説明

走行情報表示装置

【課題】一般車両を改造した改造競技車両に適した総合的な走行情報を運転手に表示できる走行情報表示装置を提供する。
【解決手段】一般車両又は改造競技車両の走行情報を表す計測データを取得する計測データ取得部1と、一般車両又は改造競技車両の走行画像を表す画像データを撮影する画像データ取得部2と、計測データ取得部1から計測データを、画像データ取得部2から画像データをそれぞれ取り込み、前記計測データを視覚化された表示データに変換し、前記表示データを画像データに重ね合わせて解析データを生成するデータ処理部3と、データ処理部3から出力される解析データを視覚化された走行情報として表示するデータ表示部4とからなる走行情報表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般車両又は一般車両を改造した競技車両(改造競技車両)に搭載して、前記改造競技車両の走行情報を表示する走行情報表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、交通事故に際する一般車両の挙動や運転者の運転傾向等を詳細に解析するため、運行状況を適切に管理できる運行管理システムが存在する(特許文献1)。特許文献1の運行管理システムは、一般車両の運行状況を計測するセンサ、バッファ、記録媒体を備えた媒体装着機構、そして制御装置からなるデータレコーダを用いて構成される。この運行管理システムは、交通事故に際する一般車両の挙動や運転者の運転傾向等を詳細に解析することを目的としているので、目的に応じて設定した一般挙動特徴を表す一般挙動条件や、前記一般挙動から逸脱した特定挙動特徴を表す特定挙動条件を計測データと比較し、一般挙動条件を満たす計測データ(第1データ)や、特定挙動条件を満たす計測データ(第2データ)を、それぞれ個別に記録媒体へ書き込むようになっている。
【0003】
一般挙動条件を満たす計測データ(第1データ)は、一般車両の発進、停止、旋回、加速又は減速に際する加速度データ、角速度データ、速度を表すデータを挙げている。また、特定挙動条件を満たす計測データ(第2データ)は、一般挙動特徴を逸脱する危険な挙動特徴に適合する加速度データ、角速度データ、速度を表すデータを挙げている。このほか、一般車両の強度を示す前記各種データを取得した際の前記挙動を視覚的に把握するため、撮像装置を追加し、計測データと時間軸上でリンクさせながら画像データを記録媒体に書き込む構成が提案されている。しかし、あくまで交通事故に際する一般車両の挙動や運転者の運転傾向等を詳細に解析することを目的としていることから、前記計測データ及び画像データは記録媒体に記録されるのみで、一般車両の走行中に表示されることはなく、回収した記録媒体から取得した計測データ及び画像データは運行管理支援装置の表示装置に表示されるのみである。
【0004】
【特許文献1】特開2001-236537号公報(特許請求の範囲、[0014]、[0027])
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
走行情報の記録が望まれる対象として、上記特許文献1が対象とする一般車両のほか、周回道路(いわゆるサーキット)を周回する競技車両(レースカー)を挙げることができる。このうち、フォーミュラカー等の専用競技車両は、必要に応じた走行情報を取得、解析できる専用計測装置を搭載する場合が通例であるが、一般車両を改造した改造競技車両は専用装置を搭載できない又は難しかった。確かに、例えば改造競技車両が走行する周回道路に埋め込まれた磁石を検知する周回計測装置等が市販されているので、こうした個別計測装置を搭載して特定の走行情報を取得することはできたが、改造競技車両の総合的な走行情報を取得することは未だ実現されていない。
【0006】
この点、改造競技車両に特許文献1の運行管理システムを利用することが考えられるが、前記運行管理システムは、一般道路における一般車両の走行情報を記録することに最適化した構成になっており、改造競技車両の走行情報を取得することに適していない。例えば、周回道路を走行する改造競技車両の挙動は、一般車両に比べて変化が激しく、車載コンピュータから出力される速度データやエンジン回転数データをそのまま取得しても、実際に周回道路を走行する改造競技車両の挙動を正しく表すことにならない。また、改造競技車両の走行情報として、周回数(ラップ数)や周回時間(ラップタイム)の取得も望まれる。
【0007】
