57<x<0.76の範囲とする場合は、キューリー点のマージンをより多く確保することができる。この結果、実使用環境温度、すなわち−15℃以上80℃以下の温度範囲において、温度制御を必要とせずに安定した高効率の焦電特性が得られる。
【0028】
なお、焦電層15の材料としては、上記化合物に対して微量の添加物や不純物が混入されていてもよい。例えば、La、Sr、Ba、Cdなどは添加(混入)可能であり、添加量の上限は10%以下とすることが好ましい。このような材料及び添加量の添加物や不純物が微量混入していても、焦電特性への影響が低く、焦電特性が十分得られ、また圧電ノイズが十分低く抑えられる範囲であれば、同様に、小型化による圧電ノイズを抑え、高い感度を得ることができる。また、添加条件により焦電特性の向上を図ることが可能である。
【0029】
図3は、図1に示す例と同様の構成の赤外線検出素子10(10a1,10a2、・・・10b1、・・・10c1、・・・10mn)をm×n行にアレイ状に配列し、m×n個に多画素化した赤外線撮像装置100の概略平面図である。また、図4は各赤外線検出素子10a1(10a2、・・・10mn)の断面構成図である。この例では、図1に示す例と同様に基板11上に支持電気絶縁層12と、第1の電極14、焦電層15及び第2の電極16がこの順に形成される。そして、第1の電極14は、一端が基板11側の、例えば支持電気絶縁層12の側面上に延在し、更に基板11と支持電気絶縁層12との間の一部の領域に形成される端子導出部14aに接続される構成とする。また、第1の電極14が延在する側とは離間する他端において、第2の電極16も同様に基板11側に延在し、基板11と支持電気絶縁層12との間で、端子導出部14aと異なる位置に形成される端子導出部16aに接続される。端子導出部14a及び16aは、例えば一方が接地され、他方が後述する電荷制御部における図示しない電圧変換器やスイッチング回路等に接続されて、各焦電層15の表面に発生した電荷が信号として取り出される。
【0030】
なお、第2の電極16の延在する部分では、第1の電極14及び焦電層15の側面と、第2の電極16の延在部との間に、例えば支持電気絶縁層と同材料より成る絶縁層12aを形成してもよい。また、図示しないが犠牲層成膜及びエッチング除去等によって、第1の電極14及び焦電層15の側面と、第2の電極16の延在部との間に空間部を設ける構成としてもよい。また、図4においては各素子間をRIE(異方性エッチング)等により分離して、空間部を設ける例を示すが、素子間に例えば支持電気絶縁層12と同様の材料や、その他熱伝導率が低く絶縁性の材料より成る素子分離層が形成されていてもよい。また、支持電気絶縁層12は、複数の赤外線検出素子10に跨って共通に設けられていてもよい。このように、赤外線検出素子10の間に絶縁層等が形成される場合は、赤外線検出素子10の振動を抑え、また機械的強度を高めることが可能である。
【0031】
上述したように、各赤外線検出素子10(10a1、・・・10mn)の受光面積を1×102μm2以上1×104μm2以下と小型化しているので、数万程度の2次元アレイ状としても装置全体のサイズの小型化を図ることができる。なお、図3に示す例においては2次元状に赤外線検出素子10を配列した構成であるが、一列に配列した1次元アレイ状とすることもできる。このように1次元アレイ状とする場合でも、装置の最長部分のサイズの小型化を図ることができる。また焦電層15は単層構成に限定されず、2層以上とし、空間部等を介した積層構成としてもよい。この場合は受光面積に対する赤外線吸収率を高めることができ、より高い出力を良好なS/N比で得ることが可能となる。
【0032】
(2)赤外線検出素子の第1の変形例(基板との間に中間層を設ける構成)
図5は、本発明の実施形態の第1の変形例による赤外線検出素子20の概略構成を示す断面図である。この赤外線検出素子20においては、基板21上に、支持電気絶縁層22、中間層23、第1の電極24、焦電層25及び第2の電極26がこの順に成膜されて構成される。中間層23としては、熱伝導性が低く、また結晶配向性に有利な材料を用いることが好ましい。このような機能を有する層としては、CVDまたはスパッタ法によって形成されたMgO層を用いることができる。すなわち、MgOより成る中間層23を第1の電極24の直下に配することによって、第1の電極24の上に成膜される焦電層25は、その結晶配向性が揃うように成膜されるため、高い焦電特性が得られる。また、MgOは電極材料より熱伝導性が低いので、焦電層25の熱を逃がしにくく、焦電特性を保持して高い感度を得ることができる。なお、中間層23の材料はMgO以外でも、熱伝導性が低く、焦電層25の結晶配向性が良好となる材料以外であれば利用可能である。
