走査型電子顕微鏡及び半導体検査システム
【課題】走査型電子顕微鏡の撮像画像の画質を向上させる。
【解決手段】1次電子ビーム108を試料ウェハ106に照射する電子源101、加速電極102、集束レンズ103、偏向器104、対物レンズ105等と、試料ウェハ106から発生する放出電子信号109をサンプリングしてデジタル画像を取得する検出器110、デジタル化手段111等と、取得した前記デジタル画像の記憶、表示もしくは処理を行う画像メモリ116、入出力部118、画像生成部115、画像処理部114等とを備えた走査型電子顕微鏡に、前記記憶、表示もしくは処理されるデジタル画像の画素サイズよりも細かい間隔で放出電子信号109をサンプリングするサンプリング手段と、サンプリングされた放出電子信号109を元に画素サイズを大きくしてデジタル画像を生成する画像生成処理手段とを設ける。
【解決手段】1次電子ビーム108を試料ウェハ106に照射する電子源101、加速電極102、集束レンズ103、偏向器104、対物レンズ105等と、試料ウェハ106から発生する放出電子信号109をサンプリングしてデジタル画像を取得する検出器110、デジタル化手段111等と、取得した前記デジタル画像の記憶、表示もしくは処理を行う画像メモリ116、入出力部118、画像生成部115、画像処理部114等とを備えた走査型電子顕微鏡に、前記記憶、表示もしくは処理されるデジタル画像の画素サイズよりも細かい間隔で放出電子信号109をサンプリングするサンプリング手段と、サンプリングされた放出電子信号109を元に画素サイズを大きくしてデジタル画像を生成する画像生成処理手段とを設ける。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察対象に電子ビームを照射し、そこから発生する2次電子等を検出することで観察試料の構造などを観察する走査型電子顕微鏡及び半導体検査システムに関し、特に半導体ウェハ等に形成された微小な回路パターンやその回路パターンに発生した欠陥などを観察する検査技術に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロプロセッサやメモリ等の半導体製品を高歩留まりで生産するためには、半導体ウェハ上に形成される回路パターンが所定の形状及び寸法で作成されているかの監視、また、パターンに欠陥(付着異物やパターンの細り等)が発生していないかの観察など、その製造段階において製造状態をモニタリングし、問題がある場合には原因究明及び対策を行うことが重要である。
【0003】
従来は、これら製造管理のためには光学式の顕微鏡によるパターンの観察が行われてきたが、現在、半導体ウェハに形成されるパターン配線幅は百ナノメートル以下のオーダになっており、近年は、これらのナノオーダの微細構造を観察することが可能な走査型電子顕微鏡が回路パターンの検査目的に使われるようになっている。
【0004】
これらの走査型電子顕微鏡におけるデジタル画像取得処理は、細く絞った1次電子ビームを試料上に2次元走査しながら照射するステップと、その照射部位から発生する2次電子や反射電子等を検出するステップ、及び、その検出信号をサンプリングしてデジタル値に変換するステップからなる。これらのステップにより得られたデジタル信号を、試料上における1次電子ビームの走査位置と同じ配置になるように2次元配列上に並べることで2次元デジタル画像が作成される。
【0005】
走査型電子顕微鏡で得られるデジタル画像の画質は、それを画像表示した場合の視認性及びその画像を用いて行う検査処理の性能に影響を与えるため、取得した画像に対して画質を改善するデジタル画像処理が、表示や処理に先立って適用されるのが普通である。
【0006】
例えば、低S/N及び低コントラストな画質を改善するために、平滑化フィルタによるS/N及びコントラストの改善処理や、試料の同一箇所について複数毎のデジタル画像を取得し、それら複数毎の各画素の平均値を最終的な出力画像の画素値とするフレーム加算処理などが行われている。
【0007】
また他の方法として、例えば、特許文献1では、取得した走査型電子顕微鏡画像をデコンボリューション処理することにより、入射電子ビームのビーム径が有限である、すなわち入射ビームがある幅のエネルギ分布を持つ、ことに起因して生じた画像のぼけ成分を除去する手法が述べられている。
【特許文献1】特開2003−331769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記のような走査型電子顕微鏡の技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0009】
例えば、前記背景技術に係る画像処理方法は、所定の画素数のデジタル画像を取得し、その後に画質向上のための各種の処理を行うものである。ここで、試料から発生する1次元信号を取得する例について、背景技術と取得したデジタルデータが持つ周波数情報との関係を説明する。
【0010】
図14(a)は、試料から発生した電子線信号201を、一定のサンプリング間隔206で、すなわちサンプリングタイミング位置202で、サンプリングしている様子を示している。このサンプリング間隔206がデジタル画像における1画素のサイズを意味する。走査型電子顕微鏡においては、この間隔は、取得するデジタル画像の画素数と倍率から一意に決定される。
【0011】
図14(b)は、試料から発生される電子線信号201及びその周波数を周波数空間で模式的に表現したものである。図14(b)においては、図14(a)のサンプリング周波数が、折り返し周波数204として表現され、得られる試料から発生する電子線信号201の周波数空間での信号成分203には折り返しによるエイリアシング(折り返し)成分205が発生している。これは、通常の場合、試料から発生される電子線信号201が複雑な構造を有し、サンプリング間隔206よりも高い周波数成分を含むことに対応している。前記背景技術による画質改善処理では、サンプリング間隔206で取得した画像に対し平滑化フィルタリングその他の画質改善処理を行うことから、これは図14(b)においては、周波数領域207の範囲において信号処理を行うことを意味する。このことは、前記背景技術による画像復元処理では、周波数領域207のみに着目し208の領域を考慮せず信号処理を行うことを意味しており、その結果、十分な画質向上効果が期待できない場合があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、走査型電子顕微鏡において、撮像画像の画質を向上させる技術を提供することにある。
【0013】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0015】
すなわち、本発明による走査型電子顕微鏡は、記憶、表示もしくは処理されるデジタル画像の画素サイズよりも細かい間隔で電子線信号をサンプリングするサンプリング手段と、サンプリングされた前記電子線信号を元に画素サイズを大きくしてデジタル画像を生成する画像生成処理手段とを有するものである。
【0016】
また、本発明による半導体検査システムは、前記走査型電子顕微鏡を利用した半導体検査システムであって、前記画像生成処理手段により生成された前記デジタル画像を用いて、前記デジタル画像に撮像された半導体パターンの寸法を測定する機能を有するものである。
【0017】
また、本発明による半導体検査システムは、前記走査型電子顕微鏡を利用した半導体検査システムであって、前記画像生成処理手段により生成された前記デジタル画像を用いて、半導体ウェハ上の欠陥画像を収集もしくは分類する機能を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る走査型電子顕微鏡及び半導体検査システムによれば、画質の高いデジタル画像を取得し、保存、表示もしくは処理することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
図1は本発明の一実施の形態による走査型電子顕微鏡の構成を示す図である。
【0021】
まず、図1により、本実施の形態による走査型電子顕微鏡及びそれを用いた半導体パターンの測長用走査型電子顕微鏡(半導体検査システム)の概要を説明する。
【0022】
本実施の形態による走査型電子顕微鏡乃至半導体検査システムは、例えば、1次電子ビーム108を試料ウェハ106に照射する電子源101、加速電極102、集束レンズ103、偏向器104、対物レンズ105等と、試料ウェハ106から発生する放出電子信号109をサンプリングしてデジタル画像を取得する検出器110、デジタル化手段111等と、取得した前記デジタル画像の記憶、表示もしくは処理を行う画像メモリ116、入出力部118、画像生成部115、画像処理部114等と、全体制御部113、結果記憶部120、レシピ部117等から構成される。
【0023】
電子源101は1次電子ビーム108を発生させるものである。加速電極102は1次電子を加速するためのものである。集束レンズ103は1次電子を集束するためのものである。偏向器104は1次電子を2次元走査偏向するものである。対物レンズ105は1次電子を試料ウェハ106上に集束させるためのものである。ステージ107は試料を搭載するものである。検出器110は試料より発生した2次電子等の放出電子信号109を検出するものである。デジタル化手段111は検出された信号をデジタル化するためのものである。偏向制御部112は偏向器における偏向量等を制御するものである。これらの各部位は、バス119を通じて全体制御部113に接続されている。
