説明

走査型プローブ顕微鏡およびナノコードを用いて核酸を検出するための方法および組成物

核酸のヌクレオチド配列を決定するための方法であって、核酸を、核酸と結合させるための一連の標識オリゴヌクレオチドと接触させる段階を含み、それぞれの標識オリゴヌクレオチドが既知のヌクレオチド配列および分子ナノコードを含むような方法が提供される。続いて、核酸と結合する単離された標識オリゴヌクレオチドのナノコードを、SPMを用いて検出する。いくつかの特定の局面における本発明のナノコードは、バーコードが付された対象物に関する情報をコードするタグの配列の範囲を超えて検出可能な特徴を含み、これはバーコードが付された対象物に関する情報をコードするタグを検出するのを助ける。検出可能な特徴には、エラーチェック/エラー訂正、暗号化およびデータ縮小/圧縮のための、本明細書において検出可能な特徴タグと呼ばれる、ナノコードの構造、またはナノコードが付随した構造が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
発明の分野
本発明は一般的には分子の分析方法に関し、より具体的にはナノコードが付随した分子を検出することに関する。
【背景技術】
【0002】
背景情報
とりわけ医学の分野では、分子の同定および特性決定のための手法の需要が高まりつつある。特に、DNA分子のシークエンシングのための手法はより重要になっているが、これは一部には、遺伝学および遺伝子治療を利用する最近の医学の進歩のためである。
【0003】
さまざまな理由から、特定のDNA分子の配列を知ることは好都合となっている。DNAの配列のマッピングのためには複数の方法が現在存在するが、既存の方法は、特性決定およびシークエンシングに対する現在の需要を満たすにはあまりにも面倒で時間がかかる。このような現行の方法の1つには、PCR増幅を用いて分子の多数のコピーを作り、その後に化学的(または放射性)タグ付加、ゲル電気泳動および統計学的計算法を行って元の配列を算出する、自動シークエンシング装置が含まれる。この方法は非常に時間がかかる上、今日の迅速シークエンシングの需要には十分には適していない。さらに、PCR判定による統計学的シークエンシングには特性決定の点で容認できない誤差の余地がある。
【0004】
短い配列に対しては、Affymetrix, Inc.によって販売されているようなバイオチップを用いる、ハイブリダイゼーション式マイクロアレイに基づく方法が一般に用いられる。これらの「DNAチップ」においては、多数の同一なコピーが検出用分子から作られる。検出用分子は、配列が既知であるように慎重に合成された、特定の短い(<100塩基)DNAの配列からなる。未知のDNAとこれらの検出用分子の1つとのハイブリダイゼーションを検出(典型的には光学的に)することにより、元のDNA分子の短い部分の配列を推測することができる。しかし、バイオチップ法に伴う問題は、完全な検出精度を得るためには検出用分子が長すぎることである。
【0005】
より速い速度およびより低いコストで、確定的でない読み取り結果といったシークエンシングの誤りの可能性を低下させる、ポリヌクレオチドのシークエンシングのためのデバイスおよび方法に対しては需要が存在する。さらに、核酸およびタンパク質といった生体分子全般の検出、同定および/またはシークエンシングのための迅速で正確で高感度な方法に対しても需要が存在する。
【発明の開示】
【0006】
発明の詳細な説明
本発明は一般に、核酸などの物理的対象物に関する情報を、走査型プローブ顕微鏡法などの表面分析方法により、単一分子レベルで生体分子ナノコードとして人為的にコード化してデコード化することが可能であるという発見に関する。例えば、本発明のいくつかの態様は、走査型プローブ顕微鏡法を用いて、ヌクレオチドハイブリダイゼーション反応におけるナノコードを同定しうるという発見に基づく。
【0007】
したがって、標的核酸などの標的分子を検出するための方法であって、コード化されたオリゴヌクレオチドプローブなどの1つまたは複数のコード化されたプローブを提供する段階、および標的分子をコード化されたプローブと接触させる段階、を含む方法が提供される。それぞれのプローブは、検出可能な非コード性特徴(non-encoding feature)を含む、少なくとも1つのナノコードが付随したオリゴヌクレオチドなどの生体分子コアを含む。続いて、標的分子と結合するコード化されたプローブを、コード化されたプローブのナノコードおよび検出可能な特徴を検出するための走査型プローブ顕微鏡法(SPM)を用いて同定する。
【0008】
ある特定の局面においては、特定の長さのオリゴヌクレオチドに関して考えられるすべての配列を含むコード化されたプローブのライブラリーを、標的分子と接触させる。ナノコードは、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレン、サブミクロン金属バーコード、ナノ粒子または量子ドットより選択される。ある特定の局面において、核酸は表面に対して結合されている。
【0009】
本方法はさらに、核酸と結合するオリゴヌクレオチドの配列を決定する段階を含みうる。標的分子は、例えば、タンパク質、ペプチド、糖タンパク質、リポタンパク質、核酸、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、脂質、糖脂質または多糖でありうる。
【0010】
本明細書で用いる、検出可能な非コード性特徴とは、「非コード性特徴タグ」または「特有の特徴タグ」とも呼ばれる検出可能な特徴タグを用いて実装することが可能な特徴のことである。例えば、検出可能な非コード性特徴タグは開始タグであってもよい。ある特定の局面において、検出可能な特徴は、チェックサムバーコードセグメントである。また別の局面において、検出可能な特徴には、ヘッダーセグメントおよびコード性セグメントが含まれる。ある特定の局面において、本方法はさらに、分子ナノコードを圧縮されたナノコードに変換する段階を含む。また別の局面において、本方法は、標的分子上の隣接領域と結合する2つのプローブを連結する段階を含む。これらの態様において、連結されたプローブはリーディングフレームを形成することができ、それをリーディングフレームマーカーで標識することができる。
【0011】
もう1つの局面においては、検出可能な非コード性特徴をコードする少なくとも1つのナノコードと結合した、少なくとも1つのコード化されたプローブ分子を含む組成物が提供される。このプローブ分子は特異的な結合対のメンバーであり、これには例えば、核酸(オリゴヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドなど);タンパク質もしくはそのペプチド断片、例えば、受容体もしくは転写因子、抗体もしくは抗体断片(例えば、遺伝子操作された抗体、一本鎖抗体もしくはヒト化抗体)など;レクチン;基質;インヒビター;アクチベーター;リガンド;ホルモン;サイトカイン;ケモカイン;および/または医薬品がある。ある特定の局面において、プローブ分子はオリゴヌクレオチドである。
【0012】
もう1つの態様においては、走査型プローブ顕微鏡、表面、および表面と結合した少なくとも1つのコード化されたプローブを含む、核酸シークエンシングのためのシステムであって、コード化されたプローブが、検出可能な特徴を含むナノコードを含むようなシステムが提供される。ある特定の局面において、コード化されたプローブは、分子コーミング(molecular combing)によって表面上に整列化される。
【0013】
もう1つの態様においては、ポリヌクレオチドなどの核酸のヌクレオチド配列を決定するための方法であって、核酸を、核酸と結合させるための一連の標識オリゴヌクレオチドと接触させる段階を含み、それぞれの標識オリゴヌクレオチドが既知のヌクレオチド配列および検出可能な非コード性特徴を含む分子ナノコードを含むような方法が提供される。続いて、核酸と結合する標識オリゴヌクレオチドを単離し、単離された標識オリゴヌクレオチドを走査型プローブ顕微鏡法(SPM)用の基板上に沈着させる。単離された標識オリゴヌクレオチドのナノコードおよびそれに付随する検出可能な非コード性特徴を、例えばSPMを用いて検出する。続いて、単離された標識オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を、検出された1つまたは複数のナノコードに基づいてデコード化する。このようにして、核酸のヌクレオチド配列が決定される。ナノコードは、本発明のある特定の局面において、一連のタグを含みうる。
【0014】
本発明のこの態様の1つの具体例が、図1Aおよび1Bに図示されている。図1Aおよび1Bに例示した方法では、核酸(DNA 60など)を試料120から単離する。続いて、試料DNA 60を、一連の標識オリゴヌクレオチド80(例えば、オリゴヌクレオチドプローブのコード化されたライブラリー)を含む反応容器130(ビーカーなど)に導入する。続いて試料を反応容器140から取り出し、SPM表面50に沈着させる。試料と結合するバーコードを読み取る150。本方法は、DNA試料のDNA配列が多数のバーコード読み取り160から決定されるように繰り返すことができる。
【0015】
1つの関連した態様においては、生物試料中のポリヌクレオチドなどの標的核酸のヌクレオチド配列を決定するための方法であって、核酸を一連の標識オリゴヌクレオチドと接触させる段階を含む方法が提供される。標識ヌクレオチドは核酸と結合させるためのものであり、それぞれの標識オリゴヌクレオチドは、既知のヌクレオチド配列、および検出可能な非コード性特徴を含む分子ナノコードを含む。核酸と結合する標識オリゴヌクレオチドを単離する。単離された標識オリゴヌクレオチドを、走査型プローブ顕微鏡法用の基板(SPM)上に沈着させる。続いて、沈着された標識オリゴヌクレオチドのナノコードおよびそれらの非コード性の検出可能な特徴を、SPMを用いて検出する。続いて、単離された標識オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を、検出されたナノコードを用いて決定し、それにより、生物試料中の標的核酸のヌクレオチド配列を決定する。
【0016】
生物試料は、例えば、尿、血液、血漿、血清、唾液、精液、便、痰、脳脊髄液、涙液、粘液などである。ある特定の局面において、生物試料は哺乳動物対象、例えばヒト対象からのものである。生物試料は事実上あらゆる生物試料であってよく、特に対象からのRNAまたはDNAを含む試料であってよい。生物試料は、例えば1〜10,000,000個;1000〜10,000,000個;または1,000,000〜10,000,000個の体細胞を含む組織試料であってよい。試料は、それが本発明の方法のために十分なRNAまたはDNAを含む限り、無傷細胞を含む必要はなく、いくつかの局面においては1つのRNA分子またはDNA分子のみを必要とする。生物試料が哺乳動物対象からのものである本発明の局面によれば、生物試料または組織試料は任意の組織からのものであってよい。例えば、組織を外科手術、生検、スワブ標本、便またはその他の収集方法によって入手することができる。
【0017】
また別の局面において、生物試料は病原体、例えばウイルスまたは細菌性病原体を含む。しかし、ある特定の局面においては、テンプレート核酸は生物試料から、それをプローブと接触させる前に精製される。単離されたテンプレート核酸は、増幅することなしに反応混合物と接触させることができる。
【0018】
また別の局面において、生物試料は病原体、例えばウイルスまたは細菌性病原体を含む。しかし、ある特定の局面においては、テンプレート核酸は生物試料から、それをプローブと接触させる前に精製される。単離されたテンプレート核酸は、増幅することなしに反応混合物と接触させることができる。
【0019】
もう1つの態様においては、ポリヌクレオチドなどの核酸の標的位置での存在ヌクレオチド(nucleotide occurrence)を決定するための方法であって、核酸を、核酸と結合させるための一連の標識オリゴヌクレオチドと接触させる段階を含み、標識オリゴヌクレオチドが、標的位置での存在ヌクレオチドと結合する既知のヌクレオチド配列、および検出可能な非コード性特徴を一般に含む分子ナノコードを含むような方法が提供される。核酸に対する標識オリゴヌクレオチドの結合は、分子ナノコードおよび結合した標識オリゴヌクレオチドの検出可能な非コード性特徴を検出するための走査型プローブ顕微鏡法(SPM)を用いて検出される。分子ナノコードの実体により、核酸の標的位置にある存在ヌクレオチドと結合する標識オリゴヌクレオチドが特定される。
【0020】
もう1つの態様においては、ゲノムの少なくとも2つの標的位置での存在ヌクレオチドを決定するための方法であって、ゲノムの核酸を、核酸と結合させるための一連の標識オリゴヌクレオチドと接触させる段階を含み、標識オリゴヌクレオチドがそれぞれ、一連の標的位置の1つで存在ヌクレオチドと結合する既知のヌクレオチド配列、および検出可能な非コード性特徴を含む分子ナノコードを含むような方法が提供される。一連の標識オリゴヌクレオチドは一般に、標的位置で既知の存在ヌクレオチドの1つと特異的に結合するオリゴヌクレオチドを含む。核酸に対する標識オリゴヌクレオチドの結合は、検出されたオリゴヌクレオチドの分子ナノコードおよび検出可能な非コード性特徴を検出するための走査型プローブ顕微鏡法(SPM)を用いて検出される。分子ナノコードの実体により、核酸の標的位置で存在ヌクレオチドと結合する標識オリゴヌクレオチドが特定される。すなわち、少なくとも2つの標的位置での存在ヌクレオチドが決定される。例えば、2、3、4、5、10、20、25、50、100、250、500、1000、2500、5000または10000の位置での存在ヌクレオチドを決定することができる。
【0021】
ある特定の局面において、核酸分子の標的位置は、一塩基多型の位置といった多型の部位である。多型とは、集団内に存在する対立遺伝子変異体のことである。多型は1つの座位に存在する単一ヌクレオチドの違いであってもよく、または1つもしくは少数のヌクレオチドの挿入もしくは欠失であってもよい。このため、一塩基多型(SNP)は、集団における、ヒトゲノムなどのゲノム中の特定の座位での1つまたは2つ、3つまたは4つの存在ヌクレオチド(すなわち、アデノシン、シトシン、グアノシンまたはチミジン)の存在によって特徴づけられる。本明細書において示されるように、ある特定の局面における本発明の方法は、SNP位置での存在ヌクレオチドの検出、または哺乳動物などの二倍体生物に関するSNP位置での両方のゲノム存在ヌクレオチドの検出を提供する。
【0022】
もう1つの態様においては、検出可能な非コード性特徴を含み、単一分子レベルの表面分析方法によって検出可能なナノコードが提供される。ある特定の局面における本発明のナノコードは、バーコードが付された対象物に関する情報をコードするナノコード構造の配置を超えて、検出可能な非コード性特徴(これらは、バーコードが付された対象物に関する情報をコードするタグの検出を助ける)を含む。検出可能な非コード性特徴には、エラーチェック/エラー訂正、暗号化およびデータ縮小/圧縮のための構造が含まれる。これらの構造は、ナノコードから形成されること、またはナノコードに付随することが可能であり、これらは本明細書において、検出可能な非コード性特徴タグ、特徴タグまたは検出可能な特徴タグと呼ばれる。これらの検出可能な特徴は、ナノコード化されたデータのデータ解析を助けるために、非バーコード用途のための公知のアルゴリズムとともに用いることができる。
【0023】
もう1つの態様においては、ハイブリダイゼーションによるシークエンシングのための既知のヌクレオチド配列部分(これはプローブ成分とも呼ばれる)、ならびにその後の読み取りおよびコード化された情報のデコード化のためのナノコード部分を含む、一連のオリゴヌクレオチドが提供される。ナノコードは本発明によるナノコードである。
【0024】
本明細書に記載の方法を用いて決定されるヌクレオチド配列には、一塩基多型の箇所での存在ヌクレオチドのような単一ヌクレオチドが含まれうる、または例えば、2、3、4、5、10、15、20、25、50、100, 200、250、500、750、1000, 2000、2500、5000、10,000個などのヌクレオチドが含まれうる。
【0025】
ある特定の局面における本発明の方法は、従来の標識方法を用いた場合よりも少ないコピー数の標識オリゴヌクレオチドを検出しうるという利点を提供する。例えば、100コピーもしくはそれ未満、50コピーもしくはそれ未満、25コピーもしくはそれ未満、10コピーもしくはそれ未満、5コピーもしくはそれ未満、4コピーもしくはそれ未満、3コピーもしくはそれ未満、2コピーもしくはそれ未満、または単一コピーの標識オリゴヌクレオチドを、本発明の方法を用いて検出することができる。
【0026】
本明細書で用いる場合、「約」とは、ある値の10%の範囲内にあることを意味する。例えば、「約100」は、90から110までの間にある値のことを意味する。
【0027】
「核酸」には、一本鎖、二本鎖または三本鎖のDNA、RNA(リボ核酸)およびそれらの任意の化学修飾物が含まれる。核酸の事実上あらゆる修飾物を想定している。「核酸」は、2つまたはそれ以上の塩基のオリゴヌクレオチドから完全長染色体DNA分子までに至る、ほぼあらゆる長さでありうる。核酸には、オリゴヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが非制限的に含まれる。本明細書で用いる「ポリヌクレオチド」とは、少なくとも25個のヌクレオチドを含む核酸のことである。
【0028】
「コード化されたプローブ」とは、1つまたは複数のナノコードと結合したプローブ分子のことを指す。プローブ分子とは、1つまたは複数の標的分子に対する選択的および/または特異的な結合を示す任意の分子のことである。本発明のさまざまな態様においては、種々のプローブ分子の集団からの1つの特定のプローブの結合を検出しうるように、それぞれの異なるプローブ分子を、識別可能なナノコードに対して結合させることができる。
【0029】
核酸のヌクレオチド配列を決定することに向けられるもののような、本発明のある特定の態様において、コード化されたプローブには、オリゴヌクレオチドおよび/または核酸の配列を特定する1つまたは複数のナノコードと共有的または非共有的に結合したオリゴヌクレオチドおよび/または核酸が含まれる。これらのコード化されたプローブは、本明細書において「コード化されたオリゴヌクレオチド」、「標識オリゴヌクレオチド」または「コード化されたオリゴヌクレオチドプローブ」と時に呼ばれる。ある特定の態様においては、オリゴヌクレオチドプローブ内部の各ヌクレオチドを、識別可能なナノコードと結合させ、コード化されたプローブの配列をヌクレオチドの配列から特定しうるようにすることができる。
【0030】
ある特定の態様は、用いうるプローブ分子の種類に関して限定されない。これらの態様においては、オリゴヌクレオチド、核酸、抗体、抗体断片、結合タンパク質、受容体タンパク質、ペプチド、レクチン、基質、インヒビター、アクチベーター、リガンド、ホルモン、サイトカインなどを非制限的に含む、当技術分野で公知の任意のプローブ分子を用いることができる。
【0031】
「ナノコード」とは、コード化されたプローブを検出および/または同定するために用いうる組成物のことを指す。以下により詳細に考察する非制限的な例において、ナノコードには、走査型プローブ顕微鏡法によって検出および同定が可能な、1つまたは複数のサブミクロン金属バーコード、カーボンナノチューブ、フラーレンまたは任意の他のナノスケール部分が含まれる。ナノコードは単一の成分には限定されず、本発明のある特定の態様において、ナノコードには例えば、互いに結合した2つまたはそれ以上のフラーレンが含まれうる。部分がフラーレンである場合には、それらは例えば、特定の順序で結合して一体となった一連の大型および小型のフラーレンからなりうる。ナノコード内の異なるサイズのフラーレンの順序は、走査型プローブ顕微鏡法を用いて検出することができ、これは例えば、結合したオリゴヌクレオチドプローブの配列を同定するために利用することができる。
【0032】
本明細書で用いる場合、「特異的結合対のメンバー」という用語は、特異的結合対のもう1つのメンバーと特異的に結合する、または選択的にハイブリダイズする分子のことを指す。特異的結合対のメンバーには、例えば、オリゴヌクレオチドが選択的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドおよび核酸、またはタンパク質と結合するタンパク質および抗体が含まれる。
【0033】
「標的」分子または「被分析(analyte)」分子とは、核酸、タンパク質、脂質および多糖を非制限的に含む、コード化されたプローブと結合しうる任意の分子のことである。物理的対象に関する情報のコード化もしくはデコード化に向けられた方法、または標的分子を検出するための方法のいくつかの局面においては、コード化されたプローブと標的分子との結合を、試料中の標的分子の存在を検出するために用いることができる。