また、改造競技車両特有の課題として、取得した走行情報を視覚化し、逐次運転手に表示することがある。すなわち、運転手が運転操作する改造競技車両の総合的な走行情報を走行中に知ることで、改造競技車両の運転操作を逐次修正できることが望まれるわけである。そこで、特許文献1の運行管理システムを流用するのではなく、あくまで改造競技車両に適した総合的な走行情報を運転手に表示できる走行情報表示装置を開発するため、計測データの取得や走行情報の表示態様について検討した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
検討の結果開発したものが、一般車両又は一般車両を改造した改造競技車両に搭載し、前記改造競技車両の走行情報を表示する走行情報表示システムであって、一般車両又は改造競技車両の走行情報を表す計測データを取得する計測データ取得部と、一般車両又は改造競技車両の走行画像を表す画像データを撮影する画像データ取得部と、計測データ取得部から計測データを、画像データ取得部から画像データをそれぞれ取り込み、前記計測データを視覚化された表示データに変換し、前記表示データを画像データに重ね合わせて解析データを生成するデータ処理部と、データ処理部から出力される解析データを視覚化された走行情報として表示するデータ表示部とからなる走行情報表示装置である。本発明は、主として改造競技車両を対象とするが、前記改造競技車両は一般車両を改造したものであるから、一般車両にも適用できる。
【0009】
本発明の走行情報表示装置は、計測データ取得部により数値的な走行情報を計測データとして取得し、併せて画像データ取得部により視覚的な走行情報を画像データとして取得して、データ処理部で前記計測データを視覚化した表示データに変換した上で前記画像データに重ね合わせ、一般車両又は改造競技車両の総合的な走行情報を表す解析データとして、データ表示部により運転手に表示する。これにより、運転手はデータ表示部を見て、一般車両又は改造競技車両の運転操作を逐次修正できるようになる。ここで、本発明の走行情報表示装置にデータ処理部から出力される解析データを逐次記録するデータ記録部を追加すれば、走行後、更に運転手以外の者が解析データを見ることができ、客観的に総合的な走行情報を評価できるようになる。
【0010】
運転手に表示する走行情報は、少なくとも一般車両又は改造競技車両の車速、周回数、周回時間、エンジン回転数、一般車両又は改造競技車両に加わる負荷、一般車両又は改造競技車両の姿勢、そして一般車両又は改造競技車両の走行状態を表す走行画像である。まず、改造競技車両の車速を取得するデータ取得部は、人工衛星から電波信号を受信するGPS測位装置を備え、受信した電波信号から一般車両又は改造競技車両の実速度データを計測データとして取得する。このデータ取得部は、外部に基準点を置くGPS測位装置により、タイヤの空転や車体の横移動(ドリフト)等の影響を排除し、一般車両又は改造競技車両が実際に走行する際の実速度データを取得する。実速度データは、データ処理部で数値化され、一般車両又は改造競技車両の車速を表す表示データに変換される。
【0011】
次に、周回数を取得するデータ取得部は、一般車両又は改造競技車両が走行する周回道路に埋め込まれた磁石を検知する周回計測装置を備え、磁石を検知して出力される周回データを計測データとして取得する。周回計測装置は、磁気センサから構成される。周回時間は前記周回データを利用することで、容易に取得できる。すなわち、データ処理部は、計時手段を有し、データ取得部から周回データが取り込まれるタイミングを区切りとする周回時間を計測データとして算出する。こうした周回数及び周回時間は、既製の個別計測装置を利用し、前記個別計測装置から出力される周回数や周回時間の計測データをデータ処理部に取り込んでもよい。周回データは、データ処理部で数値化され、周回数を表す表示データに変換され、また周回時間はそのまま表示データとして取り扱われる。
【0012】
一般車両又は改造競技車両の車速やエンジン回転数については、通常一般車両に搭載されている車載コンピュータを利用して取得することもできる。すなわち、データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の車載コンピュータに接続するコンピュータ用コネクタを備え、前記車載コンピュータから出力される一般車両又は改造競技車両の推定速度データや一般車両又は改造競技車両のエンジン回転数データのいずれか一方又は双方を計測データとして取得する。推定速度データは、後述する速度計測装置から出力されるタイヤの回転数に応じたパルスデータを基礎として、エンジン回転数や現在のギヤ比及びタイヤの径等を勘案して、車載コンピュータが算出する速度データである。この推定速度データ及びエンジン回転数データは、上述の実速度データ同様、データ処理部で数値化され、一般車両又は改造競技車両の車速やエンジン回転数を表す数字からなる表示データに変換される。