【0024】
本システムには、その他、画像データを格納する画像メモリ116、画像生成処理を行う画像生成部115、取得画像を用いて試料である半導体パターンの測長を行う画像処理部114、検査条件などを格納したレシピを記憶するレシピ部117、装置に対し指示を与えるためのキーボードやマウスなどのデバイス、及び装置からのデータを出力するモニタやプリンタなどからなる入出力部118、検査結果を格納する結果記憶部120がバス119により互いに接続されている。
【0025】
次に図1及び図2により、本装置における半導体パターンの検査シーケンスを説明する。
【0026】
まず、検査前に、試料ウェハ106はステージ107に搭載されており、さらに試料ウェハ106上で実際に寸法を測長する箇所の位置情報と、撮像する際の各種の電子光学系条件(例えば、加速電圧、プローブ電流、撮像倍率)等の条件がレシピファイルに格納され、そのレシピファイルがレシピ部117に格納されているものとする。
【0027】
操作者は、入出力部118を通して、レシピ部117に登録された複数のレシピから、測定に用いるレシピを選択し、そこに格納された条件で検査を行うように全体制御部113に指示を与える(ステップS201)。
【0028】
その後、全体制御部113は、例えば、図3に示すような画像サンプリング条件設定画面401を入出力部118の画面に表示し、撮像画像の画素数や、サンプリングモード(サンプリング条件)を操作者に選択させる(ステップS202)。
【0029】
図3に示した例では、取得画像の画素数として512×512画素及び1024×1024画素の2つが選択できる例を示している。また、サンプリングモードには、”通常”と”倍密度”の2方式を選択でき、さらに倍密度においては、ずらし方向を”X”、”Y”、”斜方”、及び”XY斜方”の4種類から選択できるようになっている。
【0030】
各サンプリングモードについて、取得されるデジタル画像の画素グリッドと、デジタルサンプリングされるデータの位置を模式的に示したのが図4である。通常モードにおいては、画素グリッド501の間隔とサンプリング位置502が一致しているのに対し、”X”、”Y”、”斜方”ではそれぞれその方向に0.5画素ずれた位置でもサンプリングが行われることを示している。また、”XY斜方”の場合には、X、Y及び斜方において0.5画素ずれた箇所でデータのサンプリングが行われることになる。
【0031】
本実施の形態においては、画像サンプリング条件設定画面401から、画像サイズ512×512画素、”倍密度”の”斜方”方式が選択されたものとして以下説明を続ける。
【0032】
この場合、図5に示すように、取得すべき画像サイズで規定されるサンプリング位置で撮像した画像301と、それに対し斜め方向に0.5画素ずれた位置でサンプリングした画像302の2種類の画像を取得し、それら2種類の画像から保存、表示もしくは処理を行うための画像が形成される。
【0033】
なお、この画像サンプリング条件の選択は、本実施の形態のように検査開始後に設定するのでなく、検査開始前に設定しておくことも可能である。
【0034】
次に、全体制御部113が、レシピ部117に登録されている試料ウェハ106上の測長箇所が、撮像視野に入るようにステージ107を移動した後(ステップS203)、その箇所のデジタル画像データが取得される(ステップS204)。画像の取得処理は以下の通りである。
【0035】
まず、電子源101より放出された1次電子ビーム108は、加速電極102により加速された後、集束レンズ103で集束され、その後さらに対物レンズ105で集束され、試料ウェハ106の測定部位に照射される。その際、偏向制御部112は、レシピに登録された倍率で定まる視野範囲を1次電子が2次元走査するように、1次電子ビームの偏向範囲を制御する。
【0036】
電子ビームの照射により試料表面から発生した放出電子信号109は、検出器110により捕獲され、シンチレータ(図示せず)により光信号に変換された後、さらに、光電子倍増管(図示せず)により電気信号に変換された後、デジタル化手段111で、デジタル信号に変換される。得られたデジタル信号はデジタル画像として、画像メモリ116に格納される。
【0037】
なお、走査型電子顕微鏡においては、その試料から発生する2次電子等のショットノイズが多いため、同一箇所を1度スキャンするだけでは、十分にS/N比の高い画像を得ることができない場合が多い。そのため、通常はレシピに指定されたスキャン回数(フレーム数)だけ、1次電子ビームの走査及びデジタルデータの取得が行われ、後にそれらのデータから画像が生成される。
【0038】
本実施の形態では、事前にサンプリング条件設定画面401において、取得画像数が512×512、サンプリングモードが”倍密度”の”斜方”方式と指定されているため、例えばフレーム数が16と指定されていた場合には、画素グリッド501(図4)に対し、その中心位置でサンプリングされた512×512画素の画像が8枚、それに対し、斜め方向に0.5画素ずれた位置で撮像された512×512画素の画像が8枚取得され、これらの画像が画像メモリ116に格納される。なお、以後の説明では、便宜的に、前8枚を奇数フレーム、後8枚を偶数フレームと呼ぶことにする。
【0039】
次に、画像生成部115において、上記奇数・偶数フレーム画像から512×512画素の画像が生成される。
【0040】
図6は、この画像生成処理でのデータの流れを模式的に示している。まず、奇数フレーム及び偶数フレームそれぞれに対しフレーム加算処理が行われる(ステップS205、図6(a),(b))。これは奇数及び偶数フレームそれぞれにおいて、複数枚(本例では8枚)の画像を用いて、画像の各画素値を、複数枚画像の同一画素における画素値の平均値とする処理であり、ノイズを低減しS/Nを向上させる効果を有する。
【0041】
次に、得られた2つのフレーム画像から、画像の高密度化処理が行われる(ステップS206)。まず、本例では、2つの画像は斜めにずれた位置で検出されていることから、画素をその位置に並べた図6(c)の画像が得られる。本画像は1024×1024画素数を持つが、データが存在しない画素(白色)が存在する。そこで、その空白部分を内挿処理により埋めることにより図6(d)の画像が得られる。ここでは、空白部のピクセル値にその隣接する上下左右の諧調値の平均値を代入するものとする。
【0042】
次に、このようにして作成された1024×1024サイズの画像に対し、1次電子ビーム108のビームプロファイルにより劣化された(ぼかされた)信号を復元するデコンボリューション処理等の画像改善処理を行う(ステップS207)。画像改善処理の結果、図6(e)の画像が得られる。このように一次電子ビームのエネルギ分布を用いてデコンボリューション処理を行うことで、一次電子ビームのビーム径サイズよりも微細な構造を画像データとして復元することが可能となる。デコンボリューション処理の際は、各種の復元フィルタ(ウィーナフィルタ、最小2乗拘束フィルタ等)を用いることが可能である。劣化原因となった1次電子ビームのエネルギ分布(エネルギプロファイル)信号は、電子線シミュレーションで計算した値を用いてもよいし、何らかの方法で測定した電子ビームプロファイル信号を用いてもよい。
【0043】
なお、この画質改善処理では、上述したデコンボリューション処理以外にも、各種の画像処理手法を適用することができる。例えば、画像上のエッジを強調させるアンシャープマスキング処理の様なエッジ強調処理や、平滑化フィルタリングによるノイズ低減処理などが含まれる。
【0044】
そして、最後に、図6(e)のような画像データに対して、間引き処理等のデジタル的加工をして512×512画素の画像を作成する(ステップS208)。その結果、図6(f)のような出力画像が得られる。ここでは、1024×1024画像に対してデジタル的加工によるエイリアシングが生じないように平滑化処理を行った後、得られた画像から512×512画素サイズの画像を作成する。このようにして生成された画像は、画像メモリ116に格納される(ステップS209)。
【0045】
以上の処理が画像生成部115で行われると、画像処理部114では、全体制御部113からの指示により、生成された画像を用いて寸法測定処理(測長処理)を行う(ステップS210)。測長処理とは、画像に撮像された配線パターンや穴パターンの画像上でのサイズを計測し、そのサイズを画像撮像時の倍率で換算することで、撮像された回路パターンの寸法を算出する処理である。算出結果は、結果記憶部120に格納される。
【0046】
また、生成された画像を検査結果と共に、入出力部118に表示すれば、操作者は、検査結果を目視確認することができる。なお、本実施の形態では、間引き処理を終えた512×512画素の画像に対し測長処理を行う場合を説明したが、測長処理は間引き前の画像に対し行うことも可能である。
【0047】
上述の実施の形態では、サンプリングモードが”斜方”であり、この場合は2種のフレーム画像が互いに斜めにずれた状態でサンプリングされる。これは、偏向制御部112が、偏向器104に対し偏向信号121を、デジタル化手段111に対しサンプリングクロック122を発生することによってなされる。
