説明

走行丸鋸盤

【課題】切断時に発生して集塵ダクトに落下した切粉を、集塵ダクト外へ確実に排出させる。
【解決手段】丸鋸21に切断されたワークから発生した切粉は、ハウジング22内を通って集塵ダクト30内に落下し、落下した切粉は、スクリュー33の回転に伴なって生じる軸方向の推力によって吸引ダクト40側へ搬送されつつ、吸引ダクト40の吸引力によって発生するエアの流れに乗じて集塵ダクト30から吸引ダクト40へ排出される。エアの吸引力だけでなく、スクリュー33による搬送機構を用いて切粉を排出するようにしたので、切粉の排出性能に優れている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行丸鋸盤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ワークが載置される加工テーブルと、加工テーブルに形成されたスリットを通してワーク側に突出した状態で移動する丸鋸とを備え、丸鋸が回転しつつ一方向に移動することにより、加工テーブル上のワークを切断する走行丸鋸盤が開示されている。
この走行丸鋸盤では、切断によって発生した切粉を集めるための手段として、加工テーブルの下方に、丸鋸の移動方向に沿うように上面開放の集塵ダクトを設けるとともに、加工テーブルの下面と集塵ダクトの上面との間に、丸鋸を包囲する形態であって丸鋸と一体に移動するハウジングを設け、さらに、集塵ダクトの長手方向両端部に設けたローラの間に掛け渡した有端のカバーベルトにより、集塵ダクトの上面の開口のうちハウジングと非対応の領域を覆い、このカバーベルトの両端部をハウジングに連結することによって、カバーベルトとハウジングとを一体に移動させるようにした集塵装置が設けられている。
この集塵装置によれば、発生した切粉は、ハウジング内を落下して集塵ダクト内に集められ、集塵ダクトに接続された吸引装置の吸引作用によって生じるエアの流れに乗じて、集塵ダクト外へ排出される。また、集塵ダクトの上面の開口のうちハウジングと非対応の領域は、ハウジングと一体に移動するカバーベルトで覆われているので、丸鋸とハウジングがどのような位置に移動していても、集塵ダクト内の切粉が飛散することはない。
【特許文献1】特開平7−112401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の集塵装置では、集塵ダクト内に落下した切粉を、エアの流れに乗じて排出するようになっているのであるが、このようなエアに乗じて排出する方法では、木材から発生する軽量の切粉に関しては充分な排出効果が期待できるのであるが、金属から発生する切粉のように質量が大きいものの場合には、エアの流れに乗じて吸引する方法だけでは、排出は不十分である。
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、切断時に発生して集塵ダクトに落下した切粉を、集塵ダクト外へ確実に排出させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記の目的を達成するための手段として、請求項1の発明は、ワークが載置される加工テーブルと、前記加工テーブルに形成されたスリットを通してワーク側に突出した状態で移動する丸鋸と、前記加工テーブルの下方において前記丸鋸の移動経路と平行に配置され、上面が開口した形態の集塵ダクトと、前記丸鋸における前記加工テーブルよりも下方の領域を包囲した状態で前記丸鋸と一体に移動可能であり、上端の開口を前記スリットと対向させるとともに、下端の開口を前記集塵ダクトの上面の開口と対向させたハウジングと、前記ハウジングに対して一体移動し得るように連結され、前記集塵ダクトの上面の開口における前記ハウジングと非対応の領域を覆い隠すカバーベルトと、前記集塵ダクトの内部に収容され、軸線を前記丸鋸の移動方向と平行に向けて回転可能に設けられたスクリューと、前記集塵ダクト内のエアを吸引可能な吸引ダクトとを備えているところに特徴を有する。
【0005】
請求項2の発明は、請求項1に記載のものにおいて、前記集塵ダクトの内底面が、前記スクリューと同心の半円形をなしているところに特徴を有する。
【0006】
請求項3の発明は、請求項1または請求項2に記載のものにおいて、前記吸引ダクトが、前記集塵ダクトの外側面から水平に延出されているところに特徴を有する。
【0007】
請求項4の発明は、請求項1ないし請求項3のいずれかに記載のものにおいて 前記スクリューによる搬送方向が、切断時における前記丸鋸の移動方向とは逆向きとされ、前記スクリューによる搬送方向の下流端に、前記吸引ダクトの吸引口が配置されているところに特徴を有する。
