走査照射装置のステージ位置合わせ方法
【課題】粒子線又はエネルギー線等の照射精度が向上し、位置あわせも容易になる走査照射装置のステージ位置合わせ方法を提供すること。
【解決手段】ターゲットをステージに置くと共に、粒子線又はエネルギー線を走査状に当該ターゲットに照射する走査照射装置のステージ位置合わせ方法であって、前記ステージの端に平行線を描き、前記位置合わせするもう片方にも同じ幅の平行線を描いておき、前記粒子線やエネルギー線を平行線状に照射してモアレ縞を出し、前記モアレ縞が一致することで前記位置あわせを行うことを特徴とする走査照射装置のステージ位置合わせ方法。
【解決手段】ターゲットをステージに置くと共に、粒子線又はエネルギー線を走査状に当該ターゲットに照射する走査照射装置のステージ位置合わせ方法であって、前記ステージの端に平行線を描き、前記位置合わせするもう片方にも同じ幅の平行線を描いておき、前記粒子線やエネルギー線を平行線状に照射してモアレ縞を出し、前記モアレ縞が一致することで前記位置あわせを行うことを特徴とする走査照射装置のステージ位置合わせ方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査照射装置のステージ位置合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照射線の走査精度を検定する方法として、従来より以下のものが知られていた。
走査型電子顕微鏡の倍率の検定には「倍率標準試料」という、一定の大きさあるいはピッチを持った、倍率の基準となる試料を用いる。メッシュ、ラテックス球、などがあるが、最近ではリソグラフィー技術を応用した数百nm〜数十μmピッチのパターンが使われるようになっている。検定するためにはある倍率でこの標準試料を観察し基準物の長さを測定し倍率を補正、またこの観察により像のゆがみや縦横比の違いにより走査位置や幅の精度を調査していた。
【0003】
特許公報2535787においては、自然界に存在する原子分子を用いてプローブの高さの情報を輝度の情報に変えて、モアレ縞を観察させ、走査型プローブ顕微鏡の直線性の校正に用いていることが記述されている。自然物を用いるために自然界に存在する領域の格子しか用いることができず、そのため校正する領域が限られていた。また、この方法では、走査線間隔の分布が緩やかに変化した場合は検知が難しかった。
【0004】
モアレ縞を利用して変形量を求める手法をモアレ法と呼び、特に光学的モアレ法は昔から周知されている手法であり、二つの格子(モデル格子とマスター格子)を重ね合わせ、重なり合った部分と重なり合わない部分とでできる濃淡の縞(モアレ縞)より変形量を求める方法である。さらに発明者らによって電子線モアレ法(1875579)も開発された。電子線モアレ法においては、モデル格子を試料とは二次電子発生量が異なる物質を用いて作製し、マスター格子の代わりに格子状に照射される電子線を用い、電子線をモデル格子上に照射したときに生成する二次電子や反射電子量の違いによりモアレ縞を生成する方法である。従来の光学的モアレ法に比べ微小な領域での変形量計測が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2535787号公報
【特許文献2】特許第1875579号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://www.jeol.co.jp/cgi-bin/searchDB.pl?query=Φ&searchWhat=semTerms
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、走査照射装置の走査精度を検定する方法は、倍率の基準となる試料を用い、標準試料を装置を用いて観察し、基準物の長さを測定し倍率を補正、像のゆがみや縦横の比の違いにより走査位置や幅の精度を調査していたため、調整と観察を繰り返すために時間を要し、また軽度の狂いの場合は見逃す可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、わずかな間隔の違いを拡大して表現するモアレ法を、特に微細は領域での測定を得意とする電子線モアレ法を用い、容易に走査照射装置の走査精度を検定する方法の開発を試みた。ここでは広範囲における倍率を検定できるよう、特許公報2535787に示す様な自然に存在するグリッドではなく、基準となるグリッドを校正すべき装置の能力に見合うグリッドを正確に(高精度で)作製し、これを用いてモアレ縞を発生させ、このモアレ縞の形状より、走査幅の不均一や不正確さを検定校正する。
【0009】
つまり、本走査精度検定方法は、検定試料として、グリッドを形成する材料と基板とが粒子線又はエネルギー線に対する透過性又は反射特性又は電子やイオンの発生特性が異なるようにして、前記基板にグリッドが形成された基準板に対して、平行にあるいは鋭角な角度を持って前記粒子線又はエネルギー線を走査状に照射して画像を得ることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の位置あわせ方法は、図13に示すように、平行格子群のずれも拡大して表示できるので、ビームを走査する装置内でのステージの位置合わせなどにも用いることができる。ステージの端に平行線を描き位置合わせするもう片方にも同じ幅の平行線を描いておき、粒子線やエネルギー線を平行線状に照射してモアレ縞を出し、モアレ縞が一致すれば平行直線群がぴたりと合っていることを示すので、容易に位置あわせを行うことができる。