【0048】
この信号を模式的に説明したのが、図7及び図8である。図7(a),(b)は、1次電子ビームを2次元走査するために、偏向制御部112から偏向器104に与えられる偏向信号(のこぎり波)121を模式的に表現したものである。偏向信号121はX及びYについての2種類があり、それぞれ1周期の時間(TxおよびTy)の間で、1次電子ビームをそれぞれX及びY方向に偏向させる。そして、その偏向信号121に同期したサンプリング信号に従って、デジタル化手段111にて、画像データのサンプリングが行われる。図8(a)はサンプリングクロックの一例であり、この例ではX方向に1回走査がされる間に512個のデータがサンプリングされる例を示している。
【0049】
ここで図7(a),(b)を”通常”モードにおけるそれぞれX及びY偏向信号とすると、”通常”モードでは、図7(c)に示すように、それらの2信号は開始時点が一致するのに対し、”斜方”モードにおいて斜方ずらし画像を取得する際には、偏向信号自身は図7(a),(b)と同一であるがそのタイミングは、図7(d)のように、Ty/1024のずれが生じる。これはY方向に0.5画素ずれた位置においてX方向の走査を行うためである。
【0050】
一方、X方向偏向信号とサンプリングクロックについては、通常モードにおける関係が図8(a)と表現されるのに対し、斜方ずれ画像の場合には、図8(b)のように表現される。これは、図8(a)のクロックに対し半周期(Tx/1024)ずらすことで、X方向に対し0.5画素ずれた位置でデータをサンプリングするためである。
【0051】
偏向制御部では、Xずらし、Yずらし等の各サンプリングモードに対して発生すべき偏向信号及びタイミング信号の周期、ずれ量などを内部パラメータとして記憶しておき、全体制御部113からの指示に従い、内部パラメータを読み出すことで各モードに一致した偏向信号及びタイミングクロックを発生する。
【0052】
以上、サンプリングモードとして倍密度の斜方ずらしモードを選択した場合を説明してきたが、他のモードを選択した場合の処理は以下のようになる。
【0053】
まず、倍密度のX及びYモードを選択した場合には、奇数フレーム及び偶数フレームでフレーム加算を行った後に画像を高密度化した画像は、それぞれ図9(a)及び図9(b)のように表現される。この場合、白色で表現されたデータに画素値を代入する内挿処理は、Xモードについては上下方向に存在する画素値の平均値を、Yモードにおいては左右方向に存在する画素値の平均値を用いることになる。その後の画質改善等は、先の例と同様に行うことが可能である。
【0054】
また、他の画像処理方法として内挿処理、画質改善処理及び間引き方法を統合した処理を行うことも考えられる。例えば、図10において、取得する画素のグリッド1301と一致した位置でサンプリングしたデータが実線○、それに対しY方向に0.5画素ずれた位置でサンプリングされたデータが点線○であるとすると、画素1302の出力画像の画素値を、実線○のデータ1303の諧調値に、点線○のデータ1304とデータ1305の平均値を加えたものとして計算することができる。この場合、各画素についてY方向の平滑化によるS/N向上と画素間引きとが同時に行われる。図10は”Y”モードにおいて取得したデータに対する処理を示しているが、同様にして”X”モード及び”斜方”モードで取得したデータに対する処理を行うことができる。
【0055】
また、倍密度の”XY斜方”モードを選択した場合には、通常モードに対して4倍のデータが得られることになる。この場合、得られた複数のフレーム画像を奇数・遇数の2種に分けるのではなく、4種に分けることになる。4種のフレームそれぞれに対しフレーム加算処理を行い、その画素値を、図6(c)に示すように配列すれば本例においては、全画素についてデータが存在する為、内挿処理を行う必要はなくなる。その後の画質改善処理は前述の例と同様に行うことができる。ただし、この”XY斜方”モードは、”X”、”Y”、”斜方”モードと比較した場合、1画素に対する電子ビーム照射量を同じにした場合には、画像取得に2倍の時間が必要となる。
【0056】
また、先に述べた、512×512画素の画像を斜方ずらしで取得する際の実施の形態においては、照射1次電子ビームの2次元走査1回について、512×512画素の画像が1枚得られるものとし、奇数回目の走査ではサンプリング位置がずれていない画像が、偶数回目の走査ではサンプリング位置が斜め方向に0.5画素ずれている画像を取得する例を示したが、この奇遇数回目というのは説明上の概念であり、実施の方法はこれに限られない。例えば16回スキャンする際に、1〜8回目のスキャンでは位置ずれがない画像を、9〜16回目のスキャンにおいては、0.5画素斜方にずれた画像を取得することも可能である。さらに、ビームをスキャンする位置とサンプリングタイミングを制御することで、1次電子ビームの2次元走査1回で、位置ずれがないフレームとずれがあるフレームを一度に取得することも可能である。
【0057】
なお、ここまで、取得すべき画像のサンプリング間隔に対し、0.5画素ずれた位置でサンプリングを行っている例を述べたが、本発明による画像形成処理は、この場合のみに限られない。例えば、512×512画素の画像を取得する場合に、X方向に対するずれを、0.0/0.25/0.5/0.75画素の4種類、Y方向に対するずれ量を0.0/0.5画素の2種類とし、X、Y方向のずれ量の全組み合わせでデータを取得すれば、2048×1024画素の画像データを取得することができる。この場合、画像生成処理において、2048×1024サイズ画像の8画素(X方向に4、Y方向に2画素)平均値を、512×512サイズ画像の1画素の値とすることで、平滑化と間引き処理を同時に実現し、最終的に512×512画素の画像を形成することが可能である。
【0058】
次に、本発明に係る走査電子顕微鏡の他の実施形態について説明する。半導体パターンの検査目的で走査電子顕微鏡を用いる場合など、非常に微小な対象を観察する際には、対象の微小な構造を解析する必要があるため、その撮像倍率を10万倍程度に高く設定する必要がある。そのような条件下では撮像視野が狭くなり、試料ステージ107の移動精度によっては、撮像部位が視野に入らなくなる場合がある。このような問題に対して従来から、(1)低倍率で視野の広い画像を取得し、その画像から観察部位が撮像されている部位を探し、(2)探索された部位を高倍率で撮像する、という2ステップのシーケンスが用いられている。
【0059】
この場合、第1ステップにおいて低倍率で撮像した画像は、試料の微細な構造を見るための画像ではないため、特に高画質の像は必要とされず、むしろ、観察部位を探索可能な程度の画質を確保する限りにおいて、より短時間で画像撮像を行うことが、処理全体のスループット向上のために要求される。このような場合には、先の実施の形態で述べた方法により、多くの画素データをサンプリングするのは望ましくない。そこで、このように撮像の条件に応じて画像サンプリング方式を切り替える機能を持つ走査電子顕微鏡が必要になる。
【0060】
そのような走査型電子顕微鏡は、本実施の形態におけるレシピ部117に、撮像条件(倍率、プローブ電流、加速電圧)とサンプリングモードの対応表を保持しておき、画像撮像のための条件を設定する際に、その内容を操作者に選択させることで実現することができる。
【0061】
例えば、図11に示すようなデータテーブルをレシピ部117に格納しておくものとする。撮像条件の設定を行う場合に、テーブルの内容を入出力部118に提示し、操作者は低倍率及び高倍率の画像撮像それぞれに対し、条件を選択し、その番号(1、2等)を指定する。例えば、ここで前述のシーケンスにおいて低倍画像の撮像条件を1番、高倍率の撮像条件を4番として選べば、低倍画像の撮像条件を、加速電圧800V、プローブ電流20pA、倍率5万倍、フレーム数8、画像の画素数を256×256、サンプリングモードを通常モードに指定したことになり、高倍画像の撮像条件を、加速電圧500V、プローブ電流8pA、倍率10万倍、フレーム数16、画像の画素数を512×512、サンプリングモードを倍密度/XY斜方モードに指定したことになる。
【0062】
また、このような撮像条件の設定はここで述べたようにテーブルから選択する方法のみならず、例えば図12に示すような表示画面を入出力部118に提示し、ユーザに設定させることも可能である。図12に示す表示画面では、低倍撮像及び高倍撮像のそれぞれに対し、加速電圧、プローブ電流、フレーム数について操作者の入力が可能であり、また、撮像倍率、画像の画素数、サンプリングモードについては表示した複数の項目の中から一つをユーザに選択させるようになっている。
【0063】
ここで述べたように、入出力部118を通して撮像の条件を設定する場合、具体的な処理の流れは図13のようになる。
【0064】
まず、処理を開始する前に図12に示すような撮像条件とサンプリング方式の対応関係が定義されているものとする。そして、測長処理の開始にあたり、操作者は、入出力部118に表示された図12のテーブルの内容を参照し、例えば、低倍撮像の条件を1番、高倍率の条件を4番に選択する(ステップS1201)。撮像条件が選択されると、全体制御部113は、低倍撮像時には通常モードの256×256画素、加速電圧800V、プローブ電流20pAで、高倍撮像時には、512×512画素の”倍密度””XY斜方”モード、加速電圧500V、プローブ電流8pAで画像を撮像する旨を認識し、偏向制御部112の内部に記憶する。
