説明

走行リンク確定装置及びリンク旅行時間算出装置

【課題】時間的に遡ることなく、時系列で走行リンクを確定する。
【解決手段】リンクマッチ処理部31は、リンク単位で位置座標が定義されている地図データと、異なる時刻における移動体位置座標を含む移動体位置データとを比較して、各移動体位置座標に対する一または複数の候補リンクを抽出する。走行リンク確定部33は、第1の移動体位置座標に対して一のリンクが抽出されたとき、抽出されたリンクを第1の移動体位置座標の確定リンクとして抽出する。また、走行リンク確定部33は、第1の移動体位置座標に対して複数のリンクが抽出されたとき、抽出された複数のリンクのうち、第1の移動体位置座標より上流の第2の移動体位置座標に応じて定まる一のリンクとつながっているリンクを、第1の移動体位置座標の確定リンクとして抽出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体の位置情報を地図上で道路などを示すリンクと対応付けて、移動体が移動したと推定される経路の走行リンクを確定する技術、及びこの確定された走行リンクの移動に要した旅行時間を計測する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、GPSなどを用いて車両などの移動体の位置を計測し、その移動体の位置を地図上のリンクと対応付けるための技術として、リンクマッチングが用いられている。そして、リンクマッチングの精度を向上させるための技術が種々提案されている。例えば、走行リンクを確定し、確定した走行リンクのリンク旅行時間を算出する技術として、例えば、特許文献1記載の技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−101504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、特許文献1の技術では、対象となっている移動体位置よりも下流の確定リンクから上流へ遡って走行リンクを確定する。つまり、時系列に処理を行っていったときに、確定できないリンクについては、一旦保留とし、下流でリンクを確定させた後に上流へ、時間的に遡って処理を行う必要がある。
【0005】
これに対して、時間的に遡らずに、ある程度の精度を担保しつつ、時系列で走行リンクを確定することができれば、処理が簡素化されて、好ましい。
【0006】
そこで、本発明の目的は、時間的に遡ることなく、時系列で走行リンクを確定することである。
【0007】
さらに本発明の別の目的は、時系列に確定した走行リンクを用いて、リンク旅行時間を算出することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一つの実施態様に従う走行リンク確定装置は、リンク単位で位置座標が定義されている地図データを記憶する地図データ記憶部と、異なる時刻における移動体位置座標を含む移動体位置データを記憶する位置データ記憶部と、前記移動体位置データに含まれる移動体位置座標と前記地図データに定義されているリンクの位置座標とを比較して、各移動体位置座標に対する一または複数の候補リンクを抽出する候補リンク抽出手段と、前記候補リンク抽出手段によって第1の移動体位置座標に対して一のリンクが抽出されたとき、前記抽出されたリンクを前記第1の移動体位置座標の確定リンクとして抽出し、前記候補リンク抽出手段によって前記第1の移動体位置座標に対して複数のリンクが抽出されたとき、前記抽出された複数のリンクのうち、前記第1の移動体位置座標より上流の第2の移動体位置座標に応じて定まる一のリンクとつながっているリンクを、前記第1の移動体位置座標の確定リンクとして抽出する確定リンク抽出手段と、を備える。
【0009】
好適な実施形態では、前記確定リンク抽出手段は、前記候補リンク抽出手段によって前記第1の移動体位置について複数のリンクが抽出されたとき、前記抽出された複数のリンクのうち、前記第2の移動体位置の確定リンクとつながっているリンクを確定リンクとして抽出してもよい。
【0010】
好適な実施形態では、前記確定リンク抽出手段は、前記候補リンク抽出手段によって前記第1の移動体位置について複数の走行リンクが抽出されたとき、前記抽出された複数のリンクのうち、前記第2の移動体位置の最寄リンクとつながっているリンクを確定リンクとして抽出してもよい。
【0011】
好適な実施形態では、前記確定リンク抽出手段により抽出された確定リンクによって形成された、前記移動体が移動したと考えられる移動経路が不連続であるとき、前記不連続の区間を補間する補間手段をさらに備えてもよい。
