走行制御装置、及び移動体の走行制御方法
【課題】走行制限が解除された際の急加速を防止した安全な運転を行うこと
【解決手段】車両1は、アンテナ2を介して走行制限信号を受信する。走行制限信号は、走行制限エリアでの移動体の制限速度を含む。走行制御ECU5は、走行制限エリアでの車両速度を制限速度以下となるように制御する。走行制御ECU5は、アンテナ2を介して走行制限エリアでの走行制限の解除を指示する走行制限解除信号を受信する。走行制御ECU5は、当該受信の際に制限速度を超える加速操作を運転者が行っていた場合、車両1の停止制御を行う。
【解決手段】車両1は、アンテナ2を介して走行制限信号を受信する。走行制限信号は、走行制限エリアでの移動体の制限速度を含む。走行制御ECU5は、走行制限エリアでの車両速度を制限速度以下となるように制御する。走行制御ECU5は、アンテナ2を介して走行制限エリアでの走行制限の解除を指示する走行制限解除信号を受信する。走行制御ECU5は、当該受信の際に制限速度を超える加速操作を運転者が行っていた場合、車両1の停止制御を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置、及び移動体の走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、工場等の構内道路や駐車場をはじめとしたエリアでは、車両の急発進や急加速が禁止されるとともに、車両速度が制限されている。なお、このようなエリアを以下の説明では、走行制限エリアと記載する。しかしながら、走行制限エリアにおいても、運転者がブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違える等により、車両が急発進してしまうことがあり得る。これにより、車両が誤って店舗等に突入してしまう等の重大事故が発生している。
【0003】
近年、自動車をはじめとする車両の走行を制御するシステムが開発、開示されている。これらのシステムが安全性を考慮して車両の走行を制御することにより、事故を未然に防ぐことができる。以下、走行制限エリアにおける車両の走行を制御する技術について説明する。
【0004】
特許文献1は、構内道路や駐車場等における自動車の急発進や暴走を抑制する走行制限(解除)信号送信装置、車両に設けられる走行制限装置、及びこれらを備えたシステムを開示している。走行制限信号送信装置は、走行制限エリアの入口に設けられ、走行制限解除信号送信装置は、走行制限エリアの出口に設けられる。また、車両は、走行制限信号または走行制限解除信号を受信する走行制限装置を備える。
【0005】
走行制限信号送信装置は、走行制限エリアの入口において走行制限信号を送信する。車両は、走行制限信号を受信することにより、走行制限エリアでの急加速を抑制するとともに、制限速度以下での走行を実現する。
【0006】
走行制限解除信号送信装置は、走行制限エリアの出口において走行制限解除信号を送信する。車両は、走行制限解除信号を受信することにより、走行制限(急加速の抑制、制限速度以下での走行)を解除し、通常走行に復帰する。これにより、車両は、走行制限エリアにおいて安全な走行を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−196326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1に記載のシステムでは、以下の問題が生じる。当該システムでは、アクセルペダルの踏み込み量に対する制限が設けられていない。そのため、車両の運転者は、走行制限エリア内において、実際の走行速度以上のアクセルペダルの踏み込みを行っている場合であっても、この過度のアクセルペダルの踏み込みを認識することが出来ない。
【0009】
過度のアクセルペダルの踏み込みを行っている状態で走行制限が解除され得るため、車両が走行制限解除と同時に急加速してしまう恐れがある。これにより、車両の安全な運転を行えない危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる走行制御装置の一態様は、
外部から受信した走行制限信号に含まれる制限速度以下の速度に走行制限エリアでの移動体の移動速度を制御する走行制御装置であって、
前記走行制限エリアでの走行制限の解除を指示する走行制限解除信号を受信し、当該受信の際に前記制限速度を超える加速操作を運転者が行っていた場合、前記移動体の停止制御を行う走行制御部、を備える、ものである。
【0011】
本発明にかかる移動体の走行制御方法の一態様は、
走行制限信号に含まれる制限速度以下の速度に走行制限エリアでの移動体の移動速度を制御する走行制御方法であって、
前記走行制限エリアでの走行制限の解除を指示する走行制限解除信号を前記移動体が受信した際に、前記制限速度を超える加速操作を前記移動体の運転者が行っていた場合、前記移動体の停止制御を行う、ものである。
【0012】
本発明では、走行制限解除信号を受信時に、走行制限エリアにおいて制限速度を超える加速操作が行われている場合、移動体を強制的に停止させる。移動体が強制的に停止されるため、移動体が走行制限エリアの外に出る際の急加速を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、走行制限が解除された際の急加速を防止した安全な運転を行うことができる走行制御装置、及び移動体の走行制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】駐車場101の構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる車両1の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる走行制御ECU5の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる走行制御内容判定部52が保持する制御状態の値の遷移を示す概念図である。
【図5】実施の形態1にかかる車両1の通常走行状態(S1)における動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1にかかる車両1の走行制限状態(S2)における動作を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1にかかる車両1の速度警告状態(S3)における動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1にかかる車両1の走行制限状態(S2)における動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1にかかる車両1の速度警告状態(S3)における動作を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態1にかかる車両1の強制停止状態(S4)における動作を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態1にかかる車両1の強制停止状態(S4)における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。本実施形態にかかるシステムは、駐車場(走行制限エリア)の入口において走行制限信号を送信する装置と、出口において走行制限解除信号を送信する装置と、を持つ構成を採る。さらに、車両は、走行制限信号及び走行制限解除信号を受信して走行状態を制御する。