【0011】
本発明の位置あわせ方法を用いることにより、粒子線又はエネルギー線等の照射精度が向上し、位置あわせも容易になるため、電子部品製造分野や精密加工分野において歩留まりを向上などに多大な貢献をするものと思われる。
【発明の効果】
【0012】
本走査精度検定方法により、粒子線やエネルギー線を走査・照射する装置の走査精度検定を容易に行うことができ、今まで見過ごしてきたほどの微小な誤差も検出することができる。
本発明の位置あわせ方法は、ビームを走査する装置内でのステージの位置合わせなどにも用いることができる。モアレ縞が一致すれば平行直線群がぴたりと合っていることを示し、容易に位置あわせを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で用いるグリッドを100倍の対物レンズを用いた走査レーザー顕微鏡による観察結果を示す写真。
【図2】図1のグリッドの20倍の対物レンズを用いた走査レーザー顕微鏡によるモアレ縞の観察結果を示す写真。
【図3】光学顕微鏡用ミクロンマーカー(最小間隔10μm)を、20倍の対物レンズを用いた走査型レーザー顕微鏡による観察結果を示す写真。
【図4】モアレ縞の発生原理を示す模式図。 左図:格子の間隔が異なること(ミスマッチ)によるモアレ縞。右図:格子が平行でないこと(ミスアラインメント)によるモアレ縞をそれぞれ例示。
【図5】レーザーや光を走査する顕微鏡用のグリッドの作用を示す模式図。
【図6】電子線やイオンを走査する顕微鏡用のグリッドの作用を示す模式図。
【図7】実施例2で用いるグリッドを20倍の対物レンズを用いた走査型レーザー顕微鏡による観察結果示す写真。
【図8】図7のグリッドを5倍の対物レンズを用いた走査型レーザー顕微鏡によりモアレ縞の観察結果を示す写真。
【図9】光学顕微鏡用ミクロンマーカー観察結果を示す写真。
【図10】実施例3で用いた20μm間隔の平行グリッドの走査電子顕微鏡写真。
【図11】図10のグリッドを走査型電子顕微鏡を用いて電子線を22μm間隔で照射して観察した電子線モアレ縞を示す写真。
【図12】図10と同じ倍率で観察した走査型電子顕微鏡用倍率校正用パターンを示す写真。
【図13】平行格子群のずれによるモアレ縞生成の概念図。わずかなずれもモアレ縞の大きなずれとなって拡大して表示できる。モアレ縞が一致することは2つの平行直線群がぴたりと一致していることになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では基準となるマスターグリッドを人工的に正確に作製するため、広範囲の(ミクロンオーダーからミリオーダーまで)領域で走査幅を検定することができる。
グリッド作製に際してはフォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー、X線リソグラフィー、高精度のX−Yステージを有するレーザー加工機等を用いて作製する。校正すべき装置の能力に見合うグリッドを正確に(高精度で)作製し、これを用いてモアレ縞を発生させることにより走査幅の不均一や不正確さを検定校正する。グリッドの間隔は装置が本来有するべき走査間隔とほぼ同じか若干異なる間隔がよい。装置が本来有するべき走査間隔とほぼ同じグリッドの場合はモアレ縞が画面内に0から1本観察され、若干異なる間隔の場合は数本から十数本観察されるくらいが判断しやすい。モアレ縞の間隔が異なれば粒子線の走査間隔が異なることを意味している。
【0015】
モアレ縞の発生原理を図4に示す。モアレ縞は二つの相似形のパターンを有する図形が重なり合うことによりできる縞のことである。
図4左図に示すように、グリッドの間隔が異なることにより発生するモアレ縞をミスマッチによるモアレ縞、右図に示す2つのグリッドがある角度をもっている時に現れるモアレ縞をミスアライメントによるモアレ縞という。
【0016】
ひずみなどを測る場合は等間隔で平行な直線群や直行格子を用いる。基準となるグリッドのマスターグリッドの間隔をaとしモデルグリッド(変形するグリッド)の間隔をa’とすると、モデルグリッドのマスターグリッドに対する変化の割合(ひずみ)εは式1で表される。
(式1)
【0017】
モアレ法はノギスのバーニアのように何本かの直線を用いてひずみを求めるため、空間分解能を犠牲にし、平均的なひずみの測定精度を向上させる手法であり、走査型レーザー顕微鏡のように粒子線(光子,電子,イオンビーム)を平行線状に照射する装置の走査幅や方向を、モアレ縞の変化(間隔および角度)より求めることができる。この事象により、あらゆる粒子線やエネルギー線を規則的に走査する装置の走査幅や角度の検定に用いられる。
【0018】
本発明は粒子線やエネルギー線を試験片上に等間隔で照射する(走査する)顕微鏡類の走査幅の検定法であるのでマスターグリッドを正確に作製したグリッドを用い、走査する光や電子線をモデルグリッドとする。レーザーや光を用いる場合はマスターグリッドとしては光の反射を基板とは異なるようにしたグッリドを用い(図5)、電子線を照射する場合は二次電子発生量が基板とは異なる様に作製したグリッドを用いる(図6)。
走査型音響顕微鏡のように高周波の超音波(100MHz〜3GHz)を音響レンズなどを用いて集束し、焦点面に置いた試料を機械的に走査し、試料の部分的な超音波反射率または透過率の変化を検出し、画像としてCRT上に表示する装置の場合は超音波伝播速度が異なる弾性率や密度の異なる物質を用いて作製したマスターグリッドを用いる。
