説明

走査光学系

【課題】光トモグラフィー装置に適用できる簡潔な構成の走査光学系を提供する。
【解決手段】光源10は、中心軸Cに平行な平行光束L1を射出する。反射体20は、平行光束L1を部分的に透過して平行光束L2を作り出す光学的開口22を有し、中心軸Cに対して45°傾いた軸24の周りに回転する。ミラー32は、平行光束L2を中心軸Cに垂直に反射する。ミラー34は、ミラー32によって反射された平行光束L2を再び中心軸Cに平行に反射する。光学素子36は、ミラー34によって反射された平行光束L2を中心軸Cに垂直に反射するとともに、中心軸C上に配置された被検体60の表面に集光させる。光検出器40は、被検体60から射出され、光学素子36とミラー34とミラー32と反射体20とによって順に反射された光束L3を検出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光トモグラフィー装置に適用可能な走査光学系に関する。
【背景技術】
【0002】
生体などの被検体に光を照射して、その透過光又は散乱光を検出して、被検体内の情報を非破壊的に取得する光トモグラフィー装置が知られている。特開平8−166341号公報には、被検体に光を照射するための複数の送光用の光ファイバーと、被検体内を透過、散乱した光を受光するための複数の受光用の光ファイバーとが、被検体の周囲に配置された光トモグラフィー装置が開示されている。この装置では、一本の送光用の光ファイバーから光が被検体に照射され、被検体内を伝播して被検体から射出された光が、複数の受光用の光ファイバーで受光されるとともに、送光用の光ファイバーを順次切り換えながら、被検体に照射する光の入射位置を走査し、被検体内を伝播して被検体から射出された光を複数の受光用の光ファイバーで受光する動作が繰り返される。そして、受光用の光ファイバーに結合した検出系を介して検出された光を解析することにより、被検体内の光学特性の分布情報が得られる。
【特許文献1】特開平8−166341号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上述した光トモグラフィー装置では、被検体に光を照射するために、複数の光ファイバーがそれぞれ複数の光源に接続されていて、発光させる光源を切り替える構成が必要である。あるいは、一つの光源から射出される光を複数の光ファイバーのいずれか一本に選択的に導入する構成が必要である。また、光検出のために、光を検出するための複数の光ファイバーにそれぞれ接続される複数の光検出器を用意する必要がある。さらに、被検体周辺の空間が、多数の光ファイバーが配置されるために装置構成が煩雑になる傾向がある。
【0004】
本発明は、この様な実状を考慮して成されたものであり、その目的は、光トモグラフィー装置に適用できる簡潔な構成の走査光学系を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明による走査光学系は、第一の軸に平行な第一の平行光束を射出する光源と、前記第一の軸に対して45°傾いた第二の軸の周りに回転する反射体とを有している。反射体は、前記第一の平行光束を部分的に透過して第二の平行光束を作り出す光学的開口を有し、光学的開口は前記第二の軸から離心している。多点同時検出光学系はさらに、前記第二の平行光束を前記第一の軸に垂直かつ中心軸Cから遠ざかる方向に反射する複数の第一の光学素子と、前記第一の光学素子によって反射された前記第二の平行光束を再び前記第一の軸に平行に反射する複数の第二の光学素子と、前記第二の光学素子によって反射された前記第二の平行光束を前記第一の軸に垂直かつ中心軸Cに向かう方向に反射するとともに前記第一の軸上に配置された被検体の表面に集光させる複数の第三の光学素子と、前記被検体の内部に入射して拡散伝播し前記被検体から射出され前記第三の光学素子と前記第二の光学素子と前記第一の光学素子と前記反射体とによって順に反射された光束を検出する光検出器とを有している。
【0006】
また、本発明による別の多点同時検出光学系は、前記第三の光学素子が、複数の凹面ミラーから構成されている。
【0007】
また、本発明による別の多点同時検出光学系は、前記反射体が、光学的に透明な基板と、前記光学的開口に対応する領域を除いて前記基板の表面に形成された反射膜とから構成されている。