【0016】
はじめに、駐車場101の構成を説明する。駐車場101は、上述の走行制限エリアの一例である。図1は、駐車場101の構成を示す概念図である。駐車場101には、車両の入口と出口が設けられている。駐車場101の入口には、走行制限信号送信装置102が備えられている。駐車場101の出口には、走行制限解除信号送信装置103が備えられている。
【0017】
走行制限信号送信装置102は、車両1が入口を通過する際に、車両1に対して走行制限信号を送信する。走行制限信号には、車両1の走行を制限する情報(たとえば急加速禁止かつ制限速度10km/h以下)が含まれている。走行制限解除信号送信装置103は、車両1が出口を通過する際に、車両1に対して走行制限解除信号を送信する。車両1は、走行制限信号を受信することにより、走行制限エリアに侵入したことを認識する。また、車両1は、走行制限解除信号を受信することにより、走行制限エリア外に退出したことを認識する。
【0018】
続いて、本実施の形態にかかる車両1の構成を説明する。図2は、車両1の構成を示すブロック図である。車両1は、アンテナ2と、スピーカ3と、エンジンECU(Electronic Control Unit)4と、走行制御ECU5と、ブレーキECU6と、車輪速度センサ7と、を備える。車両1は、図示しないエンジン、タイヤ等を適宜有する4輪乗用車等の車両である。
【0019】
車両1に備えられる各処理部(アンテナ2、スピーカ3、エンジンECU4、走行制御ECU5、ブレーキECU6、車輪速度センサ7)は、車両1の走行を制御する走行制御装置を構成する。各処理部の処理は、ハードウェアによる処理、及びソフトウェアによる処理を適宜組み合わせて実現される。
【0020】
アンテナ2は、走行制限信号送信装置102から走行制限信号を受信する。同様に、アンテナ2は、走行制限解除信号送信装置103から走行制限解除信号を受信する。アンテナ2は、受信した走行制限信号、または走行制限解除信号を走行制御ECU5に供給する。
【0021】
スピーカ3は、走行制御ECU5から音声信号を受信し、当該音声信号に基づいて音声を出力する。スピーカ3は、例えばアクセルペダルの踏み込みを警告する音声等を出力する。スピーカ3が出力する音声の具体例は、図5〜図11の説明において後述する。
【0022】
エンジンECU4は、車両1が備えるエンジン(図示せず)を制御する処理部である。エンジンECU4は、走行制御ECU5から加速度制限指示を受信した場合に、エンジン出力の急増を防ぐ制御を行う。エンジンECU4は、走行制御ECU5から加速度制限解除指示を受信した場合に、上述の制御を終了する。さらに、エンジンECU4は、車両1が強制停止されている場合に、エンジンがアイドリング状態であるか否かの情報(アイドリング情報)を走行制御ECU5に定期的に供給する。
【0023】
走行制御ECU5(走行制御部)は、内部の制御状態、走行制限信号または走行制限解除信号の受信、及び車両速度に応じて車両1の走行状態を制御する。走行制御ECU5の構成、動作については図3〜図11を参照して後述する。
【0024】
ブレーキECU6は、走行制限エリアにおいて制限速度を超えた速度で車両1が走行している場合に、図示しないブレーキを制御し、車両1の車両速度を制御する処理部である。ブレーキECU6は、走行制御ECU5から速度制限指示を受信する。速度制限指示を受信した状態において、車速(車輪速度センサ7からの入力値)が走行制限信号に含まれる制限速度を超えた場合に、ブレーキECU6は、ブレーキによる制動を実施する。ブレーキECU6は、ブレーキの制動を実施中であることを示す自動制動実施中情報(実施中)を走行制御ECU5に供給する。車速が走行制限信号に含まれる制御速度以下となった場合、ブレーキECU6は、ブレーキによる制動を終了し、自動制動実施中情報(未実施)を走行制御ECU5に供給する。ブレーキECU6は、走行制御ECU5から走行制限エリアの退出時に速度制限解除指示を受信した場合、上述の制御を終了する。
【0025】
ブレーキECU6は、走行制御ECU5から車両停止指示を受信した場合、ブレーキによる制動を実施し、車両1を停止させる。ブレーキECU6は、走行制御ECU5から車両停止解除指示を受信した場合、車両1を停止させる制動を解除する。
【0026】
車輪速度センサ7は、車両1の車輪の回転数等から車両1の速度を検出する。車輪速度センサ7は、検出した車両1の速度を適宜ブレーキECU6に供給する。
【0027】
次に、図3を参照して、走行制御ECU5の詳細を説明する。走行制御ECU5は、入力インターフェイス51と、走行制御内容判定部52と、出力インターフェイス53と、を備える。
【0028】
入力インターフェイス51は、他の処理部(アンテナ2、エンジンECU4、ブレーキECU6)からの入力を受け付ける処理部である。詳細には、入力インターフェイス51には、アンテナ2を介して走行制限信号または走行制限解除信号が入力される。さらに、入力インターフェイス51には、エンジンECU4からアイドリング情報が供給される。同様に、入力インターフェイス51には、ブレーキECU6から自動制動実施中情報が供給される。入力インターフェイス51は、これらの入力情報(入力信号)を走行制御内容判定部52に供給する。
【0029】
出力インターフェイス53は、走行制御内容判定部52から他の処理部(スピーカ3、エンジンECU4、ブレーキECU6)への指示を送信するインターフェイスである。出力インターフェイス53から出力される各種指示は、図5〜図11の説明において後述する。
【0030】
走行制御内容判定部52は、車両1の制御状態の値を内部に保持する。走行制御内容判定部52は、制御状態の値と入力インターフェイス51からの入力信号に応じて、車両1の走行を制御する。
【0031】
ここで、図4を参照して、走行制御内容判定部52の保持する制御状態の値の遷移について説明する。制御状態は、通常走行状態(S1)、走行制限状態(S2)、速度警告状態(S3)、強制停止状態(S4)のいずれかの値となる。
【0032】
