説明

赤色素の製造方法および当該赤色素を含む飲食品

【課題】 本発明は、色調の改善された赤色素の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物とを反応させること、および当該反応物に亜硫酸イオンを生成する化合物を添加することを含む、赤色素を製造する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は赤色素の製造方法に関し、特には、イリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物とを用いて赤色素を製造する方法に関する。また、本発明は、当該方法により得られた赤色素を含む飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
赤色素の用途拡大のために、赤色素の色調改善および耐酸性向上が求められている。赤色素として、クチナシ赤色素、ベニバナ赤色素、食用赤色2号、3号、40号、アントシアニン、アカビート、コチニール色素など、種々の色素が挙げられる。例えば、クチナシ(Gardenia)の果実抽出物から得られるイリドイド化合物のアグルコンと第一級アミノ基含有物質とを酸性条件下で作用させることにより赤色素が製造される。このクチナシ果実抽出物由来の赤色素は、他の赤色素と比べて、耐酸性、耐熱性および耐光性に優れている。
【0003】
特許文献1は赤色素の製造方法を記載する。当該製造方法は、イリドイド化合物と、一級アミノ基を持つ物質とを酸性条件下で反応させることを特徴とする。当該一級アミノ基を持つ物質として、アミノ酸、大豆蛋白、およびペプトンが挙げられている(第一表、例IV)。
【0004】
特許文献2の赤色素の製造方法は、イリドイド化合物中イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有する物質(A)を、物質(A)に対して2モル当量以上のクエン酸、リンゴ酸、コハク酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、アスコルビン酸およびエリソルビン酸からなる群から選ばれる有機酸および物質(A)に対して0.7モル当量以上のアルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸またはこれらの塩をpH3〜6の範囲で反応させることを特徴とする。
【0005】
特許文献3のクチナシ赤色素の製造方法は、イリドイド化合物中イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有する物質と第一級アミノ基含有物質とを五炭糖の存在下、酸性条件下で反応させることを特徴とする。
【0006】
特許文献4は、イリドイド配糖体のアグルコンとタウリン含有物質を共存させ、好気的条件下で青色色素を製造する方法を記載する。当該方法は、ポリフェノール化合物の存在下で該青色色素の製造をするか、または青色色素製造後にポリフェノール化合物を添加することを特徴とする。
【0007】
特許文献5は、イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とタンパク質加水分解物とを反応させて赤色素を製造する方法を記載する。当該方法は、前記タンパク質加水分解物において、該加水分解物の乾燥重量に対するアミノ酸含有量が35重量%以上であることおよび、ニンヒドリン法で測定した場合に、前記アミノ酸のうち50重量%以上がグルタミン酸およびアスパラギン酸であり且つ前記グルタミン酸とアスパラギン酸との合計重量に対するロイシンの重量の割合が8%以下であることを特徴とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開昭54−86668号公報
【特許文献2】特開平3−277663号公報
【特許文献3】特開平5−59296号公報
【特許文献4】特開平7−111896号公報
【特許文献5】特許第4526600号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
赤色素の色調が明るくそして鮮やかであることが求められている。当該色素が十分な耐酸性および耐光性を有することも求められている。赤色素の用途が広がりつつあり、種々の食品に適用されるために、種々の条件下でもその赤色が保たれることが望ましい。特に近年、加工食品が非常に多様化しており、例えば酸味が強い低pH食品については耐酸性に優れた赤色素が求められており、また、透明なパッケージに入れられた食品については耐光性に優れた赤色素が求められている。また、当該色素の生産コストの低減も求められている。
本発明は、これらの要求を満たす赤色素の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物とを反応させる工程、および当該反応物に亜硫酸イオンを生じる化合物(以下、「亜硫酸イオン生成化合物」ともいう)を添加する工程を含む、赤色素を製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の方法により製造された赤色素は、亜硫酸イオン生成化合物の作用により、当該化合物が添加されない方法により作られた赤色素と比べて、色調が改善している。すなわち、本発明により、明るくそして鮮やかな色調を有する赤色素を製造することが可能となった。さらに、赤色素の製造の原料として、種々のアミノ酸またはタンパク質加水分解物を用いたとしても、本発明により、明るくそして鮮やかな色調を有する赤色素を製造することができる。
【0012】
また、本発明の方法により製造された赤色素は、耐酸性に優れている。すなわち、当該色素を酸性条件に付した場合、沈殿が生じにくい。さらに、本発明の方法により製造された赤色素は、耐光性が優れている。すなわち、当該色素に光を照射しても色素の退色が少ない。また、当該色素に光を照射した場合であっても、色素の沈殿生成量が少ない。さらに、本発明の方法により製造された赤色素は、耐熱性に優れている。すなわち、当該色素を熱にさらしても色素の退色が少ない。また、当該色素を熱にさらした場合であっても、色素の沈殿生成量が少ない。これらの結果、種々の条件下で当該色素を使用することができるので、当該色素は幅広い食品の着色に使用可能である。
【0013】
従前、特許出願第2010−179678号の明細書に記載されているように、タウリン含有物質により耐酸性改善が図られていた。しかし、タウリン含有物質を用いて製造された赤色素よりも、本発明の方法により製造された赤色素のほうが、耐酸性がさらに改善される。また、タウリン含有物質は高価であるので、赤色素の製造コストを高めるという問題があった。一方、本発明の方法において用いる亜硫酸イオン生成化合物は、タウリン含有物質よりも安価であるにもかかわらず、耐酸性が改善される。よって、本発明により、赤色素製造のコストが削減される。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に従う赤色素の製造方法は、
(1)イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物とを反応させる工程、および
(2)当該反応物に亜硫酸イオン生成化合物を添加する工程
を含む。
工程(1)において赤色素が生成され、そして、工程(2)において、工程(1)で生成した赤色素の色調および/または耐酸性が改善される。工程(2)の後に得られた赤色素が、本発明の製造方法により得られた赤色素(以下、「本発明の赤色素」ともいう)である。
【0015】
本発明の製造方法において使用される「イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物」とは、下記式(I)に示される配糖体および/または下記式(II)に示される化合物である。式(I)に示される配糖体は、例えばゲニポシド酸である。式(II)に示される化合物は、例えばゲニポシド酸のアグルコンである。
【0016】
【化1】