【0019】
あらかじめ正しい走査幅と同じ格子(マスターグリッド)を作製しておき、このグリッドを粒子ビームの走査幅と平行に設置して観察したときに全くモアレ縞が観察できない状態に走査幅に設定すると、これが正しい倍率の走査幅である。意識的に格子(マスターグリッド)と異なる間隔で粒子線やエネルギー線(光子,電子,イオンビーム)を平行線状に照射して、モアレ縞が等間隔の場合はほぼ等間隔で走査されているがモアレ縞間隔に違いがある場合は走査幅が等間隔ではないことを示している。
【0020】
レーザー加工機のように表示部を持たない装置で照射したあとを試料上に残せる場合は、グリッドを有する試料上に照射し、照射したあととグリッドの間に生ずるモアレ縞を用いても良い。また、格子(マスターグリッド)と粒子線やエネルギー線群との角度であるが、お互いに平行にあるいは鋭角な角度を持って走査した方がモアレ縞の間隔が広くなるので間隔や角度の相違は検知しやすい。角度は30度を超えると、モアレ縞はほとんど変化しなくなるので30度以下が好ましい。
【実施例1】
【0021】
図1は、フェムト秒レーザー照射装置を用いて作製した3μm間隔の直交格子を示す。
基板は304ステンレス鋼と炭素鋼の積層板である。格子はフェムト秒レーザー照射装置の3軸稼働ステージ上に基板を置き、レーザーと照射しながらステージを3μm間隔で平行に移動することにより作製した。レーザー光源はサイバーレーザー製IFRITを用い、その波長は780nmである。レーザーを照射するパルス幅は170フェムト秒である。このレーザーが照射された部分は高温に熱せられるため基板表面が溶発し、細かい凹凸が生じる。この凹凸により光は乱反射して暗く観察される。この図は100倍の対物レンズを用いた走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック社製 走査型レーザー顕微鏡1LM15W)による観察結果である。
【0022】
図2は、前記顕微鏡による20倍の対物レンズを用いた時のモアレ縞観察結果を示す。本顕微鏡のレーザー(ヘリウムネオンレーザー、波長633nm)は出力が弱く表面の観察のみに使用できる。図2においては、倍率、観察面積、走査線の数より、照射レーザーの間隔を算出すると、約2.2μmの間隔で平行に照射したことになる。
【0023】
図2のモアレ縞は、直線を示しているが、縞の間隔が上の方が狭く中央やや下の方が大きい。さらに下方へ行くとまた狭くなっている。このことは、本来は等間隔であるはずの走査間隔は中央部が上部下部に比べて広く、上部および下部の方が中央部に比べて狭くなっていることがわかる。これは、レーザーを照射する角度を変えるためのガルバノミラーが正常に作動していないためである。
【0024】
比較のため、10μm間隔の直線をひいた光学顕微鏡用のマイクロマーカを同じ走査レーザー顕微鏡を用い20倍の対物レンズで観察した(図3)が、著しい間隔の変化は見られなかった。このようにモアレ縞の変化を用いると直接マーカーを観察するよりも、はるかに敏感に間隔の違いを検出することができる。
【0025】
基板上に格子を作成する方法としては表1に示すように他に電子線リソグラフィーやフォトリソグラフィーを用い、蒸着やエッチングによって作製する手法、イオン研磨によって溝を作成する方法、走査型プローブ顕微鏡やX-Yステージを用いて試料を引っかいて作製する方法、イオンアシストガスデポジションによってイオンビームが照射された所に金属を蒸着して作成する方法がある。
【0026】
【表1】
【実施例2】
【0027】
基板は304ステンレス鋼と炭素鋼の積層板である。格子はフェムト秒レーザー照射装置の3軸稼働ステージ上に基板を置き、レーザーと照射しながらステージを10μm間隔でx方向とy方向に平行に移動することにより作製した。レーザー光源はサイバーレーザー製IFRITを用い、その波長は780nmである。レーザーを照射するパルス幅は170フェムト秒である。このレーザーが照射された部分は高温に熱せられ基板表面が溶発し、細かい凹凸が生じる。この凹凸により光は乱反射して暗く観察される。
【0028】
作製した直交格子を図7に示す。この格子に走査レーザー顕微鏡(レーザーテック社製 走査型レーザー顕微鏡1LM15W)を用い、5倍の対物レンズを用いて、さらに若干走査線間隔を調節してモアレ縞を観察した結果を図8に示す。倍率、観察面積、走査線の数取り算出すると約9μmの間隔で平行に照射したことになる。モアレ縞は直線を示しているが、縞の間隔が上の方が狭く下の方が大きい。このことは、本来は等間隔でならない走査間隔が写真上の方が狭く、下の方が広いことを示している。この現象はレーザーを照射する角度を変えるためのガルバノミラーが正常に作動していないためである。
【0029】
比較のため、10μm間隔の直線をひいた光学顕微鏡用のマイクロマーカーを同じ走査レーザー顕微鏡を用い5倍の対物レンズで観察した(図9)が、著しい間隔の変化は見られなかった。このようにモアレ縞の変化を用いると直接マーカーを観察するよりも、はるかに敏感に走査するレーザー光の間隔の違いを検出することができる。
【実施例3】
【0030】