【0034】
本発明のある特定の局面において、ナノコードは、バーコードが付された対象物に関する情報をコードする構造またはタグに加えて、ナノコードを正確に検出することを助ける、検出可能な非コード性特徴を有する。検出可能な非コード性特徴には、エラーチェック/エラー訂正、暗号化およびデータ縮小/圧縮のための、ナノコードの構造またはナノコードが付随した構造が含まれる。ある特定の局面における検出可能な非コード性特徴構造には、開始マーカー、終了マーカー、およびリーディングフレームタグによって標識可能なリーディングフレームへのバーコード単位の配置が含まれる。これらの検出可能な非コード性特徴は、ナノコード化されたデータのデータ解析を助けるために、非バーコード用途のための公知のアルゴリズムとともに用いることができる。これらの検出可能な非コード性特徴は、バーコードが付された対象物に関する情報をコード化するために用いられるのと同じ種類のタグによって与えることもでき、またはバーコードが付された対象物に関する情報をコード化するために用いられるタグとは構造的に異なってもよく、それらについては以下でさらに詳細に考察する。
【0035】
検出可能な非コード性特徴の一例として、図2bに図示されているように、ある特定の局面における本発明のナノコード10は、ヘッダーセグメント210およびコード性セグメント220を含む。ヘッダーセグメント220およびコード性セグメント230の両方を含めることは、検出されたナノコード10を自己集合構造と識別するのを助ける。ナノ粒子のサイズおよび結合位置(すなわち、隣接したナノ粒子からの距離)により、ヘッダーセグメントをコード性セグメントと識別することができる。例えば、コード化されたオリゴヌクレオチドプローブのライブラリーはそれぞれ、同一のヘッダーセグメント220および異なるコード性セグメント230を含みうる。本発明のある特定の局面において、ナノコード10は単一分子レベルの表面分析方法を用いて識別可能である。
【0036】
本発明のナノコード10は、数多くのさまざまな方法に、例えば、バイオテクノロジーおよび/または医療で用いられる方法に用いることができる。このような方法には、ポリヌクレオチドシークエンシング、イムノアッセイ、一塩基多型(SNP)検出、特定の遺伝子型検出およびリガンド結合が非制限的に含まれる。ナノコードはまた、ナノコードに基づく個人IDおよびセキュリティーのプロトコールのためにも有用である。
【0037】
本発明のある特定の局面において、分子ナノコード10は、ナノコード10と会合してそれによって同定される分子に関する情報を暗号化する。暗号化された情報は、セキュリティーの目的に用いることができる。標準的な、または特殊な暗号化方法を用いることができる。暗号化されたナノコードは、一連の検出可能な非コード性特徴タグ、例えばコード性特徴タグとして復元されうるものを含みうる。
【0038】
本発明のある特定の局面において、ナノコードの特有の構造パターンまたはタグのパターンは、圧縮された情報、例えば標識オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に関する情報へと変換される。情報圧縮により、データサイズ縮小が可能となる。標準的なナノコードの圧縮によって生じるナノコードは一般に、コード性タグへと変換されうる一連の検出可能な非コード性特徴タグを含む。ある特定の局面において、ナノコードは、少なくとも2ビット、3ビット、4ビット、5ビットまたは10ビットの情報をコードする。例えば、ナノコードは、以下にさらに考察するように、特定の長さのオリゴヌクレオチドを特定することができる。例えば、一連のナノコードのそれぞれのナノコードを、5ヌクレオチド長の一連のオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を特定するために用いる場合には、標的ポリヌクレオチドの隣接領域と結合するオリゴヌクレオチドを特定するナノコード連続物により、5:1のデータ縮小が得られる。
【0039】
あらゆる数学的な暗号化/復元および/または圧縮/解凍アルゴリズムを、暗号化および圧縮の例に関するこれらの局面のために用いることができる。ナノコードは一連の二進数(すなわち、「0」および「1」)または他の数体系を含み、それぞれの要素はその特定の数体系の要素と正確に対応する。例えば、「大きな円」、例えば比較的大きな金粒子が「0」を表し、「小さな円」が「1」を表すことができる。この結果得られる一連の「0」および「1」は二進数として用いられ、これは、「ZIP」ファイルのようなコンピュータファイル(すなわち、二進数列)の標準的圧縮に用いられる圧縮アルゴリズムを含む情報処理システムにおけるように、数学的に処理および操作を行うことができる。
【0040】
本発明のある特定の局面において、検出可能な非コード性特徴タグは、開始タグまたは終了タグである。開始タグおよび/または終了タグは、ナノコードのヘッダーまたはフッター領域を特定することができる。例えば、図2を参照すれば、各ナノコードは、2nmの金ナノ粒子(図2における小さな円)などの特定サイズの金粒子をヘッダータグ210またはフッタータグとして含みうる。一連のナノコードにおけるそれぞれのナノコードが同じ長さであるか、または同じ数のタグを有する場合には、そのナノコードが一連のナノコードの予想されるナノコード特性を有することを確かめる目的で、ヘッダータグ210またはフッタータグを同定することができる。これにより、検出されたナノコードに関する品質管理チェックおよび自己集合した構造との識別が得られる。
【0041】
図2bに示されているように、一連のバーコードは、ヘッダーセグメント220に同一のヘッダータグ210を含むこと、およびコード性セグメント230に一連のタグを含むことができる。図2aおよび2bに示された例において、ナノ粒子のサイズおよび結合部位(すなわち、隣接ナノ粒子からの距離)は、ヌクレオチド塩基配列(ヘッダー、C、T、A、G...)などの情報をコードする。上記のように、図2bは、例えば、コード単位「C=0000」「T=0100」「A=0010」および「G=0110」を例示しており、ここで「0」および「1」は、以上に開示したように情報をコードするために用いられている。
【0042】
ある特定の局面において、ナノコード上の特定可能な構造のパターン、例えばナノコード10上のタグのパターンは、さまざまな分子特性に基づいて「コード単位」250としてコード化される。コード単位250は、ある特定の構造、一般的には特定されてナノコード10が付随する生体分子などの対象(すなわち、バーコードが付された対象物)のポリマー配列を特定する、特定可能な構造または一連のタグのパターンである。本発明のある特定の局面において、ナノコード10は一連のコード単位250を含む。コード単位250の順序および実体により、バーコードが付された対象物の実体が特定される。例えば図2Cを参照すれば、コード単位250は、リンカーを伴わずに(図2c(i))またはリンカーを伴って(図2c(ii))主ナノコードと結合した、主ナノコード(すなわち、ナノコード骨格)20の部分、またはそれらの任意の組み合わせでありうる。さらに、分枝状の2Dおよび3D構造をコード単位として用いることもできる。
【0043】
本発明のある特定の局面のナノコードのコード単位は、物理的、化学的、光学的または電気的な特性に基づいて識別可能である。1つの局面においては、コード単位のサイズ、コード単位間の距離またはコード単位の原子間力および分子間力といったトポグラフィー特性に基づいてコード単位を特定するためにAFMが用いられる。AFMはまた、コード単位またはそれらの間の結合の同相および違相での剛性といった、コード単位の粘弾特性に基づいてコード単位を特定するために用いることもできる。もう1つの局面において、プローブチップおよび試料の化学処理によっては、CFMまたはLFMが、化学的力に基づいてコード単位を特定するために用いられる。もう1つの局面においては、トンネル電流に基づくトポグラフィー特性に基づいて、または伝導度もしくはトンネル電流に基づく電気的特性に基づいてコード単位を特定するために、STMが用いられる。さらにもう1つの局面においては、トポグラフィー特性(すなわち、電子の反射および分散)に基づいてナノコードのコード単位を特定するために、FE-SEMが用いられる。さらにもう1つの局面においては、トポグラフィー特性(すなわち、電子透過)に基づいてコード単位を同定するために、TEMが用いられる。さらにもう1つの局面においては、トポグラフィー特性(すなわち、オージェ電子散乱)に基づいてコード単位を同定するために、AESが用いられる。さらにもう1つの局面においては、化学組成または化学的機能(すなわち、X線の一次的および二次的な光電子散乱)に基づいてコード単位を特定するために、XPSが用いられる。さらにもう1つの局面においては、元素的または有機的な化学組成に基づいてコード単位を特定するために、TOF-SIMSが用いられる。さらにもう1つの局面においては、分子振動、結晶構造または分子配向などの化学特性に基づいてコード単位を特定するために、ラマン分光法が用いられる。もう1つの局面においては、コード単位を特定するために表面増強ラマン分光法(SERS/SERRS)が用いられる。さらにもう1つの例示的な局面においては、単一分子レベルの蛍光分光法または蛍光共鳴伝達などの蛍光分光法が、蛍光特性に基づいてコード単位を特定するために用いられる。
【0044】
コード化された対象物の実体などの情報をコードするコード単位250に加えて、コード単位250または一連のコード単位250を、本明細書においてナノコードタグに関してさらに詳細に考察しているように、バーコードの開始および終了に関するマーカー、特異的リーディングフレーム標識、ならびにエラーチェック、エラー訂正、データ圧縮、パラグラフ化および暗号化などを目的とするデータマーカーとして用いることもできる。コード単位250は、コード群を形成すること、および/またはクラス定義をコードすることができる。
【0045】
本発明のある特定の局面において、ナノコードは分子特徴タグを含む。分子特徴タグとは、分子バーコード上に含められ、バーコードおよびバーコードの部分をコードするデータ上のタグを特定するのを助ける情報を与える、タグのことである。一般的に、特徴タグは一意的に特定可能であって測定可能である。特徴タグは、例えば、バーコードが付随する対象物を特定するために用いられるバーコード上のタグのセットとは異なる。もう1つの例として、特徴タグは、データタグ(すなわち、バーコードのデータセグメントにおけるタグ)とはサイズは異なるものの化学的には類似または同一であってよい。分子特徴タグは、情報の暗号化、リーディングフレームの特定、コード単位の特定、エラーチェック/エラー訂正ならびにデータ縮小/圧縮を目的とする、本明細書に記載の方法に有用である。タグおよびコード単位に関して考察したように、特徴タグはナノコード骨格に組み入れること、埋め込むこと、結合させること、または付随させることが可能である。特徴タグは、上記のようなパラグラフの開始を示すために、または周期的な「冗長」リーディングフレームとして用いることができ、これは再同期のため、またはコード化された情報の読み取りのエラーもしくは確認の特定のために用いることができる。
【0046】
例えば、図4Aに示されているように、分子特徴タグには、ナノコード10のそれぞれ開始点および終了点を標識づけする、開始マーカー特徴タグ410または終了マーカー特徴タグ420が含まれる。これらのマーカーは、個々のナノコード10を特定すること、および適切に組織化されたバーコードの読み間違いを引き起こす可能性のある自己集合したバーコードを特定することを助ける。開始マーカーは、以上に考察したヘッダーセグメントの一型である。
【0047】
さらに、図4Aに示されているように、「リーディングフレーム」を、分子特徴タグを用いてナノコードに組み入れることができる。これにより、例えば、ビデオフレーム、ネットワーク/通信データパケット、マシン語(例えば、2ビットの周期的冗長チェックサムを伴う64ビットデータ)、およびヘッダーまたは開始/終了マーカーを伴うデータファイルに類似したデコード化のための基本的情報単位のデータ収集の同期が可能となる。生体分子ナノコードは、異なるデータ単位/パケット間で、長さ、分子結合特性などについての差異を示しうるため、ナノコード内部の各単位/パケットを表示するリーディングフレームを組み入れることにより、データ読み取りおよびスキャニングの同期の速度および精度を著しく高めることができる。
【0048】
リーディングフレームは、互いに連結した個々のナノコード10を表すことができ、これはヘッダー部分220によって隔てることができ、これはこれらの態様においてリーディングフレームマーカー430を形成する。いくつかの局面において、リーディングフレームマーカー430は、例えば、独立した化学マーカー、分子構造成分/要素といった非バーコード性の非分子特徴タグである。
【0049】
図4Bに示されているように、分子特徴タグはデータ圧縮のために用いることができる。本発明のこの局面においては、元のナノコードデータ440を圧縮し、元のナノコード上のタグよりも数が少ないか空間的に密接している分子特徴タグのパターンを含む、圧縮されたバーコードデータ450とする。
【0050】
分子特徴タグにおける情報は、ナノコードまたはナノコード上の他のタグを特定するために用いられるのと同じ方法を用いて、抽出することができる。これは、生体分子ナノコード上の他のタグとは異なる分子であるような例においてすら、ナノコードの残りを検出するために用いられるのと同じ分子特性に基づいて特定しうる、分子特徴タグである。
【0051】
本発明のある特定の局面において、バーコードは、エラー検出、エラーチェックを与えるため、およびバーコード読み取りを加速化するための、検出可能な特徴を含む。例えば、ナノコードは、バーコードのデータセグメント460(すなわち、バーコードが付された対象物に対して特異的な情報を与えるバーコードの部分)の開始および終了を表示する、検出可能な特徴タグを含みうる。本発明のナノコードはまた、チェックサムバーコードセグメント470も含みうる。チェックサムバーコードセグメントは、特定されたバーコードがナノコードのセットまたは一連のナノコードのメンバーであることを保証する品質管理チェックを与える。チェックサムセグメントを用いる態様によれば、データバーコードを、SPMなどの単一分子レベルの表面分析方法を用いて検出する。さらに、付随するチェックサムバーコードを検出する。続いて、データバーコードおよび検出されたチェックサムバーコードを、一連のバーコードを作成した時にデータバーコードおよびチェックサムバーコードのこの組み合わせが共に付随していることを保証するためにチェックする。この情報により、バーコードが自己集合したものではないという保証が得られる。
【0052】
「特定可能な構造」および「分子特性」は、AFMおよび/もしくはSTMによって測定される「サイズ/質量」(例えば、大きいか小さいか)またはSTMによって測定される電荷(例えば、強い電荷か弱い電荷か)などの「コード性エレメント」である。ひとたび実際のSPM特性がコード単位(すなわち、情報)に変換されれば、バイオテクノロジー用途のためのバイオインフォマティクスにおいて公知である情報処理方法といった任意の標準的な情報処理方法を、情報をさらに処理するために用いることができる。一例として、4桁の2進数字は、7種の「別個の」異なるコード単位をコードすることができる:「0000」、「0001」(=「1000」)、「0010」(=「0100」)、「1001」、「1010」(=「0101」)「1011」(=「1101」)および「1110」(=「0111」)。それぞれのコード単位の正確な開始位置が特定可能であれば、一連のコード単位は、一連の塩基/核酸:CTAG=「0000 0100 0010 0110」を表すことができる。実際には、読み取り開始部の正確な位置を特定することは困難であり、オリゴヌクレオチドの場合には、4種類の塩基に関する2桁の数字(例えば、C=00、T=10、A=01、G=11)を、コード単位の開始部および終了部での「フレーム」場所とともに用いることができる。例えば、「0」をフレームとして用いる場合には:CTAG=0000 0100 0010 0110である。この例において、2つの「0」が順に並んでいる場合には、次の2桁はコード単位であり、CまたはTまたはAまたはGを表す。順に並んだ4つの「0」はフレーム開始を表す。
【0053】
コード化された単位の開始部を特定するのを助けることに加えて、リーディングフレームをエラー検出のために用いることもできる。例えば、エラー検出の単純化された例として、2つの連続した「0」は、その位置では読み取りエラーが起こっていないことを保証するために用いうる。より精緻なエラー訂正スキームを、入手可能なアルゴリズムを用いて考案することもできる。関連した入手可能なアルゴリズムに見られるような標準的なチェックサムコードまたはエラー訂正コードを実装するためにコード単位の別のセットを用いることもできる。チェックサムは、偶発的で自然発生的な自己集合、または望ましくない化学的/物理的な条件/媒質下で起こる欠失に起因する恐れのある、あらゆるコード化されていない配列を特定するために用いることができる。記載される読み取り単位のセットは「パラグラフ」である。
【0054】
ヌクレオチド配列を決定することに関する本発明の方法においては、少なくとも部分的にシークエンシングしようとするポリヌクレオチドなどの核酸を、一連の標識オリゴヌクレオチドと接触させる。検出、同定および/またはシークエンシングを行おうとする核酸分子は、当技術分野で公知である任意の手法によって調製することができる。本発明のある特定の態様において、核酸は天然のDNA分枝またはRNA分子である。染色体、ミトコンドリアおよび葉緑体のDNAならびにリボソームRNA、トランスファーRNA、ヘテロ核RNAおよびメッセンジャーRNAを非制限的に含む、事実上あらゆる天然の核酸を、開示された方法によって検出、同定および/またはシークエンシングすることができる。いくつかの態様において、分析しようとする核酸は、細胞、組織または臓器の粗性ホモジネートまたは抽出物中に存在しうる。また別の態様において、核酸を分析前に部分的または完全に精製することもできる。代替的な態様において、分析しようとする核酸分子は、化学合成により、または当技術分野で公知の非常にさまざまな核酸増幅、複製および/もしくは合成方法によって調製することができる。
【0055】
本発明の方法は、いくつかの局面において、細胞から単離された核酸を分析する。さまざまな形態の細胞核酸を精製するための方法は公知である(例えば、「Guide to Molecular Cloning Techniques」, eds. Berger and Kimmel, Academic Press, New York, NY, 1987;「Molecular Cloning:A Laboratory Manual」, 2nd Ed., eds. Sambrook, Fritsch and Maniatis, Cold Spring Harbor Press, Cold Spring Harbor, NY, 1989を参照されたい)。引用した参考文献中に開示されている方法は例示的に過ぎず、当技術分野で公知のあらゆる変法を用いることができる。一本鎖DNA(ssDNA)を分析しようとする場合には、ssDNAを任意の公知の方法によって二本鎖DNA(dsDNA)から調製することができる。このような方法は、dsDNAを加熱することおよび鎖を分離させることを含むこともでき、または代替的には、M13へのクローニングといった公知の増幅もしくは複製の方法によるdsDNAからのssDNAの調製を含むこともできる。あらゆるこのような公知の方法を、ssDNAまたはssRNAの調製のために用いることができる。
【0056】
本発明のある特定の態様は、ポリヌクレオチドなどの天然の核酸の分析に関係するものの、事実上あらゆる種類の核酸を用いることが可能と考えられる。例えば、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR3)増幅などのさまざまな増幅法によって調製された核酸を用いうると考えられる(米国特許第4,683,195号、第4,683,202号および第4,800,159号を参照のこと)。分析しようとする核酸は、プラスミド、コスミド、BAC(細菌人工染色体)またはYAC(酵母人工染色体)などの標準的なベクター中にクローニングすることができる(例えば、Berger and Kimmel, 1987;Sambrook et al., 1989を参照されたい)。核酸インサートは、例えば、適切な制限エンドヌクレアーゼを用いて切り出し、続いてアガロースゲル電気泳動を行うことにより、ベクターDNAから単離することができる。核酸インサートの単離のための方法は当技術分野で公知である。開示される方法は、分析しようとする核酸の源に関して限定されず、原核生物、細菌、ウイルス、真核生物、哺乳動物および/またはヒトのものを含む、あらゆる種類の核酸を、請求される対象物の範囲内で分析することができる。