【0008】
また、本発明による別の多点同時検出光学系は、前記第二の光学素子と前記第三の光学素子とを前記第一の軸に垂直な方向に移動させる複数の移動機構をさらに有している。
【0009】
また、本発明による別の多点同時検出光学系は、前記反射体の反射面が正のパワーを有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、光トモグラフィー装置に適用できる簡潔な構成の走査光学系が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本発明による走査光学系の実施形態を概略的に示している。図1に示すように、走査光学系は、所定の中心軸C上に配置された光源10と光源10の光出射側に配置された反射体20と反射体20を挟んで光源10と反対側に配置された複数のミラーから構成されたミラー32と複数のミラーから構成されたミラー34と複数の光学素子から構成された光学素子36と光検出器40とを有している。また、ミラー32とミラー34と光学素子36のそれぞれの個数は同じである。
【0013】
光源10は、中心軸Cに平行な平行光束L1を射出する。光源10は、例えば、単一の発光素子で構成される。
【0014】
反射体20は、中心軸Cに対して、例えば45°傾けて配置されると共に、平行光束L1を部分的に透過して平行光束L2を作り出す光学的開口22を有している。反射体20は、モーターなどから構成されている回転機構26に取り付けられており、中心軸Cに対して45°傾いた軸24の周りに回転する。また、光学的開口22は軸24から離心した位置に形成されている。反射体20は、光源10に対して反対側の表面に反射面が形成された円形状の反射板で構成されている。
【0015】
各ミラー32は複数の平面ミラーから構成されており、中心軸Cを中心とする所定の円周上に均一の角度間隔で、中心軸Cに対して45°傾けて配置されている。ミラー32は、反射体20を透過した平行光束L2を中心軸Cに垂直かつ中心軸Cから遠ざかる方向に反射する。
【0016】
ミラー34は、複数のミラーから構成され、ミラー32の周囲に配置されている。各ミラー34は平面ミラーから構成されている。各ミラー34は、中心軸Cを中心とする円周上に均一の角度間隔で、各ミラー32に対して平行に対向して配置されている。ミラー34は、ミラー32によって反射された平行光束L2を再び中心軸Cに平行に反射する。
【0017】
各光学素子36は、例えば、複数の凹面ミラーから構成されている。光学素子36は、それぞれ、ミラー34に対向して配置されている。光学素子36は、ミラー34によって反射された平行光束L2を中心軸Cに垂直かつ中心軸Cに向かう方向に反射するとともに、中心軸C上に配置された被検体60の表面に集光させる。ここで被検体60は、例えば生体であり、擬似的に円柱で図示されている。また、ミラー36の表面には、反射エリアを選択できるマスクを形成してもよい。
【0018】
光検出器40は、被検体60の内部に入射して拡散伝播し、被検体60から射出され、再び光学素子36とミラー34とミラー32と反射体20とによって順に反射された光束L3を検出する。光検出器40は、例えばCCDなどのエリア型の単一の光検出素子で構成される。
【0019】
回転機構26は、中心軸Cに沿って延びているロッド52に取り付けられている。ロッド52は、被検体60を収容する空間を規定する光学的に透明な円筒体54に固定されている。ミラー32はロッド52に保持されている。ミラー34は、輪帯状のプレート56に支持されている。光学素子36は、輪帯状のプレート58に支持されている。
【0020】
この光学系は次のように動作する。
【0021】
光源10から射出された平行光束L1は、反射体20に入射し、その一部は光学的開口22を通過して平行光束L2になる。反射体20は回転機構26によって一定の角速度で回転される。このため、光学的開口22を透過した平行光束L2は円周上を一定の角速度で移動する。平行光束L2が移動する円周に沿ってミラー32が配置されており、円周上を移動する平行光束L2は各ミラー32に順次に入射する。つまり、平行光束L2は時系列的に一つのミラー32に入射する。
【0022】