【0033】
その他、基板21、支持電気絶縁層22、第1の電極24、焦電層25及び第2の電極26の材料及び各層の成膜方法は、図1に示す例と同様とすることができる。また、焦電層35の受光面積、膜厚及び組成を図1に示す例と同様とすることで、小型化による多画素化にあたって、焦電特性が十分得られると共に、圧電ノイズを抑えることができる。そしてこの赤外線検出素子20を数千〜数万個程度配列することで、解像度の高い赤外線像を撮像することが可能となる。
【0034】
なお、第1の電極24の材料をPtとする場合、第1の電極24の膜厚を、MgOより成る中間層23の膜厚よりも薄くすることで、以下の効果が得られる。Ptの熱伝導率は約7.1×10W・m−1・K−1であり、MgOの熱伝導率は約5.9×10W・m−1・K−1である。したがって、焦電層25と支持電気絶縁層22との間を全てPtより成る第1の電極24とするよりもMgOより成る中間層23を設ける方が、焦電層25から熱を逃がしにくい。特に中間層23の厚さを第1の電極24より十分大とすることで、熱伝導を抑える効果を高め、焦電特性を保持して高い感度を得ることができる。中間層23の厚さとしては、第1の電極24の2倍以上であれば十分熱伝導を抑える効果が得られ、具体的には50nm以上とすることが好ましい。一方、厚すぎると成膜に時間がかかり過ぎてしまうため、200nm以下とすることが好ましい。これにより、焦電特性の低下を抑制することができ、また、Ptに比べMgOの方が安い材料であることから、コストの低減化を図ることもできる。
【0035】
(3)赤外線検出素子の第2の変形例(空間部を設ける構成)
次に、図6を参照して本発明の実施の形態の第2の変形例による赤外線検出素子30の概略構成を説明する。図6に示すように、この赤外線検出素子30は、基板31上に、支持電気絶縁層32、第1の電極34、焦電層35、第2の電極36がこの順に形成されて成る。基板31、第1の電極34及び第2の電極36の材料及び各層の成膜方法は、図1及び図5に示す例と同様とし得る。また、焦電層35の受光面積、厚さ及び材を図1及び図5に示す例と同様とすることで、小型化による多画素化にあたって、焦電特性が十分得られると共に、圧電ノイズを抑えることができる。
【0036】
一方、支持電気絶縁層32は、平面四角形状とされる第1の電極34の四隅の直下に例えば角柱状に形成され、各支持電気絶縁層32の間はいわば平面十字形状の空間部39として構成される。即ちこの場合、基板31と焦電層35直下の第1の電極34との間に空間部39を有する中空構造とするものである。このように中空構造とすることによって、焦電層35から支持電気絶縁層32を通じて基板31へ熱が伝わりにくくなるため熱絶縁性を高めることができる。そして、熱的な影響を抑えることで焦電特性を損なうことなく高い感度を得ることができる。すなわち、焦電層35の受光面積、厚さ及び材料を上述の構成とすることと相まって、より感度に優れ、解像度の高い赤外線像を撮像することが可能となる。
【0037】
図7A〜Fは、図6に示す赤外線検出素子30の製造方法の一例を示す製造工程図である。先ず、図7Aに示すように、Si等より成る基板31上に、SiO2、LP−TEOS(Low Pressure TEOS;TEOSはSi(OC2H5)4の略称)等より成る絶縁層132をCVD等により全面的に成膜する。次に、図7Bに示すように、RIE等により、図6に示す空間部39となる領域の絶縁層132を除去し、例えば図6に示すような角柱状等の支持電気絶縁層32を形成する。支持電気絶縁層32の形状は角柱状に限定されず、その他円柱状や、平面多角形の柱状等、また不均一な形状など適宜選定可能である。次いで、図7Cに示すように、この柱状の支持電気絶縁層32上を含んで全面的にCVD等によって犠牲層38を成膜する。犠牲層38の材料としては、支持電気絶縁層32の材料とエッチング選択性を有していればよく、例えばpoly−Si等を利用できる。なお、犠牲層38の成膜後に適宜加熱処理を行ってもよい。加熱により犠牲層38の膜質が改善され、この犠牲層38上に第1の電極34を介して成膜する焦電層35の結晶配向性への影響を抑えることができる。
【0038】