【0065】
その後、測定開始を操作者が指示すると、その測定部が視野に入るようにステージが移動された後(ステップS1202)、低倍撮像の撮像条件及びサンプリング条件でデジタルデータの取得及び画像形成が行われる(ステップS1203)。この際、偏向制御部112は所定のモードで画像取得を行うために偏向信号121とサンプリングクロック122を発生する。そして取得されたデジタルデータから画像が生成された後(ステップS1204)、画像メモリ116に画像データを格納し(ステップS1205)、画像処理部114にて生成画像を用いた測定部位の検索が行われ(ステップS1206)、次にその部位が視野の中心になるように、高倍で画像が撮像される(ステップS1207)。この場合も、偏向制御部112は、先に設定されたモード(本例では、512×512画素で倍密度/XY斜方モード)で画像取得を行うために偏向信号121とサンプリングクロック122を発生する。そして取得されたデジタルデータから画像が生成された後(ステップS1208)、画像メモリ116に画像データを格納し(ステップS1209)、画像処理部114にて、生成画像を用いて寸法測定処理が行われる(ステップS1210)。
【0066】
また、本例では、低倍率撮像と高倍率撮像とで、加速電圧及びプローブ電流も変更している。これは、走査型電子顕微鏡では、加速電圧及びプローブ電流が変化すると、得られる画像の質や試料への帯電及び試料への電子線ダメージの量が変化するため、撮像倍率に応じて適切な条件を設定した方が望ましい場合があるからである。例えば、試料への帯電が発生しやすい高加速電圧や高プローブ電流時には、照射電子量が少なくなるような条件(通常モード)で撮像するのが望ましく、本発明によれば、そのような場合にも対応することが可能となる。
【0067】
また、本発明は、走査型電子顕微鏡を用いた半導体の測長装置のみならず、例えば半導体ウェハ上の欠陥画像を自動収集し、観察・分類するためのレビューSEMにおいても適用可能である。先に述べた測長SEMでは、取得した画像からそこに撮像されたパターンの寸法を計測していたが、レビューSEMの場合は、ウェハ上の欠陥点の画像を収集し、取得した画像からそこに撮像された欠陥の特徴量(欠陥の大きさ、高さ等)の計算や、その特徴量を用いて、付着異物であるのか、あるいは隣接配線と接触を起こしている配線なのかなど、その欠陥を種別毎に分類する処理が行われる。レビューSEMにおいても、微小な欠陥を見つけるための広視野画像を撮像するステップと、欠陥の微細な構造を観察するための狭視野画像を取得するステップが必要であり、そのような場合でも測長SEMの例で述べたとおり、撮像する画像の目的に応じて、画像のサイズやサンプリング方法を変えることが出来る。
【0068】
したがって、本実施の形態による走査型電子顕微鏡及び半導体検査システムによれば、従来よりも画質の高いデジタル画像を取得し、保存、表示、もしくは処理することが可能になる。
【0069】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、半導体検査に用いられる走査型電子顕微鏡及びそれを利用した半導体検査システムなどについて適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施の形態における走査型電子顕微鏡の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態における走査型電子顕微鏡の処理フローを示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態において、サンプリングモードを指定する画面の構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態において、画素ずらしの各種バリエーションを示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態において、互いに斜め方向に0.5画素ずれた2画像を示す図である。
【図6】(a)〜(f)は、本発明の一実施の形態において、取得したデジタルデータから画像を生成する手順を示す図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の一実施の形態において、偏向制御部から出力される偏向信号の一例を示す図である。
【図8】(a),(b)は、本発明の一実施の形態において、偏向信号とサンプリングクロックとの関係を示す図である。
【図9】(a),(b)は、本発明の一実施の形態において、X及びY方向に画素ずれがあるデータから形成した画像の一例を示す図である。
【図10】本発明の一実施の形態において、画像生成処理の一形態を示す図である。
【図11】本発明の一実施の形態において、レシピに設定される撮像条件のテーブルの一例を示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態において、撮像条件を入力する画面を示す図である。
【図13】本発明の一実施の形態における走査型電子顕微鏡の処理フローを示す図である。
【図14】(a),(b)は、本発明の前提として検討した、検出電子信号のサンプリングタイミングを示す説明図である。
【符号の説明】
【0072】
101…電子源、102…加速電極、103…集束レンズ、104…偏向器、105…対物レンズ、106…試料ウェハ、107…ステージ、108…1次電子ビーム、109…放出電子信号、110…検出器、111…デジタル化手段、112…偏向制御部、113…全体制御部、114…画像処理部、115…画像生成部、116…画像メモリ、117…レシピ部、118…入出力部、119…バス、120…結果記憶部、121…偏向信号、122…サンプリングクロック、201…電子線信号、202…サンプリングタイミング位置、203…周波数空間での信号成分、204…折り返し周波数、205…エイリアシング成分、206…サンプリング間隔、207…周波数領域、209…折り返し周波数、210…サンプリング間隔、301…生成する画像と同位置でサンプリングした画像、302…0.5画素斜めにずれた位置でサンプリングした画像、401…サンプリング条件設定画面、501…画素グリッド、502…サンプリング位置、1301…グリッド、1302…画素、1303,1303,1304…データ。
【技術分野】
【0001】
本発明は、観察対象に電子ビームを照射し、そこから発生する2次電子等を検出することで観察試料の構造などを観察する走査型電子顕微鏡及び半導体検査システムに関し、特に半導体ウェハ等に形成された微小な回路パターンやその回路パターンに発生した欠陥などを観察する検査技術に適用して有効な技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
マイクロプロセッサやメモリ等の半導体製品を高歩留まりで生産するためには、半導体ウェハ上に形成される回路パターンが所定の形状及び寸法で作成されているかの監視、また、パターンに欠陥(付着異物やパターンの細り等)が発生していないかの観察など、その製造段階において製造状態をモニタリングし、問題がある場合には原因究明及び対策を行うことが重要である。
【0003】
従来は、これら製造管理のためには光学式の顕微鏡によるパターンの観察が行われてきたが、現在、半導体ウェハに形成されるパターン配線幅は百ナノメートル以下のオーダになっており、近年は、これらのナノオーダの微細構造を観察することが可能な走査型電子顕微鏡が回路パターンの検査目的に使われるようになっている。
【0004】
これらの走査型電子顕微鏡におけるデジタル画像取得処理は、細く絞った1次電子ビームを試料上に2次元走査しながら照射するステップと、その照射部位から発生する2次電子や反射電子等を検出するステップ、及び、その検出信号をサンプリングしてデジタル値に変換するステップからなる。これらのステップにより得られたデジタル信号を、試料上における1次電子ビームの走査位置と同じ配置になるように2次元配列上に並べることで2次元デジタル画像が作成される。
【0005】
走査型電子顕微鏡で得られるデジタル画像の画質は、それを画像表示した場合の視認性及びその画像を用いて行う検査処理の性能に影響を与えるため、取得した画像に対して画質を改善するデジタル画像処理が、表示や処理に先立って適用されるのが普通である。
【0006】
例えば、低S/N及び低コントラストな画質を改善するために、平滑化フィルタによるS/N及びコントラストの改善処理や、試料の同一箇所について複数毎のデジタル画像を取得し、それら複数毎の各画素の平均値を最終的な出力画像の画素値とするフレーム加算処理などが行われている。
【0007】
また他の方法として、例えば、特許文献1では、取得した走査型電子顕微鏡画像をデコンボリューション処理することにより、入射電子ビームのビーム径が有限である、すなわち入射ビームがある幅のエネルギ分布を持つ、ことに起因して生じた画像のぼけ成分を除去する手法が述べられている。
【特許文献1】特開2003−331769号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、前記のような走査型電子顕微鏡の技術について、本発明者が検討した結果、以下のようなことが明らかとなった。
