説明

走査パネルおよびそれを用いた方法

【課題】高いべき乗法則による信号損失の増大やSNRの低下なしに高いAFOVが得られるマイクロ波画像形成に使用されるコスト効率の高いアンテナアレイを提供すること。
【解決手段】マイクロ波照明の送信ビームを前記ターゲットの方に導くように、それぞれの位相遅れをそれぞれプログラム可能であり、受信ビームで前記ターゲットから反射された反射マイクロ波照明をそれぞれ受け取ることができる複数のアンテナ素子を備え、前記複数のアンテナ素子が、マイクロ波照明の前記送信ビームを送信ビームパターンで導くように配列されたアンテナ素子の第1のアレイと、前記送信ビームパターンと相補的な受信ビームパターンで前記受信ビームを受け取るように配列されたアンテナ素子の第2のアレイとを備え、前記ターゲットの前記マイクロ波画像が、前記送信ビームと前記受信ビームの交差部位に形成される、走査パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットのマイクロ波画像を捕捉するためにマイクロ波画像形成システムに使用する走査パネルに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波画像形成の最近の進歩によって、物体や他の対象物(例えば、被験者)の二次元マイクロ波画像さらには三次元マイクロ波画像を生成できるマイクロ波画像形成システムの商業的開発が可能になった。現在、いくつかの使用可能なマイクロ波画像形成技術がある。例えば、1つの技術は、マイクロ波検出器アレイ(今後「アンテナ素子」と呼ぶ)を使用して、ターゲット(target,対象)から放射された受動的なマイクロ波エネルギーあるいはターゲットの能動的なマイクロ波照明に応答してターゲットから反射された反射マイクロ波エネルギー(reflected microwave energy)を捕捉する。人や品物の二次元または三次元画像は、ターゲットの位置に対してアンテナ素子アレイを走査しかつ/または送信または検出されたマイクロ波エネルギーの周波数(または波長)を調整することによって構成される。
【0003】
マイクロ波エネルギー(microwave energy)の送受信に使用される送受信アンテナアレイは、「A Device for Reflecting Electromagnetic Radiation」と題する特許文献1と、「Broadband Binary Phased Antenna」と題する特許文献2に記載されているような従来のアナログ位相アレイまたは2進反射板アレイを使用して構成することができる。どちらのタイプのアレイも、最高空間解像度を有する最大アドレス指定可能体積は、短い波長λを選択し、両方向の隣り合ったアンテナ素子の間隔がλ/2になるようにアレイをアンテナ素子で密に埋め、アレイの二次元面積を最大にすることによって得られる。例えば、アレイが1辺Lの正方形の場合は、アレイから距離Lにある物体を約λの解像度で画像形成することができる。
【0004】
しかしながら、アンテナ素子の数、ひいてはアレイのコスト、は(L/λ)に比例する。この二次式のコスト従属性は、アドレス指定可能な視野を広くするためにアレイのサイズを大きくしたり解像度を高めるために波長を短くしたりするときの障害となる。本明細書で使用されるとき、用語「アドレス指定可能な視野」(AFOV)は、高解像度でアドレス指定可能な体積(すなわち、最高解像度に対する指定された係数の範囲内で解像できる体積)を指す。
【0005】
コストと解像度とAFOVの問題のために提案された1つの解決策は、密なアンテナアレイではなく疎なアンテナアレイを使用することである。解像度は、開口数(ただし、この開口数は直径に依存しアレイの面積に依存しない)と共に高くなるので、2つまたは4つのアンテナ素子がLだけ離間されたアレイは、所望の解像度を達成することができる。しかしながら、疎なアレイはマルチローブアンテナパターン(multi-lobed antenna patterns)を生成する。アレイが従来の送信フェーズドアレイ(transmit phased array)であり、疎係数(sparseness factor)が1≧s≧0の場合、フーリエ解析のパーセバルの定理によれば、同じ広さの本来密(s=1)アレイが解像する領域内には送信出力のうちのsだけが入る。疎なアレイが反射板アレイ(reflector array)であり、送信ホーンが本来密(s=1)アレイの最大範囲を照明する場合、疎なアレイは、ホーンの出力のうちのsだけを処理する。したがって、効率係数(すなわち、オリジナル領域を埋める送信部分)はsである。反射板アレイが、マイクロ波照明をターゲットの方に導くためとターゲットからの反射マイクロ波照明を受け取るための両方に使用される場合は、全効率係数η=sである。例えば、50%の疎な反射板アレイは、1/16=6.25%の送受信効率となる。したがって、アレイが疎になるとき信号損失は4乗で増大する。
【0006】
疎なアレイの信号対雑音(SNR)比率も、sまたはs依存性を受ける。さらに、漂遊放射線により生じる暗騒音(「クラッタ」と呼ばれることもある)が、いくつかの理由のために疎なアレイのSNRをさらに低下させる。第1に、本来密(s=1)アレイの空領域は、フィルファクタ効率(fill factor efficiency)1−sで放射を反射する集合的平面鏡になる。第2に、残りの(占有)領域の幾何学形状は、一般に、アンテナの位相が変化するときに不完全に制御された形で方向を変化させるサイドローブを生成する。サイドローブの重みは、アレイが疎になるほど増大する。SNRは、アレイが疎になるときにこれらの2つの要因によってシステム雑音が増大するレベルまで、経験的にs/(1−s)で変化し、この場合a≒4、b≒1である。したがって、疎なアレイは、信号損失を増加させSNRを低下させる。
【特許文献1】米国特許出願第10/997,422号明細書
【特許文献2】米国特許出願第10/997,583号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、高いべき乗法則による信号損失の増大やSNRの低下なしに高いAFOVが得られるマイクロ波画像形成に使用されるコスト効率の高いアンテナアレイの設計が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の実施形態は、ターゲットのマイクロ波画像を捕捉するためにマイクロ波画像形成システムに使用する走査パネルを提供することである。走査パネルは、マイクロ波照明の送信ビームをターゲットの方に導くようにそれぞれの位相遅れをそれぞれプログラムすることができかつ受信ビームでターゲットから反射された反射マイクロ波照明をそれぞれ受け取ることができる複数のアンテナ素子を含む。アンテナ素子は、相補的な2つのアレイで配列される。アンテナ素子の第1のアレイは、マイクロ波照明の送信ビームを送信ビームパターンでターゲットの方に導くように配列される。アンテナ素子の第2のアレイは、受信ビームを送信ビームパターンと相補的な受信ビームパターンで受け取るように配列される。送信ビームと受信ビームの間の交差部位にターゲットのマイクロ波画像が形成される。