【0013】
ここで、既述したように、タイヤの空転や車体の横移動(ドリフト)等の影響により、車載コンピュータから出力される推定速度データは、一般車両又は改造競技車両の車速を必ずしも正確に表さない虞がある。そこで、データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の車載コンピュータに、タイヤの回転に比例するパルスデータを出力する速度計測装置に接続するセンサ用コネクタを備え、前記速度計測装置から出力されるタイヤの回転数に比例するパルスデータを計測データとして取得するようにしてもよい。同様に、データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の車載コンピュータに、エンジンの回転に比例するパルスデータを出力する回転数計測装置に接続するセンサ用コネクタを備え、前記回転数計測装置から出力されるエンジンの回転に比例するパルスデータを計測データとして取得してもよい。
【0014】
一般車両又は改造競技車両に加わる負荷は、一般車両又は改造競技車両に加わる加速度の方向が重要になることから、データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向に加わる負荷を検知する加速度計測装置を備え、前記加速度計測装置から出力される一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向の加速度データを計測データとして取得する構成がよい。ここで、加速度計測装置は、単体で多方向に加わる負荷を検知する多軸加速度センサからなる構成や、一般車両又は改造競技車両に対して前後方向及び左右方向それぞれに対応した複数の単軸加速度センサから構成してもよい。加速度データは、上述の実速度データ同様、データ処理部で数値化され、一般車両又は改造競技車両に加わる負荷を表す数字からなる表示データに変換される。
【0015】
一般車両又は改造競技車両に加わる負荷は、一般車両又は改造競技車両の車速、エンジン回転数や周回数及び周回時間と異なり、数値により表示されるより、例えば矢印の大きさ等、図形の大きさ又は形状による表現が直感的に把握しやすい。そこで、データ処理部は、データ取得部から取り込まれる加速度データを一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向に対応した図形の大きさ又は形状の一方又は双方の変化からなる表示データに変換し、画像データ取得部から取り込まれる画像データに重ね合わせて解析データを生成するとよい。これにより、運転手は、画像表示部に表示される図形の大きさ又は形状の変化から、直感的に一般車両又は改造競技車両に加わる負荷を把握できる。
【0016】
また、走行中の一般車両又は改造競技車両の姿勢も重要な走行情報である。そこで、データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の各サスペンションの変位を検知する変位計測装置を備え、前記変位計測装置から出力される一般車両又は改造競技車両の各サスペンションの変位データを計測データとして取得する構成がよい。変位計測装置は、ストロークセンサから構成される。データ処理部は、データ取得部から取り込まれる変位データを一般車両又は改造競技車両の各サスペンションに対応した図形の変化からなる表示データに変換し、画像データ取得部から取り込まれる画像データに重ね合わせて解析データを生成する。これにより、運転手は、画像表示部に表示される図形の変化から、直感的に一般車両又は改造競技車両の姿勢を把握できる。
【0017】
走行中の一般車両又は改造競技車両の姿勢は、次のようにしても取得できる。すなわち、データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向に離れて配置され、前記配置個所の浮き沈みを検知する傾斜度計測装置を備え、前記傾斜度計測装置から出力される一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向の傾斜度データを計測データとして取得する。傾斜度測定装置は、傾斜度センサから構成される。データ処理部は、データ取得部から取り込まれる傾斜度データを一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向に対応した図形の変化からなる表示データに変換し、画像データ取得部から取り込まれる画像データに重ね合わせて解析データを生成する。
【0018】
