説明

赤外線視野角制御装置および赤外線視野角調整方法

【課題】形状の自由度を向上でき、厚みや大きさの自由度を向上でき、赤外線センサの実装位置の自由度を向上でき、筐体への組み込みの自由度を向上できる赤外線視野角制御装置および赤外線視野角調整方法を提供する。
【解決手段】赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法は、筐体と、赤外線センサ14と、赤外線透過性材料で成形され、二つの放物曲面15,16を有する赤外線の視野角制御部品12と、二つの放物曲面15,16に施され、赤外線を反射する反射層とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線の視野角を制御する赤外線視野角制御装置および赤外線視野角調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の赤外線視野角制御装置として、レンズアレイとセンサアレイとを有し、センサ部が複数形成されたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1に記載の赤外線視野角制御装置は、レンズ本体の一面側から光が入射すると、入射した光がセンサアレイを透過してレンズ本体の一面に形成された光学素子群へ到達する。
そして、特許文献1に記載の赤外線視野角制御装置は、光学素子群へ到達した光は各光学素子で反射され、入射した光の入射角と放物面の光軸とが平行ではない光学素子では、光を焦点に集光させない。
さらに、特許文献1に記載の赤外線視野角制御装置は、入射した光の入射角と放物面の光軸とが平行である光学素子では、光を焦点に集光させる。
そのため、特許文献1に記載の赤外線視野角制御装置は、焦点に配置された感熱素子が、光を検知して計測器へ出力する。
このように、特許文献1に記載の赤外線視野角制御装置は、光学素子が、放物面の光軸を光学素子の中心軸に対し傾けて形成したことにより、指向性を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−169807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の赤外線視野角制御装置は、各光学素子が指向性を有することにより、所望の入射角を有する光に対応することができる。
【0005】
ところで、図12に示すように、特許文献1に記載の赤外線視野角制御装置と同様に、赤外線が透過できる材料により視野角制御部品としてレンズ101を構成し、レンズ101の屈折率を利用して焦点に赤外線センサ102を実装するものが提案されている。
しかし、このような従来の赤外線視野角制御装置100は、レンズ101を筐体103に固定する場合に、レンズ101に筐体103への取付用のフランジ104等の構造を持つ必要がある。
従って、このような従来の赤外線視野角制御装置100は、レンズ101の自体より広い面積が必要であり、実装の制約が大きくなっていた。
また、このような従来の赤外線視野角制御装置100は、フランジ104部分から不要な赤外線の入射があり、視野角が十分に制御することができない。
加えて、このような従来の赤外線視野角制御装置100は、反射鏡を使用する場合に、反射鏡を支持(固定する)構造体が必要となり、赤外線の集光効率が低下するとともに組み込みの構造が複雑となり、小型化に向かない。
【0006】
近年の技術の発展に伴い、赤外線センサの小型化、低価格化が進み、いろいろな装置への応用が増加してきている。
そのような状況下において、赤外線センサで計測するものが、周囲の状況だけでなく、ポイントを絞った測定を望む状況になってきている。
しかし、いろいろな装置へ組み込む場合、レンズ方式での視野角制御ではレンズの屈折率で視野角制御部品のサイズが決まってしまい自由度が大きく束縛される。
【0007】
本発明は、前述した課題を解決するためになされたものであり、その目的は、形状の自由度を向上でき、厚みや大きさの自由度を向上でき、赤外線センサの実装位置の自由度を向上でき、筐体への組み込みの自由度を向上できる赤外線視野角制御装置および赤外線視野角調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る赤外線視野角制御装置は、筐体と、赤外線センサと、赤外線透過性材料で成形され、二つの放物曲面を有する赤外線の視野角制御部品と、前記二つの放物曲面に施され、赤外線を反射する反射層とを備える。
【0009】
本発明に係る赤外線視野角制御装置は、前記二つの放物曲面の調整に伴い、赤外線の視野角を制御可能である。
【0010】