次に、図7Dに示すように、CMP(化学機械研磨)等によって、犠牲層38と支持電気絶縁層32の上面をほぼ同一面とする平坦化処理を行う。そして図7Eに示すように、平坦化した犠牲層38及び支持電気絶縁層32の上に、Pt等より成る第1の電極34をスパッタ等により成膜する。続いて焦電層35をCVD等により成膜する。焦電層35の材料及び厚さは、図1等において説明した例と同様の材料、厚さとする。更にその上に、Pt等より成る第2の電極36を成膜する。次いで、図7Fに示すように、犠牲層38をフッ化キセノン等によりエッチング除去して、支持電気絶縁層32の間に空間部39を形成する。最後に、RIE等によって一画素分の支持電気絶縁層32、第1の電極34、焦電層35及び第2の電極36をパターニングし、例えば図6に示す平面四角形状のパターンとして赤外線検出素子を形成する。以上の工程により、図6に示す赤外線検出素子30を基板31上に複数個形成することができる。
【0039】
基板31上に複数の赤外線検出素子30を配列した例を図8に示す。図8においては2行×2列の計4個の素子のみを示すがこれに限定されるものではなく、数千〜数万個配列することが可能である。なお、図示の例では支柱となる支持電気絶縁層32は一画素毎に分離した場合を示すがこれに限定されるものではなく、複数の画素に跨って一つの柱状の支持電気絶縁層32を共通して設けてもよい。この場合は、支持電気絶縁層32の幅を大きくできるので、機械的強度を高めることができる。また、赤外線検出素子30の振動を抑えることもできる。
【0040】
なお、例えば図9に示すように、第1の電極34及び第2の電極36から、図4において説明した例と同様の延在部及び端子導出部34a、36aを設けてもよい。図9において、図6〜8と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。基板31への延在部は、例えば支持電気絶縁層32のいずれかの側面に接して配置すればよい。また、第2の電極36の端子導出部36aへの延在部と焦電層35、第1の電極34との間には、支持電気絶縁層32と同じ材料等より成る絶縁材料による延在部32aを設けてもよく、或いは犠牲層を利用して空間部を設けてもよい。この場合は、例えば前述の図7Aに示す工程の前に予め基板31上に端子導出部34a、36aを形成すればよい。また、図7Eに示す工程のうち第1の電極34を成膜した後、一旦この第1の電極34の延在部を形成し、その後、図7Fに示す工程に続いて、支持電気絶縁層32の延在部32aと第2の電極36の延在部を形成する工程を追加すればよい。
【0041】
このようにして形成した支持電気絶縁層32は、焦電層35の下部に配置され、いわば画素の直下に設けられて、画素を下から支える構造となる。このため、例えば特許3608298号公報や特許3763822号公報に記載されているような、赤外線検出素子の側面が突出したブリッジ構造とは異なり、素子全体の剛性が保持される。すなわち、上記公報に記載のブリッジ構造では、横方向から赤外線検出素子の側面にブリッジが接続され、このブリッジで赤外線検出素子全体を支える構造であり、素子の直下には支持部を設けていない。このため、振動等の影響によって赤外線検出素子全体が撓みやすい。赤外線検出素子全体が撓んでしまうと、焦電層において歪み応力による圧電出力ノイズが発生してしまう。したがって、焦電型の赤外線検出素子には、このようなブリッジ構造を採る場合、S/N比を高めることが難しい。
【0042】
これに対し、図6に示すように、赤外線検出素子30の下面に複数の支持電気絶縁層32を設ける場合は、剛性が保持されるので撓みが生じにくくなり、すなわち赤外線検出素子30の振動自体を抑えることができる。このため、焦電層35における歪み応力による圧電出力ノイズを抑えることができ、S/N比の向上を図ることができる。
【0043】
更にこのように柱状の支持電気絶縁層32を下部のみに設ける場合は、ブリッジ構造とする場合と異なり、周辺に設ける支持構造及びブリッジ構造に要する面積を省略できる。このため、赤外線を受光する有効画素面積を実質的に増やすことができ、同じ基板面積内で得られる出力を高めることができるという利点を有する。
【0044】