このほか、計測データから変換した表示データ及び画像データを重ね合わせた解析データを総合的な走行情報とし、前記走行情報から一般車両又は改造競技車両の走行状態の良否を判別するには、解析データの情報量の大部分を占める画像データが重要となる。そこで、本発明の走行情報表示装置の画像データ取得部は、一般車両又は改造競技車両のフロントガラスから見た前方視界の画像データを撮影するようにした。より好ましくは、一般車両又は改造競技車両の車内中心又は後方からフロントガラスを通じて見た前方視界を、運転手を含めて画像データを撮影するとよい。これにより、視覚化された計測データが、運転手の運転操作をも含めた画像データ上に重ね合わされた総合的な走行情報となる解析データを得ることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明により、一般車両又は改造競技車両に適した総合的な走行情報を運転手に表示できる走行情報表示装置が提供できる。これは、本発明が少なくとも一般車両又は改造競技車両の車速、周回数、周回時間、エンジン回転数、一般車両又は改造競技車両に加わる負荷、一般車両又は改造競技車両の姿勢、そして一般車両又は改造競技車両の走行状態を表す走行画像を、それぞれ計測データ及び画像データとして取得し、計測データを視覚化した表示データに変換した後、前記画像データに重ね合わせた解析データとして画像表示部により運転手に一括して表示するようにしたことによる効果である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明を改造競技車両6に適用した場合における実施形態について図を参照しながら説明する。図1は本発明に基づく走行情報表示装置の一例を示したブロック図、図2は計測データ取得部1、画像データ取得部2、データ処理部3、データ表示部4及びデータ記録部5の配置関係を表す改造競技車両6の平面図であり、図3はデータ表示部4に表示される解析データの一例を表す参考図である。本例は、本発明の好適な例として改造競技車両6の場合を説明するが、走行情報表示装置の構成や配置関係を同一にしたまま、一般車両にも適用できる。この場合、一般車両には不要な計測データは、表示データに変換しない又は変換しても画像データに重ね合わさないこともできる。
【0021】
本例の走行情報表示装置は、図1に見られるように、改造競技車両6の走行情報を表す各種計測データを取得する計測データ取得部1と、改造競技車両6の走行画像を表す画像データを撮影する画像データ取得部2と、計測データ取得部1から計測データを、画像データ取得部2から画像データをそれぞれ取り込み、前記計測データを視覚化された表示データに変換し、前記表示データを画像データに重ね合わせて解析データを生成するデータ処理部3と、データ処理部3から出力される解析データを視覚化された走行情報として表示するデータ表示部4と、データ処理部3から出力される解析データを逐次記録するデータ記録部5とから構成される。
【0022】
本例の計測データ取得部1は、改造競技車両6の実速度データを取得するGPS測位装置11と、改造競技車両6の周回データを取得する周回計測装置12と、改造競技車両6に加わる負荷を前後方向及び左右方向の加速度データとして取得する加速度計測装置13と、改造競技車両6の姿勢を改造競技車両6の前後方向及び左右方向の傾斜度データとして取得する傾斜度計測装置14と、改造競技車両6のタイヤの回転に比例するパルスデータを出力する速度計測装置62に接続するセンサ用コネクタと、改造競技車両6のエンジンの回転に比例するパルスデータを出力する回転数計測装置63に接続するセンサ用コネクタとから構成される。また、車載コンピュータ61にコンピュータ用コネクタを接続して、推定速度データ及び回転数データを取得してもよい。図1中、各センサ用コネクタ及びコンピュータ用コネクタは図示を省略している。
【0023】
GPS測位装置11は、複数の人工衛星から送信される各電波信号をアンテナにより受信し、前記電波信号から改造競技車両6の3次元位置を算出し、更に単位時間当たりの3次元位置の変化から改造競技車両6の実速度データを算出して、前記実速度データを計測データとしてデータ処理部3に出力する。データ処理部3は、レベル変換回路311を介して実速度データをCPU31に取り込み、前記実速度データを数値化して、改造競技車両6の車速を表す表示データに変換する。このGPS測位装置11により取得される実速度データは、タイヤの空転や車体の横移動(ドリフト)等の影響を排除した実際の車速を表わす。GPS測位装置11は、アンテナと一体の装置構成として、例えば図2に見られるように、改造競技車両6のダッシュボード上に配置する。
【0024】