本発明に係る赤外線視野角調整方法は、赤外線センサと、赤外線透過性材料で成形され、二つの放物曲面を有する赤外線の視野角制御部品と、前記二つの放物曲面に施され、赤外線を反射する反射層とを備える赤外線視野角制御装置の赤外線視野角調整方法であって、前記二つの放物曲面の曲率と前記赤外線センサの実装位置とを調整する。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る赤外線視野角制御装置および赤外線視野角調整方法によれば、形状の自由度を向上でき、厚みや大きさの自由度を向上でき、赤外線センサの実装位置の自由度を向上でき、筐体への組み込みの自由度を向上できるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る第1実施形態の赤外線視野角調整方法を実行する赤外線視野角制御装置の縦断面図である。
【図2】本発明に係る第1実施形態の赤外線視野角制御装置に適用される視野角制御部品の平面図である。
【図3】本発明に係る第1実施形態の赤外線視野角制御装置に適用される視野角制御部品の縦断面図である。
【図4】本発明に係る第1実施形態の赤外線視野角制御装置に適用される視野角制御部品の横断面図である。
【図5】本発明に係る第1実施形態の赤外線視野角制御装置に適用される視野角制御部品における放物曲面と反射層とを説明する縦断面図である。
【図6】本発明に係る第1実施形態の赤外線視野角制御装置に適用される視野角制御部品における放物曲面と反射層とを説明する平面図である。
【図7】本発明に係る第1実施形態の赤外線視野角制御装置に適用される視野角制御部品における放物曲面と反射層とを説明する底面図である。
【図8】本発明に係る第1実施形態の赤外線視野角制御装置の光学的な特性を説明する縦断面図である。
【図9】本発明に係る第2実施形態の赤外線視野角調整方法を実行する赤外線視野角制御装置の縦断面図である。
【図10】本発明に係る第3実施形態の赤外線視野角調整方法を実行する赤外線視野角制御装置の縦断面図である。
【図11】本発明に係る第4実施形態の赤外線視野角調整方法を実行する赤外線視野角制御装置の縦断面図である。
【図12】従来の赤外線視野角制御装置の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る複数の実施形態の赤外線視野角制御装置について図面を参照して説明する。
(第1実施形態)
図1に示すように、本発明に係る第1実施形態の赤外線視野角調整方法を実行する赤外線視野角制御装置10は、筐体11と、筐体11に保持される視野角制御部品12と、基板13と、基板13に実装された赤外線センサ14とを備える。
【0014】
視野角制御部品12は、赤外線透過材料で成形されており、光軸A1に平行に入射される赤外線のみを第1焦点B1に収束させる第1放物曲面15と、放物曲面15からの赤外線を第2焦点B2に収束させる第2放物曲面16とからお椀形状に形成されている。
第2焦点B2は、基板13に実装された赤外線センサ14の位置に一致するように、第1放物曲面15と第2放物曲面16とが調整されている。
第1放物曲面15と第2放物曲面16とが調整されることにより、赤外線センサ14の実装位置が調整される。
第1放物曲面15は、凸状の略半球形状に形成され、第2放物曲面16は、凹状の略半球形状に形成される。
【0015】
図2に示すように、視野角制御部品12は、平面形状が円形に形成されており、その上面の中央部に第2放物曲面16が配置されている。
図3に示すように、視野角制御部品12は、縦断面形状が略半円形状に形成されており、その左端面の中央部に第2放物曲面16が配置されている。
図4に示すように、視野角制御部品12は、横断面形状が略半円形に形成されており、その上面の中央部に第2放物曲面16が配置されている。
図5に示すように、視野角制御部品12は、第1放物曲面15に赤外線を反射させる第1反射層17がコーティングされており、同様にして、第2放物曲面16に赤外線を反射させる第2反射層18がコーティングされている。
【0016】
ここで、視野角制御部品12が、赤外線透過材料で成形されていて、第1放物曲面15に第1反射層17が、第2放物曲面16に第2反射層18が、それぞれ直接コーティングされている。
従って、視野角制御部品12は、別構造の反射層を、第1放物曲面15および第2放物曲面16により支持する構造としないことにより、集光効率を最大限有効にできる。
【0017】
第1放物曲面15は、光軸A1に平行に入射される赤外線を反射して、第1焦点B1に収束するように設計されている。
第2放物曲面16は、第1放物曲面15と第1焦点B1と間に配置されており、第1放物曲面15から反射された赤外線を第2焦点B2に収束するように設計されている。
