説明

赤外線溶媒除去方法

溶液紡糸不織ウェブから化学的に結合した紡糸溶媒を除去するための方法であって、約1マイクロメートル未満の平均繊維径を有する溶媒を含んだ高分子繊維を含む不織ウェブを提供するステップと、赤外線放射が不織ウェブに照射されると共に溶媒除去流体が不織ウェブに衝突する溶媒除去ゾーンを通って不織ウェブを移動させ、繊維の溶媒濃度を約10,000ppmw未満まで低下させるステップとを含む方法。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
溶液紡糸繊維ウェブにおいて溶媒を含んだ繊維から溶媒を除去するための方法が開示される。
【0002】
溶液紡糸法は、所望のポリマーを適切な溶媒に溶解させ、そのポリマー/溶媒溶液から繊維を紡糸することを含む。多くの場合、溶媒は、そのように形成された布を使用する際に健康への悪影響や好ましくない臭気などの望ましくない特性を有する有機溶媒である。最終的な顧客へ出荷する前に製造の過程で繊維または布から不要な溶媒を除去することが望ましいであろう。
【0003】
溶液紡糸法は繊維および不織布を製造するために頻繁に使用されており、場合によっては高スループットという利点を有するので、商業的に実現可能な大量の繊維または布を製造することができる。残念ながら、大量の布を高スループットで紡糸ダイから溶液紡糸する場合、捕集された布または繊維中に著しい量の残留溶媒が取り込まれ得る。残留溶媒は放置する(布を無溶媒状態に置く)だけで蒸発できるのが理想的であるが、多くの場合、溶液紡糸法に使用される理想的な溶媒は、繊維ポリマーに対して高い化学的または物理的親和力を有する。場合によっては、繊維ポリマーは溶媒で膨潤する。すなわち、溶媒は繊維ポリマー内に「溶解される」。他の場合には、溶媒は、水素結合、ファンデルワールス力などによって、あるいは塩形成によりイオン的にも、繊維に化学結合する。
【0004】
さらに、典型的な不織布の紡糸方法では、布は紡糸されて、本質的に連続操作で大型ロールに巻き付けられるので、たとえ放置されているときに溶媒が蒸発されやすくても、ロール内の下側の布は大気に露出されないため、ロールの外側の布に取り込まれた溶媒だけが有効に蒸発される。有害であることに、たとえ布が広げられた状態で紡糸溶媒を蒸発させるのに十分な時間が与えられたとしても、広げられた布のための空間を提供するためには非常に長い領域が必要とされ、蒸発した溶媒の回収は難しく費用がかかるであろう。
【0005】
米国特許第3,503,134号明細書および米国特許第6,986,830号明細書に開示されるような製紙方法では、紙を形成するウェットレイドされたセルロース繊維の脱水は、ウェットレイドされたセルロースウェブに、真空補助された多孔性ドラム上を通過させることによって行われ、形成過程からの過剰の水はペーパーウェブから吸い出される。米国特許第3,503,134号明細書は、真空補助の乾燥効果を高めるために温風、過熱水蒸気または水蒸気−空気混合物の使用を開示している。米国特許第6,986,830号明細書は、ウェットレイドされた紙ウェブを2枚の柔軟な多孔性クロスウェブの間に配置することを開示しており、紙ウェブの両側の多孔性クロスが毛管作用により紙から付加的な水を吸引する。しかしながら、いずれの場合もウェットレイドされた紙ウェブからできるだけ多くの水を取り除くことは有利であるが、残留水は毒性がなく、最終製品中に存在しても健康に悪影響を及ぼさないであろう。
【0006】
米国特許出願公開第2002/0092423号明細書は、不織ポリマーウェブを形成するための溶液紡糸法、特に電界紡糸法を開示しており、帯電した回転エミッタから出て接地コレクタグリッドへ向けられるポリマー溶液から、高分子マイクロファイバーまたはナノ繊維が製造される。しかしながら、その出願人によれば、溶媒は、エミッタとコレクタグリッドとの間で「飛行中」の繊維から蒸発される。米国特許出願公開第2002/0092423号明細書に開示される電界紡糸法のスループットは比較的低く、約1.5ml/分/エミッタであり、従って、比較的軽い坪量のポリマーウェブを形成し得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1の実施形態では、本発明は、溶液紡糸不織ウェブから化学的に結合した紡糸溶媒を除去するための方法であり、約1マイクロメートル未満の平均繊維径を有する溶媒を含んだ高分子繊維を含む不織ウェブを提供するステップと、赤外線放射が不織ウェブに照射されると共に溶媒除去流体が不織ウェブに衝突する溶媒除去ゾーンを通って、不織ウェブ移動させ、繊維の溶媒濃度を約10,000ppmw未満まで低下させるステップとを含む。
