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赤外顕微鏡、及び赤外顕微鏡システム
説明

赤外顕微鏡、及び赤外顕微鏡システム

【課題】 赤外光線束をより効率よく利用することができる赤外顕微鏡、及び赤外顕微システムを提供する。
【解決手段】 本発明の赤外顕微システム1は、FT−IR2の干渉計部22から供給された赤外光線束を実質的に平行光とした状態で小径に絞ることで、当該赤外光線束の光線密度よりも高い光線密度とされた高密度の赤外光線束を形成して導入する光学ユニット50を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外分光光度計と組み合わせて用いられる赤外顕微鏡、及び赤外顕微鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、赤外分光光度計(Fourier Transform Infrared Spectroscopy 以下、FT−IRともいう)には、赤外線波長領域における顕微分光を行う赤外顕微鏡が組み合わされることがある。
この赤外顕微鏡は、FT−IRの有する干渉計から得られる赤外光線束を内部に導入し、導入した赤外光線束を集光して試料に照射する。試料に照射したときに得られる透過光、又は、反射光は、当該赤外顕微鏡が有する検出器により検出され、分光分析に供される(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−174708号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記赤外顕微鏡による分光分析において、空間分解能や、測定時間といった性能は、試料に照射される赤外光の光線密度(輝度)に依存するため、試料に照射される赤外光の光密度は、より高い方が好ましい。
【0005】
一方、上記赤外顕微鏡では、試料に照射する赤外光を集光するための集光鏡としてカセグレン鏡等が用いられるが、このような集光鏡は、集光する赤外光線束を導入するための導入口が比較的小さい。また、集光鏡の導入口に合わせて所定径に形成するためのアパーチャ等が配置される場合もある。
これに対して、FT−IR等から供給される平行光である赤外光線束は、その光線束径が比較的大きい。よって、FT−IRから供給される赤外光線束をそのまま用いると、その光線束の内の一部が、集光鏡に導入されないことがあり、供給される赤外光線束を効率よく利用しているとはいえなかった。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、より分析性能を高めるべく、赤外光線束をより効率よく利用することができる赤外顕微鏡、及び赤外顕微システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、干渉計から供給される平行光である赤外光線束を導入して顕微分光を行う赤外顕微鏡であって、前記干渉計から供給された前記赤外光線束を実質的に平行光とした状態で小径に絞ることで、当該赤外光線束の光線密度よりも高い光線密度とされた高密度の赤外光線束を形成して導入する手段を備えていることを特徴としている。
【0008】
上記のように構成された赤外顕微鏡によれば、実質的に平行光とした状態で小径に絞られた高密度の赤外光線束を導入できるので、上記従来例のように、集光鏡の導入口が小さい場合や、小さい集光鏡の導入口に合わせて所定径に形成するためのアパーチャ等が配置されている場合にも、より多くの赤外光線を集光鏡に導くことができ、顕微分光を行うことができる。この結果、干渉計から供給される赤外光線束を効率よく利用することができる。
ここで、「実質的に平行光」とは、厳密には平行光ではないが、小径に絞ったときに高密度の赤外光線束が得られる程度に平行であるとみなせる状態の光線をいう。
【0009】
上記赤外顕微鏡において、前記手段は、前記干渉計からの前記赤外光線束を収束する第一の放物面鏡と、当該第一の放物面鏡の焦点距離よりも短い焦点距離とされるとともに同一の光軸上に前記第一の放物面鏡の焦点と自己の焦点とが一致した状態で、これら焦点をはさんで配置された第二の放物面鏡と、を備え、前記第二の放物面鏡は、前記第一の放物面鏡によって収束光とされた前記赤外光線束を実質的に平行光に変換することで、前記高密度の赤外光線束を形成することが好ましい。