通常走行状態(S1)とは、車両1が走行制限エリア以外のエリアを走行していることを示す値である。走行制限状態(S2)とは、駐車場101等の走行制限エリアを安全に走行している状態(走行制限信号に示された制限速度以下で走行している状態)を示す値である。速度警告状態(S3)とは、走行制限エリアにおいて制限速度以上のアクセル処理を行っている状態を示す値である。強制停止状態(S4)とは、車両1を強制的に停止させている状態を示す値である。
【0033】
走行制御内容判定部52は、図4に示すように、現在の制御状態の値と、外部入力(たとえば走行制限信号の入力)に応じて制御状態を変更し、車両1の走行を制御する。走行制限エリアに入る前には、制御状態の値は、通常走行状態(S1)となる。以下に、各制御状態における車両1の動作を説明する。はじめに、図5を参照し、通常走行状態(S1)における車両1の動作を説明する。図5は、通常走行状態(S1)における車両1の動作を示すフローチャートである。
【0034】
車両1が駐車場101に侵入した場合、走行制限信号送信装置102は、車両1に対して走行制限信号を送信する。走行制御内容判定部52は、アンテナ2及び入力インターフェイス51を介して走行制限信号を受信する(St101:Yes)。走行制限信号を受信した場合、走行制御内容判定部52は、入力された信号の内容を判定する。入力された信号が走行制限信号であった場合、走行制御内容判定部52は、制御状態の値を通常走行状態(S1)から走行制限状態(S2)に遷移させる(St102)。さらに、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してエンジンECU4に対して加速度制限指示を送信し(St103)、ブレーキECU6に対して速度制限指示を送信する(St104)。なお、St103の処理とSt104の処理が同時に行われても良いことは勿論である。
【0035】
エンジンECU4は、入力された加速度制限指示に応じてエンジン出力の急増を防ぐ制御を実施する。ブレーキECU6は、車速(車輪速度センサ7からの入力値)が走行制限信号により指示された制限速度を超えた場合に、ブレーキによる制動を実施する。当該制動処理により、ブレーキECU6は、車両1の速度を制限速度以下に制御する。
【0036】
続いて、制御状態が走行制限状態(S2)である際に、ブレーキECU6による制動処理が行われた場合の各処理部の動作について図6を参照して説明する。図6は、制御状態が走行制限状態(S2)である際に、ブレーキECU6による制動処理が行われた場合の各処理部の動作を示すフローチャートである。
【0037】
ブレーキECU6は、前述のように車速(車輪速度センサ7からの入力値)が走行制限信号により指示された制限速度を超えた場合に、ブレーキによる制動を実施する。さらにブレーキECU6は、ブレーキによる制動制御を実施中であることを示す自動制動実施中情報(実施中)を走行制御ECU5に供給する(St201)。
【0038】
自動制動実施中情報(実施中)が入力された場合(St201:Yes)、走行制御ECU5内の走行制御内容判定部52は、制御状態を走行制限状態(S2)から速度警告状態(S3)に遷移させる(St202)。そして、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してスピーカ3に対して警告音声を出力するように指示する(St203)。ここで、警告音声は、たとえば「制限速度を超えるアクセルペダル操作を行っています。アクセルペダルの踏み込みを緩めてください。」というものである。
【0039】
次に、制御状態が速度警告状態(S3)である際に、ブレーキECU6による制動処理が終了した場合の各処理部の動作について図7を参照して説明する。図7は、制御状態が速度警告状態(S3)である際に、ブレーキECU6による制動処理が終了した場合の各処理部の動作を示すフローチャートである。
【0040】
ブレーキECU6は、車速(車輪速度センサ7からの入力値)が走行制限信号により指示された制限速度以下となった場合に、ブレーキによる制動を終了する。さらに、ブレーキECU6は、制動制御を終了したことを示す自動制動実施中情報(未実施)を走行制御ECU5に供給する(St301)。
【0041】
自動制動実施中情報(未実施)が入力された場合(St301:Yes)、走行制御ECU5内の走行制御内容判定部52は、制御状態を速度警告状態(S3)から走行制限状態(S2)に遷移させる(St302)。そして、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してスピーカ3に対して通知音声を出力するように指示する(St303)。ここで、通知音声は、たとえば「制限速度以下となりました。」というものである。
【0042】
続いて、各状態(S2、S3)において、車両1が走行制限解除信号を受信した場合の動作について説明する。駐車場101の出口から車両1が退出する場合に、走行制限解除信号送信装置103は、走行制限解除信号を送信する。走行制限解除信号は、アンテナ2及び入力インターフェイス51を介して走行制御内容判定部52に供給される。
【0043】
はじめに、走行制限解除信号の受信時に制御状態が走行制限状態(S2)であった場合の各処理部の動作について図8を参照して説明する。図8は、走行制限解除信号の受信時に制御状態が走行制限状態(S2)であった場合の各処理部の動作を示すフローチャートである。
【0044】
走行制御内容判定部52は、走行制限解除信号を受信したかを判定し、受信した場合(St401:Yes)に現在の制御状態の値を取得する。制御状態が走行制限状態(S2)であった場合、走行制御内容判定部52は、制御状態を走行制限状態(S2)から通常走行状態(S1)に遷移させる(St402)。さらに、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してエンジンECU4に加速度制限解除指示を供給する(St403)。また、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してブレーキECU6に速度制限解除指示を供給する(St404)。エンジンECU4は、エンジン出力の急増を防ぐ制御を解除する。ブレーキECU6は、制限速度を超えた場合のブレーキによる制動制御を解除する。
【0045】
次に、走行制限解除信号の受信時に制御状態が速度警告状態(S3)であった場合の各処理部の動作について図9を参照して説明する。図9は、走行制限解除信号の受信時に制御状態が速度警告状態(S3)であった場合の各処理部の動作を示すフローチャートである。
【0046】
走行制御内容判定部52は、走行制限解除信号を受信したかを判定し、受信した場合(St501:Yes)に現在の制御状態の値を取得する。制御状態が速度警告状態(S3)であった場合、走行制御内容判定部52は、制御状態を速度警告状態(S3)から強制停止状態(S4)に遷移させる(St502)。さらに、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してブレーキECU6に車両停止指示を供給する(S503)。そして、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してスピーカ3に対して警告音声を出力するように指示する(St504)。ここで、警告音声は、たとえば「急加速する可能性があるため、車両を停止します。」というものである。車両停止指示を受け付けたブレーキECU6は、ブレーキによる制動を実施し、車両1を強制的に停止させる。
