説明

走査透過電子顕微鏡

【課題】本発明では、(a)走査(透過)電子顕微鏡において、0.1nm原子サイズ構造の3次元観察を可能とすること、(b)走査(透過)電子顕微鏡において、試料中の原子の3次元構造と材料の特定を可能とすることを目的とする。
【解決手段】本発明は、0.1nm原子サイズ構造の3次元観察を可能とするために、球面収差係数が小さい電子レンズシステムを有し、照射角の変更が可能な絞り、電子線プローブのプローブサイズおよび照射角度を変更することが可能な照射電子レンズ系、二次電子検出器、透過電子検出器、前方散乱電子線検出器、フォーカス可変装置、画像のコントラストを識別する画像演算装置、画像鮮鋭度を演算する画像演算装置、画像の3次元構築を行う演算装置、二次電子信号と試料前方散乱電子信号を混合するミキサー、を有する走査透過電子顕微鏡。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は走査透過電子顕微鏡に関し、特に、原子分解能を有する試料二次電子走査像と試料透過像による3次元的結像する荷電粒子装置、観察する試料が内部で異なる構造や組成を有する場合に試料内構造の可視化をする走査透過電子顕微鏡、および試料二次電子走査像と試料前方散乱電子による走査試料拡大像の混合による元素識別する走査透過電子顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
電子線を試料上で走査し試料の拡大像を得る走査電子顕微鏡や走査透過電子顕微鏡では、試料への照射一次電子線との相互作用によって二次電子、反射電子(試料後方散乱電子)、試料前方散乱電子、透過電子など様々な種類の電子が得られる。試料と検出位置の関係によって各種の電子が弁別されて検出され、それぞれの検出器において特徴ある像コントラストを得て試料の走査拡大像を形成することが可能である。
【0003】
走査透過電子顕微鏡を例として、試料像から得られる試料の3次元情報及び分解能について説明する。
【0004】
走査透過電子顕微鏡は電子線を微小なスポットに形成し試料上を走査した際に発生した試料からの二次電子、前方散乱電子や透過電子を用いて像形成するもので、サブナノメートルサイズの到達分解能に達する。
【0005】
(i−1)前方散乱電子像及び透過電子像の像分解能
試料前方散乱電子はその散乱角の取り込み角度が大きい場合には、「Zコントラスト」と呼ばれるコントラストが試料の原子番号Zの2乗に比例したコントラストを得ることができる。この像は原子核によるラザフォード散乱に起因するものであり、入射電子線のサイズと試料原子のサイズとのコンボリューションで示される。従って入射電子のスポット径に応じて像分解能が決定される。
【0006】
透過電子は、試料を透過した電子と非弾性散乱しエネルギーをわずかに失った電子から構成され、いわゆる透過電子顕微鏡と同様な像を形成する。透過電子像は振幅コントラストと位相コントラストに分離され、原子分解能の像は試料からの干渉電子線によって形成された位相コントラストによって結像する。透過電子による原子分解能の像は試料への電子線フォーカスによって形成されるコントラストが変化するために原子の位置を同定することは容易でなく、通常はシミュレーション像と対比しての解釈が必要となる。
【0007】
(i−2)前方散乱電子像及び透過電子像の3次元情報
試料前方散乱電子、および透過電子による結像は平面的な情報しか得ることができない。また、奥行き方向に厚さを持つ試料の場合には、試料を透過または前方散乱した電子による信号像のため、電子線の入射方向に対して奥行き方向に存在する構造や異なる組成からなる部分も重畳してしまう。そのため、場合によっては不要な信号が観察されてしまう問題があった。
【0008】
上記特徴を、具体例を用いて示す。数ナノメートルから数十ナノメートル直径の触媒微粒子を走査透過電子顕微鏡を用いて観察、分析を行おうとした場合には、観察対象となる触媒粒子が担体材料や他の触媒粒子が観察軸上に重畳して存在しないような視野を探すことが必要である。しかし、前方散乱電子や透過電子の検出器のみを有する電子顕微鏡では、上述したように、観察像が試料をほぼ完全に透過した像になってしまうため奥行き方向の位置を同定することができず、視野探しが困難であった。また前方散乱や透過電子による結像では2次元的、平面状の画像情報になってしまうため、原子サイズでの立体的な構造観察には向かなかった。
【0009】
図2を用いて、二次電子像と試料前方散乱電子像の焦点深度の違いを説明する。図2は、観察された2次元像における見え方の違いを模式的に示している。試料の構造が入射する一次電子線に対して垂直に配列している状態を仮定すると、二次電子像(SE像)および試料前方散乱電子像(DF−STEM像)ではそれぞれ図のような試料構造を反映した像が観察される。試料構造が数nm以下もしくは原子の配列のような場合には、照射電子線の焦点ずれ(デフォーカスΔf)を20nm程度与えた場合、二次電子像では構造を反映したコントラストがほとんど消失するのに対し、試料前方散乱電子像では強いコントラストを維持したまま観察することができる。
【0010】
つまり、透過電子や試料前方散乱電子による結像の場合には、試料奥行き方向に存在する構造からの信号はすべて投影されるため、試料の立体的な構造を把握したり、試料内部構造を明確に分離することはできない。
【0011】
(ii−1)二次電子像の像分解能
二次電子像における像分解能は、電子線プローブサイズと試料内電子拡散の二つの事象の合成による。
【0012】
電子線のプローブサイズは、いわゆるEverhartの式と呼ばれる式1で与えられる。
【0013】
【数1】

【0014】
式1で示された一次電子線のプローブサイズは、電子顕微鏡の装置的要因から与えられ、理想的には走査型電子顕微鏡の像分解能を与える。第一項は、電子レンズの球面収差(Cs)による影響で、電子線照射角αの3乗に比例する。第二項は電子レンズの色収差(Cc)による効果で、一次電子線の加速電圧Eの微小変位量δEと照射角αに依存する。第三項は開設収差、第四項は電子源の輝度βと電子線プローブ電流ipの関数に依存する。
【0015】