この場合、両放物面鏡によって、干渉計から供給される平行光である赤外光線束を、実質的に平行光である状態で小径に絞られた高密度の赤外光線束とすることができる。
【0010】
また、本発明は、干渉計と、前記干渉計から供給される平行光である赤外光線束を導入して顕微分析を行う赤外顕微鏡と、を備えた赤外顕微システムであって、前記干渉計と前記赤外顕微鏡との間の前記赤外光線束を導入するための経路に、前記干渉計から供給された前記赤外光線束を実質的に平行光とした状態で小径に絞ることで、当該赤外光線束の光線密度よりも高い光線密度とされた高密度の赤外光線束を形成し、前記赤外顕微鏡に導入する手段を備えていることを特徴としている。
【0011】
上記のように構成された顕微システムによれば、上述のように、高密度の赤外光線束によってより多くの赤外光線を集光鏡に導くことができ、干渉計から供給される赤外光線束を効率よく利用することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の赤外顕微鏡、及び赤外顕微システムによれば、赤外光線束をより効率よく利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る赤外顕微システムのブロック図である。
【図2】光学ユニットの構造、及び、当該光学ユニット内の赤外光線束の光路(光軸)を示す図である。
【図3】光学ユニットの構造を簡略化して示した図である。
【図4】赤外光線束のシミュレーションに用いた計算モデルを示す図である。
【図5】光源サイズがφ3mmの場合における、レイトレースによって光線密度を求めたときの光線分布をグラフに表した一例であり、(a)は実施例の計算モデルによる光線分布、(b)は比較例の計算モデルによる光線分布を示すグラフである。
【図6】光源サイズがφ5mmの場合における、レイトレースによって光線密度を求めたときの光線分布を表したグラフの一例であり、(a)は実施例の計算モデルによる光線分布、(b)は比較例の計算モデルによる光線分布を示すグラフである。
【図7】赤外顕微鏡の検出器によって検出された赤外光のスペクトルを示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る赤外顕微システムのブロック図である。
図1において、赤外顕微システム1は、赤外分光光度計(FT−IR)2と、FT−IR2に隣接して配置された赤外顕微鏡3と、これらを制御するためのコンピュータ4とを備えている。
【0015】
FT−IR2は、赤外光を用いた分光分析を行うための装置であり、その内部に、赤外光の光源21と、干渉計部22と、分光計部23とを備えている。
光源21が送出する赤外光線は、集光鏡24によって集光され、さらにアパーチャ25を介して反射鏡26に送られる。
反射鏡26は、回転放物面鏡により構成されており、集光鏡24から送られる収束光である赤外光線束を平行光に変換し反射する。反射鏡26によって平行光とされた赤外光線束は、干渉計部22に導かれる。
【0016】
干渉計部22は、内部にビームスプリッタ22a、固定鏡22b、及び移動鏡22cを備えており、マイケルソン干渉計を構成している。すなわち、干渉計部22は、導入された赤外光線束をビームスプリッタ22aによって、固定鏡22bと、移動鏡22cの2方向に分割し、両鏡22b,22cによる反射光を再度ビームスプリッタ22aによって合成して干渉光を得る。移動鏡22cは所定周期で往復動しており、干渉計部22からは、時間的に振幅が変動する干渉光が得られる。
干渉計部22は、上記のようにして、反射鏡26からの平行光を赤外光線束を干渉光とし、干渉光とされた赤外光線束を切替鏡27に導く。
切替鏡27は、平面鏡であり、赤外光線束をFT−IR2に隣接して配置されている赤外顕微鏡3に導入するための経路に導くか、分光計部23へ導くかを切り替える。
【0017】