【0008】
本明細書に組み込まれてその一部を構成する添付図面は現在考えられる本発明の実施形態を例示し、記述と一緒に本発明の原理を説明する役割を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に従ってナノ繊維ウェブを調製するための従来技術のエレクトロブローイング装置の概略図である。
【図2】本発明に従う赤外線溶媒除去ステーションの概略図である。
【図3】本発明に従う流体/真空溶媒除去ステーションの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、少なくとも1つのナノ繊維層を含むろ過媒体、エネルギー蓄積セパレータ(energy storage separatos)や防護服などの様々な顧客の最終用途のための溶媒紡糸ウェブおよび布と、溶液紡糸ナノ繊維ウェブまたは布から過剰な紡糸溶媒を取り除くための方法とに関する。
【0011】
種々の顧客の最終要求を満たすために様々な種類のポリマーから製造された繊維状製品が必要とされている。多くの高分子繊維およびウェブは、スパンボンディングおよびメルトブローイングなどの溶融紡糸法から形成することができる。しかしながら、溶融紡糸を用いることができるのは、溶融加工することが可能なポリマー、すなわち高温で軟化または溶融されて流動することができるポリマーからの繊維の紡糸に限られる。さらに、多くの最終用途では、溶融加工することができないポリマー、例えば熱硬化性ポリマーなどを用いて、繊維状の材料、布およびウェブを形成することが望ましい。これらの溶融加工することができないポリマーを繊維状材料に形成するためには、溶液紡糸技術が使用される。
【0012】
上述したように、湿式紡糸、乾式紡糸、フラッシュ紡糸、電界紡糸およびエレクトロブローイングなどの溶液紡糸法は、所望のポリマーを適切な溶媒に溶解し、ポリマー/溶媒溶液から繊維を紡糸することを含む。多くの場合、溶媒は、そのように形成された布を使用する際に健康への悪影響や好ましくない臭気などの望ましくない特性を有する有機溶媒である。最終的な顧客へ出荷する前に製造の過程で繊維または布から不要な溶媒を除去することが望ましいであろう。
【0013】
残念ながら、例えば約5グラム/平方メートル(gsm)よりも大きい坪量を有する不織ウェブを形成するために高スループットで大量の布を紡糸ダイから溶液紡糸する場合、そのように紡糸されたポリマーに対する溶媒の高い物理的または化学的親和力、そして紡糸溶媒を完全に蒸発させるために十分な繊維の形成と繊維の捕集との間の時間または空間の欠如のいずれかまたは両方のために、捕集された布または繊維中に著しい量の残留溶媒が取り込まれ得る。多くの場合、溶液紡糸法で使用される溶媒は種々のレベルの毒性を示すか、あるいは環境への悪影響を示すか、あるいは特定の最終用途で有害な化学反応を引き起こす。従って、溶液紡糸された繊維状材料からできるだけ多くの残留溶媒を取り除くことが好ましい。
【0014】
紡糸操作の間、溶媒中のポリマーの完全な溶解をもたらすために、ポリマーに対する溶媒の強い親和力に基づいて特定のポリマー/溶媒紡糸系が選択されるという事実によって、溶媒の除去は複雑であることが多い。場合によっては、繊維ポリマーは溶媒で膨潤する。すなわち、溶媒は繊維ポリマー内に「溶解される」。他の場合には、溶媒は、水素結合、ファンデルワールス力などによって、あるいは塩形成によりイオン的にも、繊維に化学結合する。
【0015】