図8は電子線照射角と電子線プローブサイズとの関係を示す説明図である。式1で示された電子線プローブサイズと照射角の関係を図示したものである。本発明による荷電粒子装置では電子線プローブの球面収差Csを補正する収差補正器を搭載した場合は、式1の第一項をほぼ零とすることができる。走査型電子顕微鏡に球面収差補正装置を搭載した電子顕微鏡を用いることで0.1nm以下の電子線プローブを形成することが可能である。電子線プローブサイズは、第二項以降の項に従い、照射角が大きくなるにしたがって小さなプローブ径になり、最小値は照射角α0で与えられ、さらに大きな照射角になるにしたがってプローブ径が大きくなる。すなわち、得られる走査拡大像の像分解能が向上し、より小さい構造を観察することが可能になる。
【0016】
次に、試料内電子拡散について説明する。例えば、加速電圧が30kVより低く設定された汎用型の走査電子顕微鏡を用いて試料の二次電子像を得る場合、一次電子線が試料内部で多重散乱を発生し、玉ねぎ状(teardrop状)に拡がりをもつために、二次電子はその広い領域から発生し、結果的に像の分解能を低下させる。
【0017】
このように、二次電子像における像分解能は、電子線プローブサイズと試料内電子拡散の二つの事象の合成によるが、従来の二次電子像では、原子分解能は得られていなかった。
【0018】
(ii−2)二次電子像の3次元情報
3次元表面構造の観察、すなわちトポグラフィックな観察手法としては二次電子を用いた観察手法が従来から用いられてきた。従来の二次電子像では、二次電子は材料に依存するが、試料表層の2〜10nm程度の深さから放出される。放出電子はLambertの照明法則と同様なコサイン角度分布にしたがい、試料エッジ部からの信号強度が強くなる効果などにより、試料表面形態に依存したコントラストが得られることが特徴である。このように、二次電子像は試料の3次元情報を強く反映する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特開平5−299048号公報
【特許文献2】特開2006−49161号公報
【非特許文献】
【0020】
【非特許文献1】Yimei Zhu, Hiromi Inada, Kuniyasu Nakamura, and Joseph Wall, “Imaging single atoms using secondary electrons with an aberration corrected electron microscope”, Nature Materials, 8, 808-812 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
上述したように、(i)前方散乱電子像及び透過電子像と(ii)二次電子像では像分解能及び3次元情報の観点から異なる性質を持つ。
【0022】
従来、二次電子像では原子分解能を得られていなかったが、本発明者らにより、非特許文献1のように、照射電子線のサイズを小さくすることによって走査電子顕微鏡でも原子分解能の二次電子像を観察することが可能であることがわかった。これにより、原子分解能の二次電子像により走査(透過)電子顕微鏡の応用が可能となった。
【0023】
特許文献1は試料凹凸がある試料に対して、その3次元像の生成および、計測が行える電子線装置を提供するものであり、電子線フォーカス条件を変えて3次元試料情報を得るものであるが、原子を識別した3次元像を得ることはできなかった。
【0024】
特許文献2は試料の3次元構造を得るために、電子線を傾斜させて観察し、またAFMやSTMといった別の観察手法を組み合わせて立体画像を得るものであるが、原子分解能における3次元像を得ることはできなかった。
【0025】
本発明では、(a)走査(透過)電子顕微鏡において、0.1nm原子サイズ構造の3次元観察を可能とすること、(b)走査(透過)電子顕微鏡において、試料中の原子の3次元構造と材料の特定を可能とすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明は、0.1nm原子サイズ構造の3次元観察を可能とするために、球面収差係数が小さい電子レンズシステムを有し、照射角の変更が可能な絞り、電子線プローブのプローブサイズおよび照射角度を変更することが可能な照射電子レンズ系、二次電子検出器、透過電子検出器、前方散乱電子線検出器、フォーカス可変装置、画像のコントラストを識別する画像演算装置、画像鮮鋭度を演算する画像演算装置、画像の3次元構築を行う演算装置、二次電子信号と試料前方散乱電子信号を混合するミキサー、を有することを最も主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明の荷電粒子装置は、原子を識別できる二次電子を用いるため、原子サイズでの3次元的な観察を可能にする利点がある。
【0028】
また、観察対象の試料が、観察軸上奥行き方向に重畳して存在しているような視野において、試料内構造の可視化を容易にすることができる利点がある。
【0029】
また、原子を識別できる二次電子と元素依存コントラストを形成する試料前方散乱電子を用いるため、原子サイズでの表面原子の元素の違い若しくは1nm以下の物体の材質の違いを識別することを可能にできる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の荷電粒子装置の実施方法を示した説明図である。
【図2】二次電子像と試料前方散乱電子像のフォーカス変化に伴う像コントラストの変化を示した説明図である。
【図3】電子線照射角と焦点深度の関係の説明図である。
【図4】試料に対しての入射電子線と、電子線入射奥行き方向に構造を持つ試料による二次電子像の関係を示した説明図である。
【図5】テーパー構造を持つ試料と入射電子線との関係を示す説明図である。
【図6】試料上に照射される電子線のプローブサイズを変えずに電子線照射角を変えることができる光学系を有する、本発明の荷電粒子装置の実施例の一つを示した説明図である。
【図7】試料上に照射される電子線の照射角を絞りの孔径の変更により任意に変えることができる光学系を有する、本発明の荷電粒子装置の実施例の一つを示した説明図である。
【図8】電子線照射角と電子線プローブサイズとの関係を示す説明図である。
【図9】電子線照射角の変更によって試料深さ方向からの情報を自動的に最適なコントラストになるように抽出し、2次元試料拡大像を形成する本発明の実施方法を示した説明図である。
【図10】入射電子線と発生する各種信号電子およびフォーカスを変えて得られたスキャン像シリーズを示した説明図である。
【図11】フォーカスを変えて得られたスキャン像シリーズから3次元像を再構築することを示した説明図である。