【0012】
好適な実施形態では、複数の分割探索エリアに関するデータであって、各分割探索エリア内の位置座標及び各分割探索エリア内に含まれるリンクの識別情報とを対応付けて記憶した分割探索エリアデータを記憶する分割探索エリアデータ記憶部をさらに備え、前記候補リンク抽出手段は、前記各分割探索エリア内の位置座標に基づいて、前記各移動体位置座標が属する分割探索エリアを選択し、選択された分割探索エリア内に含まれるリンクの位置座標と比較して、各移動体位置座標の一または複数の候補リンクを抽出してもよい。
【0013】
本発明の別の実施態様に従うリンク旅行時間算出装置は、リンク単位で位置座標を定義している地図データベースと、異なる時刻における移動体の位置を示す複数の移動体位置を含む位置データを記憶する記憶部と、前記複数の移動体位置と地図データベースに定義されているリンクの位置座標とを比較して、各移動体位置に対して前記移動体が移動したと考えられる一または複数のリンクを抽出する候補リンク抽出手段と、前記候補リンク抽出手段によって第1の移動体位置に対して一のリンクが抽出されたとき、前記抽出されたリンクを確定リンクとして抽出し、前記候補リンク抽出手段によって前記第1の移動体位置に対して複数のリンクが抽出されたとき、前記抽出された複数のリンクのうち、前記第1の移動体位置より上流の第2の移動体位置に応じて定まる一のリンクとつながっているリンクを確定リンクとして抽出する確定リンク抽出手段と、前記確定リンク抽出手段によって抽出されたそれぞれの確定リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係るリンク旅行時間提供システムの構成図である。
【図2】プローブデータ記憶部のデータ構造の一例を示す。
【図3】分割探索エリアの生成方法の一例を示す説明図である。
【図4】分割探索エリアのデータ構造の一例を示す。
【図5】車両位置とリンクとの距離算出の方法の一例を示す説明図である。
【図6】複数の車両位置P1〜P9のリンクマッチングの一例を示す図である。
【図7】確定リンクの抽出方法の一例を示す説明図である。
【図8】交通規制に基づく、確定リンク抽出の一例を示す説明図である。
【図9】日別リンク旅行時間記憶部のデータ構造の一例を示す。
【図10】統計リンク旅行時間記憶部のデータ構造の一例を示す。
【図11】リンク旅行時間算出の全体処理を示すフローチャートである。
【図12】候補リンクの抽出処理の詳細を示すフローチャートである。
【図13】確定リンクの抽出処理の詳細を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の一実施形態に係るリンク旅行時間を提供するシステムについて、図面を参照して説明する。本システムは、車両が走行した軌跡を示す車両の位置データと、地図データに含まれている多数のリンクとに基づいて、車両が走行したと推定される走行リンクを確定する走行リンク確定システムを含む。そして、本システムは、走行リンク確定システムで確定された各リンクを走行するのに要するリンク旅行時間を算出する。さらに、本システムは、リンク旅行時間を他の装置へ提供するために出力する。
【0016】
本実施形態に係るリンク旅行時間提供システムは、例えば汎用的なコンピュータシステムにより構成され、以下に説明するリンク旅行時間提供システム内の個々の構成要素または機能は、例えば、コンピュータプログラムを実行することにより実現される。このコンピュータプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納可能である。
【0017】
図1は、本実施形態に係るリンク旅行時間提供システムの構成図である。
【0018】
同図に示すように、本システムは、プローブデータ受信部11と、プローブデータ記憶部13と、地図データ記憶部21と、分割探索エリア生成部23と、分割探索エリアデータ記憶部25と、リンクマッチ処理部31と、走行リンク確定部33と、補間処理部35と、リンク旅行時間算出部37と、リンク旅行時間出力部39と、日別リンク旅行時間記憶部41と、統計リンク旅行時間記憶部43と、統計処理部45とを備える。
【0019】
プローブデータ受信部11は、図示しないプローブデータ提供システムからプローブデータを取得する。プローブデータは、例えば、車両などの移動体に搭載された位置情報検出装置によって検出された位置座標(緯度及び経度)とそのときの時刻とを含む。位置情報検出装置は、GPS(Global Positioning System)機能を利用して位置を検出する機能を備えた情報処理装置であり、例えば、車両取付型または可搬型のカーナビの車載装置あるいはGPS機能付きの携帯電話機などでよい。