周回計測装置12は、改造競技車両6が走行する周回道路に埋め込まれた磁石を検知する磁気センサからなる構成で、出力される周回データを計測データとしてデータ処理部3に取り込む。データ処理部3は、前記周回データをCPU31に取り込み、周回道路に埋め込まれた磁石を検知した時点で出力される周回データから、周回道路を1周したと判断する。同時に、データ処理部3はCPU31に付随する計時手段(図示略)により、取り込んだ周回データから、周回道路を1周したと判断したタイミングを区切りとする周回時間を計測データとして算出する。周回データは、データ処理部3で数値化され、周回数を表す表示データに変換され、また周回時間はそのまま表示データとして取り扱われる。周回計測装置12は、改造競技車両6の影響を避けるため、例えば図2に見られるように、改造競技車両6の車体フレーム脇に配置する。
【0025】
加速度計測装置13は、一般車両又は改造競技車両6の前後方向及び左右方向に加わる負荷を検知する2軸加速度センサからなる構成で、前記2軸加速度センサから出力される各方向それぞれの加速度データを計測データとしてデータ処理部3に取り込む。データ処理部3は、前記各加速度データをCPU31に取り込み、各加速度データの大きさから、改造競技車両6の前後方向及び左右方向に加わる負荷の大きさを取得する。この改造競技車両6の前後方向及び左右方向に加わる負荷の大きさは、改造競技車両6の前後方向及び左右方向に対応した十字の塗りつぶしの大きさとして表される(図3参照)。加速度計測装置13は、改造競技車両6のどの位置に配しても構わないので、本例ではデータ処理部3の筐体に内蔵している。
【0026】
傾斜度計測装置14は、改造競技車両6の各車輪に対応して配された4基の傾斜度センサからなる構成で、前記傾斜度センサの配置個所の浮き沈みを検知した傾斜度データを計測データとしてデータ処理部3に取り込む。データ処理部3は、前記各傾斜度データをCPU31に取り込み、各傾斜度データの大きさから改造競技車両6の姿勢を取得する。この改造競技車両6の姿勢は、改造競技車両6の各車輪に付された矢印の大きさ及び方向として表される(図3参照)。CPU31の処理能力さえ許せば、解析データ中に表示する改造競技車両6の2次元画像又は3次元画像をリアルタイムに傾ける動画像を表示データとしてもよい。傾斜度計測装置14は、配置個所の浮き沈みにより改造競技車両6の姿勢を検知するので、図2に見られるように、改造競技車両6の浮き沈みを左右するサスペンションを備えた各車輪に対応した位置に配される。これから、傾斜度計測装置14に代えて、サスペンションの変位を変位データとして計測する変位計測装置を用いてもよい。
【0027】
センサ用コネクタは、改造競技車両6のタイヤの回転数に比例するパルスデータを出力する速度計測装置62又は改造競技車両6のエンジンの回転に比例するパルスデータを出力する回転数計測装置63に接続し、またコンピュータ用コネクタは車載コンピュータ61にコンピュータ用コネクタを接続する。本例では、GPS測位装置11を利用して改造競技車両6の実速度データを取得しているので、推定速度データは不要である。これから、GPS測位装置11が利用できない場合に、まず速度計測装置62からタイヤの回転数に比例するパルスデータを取得してデータ処理部3にて推定速度データを算出し、速度計測装置62にセンサ用コネクタの接続が難しい場合に、車載コンピュータ61から推定速度データを取得する。これに対し、エンジンの回転数は重要な走行情報になるから、改造競技車両6に対する接続の難易に応じて、センサ用コネクタを回転数計測装置63に接続するし、回転数計測装置63にセンサ用コネクタの接続が難しい場合に、コンピュータ用コネクタを車載コンピュータ61に接続して、回転数データを取得することが望ましい。
【0028】
データ処理部3は、車載コンピュータ61から取得する推定速度データ又は回転数データを、レベル変換回路311を介してCPU31に取り込み、前記速度データ又は回転数データを数値化して、改造競技車両6の車速又はエンジンの回転数を表す表示データに変換する。また、データ処理部3は、速度計測装置62や回転数計測装置63から取得するパルスデータを、整形回路312を介してCPU31に取り込み、前記パルスデータからそれぞれ推定速度データ又は回転数データを算出した後、前記推定速度データ又は回転数データを数値化して、改造競技車両6の車速又はエンジンの回転数を表す表示データに変換する。車載コンピュータ61は、例えば図2に見られるように、改造競技車両6のダッシュボード内に納められており、コンピュータ用コネクタは前記車載コンピュータ61に接続する。また、センサ用コネクタは、速度計測装置62又は回転数計測装置63に直接接続するのではなく、車載コンピュータ61まで延びる信号線等に前記車載コンピュータ61近傍で接続するとよい。