【図12】入射電子線と、発生した試料前方散乱電子、二次電子と、それらの検出器の構成を示した模式図と、原子分解能の拡大倍率で観察したA元素、B元素の二種類からなる試料像の二次電子像と試料前方散乱電子像でのコントラストの違いを示した説明図である。
【図13】試料前方散乱電子の像コントラストが試料原子番号の関数になっていることを示したグラフである。
【図14】原子分解能の拡大倍率で観察したA元素、B元素の二種類からなる試料像の二次電子像と試料前方散乱電子像と、二次電子原子像を試料前方散乱電子で原子を弁別し着色した実施例を示す説明図である。
【図15】電子線照射角の変更によって試料深さ方向からの情報を自動的に最適なコントラストになるように抽出し、2次元試料拡大像を形成する本発明の実施例一つを説明するフローチャートである。
【図16】ピクセル位置、デフォーカス、画像鮮鋭度の評価結果を記録した画像鮮鋭度評価値テーブルの説明図である。
【図17】2次元デジタル化された二次電子像に対して、ピクセル毎に焦点深度ZDOFを設定することを説明するための概念図である。
【図18】ピクセル毎の最適焦点深度と照射角、収束レンズ電流を記録したテーブルを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
まず、本発明の原理について説明する。
【0032】
(a)走査(透過)電子顕微鏡において、0.1nm原子サイズ構造の3次元観察を可能とすることについて、本発明では、二次電子像において原子分解能を得ることで達成した。
【0033】
二次電子像において原子分解能を得るための原理について説明する。
【0034】
二次電子像において原子分解能を有する像が観察できる条件としては、(1)試料内での一次電子線の拡がりが小さく、試料との相互作用体積(インターラクション・ボリューム)が小さいこと、(2)対物レンズの球面収差を極めて小さくし、電子線プローブ径をサブナノメータ径に調節することが可能なこと、(3)電子線の照射角が大きく焦点深度が浅いこと、(4)プローブ電流が大きく二次電子を検出に十分な量発生させることが可能なこと、が挙げられる。
【0035】
(1)については、一次電子のエネルギー(加速電圧)が十分に高まると、試料と電子線の相互作用が小さくなる。例えば加速電圧20kV程度の電子線では、試料深さ100nmにおいて電子線は200〜300nmまで拡散するが、加速電圧200kVでは10nmに満たない。(2)から(4)については、球面収差補正器を用いて電子線プローブを縮小化することで達成することができた。このように、収差補正器を用いて、一次電子線の加速電圧を高めることにより、原子分解能を有する二次電子像を得ることが可能となった。
【0036】
(b)走査(透過)電子顕微鏡において、試料中の原子の3次元構造と材料の特定を可能とすることについて、本発明では、原子分解能を有する二次電子像と前方散乱電子像又は透過電子像の情報を組み合わせることにより可能とした。
【0037】
二次電子による試料走査拡大像は表面構造を反映したコントラストを与えるが、コントラストの原子番号依存性は少ない。上述したように、走査電子顕微鏡でも原子分解能の二次電子像を観察することが可能になったが、二次電子の原子像は原子番号依存のコントラストではないために、視野中に混在する種々の元素を同定することができなかった。図12は二次電子像と暗視野STEM像を同時に撮影した場合の元素の違いによるコントラストの違いを模式的に示したものである。そこで、原子分解能を有する二次電子像と前方散乱電子像又は透過電子像の情報を組み合わせることで、試料中の原子の3次元構造と材料を特定することが可能となった。
【0038】
以下、本発明の具体的な実施の態様を説明する。
【実施例1】
【0039】
図1は本発明の荷電粒子の実施例を示した概略図である。
【0040】
電子銃1で発生した一次電子線2は収束レンズ3で収束され絞り4を通過する。図1では簡単のために収束レンズは1段で示しているが、照射角を変更するために2段、電子銃で発生した電子源の縮小率を固定したままで照射角を変更するためには3段以上の収束レンズで構成する。絞り4では所望の試料面上での照射角を得るために任意の絞り直径に設定される。試料に照射される電子線の照射角はこの絞りの直径で決定される。なお絞り位置は収束レンズの後段に設置しているが、照射角を変化する目的であれば設置位置は問わない。
【0041】
一次電子線2の試料位置でのビーム径を0.1nm以下に絞るために、対物レンズ7の球面収差を補正するための収差補正器5を搭載している。収差補正器5は、使用する多極子レンズの組み合わせによってさまざまな構成があるが、本発明では球面収差補正器の電子線入射側に1つの電子レンズを有すれば、その構造は6極子型でも4極子−8極子複合型であっても構わない。また、式1で示された電子線プローブ径は、第1項の球面収差の項を0にすることと等価である。一般に電子レンズの球面収差の影響を受けるために、0.1nm直径の電子線プローブを形成した状態で、浅い焦点深度の電子線を形成することは困難である。このために収差補正器を使用する。また収差補正器を用いて電子レンズの球面収差を補正すると、電子線光軸から離軸した領域で、球面収差の影響を受けない一次電子線を生成することが可能となる。したがって、大きな照射角の電子線を与えることができ、ひいては焦点深度を浅くすることが可能になる。
【0042】
一次電子線2は電子線走査器6で試料上を走査する。この走査方向は走査信号発生器17で生成された電流波形に応じる。電子線走査器6の構造は磁場的、電場的のいずれでもよい。
【0043】
試料15に照射される対物レンズ7で微小に絞られた一次電子線2により二次電子14を発生させ上部二次電子検出器8または下部二次電子検出器9にて検出される。図1は上部、下部2台の二次電子検出器の例を示したが、1台でも良い。また検出器の構造は蛍光体と光電子増倍管からなる検出器でも半導体検出器でも良い。また図1には示されていないが、二次電子検出器と試料の間に電子線エネルギーを弁別するエネルギーフィルターや電磁場による二次電子と反射電子の弁別器の存在にはこだわらない。
【0044】
試料15を透過した透過電子および前方散乱電子は試料15の下方に配置した前方散乱電子検出器12と透過電子検出器13で検出される。これらの検出器で検出された各種信号電子線は各々増幅回路を経由した後、信号ミキサー18に入力され二次電子と所望の透過信号が選択される。信号ミキサー18を通過した信号は信号同期装置19にて走査信号と同期が取られ走査像が形成される。