また、焦電型の赤外線検出素子においてブリッジ構造を採用すると、分極状態を得るための加熱によって素子全体が変形する場合があり、多数の赤外線検出素子を配列する場合は、素子にばらつきが生じて不良品発生率が大きくなるという問題がある。焦電材料に対して分極状態を得るための加熱処理は、通常100℃から250℃で、5分から30分程度行われる。なお、Pb(ZrxTi1−x)O3以外の焦電材料を用いる場合も同様の加熱処理が必要である。したがって、上記特許3608298号公報等に記載されているようなブリッジ構造を焦電型の赤外線検出素子にそのまま適用すると、この加熱によってブリッジ構造が変形し、素子全体が傾いて、すなわち受光領域が傾斜する恐れがある。赤外線検出素子を多数配列する場合、一部の受光領域が傾斜すると、隣接する画素同士で入射光の入射角度がばらつくこととなり、いわば実効的な受光面積が不均一となって、精度良く赤外線像を得ることができなくなってしまう。
【0045】
これに対し、図6に示すように、支持電気絶縁層32を支柱構造として焦電層35の直下に配置することで、このような分極状態を得るための加熱による変形を抑制ないしは回避することができる。したがって、数千から数万画素分の赤外線検出素子30を配置する場合であっても、焦電特性の均一化を図り、不良品発生率を抑え、赤外線撮像装置の生産性を高めることが可能となる。
【0046】
支持電気絶縁層32の好ましい形状及び配置を例示すると、例えば焦電層35の厚さが3μm、受光面積(表面積)が300μm2程度の場合、支柱となる支持電気絶縁層32を幅3μmの断面正方形の角柱状とし得る。焦電層35の平面形状を四角形として、このような柱状の支持電気絶縁層32をその四隅の直下に設けることで、振動等による歪みを十分抑え、圧電出力を無視できる程度に抑制することができる。なお、支持電気絶縁層32の第1の電極34と接する面積の受光面積に対する比率を大きくすると、支持電気絶縁層32の熱伝導により焦電特性が低下し、比率が小さすぎると、歪み抑制による圧電特性の低下の効果が十分でなくなる。検討の結果、焦電層35の受光面積を1×102〜1×104μm2とし、膜厚を0.8〜10μmとする場合は、この比率を0.1以上0.4以下とすることで、焦電特性を十分確保し、且つ、圧電特性によるノイズを抑えることができることが分った。
【0047】
なお、支柱となる支持電気絶縁層32の平面形状や配置位置は、受光面積に関係なく適宜選定することができる。このため、比較的受光面積が広く撓みが生じやすい場合は、例えば受光領域の中央部においても支持電気絶縁層32を配置して、振動をより抑える構成としてもよい。
【0048】
なお、この例においても支持電気絶縁層32として図5で示したような中間層23を含めてもよい。例えばSiO2等の支持電気絶縁層32の下部にMgOより成る中間層(図示せず)を基板31との間に介在させることで、熱絶縁性を高め、またこの上に形成する焦電層35の結晶配向性を良好にすることができる。これにより、更に焦電特性の向上を図り、感度を高めることが可能となる。
【0049】
(4)赤外線検出素子の第3の変形例(電極を2層とする構成)
次に、図10を参照して第3の変形例による赤外線検出素子40について説明する。図10に示すように、この場合、基板41上に支持電気絶縁層42、第1の電極44、焦電層45及び第2の電極46がこの順に形成されて成る。基板41、支持電気絶縁層42、第2の電極46の材料は図1等に示す例と同様とし得る。また、焦電層45の材料、厚さ及び受光面積も、図1等に示す例と同様とすることで、小型化による多画素化にあたって焦電特性が十分得られると共に、圧電ノイズを抑えることができる。この赤外線検出素子40を数千〜数万個程度配列することで、解像度の高い赤外線像を撮像することが可能となる。
【0050】
そしてこの場合、第1の電極44として、例えばTi又はTiO2等の下地層44aとPt層44bがこの順に成膜された2層構成とする。支持電気絶縁層42としてSi系の材料を用いる場合、この上に直接的にPt層44bを成膜すると良好な接合性を得ることが難しい。これに対し、Pt44bと支持電気絶縁層42との間に、Ti又はTiO2等の下地層44aをスパッタ等により成膜して介在させることで、接合性を改善することができる。なお、図5に示す例のように、支持電気絶縁層22と第1の電極24との間にMgO等の中間層23を設ける場合においても、同様に、第1の電極24にTi又はTiO2等の下地層を設けてもよく、接合性を改善することが可能である。
【0051】