図10は、フェムト秒レーザー照射装置を用いて作製した20μm間隔の平行格子を走査型電子顕微鏡で観察した結果である。基板は304ステンレス鋼と炭素鋼の積層板を用いた。格子はフェムト秒レーザー照射装置の3軸稼働ステージ上に基板を置き、レーザーを照射しながらステージを20μm間隔で平行に移動することにより作製した。レーザー光源はサイバーレーザー製IFRITを用い、その波長は780nmである。レーザーを照射するパルス幅は170フェムト秒である。このレーザーが照射された部分は高温に熱せられ基板表面が溶発し、細かい凹凸が生じる。この凹凸により2次電子発生量増大し、明るく観察される。
【0031】
図11はこの格子に走査型電子顕微鏡を用い、電子線を約22μm間隔で格子に平行に照射して観察した電子線モアレ縞である。電子線モアレ縞間隔は中央部付近で狭く、両端および上下方で広くなっている。モアレ縞自体も湾曲している。このことは、本来は等間隔であるはずの電子線走査間隔が上部左右端近傍で狭く、中央付近では広いことを示している。これは、電子線を角度でコントロールしている走査型電子顕微鏡においては、低倍では角度と走査幅が一致しないために像がゆがむという現象によるためである。
【0032】
比較のため、走査型電子顕微鏡校正用パターンを用いて当倍率で観察した結果を図12に示す。本来正方形である同心正方形が写真上下の部分で線が若干湾曲しているのが観察できるが、モアレ縞ほどの著しい変化は見られなかった。このようにモアレ縞の変化を用いると直接マーカーを観察するよりも、はるかに敏感に間隔の違いを検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本走査精度検定方法は、基板上に正確に作製した格子を用いて、粒子線又はエネルギー線等の照射線を走査状にターゲットに照射する走査照射装置の走査精度検定方法である。この種の粒子線又はエネルギー線等の照射線を走査状にターゲットに照射する走査照射装置は、実施例にある走査型電子顕微鏡や走査型レーザー顕微鏡や走査型走査型音響顕微鏡等の微視的領域での観察装置の画像精度の検定を行えるばかりでなく、精密加工行う収束イオンビームやレーザー加工機、電子部品を作製するフォトマスクを作製するための電子線描画装置の描画の正確さを向上することができこの分野の発展に寄与する。
【0034】
本発明の位置あわせ方法は、これを用いることにより粒子線又はエネルギー線等の照射精度が向上し、位置あわせも容易になるため、電子部品製造分野や精密加工分野において歩留まりを向上などに多大な貢献をする。
【0035】
なお、本発明の内容を理解する助けとして、以下に各用語の一般的な意味を記載する。
ガルバノミラー
高速にレーザーを走査するために光軸を動かすためのユニット。一般的には2枚のミラーをモーターで動かし、試料上のx,y方向を走査する。その動作はコンピュータを使って電気的に制御する。
【0036】
走査型電子顕微鏡
対象とする試料を電子線で走査し、反射電子や二次電子を検出器で検出してその強度をブラウン管上に映像として表示し、対象物の拡大像などを得る装置。反射法(SEM)が表面形状、組織の観察に広く用いられている。分解能は2〜3mm程度。透過電子像を観察する方式を走査透過電子顕微鏡(STEM)という。
【0037】
走査プローブ顕微鏡
電圧をかけることにより、非常に小さな変形を起こす圧電体で、XYZ方向に移動可能なステージを構成し、非常に小さなプローブを走査してデータを取り込み、画像化することを原理とする顕微鏡でSPMと呼ばれている。現在では非常に多くの種類のものが考案されている。たとえば、すでに市販されているものでは、STM(走査トンネル顕微鏡)、AFM(原子間力顕微鏡)以外に表面の摩擦力を測るLMFFM(Lateral Force Modulation Friction Force Microscope)、表面の粘弾性を測るVE−AFM(Visco-elasticity Atomic Force Microscope)、表面の電位分布を測るKFM(Kelvin Force Microscope)などがある。また、SPMの大きな特徴としては、真空中から水溶液中にいたるまで、非常に広い環境中で使用できることと、観察だけでなく種々の加工ができることが挙げられる。このようにSPMは非常に多目的に使用できるのが特徴である。
【0038】
走査型音響顕微鏡 (超音波顕微鏡)
高周波の超音波(100MHz〜3GHz)を音響レンズなどを用いて集束し、焦点面に置いた試料を機械的に走査し、試料の部分的な超音波反射率または透過率の変化を検出し、画像としてCRT上に表示する装置。金属、セラミックスなどの組織や微小欠陥の観察に用いる。
=SAM
走査型レーザー顕微鏡
レーザー光を平行線状に走査させて反射光の輝度をブラウン管上に写し出して観察する顕微鏡
【0039】
倍率標準試料
走査型電子顕微鏡の倍率や性能を確認するためには倍率標準試料(一定の大きさあるいはピッチを持った、倍率の基準となる試料。倍率精度を上げるためには大きさの基準となる試料を使って一定条件で計測する必要がある。メッシュ、ラテックス球、などがあるが、最近ではリソグラフィー技術を応用した数百nmピッチのパターンが使われるようになり、ISOのトレーサビリティーを満足するものもある。)を用いる。
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査照射装置のステージ位置合わせ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
照射線の走査精度を検定する方法として、従来より以下のものが知られていた。