【0045】
試料に照射される電子線のフォーカスは対物レンズ7または試料ステージを駆動する試料ステージ駆動機構10を制御するフォーカス可変装置16で調整される。二次電子の焦点深度以下のフォーカスステップで変化させた都度、試料走査拡大像が記録装置に記録される。フォーカスステップ毎の拡大像をスタックし、画像演算装置20にて3次元像に復元する。電子線照射角を絞りまたは収束レンズの強度で変化させて、試料表面構造と奥行き方向に存在する構造の二次電子信号を検出し、二次電子走査像として記録装置に記録される。
【0046】
復元された画像は画像記録装置21に記録され、また画像表示装置22で表示される。画像演算装置20によって、試料前方散乱電子のコントラストが評価され元素ごとのコントラスト閾値を決定し二次電子走査像と合成される。該合成画像は画像記録装置21に記録されるか、画像表示装置22で表示される。
【0047】
図10は入射電子線と発生する各種信号電子およびフォーカスを変えて得られたスキャン像シリーズを示した説明図である。
【0048】
0.1nm程度に細く絞られた一次電子線2は試料15に照射される。この際、照射電子線は試料15上を走査する。試料と相互作用した電子線は二次電子14を発生し、上部二次電子検出器8、下部二次電子検出器9で検出される。試料を透過した電子はその検出角度に応じて前方散乱電子28と透過電子29に区別される。電子線光軸上に沿った非弾性散乱による透過電子29は透過電子検出器13で検出され、試料で弾性散乱された前方散乱電子28は前方散乱電子検出器12で検出される。検出された信号は走査波形と同期が取られ任意のフォーカスステップで撮影された2次元的なスキャン像として一時的に記録され、例えば順番にfocus1、focus2・・・と名前付けされる。試料から発生した二次電子および前方散乱電子または透過電子は同時に検出されて記録される。
【0049】
図2は二次電子像と前方散乱電子像のフォーカス変化に伴う像コントラストの変化を示した説明図である。二次電子と前方散乱電子の焦点深度の変化を示している。二次電子による原子像のフォーカス依存性の実験結果から二次電子の焦点深度は、前方散乱電子像に比較して浅い。これは前方散乱電子のコントラストが原子カラムで強度を増すチャネリングコントラストに起因するものである。原子分解能を有する二次電子像の焦点深度が浅いと言う特性と、図10に示したデフォーカスシリーズのスキャン像の重ね合わせにより、図11に示したように3次元構造を再構築する、本発明の実施例を示す図である。原子分解能二次電子像単独で3次元像の再構築を行う。再構築方法としては、電子線CT法(コンピュータ断層撮影、Computed Tomography)を用いる。本発明の原子像観察の条件で、焦点深度が浅く、フォーカスを変えながら撮影した二次電子像は、各層の構造を反映したスライス像として得ることができるので、これを複数枚記録し、演算することで3次元像への再構築を行う。
【0050】
二次電子像単独で再構築を行った場合は、二次電子の特徴である試料表面形状を反映したコントラストと同時に試料表面近傍からの原子像を3次元的に観察することが可能である。また原子1層程度の物体の立体的な構造も観察することができる。二次電子像と同時に撮影された透過電子若しくは前方散乱電子の信号を重ね合わせた上で3次元構造を再構築した場合には、二次電子による表面構造だけでなく試料の奥行き方向に広がる結晶構造の状態を反映した3次元構造を再構成することが可能である。
【実施例2】
【0051】
次に、焦点深度を変えて2次電子像を得る実施例について説明する。
【0052】
まず、一次電子線プローブの照射角と焦点深度の関係を図3を用いて説明する。電子線プローブサイズdの照射角αの焦点深度ZDOFは式2で示される。
【0053】
【数2】

【0054】
したがって、電子線プローブサイズdを固定すると、電子線の照射角が大きくなるにしたがって焦点深度が浅くなる。焦点深度を2倍大きくするためには電子線照射角を1/2倍にすればよい。
【0055】
図4は試料に対しての入射電子線と、電子線入射奥行き方向に構造を持つ試料による二次電子像の関係を示した説明図である。例として、構造Aは試料表層部に他と異なる元素組成を有する構造、構造Bは試料内部に他と異なる元素組成を有する構造、構造Cは試料表層から内部に向かって円弧を描くような構造を用いて説明する。構造Aは奥行き方向に2nmの深さを有するものであり、構造Bは、表面から20nm程度深い位置に存在し、奥行き方向に2nmの深さを有するものとする。
【0056】
電子線の照射角を大きくし焦点深度を小さくした状態で、試料表面にフォーカスを合わせて走査した場合、表層部にある構造Aから発生した二次電子の信号を取得することができる。しかし、試料内部にある構造Bからの信号を捕らえることがほとんどできない。また、構造Cのような場合には表層近傍からの信号のみで結像されるため、二次電子像は図示したようなグラデーションがかかった像になる。
【0057】
一方、透過電子や試料前方散乱電子による結像の場合には、試料奥行き方向に存在する構造からの信号はすべて投影されるため、図4の構造A、B、Cの試料内部での位置を明確に特定することはできない。
【0058】
そこで、本実施例では、一次電子線の加速電圧を高めて一次電子線と試料との相互作用がほとんどない状態(一次電子の試料内拡散の影響を受けにくい状態)で、かつ照射角を小さくして焦点深度を大きい状態にすることで、試料表層部の構造A、試料内部の構造B、及び試料表層部から内部まで構造を有する構造Cも焦点が合った状態で観察が可能となる。
【0059】
例えば、電子線加速電圧を200kV程度の高電圧に設定すると、試料内部に電子線が入りこみ、一方で一次電子線と試料との相互作用がほとんどなく、一次電子の試料内拡散の影響を受けにくくなる。また、照射角を小さくし焦点深度を大きくすることで、構造Bのような試料内部からの信号も結像することが可能になる。
【0060】
