説明

赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体、該蛍光体を用いた発光装置、冷陰極蛍光ランプ及びカラー液晶表示装置

【課題】 従来のものよりも加熱処理によっても高温下での発光輝度の低下が少ないEu付活希土類燐バナジン酸蛍光体、及び高温、高負荷のもとでも高い光束を示す冷陰極蛍光ランプ、温度消光の抑制された高輝度の発光を呈する発光装置、及びカラー液晶表示装置の提供。
【解決手段】 組成式が(R1−x,Eu)MOで表され、さらに1000ppm以下の金属元素Lnを含有することを特徴とする赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体(前記組成式において、RはY、La、及びGdの中から選択される少なくとも1種の金属元素であり、MはV及び/又はPであり、LnはCe、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びBiの中から選択される少なくとも2種の金属元素であり、xは0.001≦x≦0.2である)とし、冷陰極蛍光ランプ、発光装置、及びカラー液晶表示装置のバックライトの蛍光膜として該蛍光体を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紫外線ないし真空紫外線励起下において高輝度の赤色蛍光を呈し、加熱処理を受けた後も温度の上昇による発光輝度の低下(温度消光)が小さい赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体、並びに該蛍光体を発光部に適用した発光装置、冷陰極蛍光ランプ及び該冷陰極蛍光ランプをバックライト光源として用いたカラー液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
蛍光ランプは外囲器の内部にガスが封入されており、このガスの放電によって254nmをはじめとする紫外域から真空紫外域の光を発し、これにより該外囲器の内部に形成された蛍光面内の蛍光体が励起されて発光する。蛍光面は、例えば封入ガスとして水銀を入れた水銀ランプにおいては、動作温度が200〜250℃に達し、また外囲器が細管からなる細管ランプにおいては放熱性が低く、さらに近年の液晶ディスプレイなどに用いられるバックライトユニットに組み込んだ際は極めて高温・高負荷状況になっていることが容易に想像される。したがって、これらの蛍光ランプやバックライトの蛍光面に用いられる蛍光体はこのような高温で高負荷状況においても高い輝度を示すことが求められる。
【0003】
ところで、ユーロピウム(Eu)付活希土類燐バナジン酸蛍光体は、紫外線で励起した場合、Y:EuやYS:Euなどの赤色発光蛍光体と比較して深赤色の発光を示し、Eu付活希土類燐バナジン酸蛍光体をランプ蛍光面の少なくとも一部に用いることで高い演色性を持つ蛍光ランプを作製できることが知られている。
【0004】
しかしながらEu付活希土類燐バナジン酸蛍光体は、それを用いて作製された冷陰極蛍光ランプの光束が、従来使用されているEu付活酸化イットリウム蛍光体を用いて作製された冷陰極蛍光ランプに劣っているため、発光装置として、明るさが不十分であり、同じ明るさを得るためには余分にエネルギーが必要となることから、Eu付活希土類燐バナジン酸蛍光体のより一層の高輝度化、あるいは冷陰極蛍光ランプにした際の光束向上、発光装置としての明るさの向上が急務である。
【0005】
Eu付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体の特性改良については従来より種々報告されており、例えば特許文献1にはEu付活希土類バナジン酸塩蛍光体に一定量のDyを共付活することによって体色が少なくなって高温時の発光効率が向上することが記載されている。また、特許文献2にはEu付活燐バナジン酸イットリウムにTb、Ce、Prなどの三価の希土類イオン及びMg、Ca、Srなどの二価の金属イオンの少なくとも1種を含有させることによって、この蛍光体を高圧水銀ランプに適用した場合、蛍光ランプ内において発生する強い紫外線照射による蛍光体劣化に起因する輝度低下が抑制され、経時的なルーメン維持を示すランプが得られることが記載されている。更に特許文献3にはEu付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体に特定量のTb、及び/又はSmを共付活することによって強励起状態での輝度飽和現象が改善されることが報告されている。
しかしながら、前記のEu付活希土類燐バナジン酸蛍光体においても、実用上は十分ではなく、より明るい発光装置、及びより高光束な冷陰極蛍光ランプの開発と、それを実現するためのEu付活希土類燐バナジン酸蛍光体の開発が要望されている。
【0006】
【特許文献1】特開昭56−99279号公報
【特許文献2】特開2001−226672号公報
【特許文献3】特開2009−13302号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は上記の状況に鑑みてなされたものであり、従来のものよりも高輝度、高光束の発光を呈する発光装置、冷陰極蛍光ランプ及びカラー液晶表示装置、そしてそれを可能にする新規なEu付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者等は前記課題を達成するため、従来のEu付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体に種々の金属元素を添加し、得られる蛍光体の室温下、及び昇温した際の発光輝度を比較することによって、添加された金属元素と高温下での発光輝度、並びにそれらの蛍光体を用いた冷陰極蛍光ランプの光束との相関について鋭意検討した。