分光計部23は、試料が配置される試料テーブル、及び赤外光線束を試料に照射したときの反射光又は透過光を検出する検出器(いずれも図示せず)を備えている。検出器による検出結果は、コンピュータ4に出力される。検出結果が与えられたコンピュータ4は、この検出結果を分光分析に供される。
【0018】
本システムは、分光計部23によって分光分析を行う場合、干渉計部22からの赤外光線束が分光計部23に導かれるように切替鏡27を切り替える。
一方、赤外顕微鏡3による分析を行う場合には、干渉計部22からの赤外光線束が赤外顕微鏡3に導入するための経路に導かれるように切替鏡27を切り替える。
【0019】
干渉計部22からの赤外光線束が赤外顕微鏡3に導入するための経路に導かれるように切替鏡27を切り替えられた場合、干渉計部22からの干渉光である赤外光線束は、導出口28を通じてFT−IR2の外部に導かれ、赤外顕微鏡3に導入される。このとき、導出口28から導出される赤外光線束の径寸法は、例えば35mm程度に設定される。
【0020】
FT−IR2と、赤外顕微鏡3との間には、FT−IR2からの干渉光である赤外光線束を小径に絞ることで、当該赤外光線束の光線密度を高めて、赤外顕微鏡3に高密度の赤外光線束を導入する光学ユニット50が配置されている。このユニット50については、後に詳述する。
【0021】
赤外顕微鏡3は、FT−IR2からの赤外光線束を導入して顕微分光分析を行う装置である。赤外顕微鏡3は、FT−IR2からの赤外光線束を導入口31から導入する。
導入された赤外光線束は、平面鏡32によって、反射鏡33に導かれる。さらに、赤外光線束は、反射鏡33から、反射鏡34、平面鏡35を介して集光鏡36に供給される。なお、反射鏡33,34は、回転放物面鏡により構成されており、反射鏡33は、平面鏡32からの平行光である赤外光線束を収束光に変換する。また、反射鏡34は、反射鏡33によって収束光とされた赤外光線束を平行光に変換する。反射鏡33と反射鏡34との間には、アパーチャ37が配置されている。
【0022】
集光鏡36は、カセグレン式の集光鏡であり、供給される赤外光線束を導入するための導入口36aが例えば直径15mm程度と、FT−IR2から供給される赤外光線束の径(約35mm)と比較すると、小さい寸法となっている。
【0023】
集光鏡36は、導入された赤外光線束を集光し、試料ステージ38に設置される試料の微小な観察領域に対して、集光した赤外光線束を照射する。
試料を透過した赤外光線束は、集光鏡36に対して、試料ステージ38を介して対向配置された集光鏡39によって集光される。試料を透過し集光された赤外光線束は、平面鏡40、回転放物面鏡からなる反射鏡41、及び集光鏡42を介して検出器43に導かれる。
反射鏡41と、集光鏡42との間には、アパーチャ37が配置されている。このアパーチャ37は、集光鏡36による集光された赤外光線束が照射された観察部位以外の部位からの光が集光鏡42に到達するのを遮蔽している。
【0024】
検出器43は、半導体検出器であり、赤外光を高感度に検出することができる。検出器43による検出結果は、コンピュータ4に出力され、分光分析に供される。
このようにして、赤外顕微鏡3は、試料の微小な観察領域に赤外光線束を集光照射し、検出器43によって透過光、及び反射光を検出することで、顕微分光分析を行う。
【0025】
次に、FT−IR2と、赤外顕微鏡3との間に配置された光学ユニット50について説明する。
【0026】
図2は、光学ユニット50の構造、及び、光学ユニット50内に赤外光線束の光路(光軸)を示す図である。光学ユニット50は、FT−IR2から供給された赤外光線束を実質的に平行光とした状態で小径に絞ることで、当該赤外光線束の光線密度よりも高い光線密度とされた高密度の赤外光線束を形成し、赤外顕微鏡3に導入する手段を構成している。
【0027】
光学ユニット50は、図2に示すように、FT−IR2の導出口28から導出される赤外光線束が照射され当該赤外光線束をその光軸L1に交差する方向に反射する第一放物面鏡51と、第一放物面鏡51よりも赤外顕微鏡3側に配置されている第二放物面鏡52と、第一放物面鏡51により反射された赤外光線束を第二放物面鏡52に導く平面鏡53と、第二放物面鏡52により反射された赤外光線束を導出口28から導出される赤外光線束の光軸L1に一致するように導く平面鏡54とを備えている。