【0057】
本発明のさまざまな態様においては、以下に考察するように、単一の核酸の多数のコピーを、標識オリゴヌクレオチドプローブハイブリダイゼーションによって分析することができる。例えばさまざまな増幅および/または複製の方法による、単一の核酸の調製および多数のコピーの形成は、当技術分野で公知である。または、単一の核酸インサートを含む、BAC、YAC、プラスミド、ウイルスまたは他のベクターなどの単一のクローンを、単離し、増殖させ、インサートを分析のために取り出して精製することもできる。精製された核酸インサートのクローニングおよび入手のための方法は当技術分野で周知である。
【0058】
本発明のある特定の態様の範囲が核酸の分析には限定されず、タンパク質、脂質および多糖を非制限的に含む、他の種類の生体分子の分析にも関係することは認識されていると考えられる。さまざまな種類の生体分子を調製および/または精製するための方法は当技術分野で公知であり、任意のこのような方法を用いることができる。
【0059】
ある特定の局面において、一連の標識オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション反応によるシークエンシングに用いうる一連のオリゴヌクレオチドである。ハイブリダイゼーションによるシークエンシングでは、既知の配列を有するオリゴヌクレオチドプローブを含む1つまたは複数のタグ付加バーコードを、標的核酸配列とハイブリダイズさせる。タグ付加バーコードと標的との結合により、標的鎖における相補的配列の存在が示される。多数の標識バーコードを標的分子と同時にハイブリダイズさせ、同時に検出することができる。代替的な態様においては、結合したプローブを個々の標的分子と結合した状態で同定すること、または代替的には、特定の標的分子の多数のコピーをプローブ配列の重複セットに対して同時に結合させることができる。個々の分子のスキャニングは、例えば、公知の分子コーミング法を検出方法と組み合わせて行うことができる(例えば、Bensimon et al., Phys. Rev. Lett. 74: 4754-57, 1995;Michalet et al., Science 277: 1518-23, 1997;米国特許第5,002,867号、第5,840,862号;第6,054,327号;第6,225,055号;第6,248,537号;第6,265,153号;第6,303,296号および第6,344,319号を参照されたい)。
【0060】
本明細書で提供するハイブリダイゼーション方法によるシークエンシングは、標的核酸と結合する1つまたは複数の捕捉用オリゴヌクレオチドプローブを含みうる。捕捉用オリゴヌクレオチドプローブはバイオチップ上にスポット化することができる。結合したプローブの実体およびバイオチップ上の捕捉用プローブの位置はいずれも、標的核酸に関するヌクレオチド配列情報を決定するために用いることができる。
【0061】
ある特定の局面において、ハイブリダイゼーション方法によるシークエンシングは、任意の連結反応を含む。連結反応は典型的には、捕捉用オリゴヌクレオチドプローブと、標的核酸の隣接領域と結合するコード化されたオリゴヌクレオチドプローブとの結合を含む。隣接するオリゴヌクレオチドを連結した後に、基質に対して固定化されなかったオリゴヌクレオチドを、例えば、核酸を変性させるために温度を上昇させるか反応物のpHを変化させることによって除去する。基質に対して固定化されなかったオリゴヌクレオチドを直接的または間接的に洗い流し、固定化されたコード化されたオリゴヌクレオチドプローブおよび任意には捕捉用プローブを検出することができる。連結および洗浄の段階は反応の特異性を高める。
【0062】
隣接する標識オリゴヌクレオチドプローブは、公知の方法を用いて一つに連結することができる(例えば、米国特許第6,013,456号を参照されたい)。プライマー非依存的な連結は、少なくとも6〜8塩基長のオリゴヌクレオチドを用いて行うことができる(Kaczorowski and Szybalski, Gene 179: 189-193, 1996;Kotler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 4241-45, 1993)。核酸テンプレートとハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドプローブを連結する方法は当技術分野で公知である(米国特許第6,013,456号)。隣接するオリゴヌクレオチドプローブの酵素的連結には、T4、T7もしくはTaqリガーゼまたは大腸菌DNAリガーゼなどのDNAリガーゼを利用することができる。酵素的連結の方法は公知である(例えば、Sambrook et al., 1989)。
【0063】
本発明のさまざまな態様において、標的核酸とコード化されたオリゴヌクレオチドライブラリーとのハイブリダイゼーションは、完全に相補的な核酸配列間のハイブリダイゼーションのみを許容するストリンジェントな条件下で行うことができる。低ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは一般に、0.15M〜0.9M NaClで、温度範囲20℃〜50℃で行われる。高ストリンジェンシーのハイブリダイゼーションは一般に、0.02M〜0.15M NaClで、温度範囲50℃〜70℃で行われる。適切なストリンジェンシーの温度および/またはイオン強度が、一部には、オリゴヌクレオチドプローブの長さ、標的配列の塩基含有率、およびハイブリダイゼーション混合物中のホルムアミド、塩化テトラメチルアンモニウムまたは他の溶媒の存在によって決定されることは理解されている。上述した範囲は例示的であり、特定のハイブリダイゼーション反応にとって適切なストリンジェンシーはしばしば、陽性および/または陰性対照との比較によって経験的に決定される。当業者は、厳密に相補的な核酸配列間のハイブリダイゼーションのみが起こるようなハイブリダイゼーション条件をルーチン的に調整することができる。
【0064】
ある所定の標的核酸が、標的配列を完全にカバーする連続したプローブ配列とハイブリダイズする可能性は低い。その代わりに、標的の多数のコピーを、コード化されたオリゴヌクレオチドのプールとハイブリダイズさせ、それぞれから部分配列データを収集することができる。部分配列は、公開されているショットガン配列コンパイル化プログラムを用いて、完全な標的核酸配列へとコンパイルすることができる。部分配列を、例えば液相において、バーコードプローブのライブラリーと同時に結合させた標的分子の集団からコンパイルすることもできる。
【0065】
一連のオリゴヌクレオチドはそれ自体が本発明のもう1つの態様をなす。一連のオリゴヌクレオチドはまた、本明細書において「コード化されたオリゴヌクレオチドライブラリー」とも呼ばれる。一連のオリゴヌクレオチドは、典型的には、ハイブリダイゼーションによるシークエンシングのための既知のヌクレオチド配列部分(これはプローブ部分とも呼ばれる)、ならびにその後のコード化された情報の読み取りおよびデコード化のためのナノコード部分を含むハイブリダイゼーションプローブである。
【0066】
ヌクレオチド配列部分および付随するナノコード部分の長さは、その後の分析の具体的な要求条件によってさまざまでありうる。ある特定の局面において、この一連のものは、オリゴヌクレオチドの長さよりも短いかそれと等しい、考えられるすべての順列に対応するヌクレオチド配列を有するオリゴヌクレオチドを含む。オリゴヌクレオチド部分および付随するバーコード部分の長さは、検出のための具体的な要求条件によってさまざまでありうる。例えば、ある特定の局面において、標識オリゴヌクレオチドのオリゴヌクレオチド部分の長さは250ヌクレオチド、200ヌクレオチド、100ヌクレオチド、50ヌクレオチド、25ヌクレオチド、20ヌクレオチド、15ヌクレオチド、10ヌクレオチド、9ヌクレオチド、8ヌクレオチド、7ヌクレオチド、6ヌクレオチド、5ヌクレオチド、4ヌクレオチドまたは3ヌクレオチドと等しいかそれ未満である。例えば(ただし、限定を意図してはいないが)、オリゴヌクレオチドの長さは2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、100、125、150, 200または250ヌクレオチドである。
【0067】
ある特定の局面における一連の標識オリゴヌクレオチドは、少なくとも10、20、30、40、50、100、200、250、500、1000個のオリゴヌクレオチドを含む。例えば、この一連のものは、ハイブリダイゼーション反応による少なくともいくつかのシークエンシングに関して公知であるような、同一な長さのオリゴヌクレオチドに関して考えられるヌクレオチド配列の組み合わせの実質的にすべてまたはすべてを含みうる(例えば、米国特許第5,002,867号を参照されたい)。所定の長さに関して考えられるヌクレオチド配列の組み合わせの実質的にすべては、ハイブリダイゼーションによるシークエンシングを用いて配列のデコード化を行うために十分な、考えられるヌクレオチドを含む。
【0068】
ある特定の局面において、同一なプローブ部分を有する一連の標識オリゴヌクレオチドにおけるオリゴヌクレオチドのすべては、同じ特有なナノコードを含む。また別の局面においては、異なるプローブ部分を有する複数のオリゴヌクレオチドを、特定の配列パターンの群をより迅速にスキャニングおよびデコード化によって特定しうるように、同一なナノコードと結合させる。
【0069】
本発明のある特定の態様においては、標識オリゴヌクレオチドなどのコード化されたプローブを、標的分子と結合したままの状態で検出することができる。短いオリゴヌクレオチドプローブと標的核酸との間の結合相互作用の強度は比較的弱いことから、このような方法は、例えば、コード化されたプローブが架橋試薬を用いて標的分子と共有結合している場合には、より適切な可能性がある。
【0070】
本発明のさまざまな態様において、オリゴヌクレオチド型のコード化されたプローブは、核酸における特定の相補的配列を同定するために用いうる、DNA、RNA、またはそれらの任意の類似体(ペプチド核酸(PNA)など)でありうる。本発明のある特定の態様においては、1つまたは複数のコード化されたプローブライブラリーを、1つまたは複数の核酸分子に対するハイブリダイゼーションのために調製することができる。例えば、4096種すべてもしくは約2000種の非相補的な6mer、または16,384種すべてもしくは約8,000種の非相補的な7merを含む、コード化されたプローブのセットを用いることができる。オリゴヌクレオチドコード化プローブの非相補的なサブセットを用いる場合には、複数のハイブリダイゼーションおよび配列解析を行って、分析の結果をコンピュータ計算方法によって単一のデータセットとして合成することができる。例えば、非相補的な6merのみを含むライブラリーをハイブリダイゼーションおよび配列解析のために用いる場合には、第1のライブラリーから除外されたコード化されたプローブ配列とハイブリダイズした同じ標的核酸分子を用いて第2のハイブリダイゼーションおよび分析を行うことができる。
【0071】
本発明のある特定の局面において、コード化されたプローブライブラリーは、一方または両方の末端に定常的核酸配列が結合した、コード化されたプローブの中央部にランダムな核酸配列を含む。例えば、定常的な2merが両端に結合したランダムな8mer配列の完全なセットからなる、12merのコード化されたプローブのサブセットを用いることができる。これらのコード化されたプローブライブラリーを、それらの定常部分に従って細分した上で、核酸に対して別々にハイブリダイズさせ、その後にそれぞれの異なるコード化されたプローブライブラリーの複合データを用いる分析を行うことで、核酸配列を決定することができる。当業者は、必要なサブライブラリーの数が、ランダムな配列と結合した定常的塩基の数の関数であることを理解していると考えられる。1つの代替的な態様は、ランダムなオリゴヌクレオチド配列と結合した特定の定常部分を含む単一のコード化されたプローブライブラリーを用いる、多数のハイブリダイゼーションおよび分析を用いることができる。核酸上の任意の所定の部位に対して、異なるものの部分的に重複する配列を有する多数のコード化されたオリゴヌクレオチドプローブを、幾分食い違う様式でその部位と結合させることが可能である。このようにして、単一のライブラリーを用いる多数のハイブリダイゼーションおよび分析を用いることで、部分的に重複する食い違うようにコード化されたプローブ配列をコンパイルすることにより、核酸の完全な配列が得られると考えられる。
【0072】
オリゴヌクレオチドライブラリーを含む本発明の局面において、オリゴヌクレオチドは、Applied Biosystems 381A DNA合成装置(Foster City, CA)または類似の装置による合成といった任意の公知の方法によって調製することができる。または、オリゴヌクレオチドを、さまざまな販売元(例えば、Proligo, Boulder, CO;Midland Certified Reagents, Midland, TX)から購入することもできる。オリゴヌクレオチドを化学合成する態様においては、ナノコードを、合成のために用いるヌクレオチド前駆体の1つまたは複数と共有結合させることができる。または、ナノコードを、オリゴヌクレオチドプローブが合成された後に結合させることもできる。また別の代替的な選択肢においては、ナノコードを、オリゴヌクレオチド合成と同時に結合させることもできる。
【0073】
本発明のある特定の局面において、コード化されたプローブはペプチド核酸(PNA)を含む。PNAは、アデニン、グアニン、チミンおよびシトシンに対するモノマー単位を有するポリアミド型のDNA類似体である。PNAは、PE Biosystems(Foster City, CA)などの会社から販売されている。または、PNA合成を、9-フルオロエニルメトキシカルボニル(Fmoc)モノマーの活性化、および、第三級アミンN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)の存在下で0-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-1,1,3,3-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロリン酸(HATU)を用いたカップリングによって行うこともできる。PNAは逆相高速液体クロマトグラフィー(RP-HPLC)によって精製し、マトリックス支援レーザー脱離イオン化-飛行時間型(MALDI-TOF)質量分析によって確認することができる。
【0074】
ある特定の態様においては、識別可能なナノコードと結合したそれぞれ異なるプローブを有する、プローブ分子のライブラリーが提供される。プローブはオリゴヌクレオチドプローブには限定されない。ある所定のライブラリーの内部には、コード化されたオリゴヌクレオチドライブラリーの場合がそうであるように、特定のプローブ分子の複数のコピーが存在することが可能である。この場合には、同じプローブのそれぞれのコピーを、同一なナノコードと結合させることができる。これらの局面のために用いられるプローブおよびナノコードの種類は限定的ではなく、オリゴヌクレオチド、核酸、抗体、抗体断片、結合タンパク質、受容体タンパク質、ペプチド、レクチン、基質、インヒビター、アクチベーター、リガンド、ホルモン、サイトカインなどを非制限的に含む、任意の公知の種類のプローブ分子を用いることができる。さらに、任意の種類の識別可能なナノコードを用いることができる。
【0075】
本発明のある特定の局面において、一連の標識オリゴヌクレオチドは、本明細書でさらに詳細に考察するように、エラーチェックを提供するように配置されたタグのパターンを含む。本発明のある特定の局面において、タグの特有のパターンは、標識オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に関する圧縮された情報を形づくる。本発明のある特定の局面において、一連の標識オリゴヌクレオチドは、本明細書でさらに詳細に考察するように、品質管理のための共通の開始タグを含む。本発明のある特定の局面において、一連のオリゴヌクレオチドは、標識オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列に関する情報を暗号化するタグのパターンを含む。
【0076】
ポリヌクレオチドを一連の標識オリゴヌクレオチドと接触させた後に、ポリヌクレオチドと結合(すなわち、ハイブリダイズ)する標識オリゴヌクレオチドを単離する。これは典型的には、公知の手法を用いて、ハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドをハイブリダイズしなかったオリゴヌクレオチドから分離することを含む。分離は、物理的、化学的、電気的な、または当技術分野で公知である任意の他の方法によって行うことができる。例えば、ハイブリダイズしなかった標識オリゴヌクレオチド(すなわち、コード化されたオリゴヌクレオチドプローブ)は、標的分子とハイブリダイズしたコード化されたプローブから、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ゲル浸透クロマトグラフィー、ゲル電気泳動、限外濾過および/またはヒドロキシアパタイトクロマトグラフィーなどの公知の方法を用いて分離することができる。
【0077】
単離された標識オリゴヌクレオチド、または単離された標識オリゴヌクレオチドから取り外されたタグを、続いて、走査型プローブ顕微鏡法(SPM)基板の表面上に沈着させる。すなわち、完全なプローブ分子を表面上に沈着させること、またはハイブリダイズしたプローブを単離/分離すること、およびナノコード部分をプローブ分子の非存在下において別々に読み取ってデコード化するために取り外すことができる。例えば、ポリヌクレオチドを、単離された標識オリゴヌクレオチドから、単離された標識オリゴヌクレオチドに付随するナノコードの検出の前に分離することができる。
【0078】
例えば、ナノコードを、SPM分析のため、またはこのような分析を含む態様における単一分子レベルの表面分析のために、乾燥状態または湿潤状態でのマイクロスケール(またはさらに小さなスケール)の分析システム内に捕捉する。必要に応じて、SPM分析を改良するために、適切な固定化法および分散法を用いることができる。例えば、SPM法では、チオール-金、ポリリジン、シラン処理/AP-マイカ、ならびにMg2+および/またはNi2+などの基板表面処理(例えば、Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94: 496-501(1997);Biochemistry 36: 461(1997);Analytical Sci. 17: 583(2001);Biophysical Journal 77: 568(1999);およびChem. Rev. 96: 1533(1996)を参照)を用いて、標識ポリヌクレオチドを均一に分散させて固定化することができる。適切な分散により、情報の読み取りおよびデコード化のための単一分子レベルでの分析が可能となる。
【0079】
本発明のさまざまな態様において、ナノコードでコード化されたプローブおよび/またはコード化されたプローブと結合した標的分子を、表面と結合させ、分析のために整列化することができる。いくつかの態様においては、コード化されたプローブを表面上に整列化させ、組み入れられたナノコードを本明細書で考察したように検出することができる。代替的な態様において、ナノコードを、表面上に整列化されたプローブ分子から取り外して検出することもできる。ある特定の態様においては、例えば走査型プローブ顕微鏡法により、個々の標的分子と結合したコード化されたプローブの順序を保った上で検出することができる。また別の態様においては、標的分子の多数のコピーを試料中に存在させ、多数のコピーと結合するコード化されたプローブの配列のすべてを組み合わせて、部分的に重複する標的分子配列とすることにより、標的分子の実体および/または配列を決定することもできる。例えば部分的に重複する部分的な核酸またはタンパク質配列を連続した配列へと組み合わせるための方法は、当技術分野で公知である。さまざまな態様において、ナノコードはプローブ分子と結合した状態で検出することができ、または検出前にプローブ分子から取り外すこともできる。
【0080】