二次電子は、その発生源に応じてSE1、SE2、SE3、SE4と呼ばれる4種類に大別することができる。SE1は一次電子線と試料の直接的な相互作用によって発生する二次電子、SE2は一次電子線で発生した試料後方散乱電子(反射電子)によって副次的に発生した二次電子、SE3は試料後方散乱電子(反射電子)が電子顕微鏡内部の部材に作用して発生した二次電子、SE4は一次電子線が電子顕微鏡内部の部材に作用して発生した二次電子を言う。後方散乱電子は弾性散乱で発生するため、入射した一次電子線のエネルギーとほぼ同じエネルギーを有する。焦点深度を深くして観測される試料内部構造の信号は、試料内を通過した後方散乱電子自身、SE2、SE3およびSE1から構成されている。試料表層部の構造の二次電子は主にSE1に起因するが、試料内部構造で発生した二次電子はSE1、SE2もしくはSE3のいずれか、またはその合成である可能性がある。ただし明確に区別することはできない。
【0061】
本実施例で得られる二次電子像では、構造A〜Cいずれも合焦点であり、かつ相互の奥行き方向の位置関係も認識可能である。ただし、構造A〜Cの構成元素の違いは得られない。
【実施例3】
【0062】
図5は、テーパー状の構造を持った試料に対して電子線を入射した場合の関係を示した図である。テーパー状の構造を持った試料を用いて、焦点深度の大きさとデフォーカス量を計測することができる。この構造のサイズとして、例えば試料最表面の長さをLtop、試料最底面の長さをLbottom、テーパー角度をθとして設計し、あらかじめ製作し準備する。このようなテーパー状構造の試料の作製としては、たとえば、単結晶ウェハ上に異なる材質をスパッタ(物理気相成長法)、CVD(化学気相成長法)、MBE(分子線エピタキシー法)などの製造手法を用いてエピタキシャル成長させ、特定部位選択的にエッチングする手法をとることができる。
【0063】
焦点深度計測は次のように行う。照射角αにおける焦点深度ZDOFとする。この条件で電子線を走査しながら二次電子像を生成する。テーパー部から信号はdimageの幅で焦点が合った二次電子像が得られるので、設計されたテーパー構造試料の寸法から焦点深度を実測することができる。図5では焦点深度ZDOFは式3にて求められる。
【0064】
【数3】

【0065】
デフォーカス量計測は次のように行う。最表面に電子線が焦点を結ぶように対物レンズ電流値を設定し、その点を正焦点位置とする。電子線を走査しながら二次電子像を生成する。このとき、構造部の寸法はほぼLtopに等しくなる。試料表面の2次元走査が完了した後に、対物レンズコイル励磁電流を変化させて二次電子像を生成し、構造部の寸法を測定し、対物レンズ電流値と構造部からの寸法を対比させることによりデフォーカス値を求めることができる。ここではデフォーカスの方法として対物レンズコイル励磁電流を変化させたが、試料ステージの高さを変化させる方法を採用しても良い。また、焦点深度が浅い状態で測定を行ったほうが、デフォーカス値を精度よく測定することができる。
【0066】
なお、観察対象と同じ組成の試料で構成した場合には、実際と近似した条件で評価することができるため、さらに焦点深度、デフォーカス量の定量評価精度を向上することができる。
【0067】
この試料を本発明の走査透過電子顕微鏡に搭載し、電子線のデフォーカスと像信号の関係と、電子線の焦点深度と観察できる像信号の関係と、それぞれまたは両方を本試料を用いて評価することができる。またさらに、この試料を用いて、対物レンズの強度または試料ステージの高さを変えて電子線のデフォーカスと、同時に観察した二次電子像の像コントラストを定量的に評価することでデフォーカス量と像コントラストの関係をあらかじめ求めることが可能な走査透過電子顕微鏡を提供することができる。また、この試料を用いて、絞りの大きさ、または集束レンズの強度を変化させることによって電子線照射角を変化させて、電子線の焦点深度を変え、同時に観察した二次電子像の像コントラストを定量的に評価することで、焦点深度と像コントラストの関係をあらかじめ求めることが可能な走査透過電子顕微鏡を提供することができる。
【0068】
像コントラストの定量的な評価は、種々考えられる。たとえば、2次元デジタル化された画像の各ピクセルの信号強度の総和で評価する方法、画像の鮮鋭度を求める方法が挙げられる。ここで画像の鮮鋭度を求める方法を示す。
【0069】
M×Nの2次元デジタル画像における画像のシャープさを与える画像鮮鋭度は次の演算によって与えられる。
【0070】
【数4】

【0071】
2次元画像の一階微分は画像ピクセルを1ピクセルずらした画像との差分で示すことができるため、次式にて与えられる。
【0072】
【数5】

【0073】
また同様に画像の二階微分は次式にて与えられる。
【0074】
【数6】

【0075】
画像鮮鋭度Gは次式で示されるxとyのそれぞれの成分の二乗平均で示される。
【0076】
【数7】

【0077】
【数8】

【0078】
【数9】

【0079】
この画像鮮鋭度の平均は
【0080】
【数10】

また分散Vおよび標準偏差σは、それぞれ次式で示される。
【0081】
【数11】

【0082】
【数12】

【0083】
2次元画像の画像鮮鋭度の標準偏差をもって、当該画像の画像のシャープさを示す指標として使用する。この画像鮮鋭度を用いて、電子線のデフォーカスまたは焦点深度の評価の指標として、適切な設定値を確定させる。
【実施例4】
【0084】
電子線のプローブサイズを変えずに電子線の照射角を変更する方法については、図6及び図7の2つの手法がある。
【0085】
図6は試料上に照射される電子線のプローブサイズを変えずに電子線照射角を変えることができる光学系を有する、本発明の荷電粒子装置の実施例の一つを示した説明図である。本構成の特徴として収差補正器の前段に収束レンズを3段有することである。この構成により、電子銃の仮想光源サイズを一定にした状態を維持して照射角を変更することが可能になる。第3収束レンズ26は収差補正器に搭載された電子レンズを用いても良い。また、収束電子レンズの励磁強度は、電磁石コイルに印加する電流値を可変することで与えられる。図6に示したその他の構成は図1で示した系統図に準ずるので、詳細な説明は割愛する。
【0086】
図7は試料上に照射される電子線の照射角を絞りの孔径の変更により任意に変えることができる光学系を有する、本発明の荷電粒子装置の実施例の一つを示した説明図である。本構成の特徴として収束レンズに挿入される絞り27は穴径を複数有していることである。この構成により、回折収差の影響を受けない条件においては、電子線プローブサイズを維持して照射角を変更することが可能になる。絞りに搭載される穴径の種類は多い方が照射角設定を多種にわたり設定することが可能になる。図7に示したその他の構成は図1で示した系統図に準ずるので、詳細な説明は割愛する。
