説明

赤色電球

【課題】
灯具によって得られる赤色光の色度が所定範囲から逸脱しにくいとともに色むらが生じない赤色電球を提供する。
【解決手段】
赤色電球は、内部に空間1cが形成された包囲部1aおよび包囲部の一端に隣接したネック領域Nを有するピンチシール部1bを備えたガラスバルブ1と、ガラスバルブの包囲部の内部に封装されたフィラメント2と、ガラスバルブのピンチシール部を経由して外部へ導出され、ピンチシール部の偏平面に添設された受電端子3と、ガラスバルブから連続してピンチシール部のネック領域の外面にわたり形成された赤色フィルター膜4とを具備している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の尾灯などに用いることができる赤色電球に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車の尾灯などに用いる赤色電球は周知である(例えば、特許文献1参照。)。従来(例えば特許文献1に記載)のピンチシール部を備えた赤色電球では、バルブ主部(包囲部)にのみカラーフィルターが形成されている。なお、この種の電球は、ウエッジベース形ソケットに装着されて点灯する。また、従来の赤色電球には、無色透明のガラスバルブに赤色フィルターを形成したものもある。
【0003】
また、一端にマウントを封止したピンチ部を有する小形電球のバルブ外表面に着色被膜を形成してバルブを着色する着色小形電球の製造方法において、小形電球のピンチ部を挟持し、このピンチ部を下にして塗料に浸漬し、バルブ外表面に塗料を塗布したのち、ピンチ部に溜まった塗料を吸引除去し、その後ピンチ部を塗料溶解液に浸漬してピンチ部に付着する塗料を溶解除去するようにした製造方法は、既知である(特許文献2参照。)。
【0004】
以上のように、先行技術においては、バルブの主部(包囲部)にのみ着色フィルターを形成し、ピンチシール部には着色フィルターを形成しない構造であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−017007号公報
【特許文献2】特開2003−086148号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、従来のピンチシール部を備えた赤色電球をウエッジベース形ソケットに装着して点灯すると、赤色フィルターには問題がないのにもかかわらず灯具から放射される照明光の色度が所定範囲を逸脱しやすいことが分かった。
【0007】
そこで、本発明者がその原因を調査した結果、以下の事実が判明した。すなわち、フィラメントから放射された白色光がピンチシール部を経由して漏出して、ソケットとピンチシール部との間に形成される隙間から灯具内へ放射され、赤色フィルターを経由した赤色光と上記白色光とが混光した照明光となる。そのために、灯具によって得られる照明光の色度が例えば自動車用としての赤色光の規格を満足しなくなる。特に赤色電球の場合には、白色光の赤色光との混光に与える影響が大きくなり、その結果得られる赤色光の色度が所望範囲からのずれが生じやすいという問題がある。また、赤色光と白色光が分離して配光に色むらを生じることもある。
【0008】
なお、ガラスバルブのピンチシール部を含めて全面に着色フィルター膜を形成した場合は、受電端子にも着色フィルター膜が形成されるので、ソケットに装着したときに受電端子との間に接触不良を生じやすくなる。
【0009】
本発明は、灯具によって得られる赤色光の色度が所定範囲から逸脱しにくいとともに色むらが生じない赤色電球を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、赤色フィルター膜が剥がれることによる接触不良などをひきおこすことのない赤色電球を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明の赤色電球は、内部に空間が形成された包囲部および包囲部の一端に隣接したネック領域を有するピンチシール部を備えたガラスバルブと;ガラスバルブの包囲部の内部に封装されたフィラメントと;ガラスバルブのピンチシール部を経由して外部へ導出され、ピンチシール部の扁平面に添設された受電端子と;ガラスバルブから連続してピンチシール部のネック領域の外面にわたり形成された赤色フィルター膜と;を具備していることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、赤色フィルター膜がガラスバルブの包囲部からピンチシール部のネック領域の外面にわたり連続して形成されていることにより、フィラメントから放射された白色光がピンチシール部を経由して漏出する際に、ネック領域の赤色フィルター膜によって赤色光に変換されるので、ソケットとピンチシール部との間に形成される隙間から灯具内へ放射される光も赤色光になるから、ピンチシール部を経由して漏出する白色光の混光が生じなくなり、照明光としての赤色光の色度が所定範囲から逸脱しにくいとともに色むらが生じない赤色電球を提供できる効果を奏する。
【0013】
また、本発明によれば、赤色フィルター膜が剥がれることによる接触不良などをひきおこすことのない赤色電球を提供できる効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る、(a)は正面図、(b)は側面図、(c)は底面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態における実施例1および比較例1の赤色電球をウエッジベース形ソケットに装着して点灯したときの赤色色度の測定値に基づいて作成した色度図である。
【図3】本発明の第2の実施形態に係る中央断面正面図である。
【図4】同じくソケットに装着したときの光学作用を説明する中央断面正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0016】
本発明の第1の実施形態において、赤色電球は、図1に示すように、ガラスバルブ1、フィラメント2、受電端子3および赤色フィルター膜4を具備している。
【0017】