【0009】
1つの実施形態において、アンテナ素子は、反射アンテナ素子(reflecting antenna elements)である。マイクロ波源は、マイクロ波照明をアンテナ素子の第1のアレイの方に送り、アンテナ素子の第1のアレイは、次に、マイクロ波照明のビームをターゲットの方に導くようにそれぞれのプログラムされた位相遅れに基づいてマイクロ波照明を反射する。アンテナ素子の第2のアレイは、ターゲットから反射された反射マイクロ波照明を受け取り、反射マイクロ波照明を、第2のアレイ内の反射アンテナ素子と関連付けられた追加のそれぞれの位相遅れに基づいてマイクロ波受信器の方に反射するように構成される。
【0010】
さらに他の実施形態において、送信ビームパターンと受信ビームパターンは、直交楕円ビームであり、第1と第2のアレイは、アレイのそれぞれの中間点近くで交差する。さらに他の実施形態において、送信ビームパターンは、粗いスポットのシングルローブ(single-lobed)ビームパターンであり、受信ビームパターンは、細かいスポットのマルチローブ(multi-lobed)パターンである。第1のアレイが、第2のアレイの面積よりも小さい面積を有し、第1のアレイは、第2のアレイの密度よりも大きい密度を有する。もう1つの実施形態において、送信ビームパターンと受信ビームパターンは、互いに45度回転された十字形ビームである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
開示した発明は、本発明の重要な実施例を示し参照により本明細書に組み込まれる添付図面を参照して説明される。
【0012】
本明細書で使用されるとき、マイクロ波放射とマイクロ波照明(microwave illumination)という用語はそれぞれ、約1GHz〜約1,000GHzの周波数に対応する0.3ミリメートル〜30cmの波長を有する帯域の電磁放射を指す。したがって、マイクロ波放射とマイクロ波照明という用語はそれぞれ、従来のマイクロ波放射ならびに一般にミリメートル波放射として知られるものを含む。
【0013】
図1は、本発明の実施形態による簡略化した例示的なマイクロ波画像形成システム10の概略図である。このマイクロ波画像形成システム10は、物体(例えば、スーツケース、被験者、または他の対象物)のマイクロ波画像を捕捉するために、それぞれアンテナ素子80によってマイクロ波放射を送受信することができる1つまたは複数の走査パネル50(便宜上そのうちの1つだけを示す)を含む。
【0014】
1つの実施形態において、走査パネル50は、反射アンテナ素子80で構成された受動的にプログラム可能な反射板アレイ(reflector array)を含む。反射アンテナ素子にはそれぞれ、画像形成する物体150上のターゲット155の方にマイクロ波照明を導くようにそれぞれの位相遅れをプログラムすることができる。位相遅れは、2値でもよく連続でもよい。例えば、走査パネル50がマイクロ波源(図示せず)から受け取ったマイクロ波照明は、物体150上のターゲット155の方に反射され、ターゲット155から反射されて走査パネル50が受け取った反射マイクロ波照明は、個別の反射アンテナ素子80のそれぞれにそれぞれの位相遅れをプログラムすることによってマイクロ波受信器(図示せず)の方に反射される。
【0015】
もう1つの実施形態において、走査パネル50は、マイクロ波照明を生成し送信しかつ反射マイクロ波照明を受け取り捕捉することができる能動アンテナ素子(active antenna elements)80で構成された能動送信器/受信器アレイを含む。例えば、能動アレイは、送信アレイの形でよい。この実施形態において、走査パネル50がマイクロ波放射源として働くので、離れたマイクロ波源は使用されない。能動送信器/受信器アレイ内の能動アンテナ素子にはそれぞれ、マイクロ波照明ビームをターゲット155の方に操縦するようにそれぞれの位相ずれを個別にプログラムすることができる。
【0016】
マイクロ波画像形成システム10は、さらに、プロセッサ100、コンピュータ可読媒体110、および表示装置120を含む。プロセッサ100は、ターゲット155および/または物体150のマイクロ波画像を構成するために走査パネル50を制御しターゲット155から反射された受信マイクロ波照明を処理する任意のハードウェア、ソフトウェア、ファームウェアまたはこれらの組み合わせを含む。例えば、プロセッサ100は、1つまたは複数のマイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、プログラマブル論理素子、コンピュータプログラム命令を実行するように構成されたディジタル信号処理プロセッサや他のタイプの処理装置、およびプロセッサ100によって使用される命令や他のデータを記憶する1つまたは複数のメモリ(例えば、キャッシュメモリ)を含む。しかしながら、プロセッサ100の他の実施形態を使用できることを理解されたい。メモリ110は、ハードドライブ、ランダムアクセス記憶装置(RAM)、読み出し専用記憶装置(ROM)、コンパクトディスク、フロッピディスク、ZIP(登録商標)ドライブ、テープドライブ、データベース、または他のタイプの記憶装置または記憶媒体を含む任意のタイプのデータ記憶装置であるが、これらに限定されるわけではない。
【0017】
プロセッサ100は、物体150上の複数のターゲット155にマイクロ波放射を照射しかつ/または物体150上の複数のターゲット155からの反射マイクロ波照明を受け取るように走査パネル50内の個々のアンテナ素子80のそれぞれの位相遅れまたは位相ずれをプログラムする働きをする。したがって、プロセッサ100は走査パネル50と協働して、物体150を走査する働きをする。
【0018】