【実施例5】
【0087】
上記の各手法を用いて、試料深さ方向からの情報を自動的に最適なコントラストになるように抽出し、2次元試料拡大像を形成する本発明の実施例を図9を用いて説明する。
【0088】
本構成の特徴は、画像演算装置20で得られた2次元走査画像の位置情報と電子線プローブの照射角の設定を信号同期装置19で関連付けして照射角を画素単位で最適値に調節することができるよう、第1〜3収束レンズ24、25、26を制御することができることである。
【0089】
本実施例では、2次元走査画像の画素単位の位置情報に対して、あらかじめ設定した画素ごとの照射角度を記録しておき、当該画素で第1〜3収束レンズを制御して照射角1、また別の画素では第1〜3収束レンズを制御して照射角2のように設定することができる。この構成は、電子線プローブを試料上を走査しながらダイナミックに照射角を変更して観察することができるため、試料の表面の原子像を高分解能で観察しながら、試料内部の構造も電子線プローブ径を維持しながら観察することを可能とする。このとき、フォーカスの位置は試料の表面位置に固定して一次電子線を走査する。一次電子のフォーカスの位置を試料内部に変えてしまうと、像の見え方が異なってくるためである。
【0090】
なお図1で示した系統図に準ずるその他の構成の詳細な説明は割愛する。
【0091】
本実施例のフローを図15に示す。
ステップS001にて荷電粒子装置の初期条件を設定する。ここでは、焦点ずれ量の初期値としてΔf=0、照射角αを初期値αini、電子線のデフォーカスステップ量をDFS、デフォーカスの終点をFFINと設定する。
【0092】
ステップS002では、S001で設定した条件に基づき、観察対象となる試料上で電子線を走査して発生した2次元の二次電子像をデジタル的に記録する。
【0093】
撮影完了後、ステップS003にてデフォーカス量をデフォーカスステップ量DFS分加える。
【0094】
ステップS004はΔfが終点量FFINに到達しているかの判定を行うステップで、Δf≠FFINであればS002からS003を繰返し実施する。ステップS004にてΔf=FFINになった場合にステップS005に進む。ステップS005では2次元二次電子デジタル像のピクセル単位毎に式6で示した2階微分値をピクセル単位の画像鮮鋭度として演算し、構造の深さDPTを求める。デフォーカス量と画像鮮鋭度Sをピクセル毎に対応させるため、図16に示したようなピクセル位置、デフォーカス、画像鮮鋭度の評価結果を記録した画像鮮鋭度評価値テーブルを準備する。
【0095】
ステップS006にて構造深さDPTと焦点深度ZDOPを対応させ、ピクセル毎の焦点深度ZDOFを設定する。
【0096】
ステップS007で、あらかじめ取得、計算した照射角αと焦点深度ZDOFとの関係をもとに、各ピクセルでの照射角αの最適値を与える。
【0097】
ステップS008で、ピクセル毎のα設定値をもとに、収束レンズの励磁電流を設定する。ステップS006からS008の設定を図17と図18で説明する。図17は2次元デジタル化された二次電子像である。ピクセル毎にステップS006にて評価されたZDOFを対応付けしていく。図18はピクセル毎の最適焦点深度と照射角、収束レンズ電流を記録したテーブルである。S007、S008で演算した数値を図18に示したテーブルに記録する。
【0098】
ステップS009では、電子線を走査し、ピクセル毎に図18のように設定された照射角αに適した収束レンズ励磁電流値を与えながら二次電子像を撮影、記録する。
【0099】
本発明の構成とフローに従って観察することで、観察対象の試料が、観察軸上奥行き方向に重畳して存在しているような視野において、試料内構造の可視化を容易にすることができ、原子分解能の二次電子像を試料最表面からだけでなく、試料内部に存在する構造も同時に1枚の画像として記録することができる。
【実施例6】
【0100】
図12は入射電子線と発生した試料前方散乱電子、二次電子とそれらの検出器の構成を示した模式図と、原子分解能の拡大倍率で観察したA元素、B元素の二種類からなる試料像の二次電子像と試料前方散乱電子像でのコントラストの違いを示した説明図である。入射した一次電子線2は試料15と相互作用して、二次電子14を発生する。試料でラザフォード散乱による弾性散乱電子は試料前方散乱電子検出器で検出される。これを試料前方散乱電子28とするが、前方電子検出器に入射する角度すなわち散乱角の取込み角度が大きい場合にはZコントラストと呼ばれる試料原子番号に依存したコントラストになる。またこのような条件で取得された像をZコントラスト像と呼ぶ。図13にZコントラスト像の試料原子番号と像コントラストの関係を示す。像コントラストは一般的に試料原子番号Zの約2乗に比例するため、異種元素が存在する場合には元素の識別が可能である。図12に示すように、試料中に元素番号が異なるA元素とB元素からなる材料を走査電子顕微鏡を用いて原子が識別できる倍率に拡大した場合、二次電子像のコントラストは元素番号によるコントラストの変化がほとんど無いためA元素、B元素の識別ができない。ここで仮定としてA元素が重い元素、B元素が軽い元素とする。また図12では図示の都合上元素を黒点で示したが、実際の試料拡大像では黒白反転している。すなわち重い元素程白く表示される。また一方、絞り4の直径の調節により照射電子線の照射角が調整でき、焦点深度が変化する。二次電子像のもう一つの特性として同じ照射角で観察した場合は試料前方散乱電子に比べて焦点深度が浅いことが挙げられる。従って、試料表層の元素または試料表層に存在する1nmオーダーの微細な構造は二次電子拡大像によってフォーカスは調節する。
【0101】
図14は原子分解能の拡大倍率で観察したA元素、B元素の二種類からなる試料像の二次電子像と試料前方散乱電子像と、二次電子原子像を試料前方散乱電子で原子を弁別し着色した本発明の実施例を示す説明図である。二次電子像と同時に取得した前方散乱電子像を信号ミキサーにて合成する。信号ミキサーは、いずれの電子像も同一の原子が見えているので、当該同一の原子を基準に相互の画像の位置調整をすることができる。
【0102】
コントラストと原子番号の対比を行うため、画像演算装置で試料中の構成元素とコントラストが一対一になるように関係づける。二次電子像に対して前方散乱電子像のコントラストを用いて着色され、元素依存の二次電子像が形成される。