【0020】
本実施形態では、タクシー車両から取得したプローブデータを、タクシー会社から提供を受ける場合を例に説明する。
【0021】
プローブデータ記憶部13は、プローブデータ受信部11が取得したプローブデータを記憶する。
【0022】
図2に、プローブデータ記憶部13のデータ構造の一例を示す。プローブデータ記憶部13は、同図に示すように、データ項目として、企業ID131と、事業所ID132と、車両ID133と、日時135と、車両位置137と、実車/空車フラグ139とを有する。
【0023】
企業ID131は、プローブデータを提供したタクシー会社の識別情報である。事業所ID132は、タクシー会社内の事業所の識別情報である。事業所ID132により、車両(タクシー)が走行している地域を判別することができる。車両ID133は、各車両(タクシー)の識別情報である。日時135は、車両が車両位置137に存在する日時を示す。車両位置137は、日時135における緯度及び経度で示される車両位置座標である。実車/空車フラグ139は、タクシーに乗客を乗せている実車か、乗せていない空車かを示すフラグである。本実施形態では、実車/空車フラグ139が「実車中」であるプローブデータのみを対象としても良い。
【0024】
プローブデータ記憶部13には、時々刻々収集されたプローブデータが蓄積される。本実施形態では、一つのデータレコードがある車両のある時刻の車両位置を示す。従って、ある車両について、異なる時刻に収集されたプローブデータが、それぞれ一つのデータレコードとしてプローブデータ記憶部13に格納される。
【0025】
再び図1を参照すると、地図データ記憶部21は、道路地図データを記憶する。道路地図データは、道路を構成する多数のリンクに関する情報を含む。道路地図データでは、例えば、リンク単位で位置座標が定義されている。つまり、道路地図データでは、各リンクの識別情報と緯度及び経度で示されるリンクの位置座標とが対応付けられている。
【0026】
分割探索エリア生成部23は、複数の分割探索エリアを生成する。分割探索エリアとは、リンクマッチ処理部31におけるリンクマッチ処理での探索範囲を限定するためのものである。分割探索エリア生成部23は、分割探索エリアを定義する分割探索エリアデータを生成する。
【0027】
図3を用いて、分割探索エリアの生成方法の一例を説明する。すなわち、分割探索エリア生成部23は、地図のある階層のメッシュ(例えば二次メッシュ)M,M,・・・において、所定の距離(二次メッシュでは1000m)ごとの点を中心とした円C,C,・・・を分割探索エリアとする。そして、分割探索エリア生成部23は、各分割探索エリアCに含まれるリンクを抽出する。例えば、あるリンクの一部が、ある分割探索エリアCの円内に含まれるときは、このリンクは分割探索エリアCに含まれるようにしてもよい。また、一つのリンクが複数の分割探索エリアに属していても良い。
【0028】
分割探索エリアデータ記憶部25は、分割探索エリア生成部23が生成した分割探索エリアデータを記憶する。分割探索エリアデータでは、各分割探索エリア内の位置座標と、各分割探索エリア内に含まれるリンクの識別情報とが対応付けられている。例えば、図3の例に従って生成された分割探索エリアデータは、図4に示すデータ構造を有する。すなわち、分割探索エリアデータは、分割探索エリアCを識別するためのエリアID251と、中心点の位置座標253と、円の半径255と、分割探索エリア内に存在するリンクのリンクID257とをデータ項目として有する。
【0029】
リンクマッチ処理部31は、プローブデータとリンクとを対応付けるリンクマッチ処理を行う。リンクマッチ処理部31は、例えば、移動体位置データ(プローブデータ)に含まれる移動体位置座標(車両位置)と前記地図データに定義されているリンクの位置座標とを比較して、各移動体位置座標(車両位置)に対する一または複数の候補リンクを抽出する。例えば、リンクマッチ処理部31は、プローブデータ記憶部13に記憶されているプローブデータの一レコードごとにリンクマッチ処理を行う。
【0030】
リンクマッチ処理部31は、本実施形態では、各分割探索エリアC内の位置座標(車両位置)に基づいて、各移動体位置座標(車両位置)が属する分割探索エリアを選択し、選択された分割探索エリア内に含まれるリンクの位置座標と比較して、各移動体位置座標(車両位置)の一または複数の候補リンクを抽出する。例えば、リンクマッチ処理部31は、分割探索エリアデータ記憶部25に記憶されている分割探索エリアデータの中心点の位置座標253及び円の半径255と、プローブデータ記憶部13の車両位置137とを対比して、車両位置137が属する分割探索エリアCのエリアID251を特定する。リンクマッチ処理部31は、ここで特定されたエリアID251と対応付けられているリンクID257のリンクの位置座標を地図データ記憶部21から取得して、車両位置137とリンクマッチ処理を行う。