走査型電子顕微鏡の倍率の検定には「倍率標準試料」という、一定の大きさあるいはピッチを持った、倍率の基準となる試料を用いる。メッシュ、ラテックス球、などがあるが、最近ではリソグラフィー技術を応用した数百nm〜数十μmピッチのパターンが使われるようになっている。検定するためにはある倍率でこの標準試料を観察し基準物の長さを測定し倍率を補正、またこの観察により像のゆがみや縦横比の違いにより走査位置や幅の精度を調査していた。
【0003】
特許公報2535787においては、自然界に存在する原子分子を用いてプローブの高さの情報を輝度の情報に変えて、モアレ縞を観察させ、走査型プローブ顕微鏡の直線性の校正に用いていることが記述されている。自然物を用いるために自然界に存在する領域の格子しか用いることができず、そのため校正する領域が限られていた。また、この方法では、走査線間隔の分布が緩やかに変化した場合は検知が難しかった。
【0004】
モアレ縞を利用して変形量を求める手法をモアレ法と呼び、特に光学的モアレ法は昔から周知されている手法であり、二つの格子(モデル格子とマスター格子)を重ね合わせ、重なり合った部分と重なり合わない部分とでできる濃淡の縞(モアレ縞)より変形量を求める方法である。さらに発明者らによって電子線モアレ法(1875579)も開発された。電子線モアレ法においては、モデル格子を試料とは二次電子発生量が異なる物質を用いて作製し、マスター格子の代わりに格子状に照射される電子線を用い、電子線をモデル格子上に照射したときに生成する二次電子や反射電子量の違いによりモアレ縞を生成する方法である。従来の光学的モアレ法に比べ微小な領域での変形量計測が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2535787号公報
【特許文献2】特許第1875579号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】http://www.jeol.co.jp/cgi-bin/searchDB.pl?query=Φ&searchWhat=semTerms
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、走査照射装置の走査精度を検定する方法は、倍率の基準となる試料を用い、標準試料を装置を用いて観察し、基準物の長さを測定し倍率を補正、像のゆがみや縦横の比の違いにより走査位置や幅の精度を調査していたため、調整と観察を繰り返すために時間を要し、また軽度の狂いの場合は見逃す可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、わずかな間隔の違いを拡大して表現するモアレ法を、特に微細は領域での測定を得意とする電子線モアレ法を用い、容易に走査照射装置の走査精度を検定する方法の開発を試みた。ここでは広範囲における倍率を検定できるよう、特許公報2535787に示す様な自然に存在するグリッドではなく、基準となるグリッドを校正すべき装置の能力に見合うグリッドを正確に(高精度で)作製し、これを用いてモアレ縞を発生させ、このモアレ縞の形状より、走査幅の不均一や不正確さを検定校正する。
【0009】
つまり、本走査精度検定方法は、検定試料として、グリッドを形成する材料と基板とが粒子線又はエネルギー線に対する透過性又は反射特性又は電子やイオンの発生特性が異なるようにして、前記基板にグリッドが形成された基準板に対して、平行にあるいは鋭角な角度を持って前記粒子線又はエネルギー線を走査状に照射して画像を得ることを特徴とする。
【0010】
また、本発明の位置あわせ方法は、図13に示すように、平行格子群のずれも拡大して表示できるので、ビームを走査する装置内でのステージの位置合わせなどにも用いることができる。ステージの端に平行線を描き位置合わせするもう片方にも同じ幅の平行線を描いておき、粒子線やエネルギー線を平行線状に照射してモアレ縞を出し、モアレ縞が一致すれば平行直線群がぴたりと合っていることを示すので、容易に位置あわせを行うことができる。
【0011】
本発明の位置あわせ方法を用いることにより、粒子線又はエネルギー線等の照射精度が向上し、位置あわせも容易になるため、電子部品製造分野や精密加工分野において歩留まりを向上などに多大な貢献をするものと思われる。
【発明の効果】
【0012】
本走査精度検定方法により、粒子線やエネルギー線を走査・照射する装置の走査精度検定を容易に行うことができ、今まで見過ごしてきたほどの微小な誤差も検出することができる。
本発明の位置あわせ方法は、ビームを走査する装置内でのステージの位置合わせなどにも用いることができる。モアレ縞が一致すれば平行直線群がぴたりと合っていることを示し、容易に位置あわせを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1で用いるグリッドを100倍の対物レンズを用いた走査レーザー顕微鏡による観察結果を示す写真。
【図2】図1のグリッドの20倍の対物レンズを用いた走査レーザー顕微鏡によるモアレ縞の観察結果を示す写真。
【図3】光学顕微鏡用ミクロンマーカー(最小間隔10μm)を、20倍の対物レンズを用いた走査型レーザー顕微鏡による観察結果を示す写真。
【図4】モアレ縞の発生原理を示す模式図。 左図:格子の間隔が異なること(ミスマッチ)によるモアレ縞。右図:格子が平行でないこと(ミスアラインメント)によるモアレ縞をそれぞれ例示。
【図5】レーザーや光を走査する顕微鏡用のグリッドの作用を示す模式図。
