説明

走行体の進路変更装置および進路変更方法

【課題】 玩具車両等の走行体の進路を変えるための新規な機構を提供すること。
【解決手段】 軌道または走行路等の案内路によって進行方向が規制される走行体の進路変更装置であって、上下動可能に構成された複数の案内手段を有し、当該案内手段は、上昇位置において前記案内路の一部を構成し、前記走行体の車輪または走行体の一部と接触して当該走行体の進行方向を異ならせるようになっている。鉄道模型に用いる場合には、直線レールとカーブした湾曲レールを垂直方向に交互に出没させることで、進行方向を選択することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行体の進路を変更する進路変更装置および進路変更方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1記載の玩具レールにおける方向変換装置が知られている。当該方向変換装置は、基板上を横方向に回動する切換レールによって、2対の分岐レールの一方を選択し、当該選択された方向へ車両を誘導するというものである。当該特許文献1記載の方向変換装置を始め、実際の鉄道に用いられているレールのポイント構造は、切り換え用のレールを平面上で横移動させるものが一般的である。その他同様のポイント構造に関する技術を掲載したものとして特許文献2、特許文献3がある。
【0003】
前記特許文献1記載の方向変換装置に用いられている分岐レールは、片面が直線路、他面が僅かな湾曲路として構成された1本の可動レールであり、固定された湾曲レールと対を成して分岐方向に向かう軌道を構成している。しかし、当該分岐レールは、反対面が直線路であるので、他面である湾曲面の曲率を大きくすることができず、固定された湾曲レールと同様のカーブを形成することができないものとなっている。すなわち、当該進行方向を変える分岐部では、2本のレールの湾曲状態が異なるために、軌道を構成するレールの間隔が一定ではなく(両端で広く中間部で狭い)、走行体の走行状態が不安定になるという欠点があった。
【特許文献1】実開昭51−4494号公報
【特許文献2】特開平10−179943号公報
【特許文献3】特許第3328479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述したように、回動して分岐方向を選択的に決定する分岐レールでは、カーブを構成する一対の湾曲レール間の幅を均一に構成することができず、走行体の走行が不安定になるという欠点があった。
本願発明は、当該事情に鑑み発明されたものであって、走行体を選択的に分岐させる進路変更装置および進路変更方法であって、分岐レールのカーブ(湾曲)部分であってもレール間幅を略均一にすることが可能な進路変更装置および進路変更方法を提供することを課題とする。また、従来一般の分岐構造は、横方向に回動する分岐用レールを用いたものであるが、当該構造によらない新規な進路変更装置および進路変更方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本願第1の発明は下記の構成を備えることを特徴とする。すなわち、
軌道2または走行路等の案内路によって進行方向が規制される走行体の進路変更装置であって、
上下動可能に構成された複数の案内手段3、4を有し、
当該案内手段3、4は、上昇位置において前記案内路の一部を構成し、前記走行体の車輪または走行体の一部と接触して当該走行体の進行方向を異ならせるようになっていることを特徴とする進路変更装置。
【0006】
また、本願第2の発明は下記の構成を備えることを特徴とする。すなわち、
軌道または走行路等の案内路によって進行方向が規制される走行体の進路変更方法であ
って、
上下動可能に構成された複数の案内手段を設け、
当該案内手段が上昇位置にある場合に前記案内路の一部を構成させ、前記走行体の車輪または走行体の一部と接触して当該走行体の進行方向を異ならせるようにしたことを特徴とする進路変更方法。
【0007】
また、本願第3の発明は下記の構成を備えることを特徴とする。すなわち、
軌道上を走行する走行体の進路変更装置であって、
前記走行体の車輪を案内して、選択された方向へ前記走行体を導く複数の分岐用レールを有し、
当該分岐用レールは、選択された進路に応じて上下動するように構成されており、上昇位置へ移動した際に前記レールの一部を構成するようになっていることを特徴とする進路変更装置。
【0008】
また、本願第4の発明は下記の構成を備えることを特徴とする。すなわち、
軌道上を走行する走行体の進路変更方法であって、
前記走行体の車輪を案内して、選択された方向へ前記走行体を導く複数の分岐用レールを設け、