【0009】
例えば、前記背景技術に係る画像処理方法は、所定の画素数のデジタル画像を取得し、その後に画質向上のための各種の処理を行うものである。ここで、試料から発生する1次元信号を取得する例について、背景技術と取得したデジタルデータが持つ周波数情報との関係を説明する。
【0010】
図14(a)は、試料から発生した電子線信号201を、一定のサンプリング間隔206で、すなわちサンプリングタイミング位置202で、サンプリングしている様子を示している。このサンプリング間隔206がデジタル画像における1画素のサイズを意味する。走査型電子顕微鏡においては、この間隔は、取得するデジタル画像の画素数と倍率から一意に決定される。
【0011】
図14(b)は、試料から発生される電子線信号201及びその周波数を周波数空間で模式的に表現したものである。図14(b)においては、図14(a)のサンプリング周波数が、折り返し周波数204として表現され、得られる試料から発生する電子線信号201の周波数空間での信号成分203には折り返しによるエイリアシング(折り返し)成分205が発生している。これは、通常の場合、試料から発生される電子線信号201が複雑な構造を有し、サンプリング間隔206よりも高い周波数成分を含むことに対応している。前記背景技術による画質改善処理では、サンプリング間隔206で取得した画像に対し平滑化フィルタリングその他の画質改善処理を行うことから、これは図14(b)においては、周波数領域207の範囲において信号処理を行うことを意味する。このことは、前記背景技術による画像復元処理では、周波数領域207のみに着目し208の領域を考慮せず信号処理を行うことを意味しており、その結果、十分な画質向上効果が期待できない場合があった。
【0012】
そこで、本発明の目的は、走査型電子顕微鏡において、撮像画像の画質を向上させる技術を提供することにある。
【0013】
本発明の前記並びにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述及び添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0015】
すなわち、本発明による走査型電子顕微鏡は、記憶、表示もしくは処理されるデジタル画像の画素サイズよりも細かい間隔で電子線信号をサンプリングするサンプリング手段と、サンプリングされた前記電子線信号を元に画素サイズを大きくしてデジタル画像を生成する画像生成処理手段とを有するものである。
【0016】
また、本発明による半導体検査システムは、前記走査型電子顕微鏡を利用した半導体検査システムであって、前記画像生成処理手段により生成された前記デジタル画像を用いて、前記デジタル画像に撮像された半導体パターンの寸法を測定する機能を有するものである。
【0017】
また、本発明による半導体検査システムは、前記走査型電子顕微鏡を利用した半導体検査システムであって、前記画像生成処理手段により生成された前記デジタル画像を用いて、半導体ウェハ上の欠陥画像を収集もしくは分類する機能を有するものである。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る走査型電子顕微鏡及び半導体検査システムによれば、画質の高いデジタル画像を取得し、保存、表示もしくは処理することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部材には原則として同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0020】
図1は本発明の一実施の形態による走査型電子顕微鏡の構成を示す図である。
【0021】
まず、図1により、本実施の形態による走査型電子顕微鏡及びそれを用いた半導体パターンの測長用走査型電子顕微鏡(半導体検査システム)の概要を説明する。
【0022】
本実施の形態による走査型電子顕微鏡乃至半導体検査システムは、例えば、1次電子ビーム108を試料ウェハ106に照射する電子源101、加速電極102、集束レンズ103、偏向器104、対物レンズ105等と、試料ウェハ106から発生する放出電子信号109をサンプリングしてデジタル画像を取得する検出器110、デジタル化手段111等と、取得した前記デジタル画像の記憶、表示もしくは処理を行う画像メモリ116、入出力部118、画像生成部115、画像処理部114等と、全体制御部113、結果記憶部120、レシピ部117等から構成される。
【0023】
電子源101は1次電子ビーム108を発生させるものである。加速電極102は1次電子を加速するためのものである。集束レンズ103は1次電子を集束するためのものである。偏向器104は1次電子を2次元走査偏向するものである。対物レンズ105は1次電子を試料ウェハ106上に集束させるためのものである。ステージ107は試料を搭載するものである。検出器110は試料より発生した2次電子等の放出電子信号109を検出するものである。デジタル化手段111は検出された信号をデジタル化するためのものである。偏向制御部112は偏向器における偏向量等を制御するものである。これらの各部位は、バス119を通じて全体制御部113に接続されている。
【0024】
本システムには、その他、画像データを格納する画像メモリ116、画像生成処理を行う画像生成部115、取得画像を用いて試料である半導体パターンの測長を行う画像処理部114、検査条件などを格納したレシピを記憶するレシピ部117、装置に対し指示を与えるためのキーボードやマウスなどのデバイス、及び装置からのデータを出力するモニタやプリンタなどからなる入出力部118、検査結果を格納する結果記憶部120がバス119により互いに接続されている。
【0025】
次に図1及び図2により、本装置における半導体パターンの検査シーケンスを説明する。
【0026】
まず、検査前に、試料ウェハ106はステージ107に搭載されており、さらに試料ウェハ106上で実際に寸法を測長する箇所の位置情報と、撮像する際の各種の電子光学系条件(例えば、加速電圧、プローブ電流、撮像倍率)等の条件がレシピファイルに格納され、そのレシピファイルがレシピ部117に格納されているものとする。
【0027】
操作者は、入出力部118を通して、レシピ部117に登録された複数のレシピから、測定に用いるレシピを選択し、そこに格納された条件で検査を行うように全体制御部113に指示を与える(ステップS201)。
【0028】
その後、全体制御部113は、例えば、図3に示すような画像サンプリング条件設定画面401を入出力部118の画面に表示し、撮像画像の画素数や、サンプリングモード(サンプリング条件)を操作者に選択させる(ステップS202)。
【0029】
図3に示した例では、取得画像の画素数として512×512画素及び1024×1024画素の2つが選択できる例を示している。また、サンプリングモードには、”通常”と”倍密度”の2方式を選択でき、さらに倍密度においては、ずらし方向を”X”、”Y”、”斜方”、及び”XY斜方”の4種類から選択できるようになっている。
【0030】
各サンプリングモードについて、取得されるデジタル画像の画素グリッドと、デジタルサンプリングされるデータの位置を模式的に示したのが図4である。通常モードにおいては、画素グリッド501の間隔とサンプリング位置502が一致しているのに対し、”X”、”Y”、”斜方”ではそれぞれその方向に0.5画素ずれた位置でもサンプリングが行われることを示している。また、”XY斜方”の場合には、X、Y及び斜方において0.5画素ずれた箇所でデータのサンプリングが行われることになる。
【0031】
本実施の形態においては、画像サンプリング条件設定画面401から、画像サイズ512×512画素、”倍密度”の”斜方”方式が選択されたものとして以下説明を続ける。
【0032】
この場合、図5に示すように、取得すべき画像サイズで規定されるサンプリング位置で撮像した画像301と、それに対し斜め方向に0.5画素ずれた位置でサンプリングした画像302の2種類の画像を取得し、それら2種類の画像から保存、表示もしくは処理を行うための画像が形成される。
【0033】
なお、この画像サンプリング条件の選択は、本実施の形態のように検査開始後に設定するのでなく、検査開始前に設定しておくことも可能である。
【0034】
次に、全体制御部113が、レシピ部117に登録されている試料ウェハ106上の測長箇所が、撮像視野に入るようにステージ107を移動した後(ステップS203)、その箇所のデジタル画像データが取得される(ステップS204)。画像の取得処理は以下の通りである。
【0035】
まず、電子源101より放出された1次電子ビーム108は、加速電極102により加速された後、集束レンズ103で集束され、その後さらに対物レンズ105で集束され、試料ウェハ106の測定部位に照射される。その際、偏向制御部112は、レシピに登録された倍率で定まる視野範囲を1次電子が2次元走査するように、1次電子ビームの偏向範囲を制御する。
【0036】
電子ビームの照射により試料表面から発生した放出電子信号109は、検出器110により捕獲され、シンチレータ(図示せず)により光信号に変換された後、さらに、光電子倍増管(図示せず)により電気信号に変換された後、デジタル化手段111で、デジタル信号に変換される。得られたデジタル信号はデジタル画像として、画像メモリ116に格納される。