その結果、Eu付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体に、付活剤であるEuのほかに特定量の特定金属元素を2種類以上添加することにより従来のEu付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体に比べて蛍光体の温度特性が改善されることがわかった。
また、添加される金属元素の種類、及びその添加量によっては、1種類の特定金属元素を単独で添加しただけでも該特定金属元素が添加されていない従来のEu付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体よりも冷陰極蛍光ランプとしたときの光束は向上するものの、特定金属元素を2種類以上添加することにより、特に冷陰極蛍光ランプとした時の光束がさらに向上し、相乗効果とも言える効果が得られること、その場合、単独で添加された蛍光体からなる冷陰極蛍光ランプではその光束を低下させる金属元素であっても、該金属元素と他の特定金属元素との2種類が添加された蛍光体からなる冷陰極蛍光ランプでは、意外なことに、それぞれの金属元素を単独で添加した蛍光体よりも冷陰極蛍光ランプとしたときの光束をより向上させ得るとの知見を得た。
【0009】
すなわち、従来公知のEu付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体に希土類元素を中心とする2種類以上の特定金属元素を特定量添加し含有させることにより、加熱処理が施された後においても温度上昇による発光輝度の低下が少なく、この蛍光体を蛍光膜として用いた発光装置や細管ランプ等の高温かつ高負荷のもとで作動する冷陰極蛍光ランプや発光装置では、従来のものよりもより高光束であり、その冷陰極蛍光ランプを液晶バックライトとして用いることによって高輝度の液晶ディスプレイが得られることを見いだし本発明に到った。
【0010】
本発明は下記の構成からなる。
(1)組成式が(R1−x,Eu)MOで表され、さらに1000ppm以下の金属元素Lnを含有することを特徴とする赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
(ただし、前記組成式において、RはY、La、及びGdの中から選択される少なくとも1種の金属元素であり、MはV及び/又はPであり、Lnは前記RがYである場合はCe、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、La、Gd及びBiの中から選択される少なくとも2種の金属元素であり、また、前記RがLa及び/又はGdである場合はCe、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びBiの中から選択される少なくとも2種の金属元素であって、xは0.001≦x≦0.2なる条件を満たす数である)
(2)650℃で15分間の加熱処理を施した後に、波長254nmの紫外線で励起した時の250℃における発光輝度(I250)が、30℃における発光輝度(I30)の95%以上であることを特徴とする赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
(3)前記赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体が前記(1)に記載の組成を有することを特徴とする前記(2)に記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
(4)前記金属元素Lnの含有量が蛍光体に対して10〜200ppmであることを特徴とする請求項1又は3に記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
【0011】
(5)前記金属元素Lnとして、Tbを必須成分として含むことを特徴とする前記(1)、(3)又は(4)のいずれかに記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
(6)前記金属元素Lnとして、さらにYb、Bi、Ho、Sm、Gd及びErの中から選択される少なくとも1種を必須成分として含むことを特徴とする前記(5)に記載の赤色発光希土類バナジン酸塩蛍光体。
(7)Tbを除く前記金属元素Lnの含有量が50ppm以下であり、より好ましくは40ppm以下であることを特徴とする前記(5)又は(6)に記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
【0012】
(8)可視光に対して透明な外囲器の内壁に蛍光膜を形成すると共に、該外囲器内に水銀と希ガス、又は希ガスを封入してなり、該水銀あるいは希ガスの放電によって放射される波長160〜300nmの紫外線により前記蛍光膜を発光させる冷陰極蛍光ランプであって、前記蛍光膜が前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体を含むことを特徴とする冷陰極蛍光ランプ。