選択された進路に応じて前記分岐用レールを上動させ、前記レールの一部を構成させるようにしたことを特徴とする進路変更方法。
【発明の効果】
【0009】
本願発明の進路変更装置および進路変更方法は、選択される進行方向に応じて分岐用のレールが選択されることを特徴とする。したがって、分岐に適した形状のレール、その他の案内手段を適宜選択的に使用することができるので、走行体に対して無理のない案内路を構成することができるという効果がある。したがって、進行方向に対して分岐方向の角度を大きくしたような場合(カーブをきつくした場合)であっても、当該部分においてレール間の幅が不均一になるようなことがなく、走行体を安定して走行させることができるという効果がある。
また、本願発明は進路変更装置等として、分岐用の案内手段となるレールが上下方向に動作する新規な機構を提供するものである。したがって、従来のレール玩具等ではできなかったようなレールレイアウトやデザインを行うことができるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本願発明を実施するための最良の形態を図面を用いて説明する。図1は、本願発明の一例を示したものであり、1は進路変更装置を表している。同図に示した進路変更装置1は、鉄道模型等の軌道途中に設けられる、列車模型等の走行体(図示せず)の進行方向を変える分岐(ポイント)部分として構成されている。図1の進路変更装置1は、一例として走行体を直進させる直進軌道(2a、2b)と、水平方向にカーブ(湾曲)して走行体の進行方向を変える分岐軌道(2c、2d)を有している。通常の走行軌道(2、2)から、前記直進軌道(2a、2b)または分岐軌道(2c、2d)に走行体を誘導する部分が分岐部となっている。
なお、図1に示された直進軌道(2a、2b)および分岐軌道(2c、2d)は、先端が切れた状態で作図されているが、実際には走行体が周回走行可能なように、その延長部分が軌道2、2に繋がり、環状のレールを形成するようになっている。また、直進軌道(2a、2b)および分岐軌道(2c、2d)は、鉄道用のレールと同様に走行体の車輪を案内する左右一対のレール対となっており、それぞれ車輪の幅と適合するように均一の幅で配置されている。
【0011】
前記直進軌道の一方(2b)と分岐軌道の一方(2c)は、分岐部の出口となる部分で
交わっており、走行体をどちらの方向へ導くのかを分ける分岐点5となっている。すなわち、当該分岐点5を界として、走行体を直進軌道(2a、2b)または分岐軌道(2c、2d)に案内するようになっている。
当該分岐点5の直前部分には、当該分岐点5と分岐部の入り口となる通常軌道(2、2)の端部(右端部6、左端部7)を結ぶ、直線レールとしての第1の分岐レール3と、湾曲レールとしての第2の分岐レール4が設けられている。
第1の分岐レール3は、後端部3aが前記軌道2の右端部6と近接するとともに、先端部3bが前記分岐点5の頂部付近と近接するように構成されている。また、第2の分岐レール4は、後端部4aが前記軌道2の左端部7と近接するとともに、先端部4bが前記分岐点5の頂部付近と近接するように構成されている。そして、第1の分岐レール3と第2の分岐レール4を選択に用いることで分岐点5と軌道2の右端部6または左端部7を選択的に結び、走行体の分岐部となる案内路を形成するようになっている。
【0012】
本実施の形態では、前記通常軌道(2、2)、直進軌道(2a、2b)および分岐軌道(2c、2d)は、一枚の基板8上に一体的に設けられている。また、本実施の形態では各軌道と基板8は、合成樹脂により一体的に成型されている。
軌道2の右端部6から直進軌道2aに至るまで、および左端部7から分岐軌道2dに至るまでのに至るまでの各レールによって囲まれた領域(軌道2の右端部6および左端部7から分岐点5にかけての領域)内には、開口9または当該開口9に相当する領域が設けられている。当該開口9は、前述した第1の分岐レールとしての直線レール3および第2の分岐レールとしての湾曲レール4を交互に出没させる部分となっている。
【0013】
前記直線レール3および湾曲レール4は、それぞれ後述する駆動機構によって交互に出没して案内路を構成し、それぞれのレールによって選択された方向へ走行体を案内するものである。なお、本実施の形態で述べる直線レールおよび湾曲レールの形状は、その一例を示したものであって、本実施の形態のように直線路と湾曲路によるものであったり、湾曲路と湾曲路を組み合わせたものであっても構わない。また、複合的に分岐を行わせて、3方向、4方向といった多方向への分岐が行えるように構成しても構わないものである。
【0014】