【0017】
クチナシの果実抽出物は、イリドイド化合物を多量に含有している。クチナシは、例えば、Gardenia augusta Merrill、およびGardenia jasminoides Ellisである。この果実抽出物は、ゲニポシド酸のようにイリドイド骨格の4位にカルボキシル基(−COOH基)を有する化合物、およびゲニポシドのようにイリドイド骨格の4位にメチルエステル基(−COOCH基)を有する化合物を含みうる。当該メチルエステル基を有する化合物のメチルエステル基は、エステル加水分解により上記カルボキシル基に変換することができる。当該エステル加水分解は、アルカリ性溶液、OH型イオン交換樹脂、エステラーゼ活性を有する酵素等を、単独にまたは組み合わせて作用させることにより行われうる。果実抽出物は、例えば、クチナシの乾燥果実から含水エタノールや水で抽出して得られうる。ゲニポシドは、粗製若しくは精製されて純度を高くしたものが市販で入手も可能である。
【0018】
本発明の製造方法において使用されるアミノ酸とは、分子内にカルボキシル基とアミノ基とを有する化合物およびこれらの塩を含む。本発明の製造方法において、1または複数種類のアミノ酸を用いてもよい。本発明におけるアミノ酸は、好ましくは酸性アミノ酸または中性アミノ酸またはこれらの塩であり、さらに好ましくは、これらのアミノ酸のうち生体を構成するアミノ酸である。本発明において、酸性アミノ酸は、等電点が5未満のアミノ酸をいう。酸性アミノ酸の例として、アスパラギン酸(等電点2.77)およびグルタミン酸(等電点3.22)を挙げることができる。また、本発明において用いられる酸性アミノ酸は、等電点が5未満であればよく、上記以外のアミノ酸も用いることができる。本発明において、中性アミノ酸は、等電点が5〜7のアミノ酸をいう。本発明の方法において好ましい中性アミノ酸として、アスパラギン(等電点5.41)、グルタミン(等電点5.65)、アラニン(等電点6.00)、グリシン(等電点5.97)、バリン(等電点5.96)、セリン(等電点5.68)、およびトレオニン(等電点6.16)、特にはアラニンおよびバリンを挙げることができる。また、本発明において、中性アミノ酸は、分子量が120以下であることが好ましい。分子量が120超の中性アミノ酸(アスパラギンおよびグルタミンを除く)を用いる場合および塩基性アミノ酸(すなわち等電点が7超であるアミノ酸)を用いる場合、工程(1)の反応において沈殿を多く生成し、工程(1)において得られる赤色素の量が少なくなりうる。
【0019】
本発明の製造方法において使用されるタンパク質加水分解物は、任意のタンパク質を加水分解することにより得られる。本発明の製造方法において、1または複数種類のタンパク質加水分解物を用いてもよく、または、タンパク質加水分解物とアミノ酸との混合物を用いてもよい。当該加水分解は、酸、酵素等により行われうる。当該酸として塩酸が挙げられる。当該酵素として、パパイン、ブロメライン、サーモリシン、麹若しくは麹分解物、または他のプロテアーゼが挙げられる。
【0020】
本発明の製造方法において使用されるタンパク質加水分解物の例として、グルテン加水分解物が挙げられる。グルテン加水分解物として、コムギグルテン加水分解物、コーングルテン加水分解物、またはオオムギ、ライ麦等の穀類由来のグルテン加水分解物並びにこれらの混合物を挙げることができる。タンパク質加水分解物として、市販されているコムギグルテン加水分解物を用いることもできる。グルテンは、通常、コムギ粉からコムギデンプンを製造する際の副産物として得られる。例えば、コムギ粉に少量の水を加え固く練って得られた混練物を水洗すると、コムギデンプンが水中に懸濁する一方で、水に懸濁しない残留した固形の塊が生じる。当該塊は、グルテンを含み、さらに約60〜70質量%の水分を含みうる。当該塊から保存性を高めるために水分を除去することもできるがそのまま使うこともできる。グルテンの形態は、ペースト状、粉末状、または顆粒状でありうる。
【0021】
好ましくは、タンパク質加水分解物の乾燥重量に対するアミノ酸含有量の下限は、35重量%、好ましくは36重量%、好ましくは37重量%、好ましくは38重量%、好ましくは39重量%、より好ましくは40重量%、より好ましくは41重量%、さらにより好ましくは42重量%でありうる。このアミノ酸含有量により、工程(1)で得られる赤色素において、好ましい赤色が達成され、色素が堅牢となり、そして十分な色力が達成される。タンパク質加水分解物の乾燥重量に対するアミノ酸含有量の上限はいかなる値であってもよいが、例えば、99重量%、98重量%、97重量%、96重量%、95重量%、90重量%、85重量%、80重量%、75重量%または70重量%であってよい。本発明において、上記アミノ酸含有量の上限および下限は、上記の値から適宜選択されうるが、例えば35〜99重量%、特には36〜98重量%、さらに特には37〜97重量%でありうる。上記「加水分解物の乾燥重量」とは、賦形剤および水分の重量を除いた当該タンパク質加水分解物の重量をいう。乾燥重量は、電子式水分計(株式会社島津製作所、MOC-120H)などによる常圧加熱乾燥法により測定される。当該方法において、加熱乾燥は、赤外線ヒーターで120℃に熱することにより行われる。水分の重量は加熱乾燥において恒量に達したときの減少量に基づく。賦形剤の重量は、当技術分野の慣用の技術により測定されうる。デキストリンおよびデンプンの重量は例えば、加水分解後にSomogyi−Nelson法または酵素法を行うことにより測定されうる。乳糖の重量は例えば、HPLC法により測定されうる。上記「アミノ酸含有量」は、ニンヒドリン法によるアミノ酸組成の分析結果から求められる。ニンヒドリン法では、まずHPLC(L−7000、株式会社日立ハイテクノロジーズ)によって、アミノ酸を分離し、そしてニンヒドリン反応による発色の吸光度を測定することにより、当該アミノ酸組成を分析する(例えば、「衛生試験法・注解2005、日本薬学会編、2005年2月発行、金原出版」を参照)。
当該アミノ酸含有量とは、タンパク質加水分解物の乾燥重量のうち、遊離アミノ酸が占める重量%をいい、すなわちアスパラギン酸、スレオニン、セリン、グルタミン酸、プロリン、グリシン、アラニン、システイン、バリン、メチオニン、イソロイシン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、リジン、ヒスチジン、アルギニン、グルタミン、アスパラギンおよびトリプトファンの合計量が占める重量%をいう。本発明において、遊離アミノ酸とは、タンパク質またはペプチド中に在るアミノ酸を含まない。
本発明において、タンパク質加水分解物中に含まれる遊離アミノ酸の重量は、ニンヒドリン法で測定された値である。ニンヒドリン法で測定した場合、グルタミンはグルタミン酸として求められる。すなわち、ニンヒドリン法で求められたグルタミン酸の量は、遊離アミノ酸中のグルタミンおよびグルタミン酸の総量である。同様に、ニンヒドリン法で測定した場合、アスパラギンはアスパラギン酸として求められる。すなわち、ニンヒドリン法で求められたアスパラギン酸の量は、遊離アミノ酸中のアスパラギンおよびアスパラギン酸の総量である。
【0022】
上記アミノ酸含有量のうちのグルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、アラニン、グリシン、バリン、セリン、およびトレオニン(特にはアラニン、バリン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、さらに特にはグルタミン酸およびアスパラギン酸)の合計重量の下限は、50重量%、好ましくは52重量%、より好ましくは54重量%、さらにより好ましくは56重量%、さらにより好ましくは58重量%である。これらアミノ酸の合計重量により、好ましい赤色が達成され、色素が堅牢となり、そして十分な色力が達成される。当該合計重量の上限はいかなる値であってもよいが、例えば、99重量%、98重量%、97重量%または96重量%である。本発明において、当該上限および下限は上記の値から適宜選択されるが、例えば50〜99重量%、52〜98重量%または54〜97重量%である。
【0023】
タンパク質加水分解物中のグルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、アラニン、グリシン、バリン、セリン、およびトレオニン(特にはアラニン、バリン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、さらに特にはグルタミン酸およびアスパラギン酸)の合計重量に対するロイシンの重量の割合は好ましくは8%以下であり、より好ましくは7%以下であり、さらにより好ましくは6%以下である。本発明の方法において、上記割合は低いほど好ましく、タンパク質加水分解物中にロイシンが含まれていなくてもよい。上記割合により、工程(1)で得られる赤色素が、明るくそして鮮やかな色調を有する。さらに、上記割合により、工程(1)で得られる赤色素の十分な収量が確保される。この割合は、上記ニンヒドリン法によってアミノ酸組成を分析することにより求められる。
【0024】
タンパク質加水分解物中のグルタミン酸、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン、アラニン、グリシン、バリン、セリン、およびトレオニン(特にはアラニン、バリン、グルタミン酸およびアスパラギン酸、さらに特にはグルタミン酸およびアスパラギン酸)の合計重量に対するプロリンの重量の割合は好ましくは15%以下であり、より好ましくは12%以下であり、さらにより好ましくは10%以下でありうる。本発明の方法において、上記割合は低いほど好ましく、タンパク質加水分解物中にプロリンが含まれていなくてもよい。この割合により、工程(1)で得られる赤色素の生成量が多くなる。この割合は、上記ニンヒドリン法によってアミノ酸組成を分析することにより求められる。
【0025】
これらの割合は、タンパク質の加水分解、中和、およびろ過、任意的にpH調整や冷却によって沈殿物を生成すること、そして任意的に当該沈殿物を溶解することなどにより達成されうる。
タンパク質加水分解を例えば酸により行った場合、上記割合は、当該タンパク質加水分解物を中和し、次にろ過することによって、そのろ液中において達成されうる。当該酸として、塩酸などが用いられる。当該加水分解の方法は用いるタンパク質および得られるべき加水分解物によって適宜定められるが、例えば3〜6Mの塩酸による、80〜120℃での10〜20時間の処理である。
当該中和は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリを添加することにより行われうる。当該中和の条件は、上記加水分解で用いた酸およびタンパク質並びに得られるべき加水分解物によって適宜定められうる。
当該ろ過は、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過または遠心ろ過により行われてよく、好ましくは加圧ろ過により行われる。当該加圧ろ過は、フィルタープレスにより行われうる。
当該pH調整は、上記ろ液をpH2〜4に調整して行う。次に当該ろ液を冷却し、攪拌して沈殿物を生成させ、この沈殿物含有ろ液をさらにろ過して得られたケーキは、上記割合を有するタンパク質加水分解物として用いることができる。当該pH調整は、塩酸などの酸により行われうる。当該pH調整の前に、当該ろ液を、エバポレータにより1.2〜2倍に濃縮してもよい。上記冷却においては、当該ろ液の温度を、40℃以下、好ましくは30℃以下、より好ましくは20℃以下、さらにより好ましくは10℃以下にする。上記攪拌は、生成した沈殿物が沈降することによって、続くろ過に付される沈殿物の量が少なくなることを回避するように行われうる。当該ろ過は、自然ろ過、減圧ろ過、加圧ろ過または遠心ろ過により行われてよい。当該ケーキを、再度水に懸濁して洗浄し、再度ろ過して得られたケーキを乾燥し、上記割合を有するタンパク質加水分解物として用いるが、そのまま用いることもできる。当該洗浄およびろ過を繰り返すことで、上記割合を低めることもできる。
得られたケーキを水に懸濁し、pHを4〜6に調整して当該ケーキを溶解し、次にろ過してろ液が得られる。当該ろ液を、上記タンパク質加水分解物として用いることができる。当該pH調整は、水酸化ナトリウムなどのアルカリにより行われうる。
これらのろ液は、スプレードライヤーにより噴霧乾燥されうる。得られた乾燥粉末を、上記タンパク質加水分解物として用いることもできる。噴霧乾燥前に、デキストリン等の賦形剤がろ液に添加されうる。
【0026】
タンパク質加水分解物は、賦形剤を含む混合物の形で用いてもよい。当該賦形剤として、例えばデキストリン、乳糖、デンプン等の当技術分野で慣用の賦形剤が挙げられる。当該賦形剤は、例えばタンパク質加水分解物の下記噴霧乾燥前に、または増量剤として乾燥後に当該加水分解物に添加されうる。
本発明において、タンパク質加水分解物は、アミノ酸以外の物質、例えば、水、食塩、ペプチド、タンパク質、アミノ酸分析装置にかからない含窒素物質などを含みうる。アミノ酸以外のこれら物質は、タンパク質加水分解物の調製過程で生じおよび/または添加される物質でありうる。
【0027】
本発明の製造方法において使用される「亜硫酸イオンを生成する化合物」とは、水中で亜硫酸イオンを生成することができる化合物をいう。当該化合物の例として、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウム、無水亜硫酸を挙げることができ、これらはいずれも市販で入手可能である。
本発明では、工程(2)において、亜硫酸イオン生成化合物の作用により、工程(1)で得られた赤色素の色調が改善する。色調が改善するとは、基準とする赤色素と比べて、赤色素の明るさおよび/または赤味が増すことを意味し、すなわちHunter−Lab表色系において、L値が0.5以上増加すること、a値が0.5以上増加すること、または、L値およびa値がいずれも0.5以上増加することを意味する。あるいは、色調が改善するとは、基準とする赤色素と比べて、色差が0.5以上増加すること、または、色差が0.5以上増加し且つ、Hunter−Lab表色系において、L値が0.5以上増加すること、a値が0.5以上増加すること、若しくは、L値およびa値がいずれも0.5以上増加することを意味する。
また、本発明では、工程(2)において、亜硫酸イオン生成化合物の作用により、工程(1)で得られた赤色素の耐酸性、耐熱性および/または耐光性が向上する。
【0028】
亜硫酸イオン生成化合物の添加量は、工程(1)で得られた反応物中の赤色素の色素量1ku(kilo unit)に対して、0超molであればよい。好ましくは、当該添加量は、当該色素量1kuに対して0超〜7mmol、より好ましくは0.01〜5mmol、さらにより好ましくは0.1〜4mmol、特に好ましくは0.5〜3mmolである。これらの添加量により、工程(2)において、特に好ましい色調改善および耐酸性向上が達成される。また、これらの添加量により、工程(2)において、十分な色素量が得られる。
ここで、色素量(u)とは、色力(u/g)に色素液重量(g)を掛け算することにより算出される。色力は、色力測定法により、すなわち色素液を必要に応じて水もしくは緩衝液で希釈し、可視部での極大吸収波長における吸光度を紫外可視分光光度計(UV−2450、株式会社島津製作所)によって測定し、測定値に希釈率を乗じて得られる。色力の単位はu/gであり、これは色素液1g当たりの色素量を示し、すなわち極大吸収波長における吸光度で表した色素濃度である。よって、1uの色素量は、極大吸収波長で測定して、吸光度が1になる1g色素液に含まれる色素の量である。ここで、一般に色素液の溶媒は水もしくは緩衝液であるので、色素量は色素液の密度が1g/cmである場合を想定したものであり、すなわち1uの色素量は、極大吸収波長で測定して、吸光度が1になる1cm色素液に含まれる色素の量ともいえる。
【0029】
本発明の製造方法において、赤色素の色調改善および/または耐酸性向上の為に、亜硫酸イオン生成化合物の添加後に、反応物が加熱されうる。また、加熱された反応物に亜硫酸イオン生成化合物が添加され、そしてさらに反応物が加熱されてもよい。当該加熱により、色調および/または耐酸性が改善されるとともに、これらの改善までの時間が短縮される。当該加熱の温度は、40〜100℃、好ましくは50〜97℃、より好ましくは60〜95℃でありうる。本発明の製造方法において、亜硫酸イオン生成化合物の添加後の加熱の時間は、0.25〜5時間、好ましくは0.5〜4時間、より好ましくは0.75〜3時間である。当該加熱温度および加熱時間により、工程(2)において、色調および耐酸性が改善されるとともに、これらの改善が達成されるまでにかかる時間が短縮されうる。また、これらの添加量により、工程(2)において、十分な色素量が得られる。上記加熱温度および加熱時間は、亜硫酸イオン生成化合物の種類および添加量、使用する装置ならびに製造条件に従い、当業者により適宜組み合わされうる。
【0030】
亜硫酸イオン生成化合物は、イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物との反応物に添加される。すなわち、亜硫酸イオン生成化合物は、好ましくは下記で述べる工程(d)または(e)の後に、より好ましくは工程(f)の後に添加される。下記工程(d)または(e)以前に添加された場合、亜硫酸イオン生成化合物が、上記アミノ酸もしくはタンパク質加水分解物、イリドイド化合物、有機酸または酵素と反応し、その結果、当該化合物の量が赤色素の色調および耐酸性の改善に要する量より少なくなり、所望の赤色素が得られないという問題が生じうる。亜硫酸イオン生成化合物の添加は、工程(1)の後であればいつでもよい。よって、上記反応により工程(1)で得られる赤色素の生成だけを最初に行い、色調改善および/または耐酸性向上が必要な場合に工程(2)を行うことも可能である。
【0031】
本発明において、亜硫酸イオン生成化合物を添加する前に、反応物が分離処理、特には濾過処理、さらに特には限外濾過処理に付されうる。例えば、限外濾過処理の場合、当該処理により得られた濃縮液に亜硫酸イオン生成化合物が添加されうる。当該処理により、反応物中に残っている有機酸、アミノ酸およびイリドイド化合物等の未反応物が透過液中に除去されて、イリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物との反応物が濃縮液中に濃縮される。そして、亜硫酸イオン生成化合物を濃縮液中に添加することで、当該未反応物と亜硫酸イオン生成化合物との反応が大幅に減少する。その結果、亜硫酸イオン生成化合物による耐酸性の向上が効率的に行われる。これらの分離処理として、当業者に既知の他の処理を採用してもよい。
本発明において、上記分離処理を行わずに、亜硫酸イオン生成化合物を添加してもよい。この場合、有機酸、アミノ酸およびイリドイド化合物等の未反応物と亜硫酸イオン生成化合物との反応を考慮して、赤色素と反応するのに十分な量の亜硫酸イオン生成化合物が添加されるように、亜硫酸イオン生成化合物の量が調整されうる。当該添加量は、当業者により適宜調整されうる。
【0032】
亜硫酸イオン生成化合物は、赤色素の色調改善および耐酸性改善をもたらす一方で、赤色素の分解ももたらしうる。したがって、亜硫酸イオン生成化合物が反応物中に大量に残っている場合、亜硫酸イオン生成化合物により赤色素が分解されて、十分な赤色素の量を回収できない場合がある。そこで、本発明において、亜硫酸イオン生成化合物を添加して色調および耐酸性が改善された後に、未反応の亜硫酸イオン生成化合物が除去されうる。当該除去は、例えば限外濾過処理により行われうるが、当業者に既知の他の除去処理によって行ってもよい。
また、本発明において、亜硫酸イオン生成化合物の量を調整することで、赤色素と反応せずに残る亜硫酸イオン生成化合物の量を最小化することもできる。当該最小化の結果、反応物中に残る亜硫酸イオン生成化合物を無視できる場合、亜硫酸イオン生成化合物の除去は行われなくてもよい。
また、亜硫酸イオン生成化合物の添加前の上記分離処理を行わずに、多量の亜硫酸イオン生成化合物を、イリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物との反応物に添加してもよい。そして、亜硫酸イオン生成化合物と赤色素との反応により耐酸性が向上した後に、分離処理、特には限外濾過処理によって、亜硫酸イオン生成化合物、有機酸、アミノ酸およびイリドイド化合物等の未反応物をまとめて除去してもよい。
【0033】
以下では、本発明に従う赤色素の製造方法の工程(1)および工程(2)について夫々説明する。
【0034】
工程(1)
イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物との反応は、任意の条件下で行われうるが、一般的には以下(a)〜(f)の工程を含む。
【0035】
(a)イリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物との混合
アミノ酸を用いる場合、イリドイド化合物1モルに対し、アミノ酸が0.5モル以上、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは0.6〜3モル、さらにより好ましくは0.7〜2モルとなるように、アミノ酸とタンパク質加水分解物とを混合する。タンパク質加水分解物を用いる場合、イリドイド化合物1モルに対し、タンパク質加水分解物中のアミノ酸が0.5モル以上、好ましくは0.5〜5モル、より好ましくは0.6〜3モル、さらにより好ましくは0.7〜2モルとなるように、イリドイド化合物とタンパク質加水分解物とを混合する。イリドイド骨格の4位にメチルエステル基を有するイリドイド化合物を用いる場合、上記混合の前に、当該メチルエステル基を、エステル加水分解によりカルボキシル基にする。当該エステル加水分解は、アルカリ性溶液、OH型イオン交換樹脂、エステラーゼ活性を有する酵素等を単独にまたは組み合わせて作用させることにより行われうる。アルカリ性溶液の例として、水酸化ナトリウム溶液が挙げられるが、ペレット状やフレーク状の固形水酸化ナトリウムをイリドイド化合物水溶液に加えることもできる。例えば10〜40重量%のNaOH溶液と40〜60重量%のイリドイド化合物水溶液とを重量比40:60〜60:40で混合し、さらに水を当該混合物に対して10〜30重量%の量で添加し、30〜70℃で1〜3時間加熱することにより、エステル加水分解が行われる。
【0036】
(b)有機酸の添加
イリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物との混合物に、任意的に有機酸が添加されうる。当該有機酸として、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、アジピン酸、フマル酸、アスコルビン酸若しくはコハク酸、またはそれらの混合物が挙げられる。当該有機酸は、イリドイド化合物1モルに対して2モル以上、好ましくは3〜6モルで添加されうる。
【0037】
(c)アルカリによるpHの調整
上記(a)、または(a)および(b)により得られた混合物にアルカリ性溶液を添加してpHを3〜6、より好ましくは4〜5に調整する。アルカリ性溶液の例として、10〜40重量%の水酸化ナトリウム溶液が挙げられるが、上記固形水酸化ナトリウムを加えて調整することもできる。
【0038】
(d)β−グルコシダーゼ活性を有する酵素による反応
上記(c)のpH調整後の混合物に、β−グルコシダーゼ活性を有する酵素を添加し、酵素反応をさせる。β−グルコシダーゼ活性を有する酵素として、例えばセルラーゼAP5(天野エンザイム株式会社)、セルラーゼオノズカ3S(ヤクルト薬品工業株式会社)、スミチームAC(新日本化学工業株式会社)、セルラーゼY2−NCまたはセルラーゼY−NC(ヤクルト薬品工業株式会社)などが挙げられる。酵素反応の条件は選択された酵素に従い適宜選択される。典型的には、当該酵素反応は30〜70℃で1〜30時間行われる。上記酵素反応によりイリドイド化合物が加水分解されてイリドイド化合物のアグルコンが得られる。当該アグルコンを原料として用い、(a)〜(f)の工程を実行して、(d)を省略することもできる。
【0039】
(e)反応物の加熱
上記(d)の酵素反応後、反応物(特には反応液)を80〜100℃で、0.5〜12時間、好ましくは1〜6時間、より好ましくは2〜3時間加熱する。
【0040】
(f)分離処理
上記(e)の加熱後、任意的に、反応物が分離処理に付される。当該分離処理は、特には膜濾過処理により行われる。使用できる膜は、亜硫酸イオンを透し、色素を濃縮することができるものであればよい。本発明において好ましい膜濾過処理は、限外濾過膜処理もしくはRO膜処理(特にはルーズRO膜処理)である。限外濾過膜処理において用いられる膜の分画分子量は、好ましくは1000〜35000、より好ましくは2000〜30000である。限外濾過膜の素材としては、例えばポリスルフォン、ポリエーテルサルホン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セラミックを挙げることができる。膜の形式としては、例えば中空糸モジュール型、平板型モジュール型および平膜型を挙げることができるが、ろ過速度の観点からモジュール型が好ましい。限外濾過装置としては、例えば旭化成工業株式会社製のSIP−1013、SIP−3013(中空糸モジュール、膜素材:ポリスルフォン、分画分子量:6000)、及び東ソー株式会社製のUF−10PS(分画分子量10000)等を挙げることができる。RO膜の排除限界は、好ましくは1000〜30000、より好ましくは2000〜25000である。上記膜濾過処理において、ルーズRO膜を用いること好ましい。ここで、ルーズRO膜とは、塩排除率(塩除去率)が98%以下であり且つ操作圧力30/G以下で用いられるRO膜であり、特には2価イオンの除去を目的とする膜である。ルーズRO膜の素材として、例えばポリスルフォン、ポリエーテルサルホン、ポリアクリロニトリル、ポリイミド、芳香族ポリアミド、セラミックを挙げることができる。膜の形式としては、例えば中空糸モジュール型、平板型モジュール型および平膜型を挙げることができるが、ろ過速度の観点からモジュール型が好ましい。ルーズRO膜として、例えば日東電工株式会社製のカチオン荷電型且つスパイラル型のNTR−7410、NTR−7450、NTR−7250、東レ株式会社製のSU−610、SU−620を挙げることができる。当該分離処理により、特には限外濾過処理もしくはRO膜(特にはルーズRO膜)処理により、イリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物との反応物と、イリドイド化合物、アミノ酸、タンパク質加水分解物、有機酸、酵素等の未反応物とが分離されうる。当該分離は完全に行われなくてもよく、当該反応物の量に対する当該未反応物の量が減少されるだけでもよい。これらの分離処理は当業者に既知であるが、好ましくは限外濾過処理もしくはRO膜処理が用いられる。濾過処理条件は当業者により適宜定められうる。
【0041】
工程(2)
亜硫酸イオン生成化合物の添加は下記(g)の工程とおりに行われ、その後工程(h)が行われうる。
【0042】
(g)亜硫酸イオン生成化合物の添加
上記(d)の反応後、上記(e)の加熱後または上記(f)の分離処理後、反応物に亜硫酸イオン生成化合物を添加する。亜硫酸イオン生成化合物の添加量は、上記(d)の反応後、上記(e)の加熱後または上記(f)の分離処理後の反応物中に存在する色素量1kuに対して0超〜7mmol、より好ましくは0.01〜5mmol、さらにより好ましくは0.1〜3mmolである。亜硫酸の添加後に、色調および耐酸性の改善の為に、工程(1)の反応物と亜硫酸イオン生成化合物との混合物を加熱してもよい。当該加熱の温度は、40〜100℃、好ましくは50〜97℃、より好ましくは60〜95℃でありうる。当該加熱の時間は、0.25〜24時間、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは0.75〜3時間である。当該加熱温度および加熱時間は、当業者により適宜選択されうる。
【0043】
(h)色素分離
工程(g)により得られた赤色素の分離手段は、当業者により適宜選択されうる。当該分離手段として、例えば、遠心分離、ろ過、特には限外ろ過、酸性沈殿、親水性有機溶媒添加若しくはイオン交換またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0044】
本発明において、色調とは、Hunter−Lab表色系における色調である。当該表色系は、色度を示すa、b軸よりなる直交座標と、これに垂直なL軸とから構成される色立体を成す表色系である。a値が正側で増加すると赤味、負側で増加すると緑味が増すことを意味する。b値が正側で増加すると黄味、負側で増大すると青味が増していることを意味する。L値は明度に対応する。L=100のときの色は白、L=0のときの色は黒である。L値が大きくなるほど色は明るくなる。本発明の赤色素の色調は、Lab表色系において、好ましくはLが70以上、より好ましくは71以上、さらにより好ましくは72以上であり、且つ、好ましくはaが30以上、より好ましくは32以上、さらにより好ましくは34以上でありうる。Lおよびaの値の組み合わせは、上記の値から適宜選択されうるが、Lが70以上であり且つaが30以上であることが好ましく、Lが71以上であり且つaが32以上であることがより好ましく、Lが72以上であり且つaが34以上であることがさらにより好ましい。より好ましくは、本発明の方法により製造される赤色素の色調は、Lab表色系において、好ましくはLが70以上、より好ましくは71以上、さらにより好ましくは72以上であり、好ましくはaが30以上、より好ましくは32以上、さらにより好ましくは34以上であり、且つbが好ましくは−8.0以下、より好ましくは−8.2以下、さらにより好ましくは−8.4以下でありうる。L、aおよびbの値の組み合わせは、上記の値から適宜選択されうるが、Lが70以上であり、aが30以上であり且つbが−8以下であることが好ましく、Lが71以上であり、aが32以上であり且つbが−8.2以下であることがより好ましく、Lが72以上であり、aが34以上であり且つbが−8.4以下であることがさらにより好ましい。上記Lおよびaの値を有する色調により、または上記L、aおよびbの値を有する色調により、適度に明るく且つ鮮やかな赤色が達せられる。すなわち、上記Lおよびaの値を有する色調、または上記L、aおよびbの値を有する色調は明るくそして鮮やかな色調である。さらに上記色調は赤みが強いため、添加されるべき飲食品の赤色を得るために上記色素単独で用いられうる。
色調の測定は、当業者に既知の測定装置を用いて行われうる。当該測定装置として、分光色差計(例えばSD5000(日本電色工業株式会社))、測色色差計(例えばZE6000、SZ−Σ80またはSE−2000(いずれも日本電色工業株式会社))などが挙げられる。色調のL値、a値およびb値は、水もしくは緩衝液によって希釈することにより極大吸収波長もしくは所定の波長での吸光度を0.5にした色素液を光路長1cmのセルで測定した値である。
【0045】
本発明の赤色素は、耐酸性に優れている。耐酸性に優れていることにより、色素溶液が酸性条件に付されても、沈殿や濁りが生成しにくい。本発明において、耐酸性とは、酸性条件下の色素水溶液において色素に由来した濁りや沈澱を生じることが少なく、色素水溶液の色力を維持する特性をいう。本発明において、耐酸性に優れているとは、pH3.8に、特にはpH3.5、さらに特にはpH3.2またはそれより低いpHに10時間、12時間、14時間、16時間、18時間、1日間、2日間、3日間またはそれより長い時間付された場合の色素残存率が、75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上であることを意味する。すなわち、本発明の方法により製造された赤色素の当該色素残存率は、75%以上、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、さらにより好ましくは90%以上、最も好ましくは95%以上である。本明細書において、色素残存率とは、色素溶液中に生成した濁りや沈殿を除去した上清中に色素がどの程度残っているかを意味する。濁りや沈殿が生じた場合、色素化合物は当該濁りや沈殿中にも存在しうる。当該色素残存率は、下記実施例8に記載の方法により評価される。
【0046】
本発明はまた、本発明の赤色素を含む飲食品に関する。すなわち、本発明の赤色素は、種々の飲食品に添加されうる。本発明の赤色素が添加される飲食品は、例えば、麺類、リキュール、飲料、菓子、乳飲料、餡、魚肉または畜肉ソーセージなどであるがこれらに限定されない。また、本発明の赤色素は、他の色素と一緒に用いられてもよい。当該他の色素は、所望の色に応じて当業者により適宜選択されうるが、例えば青色素、黄色素、本発明の赤色素以外の赤色素などが挙げられる。
【0047】
本発明の赤色素は特に、酸性条件にある飲食品に添加されうる。酸性の飲食品は、飲食品単独で酸性であってよく、または各種酸を添加した結果酸性を示してもよい。本発明の赤色素が添加された飲食品は、その飲食品が酸性であっても、変色が少ない。変色が少ない故に、飲食品の品質が損なわれない。上記酸性条件にある飲食品として、例えばpH5以下の飲食品、pH4.5以下の飲食品、pH4以下の飲食品、またはpH3.5以下の飲食品を挙げることができる。このような飲食品の例として例えば、ゼリー、キャンディー、果汁入り飲料または果汁風味飲料、冷菓、氷菓および漬物を挙げることができるがこれらに限定されない。
【0048】
本発明の赤色素は特に、光を照射される飲食品に添加されうる。そのような飲食品は、例えば、ポリ袋、ペットボトル、ガラス瓶等の遮光できない袋や容器で販売される飲食品であるがこれらに限定されない。本発明の赤色素が添加された飲食品は、その飲食品に対し光が照射されたとしても、変色が少ない。変色が少ない故に、飲食品の品質が損なわれない。
【0049】
本発明の赤色素の飲食品への添加量は、得られるべき飲食品の色に応じて適宜定められるが、例えば0.001〜15重量%、好ましくは0.01〜10重量%、より好ましくは0.05〜5重量%である。
【0050】
下記に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものでない。
下記の実施例において、色素液の色力および色調を測定した。これらの測定方法は、以下のとおりである。また、色素量および色差はそれぞれ、測定された色力および色調から算出された。
色力(u/g)は、色力測定法により、すなわち色素液を必要に応じて水もしくは緩衝液で希釈し、可視部での極大吸収波長における吸光度を紫外可視分光光度計(UV−2450、株式会社島津製作所)によって測定し、測定値に希釈率を乗じて得た。色力の単位はu/gであり、これは色素液1g当たりの色素量を示し、すなわち極大吸収波長における吸光度で表した色素濃度である。
色調は、得られた色素液を、極大吸収波長もしくは所定の波長における吸光度が0.5になるように水もしくは緩衝液で希釈し、当該希釈液を光路長1cmのセルを用いて、色差計(SZ−Σ80、日本電色工業株式会社)により測定して得た。
色素量(u)は、色力と色素液の重量(g)との積である。すなわち、1uの色素量は、極大吸収波長で測定して、吸光度が1になる1g色素液に含まれる色素の量である。ここで、色素量は、色素液の溶媒が水または緩衝液であるので、色素液の密度が1g/cmである場合を想定したものであり、すなわち1uの色素量は、極大吸収波長で測定して、吸光度が1になる1cm色素液に含まれる色素の量ともいえる。
色差(ΔE値)は、計算式:ΔE=√((L−L´)+(a−a´)+(b−b´))により求めた。上記計算式中、L´、a´およびb´は基準とする色素の色調であり、そして、L、aおよびbは当該基準とする色素に対して比較されるべき色素の色調である。すなわち、ΔE値は、基準とする色素の色調に対して、比較されるべき色素の色調がどれだけ変化したかの程度を示す。ΔE値が0.5以上である場合、特には1.0以上である場合、さらに特には1.5以上である場合、色調の改善が図られたといえる。
【実施例1】
【0051】
赤色素の製造
【0052】
(1)アミノ酸
アスパラギン酸ナトリウム(ナカライテスク株式会社、L−アスパラギン酸ナトリウム)を用意した。
【0053】
(2)イリドイド化合物の調製
22.5gのゲニポシドを含むゲニポシド液60.8gに24重量%の水酸化ナトリウム水溶液35gを添加し、60℃で1.5時間加熱してケン化をすることによりゲニポシド酸溶液を調製した。得られたゲニポシド酸溶液に、水50gおよびDL−リンゴ酸35gを溶解してpHを3.8に調整した。
【0054】
(3)赤色素の製造
pH調整後のゲニポシド酸溶液を2等分し、そして、その一方に、ゲニポシド酸に対して1.2モル当量のアスパラギン酸ナトリウム(3.1g)を添加した。そして24重量%水酸化ナトリウム水溶液によって、溶液のpHを4.6に調整した。pH調整後、水を加えて液量を150gにし、そして0.65gのセルラーゼY2NC(ヤクルト薬品工業株式会社)を溶液に添加した。溶液が入っている容器の中をアルゴンガスで置換した後に、55℃の温浴で24時間加熱することにより酵素反応をさせた。酵素反応後、酵素反応液を85℃で3時間加熱し、そして、加熱された反応液を室温への冷却後に遠心分離をした(10000rpm×10分)。遠心分離により得られた上清の色力は283.0u/gであった。この上清を10gずつ6つの蓋付試験管に量り取り、色力から計算した色素量1ku当たり12.5、25、50、100、200または500mgの亜硫酸ナトリウム(NaSO)を添加した(すなわち、上記亜硫酸ナトリウム添加量は0.099、0.198、0.397、0.793、1.586、または3.965mmol/kuである)。添加後、試験管をボルテックスによる攪拌に付し、そして、85℃で1時間加熱した。加熱後、室温へ冷却し、そして遠心分離(3000rpm×10分)して上清を得た。得られた上清が本発明の赤色素(以下、「実施例1の赤色素」という)の溶液である。
【0055】
(比較例1)
亜硫酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例1の赤色素と同じ方法で赤色素(以下、「比較例1の赤色素」という)を製造した。
【0056】
実施例1の赤色素および比較例1の赤色素の色力および色調をそれぞれ測定した。さらに測定された色調から色差を算出した。表1に色力および色調の測定結果並びに算出された色差を示す。
【0057】
【表1】