(9)近紫外ないし短波長可視域に発光スペクトルのピークを有する励起用光源と、該励起用光源からの発光の少なくとも一部を吸収してこれとは異なるピーク波長の発光を呈する蛍光体とを光学的に組み合わせてなる発光装置であって、前記蛍光体として前記(1)乃至(7)のいずれかに記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
(10)光シャッターとして機能する液晶と、該光シャッターに対応する少なくとも赤、緑、青の3色の光を透過させることを目的としたカラーフィルターと、透過照明用のバックライトとを組み合わせて構成されるカラー液晶表示装置において、前記バックライトの光源が前記(8)に記載の冷陰極蛍光ランプ、又は前記(9)に記載の発光装置であることを特徴とするカラー液晶表示装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明のEu付活燐バナジン酸塩蛍光体は、加熱処理を受けた後においても発光輝度の低下が少なく、波長160〜400nmの波長域の真空紫外線や紫外線により、常温での発光に加えて特に150〜400℃の温度下においても従来のものよりもより高輝度の赤色発光を呈し、また、加熱処理による輝度劣化や温度特性の悪化が少ない。
そのため本発明のEu付活燐バナジン酸塩蛍光体を蛍光膜として使用した本発明の冷陰極蛍光ランプ、特に管壁負荷の高い細管の冷陰極蛍光ランプでは高い光束を達成することができ、この冷陰極蛍光ランプをバックライト用の光源として用いた本発明の液晶ディスプレイは従来のEu付活燐バナジン酸塩蛍光体を用いたバックライト搭載のものに比べてより高輝度である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明のEu付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体(以下、単に希土類燐バナジン酸塩蛍光体ともいう)を製造するには、(i)元素Rの酸化物、又はRの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物、水酸化物、シュウ酸塩等の高温で酸化物に変わり得るRの化合物、(ii)元素Mの酸化物、又はMのハロゲン化物、水酸化物等の加熱により酸化物に変わり得るMの化合物、及び(iii)Euの酸化物、又はEuの硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物、水酸化物等の高温で酸化物に変わり得るEuの化合物を、化学量論組成が(R1−x,Eu)MO(但し、前記式中、RはY、La、及びGdの中の少なくとも1種を表し、MはV及び/又はPを表し、xは0.001≦x≦0.2なる条件を満足する数である。以下同様。)となる割合で秤取し、これにさらに(iv)前記の組成式(R1−x,Eu)MOで表される分子式量に対して金属元素Lnに換算して1000ppm以下の金属元素Lnの酸化物、又は硝酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物、水酸化物等の高温で酸化物に変わり得るLnの化合物(但し、LnはCe、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びBiの中から選択される少なくとも2種の元素であり、前記RがYである場合には、前記の各元素とLaとGdとの中か選択される少なくとも2種である。以下、同様)を加え、さらに必要に応じてこれにアルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、硼素化合物などをフラックスとして加えて十分に混合し、蛍光体原料混合物を調製する。
【0015】
なお、前記蛍光体原料の中、金属元素Mを含む化合物は他の原料化合物に比べて加熱時に揮散し易いので、前記の化学両論組成よりも(R1−x,Eu)成分に対して(MO)成分を5〜10モル%多く配合しておくと、より高輝度の蛍光体が得られるので好ましい。また、前記蛍光体原料の中、酸や水等に可溶な原料化合物は酸や水等に一旦溶解してから蓚酸、アルカリ等の沈殿剤を加えて蓚酸塩や水酸化物として共沈させ、この共沈物と残りの原料化合物との混合物を焼成に供しても良い。
【0016】
次いで、得られた蛍光体原料混合物を耐熱性の坩堝に充填し、電気炉、ガス炉などの炉内おいて、大気雰囲気下で900〜1500℃の温度で昇温、降温を含めて2時間〜30時間、好ましくは4時間〜15時間をかけて焼成した後、得られた焼成物を炉外に取り出し、通常の蛍光体と同様に分散・洗浄処理し、乾燥し篩い分けすることによって、組成式が(R1−x,Eu)MOで表され、かつ、1000ppmを上限とする金属元素Lnを含有する本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体を得る。
本発明の蛍光体は、付活剤のEuとともに1000ppmを上限として添加される前記(iv)の金属元素Lnとしては、蛍光体の母体を構成する元素RがLa及び/又はGdである場合には、前記(iv)の金属元素LnとしてのLa及びGdは用いられない以外はいずれも同様にして製造される。
【0017】