【0047】
続いて、車両1を強制停止(St503)させた場合の各処理部の動作について図10を参照して説明する。車両1が強制停止している場合、エンジンECU4は、入力インターフェイス51を介してエンジンがアイドリング状態であるか否かの情報(アイドリング情報)を走行制御内容判定部52に定期的に供給する。
【0048】
走行制御内容判定部52は、エンジンがアイドリング状態であることを確認できた場合(St601:Yes)、制御状態を強制停止状態(S4)から通常走行状態(S1)に遷移させる(St602)。さらに、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してエンジンECU4に対して加速度制限解除指示を供給する(St603)。これに応じて、エンジンECU4は、エンジン出力の急増を防ぐ制御を解除する。また、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してブレーキECU6に対して速度制限解除指示及び車両停止解除指示を供給する(St604、St605)。速度制限解除指示に応じて、ブレーキECU6は、ブレーキによる制動を解除する。さらに車両停止解除指示に応じて、ブレーキECU6は、車両1を停止させる制御を解除する。
【0049】
次に、車両1を強制停止(St503)させた後にエンジンが一定時間経過してもアイドリング状態にならない場合の各処理部の動作について図11を参照して説明する。走行制御内容判定部52は、制御状態が強制停止状態(S4)となった時点からの経過時間を計測する。経過時間が所定の時間を超えた場合(St701:Yes)、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してスピーカ3に対して警告音声を出力するように指示する(St702)。ここで、警告音声は、たとえば「アクセルペダルを踏まないでください。」というものである。
【0050】
次に、本実施の形態にかかる車両1の効果について説明する。上述したように、走行制御ECU5は、走行制限エリアにおいて制限速度を超える力で加速操作(アクセルの踏み込み)が行われている際に走行制限解除信号を受信した場合、車両1を強制的に停止させる。車両1が強制的に停止されるため、走行制限エリアの外に出る際の急加速を防止することができる。
【0051】
さらに、走行制御ECU5は、エンジンがアイドリング状態となるまで車両1の強制停止を継続するように制御する。すなわち、運転者が安全に運転できる状態になるように操作を行ったことを確認した上で強制停止を解除する。このため、車両1を安全に通常走行できる状態に遷移させることができる。
【0052】
さらにまた、走行制御ECU5は、制御状態が走行制限状態(S2)、速度警告状態(S3)、または強制停止状態(S4)のまま車両1が走行制限エリアから退出することを禁止している。これにより、車両1が、加速の必要な状況で加速することができずに危険な状態となってしまうことを回避することができる。
【0053】
上述のように、走行制御ECU5は、スピーカ3(報知部)を介して車両1の制御状態や運転者に期待する操作を通知している。これにより、運転者が混乱することを回避することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。たとえば、上述の説明では、自動車を前提とした制御について説明したが必ずしもこれに限られず、エンジン等の動力機構を有する二輪車、三輪車等の任意の移動体の制御に応用しても良い。
【0055】
また、上述の説明では、駐車場101が走行制限エリアであるものとして説明したが必ずしもこれに限られず、大学や工場、集合住宅等の構内道路やコンビニエンスストアの駐車スペース等が走行制限エリアであってもよい。
【0056】
さらに、上述の説明では、スピーカ3を介して運転者に対する音声通知を行ったが、必ずしもこれに限られない。例えば、走行制御ECU5は、車両1の制御状態や運転者に期待する操作をカーナビゲーションシステム等に含まれるディスプレイ装置に表示して通知しても良い。すなわち、走行制御ECU5が、警告を含む報知処理の実行を報知部に指示すればよい。
【0057】
さらにまた、走行制御ECU5は、エンジンがアイドリング状態になった場合に制御状態を強制停止状態(S4)から通常走行状態(S1)に遷移させたが、必ずしもこれに限られない。例えば、走行制御ECU5は、アクセルペダルの操作が行われていないことを検出した場合に制御状態を強制停止状態(S4)から通常走行状態(S1)に遷移させてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
2 アンテナ
3 スピーカ
4 エンジンECU
5 走行制御ECU
51 入力インターフェイス
52 走行制御内容判定部
53 出力インターフェイス
6 ブレーキECU
7 車輪速度センサ
101 駐車場
102 走行制限信号送信装置
103 走行制限解除信号送信装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行制御装置、及び移動体の走行制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
集合住宅、工場等の構内道路や駐車場をはじめとしたエリアでは、車両の急発進や急加速が禁止されるとともに、車両速度が制限されている。なお、このようなエリアを以下の説明では、走行制限エリアと記載する。しかしながら、走行制限エリアにおいても、運転者がブレーキペダルとアクセルペダルを踏み間違える等により、車両が急発進してしまうことがあり得る。これにより、車両が誤って店舗等に突入してしまう等の重大事故が発生している。
【0003】
近年、自動車をはじめとする車両の走行を制御するシステムが開発、開示されている。これらのシステムが安全性を考慮して車両の走行を制御することにより、事故を未然に防ぐことができる。以下、走行制限エリアにおける車両の走行を制御する技術について説明する。
【0004】
特許文献1は、構内道路や駐車場等における自動車の急発進や暴走を抑制する走行制限(解除)信号送信装置、車両に設けられる走行制限装置、及びこれらを備えたシステムを開示している。走行制限信号送信装置は、走行制限エリアの入口に設けられ、走行制限解除信号送信装置は、走行制限エリアの出口に設けられる。また、車両は、走行制限信号または走行制限解除信号を受信する走行制限装置を備える。