【0037】
なお、走査型電子顕微鏡においては、その試料から発生する2次電子等のショットノイズが多いため、同一箇所を1度スキャンするだけでは、十分にS/N比の高い画像を得ることができない場合が多い。そのため、通常はレシピに指定されたスキャン回数(フレーム数)だけ、1次電子ビームの走査及びデジタルデータの取得が行われ、後にそれらのデータから画像が生成される。
【0038】
本実施の形態では、事前にサンプリング条件設定画面401において、取得画像数が512×512、サンプリングモードが”倍密度”の”斜方”方式と指定されているため、例えばフレーム数が16と指定されていた場合には、画素グリッド501(図4)に対し、その中心位置でサンプリングされた512×512画素の画像が8枚、それに対し、斜め方向に0.5画素ずれた位置で撮像された512×512画素の画像が8枚取得され、これらの画像が画像メモリ116に格納される。なお、以後の説明では、便宜的に、前8枚を奇数フレーム、後8枚を偶数フレームと呼ぶことにする。
【0039】
次に、画像生成部115において、上記奇数・偶数フレーム画像から512×512画素の画像が生成される。
【0040】
図6は、この画像生成処理でのデータの流れを模式的に示している。まず、奇数フレーム及び偶数フレームそれぞれに対しフレーム加算処理が行われる(ステップS205、図6(a),(b))。これは奇数及び偶数フレームそれぞれにおいて、複数枚(本例では8枚)の画像を用いて、画像の各画素値を、複数枚画像の同一画素における画素値の平均値とする処理であり、ノイズを低減しS/Nを向上させる効果を有する。
【0041】
次に、得られた2つのフレーム画像から、画像の高密度化処理が行われる(ステップS206)。まず、本例では、2つの画像は斜めにずれた位置で検出されていることから、画素をその位置に並べた図6(c)の画像が得られる。本画像は1024×1024画素数を持つが、データが存在しない画素(白色)が存在する。そこで、その空白部分を内挿処理により埋めることにより図6(d)の画像が得られる。ここでは、空白部のピクセル値にその隣接する上下左右の諧調値の平均値を代入するものとする。
【0042】
次に、このようにして作成された1024×1024サイズの画像に対し、1次電子ビーム108のビームプロファイルにより劣化された(ぼかされた)信号を復元するデコンボリューション処理等の画像改善処理を行う(ステップS207)。画像改善処理の結果、図6(e)の画像が得られる。このように一次電子ビームのエネルギ分布を用いてデコンボリューション処理を行うことで、一次電子ビームのビーム径サイズよりも微細な構造を画像データとして復元することが可能となる。デコンボリューション処理の際は、各種の復元フィルタ(ウィーナフィルタ、最小2乗拘束フィルタ等)を用いることが可能である。劣化原因となった1次電子ビームのエネルギ分布(エネルギプロファイル)信号は、電子線シミュレーションで計算した値を用いてもよいし、何らかの方法で測定した電子ビームプロファイル信号を用いてもよい。
【0043】
なお、この画質改善処理では、上述したデコンボリューション処理以外にも、各種の画像処理手法を適用することができる。例えば、画像上のエッジを強調させるアンシャープマスキング処理の様なエッジ強調処理や、平滑化フィルタリングによるノイズ低減処理などが含まれる。
【0044】
そして、最後に、図6(e)のような画像データに対して、間引き処理等のデジタル的加工をして512×512画素の画像を作成する(ステップS208)。その結果、図6(f)のような出力画像が得られる。ここでは、1024×1024画像に対してデジタル的加工によるエイリアシングが生じないように平滑化処理を行った後、得られた画像から512×512画素サイズの画像を作成する。このようにして生成された画像は、画像メモリ116に格納される(ステップS209)。
【0045】
以上の処理が画像生成部115で行われると、画像処理部114では、全体制御部113からの指示により、生成された画像を用いて寸法測定処理(測長処理)を行う(ステップS210)。測長処理とは、画像に撮像された配線パターンや穴パターンの画像上でのサイズを計測し、そのサイズを画像撮像時の倍率で換算することで、撮像された回路パターンの寸法を算出する処理である。算出結果は、結果記憶部120に格納される。
【0046】
また、生成された画像を検査結果と共に、入出力部118に表示すれば、操作者は、検査結果を目視確認することができる。なお、本実施の形態では、間引き処理を終えた512×512画素の画像に対し測長処理を行う場合を説明したが、測長処理は間引き前の画像に対し行うことも可能である。
【0047】
上述の実施の形態では、サンプリングモードが”斜方”であり、この場合は2種のフレーム画像が互いに斜めにずれた状態でサンプリングされる。これは、偏向制御部112が、偏向器104に対し偏向信号121を、デジタル化手段111に対しサンプリングクロック122を発生することによってなされる。
【0048】
この信号を模式的に説明したのが、図7及び図8である。図7(a),(b)は、1次電子ビームを2次元走査するために、偏向制御部112から偏向器104に与えられる偏向信号(のこぎり波)121を模式的に表現したものである。偏向信号121はX及びYについての2種類があり、それぞれ1周期の時間(TxおよびTy)の間で、1次電子ビームをそれぞれX及びY方向に偏向させる。そして、その偏向信号121に同期したサンプリング信号に従って、デジタル化手段111にて、画像データのサンプリングが行われる。図8(a)はサンプリングクロックの一例であり、この例ではX方向に1回走査がされる間に512個のデータがサンプリングされる例を示している。
【0049】
ここで図7(a),(b)を”通常”モードにおけるそれぞれX及びY偏向信号とすると、”通常”モードでは、図7(c)に示すように、それらの2信号は開始時点が一致するのに対し、”斜方”モードにおいて斜方ずらし画像を取得する際には、偏向信号自身は図7(a),(b)と同一であるがそのタイミングは、図7(d)のように、Ty/1024のずれが生じる。これはY方向に0.5画素ずれた位置においてX方向の走査を行うためである。
【0050】
一方、X方向偏向信号とサンプリングクロックについては、通常モードにおける関係が図8(a)と表現されるのに対し、斜方ずれ画像の場合には、図8(b)のように表現される。これは、図8(a)のクロックに対し半周期(Tx/1024)ずらすことで、X方向に対し0.5画素ずれた位置でデータをサンプリングするためである。
【0051】
偏向制御部では、Xずらし、Yずらし等の各サンプリングモードに対して発生すべき偏向信号及びタイミング信号の周期、ずれ量などを内部パラメータとして記憶しておき、全体制御部113からの指示に従い、内部パラメータを読み出すことで各モードに一致した偏向信号及びタイミングクロックを発生する。
【0052】
以上、サンプリングモードとして倍密度の斜方ずらしモードを選択した場合を説明してきたが、他のモードを選択した場合の処理は以下のようになる。
【0053】
まず、倍密度のX及びYモードを選択した場合には、奇数フレーム及び偶数フレームでフレーム加算を行った後に画像を高密度化した画像は、それぞれ図9(a)及び図9(b)のように表現される。この場合、白色で表現されたデータに画素値を代入する内挿処理は、Xモードについては上下方向に存在する画素値の平均値を、Yモードにおいては左右方向に存在する画素値の平均値を用いることになる。その後の画質改善等は、先の例と同様に行うことが可能である。
【0054】
また、他の画像処理方法として内挿処理、画質改善処理及び間引き方法を統合した処理を行うことも考えられる。例えば、図10において、取得する画素のグリッド1301と一致した位置でサンプリングしたデータが実線○、それに対しY方向に0.5画素ずれた位置でサンプリングされたデータが点線○であるとすると、画素1302の出力画像の画素値を、実線○のデータ1303の諧調値に、点線○のデータ1304とデータ1305の平均値を加えたものとして計算することができる。この場合、各画素についてY方向の平滑化によるS/N向上と画素間引きとが同時に行われる。図10は”Y”モードにおいて取得したデータに対する処理を示しているが、同様にして”X”モード及び”斜方”モードで取得したデータに対する処理を行うことができる。
【0055】
また、倍密度の”XY斜方”モードを選択した場合には、通常モードに対して4倍のデータが得られることになる。この場合、得られた複数のフレーム画像を奇数・遇数の2種に分けるのではなく、4種に分けることになる。4種のフレームそれぞれに対しフレーム加算処理を行い、その画素値を、図6(c)に示すように配列すれば本例においては、全画素についてデータが存在する為、内挿処理を行う必要はなくなる。その後の画質改善処理は前述の例と同様に行うことができる。ただし、この”XY斜方”モードは、”X”、”Y”、”斜方”モードと比較した場合、1画素に対する電子ビーム照射量を同じにした場合には、画像取得に2倍の時間が必要となる。
【0056】