乾式紡糸などのいくつかの従来技術の溶媒紡糸法では、高親和性溶媒の除去は、30フィートもの長さの熱ガス「煙突」内に繊維を紡糸し、高温ガス(500℃もの温度)を煙突に通して、不要な溶媒を追い出すことによって達成される。想像できるように、この方法は高価な装置を必要とし、エネルギー集約的な方法である。
【0016】
拡散液化メカニズムは1/直径2の関係に従うので、不要な溶媒の溶液紡糸繊維からの除去を高める1つの方法は、繊維自体の直径を小さくすることであると発見された。すなわち、取り込まれた溶媒は、大きい直径を有する繊維からよりも小さい直径を有する繊維から、より簡単に拡散し得る。本発明によると、溶液紡糸繊維は、溶媒除去の拡散液化メカニズムを最適化するために、約1マイクロメートル未満の直径を有すること(ナノ繊維)が好ましい。
【0017】
「ナノ繊維」という用語は、数十ナノメートルから数百ナノメートルまで様々であるが、通常は約1マイクロメートル未満、さらに約0.8マイクロメートル未満、そしてさらに約0.5マイクロメートル未満の直径を有する繊維を指す。
【0018】
本発明の溶液紡糸された布およびウェブは、少なくとも1つの高分子ナノ繊維層を含む。ナノ繊維は、約1μm未満、好ましくは約0.1μm〜約1μmの間の平均繊維径と、空気/液体ろ過媒体、電池セパレータ布、防護服などのための様々な商業的な最終用途を満たすのに十分に高い坪量とを有する。
【0019】
商業的な量および坪量のナノ繊維層の製造方法は、参照によって本明細書に援用される国際公開第2003/080905号パンフレット(米国特許出願第10/822,325号明細書)に開示されている。図1は、国際公開第2003/080905号パンフレットに記載されるようなエレクトロブローイング(または「エレクトロブローン紡糸」)を用いて本発明の方法を実行するために有用なエレクトロブローイング装置の概略図である。この従来技術のエレクトロブローイング法は、溶媒中のポリマーの溶液を混合チャンバ100から紡糸ビーム102を通って、高電圧が印加された紡糸ノズル104へ供給し、ノズルを出るときにブローイングガス流106内で圧縮ガスがポリマー溶液に向けられて、ナノ繊維を形成し、真空チャンバ114および送風機112により作り出される真空下でナノ繊維を接地コレクタ110上のウェブに捕集することを含む。
【0020】
移動捕集装置は、好ましくは、紡糸ビーム102とコレクタ110との間の静電場内に配置された移動捕集ベルトである。ナノ繊維層は捕集された後、紡糸ビームの下流側の巻き取りロールに向けられ、巻き付けられる。任意で、ナノ繊維ウェブは、スパンボンド不織布、メルトブローン不織布、ニードルパンチ不織布、織布、編布、開孔フィルム、紙、およびこれらの組み合わせなどの、移動捕集ベルト110上に配列された様々な多孔性スクリム材料のいずれかの上に付着させることができる。
【0021】
エレクトロブローイング装置の高いスループット(通常、約0.1〜5mL/孔/分の間)、および紡糸ビーム102に分散された多数の紡糸ノズル(孔)104のために、移動捕集装置の単一の通過で単一の紡糸ビームからナノ繊維を付着させることによって、乾燥ベース、すなわち残留溶媒が蒸発または除去された後に測定したときに約2g/m2〜約100g/m2の間、さらに約10g/m2〜約90g/m2の間、そしてさらに約20g/m2〜約70g/m2の間の坪量を有する単一のナノ繊維層を製造することができる。しかしながら、この方法の高スループット、およびエレクトロブローン繊維が捕集ベルト上に捕集される速度のために、著しい量の残留紡糸溶媒、特に繊維ポリマーに対して強い親和力を有する溶媒が、そのように形成されたナノ繊維ウェブ中に残存し得る。
【0022】
繊維径をさらに1マイクロメートル未満まで、またはさらに約0.8マイクロメートル未満まで、またはさらに約0.5マイクロメートル未満まで小さくするだけでは、真空補助された捕集のみによってナノ繊維ウェブから残留溶媒を低減または排除するためには不十分であることが発見された。
【0023】
従って、従来技術の装置(図1)の捕集ベルト110の下流側に配設される本発明の溶媒除去方法および装置(図2)は、布またはウェブを巻き取る前に不要な残留溶媒を溶液紡糸法から連続的に低減または排除する役割を果たす。
【0024】