核酸、オリゴヌクレオチドプローブおよび/またはナノコードなどの分子の表面に対する結合および整列化のための方法および装置は、当技術分野で公知である(例えば、Bensimon et al., Phys. Rev. Lett. 74: 4754-57, 1995;Michalet et al., Science 277: 1518-23, 1997;米国特許第5,840,862号;第6,054,327号;第6,225,055号;第6,248,537号;第6,265,153号;第6,303,296号および第6,344,319号を参照;「Controlled Alignment of Nanocodes Encoding;Specific Information for Scanning Probe Microscopy(SPM)」と題する、2002年9月20日に提出された米国特許出願第10/251,152号も参照されたい)。ナノコード、コード化されたプローブおよび/または標的分子は、気水メニスカスまたは他の種類の界面に内在する物理的力を用いて、表面と結合させて整列化することができる。この手法は一般に分子コーミングとして知られている。水性媒質中に溶解したナノコード、コード化されたプローブおよび/または標的分子を、シラン処理されたスライドガラス、ビオチン化された表面、金がコーティングされた表面、またはこのような分子が結合しうる任意の他の表面といった表面と、一方または両方の末端で結合させることができる。表面を水性媒質からゆっくりと引き出すことができる。極性のある、または荷電した標的分子、ナノコード、および/またはコード化されたプローブ分子は、親水性(水性)媒質中に選好的に分配されると考えられる。このため、表面を水性媒質から取り出すことは、メニスカスの運動の向きと平行な、結合した標的分子、ナノコードおよび/またはコード化されたプローブの伸展をもたらす。伸展された分子の計測長とその実際のサイズとの間には直接的な相関があり、伸展長1μmは約2,000塩基の核酸配列に対応する(Herrick et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97: 222-227, 2000)。
【0081】
ひとたび表面を水性媒質から完全に取り出したところで、結合したナノコードおよび/またはコード化されたプローブを、より容易かつ正確な分析を行える平行的な様式で整列化する。コード化されたプローブの両端を表面と結合させる本発明のある特定の態様において、整列化されたコード化されたプローブは、同じく分析が容易であるU形コンフォメーションとして配置されると考えられる。この手法は、整列化しようとする標的分子、ナノコードおよび/またはコード化されたプローブのサイズには限定されず、染色体全体ほどの長さの核酸に対しても有効である(例えば、Michalet et al., 1997;Herrick et al., 2000)。メニスカスの運動速度が適切であれば、生じる剪断力は比較的小さく、数百キロベースまたはそれよりも長い、整列化されたDNA断片が得られる(Michalet et al., 1997)。
【0082】
分子コーミングは、処理された表面に対する分子の強い非特異的な吸着によって阻害される(Bensimon et al., 1995)。このため、本発明のさまざまな態様において、表面は、標的分子またはコード化されたプローブの1つまたは複数の末端のみが表面と結合するように処理される。核酸および他の種類のコード化されたプローブを表面と結合させるための方法は当技術分野で周知であり、本明細書中にまとめられている。1つの非制限的な例において、標的分子、ナノコードまたはコード化されたプローブは、分子の一端または両端でビオチン残基により共有的に修飾される。アビジンまたはストレプトアビジンがコーティングされた表面に対して曝露させると、ビオチン化された末端のみが表面と結合すると考えられる。表面に対する非特異的な吸着は、シラン処理された表面のように疎水性の性質を有する表面の使用によって低下させることができる。
【0083】
本発明の態様は、用いる表面の種類に関しては限定されない。表面の非制限的な例には、ガラス、官能化ガラス、セラミック、合成樹脂、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリカーボネート、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PVP(ポリビニルピロリドン)、ゲルマニウム、ケイ素、石英、ヒ化ガリウム、金、銀、ナイロン、ニトロセルロース、または標的分子、ナノコードおよび/またはコード化されたプローブを表面と付着させうる任意の他の材料が含まれる。付着は共有的な相互作用によるものでも非共有的なものによるものでもよい。本発明のある特定の態様において表面はスライドガラスまたはカバースリップの形態にあるものの、表面の形状は限定的ではなく、表面はいかなる形状であってもよい。本発明のいくつかの局面において、表面は平面状である。
【0084】
整列化の任意の公知の方法を、請求される対象の範囲内で用いうることが想定される。本発明のある特定の態様において、整列化は、水性媒質中に溶解した標的分子、ナノコードまたはコード化されたプローブが移動性メニスカスによって引き出された場合に起こる。メニスカスが移動する機序は重要ではなく、例えば、表面を緩衝液中に浸漬すること、およびそれを溶液からゆっくりと引き出すことによって行うことができる。または、表面を溶液中に浸漬し、蒸発または液体の除去によってメニスカスのレベルをゆっくりと低下させることによって行うこともできる。
【0085】
本発明のもう1つの代替的な局面においては、溶液の滴をカバースリップと表面(スライドガラスなど)との間に置くことができる。表面をゆっくりとカバースリップから引き抜くことができる。溶液はカバースリップに付着するため、これはカバースリップが表面と接触する箇所である辺縁で気水界面の形成をもたらす。この界面を移動させることにより、標的分子、ナノコードおよび/またはコード化されたプローブが表面上に整列化される。ナノコードおよび/またはコード化されたプローブを整列化するためのもう1つの代替的な方法は、分子コーミングの代わりの、またはその最中における無担体電気泳動である。
【0086】
標識オリゴヌクレオチドまたは取り外されたタグを沈着させた後に、SPMを用いてタグのパターンを検出することにより、沈着されたバーコードを特定する。これはSPMを用いて表面をスキャニングすることによって行われる。これにより、情報の取得およびデコード化が可能となる。続いて、特定された沈着したナノコードに基づいて、単離された標識オリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列をデコード化する。データ(これはしばしばスキャニングされた画像の形態にある)の解析および処理は、標準的またはカスタマイズ化された/専用の画像処理またはデジタル信号処理法、および、SPMの製造元によって提供されているソフトウエアまたは入手可能な任意の他の画像/信号処理ソフトウエアなどのソフトウエアによって行われる。読み取られた(さらにデコード化された)情報は、別個のデータ保存システムに保存すること、またはさらなるデータ処理のためにコンピュータシステムに伝送することができる。
【0087】
配列情報のデコード化のために、ハイブリダイズするオリゴヌクレオチドの同定を用いるための方法は当技術分野で公知である。例えば、本明細書に含まれるハイブリダイゼーションによるシークエンシングに関して引用した参考文献は、ポリヌクレオチド配列情報をハイブリダイゼーション結果によるシークエンシングに基づいてデコード化するための詳細な方法を提供している。多数のナノコード読み取りによって収集されたデータが、ポリヌクレオチド配列を決定するために用いられる。バイオインフォマティクス企業および政府関連機関が、DNA配列を決定するためのデータ処理のための必要なツール、サービスおよびその他の関連ツールを提供している。例えば、かなり多くの数のUNIXソフトウエアパッケージが、パブリックドメインソフトウエアおよび商用ソフトウエアの両方として、Sun SPARCステーションおよびLinuxクラスター用に利用可能である。その例には以下のものがある:ESTSC(Energy Science & Technology Software Center)による「SCORE」、および「Software for DNA sequencing by hybridization」、Bioinformatics 113: 205(1997)、またはBiosciences 13: 205(1997)におけるコンピュータアプリケーション。
【0088】
ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定するための本発明の方法のある特定の局面においては、走査型プローブ顕微鏡法(SPM)がナノコードを検出するために用いられる。SPM検出は、乾燥状態または湿潤状態で行われる。例えば、乾燥させたバーコードをAFMまたはSTMによって読み取ることができる。湿潤バーコード(すなわち、乾燥していない)は、流体素子AFMまたは流体素子STMを用いて読み取ることができる。すなわち、検出は、スキャニングされたSPM画像の解析および処理によって行うことができる。読み取られてデコード化された情報は、別個のデータ保存システムに保存すること、またはさらなるデータ処理のためにコンピュータシステムに伝送することができる。
【0089】
走査型プローブ顕微鏡法の例には、走査型トンネル顕微鏡法(STM)、原子間力顕微鏡法(AFM)、走査型静電容量顕微鏡法および走査型光学顕微鏡法、さらには本明細書で考察している他の方法が含まれる。
【0090】
ポリヌクレオチド配列の決定のための本発明の方法の利点の1つは、分子ナノスケールバーコードを伴ったSPMの使用を、従来のシークエンシング方法よりもはるかに低い、シークエンシングしようとするポリヌクレオチドの濃度で行えることである。したがって、ポリヌクレオチド増幅に関する要求条件は最小限のものとなり、または場合によってはなくなる。このため、検出のために必要な標識オリゴヌクレオチドは、他の検出法より少数のコピーでよい。いくつかの局面においては、標識オリゴヌクレオチドの、10,000個もしくはそれ未満、5,000個もしくはそれ未満、2500個もしくはそれ未満、1000個もしくはそれ未満、500個もしくはそれ未満、250個もしくはそれ未満、100個もしくはそれ未満、50個もしくはそれ未満、25個もしくはそれ未満、10個もしくはそれ未満、5個もしくはそれ未満、4個もしくはそれ未満、3個もしくはそれ未満、2個もしくはそれ未満、または1個のコピーが検出される。典型的には、すべての標識オリゴヌクレオチドに対して1つのタグのパターンが存在する。
【0091】
ある特定の態様においては、1つのポリヌクレオチド分子上にある複数の生体分子ナノコードが検出される。例えば、ハイブリダイゼーション反応によるシークエンシングの際に、複数の標識オリゴヌクレオチドを、シークエンシングしようとするポリヌクレオチドと結合させることができる。標識オリゴヌクレオチドが結合したポリヌクレオチドをSPM基板上に沈着させ、結合した標識オリゴヌクレオチドを検出することができる。本発明のある特定の局面においては、複数の生体分子ナノコードの順序を決定し、これを用いて、標的ポリヌクレオチド(すなわち、少なくとも部分的にシークエンシングを行おうとするポリヌクレオチド)に関するヌクレオチド配列情報をデコード化する。複数のナノコードの順序の検出により、ポリヌクレオチド配列をデコード化する速度が高まる。
【0092】
ある特定の局面において、ヌクレオチド配列を決定する方法は、任意の連結反応をさらに含み、この際、生体分子バーコードは1つのポリヌクレオチド分子上で検出される。この連結反応は、SPMにより隣接配置して検出されうる1つのポリヌクレオチド上の隣接領域と結合するオリゴヌクレオチドを含む。言い換えれば、本発明のこの局面においては、直鎖状の一連のコード化されたオリゴヌクレオチドプローブを一つに連結させる。連結された分子中のそれぞれのコード化されたオリゴヌクレオチドプローブには、その同定を可能とする識別可能なナノコードを結合させることができる。連結された分子中のコード化されたオリゴヌクレオチドプローブの配列も決定可能であるため、連結された分子全体の配列を同定することができる。
【0093】
隣接するコード化されたオリゴヌクレオチドプローブは、公知の方法を用いて一つに連結させることができる(例えば、米国特許第6,013,456号を参照)。6〜8塩基という短いオリゴヌクレオチド配列は、標的核酸と効率的にハイブリダイズしうる(米国特許第6,013,456号)。プライマー非依存的な連結は、少なくとも6〜8塩基長のオリゴヌクレオチドを用いて実現しうる(Kaczorowski and Szybalski, Gene 179: 189-193, 1996;Kotler et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90: 4241-45, 1993)。核酸テンプレートとハイブリダイズしたオリゴヌクレオチドコード化プローブを連結する方法は当技術分野で公知である(米国特許第6,013,456号)。隣接するオリゴヌクレオチドコード化プローブの酵素的連結には、T4、T7もしくはTaqリガーゼまたは大腸菌DNAリガーゼなどのDNAリガーゼを利用することができる。酵素的連結の方法は公知である(例えば、Sambrook et al., 1989)。
【0094】
ナノコードを利用する本発明の方法は、それ自体が本発明の態様をなす。ナノコードは事実上あらゆる長さでありうるが、典型的にはすべての寸法に関して0.5nm〜1Tmであり、ある特定の例においてはすべての寸法に関して1nm〜500nmである。例えば、ナノコードの長さは典型的には1nm〜500nmである。さらに、ナノコードは典型的には水相および有機相に溶解しうる(両親媒性)。ある特定の局面において、バーコードは自己集合し、粘弾性があり、ネットワークを形成する、および/または伝導性がある。
【0095】
本発明の分子バーコードは典型的には分子ナノコードである。ある特定の局面における分子ナノコードは、骨格、および、ナノコードが付随した対象物を特定する一連のタグを含む。各ナノコードはそれが付随したヌクレオチドなどの特定の生体分子を一意的に特定する。バーコードは、ナノコード骨格自体の構造、またはナノコード上のタグの空間的関係および/もしくは実体(すなわち、タグのパターン)に基づいて識別可能である。以下にさらに詳細に考察するように、タグには、伝導性、発光性、蛍光性、化学発光性、生体発光性、ラマン活性(例えば、SERSまたはSERRS活性)およびリン光発生性の成分、量子ドット、ナノ粒子、金属ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、色素原、抗体、抗体断片、遺伝的に操作された抗体、酵素、磁性粒子ならびにスピン標識化合物が非制限的に含まれる(米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;および第4,366,241号)。1つの局面において、タグはオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含む。
【0096】
以下にさらに詳細に考察するように、ある特定の局面におけるナノコードは、ヌクレオチド、ペプチド、フラーレン、金属ナノ粒子、有機金属化合物、蛍光分子、高エネルギーリン化合物、および/またはカーボンナノチューブである。ある特定の局面において、ナノコードはカーボンナノチューブ以外のものである。
【0097】
ナノコードは、1つまたは複数の物理的、化学、光学的、および/または電気的特性に基づいて識別可能である。物理的対象に関する情報をコードするためにナノコードを用いるための態様において、ナノコードは典型的には、本明細書でさらに詳細に考察するように、単一分子レベルの表面分析法を用いて検出される。ポリヌクレオチドシークエンシングおよびSNP検出に関係する態様において、ナノコードは典型的には、本明細書でさらに詳細に考察するように表面プローブ顕微鏡法を用いて検出される。
【0098】
本発明のある特定の局面におけるナノコードは、生体分子ナノコードである。生体分子ナノコードは、ナノコードの少なくとも一部分として生体分子を含む。生体分子バーコードは化合物を含みうる。例えば、生体分子にはポリペプチド、ポリヌクレオチド、および/または多糖が含まれうる。
【0099】
本発明のある特定の局面および態様は、生体分子ナノコードなどの一連のナノコードを含む、または利用する。例えば、本発明のある特定の態様においては、一連の物理的対象を、一連の分子ナノコードを用いてコード化することができる。一連のナノコードは、構造に類似性のある少なくとも2個、例えば、3、4、5、10、15、20、25、50、100、250、500、1000、2500、5000、10,000、25,000または100,000個のナノコードを含む。本発明のある特定の局面において、例えば、ハイブリダイゼーションによるシークエンシングを用いる方法に向けられたものにおいては、一連のナノコードは一連のオリゴヌクレオチドを伴っており、この際、特有の配列を有するそれぞれのヌクレオチドは特有のナノコードによって特定される。本発明のある特定の局面において、一連のものの分子ナノコードは、同一な高分子スカフォールドを含む。例えば、本明細書中の実施例の項に例示されているように、ナノコードのすべてが、C(60)タグなどのタグによって修飾されたペプチド骨格を含むことができる。もう1つの態様において、図2に示されているように、一連のナノコード10は、ナノタグ30、またはナノコードの骨格10に沿って互いに既知の距離をおいて結合している一連の検出可能なように異なるナノタグ30を伴う核酸骨格20を含むことができる。タグは例えば、金球体などの金属球体であってよい。例えば、金ナノ粒子は長さ約1nm〜1000nmでありうる。
【0100】
本発明のある特定の局面において、ナノコードは検出前に修飾される。1つの例において、検出されるナノコードは、例えば、米国特許出願公報(2003/0148289号)に開示されたような、修飾ナノチューブである。
【0101】
本発明のいくつかの態様は、単一分子レベルの表面分析方法を用いて、物理的対象に関する情報をコードする生体分子ナノコードを特定しうるという発見に基づく。したがって、もう1つの態様においては、物理的対象に関する情報をコード化およびデコード化するための方法であって、ある特定の局面において生体分子スカフォールドおよびタグのパターンを含むナノコードを提供する段階を含む方法が提供される。生体分子ナノコードは、物理的対象に関する情報が生体分子ナノコード上にコード化されるように、物理的対象に付随する。ナノコードは単一分子レベルの表面分析方法を用いて検出される。続いて、生体分子ナノコードによってコード化された情報をタグの検出に基づいてデコード化し、それにより、物理的対象に関する情報のコード化およびデコード化を行う。
【0102】
この態様のある特定の局面において、ナノコードは、本明細書で考察するように、データ暗号化、圧縮またはリーディングフレームのための検出可能な特徴を含む。さらに、ある特定の局面における検出可能な特徴は、ナノコードに対してヘッダーセグメントおよびコード性セグメントを提供し、バーコードの開始および終了を表示することができる。ある特定の局面において、検出可能な特徴は、ナノコードに付随した検出可能な特徴タグによって与えられる。
【0103】
本発明のこの局面の方法に用いられるナノコードは、典型的には、本明細書で詳細に開示しているように、生体分子ナノコードである。本発明のこの局面の方法は、さまざまなバイオテクノロジーおよび医療の用途に用いることができる。本発明のバーコードは、多くの異なる方法のために、例えば、DNAシークエンシング、イムノアッセイ、一塩基多型(SNP)検出、特定の遺伝子型検出およびリガンド結合を含む、バイオテクノロジーおよび/または医療において用いられる方法のために用いられる。ナノコードはまた、ナノコードに基づく個人IDおよびセキュリティーのプロトコールのためにも有用である。
【0104】
本発明のこの態様によれば、ナノコードは、単一分子レベルの表面分析法を用いて読み取られる。単一分子レベルの表面分析法、単一分子または少数の分子を検出する手法には、例えば、走査型トンネル顕微鏡法(STM)、走査型光学的顕微鏡法、走査型静電容量顕微鏡法、原子間力顕微鏡法(AFM)、化学力顕微鏡法(CFM)、水平力顕微鏡法(LFM)、電界放射走査型電子顕微鏡法(FE-SEM)、透過型電子顕微鏡法(TEM)、走査型TEM、オージェ電子分光法(AES)、X線光電子分光法(XPS)、飛行時間型二次イオン質量分析法(TOF-SIMS)、振動分光法、ラマン分光法または蛍光分光法が含まれる。
【0105】
