説明

走行可能領域表示装置

【課題】 運転者が直感的に走行可能な領域を認識可能な走行可能領域表示装置を提供すること。
【解決手段】 本発明の走行可能領域表示装置にあっては、任意の地点からの走行可能距離を演算し、蓄積された車両の移動履歴情報に基づいて運転者が認識可能な特徴地点を特定し、走行可能距離により特定される走行可能領域と、特定される特徴地点とを車載画面内の地図上に同時に表示することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両が走行可能な領域を表示する走行可能領域表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、燃料残や燃費等に基づいて走行可能距離を算出し、地図上に算出された走行可能距離を半径とする円形領域を表示することで、運転者に走行可能領域を認識させる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−202013号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示の技術にあっては、燃料残が多く、走行可能距離が長い場合、円形領域が広域になることで範囲や端点を直感的に把握することが困難であった。
【0005】
本発明は、上記問題に着目してなされたもので、運転者が直感的に走行可能な領域を認識可能な走行可能領域表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の走行可能領域表示装置にあっては、任意の地点からの走行可能距離を演算し、蓄積された車両の移動履歴情報に基づいて運転者が認識可能な特徴地点を特定し、走行可能距離により特定される走行可能領域と、特定される特徴地点とを車載画面内の地図上に同時に表示することとした。
【発明の効果】
【0007】
よって、運転者は走行可能な領域と共に、運転者の認識が可能な特徴地点も地図上に表示されるため、直感的に走行可能領域を把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の車両に搭載された走行可能領域表示装置のシステム構成を表す概略図である。
【図2】実施例1の走行可能領域表示装置における演算処理を表すフローチャートである。
【図3】実施例1のデータベース内に蓄積されたトリップデータの集計例を表す図である。
【図4】実施例1の走行可能領域表示状態を表す概略図である。
【図5】実施例2の走行可能領域表示装置における演算処理を表すフローチャートである。
【図6】実施例2の第1及び第2走行可能領域表示状態を表す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0009】
図1は実施例1の車両に搭載された走行可能領域表示装置のシステム構成を表す概略図である。実施例1の車両はバッテリにより駆動する駆動モータを駆動源とする電気自動車であり、駆動モータ及び他の電気的車載機器の全てをバッテリから供給する。走行可能領域表示装置は、主要な演算を実行する演算部01を有する。データベース02は、運転者が過去に行ったことがある地点が統計的に蓄積され、演算部01に情報を送信可能に接続されている。表示部03は、演算部01の演算結果である走行可能領域等を地図等と同時に表示する車載モニタである。GPS04は、グローバルポジショニングセンサであり、日時や自車両の位置情報を取得して演算部01に出力する。演算部01はCAN通信線05に接続されており、同じくCAN通信線05に接続された電力消費量センサ06と、車速センサ07と、バッテリ残量センサ08との間で情報を送受信可能に構成されている。
【0010】
図2は実施例1の走行可能領域表示装置における演算処理を表すフローチャートである。尚、この処理は、図示しない走行可能領域表示ボタンを運転者が押すことで地図上に表示が開始されるものであり、このボタンが押された段階で演算を開始してもよいし、上記演算だけは行い、ボタンが押された段階で表示するように構成してもよい。尚、このボタンはハードウェアスイッチとして備えても良いし、車載画面上にタッチパネル形式で表示されるようにしてもよい。
ステップS1では、GPS04から現在位置及び日時情報を取得する。