【図6】電子線やイオンを走査する顕微鏡用のグリッドの作用を示す模式図。
【図7】実施例2で用いるグリッドを20倍の対物レンズを用いた走査型レーザー顕微鏡による観察結果示す写真。
【図8】図7のグリッドを5倍の対物レンズを用いた走査型レーザー顕微鏡によりモアレ縞の観察結果を示す写真。
【図9】光学顕微鏡用ミクロンマーカー観察結果を示す写真。
【図10】実施例3で用いた20μm間隔の平行グリッドの走査電子顕微鏡写真。
【図11】図10のグリッドを走査型電子顕微鏡を用いて電子線を22μm間隔で照射して観察した電子線モアレ縞を示す写真。
【図12】図10と同じ倍率で観察した走査型電子顕微鏡用倍率校正用パターンを示す写真。
【図13】平行格子群のずれによるモアレ縞生成の概念図。わずかなずれもモアレ縞の大きなずれとなって拡大して表示できる。モアレ縞が一致することは2つの平行直線群がぴたりと一致していることになる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明では基準となるマスターグリッドを人工的に正確に作製するため、広範囲の(ミクロンオーダーからミリオーダーまで)領域で走査幅を検定することができる。
グリッド作製に際してはフォトリソグラフィー、電子線リソグラフィー、X線リソグラフィー、高精度のX−Yステージを有するレーザー加工機等を用いて作製する。校正すべき装置の能力に見合うグリッドを正確に(高精度で)作製し、これを用いてモアレ縞を発生させることにより走査幅の不均一や不正確さを検定校正する。グリッドの間隔は装置が本来有するべき走査間隔とほぼ同じか若干異なる間隔がよい。装置が本来有するべき走査間隔とほぼ同じグリッドの場合はモアレ縞が画面内に0から1本観察され、若干異なる間隔の場合は数本から十数本観察されるくらいが判断しやすい。モアレ縞の間隔が異なれば粒子線の走査間隔が異なることを意味している。
【0015】
モアレ縞の発生原理を図4に示す。モアレ縞は二つの相似形のパターンを有する図形が重なり合うことによりできる縞のことである。
図4左図に示すように、グリッドの間隔が異なることにより発生するモアレ縞をミスマッチによるモアレ縞、右図に示す2つのグリッドがある角度をもっている時に現れるモアレ縞をミスアライメントによるモアレ縞という。
【0016】
ひずみなどを測る場合は等間隔で平行な直線群や直行格子を用いる。基準となるグリッドのマスターグリッドの間隔をaとしモデルグリッド(変形するグリッド)の間隔をa’とすると、モデルグリッドのマスターグリッドに対する変化の割合(ひずみ)εは式1で表される。
(式1)
【0017】
モアレ法はノギスのバーニアのように何本かの直線を用いてひずみを求めるため、空間分解能を犠牲にし、平均的なひずみの測定精度を向上させる手法であり、走査型レーザー顕微鏡のように粒子線(光子,電子,イオンビーム)を平行線状に照射する装置の走査幅や方向を、モアレ縞の変化(間隔および角度)より求めることができる。この事象により、あらゆる粒子線やエネルギー線を規則的に走査する装置の走査幅や角度の検定に用いられる。
【0018】
本発明は粒子線やエネルギー線を試験片上に等間隔で照射する(走査する)顕微鏡類の走査幅の検定法であるのでマスターグリッドを正確に作製したグリッドを用い、走査する光や電子線をモデルグリッドとする。レーザーや光を用いる場合はマスターグリッドとしては光の反射を基板とは異なるようにしたグッリドを用い(図5)、電子線を照射する場合は二次電子発生量が基板とは異なる様に作製したグリッドを用いる(図6)。
走査型音響顕微鏡のように高周波の超音波(100MHz〜3GHz)を音響レンズなどを用いて集束し、焦点面に置いた試料を機械的に走査し、試料の部分的な超音波反射率または透過率の変化を検出し、画像としてCRT上に表示する装置の場合は超音波伝播速度が異なる弾性率や密度の異なる物質を用いて作製したマスターグリッドを用いる。
【0019】
あらかじめ正しい走査幅と同じ格子(マスターグリッド)を作製しておき、このグリッドを粒子ビームの走査幅と平行に設置して観察したときに全くモアレ縞が観察できない状態に走査幅に設定すると、これが正しい倍率の走査幅である。意識的に格子(マスターグリッド)と異なる間隔で粒子線やエネルギー線(光子,電子,イオンビーム)を平行線状に照射して、モアレ縞が等間隔の場合はほぼ等間隔で走査されているがモアレ縞間隔に違いがある場合は走査幅が等間隔ではないことを示している。
【0020】
レーザー加工機のように表示部を持たない装置で照射したあとを試料上に残せる場合は、グリッドを有する試料上に照射し、照射したあととグリッドの間に生ずるモアレ縞を用いても良い。また、格子(マスターグリッド)と粒子線やエネルギー線群との角度であるが、お互いに平行にあるいは鋭角な角度を持って走査した方がモアレ縞の間隔が広くなるので間隔や角度の相違は検知しやすい。角度は30度を超えると、モアレ縞はほとんど変化しなくなるので30度以下が好ましい。
【実施例1】
【0021】
図1は、フェムト秒レーザー照射装置を用いて作製した3μm間隔の直交格子を示す。
基板は304ステンレス鋼と炭素鋼の積層板である。格子はフェムト秒レーザー照射装置の3軸稼働ステージ上に基板を置き、レーザーと照射しながらステージを3μm間隔で平行に移動することにより作製した。レーザー光源はサイバーレーザー製IFRITを用い、その波長は780nmである。レーザーを照射するパルス幅は170フェムト秒である。このレーザーが照射された部分は高温に熱せられるため基板表面が溶発し、細かい凹凸が生じる。この凹凸により光は乱反射して暗く観察される。この図は100倍の対物レンズを用いた走査型レーザー顕微鏡(レーザーテック社製 走査型レーザー顕微鏡1LM15W)による観察結果である。