典型的には、バーコードは、本明細書で考察しているように、物理的、化学、光学的または電気的特性に基づいて識別可能である。1つの局面において、単一分子レベルの表面分析法はAFMであり、バーコードはトポグラフィー特性または粘弾特性に基づいて識別可能である。もう1つの局面において、単一分子レベルの表面分析法はCFMまたはLFMであり、バーコードは化学力に基づいて識別可能である。もう1つの局面において、単一分子レベルの表面分析法はSTMであり、バーコードはトポグラフィー特性または電気的特性に基づいて識別可能である。さらにもう1つの局面において、単一分子レベルの表面分析法はFE-SEMであり、バーコードはトポグラフィー特性に基づいて識別可能である。さらにもう1つの局面において、単一分子レベルの表面分析法はTEMであり、バーコードはトポグラフィー特性に基づいて識別可能である。さらにもう1つの局面において、単一分子レベルの表面分析法はAESであり、バーコードはトポグラフィー特性に基づいて識別可能である。さらにもう1つの局面において、単一分子レベルの表面分析法はXPSであり、バーコードは化学組成または化学的機能性に基づいて識別可能である。さらにもう1つの局面において、単一分子レベルの表面分析法はTOF-SIMSであり、バーコードは化学組成に基づいて識別可能である。さらにもう1つの局面において、単一分子レベルの表面分析法はラマン分光法であり、バーコードは化学特性に基づいて識別可能である。さらにもう1つの局面において、単一分子レベルの表面分析法は蛍光分光法であり、バーコードは蛍光特性に基づいて識別可能である。
【0106】
本発明の方法のある特定の局面において、ナノコード上のタグはラマンタグを含む。さらに、これらのタグは、有機-無機複合ナノ粒子(「Composite Organic-Inorganic Nanoparticles」と題する、2003年12月29日に提出された米国出願第__号を参照のこと)(本明細書ではCOINナノ粒子または「COIN」と呼ばれる)を含みうる。COINはコアおよび表面を含むラマン活性プローブ構築物であり、コアは第1の金属を含む金属コロイドおよびラマン活性有機化合物を含む。COINはさらに、第1の金属とは異なる第2の金属を含むことができ、この第2の金属はナノ粒子の表面に重なる層を形成する。COINはさらに金属層に重なる有機層を含むことができ、この有機層はプローブを含む。この態様に関するSERS活性ナノ粒子の表面に対する結合のために適したプローブには、抗体、抗原、ポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、受容体、リガンドなどが非制限的に含まれる。しかし、これらの態様に関して、COINはオリゴヌクレオチドプローブと結合することが典型的である。
【0107】
適したSERSシグナルを実現するための金属はCOINに本来備わっており、非常にさまざまなラマン活性有機化合物を粒子内に組み入れることができる。実際、構造、混合および比の異なるラマン活性有機化合物を含むナノ粒子を用いることにより、多数の特有なラマン標識を作り出すことができる。したがって、COINを用いる本明細書に記載の方法は、複数の、典型的には10種を上回る標的核酸からのヌクレオチド配列情報の同時決定のために有用である。さらに、多くのCOINを単一のナノ粒子に組み入れることが可能なため、単一のCOIN粒子からのSERSシグナルは、本明細書に記載のナノ粒子を含まないラマン活性材料から得られるSERSシグナルよりも強い。この状況は、COINを利用しないラマン法に比較して感度の上昇をもたらす。
【0108】
COINは、標準的な金属コロイド化学を用いて、本発明の方法に用いるために容易に調製される。COINの調製には、有機化合物を吸着するという金属の能力も利用される。実際、ラマン活性有機化合物は金属コロイドの形成過程で金属上に吸着されるため、特別な化学的付着法の必要なしに、多くのラマン活性有機化合物をCOINに組み入れることができる。
【0109】
一般に、本発明の方法に用いられるCOINは以下のように調製される。適した金属カチオン、還元剤および少なくとも1つの適したラマン活性有機化合物を含む水溶液を調製する。続いて、溶液の成分を、金属カチオンが還元されて中性のコロイド金属粒子を形成する条件に供する。金属コロイドの形成は適したラマン活性有機化合物の存在下で起こるため、ラマン活性有機化合物はコロイド形成過程で金属表面に容易に吸着される。この単純な型のCOINはI型COINと呼ばれる。I型COINは、典型的には、膜濾過によって単離することができる。さまざまなサイズのCOINを遠心処理によって濃縮することもできる。
【0110】
代替的な態様において、COINは、第1の金属とは異なる第2の金属を含むことができ、この第2の金属はナノ粒子の表面に重なる層を形成する。この型のSERS活性ナノ粒子を調製するためには、I型COINを、適した第2の金属カチオンおよび還元剤を含む水溶液中に入れる。続いて、溶液の成分を、ナノ粒子の表面に重なる金属層を形成させるために、第2の金属カチオンが還元される条件に供する。ある特定の態様において、第2の金属層は、例えば、銀、金、白金、アルミニウムなどの金属を含む。この型のCOINはII型COINと呼ばれる。II型COINは、I型COINと同じ様式で単離および/または濃縮することができる。典型的には、I型およびII型COINは実質的に球状であり、サイズは約20nm〜60nmの範囲である。ナノ粒子のサイズは、検出の際にCOINを照射するために用いられる光の波長に対して極めて小さいように選択される。
【0111】
典型的には、オリゴヌクレオチドなどの有機化合物を、II型COINにおける第2の金属の層に対して、有機化合物を金属層の表面に共有結合させることによって結合させる。有機層と金属層との共有結合は、当業者に周知のさまざまなやり方で、例えばチオール-金属結合を介して、行うことができる。代替的な態様において、金属層と結合した有機分子を架橋させて分子ネットワークを形成させることもできる。
【0112】
本発明の方法に用いられるCOINは、例えば酸化鉄などの磁性材料を含むコアを含むことができる。磁性COINは、遠心処理を行わずに、一般に利用可能な磁性粒子取り扱いシステムを用いて取り扱うことができる。実際、磁気作用は、特定の生物プローブによるタグが付された磁性COIN粒子と結合した生体標的を分離するための機構として用いることができる。
【0113】
本明細書で示しているように、本発明の方法の1つの利点は、より少数の分子、例えば、本発明のこの態様における物理的対象などを検出することを可能にすることである。例えば、本発明のこの局面の方法は、10000個もしくはそれ未満、1000個もしくはそれ未満、500個もしくはそれ未満、250個もしくはそれ未満、100個もしくはそれ未満、50個もしくはそれ未満、25個もしくはそれ未満、20個もしくはそれ未満、15個もしくはそれ未満、10個もしくはそれ未満、9個もしくはそれ未満、8個もしくはそれ未満、7個もしくはそれ未満、6個もしくはそれ未満、5個もしくはそれ未満、4個もしくはそれ未満、3個もしくはそれ未満、2個もしくはそれ未満、または1個のナノコードおよび/または物理的対象を検出することができる。
【0114】
この態様のある特定の局面において、生体分子ナノコードは、ポリヌクレオチドシークエンシングに関する態様に関して以上に考察したように、SPMによる検出の前に走査型プローブ顕微鏡法(SPM)基板上に沈着される。本発明のある特定の局面において、コード化およびデコード化は、一連の物理的対象に対して、一連の分子ナノコードを用いて行われる。ある特定の局面において、生体分子ナノコードは、タグのパターンが検出される前に物理的対象から分離される。
【0115】
物理的対象は事実上あらゆる物理的対象でありうる。本発明のある特定の局面において、物理的対象はポリヌクレオチド、ポリペプチドまたは多糖である。物理的対象がポリヌクレオチドである局面において、生体分子ナノコードは、例えば、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列に関する情報を提供する。物理的対象がポリペプチドである局面において、生体分子ナノコードは、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列に関する情報を提供する。物理的対象が多糖である局面において、生体分子ナノコードは、例えば、多糖の単糖サブユニットの実体に関する情報を提供する。
【0116】
ある特定の態様において、バーコードが付随する物理的対象はアプタマーである。アプタマーとは、SELEXと呼ばれるインビトロ進化プロセスによって得られるオリゴヌクレオチドのことである(例えば、Brody and Gold, Molecular Biotechnology 74: 5-13, 2000を参照)。SELEXプロセスは、アプタマー候補(核酸リガンド)を標的に対して曝露させ、結合を行わせ、結合したものを核酸リガンドから分離し、結合したリガンドを増幅して、結合プロセスを繰り返すという反復サイクルを含む。多数のサイクルの後に、事実上あらゆる種類の生体標的に対して高い親和性および特異性を示すアプタマーを調製することができる。サイズが小さく、比較的安定性があり、調製が容易であるために、アプタマーはプローブとして用いるのに適している。アプタマーはオリゴヌクレオチドから構成されるため、それは容易に核酸型バーコードに組み入れることができる。アプタマーの作製のための方法は周知である(例えば、米国特許第5,270,163号;第5,567,588号;第5,670,637号;第5,696,249号;第5,843,653号)。または、特定の標的に対するさまざまなアプタマーを販売元から入手することもできる(例えば、Somalogic, Boulder, CO)。アプタマーは7〜50kDa程度の比較的小さな分子である。
【0117】
ある特定の態様において、バーコードが付随する物理的対象は抗体である。抗体の作製方法も当技術分野で周知である(例えば、Harlow and Lane,「Antibodies: A Laboratory Manual」, Cold Spring Harbor Laboratory, Cold Spring HArbor, New York, 1988)。プローブとして用いるのに適したモノクローナル抗体を販売元から入手することもできる。このような市販の抗体は、さまざまな標的に対して入手可能である。抗体プローブは、以下に考察するように、標準的な化学的手法を用いてバーコードと結合させることができる。
【0118】
開示される方法および組成物は、用いるプローブの種類に関して限定されず、当技術分野で公知のあらゆる種類のプローブ成分をバーコードに結合させて、開示される方法に用いることができる。このようなプローブには、抗体断片、アフィボディ(affibody)、キメラ抗体、一本鎖抗体、リガンド、結合タンパク質、受容体、インヒビター、基質が非制限的に含まれうる。
【0119】
1つの関連した態様においては、標的分子を同定するための方法であって、標的分子を標識プローブまたは一連の標識プローブと接触させる段階を含み、標的分子およびプローブが特異的結合対であり、それぞれの標識プローブが、タグのパターンを含む分子ナノコードを含むような方法が提供される。標識プローブと標的分子との結合は、検出されたプローブの分子ナノコードを検出するための走査型プローブ顕微鏡法(SPM)を用いて検出される。分子ナノコードの実体により、標的分子と結合する標識プローブが特定される。この態様のある特定の局面において、分子ナノコードは、本明細書に考察しているように、暗号化、エラーチェック、ヘッダー、開始タグ、圧縮されたデータなどを提供するための検出可能な特徴タグまたはその他の構造を含む。さらに、一連の標識プローブが、本明細書に考察しているように、コード化されたオリゴヌクレオチドプローブのライブラリーであってもよい。
【0120】
ある特定の局面において、標的分子はタンパク質である。これらの局面において、プローブは例えば抗体でありうる。もう1つの局面において、プローブはリガンドである。この局面において、標的分子は、例えばポリヌクレオチドである。もう1つの局面において、標的分子はポリヌクレオチドである。この局面において、プローブは、例えば、標的分子と結合するポリヌクレオチドである。
【0121】
本方法は、1つまたは複数の異なる標的分子を検出するために用いることができる。例えば、本方法は、2種類もしくはそれ以上(すなわち、標的分子の集団)、3種類もしくはそれ以上、4種類もしくはそれ以上、5種類もしくはそれ以上、10種類もしくはそれ以上、25種類もしくはそれ以上、50種類もしくはそれ以上、100種類もしくはそれ以上、250種類もしくはそれ以上、500種類もしくはそれ以上、または1000種類もしくはそれ以上の異なる標的分子を検出するために用いることができる。
【0122】
単一のナノコード分子における分子標識は、任意の物理的、化学、光学的、電気的およびその他の分子的な特性に基づいて実装/コード化することができ、これらはナノコードからの情報を取得するために本明細書で考察した分析方法によって捕捉および分析がなされる。
【0123】
本明細書に考察しているように、それぞれのコード化されたプローブは、典型的には、少なくとも1つの共有的または非共有的に結合したナノコードを組み入れている。ナノコードは、個々のコード化されたプローブを検出および/または同定するために用いることができる。本発明のある特定の態様において、それぞれのコード化されたプローブは、2つまたはそれ以上の結合ナノコードを含むことができ、その組み合わせは特定のコード化されたプローブに特有である。ナノコードの組み合わせは、ライブラリー内のコード化されたプローブを特異的に同定するために利用しうる識別可能なナノコードの数を増やすために用いることができる。本発明のまた別の態様において、コード化されたプローブにはそれぞれ、単一の特有なナノコードを結合させることもできる。唯一の要求条件は、それぞれのコード化されたプローブから検出されるシグナルが、コード化されたプローブが異なるコード化されたプローブから識別されるように特定することができなければならないという点である。
【0124】
本発明のある特定の態様において、ナノコードは、コード化されたプローブの合成前に前駆体に組み入れることができる。オリゴヌクレオチドを基にしたコード化されたプローブに関しては、アデニン(A)およびグアニン(G)位置での共有結合に対する内部アミノ修飾が想定される。内部結合を、市販のホスホルアミダイトを用いてチミン(T)位置で行うこともできる。いくつかの態様においては、プロピルアミンリンカーをAおよびG位置に有するライブラリーセグメントを、ナノコードをコード化されたプローブと結合させるために用いることができる。内部アミノアルキル尾部の導入により、ナノコードの合成後結合が可能となる。リンカーはSynthetic Genetics社(San Diego, CA)などの販売元から購入しうる。本発明の1つの態様においては、ナノコードの適切なホスホルアミダイト誘導体を用いた自動連結も想定される。このようなナノコードは、オリゴヌクレオチド合成の際に5'末端に連結可能である。
【0125】
一般に、ナノコードは、核酸に対するハイブリダイゼーションといったコード化されたプローブと標的分子との結合が容易となるように、ナノコードとの立体障害が最小限となる様式でプローブと共有結合されると考えられる。コード化されたプローブにある程度の柔軟性を与えるリンカーを用いることができる。ホモ-またはヘテロ-二官能基リンカーが、さまざまな販売元から入手可能である。
【0126】
オリゴヌクレオチド塩基に対する結合の箇所は、塩基によって異なると考えられる。任意の箇所での結合が可能であるものの、ある特定の態様において、結合は相補的塩基の水素結合に関係しない箇所で起こる。このため、例えば、結合は、ウリジン、シトシンおよびチミンなどのピリミジンの5位または6位に対するものでありうる。アデニンおよびグアニンなどのプリンに関しては、結合は8位を介したものでありうる。請求される方法および組成物は、オリゴヌクレオチドといった何らかの特定の種類のプローブ分子には限定されない。他の種類のプローブ、例えばペプチド、タンパク質および/または抗体プローブに対するナノコードの結合のための方法は当技術分野で公知である。
【0127】
本発明の態様は、用いうるナノコードの種類に関して限定されない。想定される。当技術分野で公知のあらゆる種類のナノコードを用いることができる。非制限的な例には、本明細書でさらに詳細に考察するように、カーボンナノチューブ、フラーレンおよびサブミクロン金属バーコードが含まれる。
【0128】
ある特定の局面において、ナノコードは金属バーコードである。ナノコードとして用いられる可能性のあるサブミクロン金属バーコードの例は当技術分野で公知である(例えば、Nicewarner-Pena et al., Science 294: 137-141, 2001)。Nicewarner-Pena et al.(2001)は、さまざまな種類の金属から構成される、サブミクロンの縞によってコード化された多金属マイクロロッドを調製するための方法を開示している。このシステムは、2種類の金属を用いて最大4160種、3種類の金属を用いて8×10種という極めて多数の識別可能なナノコードを作製することを可能にする。このようなナノコードは、コード化されたプローブに組み入れることができ、SPM技術によって読み取ることができる。金または銀などの金属粒子をオリゴヌクレオチドおよびその他の種類のプローブ分子と結合させる方法は当技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,472,881号)。
【0129】
開示される方法において有用なもう1つの例示的な種類のナノコードは、単一壁カーボンナノチューブ(SWNT)などのカーボンナノチューブである。ナノチューブは、SPM方法により識別可能なさまざまな形状およびサイズで製造することができる(例えば、Freitag et al., Phys. Rev. B 62:R2307-R2310, 2000;Clauss et al., Europhys. Lett. 47: 601-607, 1999;Clauss et al., Phys. Rev. B. 58:R4266-4269, 1998;Odom et al., Ann. N.Y. Acad. Sci. 960: 203-215, 2002を参照)。Odom et al.(2002)は、サイズが10nmまたはそれ未満であるSWNTのトンネルスペクトルにおける離散的ピークを検出することが可能なSTM(走査型トンネル顕微鏡)法を開示している。このようなピークは、カーボンナノチューブの電子状態密度(DOS)におけるファンホーヴェ特異点に相当しうる。
【0130】
カーボンナノチューブの電子特性は、チューブの長さおよび直径によて変化する。長さに対する電子波動関数の感受性は、長さLのチューブのエネルギーレベル分裂に関する推測値によって例示される。
ΔE=hνF/2L(Eq.1)
【0131】
式中、hはプランク定数であり、νFはフェルミ速度(8.1×10m/sec)である(Venema et al.,「Imaging Electron Wave Functions of Carbon Nanotubes」, Los Alamos Physics Preprints: cond-mat/9811317, 23 Nov. 1996)。電子エネルギーレベル間の差はナノチューブの長さに逆比例し、長いチューブほど微細な分裂が観察される。
【0132】
カーボンナノチューブの光学特性もチューブ直径の関数である。基本的エネルギーギャップ(最高の占有分子軌道−最低の占有分子軌道)とチューブ直径との間の関係は、以下の関数によってモデル化しうる。
Egap=2 y acc/d(Eq.2)
【0133】
式中、yは炭素-炭素タイトボンディング重複エネルギー(2.7 2 0.1 eV)であり、accは最短の隣接炭素-炭素距離(0.142nm)であり、dはチューブ直径である(Jeroen et al., Nature 391: 59-62, 1998)。
【0134】
本発明のある特定の態様に関して、ナノコードとして用いるナノチューブは、チューブ長が約10〜200nmであり、直径は約1.2〜1.4nmである。ナノコードとして用いるナノチューブの長さまたは直径は限定的ではなく、事実上あらゆる長さまたは直径のナノチューブが想定される。
【0135】
ナノチューブは、公知の方法によって調製すること、または販売元、例えば、CarboLex社(Lexington, KY)、NanoLab社(Watertown, MA)、Materials and Electrochemical Research社(Tucson, AZ)またはCarbon Nano Technologies Inc.(Houston, TX)などから入手することが可能である。合成または購入したナノチューブの何らかの処理を使用前に行うことが適切なことがある。処理には、ナノチューブの他の混入物からの精製、混在的な直径および/または長さのナノチューブの離散的な直径および長さのナノチューブへの分離、ナノチューブのエンドキャップの除去、ならびに/またはナノチューブがプローブと結合してコード化されたプローブを形成するのを促進するための共有結合性修飾が含まれうる。