組成が(R1−x,Eu)MOである従来のEu付活希土類燐バナジン酸塩蛍光体(以下、従来の希土類燐バナジン酸塩蛍光体ともいう)に特定の金属元素を含有させると発光輝度などの特性が向上することが知られているが、本発明の蛍光体は組成中に金属元素LnとしてCe、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びBi(さらに、前記各元素に加えて前記RがYである場合はさらに該Ln中にはLa、及びGdが含まれる)の中から選択される少なくとも2種の金属元素を含有させるもので、これら2種以上の特定金属元素(Ln)を含有させることによって、冷陰極蛍光ランプとした場合、その光束がさらに向上する。
以下の説明においては、付活剤のEuに加えて特定金属元素Lnを2種以上添加するため、説明を煩雑にしないため、便宜上、第1の金属元素Ln、第2の金属元素Lnという表現を使用するものとし、これらを総称して金属元素Lnという。金属元素Ln1、Lnの区別は、第1の金属元素Lnとして単独で添加した場合にランプの光束をより高くする金属元素を第1の金属元素Lnとし、添加されるそ以外第2の金属元素Lnと呼び、添加量の順番ではないものとする。前記の第1の金属元素Lnとして選択される順は、下記の比較例1〜17等の結果から、Tb>Pr>Bi>Ce>Tm>Ho=Er>Lu>Sm=Dy>Yb>La>Gd>Ndの順である。
【0018】
本発明の蛍光体に含有させる少なくとも2種の金属元素Lnとしては、特にTbを必須成分として含有させることが好ましい。
これはTbを単独で添加した蛍光体では、最も高光束のランプをを得ることができるからであり、Tbを第1の金属元素Lnとし、該第1の金属元素Ln(Tb)を除く金属元素である、第2の金属元素Ln(Ce、Pr、Nd、Sm、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、La、Gd及びBiの中から選択される少なくとも1種の金属元素群)を添加することにより、蛍光ランプとした場合に、光束向上効果が得られる。
【0019】
Tbに次いで単独での添加で高光束が得られる元素はPrとBiであり、特にBiがTbに次ぐ好ましい第1の金属元素Lnの態様である。
そして第1の金属元素Ln(好ましくは前述の通りTb、Bi)と併用される金属元素として特に好ましいのはYb、Bi、Ho、Tm,Gd及びErの中の少なくとも1種であって、これらを含有させることによって、得られる蛍光体を蛍光膜とする冷陰極蛍光ランプや発光装置ではその光束や発光輝度がより向上する。
【0020】
本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体中に含有する金属元素Lnの総含有量が蛍光体に対して1000ppmより多いと、金属元素Lnの添加により得られる蛍光体の発光輝度の向上効果が不純物の増加による特性低下と拮抗して来ると考えられる。したがって、蛍光体中に含有させる金属元素Lnの総含有量は1000ppm以下とする必要がある。
また、本発明の蛍光体が含有する2種類以上の金属元素Lnの総量が200ppmより多いと冷陰極蛍光ランプとしたときの光束向上効果は頭打ちになり、反対に10ppmより少ないと金属元素Lnを含有しない従来の希土類燐バナジン酸塩蛍光体や、1種類の金属元素(Ln)のみを含有する希土類燐バナジン酸塩蛍光体に比べて冷陰極蛍光ランプとしたときの光束向上効果が顕著にならないため好ましくない。
したがって、本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体に含有させる金属元素Lnの総量は、特に冷陰極蛍光ランプの蛍光膜として用いた時の光束向上の点で、蛍光体に対して10〜200ppmであるのがより好ましい。
【0021】
従来の金属元素を単独で添加した希土類燐バナジン酸塩蛍光体は、従来の金属元素を含有しない希土類燐バナジン酸塩蛍光体よりも特性が向上することが公知であり、特に金属元素としてTbを用いたときその効果が大きいことが知られている。
本発明の金属元素Lnを少なくとも2種類添加した希土類燐バナジン酸塩蛍光体は、従来の添加効果の大きいTbを単独で添加した希土類燐バナジン酸塩蛍光体より冷陰極蛍光ランプに用いたときの光束向上効果が大きく、特に第1の金属元素LnとしてTbを含有させた場合にその向上効果がより大きく、第1の金属元素をTbとし、これと前記第2の別の金属元素とからなる2種以上の金属元素Lnを含有させた本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体を蛍光膜とする冷陰極蛍光ランプは、光束向上効果の最も優れた金属元素Tbだけを単独で含有させた従来の希土類燐バナジン酸塩蛍光体からなる冷陰極蛍光ランプよりもさらに光束を向上させることができる。
【0022】
すなわち、第1の金属元素のみを添加した蛍光体と、第1の金属元素と第2の金属元素の両方を添加した蛍光体とを比べると、第1の金属元素と第2の金属元素の添加量の合計が、第1の金属元素のみを添加した蛍光体の添加量と同じである場合、2種添加した本発明の蛍光体の方が、冷陰極蛍光ランプとした時により高い光束が得られる。
【0023】
さらに、第1の金属元素(Ln)として一定量のTbを含有させるとともにTbを除く第2の金属元素(Ln)を含有させた場合、第2の金属元素の含有量が50ppm程度までは添加による光束の向上効果が明確であるが、50ppmよりも多いと、該第2の金属元素の添加による光束向上効果と、Tbのみを含有する希土類燐バナジン酸塩蛍光体を蛍光膜とする冷陰極蛍光ランプとの光束の優位性が小さくなる。