赤外線溶媒除去装置は、溶媒紡糸ナノ繊維ウェブおよびその任意的な支持スクリム10を支持し、それを1つまたは複数の赤外線溶媒除去ステーション11を通るように方向付けるための任意的な連続移動ベルト14を含み、赤外線溶媒除去ステーション11のそれぞれは、赤外線放射源12と、新鮮なまたは溶媒含量の低い溶媒除去流体13とを含む。赤外線溶媒除去ステーション11は、溶媒紡糸ナノ繊維ウェブ面の片側また両側に配置することができる。図2は、溶媒紡糸ナノ繊維ウェブ面の両側の2つの赤外線溶媒除去ステーション11を示す。あるいは、ナノ繊維ウェブの片側に単一の赤外線溶媒除去ステーションを配置することができ、ナノ繊維ウェブは、ベルトの反対側の真空ステーション(図示せず)によって移動ベルト14に固定することができる。通常は空気である新鮮な溶媒除去流体13は、移動する溶液紡糸ウェブに衝突され、溶液紡糸ウェブから除去流体を吸引して溶媒の除去をもたらす。好ましくは、溶媒除去ゾーンの下流側に使用済み溶媒除去流体コレクタ(図示せず)が配設され、再生利用または廃棄するために使用済み除去流体から過剰な紡糸溶媒を取り除く。
【0025】
新鮮な溶媒除去流体は、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、炭化水素、ハロカーボン、ハロ炭化水素、およびこれらの混合物から選択されるガスでよく、除去すべき紡糸溶媒の蒸気を本質的に含まないので、紡糸溶媒の分圧は溶媒除去流体よりも溶液紡糸ウェブのポリマー繊維においてはるかに高く、溶媒を含んだポリマー繊維から溶媒除去流体中への残留除去溶媒の拡散を推進する。しかしながら、この分圧差も、繊維ポリマーに高い親和力を有する紡糸溶媒を、多くの顧客の用途に適した繊維の上または中の濃度レベルになるまで抽出するためには不十分である。
【0026】
新鮮な溶媒除去流体を、少なくとも約70℃の温度まで、ポリマーの融点(熱可塑性ポリマーの場合)もの高さまで、あるいはポリマーの分解温度(非熱可塑性ポリマーの場合)のすぐ下まで、ポリマーの溶融または分解を回避するために短時間で加熱すると、溶媒の除去速度を増大できることが発見された。
【0027】
赤外線放射と、「新鮮な」溶媒除去流体(すなわち、非常に低い紡糸溶媒の分圧を有するもの)との組み合わせを用いて、繊維ポリマーの上または中の溶媒濃度を約10,000ppmw未満、さらに1000ppmw未満、またはさらに約300ppmw未満にまで低下させることが可能である。
【0028】
本発明から恩恵を受けることができるポリマー/溶媒の組み合わせは、ポリマーが溶媒に対して強い親和力を示すもの、特にポリマーと溶媒の間に水素結合などの化学結合が起こるものである。分離することが困難であるポリマー/溶媒のいくつかの組み合わせは、ポリアミド/ギ酸およびポリビニルアルコール/水である。
【0029】
特定の紡糸溶媒の繊維ポリマーに対する親和力に応じて、残留溶媒濃度を多段階で低下させるように溶媒除去装置に複数の溶媒除去ステーションを組み込むことが有利であろう。追加の溶媒除去装置は、上記の赤外線溶媒除去装置または流体/真空溶媒除去ステーションのいずれかであり得る。
【0030】
流体/真空溶媒除去方法および装置(図3)は、従来技術の装置(図1)の捕集ベルト110の下流側に配設することができ、これは赤外線溶媒除去装置の前または後のいずれかに配設されて、布またはウェブを巻き取る前に不要な残留溶媒を溶液紡糸法から連続的に低減または排除する役割をさらに果たすことができる。
【0031】
流体/真空溶媒除去装置は、溶媒紡糸ナノ繊維ウェブおよびその任意的な支持スクリム10を支持し、それを1つまたは複数の溶媒除去ステーション20を通るように方向付けるための任意的な連続移動ベルト15を含み、溶媒除去ステーション20のそれぞれは、移動ベルト15の片側に配設された新鮮な溶媒除去流体の加熱装置16と、移動ベルト15の反対側に配設された真空装置18とを含む。通常は空気である溶媒除去流体17は、移動する溶液紡糸ウェブ上に衝突され、真空装置は溶液紡糸ウェブを通して除去流体を吸引するのに役立ち、溶媒の除去をもたらす。好ましくは、真空装置の下流側に使用済み溶媒除去流体のコレクタ(図示せず)が配設され、再生利用または廃棄するために使用済み除去流体から過剰な紡糸溶媒を取り除く。温度、真空圧力、そしてさらに新鮮な溶媒除去流体自体は、各溶媒除去ステーション内で個々に制御することができる。