【0058】
表1に示された結果より、比較例1の赤色素を基準とした場合、実施例1の赤色素はいずれもa値が0.5以上増加しており、亜硫酸ナトリウムの添加量が100m〜500g/kuはL値も0.5以上増加している。さらに、比較例1の赤色素を基準とした場合、実施例1の赤色素はいずれも色差が0.5以上である。すなわち、実施例1の赤色素はいずれも、比較例1の赤色素と比べて、色調が改善された。特に、亜硫酸ナトリウムの添加量が100mg/kuおよび200mg/kuにおいて顕著に色調が改善された。亜硫酸ナトリウムの添加量が500mg/kuである場合、他の添加量の場合と同様に色調は改善されるが、他の添加量の場合よりも色力が低下する。
【実施例2】
【0059】
赤色素の製造
【0060】
(1)アミノ酸
DL−アラニン(ナカライテスク株式会社)、バリン(L−バリン、ナカライテスク株式会社)、アスパラギン(L−アスパラギン水和物、ナカライテスク株式会社)、グルタミン(L−グルタミン、ナカライテスク株式会社)またはグルタミン酸ナトリウム(以下「MSG」ともいう。L−グルタミン酸ナトリウム、ナカライテスク株式会社)を用意した。
【0061】
(2)イリドイド化合物の調製
112.5gのゲニポシドを含むゲニポシド液304.1gに24重量%の水酸化ナトリウム水溶液235gを添加し、60℃で1.5時間加熱してケン化をすることによりゲニポシド酸溶液を調製した。得られたゲニポシド酸溶液に、水150gおよびDL−リンゴ酸167gを溶解してpHを4.15に調整した。
【0062】
(3)赤色素の製造
pH調整後、当該ゲニポシド酸溶液を10等分し、このうちの5つにそれぞれ、ゲニポシド酸に対して1.1モル当量のDL−アラニン(2.84g)、バリン(3.74g)、アスパラギン(4.79g)、グルタミン(4.69g)またはグルタミン酸ナトリウム(5.96g)をそれぞれ添加し、そして24重量%水酸化ナトリウム水溶液によってpHを4.5に調整した。pH調整後、水を加えて液量をそれぞれ150gにし、そして0.67gのセルラーゼY2NC(ヤクルト薬品工業株式会社)を夫々の溶液に添加した。溶液が入っている容器の中をアルゴンガスで置換した後に、55℃の温浴で21時間加熱することにより酵素反応をさせた。酵素反応後、酵素反応液を85〜90℃で3時間加熱し、そして加熱された反応液を室温に冷却した。この反応液の色力は、DL−アラニンを添加したものについて271.5u/gであり、バリンを添加したものについて141.4u/gであり、アスパラギンを添加したものについて100.4u/gであり、グルタミンを添加したものについて243.5u/gであり、グルタミン酸ナトリウムを添加したものについて410.5u/gであった。これらの上清を10gずつ蓋付試験管に量り取り、色力から計算した色素量1ku当たり50mgの亜硫酸ナトリウム(NaSO)を添加した(すなわち、上記亜硫酸ナトリウム添加量は0.397mmol/kuである)。添加後、試験管をボルテックスによる攪拌に付し、そして、85℃で1時間加熱した。加熱後、室温へ冷却し、そして遠心分離(3000rpm×10分)して上清を得た。得られた上清が本発明の赤色素(以下、「実施例2の赤色素」という)の溶液である。
【0063】
(比較例2)
亜硫酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例2の赤色素と同じ方法で赤色素(以下、「比較例2の赤色素」という)を製造した。
【0064】
実施例2の赤色素および比較例2の赤色素の色力および色調をそれぞれ測定した。さらに測定された色調から色差を算出した。表2に色力および色調の測定結果並びに算出された色差を示す。
【0065】
【表2】