なお、前記第1の金属元素(Ln)としてTbを使用せず、該第1の金属元素(Tb)を除く他の金属元素を第1の金属元素として含有させた場合にも、同様に該第1の金属元素の含有量が一定の場合、第2の金属元素(Ln)の含有量がおよそ50ppmよりも多くなると、冷陰極蛍光ランプとしたときの光束の優位性が小さくなる傾向がある。
【0024】
このように、金属元素Lnとして第1の金属元素(Ln)を一定含有量とし、これに加えてさらに第2の金属元素(Ln)を添加した場合、該第2の金属元素の添加量を特定量以上多くすると、該第2の金属元素を含有しないものを冷陰極蛍光ランプとしたときの光束の優位性(第2の金属元素の添加効果)が低下する。すなわち、第2の金属元素を添加した割には光束は向上しないところから、金属元素の種類にもよるが、第1の金属元素と共に添加される第2の金属元素の含有量は、蛍光体に対して50ppm以下、より好ましくは40ppm以下とすることがより好ましい。
【0025】
なお、ここで述べた、添加される特定金属元素(Ln)の好ましい添加量は各金属元素の組み合わせによって変わることは当該者には明白であり、その最適添加量は、本発明により見出された、特定金属元素Lnを2種添加することにより、1種のみ添加した場合に最も添加効果が大であるTbのみを添加したものよりさらに明るくなることがあるという知見や、本明細書に示す多数の実施例から、当業者であれば、それぞれの添加金属の最適量を容易に求め得る。
【0026】
また、前記一般式で表される本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体において、母体組成中の元素Mがバナジウム(V)である希土類バナジン酸のバナジウム(V)を燐(P)で置換した希土類燐酸塩蛍光体や、バナジウム(V)を燐(P)で一部置換した希土類燐バナジン酸塩の場合についても、これらの蛍光体に元素Lnを添加してなる蛍光体中の金属元素(Ln)の含有量と、これらの蛍光体を用いた蛍光ランプの光速との間には元素Mがバナジウム(V)である場合とほぼ同様の相関関係があることも確認された。
【0027】
本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体の付活剤であるユーロピウム(Eu)の濃度(x)は、0.001よりも少ないと発光中心の濃度が低くなるため輝度が低下し、逆に0.2よりも多すぎると濃度消光を起こし輝度が低下してしまうため、発光輝度の点からおよそ0.001≦x≦0.2の範囲とするのが好ましく、特に0.01≦x≦0.1の範囲とするのがより好ましい。
【0028】
また、従来の希土類燐バナジン酸塩蛍光体は、蛍光ランプ用蛍光体として主に使われている希土類付活酸化イットリウム蛍光体と比較して発光輝度の温度特性が悪く、200〜300℃の高温下での発光輝度は室温での発光輝度に比べて低下し(いわゆる温度消光を起こし)、発光輝度の温度特性が悪くなりやすい。この高温での発光輝度の低下は、製造した後になんら加熱処理履歴のない蛍光体に比べて、例えば500℃以上の温度で加熱処理を受けたものの方がより顕著となる。
そのため、従来の希土類燐バナジン酸塩蛍光体を高温、高負荷のもとで動作させる蛍光膜に適用した蛍光ランプや発光装置では、例えば蛍光膜形成時のベーキング等の加熱処理工程を経ることにより発光輝度の温度特性が悪くなるため、蛍光ランプや発光装置の光束が低下する。
【0029】
これに対して本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体は、例えば650℃で15分間程度の加熱処理を施した後に、波長254nmの紫外線で励起した時の250℃における発光輝度(I250)と30℃における発光輝度(I30)とを比較すると、30℃における発光輝度(I30)に対する250℃における発光輝度(I250)の比{(I250)/(I30)}は95%以上、特に99%以上の温度特性を維持することができ、従来の希土類燐バナジン酸塩蛍光体に比べて発光輝度の温度特性がより改善される。
【0030】
次に本発明の冷陰極蛍光ランプについて説明する。
本発明の冷陰極蛍光ランプは蛍光膜として前記本発明の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体が含まれる外は従来の冷陰極蛍光ランプと同様にして製造される。
すなわち、前記のようにして得られた本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体とピロ燐酸カルシウム、硼酸カルシウム−バリウムなどの結着剤を、水、酢酸ブチルなどの溶媒中で混合、分散させて蛍光体塗布スラリー溶液を調製し、次いで、このスラリー溶液を外囲器(ガラス管)内に塗布し乾燥した後に数百℃の温度で熱処理してスラリー中の有機物成分や揮発成分を除去し、ガラス管の内壁に蛍光膜を形成する。
次に蛍光膜の付いたガラス管を排気し、管内にAr−Ne等の希ガス、及び水銀を封入してから管の両端を封じ、その両端に電極の取り付けることによって本発明の冷陰極蛍光ランプを得る。
【0031】