【発明の効果】
【0008】
<請求項1の発明>
丸鋸に切断されたワークから発生した切粉は、ハウジング内を通って集塵ダクト内に落下し、落下した切粉は、スクリューの回転に伴なって生じる軸方向の推力によって吸引ダクト側へ搬送されつつ、吸引ダクトの吸引力によって発生するエアの流れに乗じて集塵ダクトから吸引ダクトへ排出される。本発明では、エアの吸引力だけでなく、スクリューによる搬送機構を用いて切粉を排出するようにしたので、切粉の排出性能に優れている。
【0009】
<請求項2の発明>
集塵ダクトの内底面をスクリューと同心の半円形としたので、スクリューの外周と集塵ダクトの内底面との隙間を小さくすることができ、これにより、集塵ダクトの内底面に残留する切粉の量を低減できる。
【0010】
<請求項3の発明>
吸引ダクトを水平に延出させたので、吸引ダクトを集塵ダクトから下方へ延出させたものに比べて、低背化を図ることができる。
【0011】
<請求項4の発明>
スクリューの搬送方向が丸鋸の移動方向と同じである場合は、スクリューで送られる切粉の上に、丸鋸から落下する切粉が次第に積み重なっていくことになるので、切断完了後に吸引口近傍に大量の切粉が一気に集中し、吸引ダクトの吸引効率が低下する。
これに対し、本発明は、スクリューの搬送方向を丸鋸の移動方向とは逆向きとしているので、スクリューで搬送されている切粉の上に丸鋸からの切粉が落下して積み重なることがなく、集塵ダクト内に落下した切粉が、切断の開始直後から少量ずつ継続的に吸引ダクトに吸引される。したがって、切粉の排出効率に優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
<実施形態1>
以下、本発明を具体化した実施形態1を図1乃至図4を参照して説明する。本実施形態の走行丸鋸盤は、加工テーブル10と、切断ユニット20と、集塵ダクト30と、吸引ダクト40とを備えて構成されている。
加工テーブル10は、フレーム12によって水平に支持されており、加工テーブル10の上面には図示しないワークが固定されるようになっている。加工テーブル10には、左右方向に直線状に延びるスリット11が、上下に貫通して形成されている。
【0013】
切断ユニット20は、上端部をスリット11から加工テーブル10の上方へ突出させた丸鋸21と、加工テーブル10の下方に設けられて丸鋸21を回転自由に支持するハウジング22とを備えている。ハウジング22(切断ユニット20)は、フレーム12に設けた水平なガイドレール13に支持されており、図示しない周知のラック&ピニオンからなる駆動手段により、加工テーブル10の右端の切断開始位置(図1を参照)と、加工テーブル10の左端の切断完了位置(図2を参照)との間で、加工テーブル10に下面に沿うようにスリット11と平行に左右方向へ水平移動し得るようになっている。丸鋸21は、スリット11から上方(ワーク側)へ突出されている部分を除いた領域(加工テーブル10の下方に隠れている領域)をハウジング22内に収容した状態で、ハウジング22に対して一体に移動するように且つ回転可能に支持されている。ハウジング22の背面には、丸鋸21を回転駆動するための切断用モータ23が一体移動し得るように取り付けられている。ハウジング22は、その上下両端面が開口されており、上端の開口24は、加工テーブル10の下面のうちスリット11と対応する領域に対して僅かな隙間を空けた状態で対向しており、下端の開口25は、後述する集塵ダクト30の上面の開口に対して僅かな隙間を空けて対向している。
【0014】
集塵ダクト30は、左右方向に細長く、上下が全長に亘って開口された形態であり、加工テーブル10の下方においてスリット11(丸鋸21の移動経路)と平行をなすように配置されている。上記したハウジング22が切断開始位置と切断完了位置との間で移動するあいだ、ハウジング22の下端の開口25は、集塵ダクト30の上面の開口と対向した状態を保つ。集塵ダクト30の右端よりも右方の位置と左端よりも左方の位置には、夫々、上下一対ずつのローラ31が配置され、これらの4つのローラ31の間には、1本のカバーベルト32が掛け回されている。このカバーベルト32の両端は、ハウジング22の下端の開口のおける左右両側縁に固定されているので、カバーベルト32は、ハウジング22と一体に走行するようになっている。また、カバーベルト32の下面は、集塵ダクト30の上面の開口の左右両側縁に接触しているので、ハウジング22(切断ユニット20)が切断開始位置と切断完了位置との間のいずれの位置にあっても、集塵ダクト30の上面の開口のうちハウジング22の下端の開口25と非対応の領域が、カバーベルト32によって覆われるようになっている。