【0066】
表2に示された結果より、比較例2の赤色素を基準とした場合、実施例2の赤色素はいずれもa値が0.5以上増加しており、アラニン以外のアミノ酸についてはL値も0.5以上増加している。さらに、比較例2の赤色素を基準とした場合、実施例2の赤色素はいずれも色差が1以上であり、アスパラギンについては1.5以上であり、アラニン、バリン、グルタミンについては2以上である。すなわち、いずれのアミノ酸を用いた場合においても、実施例2の赤色素は比較例2の赤色素と比べて色調が改善されている。したがって、種々のアミノ酸を用いた場合においても、亜硫酸ナトリウムの添加により色調が改善された。
【実施例3】
【0067】
亜硫酸イオンを生成する各種の化合物を用いた赤色素の製造
【0068】
(1)アミノ酸
MSG(グルタミン酸ナトリウム、ナカライテスク株式会社)を用意した。
【0069】
(2)イリドイド化合物の調製
35gのゲニポシドを含むゲニポシド液94.6gに24重量%の水酸化ナトリウム水溶液73gを添加し、さらに水を添加して液量を300gにした後、60℃で2時間加熱してケン化をすることによりゲニポシド酸溶液を調製した。
【0070】
(3)赤色素の製造
得られたゲニポシド酸溶液に、含水クエン酸(協和ハイフーズ株式会社)57gおよびMSG20.2gを添加した。添加後、24重量%の水酸化ナトリウム水溶液によりpHを4.6に調整した後、500mlの三角フラスコに移して、水で液量を500gにした。この溶液に、2.5gのセルラーゼY2NC(ヤクルト薬品工業株式会社)を添加した。溶液の容器内をアルゴンガスで置換した後に、55℃の温浴で21時間加熱することにより酵素反応をさせた。酵素反応後、85〜90℃で3時間加熱し、そして反応液を室温へ冷却した。得られた反応液の色力を測定した。測定された色力(355.9u/g)に基づき、色素量10ku相当量の反応液を複数の50ml容メスフラスコに10ku(28.1g)ずつ量り取り、当該メスフラスコに、亜硫酸イオン生成化合物として亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウム(ハイドロサルファイト)、ピロ亜硫酸ナトリウムまたは亜硫酸水素ナトリウムを添加した。亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムの添加量は約0.4mmol/kuであった。また、亜ジチオン酸ナトリウムおよびピロ亜硫酸ナトリウムについてはそれぞれ、約0.4mmol/kuおよび約0.2mmol/kuの2種類の添加量を用いた。これらの化合物の添加後、24重量%水酸化ナトリウム水溶液でpHを5に調整し、そして水を加えて液量を50gとし、さらに混合した。混合後、フラスコを85℃で1時間加熱した。加熱後、フラスコを室温へ冷却し、得られた色素液が本発明の赤色素(以下、「実施例3の赤色素」という)の溶液である。
【0071】
(比較例3)
亜硫酸イオンを生成する化合物を添加しなかったこと以外は、実施例3の赤色素と同じ方法で赤色素(以下、「比較例3の赤色素」という)を製造した。
【0072】
実施例3の赤色素および比較例3の赤色素の色力および色調をそれぞれ測定した。さらに測定された色調から色差を算出した。表3に色力および色調の測定結果並びに算出された色差を示す。
【0073】
【表3】

