説明

赤血球変形能改善剤

【課題】赤血球の変形能を向上させることができる赤血球変形能改善剤を提供すること。
【解決手段】本発明では、グルタチオン、セレン及びビタミンB1とから赤血球変形能改善剤を構成することにした。特に、グルタチオンを50〜400mg、セレンを1〜100μg、ビタミンB1を1〜50mg含有することにした。なお、赤血球変形能改善剤は、服用だけでなく静脈内投与も可能である。また、グルタチオンは、グルタチオン含有酵母として含有するようにしてもよい。さらに、セレンは、セレン含有酵母として含有するようにしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤血球変形能改善剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
赤血球は、血液に含まれる細胞成分の一種であり、細胞内に有するヘモグロビンが酸素と結合して、体内の組織に酸素を運搬する機能を有している。
【0003】
そして、赤血球は、直径が約8μmであって毛細血管の平均径約5μmよりも大きいにもかかわらず、変形能を有しており、毛細血管を通過することができる。
【0004】
しかしながら、赤血球の変形能が低下すると、中凹み円盤状の赤血球が玉状に膨れてしまい、毛細血管を通過することができなくなるばかりでなく、動脈硬化で狭くなった血管などで詰まってしまい、脳梗塞や心筋梗塞などの疾病の原因となっていた。
【0005】
そのため、赤血球の変形能を改善するための薬剤として、多種類の赤血球変形能改善剤が開発されている(たとえば、特許文献1〜特許文献3参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平7−61933号公報
【特許文献2】特開平8−67635号公報
【特許文献3】特開2002−128679号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明では、赤血球の細胞に作用して赤血球の細胞自体を活性化させることによって赤血球の変形能を向上させることができる即効性の高い赤血球変形能改善剤を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1に係る本発明では、赤血球変形能改善剤において、グルタチオン、セレン及びビタミンB1を含有することにした。
【0009】
また、請求項2に係る本発明では、前記請求項1に係る本発明において、グルタチオンを50〜400mg、セレンを1〜100μg、ビタミンB1を1〜50mg含有することにした。
【0010】
また、請求項3に係る本発明では、前記請求項1又は請求項2に係る本発明において、前記グルタチオンは、グルタチオン含有酵母として含有することにした。
【0011】
また、請求項4に係る本発明では、前記請求項1〜請求項3のいずれかに係る本発明において、前記セレンは、セレン含有酵母として含有することにした。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る赤血球変形能改善剤は、グルタチオン、セレン及びビタミンB1が赤血球の細胞に作用して赤血球の細胞を活性化させることができ、これにより、赤血球の変形能を向上させることができ、しかも、即効性が高いことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】赤血球スリット通過試験結果を示すグラフ。
【図2】同写真。
【図3】赤血球スリット通過試験結果を示すグラフ。
【図4】同写真。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明に係る赤血球変形能改善剤の具体的な内容について説明する。
【0015】
本発明に係る赤血球変形能改善剤は、グルタチオン、セレン及びビタミンB1からなる薬剤であり、グルタチオン、セレン及びビタミンB1が赤血球の細胞に直接作用して赤血球の細胞を活性化させ、赤血球の変形能を向上させることができ、しかも、即効性が高いものである。
【0016】
これを立証するために以下に実施例1(症例1)及び実施例2(症例2)の症例を示す。
【実施例1】
【0017】
まず、グルタチオン、セレン及びビタミンB1からなる薬剤を連続して内服した場合の症例を示す。
【0018】
この症例では、下記組成の薬剤を24日間で月曜日から金曜日の朝食後に内服し、土曜日と日曜日は休薬した。
薬剤組成
グルタチオン:100mg
セレン :50μg
ビタミンB1 :25mg
【0019】
そして、内服開始前と内服開始後12日目の朝食後内服後の10時に赤血球スリット通過試験(MCFUN法:Micro Channel Array Flow Analyser)を行い、血液100μLのスリット通過時間の計測を行った。その結果を表1、図1及び図2に示す。
【0020】
【表1】