【0136】
本発明のある特定の態様においては、カーボンアーク放電、炭化水素の触媒熱分解による化学蒸着、プラズマ化学蒸着、触媒金属含有グラファイト標的のレーザーアブレーション、または凝縮相電気分解を非制限的に含む、当技術分野で公知のさまざまな手法により、さまざまな長さおよび/または直径のカーボンナノチューブを製造することができる(例えば、米国特許第6,258,401号、第6,283,812号および第6,297,592号を参照のこと)。いくつかの態様においては、ナノチューブを質量分析によってサイズ選別することができる(Parker et al., J. Am. Chem. Soc. 113: 7499-7503, 1991)。または、コード化されたプローブに組み入れる前に、ナノチューブを、個々のナノチューブの形状寸法を正確に測定するためのAFM(原子間力顕微鏡)またはSTM(走査型トンネル顕微鏡)を用いて選別することもできる。ガスクロマトグラフィー、飛行時間型質量分析法、限外濾過または同等な手法といった当技術分野で公知のその他のサイズ分画法も想定される。ひとたび選別されれば、カーボンナノチューブを誘導体化して、既知の配列を有するオリゴヌクレオチドプローブまたは任意の他の種類のプローブと共有結合させることができる。
【0137】
カーボンナノチューブに関して可能なチューブ長の最小限の変化刻み幅は、炭素-炭素結合の長さまたは約0.142nmである。200nmというチューブ長の範囲では、これは約1400個の離散的ナノコードが可能と考えられる。しかし、本方法は、コード化されたプローブ1つにつき単一のナノチューブには限定されない。代替的な態様において、異なる長さおよび直径の多数のナノチューブを単一のコード化されたプローブと結合させることもできる。長さの異なるナノチューブの組み合わせを用いることで、考えられる識別可能なナノコードの数は指数的に増加する。いくつかの態様においては、分析が容易となるように単一のナノチューブを単一のプローブ分子と結合させる。
【0138】
本発明のまた別の態様は、規定された長さおよび直径を有するカーボンナノチューブを製造する方法に関する。1つの非制限的で例示的な態様において、チップは、例えば、ケイ素または触媒(例えば、ニッケルなどの金属原子)が注入されたケイ素から構成される層に重なる、あらかじめ設定された厚みのSiC層を含みうる。フォトリソグラフィーおよびエッチングまたはレーザーアブレーションなどの標準的なチップ処理法を用いることで、SiC層を任意の長さ、幅、厚みおよび形状のSiC沈着物として分割することができる。その後に、チップを減圧下、例えば約10−7Torrで、約1400℃に、または代替的には約 Torr、10−3〜10−12 Torr、10−4〜10−10Torrもしくは10−5〜10−9Torrで、1200〜2200℃または1400〜2000℃に加熱することができる。これらの条件下では、SiC結晶は自然に分解してケイ素原子が失われる(米国特許第6,303,094号)。残った炭素原子は自然に集合してカーボンナノチューブとなる。SiC沈着物のサイズおよび形状は、任意の長さおよび直径のカーボンナノチューブが生じるように厳密に制御することができる。
【0139】
以上に考察した本発明の例示的な態様は限定的ではなく、設定した長さおよび直径のカーボンナノチューブを製造するための任意の方法を用いることができる(例えば、米国特許第6,258,401号;第6,283,812号および第6,297,592号)。いくつかの態様において, ナノチューブの長さは、レーザービーム、電子ビーム、イオンビームまたはガスプラズマビームを用いて末端を削ることによって調整することができる。または、チューブの末端を酸化的に除去するためにナノチューブの末端を酸素含有大気中で加熱ブレードと接触させることも可能と考えられる。ナノチューブを短くするために、ナノチューブを含むブロックを切断または研磨することも可能と考えられる。
【0140】
本発明のある特定の態様においては、プローブ分子の結合を促すためにカーボンナノチューブを反応性基によって誘導体化することができる。1つの非制限的な例では、ナノチューブを、カルボン酸基を含むように誘導体化することができる(米国特許第6,187,823号)。カルボン酸で誘導体化されたナノチューブは、標準的な化学的手法により、例えばカルボジイミドを介した、プローブ上に位置する第一級または第二級アミン基とのアミド結合の形成により、プローブ分子と結合させることができる。誘導体化および架橋の方法は限定的でなく、当技術分野で公知である任意の反応性基または架橋方法を用いることができる。
【0141】
本発明の代替的な態様においては、フラーレンをナノコードとして用いることができる。フラーレンの製造方法は周知である(例えば、米国特許第6,358,375号)。フラーレンは、カーボンナノチューブに関して以上に開示したものに類似した方法により、誘導体化してプローブ分子と結合させることができる。また、フラーレンを含むコード化されたプローブを、ナノチューブに関して以上に開示したものに類似したSPM技術によって同定することもできる。
【0142】
本発明のある特定の態様において、フラーレンは、オリゴヌクレオチド性のコード化されたプローブにおける個々のヌクレオチドと結合させることができる。このような場合には、オリゴヌクレオチドに存在するヌクレオチドは4種類に過ぎないため、識別可能なフラーレンとして必要なのは2種類のみであり、2種類のフラーレンを4種類の異なる組み合わせとして組み合わせるとよい(例えば、AA、BB、ABおよびBA)。個々のヌクレオチドをナノコードと結合させる場合には、標的核酸に対するハイブリダイゼーションによる立体障害を避けるために、ヌクレオチドとフラーレンとの間に既知の結合基を用いることが適切なことがある。
【0143】
当業者は、開示される方法に用いられるナノコードが、本明細書に開示された態様には限定されず、プローブと結合させて検出することができる任意の他の種類の公知のナノコードが含まれうることを理解していると考えられる。用いうる可能性のあるナノコードのその他の非制限的な例には、量子ドットが含まれる(例えば、Schoenfeld, et al., Proc. 7th Int. Conf. on Modulated Semiconductor Structure, Madrid, pp.605-608, 1995;Zhao, et al., 1st Int. Conf. on Low Dimensional Structure and Devices, Singapore、pp. 467-471, 1995)。量子ドットおよびその他の種類のナノコードは、公知の方法によって合成すること、および/または販売元から入手することができる(例えば、Quantum Dot Corp., Hayward, CA)。用いうる可能性のあるその他のナノコードには、例えば、Nanoprobes Inc.(Yaphank, NY)およびPolysciences, Inc.(Warrington, PA)から入手可能な、ナノ粒子が含まれる。
【0144】
本発明の方法において有用なナノコードのもう1つの局面は、図5に示されているように、バーコード骨格510を含み、これは核酸、ペプチド、多糖および/または化学的に得られたポリマー配列の任意の組み合わせを含む有機構造を含むポリマー鎖から形成されうる。ある特定の態様において、骨格510は一本鎖または二本鎖の核酸を含みうる。いくつかの態様において、骨格は、オリゴヌクレオチド、抗体またはアプタマーなどのプローブ部分550と結合させることができる。骨格510を1つまたは複数の分枝構造520によって修飾して、さらなる形態上の多様性およびタグ結合部位を生み出すことができる。分枝構造520は、当技術分野で周知の手法を用いて形成させることができる。例えば、バーコード500が二本鎖核酸を含む場合には、分枝構造520は、オリゴヌクレオチドの合成および一本鎖テンプレート核酸とのハイブリダイゼーションによって形成させることができる。オリゴヌクレオチドは、配列の部分(例えば、5'末端)がテンプレートに対して相補的であって、部分(例えば、3'末端)がそうでないように設計することができる。すなわち、バーコード500は二本鎖配列のセグメントおよび一本鎖分枝構造520の短いセグメントを含むと考えられる。図5に開示されているように、例えば、分枝構造520の一本鎖部分と配列の点で相補的な標識530オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションによって、タグ530をバーコードに付加することができる。
【0145】
オリゴヌクレオチド模倣物を用いて有機骨格510を作製することもできる。ヌクレオチド単位の糖およびヌクレオチド間結合、すなわち骨格の両方を新規な群によって置換することができる。プローブ550は、適切な核酸標的化合物とハイブリダイズさせるために用いることができる。優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されているオリゴマー化合物またはオリゴヌクレオチド模倣物の一例は、ペプチド核酸(PNA)と呼ばれている。PNA化合物では、オリゴヌクレオチドの糖-骨格がアミド含有骨格、例えばアミノエチルグリシン骨格によって置換されている。この例では、核酸塩基は保たれており、骨格のアミド部分のアザ窒素原子と直接的または間接的に結合している。PNA化合物の調製を開示しているいくつかの米国特許には、例えば、米国特許第5,539,082号;第5,714,331号;および第5,719,262号が含まれる。さらに、PNA化合物は、Nielsen et al.(Science, 1991, 254, 1497-15)にも開示されている。
【0146】
1つのバーコード500を別のものと識別するために、タグ530を、骨格510に、または1つもしくは複数の分枝構造520に付加することができる。本明細書に考察しているように、タグのいくつかはそれ自体がバーコードである。例えば、カーボンナノチューブでバーコードを形づくること、またはこれを別の種類のタグとして用いることができる。
【0147】
バーコード500はさらに、タグ530の1つまたは複数に別の分子540(例えば抗体)を結合させることによって修飾しうる。嵩高い基を用いる場合には、分枝部位520と結合したタグ部分530の修飾により、標的分子とのプローブ550の相互作用に関する立体障害の低下が得られると考えられる。タグ530は、本明細書に考察しているように、SPMなどの単一分子レベルの表面分析方法によって読み取ることができる。伝導度、トンネル電流、容量性電流などを非制限的に含む、タグ530の形態的、トポグラフィー的、化学的および/または電気的な特性を検出するための画像化法のさまざまな変法が知られている。用いられる具体的な単一分子レベルの表面分析方法は、タグ部分530およびその結果生じるシグナルに依存すると考えられる。蛍光、ラマン、ナノ粒子、ナノチューブ、フラーレンおよび量子ドットタグ530を非制限的に含む、さまざまな種類の既知のタグ530を、それらのトポグラフィー的、化学的、光学的および/または電気的特性によってバーコード500を特定するために用いることができる。このような特性は、それぞれのバーコード500に関して生成される識別可能なシグナルをもたらす、用いるタグ部分530の種類および骨格510または分枝構造520上のタグ530の相対的位置の双方の関数として変化すると考えられる。
【0148】
図5に示された、本発明のある特定の態様において、バーコード500の骨格510は、ホスホジエステル結合、ペプチド結合、および/またはグリコシド結合によって形成されうる。例えば、標準的なホスホルアミダイト化学の手法を用いて、DNA鎖を含む骨格510を作製することができる。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR(商標))増幅のような、ホスホジエステル結合骨格510を作製するためのその他の方法も公知である。骨格510の末端は、例えば、ビオチン、アミノ基、アルデヒド基またはチオール基といったさまざまな官能基を有しうる。官能基はプローブ部分550との結合のため、またはタグ530の結合のために用いることができる。タグ530はさらに、検出を容易にするための異なるサイズ、電気的または化学特性を得るために修飾することができる。例えば、ジゴキシゲニンまたはフルオレセインタグ530と結合させるために抗体を用いることも可能と考えられる。ストレプトアビジンはビオチンタグ530との結合のために用いうる。金属原子を、酵素タグ530を用いて、金属イオン溶液の触媒性還元により、バーコード500構造上に沈着させることができる。バーコード500がペプチド部分を含む場合には、ペプチドをタグ530修飾のためにリン酸化することができる。「PROGRAMMABLE MOLECULAR BARCODES」と題する同時係属出願(2003年9月24日に提出、出願番号第10/670,701号)において考察されているように、本発明のナノコードを含むヌクレオチドを、ハイブリダイゼーションを用いて作製することもできる。
【0149】
本発明のさまざまな態様において、バーコードは、検出および/または同定を容易にするための1つまたは複数のタグ部分を含む。単一分子レベルの表面分析方法によって検出可能な、当技術分野で公知である任意の検出可能なタグを、本発明の方法における物理的対象のバーコード化のために用いることができる。検出可能なタグには、電気的、光学的、分光学的、光化学的、生化学的、免疫化学的または化学的な手法によって検出可能な任意の組成物が非制限的に含まれうる。タグには、伝導性、発光性、蛍光性、化学発光性、生物発光性およびリン光発生性の部分、量子ドット、ナノ粒子、金属ナノ粒子、金ナノ粒子、銀ナノ粒子、色素原、抗体、抗体断片、遺伝的に操作された抗体、酵素、基質、補助因子、インヒビター、結合タンパク質、磁性粒子ならびにスピン標識化合物が非制限的に含まれうる(米国特許第3,817,837号;第3,850,752号;第3,939,350号;第3,996,345号;第4,277,437号;第4,275,149号;および第4,366,241号)。
【0150】
単一分子レベルの表面分析方法がラマン分光法、特にSERSである局面において、用いうるラマンタグの非制限的な例には、TRIT(テトラメチルローダミンイソチオール)、NBD(7-ニトロベンズ-2-オキサ-1,3-ジアゾール)、テキサスレッド色素、フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、クレシルファーストバイオレット、クレシルブルーバイオレット、ブリリアントクレシルブルー、パラアミノ安息香酸、エリスロシン、ビオチン、ジゴキシゲニン、5-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン、TET(6-カルボキシ-2',4,7,7'-テトラクロロフルオレセイン)、HEX(6-カルボキシ-2',4,4',5',7,7'-ヘキサクロロフルオレセイン)、Joe(6-カルボキシ-4',5'-ジクロロ-2',7'-ジメトキシフルオレセイン)、5-カルボキシ-2',4',5',7'-テトラクロロフルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン、5-カルボキシローダミン、Tamra(テトラメチルローダミン)、6-カルボキシローダミン、Rox(カルボキシ-X-ローダミン)、R6G(ローダミン6G)、フタロシアニン、アゾメチン、シアニン(例えば、Cy3、Cy3.5、Cy5)、キサンチン、スクシニルフルオレセイン、N,N-ジエチル-4-(5'-アゾベンゾトトリアゾリル)-フェニルアミンおよびアミノアクリジンが含まれる。上記およびその他のラマンタグは販売元から入手可能である(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)。
【0151】
多環芳香族化合物は一般にラマンタグとして機能しうる。用いうるその他のタグには、シアニド、チオール、塩素、臭素、メチル、リンおよびイオウが含まれる。ある特定の態様においては、カーボンナノチューブをラマンタグとして用いることができる。ラマン分光法におけるタグの使用は公知である(例えば、米国特許第5,306,403号および第6,174,677号)。
【0152】
ラマンタグはバーコードに直接結合させること、または種々のリンカー化合物を介して結合させることができる。ラマンタグと共有結合したヌクレオチドは標準的な販売元から入手可能である(例えば、Roche Molecular Biochemicals, Indianapolis, IN;Promega Corp., Madison, WI;Ambion, Inc., Austin, TX;Amersham Pharmacia Biotech, Piscataway, NJ)。他の分子、例えばヌクレオチドまたはアミノ酸と共有結合性に反応するように設計された反応性基を含むラマンタグが販売されている(例えば、Molecular Probes, Eugene, OR)。
【0153】
物理的対象に付随するバーコードに用いうる蛍光タグには、フルオレセイン、5-カルボキシフルオレセイン(FAM)、2'7'-ジメトキシ-4'5'-ジクロロ-6-カルボキシフルオレセイン(JOE)、ローダミン、6-カルボキシローダミン(R6G)、N,N,N',N'-テトラメチル-6-カルボキシローダミン(TAMRA)、6-カルボキシ-X-ローダミン(ROX)、4-(4'-ジメチルアミノフェニルアゾ)安息香酸(DABCYL)および5-(2'-アミノエチル)アミノナフタレン-1-スルホン酸(EDANS)が非制限的に含まれる。その他の可能性のある蛍光タグも当技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,866,336号)。非常にさまざまな蛍光タグを販売元、例えばMolecular Probes社(Eugene, OR)から入手可能である。タグ付加分子の蛍光検出の方法も当技術分野で周知であり、任意のこのような方法を用いることができる。
【0154】
物理的対象に付随するバーコードに用いうる発光性タグには、希土類金属クリプテート、ユーロピウムトリスビピリジンジアミン、ユーロピウムクリプテートまたはキレートTbトリスビピリジン、ジアミン、ジシアニン、La Jolla青色色素、アロピコシアニン、アロコシアニンB、フィコシアニンC、フィコシアニンR、チアミン、フィコエリスロシアニン、フィコエリトリンR、アップコンバート性もしくはダウンコンバート性リン光体、ルシフェリンまたはアクリジニウムエステルが非制限的に含まれる。
【0155】
タグとして用いうるナノ粒子については、ナノコードに関連して本明細書で考察している。タグとしては金または銀のナノ粒子が最も一般的に用いられるが、任意の種類または組成のナノ粒子をバーコードと結合させてタグとして用いることができる。
【0156】
用いようとするナノ粒子は、ナノ粒子(コロイド性ナノ粒子)のランダムな凝集物であってよい。または、ナノ粒子を架橋させて、二量体、三量体、四量体またはその他の凝集物といったナノ粒子の特定の凝集物を作製することもできる。設定した数のナノ粒子を含む凝集物(二量体、三量体など)は、スクロース溶液中での超遠心処理といった公知の手法によって濃縮または精製することができる。
【0157】
バーコードとの結合のために適した修飾ナノ粒子が販売されており、これには例えば、Nanoprobes, Inc.(Yaphank, NY)のNanogold(登録商標)ナノ粒子がある。Nanogold(登録商標)ナノ粒子は、ナノ粒子1つ当たりに単一または多数のマレイミド、アミンまたはその他の基が結合した状態で入手することができる。このような修飾ナノ粒子は、さまざまな公知のリンカー化合物を用いてバーコードと結合させることができる。
【0158】
タグにはサブミクロンサイズの金属タグが含まれうる(例えば、Nicewarner-Pena et al.、Science 294: 137-141, 2001)。Nicewamer-Pena et al.(2001)は、さまざまな種類の金属から構成される、サブミクロンの縞によってコード化された多金属マイクロロッドを調製するための方法を開示している。このシステムは、2種類の金属を用いて最大4160種、3種類の金属を用いて8×10種という極めて多数の識別可能なナノコードを作製することを可能にする。このようなナノコードは、コード化されたプローブに組み入れることができ、読み取ることができる。金または銀などの金属粒子をオリゴヌクレオチドおよびその他の種類のプローブ分子と結合させる方法は当技術分野で公知である(例えば、米国特許第5,472,881号)。
【0159】