また、図6に示すように中空構造とする場合においても、このように第1の電極34を2層構成としてもよい。いずれの場合においても、下地層44aの厚さを10nm以上200nm以下とすることで、下層の支持電気絶縁層42の表面の微小な段差を吸収することができる。このため、この上にPt層44bを介して形成する焦電層45の結晶配向性への影響を抑え、焦電特性の低下を抑制することができる。
【0052】
この第3の変形例によれば、第1の電極44の支持電気絶縁層42との接合性を良好にすることができるので、剥がれ等の不具合の発生を抑制し、多数の赤外線検出素子40を配列する場合に形状のばらつきを抑えることができる。このため、数千から数万画素分の赤外線検出素子40を配置する場合であっても、形状のばらつきによる焦電特性の不均一化を抑え、不良品発生率を抑制して、赤外線撮像装置の生産性を高めることができる。
【0053】
(5)赤外線検出素子の第4の変形例(赤外線吸収膜を設ける構成)
次に、図11を参照して第4の変形例による赤外線検出素子50について説明する。図11に示すように、この場合基板51上に、支持電気絶縁層52、第1の電極54、焦電層55及び第2の電極56がこの順に形成される。これら基板51、支持電気絶縁層52、第1及び第2の電極54及び56の材料及び形成方法は、図1等に示す例と同様とし得る。また、焦電層55の材料、厚さ及び受光面積を図1等に示す例と同様とすることで、圧電出力によるノイズを抑え、十分な焦電特性が得られ、高い感度で赤外線像を撮像することができる。そしてこの例では、第2の電極56上に赤外線吸収層57を設ける。赤外線吸収層57の材料としては、例えば表面放射率が60%以上、好ましくは75%以上、より好ましくは90%以上の材料を用いることが好ましい。表面放射率が60%以上の材料としては、例えば有機色素、有機溶剤可溶性染料、油溶染料、分散染料、スタティック染料、フォトクロミック染料、遠赤外線吸収樹脂組成物、遠赤外線吸収インキ、遠赤外線吸収塗料等が挙げられる。他に、シアニン色素アミニュウム塩タイプの化合物、金属錯体化合物、アントラキノン系化合物、フタロシアニン類、ナフタロシアニン等も利用可能である。このような赤外線吸収層57を設けることにより、赤外線の吸収効率が高まり、更に感度を高くすることができる。なお、このように赤外線吸収層57を設ける構成は、前述の図1、図4〜図10において説明した各例において適用可能であり、同様に感度をより高めることが可能となる。
【0054】
2.赤外線撮像装置の実施形態
(1)赤外線撮像装置の基本構成
次に、本発明の赤外線撮像装置の実施の形態について説明する。図12は、この赤外線撮像装置200の基本構成を示す概略構成図である。この赤外線撮像装置200は、前述した実施形態の各例を含む本発明構成の赤外線検出素子70と、この赤外線検出素子70に外部の赤外光を集光する集光部71とを備える。また、赤外線検出素子70への赤外線照射によって得られる電荷の出力を制御し、すなわち電荷の蓄積、放電等を制御する電荷制御部72、赤外線検出素子70からの出力を信号に変換して赤外線像による映像(画像)信号を得る信号処理回路73を備える。
【0055】
集光部71は、撮像対象からの赤外線等を集光し、結像させるものであれば、特に限定されない。1枚のレンズであってもよいし、2枚以上のレンズを含むレンズ群であってもよく、また一画素や複数の画素に対応するマイクロレンズが配列されたレンズアレイを含んで構成してもよい。赤外線集光用のレンズ材料としてはGeレンズやSiレンズ等が挙げられる。
【0056】
集光部71によって集光された赤外線は、赤外線検出素子70において受光されるが、撮像対象が停止していると受光量の変化による温度変化が生じず、電荷が発生しなくなってしまい、画像が取得できない。このため、赤外線検出素子70と撮像対象との間に、入射する赤外線を周期的に制御するチョッパーを設けてもよい。そして電荷制御部72の制御によって、図示しない駆動回路によりチョッパーを駆動することで赤外線を変調し、特定の角周波数の赤外線を赤外線検出素子70に入射させる。これにより、撮像対象が停止している場合でも、得られる赤外線量に対応して温度変化が生じ、画像に応じた電荷を発生させて映像信号(画像信号)を得ることができる。チョッパーとしては、例えば機械的に開閉するシャッター機構や、液晶シャッターのように赤外線の透過領域と遮断領域とを電気的に制御する機構等が利用できる。
【0057】