【0031】
リンクマッチ処理部31は、リンクマッチ処理において、車両位置137から所定の距離(例えば20m)以内の一または複数のリンクをすべて候補リンクとして抽出する。
車両位置とリンクとの距離算出の方法の一例を、図5を用いて具体的に説明する。
【0032】
同図に示すように、リンクLの両端がそれぞれA(x,y),B(x+dx、y+dy)であるとき、車両位置P(px、py)からリンクL上の点T(Tx,Ty)との距離dは以下の式(1)で定まる。
【数1】


ここで、T(Tx,Ty)は、媒介変数t(0≦t≦1)を用いて以下の式(2)、(3)で表される。
【数2】

【数3】

このときに求まる最小のdが、車両位置PとリンクLとの距離である。つまり、車両位置Pに最も近いリンクL上の点Tが、図5Aに示すように車両位置PからリンクLへ垂線を下ろした足となるときと、図5Bに示すようにリンクLの端点となるときがある。
【0033】
また、図6は、リンクマッチ処理部31が、複数の車両位置P1〜P9に対してリンクマッチングを行う様子を示した図である。同図に示すように、リンクマッチ処理部31は、各車両位置から所定距離r内のリンクを抽出する。例えば、車両位置P3及びP4は二つのリンクが候補リンクとして抽出された例を示す。また、車両位置P5及びP6は三つのリンクが候補リンクとして抽出された例を示す。車両位置P8は、一つも候補リンクが抽出されなかったため、以降の処理の対象外とする。
【0034】
改めて図1を参照すると、走行リンク確定部33は、リンクマッチ処理部31で抽出された候補リンクの中から一つの車両位置に対して一つの確定リンクを抽出する。例えば、走行リンク確定部33は、候補リンク抽出手段(リンクマッチ処理部31)によって第1の移動体位置(車両位置)に対して一のリンクが抽出されたときは、その抽出されたリンクを確定リンクとして抽出する。一方、候補リンク抽出手段(リンクマッチ処理部31)によって第1の移動体位置(車両位置)に対して複数のリンクが抽出されたとき、抽出された複数のリンクのうち、第1の移動体位置(車両位置)より上流の第2の移動体位置(車両位置)に応じて定まる一のリンクとつながっているリンクを確定リンクとして抽出する。
【0035】
図7は、リンクL1〜L9に対して、ある車両のプローブデータとして、時刻t1〜t4の間に車両位置P1〜P4が得られたときのリンクマッチ処理(候補リンク抽出)及びリンク確定処理(確定リンク抽出)について説明する。
【0036】
まず、リンクマッチ処理部31によって、各車両位置P1〜P4のそれぞれに対する候補リンクが抽出されている。それぞれの候補リンクは、以下の通りである。
車両位置P1 候補リンクL6
車両位置P2 候補リンクL2、L7
車両位置P3 候補リンクL3,L8
車両位置P4 候補リンクL9
走行リンク確定部33は、上記の結果に基づいて、時系列に確定リンクを抽出する。走行リンク確定部33は、複数の候補リンクがあるときに、例えば、以下の二通りのいずれかの方法で、その中から一つの候補リンクを選択する。
【0037】
第1の方法では、第1の移動体位置(車両位置)について複数のリンクが抽出されたとき、抽出された複数のリンクのうち、上流の第2の移動体位置(車両位置)の確定リンクとつながっているリンクを確定リンクとして抽出する。一方、第2の方法では、第1の移動体位置(車両位置)について複数のリンクが抽出されたとき、抽出された複数のリンクのうち、上流の第2の移動体位置(車両位置)の最寄リンクとつながっているリンクを確定リンクとして抽出する。
【0038】
以下、確定リンクを基準とした第1の方法、及び最寄リンクを基準とした第2の方法を適用した場合のそれぞれについて、図7の例を用いて具体的に説明する。
【0039】
(1)まず、走行リンク確定部33は、最も早い時刻t1の車両位置P1の候補リンクがL6一つであるので、走行リンク確定部33は候補リンクL6を確定リンクとして抽出する。
【0040】
(2)つぎに、次の時刻t2の候補リンクがL2及びL7なので、走行リンク確定部33は、いずれか一方を確定リンクとして抽出する。
【0041】