【0015】
集塵ダクト30の内部には、スクリュー33が収容されている。スクリュー33は、集塵ダクト30の長さ方向と平行な回転軸34と、回転軸34の外周に形成した螺旋板35とからなる。回転軸34は、集塵ダクト30の全長に亘って形成され、回転軸34の両端は集塵ダクト30の左右両側板に回転可能に支持されている。螺旋板35は、回転軸34の全長に亘って連続して形成されており、螺旋板35の外周は回転軸34と同心の円形をなす。かかるスクリュー33は、回転軸34の左端に連結した搬送用モータ36により、一方向に回転されるようになっている。また、集塵ダクト30を構成する下面板の内底面30aの断面形状は、スクリュー33の螺旋板35の外周と同心の半円形をなしており(図4を参照)、この内底面30aと螺旋板35の外周との間には、螺旋板35と内底面30aとの干渉を回避するのに必要最小のクリアランスが空けられている。
【0016】
吸引ダクト40は、集塵ダクト30の右端部に配置されている。吸引ダクト40は、前後方向に貫通する筒状をなし、その吸引口41は集塵ダクト30の内側面に開口されている。吸引ダクト40は、スクリュー33とほぼ同じ高さに配置され、集塵ダクト30から水平方向に延出しており、吸引ダクト40の下面と集塵ダクト30の下面はほぼ同じ高さとなっている。かかる吸引ダクト40における吸引口41とは反対側の排出口42には、図示しない吸引装置が接続されている。
【0017】
次に、本実施形態の作用を説明する。
加工テーブル10上のワークを切断する際には、まず、搬送用モータ36を駆動してスクリュー33を回転させるとともに、吸引装置を起動して、集塵ダクト30内のエアを吸引口41から吸引ダクト40内に吸い込み、集塵ダクト30の左端(左端には、集塵ダクト30内に外気を取り込むための図示しない空気取入口が形成されている)から右端に向かうエアの流れと、ハウジング22から集塵ダクト30内に向かうエアの流れとを生成しておく。集塵ダクト30内の切粉や粉塵等は、スクリュー33の回転に伴なってその螺旋板35に押されて、集塵ダクト30の左端から右端(吸引口41)に向かって搬送される。このスクリュー33による搬送方向は後述する切断ユニット20(丸鋸21)の切断時における移動方向とは逆の方向である。
【0018】
かかる状態で、切断用モータ23を起動して丸鋸21を回転させ、切断ユニット20を右端の切断開始位置から左端の切断完了位置に向かって移動させる。すると、ワークの切断に伴なって発生する切粉は、スリット11を通り、ハウジング22内を通って集塵ダクト30内に落下する。落下した切粉のうち比較的小さくて軽量のものや、切断開始直後に発生して吸引口41に近い位置に落下したものは、生成されているエアの流れに乗じて吸引口41から吸引ダクト40内に吸い込まれる。一方、落下した切粉のうち比較的大きくて重たいものや、切断の完了間際に発生して吸引口41から遠い位置に落下したものは、スクリュー33によって吸引口41の近くへ搬送された後、エアの流れに乗じて少しずつ吸引ダクト40内に吸い込まれる。以上により、切断時に発生した切粉は、エアの流れに乗じた吸引作用とスクリュー33による搬送機構とによって、集塵ダクト30外(吸引ダクト40内)へ排出される。
【0019】
上述のように本実施形態においては、丸鋸21に切断されたワークから発生した切粉は、ハウジング22内を通って集塵ダクト30内に落下し、落下した切粉は、スクリュー33の回転に伴なって生じる軸方向の推力によって吸引ダクト40側へ搬送されつつ、吸引ダクト40の吸引力によって発生するエアの流れに乗じて集塵ダクト30から吸引ダクト40へ排出される。このように、本実施形態によれば、エアの吸引力だけでなく、スクリュー33による搬送機構を用いて切粉を排出するようにしたので、切粉の排出性能に優れている。
【0020】
また、集塵ダクト30の内底面30aをスクリュー33と同心の半円形としたので、スクリュー33の外周と集塵ダクト30の内底面30aとの隙間を小さくすることができ、これにより、集塵ダクト30の内底面30aに残留する切粉の量を低減できる。
また、吸引ダクト40を、集塵ダクト30の外側面から水平に延出させたので、吸引ダクトを集塵ダクトから下方へ延出させたものに比べて、低背化を図ることができる。
【0021】