プロセッサ100は、さらに、物体150上の各ターゲット155から走査パネル50が捕捉した反射マイクロ波照明の強度を使用して物体150のマイクロ波画像を構成することができる。例えば、走査パネル50が反射板アレイの場合、マイクロ波受信器(図示せず)は、走査パネル50内の各アンテナ素子80から反射された反射マイクロ波照明を組み合わせて、ターゲット155における反射マイクロ波照明の実効強度値を生成することができる。この強度値は、プロセッサ100に渡され、プロセッサ100は、その強度値を、物体150上のターゲット155に対応する画素またはボクセル(3D画素)の値として使用する。動作において、マイクロ波画像形成システム10は、毎秒数百万個のターゲット155を走査できる周波数で動作することができる。
【0019】
ターゲット155および/または物体150の得られたマイクロ波画像をプロセッサ100から表示装置120に渡して、マイクロ波画像を表示することができる。1つの実施形態において、表示装置120は、物体30の三次元マイクロ波画像あるいはターゲット155および/または物体150の1つまたは複数の一次元または二次元マイクロ波画像を表示する二次元表示装置である。もう1つの実施形態において、表示装置120は、物体150の三次元マイクロ波画像を表示することができる三次元表示装置である。
【0020】
複数の走査パネル50を使用して物体150の様々な部分を走査できることを理解されたい。例えば、マイクロ波画像形成システム10は、物体150の半分を走査するアンテナ素子80の1mx1mアレイをそれぞれ含む2つの走査パネルで実現することができる。もう1つの例として、マイクロ波画像形成システム10は、物体150の4分の1を走査できるアンテナ素子80の0.5mx0.5mアレイをそれぞれ含む4つの走査パネル50で実現することができる。
【0021】
図2は、能動送信/受信アレイに使用する能動アンテナ素子200(図1のアンテナ素子80に対応する)の例を示す。能動アンテナ素子200は、それぞれのスイッチ215に接続されたアンテナ210を含む広帯域2値位相アンテナ素子(broadband binary phased antenna element)である。スイッチ215は、例えば、単極双投(SPDT)スイッチまたは二極双投(DPDT)スイッチである。スイッチ215の動作状態は、それぞれのアンテナ素子200の位相を制御する。例えば、スイッチ215の第1の動作状態において、アンテナ素子200は第1の2値状態(例えば、0度)であり、スイッチ215の第2の動作状態において、アンテナ素子200は第2の2値状態(例えば、180度)である。スイッチ215の動作状態は、スイッチ215の端子接続を定義する。例えば、第1の動作状態において、端子218は、アンテナ210とスイッチ215の間で給電ライン216を接続するよう閉じた(短絡)位置にあり、端子219は開いた位置にある。各スイッチ215の動作状態は、各アンテナ素子200の位相を個別にセットするように制御回路(図示せず)によって独立に制御される。
【0022】
本明細書において使用する「対称アンテナ(symmetric antenna)210」という用語は、2つの反対の対称的な電界分布(または電流)のいずれかを生成するよう、2つの給電ポイント211又は213のいずれかににおいて供給される、または引き出されることのできるアンテナを指す。図2に示したように、ミラー軸250を中心として対称的な形状の対称アンテナ210を使用することにより、2つの反対の対称的な電界分布が生成される。ミラー軸250がアンテナ210を通過することにより、2つの対称的なサイド252と254が生成される。給電ポイント211及び213は、アンテナ210のミラー軸250のいずれかのサイド252及び254上に配置される。一実施形態においては、給電ポイント211及び213は、ミラー軸250を中心した実質的に対称的なアンテナ210上に配置される。例えば、ミラー軸250は、アンテナ210の1つの次元(寸法)260(例えば、長さ、幅、高さなど)に平行に延長可能であり、給電ポイント211及び213は、寸法260の中点270の近くに配置されることができる。図2においては、給電ポイント211及び213は、ミラー軸250のそれぞれのサイド252及び254上のアンテナ210の中点270の近くに配置された状態で示されている。
【0023】
対称アンテナ210は、AとBで示した2つの反対の対称的な電界分布を生成することができる。電界分布Aの振幅(例えば、電力)は、電界分布Bの振幅と実質的に同一であるが、電界分布Aの位相は、電界分布Bの位相と180度異なる。したがって、電界分布Aは、電気サイクルが±180°の電界分布Bと類似している。
【0024】
対称アンテナ210は、給電線216及び217を介して対称スイッチ215に接続されている。給電ポイント211は、給電線216を介して対称スイッチ215の端子218に接続されており、給電ポイント213は、給電線217を介して対称スイッチ215の端子219に接続されている。本明細書において使用するこの「対称スイッチ」という用語は、スイッチの2つの動作状態が端子218及び219を中心として対称であるSPDTスイッチまたはDPDTスイッチを示している。
【0025】
例えば、SPDTスイッチの第1の動作状態において、チャネルαのインピーダンスが10Ωでチャネルβのインピーダンスが1kΩの場合は、SPDTスイッチの第2の動作状態において、チャネルαのインピーダンスが1kΩで、チャネルβのインピーダンスが10Ωである。チャネルインピーダンスが、完全に開いた状態でも、短絡でも、ましてや実数である必要はないことを理解されたい。さらに、クロストークが状態に関して対象である限り、チャネル間にクロストークが存在してもよい。通常、スイッチは、該スイッチのSパラメータマトリクスがスイッチの2つの動作状態間において(例えば、2つの端子218及び219の間で)同一である場合に、対称である。
【0026】
図3は、アンテナ素子300のインピーダンス状態により異なる位相で電磁放射を反射する働きをする反射アンテナ素子300(図1のアンテナ素子80に対応する)の断面図を示す。反射アンテナ素子300は、アンテナ(パッチアンテナ320a)と非理想的スイッチング素子(表面実装型電界効果トランジスタ「FET」322)とを含む。
【0027】
反射アンテナ素子300は、プリント回路基板314の上と中に形成されており、表面実装FET322、パッチアンテナ320a、ドレインバイア(drain via)332、接地平面336、およびソースバイア(source via)338を含む。表面実装FET322は、プリント回路基板314の平面パッチアンテナ320aと反対側に取り付けられており、接地平面336は、平面パッチアンテナ320aと表面実装FET322の間にある。ドレインバイア332は、表面実装FET322のドレイン328を平面パッチアンテナ320aに接続し、ソースバイア338は、表面実装FET322のソース326を接地平面336に接続する。