【0005】
走行制限信号送信装置は、走行制限エリアの入口において走行制限信号を送信する。車両は、走行制限信号を受信することにより、走行制限エリアでの急加速を抑制するとともに、制限速度以下での走行を実現する。
【0006】
走行制限解除信号送信装置は、走行制限エリアの出口において走行制限解除信号を送信する。車両は、走行制限解除信号を受信することにより、走行制限(急加速の抑制、制限速度以下での走行)を解除し、通常走行に復帰する。これにより、車両は、走行制限エリアにおいて安全な走行を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−196326号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら特許文献1に記載のシステムでは、以下の問題が生じる。当該システムでは、アクセルペダルの踏み込み量に対する制限が設けられていない。そのため、車両の運転者は、走行制限エリア内において、実際の走行速度以上のアクセルペダルの踏み込みを行っている場合であっても、この過度のアクセルペダルの踏み込みを認識することが出来ない。
【0009】
過度のアクセルペダルの踏み込みを行っている状態で走行制限が解除され得るため、車両が走行制限解除と同時に急加速してしまう恐れがある。これにより、車両の安全な運転を行えない危険性がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明にかかる走行制御装置の一態様は、
外部から受信した走行制限信号に含まれる制限速度以下の速度に走行制限エリアでの移動体の移動速度を制御する走行制御装置であって、
前記走行制限エリアでの走行制限の解除を指示する走行制限解除信号を受信し、当該受信の際に前記制限速度を超える加速操作を運転者が行っていた場合、前記移動体の停止制御を行う走行制御部、を備える、ものである。
【0011】
本発明にかかる移動体の走行制御方法の一態様は、
走行制限信号に含まれる制限速度以下の速度に走行制限エリアでの移動体の移動速度を制御する走行制御方法であって、
前記走行制限エリアでの走行制限の解除を指示する走行制限解除信号を前記移動体が受信した際に、前記制限速度を超える加速操作を前記移動体の運転者が行っていた場合、前記移動体の停止制御を行う、ものである。
【0012】
本発明では、走行制限解除信号を受信時に、走行制限エリアにおいて制限速度を超える加速操作が行われている場合、移動体を強制的に停止させる。移動体が強制的に停止されるため、移動体が走行制限エリアの外に出る際の急加速を防止することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、走行制限が解除された際の急加速を防止した安全な運転を行うことができる走行制御装置、及び移動体の走行制御方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】駐車場101の構成を示す概念図である。
【図2】本発明の実施の形態1にかかる車両1の構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の実施の形態1にかかる走行制御ECU5の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の実施の形態1にかかる走行制御内容判定部52が保持する制御状態の値の遷移を示す概念図である。
【図5】実施の形態1にかかる車両1の通常走行状態(S1)における動作を示すフローチャートである。
【図6】実施の形態1にかかる車両1の走行制限状態(S2)における動作を示すフローチャートである。
【図7】実施の形態1にかかる車両1の速度警告状態(S3)における動作を示すフローチャートである。
【図8】実施の形態1にかかる車両1の走行制限状態(S2)における動作を示すフローチャートである。
【図9】実施の形態1にかかる車両1の速度警告状態(S3)における動作を示すフローチャートである。
【図10】実施の形態1にかかる車両1の強制停止状態(S4)における動作を示すフローチャートである。
【図11】実施の形態1にかかる車両1の強制停止状態(S4)における動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<実施の形態1>
以下、図面を参照して本発明の実施の形態1について説明する。本実施形態にかかるシステムは、駐車場(走行制限エリア)の入口において走行制限信号を送信する装置と、出口において走行制限解除信号を送信する装置と、を持つ構成を採る。さらに、車両は、走行制限信号及び走行制限解除信号を受信して走行状態を制御する。
【0016】
はじめに、駐車場101の構成を説明する。駐車場101は、上述の走行制限エリアの一例である。図1は、駐車場101の構成を示す概念図である。駐車場101には、車両の入口と出口が設けられている。駐車場101の入口には、走行制限信号送信装置102が備えられている。駐車場101の出口には、走行制限解除信号送信装置103が備えられている。
【0017】
走行制限信号送信装置102は、車両1が入口を通過する際に、車両1に対して走行制限信号を送信する。走行制限信号には、車両1の走行を制限する情報(たとえば急加速禁止かつ制限速度10km/h以下)が含まれている。走行制限解除信号送信装置103は、車両1が出口を通過する際に、車両1に対して走行制限解除信号を送信する。車両1は、走行制限信号を受信することにより、走行制限エリアに侵入したことを認識する。また、車両1は、走行制限解除信号を受信することにより、走行制限エリア外に退出したことを認識する。
【0018】
続いて、本実施の形態にかかる車両1の構成を説明する。図2は、車両1の構成を示すブロック図である。車両1は、アンテナ2と、スピーカ3と、エンジンECU(Electronic Control Unit)4と、走行制御ECU5と、ブレーキECU6と、車輪速度センサ7と、を備える。車両1は、図示しないエンジン、タイヤ等を適宜有する4輪乗用車等の車両である。
【0019】
車両1に備えられる各処理部(アンテナ2、スピーカ3、エンジンECU4、走行制御ECU5、ブレーキECU6、車輪速度センサ7)は、車両1の走行を制御する走行制御装置を構成する。各処理部の処理は、ハードウェアによる処理、及びソフトウェアによる処理を適宜組み合わせて実現される。
【0020】
アンテナ2は、走行制限信号送信装置102から走行制限信号を受信する。同様に、アンテナ2は、走行制限解除信号送信装置103から走行制限解除信号を受信する。アンテナ2は、受信した走行制限信号、または走行制限解除信号を走行制御ECU5に供給する。
【0021】
スピーカ3は、走行制御ECU5から音声信号を受信し、当該音声信号に基づいて音声を出力する。スピーカ3は、例えばアクセルペダルの踏み込みを警告する音声等を出力する。スピーカ3が出力する音声の具体例は、図5〜図11の説明において後述する。