【0021】
表1及び図1(×印)に示すように、症例1の場合、内服開始前では、58.5秒間で80μLの血液しかスリットを通過することができず、その後タイムオーバーとなってしまい100μLの血液の通過時間は計測できなかった。
【0022】
また、図2(a)に示すように、内服開始前では、70μLの血液が通過した時点で、18箇所のスリットのほとんどで血液が詰まりかけており、赤血球の変形能が低下して本来中凹み円盤状の赤血球が玉状に膨れてしまっていることが確認された。
【0023】
一方、表1及び図1(●印)に示すように、内服開始後では、59.5秒で100μLの血液が通過しており、内服開始前よりも明らかに血液が短時間で通過することが確認された。
【0024】
また、図2(b)に示すように、内服開始後では、70μLの血液が通過した時点で、18箇所のスリット中の7箇所で血液が詰まりかけているものの11箇所のスリットでは血液が良好に通過しており、赤血球の変形能が改善されて赤血球が玉状から本来の中凹み円盤状に回復していることが確認された。
【0025】
この症例から、グルタチオン、セレン及びビタミンB1からなる薬剤を連続して内服することによって、グルタチオン、セレン及びビタミンB1が赤血球の細胞に直接作用して赤血球の細胞を活性化させ、赤血球の変形能を向上させることができることが確認された。
【実施例2】
【0026】
次に、グルタチオン、セレン及びビタミンB1からなる薬剤を服用した直後の症例を示す。
【0027】
この症例2では、下記組成の薬剤を2号HPMCハードカプセル6粒分として服用した。
薬剤組成
グルタチオン:100.8mg
セレン :10μg
ビタミンB1 :205mg
但し、グルタチオン100.8mgは、グルタチオンを15%含有する酵母を112mg6粒として服用し、セレン10μgは、セレンを0.2%含有する酵母を0.84mg6粒として服用した。
【0028】
そして、服用前と服用後20分において赤血球スリット通過試験(MCFUN法:Micro Channel Array Flow Analyser)を行い、血液100μLのスリット通過時間の計測を行った。その結果を表2、図3及び図4に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表2及び図3(×印)に示すように、症例2の場合、服用前では、77.9秒間で100μLの血液が通過することが確認された。
【0031】
また、図4(a)に示すように、服用前では、75μLの血液が通過した時点で、18箇所のスリット中の11箇所で血液が詰まりかけており、赤血球の変形能が低下して本来中凹み円盤状の赤血球が玉状に膨れてしまっていることが確認された。
【0032】
一方、表2及び図3(●印)に示すように、服用後では、51.0秒で100μLの血液が通過しており、服用前よりも明らかに血液が短時間で通過することが確認された。
【0033】
また、図4(b)に示すように、服用後では、75μLの血液が通過した時点で、18箇所のスリット中のわずか2箇所で血液が詰まりかけているものの16箇所のスリットでは血液が良好に通過しており、赤血球の変形能が改善されて赤血球が玉状から本来の中凹み円盤状に回復していることが確認された。
【0034】
この症例から、グルタチオン、セレン及びビタミンB1からなる薬剤を服用することによって、グルタチオン、セレン及びビタミンB1が赤血球の細胞に直接作用して赤血球の細胞を活性化させ、赤血球の変形能を向上させることができることが確認された。しかも、グルタチオンやセレンをグルタチオン含有酵母やセレン含有酵母とすることで、或いはカプセルに封入することで、薬剤の即効性が高いことが確認された。
【0035】
上記実施例1及び実施例2から、グルタチオン、セレン及びビタミンB1からなる薬剤には、グルタチオン、セレン及びビタミンB1が赤血球の細胞に作用して赤血球の細胞を活性化させることができ、これにより、赤血球の変形能を向上させることができ、しかも、即効性が高いことが確認された。
【0036】
なお、上記実施例1及び実施例2は、本発明に係る赤血球変形能改善剤の症例の代表的なものを例示したに過ぎず、グルタチオンを50〜400mg、セレンを1〜100μg、ビタミンB1を1〜50mg含有する各種組成の薬剤を服用又は静脈内投与した場合であっても上記症例と同様の効果が確認された。
【0037】
以下に、本発明に係る赤血球変形能改善剤の作用効果について考察する。
【0038】
細胞は、その進化過程において、地球上の大気に酸素がほとんど含まれていなかった時代にカリオブラステアという細胞まで進化して原始細胞体を形成し、その後、地球上でシアノバクテリアからなる藍藻が酸素を発生して大気に多量の酸素が含まれるようになると、酸素を利用するミトコンドリアが生まれ、このミトコンドリアが原始細胞体に寄生して、現在の共生細胞にまで進化している。
【0039】
そして、細胞中のミトコンドリアは、ビタミンB1を必須栄養素として活動するのに対し、細胞中の原始細胞体の部分は、グルタチオンやセレンやビタミンB1を栄養素としてブドウ糖(6炭糖)から5炭糖燐酸(PRPP)を作る5炭糖燐酸経路を動かして活動しているものと考えられる。なお、生体は、5炭糖燐酸を利用してDNAやRNAを作り、細胞内でDNAの遺伝子情報をmRNAに転写し、その情報からrRNA上でアミノ酸を結合させて生化学反応に必要な各種のタンパク質を生成している。
【0040】
特に赤血球は、生成後に核が消えて中凹み円盤状となっており、細胞中の原始細胞体によって変形能が発揮されるものと考えられる。
【0041】
そのため、グルタチオン、セレン及びビタミンB1からなる薬剤を服用することで、グルタチオン、セレン及びビタミンB1が赤血球の細胞に直接的に作用して赤血球の細胞を活性化させることができ、これにより、赤血球の変形能を向上させることができるものと考えられる。
【0042】
なお、本発明に係る赤血球変形能改善剤は、ビタミンB1を含有するために、このビタミンB1がミトコンドリアに作用してミトコンドリアをも活性化させることができ、また、ビタミンB1の作用で肝臓でのグルタチオンの生成を促進し、これによっても赤血球の変形能を向上させることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
グルタチオン、セレン及びビタミンB1とからなる赤血球変形能改善剤。
【請求項2】
グルタチオンを50〜400mg、セレンを1〜100μg、ビタミンB1を1〜50mg含有する請求項1に記載の赤血球変形能改善剤。
【請求項3】
前記グルタチオンは、グルタチオン含有酵母として含有する請求項1又は請求項2に記載の赤血球変形能改善剤。
【請求項4】
前記セレンは、セレン含有酵母として含有する請求項1〜請求項3のいずれかに記載の赤血球変形能改善剤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−37768(P2011−37768A)
【公開日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−186681(P2009−186681)
【出願日】平成21年8月11日(2009.8.11)
【出願人】(509227388)
【Fターム(参考)】