このとき、確定リンクを基準とした第1の方法に従えば、リンクL7が確定リンクとして抽出される。なぜならば、車両位置P2より上流の車両位置P1に対する確定リンクはL6であるから、リンクL2及びL7のうち、リンクL6と連続しているのはリンクL7だからである。
【0042】
一方、最寄リンクを基準とした第2の方法に従ったときも、リンクL7が確定リンクとして抽出される。なぜならば、車両位置P2より上流の車両位置P1に対する最寄リンクはL6(ここでは一つのリンクしか抽出されていない)であるから、リンクL2及びL7のうち、リンクL6と連続しているのはリンクL7だからである。
【0043】
(3)次の時刻t3の候補リンクがL3及びL8なので、走行リンク確定部33は、このときもいずれか一方を確定リンクとして抽出する。
【0044】
ここでも、同様に、確定リンクを基準とした第1の方法に従えば、リンクL8が確定リンクとして抽出される。なぜならば、車両位置P3より上流の車両位置P2に対する確定リンクはL7であるから、リンクL3及びL8のうち、リンクL7と連続しているのはリンクL8だからである。
【0045】
一方、最寄リンクを基準とした第2の方法に従うと、リンクL3が確定リンクとして抽出される。なぜならば、車両位置P3より上流の車両位置P2に対する最寄リンクはL2であるから、リンクL3及びL8のうち、リンクL2と連続しているのはリンクL3だからである。
【0046】
(4)最後に、次の時刻t4の候補リンクはL9のみであるから、走行リンク確定部33は候補リンクL9を確定リンクとして抽出する。
【0047】
なお、第1の方法及び第2の方法のいずれにおいても、上流のリンクと連続するリンクがないときは、車両位置の最寄リンクを確定リンクとする。
【0048】
第1の方法によれば、上流の確定リンクと連続しているリンクが確定リンクとして抽出されるので、抽出された確定リンク同士が連続する。つまり、より長期間連続した確定リンクを得やすいという効果がある。
【0049】
一方、第2の方法によれば、上流の最寄リンクと連続しているリンクが確定リンクとして抽出されるので、上流の車両位置との連続性が高いリンクが選択されることになる。さらに、この方法では、上流の確定リンクとの関係が考慮されないので、上流においてミスマッチが起きていたとしても、そのミスマッチの状態をリセットする効果がある。
【0050】
また、走行リンク確定部33は、交通規制に関する情報に基づいて、確定リンクを抽出しても良い。
【0051】
例えば、図8Aに示すように、ある車両位置に対して一方通行のリンクが確定リンクとして抽出されたとき、走行リンク確定部33は、同図に示すようにして、その車両位置の前後の車両位置に基づいて車両の走行方向を推定し、逆走しているようなときは、そのリンクを確定リンクから削除する。例えば、同図の例では、車両位置P21、P22と車両が移動しているとき、リンクL21がノード1からノード2への一方通行であるとき、走行リンク確定部33が、車両位置P21、P22からそれぞれリンクL21への垂線の足と、ノード2との距離La,Lbを算出する。そして、の距離La,Lbを比較して、逆走していないことを確認する。
【0052】
また、走行リンク確定部33は、図8Bに示すように、高速道路と一般道が併走しているようなとき、高速道路入口を通過しないときは、高速道路のリンクを確定リンクとして抽出しないようにしてもよい。例えば、車両位置P31,P32と車両が移動しているときは、走行リンク確定部33は、高速道路入口を通過していないので、車両位置P32を一般道リンクに割り当てる。車両位置P35,P36と車両が移動しているときは、走行リンク確定部33は、高速道路入口を通過しているので、車両位置P36を高速道リンクまたは一般道リンクに割り当てる。
【0053】
改めて図1を参照すると、補間処理部35は、確定リンク抽出手段(走行リンク確定部)により抽出された確定リンクによって形成された、移動体(車両)が移動したと考えられる移動経路が不連続であるとき、その不連続の区間を補間する。つまり、補間処理部35は、不連続区間を補間して車両の移動経路をつなげる。補間処理部35は、例えば以下に述べる直進性を用いて経路補間を行う。
【0054】
補間処理部35は、不連続区間を結ぶ直進リンクを検出したときは、その直進リンクによって不連続区間を補間する。ここで、直進リンクとは、確定リンクと所定以上の直進性をもって接続されている不連続区間内のリンクである。例えば、確定リンクとの角度が所定角度(例えば30°)以下であるリンクを直進リンクとしても良い。
【0055】
補間処理によっても経路が補間されない場合は、以下の処理では、不連続区間の両側の経路をそれぞれ別経路として扱うようにしてもよい。
【0056】