ステップS2では、電力消費量センサ06及び車速センサ07のセンサ値に基づいて燃費を計算する。具体的には、現在の車速で現在の電力消費量が継続した場合、単位電力辺りでどの程度の走行距離が走行可能かを演算する。
ステップS3では、バッテリ残量センサ08からバッテリ残量を取得する。
ステップS4では、ステップS2の燃費及びステップS3のバッテリ残量から走行可能距離を計算する。具体的には、バッテリ残量と単位電力辺りの走行距離との積算を行なうことで走行可能距離の計算を行なう。
ステップS5では、走行可能領域を演算する。具体的には、走行可能距離を半径とし、中心を現在の自車両位置とする円を描き、その円周内が走行可能領域、その円周外を非走行可能領域として演算する。
ステップS6では、データベース02に蓄積された過去のトリップデータに基づいて特徴地点を特定する。
ステップS7では、走行可能領域端点から所定の距離にある特徴地点を選定する。
ステップS8では、走行可能領域及び特徴地点を地図上に表示する。
【0011】
〔走行可能領域の演算〕
上記ステップS5において行なわれる走行可能領域の演算について説明する。走行可能領域は、バッテリ残量や車速、電力消費量から演算された走行可能距離から計算され、現在位置を中心とし、半径を走行可能距離とする円形状に設定される。尚、円に限らず、楕円、多角形、線といった方法で表示してもよく特に限定しない。また、走行可能距離は、演算精度を向上させるために、交通情報や勾配情報などを取得し、道路毎に演算した電力量に基づいて計算したものでもよい。
【0012】
〔特徴地点の特定〕
上記ステップS6,S7において行なわれる特徴地点の特定について説明する。特徴地点は、以下の地点を特定する。尚、登録地や目的地とはナビゲーションシステムにおいて設定された場所を意味している。
1)ナビゲーションシステムに登録された登録地
2)現在位置から所定回数以上、目的地設定されている場所
3)現在位置から所定回数以上行っているが、目的地設定されていない場所
4)目的地設定の履歴に含まれる場所であって、直近所定日数以内に出かけた場所
5)かつて今のバッテリ残量と同程度のバッテリ残量で行くことができた場所
6)所定の電力で行くことができた場所
【0013】
ここで使用する現在位置とは、自車両の位置から一定距離内などの周辺領域を含む概念である。特徴地点の特定にあたっては、過去に行ったことのある地点を保持しているデータベースを参照する。データベース02には、出発地点、曜日、時間帯、目的地(トリップ終了地点)、平均電力使用量、トリップ終了地点になる確率といったトリップデータが蓄積されており、これらトリップデータが例えば図3に示すように集計されている。図3は実施例1のデータベース内に蓄積されたトリップデータの集計例を表す図である。尚、このトリップデータはデータベース02内に保持されていてもよいし、データベース02と通信により情報をやり取り可能な情報センタ等のサーバー内に保持されていてもよい。
【0014】
走行可能領域を表示させる際、上記の条件を満たす特徴地点を特定する。特徴地点が複数ある場合には、現在位置、日時、曜日、時間帯等に対してそれぞれ到着地点が使用される確率を計算し、その確率が所定パーセント以上、もしくは確率が高いものから最大所定箇所を特徴地点として絞り込んでもよい。また、特徴地点同士が一定距離内にある場合や同方位にある場合に、確率が高い地点を優先してもよい。その他、走行可能領域の端点(円周上)から一定距離内にある地点を優先するようにしてもよい。
【0015】
また、現在位置、日時、曜日、時間帯等に対してトリップ終了地点が特定できない場合、現在位置から半径Nkm以内(Nは所定値)になる他の現在位置、日時、曜日、時間帯に対するトリップ終了地点として蓄積されている特徴地点を表示してもよい。もしくは、ランドマークなどを表示することとしてもよい。また、今のバッテリ残量でかつて行くことができた地点や、バッテリ残量毎に行くことができた地点を統計化して表示させてもよい。
【0016】
〔表示方法〕