【0032】
米国特許出願公開第2002/0092423号明細書に示されるように、当業者は、溶媒が紡糸ノズルとコレクタの間の空間内で室温において蒸発すると予期し得るので、紡糸溶媒をポリマーから分離するために必要な比較的高温は予期されないと考える。代わりに、紡糸溶媒の沸点よりも十分に高い温度をかけて、連続的な方法で、そして商業的に実現可能な時間内で、紡糸溶媒レベルを約1000ppmw未満まで低下させることが必要であることが分かった。
【実施例】
【0033】
以下の実施例は、エレクトロブローされていくらかの残留溶媒を含有する不織ウェブを形成する、99%純度のギ酸溶媒(フィンランド、ヘルシンキのKemira Oyjから入手可能)中に溶解されたナイロン6,6ポリマー、Zytel(登録商標)FE3218(デラウェア州ウィルミントンのE.I.du Pont de Nemours and Companyから入手可能)の24重量%の濃度を有するポリマー溶液から調製した。
【0034】
ナイロンの不織シート中の残留ギ酸含量は、標準的な湿式化学技術およびイオンクロマトグラフィ分析を用いて決定した。典型的な決定では、既知の質量のサンプルを苛性溶液に入れた。得られた溶液の一定量をイオンクロマトグラフィによって分析し、中和されたギ酸(ギ酸アニオン)に相当するピークの下の面積はサンプル中のギ酸の量に比例した。
【0035】
比較例A
比較例Aを上記のように調製したが、本発明の溶媒除去方法を受けなかった。レイダウンされたウェブの溶媒レベルは、不織ウェブの46.2重量%(462,000ppm)であった。
【0036】
比較例B
比較例Bは、レイダウンの後すぐに不織シートを捕集および分析するのではなく、移動する多孔性スクリーン上で不織ウェブを流体/真空溶媒除去ゾーン内に移動させた点を除いて、比較例Aのようにして調製した。不織ウェブの一方の側に真空を適用させながら、他方の側から90℃の温度の空気の溶媒除去流体を不織ウェブ上に衝突させた。真空は40mmH2Oで測定した。空気圧および真空を結合させて、溶媒除去ゾーン内にほぼ一定の大気圧をもたらした。不織ウェブを溶媒除去ゾーン内に30秒間保持した。最終溶媒レベルは不織ウェブの0.465重量%(4650ppm)であった。
【0037】
実施例1
実施例1は、さらに赤外線溶媒除去ゾーンを通って移動させた点を除いて、比較例Bと同様にして調製した。この追加のステップは、浮遊乾燥器を通ってウェブを移動させることにあった。乾燥器は、ウェブの上方および下方の2列の赤外線ヒーターでそれぞれが構成される3つのセクションからなる。使用した赤外線ヒーターは、GlenRoから入手可能な31.4kW、480ボルト、1相、中波長の定格のRadplane Series 80ヒーターであった。198℃の温度のホットエアをウェブの動きに逆行させてウェブの上方および下方に流した。約8秒の全残留時間に相当する18メートル/分の速度でウェブを乾燥器内に通した。オーブン内のシート温度は平均して181℃であると測定された。最終溶媒レベルは、不織ウェブの0.013重量%(130ppm)であった。
【0038】
比較例Aは、従来技術のエレクトロブローイング法の後にナノ繊維ウェブ内に取り込まれた除去溶媒のレベルを実証する。
【0039】
比較例Bは、流体/真空に基づいた溶媒除去ゾーンの効果を示しており、いくつかの商業用途に適したレベルまで残留溶媒が除去される。
【0040】
実施例1は、ウェブ温度が溶媒の沸点(ギ酸では101℃)を十分に超える赤外線に基づいた溶媒除去方法の効果を示しており、電界紡糸ウェブにおいて極めて低い残留溶媒レベルがもたらされる。
【0041】
この実施例は、本発明の赤外線に基づいた溶媒除去ゾーンが、実質的に紡糸溶媒を含まない溶液紡糸不織ウェブを調製できることを実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶液紡糸不織ウェブから化学的に結合した紡糸溶媒を除去するための方法であって、