ガラスバルブ1は、包囲部1aおよびピンチシール部1bを備えている。包囲部1aは、外気に対して気密に封止された内部空間1cが内部に形成されていて、内部空間1cの所定位置にフィラメント2を配設している。また、リード線などの関連部材も適宜収納されている。さらに、包囲部1aの内部には、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)またはキセノン(Xe)のような希ガスや窒素などの不活性ガスを封入して、フィラメント2の蒸発、飛散を抑制して、寿命を長くしている。なお、本発明は、外径が5〜20mm程度のガラスバルブ1に好適である。ピンチシール部1bは、包囲部1aの一端に隣接して形成されていて、その両面に対向する一対の扁平面1b1を有している。
【0018】
また、扁平面1b1には、後述する受電端子3および係止部1b2、1b3が配設されている。係止部1b2は、図示しないソケット内に配設した係止舌片と係合して赤色電球がソケットから不所望に脱落しないように作用する。これに対して、係止部1b3は、ソケット内に配設した他の係止舌片と係合して赤色電球のソケット内への挿入深さを規定する。そうして、係止部1b2、1b3がピンチシール部1bの一対の扁平面1b1に配設されていることにより、赤色電球がソケットの所定の挿入深さで装着することができる。
【0019】
さらに、ピンチシール部1bは、包囲部1aとの境界部Bに隣接するネック領域Nを有している。本発明の好ましい態様において、上記ネック領域Nは、ガラスバルブ1の包囲部1aとピンチシール部1bとの境界部Bから管軸方向に沿ったピンチシール部1bに配設した係止部1b2、1b3の図において上端までの範囲である。
【0020】
係止部1b2、1b3は、図においては突起であるが、ソケット側との係合を企図しているのであれば、その一部または全部が凹段部であってもよい。
【0021】
フィラメント2は、タングステンなどの耐火性金属線などのコイルからなり、単一または複数を適宜配設することができる。本形態においては、主複一対のフィラメント2a、2bからなり、そのそれぞれが包囲部1a内の空間1cの所定位置に離間して配設されている。そして、フィラメント2a、2bへの通電を外部回路側で選択して切り換えることにより、選択されたフィラメント2aまたは2bが個別に発熱し、白熱状態を呈して白色発光する。
【0022】
受電端子3は、フィラメント2に給電するための手段であるが、主副一対のフィラメント2a、2bを各別に発光させるために、2組の受電端子3a1、3a2および3b1、3b2がピンチシール部1bの扁平面1b1に沿って添設されている。なお、2組の受電端子3a1、3a2および3b1、3b2とフィラメント2a、2bとの間には、図示を省略しているが、リード線などの関連部材も2組配設されている。
【0023】
赤色フィルター膜4は、好ましくは三酸化第二鉄(FeO)を顔料の主成分とする塗料を用いて形成されていて、フィラメント2から放射された白色光から赤色光成分を抽出して赤色光に変換する光学フィルターである。本発明においては、この赤色フィルター膜4を図において散点模様を付して示しているように、ガラスバルブ1の包囲部1a外面の全体に加えてピンチシール部1bのネック領域N外面のほぼ全域にわたって包囲部1aの部分に連続して形成されている。
【0024】
なお、ピンチシール部1bの全体に赤色フィルター膜4を形成すると、ピンチシール部1bに設けられた係止部1b2、1b3にも赤色フィルター膜4が形成される。係止部1b2、1b3に赤色フィルター膜4が形成されると、ソケットとの嵌合によって赤色フィルター膜4が剥がれてしまい、剥がれた赤色フィルター膜4がソケットの内部に滞留することとなり、その結果ソケットと受電端子との間の接触抵抗が増加してソケットの高熱化や導通不良を引き起こす。
【0025】
また、赤色フィルター膜4は、ネック領域Nの境界部Bから管軸方向に沿って1mm以上の距離にわたって形成していれば、ネック領域Nの全体にわたって形成していない態様であっても白色光の漏出を実質的に阻止することができる。すなわち、赤色電球をソケットに装着して点灯する場合、ソケットから外部に露出するのは、必ずしもネック領域Nの全体ではなく、主として境界部B側の1mmまでの領域が殆どである。したがって、ネック領域の少なくとも境界部B側の1mmまでの領域に赤色フィルター膜4を形成すれば、本発明の効果が得られることが分かった。
【0026】
また、ピンチシール部1bのネック領域Nに着色フィルター膜4を形成する管軸方向の距離をL(mm)をピンチシール部1bの厚みt(mm)としたとき、比率L/tがL/t≧0.33の条件を満足することが好ましい。すなわち、ピンチシール部1bの厚みtの値が大きくなってピンチシール部1bが肉厚になると、包囲部1aからピンチシール部1bに到達する光量が多くなるので、これに相応して距離Lを長く設定するのが好ましい。上記条件を満足することにより、ネック領域Nの全体にわたって着色フィルター膜4を形成しない場合であっても、本発明の効果を奏することができる。
【0027】
なお、受電端子3の先端部が図示のようにネック領域Nに対向する位置まで延在する場合には、ネック領域Nの赤色フィルター膜5の赤色フィルター膜4を形成した部位に対向する部分の受電端子3に付着した赤色カラーフィルター膜は、これを除去するのが望ましい。また、赤色フィルター膜4が上記所定領域以外の領域にまで形成される塗布法を採用する場合には、塗布後に不要な領域の赤色フィルター膜4を洗浄や研磨などによって除去すればよい。さらに、不要な箇所に赤色フィルター膜4が形成されないように予めマスキングをしてから塗布することもできる。
【0028】
本発明の赤色電球は、例えば自動車用の場合、ストップランプ、ハイマウントテールランプ、リアフォグランプなどに適用することができる。
【実施例1】
【0029】
実施例1は、図1に示す赤色電球である。
【0030】
ガラスバルブ:T20形バルブ、ピンチシール部の距離L=5mm、厚さt=3mm
定格 :12V21W
フィラメント:C-6形、
主フィラメント;直流13.5V、1.85A、105lm、
副フィラメント;直流13.5V、0.44A、 8lm
赤色フィルター:色度JIS(赤);y≧0.335、z≦0.008
:色度SAE(赤);y≦0.33、y≦0.98−x
口金 :W3x16d形
点灯時の色度:図2に● 実施例1で示すように、x=0.6758、y=0.3226となり、上記赤色色度規格を満たす。