【0029】
データ処理部3は、走行情報表示装置の中枢部であり、演算処理を担うCPU31を中心に、画像データの取り込み及び書き出しを担うビデオ処理IC32、起動又は停止や条件設定等を担う入力インタフェースである操作パネル33のほか、計測データ又は画像データのレベル変換回路311、整形回路312等から構成される。CPU31は、各計測データを取り込んで数値化した表示データを作り出し、別途取り込んだ画像データと前記表示データを重ね合わせて、データ表示部4に表示する解析データを作り出す。操作パネル33は、データ処理部3、画像データ取得部2、画像表示部又はデータ記録部5の起動又は停止や解析データの表示構成等の条件設定等を担う。データ処理部3は、操作パネル33を除いて自由に配置できるが、本例のデータ処理部3は筐体に加速度計測装置13を内蔵することから、図2に見られるように、改造競技車両6の重心に近い車体フレーム中央付近に配置している。操作パネル33は、ダッシュボード上等、運転手から操作しやすい場所に配置することが好ましい。
【0030】
画像データ取得部2は、改造競技車両6の走行画像を表す画像データを撮影するビデオカメラから構成され、前記ビデオカメラにより改造競技車両6のフロントガラスから見た前方視界の画像データを撮影し、取得する。データ処理部3は、レベル変換回路311、ビデオ処理IC32を介して画像データをCPU31に取り込み、上記各計測データから得られた表示データを前記画像データに重ね合わせて、解析データを作り出す。本例は、図2に見られるように、画像データ取得部2を後部座席から前方に向けて配置している。これにより、フロントガラスから見た前方視界の画像データに運転手を含めることができる(図3参照)。
【0031】
データ表示部4は、データ処理部3から出力される解析データを視覚化された走行情報として表示するディスプレイから構成される。前記ディスプレイは、運転手の視界を妨げない大きさの液晶ディスプレイが好ましいが、例えばフロントガラスに投影する透過型ヘッドアップディスプレイでもよい。データ処理部3は、CPU31からビデオ処理IC32、レベル変換回路311を介して解析データをデータ表示部4へ出力し、データ表示部4が逐次更新される解析データを表示する。データ表示部4は、運転手に対して視覚化された走行情報である解析データを見せる必要から、図2に見られるように、ダッシュボード上、運転手に向けて配置される。ここで、解析データの大部分を占める画像データが、フロントガラスから見た前方視界であることから(図3参照)、運転手はデータ表示部4に表示される解析データを違和感なく見ることができる。
【0032】
データ記録部5は、データ処理部3から出力される解析データを逐次記録する記憶装置から構成される。本発明の走行情報表示装置において作られる視覚化された走行情報は、各種計測データを視覚化した表示データを画像データに重ね合わせた構成であり、全体として画像データと変わらない。これから、データ記録部5は、従来公知の各種ビデオレコーダを利用できる。データ処理部3は、CPU31からビデオ処理IC32、レベル変換回路311を介して解析データをデータ記録部5へ出力し、データ記録部5が逐次更新される解析データを時系列に沿って記録する。このほか、取得した各計測データを後から数値解析する必要がある場合、解析データとは別に、前記各計測データを直接データ記録部5に記録してもよい。データ記録部5は、運転手に対して視覚化された走行情報である解析データを記録できればよいので、図2に見られるように、後部座席に配置している。
【0033】
ここで、上述した画像データ取得部2のビデオカメラが音声データを取得できるマイクを有する場合、ビデオカメラが取得した音声データは直接データ記録部5に出力し、データ処理部3から出力される解析データと前記音声データとを同期して記録させるとよい。解析データは、運転手に総合的な走行情報を見せることができればよいため、特に音声データは必要ない。しかし、データ記録部5に記録させた解析データは、後から運転手以外が見ることから、同時に音声データも確認できるようにしておくことで、客観的に総合的な走行情報の評価ができるようになる。
【0034】
本発明の走行情報表示装置は、各種計測データを視覚化した表示データと画像データとを重ね合わせた解析データを、改造競技車両6の総合的な走行情報として、運転手に表示することで、運転手の運転操作を逐次修正させる。しかし、解析データの構成によっては、運転操作中の運転手に十分な走行情報を提示できず、かえって運転手の混乱を招く虞もある。そこで、運転手に見せる好適な解析データは、例えば図3に見られるように、計測データの種類に応じた変換又は作成される表示データを、画像データの左縁及び下縁に沿って並べて構成するとよい。