【0028】
実際の製品において、反射板アンテナアレイは、ドライバ電子回路を含むコントローラ基板340に接続される。例示的なコントローラ基板340は、図3にも示されており、接地平面344、駆動信号ビア346、およびドライバ電子回路342を含む。コントローラ基板340は、また、反射板アンテナアレイのコネクタ350と互換性を有するコネクタ348を含む。2つの基板のコネクタ348は、例えばウェーブはんだ付けを使用して接続することができる。他の実施形態において、FET322が、プリント回路基板314の平面パッチアンテナ320aと同じ側に表面実装されてもよいことを理解されたい。さらに、ドライバ電子回路342は、反射アンテナ素子300を構成したプリント回路基板と同じプリント回路基板に直接はんだ付けされてもよい。
【0029】
パッチアンテナ素子320aは、位相が反射アンテナ素子300のインピーダンスレベルにある程度依存してずれた状態で反射するように機能する。反射アンテナ素子300は、アンテナ設計パラメータの関数であるインピーダンス特性を有する。アンテナの設計パラメータには、構造の絶縁性材料、絶縁性材料の厚さ、アンテナの形状、アンテナの長さと幅、給電位置、アンテナ金属層の厚さなどの物理的属性があるが、これらに限定されない。
【0030】
FET330(非理想的スイッチング素子)は、抵抗状態を変化させることによって反射アンテナ素子300のインピーダンス状態を変化させる。低抵抗状態(例えば、閉じた状態すなわち「短絡」)は、低インピーダンスになる。反対に、高抵抗状態(例えば、開いた状態)は高インピーダンスになる。理想的な性能特性を有するスイッチング素子(本明細書において「理想的」スイッチング素子と呼ばれる)は、抵抗がその最低状態にあるときに実質的にゼロのインピーダンス(Z=0)を生成し、抵抗がその最大状態にあるときに実質的に無限大のインピーダンス(Z=∞)を生成する。本明細書で説明するように、スイッチング素子は、そのインピーダンスがその最低状態(例えば、Zon=0)にある際には「オン」であり、そのインピーダンスがその最大状態(例えば、Z0ff=∞)にある際には「オフ」である。理想的スイッチング素子のオンとオフのインピーダンス状態は、実質的にZon=0とZoff=∞なので、理想的スイッチング素子は、電磁放射の吸収なしにオン状態とオフ状態の間で最大の移相を実現することができる。すなわち、理想的スイッチング素子は、0度と180度の位相状態の間でスイッチングを実現することができる。理想的スイッチング素子の場合には、有限な非ゼロのインピーダンスを示すアンテナにより、最大位相-振幅性能を実現することができる。
【0031】
理想的スイッチング素子と対照的に、「非理想的」スイッチング素子は、それぞれZon=0とZoff=∞でオンとオフのインピーダンス状態を示さないスイッチング素子である。より正確に言うと、非理想的スイッチング素子のオンとオフのインピーダンス状態は、一般に、例えば0<|Zon|<|Zoff|<∞のどこかである。しかしながら、用途によっては、オンとオフのインピーダンス状態は|Zoff|<=|Zon|でもよい。非理想的スイッチング素子は、特定の周波数範囲(例えば、<10GHz)内で理想的なインピーダンス特性を示し、他の周波数範囲(例えば、>20GHz)できわめて非理想的なインピーダンス特性を示すことになる。
【0032】
非理想的スイッチング素子のオンとオフのインピーダンス状態は、Zon=0とZoff=∞の間のどこかに位置しているため、非理想的スイッチング素子によれば、必ずしも、対応するアンテナのインピーダンスとは無関係に、最大位相状態性能を得ることはできない。ここで、最大位相状態性能は、0度から180度の位相状態間におけるスイッチングを必要とするものである。本発明によれば、図3の反射アンテナ素子300は、最適な位相性能を提供するように特別に設計されており、この反射アンテナ素子の最適な位相状態性能とは、反射素子が0度と180度の位相−振幅状態間におけるスイッチングに最も近接している地点のことである。一実施形態においては、このような最適な位相状態性能を実現するべく、非理想的スイッチング素子(FET330)のインピーダンスの関数としてアンテナ素子300が構成される。例えば、アンテナ素子300のインピーダンスがFET330のインピーダンス特性の関数になるようにアンテナ素子300が設計される。
【0033】
さらに、アンテナ素子300は、オン状態Zonにおける非理想的スイッチング素子(FET330)のインピーダンスと、オフ状態Zoffにおける非理想的スイッチング素子330のインピーダンスの関数として構成される。特定の実施形態においては、反射アンテナ素子300の位相状態性能は、オンとオフのインピーダンス状態ZonとZoffのときにアンテナ素子300のインピーダンスが非理想的スイッチング素子330のインピーダンスの平方根と共役になるようにアンテナ素子300が構成されるときに最適化される。具体的には、アンテナ素子300のインピーダンスは、対応する非理想的スイッチング素子330のオンとオフのインピーダンス状態ZonとZoffの相乗平均の複素共役である。この関係は次のように表される。
【数1】

【0034】
前述の関係は、ソースインピーダンス(source impedance)と負荷インピーダンスの間の複素反射係数の周知の公式を使用して導き出される。アンテナ素子300をソース(source)として選択すると共に、非理想的スイッチング素子330を負荷として選択し、オン状態の反射係数がオフ状態の反射係数の逆と等しくなるように設定することにより、式(1)が得られる。
【0035】
最適な位相−振幅性能を示すようにアンテナ素子300を設計するには、反射アンテナ素子300(この場合は、FET330)に使用される特定の非理想的スイッチング素子のオンとオフのインピーダンスZonとZoffを決定しなければならない。次に、アンテナ素子300の設計パラメータを操作することにより、前述の式(1)で表される関係と整合するインピーダンスを有するアンテナ素子300を生成する。ZonとZoffが異なる値になるように決定される限り、式(1)に適合するアンテナ素子300を設計することができる。
【0036】