なお、チョッパー(シャッター)の駆動周期は撮像系のフレームレートに対応する。30fpsであれば30Hzで動作させることが基本であるが、60、120、240Hzのように2倍速、4倍速、8倍速でシャッターを動作させてもよい。このようにして平均化した出力をフレームレート毎に出せば、突発的なノイズが平均化されてキャンセルされ、安定した出力データを得ることが可能である。また、昨今のTVの高倍速フレームレートにも対応可能である。なお、移動体に設ける場合等、静止した撮像対象の検出を除外できる場合は、チョッパーを設けずに直接赤外線検出を行う構成とすることも可能である。
【0058】
このようにして撮像対象の画像に対応して発生した電荷は、電荷制御部72に設けられるスタートパルスやクロックパルス等のタイミングジェネレータにより、チョッパーと同期して画素毎に順次制御されて信号処理回路73に出力される。
【0059】
信号処理回路73は、電荷電圧変換回路、ノイズ補正回路、アナログデジタル変換回路等を有し、赤外線検出素子70からの出力信号に対して例えば相関二重サンプリング等の信号処理が行われる。映像信号は、図示しないが必要に応じてメモリ等の記録媒体に記録され、また液晶ディスプレイ等のモニターに表示される。
【0060】
上述したように、本発明の赤外線撮像装置200に用いる赤外線検出素子70は、焦電層の受光面積を1×102μm2以上1×104μm2以下、膜厚を0.8μm以上10μm以下、材料及び組成を上記式(1)において0.57<x<0.93とする。これにより、数千から数万画素に配列することが可能であり、また小型で薄膜であるにも拘らず、十分な焦電特性が得られ、且つ圧電ノイズを抑えて良好なS/N比をもって電荷を発生させることができる。これにより、高感度で高解像の赤外線像による映像信号を得ることができる。
【0061】
(2)赤外線撮像装置の第1の変形例(温度制御部を設ける構成)
次に、図13を参照して第1の変形例による赤外線撮像装置300について説明する。図13に示す例では、図12に示す赤外線撮像装置200に対して、赤外線検出素子70の温度を制御する温度制御部74を追加して設けるものである。図13において、図12と対応する部分には同一符号を付して重複説明を省略する。
【0062】
上記式(1)に示す組成で形成した焦電層15(25,35・・)を構成する化合物はペロブスカイト構造の結晶構造である。このため、温度を制御することで、結晶相は強誘電性菱面体晶相(Ferroelectric Rhombohedral)の低温相と高温相との境界近傍付近で相転移が行われる。この相転移温度付近においては焦電特性を更に上げることが可能となり、より感度が高くなる。したがって、焦電層15の温度をこの相転位温度近傍に制御することによって確実に焦電特性を確保し、また圧電ノイズを十分に抑制することができ、高い感度を有する性能の優れた赤外線撮像装置が得られる。
【0063】
図14は、上記式(1)において組成モル比xを0.4とした場合の温度に対する焦電係数の変化を示す図である。この組成比とする場合は、温度40℃で相転位が行われ、焦電係数が最大値となることが分る。すなわちこの場合は、赤外線検出素子70の温度が40℃近傍となるように冷却、又は加温すればよいことがわかる。例えば赤外線撮像装置300の機器内温度最大値が80℃である場合、−40℃の冷却機能を備える水冷、空冷機構等の温度制御部74を設けることにより、焦電係数を最大値に近づけて、より高い焦電特性を得ることが可能である。逆に、機器内温度と、温度制御部74の機能及びコスト等を考慮して、赤外線検出素子70内の焦電層15(25,25・・・)の組成を選定してもよい。この場合は、高価な冷却機構を用いることなく、焦電特性を最大限とすることができる。このように、赤外線検出素子70の焦電層15(25,35・・)に対応して適切な温度制御部74を設けることよって、焦電特性を十分に確保し、また圧電ノイズを抑制して、高感度で高解像の赤外線像による映像信号を得ることが可能となる。
【0064】
3.具体例
次に、本発明の実施例による赤外線検出素子と、比較例による赤外線検出素子における出力例を説明する。各例共に、図1、図3及び図4に示す構成の赤外線検出素子10を、図12に示す赤外線撮像装置200に設けた場合の出力波形図である。この赤外線検出素子10における焦電層15の上記式(1)中の組成モル比xは0.6である。また焦電層15の受光面積は200μm2、厚さは3μmである。また、比較例による赤外線検出素子の焦電層の式(1)中の組成モル比xは0.4であり、受光面積及び膜厚は実施例と同様とした。実施例及び比較例共に、40℃に設定したペルチェ素子を検出対象の熱源として用いた。図15Aは実施例による赤外線撮像装置における一画素の波形、図15Bは比較例における一画素の波形をそれぞれ示す。図15から、本発明構成による赤外線検出素子を用いた赤外線撮像装置においては、S/N比の高い出力信号が得られることが分る。これに対し、比較例においては、ノイズ出力が高く、良好なS/N比が得られないことが明らかである。