リンク旅行時間算出部37は、確定リンク抽出手段(走行リンク確定部)によって抽出されたそれぞれの確定リンクの旅行時間を算出する。例えば、リンク旅行時間算出部37は、35によって補間される前、または補間された後の経路に基づいて、プローブデータの日時135を参照して、それぞれの車両が各リンクを移動するのに要したリンク旅行時間を算出する。リンク旅行時間算出部37が算出したリンク旅行時間は、日別リンク旅行時間記憶部41に格納する。
【0057】
日別リンク旅行時間記憶部41は、リンク旅行時間算出部37が算出したリンク旅行時間データが記憶される。
【0058】
図9に示すように、日別リンク旅行時間記憶部41は、データ項目として、日付411と、時間帯413と、リンクID415と、旅行時間417とを有する。日別リンク旅行時間記憶部41には、プローブデータを取得してから間もない、ほぼリアルタイムの旅行時間が保存される。
【0059】
統計処理部45は、日別リンク旅行時間記憶部41に格納されている日別のリンク旅行時間データを統計的に処理し、統計リンク旅行時間データを生成する。統計リンク旅行時間データは、統計リンク旅行時間記憶部43に格納される。例えば、統計処理部45は、リンク旅行時間データを読み込んで、曜日別、時間帯別、リンクID別に、平均の旅行時間を算出し、統計リンク旅行時間記憶部43に格納する。
【0060】
統計リンク旅行時間記憶部43は、日別リンク旅行時間記憶部41に記憶されているリンク旅行時間を統計処理した統計リンク旅行時間データが記憶される。統計リンク旅行時間記憶部43は、所定の集計単位(例えば、曜日、五十日など)で集計を行って、リンクごとの平均旅行時間を算出する。
【0061】
図10に示すように、統計リンク旅行時間記憶部43は、データ項目として、曜日431と、時間帯413と、リンクID415と、平均旅行時間437とを有する。
【0062】
リンク旅行時間出力部39は、日別リンク旅行時間記憶部41または統計リンク旅行時間記憶部43を参照して、外部の装置に対して、リンクID別のリンク旅行時間を出力する。例えば、日別リンク旅行時間記憶部41にデータが存在すれば、それを出力するようにしてもよい。日別リンク旅行時間記憶部41にデータが存在しないときは、統計リンク旅行時間記憶部43を参照して、現在の曜日及び時間帯に応じたリンク旅行時間を出力しても良い。リンク旅行時間出力部39は、例えば、定期的にリンク旅行時間を出力しても良いし、外部装置からのリクエストに応じてリンク旅行時間を出力しても良い。
【0063】
次に、上述したシステムにおけるリンク旅行時間算出の処理手順について、図11〜図13のフローチャートを用いて説明する。
【0064】
図11は、リンク旅行時間算出の全体の処理手順を示す。
【0065】
まず、プローブデータ受信部11が、プローブデータを受信して、プローブデータ記憶部13へ格納する(S10)。
【0066】
リンクマッチ処理部31が、プローブデータ記憶部13に格納されているプローブデータの各車両位置137に対して、それぞれの候補リンクを抽出する(S12)。この候補リンク抽出処理の詳細については後述する。
【0067】
上記の処理で候補リンクが抽出されると、走行リンク確定部33が各車両位置137に対する一又は複数の候補リンクの中から確定リンクを抽出する(S14)。この確定リンク抽出処理の詳細については後述する。
【0068】
上記の処理で確定リンクが定まると、補間処理部35が、確定リンクが連続していない不連続区間の補間を行って、車両の移動経路を推定する(S16)。不連続区間の補間方法は上述の通りである。
【0069】
リンク旅行時間算出部37は、上記の処理によって推定された各車両の移動経路に従って、その移動経路に含まれるリンクの旅行時間を算出し、日別リンク旅行時間記憶部41に格納する(S18)。
【0070】
これにより、プローブデータに基づいて、ほぼリアルタイムにリンク旅行時間を算出することができる。
【0071】
次に、図12のフローチャートを参照して、ステップS12の候補リンクの抽出処理の詳細について説明する。
【0072】
リンクマッチ処理部31は、プローブデータ記憶部13から、対象となっているプローブデータの1レコードを選択する(S121)。
【0073】
次に、リンクマッチ処理部31は、選択したレコードの車両位置137と、分割探索エリアデータ記憶部25の中心の位置座標253とを比較して、車両位置137が属する分割探索エリアを選択する(S123)。
【0074】