対象とする周波数帯域にわたって非理想的インピーダンス特性を示す、図3に示した表面実装FET330以外の別のタイプのスイッチング素子は、表面実装ダイオードである。しかしながら、表面実装ダイオードは、対象とする周波数帯全体にわたって表面実装FETよりも優れたインピーダンス特性を示すが、表面実装FETは、比較的安価であり、反射板アンテナアレイ用途に使用するように個別にパッケージ化することができる。
【0037】
非理想的スイッチング素子としてFETを利用する反射板アンテナアレイにおいて、達成できるビーム走査速度は、信号雑音比、クロストーク、およびスイチッング時間を含むいくつかの要因に依存する。FETの場合、スイチッング時間は、ゲート容量、ドレイン−ソース間容量、およびチャネル抵抗(すなわち、ドレイン−ソース間抵抗)に依存する。チャネル抵抗は、実際には、空間及び時間の両方に依存している。インピーダンス状態間のスイチッング時間を最小にするために、FETのドレインは、常に直流短絡されることが好ましい。ドレインをフローティング状態にしておくと、パッチアンテナの非常に大きな平行プレート面積によって、オフ状態のチャネル抵抗値とドレイン−ソース間容量が大きくなるので、常にドレインを直流短絡されることが好ましい。これは、アンテナが直流短絡されることが好ましいが、ソースにおいてアンテナから「高周波短絡」のみを観測するのが望ましいことを意味している。したがって、この付加的なアンテナ/ドレイン短絡は、アンテナの混乱(perturb)を最小にするように最適に配置されなければならない。
【0038】
反射アンテナ素子300に、パッチアンテナ320aの代わりに他のタイプのアンテナを使用できることを理解されたい。限定ではなく1つの例として、他のアンテナタイプには、ダイポールアンテナ、モノポールアンテナ、ループアンテナ、および誘電体共振器型アンテナがある。さらに、他の実施形態において、反射アンテナ素子300は、FET330を可変コンデンサ(例えば、バリウムチタン酸ストロンチウム(BST)コンデンサ)と置き換えることによって、連続位相シフトアンテナ素子300でもよい。可変コンデンサを実装したパッチの場合、FET実装パッチによって生成される2値移相の代わりに各アンテナ素子300ごとに連続移相を達成することができる。マイクロ波ビームをビーム走査パターンで任意の方向に操縦するために、連続する位相配列を調整して任意の所望の移相を実現することができる。
【0039】
図4は、本発明の実施形態による、マイクロ波照明を反射する例示的な走査パネル50の平面概略図である。図4において、マイクロ波源(アンテナ)60から送られたマイクロ波照明400を走査パネル50内の様々なアンテナ素子80が受け取る。アンテナ素子80にはそれぞれ、反射マイクロ波照明410をターゲット155の方に導くようにそれぞれの位相遅れがプログラムされる。この位相遅れは、ターゲット155におけるそれぞれのアンテナ素子80から反射されたマイクロ波照明410の正の干渉を作成するように選択される。理想的には、それぞれのアンテナ素子80の移相は、ソース(アンテナ素子80)からターゲット155までの反射マイクロ波照明410の各経路に同じ位相遅れを提供するように調整される。
【0040】
示していないが、類似の方法で、ターゲット155から反射されて走査パネル50が受け取ったマイクロ波照明をマイクロ波受信器(図示せず)の方に反射させることができることを理解されたい。マイクロ波源60は、別個のアンテナまたはマイクロ波受信器の一部としてマイクロ波受信器と同じ空間位置に配置され、走査パネル50を介してターゲット155を照射してもよく、あるいはマイクロ波受信器と異なる空間位置に配置され、ターゲット155を直接または走査パネル50(例えば、マイクロ波受信器と同じ走査パネル50または異なる走査パネル50)のうちの1つを介して照射してもよい。
【0041】
アドレス指定可能な視野(AFOV)を維持しながら、能動または反射アンテナ素子80を含む走査パネル50を作成するコストを削減するために、本発明の実施形態により、走査パネル50内に相補的な(complementary)送信および受信アンテナアレイを提供することによって走査パネル50内のアンテナ素子80の数を少なくすることができる。相補的な送信アンテナアレイと受信アンテナアレイがそれぞれ相補的な送信マイクロ波ビームパターンと受信マイクロ波ビームパターンを生成する。ターゲットのマイクロ波画像は、相補的な送信および受信マイクロ波ビームパターンの交差部位に形成される。したがって、送信ビームの不完全さを受信ビームで補うことができ、その逆も行うことができる。相補的な送信アレイと受信アレイはそれぞれ、大幅に少ない数のアンテナ素子で構成され、その結果、走査パネル50内のアンテナ素子の総数は、図4に示した本来密のアレイよりも大幅に少なくなる。素子数のこの減少はそのままコストの削減になる。
【0042】
次に図5Aと図5Bを参照すると、図5Aは、1つの例示的な相補的アンテナアレイ設計の概略図であり、図5Bは、本発明の実施形態により、図5Aに示したアンテナアレイ設計によって作成されたマイクロ波ビーム放射パターンを表す図である。図5Aの走査パネル50は、送信アレイ510と受信アレイ520に配列されたアンテナ素子80を含むように示されている。送信アレイ510と受信アレイ520のアンテナ素子80は、それぞれのパターンで配列されている。送信アレイ510のアンテナ素子80のパターンは、受信アレイ520のアンテナ素子80のパターンと相補的である。
【0043】
送信アレイ510のアンテナ素子80にはそれぞれ、マイクロ波照明の送信ビーム530を送信アレイ510のアンテナ素子80のパターンに対応する送信ビームパターンで導くようにそれぞれの位相遅れがプログラムされる。受信アレイ510のアンテナ素子80にはそれぞれ、反射マイクロ波照明の受信ビーム540を受信アレイ520のアンテナ素子80のパターンに対応する受信ビームパターンで受け取るようにそれぞれの位相遅れがプログラムされる。受信ビームパターンは送信ビームパターンに対して相補的であり、その結果、それぞれ送信アレイ510と受信アレイ520が相補的になる。相補的な送信マイクロ波ビーム530と受信マイクロ波ビーム540の交差部位550にマイクロ波画像を形成することができる。より具体的には、生成される画像信号は、送信マイクロ波ビーム530と受信マイクロ波ビーム540の体積積分クロス乗積(volume-integrated cross product)である。そのような送信/受信「十字線(cross hairs)」により、小領域の形を解像することが可能になる。
【0044】