【0074】
表3に示された結果より、比較例3の赤色素を基準とした場合、実施例3の赤色素は、亜硫酸ナトリウム、亜ジチオン酸ナトリウムおよびピロ亜硫酸ナトリウムのいずれにおいてもL値が0.5以上増加し、亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウムおよび亜硫酸水素ナトリウムのいずれにおいてもa値が0.5以上増加した。さらに、比較例3の赤色素を基準とした場合、実施例3の赤色素はいずれも色差が1.5以上であった。すなわち、亜硫酸を生成するいずれの化合物を用いた場合においても、実施例3の赤色素は比較例3の赤色素と比べて色調が改善された。なお、亜ジチオン酸ナトリウムを用いた場合が最も色差が大きいが、一方で色力の低下も大きかった。
【実施例4】
【0075】
タンパク質加水分解物を用いた赤色素の製造
特許第4526600号公報の実施例1に記載された方法により赤色素液を製造した。この赤色素液5g(415.6u/g)に、亜硫酸ナトリウム100mgを添加し、溶解した。そして85℃で30分間加熱した。加熱して得られた赤色素溶液が本発明の赤色素(以下、「実施例4の赤色素」という)である。
【0076】
(比較例4)
亜硫酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例4の赤色素と同じ方法で赤色素(以下、「比較例4の赤色素」という)を製造した。
【0077】
実施例4の赤色素、および比較例4の赤色素の色力および色調を測定した。さらに測定された色調から色差を算出した。表4に色力および色調の測定結果並びに算出された色差を示す。
【0078】
【表4】

