説明

走査型X線撮像装置

【課題】 縦横の倍率が異なる被検体像の撮像ができ、また、X線管の負荷効率が小さく、しかも撮影画像の歪みが少ない走査型X線撮像装置を提供する。
【解決手段】 X線管5を回転アーム4に対して、或いは回転アーム4をスライド部3dに対して適宜スライドさせ、直動ステージモータ7によりラインセンサ6を介して回転アーム4を回転駆動してX線撮像を行えば、回転中心cとX線焦点xが一致する場合、縦横等倍率のX線像が得られ、回転中心cよりX線焦点xがラインセンサ6側にある場合は、X線像の横方向倍率が変更され、回転中心cがX線焦点xよりラインセンサ6側にある場合は、X線像の縦方向倍率が変更される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、X線を検出する検出素子を1次元状に配設したラインセンサを移動させることで被検体の透過像を得る走査型の走査型X線撮像装置に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、胸部用の放射線撮像装置として、直接フィルムに透過X線を照射することでX線像を得る方式に代わり、半導体センサにより透過X線を電気信号に変換することでX線像を得る方式が開発されている。
【0003】かかる方式の一つとして、個々のX線検出素子を1次元のアレイ状に配列したラインセンサを備え、このラインセンサを所定の回転中心回りに回転移動させることで、被検体の体軸方向に走査し、その2次元画像の撮像を行う走査型の走査型X線撮像装置がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の走査型の走査型X線撮像装置では、図2a−s(側面図),同a−u(平面図)に示されるように、ラインセンサの回転中心cとX線管の焦点xが一致しているため、縦横の倍率が等しい被検体像しか撮像できなかった。
【0005】一方、X線管と被検体との距離が近いほどX線の照射効率が高まり一回当たりのX線管の負荷が小さくなるため好ましいが、X線管と被検体との距離を接近させると被検体の体厚により、背中側と腹側の投影倍率が大きく異なることとなって、撮影画像が歪み、病変部の判定に支障を来すことも考えられる。
【0006】本発明は、これらの課題を解決するために創案されたものであって、縦横の倍率が異なる被検体像の撮像ができ、また、X線管の負荷効率が小さくしかも撮影画像の歪みが少ない走査型X線撮像装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため、本発明は、X線管と、これに対向して配設されたラインセンサを有し、前記ラインセンサを移動させることで被検体の透過像を得る走査型X線撮像装置において、前記X線管を前記ラインセンサとの対向線上に設定した所定回転中心の回りに回転移動させると共に、前記X線管の回転移動に合わせて前記ラインセンサが前記X線管と前記回転中心とを結ぶ線上に位置するよう前記ラインセンサを移動させる駆動手段を備えたことを特徴とする。
【0008】前記駆動手段は、前記ラインセンサを被検体の撮像面に沿って直線移動させることを特徴とする。
【0009】また、本発明は、X線管と、これに対向して配設されたラインセンサを有し、前記ラインセンサを移動させることで被検体の透過像を得る走査型X線撮像装置において、所定の回転軸回りに回転可能に配設された回転アームと、前記回転アームに沿って移動可能に配設されたX線管と、前記X線管と対向した状態で前記回転アームに沿ってスライド可能に保持されたラインセンサと、前記ラインセンサを被検体の撮像面に沿って直線移動させるセンサ駆動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0010】前記回転アームは、基台に配設された支持アームにスライド可能であってかつ回転可能に配設されていることを特徴とする。
【0011】前記回転アームは、前記支持アームの長手方向にスライド可能に配設されたスライド部にスライド可能であって回転可能に配設されていることを特徴とする。前記支持アームは、前記基台に対して、上下動可能に配設されていることを特徴とする。
【0012】前記駆動手段を、直動ステージモータにより構成したことを特徴とする。