アレイのコストが、密なアレイの占有面積(A)に比例する密なアレイ(図4に示したような)と対照的に、図5Aに示した相補的な少ない素子数のアレイ510および520のコストは単にAの平方根に比例し、これにより大幅なコスト削減が達成される。さらに、相補的なアレイは、全体的な広がりと最小ピッチとが、本来の密なアレイと同じなので、図4の密なアレイと図5Aの相補的な少ない素子数のアレイ510および520との間ではAFOVは変化しない。しかしながら、ビームをガウスビームとして近似させると、本来密なアレイと少ない素子数のアレイの両方のビームパターンの詳細によって、図5Aの設計の解像度は、図4の密なアレイの設計よりもわずかに低下し、一般に1〜1.7の範囲で下がる。さらに、SNRは、相補的な少ない素子数のアレイ510および520によって設計された反射板アレイではs分の1に減少するが、SNRは、さらに、非選択的照明を有する任意の疎なアレイの場合にはs依存性よりかなり低くなる。
【0045】
次に図6Aと図Bを参照すると、相補的な少ない素子数のアレイの別の例示的な設計が示されている。図6Aは、例示的なアンテナアレイ設計の概略図であり、図6Bは、本発明の実施形態により図6Aに示したアンテナアレイ設計によって生成されたマイクロ波ビーム放射パターンを表す図である。図6Aの走査パネル50は、それぞれ垂直な送信アレイ510と受信アレイ520内に配列されたアンテナ素子80を含むように示されている。
【0046】
送信アレイ510のアンテナ素子80のパターンは、受信アレイ520のアンテナ素子80のパターンに対して垂直である。さらに、送信アレイ510は、それぞれ送信アレイ510及び受信アレイ520の両方の中点付近で受信アレイ520と交差している。図6Aにおいて、送信アレイ510は2行のアンテナ素子を含み、受信アレイ520は2列のアンテナ素子を含む。しかしながら、一般に、図6Aに示した設計は、長方形m*Mの送信アレイ510パターン(この場合、M>m)と、長方形N*nの受信アレイ520パターン(この場合、N>>n)として表すことができる。例えば、タイルがn*mアンテナ素子からなるように定義される場合、N*Mのアンテナ素子の密な正方形アレイは、(N/m)*(M/n)個のタイル(tiles)で構成される。図6Aにより設計されたアレイにおいて、それぞれ送信アレイ510と受信アレイ520の間で共用される交差タイルを含むN+M−1個のタイルしかない。
【0047】
送信アレイ510は、送信ビーム530を垂直な楕円ビームパターンに形成し、一方、受信アレイ520は、受信ビーム540を水平な楕円ビームパターンに形成する。本明細書に使用されるとき、「水平(垂直)の楕円パターン」とは、ビームの実焦点が楕円であり、楕円の長軸が水平(垂直)であることを意味することを理解されたい。それぞれ相補的な送信マイクロ波ビーム530と受信マイクロ波ビーム540の交差部位550にマイクロ波画像を形成することができる。
【0048】
図6Aにそれぞれ示した送信アレイ510及び受信アレイ520は、能動的な送信/受信アレイである(すなわち、給電回路網が、アレイに組み込まれた有線回路網である)場合、SNRは経験的に〜s/(1−s)の比率で表されるはずであり、ここで、1≧s≧0は疎係数(sparseness factor)、a≒2、b≒0である。従来の疎なアレイに関して前に述べたものより小さい指数であるのは、空領域を照明する無駄な放射がないという事実による。したがって、図6Aに示した設計のように、本発明の実施形態に従って設計されるときにより疎なアンテナセットを使用することができる。
【0049】
送信アレイ510及び受信アレイ520がそれぞれ反射板アレイの場合、アレイ510及び520は、アレイ510及び520間でマイクロ波ビームを送受信するように設計されたマイクロ波源及びマイクロ波受信器と無線的に供給されなければならない。図7は、図6Aのアンテナアレイ設計に従って設計された反射板アレイの例示的な照射を示す概略図である。図7において、楕円マイクロ波照明ビームすなわち「ファン型ビーム(fan beams)」70及び90をそれぞれ反射板アレイ510及び520に供給するための特別に設計されたホーン60a及び60bが示されている。特別に設計された各ホーン60a及び60bは、正確な同位相波面を提供するために高縦横比の放射開口部と、その放射開口部にレンズインサート(図示せず)とを有する。
【0050】
図7において、マイクロ波源60aは、幅が狭く高さの大きい開口部を有するホーンであり、マイクロ波受信器60bは、幅が広く高さの小さい開口部を有するホーンである。図7に示した特定のホーン給電器(horn feed)の代わりに、他のタイプの特別に設計されたホーン給電器を用いてもよいことを理解されたい。例えば、本発明の実施形態と共に、漏洩導波管(leaky waveguide)、円柱状レンズ、円柱状ミラー、および他のタイプの特別に設計されたホーンを使用することができる。特別に設計されたホーンのタイプに関係なく、特別に設計されたホーン給電器放射体のアンテナパターンは、主ローブの2つの主平面におけるビーム幅間で横縦比が高くなければならない(すなわち、給電器は、送信アレイ510または受信アレイ520を照射するためにほぼ最適な楕円のファン型ビームを生成する)。さらに、ホーン60a及び60bの横縦比が相補的であるので、マイクロ波源60aとマイクロ波受信器60bとは、一緒に配置されていない別個の放射体でなければならない。
【0051】
しかしながら、他の実施形態において、マイクロ波源60aとマイクロ波受信器60bが、一緒に配置された放射体でもよいことを理解されたい。さらに、他の実施形態において、送信アレイ510と受信アレイ520はそれぞれ送信アレイ(transmission array)でもよく、ホーン60aと60bは、それぞれ送信アレイ510と受信アレイ520を後ろから照射するように走査パネル50の後ろに配置される(すなわち、アレイ510と520が、ターゲットとホーン60aおよび60bとの間にある)ことを理解されたい。さらに、他の実施形態において、アレイ510または520の一方が前から照明される反射板アレイであり他方のアレイ510または520が後から照明される送信アレイである複合設計が可能であることを理解されたい。
【0052】
次に図8Aと図8Bを参照すると、相補的な少ない素子数のアレイの別の例示的な設計が示されている。図8Aは、例示的なアンテナアレイ設計の概略図であり、図8Bは、本発明の実施形態により、図8Aに示したアンテナアレイ設計によって作成されたマイクロ波ビーム放射パターンを表す図である。図8Aの走査パネル50は、疎な大面積アレイ800と密な小面積アレイ810で配列されたアンテナ素子80を含むように示されている。アレイ800または810は、それぞれ図5Aと図6Aの送信アレイ510または受信アレイ520に対応することができる。