フラーレンをバーコードタグとして用いることもできる。フラーレンの製造方法は公知である(例えば、米国特許第6,358,375号)。フラーレンは、カーボンナノチューブに関して以上に開示したものに類似した方法により、誘導体化してプローブ分子と結合させることができる。フラーレンタグが付加されたバーコードは、例えばさまざまな技術を用いて同定することができる。
【0160】
バーコードと結合させて検出することができる、その他の種類の公知のタグも想定される。用いうる可能性のあるタグの非制限的な例には、量子ドットが含まれる(例えば、Schoenfeld, et al., Proc. 7th Int. Conf. on Modulated Semiconductor Structure, Madrid, pp.605-608, 1995;Zhao, et al., 1st Int. Conf. on Low Dimensional Structures and Devices, Singapore, pp.467-471, 1995)。また、量子ドットおよびその他の種類のタグを販売元から入手することもできる(例えば、Quantum Dot Corp., Hayward, CA)。
【0161】
単一壁カーボンナノチューブ(SWNT)などのカーボンナノチューブをタグとして用いることもできる。ナノチューブは、単一分子レベルの表面分析方法を用いる態様において、例えば、ラマン分光法によって検出することができる(例えば、Freitag et al., Phys. Rev. B 62:R2307-R2310, 2000)。カーボンナノチューブの特性、例えば電気的または光学的特性は、少なくとも一部には、ナノチューブのサイズに依存する。カーボンナノチューブは、本明細書で考察しているようなさまざまな手法によって製造することができる。
【0162】
ヌクレオチドまたは塩基、例えばアデニン、グアニン、シトシンもしくはチミンを、オリゴヌクレオチドおよび核酸以外のタグ分子バーコードとして用いることができる。例えば、ペプチドを基にした分子バーコードに対して、ヌクレオチドまたはプリンもしくはピリミジン塩基によるタグ付加を施すことができる。その他の種類のプリンもしくはピリミジン、またはそれらの類似体、例えばウラシル、イノシン、2,6-ジアミノプリン、5-フルオロ-デオキシシトシン、7デアザ-デオキシアデニンもしくは7デアザ-デオキシグアニンなどを、タグとして用いることもできる。その他のタグには、塩基類似体が含まれる。塩基とは、糖およびリン酸を伴わない、窒素を含む環状構造のことである。このようなタグは、ラマン分光法または蛍光分光法などの光学的手法によって検出することができる。ヌクレオチドタグまたはヌクレオチド類似体タグの使用は、検出しようとする標的分子が核酸またはオリゴヌクレオチドである場合には、バーコードのタグ部分がプローブ部分以外の異なる標的分子とハイブリダイズする可能性があるため、適切ではない恐れがある。
【0163】
アミノ酸をタグとして用いることもできる。用いうる可能性のあるアミノ酸には、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、ヒスチジン、アルギニン、システインおよびメチオニンが非制限的に含まれる。
【0164】
二官能性架橋試薬は、タグをバーコードと結合させるといったさまざまな目的に用いることができる。二官能性架橋試薬は、例えば、アミノ、グアニジノ、インドールまたはカルボキシ特異的な基といった、それらの官能基の特異性に従って分類することができる。これらの中では、遊離アミノ基を対象とする試薬が一般的であるが、これは販売が可能であること、合成の容易さ、およびそれらを適用しうる反応条件が穏和であることが理由である(米国特許第5,603,872号および第5,401,511号)。用いうる可能性のある架橋試薬には、グルタールアルデヒド(GAD)、二官能性オキシラン(OXR)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)およびカルボジイミド、例えば1-エチル-3-(-3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)が含まれる。
【0165】
本発明のさまざまな態様において、分析しようとする標的分子を、コード化されたプローブの結合の前、後および/または最中に固定化してもよい。例えば、標的分子の固定化は、結合したコード化プローブと結合しなかったコード化プローブとの分離を容易にするために行うこともできる。ある特定の態様において、標的分子の固定化は、結合したコード化プローブを、コード化プローブの検出および/または同定の前に標的分子から分離するために用いることもできる。以下の考察は核酸の固定化に向けられているが、当業者は、さまざまな種類の生体分子を固定化する方法が当技術分野では公知であって、請求される方法に用いうることを理解していると考えられる。
【0166】
核酸の固定化は、例えば、標的核酸の、連結されたコード化プローブおよびハイブリダイズしなかったコード化プローブまたは互いにハイブリダイズしたコード化プローブからの分離を容易にするために用いることができる。1つの非制限的な例においては、標的核酸を固定化して、コード化されたプローブとハイブリダイズさせ、その後にハイブリダイズした隣接するコード化プローブを一つに連結させる。結合した核酸を含む基質を、ハイブリダイズしなかったコード化プローブおよび他のコード化プローブとハイブリダイズしたコード化プローブを除去するために十分に洗浄する。洗浄の後に、ハイブリダイズして連結されたコード化プローブを、約90〜95℃に数分間加熱することにより、固定化された標的核酸から取り出すこともできる。連結されたコード化プローブを、以上に開示したように、表面に結合させて分子コーミングによって整列化させることもできる。整列化されたコード化プローブは続いてSPMによって分析することができる。
【0167】
核酸の固定化は、当技術分野で公知のさまざまな方法によって行うことができる。本発明の1つの例示的な態様において、固定化は、基質をストレプトアビジンまたはアビジンでコーティングし、その後にビオチン化核酸を結合させることによって行われる(Holmstrom et al., Anal. Biochem. 209: 278-283, 1993)。また、固定化を、ケイ素、ガラスまたは他の基質をポリ-E-Lys(リジン)でコーティングし、その後に二官能性架橋試薬を用いてアミノ修飾核酸またはスルフヒドリル修飾核酸と共有結合させることによって行うこともできる(Running et al., BioTechniques 8: 276-277, 1990;Newton et al.,Nucleic Acids Res. 21: 1155-62, 1993)。架橋のためにアミノシランを用いることによってアミン残基を基質に導入することもできる。
【0168】
固定化を、5'-リン酸化核酸と化学修飾された基質との直接的な共有結合によって行うこともできる(Rasmussen et al., Anal. Biochem. 198: 138-142, 1991)。核酸と基質との間の共有結合は、水溶性カルボジイミドまたは他の架橋試薬を用いた縮合によって形成される。この方法は、5'-リン酸を介した核酸の5'-結合を優先的に促す。修飾基質の例には、酸浴中で処理され、SiOH基がガラス上に露出したスライドガラスまたはカバースリップが含まれる(米国特許第5,840,862号)。
【0169】
DNAは、ガラス基質をまずシラン処理し、続いてカルボジイミドまたはグルタルアルデヒドによって活性化することによってガラスに一般に結合する。代替的な手順では、3-グリシドオキシプロピルトリメトキシシラン(GOP)、ビニルシランまたはアミノプロピルトリメトキシシラン(APTS)などの試薬を、分子の3'末端または5'末端に組み込まれたアミノリンカーを介して結合させたDNAとともに用いる。DNAを、紫外光照射を用いて膜基質に直接結合させてもよい。核酸のための固定化法のその他の非制限的な例は、米国特許第5,610,287号、第5,776,674号および第6,225,068号に開示されている。核酸結合のための市販の基質は、Covalink社、Costar社、Estapor社、Bangs社およびDynal社などから入手可能である。当業者は、開示された方法が核酸の固定化には限定されず、例えば、オリゴヌクレオチド性コード化プローブの一端または両端を基質と結合させるためにも用いうる可能性があることを理解していると考えられる。
【0170】
核酸または他の標的分子の固定化のために用いられる基質は限定されない。本発明のさまざまな態様において、固定化基質は、磁性ビーズ、非磁性ビーズ、平面状基質、またはほぼあらゆる材料を含む固体基質の任意の他のコンフォメーションであってよい。用いうる基質の非制限的な例には、ガラス、シリカ、ケイ酸塩、PDMS(ポリジメチルシロキサン)、銀またはその他の金属がコーティングされた基質、ニトロセルロース、ナイロン、活性化された石英、活性化されたガラス、ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)、ポリスチレン、ポリアクリルアミド、ポリ(塩化ビニル)またはポリ(メチルメタクリレート)などのその他のポリマー、ならびに核酸分子と共有結合を生じうるニトレン、カルベンおよびケチルラジカルなどの光反応性種を含む感光性ポリマーが含まれる(米国特許第5,405,766号および第5,986,076号を参照)。
【0171】
二官能性架橋試薬は本発明のさまざまな態様において有用である。二官能性架橋試薬は、例えばアミノ、グアニジノ、インドールまたはカルボキシ特異的な基といった、それらの官能基の特異性に従って分類することができる。これらの中では、遊離アミノ基を対象とする試薬が一般的であるが、これは販売が可能であること、合成の容易さ、およびそれらを適用しうる反応条件が穏和であることが理由である。架橋性分子に関する例示的な方法は、米国特許第5,603,872号および第5,401,511号に開示されている。架橋試薬には、グルタールアルデヒド(GAD)、二官能性オキシラン(OXR)、エチレングリコールジグリシジルエーテル(EGDE)およびカルボジイミド、例えば1-エチル-3-(-3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)などが含まれる。
【0172】
本明細書で示されているように、本発明の方法のある特定の局面において、ナノコードは、走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて検出される。走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、対象物の物理的特性をマイクロメートルおよび/またはナノメートルの規模で測定するために用いられる一群の装置のことである。以下にさらに詳細に考察するように、さまざまな方式のSPM技術を利用することができる。SPM分析の任意の方式を、コード化されたプローブの検出および/または同定のために用いることができる。一般に、SPM装置は、対象物の特性を測定するために、極めて小さな尖形プローブを表面に極めて近接して用いる。ある種のSPM装置では、プローブはカンチレバー上に装着され、これは長さが数百ミクロンで厚みが約0.5〜5.0ミクロンであってよい。典型的には、プローブ先端は、表面特性の局在的な変化をマッピングするためにxyパターンで表面をラスタスキャニングする。ナノコードとして用いられる生体分子の画像化および/または分子の検出のために用いられるSPM方法は、当技術分野で公知である(例えば、Wang et al., Amer. Chem. Soc. Lett., 12: 1697-98. 1996;Kim et al., Appl. Surface Sci. 130, 230, 340-132: 602-609, 1998;Kobayashi et al., Appl. Surface Sci. 157: 228-32, 2000;Hirahara et al., Phys. Rev. Lett. 85: 5384-87 2000;Klein et al., Applied Phys. Lett. 78: 2396-98, 2001;Huang et al, Science 291: 630-33, 2001;Ando et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 12468-72, 2001)。
【0173】
走査型トンネル顕微鏡法は、1980年代初頭に開発された最初のSPM法である。STMは、プローブ先端と試料表面との間の量子力学的電子トンネルの存在に依拠している。先端は単一原子ポイントまで先鋭化され、表面には実際には触れずにプローブ-表面ギャップ距離を数オングストロームに維持しながら表面をラスタスキャニングする。わずかな電圧差(ミリボルトないし数ボルト程度)をプローブ先端と試料との間に加え、先端と試料との間のトンネル電流を測定する。先端が表面をスキャニングすると、試料の電気的およびトポグラフィー的特性の違いが原因となってトンネル電流の量が変化する。本発明のある特定の態様において、先端の相対的な高さは、コンピュータに接続されたフィードバック制御を備えた圧電素子によって制御することができる。コンピュータは、電流強度をリアルタイムでモニターし、相対的に定常的な電流を維持するために先端を上下に移動させることができる。異なる態様においては、先端の高さおよび/または電流強度をコンピュータによって処理し、スキャニングされた表面の画像を生成させることができる。
【0174】
STMは試料の電気的特性ならびに試料のトポグラフィーを測定するため、金属バーコード中の異なる種類の金属といった異なる種類の伝導性材料を識別することが可能である。STMはまた、局所的な電子密度を測定することもできる。トンネル伝導度は局所状態密度(DOS)と比例するため、STMを、ナノチューブの直径および長さに応じて電気的特性の異なるカーボンナノチューブを識別するために用いることもできる。STMを、電気的特性の点で異なるナノコードを検出および/または同定するために用いることもできる。
【0175】
STMプローブ先端を、整列化されたコード化プローブを含む表面に沿ってスキャニングさせ、表面上のそれぞれのコード化プローブを検出および同定することができる。連結されたコード化プローブを同定することもできる。標的分子は、どのコード化プローブが標的分子と結合するかを判定することによって同定することができる。コード化されたプローブが特定の配列(オリゴヌクレオチド配列など)の存在を示すような本発明の態様においては、生体分子の配列を、標的分子と結合するコード化プローブの配列から決定することができる。
【0176】
SPMのもう1つの方式は、原子間力顕微鏡法(AFM)である。AFMによる生体分子の分析の方法は当技術分野で公知である(例えば、Uchihashi et al.,「Application of Noncontact-Mode Atomic Force Microscopy to Molecular Imaging」, http://www.foresight.org/Conferences/MNT7/Abstracts/Uchihashi)。AFM顕微鏡法では、プローブを、分析しようとする表面と接触しているバネ押し式または柔軟なカンチレバーに取り付ける。接触は、分子間力の範囲内で行わせる(すなわち、ファンデルワールス力の相互作用の範囲内)。AFMにおいては、接触モード、非接触モードおよびタッピングモード3を含むさまざまな動作モードが可能である。
【0177】
接触モードでは、先端-試料の距離を一定に保った上で、典型的にはレーザーをカンチレバーから位置感知性検出器に向けて反射させることによって、カンチレバーのたわみを測定することにより、プローブ先端と試料表面との原子間力を測定する。カンチレバーのたわみは、反射されたレーザービームの位置の変化をもたらす。STMの場合と同じく、フィードバック制御を備えた圧電素子を用いて、プローブ先端の高さをコンピュータ制御することもできる。本発明のいくつかの態様においては、プローブ先端を上下させることによって、たわみの程度が比較的一定に維持される。プローブ先端は試料と実際の(ファンデルワールス)接触を行いうるため、接触モードAFMは軟質試料を変形させる傾向がある。非接触モードでは、先端を試料表面の上方約50〜150オングストロームに維持して、先端を振動させる。先端と試料表面との間のファンデルワールス相互作用は、先端の振動の位相、振幅または振動数に反映される。非接触モードで得られる分解能は比較的低い。
【0178】
タッピングモード3では、カンチレバーを、圧電素子を用いてその共振振動数またはその付近で振動させる。AFM先端は試料表面と、空気中では約50,000〜500,000サイクル毎秒で、液体中ではより低い振動数で周期的に接触(タッピング)する。先端が試料表面と接触し始めると、振動の振幅は低下する。振幅の変化は、試料のトポグラフィー特性を決定するために用いられる。ATM分析は電気伝導度には依存しないため、これは非伝導性材料のトポグラフィー特性の決定に用いることもできる。トポグラフィー特性の点で異なる、カーボンナノチューブ、フラーレンおよびナノ粒子を非制限的に含む、特定の種類のナノコードを、AFM法によって検出および/または同定することができる。
【0179】
AFMの代替的なモードでは、試料のトポグラフィー特性に加えて、さらにほかの情報を得ることもできる。例えば、水平力顕微鏡法(LFM)では、プローブをその長さ方向に対して垂直にスキャニングし、カンチレバーのねじれの程度を測定する。カンチレバーのねじれは表面の摩擦特性に依存すると考えられる。コード化されたプローブの摩擦特性はその組成に応じて異なると考えられるため、LFMは、異なるコード化プローブの検出および同定のために有用と思われる。
【0180】
もう1つの変法は化学力顕微鏡法(CFM)であり、この場合には、プローブ先端を化学種によって官能化して、その化学種と試料との間の接着力を検出するために試料をスキャニングする(例えば、Frisbie et al., Science 265: 2071-2074, 1994)。金または銀といったナノコード材料に対する親和性の異なる化学物質をAFMプローブ先端に組み入れた上で、ナノコードの検出および同定のために表面に沿ってスキャニングする。用いうる可能性のあるもう1つのSPMモードは、フォースモジュレーション画像化法である(Maivald et al., Nanotechnology 2: 103, 1991)。Uchihashi et al.(http://www.foresight.org/Conferences/MNT7/Abstracts/Uchihashi)は、非接触モードAFMにおいて振動数変調を用いる、生体分子の画像化の方法を方法を開示している。
【0181】
コード化されたプローブの検出および/または同定のために用いうる可能性のあるその他のSPMモードには、磁力顕微鏡法(MFM)、高周波MFM、磁気抵抗感度マッピング(MSM)、電気力顕微鏡法(EFM)、走査型静電容量顕微鏡法(SCM)、走査型広がり抵抗顕微鏡法(SSRM)、トンネルAFMおよび伝導AFMが含まれる。これらの方式のうちある種のものでは、試料の磁性特性を決定することができる。当業者は、金属バーコードおよびその他の種類のナノコードを、磁性ならびに電気的特性によって特定しうるように設計しうることを理解していると考えられる。
【0182】
コード化されたプローブの検出および/または同定のために用いられるSPM装置は市販されている(例えば、Veeco Instruments, Inc., Plainview, NY;Digital Instruments, Oakland, CA)。または、特注設計のSPM装置を用いてもよい。
【0183】
本発明のある特定の態様において、生体分子の分析のためのシステムは、情報の処理および制御のシステムを含みうる。これらの態様は、用いられる情報処理システムの種類に関しては限定されない。このようなシステムは、SPM装置から得られたデータを解析するため、および/またはSPMプローブ先端の運動、用いるSPM画像化の方式、SPMデータを入手する厳密な手法を制御するために用いることができる。例示的な情報処理システムには、情報の通信のためのバスおよび情報の処理のためのプロセッサを含むコンピュータを組み入れることができる。1つの態様において、プロセッサは、Intel Corp.(Santa Clara, CA)から入手可能な、Pentium(登録商標)IIファミリー、Pentium(登録商標)IIIファミリーおよびPentium(登録商標)4ファミリーのプロセッサを非制限的に含む、Pentium(登録商標)ファミリーのプロセッサから選択される。本発明の代替的な態様において、プロセッサは、Celeron(登録商標)、Itanium(登録商標)、X-Scale(登録商標)またはPentium Xeon(登録商標)プロセッサ(Intel Corp., Santa Clara, CA)であってよい。本発明のさまざまな他の態様において、プロセッサは、Intel(登録商標)IA-32またはIntel(登録商標)IA-64アーキテクチャなどのIntel(登録商標)アーキテクチャに基づくものであってよい。または、その他のプロセッサを用いることもできる。