【0065】
なお、以上説明した本発明の実施形態においては、組成Pb(ZrxTi1−x)O3(ただし、0.57<x<0.93)とする化合物を赤外線検出素子の焦電層に用いる。これに対し、ZrをBa、Cd、Sr、Snに置き換えた化合物を用いる場合においても、同様に適切なxの範囲を選定することで、同様に圧電出力を抑えて十分な焦電特性を得て、高感度、高解像の赤外線像が得られることが分る。
【符号の説明】
【0066】
10,20,30,40,50,70・・・赤外線検出素子、11,21,31,41,51・・・基板、12,22,32,42,52・・・支持電気絶縁層、12a・・・絶縁層、14a,16a・・・端子導出部、23・・・中間層、14,24,34,44,54・・・第1の電極、15,25,35,45,55・・・焦電層、16,26,36,46,56・・・第2の電極、38・・・犠牲層、39・・・空間部、44a・・・Pt層、44b・・・Ti層、71・・・集光レンズ、72・・・電荷制御部、73・・・信号処理回路、74・・・温度制御部、100,130,200,300・・・赤外線撮像装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成される支持電気絶縁層と、
前記支持電気絶縁層上に形成され、第1の電極と、
前記第1の電極上に形成される焦電層と、
前記焦電層上に形成される第2の電極と、を備え、
前記焦電層は、
受光面積が1×102μm2以上1×104μm2以下であり、
膜厚が0.8μm以上10μm以下であり、
且つ、Pb(ZrxTi1−x)O3(但し0.57<x<0.93とする)で表される化合物を主成分とする
赤外線検出素子。
【請求項2】
前記支持電気絶縁層と前記第1の電極との間に、熱伝導率が前記第1の電極の材料より低い中間層が設けられる請求項1記載の赤外線検出素子。
【請求項3】
前記中間層が、化学気相成長法又はスパッタ法により形成されたMgOより成る請求項2記載の赤外線検出素子。
【請求項4】
前記中間層の膜厚が、前記第1の電極の膜厚より大である請求項2又は3に記載の赤外線検出素子。
【請求項5】
前記支持電気絶縁層が、複数の赤外線検出素子に対して共通に設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項6】
前記支持電気絶縁層の一部に空間部が形成される請求項1〜5のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項7】
前記焦電層の中央部の直下に前記空間部が形成される請求項6に記載の赤外線検出素子。
【請求項8】
前記第1の電極が少なくともPt層を含む請求項1〜7のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項9】
前記第1の電極は、Ti又はTiO2より成る下地層と、該下地層上に形成されるPt層からなる請求項8記載の赤外線検出素子。
【請求項10】
前記下地層の厚さが10nm以上200nm以下である請求項9記載の赤外線検出素子。
【請求項11】
前記第2の電極の上部に、赤外線吸収膜を有する請求項1〜10のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項12】
前記赤外線吸収膜は、表面放射率60%以上の有機材料から形成される請求項11記載の赤外線検出素子。
【請求項13】
複数の焦電型の赤外線検出素子と、前記赤外線検出素子に赤外線を集光する集光部と、前記赤外線検出素子において赤外線照射により得られる電荷の出力を制御する電荷制御部と、前記赤外線検出素子からの出力を信号に変換して赤外線像を得る信号処理回路と、を備え、
前記赤外線検出素子は、
基板と、
前記基板上に形成される支持電気絶縁層と、
前記支持電気絶縁層上に形成される第1の電極と、
前記第1の電極上に形成される焦電層と、
前記焦電層上に形成される第2の電極と、を備え、
前記焦電層は、
受光面積が1×102μm2以上1×104μm2以下であり、
膜厚が0.8μm以上10μm以下であり、