上記ステップS8における走行可能領域及び特徴地点の表示方法について説明する。図4は実施例1の走行可能領域表示状態を表す概略図である。特徴地点の表示は、アイコンや特徴地点を説明する文言を使用して表示する。また、アイコンや文言は、運転者が編集可能としてもよいし、地図や情報センタ等において保持されている情報(アイコン、施設名や地域の名称)でもよい。複数の特徴地点が同時に表示される場合、位置や方位、現在位置からの距離、バッテリ使用量や到達可能性、またトリップ終了地点になる確率などによってアイコンの大きさや色を変更してもよい。また、表示する特徴地点の個数は、到達可能距離や走行可能領域の面積、地点の方位、地図の縮尺に応じて決定してもよい。更に、図4に示すように、確率が高い順に特徴地点を文言として表示し、現在のバッテリ残量や、特徴地点までの到達の可否、到達できない場合に必要な充電時間等を同時に表示することで、更にユーザビリティが向上する。
【0017】
ここで、具体例を挙げてこのように表示することの効果を説明する。例えば運転者が現在のバッテリ残量で自宅から勤務先に到達可能か否かを判断する場合について説明する。例えば、特徴地点を特定することなく単に表示可能領域だけを表示するシステムの場合には、まず、走行可能領域表示ボタンを押し、勤務先のある方向に地図を移動し、勤務先近辺を拡大することで走行可能領域内か否かを判断する必要がある。すなわち、複数回の操作を必要とするため、直感的に判断することは困難である。
これに対し、実施例1の走行可能領域表示装置では、勤務先はほぼ毎日のように向かう先であり、トリップ終了地点となる可能性が極めて高い地点であるから特徴地点として抽出される。よって、走行可能領域表示ボタンを一度押すだけで勤務先がアイコンとして表示されると共に、そのアイコンが表示可能領域内か否かを画面上で素早く判断できる。すなわち、一つの操作で直感的に勤務先が走行可能領域内か否かを判断できる。
【0018】
以上説明したように、実施例1にあっては下記の作用効果を得ることができる。
(1)現在位置(任意の地点)からの走行可能距離を演算するステップ4(走行可能距離演算手段)と、車両の移動履歴情報を蓄積するデータベース02(蓄積手段)と、蓄積された移動履歴情報に基づいて運転者が認識可能な特徴地点を特定するステップS6(特徴地点演算手段)と、ステップS4により特定される走行可能領域と、ステップS6により特定される特徴地点とを車載画面内の地図上に同時に表示するステップS8(表示手段)と、を備えた。
よって、運転者が良く知る場所や道路を同時に表示することによって、走行可能領域、その端点、行くことができない地点などを直感的に把握することができる。
【0019】
(2)ステップS8は、走行可能領域内と走行可能領域外とを線図により区分して表示すると共に、特徴地点は線図の内外に関わらず表示する。
よって、運転者が良く認識している特徴地点を目印として走行可能領域を認識することができ、より直感的に走行可能領域を把握することができる。
【0020】
(3)ステップS8は、走行可能領域の領域端部から所定距離以内の特徴地点を表示する。
これにより、明らかに走行可能な特徴地点や明らかに走行不可能な特徴地点を排除することができ、走行可能領域端部の位置を特徴地点によって直感的に把握することができる。
【0021】
〔実施例2〕
次に実施例2について説明する。基本的な構成は実施例1と同様であるため、異なる点についてのみ説明する。図5は実施例2の走行可能領域表示装置における演算処理を表すフローチャートである。
ステップS21では、バッテリ残量センサ08からバッテリ残量を取得する。
ステップS22では、電力消費量センサ06及び車速センサ07のセンサ値に基づいて燃費を計算する。具体的には、現在の車速で現在の電力消費量が継続した場合、単位電力辺りでどの程度の走行距離が走行可能かを演算する。そして、バッテリ残量と単位電力辺りの走行距離との積算を行なうことで走行可能距離の計算を行なう。
ステップS23では、GPS04から現在位置及び日時情報を取得する。
ステップS24では、データベース02に蓄積された過去のトリップデータに基づいて特徴地点を特定する。
ステップS25では、特徴地点の方位に対する最新の交通情報及び勾配情報を取得する。