【0028】
第一放物面鏡51は、回転放物面鏡により構成されており、FT−IR2から供給される平行光である赤外光線束を収束光に変換して反射し、平面鏡53に導く。
第二放物面鏡52は、回転放物面鏡により構成されており、平面鏡53を介して導かれるとともに第一放物面鏡51によって収束光とされた赤外光線束を平行光に変換することで、小径に絞られた高密度の赤外光線束を形成し、平面鏡54に導く。
高密度の赤外光線束は、平面鏡54によって赤外顕微鏡3の導入口31に導かれて、赤外顕微鏡3に導入される。
各鏡51〜54は、所定の光路に設定可能とするために、その位置や設置角度等を自在に調整することができる。
【0029】
図3は、光学ユニット50の構造を簡略化して示した図である。光学ユニット50は、図3に示すように、第一放物面鏡51と、第二放物面鏡52とによって、高密度の赤外光線束を形成する。
【0030】
第二放物面鏡52は、第一放物面鏡51の焦点距離f1よりも短い焦点距離f2とされている。また、第二放物面鏡52は、同一の光軸L2上に第一放物面鏡51の焦点と自己(第二放物面鏡52)の焦点とが図中の点fpで一致した状態で、点fpを挟んで配置されている。
従って、第二放物面鏡52は、第一放物面鏡51が収束光に変換したFT−IR2からの赤外光線束をより短い焦点距離で平行光に変換することとなるので、平行光に変換された赤外光線束は、光線の強度がそのままで小径に絞られる。つまり、FT−IR2からの赤外光線束の光線束径D1よりも、第二放物面鏡52により反射される赤外光線束の光線束径D2が小さくなるように小径に絞られることで赤外光線束の断面積が縮小され、その光線密度(輝度)が高められる。
【0031】
第一放物面鏡51の焦点距離f1と、第二放物面鏡52の焦点距離f2との比率が、下記式(1)で示す関係であるとする。
f1 : f2 = n : 1 ・・・(1)
【0032】
この場合、第二放物面鏡52により変換される平行光である赤外光線束の径寸法は、1/nに絞られる。よって、断面積は、1/nに縮小される。すなわち、赤外光線束の光線密度は、両放物面鏡51,52によって、n倍となる。
以上のようにして、光学ユニット50は、両放物面鏡51,52によって、FT−IR2から供給された赤外光線束から、実質的に平行光である状態で小径に絞られた高密度の赤外光線束を形成することができる。
【0033】
図2に戻って、第一放物面鏡51の焦点と、第二放物面鏡52の焦点は、平面鏡53と第二放物面鏡52との間に位置する図中の点fpで一致している。
平面鏡53,54は、両放物面鏡51,52における図3に示す配置関係を維持しつつ、両放物面鏡51,52が反射する赤外光線束の光軸を調整して、第二放物面鏡52により変換された高密度の赤外光線束を、FT−IR2から導出される赤外光線束の光軸L1に一致するように導いている。
【0034】
上記のように、光学ユニット50は、FT−IR2から供給された赤外光線束の光軸と、赤外顕微鏡3に導入される高密度の赤外光線束の光軸L1とが一致するように、高密度の赤外光線束を形成する。
従って、FT−IRから供給された赤外光線束をそのまま赤外顕微鏡に導入するように構成されているシステムに対して、FT−IRと赤外顕微鏡との間に光学ユニット50を配置すれば、特に赤外光線束の光軸調整等を行うことなく容易に、高密度の赤外光線束を赤外顕微鏡に導入することができる。
【0035】
なお、第二放物面鏡52からの赤外光線束は、各放物面鏡や反射鏡等の収差の影響を受けるので、厳密にみると平行光ではないが、小径に絞ったときに高密度の赤外光線束が得られれば、その範囲内においては平行光とみなすことができる。よって、本明細書中では、小径に絞ったときに高密度の赤外光線束が得られる程度に平行であるとみなせる状態の光線を「実質的に平行光」という。
【0036】
上記のように構成された赤外顕微システム1は、FT−IR2の干渉計部22から供給された赤外光線束を実質的に平行光とした状態で小径に絞ることで、当該赤外光線束の光線密度よりも高い光線密度とされた高密度の赤外光線束を形成して導入する光学ユニット50を備えている。