【0018】
図6に示すように、第2放物曲面16の第2反射層18は、第2放物曲面16の全域にわたってコーティングされている。
図7に示すように、第1放物曲面15の第1反射層17は、第2反射層18から反射される赤外線が通過する領域を除いた大きさの円形の形状となるように設計される。
【0019】
第1放物曲面15に第1反射層17がコーティングされているために、赤外線を透過させる必要がなく、第1放物曲面15の第1反射層17の領域に、筐体11との接合面を構成できる。
そのため、筐体11との接合面を両面テープや接着剤等により固定するための面積を広く取ることができる。
そして、接合のための両面テープや接着剤等で貼り付けられる面積として、図7に示したように、第1反射層17の面積の全てを使うことができる。
従って、従来のもののようなフランジなどの構造が不要であり、実装面積を有効に使用できる。
【0020】
次に、赤外線視野角制御装置10の光学的な特性を説明する。
図8に示すように、光軸A1に平行して視野角制御部品12に入射された赤外線は、第1放物曲面15の第1反射層17により第1放物曲面15に入射した角度と等しい角度で反射されて第1焦点B1に収束する経路をたどる。
ここで、第1焦点B1までの経路に第2反射層18がコーティングされた第2放物曲面16があるために、赤外線は、第2放物曲面16の第2反射層18で第2焦点B2へ反射される。
視野角制御部品12に入射される赤外線のうち、光軸A1に平行なもの全てが第2焦点B2に収束されるが、光軸A1に平行でない赤外線は第2焦点B2に入ってくることがない。
従って、光軸A1の指す方向からの赤外線のみを集めて視野角を制御することができる。
【0021】
以上、説明したように第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、視野角制御部品12が、第1放物曲面15に第1反射層17がコーティングされ、第2放物曲面16に第2反射層18がコーティングされる。
従って、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、反射物を支持する構造を必要としないために、赤外線の集光効率を最大限活用できる。
【0022】
また、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、筐体11との接合にフランジ等の視野角制御機能とは別の構造を必要としない。
従って、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、実装面積を最小にできる。
【0023】
そして、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、視野角制御をレンズから放物面の反射にすることにより、フランジ部分等からの不要な赤外線の入力を避けて、光軸A1に平行な赤外線のみを収束できる。
従って、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、視野角制御の精度を向上できる。
【0024】
さらに、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、第1放物曲面15と第1焦点B1とによって視野角制御部品12の厚みを調整可能であり、第2放物曲面16と第2焦点B2との調整可能である。
従って、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、赤外線センサ14の位置に合わせた設計ができる。
【0025】
加えて、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、視野角制御にレンズを用いずに、反射方式を用いた。
従って、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、材料の屈折率により変わる設計の煩雑性を解消できる。
【0026】
また、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、筐体11との接合面を両面テープや接着剤等により固定するための面積を広く取ることができる。
従って、従来のもののようなフランジなどの構造が不要であり、実装面積を有効に使用できる。
【0027】
さらにまた、第1実施形態の赤外線視野角制御装置10および赤外線視野角調整方法によれば、視野角制御部品12に入射される赤外線のうち、光軸A1に平行でない赤外線は第2焦点B2に入ってくることがない。