【0013】前記スライド部は、前記支持アーム側及び前記回転アームに対して直動ベアリングを介して配設されていると共に、回転用ベアリングを介して前記回転アームを回転可能に保持することを特徴とする。
【0014】前記X線管はX線管支持棒に取り付けられており、このX線管支持棒は直動ベアリングを介して前記回転アームにスライド可能に配設されていることを特徴とする。
【0015】また、上記走査型X線撮像装置において、得られた画像の横方向及び縦方向を任意に拡大或いは縮小する画像拡大縮小手段を備えたことを特徴とする。
【0016】また、前記所定回転軸、前記X線管、及び前記ラインセンサの順となるよう前記X線管を配設すると共に、前記画像拡大縮小手段は、前記X線管の回転移動及び前記ラインセンサの移動により得られた画像の縦方向と横方向の拡大或いは縮小率が等しくなるよう、当該画像の横方向及び縦方向の拡大或いは縮小を行うことを特徴とする。
【0017】
【発明の実施の形態】本発明の実施形態を、図1及び図2R>2に基づいて説明する。ここで、図1は、本発明にかかる走査型X線撮像装置の一実施例を示しており、図1aはその平面図を、また、図1bはその側面図を示している。
【0018】同図において、ベース板1に上下動機構2が配設されており、さらに、上下動機構2には支持アーム3が上下動可能に配設されている。
【0019】支持アーム3には、直動ベアリング3a、3c、及び回動ベアリング3bからなるスライド部3dを介して回転アーム4が、支持アーム3に対してスライド可能であって、回動ベアリング3bを中心として回転可能に配設されており、回動ベアリング3bの中心部がX線管5の回転中心cとなる。そして、回転アーム4を回動ベアリング3bに対してスライドさせることで、X線管5の回転半径を自由に設定することが可能となる。
【0020】回転アーム4には、直動ベアリング4aを介してX線管支持棒4dがスライド可能に配設され、X線管支持棒4dには、X線管5が固設されており、X線管5を回転アーム4に対してスライドさせることで、ラインセンサ6に対するX線焦点の位置設定が可能となる。
【0021】また、回転アーム4には、X線管5の正面に位置するようスリット5bが配設されており、X線管5から照射されたX線の上下方向に照射されたX線を遮断することで、被検体Bを透過するX線を、ラインセンサ6とX線焦点xで形成される面状X線5aとする。
【0022】さらに、回転アーム4には、直動ベアリング4b、センサ中心ベアリング4cを介してラインセンサ6を保持するセンサ筐体6aが回転アーム4に対してスライド可能に保持されており、このラインセンサ6は、センサ筐体6aと共に、センサ駆動手段である直動ステージモータ7によって、上下方向に撮像面Sに沿って直線移動される。
【0023】ラインセンサ6は、多数の半導体X線検出素子を一次元状に配設して構成されており、撮像面Sに沿って直線移動するとき回転アーム4に沿ってスライドし、これに合わせて、回転アーム4も回転中心c回りに回転駆動される。
【0024】L字状に形成された支持アーム3には、ラインセンサ6に対向して直動ステージモータ7が配設され、直動ステージモータ7は、ラインセンサ6を上下動させることで、回転アーム4と共にX線管5を回転中心c回りに一体的に回転させる。
【0025】次に、かかる構成の走査型X線撮像装置を用いて被検体Bの撮像を行う場合について説明する。図1R>1に示されるように、被検体BをX線管5とラインセンサ6間に位置させ、支持アーム3を上下動機構2により被検体Bの撮像部位に応じて上下動させ、位置調整を行った後、X線管5よりX線を発生させながら、直動ステージモータ7によって、ラインセンサ6が撮像面Sに沿って直線移動され、これに合わせて回転アーム4も回転駆動される。
【0026】この際、通常、被検体Bは縦横等倍率で撮像されるが、かかる場合、X線管5を回転アーム4に対してスライドさせ、或いは回転アーム4をスライド部3dに対してスライドさせる等することで、X線焦点xと回転中心cとを一致させる。図2aは、X線焦点xと回転中心cを一致させた状態を示した模式図であり、図2a−sは、図1bに対応した側面図を、又、図2a−uは、図1aに対応した平面図をそれぞれ示している。また、図2において、cは回転中心、xはX線焦点の位置を、Bは被検体、Sはラインセンサ6の移動面をそれぞれ示している。