【0079】
表4のうち、基準とした「亜硫酸ナトリウム添加前」の赤色素は、特許第4526600号公報の実施例1に記載された方法により製造された赤色素であり、すなわち上記工程(1)のみにより製造された赤色素を示す。表4のうち、「対原液比」は、「亜硫酸ナトリウム添加前」の赤色素に対する実施例4または比較例4の赤色素の色力の比である。表4に示された結果より、基準とした赤色素と比べて、加熱直後において実施例4の赤色素はa値が0.5以上増加しており、色差も2以上増加しており、室温で二日放置後ではL値およびa値のいずれも0.5以上増加しており、色差も3以上増加した。すなわち、基準とした赤色素と比べて、実施例4の赤色素は色調が改善された。また、表4に示された結果より、「亜硫酸ナトリウム添加前」の赤色素を基準とすると、比較例4の赤色素よりも、実施例4の赤色素のほうが、色差が大きい。すなわち、亜硫酸ナトリウムを添加すること無く加熱するよりも、亜硫酸ナトリウムを添加して加熱したほうが、より色調が改善された。また、室温で2日放置後の結果では、さらに色差が大きくなっており、すなわち、さらに色調が改善された。
【実施例5】
【0080】
亜硫酸水素ナトリウムおよびタンパク質加水分解物を用いた赤色素の製造
特許第4526600号公報の実施例1に記載された方法により赤色素を製造した。当該赤色素を、分画分子量1万の膜1枚(膜カセット:UF−2CS−10PS、濾過面積はカセット1枚あたり200cm)を装着したUF膜分離装置(チュービングポンプ:LP−3000、限外濾過モジュール:UF−LMSII、東ソー株式会社)による限外濾過処理に付した。当該処理により、精製・濃縮された色素液(1157u/g)を、色素量が43.2g(50ku相当)ずつ、5つの三角フラスコに量り取った。これらの5つのフラスコに夫々、当該濃縮液の2.5gの亜硫酸水素ナトリウム(色素量2kuにつき亜硫酸水素ナトリウム100mg)を添加した。添加後、クエン酸および水酸化ナトリウムを用いて、濃縮液のpHをそれぞれ4、5、6、7または8に調整した。pH調整後、夫々のフラスコに水を加えて液量を100gとし、そして、当該濃縮液を約85℃で1時間加熱した。加熱後、当該濃縮液を室温に冷却し、遠心分離(3000rpm×10分)して上清を得た。得られた上清が本発明の赤色素(以下、「実施例5の赤色素」という)の溶液である。
【0081】
(比較例5)
亜硫酸水素ナトリウムを添加しなかったこと並びにクエン酸および水酸化ナトリウムによるpH調整を行わなかったこと以外は実施例5の赤色素と同じ方法で赤色素(以下、「比較例5の赤色素」という)を製造した。
【0082】
実施例5の赤色素、および比較例5の赤色素をMcIlvane緩衝液で希釈し、色力および色調を測定した。さらに測定された色調から色差を算出した。表5に色力および色調の測定結果並びに算出された色差を示す。
【0083】
【表5】

【0084】
表5に示された結果より、比較例5の赤色素と比べて、実施例5の赤色素はいずれもa値が0.5以上増加しており、処理pH4〜7ではL値も0.5以上増加した。また、比較例5の赤色素を基準とした場合、実施例5の赤色素はいずれも色差が1以上である。すなわち、亜硫酸水素ナトリウムを用いた場合においても、赤色素の色調が改善された。また、亜硫酸水素ナトリウムによる処理の間の溶液のpHが4〜8のいずれであっても、実施例5の赤色素は、比較例5と比べて色調が改善された。
【実施例6】
【0085】
85℃での加熱時間を2時間としたこと以外は実施例5の赤色素と同じ方法で赤色素(以下、「実施例6の赤色素」という)を製造した。
【0086】
(比較例6)
85℃での加熱時間を2時間としたことおよび亜硫酸水素ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例5の赤色素と同じ方法で赤色素(以下、「比較例6の赤色素」という)を製造した。
【0087】
実施例6の赤色素、および比較例6の赤色素の色力および色調を測定した。さらに測定された色調から色差を算出した。表6に色力および色調の測定結果並びに算出された色差を示す。
【0088】
【表6】

【0089】
表6に示された結果より、比較例6の赤色素を基準とした場合、実施例6の赤色素はいずれも、L値およびa値が0.5以上増加した。また、比較例6の赤色素を基準とした場合、実施例6の赤色素はいずれも色差が0.5以上増加した。すなわち、亜硫酸水素ナトリウムによる処理時間が2時間であっても色調が改善された。
【実施例7】
【0090】
亜硫酸ナトリウムおよびタンパク質加水分解物を用いた赤色素の製造
(1)コムギグルテン加水分解物の調製
特許第4526600号公報の実施例1に記載された方法によりコムギグルテン加水分解物(以下、「加水分解物1」という)を調製した。表7に加水分解物1のアミノ酸組成を示す。
【0091】
【表7】