【0053】
疎な大面積アレイ800は、ビーム820を細かいスポットのマルチローブビームパターンで生成し、密な小面積アレイ810は、ビーム830を粗いスポットとシングルローブパターンで生成する。疎な大面積アレイ800は、大きい開口数を提供し、従って小さい焦点サイズを提供する。しかしながら、疎な大面積アレイ800によって生成されるビーム820は、アレイ800の疎さによってサイドローブ数が多くなってしまう。したがって、疎な大面積アレイ800自体は、明瞭なターゲティングができない。交差部位840に粗いマイクロ波画像が形成されるが、シングルローブビーム830により不明瞭さがなくなる。図8Bに細かいパターンで示されている各スポットは、疎な大面積アレイ800内のアンテナ素子80と1:1で対応しているように見えるが、各スポットは、実際には、疎な大面積アレイ内のすべてのアンテナ素子80の集合的な協力により形成されていることを理解されたい。
【0054】
アレイ800と810がそれぞれ反射板アレイである場合、アレイ800と810は、アレイ800と810との間でマイクロ波ビームを送受信するように設計されたマイクロ波源とマイクロ波受信器によって無線的に供給されなければならない。図9は、図8Aのアンテナアレイ設計に従って設計されたアンテナアレイの例示的な照明を示す概略図である。図9において、適切なマイクロ波照明ビーム910及び920をそれぞれ反射板アレイ800及び810に供給する特別に設計されたホーン60aと60bが示されている。
【0055】
密な小面積アレイ810に供給するホーン60aは、標準的な比較的高い指向性のホーンである。しかしながら、疎の大面積アレイ800に供給するホーン60bは、疎な大面積アレイ800内のアンテナ素子80だけに選択的に照射するように設計された特別に設計された回折光学素子(DOE)を含む。例えば、1つの実施形態において、DOEは、一定の組のくぼみまたは食刻を有する透明な板であり、ホーン60bは標準的なホーンである。他の実施形態において、1つまたは複数のアレイ800と810が、後ろから照明される送信アレイでよいことを理解されたい。例えば、1つまたは複数のアレイ800及び810が、ターゲットとホーン60aおよび60bとの間にある。
【0056】
図10は、図8Aのアンテナアレイ設計に従って設計されたアンテナアレイの別の例示的な照射を示す概略図である。図10において、密な小面積アレイ810は、ホーン給電されるが、疎な大面積アレイ800は、有線回路網1010によって給電される。疎な大面積アレイ800の各アンテナ素子80は、それぞれの周波数変換器1000に接続され、有線回路網1010は、低い中間周波数(IF)(例えば、10〜100MHz)で給電信号を提供する。疎な大面積アンテナ素子80の移相は、アップコンバータ/ダウンコンバータのコストにより、無線周波数(RF)で実行されてもIFで実行されてもよい。
【0057】
次に図11Aと図11Bを参照すると、相補的な少ない素子数のアレイの別の例示的な設計が示されている。図11Aは、例示的なアンテナアレイ設計の概略図であり、図11Bは、本発明の実施形態に従って図11Aに示したアンテナアレイ設計によって作成されたマイクロ波ビーム放射パターンを表す図である。図11Aの走査パネル50は、送信十字形アレイ510と受信十字形アレイ520でそれぞれ配列されたアンテナ素子80を含むように示されている。
【0058】
送信アレイ510のアンテナ素子80の十字形パターンは、受信アレイ520のアンテナ素子80の十字形パターンに対して45度回転されている。さらに、送信アレイ510は、それぞれ送信アレイ510と受信アレイ520の両方の中間点近くで受信アレイ520と交差している。送信アレイ510は、送信ビーム530を十字形ビームパターンで生成し、一方、受信アレイ520は、受信ビーム540を送信ビーム530から45度回転された十字形ビームパターンで生成する。それぞれ相補的な送信マイクロ波ビーム530と受信マイクロ波ビーム540の交差部位550にマイクロ波画像を形成することができる。
【0059】
送信アレイ510と受信アレイ520がそれぞれ反射板アレイの場合、アレイ510と520は、アレイ510および520との間でマイクロ波ビームを送受信するように設計されたマイクロ波源およびマイクロ波受信器と無線で給電されなければならい。例えば、アレイ510および520には、出力放射開口部が十字と45度回転された十字のホーンを使用して給電することができる。図6Aと比較して、図11Aの設計は、同じ占有面積のアレイに高い解像度を実現するが、図11Aの設計は、図6Aの設計よりも多いアンテナ素子(約2倍)を含み、したがって、作成するコストが高くなる。
【0060】
本明細書に示したアンテナ送信/受信アレイの設計が、本発明の実施形態により可能な多数のタイプの相補的アレイパターンの単なる例示であることを理解されたい。他の設計には、限定ではなく1つの例として、k本腕の星、回転したk本腕の星、k辺多角形、および回転したk辺多角形があり、ここで、kは正整数である。
【0061】
図12は、本発明の実施形態によるターゲットのマイクロ波画像を捕捉する例示的な方法1200を示すフローチャートである。最初に、ブロック1210で、アンテナ素子の相補的な送信アレイと受信アレイを含む走査パネルを提供する。ブロック1220で、送信アレイのアンテナ素子にそれぞれ、マイクロ波照明ビームを送信ビームパターンでターゲットの方に導くようにそれぞれの位相遅れをプログラムする。ブロック1230で、受信アレイのアンテナ素子にそれぞれ、送信ビームパターンと相補的な受信ビームパターンでターゲットから反射された受信ビームマイクロ波照明を受け取るようにそれぞれの位相遅れをプログラムする。ブロック1240で、送信ビームと受信ビームの交差部位でターゲットのマイクロ波画像を捕捉する。
【0062】
当業者によって理解されるように、本出願に記載された革新的な概念は、幅広い用途の全体にわたって修正し変更することができる。したがって、特許の主題の範囲は、説明した特定の例示的教示のいずれにも限定されず、添付の特許請求の範囲によって定義される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】本発明の実施形態によるアンテナアレイ設計を含む走査パネルを使用する簡略化した例示的なマイクロ波画像形成システムの概略図である。