約1マイクロメートル未満の平均繊維径を有する溶媒を含んだ高分子繊維を含む不織ウェブを提供するステップと、
赤外線放射が不織ウェブに照射されると共に溶媒除去流体が不織ウェブに衝突する溶媒除去ゾーンを通って前記不織ウェブを移動させ、繊維の溶媒濃度を約10,000ppmw未満まで低下させるステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記平均繊維径が、0.8マイクロメートル未満である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記平均繊維径が、0.5マイクロメートル未満である請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記溶媒除去流体が加熱される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒除去流体が、約70℃と前記繊維ポリマーの融点との間の温度に加熱される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記溶媒除去流体が、約70℃と、繊維ポリマーの分解点との間の温度まで加熱される請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記溶媒除去流体が、空気、窒素、アルゴン、ヘリウム、二酸化炭素、炭化水素、ハロカーボン、ハロ炭化水素、およびこれらの混合物の群から選択される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒除去流体が空気である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記溶媒濃度が、1,000ppmw未満まで低下される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒濃度が、300ppmw未満まで低下される請求項9に記載の方法。
【請求項11】
多孔性ベルトの不織ウェブとは反対側に配置された真空源を用いて、移動する多孔性ベルトに前記不織ウェブを固定することによって、前記溶媒除去ゾーンを通って前記ウェブを移動させることと、新鮮な溶媒除去流体に、前記ウェブを通過させることとをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記不織ウェブが、スクリムの上部で溶媒除去ゾーンを通って移動される請求項1に記載の方法。
【請求項13】
少なくとも1つの追加の溶媒除去ゾーンを通って前記不織ウェブを移動させることをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの追加の溶媒除去ゾーンにおいて、少なくとも約70℃に加熱された溶媒除去流体が前記不織ウェブに衝突する請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記不織ウェブが、赤外線放射を含む溶媒除去ゾーンの前に、前記少なくとも1つの追加の溶媒除去ゾーンを通って移動される請求項14に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−513744(P2010−513744A)
【公表日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−542832(P2009−542832)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【国際出願番号】PCT/US2007/025739
【国際公開番号】WO2008/076412
【国際公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【出願人】(390023674)イー・アイ・デュポン・ドウ・ヌムール・アンド・カンパニー (2,692)
【氏名又は名称原語表記】E.I.DU PONT DE NEMOURS AND COMPANY
【Fターム(参考)】