また、スクリュー33による搬送方向の下流端には吸引ダクト40の吸引口41が配置されているのであるが、このように配置において、スクリューの搬送方向を丸鋸の移動方向と同じ向きとした場合には、スクリューで送られる切粉の上に、丸鋸から落下する切粉が次第に積み重なっていくことになるので、切断完了の前後に吸引口近傍に大量の切粉が集中し、吸引ダクトの吸引効率が低下することが懸念される。
これに対し、本実施形態は、スクリュー33の搬送方向を丸鋸21の移動方向とは逆向きとしているので、スクリュー33で搬送されている切粉の上に丸鋸21からの切粉が落下して積み重なることがなく、集塵ダクト30内に落下した切粉が、切断の開始直後から少量ずつ継続的に吸引ダクト40に吸引される。したがって、切粉の排出効率に優れている。
【0022】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施態様も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施形態では集塵ダクトの内底面の断面形状を半円形としたが、本発明によれば、半円形以外の形状としてもよい。
(2)上記実施形態では吸引ダクトを集塵ダクトから水平に延出させたが、本発明によれば、吸引ダクトを下方へ延出させてもよい。
(3)上記実施形態ではスクリューの搬送方向を丸鋸の移動方向とは逆向きとしたが、本発明によれば、スクリューの搬送方向を丸鋸の移動方向と同じ向きにしてもよい。
(4)上記実施形態では吸引ダクトの吸引口を集塵ダクトの端部に配置したが、本発明によれば、吸引口は、集塵ダクトの長さ方向における中央寄りの位置に配置してもよい。
(5)上記実施形態では吸引口を1つだけとしたが、本発明によれば、複数の吸引口を設けてもよい。この場合、各吸引口に対応するように複数のスクリューを設けてもよい。
(6)上記実施形態では吸引口をスクリューの搬送方向下流端に配置したが、本発明によれば、吸引口は、スクリューの搬送方向下流端よりも上流側の位置に配置してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態1において、丸鋸が切断開始位置にある状態をあらわす一部切欠正面図
【図2】丸鋸が切断完了位置にある状態をあらわす一部切欠正面図
【図3】側面図
【図4】集塵ダクト内の構造をあらわす部分拡大断面図
【符号の説明】
【0024】
10…加工テーブル
11…スリット
21…丸鋸
22…ハウジング
30…集塵ダクト
32…カバーベルト
33…スクリュー
40…吸引ダクト
41…吸引口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークが載置される加工テーブルと、
前記加工テーブルに形成されたスリットを通してワーク側に突出した状態で移動する丸鋸と、
前記加工テーブルの下方において前記丸鋸の移動経路と平行に配置され、上面が開口した形態の集塵ダクトと、
前記丸鋸における前記加工テーブルよりも下方の領域を包囲した状態で前記丸鋸と一体に移動可能であり、上端の開口を前記スリットと対向させるとともに、下端の開口を前記集塵ダクトの上面の開口と対向させたハウジングと、
前記ハウジングに対して一体移動し得るように連結され、前記集塵ダクトの上面の開口における前記ハウジングと非対応の領域を覆い隠すカバーベルトと、
前記集塵ダクトの内部に収容され、軸線を前記丸鋸の移動方向と平行に向けて回転可能に設けられたスクリューと、
前記集塵ダクト内のエアを吸引可能な吸引ダクトとを備えていることを特徴とする走行丸鋸盤。
【請求項2】
前記集塵ダクトの内底面が、前記スクリューと同心の半円形をなしていることを特徴とする請求項1記載の走行丸鋸盤。
【請求項3】
前記吸引ダクトが、前記集塵ダクトの外側面から水平に延出されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の走行丸鋸盤。
【請求項4】
前記スクリューによる搬送方向が、切断時における前記丸鋸の移動方向とは逆向きとされ、
前記スクリューによる搬送方向の下流端に、前記吸引ダクトの吸引口が配置されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の走行丸鋸盤。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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