【0022】
エンジンECU4は、車両1が備えるエンジン(図示せず)を制御する処理部である。エンジンECU4は、走行制御ECU5から加速度制限指示を受信した場合に、エンジン出力の急増を防ぐ制御を行う。エンジンECU4は、走行制御ECU5から加速度制限解除指示を受信した場合に、上述の制御を終了する。さらに、エンジンECU4は、車両1が強制停止されている場合に、エンジンがアイドリング状態であるか否かの情報(アイドリング情報)を走行制御ECU5に定期的に供給する。
【0023】
走行制御ECU5(走行制御部)は、内部の制御状態、走行制限信号または走行制限解除信号の受信、及び車両速度に応じて車両1の走行状態を制御する。走行制御ECU5の構成、動作については図3〜図11を参照して後述する。
【0024】
ブレーキECU6は、走行制限エリアにおいて制限速度を超えた速度で車両1が走行している場合に、図示しないブレーキを制御し、車両1の車両速度を制御する処理部である。ブレーキECU6は、走行制御ECU5から速度制限指示を受信する。速度制限指示を受信した状態において、車速(車輪速度センサ7からの入力値)が走行制限信号に含まれる制限速度を超えた場合に、ブレーキECU6は、ブレーキによる制動を実施する。ブレーキECU6は、ブレーキの制動を実施中であることを示す自動制動実施中情報(実施中)を走行制御ECU5に供給する。車速が走行制限信号に含まれる制御速度以下となった場合、ブレーキECU6は、ブレーキによる制動を終了し、自動制動実施中情報(未実施)を走行制御ECU5に供給する。ブレーキECU6は、走行制御ECU5から走行制限エリアの退出時に速度制限解除指示を受信した場合、上述の制御を終了する。
【0025】
ブレーキECU6は、走行制御ECU5から車両停止指示を受信した場合、ブレーキによる制動を実施し、車両1を停止させる。ブレーキECU6は、走行制御ECU5から車両停止解除指示を受信した場合、車両1を停止させる制動を解除する。
【0026】
車輪速度センサ7は、車両1の車輪の回転数等から車両1の速度を検出する。車輪速度センサ7は、検出した車両1の速度を適宜ブレーキECU6に供給する。
【0027】
次に、図3を参照して、走行制御ECU5の詳細を説明する。走行制御ECU5は、入力インターフェイス51と、走行制御内容判定部52と、出力インターフェイス53と、を備える。
【0028】
入力インターフェイス51は、他の処理部(アンテナ2、エンジンECU4、ブレーキECU6)からの入力を受け付ける処理部である。詳細には、入力インターフェイス51には、アンテナ2を介して走行制限信号または走行制限解除信号が入力される。さらに、入力インターフェイス51には、エンジンECU4からアイドリング情報が供給される。同様に、入力インターフェイス51には、ブレーキECU6から自動制動実施中情報が供給される。入力インターフェイス51は、これらの入力情報(入力信号)を走行制御内容判定部52に供給する。
【0029】
出力インターフェイス53は、走行制御内容判定部52から他の処理部(スピーカ3、エンジンECU4、ブレーキECU6)への指示を送信するインターフェイスである。出力インターフェイス53から出力される各種指示は、図5〜図11の説明において後述する。
【0030】
走行制御内容判定部52は、車両1の制御状態の値を内部に保持する。走行制御内容判定部52は、制御状態の値と入力インターフェイス51からの入力信号に応じて、車両1の走行を制御する。
【0031】
ここで、図4を参照して、走行制御内容判定部52の保持する制御状態の値の遷移について説明する。制御状態は、通常走行状態(S1)、走行制限状態(S2)、速度警告状態(S3)、強制停止状態(S4)のいずれかの値となる。
【0032】
通常走行状態(S1)とは、車両1が走行制限エリア以外のエリアを走行していることを示す値である。走行制限状態(S2)とは、駐車場101等の走行制限エリアを安全に走行している状態(走行制限信号に示された制限速度以下で走行している状態)を示す値である。速度警告状態(S3)とは、走行制限エリアにおいて制限速度以上のアクセル処理を行っている状態を示す値である。強制停止状態(S4)とは、車両1を強制的に停止させている状態を示す値である。
【0033】
走行制御内容判定部52は、図4に示すように、現在の制御状態の値と、外部入力(たとえば走行制限信号の入力)に応じて制御状態を変更し、車両1の走行を制御する。走行制限エリアに入る前には、制御状態の値は、通常走行状態(S1)となる。以下に、各制御状態における車両1の動作を説明する。はじめに、図5を参照し、通常走行状態(S1)における車両1の動作を説明する。図5は、通常走行状態(S1)における車両1の動作を示すフローチャートである。
【0034】
車両1が駐車場101に侵入した場合、走行制限信号送信装置102は、車両1に対して走行制限信号を送信する。走行制御内容判定部52は、アンテナ2及び入力インターフェイス51を介して走行制限信号を受信する(St101:Yes)。走行制限信号を受信した場合、走行制御内容判定部52は、入力された信号の内容を判定する。入力された信号が走行制限信号であった場合、走行制御内容判定部52は、制御状態の値を通常走行状態(S1)から走行制限状態(S2)に遷移させる(St102)。さらに、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してエンジンECU4に対して加速度制限指示を送信し(St103)、ブレーキECU6に対して速度制限指示を送信する(St104)。なお、St103の処理とSt104の処理が同時に行われても良いことは勿論である。
【0035】
エンジンECU4は、入力された加速度制限指示に応じてエンジン出力の急増を防ぐ制御を実施する。ブレーキECU6は、車速(車輪速度センサ7からの入力値)が走行制限信号により指示された制限速度を超えた場合に、ブレーキによる制動を実施する。当該制動処理により、ブレーキECU6は、車両1の速度を制限速度以下に制御する。
【0036】
続いて、制御状態が走行制限状態(S2)である際に、ブレーキECU6による制動処理が行われた場合の各処理部の動作について図6を参照して説明する。図6は、制御状態が走行制限状態(S2)である際に、ブレーキECU6による制動処理が行われた場合の各処理部の動作を示すフローチャートである。
【0037】
ブレーキECU6は、前述のように車速(車輪速度センサ7からの入力値)が走行制限信号により指示された制限速度を超えた場合に、ブレーキによる制動を実施する。さらにブレーキECU6は、ブレーキによる制動制御を実施中であることを示す自動制動実施中情報(実施中)を走行制御ECU5に供給する(St201)。
【0038】