【図2】本発明の実施形態による能動送信/受信アレイに使用する例示的な能動アンテナ素子を示す図である。
【図3】本発明の実施形態による反射板アレイに使用する能動アンテナ素子の断面図である。
【図4】本発明の実施形態によるマイクロ波照明を反射する反射板アレイを含む例示的な走査パネルの平面概略図である。
【図5A】本発明の実施形態による例示的なアンテナアレイ設計の概略図である。
【図5B】図5Aに示したアンテナアレイ設計によって生成されたマイクロ波ビーム放射パターンを表す図である。
【図6A】本発明の実施形態による別の例示的なアンテナアレイ設計の概略図である。
【図6B】図6Aに示したアンテナアレイ設計により生成されたマイクロ波ビーム放射パターンを表す図である。
【図7】図6Aのアンテナアレイ設計により設計された反射板アレイの例示的な照明を示す概略図である。
【図8A】本発明の実施形態による別の例示的なアンテナアレイ設計の概略図である。
【図8B】図8Aに示したアンテナアレイ設計によって生成されたマイクロ波ビーム放射パターンを表す図である。
【図9】図8Aのアンテナアレイ設計に従って設計されたアンテナアレイの例示的な照明を示す概略図である。
【図10】図8Aのアンテナアレイ設計に従って設計されたアンテナアレイの別の例示的な照明を示す概略図である。
【図11A】本発明の実施形態による別の例示的なアンテナアレイ設計の概略図である。
【図11B】図11Aに示したアンテナアレイ設計に従って作成されたマイクロ波ビーム放射パターンの図である。
【図12】本発明の実施形態によるターゲットのマイクロ波画像を捕捉するための例示的な方法を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0064】
10 マイクロ波画像形成システム
50 走査パネル
70 送信ビーム
80 アンテナ素子
90 受信ビーム
100 プロセッサ
110 コンピュータ可読媒体
120 表示装置
150 物体
155 ターゲット
510,810 第1のアレイ
520,800 第2のアレイ
530 送信ビームパターン
540 受信ビームパターン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットのマイクロ波画像を捕捉するためにマイクロ波画像形成システムに使用する走査パネルであって、
マイクロ波照明の送信ビームを前記ターゲットの方に導くように、それぞれの位相遅れをそれぞれプログラム可能であり、受信ビームで前記ターゲットから反射された反射マイクロ波照明をそれぞれ受け取ることができる複数のアンテナ素子を備え、
前記複数のアンテナ素子が、
マイクロ波照明の前記送信ビームを送信ビームパターンで導くように配列されたアンテナ素子の第1のアレイと、
前記送信ビームパターンと相補的な受信ビームパターンで前記受信ビームを受け取るように配列されたアンテナ素子の第2のアレイとを備え、
前記ターゲットの前記マイクロ波画像が、前記送信ビームと前記受信ビームの交差部位に形成される、走査パネル。
【請求項2】
前記複数のアンテナ素子がそれぞれ反射アンテナ素子であり、前記第1のアレイのそれぞれの前記反射アンテナ素子が、マイクロ波源からマイクロ波照明を受け取り、前記それぞれのプログラムされた位相遅れに基づいて前記マイクロ波照明を反射して、マイクロ波照明の前記送信ビームを前記ターゲットの方に導くように構成された、請求項1に記載の走査パネル。
【請求項3】
前記第2のアレイのそれぞれの前記反射アンテナ素子が、前記受信ビームを受け取り、前記受信ビームを、前記第2のアレイの前記反射アンテナ素子と関連付けられた追加のそれぞれの位相遅れに基づいてマイクロ波受信器の方に反射するように構成された、請求項2に記載の走査パネル。
【請求項4】
前記交差部位が、前記送信ビームと前記受信ビームの体積積分クロス乗積である、請求項1に記載の走査パネル。
【請求項5】
前記送信ビームパターンと前記受信ビームパターンが直交楕円ビームパターンであり、前記第1のアレイと前記第2のアレイが相補的アレイである、請求項1に記載の走査パネル。
【請求項6】
前記送信ビームパターンと前記受信ビームパターンの一方が、粗いスポットのシングルローブビームパターンであり、他方が、細かいスポットのマルチローブパターンである、請求項1に記載の走査パネル。
【請求項7】
前記第1のアレイが、前記第2のアレイの面積よりも小さい面積を有し、前記前記第1のアレイが、前記第2のアレイの密度よりも大きい密度を有する、請求項6に記載の走査パネル。
【請求項8】
前記送信ビームパターンと前記受信ビームパターンとが、互いに45度回転された十字形ビームパターンである、請求項1に記載の走査パネル。
【請求項9】
ターゲットのマイクロ波画像を捕捉する方法であって、
それぞれの位相遅れをそれぞれプログラム可能な複数のアンテナ素子を含む走査パネルを提供するステップと、
前記アンテナ素子のそれぞれの前記位相遅れに基づいて、前記送信ビームパターンのマイクロ波照明の送信ビームを前記複数のアンテナ素子の第1のアレイから前記ターゲットの方に導くステップと、
前記ターゲットから送信ビームパターンと相補的な受信ビームパターンで反射された反射マイクロ波照明の受信ビームを、前記複数のアンテナ素子の第2のアレイにて受け取るステップと、
前記送信ビームと前記受信ビームの交差部位で前記ターゲットの前記マイクロ波画像を捕捉するステップとを含む方法。
【請求項10】
前記導くステップが、マイクロ波源からの前記マイクロ波照明を前記第1のアレイから前記ターゲットの方に反射するステップをさらに含み、
前記受け取るステップが、前記反射マイクロ波照明を前記第2のアレイからマイクロ波受信器に反射するステップをさらに含む、請求項9に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−270954(P2006−270954A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−75780(P2006−75780)
【出願日】平成18年3月20日(2006.3.20)
【出願人】(399117121)アジレント・テクノロジーズ・インク (710)
【氏名又は名称原語表記】AGILENT TECHNOLOGIES, INC.
【住所又は居所原語表記】395 Page Mill Road Palo Alto,California U.S.A.
【Fターム(参考)】