【0022】
図2は、前記顕微鏡による20倍の対物レンズを用いた時のモアレ縞観察結果を示す。本顕微鏡のレーザー(ヘリウムネオンレーザー、波長633nm)は出力が弱く表面の観察のみに使用できる。図2においては、倍率、観察面積、走査線の数より、照射レーザーの間隔を算出すると、約2.2μmの間隔で平行に照射したことになる。
【0023】
図2のモアレ縞は、直線を示しているが、縞の間隔が上の方が狭く中央やや下の方が大きい。さらに下方へ行くとまた狭くなっている。このことは、本来は等間隔であるはずの走査間隔は中央部が上部下部に比べて広く、上部および下部の方が中央部に比べて狭くなっていることがわかる。これは、レーザーを照射する角度を変えるためのガルバノミラーが正常に作動していないためである。
【0024】
比較のため、10μm間隔の直線をひいた光学顕微鏡用のマイクロマーカを同じ走査レーザー顕微鏡を用い20倍の対物レンズで観察した(図3)が、著しい間隔の変化は見られなかった。このようにモアレ縞の変化を用いると直接マーカーを観察するよりも、はるかに敏感に間隔の違いを検出することができる。
【0025】
基板上に格子を作成する方法としては表1に示すように他に電子線リソグラフィーやフォトリソグラフィーを用い、蒸着やエッチングによって作製する手法、イオン研磨によって溝を作成する方法、走査型プローブ顕微鏡やX-Yステージを用いて試料を引っかいて作製する方法、イオンアシストガスデポジションによってイオンビームが照射された所に金属を蒸着して作成する方法がある。
【0026】
【表1】
【実施例2】
【0027】
基板は304ステンレス鋼と炭素鋼の積層板である。格子はフェムト秒レーザー照射装置の3軸稼働ステージ上に基板を置き、レーザーと照射しながらステージを10μm間隔でx方向とy方向に平行に移動することにより作製した。レーザー光源はサイバーレーザー製IFRITを用い、その波長は780nmである。レーザーを照射するパルス幅は170フェムト秒である。このレーザーが照射された部分は高温に熱せられ基板表面が溶発し、細かい凹凸が生じる。この凹凸により光は乱反射して暗く観察される。
【0028】
作製した直交格子を図7に示す。この格子に走査レーザー顕微鏡(レーザーテック社製 走査型レーザー顕微鏡1LM15W)を用い、5倍の対物レンズを用いて、さらに若干走査線間隔を調節してモアレ縞を観察した結果を図8に示す。倍率、観察面積、走査線の数取り算出すると約9μmの間隔で平行に照射したことになる。モアレ縞は直線を示しているが、縞の間隔が上の方が狭く下の方が大きい。このことは、本来は等間隔でならない走査間隔が写真上の方が狭く、下の方が広いことを示している。この現象はレーザーを照射する角度を変えるためのガルバノミラーが正常に作動していないためである。
【0029】
比較のため、10μm間隔の直線をひいた光学顕微鏡用のマイクロマーカーを同じ走査レーザー顕微鏡を用い5倍の対物レンズで観察した(図9)が、著しい間隔の変化は見られなかった。このようにモアレ縞の変化を用いると直接マーカーを観察するよりも、はるかに敏感に走査するレーザー光の間隔の違いを検出することができる。
【実施例3】
【0030】
図10は、フェムト秒レーザー照射装置を用いて作製した20μm間隔の平行格子を走査型電子顕微鏡で観察した結果である。基板は304ステンレス鋼と炭素鋼の積層板を用いた。格子はフェムト秒レーザー照射装置の3軸稼働ステージ上に基板を置き、レーザーを照射しながらステージを20μm間隔で平行に移動することにより作製した。レーザー光源はサイバーレーザー製IFRITを用い、その波長は780nmである。レーザーを照射するパルス幅は170フェムト秒である。このレーザーが照射された部分は高温に熱せられ基板表面が溶発し、細かい凹凸が生じる。この凹凸により2次電子発生量増大し、明るく観察される。
【0031】
図11はこの格子に走査型電子顕微鏡を用い、電子線を約22μm間隔で格子に平行に照射して観察した電子線モアレ縞である。電子線モアレ縞間隔は中央部付近で狭く、両端および上下方で広くなっている。モアレ縞自体も湾曲している。このことは、本来は等間隔であるはずの電子線走査間隔が上部左右端近傍で狭く、中央付近では広いことを示している。これは、電子線を角度でコントロールしている走査型電子顕微鏡においては、低倍では角度と走査幅が一致しないために像がゆがむという現象によるためである。
【0032】
比較のため、走査型電子顕微鏡校正用パターンを用いて当倍率で観察した結果を図12に示す。本来正方形である同心正方形が写真上下の部分で線が若干湾曲しているのが観察できるが、モアレ縞ほどの著しい変化は見られなかった。このようにモアレ縞の変化を用いると直接マーカーを観察するよりも、はるかに敏感に間隔の違いを検出することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本走査精度検定方法は、基板上に正確に作製した格子を用いて、粒子線又はエネルギー線等の照射線を走査状にターゲットに照射する走査照射装置の走査精度検定方法である。この種の粒子線又はエネルギー線等の照射線を走査状にターゲットに照射する走査照射装置は、実施例にある走査型電子顕微鏡や走査型レーザー顕微鏡や走査型走査型音響顕微鏡等の微視的領域での観察装置の画像精度の検定を行えるばかりでなく、精密加工行う収束イオンビームやレーザー加工機、電子部品を作製するフォトマスクを作製するための電子線描画装置の描画の正確さを向上することができこの分野の発展に寄与する。