このため、赤外顕微鏡3に対して、実質的に平行光とした状態で小径に絞られた高密度の赤外光線束を導入できるので、上記従来例のように、集光鏡の導入口が小さい場合や、小さい集光鏡の導入口に合わせて所定径に形成するためのアパーチャ等が配置されている場合にも、より多くの赤外光線を集光鏡に導くことができ、顕微分光を行うことができる。この結果、FT−IR2から供給される赤外光線束を効率よく利用することができる。
【0037】
なお、上記実施形態では、光学ユニット50を、FT−IR2と、赤外顕微鏡3との間に配置した場合を例示したが、この光学ユニット50は、赤外顕微鏡3、又はFT−IR2のいずれか一方に内蔵して配置してもよい。
【0038】
次に、本発明の赤外顕微システムにより得られる効果について、検証した試験結果について説明する。
試験方法としては、レイトレーシングソフトを用いたシミュレーションにより赤外光線束を再現し光学ユニット50による赤外光線束の高密度化の検証を行った。また、実機によって実際に赤外顕微鏡における顕微に用いる赤外光の強度測定を行った。
両試験において、実施例としては、上記光学ユニット50を用いた本発明の赤外顕微システムを用い、比較例としては、上記光学ユニット50を用いない赤外顕微システムを用いて評価を行った。
【0039】
まず、赤外光線束のシミュレーションによる試験について説明する。この赤外光線束のシミュレーションでは、予め、所定の計算モデルを設定し、レイトレーシングソフト(ソフト名:SHADOW)を用いて、光源から赤外顕微鏡3に導入されるまでの赤外光線束の状態をシミュレーションにより求め、赤外顕微鏡3に導入される赤外光線束の光線密度を、実施例と、比較例とで比較した。
【0040】
図4は、赤外光線束のシミュレーションに用いた計算モデルを示す図である。図中、点Aは、光源(図1中の光源21に相当)を示しており、紙面右方向に向かって赤外光線束の光路に沿って与えられる条件が示されている。
光源については、サイズが有限の点光源とし、そのサイズとしては、φ3mmと、φ5mmの2通りに設定した。
【0041】
まず実施例の計算モデルについて説明する。点Bは、放物面鏡によって、光源からの赤外光線束が平行光に変換される位置である。点Bは、図1中、反射鏡26に相当する。また、点Bでは、赤外光線束を、φ30mmのスリットに通し、φ30mmの平行光に形成するものとして設定した。
【0042】
点Cは、上記光学ユニット50の第一放物面鏡51によって平行光である赤外光線束が収束光に変換される位置を示しており、点Eは、第二放物面鏡52によって収束光である赤外光線束が平行光に変換される位置を示している。
点Dは、両放物面鏡51,52の焦点である点fp(図2、図3)に相当する位置である。よって、点Cの直前の位置は、FT−IR2の導出口28の位置、点Eの直後の位置は、赤外顕微鏡3の導入口31の位置に相当する。
【0043】
各点の間の距離は、点Aと点Bとの間の距離が100mm、点Bと点Cとの間の距離が1000mm、点Cと点Dとの間の距離(第一放物面鏡51の焦点距離f1)が100mm、点Dと点Eとの間の距離(第二放物面鏡52の焦点距離f2)が50mmとなるように設定した。
上記のように、第一放物面鏡51の焦点距離f1が100mm、第二放物面鏡52の焦点距離f2が50mmなので、本計算モデルにおいて、上記式(1)中の「n」は、「2」である。よって、実施例のモデルで得られる光線密度は、比較例のモデルに対して、計算上においては、4倍の密度が得られることとなる。
【0044】
比較例の計算モデルは、点A及び点Bにおける条件は、実施例の計算モデルと同様であり、点Bにて平行光とされた赤外光線束そのままで、点C〜点Eで条件を付加しない設定とした。すなわち、実施例の計算モデルは、光学ユニット50を用いた場合、比較例のモデルは、光学ユニット50を用いない場合をモデル化している。
【0045】
また、赤外光線束の光線密度を求める地点としては、点Eから200〜1000mmの範囲で設定した。