ステップS26では、ステップS22で計算された走行可能距離に基づいて第1走行可能領域を演算すると共に、ステップS25で取得された情報に基づいて第2走行可能領域を演算する。具体的には、走行可能距離を半径とし、中心を現在の自車両位置とする円を描き、その円周内を第1走行可能領域とする。また、特徴地点の方向における交通情報や勾配情報により精度の高い走行可能領域を算出し、現在位置と特徴地点とを結ぶ線からは大幅に外れないと想定した場合に到達可能な領域を第2走行可能領域とする。
ステップS27では、第1及び第2走行可能領域及び特徴地点を地図上に表示する。
【0022】
〔第2走行可能領域の特定〕
特徴地点の特定や第1走行可能領域の特定については実施例1と同様であるため、第2走行可能領域の特定について説明する。図6は実施例2の第1及び第2走行可能領域表示状態を表す概略図である。
走行可能領域の推定精度を向上するために、交通状況や勾配状況を考慮し、道路リンク毎に必要な電力量を計算するシステムが存在する。しかし、計算量が多く、現在位置に対して全方位を計算範囲とすると、膨大な計算が必要となる。
そこで、計算量削減方法として、同時に表示される特徴地点のある方位についてのみ、道路リンク毎に電力消費量を計算し、それ以外の方位にあっては、計算量の少ない第1走行可能領域として表示させることとした。
【0023】
すなわち、運転者があまり行くことがない場所や初めて行く場所に対しては、ナビゲーションシステムに目的地設定をすると考えられるため、そのルートに沿って精度の高い演算をすればよい。しかしながら、普段から行き慣れた場所に対しては特に目的地を設定することはなく、このような場合には全方位に向けて演算が必要となる。一方、特に目的地を設定していない場合は、特徴地点に向かう可能性が高いと考えられるため、特徴地点を対象とした精度の高い演算を行なうことで、運転者のニーズに沿った精度の高い走行可能領域を少ない演算で表示することができる。
【0024】
以上、実施例に基づいて本発明を説明したが、上記実施例に限らず、他の構成であっても本発明に含まれる。実施例では、バッテリの電力を用いて走行する電気自動車について説明したが、ガソリン等の液体燃料を用いた車両であっても同様に適用可能である。
【符号の説明】
【0025】
01 演算部
02 データベース
03 表示部
06 電力消費量センサ
07 車速センサ
08 バッテリ残量センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の地点からの走行可能距離を演算する走行可能距離演算手段と、
車両の移動履歴情報を蓄積する蓄積手段と、
前記蓄積された移動履歴情報に基づいて運転者が認識可能な特徴地点を特定する特徴地点演算手段と、
前記走行可能距離演算手段により特定される走行可能領域と、前記特徴地点演算手段により特定される特徴地点とを車載画面内の地図上に同時に表示する表示手段と、
を備えたことを特徴とする走行可能領域表示装置。
【請求項2】
請求項1に記載の走行可能領域表示装置において、
前記表示手段は、走行可能領域内と走行可能領域外とを線図により区分して表示すると共に、前記特徴地点は前記線図の内外に関わらず表示することを特徴とする走行可能領域表示装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の走行可能領域表示装置において、
前記表示手段は、前記走行可能領域の領域端部から所定距離以内の前記特徴地点を表示することを特徴とする走行可能領域表示装置。
【請求項4】
任意の地点からの走行可能距離を演算するステップと、
車両の移動履歴情報を蓄積するステップと、
前記蓄積された移動履歴情報に基づいて運転者が認識可能な特徴地点を特定するステップと、
前記演算された走行可能距離により特定される走行可能領域と、前記特定された特徴地点とを車載画面内の地図上に同時に表示するステップと、
からなる走行可能領域表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−50367(P2013−50367A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−188123(P2011−188123)
【出願日】平成23年8月31日(2011.8.31)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】