また、先に述べた、512×512画素の画像を斜方ずらしで取得する際の実施の形態においては、照射1次電子ビームの2次元走査1回について、512×512画素の画像が1枚得られるものとし、奇数回目の走査ではサンプリング位置がずれていない画像が、偶数回目の走査ではサンプリング位置が斜め方向に0.5画素ずれている画像を取得する例を示したが、この奇遇数回目というのは説明上の概念であり、実施の方法はこれに限られない。例えば16回スキャンする際に、1〜8回目のスキャンでは位置ずれがない画像を、9〜16回目のスキャンにおいては、0.5画素斜方にずれた画像を取得することも可能である。さらに、ビームをスキャンする位置とサンプリングタイミングを制御することで、1次電子ビームの2次元走査1回で、位置ずれがないフレームとずれがあるフレームを一度に取得することも可能である。
【0057】
なお、ここまで、取得すべき画像のサンプリング間隔に対し、0.5画素ずれた位置でサンプリングを行っている例を述べたが、本発明による画像形成処理は、この場合のみに限られない。例えば、512×512画素の画像を取得する場合に、X方向に対するずれを、0.0/0.25/0.5/0.75画素の4種類、Y方向に対するずれ量を0.0/0.5画素の2種類とし、X、Y方向のずれ量の全組み合わせでデータを取得すれば、2048×1024画素の画像データを取得することができる。この場合、画像生成処理において、2048×1024サイズ画像の8画素(X方向に4、Y方向に2画素)平均値を、512×512サイズ画像の1画素の値とすることで、平滑化と間引き処理を同時に実現し、最終的に512×512画素の画像を形成することが可能である。
【0058】
次に、本発明に係る走査電子顕微鏡の他の実施形態について説明する。半導体パターンの検査目的で走査電子顕微鏡を用いる場合など、非常に微小な対象を観察する際には、対象の微小な構造を解析する必要があるため、その撮像倍率を10万倍程度に高く設定する必要がある。そのような条件下では撮像視野が狭くなり、試料ステージ107の移動精度によっては、撮像部位が視野に入らなくなる場合がある。このような問題に対して従来から、(1)低倍率で視野の広い画像を取得し、その画像から観察部位が撮像されている部位を探し、(2)探索された部位を高倍率で撮像する、という2ステップのシーケンスが用いられている。
【0059】
この場合、第1ステップにおいて低倍率で撮像した画像は、試料の微細な構造を見るための画像ではないため、特に高画質の像は必要とされず、むしろ、観察部位を探索可能な程度の画質を確保する限りにおいて、より短時間で画像撮像を行うことが、処理全体のスループット向上のために要求される。このような場合には、先の実施の形態で述べた方法により、多くの画素データをサンプリングするのは望ましくない。そこで、このように撮像の条件に応じて画像サンプリング方式を切り替える機能を持つ走査電子顕微鏡が必要になる。
【0060】
そのような走査型電子顕微鏡は、本実施の形態におけるレシピ部117に、撮像条件(倍率、プローブ電流、加速電圧)とサンプリングモードの対応表を保持しておき、画像撮像のための条件を設定する際に、その内容を操作者に選択させることで実現することができる。
【0061】
例えば、図11に示すようなデータテーブルをレシピ部117に格納しておくものとする。撮像条件の設定を行う場合に、テーブルの内容を入出力部118に提示し、操作者は低倍率及び高倍率の画像撮像それぞれに対し、条件を選択し、その番号(1、2等)を指定する。例えば、ここで前述のシーケンスにおいて低倍画像の撮像条件を1番、高倍率の撮像条件を4番として選べば、低倍画像の撮像条件を、加速電圧800V、プローブ電流20pA、倍率5万倍、フレーム数8、画像の画素数を256×256、サンプリングモードを通常モードに指定したことになり、高倍画像の撮像条件を、加速電圧500V、プローブ電流8pA、倍率10万倍、フレーム数16、画像の画素数を512×512、サンプリングモードを倍密度/XY斜方モードに指定したことになる。
【0062】
また、このような撮像条件の設定はここで述べたようにテーブルから選択する方法のみならず、例えば図12に示すような表示画面を入出力部118に提示し、ユーザに設定させることも可能である。図12に示す表示画面では、低倍撮像及び高倍撮像のそれぞれに対し、加速電圧、プローブ電流、フレーム数について操作者の入力が可能であり、また、撮像倍率、画像の画素数、サンプリングモードについては表示した複数の項目の中から一つをユーザに選択させるようになっている。
【0063】
ここで述べたように、入出力部118を通して撮像の条件を設定する場合、具体的な処理の流れは図13のようになる。
【0064】
まず、処理を開始する前に図12に示すような撮像条件とサンプリング方式の対応関係が定義されているものとする。そして、測長処理の開始にあたり、操作者は、入出力部118に表示された図12のテーブルの内容を参照し、例えば、低倍撮像の条件を1番、高倍率の条件を4番に選択する(ステップS1201)。撮像条件が選択されると、全体制御部113は、低倍撮像時には通常モードの256×256画素、加速電圧800V、プローブ電流20pAで、高倍撮像時には、512×512画素の”倍密度””XY斜方”モード、加速電圧500V、プローブ電流8pAで画像を撮像する旨を認識し、偏向制御部112の内部に記憶する。
【0065】
その後、測定開始を操作者が指示すると、その測定部が視野に入るようにステージが移動された後(ステップS1202)、低倍撮像の撮像条件及びサンプリング条件でデジタルデータの取得及び画像形成が行われる(ステップS1203)。この際、偏向制御部112は所定のモードで画像取得を行うために偏向信号121とサンプリングクロック122を発生する。そして取得されたデジタルデータから画像が生成された後(ステップS1204)、画像メモリ116に画像データを格納し(ステップS1205)、画像処理部114にて生成画像を用いた測定部位の検索が行われ(ステップS1206)、次にその部位が視野の中心になるように、高倍で画像が撮像される(ステップS1207)。この場合も、偏向制御部112は、先に設定されたモード(本例では、512×512画素で倍密度/XY斜方モード)で画像取得を行うために偏向信号121とサンプリングクロック122を発生する。そして取得されたデジタルデータから画像が生成された後(ステップS1208)、画像メモリ116に画像データを格納し(ステップS1209)、画像処理部114にて、生成画像を用いて寸法測定処理が行われる(ステップS1210)。
【0066】
また、本例では、低倍率撮像と高倍率撮像とで、加速電圧及びプローブ電流も変更している。これは、走査型電子顕微鏡では、加速電圧及びプローブ電流が変化すると、得られる画像の質や試料への帯電及び試料への電子線ダメージの量が変化するため、撮像倍率に応じて適切な条件を設定した方が望ましい場合があるからである。例えば、試料への帯電が発生しやすい高加速電圧や高プローブ電流時には、照射電子量が少なくなるような条件(通常モード)で撮像するのが望ましく、本発明によれば、そのような場合にも対応することが可能となる。
【0067】
また、本発明は、走査型電子顕微鏡を用いた半導体の測長装置のみならず、例えば半導体ウェハ上の欠陥画像を自動収集し、観察・分類するためのレビューSEMにおいても適用可能である。先に述べた測長SEMでは、取得した画像からそこに撮像されたパターンの寸法を計測していたが、レビューSEMの場合は、ウェハ上の欠陥点の画像を収集し、取得した画像からそこに撮像された欠陥の特徴量(欠陥の大きさ、高さ等)の計算や、その特徴量を用いて、付着異物であるのか、あるいは隣接配線と接触を起こしている配線なのかなど、その欠陥を種別毎に分類する処理が行われる。レビューSEMにおいても、微小な欠陥を見つけるための広視野画像を撮像するステップと、欠陥の微細な構造を観察するための狭視野画像を取得するステップが必要であり、そのような場合でも測長SEMの例で述べたとおり、撮像する画像の目的に応じて、画像のサイズやサンプリング方法を変えることが出来る。
【0068】
したがって、本実施の形態による走査型電子顕微鏡及び半導体検査システムによれば、従来よりも画質の高いデジタル画像を取得し、保存、表示、もしくは処理することが可能になる。
【0069】
以上、本発明者によってなされた発明をその実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、半導体検査に用いられる走査型電子顕微鏡及びそれを利用した半導体検査システムなどについて適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】本発明の一実施の形態における走査型電子顕微鏡の構成を示す図である。
【図2】本発明の一実施の形態における走査型電子顕微鏡の処理フローを示す図である。
【図3】本発明の一実施の形態において、サンプリングモードを指定する画面の構成の一例を示す図である。
【図4】本発明の一実施の形態において、画素ずらしの各種バリエーションを示す図である。
【図5】本発明の一実施の形態において、互いに斜め方向に0.5画素ずれた2画像を示す図である。
【図6】(a)〜(f)は、本発明の一実施の形態において、取得したデジタルデータから画像を生成する手順を示す図である。
【図7】(a)〜(d)は、本発明の一実施の形態において、偏向制御部から出力される偏向信号の一例を示す図である。