【0103】
本実施例によれば、試料の3次元的な構造を把握しながら、試料中の構成元素を把握することが可能な走査透過電子顕微鏡を提供することができる。
【符号の説明】
【0104】
1 電子銃
2 一次電子線
3 収束レンズ系
4 絞り
5 収差補正器
6 電子線走査器
7 対物レンズ
8 上部二次電子検出器
9 下部二次電子検出器
10 試料ステージ駆動機構
11 投影レンズ
12 前方散乱電子検出器
13 透過電子検出器
14 二次電子
15 試料
16 フォーカス可変装置
17 走査信号発生器
18 信号ミキサー
19 信号同期装置
20 画像演算装置
21 画像記録装置
22 画像表示装置
23 テーパー構造試料
24 第1収束レンズ
25 第2収束レンズ
26 第3収束レンズ
27 絞り
28 前方散乱電子
29 透過電子
30 試料走査像フォーカスシリーズ
31 試料再構成像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対物レンズと対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器とフォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像を記録し、該フォーカス可変装置にて設定したフォーカス値で撮影した2次元試料拡大走査像とフォーカス値を連携させ、複数の2次元試料拡大走査像を重ね合わせて原子分解能の3次元構造拡大像を再構成することができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項2】
請求項1に示した走査透過電子顕微鏡において、フォーカス可変装置として対物レンズ電流を変化させてフォーカスを変化させることを特徴とした走査透過電子顕微鏡。
【請求項3】
請求項1に示した走査透過電子顕微鏡において、フォーカス可変装置として試料ステージの高さを変化させてフォーカスを変化させることを特徴とした走査透過電子顕微鏡。
【請求項4】
原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器とフォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像を記録し、該フォーカス可変装置にて設定したフォーカス値で撮影した2次元試料拡大走査像とフォーカス値を連携させ、複数の2次元試料拡大走査像を重ね合わせて原子分解能の3次元構造拡大像を再構成することができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項5】
対物レンズと対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器と試料前方散乱電子検出器とフォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像と試料前方散乱電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像とを同時に記録し、該フォーカス可変装置にて設定したフォーカス値で撮影した各々の信号の2次元試料拡大走査像とフォーカス値を連携させ、複数の2次元試料拡大走査像を重ね合わせて原子分解能の3次元構造拡大像を再構成することができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項6】
対物レンズと対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器と試料前方散乱電子検出器とフォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像と透過電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像とを同時に記録し、該フォーカス可変装置にて設定したフォーカス値で撮影した各々の信号の2次元試料拡大走査像とフォーカス値を連携させ、複数の2次元試料拡大走査像を重ね合わせて原子分解能の3次元構造拡大像を再構成することができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項7】
対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器と、電子線照射角を決める収束レンズと、フォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像を記録し、収束レンズの励磁電流を変えて焦点深度を変化させて試料最表面と試料内部の構造の両方を同時に観察することが可能な走査透過電子顕微鏡。
【請求項8】
対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器と、電子線照射角を決める絞りと、フォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像を記録し、絞りの径を変えて焦点深度を変化させて試料最表面と試料内部の構造の両方を同時に観察することが可能な走査透過電子顕微鏡。
【請求項9】
請求項7の走査透過電子顕微鏡において、画像鮮鋭度で試料内部構造の深さを計測することができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項10】
請求項8の走査透過電子顕微鏡において、画像鮮鋭度で試料内部構造の深さを計測することができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項11】
請求項7の走査透過電子顕微鏡において、収束レンズの励磁電流の組合せで電子線のプローブサイズを変化させることなく焦点深度を変化させることができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項12】
請求項8の走査透過電子顕微鏡において、絞りサイズを変化させると電子線プローブサイズを変化させずに焦点深度を変化させることができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項13】
焦点深度を調節するために、テーパー状構造を有する試料を試料ステージに備えた走査透過電子顕微鏡。