自動制動実施中情報(実施中)が入力された場合(St201:Yes)、走行制御ECU5内の走行制御内容判定部52は、制御状態を走行制限状態(S2)から速度警告状態(S3)に遷移させる(St202)。そして、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してスピーカ3に対して警告音声を出力するように指示する(St203)。ここで、警告音声は、たとえば「制限速度を超えるアクセルペダル操作を行っています。アクセルペダルの踏み込みを緩めてください。」というものである。
【0039】
次に、制御状態が速度警告状態(S3)である際に、ブレーキECU6による制動処理が終了した場合の各処理部の動作について図7を参照して説明する。図7は、制御状態が速度警告状態(S3)である際に、ブレーキECU6による制動処理が終了した場合の各処理部の動作を示すフローチャートである。
【0040】
ブレーキECU6は、車速(車輪速度センサ7からの入力値)が走行制限信号により指示された制限速度以下となった場合に、ブレーキによる制動を終了する。さらに、ブレーキECU6は、制動制御を終了したことを示す自動制動実施中情報(未実施)を走行制御ECU5に供給する(St301)。
【0041】
自動制動実施中情報(未実施)が入力された場合(St301:Yes)、走行制御ECU5内の走行制御内容判定部52は、制御状態を速度警告状態(S3)から走行制限状態(S2)に遷移させる(St302)。そして、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してスピーカ3に対して通知音声を出力するように指示する(St303)。ここで、通知音声は、たとえば「制限速度以下となりました。」というものである。
【0042】
続いて、各状態(S2、S3)において、車両1が走行制限解除信号を受信した場合の動作について説明する。駐車場101の出口から車両1が退出する場合に、走行制限解除信号送信装置103は、走行制限解除信号を送信する。走行制限解除信号は、アンテナ2及び入力インターフェイス51を介して走行制御内容判定部52に供給される。
【0043】
はじめに、走行制限解除信号の受信時に制御状態が走行制限状態(S2)であった場合の各処理部の動作について図8を参照して説明する。図8は、走行制限解除信号の受信時に制御状態が走行制限状態(S2)であった場合の各処理部の動作を示すフローチャートである。
【0044】
走行制御内容判定部52は、走行制限解除信号を受信したかを判定し、受信した場合(St401:Yes)に現在の制御状態の値を取得する。制御状態が走行制限状態(S2)であった場合、走行制御内容判定部52は、制御状態を走行制限状態(S2)から通常走行状態(S1)に遷移させる(St402)。さらに、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してエンジンECU4に加速度制限解除指示を供給する(St403)。また、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してブレーキECU6に速度制限解除指示を供給する(St404)。エンジンECU4は、エンジン出力の急増を防ぐ制御を解除する。ブレーキECU6は、制限速度を超えた場合のブレーキによる制動制御を解除する。
【0045】
次に、走行制限解除信号の受信時に制御状態が速度警告状態(S3)であった場合の各処理部の動作について図9を参照して説明する。図9は、走行制限解除信号の受信時に制御状態が速度警告状態(S3)であった場合の各処理部の動作を示すフローチャートである。
【0046】
走行制御内容判定部52は、走行制限解除信号を受信したかを判定し、受信した場合(St501:Yes)に現在の制御状態の値を取得する。制御状態が速度警告状態(S3)であった場合、走行制御内容判定部52は、制御状態を速度警告状態(S3)から強制停止状態(S4)に遷移させる(St502)。さらに、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してブレーキECU6に車両停止指示を供給する(S503)。そして、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してスピーカ3に対して警告音声を出力するように指示する(St504)。ここで、警告音声は、たとえば「急加速する可能性があるため、車両を停止します。」というものである。車両停止指示を受け付けたブレーキECU6は、ブレーキによる制動を実施し、車両1を強制的に停止させる。
【0047】
続いて、車両1を強制停止(St503)させた場合の各処理部の動作について図10を参照して説明する。車両1が強制停止している場合、エンジンECU4は、入力インターフェイス51を介してエンジンがアイドリング状態であるか否かの情報(アイドリング情報)を走行制御内容判定部52に定期的に供給する。
【0048】
走行制御内容判定部52は、エンジンがアイドリング状態であることを確認できた場合(St601:Yes)、制御状態を強制停止状態(S4)から通常走行状態(S1)に遷移させる(St602)。さらに、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してエンジンECU4に対して加速度制限解除指示を供給する(St603)。これに応じて、エンジンECU4は、エンジン出力の急増を防ぐ制御を解除する。また、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してブレーキECU6に対して速度制限解除指示及び車両停止解除指示を供給する(St604、St605)。速度制限解除指示に応じて、ブレーキECU6は、ブレーキによる制動を解除する。さらに車両停止解除指示に応じて、ブレーキECU6は、車両1を停止させる制御を解除する。
【0049】
次に、車両1を強制停止(St503)させた後にエンジンが一定時間経過してもアイドリング状態にならない場合の各処理部の動作について図11を参照して説明する。走行制御内容判定部52は、制御状態が強制停止状態(S4)となった時点からの経過時間を計測する。経過時間が所定の時間を超えた場合(St701:Yes)、走行制御内容判定部52は、出力インターフェイス53を介してスピーカ3に対して警告音声を出力するように指示する(St702)。ここで、警告音声は、たとえば「アクセルペダルを踏まないでください。」というものである。
【0050】
次に、本実施の形態にかかる車両1の効果について説明する。上述したように、走行制御ECU5は、走行制限エリアにおいて制限速度を超える力で加速操作(アクセルの踏み込み)が行われている際に走行制限解除信号を受信した場合、車両1を強制的に停止させる。車両1が強制的に停止されるため、走行制限エリアの外に出る際の急加速を防止することができる。
【0051】