【図8】(a),(b)は、本発明の一実施の形態において、偏向信号とサンプリングクロックとの関係を示す図である。
【図9】(a),(b)は、本発明の一実施の形態において、X及びY方向に画素ずれがあるデータから形成した画像の一例を示す図である。
【図10】本発明の一実施の形態において、画像生成処理の一形態を示す図である。
【図11】本発明の一実施の形態において、レシピに設定される撮像条件のテーブルの一例を示す図である。
【図12】本発明の一実施の形態において、撮像条件を入力する画面を示す図である。
【図13】本発明の一実施の形態における走査型電子顕微鏡の処理フローを示す図である。
【図14】(a),(b)は、本発明の前提として検討した、検出電子信号のサンプリングタイミングを示す説明図である。
【符号の説明】
【0072】
101…電子源、102…加速電極、103…集束レンズ、104…偏向器、105…対物レンズ、106…試料ウェハ、107…ステージ、108…1次電子ビーム、109…放出電子信号、110…検出器、111…デジタル化手段、112…偏向制御部、113…全体制御部、114…画像処理部、115…画像生成部、116…画像メモリ、117…レシピ部、118…入出力部、119…バス、120…結果記憶部、121…偏向信号、122…サンプリングクロック、201…電子線信号、202…サンプリングタイミング位置、203…周波数空間での信号成分、204…折り返し周波数、205…エイリアシング成分、206…サンプリング間隔、207…周波数領域、209…折り返し周波数、210…サンプリング間隔、301…生成する画像と同位置でサンプリングした画像、302…0.5画素斜めにずれた位置でサンプリングした画像、401…サンプリング条件設定画面、501…画素グリッド、502…サンプリング位置、1301…グリッド、1302…画素、1303,1303,1304…データ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子ビームを試料に照射する手段と、
前記試料から発生する電子線信号をサンプリングしてデジタル画像を取得する手段と、
取得した前記デジタル画像の記憶、表示、処理のいずれか1以上を行う手段とを有する走査型電子顕微鏡であって、
前記記憶、表示もしくは処理されるデジタル画像の画素サイズよりも細かい間隔で前記電子線信号をサンプリングするサンプリング手段と、
サンプリングされた前記電子線信号を元に画素サイズを大きくしてデジタル画像を生成する画像生成処理手段とを有することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1記載の走査型電子顕微鏡において、
前記サンプリング手段におけるサンプリングは、前記記憶、表示もしくは処理されるデジタル画像の画素間隔に対し、前記画素間隔より小さい所定量だけ、前記デジタル画像の縦、横もしくは斜め方向にずれた箇所で行われることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1又は2記載の走査型電子顕微鏡において、
前記画像生成処理手段は、デコンボリューション処理を行う機能を含むことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の走査型電子顕微鏡において、
前記画像生成処理手段は、画像間引き処理を行う機能を含むことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の走査型電子顕微鏡において、
撮像時の加速電圧、プローブ電流、撮像倍率のいずれか1以上の条件に応じて、前記記憶、表示もしくは処理される前記デジタル画像の画素サイズ、又は前記サンプリング手段におけるサンプリング条件を変更する機能を有することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の走査型電子顕微鏡を用いた半導体検査システムであって、
前記画像生成処理手段により生成された前記デジタル画像を用いて、前記デジタル画像に撮像された半導体パターンの寸法を測定する機能を有することを特徴とする半導体検査システム。
【請求項7】
請求項6記載の半導体検査システムであって、
検査パターンを探索するために画像を撮像するステップと、検査パターンを計測するために画像を撮像するステップとの間において、取得する前記デジタル画像の画素サイズ、又は前記サンプリング手段におけるサンプリング条件を変更する機能を有することを特徴とする半導体検査システム。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の走査型電子顕微鏡を用いた半導体検査システムであって、
前記画像生成処理手段により生成された前記デジタル画像を用いて、半導体ウェハ上の欠陥画像を収集もしくは分類する機能を有することを特徴とする半導体検査システム。
【請求項9】
請求項8記載の半導体検査システムであって、
欠陥パターンを探索するために画像を撮像するステップと、欠陥パターンを計測するために画像を撮像するステップとの間において、取得する前記デジタル画像の画素サイズ、又は前記サンプリング手段におけるサンプリング条件を変更する機能を有することを特徴とする半導体検査システム。
【請求項1】
電子ビームを試料に照射する手段と、
前記試料から発生する電子線信号をサンプリングしてデジタル画像を取得する手段と、
取得した前記デジタル画像の記憶、表示、処理のいずれか1以上を行う手段とを有する走査型電子顕微鏡であって、
前記記憶、表示もしくは処理されるデジタル画像の画素サイズよりも細かい間隔で前記電子線信号をサンプリングするサンプリング手段と、
サンプリングされた前記電子線信号を元に画素サイズを大きくしてデジタル画像を生成する画像生成処理手段とを有することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1記載の走査型電子顕微鏡において、
前記サンプリング手段におけるサンプリングは、前記記憶、表示もしくは処理されるデジタル画像の画素間隔に対し、前記画素間隔より小さい所定量だけ、前記デジタル画像の縦、横もしくは斜め方向にずれた箇所で行われることを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1又は2記載の走査型電子顕微鏡において、
前記画像生成処理手段は、デコンボリューション処理を行う機能を含むことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の走査型電子顕微鏡において、
前記画像生成処理手段は、画像間引き処理を行う機能を含むことを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載の走査型電子顕微鏡において、
撮像時の加速電圧、プローブ電流、撮像倍率のいずれか1以上の条件に応じて、前記記憶、表示もしくは処理される前記デジタル画像の画素サイズ、又は前記サンプリング手段におけるサンプリング条件を変更する機能を有することを特徴とする走査型電子顕微鏡。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の走査型電子顕微鏡を用いた半導体検査システムであって、
前記画像生成処理手段により生成された前記デジタル画像を用いて、前記デジタル画像に撮像された半導体パターンの寸法を測定する機能を有することを特徴とする半導体検査システム。
【請求項7】
請求項6記載の半導体検査システムであって、
検査パターンを探索するために画像を撮像するステップと、検査パターンを計測するために画像を撮像するステップとの間において、取得する前記デジタル画像の画素サイズ、又は前記サンプリング手段におけるサンプリング条件を変更する機能を有することを特徴とする半導体検査システム。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の走査型電子顕微鏡を用いた半導体検査システムであって、
前記画像生成処理手段により生成された前記デジタル画像を用いて、半導体ウェハ上の欠陥画像を収集もしくは分類する機能を有することを特徴とする半導体検査システム。
【請求項9】
請求項8記載の半導体検査システムであって、
欠陥パターンを探索するために画像を撮像するステップと、欠陥パターンを計測するために画像を撮像するステップとの間において、取得する前記デジタル画像の画素サイズ、又は前記サンプリング手段におけるサンプリング条件を変更する機能を有することを特徴とする半導体検査システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図6】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図8】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図6】
【図9】
【公開番号】特開2006−139965(P2006−139965A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326924(P2004−326924)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]