従って、光軸A1の指す方向からの赤外線のみを集めて視野角を制御することができる。
【0028】
(第2実施形態)
次に、本発明に係る第2実施形態の赤外線視野角制御装置について説明する。
なお、以下の各実施形態において、前述した第1実施形態と重複する構成要素や機能的に同様な構成要素については、図中に同一符号あるいは相当符号を付することによって説明を簡略化あるいは省略する。
【0029】
図9に示すように、本発明に係る第2実施形態の赤外線視野角調整方法を実行する赤外線視野角制御装置20は、上端部に立ち上げ部21を形成した視野角制御部品22を備えて、成形をしやすくしている。
第1放物曲面15は、光軸A1に平行に入射される赤外線を反射して、第1焦点B1に収束するように設計されている。
第2放物曲面16は、第1放物曲面15と第1焦点B1と間に配置されており、第1放物曲面15から反射された赤外線を第2焦点B2に収束するように設計されている。
従って、第1放物曲面15が、立ち上げ部21を介して、凸状の略半球形状に容易に成形できる。
【0030】
(第3実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の赤外線視野角制御装置について説明する。
図10に示すように、本発明に係る第3実施形態の赤外線視野角調整方法を実行する赤外線視野角制御装置30は、第2焦点B2よりも深い位置に配置された第3焦点B3を有する。
第3焦点B3は、第2放物曲面16の曲率を上げることにより、第2焦点B2から位置が変更される。
従って、深い位置に第3焦点B3を得ることができる。
【0031】
(第4実施形態)
次に、本発明に係る第3実施形態の赤外線視野角制御装置について説明する。
図11に示すように、本発明に係る第4実施形態の赤外線視野角調整方法を実行する赤外線視野角制御装置40は、第3焦点B3の位置を第4焦点B4に変更する。
第4焦点B4は、第1放物曲面15を光軸A1の中止から回転方向に角度を変更することにより配置される。
ここで、第1放物曲面15に代えて、第2放物曲面16を光軸A1の中止から回転方向に角度を変更してもよい。
従って、第1放物曲面15または第2放物曲面16を調整することにより、赤外線センサ14の実装位置に合わせた焦点位置の設計が可能となる。
【0032】
なお、本発明の赤外線視野角制御装置および赤外線視野角調整方法は、前述した各実施形態に限定されるものでなく、適宜な変形や改良等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上述べたように、本発明の赤外線視野角制御装置および赤外線視野角調整方法によれば、形状の自由度を向上でき、厚みや大きさの自由度を向上でき、赤外線センサの実装位置の自由度を向上でき、筐体への組み込みの自由度を向上できるものである。
以上の結果として、赤外線センサを搭載してポイントを絞った測定を要求される装置において汎用性を向上でき、本発明の産業上の利用可能性は大といえる。
【符号の説明】
【0034】
10 赤外線視野角制御装置
11 筐体
12,22 視野角制御部品
14 赤外線センサ
15 第1放物曲面(放物曲面)
16 第2放物曲面(放物曲面)
17 第1反射層(反射層)
18 第2反射層(反射層)
20 赤外線視野角制御装置
30 赤外線視野角制御装置
40 赤外線視野角制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
赤外線センサと、
赤外線透過性材料で成形され、二つの放物曲面を有する赤外線の視野角制御部品と、
前記二つの放物曲面に施され、赤外線を反射する反射層とを備える赤外線視野角制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線視野角制御装置において、
前記二つの放物曲面の調整に伴い、赤外線の視野角を制御可能である赤外線視野角制御装置。
【請求項3】
赤外線センサと、
赤外線透過性材料で成形され、二つの放物曲面を有する赤外線の視野角制御部品と、
前記二つの放物曲面に施され、赤外線を反射する反射層とを備える赤外線視野角制御装置の赤外線視野角調整方法であって、
前記二つの放物曲面の曲率と前記赤外線センサの実装位置とを調整する赤外線視野角調整方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−173037(P2012−173037A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33144(P2011−33144)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】