さらに、走行制御ECU5は、エンジンがアイドリング状態となるまで車両1の強制停止を継続するように制御する。すなわち、運転者が安全に運転できる状態になるように操作を行ったことを確認した上で強制停止を解除する。このため、車両1を安全に通常走行できる状態に遷移させることができる。
【0052】
さらにまた、走行制御ECU5は、制御状態が走行制限状態(S2)、速度警告状態(S3)、または強制停止状態(S4)のまま車両1が走行制限エリアから退出することを禁止している。これにより、車両1が、加速の必要な状況で加速することができずに危険な状態となってしまうことを回避することができる。
【0053】
上述のように、走行制御ECU5は、スピーカ3(報知部)を介して車両1の制御状態や運転者に期待する操作を通知している。これにより、運転者が混乱することを回避することができる。
【0054】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。たとえば、上述の説明では、自動車を前提とした制御について説明したが必ずしもこれに限られず、エンジン等の動力機構を有する二輪車、三輪車等の任意の移動体の制御に応用しても良い。
【0055】
また、上述の説明では、駐車場101が走行制限エリアであるものとして説明したが必ずしもこれに限られず、大学や工場、集合住宅等の構内道路やコンビニエンスストアの駐車スペース等が走行制限エリアであってもよい。
【0056】
さらに、上述の説明では、スピーカ3を介して運転者に対する音声通知を行ったが、必ずしもこれに限られない。例えば、走行制御ECU5は、車両1の制御状態や運転者に期待する操作をカーナビゲーションシステム等に含まれるディスプレイ装置に表示して通知しても良い。すなわち、走行制御ECU5が、警告を含む報知処理の実行を報知部に指示すればよい。
【0057】
さらにまた、走行制御ECU5は、エンジンがアイドリング状態になった場合に制御状態を強制停止状態(S4)から通常走行状態(S1)に遷移させたが、必ずしもこれに限られない。例えば、走行制御ECU5は、アクセルペダルの操作が行われていないことを検出した場合に制御状態を強制停止状態(S4)から通常走行状態(S1)に遷移させてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 車両
2 アンテナ
3 スピーカ
4 エンジンECU
5 走行制御ECU
51 入力インターフェイス
52 走行制御内容判定部
53 出力インターフェイス
6 ブレーキECU
7 車輪速度センサ
101 駐車場
102 走行制限信号送信装置
103 走行制限解除信号送信装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部から受信した走行制限信号に含まれる制限速度以下の速度に走行制限エリアでの移動体の移動速度を制御する走行制御装置であって、
前記走行制限エリアでの走行制限の解除を指示する走行制限解除信号を受信し、当該受信の際に前記制限速度を超える加速操作を運転者が行っていた場合、前記移動体の停止制御を行う走行制御部、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記走行制御部は、前記停止制御後に、前記運転者が前記加速操作を終了した場合、または前記移動体の動力機構がアイドリング状態となった場合に、前記移動体を通常走行できる状態とすることを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記走行制御装置は、前記運転者に対する報知を行う報知部を更に有し、
前記走行制御部は、前記移動体の制御状態、及び前記走行制限エリアにおける前記移動体の前記加速操作と前記制限速度との比較に応じて、前記運転者に対する警告を含む報知処理の実行を前記報知部に指示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記走行制御部は、前記停止制御後に、前記運転者が前記加速操作を一定時間以上継続した場合、前記運転者への警告の実行を前記報知部に指示することを特徴とする請求項3に記載の走行制御装置。
【請求項5】
走行制限信号に含まれる制限速度以下の速度に走行制限エリアでの移動体の移動速度を制御する走行制御方法であって、
前記走行制限エリアでの走行制限の解除を指示する走行制限解除信号を前記移動体が受信した際に、前記制限速度を超える加速操作を前記移動体の運転者が行っていた場合、前記移動体の停止制御を行う、走行制御方法。
【請求項1】
外部から受信した走行制限信号に含まれる制限速度以下の速度に走行制限エリアでの移動体の移動速度を制御する走行制御装置であって、
前記走行制限エリアでの走行制限の解除を指示する走行制限解除信号を受信し、当該受信の際に前記制限速度を超える加速操作を運転者が行っていた場合、前記移動体の停止制御を行う走行制御部、
を備える走行制御装置。
【請求項2】
前記走行制御部は、前記停止制御後に、前記運転者が前記加速操作を終了した場合、または前記移動体の動力機構がアイドリング状態となった場合に、前記移動体を通常走行できる状態とすることを特徴とする請求項1に記載の走行制御装置。
【請求項3】
前記走行制御装置は、前記運転者に対する報知を行う報知部を更に有し、
前記走行制御部は、前記移動体の制御状態、及び前記走行制限エリアにおける前記移動体の前記加速操作と前記制限速度との比較に応じて、前記運転者に対する警告を含む報知処理の実行を前記報知部に指示することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の走行制御装置。
【請求項4】
前記走行制御部は、前記停止制御後に、前記運転者が前記加速操作を一定時間以上継続した場合、前記運転者への警告の実行を前記報知部に指示することを特徴とする請求項3に記載の走行制御装置。
【請求項5】
走行制限信号に含まれる制限速度以下の速度に走行制限エリアでの移動体の移動速度を制御する走行制御方法であって、
前記走行制限エリアでの走行制限の解除を指示する走行制限解除信号を前記移動体が受信した際に、前記制限速度を超える加速操作を前記移動体の運転者が行っていた場合、前記移動体の停止制御を行う、走行制御方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−105191(P2013−105191A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−246286(P2011−246286)
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【出願人】(302062931)ルネサスエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】
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