本実施の形態における直線レール3は、通常軌道2の右端部6と分岐点5を結ぶ直線状のレールとなっており、固定レールである直進軌道2aおよび当該直進軌道2aと連続する軌道2とともに、走行体の直進を案内する案内路の一部を構成するようになっている。軌道2の右端部6には、若干の段差部が形成されており、当該段差部に直線レール3の後端が係合するようになっている。
【0015】
湾曲レール4は、通常軌道2の左端部7と分岐点5を結ぶ湾曲したレールとなっており、軌道2の右端部6から分岐軌道2dに亘る湾曲したレール部分と対を成して、走行体を右方向に案内する案内路の一部を構成するようになっている。軌道2の左端部7には、若干の段差部が形成されており、当該段差部に湾曲レール4の後端が係合するようになっている。
また、当該分岐レール4は、前記軌道2の右端部6から分岐軌道2dに亘る湾曲したレール部分に対して、常に同じ間隔を保つように湾曲しているのでレール間隔が一定であり、走行体の案内状態が一定であるという効果を有している。仮に、分岐レール4が直線状であると、レール間隔が中間部で狭くなるので走行体の案内状態を不安定にする場合があるが、湾曲したレールを使用することでこの点を解消することができる。
【0016】
前述したように、直線レール3および湾曲レール4は、それぞれ交互に出没して分岐部における案内路の一部を構成している。以下、図1および図2を中心として、当該直線レール3および湾曲レール4を交互に出没させる機構の一実施例を説明する。
走行体の案内路を構成する各種軌道は、前述した如く基板8上に設けられている。そし
て、当該基板8は、直線レール3および湾曲レール4の駆動機構を取り付けた基台10上に設けられている。当該基台10には、基板8の開口9に臨む開口11を有した収容空間12が設けられている。当該収容空間12には、直線レール3と湾曲レール4を交互に上下動させる駆動機構13が収容されるようになっている。
【0017】
駆動機構13は、主として直線レール3を上面に設けたレール保持体14および湾曲レール4を上面に設けたレール保持体15を上下動可能に収容する収容部16を有したフレーム25を有している。フレーム25の収容部16の側面には開口部17が設けられており、当該開口部17はプレート18によって塞がれるようになっている。プレート18の内面には凹溝が設けられており、当該凹溝内に係合体19が往復動可能に設けられている。当該係合体19は、後述するようにレール保持体14およびレール保持体15の双方と係合し、レール保持体14およびレール保持体15を同時に駆動するようになっている。
【0018】
図2(b)は直線レール3を上面に有するレール保持体14が上昇位置にある場合の駆動機構13の断面図を表しており、図2(a)は図2(b)に示したA−A’線における端面を表している。
また、図2(d)は湾曲レール4を上面に設けたレール保持体15が上昇位置にある場合の駆動機構13の断面図を表しており、図2(c)は図2(d)に示したB−B’線における端面を表している。
【0019】
レール保持体14は、前記収容部16の内壁部分とレール保持体15の間に挟まれた状態で上下動可能に支持されており、側面に上下斜め方向に2本の長孔20、20が平行に形成されたものである。当該長孔20、20は、係合体19に設けられた2本の棒21、21が係合する部位であり、係合体19の往復動に応じて移動する2本の棒21、21と係合し、当該長孔の傾斜によってレール保持体14を上下動させる作用を有するものである。
レール保持体15は、前記レール保持体14の側面と収容部16を塞ぐプレート18に挟まれた状態で上下動可能に支持されており、側面に2本の長孔22、22が上下斜め方向に平行に形成されたものである。断面形状はL字を逆さにした形状であり、長孔22、22を形成した部分の内面が、前記長孔20、20を形成したレール保持体14の断面矩形部分と隣接するようになっている。
また、レール保持体15の長孔22、22とレール保持体14の長孔20、20は、傾斜方向が正反対となるように逆向きに形成されており、当該長孔22、22にも前記係合体19の2本の棒21、21が挿通されている。
【0020】
前記係合体19は、プレート18の内面に形成した凹部にガイドされた状態で前後方向に往復動可能な断面矩形の棒状体であり、プレート18に設けた長孔23を介して、当該係合体19の操作手段となる摘み24と接続されている。
前記係合体19に設けた2本の棒21、21は、それぞれレール保持体15の長孔22、22内を通った後に、レール保持体14側面の長孔20、20と係合するようになっている。そして、レール保持体15の長孔22、22とレール保持体14の長孔20、20は、傾きが正反対となっているので、係合体19の往復移動に伴って棒21、21が往復移動すると、レール保持体14が上昇する場合にはレール保持体15が下降し、レール保持体14が下降する場合にはレール保持体15が上昇するという相対的な動作をするようになっている。