赤外光線束の光線密度は、上記光線密度を求める地点において、φ15mmのスリットを通過すると認められる光線の数をカウントし、その光線数を光線密度として比較評価した。
【0046】
下記表1は、レイトレースによって光線密度を求めた結果を示している。また、図5は、光源サイズがφ3mmの場合における、レイトレースによって光線密度を求めたときの光線分布をグラフに表した一例であり、(a)は実施例の計算モデルによる光線分布、(b)は比較例の計算モデルによる光線分布を示すグラフである。また、図6は、光源サイズがφ5mmの場合における、レイトレースによって光線密度を求めたときの光線分布を表したグラフの一例であり、(a)は実施例の計算モデルによる光線分布、(b)は比較例の計算モデルによる光線分布を示すグラフである。
【0047】
【表1】

【0048】
表1中、光源サイズがφ3mmの場合、点Eからの距離が700mmの範囲において、実施例と比較例との光線数比が1を超えており、実施例の計算モデルの方が高密度となっていることが判る。特に、点Eからの距離が200mmの場合、光線数比が3.1倍と、計算上得られる密度(計算上得られる光線数比は4倍)に最も近い高密度となっている。図5を見ても、点Eからの距離が200mm、500mmの場合、実施例の計算モデルの方が明らかに高密度となっている。
【0049】
また、点Eからの距離の増加に伴って、光線数比は小さくなり、当該距離が800mmで光線数比が0.95と、実施例の計算モデルの赤外光線束の方が光線数が小さくなっている。この理由は、上述したように、赤外光線束は光源による発散光を放物面鏡により平行光に変換したものであり、その放物面鏡の収差等による影響を受けることで、厳密には平行光とはならないからである。すなわち、比較例のモデルよりも放物面鏡を多く使用している実施例のモデルの光線の平行度は、比較例のモデルのそれよりも悪くなる可能性が高いので、点Eからの距離が大きくなればなるほど、実施例のモデルの方が発散する度合が高くなると考えられる。このため、ある程度の距離を超えると、実施例の計算モデルの赤外光線束の方が光線数が小さくなり、光線の密度が低くなると考えられる。
【0050】
一方、点Eからの距離が700mm以下では、φ15mmのスリットによって赤外光線束を小径に絞った状態で高密度化が可能であること、及び、点Eからの距離が比較的近ければ、厳密には平行光ではない赤外光線束も実質的には平行光とみなすことができるため、実施例のモデルでは、高密度化が可能な範囲においては、赤外光線束は実質的に平行光であると判断できる。
【0051】
以上より、光源サイズがφ3mmの場合、光学ユニットを用いた実施例によれば、点Eからの距離が700mm以内の範囲において、赤外顕微鏡に導入される赤外光線束が実質的に平行光と判断でき、この範囲においては、FT−IR等から供給される赤外光線束を、実質的に平行光である状態で小径に絞られた高密度の赤外光線束とすることができることが判った。
【0052】
表1中、光源サイズがφ5mmの場合、点Eからの距離が500mmの範囲において、実施例と比較例との光線数比が1を超えており、図6からも実施例の計算モデルの方が高密度となっていることが判る。また、光源サイズがφ5mmの場合も、光源サイズがφ3mmの場合と同様、点Eからの距離の増加に伴って、光線数比は小さくなり、当該距離が600mmで光線数比が0.93と、実施例の計算モデルの赤外光線束の方が比較例のモデルよりも光線数が小さくなっている。この理由は、上記同様である。
【0053】
光源サイズがφ5mmの場合、光学ユニットを用いた実施例によれば、点Eからの距離が500mmの範囲においては、FT−IR等から供給される赤外光線束を、実質的に平行光である状態で小径に絞られた高密度の赤外光線束とすることができることが判った。
【0054】
以上のように、本発明の赤外顕微システムによれば、干渉計等から供給される赤外光線束を、実質的に平行光とした状態で小径に絞ることで、当該赤外光線束の光線密度よりも高い高密度の赤外光線束を形成できることが計算上明らかとなった。
【0055】
次に、実機による赤外顕微鏡における赤外光強度の測定試験について説明する。測定試験は、以下の装置、及び測定条件によって行った。