【0027】ここで、被検体Bと回転中心c,X線焦点xとの距離をLXB、Sと回転中心c,X線焦点xとの距離をLXSとすると、X線像の縦横の倍率Kはいずれも、K=LXS/LXBとなる。
【0028】なお、倍率Kを変更したい場合は、X線管5及び回転アーム4を適宜スライドさせることで、撮像面Sと回転中心c,X線焦点xとの距離LXSを適宜変更すればよい。
【0029】X線撮像を行う場合、特定部位の診断等のため、X線像の縦横の倍率を個別に設定したい場合がある。
【0030】図2b−s,b−uは、X線像の横方向の倍率を変更した場合の回転中心c,X線焦点xの位置関係を示した模式図で、例えば、X線管5を回転アーム4に対してラインセンサ6側にスライドさせることで、回転中心cに対してX線焦点xをLm だけ撮像面S側に位置させた状態を示している。
【0031】同図において、横方向及び縦方向の倍率KT ,KY は、KT =LXS/LXBKY =(LXS−Lm )/(LXB−Lm )
となり、横方向倍率KY が拡大する。
【0032】図2c−s,c−uは、X線像の縦方向の倍率を変更した場合の回転中心c,X線焦点xの位置関係を示した模式図で、例えば、スライド部3dを支持アーム3及び回転アーム4に対してラインセンサ6側にスライドさせることで、X線焦点xに対して回転中心cをLm だけ撮像面S側に位置させた状態を示している。同図において、横方向及び縦方向の倍率KT ,KY は、KT =(LXS−Lm )/(LXB−Lm )
KY =LXS/LXBとなり、縦方向倍率KT が拡大する。
【0033】なお、以上の実施例では、X線管5とラインセンサ6を回転アーム4を介して一体的に回転させる構成を示したが、本発明は、X線管の回転移動に合わせてラインセンサがX線管とその回転中心とを結ぶ線上に位置するよう前記ラインセンサを移動させるよう構成してもよい。例えば、ラインセンサを上下動の直線移動させる駆動手段を設け、X線管の回転角に応じて、常にX線管とその回転中心とを結ぶ線上に位置するようかかる駆動手段をコンピュータ制御するよう構成すればよい。
【0034】図3は、本発明の他の実施例を示したブロック図であり、図1の構成において図示されていない、撮像画像メモリ11、演算制御手段10、縦方向拡大手段10a、横方向拡大手段10b、画像メモリ12、及びX線管駆動手段13が示されている。
【0035】撮像画像メモリ11は、ラインセンサ6より得られた撮像データを一時的に保存し、縦方向拡大手段10aは、撮像画像メモリ11から読み出した撮像データに対して、画像の横方向を任意に拡大或いは縮小すると共に、横方向拡大手段10bは、画像の縦方向を任意に拡大或いは縮小する。そして、これらの拡大或いは縮小率は演算制御手段10によって任意に設定される。
【0036】画像メモリ12は、撮像画像メモリ11から読み出され、縦方向拡大手段10a、横方向拡大手段10bで拡大率が変更された画像を記憶し、表示手段14は記憶された画像の表示を行う。
【0037】X線管駆動手段13は、演算制御手段10の指示に基づきX線管5を図1の4方向に沿って移動させる。
【0038】演算制御手段10は、縦方向拡大手段10a、横方向拡大手段10bに対して撮像画像の倍率設定指示を与えると共に、X線管駆動手段13に対して、X線管5の移動指示を与える。
【0039】かかる構成を備えた走査型X線撮像装置の動作例を説明すると、まず、演算制御手段10はX線管駆動手段13に対して、X線管5を図1におけるCよりラインセンサ6側へ所定量、例えば、図2bに示されるように、Lmだけ移動させるよう指示すると共に、上述したように、得られる画像の縦方向と横方向の倍率KT ,KY は、KT =LXS/LXBKY =(LXS−Lm )/(LXB−Lm )
を計算する。
【0040】そして、かかる場合、縦方向倍率KY が拡大しているため、演算制御手段10は、縦方向拡大手段10aに拡大率KT /KY を横方向拡大手段10bに拡大率1を設定する。
【0041】これにより、ラインセンサ6より得られた撮像画像は、縦横等倍の画像となり、X線管5をCより前方に移動し、X線効率を高めた場合であっても、等倍の画像が得られる。
【0042】一方、図2cに示されるように、CをLmだけラインセンサ6側に移動させる場合は、演算制御手段10は、その旨X線管駆動手段13に対して指示すると共に、上述したように、得られる画像の縦方向と横方向の倍率KT ,KYKT =(LXS−Lm )/(LXB−Lm )