ミラー32に入射した平行光束L2は、ミラー32によって中心軸Cに垂直かつ中心軸Cから遠ざかる方向に反射される。ミラー32によって反射された平行光束L2は、ミラー34によって再び中心軸Cに平行な方向に反射される。ミラー34によって反射された平行光束L2は、光学素子36によって中心軸Cに垂直かつ中心軸Cに向かう方向に反射されるとともに、中心軸C上に配置された被検体60の表面に集光する。
【0023】
被検体60の表面に集光した平行光束L2の一部は被検体60の内部に入射して拡散的に伝播し、被検体60から放射状に射出する。被検体60から射出された光は光学素子36によって反射されて光束L3となり、ミラー34とミラー32とによって順に反射されて反射体20に入射する。反射体20に入射した光束L3は、反射体20の光学的開口22を除いた領域形成された反射面によって反射され、光検出器40に入射する。光検出器40に入射した光束L3は、光検出器40の検出面上に、円周上に位置する複数のスポットを形成する。
【0024】
光検出器40は、スポットに対応する検出面上の異なる領域ごとに、入射した光の強度を反映した計測信号を出力する。計測信号は図示しない演算装置によって解析され、その解析結果から被検体60内の光学特性の分布情報が得られる。例えば、得られた光学特性の分布情報を再構成することによって、拡散光トモグラフィー画像が形成される。
【0025】
本実施形態の走査光学系では、一方向からの被検体60の表面への光照射に対して、透過光だけでなく、拡散光も同時に検出される。また、被検体60への光照射の方向が連続的に変えられる。また、光源10が単一の発光素子で構成され、光検出器40が単一の光検出素子で構成されるため、被検体60の周辺の構成が簡素となる。さらに、温度変化や振動等の使用環境の外的な影響を受けやすい光ファイバーを使用しないので、安定した計測が可能である。これにより本実施形態の走査光学系は光トモグラフィー装置に適用可能でありながら、簡潔な構成とすることができる。
【0026】
[反射体の変形例]
図2は、反射体20に代替可能な別の反射体70を示している。図2に示すように、反射体70は、光学的に透明な基板72と、光学的開口76に対応する領域を除いて基板72の反射面に形成された反射膜74とから構成されている。
【0027】
[検出系の変形例]
図3は、検出系の変形例を示している。この変形例では、図3に示すように、光検出器40の手前に、計測に不必要な特定の波長範囲の光を遮断するフィルター42が配置されている。例えば、励起光を照射して被検体60の内部から発生した蛍光を検出する計測においては、フィルター42を励起光を遮断する励起フィルターとすることができる。この構成によって、計測に不要な励起光をカットして、S/N比のより高い計測信号が得られる。
【0028】
[光学素子36の変形例]
図4は、光学素子36の変形例を示している。この変形例では、図4に示すように、各光学素子36がスライダー80に保持されており、中心軸Cに垂直な方向に移動可能となっている。また、図には示さないが、ミラー34も同様にスライダーに保持されており、中心軸Cに垂直な方向に移動可能となっている。
【0029】
計測に先立って、光学素子36とミラー34を被検体60の表面形状に応じて、スラーダー80によって移動させることにより、各光学素子36によって反射された平行光束L2が被検体60の表面に集光されるように調整される。例えば、被検体60が凸部62を有する場合には、凸部62に対向する光学素子36の光学素子と、この光学素子に対向しているミラー34のミラーとを中心軸Cから遠ざけるように位置調整すれば、光学素子36の光学素子によって反射された平行光束L2が凸部62の表面に集光するように調整できる。
【0030】
この構成により、擬似的に円柱として扱えない複雑な表面形状を持つ被検体60に対しても正確に計測を行なうことができる。
【0031】
[反射体20の変形例]
図5は、反射体20に代替可能な別の反射体90を示している。図5に示すように、反射体90は、光学的に透明な基板92と、光学的開口96に対応する領域を除いて基板92の反射面に形成された反射膜94とから構成されている。基板92の上側の面は平面になっている。また、基板92の下側の面は、光学的開口96に対応する領域が基板92の上側の面に平行な平面92bになっており、それ以外の領域すなわち反射膜94が形成されている領域が凹面92aになっている。このため、反射膜94が形成された反射面が正のパワーを有し、この面に入射する複数の平行光束をそれぞれ一点に集光する収束光束にする作用がある。また、光検出器40は、反射膜94による集光点から光路に沿ってデフォーカスした位置に配置されている。