[比較例1]
【0031】
比較例1は、図1において、包囲部1aにのみ赤色フィルター膜を形成し、ネック領域Nには形成しない赤色電球である。ガラスバルブのピンチシール部の距離L=0mm、厚さt=3mmである。
【0032】
その他の仕様は実施例1と同じである。
【0033】
点灯時の色度:図2に▲ 比較例1で示すように、x=0.6656、y=0.3317となる。

上記比較例においては、点灯時にピンチシール部のネック領域から白色光が漏出して、灯具内において赤色光と白色光が混光するため、色度x、yが100分の1アンバー側へシフトし、色度が不所望に変化した。

図3に示す本発明の第2の実施形態は、フィラメント2が単一であり、これに伴って受電端子3が1組である点で第1の実施形態と異なる。
【0034】
また、図4に示すように、フィラメント2から放射された図中薄墨の矢印で示す白色光の大部分が包囲部1aに形成された赤色フィルター膜4によって濃墨の矢印で示す赤色光に変換されてから赤色電球の外部へ放射される。
【0035】
しかし、ピンチシール部1bへ向かった一部の白色光がネック領域Nから外部へ漏出するが、本発明によれば、ネック領域Nにも赤色フィルター膜が形成されているので、赤色電球をソケットSに装着したときに、ピンチシール部1bのネック領域Nの一部またはほぼ全部が外部に露出したとしても、ネック領域Nから漏出する光も濃墨の太い矢印に示すように赤色光になるから、赤色光の色度が所定範囲からずれたり、色むらを生じたりすることがない。なお、ソケットSは図中輪郭のみを模式的に示している。
【符号の説明】
【0036】
1…ガラスバルブ、1a…包囲部、1b…ピンチシール部、1b1…扁平面、1b2、1b3…係止部、2…フィラメント、2a…主フィラメント、2b…副フィラメント、3、3a1、3a2、3b1、3b2…受電端子、4…赤色フィルター膜、B…境界部、N…、…ネック領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間が形成された包囲部および包囲部の一端に隣接したネック領域を有するピンチシール部を備えたガラスバルブと;
ガラスバルブの包囲部の内部に封装されたフィラメントと;
ガラスバルブのピンチシール部を経由して外部へ導出され、ピンチシール部の扁平面に添設された受電端子と;
ガラスバルブから連続してピンチシール部のネック領域の外面にわたり形成された赤色フィルター膜と;
を具備していることを特徴とする小形白熱電球。
【請求項2】
ガラスバルブは、ピンチシール部の扁平面に配設された係止部を備えており;
ピンチシール部のネック領域における赤色フィルター膜が形成される部位の終端は、ガラスバルブの包囲部とピンチシール部との境界部を起点としてそこから1mm離間した位置から係止部の上端位置までの範囲内にある;
ことを特徴とする請求項1記載の小形白熱電球。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−218854(P2010−218854A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−63640(P2009−63640)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(000111672)ハリソン東芝ライティング株式会社 (995)