【0035】
本例は、数値で表される最高周回時間(図3中「BEST 9'59"99」)及び最終周回時間(図3中「LAST 9'59"99」)を上下段に並べて画像データの下縁左側に、積算される周回時間(図3中「9'59"99」)、車速(図3中「180km/h」)及びエンジン回転数(図3中「6800rpm」)を3段に並べて画像データの下縁右側に配置している。最高周回時間及び最終周回時間は、更新後に一度確認できればよい走行情報であるので、運転手から遠い位置に配置している。これに対し、積算される周回時間、車速及びエンジン回転数は常時確認できることが好ましい走行情報であることから、視線変更が小さくて済む運転手から近い位置に配置している。また、車速及びエンジン回転数をまとめて表示することにより、通常のスピードメータ及びタコメータに代えて走行情報表示装置を用いることができるようにする。
【0036】
改造競技車両6に加わる負荷は、取得した加速度データから改造競技車両6の前号方向及び左右方向に対応した十字の各方向を塗りつぶす大きさの表示データとして、また改造競技車両6の姿勢は、取得した傾斜度データから改造競技車両6の正面図及び側面図の各車輪に付した矢印の大きさの表示データとしてそれぞれ表し、両表示データを上下段に並べて画像データの左縁に配置している。改造競技車両6に加わる負荷や改造競技車両6の姿勢は、数値により表しても具体的な走行情報を想像しにくいので、こうした図形等からなる表示データが望ましい。各表示データを画像データの左側に配置する理由は、上述の最高周回時間及び最終集荷時間同様、常時確認する走行情報ではないことによる。
【0037】
計測データから得られる表示データと画像データとの重ね合わせは、予め設定した条件に従ってデータ処理部3のCPU31で処理されるので、前記重ね合わせの条件を操作パネル33から変更できるようにしてもよい。これにより、画像データに対する表示データの配置関係を変更させることができる。また、画像データの周囲にフレームを設けて、前記フレームに表示データを表示させてもよい。解析データの好適な構成は、取得する計測データの種類、数や前記計測データを変換して得られる表示データの構成のほか、データ表示部4の大きさや位置、そして運転手自体の趣向によって分かれるため、好ましくはいくつかの構成を運転手自身が選択できるようにしておくことが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明に基づく走行情報表示装置の一例を示したブロック図である。
【図2】計測データ取得部、画像データ取得部、データ処理部、データ表示部及びデータ記録部の配置関係を表す改造競技車両の平面図である。
【図3】データ表示部に表示される解析データの一例を表す参考図である。
【符号の説明】
【0039】
1 計測データ取得部
11 GPS測位装置
12 周回計測装置
13 加速度計測装置
14 傾斜度計測装置
2 画像データ取得部
3 データ処理部
31 CPU
32 ビデオ処理IC
33 操作パネル
4 データ表示部
5 データ記録部
6 改造競技車両
61 車載コンピュータ
62 速度計測装置
63 回転数計測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般車両又は一般車両を改造した改造競技車両に搭載し、前記一般車両又は改造競技車両の走行情報を表示する走行情報表示システムであって、一般車両又は改造競技車両の走行情報を表す計測データを取得する計測データ取得部と、一般車両又は改造競技車両の走行画像を表す画像データを撮影する画像データ取得部と、計測データ取得部から計測データを、画像データ取得部から画像データをそれぞれ取り込み、前記計測データを視覚化された表示データに変換し、前記表示データを画像データに重ね合わせて解析データを生成するデータ処理部と、データ処理部から出力される解析データを視覚化された走行情報として表示するデータ表示部とからなる走行情報表示装置。
【請求項2】
データ処理部から出力される解析データを逐次記録するデータ記録部を追加した請求項1記載の走行情報表示装置。
【請求項3】
データ取得部は、人工衛星から電波信号を受信するGPS測位装置であり、受信した電波信号から一般車両又は改造競技車両の実速度データを計測データとする請求項1又は2いずれか記載の走行情報表示装置。
【請求項4】