KY =LXS/LXBを計算する。
【0043】かかる場合、縦方向倍率KT が拡大しているため、演算制御手段10は、縦方向拡大手段10aに拡大率1を横方向拡大手段10bに拡大率KY /KT を設定する。
【0044】これにより、ラインセンサ6より得られた撮像画像は、縦方向にのみ縦横等倍の画像となり、X線管5をCより前方に移動し、X線効率を高めた場合であっても、等倍の画像が得られる。
【0045】以上の通り、本発明によれば、少ないX線強度で同質の画像が得られるため、通常より小さい容量のX線管を用いることができると共に、X線管5を前方に移動したことによる前方被検体の体厚から生じる画像の歪みは、横方向または縦方向のいずれかのみとすることができる。
【0046】
【発明の効果】本発明によれば、X線管とラインセンサとの対向線上に設定した所定回転中心の回りにX線管を回転移動可能とし、X線管の回転移動に合わせてラインセンサがX線管と回転中心とを結ぶ線上に位置するようラインセンサを移動させるよう構成したため、縦横の倍率がそれぞれ異なるX線像を得ることができる。
【0047】また、少ないX線強度で同質の画像が得られるため、通常より小さい容量のX線管を用いることができると共に、X線管を前方に移動したことによる前方被検体の体厚から生じる画像の歪みは、横方向または縦方向のいずれかのみとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる走査型X線撮像装置の全体概略図である。
【図2】X線管の回転中心と、X線焦点との位置関係によりX線像の縦横の倍率が変わることを示す補助図である。
【図3】本発明にかかる走査型X線撮像装置のブロック図である。
【符号の説明】
1 ベース板
2 上下動機構
3 支持アーム
4 回転アーム
5 X線管
6 ラインセンサ
7 直動ステージモータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 X線管と、これに対向して配設されたラインセンサを有し、前記ラインセンサを移動させることで被検体の透過像を得る走査型X線撮像装置において、前記X線管を前記ラインセンサとの対向線上に設定した所定回転中心の回りに回転移動させると共に、前記X線管の回転移動に合わせて前記ラインセンサが前記X線管と前記回転中心とを結ぶ線上に位置するよう前記ラインセンサを移動させる駆動手段を備えたことを特徴とする走査型X線撮像装置。
【請求項2】 前記駆動手段は、前記ラインセンサを被検体の撮像面に沿って直線移動させることを特徴とする請求項1記載の走査型X線撮像装置。
【請求項3】 X線管と、これに対向して配設されたラインセンサを有し、前記ラインセンサを移動させることで被検体の透過像を得る走査型X線撮像装置において、所定の回転軸回りに回転可能に配設された回転アームと、前記回転アームに沿って移動可能に配設されたX線管と、前記X線管と対向した状態で前記回転アームに沿ってスライド可能に保持されたラインセンサと、前記ラインセンサを被検体の撮像面に沿って直線移動させるセンサ駆動手段と、を備えたことを特徴とする走査型X線撮像装置。
【請求項4】 請求項1に記載した走査型X線撮像装置において、得られた画像の横方向及び縦方向を任意に拡大或いは縮小する画像拡大縮小手段を備えたことを特徴とする走査型X線撮像装置。
【請求項5】 請求項4に記載した走査型X線撮像装置において、前記所定回転軸、前記X線管、及び前記ラインセンサの順で位置するよう前記X線管を配設すると共に、前記画像拡大縮小手段は、前記X線管の回転移動及び前記ラインセンサの移動により得られた画像の縦方向と横方向の拡大或いは縮小率が等しくなるよう、当該画像の横方向及び縦方向の拡大或いは縮小を行うことを特徴とする走査型X線撮像装置。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【公開番号】特開平10−5204
【公開日】平成10年(1998)1月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平8−207471
【出願日】平成8年(1996)8月6日
【出願人】(000001993)株式会社島津製作所 (3,708)