【0092】
(2)イリドイド化合物の調製
60gのゲニポシドを含むゲニポシド液162gに水150gおよび24重量%の水酸化ナトリウム125gを添加し、60℃で2時間ケン化をすることによりゲニポシド酸溶液を用意した。得られたゲニポシド酸溶液に、結晶クエン酸(和光純薬工業株式会社、特級クエン酸)150gを加えた。得られた混合液を三角フラスコに入れた。
【0093】
(3)赤色素の製造
三角フラスコに加水分解物1を43g添加し、混合した。加水分解物1の添加量は、加水分解物1に含まれるアミノ酸の平均分子量を139とした場合にゲニポシド酸と当該アミノ酸とが等モルとなるように調節した。当該平均分子量は、市販のグルテン加水分解物(日清ファルマ株式会社、WGH、http://www.wgh.jp/shiryoubako/000010.php)のアミノ酸組成に基づき加重平均をすることにより算出した。次に、24重量%の水酸化ナトリウム溶液を当該混合物に添加して、pHを4.5にした。この混合物にさらに水を加え、液量を900gにした。次に、三角フラスコ内をアルゴンガスで置換した。置換後、3.2gのセルラーゼY2NC(ヤクルト薬品工業株式会社)を添加し、アルミホイルで蓋をして、58℃で21時間酵素反応をさせた。反応後、加熱器(ヤマト科学株式会社、ウォーターバスインキュベーターBT−25)により、反応物を85℃で3時間加熱した。その後、反応液を3等分し、3つの三角フラスコに移した。そのうちの2つについて、反応液の色力を測定し、測定された色力に基づき、それぞれ亜硫酸ナトリウムをそれぞれ2g(色素量1ku当たり約20mg)および5g(色素量1kuに対し約50mg)添加した。添加後に、上記加熱器により、反応液を85℃で1時間加熱した。加熱後に、反応液を約50℃に冷却し、10000rpmで10分間遠心分離し、得られた上清を限外濾過処理に付した。当該濾過は、分画分子量1万の膜(東ソー株式会社、UF−2CS−10PS)を備えたUF膜装置(東ソー株式会社、チュービングポンプ:LP−3000、限外膜モジュール:UF−LMSII)により行った。濾過方法は、約300gの反応液に脱イオン水300mlを加えて循環濾過し、透過液が300mlになった段階で、再度脱イオン水300mlを濃縮液に補充して循環濾過した。当該脱イオン水の補充を合計で3回行った。当該濾過処理により得られた濃縮液が、本発明の赤色素である。(以下、亜硫酸ナトリウム2gを添加したものを「実施例7の赤色素1」といい、亜硫酸ナトリウム5gを添加したものを「実施例7の赤色素2」という)。
【0094】
(比較例7)
亜硫酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は、実施例7の赤色素と同じ方法で赤色素(以下、「比較例7の赤色素」という)を製造した。
【0095】
実施例7の赤色素2および比較例7の赤色素の色力および色調を測定した。さらに測定された色調から色差を算出した。表8に色力および色調の測定結果並びに算出された色差を示す。
【0096】
【表8】

【0097】
表8に示された結果より、比較例7の赤色素を基準とした場合、実施例7の赤色素2はL値およびa値がいずれも0.5以上増加した。また、比較例7の赤色素を基準とした場合、実施例7の赤色素2は色差が2以上である。すなわち、実施例7の赤色素2は比較例7の赤色素と比べて色調が改善されている。
【0098】
実施例7の赤色素2および比較例7の赤色素について、耐熱性および耐光性を評価した。耐熱性評価は、以下の手順により行った。pH4または6のMcIlvaine緩衝液(0.1Mクエン酸水溶液および0.2Mリン酸水素二ナトリウム)を作成した。実施例7の赤色素2の色素液および比較例7の赤色素の色素液のそれぞれについて、pH4および6の緩衝液のそれぞれと混合して、当該混合液の色力を約1u/gとした。当該色力調整後、当該混合液の入った試験管を30分間沸騰水中に浸けた。沸騰処理後に水冷し、濁りが生じた試験液はNo2ろ紙(アドバンテック東洋株式会社)でろ過して、ろ液そのものの色調および、ろ液の吸光度を同じpHの緩衝液により0.5に調整したものの色調を測定した。耐光性評価は、上記混合液を、フォトチャンバー(照明付きインキュベーター、FLI−2000HT、東京理化機器株式会社)により20000lxの光を20時間照射した。照射処理後に濁りが生じた試験液はNo2ろ紙(アドバンテック東洋株式会社)でろ過して、ろ液の吸光度を同じpHの緩衝液により0.5に調整したものの色調を測定した。耐熱性および耐光性の評価結果を表9に示す。
【0099】
【表9】

【0100】
表9において、pH4の緩衝液において処理した赤色素は、pH4の処理前赤色素と比較した。pH6の緩衝液において処理した赤色素は、pH6の処理前赤色素と比較した。表9から、実施例7の赤色素は、熱処理および光照射処理による色差が、比較例7の赤色素と比較して小さい。すなわち、熱処理または光照射処理に付しても、実施例7の赤色素は、比較例7の赤色素よりも、色調の変化が少ない。よって、実施例7の赤色素は、比較例7の赤色素よりも、耐熱性および耐光性が優れている。
【実施例8】
【0101】
各種アミノ酸およびタンパク質加水分解物を用いた赤色素の製造
【0102】
(1)アミノ酸
MSG、L−アスパラギン酸ナトリウム、およびDL−アラニン(いずれもナカライテスク株式会社)、ならびに加水分解物1を用意した。
【0103】
(2)イリドイド化合物の調製
45gのゲニポシドを含むゲニポシド液122gに24重量%の水酸化ナトリウム水溶液90gを添加し、60℃で1.5時間加熱してケン化をすることによりゲニポシド酸溶液を調製した。得られたゲニポシド酸溶液に、水100gおよびクエン酸110gを溶解してpHを3.5に調整した。
【0104】
(3)赤色素の製造
pH調整後のゲニポシド酸溶液を4等分し、それぞれに、ゲニポシド酸に対して1.1モル当量のMSG(5.96g)、アスパラギン酸ナトリウム(5.52g)、DL−アラニン(2.84g)および加水分解物1(8.51g)を添加し、さらに24重量%水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを4.5に調整し、さらに水を加えて液量を150gにした。それぞれの溶液に0.6gのセルラーゼY2NC(ヤクルト薬品工業株式会社)を添加した。溶液の容器内をアルゴンガスで置換した後に、58℃の温浴で21時間加熱することにより酵素反応をさせた。酵素反応後、85〜90℃で3時間加熱した。当該加熱後、それぞれの反応液を10gずつ蓋付試験管にとり、反応液中の色素量2kuに対して100mgの亜硫酸ナトリウムを添加した。添加後、ボルテックスにより攪拌し、そして85℃で60分間加熱した。当該加熱後、反応液を冷却し、そして、遠心分離をした(10000rpm×10分)。得られた上清が本発明の赤色素(以下、「実施例8の赤色素」という)の溶液である。
【0105】
(比較例8)
亜硫酸ナトリウムを添加しなかったこと以外は実施例8の赤色素と同じ方法で赤色素(以下、「比較例8の赤色素」という)を製造した。
【0106】
実施例8の赤色素および比較例8の赤色素の耐酸性を評価した。評価方法は下記のとおりである。すなわち、実施例8で製造した赤色素溶液および比較例8の赤色素溶液のそれぞれの極大吸収波長における色素量で750u相当量の溶液を量り取り、pH4のMcIlvaine緩衝液を加えて、液量を150gにした。それぞれの溶液に、攪拌しながら濃リン酸(和光純薬工業、特級リン酸、85%)を滴下してpHを下げ、pH3.2、2.8および2.4になったところでそれぞれ蓋付試験管に溶液を約10ml採取した。これら各pHの溶液を冷蔵庫内(約4℃)で3日間静置した。3日後、試験管内の溶液の上清1mlを別の試験管にとり、脱イオン水4mlを添加してボルテックス攪拌した。攪拌後、DL−アラニンを原料とする赤色素溶液については530nmの波長で、他のアミノ酸および加水分解物1を原料とする赤色素溶液については535nmの波長で、それぞれ吸光度を測定した。得られた吸光度から色素残存率を求めた。当該色素残存率は、実施例8で製造した赤色素溶液の色力に対するpH処理後の沈殿を除いた赤色素溶液の色力である。単位は%であり、当該残存率が高いほど耐酸性が高いことを示す。表10に、各溶液の色素残存率を示す。
【0107】
【表10】