使用装置:赤外分光器(FT−IR)(Thermo Scientific社製 Nicolet6700)、赤外顕微鏡(同社製 ContinuμmXL)、 光学ユニット(図2参照)
光源:Ever−glo光源(分光器内蔵標準光源)
カセグレン鏡の倍率:15倍
顕微アパーチャ:100μm × 100μm
赤外顕微鏡の検出器:高感度50μmMCT−A
観察モード:透過モード
赤外分光器(FT−IR)の導出口と、赤外顕微鏡の導入口との間の距離:約15cm
光学ユニット50の第一放物面鏡51の焦点距離f1:101.6mm(4inch)
光学ユニット50の第二放物面鏡52の焦点距離f2:50.8mm(2inch)
【0056】
試験方法としては、上記装置を用いて、上記光学ユニット50をFT−IRと赤外顕微鏡との間に配置した赤外顕微システムを実施例として構成し、光学ユニット50を配置せずFT−IRからの赤外光線束をそのまま赤外顕微鏡に導入する赤外顕微システムを比較例として構成し、実際に赤外顕微鏡に赤外光線束を導入したときに、当該赤外顕微鏡の検出器によって検出される赤外光強度を比較した。
【0057】
図7は、赤外顕微鏡の検出器によって検出された赤外光のスペクトルを示すグラフである。図中、縦軸は赤外光強度、横軸は波数を示している。図中、黒線が実施例による測定結果を示しており、灰色線が比較例による測定結果を示している。
【0058】
図7のように、実施例は、比較例に対して、ほぼ全域に亘ってその赤外光強度が高くなっており、ピーク付近では、赤外光強度が約1.5倍向上していることが判る。
【0059】
以上のように、FT−IRからの赤外光線束は、同一にもかかわらず、赤外顕微鏡において顕微分光に供される赤外光の強度が高められていることから、本発明の赤外顕微システムでは、高密度の赤外光線が赤外顕微鏡に導入されFT−IRからの赤外光線束を効率よく利用できることが、実機において確認できた。
【符号の説明】
【0060】
1 赤外顕微システム
2 赤外分光光度計(FT−IR)
3 赤外顕微鏡
22 干渉計部
50 光学ユニット
51 第一放物面鏡
52 第二放物面鏡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
干渉計から供給される平行光である赤外光線束を導入して顕微分光を行う赤外顕微鏡であって、
前記干渉計から供給された前記赤外光線束を実質的に平行光とした状態で小径に絞ることで、当該赤外光線束の光線密度よりも高い光線密度とされた高密度の赤外光線束を形成して導入する手段を備えていることを特徴とする赤外顕微鏡。
【請求項2】
前記手段は、前記干渉計からの前記赤外光線束を収束する第一の放物面鏡と、当該第一の放物面鏡の焦点距離よりも短い焦点距離とされるとともに同一の光軸上に前記第一の放物面鏡の焦点と自己の焦点とが一致した状態で、これら焦点をはさんで配置された第二の放物面鏡と、を備え、
前記第二の放物面鏡は、前記第一の放物面鏡によって収束光とされた前記赤外光線束を実質的に平行光に変換することで、前記高密度の赤外光線束を形成する請求項1に記載の赤外顕微鏡。
【請求項3】
干渉計と、前記干渉計から供給される平行光である赤外光線束を導入して顕微分析を行う赤外顕微鏡と、を備えた赤外顕微システムであって、
前記干渉計と前記赤外顕微鏡との間の前記赤外光線束を導入するための経路に、前記干渉計から供給された前記赤外光線束を実質的に平行光とした状態で小径に絞ることで、当該赤外光線束の光線密度よりも高い光線密度とされた高密度の赤外光線束を形成し、前記赤外顕微鏡に導入する手段を備えていることを特徴とする赤外顕微システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−117936(P2012−117936A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−268592(P2010−268592)
【出願日】平成22年12月1日(2010.12.1)
【出願人】(593006630)学校法人立命館 (359)
【Fターム(参考)】