【0032】
反射体90に入射した平行光束は、それぞれ、反射体90によって反射される際に一点に向かう収束光束となって光検出器40に入射する。このため、両面が平行な反射体70を用いた場合に比べて、使用する光検出器40を小型のものにすることができる。
【0033】
これまで、図面を参照しながら本発明の実施形態を述べたが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。
【0034】
上述した実施形態では、各光学素子36が凹面ミラーから構成されているが、凹面ミラーに代えて、平面ミラーと正のパワーを有する光学部品(例えばレンズや回折格子など)とから構成されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明による走査光学系の実施形態を概略的に示している。
【図2】図1に示した反射体に代替可能な別の反射体を示している。
【図3】図1に示した検出系の変形例を示している。
【図4】図1に示した第三の光学素子の変形例を示している。
【図5】図1に示した反射体に代替可能な別の反射体を示している。
【符号の説明】
【0036】
10…光源、20…反射体、22…光学的開口、24…軸、26…回転機構、32…ミラー(第一の光学素子)、34…ミラー(第二の光学素子)、36…光学素子(第三の光学素子)、40…光検出器、42…フィルター、52…ロッド、54…円筒体、56…プレート、58…プレート、60…被検体、62…凸部、70…反射体、72…基板、74…反射膜、76…光学的開口、80…スライダー、90…反射体、92…基板、92a…凹面、92b…平面、94…反射膜、96…光学的開口、L1…第一の平行光束、L2…第二の平行光束、L3…光束。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の軸に平行な第一の平行光束を射出する光源と、
前記第一の軸に対して45°傾いた第二の軸の周りに回転し、前記第一の平行光束を部分的に透過して第二の平行光束を作り出す前記第二の軸から離心した領域に光学的開口を有している反射体と、
前記第二の平行光束を前記第一の軸に垂直かつ中心軸Cから遠ざかる方向に反射する複数の第一の光学素子と、
前記第一の光学素子によって反射された前記第二の平行光束を再び前記第一の軸に平行に反射する複数の第二の光学素子と、
前記第二の光学素子によって反射された前記第二の平行光束を前記第一の軸に垂直かつ中心軸Cに向かう方向に反射するとともに前記第一の軸上に配置された被検体の表面に集光させる複数の第三の光学素子と、
前記被検体の内部に入射して拡散伝播し前記被検体から射出され、前記第三の光学素子と前記第二の光学素子と前記第一の光学素子と前記反射体とによって順に反射された光束を検出する光検出器とを有している、走査光学系。
【請求項2】
前記第三の光学素子が、複数の凹面ミラーから構成されている、請求項1に記載の走査光学系。
【請求項3】
前記反射体が、光学的に透明な基板と、前記光学的開口に対応する領域を除いて前記基板の表面に形成された反射膜とから構成されている、請求項1又は2に記載の走査光学系。
【請求項4】
前記第二の光学素子と前記第三の光学素子とを前記第一の軸に垂直な方向に移動させる複数の移動機構をさらに有している、請求項1〜3のいずれかに記載の走査光学系。
【請求項5】
前記反射体の反射面が正のパワーを有している、請求項1〜4のいずれかに記載の走査光学系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−91818(P2010−91818A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−262006(P2008−262006)
【出願日】平成20年10月8日(2008.10.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】