この時、通常、冷陰極蛍光ランプとして所望の発光色(多くは白)を得るために、他の蛍光体と混合して使用されるのが常であり、この時混合される蛍光体は、特に限定されるものではないが、青色としてはEuで付活されたSCA{例えば(Sr,Ba,Ca,Mg)10(PO12:Eu}又はBAM(BaMgAl1017:Eu)が使用され、その中でも特に発光の色度座標のy値が低いもの、例えばBAMであればy≦0.07、SCAであればy≦0.04のものが、色再現範囲を向上させるために好ましく、緑であればTbで付活されたLAP(リン酸ランタン:LaPO:Ce,Tb)、CAT(セリウムアルミニウム酸塩:CeMgAl1119:Tb)、等、Eu、Mnで共付活されたBAM(BaMgAl1017:Eu、Mn)、CAT:Mn、CMM(CeTbMgAl1119:Mn)、等が使われるが、色再現範囲の点で好ましくはMnの発光を使用する蛍光体である。また、更に赤色蛍光体の1部として、光束を向上させるためにEu付活されたYOX(酸化イットリウム:Y:Eu)、色再現範囲を広くするためにMn付活されたジャーマネート蛍光体(3.5MgO・0.5MgF・GeO:Mn等)等を本願発明の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体とともに使用しても良い。
【0032】
本発明の冷陰極蛍光ランプは、その蛍光膜として発光輝度の温度特性が従来の希土類燐バナジン酸塩蛍光体よりも良好な前記本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体が用いられているので、蛍光ランプの蛍光膜を形成する工程での加熱処理による発光輝度の温度特性の悪化が少なく、したがって、従来の希土類燐バナジン酸塩蛍光体を用いた蛍光ランプに比べて高温、高負荷のもとで点灯させたときよりも光束の高い冷陰極蛍光ランプを得ることができる。
【0033】
また、本発明の発光装置は近紫外ないし短波長可視光域に発光スペクトルのピーク波長を有するLEDや半導体レーザーからなる第1の光源と、該光源からの発光を受光し得る位置に配置され、該光源からの発光を吸収してこれとは異なる波長域の発光に波長変換することができる蛍光体からなり、蛍光体として前記の本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体を用いる以外は従来の発光装置と同様の構成からなる。
【0034】
すなわち本発明の発光装置は、例えばガラス板や透明アクリル板などの光透過性の板の片面にその構成要素の1つである本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体を塗布して、該蛍光体が塗布された板の塗布面とは反対側、または、側面から発光ダイオードや紫外線ランプなどからなる第1の光源からの発光を入射させることによって面発光光源としたり、発光ダイオードのウエハー部分に希土類燐バナジン酸塩蛍光体をマウントすることによって点光源とする。
本発明の希土類燐バナジン酸塩蛍光体は特に紫外ないし近紫外波長域の発光によって効率良く励起されて赤色発光を呈するので、従来の希土類燐バナジン酸塩蛍光体を用いた発光装置に比べてより高輝度で温度特性の良好な発光を示す。
【0035】
本発明のカラー液晶表示装置は、光シャッターとして機能する液晶素子と、該光シャッターに対応する少なくとも赤、緑、青の3色の各光をそれぞれ透過するカラーフィルターからなる3画素で構成された一つの絵素を平面内に多数配置して表示面を形成するとともに、その背後に透過照明用のバックライトを配置して構成されるカラー液晶表示装置であって、前記バックライトの光源として本発明の冷陰極蛍光ランプ、又は発光装置が用いられる外は従来のカラー液晶表示装置と同様の構成を有する。
光源として用いられる本発明の冷陰極蛍光ランプ又は発光装置素子は、通常、液晶素子とカラーフイルターとの組み合わせからなる表示面の背面(液晶素子側)に設置して透過型タイプのカラー液晶表示装置として使用されるが、該液晶表示面の手前(カラーフィルター側)に設置して反射型タイプのカラー液晶表示装置とすることもできる。
【実施例】
【0036】
次に、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。
〔実施例1〕
イットリウム・ユーロピウム共沈酸化物(Y0.95,Eu0.05
0.99998225mol
五酸化二バナジウム(V) 1.05mol
酸化テルビウム(Tb、第1の金属元素源)
0.000025mol
二酸化セリウム(Ce、第2の金属元素源) 0.0000125)mol
上記蛍光体原料を混合し、アルミナ坩堝に充填して大気中において1100℃で2時間焼成した後、炉外に取り出して焼成物を分散、洗浄し乾燥することにより、実施例1のEu付活バナジン酸イットリウム蛍光体を得た。
なお、上記原料中、イットリウム・ユーロピウム共沈酸化物(Y0.95,Eu0.05は酸化イットリウム(Y)と酸化ユーロピウム(Eu)との混合物(混合モル比95:5)を硝酸に溶解し、この溶液に蓚酸を添加してYとEuとの蓚酸塩を共沈させ、得られたYとEuとの共沈蓚酸塩を加熱・分解することにより調製した。
このようにして得られた実施例1の蛍光体の組成を分析したところ、組成が(Y0.95,Eu0.05)VOであり、さらに21ppmのTbと25ppmのCeとを含有していた。
表1に実施例1の蛍光体の付活剤を含む蛍光体組成と、この蛍光体中にEu(付活剤)以外に含まれる第1、及び第2の添加金属元素及びその含有量を示す。
【0037】
実施例1の蛍光体について、650℃で15分間の加熱処理を施した後、波長254nmの紫外線(水銀励起)により励起したときの30℃での発光輝度(I30)と250℃での発光輝度(I250)とを比較したところ、30℃での発光輝度(I30)に対する250℃での発光輝度(I250)の割合(I250/I30)は101.2%であった。なお、この蛍光体の前記の割合(I250/I30)はこの蛍光体の温度特性を評価する尺度となるもので、この割合が大きい程、その蛍光体の発光輝度の温度特性がより良好であることを示す。