【0021】
上記の構造によって、摘み24を操作して係合体19を往復移動させると、レール保持体14およびレール保持体15が交互に上下移動し、それに伴って直線レール3と湾曲レール4が交互に上下移動し、基板8の開口9を介して出没するようになっている。
図3(a)は、摘み24が右側にあるときに、直線レール3が基板8の開口9を介して
突出して通常軌道2の一方と軌道2bを接続することで、走行体を直進させる案内路を構成した状態を表している。この際、湾曲レール4は降下した状態となっている。
図3(b)は、摘み24が左側にあるときに、湾曲レール4が基板8の開口9を介して突出して通常軌道2の他方と軌道2cを接続することで、走行体を右方向へ分岐させる案内路を構成した状態を表している。この際、直線レール3は降下した状態となっている。
以上説明した本実施の形態に係る進路変更装置1は、進行方向を選択するレールを選択的に出没させることにより、走行体の進行方向を変えることができるようになっているものである。
【0022】
なお、前述した進路変更装置および進路変更方法は、主として鉄道レール上を走行する列車玩具等の走行体に用いる場合を例に説明しているが、本願発明の用途は当該鉄道玩具に限定されるものではない。すなわち、壁で囲まれた通路内を走行するレーシング玩具の場合であれば、走行体をガイドする壁や他の手段を走行路面に対して出没させることにより、本願発明を実施することができる。このように、走行体の進路を変更させる案内手段を走行路面に対して出没させる構成であれば、本願発明の技術的範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本願発明は、玩具車両等の進行方向を変える進路変更装置および進路変更方法に利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本願発明に係る進路変更装置の一例を表した分解斜視図である。
【図2】本願発明に係る進路変更装置に用いる駆動機構の一例を表した説明図である。
【図3】本願発明に係る進路変更装置の動作状態を表す説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 進路変更装置
2 軌道(案内路)
3、4 案内手段
3 第1の分岐レール(直線レール、案内手段)
4 第2の分岐レール(湾曲レール、案内手段)
5 分岐点
6 右端部
7 左端部
8 基板
9 開口
10 基台
11 開口
12 収容空間
13 駆動機構
14 レール保持体
15 レール保持体
16 収容部
17 開口部
18 プレート
19 係合体
20 長孔
22 長孔
21 棒
23 長孔
24 摘み
25 フレーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軌道または走行路等の案内路によって進行方向が規制される走行体の進路変更装置であって、
上下動可能に構成された案内手段を有し、
当該案内手段は、上昇位置において前記案内路の一部を構成し、前記走行体の車輪または走行体の一部と接触して当該走行体の進行方向を異ならせるようになっていることを特徴とする進路変更装置。
【請求項2】
軌道または走行路等の案内路によって進行方向が規制される走行体の進路変更方法であって、
上下動可能に構成された案内手段を設け、
当該案内手段が上昇位置にある場合に前記案内路の一部を構成させ、前記走行体の車輪または走行体の一部と接触して当該走行体の進行方向を異ならせるようにしたことを特徴とする進路変更方法。
【請求項3】
軌道上を走行する走行体の進路変更装置であって、
前記走行体の車輪を案内して、選択された方向へ前記走行体を導く複数の分岐用レールを有し、
当該分岐用レールは、選択された進路に応じて上下動するように構成されており、上昇位置へ移動した際に前記レールの一部を構成するようになっていることを特徴とする進路変更装置。
【請求項4】
軌道上を走行する走行体の進路変更方法であって、
前記走行体の車輪を案内して、選択された方向へ前記走行体を導く複数の分岐用レールを設け、
選択された進路に応じて前記分岐用レールを上動させ、前記レールの一部を構成させるようにしたことを特徴とする進路変更方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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