【請求項14】
デフォーカス量と対物レンズの励磁電流の関係を計測するために、テーパー状構造を有する試料を試料ステージに備えた走査透過電子顕微鏡。
【請求項15】
対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器と、電子線照射角を決める収束レンズと、フォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像を記録し、収束レンズの励磁電流を変えて焦点深度を変化させて試料最表面と試料内部の構造の両方を同時に観察することが可能な走査透過電子顕微鏡で、試料に照射する電子線をデフォーカスさせて、試料内部に存在する構造の深さを計測し、最適焦点深度を求めることができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項16】
対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器と、電子線照射角を決める収束レンズと、フォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像を記録し、収束レンズの励磁電流を変えて焦点深度を変化させて試料最表面と試料内部の構造の両方を同時に観察することが可能な走査透過電子顕微鏡で、試料に照射する電子線をデフォーカスさせて、ピクセル単位の画像鮮鋭度を求め、試料内部に存在する構造の深さを計測し、最適焦点深度を求め、試料内部構造の深さを計測することができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項17】
対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器と、電子線照射角を決める収束レンズと、フォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像を記録し、収束レンズの励磁電流を変えて焦点深度を変化させて試料最表面と試料内部の構造の両方を同時に観察することが可能な走査透過電子顕微鏡で、試料に照射する電子線をデフォーカスさせて、ピクセル単位の画像鮮鋭度を求め、試料内部に存在する構造の深さを計測し、最適焦点深度を求め、試料内部構造の深さを計測し、ピクセル毎の画像鮮鋭度評価結果を2次元画像内に持たせることができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項18】
対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器と、電子線照射角を決める収束レンズと、フォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた複数の2次元試料拡大走査像を記録し、収束レンズの励磁電流を変えて焦点深度を変化させて試料最表面と試料内部の構造の両方を同時に観察することが可能な走査透過電子顕微鏡で、試料に照射する電子線をデフォーカスさせて、ピクセル単位の画像鮮鋭度を求め、試料内部に存在する構造の深さを計測し、最適焦点深度を求め、試料内部構造の深さを計測し、ピクセル毎の画像鮮鋭度評価結果を2次元画像内に持たせ、ピクセル毎の最適焦点深度と電子線照射角、各収束レンズ電流設定テーブルを持つ走査透過電子顕微鏡。
【請求項19】
対物レンズと対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器とフォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた二次電子試料拡大走査像を記録し、同時に試料前方散乱電子の試料拡大走査像を記録し、該試料前方散乱電子のコントラストを解析し、二次電子試料拡大走査像に組成起因のコントラストを与えることができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項20】
請求項1に示した走査透過電子顕微鏡において、フォーカス可変装置として対物レンズ電流を変化させてフォーカスを変化させることを特徴とした走査透過電子顕微鏡。
【請求項21】
請求項1に示した走査透過電子顕微鏡において、フォーカス可変装置として試料ステージの高さを変化させてフォーカスを変化させることを特徴とした走査透過電子顕微鏡。
【請求項22】
原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器とフォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた二次電子試料拡大走査像を記録し、同時に試料前方散乱電子の試料拡大走査像を記録し、該試料前方散乱電子のコントラストを解析し、二次電子試料拡大走査像に組成起因のコントラストを与えることができる走査透過電子顕微鏡。
【請求項23】
対物レンズと対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器とフォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた二次電子試料拡大走査像を記録し、同時に試料前方散乱電子の試料拡大走査像を記録し、該試料前方散乱電子のコントラストを解析し、二次電子試料拡大走査像に組成起因のコントラストの試料拡大像を記録できる走査透過電子顕微鏡。
【請求項24】
対物レンズと対物レンズの球面収差を補正する球面収差補正器を搭載する原子分解能を観察できる走査電子顕微鏡において二次電子検出器とフォーカス可変装置とを備え、該二次電子検出器によって得られた二次電子試料拡大走査像を記録し、同時に試料前方散乱電子の試料拡大走査像を記録し、該試料前方散乱電子のコントラストを解析し、二次電子試料拡大走査像に組成起因のコントラストの試料拡大像を表示できる走査透過電子顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−25967(P2013−25967A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−158548(P2011−158548)
【出願日】平成23年7月20日(2011.7.20)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】