【0038】
次に、得られた実施例1の蛍光体と青色発光のSCA蛍光体と緑色発光のBAM;Eu、Mn蛍光体とピロ燐酸カルシウム(結着剤)とを混合して蛍光体スラリー溶液(蛍光体塗布液)を調製した。得られたスラリー溶液をガラス管内に塗布し乾燥した後に大気雰囲気下において550℃で15分、加熱処理し該ガラス管内壁に蛍光面を形成した。蛍光面の設けられたガラス管を排気したのち管内にArガスと水銀を封入し、電極の取り付けを行って実施例1の白色発光冷陰極蛍光ランプを得た。白色にするのは、実際に液晶TV等で使用される場合には、白色での光束が重要であるからである。
実施例1の冷陰極蛍光ランプの光束は、TbもCeも含有していない下記の比較例1の蛍光体を用いて作製された比較例1の冷陰極蛍光ランプの光束を100とした時の相対光束は109.1%であった。
【0039】
〔比較例1〕
蛍光体原料の中のTbもCeも使用しなかった以外は実施例1の蛍光体と同様にして、組成が(Y0.95,Eu0.05)VOである比較例1のEu付活酸バナジン酸イットリウム蛍光体を得た。
次に、得られた比較例1の蛍光体を赤色発光蛍光体として用いた以外は、青色発光蛍光体、及び緑色発光蛍光体も含め、実施例1の冷陰極蛍光ランプと同様にして比較例1の冷陰極蛍光ランプ(白色発光)を製造した。この時、比較例1の蛍光体、青色発光蛍光体、及び緑色発光蛍光体の配合比は、実施例1の冷陰極蛍光ランプと一致するよう、配合比を微調整した。
【0040】
〔実施例2〜28、比較例2〜17〕
第1の金属元素源としてTbを用い、第2の金属元素源としてそれぞれ表1に示す元素を含む化合物を用いた以外は実施例1の蛍光体と同様にして実施例2〜28のEu付活バナジン酸イットリウム蛍光体を製造した。
また、第1の金属元素源としてTbを用いた以外は比較例1の蛍光体と同様にして比較例2〜4を製造した。
また、第1の金属元素源として、実施例1〜18の蛍光体製造時の第2の金属元素源と同じ原料を用いて比較例5〜17のEu付活バナジン酸イットリウム蛍光体を製造した。
【0041】
次いで、実施例3、5、7〜11の蛍光体、及び比較例1、2の各蛍光体について、実施例1の蛍光体と同様にして、650℃で15分間の加熱処理を施した後、波長254nmの紫外線により励起したときの30℃での発光輝度(I30)と250℃での発光輝度(I250)とを比較した結果{(I250/I30)比の百分率、すなわち、各蛍光体の温度特性}を、各蛍光体が含有する第1、及び第2の金属元素、並びにその含有量とともに表1に示す。なお表1には代表例として、比較例1の蛍光体と比較して特に温度特性に顕著な向上が認められた蛍光体についてのみ例示したが、上記以外の蛍光体の温度特性もほぼ比較例1の蛍光体に比べて温度特性は向上していた。
【0042】
次に、実施例1の蛍光体に代えて実施例2〜28の蛍光体、及び比較例2〜17の蛍光体を用いた以外は実施例1の冷陰極蛍光ランプと同様にして実施例2〜28の冷陰極蛍光ランプ、及び比較例2〜17の冷陰極蛍光ランプを作製した。なお、これらの冷陰極蛍光ランプの製造に当たっても、いずれも実施例1の冷陰極蛍光ランプと実質同一の色座標になるよう赤色、緑色、及び青色の各蛍光体の配合比を調節した。
前記比較例1の冷陰極蛍光ランプの光束を100としたときの、実施例2〜28の冷陰極蛍光ランプ、及び比較例2〜17の冷陰極蛍光ランプの相対光束を表1に示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
表1からわかるように、第1の金属元素(本例ではTb)に加えて、該第1の金属元素以外の第2の金属元素を含有する実施例1〜28のEu付活酸バナジン酸イットリウム蛍光体は、第1の金属元素も第2の金属元素も含有しない従来の(Y0.95,Eu0.05)VO蛍光体(前記比較例1の蛍光体)に比べて発光輝度の温度特性が改善されており、実施例1〜28の蛍光体を蛍光膜として用いた実施例1〜28の冷陰極蛍光ランプは、前記比較例1の冷陰極蛍光ランプに比べて10%前後の光束の向上が認められた。
【0046】
また、実施例1〜18、比較例1、及び比較例2〜4の比較からわかるように、第1の金属元素も第2の金属元素も含有しない従来の(Y0.95,Eu0.05)VO蛍光体(前記比較例1の蛍光体)に比べて、第1の金属元素(本例ではTb)を添加した蛍光体(比較例2〜4)の発光輝度の温度特性も、これらの各蛍光体を蛍光膜とする冷陰極蛍光ランプの光束も向上するが、第1の金属元素(本例ではTb)に加えて該第1の金属元素以外の第2の金属元素を含有する実施例1〜18のEu付活酸バナジン酸イットリウム蛍光体では、その発光輝度の温度特性も、これらの蛍光体を蛍光膜とする冷陰極蛍光ランプの光束も、さらに向上していた。
【0047】
さらにまた、比較例5〜17は、実施例で使用した第2の金属元素を単独添加した場合の冷陰極蛍光ランプ(CCFL)の相対光束を示している。
これらの結果からは、2種以上の金属元素を添加することにより(各実施例参照)、相対光束は第1の金属元素のみを添加した場合(比較例2,3参照)と第2の金属元素のみを添加した場合(比較例5〜17参照)の中間値になるのではなく、どちらよりも高くなるという驚くべき効果が認められる。