且つ、Pb(ZrxTi1−x)O3(但し0.57<x<0.93とする)で表される化合物を主成分とする
赤外線撮像装置。
【請求項14】
前記赤外線検出素子の温度を制御する温度制御部を備える請求項13記載の赤外線撮像装置。
【請求項15】
前記温度制御部により、前記焦電層の材料における強誘電性菱面体晶相(Ferroelectric Rhombohedral)の低温相と高温相の相転位温度近傍となるように温度制御する請求項14記載の赤外線撮像装置。
【請求項1】
基板と、
前記基板上に形成される支持電気絶縁層と、
前記支持電気絶縁層上に形成され、第1の電極と、
前記第1の電極上に形成される焦電層と、
前記焦電層上に形成される第2の電極と、を備え、
前記焦電層は、
受光面積が1×102μm2以上1×104μm2以下であり、
膜厚が0.8μm以上10μm以下であり、
且つ、Pb(ZrxTi1−x)O3(但し0.57<x<0.93とする)で表される化合物を主成分とする
赤外線検出素子。
【請求項2】
前記支持電気絶縁層と前記第1の電極との間に、熱伝導率が前記第1の電極の材料より低い中間層が設けられる請求項1記載の赤外線検出素子。
【請求項3】
前記中間層が、化学気相成長法又はスパッタ法により形成されたMgOより成る請求項2記載の赤外線検出素子。
【請求項4】
前記中間層の膜厚が、前記第1の電極の膜厚より大である請求項2又は3に記載の赤外線検出素子。
【請求項5】
前記支持電気絶縁層が、複数の赤外線検出素子に対して共通に設けられる請求項1〜4のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項6】
前記支持電気絶縁層の一部に空間部が形成される請求項1〜5のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項7】
前記焦電層の中央部の直下に前記空間部が形成される請求項6に記載の赤外線検出素子。
【請求項8】
前記第1の電極が少なくともPt層を含む請求項1〜7のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項9】
前記第1の電極は、Ti又はTiO2より成る下地層と、該下地層上に形成されるPt層からなる請求項8記載の赤外線検出素子。
【請求項10】
前記下地層の厚さが10nm以上200nm以下である請求項9記載の赤外線検出素子。
【請求項11】
前記第2の電極の上部に、赤外線吸収膜を有する請求項1〜10のいずれかに記載の赤外線検出素子。
【請求項12】
前記赤外線吸収膜は、表面放射率60%以上の有機材料から形成される請求項11記載の赤外線検出素子。
【請求項13】
複数の焦電型の赤外線検出素子と、前記赤外線検出素子に赤外線を集光する集光部と、前記赤外線検出素子において赤外線照射により得られる電荷の出力を制御する電荷制御部と、前記赤外線検出素子からの出力を信号に変換して赤外線像を得る信号処理回路と、を備え、
前記赤外線検出素子は、
基板と、
前記基板上に形成される支持電気絶縁層と、
前記支持電気絶縁層上に形成される第1の電極と、
前記第1の電極上に形成される焦電層と、
前記焦電層上に形成される第2の電極と、を備え、
前記焦電層は、
受光面積が1×102μm2以上1×104μm2以下であり、
膜厚が0.8μm以上10μm以下であり、
且つ、Pb(ZrxTi1−x)O3(但し0.57<x<0.93とする)で表される化合物を主成分とする
赤外線撮像装置。
【請求項14】
前記赤外線検出素子の温度を制御する温度制御部を備える請求項13記載の赤外線撮像装置。
【請求項15】
前記温度制御部により、前記焦電層の材料における強誘電性菱面体晶相(Ferroelectric Rhombohedral)の低温相と高温相の相転位温度近傍となるように温度制御する請求項14記載の赤外線撮像装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2011−232245(P2011−232245A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104289(P2010−104289)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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