そして、リンクマッチ処理部31は、選択した分割探索エリアのリンクID257の中から、車両位置137所定距離内のすべてのリンクを候補リンクとして抽出する(S125)。このように分割探索エリアを探索範囲とすることによって、候補リンクの探索時間を短縮することができる。
【0075】
リンクマッチ処理部31は、上記の処理を、対象となっているプローブデータの全レコードに対して繰り返し行う(S127)。
【0076】
次に、図13のフローチャートを参照して、ステップS14の確定リンクの抽出処理の詳細について説明する。
【0077】
まず、走行リンク確定部33が、リンクマッチ処理部31で候補リンクの抽出が行われた車両位置を一つ選択する(S141)。
【0078】
選択された車両位置に対する候補リンクが一つであるときは(S142:Yes)、走行リンク確定部33は、その候補リンクを確定リンクとして抽出し、ステップS153へスキップする(S143)。
【0079】
選択された車両位置に対する候補リンクが一つでないときは(S142:No)、走行リンク確定部33は、直前の車両位置に対応する直前リンクを特定する(S145)。ここで、直前リンクは、直前の車両位置の確定リンク(第1の方法)または直前の車両位置の最寄リンク(第2の方法)のいずれかである。
【0080】
走行リンク確定部33は、候補リンクの中に直前リンクとつながっているリンクがあるか否かを判定する(S147)。直前リンクとつながっているリンクがあるときは(S147:Yes)、走行リンク確定部33は、そのリンクを確定リンクとして抽出する(S149)。一方、直前リンクとつながっているリンクがないときは(S147:No)、走行リンク確定部33は、候補リンクの中で車両位置に最も近い最寄リンクを候補リンクとする(S151)。
【0081】
対象となっている車両位置に対して確定リンクが抽出されたとき、走行リンク確定部33は、交通規制による修正が必要であればそれを行ってもよい(S153)。
【0082】
走行リンク確定部33は、上記の処理を、リンクマッチ処理部31で候補リンクの抽出が行われたすべての車両位置のそれぞれに対して繰り返し行う(S155)。
【0083】
これにより、走行リンク確定部33は、一または複数の候補リンクの中から確定リンクを抽出する。特に、候補リンクが複数ある場合、直前の車両位置に対応する直前リンクに基づいて確定リンクを定めることができる。
【0084】
上述した本発明の実施形態は、本発明の説明のための例示であり、本発明の範囲をそれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。当業者は、本発明の要旨を逸脱することなしに、他の様々な態様で本発明を実施することができる。
【符号の説明】
【0085】
11 プローブデータ受信部
13 プローブデータ記憶部
21 地図データ記憶部
23 分割探索エリア生成部
25 分割探索エリアデータ記憶部
31 リンクマッチ処理部
33 走行リンク確定部
35 補間処理部
37 リンク旅行時間算出部
39 リンク旅行時間出力部
41 日別リンク旅行時間記憶部
43 統計リンク旅行時間記憶部
45 統計処理部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リンク単位で位置座標が定義されている地図データを記憶する地図データ記憶部と、
異なる時刻における移動体位置座標を含む移動体位置データを記憶する位置データ記憶部と、
前記移動体位置データに含まれる移動体位置座標と前記地図データに定義されているリンクの位置座標とを比較して、各移動体位置座標に対する一または複数の候補リンクを抽出する候補リンク抽出手段と、
前記候補リンク抽出手段によって第1の移動体位置座標に対して一のリンクが抽出されたときは、前記抽出されたリンクを前記第1の移動体位置座標の確定リンクとして抽出し、前記候補リンク抽出手段によって前記第1の移動体位置座標に対して複数のリンクが抽出されたときは、前記抽出された複数のリンクのうち、前記第1の移動体位置座標より上流の第2の移動体位置座標に応じて定まる一のリンクとつながっているリンクを、前記第1の移動体位置座標の確定リンクとして抽出する確定リンク抽出手段と、を備える走行リンク確定装置。
【請求項2】
前記確定リンク抽出手段は、
前記候補リンク抽出手段によって前記第1の移動体位置について複数のリンクが抽出されたとき、前記抽出された複数のリンクのうち、前記第2の移動体位置の確定リンクとつながっているリンクを確定リンクとして抽出する、請求項1記載の走行リンク確定装置。
【請求項3】
前記確定リンク抽出手段は、