【0184】
コンピュータがさらに、ランダムアクセスメモリ(RAM)またはその他の動的記憶装置、リードオンリーメモリ(ROM)またはその他の静的な記憶装置、ならびに磁気ディスクまたは光学ディスクおよびそれに対応するドライブといったデータ記憶装置を含んでもよい。情報処理システムはまた、ディスプレイ装置(例えば、ブラウン管または液晶ディスプレイ)、英数字入力装置(例えば、キーボード)、カーソル制御装置(例えば、マウス、トラックボールまたはカーソル指示キー)および通信装置(例えば、モデム、ネットワークインターフェースカードまたは、イーサーネット、トークンリングもしくはその他の種類のネットワークにつなぐために用いられるインターフェース装置)といった、当技術分野で公知のその他の周辺装置を含んでもよい。
【0185】
本発明の特定の態様において、SPM(走査型プローブ顕微鏡法)ユニットは、情報処理システムと接続することができる。SPMからのデータをプロセッサによって処理し、データを主記憶装置に記憶することができる。プロセッサはSPMからのデータを解析して、表面と結合したコード化されたプローブの配列を同定および/または決定することができる。連結されたコード化プローブの配列を部分的に重ねることにより、コンピュータは標的核酸の配列をコンパイルすることができる。または、コンピュータは、表面と結合したコード化されたプローブの実体に基づいて、試料中に存在するさまざまな既知の生体分子種を同定することができる。
【0186】
異なる装備がなされた情報処理システムを、ある種の遂行のために用いうることは認識されている。したがって、システムの構成は本発明の異なる態様においては異なってもよい。本明細書に記載したプロセスをプログラム化されたプロセッサの制御下で行うこともできるが、本発明の代替的な態様において、プロセスは、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、TTLロジックまたは特定用途向け集積回路(ASIC)といった任意のプログラム可能なまたはハードコードされた論理回路に完全または部分的に実装されている。さらに、開示された方法を、プログラム化された汎用コンピュータ要素および/または特注のハードウエア要素の任意の組み合わせによって行うこともできる。
【0187】
本発明のある特定の態様において、特注設計のソフトウエアパッケージを、SPMから得られたデータを解析するために用いてもよい. 本発明の代替的な態様において、データ解析は、情報処理システムおよび公開されているソフトウエアパッケージを用いて行うこともできる。DNA配列解析用の入手可能なソフトウエアの非制限的な例には、PRISM3 DNA配列解析ソフトウエア(Applied Biosystems, Foster City, CA)、Sequencher3パッケージ(Gene Codes, Ann Arbor, MI)およびワールドワイドウェブのnbif.org/links/1.4.1.phpにあるNational Biotechnology Information Facilityから入手可能なさまざまなソフトウエアパッケージが含まれる。
【0188】
本発明のある特定の態様においては、1つまたは複数のバーコードを含む溶液を、セキュリティー追跡を目的として対象に適用することができる。このような方法は当技術分野で公知である。例えば、ある英国企業(SmartWater Ltd.)は、デジタル式のDNAの鎖を含む液体を用いて貴重品に印を付ける方法を開発している。このDNAを物品から洗い流すことは事実上不可能であり、これは貴重な品物または相続家財を一意的に識別するために用いることができる。このDNAは任意の法医学検査施設によって検出されうる。このような方法を、本明細書に開示した分子バーコードを用いて品物に印を付けるために利用することもできる。このような用途において、バーコードの検出には、DNA配列に基づく法医学的分析は必要ないと考えられる。
【0189】
バーコードの調製、使用および/または検出のための装置は、より大型の装置および/またはシステムに組み込むことができる。ある特定の態様において、装置は、微小電気機械システム(MEMS)を含みうる。MEMSは、機械的素子、センサー、アクチュエーターおよび電子機器を含む集積システムである。このような構成要素はすべて、ケイ素を基材とするか同等の基質でできた一般的なチップ上に微細加工技術を用いて製造することができる(例えば、Voldman et al., Ann. Rev. Biomed. Eng. 1: 401-425, 1999)。MEMSのセンサー要素は、バーコードを検出する目的で機械的、熱的、生物学的、化学的、光学的および/または磁気的な現象を測定するために用いることができる。電子機器は、センサーからの情報を処理して、ポンプ、弁、ヒーターなどのアクチュエーターを制御し、それによってMEMSの機能を制御することができる。
【0190】
MEMSの電子機器要素は、集積回路(IC)プロセス(例えば、CMOSまたはBipolarプロセス)を用いて製造することができる。それらは、コンピュータチップ製造のためのフォトリソグラフィーおよびエッチングの方法を用いてパターン化することができる。微小機械的な要素は、シリコンウェーハの部分を選択的にエッチング除去するか、新たな構造層を加えて、機械的および/または電気機械的な構成要素を形成する、適合性のある「微細加工」プロセスを用いて製造することができる。
【0191】
MEMS製造における基本的な手法には、基板上に材料の薄膜を沈着させる段階、パターン化されたマスクを何らかのリソグラフィー法によって薄膜の上層に適用する段階、および薄膜を選択的にエッチングする段階が含まれる。薄膜は数ナノメートルないし100マイクロメートルの範囲にあってよい。用いられる沈着法には、化学蒸着(CVD)、電気溶着、エピタキシーおよび熱酸化といった化学的処置、ならびに物理的蒸着(PVD)および鋳造といった物理的処置が含まれうる。ナノ電気機械システムの製造のための方法を用いることもできる(例えば、Craighead, Science 290: 1532-36, 2000を参照)。
【0192】
いくつかの態様においては、装置および/または検出器を、さまざまな液体充填コンパートメント、例えばマイクロ流体チャンネルまたはナノチャンネルと接続することができる。装置の上記およびその他の構成要素は、単一のユニットとして、例えばチップ(例えば、半導体チップ)および/またはマイクロキャピラリーもしくはマイクロ流体チップの形状として形作ることができる。または、個々の構成要素を別々に製造して、一つに結び付けることもできる。例えばケイ素、二酸化ケイ素、ポリジメチルシロキサン(PDMS)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、合成樹脂、ガラス、石英といった、このようなチップにおける使用が公知である任意の材料を、開示した装置に用いることができる。
【0193】
チップのバッチ製造のための手法は、コンピュータチップの製造および/またはマイクロキャピラリーチップの製造においては周知である。このようなチップは、フォトリソグラフィーおよびエッチング、レーザーアブレーション、射出成形、鋳造、分子ビームエピタキシー、ディップペンナノリソグラフィー、化学蒸着(CVD)加工、電子ビームまたは集束イオンビーム技術またはプリント法といった、当技術分野で公知である任意の方法によって製造することができる。非制限的な例には、従来の成形法、二酸化ケイ素のドライエッチング;および電子ビームリソグラフィーが含まれる。ナノ電気機械システムの製造のための方法は、ある特定の態様のために用いることができる(例えば、Craighead, Science 290: 1532-36, 2000を参照されたい)。さまざまな形態の微細加工チップが、例えば、Caliper Technologies Inc.(Mountain View, CA)およびACLARA BioSciences Inc.(Mountain View, CA)から販売されている。
【0194】
ある特定の態様において、装置の部分または全体を、例えばラマン分光法によるバーコード検出のために用いられる励起周波数および発光周波数の電磁放射線に対して透過性であるように選択することができる。適した構成要素を、ガラス、ケイ素、石英または任意の他の光学的透過性のある材料などの材料から加工することができる。さまざまな被分析物(例えば、核酸、タンパク質など)に対して曝されうる、液体が充填される構成要素に関しては、このような分子に曝される表面を、例えば、表面を疎水性のものから親水性表面に変えるため、および/または表面に対する分子の吸着を低下させるために、コーティングによって修飾することができる。ガラス、ケイ素、石英および/またはPDMSなどの一般的なチップ材料の表面修飾については公知である(例えば、米国特許第6,263,286号)。このような修飾には、例えば、市販のキャピラリーコーティング剤(Supelco, Bellafonte、PA)、さまざまな機能を有するシラン(例えば、ポリエチレンオキシドまたはアクリルアミド)によるコーティングが含まれうる。
【0195】
ある特定の態様において、このようなMEMS装置は、分子バーコードを調製するため、形成された分子バーコードを組み込まれていない成分から分離するため、分子バーコードを標的に曝露させるため、および/または標的と結合した分子バーコードを検出するために用いることができる。
【0196】
もう1つの態様においては、少なくとも1つのコード化されたプローブを含むキットであって、それぞれのコード化されたプローブが、検出可能な非コード性特徴を含む少なくとも1つのナノコードが結合したプローブ分子を含み、ナノコードが単一分子レベルの表面分析方法を用いて検出可能であるようなキットが提供される。プローブ分子は、例えば、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、抗体、抗体断片、遺伝的に操作された抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、タンパク質、受容体、転写因子、ペプチド、レクチン、基質、インヒビター、アクチベーター、リガンド、ホルモン、サイトカイン、ケモカインまたは医薬品である。
【0197】
ナノコードは、例えば、カーボンナノチューブ、フラーレン、サブミクロン金属バーコード、ナノ粒子および量子ドットである。非コード性特徴は、例えば、開始タグ、ヘッダー領域および/またはフッター領域といった、本明細書に開示された非コード性特徴の任意のものであってよい。ナノコードは、圧縮されたナノコード、またはリーディングフレームを含むナノコードであってよい。
【0198】
以下の実施例は例示を意図しており、本発明を限定することを意図したものではない。
【0199】
実施例1
ナノコードの合成およびSPMスキャニング
この実施例は、ペプチド骨格およびC(60)タグを含む生体分子ナノコードの製造およびSPM検出を例示している。ペプチドは標準的な方法を用いて商業的に合成させた。ペプチドを、リジン残基にタグを結合させることによってC(60)タグで標識した。これは、官能化されたC(60)のカルボキシ基とリジンのアミノ基を反応させることによって行った。標識ポリペプチドを、焼なましを行った金SPM基板上にナノドロップ法によって沈着させ、その後に乾燥させた。SPMはDigital Instruments社の標準的なSTMシステムを用いて行った。
【0200】
図3は、ペプチドC(60)ナノコードのSTM画像である。多数のバッキーボールが1つのペプチドによって連結されていた。STMスキャンにより、合成ペプチド:

によって連結されたグラファイト上に4つのバッキーボールが同定されている。
【0201】
本発明を以上の実施例を参照しながら説明してきたが、改変物および変形物が本発明の精神および範囲に含まれることは理解されるであろう。したがって、本発明は以下の特許請求の範囲のみによって限定される。
【図面の簡単な説明】
【0202】
【図1】核酸分子のヌクレオチド配列の決定を目的とするヌクレオチド配列のナノコードタグ付加のための本発明の1つの具体的な方法を模式的に示している。図1Aは、本明細書に開示した方法の1つの具体例の諸段階を提示している。図1Bは、本明細書に開示した方法の1つの具体例の概略図を提示している。
【図2】AおよびCは金ナノ粒子30タグおよびDNA骨格を用いて個々のヌクレオチドをコード化するためのバーコードパターンを示している。この図は、2nmの金ナノ粒子(小さな円)および10nmの金ナノ粒子(大きな円)を図示している。
【図3】ペプチドC(60)ナノコードのSTM画像である。多数のバッキーボールが1つのペプチドによって連結されている。STMスキャンにより、合成ペプチド:NH2-AAMAAKAMAAMAKAVAMAAKAVAAMAKAAA-CONH2(SEQ ID NO:1)によって連結されたグラファイト上に4つのバッキーボールが同定されている。
【図4】リーディングフレーム用の検出可能な特徴(図4A);データ圧縮(図4B);およびチェックサム(図4C)に関する態様を図示している。
【図5】分枝520およびタグ530による修飾が施された有機骨格510を有するバーコード500を生成するための例示的な方法を図示している。バーコード500は、標的に対して結合させるためのプローブ成分550を含むことができる。タグ530に対しては、例えば抗体540と結合させることにより、さらなる修飾を施すことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含む方法:
a)1つまたは複数のコード化されたオリゴヌクレオチドプローブを提供する段階であって、それぞれのコード化されたオリゴヌクレオチドプローブが、検出可能な非コード性特徴(non-encoding feature)を含む少なくとも1つのナノコードが付随したオリゴヌクレオチドを含む段階;
b)標的核酸を1つまたは複数のコード化されたオリゴヌクレオチドプローブと接触させる段階;ならびに
c)ナノコードおよび検出可能な非コード性特徴を検出するために走査型プローブ顕微鏡法(SPM)を用いて、標的核酸と結合するコード化されたオリゴヌクレオチドプローブを同定する段階。
【請求項2】
1つまたは複数のコード化されたプローブが、特定の長さのオリゴヌクレオチドに関して考えられる実質的にすべての配列を含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ナノコードが、カーボンナノチューブ、フラーレン、サブミクロン金属バーコード、ナノ粒子および量子ドットからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
核酸が表面に対して結合されている、請求項1記載の方法。
【請求項5】
核酸とハイブリダイズした、隣接するコード化されたプローブを連結する段階をさらに含む、請求項4記載の方法。
【請求項6】
連結されたコード化されたプローブを、核酸および連結されていないコード化されたプローブから分離する段階をさらに含む、請求項5記載の方法。
【請求項7】
連結されたコード化されたプローブがリーディングフレームを形成する、請求項6記載の方法。
【請求項8】
コード化されたプローブを分子コーミングによって表面上に整列化する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項9】
走査型プローブ顕微鏡法が、原子間力顕微鏡法、走査型トンネル顕微鏡法、水平力顕微鏡法、化学力顕微鏡法、フォースモジュレーション画像化法、磁力顕微鏡法、高周波磁力顕微鏡法、磁気抵抗感度マッピング法、電気力顕微鏡法、走査型静電容量顕微鏡法、走査型広がり抵抗顕微鏡法、トンネル原子間力顕微鏡法または伝導原子間力顕微鏡法である、請求項1記載の方法。
【請求項10】
核酸と結合するオリゴヌクレオチドのヌクレオチド配列を決定する段階をさらに含む、請求項2記載の方法。
【請求項11】
核酸と結合するオリゴヌクレオチドの配列から標的核酸のヌクレオチド配列を決定する段階をさらに含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
核酸と結合するコード化されたプローブから標的核酸を同定する段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項13】
2種類またはそれ以上の標的核酸が試料中に存在する、請求項1記載の方法。
【請求項14】
試料中の少なくとも2種類の標的分子を同時に分析する、請求項1記載の方法。
【請求項15】
検出可能な非コード性特徴が、ナノコードに付随した検出可能な特徴タグによって提供される、請求項1記載の方法。
【請求項16】
検出可能な非コード性特徴タグが開始タグを含む、請求項15記載の方法。
【請求項17】
分子ナノコードを変換して解凍ナノコードを生じさせる段階をさらに含む、請求項1記載の方法。
【請求項18】
検出可能な特徴がチェックサムバーコードセグメントである、請求項1記載の方法。
【請求項19】
検出可能な特徴がヘッダーセグメントおよびコード性セグメントを含む、請求項1記載の方法。
【請求項20】
少なくとも1つのコード化されたプローブを含む組成物であって、それぞれのコード化されたプローブが、検出可能な非コード性特徴を含む少なくとも1つのナノコードと結合したプローブ分子を含み、ナノコードが単一分子レベルの表面分析方法を用いて検出可能であるような、組成物。
【請求項21】
プローブ分子が、オリゴヌクレオチド、ポリヌクレオチド、核酸、抗体、抗体断片、遺伝子操作された抗体、一本鎖抗体、ヒト化抗体、タンパク質、受容体、転写因子、ペプチド、レクチン、基質、インヒビター、アクチベーター、リガンド、ホルモン、サイトカイン、ケモカインまたは医薬品である、請求項20記載の組成物。
【請求項22】
プローブ分子がオリゴヌクレオチドである、請求項20記載の組成物。
【請求項23】
ナノコードが、カーボンナノチューブ、フラーレン、サブミクロン金属バーコード、ナノ粒子および量子ドットからなる群より選択される、請求項20記載の組成物。
【請求項24】
検出可能な非コード性特徴が開始タグである、請求項20記載の組成物。
【請求項25】
ナノコードが圧縮されたナノコードである、請求項20記載の組成物。
【請求項26】
ナノコードがリーディングフレームを含む、請求項20記載の組成物。
【請求項27】
ナノコードがヘッダー領域およびコード領域を含む、請求項20記載の組成物。
【請求項28】
ナノコードが走査型プローブ顕微鏡法(SPM)を用いて検出可能である、請求項20記載の組成物。
【請求項29】
以下のものを含むシステム:
a)走査型プローブ顕微鏡(SPM);
b)表面;および
c)コード化されたオリゴヌクレオチドプローブが、検出可能な非コード性特徴を含むナノコードを含み、ナノコードがSPMを用いて検出可能であるような、表面と結合した、少なくとも1つのコード化されたオリゴヌクレオチドプローブ。
【請求項30】
コード化されたオリゴヌクレオチドプローブが、連結されたオリゴヌクレオチドを含む、請求項29記載のシステム。
【請求項31】
連結されたオリゴヌクレオチドがリーディングフレームを形成する、請求項30記載のシステム。
【請求項32】
走査型プローブ顕微鏡が原子間力顕微鏡または走査型トンネル顕微鏡である、請求項29記載のシステム。
【請求項33】
検出可能な非コード性特徴が開始タグである、請求項29記載のシステム。
【請求項34】
ナノコードが圧縮されたナノコードである、請求項29記載のシステム。
【請求項35】
ナノコードがリーディングフレームを含む、請求項29記載のシステム。
【請求項36】
ナノコードがヘッダー領域およびコード領域を含む、請求項29記載のシステム。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5】
image rotate


【公表番号】特表2007−522799(P2007−522799A)
【公表日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−547471(P2006−547471)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【国際出願番号】PCT/US2004/043632
【国際公開番号】WO2005/066368
【国際公開日】平成17年7月21日(2005.7.21)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
2.Linux
【出願人】(591003943)インテル・コーポレーション (1,101)
【Fターム(参考)】