特に、第2の金属元素としてNdを添加したものでは、単独添加であれば相対光束が88.1に下がっているにもかかわらず(比較例8参照)、2種添加により(実施例4参照)、Tb単独添加(比較例2参照)より光束が増大するという驚くべき結果が得られている。
【0048】
また、第2の金属元素の量を増やすと(実施例19〜28)、冷陰極蛍光ランプの光束向上効果は、何も添加していない蛍光体を使用した場合(比較例1)よりははるか増大するが、Tb単独添加のラインに近づいてくる傾向があり、特にLa、Smの添加でこの傾向が顕著である。すなわち第2の金属元素としてLa、Smを使用する場合には、40ppm以下が特に好ましい(実施例2、5と実施例27、28との比較等を参照)。
【0049】
なお、本実施例においては、第1の金属元素としてTbを用いた場合を用いて説明したが、これは単独添加の場合、Tbを添加した蛍光体が冷陰極蛍光ランプにしたとき最もっとも高光束となるため、Tb添加の例を用いて説明したものである。また、実施例においては水銀を用いた冷陰極蛍光ランプにて説明したが、希ガスランプでも同様の効果が得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組成式が(R1−x,Eu)MOで表され、さらに1000ppm以下の金属元素Lnを含有することを特徴とする赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
(ただし、前記組成式において、RはY、La、及びGdの中から選択される少なくとも1種の金属元素であり、MはV及び/又はPであり、Lnは前記RがYである場合はCe、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、La、Gd及びBiの中から選択される少なくとも2種の金属元素であり、また、前記RがLa及び/又はGdである場合はCe、Pr、Nd、Sm、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、及びBiの中から選択される少なくとも2種の金属元素であって、xは0.001≦x≦0.2なる条件を満たす数である)
【請求項2】
650℃で15分間の加熱処理を施した後に、波長254nmの紫外線で励起した時の250℃における発光輝度(I250)が、30℃における発光輝度(I30)の95%以上であることを特徴とする赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
【請求項3】
前記赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体が請求項1に記載の組成を有することを特徴とする請求項2に記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
【請求項4】
前記金属元素Lnの含有量が蛍光体に対して10〜200ppmであることを特徴とする請求項1又は3に記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
【請求項5】
前記金属元素Lnとして、Tbを必須成分として含むことを特徴とする請求項1、3又は4のいずれか1項に記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
【請求項6】
前記金属元素Lnとして、さらにYb、Bi、Ho、Sm、Gd及びErの中から選択される少なくとも1種を必須成分として含むことを特徴とする請求項5に記載の赤色発光希土類バナジン酸塩蛍光体。
【請求項7】
Tbを除く前記金属元素Lnの含有量が50ppm以下であることを特徴とする請求項5又は6に記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体。
【請求項8】
可視光に対して透明な外囲器の内壁に蛍光膜を形成すると共に、該外囲器内に水銀と希ガス、又は希ガスを封入してなり、該水銀あるいは希ガスの放電によって放射される波長160〜300nmの紫外線により前記蛍光膜を発光させる冷陰極蛍光ランプであって、前記蛍光膜が請求項1乃至7のいずれか1項に記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体を含むことを特徴とする冷陰極蛍光ランプ。
【請求項9】
近紫外ないし短波長可視域に発光スペクトルのピークを有する励起用光源と、該励起用光源からの発光の少なくとも一部を吸収してこれとは異なるピーク波長の発光を呈する蛍光体とを光学的に組み合わせてなる発光装置であって、前記蛍光体として請求項1乃至7のいずれか1項に記載の赤色発光希土類燐バナジン酸塩蛍光体を含むことを特徴とする発光装置。
【請求項10】
光シャッターとして機能する液晶と、該光シャッターに対応する少なくとも赤、緑、青の3色の光を透過させることを目的としたカラーフィルターと、透過照明用のバックライトとを組み合わせて構成されるカラー液晶表示装置において、前記バックライトの光源が請求項8に記載の冷陰極蛍光ランプ、又は請求項9に記載の発光装置であることを特徴とするカラー液晶表示装置。

【公開番号】特開2010−174182(P2010−174182A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−20407(P2009−20407)
【出願日】平成21年1月30日(2009.1.30)
【出願人】(000005968)三菱化学株式会社 (4,356)
【Fターム(参考)】