データ取得部は、一般車両又は改造競技車両が走行する周回道路に埋め込まれた磁石を検知する周回計測装置であり、磁石を検知して出力される周回データを計測データとする請求項1又は2いずれか記載の走行情報表示装置。
【請求項5】
データ処理部は、計時手段を有してなり、データ取得部から周回データが取り込まれるタイミングを区切りとする周回時間を計測データとして算出する請求項4記載の走行情報表示装置。
【請求項6】
データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の車載コンピュータに接続するコンピュータ用コネクタであり、前記車載コンピュータから出力される一般車両又は改造競技車両の推定速度データや一般車両又は改造競技車両のエンジン回転数データのいずれか一方又は双方を計測データとする請求項1又は2いずれか記載の走行情報表示装置。
【請求項7】
データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の車載コンピュータに、タイヤの回転に比例するパルスデータを出力する速度計測装置に接続するセンサ用コネクタであり、前記速度計測装置から出力されるタイヤの回転数に比例するパルスデータを計測データとする請求項1又は2いずれか記載の走行情報表示装置。
【請求項8】
データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の車載コンピュータに、エンジンの回転に比例するパルスデータを出力する回転数計測装置に接続するセンサ用コネクタであり、前記回転数計測装置から出力されるエンジンの回転に比例するパルスデータを計測データとする請求項1又は2いずれか記載の走行情報表示装置。
【請求項9】
データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向に加わる負荷を検知する加速度計測装置であり、前記加速度計測装置から出力される一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向の加速度データを計測データとする請求項1又は2いずれか記載の走行情報表示装置。
【請求項10】
データ処理部は、データ取得部から取り込まれる加速度データを一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向に対応した図形の大きさ又は形状の一方又は双方の変化からなる表示データに変換し、画像データ取得部から取り込まれる画像データに重ね合わせて解析データを生成する請求項9記載の走行情報表示装置。
【請求項11】
データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の各サスペンションの変位を検知する変位計測装置であり、前記変位計測装置から出力される一般車両又は改造競技車両の各サスペンションの変位データを計測データとする請求項1又は2いずれか記載の走行情報表示装置。
【請求項12】
データ処理部は、データ取得部から取り込まれる変位データを一般車両又は改造競技車両の各サスペンションに対応した図形の変化からなる表示データに変換し、画像データ取得部から取り込まれる画像データに重ね合わせて解析データを生成する請求項11記載の走行情報表示装置。
【請求項13】
データ取得部は、一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向に離れて配置され、前記配置個所の浮き沈みを検知する傾斜度計測装置であり、前記傾斜度計測装置から出力される一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向の傾斜度データを計測データとする請求項1又は2いずれか記載の走行情報表示装置。
【請求項14】
データ処理部は、データ取得部から取り込まれる傾斜度データを一般車両又は改造競技車両の前後方向及び左右方向に対応した図形の変化からなる表示データに変換し、画像データ取得部から取り込まれる画像データに重ね合わせて解析データを生成する請求項13記載の走行情報表示装置。
【請求項15】
画像データ取得部は、一般車両又は改造競技車両のフロントガラスから見た前方視界の画像データを撮影する請求項1又は2いずれか記載の走行情報表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−290551(P2007−290551A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−120924(P2006−120924)
【出願日】平成18年4月25日(2006.4.25)
【出願人】(000104065)カーツ株式会社 (14)
【Fターム(参考)】