【0034】
本発明の位置あわせ方法は、これを用いることにより粒子線又はエネルギー線等の照射精度が向上し、位置あわせも容易になるため、電子部品製造分野や精密加工分野において歩留まりを向上などに多大な貢献をする。
【0035】
なお、本発明の内容を理解する助けとして、以下に各用語の一般的な意味を記載する。
ガルバノミラー
高速にレーザーを走査するために光軸を動かすためのユニット。一般的には2枚のミラーをモーターで動かし、試料上のx,y方向を走査する。その動作はコンピュータを使って電気的に制御する。
【0036】
走査型電子顕微鏡
対象とする試料を電子線で走査し、反射電子や二次電子を検出器で検出してその強度をブラウン管上に映像として表示し、対象物の拡大像などを得る装置。反射法(SEM)が表面形状、組織の観察に広く用いられている。分解能は2〜3mm程度。透過電子像を観察する方式を走査透過電子顕微鏡(STEM)という。
【0037】
走査プローブ顕微鏡
電圧をかけることにより、非常に小さな変形を起こす圧電体で、XYZ方向に移動可能なステージを構成し、非常に小さなプローブを走査してデータを取り込み、画像化することを原理とする顕微鏡でSPMと呼ばれている。現在では非常に多くの種類のものが考案されている。たとえば、すでに市販されているものでは、STM(走査トンネル顕微鏡)、AFM(原子間力顕微鏡)以外に表面の摩擦力を測るLMFFM(Lateral Force Modulation Friction Force Microscope)、表面の粘弾性を測るVE−AFM(Visco-elasticity Atomic Force Microscope)、表面の電位分布を測るKFM(Kelvin Force Microscope)などがある。また、SPMの大きな特徴としては、真空中から水溶液中にいたるまで、非常に広い環境中で使用できることと、観察だけでなく種々の加工ができることが挙げられる。このようにSPMは非常に多目的に使用できるのが特徴である。
【0038】
走査型音響顕微鏡 (超音波顕微鏡)
高周波の超音波(100MHz〜3GHz)を音響レンズなどを用いて集束し、焦点面に置いた試料を機械的に走査し、試料の部分的な超音波反射率または透過率の変化を検出し、画像としてCRT上に表示する装置。金属、セラミックスなどの組織や微小欠陥の観察に用いる。
=SAM
走査型レーザー顕微鏡
レーザー光を平行線状に走査させて反射光の輝度をブラウン管上に写し出して観察する顕微鏡
【0039】
倍率標準試料
走査型電子顕微鏡の倍率や性能を確認するためには倍率標準試料(一定の大きさあるいはピッチを持った、倍率の基準となる試料。倍率精度を上げるためには大きさの基準となる試料を使って一定条件で計測する必要がある。メッシュ、ラテックス球、などがあるが、最近ではリソグラフィー技術を応用した数百nmピッチのパターンが使われるようになり、ISOのトレーサビリティーを満足するものもある。)を用いる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットをステージに置くと共に、粒子線又はエネルギー線を走査状に当該ターゲットに照射する走査照射装置のステージ位置合わせ方法であって、
前記ステージの端に平行線を描き、前記位置合わせするもう片方にも同じ幅の平行線を描いておき、
前記粒子線やエネルギー線を平行線状に照射してモアレ縞を出し、
前記モアレ縞が一致することで前記位置あわせを行うことを特徴とする走査照射装置のステージ位置合わせ方法。
【請求項1】
ターゲットをステージに置くと共に、粒子線又はエネルギー線を走査状に当該ターゲットに照射する走査照射装置のステージ位置合わせ方法であって、
前記ステージの端に平行線を描き、前記位置合わせするもう片方にも同じ幅の平行線を描いておき、
前記粒子線やエネルギー線を平行線状に照射してモアレ縞を出し、
前記モアレ縞が一致することで前記位置あわせを行うことを特徴とする走査照射装置のステージ位置合わせ方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−215584(P2012−215584A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−153162(P2012−153162)
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2007−273050(P2007−273050)の分割
【原出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年7月9日(2012.7.9)
【分割の表示】特願2007−273050(P2007−273050)の分割
【原出願日】平成19年10月19日(2007.10.19)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】
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