【0108】
表10に示された結果より、アミノ酸および加水分解物1のいずれにおいても、いずれのpHにおいても、比較例と比べて実施例の色素残存率が高い。よって、実施例8の赤色素溶液の耐酸性が、亜硫酸ナトリウムによる処理によって改善された。また、アラニンを原料とした赤色素は、pH2.8、特にはpH2.4においても色素残存率が他を原料とした赤色素と比べて高く、耐酸性に優れていた。
【実施例9】
【0109】
亜硫酸ナトリウムおよびタンパク質加水分解物を用いた赤色素の製造
【0110】
(1)タンパク質加水分解物
実施例7で用いた加水分解物1を用意した。
【0111】
(2)イリドイド化合物の調製
100gのゲニポシドを含むゲニポシド液270gに水250gおよび24重量%の水酸化ナトリウム水溶液200gを添加し、60℃で2時間加熱してケン化をすることによりゲニポシド酸溶液を調製した。
【0112】
(3)赤色素の製造
(2)で得られたゲニポシド酸溶液に、結晶クエン酸(和光純薬工業株式会社、特級クエン酸)250gを添加し、混合した。得られた混合液を三角フラスコに入れた。当該三角フラスコに、64gの加水分解物1を添加し、混合した。添加後、24重量%の水酸化ナトリウム水溶液によりpHを4.5に調整した後、水で液量を1500gにした。この溶液に、5.5gのセルラーゼY2NC(ヤクルト薬品工業株式会社)を添加し、アルゴンガスで置換後、アルミホイルで蓋をして、55℃で21時間酵素反応をさせた。反応後、加熱器(ヤマト科学株式会社、ウォーターバスインキュベーターBT−25)により反応物を85℃で3時間加熱し、反応物を約50℃に冷却し、そして遠心分離(10000rpm×10分)を行った。遠心分離後の上清について色力を測定し、色素量200ku相当の上清を量り取り、これによく攪拌しながら10gの亜硫酸ナトリウムを溶解した。そして、溶解液を、一昼夜緩やかに攪拌し、次いで4N塩酸でpHを5.3に調整した。pH調整後、当該溶解液を90℃で1時間加熱した。加熱後、当該溶解液を室温へ冷却した。冷却後、分画分子量1万の膜1枚(膜カセット:UF−2CS−10PS、濾過面積はカセット1枚あたり200cm)を装着したUF膜分離装置(チュービングポンプ:LP−3000、限外濾過モジュール:UF−LMSII、東ソー株式会社)により限外濾過処理を行った。当該濾過処理により、未反応のアミノ酸、クエン酸、亜硫酸ナトリウムを除いた。当該濾過処理により得られた濃縮液が本発明の赤色素(以下、「実施例9の赤色素」という)の溶液である。
【0113】
(比較例9−1)
亜硫酸ナトリウムを添加せず且つタウリンを用いた赤色素製造
実施例9の「(3)赤色素の製造」において、ゲニポシド酸溶液に、含水クエン酸および48gの加水分解物1に加えて、タウリン(ナカライテスク株式会社)8gを加えたこと、亜硫酸ナトリウムを添加しなかったことおよび90℃で1時間の加熱をしなかったこと以外は、実施例9と同じ方法で赤色素(以下、「比較例9−1の赤色素」という)を製造した。
【0114】
(比較例9−2)
亜硫酸ナトリウムを添加しない赤色素製造
亜硫酸ナトリウムを添加しなかったことおよび90℃で1時間の加熱をしなかったこと以外は、実施例9の赤色素と同じ方法で赤色素(以下、「比較例9−2の赤色素」という)を製造した。
【0115】
実施例9の赤色素、比較例9−1の赤色素、および比較例9−2の赤色素の耐酸性を比較した。耐酸性の評価は、以下のとおりに行った。すなわち、実施例9の赤色素溶液、比較例9−1の赤色素溶液、および比較例9−2の赤色素溶液のそれぞれを、pH3.3、3.2、・・・、2.2、および2.1のMcIlvaine緩衝液(pHを調整するために、適宜リン酸を添加した)で、色力が5u/gになるように希釈し、一晩冷蔵庫に静置した。一晩静置後、3000rpmで10分間遠心分離し、遠心分離後の上清について色力を測定した。pH処理していない色素溶液の色力に対する当該測定された色力の割合が色素残存率である。色素の色素残存率が高いほど、その色素は耐酸性に優れている。以下表11に、耐酸性の評価結果を示す。
【0116】
【表11】

【0117】
表11の結果より、実施例9の赤色素は、pH2.4において色素残存率が90%超である。一方、比較例9−2の赤色素は、pH3.2で色素残存率が約43%へと低下した。よって、亜硫酸ナトリウムを添加したことにより、耐酸性が向上した。また、比較例9−1は、pH2.6で色素残存率が約26%へと低下した。すなわち、タウリンを用いる方法よりも、亜硫酸ナトリウムを用いる方法のほうが、赤色素の耐酸性がより改善する。
【実施例10】
【0118】
(飲むフルーツゼリー)
以下の配合で、本発明の赤色素を含む、飲むフルーツゼリーを製造した。まず、0.8gのゲル化剤と当該ゲル化剤の5倍量の砂糖(4g)と水とを混合した。次に、当該混合液を90℃まで加熱しながら、ゲル化剤および砂糖を溶解した。溶解後、混合液を75℃に冷却した。冷却後、残りの原料を添加し、そして混合液のpHが3.8となるようにクエン酸を添加し且つ混合液の全重量が100gとなるように水を添加した。得られた混合液を、飲料用容器に充填し、シールし、そして83℃で20分間殺菌を行った。殺菌後、混合液を冷却し、飲むフルーツゼリーを得た。
<配合>
砂糖 18 重量部
1/5濃縮果汁 6 重量部
ホワイトリカー 2 重量部
ゲル化剤 0.8 重量部
実施例3の赤色素 0.05 重量部
(亜硫酸ナトリウムを用いたもの。色価E10%が100に相当する濃さの色素)
水 全体が100重量部となる量
クエン酸 pH=3.8となる量
【0119】
色価E10%とは、着色料溶液の極大吸収波長における吸光度を、10重量/容量%相当溶液の吸光度に換算した数値である。
【実施例11】
【0120】
(羊羹)
以下の配合で、本発明の赤色素を含む羊羹を製造した。まず、寒天と水とを混合し、混合液を15分間沸騰させながら寒天を溶解した。溶解液を70℃まで冷却した後、残りの原料を添加し、そして攪拌して溶解した。最後に、溶解液の全量が約100gになるまで煮詰め、その後容器に充填した。充填後、冷却し、羊羹を得た。
<配合>
生餡 44 重量部
砂糖 51 重量部
水あめ 5 重量部
寒天 0.6 重量部
実施例7の赤色素 0.1 重量部
(色価E10%が100に相当する濃さの色素)
水 25 重量部
【実施例12】
【0121】
(清涼飲料)
以下の配合で、本発明の赤色素を含む清涼飲料を製造した。原料を熱湯に溶解後、飲料容器に充填した。熱湯溶解後の溶液のpHは3.8であった。
<配合>
砂糖 30 重量部
液糖 25 重量部
クエン酸ナトリウム 1 重量部
ビタミンC 0.5 重量部
実施例7の赤色素 0.05 重量部
(色価E10%が100に相当する濃さの色素)
熱湯 全体が100重量部となる量
クエン酸 pH=3.8となる量
香料 適量
【実施例13】
【0122】
(ゼリー)
以下の配合で、本発明の赤色素を含むゼリーを製造した。1.2gのゲル化剤と当該ゲル化剤の5倍量の砂糖(6g)と水とを混合した。次に、当該混合液を90℃まで加熱しながら、ゲル化剤および砂糖を溶解した。次に、当該溶解液を75℃に冷却した。冷却後、残りの原料を添加しおよび攪拌して溶解した。この溶解液のpHは3.8であった。当該溶解液をゼリー容器に充填し、シールし、83℃で20分間殺菌を行った。殺菌後、当該溶解液を冷却しゼリーを得た。
<配合>
砂糖 16 重量部
クエン酸ナトリウム 1 重量部
リンゴ酸 1.35 重量部
ゲル化剤 1.2 重量部
実施例4の赤色素 0.05 重量部
(色価E10%が100に相当する濃さの色素)
水 全体が100重量部となる量
クエン酸 pH=3.8となる量
香料 適量
【実施例14】
【0123】
(ガム)
以下の配合で、本発明の赤色素を含むガムを製造した。ガムベースに他の原料を練りこみ、ガムを製造した。
<配合>
ガムベース 99.5 重量部
アスコルビン酸 0.1 重量部
実施例7の赤色素 0.05 重量部
(色価E10%が100に相当する濃さの色素)
50重量%クエン酸水 0.35 重量部
【実施例15】
【0124】
(ハードキャンディー)
以下の配合で、本発明の赤色素を含むハードキャンディーを製造した。砂糖とクチナシ赤色素を水あめに添加し、そして混合した。次に、当該混合物を120℃まで加熱した。その後、混合物を70℃まで冷却し、そして次に残りの原料を混合した。最後に、当該混合物を成型してハードキャンディーを調製した。
砂糖 45 重量部
水あめ 55 重量部
クエン酸 1.5 重量部
アスコルビン酸 0.5 重量部
実施例3の赤色素 0.1 重量部
(亜硫酸ナトリウムを用いたもの。色価E10%が100に相当する濃さの色素)
香料 適量
【実施例16】
【0125】
(pH3.5以下の飲料)
以下の表12の配合で、本発明の赤色素を含む飲料を製造した。
【0126】
【表12】

【0127】
上記原料を混合し溶解した。195gずつ缶に充填しシールした。飲料のpHは、3.5以下であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イリドイド骨格の4位にカルボキシル基を有するイリドイド化合物とアミノ酸またはタンパク質加水分解物とを反応させる工程、および
当該反応物に、亜硫酸イオンを生じる化合物を添加する工程
を含む、赤色素の製造方法。
【請求項2】
前記反応物と前記亜硫酸イオンを生じる化合物との混合物を40〜100℃で0.25〜5時間加熱する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記亜硫酸イオンを生じる化合物の添加量が、前記反応物中の色素量1kuに対して0超〜7mmolである、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記亜硫酸イオンを生じる化合物が、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸カリウム、亜ジチオン酸ナトリウム、亜ジチオン酸カリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ピロ亜硫酸カリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸水素カリウムおよび無水亜硫酸並びにこれらの混合物からなる群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法により得られた赤色素を含む飲食品。

【公開番号】特開2012−116925(P2012−116925A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−266908(P2010−266908)
【出願日】平成22年11月30日(2010.11.30)
【出願人】(501190941)三井製糖株式会社 (52)
【Fターム(参考)】