前記候補リンク抽出手段によって前記第1の移動体位置について複数の走行リンクが抽出されたとき、前記抽出された複数のリンクのうち、前記第2の移動体位置の最寄リンクとつながっているリンクを確定リンクとして抽出する、請求項1記載の走行リンク確定装置。
【請求項4】
前記確定リンク抽出手段により抽出された確定リンクによって形成された、前記移動体が移動したと考えられる移動経路が不連続であるとき、前記不連続の区間を補間する補間手段をさらに備える、請求項1〜3のいずれかに記載の走行リンク確定装置。
【請求項5】
複数の分割探索エリアに関するデータであって、各分割探索エリア内の位置座標及び各分割探索エリア内に含まれるリンクの識別情報とを対応付けて記憶した分割探索エリアデータを記憶する分割探索エリアデータ記憶部をさらに備え、
前記候補リンク抽出手段は、前記各分割探索エリア内の位置座標に基づいて、前記各移動体位置座標が属する分割探索エリアを選択し、選択された分割探索エリア内に含まれるリンクの位置座標と比較して、各移動体位置座標の一または複数の候補リンクを抽出する、請求項1〜4のいずれかに記載の走行リンク確定装置。
【請求項6】
リンク単位で位置座標を定義している地図データベースと、
異なる時刻における移動体の位置を示す複数の移動体位置を含む位置データを記憶する記憶部と、
前記複数の移動体位置と地図データベースに定義されているリンクの位置座標とを比較して、各移動体位置に対して前記移動体が移動したと考えられる一または複数のリンクを抽出する候補リンク抽出手段と、
前記候補リンク抽出手段によって第1の移動体位置に対して一のリンクが抽出されたとき、前記抽出されたリンクを確定リンクとして抽出し、前記候補リンク抽出手段によって前記第1の移動体位置に対して複数のリンクが抽出されたとき、前記抽出された複数のリンクのうち、前記第1の移動体位置より上流の第2の移動体位置に応じて定まる一のリンクとつながっているリンクを確定リンクとして抽出する確定リンク抽出手段と、
前記確定リンク抽出手段によって抽出されたそれぞれの確定リンクの旅行時間を算出するリンク旅行時間算出手段と、を備えるリンク旅行時間算出装置。
【請求項7】
リンク単位で位置座標が定義されている地図データを記憶する地図データ記憶部と、異なる時刻における移動体位置座標を含む移動体位置データを記憶する位置データ記憶部とを備えた装置が、
前記移動体位置データに含まれる移動体位置座標と前記地図データに定義されているリンクの位置座標とを比較して、各移動体位置座標に対する一または複数の候補リンクを抽出し、
前記候補リンクの抽出によって第1の移動体位置座標に対して一のリンクが抽出されたときは、前記抽出されたリンクを前記第1の移動体位置座標の確定リンクとして抽出し、
前記候補リンクの抽出によって前記第1の移動体位置座標に対して複数のリンクが抽出されたときは、前記抽出された複数のリンクのうち、前記第1の移動体位置座標より上流の第2の移動体位置座標に応じて定まる一のリンクとつながっているリンクを、前記第1の移動体位置座標の確定リンクとして抽出する、走行リンクの確定方法。
【請求項8】
走行リンクを確定させるためのコンピュータプログラムであって、
リンク単位で位置座標が定義されている地図データを記憶する地図データ記憶部と、異なる時刻における移動体位置座標を含む移動体位置データを記憶する位置データ記憶部とを備えた装置に、
前記移動体位置データに含まれる移動体位置座標と前記地図データに定義されているリンクの位置座標とを比較して、各移動体位置座標に対する一または複数の候補リンクを抽出するステップと、
前記候補リンクの抽出によって第1の移動体位置座標に対して一のリンクが抽出されたときは、前記抽出されたリンクを前記第1の移動体位置座標の確定リンクとして抽出するステップと、
前記候補リンクの抽出によって前記第1の移動体位置座標に対して複数のリンクが抽出されたときは、前記抽出された複数のリンクのうち、前記第1の移動体位置座標より上流の第2の移動体位置座標に応じて定まる一のリンクとつながっているリンクを、前記第1の移動体位置座標の確定リンクとして抽出するステップと、を実行させるコンピュータプログラム。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2011−75345(P2011−75345A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−225768(P2009−225768)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000155469)株式会社野村総合研究所 (1,067)
【Fターム(参考)】